事業の内容
ジャパン・ティッシュエンジニアリングは、再生医療を専門とする企業です。ティッシュエンジニアリングという、細胞を培養して組織や臓器を作り出す技術を基盤に、失われた身体機能を回復させる根本治療を目指しています。主な事業は、再生医療等製品の開発・製造・販売、再生医療に関する開発・製造の受託、研究用ヒト培養組織の開発・製造・販売の3つです。帝人グループの一員として、親会社との協業で事業拡大を図っています。
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FY2025|6,933 文字|出典 docID: S100VZSY
3【事業の内容】当社は、「医療の質的変化をもたらすティッシュエンジニアリングをベースに、組織再生による根本治療を目指し、21世紀の医療そのものを変えてゆく事業を展開する」ことを会社設立の趣旨とする企業です。「再生医療をあたりまえの医療に」をビジョンに掲げ、再生医療等製品の開発、製造、販売を行う再生医療製品事業、再生医療に関する開発及び製造等を受託する再生医療受託事業、研究用ヒト培養組織の開発、製造、販売を行う研究開発支援事業を展開しております。当社は、2021年3月9日付で帝人グループとなりました。親会社である帝人株式会社との協創により事業を拡大してまいります。2023年8月1日に設立された帝人リジェネット株式会社(帝人株式会社の100%子会社)とは、再生医療CDMO事業において連携しています。 [事業の系統図](1)当社事業の根幹となる技術近年、細胞培養や生体材料工学等の技術進歩により、生物から採取した細胞を用いて、性質の改変、体外での培養、組織・臓器の再形成、新たな機能の付加あるいは機能の修復等が試みられるようになりました。このような要素技術を利用して組織の再生を実現するための技術がティッシュエンジニアリングと呼ばれるものであり、当社事業の根幹となる技術です。ティッシュエンジニアリングを実現するためには、生きた細胞、人工的に作られた材料・素材、細胞や生体に影響をもたらす種々の生理活性物質が必要であり、医学・工学・理学・薬学等の異分野間の国際的な研究交流が必要とされます。我が国では、ティッシュエンジニアリングにより作り出された組織や臓器を製品として医療目的で製造・販売するためには、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)のもとで、厚生労働省からの許認可が必要になります。この許認可には、製造管理及び品質管理に関する基準が含まれており、当社が保有している製造施設・設備、創業以来の研究開発活動で培ってきた製造方法、品質管理に関するノウハウ、そして販売に関する組織体制やノウハウも、当社事業の根幹となる技術であるといえます。また、細胞培養に用いる細胞は、その由来に応じて、自家細胞(本人)、同種細胞(本人以外)、異種細胞(ヒト以外の動物)に分類されますが、自家移植は、一般的に免疫拒絶反応が少なく、生体への生着能が高いといわれております。当社は、当該技術を活用することにより、ヒトの細胞を培養して組織や臓器を作り出し、これを医療用途及び研究用途に提供することを目的として事業を展開しております。 (2)再生医療製品事業再生医療とは、従来の薬物治療とは異なり、われわれの身体に備わっている組織の再生能力を引き出すことにより、失われた組織や臓器の機能を、細胞を使って回復させることに主眼をおいた医療です。当社は、ティッシュエンジニアリングを利用した再生医療等製品を開発し、当該製品を医療機関向けに医療目的で製造販売しております。①当社の再生医療等製品現在、日本において再生医療等製品は20製品が承認されており、当社の自家培養表皮ジェイスは国内第1号として製造販売承認を取得しました。自家培養軟骨ジャックと自家培養角膜上皮ネピックは、それぞれ整形外科領域と眼科領域における国内初の再生医療等製品として製造販売承認を取得しました。自家培養口腔粘膜上皮オキュラルは、眼科領域における国内2つ目の再生医療等製品として製造販売承認を取得しました。また、当社5つ目の再生医療等製品として、2023年3月にメラノサイト含有自家培養表皮ジャスミンの製造販売承認を取得しました。(a)自家培養表皮ジェイス1975年、米国マサチューセッツ工科大学のHoward Green教授(2015年没、米国ハーバード大学医学部 名誉教授)らは、ヒトの正常な表皮細胞の培養方法を確立し、皮膚(表皮)に類似した細胞シートを開発しました。1984年には、重症熱傷を負った米国の2人の小児に対して、わずかに焼け残った自身の皮膚から培養表皮シートを作製・移植した報告が、大きな注目を集めました。自家培養表皮ジェイスは、この技術を使用しており、当社は、開発者であるHoward Green教授から技術指導を受け、培養表皮シートの開発を進めてきました。本品は、患者自身の皮膚組織を少量取り、約3週間の培養期間を経て、患者本人に移植する自家培養表皮シートです。本品は、2007年10月に重症熱傷治療を目的とした製品として製造販売承認を取得、2009年1月より保険適用を受け、我が国で第1号となる再生医療等製品となりました。本品は、適応拡大として2016年9月には先天性巨大色素性母斑の治療を目的とした製品として一部変更承認を受け、2016年12月より保険適用を受けました。さらに2018年12月には表皮水疱症の治療を目的とした製品として一部変更承認を受け、2019年7月より保険適用を受けました。(b)自家培養軟骨ジャック膝や肘の関節軟骨は、血管がないために、ケガ等で一度損傷を受けると自然には治りません。また、これらを薬等で治療することは非常に困難です。広島大学大学院整形外科の越智光夫教授(現、広島大学長)は、アテロコラーゲンというゲル状の物質の中で軟骨細胞を3次元培養する軟骨損傷治療用の移植組織を開発しました。従来、軟骨細胞懸濁液の移植治療が知られていましたが、越智教授が開発された移植組織は軟骨細胞が本来有する性質を維持しており、細胞が漏出しない点において優位性を持っております。自家培養軟骨ジャックは、この技術を使用しており、開発者である越智教授から技術指導を受け、培養軟骨組織の開発を進めてきました。本品は、軟骨損傷患者の関節(非荷重部)から少量採取した軟骨細胞をアテロコラーゲンゲルの中で約4週間培養し、患者本人の軟骨欠損部に移植する自家培養軟骨組織です。本品は、2012年7月に膝関節における外傷性軟骨欠損症又は離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)の臨床症状の緩和を目的とした製品として製造販売承認を取得、2013年4月より保険適用を受け、整形外科領域で国内初の再生医療等製品となりました。2019年1月には自家培養軟骨ジャック移植時に患者自身の骨膜に代わって人工のコラーゲン膜を使用する一部変更承認を受けました。これにより患者の身体的負担軽減と医師の手技の簡便化を図ることができます。当社は、2019年4月から変形性膝関節症を対象とする適応拡大のための治験を実施し、2024年2月に治験終了届を独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出しました。本試験においては、統計的に有意な臨床症状の改善が示されたことに加え、変形性膝関節症による軟骨欠損部において硝子軟骨様組織による修復が確認されました。これらのデータをまとめて、2024年6月に一部変更承認申請書をPMDAに提出し、2025年5月に承認されました。(c)自家培養角膜上皮ネピック1997年、Pellegrini教授(現、イタリアModena and Reggio Emilia大学教授)らは、角膜と結膜の境界である角膜輪部組織から分離した角膜上皮細胞をフィブリンゲル製剤を足場として培養・作製した自家培養角膜上皮を角膜上皮幹細胞疲弊症の患者本人に世界で初めて移植し、良好な結果を報告しました。角膜輪部組織には角膜上皮幹細胞が存在し、角膜上皮細胞を供給するとともに結膜上皮細胞の侵入を阻み、角膜上皮の透明性を維持する重要な役割を担っております。自家培養角膜上皮ネピックは、この技術を使用しており、患者自身の角膜輪部組織から角膜上皮幹細胞を採取してシート状に培養したもので、本品を移植することにより角膜上皮を再建させることを目的としております。当社は株式会社ニデックから本品の製品開発を受託し、開発者であるG. Pellegriniの技術指導のもと、自家培養角膜上皮の開発を進めてきました。本品は、2020年3月に角膜上皮幹細胞疲弊症の治療を目的とした製品として製造販売承認を取得、2020年6月より保険適用を受け、眼科領域で国内初の再生医療等製品となりました。(d)自家培養口腔粘膜上皮オキュラル本品の開発において、大阪大学大学院医学系研究科(脳神経感覚器外科学(眼科学))の西田幸二教授、大家義則講師らにより、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの支援を受けて、角膜上皮幹細胞疲弊症を対象とした医師主導治験が実施されました。当社は、西田幸二教授が世界に先駆けて開発した自家培養口腔粘膜上皮細胞シート移植の技術を導入するとともに、当該医師主導治験を引き継ぎ、開発を行ってきました。自家培養口腔粘膜上皮オキュラルは、患者自身の口腔粘膜組織を採取し、分離した細胞を培養して作製するヒト(自己)口腔粘膜由来上皮細胞シートです。患者の眼表面に本品を移植することにより、患者自身の口腔粘膜上皮細胞が生着・上皮化し、欠損した角膜上皮を修復することを目的としております。本品は、2021年6月に角膜上皮幹細胞疲弊症の治療を目的とした再生医療等製品として製造販売承認を取得、2021年12月より保険適用を受け、眼科領域で2つ目の再生医療等製品となりました。角膜上皮幹細胞疲弊症によって両眼の角膜が広範囲に障害を受け、視力が著しく低下した患者に対する新たな治療法として期待されております。(e)メラノサイト含有自家培養表皮ジャスミンメラノサイト含有自家培養表皮ジャスミンは、患者自身の皮膚組織を採取し、分離した細胞をメラノサイトが保持されるように培養した、患者自身に使用する表皮細胞シートです。非外科的治療が無効又は適応とならない白斑の患部に対して、表皮層を薄く削った後に移植します。本品の移植によりメラノサイトが供給され、色素を再生することを目的としています。ジャスミンは既存の外科的治療に比べ、少ない面積の皮膚組織を用いて製造するため患者への侵襲が少なく、かつ一度に広範囲の治療を行うことが可能となります。また、本治療法で色素再生することにより、患者の整容面での心理的重圧の軽減と生活の質(QOL)の向上も期待されます。本品は、2023年3月に白斑の治療を目的とした再生医療等製品として製造販売承認を取得、2024年10月より保険適用を受け、皮膚領域で2つ目の再生医療等製品となりました。 [当社の再生医療等製品一覧]②自家細胞を用いた再生医療等製品のビジネスモデル当社は培養技術を利用した再生医療等製品を開発し、医療機関向けに医療目的で製造販売しております。当社の再生医療等製品は、現在、患者本人の細胞を培養し、患者本人に移植する「自家移植」を対象としております。当社は、長年にわたって自家移植を対象とした再生医療等製品を製造販売してきたことにより、自家の再生医療等製品に関する製造管理や品質管理に関するノウハウに加え、製品開発や販売に関する組織体制やノウハウを蓄積してきました。このようなノウハウは、当社の今後の事業に大きく役立たせることができます。 (3)再生医療受託事業当社は、医薬品医療機器等法のもと、再生医療等製品の承認を目的として臨床研究を実施するアカデミアや、医師主導治験を実施する医療機関、再生医療等製品の開発を行っている企業を対象に、再生医療等製品に特化した開発製造受託(CDMO)サービス・開発業務受託(CRO)サービスを提供しております。自社製品の開発、製造販売で培った薬事開発、規制当局対応のノウハウ、GCTP適合の製造設備等の豊富な実績及びノウハウを生かし、細胞種(体細胞・幹細胞・iPS細胞)や製品形態を問わず、シーズの開発段階から実用化後までトータルかつシームレスに支援しております。さらに、2014年11月に施行された再生医療等安全性確保法に則った、再生医療の提供機関に対するコンサルティングならびに特定細胞加工物製造受託サービスを提供しております。コンサルティングサービスでは、再生医療等提供計画の作成・細胞加工施設の運営体制の構築等、臨床研究・治療提供のために必要な行政手続きを支援しております。特定細胞加工物製造受託では、厚生労働省より許可を得た当社の細胞加工施設で特定細胞加工物の製造を受託しております。 (4)研究開発支援事業種々の医薬品や化粧品の開発に際して、開発製品の安全性や有効性を確認する等の目的により、動物を用いた試験が実施されております。当社は再生医療等製品の開発を通じて蓄積したティッシュエンジニアリングに係る技術、ノウハウを水平展開し、研究用ヒト培養組織ラボサイトシリーズを開発、製造、販売しております。ラボサイトは、「エピ・モデル」「角膜モデル」「エピ・キット」の3つの製品ラインアップを揃えております。「エピ・モデル」はヒトの正常な表皮細胞を培養して重層化したヒト3次元表皮モデルであり、ヒト表皮に類似した構造をしております。ヒトの皮膚に適用される外用医薬品や化粧品の開発、皮膚科医の基礎研究、化成品原材料の安全性研究等に有用な材料であると同時に、動物を使った皮膚試験の代替としての使用が想定されます。なお、「エピ・モデル」を用いた皮膚刺激性試験に関する試験法は、2013年7月に経済協力開発機構(OECD)の試験法ガイドラインTG439へ収載され、「エピ・モデル24」を含む皮膚腐食性試験法は、2019年6月にOECDの試験法ガイドラインTG431へ収載されました。さらに、2024年6月には新たな標準法として、花王株式会社が開発した皮膚感作性試験法(EpiSensA:エピセンサ)がOECDのテストガイドラインに収載されました。「角膜モデル」はヒト正常角膜上皮細胞を重層培養したヒト3次元角膜モデルです。角膜モデルでは、ムチン等のタンパク質の発現や細胞間接着構造等を確認しており、化合物の眼刺激性試験に加えて、角膜上皮の分子生物学的解析に利用できます。「角膜モデル」を用いた眼刺激性試験法については、2018年6月にOECDの試験法ガイドラインTG492へ収載されました。「エピ・キット」は顧客自身でヒト表皮モデルを作製できるヒト3次元表皮モデルの作製キットです。ヒト表皮モデルへの評価物質の添加やモデルの解析等を自由に設定できます。また、予め細胞に処理を行ったヒト表皮モデルの作製・解析等応用研究に使用できます。 (5)新規パイプラインの開発当社は、今後の成長を加速させるため、新たなパイプラインの開発に積極的に取り組んでおります。①他家(同種)培養表皮(開発名:Allo-JaCE03)の開発わが国で初となる他人の皮膚を原材料としたレディメイド(事前に製造・保存しておき、必要な時に遅滞なく使用することができる)製品である他家(同種)培養表皮(開発名:Allo-JaCE03)については、2021年8月に国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の補助事業として「同種培養表皮の開発・事業化」に関する案件が採択され、2021年11月に治験計画届書を提出しました。さらに、「再生医療等製品の原材料となるヒト(同種)細胞の安定供給体制の構築」に関する案件が2021年6月にAMEDの委託事業として採択されており、他家(同種)細胞を用いた再生医療の産業化を目指し、開発を進めております。 ②CAR-T細胞製剤の開発CD19陽性の急性リンパ性白血病(Acute Lymphoblastic Leukemia, ALL)を対象とした自家CAR-T細胞製剤について、2019年9月より「piggyBacトランスポゾンベクターを用いた自家CD19CAR-T療法の企業治験開始に向けた研究開発」(ウイルスベクターを用いない新技術による国産のCAR-T細胞製剤の開発)に関するAMEDの補助事業として開発を進めてきました。並行して、技術導入元である名古屋大学において同技術を用いた急性リンパ性白血病に対する臨床研究が実施されるとともに、自社の製造工程の効率化を図りました。また、同大学が支援しているタイ王国チュラロンコン大学のCAR-T細胞を用いた臨床研究についても、2023年3月、悪性リンパ腫を患う5名の患者の治療に効果があったことが報告されました。さらに、名古屋大学では2024年3月期より、悪性リンパ腫と急性リンパ性白血病に対するCAR-T細胞を用いた医師主導治験が開始され、医師主導治験に用いられるCAR-T細胞は、当社が製造しています。これに加え、当社は本品の開発で得た知見やノウハウを生かし、柏の葉スマートシティ内に構築する「再生医療プラットフォーム」において帝人、国立研究開発法人国立がん研究センター、三井不動産株式会社と協働し、がん領域における本格的な事業展開に繋げていきます。
FY2024|6,892 文字|出典 docID: S100TNDE
3【事業の内容】当社は、「医療の質的変化をもたらすティッシュエンジニアリングをベースに、組織再生による根本治療を目指し、21世紀の医療そのものを変えてゆく事業を展開する」ことを会社設立の趣旨とする企業です。「再生医療をあたりまえの医療に」をビジョンに掲げ、再生医療等製品の開発、製造、販売を行う再生医療製品事業、再生医療に関する開発及び製造等を受託する再生医療受託事業、研究用ヒト培養組織の開発、製造、販売を行う研究開発支援事業を展開しております。当社は、2021年3月9日付で帝人グループとなりました。親会社である帝人株式会社との協創により事業を拡大してまいります。2023年8月1日に設立された帝人リジェネット株式会社(帝人株式会社の100%子会社)とは、再生医療CDMO事業において連携しています。 [事業の系統図](1)当社事業の根幹となる技術近年、細胞培養や生体材料工学等の技術進歩により、生物から採取した細胞を用いて、性質の改変、体外での培養、組織・臓器の再形成、新たな機能の付加あるいは機能の修復等が試みられるようになりました。このような要素技術を利用して組織の再生を実現するための技術がティッシュエンジニアリングと呼ばれるものであり、当社事業の根幹となる技術です。ティッシュエンジニアリングを実現するためには、生きた細胞、人工的に作られた材料・素材、細胞や生体に影響をもたらす種々の生理活性物質が必要であり、医学・工学・理学・薬学等の異分野間の国際的な研究交流が必要とされます。我が国では、ティッシュエンジニアリングにより作り出された組織や臓器を製品として医療目的で製造・販売するためには、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)のもとで、厚生労働省からの許認可が必要になります。この許認可には、製造管理及び品質管理に関する基準が含まれており、当社が保有している製造施設・設備、創業以来の研究開発活動で培ってきた製造方法、品質管理に関するノウハウ、そして販売に関する組織体制やノウハウも、当社事業の根幹となる技術であるといえます。また、細胞培養に用いる細胞は、その由来に応じて、自家細胞(本人)、同種細胞(本人以外)、異種細胞(ヒト以外の動物)に分類されますが、自家移植は、一般的に免疫拒絶反応が少なく、生体への生着能が高いといわれております。当社は、当該技術を活用することにより、ヒトの細胞を培養して組織や臓器を作り出し、これを医療用途及び研究用途に提供することを目的として事業を展開しております。 (2)再生医療製品事業再生医療とは、従来の薬物治療とは異なり、われわれの身体に備わっている組織の再生能力を引き出すことにより、失われた組織や臓器の機能を細胞を使って回復させることに主眼をおいた医療です。当社は、ティッシュエンジニアリングを利用した再生医療等製品を開発し、当該製品を医療機関向けに医療目的で製造販売しております。①当社の再生医療等製品現在、日本において再生医療等製品は20製品が承認されており、当社の自家培養表皮ジェイスは国内第1号として製造販売承認を取得しました。自家培養軟骨ジャックと自家培養角膜上皮ネピックは、それぞれ整形外科領域と眼科領域における国内初の再生医療等製品として製造販売承認を取得しました。自家培養口腔粘膜上皮オキュラルは、眼科領域における国内2つ目の再生医療等製品として製造販売承認を取得しました。また、当社5つ目の再生医療等製品として、2023年3月にメラノサイト含有自家培養表皮ジャスミンの製造販売承認を取得しました。(a)自家培養表皮ジェイス1975年、米国マサチューセッツ工科大学のHoward Green教授(2015年没、米国ハーバード大学医学部 名誉教授)らは、ヒトの正常な表皮細胞の培養方法を確立し、皮膚(表皮)に類似した細胞シートを開発しました。1984年には、重症熱傷を負った米国の2人の小児に対して、わずかに焼け残った自身の皮膚から培養表皮シートを作製・移植した報告が、大きな注目を集めました。自家培養表皮ジェイスは、この技術を使用しており、当社は、開発者であるHoward Green教授から技術指導を受け、培養表皮シートの開発を進めてきました。本品は、患者自身の皮膚組織を少量取り、約3週間の培養期間を経て、患者本人に移植する自家培養表皮シートです。本品は、2007年10月に重症熱傷治療を目的とした製品として製造販売承認を取得、2009年1月より保険適用を受け、我が国で第1号となる再生医療等製品となりました。本品は、適応拡大として2016年9月には先天性巨大色素性母斑の治療を目的とした製品として一部変更承認を受け、2016年12月より保険適用を受けました。さらに2018年12月には表皮水疱症の治療を目的とした製品として一部変更承認を受け、2019年7月より保険適用を受けました。(b)自家培養軟骨ジャック膝や肘の関節軟骨は、血管がないために、ケガ等で一度損傷を受けると自然には治りません。また、これらを薬等で治療することは非常に困難です。広島大学大学院整形外科の越智光夫教授(現、広島大学長)は、アテロコラーゲンというゲル状の物質の中で軟骨細胞を3次元培養する軟骨損傷治療用の移植組織を開発しました。従来、軟骨細胞懸濁液の移植治療が知られていましたが、越智教授が開発された移植組織は軟骨細胞が本来有する性質を維持しており、細胞が漏出しない点において優位性を持っております。自家培養軟骨ジャックは、この技術を使用しており、開発者である越智教授から技術指導を受け、培養軟骨組織の開発を進めてきました。本品は、軟骨損傷患者の関節(非荷重部)から少量採取した軟骨細胞をアテロコラーゲンゲルの中で約4週間培養し、患者本人の軟骨欠損部に移植する自家培養軟骨組織です。本品は、2012年7月に膝関節における外傷性軟骨欠損症又は離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)の臨床症状の緩和を目的とした製品として製造販売承認を取得、2013年4月より保険適用を受け、整形外科領域で国内初の再生医療等製品となりました。2019年1月には自家培養軟骨ジャック移植時に患者自身の骨膜に代わって人工のコラーゲン膜を使用する一部変更申請承認を受けました。これにより患者の身体的負担軽減と医師の手技の簡便化を図ることができます。当社は、2018年7月から変形性膝関節症を対象とする適応拡大のための治験を実施し、2024年2月に治験終了届を独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出しました。本試験においては、統計的に有意な臨床症状の改善が示されたことに加え、変形性膝関節症による軟骨欠損部において硝子軟骨様組織による修復が確認されました。これらのデータをまとめて、2024年6月に一部変更承認申請書をPMDAに提出しました。 (c)自家培養角膜上皮ネピック1997年、Pellegrini教授(現、イタリアModena and Reggio Emilia大学教授)らは、角膜と結膜の境界である角膜輪部組織から分離した角膜上皮細胞をフィブリンゲル製剤を足場として培養・作製した自家培養角膜上皮を角膜上皮幹細胞疲弊症の患者本人に世界で初めて移植し、良好な結果を報告しました。角膜輪部組織には角膜上皮幹細胞が存在し、角膜上皮細胞を供給するとともに結膜上皮細胞の侵入を阻み、角膜上皮の透明性を維持する重要な役割を担っております。自家培養角膜上皮ネピックは、この技術を使用しており、患者自身の角膜輪部組織から角膜上皮幹細胞を採取してシート状に培養したもので、本品を移植することにより角膜上皮を再建させることを目的としております。当社は株式会社ニデックから本品の製品開発を受託し、開発者であるG. Pellegriniの技術指導のもと、自家培養角膜上皮の開発を進めてきました。本品は、2020年3月に角膜上皮幹細胞疲弊症の治療を目的とした製品として製造販売承認を取得、2020年6月より保険適用を受け、眼科領域で国内初の再生医療等製品となりました。(d)自家培養口腔粘膜上皮オキュラル本品の開発において、大阪大学大学院医学系研究科(脳神経感覚器外科学(眼科学))の西田幸二教授、大家義則講師らにより、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの支援を受けて、角膜上皮幹細胞疲弊症を対象とした医師主導治験が実施されました。当社は、西田幸二教授が世界に先駆けて開発した自家培養口腔粘膜上皮細胞シート移植の技術を導入するとともに、当該医師主導治験を引き継ぎ、開発を行ってきました。自家培養口腔粘膜上皮オキュラルは、患者自身の口腔粘膜組織を採取し、分離した細胞を培養して作製するヒト(自己)口腔粘膜由来上皮細胞シートです。患者の眼表面に本品を移植することにより、患者自身の口腔粘膜上皮細胞が生着・上皮化し、欠損した角膜上皮を修復することを目的としております。本品は、2021年6月に角膜上皮幹細胞疲弊症の治療を目的とした再生医療等製品として製造販売承認を取得、2021年12月より保険適用を受け、眼科領域で2つ目の再生医療等製品となりました。角膜上皮幹細胞疲弊症によって両眼の角膜が広範囲に障害を受け、視力が著しく低下した患者に対する新たな治療法として期待されております。(e)メラノサイト含有自家培養表皮ジャスミン メラノサイト含有自家培養表皮ジャスミンは、患者自身の皮膚組織を採取し、分離した細胞をメラノサイトが保持されるように培養した、患者自身に使用する表皮細胞シートです。非外科的治療が無効又は適応とならない白斑の患部に対して、表皮層を薄く削った後に移植します。本品の移植によりメラノサイトが供給され、色素を再生することを目的としています。ジャスミンは既存の外科的治療に比べ、少ない面積の皮膚組織を用いて製造するため患者への侵襲が少なく、かつ一度に広範囲の治療を行うことが可能となります。また、本治療法で色素再生することにより、患者の整容面での心理的重圧の軽減と生活の質(QOL)の向上も期待されます。 本品は、2023年3月に白斑の治療を目的とした再生医療等製品として製造販売承認を取得しました。現在は保険収載の申請中であり、速やかに保険適用を目指します。 [当社の再生医療等製品一覧] ②自家細胞を用いた再生医療等製品のビジネスモデル当社は培養技術を利用した再生医療等製品を開発し、医療機関向けに医療目的で製造販売しております。当社の再生医療等製品は、現在、患者本人の細胞を培養し、患者本人に移植する「自家移植」を対象としております。当社は、長年にわたって自家移植を対象とした再生医療等製品を製造販売してきたことにより、自家の再生医療等製品に関する製造管理や品質管理に関するノウハウに加え、製品開発や販売に関する組織体制やノウハウを蓄積してきました。このようなノウハウは、当社の今後の事業に大きく役立たせることができます。 (3)再生医療受託事業当社は、医薬品医療機器等法のもと、再生医療等製品の承認を目的として臨床研究を実施するアカデミアや、医師主導治験を実施する医療機関、再生医療等製品の開発を行っている企業を対象に、再生医療等製品に特化した開発製造受託(CDMO)サービス・開発業務受託(CRO)サービスを提供しております。自社製品の開発、製造販売で培った薬事開発、規制当局対応のノウハウ、GCTP適合の製造設備等の豊富な実績及びノウハウを生かし、細胞種(体細胞・幹細胞・iPS細胞)や製品形態を問わず、シーズの開発段階から実用化後までトータルかつシームレスに支援しております。さらに、2014年11月に施行された再生医療等安全性確保法に則った、再生医療の提供機関に対するコンサルティングならびに特定細胞加工物製造受託サービスを提供しております。コンサルティングサービスでは、再生医療等提供計画の作成・細胞加工施設の運営体制の構築等、臨床研究・治療提供のために必要な行政手続きを支援しております。特定細胞加工物製造受託では、厚生労働省より許可を得た当社の細胞加工施設で特定細胞加工物の製造を受託しております。 (4)研究開発支援事業種々の医薬品や化粧品の開発に際して、開発製品の安全性や有効性を確認する等の目的により、動物を用いた試験が実施されております。当社は再生医療等製品の開発を通じて蓄積したティッシュエンジニアリングに係る技術、ノウハウを水平展開し、研究用ヒト培養組織ラボサイトシリーズを開発、製造、販売しております。ラボサイトは、「エピ・モデル」「角膜モデル」「エピ・キット」の3つの製品ラインアップを揃えております。「エピ・モデル」はヒトの正常な表皮細胞を培養して重層化したヒト3次元表皮モデルであり、ヒト表皮に類似した構造をしております。ヒトの皮膚に適用される外用医薬品や化粧品の開発、皮膚科医の基礎研究、化成品原材料の安全性研究等に有用な材料であると同時に、動物を使った皮膚試験の代替としての使用が想定されます。なお、「エピ・モデル」を用いた皮膚刺激性試験に関する試験法は、2013年7月に経済協力開発機構(OECD)の試験法ガイドラインTG439へ収載され、「エピ・モデル24」を含む皮膚腐食性試験法は、2019年6月にOECDの試験法ガイドラインTG431へ収載されました。さらに、現在は「エピ・モデル24」を用いた新たな標準法として、皮膚感作性試験の試験法ガイドライン収載に向けた準備を進めています。「角膜モデル」はヒト正常角膜上皮細胞を重層培養したヒト3次元角膜モデルです。角膜モデルでは、ムチン等のタンパク質の発現や細胞間接着構造等を確認しており、化合物の眼刺激性試験に加えて、角膜上皮の分子生物学的解析に利用できます。「角膜モデル」を用いた眼刺激性試験法については、2018年6月にOECDの試験法ガイドラインTG492へ収載されました。「エピ・キット」は顧客自身でヒト表皮モデルを作製できるヒト3次元表皮モデルの作製キットです。ヒト表皮モデルへの評価物質の添加やモデルの解析等を自由に設定できます。また、予め細胞に処理を行ったヒト表皮モデルの作製・解析等応用研究に使用できます。 (5)新規パイプラインの開発当社は、今後の成長を加速させるため、新たなパイプラインの開発に積極的に取り組んでおります。①他家(同種)培養表皮(開発名:Allo-JaCE03)の開発わが国で初となる他人の皮膚を原材料としたレディメイド(事前に製造・保存しておき、必要な時に遅滞なく使用することができる)製品である他家(同種)培養表皮(開発名:Allo-JaCE03)については、2021年8月に日本医療研究開発機構(AMED)の補助事業として「同種培養表皮の開発・事業化」に関する案件が採択され、2021年11月に治験計画届書を提出しました。さらに、「再生医療等製品の原材料となるヒト(同種)細胞の安定供給体制の構築」に関する案件が2021年6月にAMEDの委託事業として採択されており、他家(同種)細胞を用いた再生医療の産業化を進めております。 ②CAR-T細胞製剤の開発CD19陽性の急性リンパ性白血病(Acute Lymphoblastic Leukemia, ALL)を対象とした自家CAR-T細胞製剤について、2019年9月より「piggyBacトランスポゾンベクターを用いた自家CD19CAR-T療法の企業治験開始に向けた研究開発」(ウイルスベクターを用いない新技術による国産のCAR-T細胞製剤の開発)に関するAMEDの補助事業として開発を進めてきました。並行して、技術導入元である名古屋大学において同技術を用いた急性リンパ性白血病に対する臨床研究が実施されるとともに、自社の製造工程の効率化を図りました。また、同大学が支援しているタイ王国チュラロンコン大学のCAR-T細胞を用いた臨床研究についても、2023年3月、悪性リンパ腫を患う5名の患者の治療に効果があったことが報告されました。さらに、今後、名古屋大学でも日本での悪性リンパ腫に対するCAR-T細胞を用いた医師主導治験の開始を予定していることも合わせて報告され、日本での医師主導治験に用いられるCAR-T細胞は、当社が製造する予定です。これに加え、当社は本品の開発で得た知見やノウハウを生かし、柏の葉スマートシティ内に構築する「再生医療プラットフォーム」において帝人、国立研究開発法人国立がん研究センター、三井不動産株式会社と協働し、がん領域における本格的な事業展開に繋げていきます。
FY2023|7,075 文字|出典 docID: S100QY5M
3【事業の内容】当社は、「医療の質的変化をもたらすティッシュエンジニアリングをベースに、組織再生による根本治療を目指し、21世紀の医療そのものを変えてゆく事業を展開する」ことを会社設立の趣旨とする企業です。「再生医療をあたりまえの医療に」をビジョンに掲げ、再生医療等製品の開発、製造、販売を行う再生医療製品事業、再生医療に関する開発及び製造等を受託する再生医療受託事業、研究用ヒト培養組織の開発、製造、販売を行う研究開発支援事業を展開しております。当社は、2021年3月9日付で帝人グループとなりました。親会社である帝人株式会社との協創により事業を拡大してまいります。 [事業の系統図](1)当社事業の根幹となる技術近年、細胞培養や生体材料工学等の技術進歩により、生物から採取した細胞を用いて、性質の改変、体外での培養、組織・臓器の再形成、新たな機能の付加あるいは機能の修復等が試みられるようになりました。このような要素技術を利用して組織の再生を実現するための技術がティッシュエンジニアリングと呼ばれるものであり、当社事業の根幹となる技術です。ティッシュエンジニアリングを実現するためには、生きた細胞、人工的に作られた材料・素材、細胞や生体に影響をもたらす種々の生理活性物質が必要であり、医学・工学・理学・薬学等の異分野間の国際的な研究交流が必要とされます。我が国では、ティッシュエンジニアリングにより作り出された組織や臓器を製品として医療目的で製造・販売するためには、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)のもとで、厚生労働省からの許認可が必要になります。この許認可には、製造管理及び品質管理に関する基準が含まれており、当社が保有している製造施設・設備、創業以来の研究開発活動で培ってきた製造方法、品質管理に関するノウハウ、そして販売に関する組織体制やノウハウも、当社事業の根幹となる技術であるといえます。また、細胞培養に用いる細胞は、その由来に応じて、自家細胞(本人)、同種細胞(本人以外)、異種細胞(ヒト以外の動物)に分類されますが、自家移植は、一般的に免疫拒絶反応が少なく、生体への生着能が高いといわれております。当社は、当該技術を活用することにより、ヒトの細胞を培養して組織や臓器を作り出し、これを医療用途及び研究用途に提供することを目的として事業を展開しております。 (2)再生医療製品事業再生医療とは、従来の薬物治療とは異なり、われわれの身体に備わっている組織の再生能力を引き出すことにより、失われた組織や臓器の機能を細胞を使って回復させることに主眼をおいた医療です。当社は、ティッシュエンジニアリングを利用した再生医療等製品を開発し、当該製品を医療機関向けに医療目的で製造販売しております。①当社の再生医療等製品現在、日本において再生医療等製品は19製品が承認されており、当社の自家培養表皮ジェイスは国内第1号として製造販売承認を取得しました。自家培養軟骨ジャックと自家培養角膜上皮ネピックは、それぞれ整形外科領域と眼科領域における国内初の再生医療等製品として製造販売承認を取得しました。自家培養口腔粘膜上皮オキュラルは、眼科領域における国内2つ目の再生医療等製品として製造販売承認を取得しました。また、当社5つ目の再生医療等製品として、2023年3月にメラノサイト含有自家培養表皮ジャスミンの製造販売承認を取得しました。(a)自家培養表皮ジェイス1975年、米国マサチューセッツ工科大学のHoward Green教授(2015年没、米国ハーバード大学医学部 名誉教授)らは、ヒトの正常な表皮細胞の培養方法を確立し、皮膚(表皮)に類似した細胞シートを開発しました。1984年には、重症熱傷を負った米国の2人の小児に対して、わずかに焼け残った自身の皮膚から培養表皮シートを作製・移植した報告が、大きな注目を集めました。自家培養表皮ジェイスは、この技術を使用しており、当社は、開発者であるHoward Green教授から技術指導を受け、培養表皮シートの開発を進めてきました。本品は、患者自身の皮膚組織を少量取り、約3週間の培養期間を経て、患者本人に移植する自家培養表皮シートです。本品は、2007年10月に重症熱傷治療を目的とした製品として製造販売承認を取得、2009年1月より保険適用を受け、我が国で第1号となる再生医療等製品となりました。本品は、適応拡大として2016年9月には先天性巨大色素性母斑の治療を目的とした製品として一部変更承認を受け、2016年12月より保険適用を受けました。さらに2018年12月には表皮水疱症の治療を目的とした製品として一部変更承認を受け、2019年7月より保険適用を受けました。(b)自家培養軟骨ジャック膝や肘の関節軟骨は、血管がないために、ケガ等で一度損傷を受けると自然には治りません。また、これらを薬等で治療することは非常に困難です。広島大学大学院整形外科の越智光夫教授(現、広島大学長)は、アテロコラーゲンというゲル状の物質の中で軟骨細胞を3次元培養する軟骨損傷治療用の移植組織を開発しました。従来、軟骨細胞懸濁液の移植治療が知られていましたが、越智教授が開発された移植組織は軟骨細胞が本来有する性質を維持しており、細胞が漏出しない点において優位性を持っております。自家培養軟骨ジャックは、この技術を使用しており、開発者である越智教授から技術指導を受け、培養軟骨組織の開発を進めてきました。本品は、軟骨損傷患者の関節(非荷重部)から少量採取した軟骨細胞をアテロコラーゲンゲルの中で約4週間培養し、患者本人の軟骨欠損部に移植する自家培養軟骨組織です。本品は、2012年7月に膝関節における外傷性軟骨欠損症又は離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)の臨床症状の緩和を目的とした製品として製造販売承認を取得、2013年4月より保険適用を受け、整形外科領域で国内初の再生医療等製品となりました。2019年1月には自家培養軟骨ジャック移植時に患者自身の骨膜に代わって人工のコラーゲン膜を使用する一部変更申請承認を受けました。これにより患者の身体的負担軽減と医師の手技の簡便化を図ることができます。当社は、2018年7月に外傷等に起因する二次性の変形性膝関節症を対象とする適応拡大のための治験計画届書を提出しました。治験は計画通り進んでおり、速やかにデータをまとめて申請準備を行います。 (c)自家培養角膜上皮ネピック1997年、Pellegrini教授(現、イタリアModena and Reggio Emilia大学教授)らは、角膜と結膜の境界である角膜輪部組織から分離した角膜上皮細胞をフィブリンゲル製剤を足場として培養・作製した自家培養角膜上皮を角膜上皮幹細胞疲弊症の患者本人に世界で初めて移植し、良好な結果を報告しました。角膜輪部組織には角膜上皮幹細胞が存在し、角膜上皮細胞を供給するとともに結膜上皮細胞の侵入を阻み、角膜上皮の透明性を維持する重要な役割を担っております。自家培養角膜上皮ネピックは、この技術を使用しており、患者自身の角膜輪部組織から角膜上皮幹細胞を採取してシート状に培養したもので、本品を移植することにより角膜上皮を再建させることを目的としております。当社は株式会社ニデックから本品の製品開発を受託し、開発者であるG. Pellegriniの技術指導のもと、自家培養角膜上皮の開発を進めてきました。本品は、2020年3月に角膜上皮幹細胞疲弊症の治療を目的とした製品として製造販売承認を取得、2020年6月より保険適用を受け、眼科領域で国内初の再生医療等製品となりました。(d)自家培養口腔粘膜上皮オキュラル本品の開発において、大阪大学大学院医学系研究科(脳神経感覚器外科学(眼科学))の西田幸二教授、大家義則講師らにより、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの支援を受けて、角膜上皮幹細胞疲弊症を対象とした医師主導治験が実施されました。当社は、西田幸二教授が世界に先駆けて開発した自家培養口腔粘膜上皮細胞シート移植の技術を導入するとともに、当該医師主導治験を引き継ぎ、開発を行ってきました。自家培養口腔粘膜上皮オキュラルは、患者自身の口腔粘膜組織を採取し、分離した細胞を培養して作製するヒト(自己)口腔粘膜由来上皮細胞シートです。患者の眼表面に本品を移植することにより、患者自身の口腔粘膜上皮細胞が生着・上皮化し、欠損した角膜上皮を修復することを目的としております。本品は、2021年6月に角膜上皮幹細胞疲弊症の治療を目的とした再生医療等製品として製造販売承認を取得、2021年12月より保険適用を受け、眼科領域で2つ目の再生医療等製品となりました。角膜上皮幹細胞疲弊症によって両眼の角膜が広範囲に障害を受け、視力が著しく低下した患者に対する新たな治療法として期待されております。 (e)メラノサイト含有自家培養表皮ジャスミン メラノサイト含有自家培養表皮ジャスミンは、患者自身の皮膚組織を採取し、分離した細胞をメラノサイトが保持されるように培養した、患者自身に使用する表皮細胞シートです。非外科的治療が無効又は適応とならない白斑の患部に対して、表皮層を薄く削った後に移植します。本品の移植によりメラノサイトが供給され、色素を再生することを目的としています。ジャスミンは既存の外科的治療に比べ、少ない面積の皮膚組織を用いて製造するため患者への侵襲が少なく、かつ一度に広範囲の治療を行うことが可能となります。また、本治療法で色素再生することにより、患者の整容面での心理的重圧の軽減と生活の質(QOL)の向上も期待されます。 本品は、2023年3月に白斑の治療を目的とした再生医療等製品として製造販売承認を取得しました。今後、速やかに保険適用を目指します。 [当社の再生医療等製品一覧]*1 医薬品医療機器等法による製造販売承認では、適応対象が明確に決められており、それ以外の疾患の治療には、当該製品を使用することはできません。そこで、使用できる疾患の範囲を拡大するためには、拡大の対象となる疾患につき、承認取得後に適応対象を拡大するための追加治験を実施し、その有効性を確認したうえで治療の対象となる疾患を追加するための一部変更承認申請を行うことが医薬品医療機器等法上必要とされております。このように、再生医療等製品につき、治療対象となる疾患の種類を増やすことを「適応拡大」といいます。*2 適応対象は、当社が想定しているものです。②自家細胞を用いた再生医療等製品のビジネスモデル当社は培養技術を利用した再生医療等製品を開発し、医療機関向けに医療目的で製造販売しております。当社の再生医療等製品は、現在、患者本人の細胞を培養し、患者本人に移植する「自家移植」を対象としております。当社は、長年にわたって自家移植を対象とした再生医療等製品を製造販売してきたことにより、自家の再生医療等製品に関する製造管理や品質管理に関するノウハウに加え、製品開発や販売に関する組織体制やノウハウを蓄積してきました。このようなノウハウは、当社の今後の事業に大きく役立たせることができます。 (3)再生医療受託事業当社は、医薬品医療機器等法のもと、再生医療等製品の承認を目的として臨床研究を実施するアカデミアや、医師主導治験を実施する医療機関、再生医療等製品の開発を行っている企業を対象に、再生医療等製品に特化した開発製造受託(CDMO)サービス・開発業務受託(CRO)サービスを提供しております。自社製品の開発、製造販売で培った薬事開発、規制当局対応のノウハウ、GCTP適合の製造設備等の豊富な実績及びノウハウを生かし、細胞種(体細胞・幹細胞・iPS細胞)や製品形態を問わず、シーズの開発段階から実用化後までトータルかつシームレスに支援しております。さらに、2014年11月に施行された再生医療等安全性確保法に則った、再生医療の提供機関に対するコンサルティングならびに特定細胞加工物製造受託サービスを提供しております。コンサルティングサービスでは、再生医療等提供計画の作成・細胞加工施設の運営体制の構築等、臨床研究・治療提供のために必要な行政手続きを支援しております。特定細胞加工物製造受託では、厚生労働省より許可を得た当社の細胞加工施設で特定細胞加工物の製造を受託しております。 (4)研究開発支援事業種々の医薬品や化粧品の開発に際して、開発製品の安全性や有効性を確認する等の目的により、動物を用いた試験が実施されております。当社は再生医療等製品の開発を通じて蓄積したティッシュエンジニアリングに係る技術、ノウハウを水平展開し、研究用ヒト培養組織ラボサイトシリーズを開発、製造、販売しております。ラボサイトは、「エピ・モデル」「角膜モデル」「エピ・キット」の3つの製品ラインアップを揃えております。「エピ・モデル」はヒトの正常な表皮細胞を培養して重層化したヒト3次元表皮モデルであり、ヒト表皮に類似した構造をしております。ヒトの皮膚に適用される外用医薬品や化粧品の開発、皮膚科医の基礎研究、化成品原材料の安全性研究等に有用な材料であると同時に、動物を使った皮膚試験の代替としての使用が想定されます。なお、「エピ・モデル」を用いた皮膚刺激性試験に関する試験法は、2013年7月に経済協力開発機構(OECD)の試験法ガイドラインTG439へ収載され、「エピ・モデル24」を含む皮膚腐食性試験法は、2019年6月にOECDの試験法ガイドラインTG431へ収載されました。「角膜モデル」はヒト正常角膜上皮細胞を重層培養したヒト3次元角膜モデルです。角膜モデルでは、ムチン等のタンパク質の発現や細胞間接着構造等を確認しており、化合物の眼刺激性試験に加えて、角膜上皮の分子生物学的解析に利用できます。「角膜モデル」を用いた眼刺激性試験法については、2018年6月にOECDの試験法ガイドラインTG492へ収載されました。「エピ・キット」は顧客自身でヒト表皮モデルを作製できるヒト3次元表皮モデルの作製キットです。ヒト表皮モデルへの評価物質の添加やモデルの解析等を自由に設定できます。また、予め細胞に処理を行ったヒト表皮モデルの作製・解析等応用研究に使用できます。 (5)新規パイプラインの開発当社は、今後の成長を加速させるため、新たなパイプラインの開発に積極的に取り組んでおります。①メラノサイト含有自家培養表皮(販売名:ジャスミン)の開発非外科的治療が無効又は適応とならない白斑の治療を目的とする、メラノサイト(色素細胞)含有自家培養表皮(販売名:ジャスミン)については、2023年3月17日付で製造販売承認を取得しました。今後、速やかに保険適用を目指すとともに、患者の生活の質(QOL)向上に貢献します。②他家(同種)培養表皮(開発名:Allo-JaCE03)の開発わが国で初となる他人の皮膚を原材料としたレディメイド(事前に製造・保存しておき、必要な時に遅滞なく使用することができる)製品である他家(同種)培養表皮(開発名:Allo-JaCE03)については、2021年8月に日本医療研究開発機構(AMED)の補助事業として「同種培養表皮の開発・事業化」に関する案件が採択され、2021年11月に治験計画届書を提出しました。さらに、「再生医療等製品の原材料となるヒト(同種)細胞の安定供給体制の構築」に関する案件が2021年6月にAMEDの委託事業として採択されており、他家(同種)細胞を用いた再生医療の産業化を進めております。 ③CAR-T細胞製剤の開発CD19陽性の急性リンパ性白血病(Acute Lymphoblastic Leukemia, ALL)を対象とした自家CAR-T細胞製剤について、2019年9月より「piggyBacトランスポゾンベクターを用いた自家CD19CAR-T療法の企業治験開始に向けた研究開発」(ウイルスベクターを用いない新技術による国産のCAR-T細胞製剤の開発)に関するAMEDの補助事業として開発を進めてきました。並行して、技術導入元である名古屋大学において同技術を用いた急性リンパ性白血病に対する臨床研究が実施されるとともに、自社の製造工程の効率化を図りました。また、同大学が支援しているタイ王国チュラロンコン大学のCAR-T細胞を用いた臨床研究についても、2023年3月、悪性リンパ腫を患う5名の患者の治療に効果があったことが報告されました。さらに、今後、名古屋大学でも日本での悪性リンパ腫に対するCAR-T細胞を用いた医師主導治験の開始を予定していることも合わせて報告され、日本での医師主導治験に用いられるCAR-T細胞は、当社が製造する予定です。これに加え、当社は本品の開発で得た知見やノウハウを生かし、柏の葉スマートシティ内に構築する「再生医療プラットフォーム」において帝人、国立研究開発法人国立がん研究センター、三井不動産株式会社と協働し、がん領域における本格的な事業展開に繋げていきます。
FY2022|6,522 文字|出典 docID: S100O98Q
3【事業の内容】当社は、「医療の質的変化をもたらすティッシュエンジニアリングをベースに、組織再生による根本治療を目指し、21世紀の医療そのものを変えてゆく事業を展開する」ことを会社設立の趣旨とする企業です。「再生医療をあたりまえの医療に」をビジョンに掲げ、再生医療等製品の開発、製造、販売を行う再生医療製品事業、再生医療に関する開発及び製造等を受託する再生医療受託事業、研究用ヒト培養組織の開発、製造、販売を行う研究開発支援事業を展開しております。当社は、2021年3月9日付で帝人グループとなりました。親会社である帝人株式会社との協創により事業を拡大してまいります。 [事業の系統図] (1)当社事業の根幹となる技術近年、細胞培養や生体材料工学等の技術進歩により、生物から採取した細胞を用いて、性質の改変、体外での培養、組織・臓器の再形成、新たな機能の付加あるいは機能の修復等が試みられるようになりました。このような要素技術を利用して組織の再生を実現するための技術がティッシュエンジニアリングと呼ばれるものであり、当社事業の根幹となる技術です。ティッシュエンジニアリングを実現するためには、生きた細胞、人工的に作られた材料・素材、細胞や生体に影響をもたらす種々の生理活性物質が必要であり、医学・工学・理学・薬学等の異分野間の国際的な研究交流が必要とされます。我が国では、ティッシュエンジニアリングにより作り出された組織や臓器を製品として医療目的で製造・販売するためには、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)のもとで、厚生労働省からの許認可が必要になります。この許認可には、製造管理及び品質管理に関する基準が含まれており、当社が保有している製造施設・設備、創業以来の研究開発活動で培ってきた製造方法、品質管理に関するノウハウ、そして販売に関する組織体制やノウハウも、当社事業の根幹となる技術であるといえます。また、細胞培養に用いる細胞は、その由来に応じて、自家細胞(本人)、同種細胞(本人以外)、異種細胞(ヒト以外の動物)に分類されますが、自家移植は、一般的に免疫拒絶反応が少なく、生体への生着能が高いといわれております。当社は、当該技術を活用することにより、ヒトの細胞を培養して組織や臓器を作り出し、これを医療用途及び研究用途に提供することを目的として事業を展開しております。 (2)再生医療製品事業再生医療とは、従来の薬物治療とは異なり、われわれの身体に備わっている組織の再生能力を引き出すことにより、失われた組織や臓器の機能を細胞を使って回復させることに主眼をおいた医療です。当社は、ティッシュエンジニアリングを利用した再生医療等製品を開発し、当該製品を医療機関向けに医療目的で製造販売しております。①当社の再生医療等製品現在、日本において再生医療等製品は16製品が承認されており、当社の自家培養表皮ジェイスは国内第1号として製造販売承認を取得しました。自家培養軟骨ジャックと自家培養角膜上皮ネピックは、それぞれ整形外科領域と眼科領域における国内初の再生医療等製品として製造販売承認を取得しました。また、当社4つ目の再生医療等製品として、2021年6月に自家培養口腔粘膜上皮オキュラルの製造販売承認を取得しました。(a)自家培養表皮ジェイス1975年、米国マサチューセッツ工科大学のHoward Green教授(2015年没、米国ハーバード大学医学部 名誉教授)らは、ヒトの正常な表皮細胞の培養方法を確立し、皮膚(表皮)に類似した細胞シートを開発しました。1984年には、重症熱傷を負った米国の2人の小児に対して、わずかに焼け残った自身の皮膚から培養表皮シートを作製・移植した報告が、大きな注目を集めました。自家培養表皮ジェイスは、この技術を使用しており、当社は、開発者であるHoward Green教授から技術指導を受け、培養表皮シートの開発を進めてきました。本品は、患者自身の皮膚組織を少量取り、約3週間の培養期間を経て、患者本人に移植する自家培養表皮シートです。本品は、2007年10月に重症熱傷治療を目的とした製品として製造販売承認を取得、2009年1月より保険適用を受け、我が国で第1号となる再生医療等製品となりました。本品は、適応拡大として2016年9月には先天性巨大色素性母斑の治療を目的とした製品として一部変更承認を受け、2016年12月より保険適用を受けました。さらに2018年12月には表皮水疱症の治療を目的とした製品として一部変更承認を受け、2019年7月より保険適用を受けました。(b)自家培養軟骨ジャック膝や肘の関節軟骨は、血管がないために、ケガ等で一度損傷を受けると自然には治りません。また、これらを薬等で治療することは非常に困難です。広島大学大学院整形外科の越智光夫教授(現、広島大学長)は、アテロコラーゲンというゲル状の物質の中で軟骨細胞を3次元培養する軟骨損傷治療用の移植組織を開発しました。従来、軟骨細胞懸濁液の移植治療が知られていましたが、越智教授が開発された移植組織は軟骨細胞が本来有する性質を維持しており、細胞が漏出しない点において優位性を持っております。自家培養軟骨ジャックは、この技術を使用しており、開発者である越智教授から技術指導を受け、培養軟骨組織の開発を進めてきました。本品は、軟骨損傷患者の関節(非荷重部)から少量採取した軟骨細胞をアテロコラーゲンゲルの中で約4週間培養し、患者本人の軟骨欠損部に移植する自家培養軟骨組織です。本品は、2012年7月に膝関節における外傷性軟骨欠損症又は離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)の臨床症状の緩和を目的とした製品として製造販売承認を取得、2013年4月より保険適用を受け、整形外科領域で国内初の再生医療等製品となりました。2019年1月には自家培養軟骨ジャック移植時に患者自身の骨膜に代わって人工のコラーゲン膜を使用する一部変更申請承認を受けました。これにより患者の身体的負担軽減と医師の手技の簡便化を図ることができます。当社は、2018年7月に外傷等に起因する二次性の変形性膝関節症を対象とする適応拡大のための治験計画届書を提出しました。現在、治験を実施しております。 (c)自家培養角膜上皮ネピック1997年、Pellegrini教授(現、イタリアModena and Reggio Emilia大学教授)らは、角膜と結膜の境界である角膜輪部組織から分離した角膜上皮細胞をフィブリンゲル製剤を足場として培養・作製した自家培養角膜上皮を角膜上皮幹細胞疲弊症の患者本人に世界で初めて移植し、良好な結果を報告しました。角膜輪部組織には角膜上皮幹細胞が存在し、角膜上皮細胞を供給するとともに結膜上皮細胞の侵入を阻み、角膜上皮の透明性を維持する重要な役割を担っております。自家培養角膜上皮ネピックは、この技術を使用しており、患者自身の角膜輪部組織から角膜上皮幹細胞を採取してシート状に培養したもので、本品を移植することにより角膜上皮を再建させることを目的としております。当社は株式会社ニデックから本品の製品開発を受託し、開発者であるG. Pellegriniの技術指導のもと、自家培養角膜上皮の開発を進めてきました。本品は、2020年3月に角膜上皮幹細胞疲弊症の治療を目的とした製品として製造販売承認を取得、2020年6月より保険適用を受け、眼科領域で国内初の再生医療等製品となりました。(d)自家培養口腔粘膜上皮オキュラル本品の開発において、大阪大学大学院医学系研究科(脳神経感覚器外科学(眼科学))の西田幸二教授、大家義則講師らにより、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの支援を受けて、角膜上皮幹細胞疲弊症を対象とした医師主導治験が実施されました。当社は、西田幸二教授が世界に先駆けて開発した自家培養口腔粘膜上皮細胞シート移植の技術を導入するとともに、当該医師主導治験を引き継ぎ、開発を行ってきました。自家培養口腔粘膜上皮オキュラルは、患者自身の口腔粘膜組織を採取し、分離した細胞を培養して作製するヒト(自己)口腔粘膜由来上皮細胞シートです。患者の眼表面に本品を移植することにより、患者自身の口腔粘膜上皮細胞が生着・上皮化し、欠損した角膜上皮を修復することを目的としております。本品は、2021年6月に角膜上皮幹細胞疲弊症の治療を目的とした再生医療等製品として製造販売承認を取得、2021年12月より保険適用を受け、眼科領域で2つ目の再生医療等製品となりました。角膜上皮幹細胞疲弊症によって両眼の角膜が広範囲に障害を受け、視力が著しく低下した患者に対する新たな治療法として期待されております。[当社の再生医療等製品一覧]*1 医薬品医療機器等法による製造販売承認では、適応対象が明確に決められており、それ以外の疾患の治療には、当該製品を使用することはできません。そこで、使用できる疾患の範囲を拡大するためには、拡大の対象となる疾患につき、承認取得後に適応対象を拡大するための追加治験を実施し、その有効性を確認したうえで治療の対象となる疾患を追加するための一部変更承認申請を行うことが医薬品医療機器等法上必要とされております。このように、再生医療等製品につき、治療対象となる疾患の種類を増やすことを「適応拡大」といいます。*2 適応対象は、当社が想定しているものです。②自家細胞を用いた再生医療等製品のビジネスモデル当社は培養技術を利用した再生医療等製品(自家培養表皮ジェイス、自家培養軟骨ジャック、自家培養角膜上皮ネピック及び自家培養口腔粘膜上皮オキュラル)を開発し、医療機関向けに医療目的で製造販売しております。当社の再生医療等製品は、現在、患者本人の細胞を培養し、患者本人に移植する「自家移植」を対象としております。当社は、長年にわたって自家移植を対象とした再生医療等製品を製造販売してきたことにより、自家の再生医療等製品に関する製造管理や品質管理に関するノウハウに加え、製品開発や販売に関する組織体制やノウハウを蓄積してきました。このようなノウハウは、当社の今後の事業に大きく役立たせることができます。 (3)再生医療受託事業当社は、医薬品医療機器等法のもと、再生医療等製品の承認を目的として臨床研究を実施するアカデミアや、医師主導治験を実施する医療機関、再生医療等製品の開発を行っている企業を対象に、再生医療等製品に特化した開発製造受託(CDMO)サービス・開発業務受託(CRO)サービスを提供しております。自社製品の開発、製造販売で培った薬事開発、規制当局対応のノウハウ、GCTP適合の製造設備等の豊富な実績及びノウハウを生かし、細胞種(体細胞・幹細胞・iPS細胞)や製品形態を問わず、シーズの開発段階から実用化後までトータルかつシームレスに支援しております。さらに、2014年11月に施行された再生医療等安全性確保法に則った、再生医療の提供機関に対するコンサルティングならびに特定細胞加工物製造受託サービスを提供しております。コンサルティングサービスでは、再生医療等提供計画の作成・細胞加工施設の運営体制の構築等、臨床研究・治療提供のために必要な行政手続きを支援しております。特定細胞加工物製造受託では、厚生労働省より許可を得た当社の細胞加工施設で特定細胞加工物の製造を受託しております。 (4)研究開発支援事業種々の医薬品や化粧品の開発に際して、開発製品の安全性や有効性を確認する等の目的により、動物を用いた試験が実施されております。当社は再生医療等製品の開発を通じて蓄積したティッシュエンジニアリングに係る技術、ノウハウを水平展開し、研究用ヒト培養組織ラボサイトシリーズを開発、製造、販売しております。ラボサイトは、「エピ・モデル」「角膜モデル」「エピ・キット」の3つの製品ラインアップを揃えております。「エピ・モデル」はヒトの正常な表皮細胞を培養して重層化したヒト3次元表皮モデルであり、ヒト表皮に類似した構造をしております。ヒトの皮膚に適用される外用医薬品や化粧品の開発、皮膚科医の基礎研究、化成品原材料の安全性研究等に有用な材料であると同時に、動物を使った皮膚試験の代替としての使用が想定されます。なお、「エピ・モデル」を用いた皮膚刺激性試験に関する試験法は、2013年7月に経済協力開発機構(OECD)の試験法ガイドラインTG439へ収載され、「エピ・モデル24」を含む皮膚腐食性試験法は、2019年6月にOECDの試験法ガイドラインTG431へ収載されました。「角膜モデル」はヒト正常角膜上皮細胞を重層培養したヒト3次元角膜モデルです。角膜モデルでは、ムチン等のタンパク質の発現や細胞間接着構造等を確認しており、化合物の眼刺激性試験に加えて、角膜上皮の分子生物学的解析に利用できます。「角膜モデル」を用いた眼刺激性試験法については、2018年6月にOECDの試験法ガイドラインTG492へ収載されました。「エピ・キット」は顧客自身でヒト表皮モデルを作製できるヒト3次元表皮モデルの作製キットです。ヒト表皮モデルへの評価物質の添加やモデルの解析等を自由に設定できます。また、予め細胞に処理を行ったヒト表皮モデルの作製・解析等応用研究に使用できます。当社は上記ラボサイトシリーズに加え、富士フイルムが開発した薬物の吸収性の評価に最適なヒトiPS細胞由来腸管上皮細胞「F-hiSIEC™(エフ-ハイシーク」の製造、販売を2019年9月から行っておりましたが、その製造販売を2021年12月末で終了しました。 (5)新規パイプラインの開発当社は、今後の成長を加速させるため、新たなパイプラインの開発に積極的に取り組んでおります。①メラノサイト(色素細胞)を保持した自家培養表皮(開発名:ACE02)の開発尋常性白斑及びまだら症といった安定期の白斑の治療を目的として、メラノサイト(色素細胞)を保持した自家培養表皮(開発名:ACE02)の開発を進め、2022年4月に製造販売承認申請を行いました。ACE02を通じて、皮膚科領域の疾患治療に進出し、従来から取り組んでいる形成外科・整形外科領域からの事業拡大を目指しております。②他家(同種)培養表皮の開発わが国で初となる他人の皮膚を原材料としたレディメイド(事前に製造・保存しておき、必要な時に遅滞なく使用することができる)製品の実現を目指しております。2021年8月に日本医療研究開発機構(AMED)の補助事業として「同種培養表皮の開発・事業化」に関する案件が採択され、2021年11月に治験計画届書を提出しました。さらに、「再生医療等製品の原材料となるヒト(同種)細胞の安定供給体制の構築」に関する案件が2021年6月にAMEDの委託事業として採択されており、他家(同種)細胞を用いた再生医療の産業化を進めております。③CAR-T細胞製剤の開発CD19陽性の急性リンパ性白血病(Acute Lymphoblastic Leukemia, ALL)を対象とした自家CAR-T細胞製剤の開発に向けて、2018年6月に名古屋大学及び信州大学とライセンス契約を締結しました。2019年9月より「piggyBacトランスポゾンベクターを用いた自家CD19CAR-T療法の企業治験開始に向けた研究開発」(ウイルスベクターを用いない新技術による国産のCAR-T細胞製剤の開発)に関するAMEDの補助事業として開発を進めています。並行して、技術導入元である名古屋大学において同技術を用いた急性リンパ性白血病に対する臨床研究が実施されており、企業治験に向けた評価データが集積されております。今後、企業治験の開始を目指します。
FY2021|6,695 文字|出典 docID: S100LOU7
3【事業の内容】当社は、「医療の質的変化をもたらすティッシュエンジニアリングをベースに、組織再生による根本治療を目指し、21世紀の医療そのものを変えてゆく事業を展開する」ことを会社設立の趣旨とする企業であり、再生医療等製品の開発、製造、販売を行う再生医療製品事業、再生医療に関する開発及び製造等を受託する再生医療受託事業、研究用ヒト培養組織の開発、製造、販売を行う研究開発支援事業を展開しております。当社は、2021年3月9日付で帝人グループとなりました。今後、親会社である帝人株式会社とともに、両社協業による事業計画を策定していく予定です。 [事業の系統図](1)当社事業の根幹となる技術近年、細胞培養や生体材料工学等の技術進歩により、生物から採取した細胞を用いて、性質の改変、体外での培養、組織・臓器の再形成、新たな機能の付加あるいは機能の修復等が試みられるようになりました。このような要素技術を利用して組織の再生を実現するための技術がティッシュエンジニアリングと呼ばれるものであり、当社事業の根幹となる技術です。ティッシュエンジニアリングを実現するためには、生きた細胞、人工的に作られた材料・素材、細胞や生体に影響をもたらす種々の生理活性物質が必要であり、医学・工学・理学・薬学等の異分野間の国際的な研究交流が必要とされます。我が国では、ティッシュエンジニアリングにより作り出された組織や臓器を製品として医療目的で製造・販売するためには、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)のもとで、厚生労働省からの許認可が必要になります。この許認可には、製造管理及び品質管理に関する基準が含まれており、当社が保有している製造施設・設備、創業以来の研究開発活動で培ってきた製造方法、品質管理に関するノウハウ、そして販売に関する組織体制やノウハウも、当社事業の根幹となる技術であるといえます。また、細胞培養に用いる細胞は、その由来に応じて、自家細胞(本人)、同種細胞(本人以外)、異種細胞(ヒト以外の動物)に分類されますが、自家移植は、一般的に免疫拒絶反応が少なく、生体への生着能が高いといわれております。当社は、当該技術を活用することにより、ヒトの細胞を培養して組織や臓器を作り出し、これを医療用途及び研究用途に提供することを目的として事業を展開しております。 (2)再生医療製品事業再生医療とは、従来の薬物治療とは異なり、われわれの身体に備わっている組織の再生能力を引き出すことにより、失われた組織や臓器の機能を細胞を使って回復させることに主眼をおいた医療です。当社は、ティッシュエンジニアリングを利用した再生医療等製品を開発し、当該製品を医療機関向けに医療目的で製造販売しております。①当社の再生医療等製品現在、日本において再生医療等製品は13製品が承認されており、当社の自家培養表皮ジェイスは国内第1号として製造販売承認を取得しました。自家培養軟骨ジャックと自家培養角膜上皮ネピックは、それぞれ整形外科領域と眼科領域における国内初の再生医療等製品として製造販売承認を取得しました。また、当社4つ目の再生医療等製品として、2021年6月、自家培養口腔粘膜上皮オキュラルの製造販売承認を取得しました。(a)自家培養表皮ジェイス1975年、米国マサチューセッツ工科大学のHoward Green教授(2015年没、米国ハーバード大学医学部 名誉教授)らは、ヒトの正常な表皮細胞の培養方法を確立し、皮膚(表皮)に類似した細胞シートを開発しました。1984年には、重症熱傷を負った米国の2人の小児に対して、わずかに焼け残った自身の皮膚から培養表皮シートを作製・移植した報告が、大きな注目を集めました。自家培養表皮ジェイスは、この技術を使用しており、当社は、開発者であるHoward Green教授から技術指導を受け、培養表皮シートの開発を進めてきました。本品は、患者自身の皮膚組織を少量取り、約3週間の培養期間を経て、患者本人に移植する自家培養表皮シートです。本品は、2007年10月に重症熱傷治療を目的とした製品として製造販売承認を取得、2009年1月より保険適用を受け、我が国で第1号となる再生医療等製品となりました。本品は、適応拡大として2016年9月には先天性巨大色素性母斑の治療を目的とした製品として一部変更承認を受け、2016年12月より保険適用を受けました。さらに2018年12月には表皮水疱症の治療を目的とした製品として一部変更承認を受け、2019年7月より保険適用を受けました。(b)自家培養軟骨ジャック膝や肘の関節軟骨は、血管がないために、ケガ等で一度損傷を受けると自然には治りません。また、これらを薬等で治療することは非常に困難です。広島大学大学院整形外科の越智光夫教授(現、広島大学長)は、アテロコラーゲンというゲル状の物質の中で軟骨細胞を3次元培養する軟骨損傷治療用の移植組織を開発しました。従来、軟骨細胞懸濁液の移植治療が知られていましたが、越智教授が開発された移植組織は軟骨細胞が本来有する性質を維持しており、細胞が漏出しない点において優位性を持っております。自家培養軟骨ジャックは、この技術を使用しており、開発者である越智教授から技術指導を受け、培養軟骨組織の開発を進めてきました。本品は、軟骨損傷患者の関節(非荷重部)から少量採取した軟骨細胞をアテロコラーゲンゲルの中で約4週間培養し、患者本人の軟骨欠損部に移植する自家培養軟骨組織です。本品は、2012年7月に膝関節における外傷性軟骨欠損症又は離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)の臨床症状の緩和を目的とした製品として製造販売承認を取得、2013年4月より保険適用を受け、整形外科領域で国内初の再生医療等製品となりました。2019年1月には自家培養軟骨ジャック移植時に患者自身の骨膜に代わって人工のコラーゲン膜を使用する一部変更申請承認を受けました。これにより患者の身体的負担軽減と医師の手技の簡便化を図ることができます。当社は、2018年7月に外傷等に起因する二次性の変形性膝関節症を対象とする適応拡大のための治験計画届書を提出しました。現在、治験を実施しております。 (c)自家培養角膜上皮ネピック1997年、Pellegrini教授(現、イタリアModena and Reggio Emilia大学教授)らは、角膜と結膜の境界である角膜輪部組織から分離した角膜上皮細胞をフィブリンゲル製剤を足場として培養・作製した自家培養角膜上皮を角膜上皮幹細胞疲弊症の患者本人に世界で初めて移植し、良好な結果を報告しました。角膜輪部組織には角膜上皮幹細胞が存在し、角膜上皮細胞を供給するとともに結膜上皮細胞の侵入を阻み、角膜上皮の透明性を維持する重要な役割を担っております。自家培養角膜上皮ネピックは、この技術を使用しており、患者自身の角膜輪部組織から角膜上皮幹細胞を採取してシート状に培養したもので、本品を移植することにより角膜上皮を再建させることを目的としております。当社は株式会社ニデックから本品の製品開発を受託し、開発者であるG. Pellegriniの技術指導のもと、自家培養角膜上皮の開発を進めてきました。本品は、2020年3月に角膜上皮幹細胞疲弊症の治療を目的とした製品として製造販売承認を取得、2020年6月より保険適用を受け、眼科領域で国内初の再生医療等製品となりました。(d)自家培養口腔粘膜上皮オキュラル本品の開発において、大阪大学大学院医学系研究科(脳神経感覚器外科学(眼科学))の西田幸二教授、大家義則講師らにより、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの支援を受けて、角膜上皮幹細胞疲弊症を対象とした医師主導治験が実施されました。当社は、西田幸二教授が世界に先駆けて開発した自家培養口腔粘膜上皮細胞シート移植の技術を導入するとともに、当該医師主導治験を引き継ぎ、開発を行ってきました。自家培養口腔粘膜上皮オキュラルは、患者自身の口腔粘膜組織を採取し、分離した細胞を培養して作製するヒト(自己)口腔粘膜由来上皮細胞シートです。患者の眼表面に本品を移植することにより、患者自身の口腔粘膜上皮細胞が生着・上皮化し、欠損した角膜上皮を修復することを目的としております。本品は、2021年6月に角膜上皮幹細胞疲弊症の治療を目的とした再生医療等製品として製造販売承認を取得しました。角膜上皮幹細胞疲弊症によって両眼の角膜が広範囲に障害を受け、視力が著しく低下した患者に対する新たな治療法として期待されております。[当社の再生医療等製品一覧] *1 医薬品医療機器等法による製造販売承認では、適応対象が明確に決められており、それ以外の疾患の治療には、当該製品を使用することはできません。そこで、使用できる疾患の範囲を拡大するためには、拡大の対象となる疾患につき、承認取得後に適応対象を拡大するための追加治験を実施し、その有効性を確認したうえで治療の対象となる疾患を追加するための一部変更承認申請を行うことが医薬品医療機器等法上必要とされております。このように、再生医療等製品につき、治療対象となる疾患の種類を増やすことを「適応拡大」といいます。*2 適応対象は、当社が想定しているものです。②自家細胞を用いた再生医療等製品のビジネスモデル当社は培養技術を利用した再生医療等製品(自家培養表皮ジェイス、自家培養軟骨ジャック及び自家培養角膜上皮ネピック)を開発し、医療機関向けに医療目的で製造販売しております。当社の再生医療等製品は、現在、患者本人の細胞を培養し、患者本人に移植する「自家移植」を対象としております。当社は、長年にわたって自家移植を対象とした再生医療等製品を製造販売してきたことにより、自家の再生医療等製品に関する製造管理や品質管理に関するノウハウに加え、製品開発や販売に関する組織体制やノウハウを蓄積してきました。このようなノウハウは、当社の今後の事業に大きく役立ち、活かせることができます。 (3)再生医療受託事業当社は、医薬品医療機器等法のもと、再生医療等製品の承認を目的として臨床研究を実施するアカデミアや、医師主導治験を実施する医療機関、再生医療等製品の開発を行っている企業を対象に、再生医療等製品に特化した開発製造受託(CDMO)サービス・開発業務受託(CRO)サービスを提供しております。自社製品の開発、製造販売で培った薬事開発、規制当局対応のノウハウ、GCTP適合の製造設備等の豊富かつ一貫した経験を生かし、細胞種(体細胞・幹細胞・iPS細胞)や製品形態を問わず、シーズの開発段階から実用化後までトータルかつシームレスに支援しております。さらに、2014年11月に施行された再生医療等安全性確保法に則った、再生医療の提供機関に対するコンサルティングならびに特定細胞加工物製造受託サービスを提供しております。コンサルティングサービスでは、再生医療等提供計画の作成・細胞加工施設の運営体制の構築等、臨床研究・治療提供のために必要な行政手続きを支援しております。特定細胞加工物製造受託では、厚生労働省より許可を得た当社の細胞加工施設で特定細胞加工物の製造を受託しております。 (4)研究開発支援事業種々の医薬品や化粧品の開発に際して、開発製品の安全性や有効性を確認する等の目的により、動物を用いた試験が実施されております。当社は再生医療等製品の開発を通じて蓄積したティッシュエンジニアリングに係る技術、ノウハウを水平展開し、研究用ヒト培養組織ラボサイトシリーズを開発、製造、販売しております。ラボサイトは、「エピ・モデル」「角膜モデル」「エピ・キット」の3つの製品ラインアップを揃えております。「エピ・モデル」はヒトの正常な表皮細胞を培養して重層化したヒト3次元表皮モデルであり、ヒト表皮に類似した構造をしております。ヒトの皮膚に適用される外用医薬品や化粧品の開発、皮膚科医の基礎研究、化成品原材料の安全性研究等に有用な材料であると同時に、動物を使った皮膚試験の代替としての使用が想定されます。なお、「エピ・モデル」を用いた皮膚刺激性試験に関する試験法は、2013年7月に経済協力開発機構(OECD)の試験法ガイドラインTG439へ収載され、「エピ・モデル24」を含む皮膚腐食性試験法は、2019年6月にOECDの試験法ガイドラインTG431へ収載されました。「角膜モデル」はヒト正常角膜上皮細胞を重層培養したヒト3次元角膜モデルです。角膜モデルでは、ムチン等のタンパク質の発現や細胞間接着構造等を確認しており、化合物の眼刺激性試験に加えて、角膜上皮の分子生物学的解析に利用できます。「角膜モデル」を用いた眼刺激性試験法については、2018年6月にOECDの試験法ガイドラインTG492へ収載されました。「エピ・キット」は顧客自身でヒト表皮モデルを作製できるヒト3次元表皮モデルの作製キットです。ヒト表皮モデルへの評価物質の添加やモデルの解析等を自由に設定できます。また、予め細胞に処理を行ったヒト表皮モデルの作製・解析等応用研究に使用できます。当社は上記ラボサイトシリーズに加え、富士フイルムが開発した薬物の吸収性の評価に最適なヒトiPS細胞由来腸管上皮細胞「F-hiSIEC™」の製造、販売を2019年9月から開始しました。「F-hiSIEC」は、ヒトiPS細胞を小腸の腸管上皮細胞に分化誘導した創薬支援用細胞です。ヒト生体に近い機能を有し、薬物の吸収性を高精度に評価できる画期的な細胞であるため、経口剤開発の効率化に大きく貢献します。 (5)新規パイプラインの開発当社は、今後の成長を加速させるため、新たなパイプラインの開発に積極的に取り組んでおります。①メラノサイト(色素細胞)を保持した自家培養表皮(開発名:ACE02)の開発尋常性白斑及びまだら症といった安定期の白斑の治療を目的として、メラノサイト(色素細胞)を保持した自家培養表皮(開発名:ACE02)の治験計画届書を2018年7月に提出し、現在治験を実施しております。ACE02を通じて、皮膚科領域の疾患治療に進出し、従来から取り組んでいる形成外科・整形外科領域からの事業拡大を目指しております。②同種培養表皮の開発我が国で初となる他人の皮膚を原材料としたレディメイド(事前に製造・保存しておき、必要な時に遅滞なく使用することができる)製品の実現を目指しており、2018年10月より日本医療研究開発機構(AMED)の委託事業(国家プロジェクト)として「同種培養表皮の開発」及び「産業利用を目的とした同種細胞の安定供給体制の構築」に関する2案件を進めました。並行して、共同研究先である京都大学において同技術を用いた皮膚欠損創に対する臨床研究が実施され、企業治験に向けた評価データが集積されました。③自家培養口腔粘膜上皮(開発名:COMET01)の開発角膜上皮幹細胞疲弊症の治療を目的として、眼科領域の再生医療等製品としては第2号となる自家培養口腔粘膜上皮(開発名:COMET01)の開発を進めてきました。2020年9月、製造販売承認申請を行い、2021年6月、自家培養口腔粘膜上皮オキュラルとして製造販売承認を取得しました。④CAR-T細胞治療薬の開発CD19陽性の急性リンパ性白血病(Acute Lymphoblastic Leukemia, ALL)を対象とした自家CAR-T細胞治療薬の開発に向けて、2018年6月に名古屋大学及び信州大学とライセンス契約を締結しました。2019年9月に「piggyBacトランスポゾンベクターを用いた自家CD19CAR-T療法の企業治験開始に向けた研究開発」(ウイルスベクターを用いない新技術による国産のCAR-T細胞製剤の開発)に対してAMEDから補助金を獲得して開発を進めております。並行して、技術導入元である名古屋大学において同技術を用いた急性リンパ性白血病に対する臨床研究が実施されており、これまでに第1コホート(16~60歳対象群)の3人の患者さまへの投与が終了し、その安全性と一定の有効性が確認されました。
FY2020|5,678 文字|出典 docID: S100J0R1
3【事業の内容】当社は、「医療の質的変化をもたらすティッシュエンジニアリングをベースに、組織再生による根本治療を目指し、21世紀の医療そのものを変えてゆく事業を展開する」ことを会社設立の趣旨とする企業であり、再生医療等製品の開発、製造、販売を行う再生医療製品事業、再生医療に関する開発及び製造等を受託する再生医療受託事業、研究用ヒト培養組織の開発、製造、販売を行う研究開発支援事業を展開しています。当社は、富士フイルムグループに属しており、親会社である富士フイルムより再生医療等製品の開発を受託しています。 [事業の系統図] (1)当社事業の根幹となる技術近年、細胞培養や生体材料工学等の技術進歩により、生物から採取した細胞を用いて、性質の改変、体外での培養、組織・臓器の再形成、新たな機能の付加あるいは機能の修復等が試みられるようになりました。このような要素技術を利用して組織の再生を実現するための技術がティッシュエンジニアリングと呼ばれるものであり、当社事業の根幹となる技術です。ティッシュエンジニアリングを実現するためには、生きた細胞、人工的に作られた材料・素材、細胞や生体に影響をもたらす種々の生理活性物質が必要であり、医学・工学・理学・薬学等の異分野間の国際的な研究交流が必要とされます。我が国では、ティッシュエンジニアリングにより作り出された組織や臓器を製品として医療目的で製造・販売するためには、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)のもとで、厚生労働省からの許認可が必要になります。この許認可には、製造管理及び品質管理に関する基準が含まれており、当社が保有している製造施設・設備、創業以来の研究開発活動で培ってきた製造方法、品質管理に関するノウハウ、そして販売に関する組織体制やノウハウも、当社事業の根幹となる技術であるといえます。また、細胞培養に用いる細胞は、その由来に応じて、自家細胞(本人)、同種細胞(本人以外)、異種細胞(ヒト以外の動物)に分類されますが、自家移植は、一般的に免疫拒絶反応が少なく、生体への生着能が高いといわれています。当社は、当該技術を活用することにより、ヒトの細胞を培養して組織や臓器を作り出し、これを医療用途及び研究用途に提供することを目的として事業を展開しています。 (2)再生医療製品事業再生医療とは、従来の薬物治療とは異なり、われわれの身体に備わっている組織の再生能力を引き出すことにより、失われた組織や臓器の機能を細胞を使って回復させることに主眼をおいた医療です。当社は、ティッシュエンジニアリングを利用した再生医療等製品を開発し、当該製品を医療機関向けに医療目的で製造販売しています。①当社の再生医療等製品現在、日本において再生医療等製品は9製品が承認されており、当社の自家培養表皮ジェイスは国内第1号として製造販売承認を取得しました。自家培養軟骨ジャックと自家培養角膜上皮ネピックは、それぞれ整形外科領域と眼科領域における国内初の再生医療等製品として製造販売承認を取得しました。(a)自家培養表皮ジェイス1975年、米国マサチューセッツ工科大学のHoward Green教授(2015年没、米国ハーバード大学医学部 名誉教授)らは、ヒトの正常な表皮細胞の培養方法を確立し、皮膚(表皮)に類似した細胞シートを開発しました。1984年には、重症熱傷を負った米国の2人の小児に対して、わずかに焼け残った自身の皮膚から培養表皮シートを作製・移植した報告が、大きな注目を集めました。自家培養表皮ジェイスは、この技術を使用しており、当社は、開発者であるHoward Green教授から技術指導を受け、培養表皮シートの開発を進めてきました。本品は、患者自身の皮膚組織を少量取り、約3週間の培養期間を経て、患者本人に移植する自家培養表皮シートです。本品は、2007年10月に重症熱傷治療を目的とした製品として製造販売承認を取得、2009年1月より保険適用を受け、我が国で第1号となる再生医療等製品となりました。本品は、適応拡大として2016年9月には先天性巨大色素性母斑の治療を目的とした製品として一部変更承認を受け、2016年12月より保険適用を受けました。さらに2018年12月には表皮水疱症の治療を目的とした製品として一部変更承認を受け、2019年7月より保険適用を受けました。(b)自家培養軟骨ジャック膝や肘の関節軟骨は、血管がないために、ケガ等で一度損傷を受けると自然には治りません。また、これらを薬等で治療することは非常に困難です。広島大学大学院整形外科の越智光夫教授(現、広島大学長)は、アテロコラーゲンというゲル状の物質の中で軟骨細胞を3次元培養する軟骨損傷治療用の移植組織を開発しました。従来、軟骨細胞懸濁液の移植治療が知られていましたが、越智教授が開発された移植組織は軟骨細胞が本来有する性質を維持しており、細胞が漏出しない点において優位性を持っています。自家培養軟骨ジャックは、この技術を使用しており、開発者である越智教授から技術指導を受け、培養軟骨組織の開発を進めてきました。本品は、軟骨損傷患者の関節(非荷重部)から少量採取した軟骨細胞をアテロコラーゲンゲルの中で約4週間培養し、患者本人の軟骨欠損部に移植する自家培養軟骨組織です。本品は、2012年7月に膝関節における外傷性軟骨欠損症又は離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)の臨床症状の緩和を目的とした製品として製造販売承認を取得、2013年4月より保険適用を受け、整形外科領域で国内初の再生医療等製品となりました。2019年1月には自家培養軟骨ジャック移植時に患者自身の骨膜に代わって人工のコラーゲン膜を使用する一部変更申請承認を受けました。これにより患者の身体的負担軽減と医師の手技の簡便化を図ることができます。当社は、2018年7月に外傷等に起因する二次性の変形性膝関節症を対象とする適応拡大のための治験計画届書を提出しました。現在、治験を実施しています。 (c)自家培養角膜上皮ネピック1997年、Pellegrini教授(現、イタリアModena and Reggio Emilia大学教授)らは、角膜と結膜の境界である角膜輪部組織から分離した角膜上皮細胞をフィブリンゲル製剤を足場として培養・作製した自家培養角膜上皮を角膜上皮幹細胞疲弊症の患者本人に世界で初めて移植し、良好な結果を報告しました。角膜輪部組織には角膜上皮幹細胞が存在し、角膜上皮細胞を供給するとともに結膜上皮細胞の侵入を阻み、角膜上皮の透明性を維持する重要な役割を担っています。自家培養角膜上皮ネピックは、この技術を使用しており、患者自身の角膜輪部組織から角膜上皮幹細胞を採取してシート状に培養したもので、本品を移植することにより角膜上皮を再建させることを目的としています。当社は株式会社ニデックから本品の製品開発を受託し、開発者であるG. Pellegriniの技術指導のもと、自家培養角膜上皮の開発を進めてきました。本品は、2020年3月に角膜上皮幹細胞疲弊症の治療を目的とした製品として製造販売承認を取得、2020年6月より保険適用を受け、眼科領域で国内初の再生医療等製品となりました。 [当社の再生医療等製品一覧] *1 医薬品医療機器等法による製造販売承認では、適応対象が明確に決められており、それ以外の疾患の治療には、当該製品を使用することはできません。そこで、使用できる疾患の範囲を拡大するためには、拡大の対象となる疾患につき、承認取得後に適応対象を拡大するための追加治験を実施し、その有効性を確認したうえで治療の対象となる疾患を追加するための一部変更承認申請を行うことが医薬品医療機器等法上必要とされています。このように、再生医療等製品につき、治療対象となる疾患の種類を増やすことを「適応拡大」といいます。*2 適応対象は、当社が想定しているものです。②自家細胞を用いた再生医療等製品のビジネスモデル当社は培養技術を利用した再生医療等製品(自家培養表皮ジェイス、自家培養軟骨ジャック及び自家培養角膜上皮ネピック)を開発し、医療機関向けに医療目的で製造販売しています。当社の再生医療等製品は、現在、患者本人の細胞を培養し、患者本人に移植する「自家移植」を対象としています。当社は、長年にわたって自家移植を対象とした再生医療等製品を製造販売してきたことにより、自家の再生医療等製品に関する製造管理や品質管理に関するノウハウに加え、製品開発や販売に関する組織体制やノウハウを蓄積してきました。このようなノウハウは、当社の今後の事業に大きく役立ち、活かせることができます。 (3)再生医療受託事業当社は、医薬品医療機器等法のもと、再生医療等製品の承認を目的として臨床研究を実施するアカデミアや、医師主導治験を実施する医療機関、再生医療等製品の開発を行っている企業を対象に、再生医療等製品に特化した開発製造受託(CDMO)サービス・開発業務受託(CRO)サービスを提供しています。自社製品の開発、製造販売で培った薬事開発、規制当局対応のノウハウ、GCTP適合の製造設備等の豊富かつ一貫した経験を生かし、細胞種(体細胞・幹細胞・iPS細胞)や製品形態を問わず、シーズの開発段階から実用化後までトータルかつシームレスに支援しています。さらに、2014年11月に施行された再生医療等安全性確保法に則った、再生医療の提供機関に対するコンサルティングならびに特定細胞加工物製造受託サービスを提供しています。コンサルティングサービスでは、再生医療等提供計画の作成・細胞加工施設の運営体制の構築等、臨床研究・治療提供のために必要な行政手続きを支援しています。特定細胞加工物製造受託では、厚生労働省より許可を得た当社の細胞加工施設で特定細胞加工物の製造を受託しています。 (4)研究開発支援事業種々の医薬品や化粧品の開発に際して、開発製品の安全性や有効性を確認する等の目的により、動物を用いた試験が実施されています。当社は再生医療等製品の開発を通じて蓄積したティッシュエンジニアリングに係る技術、ノウハウを水平展開し、研究用ヒト培養組織ラボサイトシリーズを開発、製造、販売しています。ラボサイトは、「エピ・モデル」「角膜モデル」「エピ・キット」の3つの製品ラインアップを揃えています。「エピ・モデル」はヒトの正常な表皮細胞を培養して重層化したヒト3次元表皮モデルであり、ヒト表皮に類似した構造をしています。ヒトの皮膚に適用される外用医薬品や化粧品の開発、皮膚科医の基礎研究、化成品原材料の安全性研究等に有用な材料であると同時に、動物を使った皮膚試験の代替としての使用が想定されます。なお、「エピ・モデル」を用いた皮膚刺激性試験に関する試験法は、2013年7月に経済協力開発機構(OECD)の試験法ガイドラインTG439へ収載され、「エピ・モデル24」を含む皮膚腐食性試験法は、2019年6月にOECDの試験法ガイドラインTG431へ収載されました。「角膜モデル」はヒト正常角膜上皮細胞を重層培養したヒト3次元角膜モデルです。角膜モデルでは、ムチン等のタンパク質の発現や細胞間接着構造等を確認しており、化合物の眼刺激性試験に加えて、角膜上皮の分子生物学的解析に利用できます。「角膜モデル」を用いた眼刺激性試験法については、2018年6月にOECDの試験法ガイドラインTG492へ収載されました。「エピ・キット」は顧客自身でヒト表皮モデルを作製できるヒト3次元表皮モデルの作製キットです。ヒト表皮モデルへの評価物質の添加やモデルの解析等を自由に設定できます。また、予め細胞に処理を行ったヒト表皮モデルの作製・解析等応用研究に使用できます。当社は上記ラボサイトシリーズに加え、富士フイルムが開発した薬物の吸収性の評価に最適なヒトiPS細胞由来腸管上皮細胞「F-hiSIEC™」の製造、販売を2019年9月から開始しました。「F-hiSIEC」は、ヒトiPS細胞を小腸の腸管上皮細胞に分化誘導した創薬支援用細胞です。ヒト生体に近い機能を有し、薬物の吸収性を高精度に評価できる画期的な細胞であるため、経口剤開発の効率化に大きく貢献します。 (5)新規パイプラインの開発当社は、今後の成長を加速させるため、新たなパイプラインの開発に積極的に取り組んでいます。①CAR-T細胞治療薬の開発CD19陽性の急性リンパ性白血病(Acute Lymphoblastic Leukemia, ALL)を対象とした自家CAR-T細胞治療薬の開発に向けて、2018年6月に名古屋大学及び信州大学とライセンス契約を締結しました。当社は、名古屋大学と密に連携し、本治療薬の開発を進めています。②メラノサイト(色素細胞)を保持した自家培養表皮(開発名:ACE02)の開発尋常性白斑及びまだら症といった安定期の白斑の治療を目的として、メラノサイト(色素細胞)を保持した自家培養表皮(開発名:ACE02)の治験計画届書を2018年7月に提出し、現在治験を実施しています。ACE02を通じて、皮膚科領域の疾患治療に進出し、従来から取り組んでいる形成外科・整形外科領域からの事業拡大を目指しています。③同種培養表皮の開発我が国で初となる他人の皮膚を原材料としたレディメイド(事前に製造・保存しておき、必要な時に遅滞なく使用することができる)製品の実現を目指しており、2018年10月より日本医療研究開発機構(AMED)の委託事業(国家プロジェクト)として同種培養表皮の開発、及び産業利用を目的とした同種細胞の安定供給体制の構築に関する2案件を進めてきました。
FY2019|4,692 文字|出典 docID: S100G7ZI
3【事業の内容】当社は、「医療の質的変化をもたらすティッシュエンジニアリングをベースに、組織再生による根本治療を目指し、21世紀の医療そのものを変えてゆく事業を展開する」ことを会社設立の趣旨とする企業であり、再生医療等製品の開発、製造、販売を行う再生医療製品事業、再生医療に関する開発及び製造等を受託する再生医療受託事業、研究用ヒト培養組織の開発、製造、販売を行う研究開発支援事業を展開しています。当社は、富士フイルムグループに属しており、親会社である富士フイルムより再生医療製品の開発を受託しています。また、主要株主であるニデックより自家培養角膜上皮の開発を受託しています。 [事業の系統図] (1)当社事業の根幹となる技術近年、細胞培養や生体材料工学等の技術進歩により、生物から採取した細胞を用いて、性質の改変、体外での培養、組織・臓器の再形成、新たな機能の付加あるいは機能の修復等が試みられるようになりました。このような要素技術を利用して組織の再生を実現するための技術がティッシュエンジニアリングと呼ばれるものであり、当社事業の根幹となる技術です。ティッシュエンジニアリングを実現するためには、生きた細胞、人工的に作られた材料・素材、細胞や生体に影響をもたらす種々の生理活性物質が必要であり、医学・工学・理学・薬学等の異分野間の国際的な研究交流が必要とされます。我が国では、ティッシュエンジニアリングにより作り出された組織や臓器を製品として医療目的で製造・販売するためには、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)のもとで、厚生労働省からの許認可が必要になります。この許認可には、製造管理及び品質管理に関する基準が含まれており、当社が保有している製造施設・設備、創業以来の研究開発活動で培ってきた製造方法、品質管理に関するノウハウ、そして販売に関する組織体制やノウハウも、当社事業の根幹となる技術であるといえます。また、細胞培養に用いる細胞は、その由来に応じて、自家細胞(本人)、同種細胞(本人以外)、異種細胞(ヒト以外の動物)に分類されますが、自家移植は、一般的に免疫拒絶反応が少なく、生体への生着能が高いといわれています。当社は、当該技術を活用することにより、ヒトの細胞を培養して組織や臓器を作り出し、これを医療用途及び研究用途に提供することを目的として事業を展開しています。 (2)再生医療製品事業再生医療とは、従来の薬物治療とは異なり、われわれの身体に備わっている組織の再生能力を引き出すことにより、失われた組織や臓器の機能を細胞を使って回復させることに主眼をおいた医療です。当社は、ティッシュエンジニアリングを利用した再生医療等製品を開発し、当該製品を医療機関向けに医療目的で製造販売しています。①当社の再生医療等製品現在、日本において再生医療等製品は7製品承認されており、当社の自家培養表皮ジェイスは国内第1号として、自家培養軟骨ジャックは第2号製品として製造販売承認を取得しました。(a)自家培養表皮ジェイス1975年、米国マサチューセッツ工科大学のHoward Green教授(2015年没、米国ハーバード大学医学部 名誉教授)らは、ヒトの正常な表皮細胞の培養方法を確立し、皮膚(表皮)に類似した細胞シートを開発しました。1984年には、重症熱傷を負った米国の2人の小児に対して、わずかに焼け残った自身の皮膚から培養表皮シートを作製・移植した報告が、大きな注目を集めました。自家培養表皮ジェイスは、この技術を使用しており、当社は、開発者であるHoward Green教授から技術指導を受け、培養表皮シートの開発を進めてきました。本品は、重症熱傷患者の受傷していない皮膚組織を少量取り、約3週間の培養期間を経て、患者本人に移植する自家培養表皮シートです。本品は、2007年10月に重症熱傷治療を目的とした製品として製造販売承認を取得、2009年1月より保険適用を受け、我が国で第1号となる再生医療等製品となりました。2016年9月には先天性巨大色素性母斑の治療を目的とした製品として一部変更承認を受け、2016年12月より保険適用を受けました。さらなる適応拡大として、2018年12月には表皮水疱症の治療を目的とした製品として一部変更承認を受けました。現在、保険収載に向けた審議が行われています。(b)自家培養軟骨ジャック膝や肘の関節軟骨は、血管がないために、ケガ等で一度損傷を受けると自然には治りません。また、これらを薬等で治療することは非常に困難です。広島大学大学院整形外科の越智光夫教授(現、広島大学長)は、アテロコラーゲンというゲル状の物質の中で軟骨細胞を3次元培養する軟骨損傷治療用の移植組織を開発しました。従来、軟骨細胞懸濁液の移植治療が知られていましたが、越智教授が開発された移植組織は軟骨細胞が本来有する性質を維持しており、細胞が漏出しない点において優位性を持っています。自家培養軟骨ジャックは、この技術を使用しており、開発者である越智教授から技術指導を受け、培養軟骨組織の開発を進めてきました。本品は、軟骨損傷患者の関節(非荷重部)から少量採取した軟骨細胞をアテロコラーゲンゲルの中で約4週間培養し、患者本人の軟骨欠損部に移植する自家培養軟骨組織です。本品は、2019年1月に自家培養軟骨ジャック移植時に患者自身の骨膜に代わって人工のコラーゲン膜を使用する一部変更申請承認を受けました。当社は、2018年7月に外傷等に起因する二次性の変形性膝関節症を対象とする適応拡大のための治験計画届書を提出しました。現在、治験を実施しています。 [当社の再生医療等製品一覧] *1 医薬品医療機器等法による製造販売承認では、適応対象が明確に決められており、それ以外の疾患の治療には、当該製品を使用することはできません。そこで、使用できる疾患の範囲を拡大するためには、拡大の対象となる疾患につき、承認取得後に適応対象を拡大するための追加治験を実施し、その有効性を確認したうえで治療の対象となる疾患を追加するための一部変更承認申請を行うことが医薬品医療機器等法上必要とされています。このように、再生医療等製品につき、治療対象となる疾患の種類を増やすことを「適応拡大」といいます。*2 適応対象は、当社が想定しているものです。②自家細胞を用いた再生医療等製品のビジネスモデル当社は培養技術を利用した再生医療等製品(自家培養表皮ジェイス及び自家培養軟骨ジャック)を開発し、医療機関向けに医療目的で製造販売しています。当社の再生医療等製品は、現在、患者本人の細胞を培養し、患者本人に移植する「自家移植」を対象としています。 (3)再生医療受託事業当社は、医薬品医療機器等法のもと、再生医療等製品の承認を目的として臨床研究を実施するアカデミアや、医師主導治験を実施する医療機関、再生医療等製品の開発を行っている企業を対象に、再生医療等製品に特化した開発製造受託(CDMO)サービス・開発業務受託(CRO)サービスを提供しています。自社製品の開発、製造販売で培った薬事開発、規制当局対応のノウハウ、GCTP適合の製造設備等の豊富かつ一貫した経験を生かし、細胞種(体細胞・幹細胞・iPS細胞)や製品形態を問わず、シーズの開発段階から実用化後までトータルかつシームレスに支援しています。さらに、2014年11月に施行された再生医療等安全性確保法に則った、再生医療の提供機関に対するコンサルティングならびに特定細胞加工物製造受託サービスを提供しています。コンサルティングサービスでは、再生医療等提供計画の作成・細胞加工施設の運営体制の構築等、臨床研究・治療提供のために必要な行政手続きを支援しています。特定細胞加工物製造受託では、厚生労働省より許可を得た当社の細胞加工施設で特定細胞加工物の製造を受託しています。 (4)研究開発支援事業種々の医薬品や化粧品の開発に際して、開発製品の安全性や有効性を確認する等の目的により、動物を用いた試験が実施されています。当社は再生医療等製品の開発を通じて蓄積したティッシュエンジニアリングに係る技術、ノウハウを水平展開し、研究用ヒト培養組織ラボサイトシリーズを開発、製造、販売しています。ラボサイトは、「エピ・モデル」「角膜モデル」「エピ・キット」の3つの製品ラインアップを揃えています。「エピ・モデル」はヒトの正常な表皮細胞を培養して重層化したヒト3次元表皮モデルであり、ヒト表皮に類似した構造をしています。ヒトの皮膚に適用される外用医薬品や化粧品の開発、皮膚科医の基礎研究、化成品原材料の安全性研究等に有用な材料であると同時に、動物を使った皮膚試験の代替としての使用が想定されます。なお、「エピ・モデル」を用いた皮膚刺激性試験に関する試験法は、2013年7月に経済協力開発機構(OECD)の試験法ガイドラインTG439へ収載され、「エピ・モデル24」を含む皮膚腐食性試験法は、2019年6月にOECDの試験法ガイドラインTG431へ収載されました。「角膜モデル」はヒト正常角膜上皮細胞を重層培養したヒト3次元角膜モデルです。角膜モデルでは、ムチン等のタンパク質の発現や細胞間接着構造等を確認しており、化合物の眼刺激性試験に加えて、角膜上皮の分子生物学的解析に利用できます。「角膜モデル」を用いた眼刺激性試験法については、2018年6月にOECDの試験法ガイドラインTG492へ収載されました。「エピ・キット」は顧客自身でヒト表皮モデルを作製できるヒト3次元表皮モデルの作製キットです。ヒト表皮モデルへの評価物質の添加やモデルの解析等を自由に設定できます。また、予め細胞に処理を行ったヒト表皮モデルの作製・解析等応用研究に使用できます。 (5)新規パイプラインの開発当社は、今後の成長を加速させるため、新たなパイプラインの開発に積極的に取り組んでいます。①CAR-T細胞治療薬の開発CD19陽性の急性リンパ性白血病(Acute Lymphoblastic Leukemia, ALL)を対象とした自家CAR-T細胞治療薬の開発に向けて、2018年6月に名古屋大学及び信州大学とライセンス契約を締結しました。当社は、名古屋大学と密に連携し、本治療薬の開発を進めています。②メラノサイト(色素細胞)を保持した自家培養表皮(開発名:ACE02)の開発尋常性白斑及びまだら症といった安定期の白斑の治療を目的として、メラノサイト(色素細胞)を保持した自家培養表皮(開発名:ACE02)の治験計画届書を2018年7月に提出し、現在治験を実施しています。ACE02を通じて、皮膚科領域の疾患治療に進出し、従来から取り組んでいる形成外科・整形外科領域からの事業拡大を目指しています。③同種培養表皮の開発我が国で初となる他人の皮膚を原材料としたレディメイド(事前に製造・保存しておき、必要な時に遅滞なく使用することができる)製品の実現を目指しており、2018年10月より日本医療研究開発機構(AMED)の委託事業(国家プロジェクト)として同種培養表皮の開発、及び産業利用を目的とした同種細胞の安定供給体制の構築に関する2案件を進めてきました。2020年3月期もAMED委託事業としてこれらの開発を継続します。
FY2018|4,057 文字|出典 docID: S100DEMT
3【事業の内容】当社は、「医療の質的変化をもたらすティッシュ・エンジニアリングをベースに、組織再生による根本治療を目指し、21世紀の医療そのものを変えてゆく事業を展開する」ことを会社設立の趣旨とする企業であり、再生医療等製品の開発、製造、販売を行う再生医療製品事業、再生医療に関する開発を受託する再生医療受託事業、研究用試薬の開発、製造、販売を行う研究開発支援事業を展開しています。なお、当事業年度より、事業の報告セグメント区分について、今後の事業展開の観点から見直し、経営情報をより適切に表示するため変更しております。これまで「再生医療製品事業」に含まれていた「再生医療受託事業」を、当社の中核事業に育成するとの中期経営方針のもと、分離・独立させ、報告セグメントとして記載する方法に変更しております。当社は、親会社である富士フイルムホールディングスを中心とする富士フイルムグループに属しております。当社は親会社の同一グループである富士フイルムより複数の再生医療製品の開発を受託しております。また、主要株主であるニデックより自家培養角膜上皮の開発を受託しております。[事業の系統図] (1)当社事業の根幹となる技術近年、細胞培養や生体材料工学などの技術進歩により、生物から採取した細胞を用いて、性質の改変、体外での培養、組織・臓器の再形成、新たな機能の付加あるいは機能の修復等が試みられるようになりました。このような要素技術を利用して組織の再生を実現するための技術がティッシュ・エンジニアリングと呼ばれるものであり、当社事業の根幹となる技術です。ティッシュ・エンジニアリングを実現するためには、生きた細胞、人工的に作られた材料・素材、細胞や生体に影響をもたらす種々の生理活性物質が必要であり、医学・工学・理学・薬学等の異分野間の国際的な研究交流が必要とされます。我が国では、ティッシュ・エンジニアリングにより作り出された組織や臓器を製品として医療目的で製造・販売するためには、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)のもとで、厚生労働省からの許認可が必要になります。この許認可には、製造管理及び品質管理に関する基準が含まれており、当社が保有している製造施設・設備、創業以来の研究開発活動で培ってきた製造方法、品質管理に関するノウハウ、そして販売に関する組織体制やノウハウも、当社事業の根幹となる技術であるといえます。また、細胞培養に用いる細胞は、その由来に応じて、自家細胞(本人)、同種細胞(本人以外)、異種細胞(ヒト以外の動物)に分類されますが、自家移植は、一般的に免疫拒絶反応が少なく、生体への生着能が高いといわれています。当社は、当該技術を活用することにより、ヒトの細胞を培養して組織や臓器を作り出し、これを医療用途及び研究用途に提供することを目的として事業を展開しています。(2)再生医療製品事業再生医療とは、従来の薬物治療とは異なり、われわれの身体に備わっている組織の再生能力を引き出すことにより、失われた組織や臓器の機能を細胞を使って回復させることに主眼をおいた医療です。当社は、ティッシュ・エンジニアリングを利用した再生医療等製品を開発し、当該製品を医療機関向けに医療目的で製造販売しています。①製品パイプライン現在、日本において再生医療等製品は4製品承認されており、当社の自家培養表皮ジェイスは国内第1号として、自家培養軟骨ジャックは第2号製品として製造販売承認を取得しました。(a)自家培養表皮ジェイス1975年、米国マサチューセッツ工科大学のHoward Green教授(2015年没、米国ハーバード大学医学部 名誉教授)らは、ヒトの正常な表皮細胞の培養方法を確立し、皮膚(表皮)に類似した細胞シートを開発しました。1984年には、重症熱傷を負った米国の2人の小児に対して、わずかに焼け残った自身の皮膚から培養表皮シートを作製・移植した報告が、大きな注目を集めました。自家培養表皮ジェイスは、この技術を使用しており、当社は、開発者であるHoward Green教授から技術指導を受け、培養表皮シートの開発を進めてきました。本品は、重症熱傷患者の受傷していない皮膚組織を少量取り、約3週間の培養期間を経て、患者本人に移植する自家培養表皮シートです。本品は、2007年10月に重傷熱傷治療を目的とした製品として製造販売承認を取得、2009年1月より保険適用を受け、我が国で第1号となる再生医療等製品となりました。2016年9月には先天性巨大色素性母斑治療を目的とした製品として一部変更承認を受け、2016年12月より保険適用を受けました。当社は、本品のさらなる適応拡大として、表皮水疱症の治療を目的とし、2018年3月には一部変更承認申請を行いました。(b)自家培養軟骨ジャック膝や肘の関節軟骨は、血管がないために、ケガなどで一度損傷を受けると自然には治りません。また、これらを薬などで治療することは非常に困難です。広島大学大学院整形外科の越智光夫教授(現、広島大学長)は、アテロコラーゲンというゲル状の物質の中で軟骨細胞を3次元培養する軟骨損傷治療用の移植組織を開発しました。従来、軟骨細胞懸濁液の移植治療が知られていましたが、越智教授が開発された移植組織は軟骨細胞が本来有する性質を維持しており、細胞が漏出しない点において優位性を持っています。自家培養軟骨ジャックは、この技術を使用しており、開発者である越智教授から技術指導を受け、培養軟骨組織の開発を進めてきました。本品は、軟骨損傷患者の関節(非荷重部)から少量採取した軟骨細胞をアテロコラーゲンゲルの中で約4週間培養し、患者本人の軟骨欠損部に移植する自家培養軟骨組織です。 製品パイプライン一覧 *1 医薬品医療機器等法による製造販売承認では、適応対象が明確に決められており、それ以外の疾患の治療には、当該製品を使用することはできません。そこで、使用できる疾患の範囲を拡大するためには、拡大の対象となる疾患につき、承認取得後に適応対象を拡大するための追加治験を実施し、その有効性を確認したうえで治療の対象となる疾患を追加するための一部変更承認申請を行うことが医薬品医療機器等法上必要とされています。このように、再生医療等製品につき、治療対象となる疾患の種類を増やすことを「適応拡大」といいます。*2 適応対象は、当社が想定しているものです。 ②自家細胞を用いた再生医療等製品のビジネスモデル当社は培養技術を利用した再生医療等製品(自家培養表皮ジェイス、自家培養軟骨ジャック)を開発し、医療機関向けに医療目的で製造販売しています。当社の再生医療等製品は、現在、患者本人の細胞を培養し、患者本人に移植する「自家移植」を対象としています。 (3)再生医療受託事業当社は、医薬品医療機器等法のもと、再生医療等製品の承認を目的として臨床研究を実施するアカデミアや、医師主導治験を実施する医療機関、再生医療等製品の開発を行っている企業を対象に、再生医療等製品に特化した開発製造受託(CDMO)サービス・開発業務受託(CRO)サービスを提供しています。自社製品の開発、製造販売で培った薬事開発、規制当局対応のノウハウ、GCTP適合の製造設備等の豊富かつ一貫した経験を生かし、細胞種(体細胞・幹細胞・iPS細胞)や製品形態を問わず、シーズの開発段階から実用化後までトータルかつシームレスに支援しています。さらに、2014年11月に施行された再生医療等安全性確保法に則った、再生医療の提供機関に対するコンサルティングならびに特定細胞加工物製造受託サービスを提供しています。コンサルティングサービスでは、再生医療等提供計画の作成・細胞加工施設の運営体制の構築など、臨床研究・治療提供のために必要な行政手続きを支援しています。特定細胞加工物製造受託では、厚生労働省より許可を得た当社の細胞加工施設で特定細胞加工物の製造を受託しています。 (4)研究開発支援事業種々の医薬品や化粧品の開発に際して、開発製品の安全性や有効性を確認する等の目的により、動物を用いた試験が実施されています。当社は再生医療等製品の開発を通じて蓄積したティッシュ・エンジニアリングに係る技術、ノウハウを水平展開し、研究用ヒト培養組織ラボサイトシリーズを開発、製造、販売しています。ラボサイトは、「エピ・モデル」「角膜モデル」「エピ・キット」の3つの製品ラインアップを揃えています。「エピ・モデル」はヒトの正常な表皮細胞を培養して重層化したヒト3次元表皮モデルであり、ヒト表皮に類似した構造をしています。エピ・モデルは、ヒトの皮膚に適用される外用医薬品や化粧品の開発、皮膚科医の基礎研究、化成品原材料の安全性研究等に有用な材料であると同時に、動物を使った皮膚試験の代替としての使用が想定されます。なお、「エピ・モデル」を用いた皮膚刺激性試験に関する試験法は、2013年7月に経済協力開発機構(OECD)の試験法ガイドラインTG439へ収載されました。「角膜モデル」はヒト正常角膜上皮細胞を重層培養したヒト3次元角膜モデルです。角膜モデルでは、ムチンなどのタンパク質の発現や細胞間接着構造などを確認しており、化合物の眼刺激性試験に加えて、角膜上皮の分子生物学的解析に利用できます。「角膜モデル」を用いた眼刺激性試験法については、OEDCが推進する角膜に関する試験法のガイドライン収載を目指しています。「エピ・キット」は顧客自身でヒト表皮モデルを作製できるヒト3次元表皮モデルの作製キットです。ヒト表皮モデルへの評価物質の添加やモデルの解析などを自由に設定できます。また、予め細胞に処理を行ったヒト表皮モデルの作製・解析など応用研究に使用できます。
FY2017|6,453 文字|出典 docID: S100AMYZ
3【事業の内容】当社は、「医療の質的変化をもたらすティッシュ・エンジニアリングをベースに、組織再生による根本治療を目指し、21世紀の医療そのものを変えてゆく事業を展開する」ことを会社設立の趣旨とする企業であり、再生医療等製品及び関連製品の開発、製造、販売を主要な事業目的としています。当社は、親会社である富士フイルムホールディングスを中心とする富士フイルムグループに属しております。当社は親会社の子会社である富士フイルムより複数の再生医療製品の開発を受託しております。また、主要株主であるニデックより自家培養角膜上皮の開発を受託しております。[事業の系統図] (1)当社事業の根幹となる技術近年、細胞培養や生体材料工学などの技術進歩により、生物から採取した細胞を用いて、性質の改変、体外での培養、組織・臓器の再形成、新たな機能の付加あるいは機能の修復等が試みられるようになりました。このような要素技術を利用して組織の再生を実現するための技術がティッシュ・エンジニアリングと呼ばれるものであり、当社事業の根幹となる技術です。ティッシュ・エンジニアリングを実現するためには、生きた細胞、人工的に作られた材料・素材、細胞や生体に影響をもたらす種々の生理活性物質が必要であり、医学・工学・理学・薬学等の異分野間の国際的な研究交流が必要とされます。我が国では、ティッシュ・エンジニアリングにより作り出された組織や臓器を製品として医療目的で製造・販売するためには、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)のもとで、厚生労働省からの許認可が必要になります。この許認可には、製造管理及び品質管理に関する基準が含まれており、当社が保有している製造施設・設備、創業以来の研究開発活動で培ってきた製造方法、品質管理に関するノウハウ、そして販売に関する組織体制やノウハウも、当社事業の根幹となる技術であるといえます。また、細胞培養に用いる細胞は、その由来に応じて、自家細胞(本人)、同種細胞(本人以外)、異種細胞(ヒト以外の動物)に分類されますが、自家移植は、一般的に免疫拒絶反応が少なく、生体への生着能が高いといわれています。当社は、当該技術を活用することにより、ヒトの細胞を培養して組織や臓器を作り出し、これを医療用途及び研究用途に提供することを事業目的として、医薬品医療機器等法の適用を受ける「再生医療製品事業」と、医薬品医療機器等法の適用を受けない「研究開発支援事業」を展開しています。 (2)再生医療製品事業再生医療とは、従来の薬物治療とは異なり、われわれの身体に備わっている組織の再生能力を引き出すことにより、失われた組織や臓器の機能を細胞を使って回復させることに主眼をおいた医療です。当社は、ティッシュ・エンジニアリングを利用した再生医療等製品を開発し、当該製品を医療機関向けに医療目的で製造販売することを主たる事業目的としています。 開発パイプライン *1 医薬品医療機器等法による製造販売承認では、適応対象が明確に決められており、それ以外の疾患の治療には、当該製品を使用することはできません。そこで、使用できる疾患の範囲を拡大するためには、拡大の対象となる疾患につき、承認取得後に適応対象を拡大するための追加治験を実施し、その有効性を確認したうえで治療の対象となる疾患を追加するための一部変更承認申請を行うことが医薬品医療機器等法上必要とされています。このように、再生医療等製品につき、治療対象となる疾患の種類を増やすことを「適応拡大」といいます。*2 「自家培養角膜上皮」及び「自家培養表皮の適応拡大」の適応対象は、当社が想定しているものです。 ①自家培養表皮ジェイス1975(昭和50)年、米国マサチューセッツ工科大学のHoward Green教授(2015年没、米国ハーバード大学医学部 名誉教授)らは、ヒトの正常な表皮細胞の培養方法を確立し、皮膚(表皮)に類似した細胞シートを開発しました。1984(昭和59)年には、重症熱傷を負った米国の2人の小児に対して、わずかに焼け残った自身の皮膚から培養表皮シートを作製・移植した報告が、大きな注目を集めました。自家培養表皮ジェイスは、この技術を使用しており、当社は、開発者であるHoward Green教授から技術指導を受け、培養表皮シートの開発を進めてきました。本品は、重症熱傷患者の受傷していない皮膚組織を少量取り、約3週間の培養期間を経て、患者本人に移植する自家培養表皮シートです。本品の作製・移植フローは次のようになります。自家培養表皮ジェイスの作製・移植本品は、平成19年10月に重傷熱傷治療を目的とした製品として製造販売承認を取得、平成21年1月より保険適用を受け、我が国で第1号となる再生医療等製品となりました。平成28年9月には先天性巨大色素性母斑治療を目的とした製品として一部変更承認を受け、平成28年12月より保険適用を受けました。また、平成28年4月より保険機能区分が①採取・培養キットと②調製・移植キットの2つに細分化されました。本品の製品概要は以下のとおりです。 販 売 名 :ジェイス一 般 的 名 称:ヒト(自己)表皮由来細胞シート承 認 番 号 :21900FZX00039001形状、構造及び原理:患者自身の皮膚組織を採取し、分離した表皮細胞を培養し、シート状に形成して患者自身に使用する自家培養表皮である(下図)。1.重傷熱傷患者の皮膚から作製された自家培養表皮シートを真皮が存在する熱傷創面に適用すると、移植された本人の表皮細胞が生着することによって創面が上皮化し、速やかに創を閉鎖することができる。2.先天性巨大色素性母斑患者の皮膚から作製された自家培養表皮シートを先天性巨大色素性母斑を切除した後の創部に適用し、創を閉鎖することができる。効能、効果又は性能:1.重傷熱傷自家植皮のための恵皮面積が確保できない重篤な広範囲熱傷で、かつ、受傷面積として深達性Ⅱ度熱傷創及びⅢ度熱傷創の合計面積が体表面積の30%以上の熱傷を適応対象とする。2.先天性巨大色素性母斑体表面積に占める母斑面積の割合が5%以上の患者の治療など、既存の標準的な治療では母斑の切除に対応できない場合に適用する。 自家培養表皮ジェイス 本品の承認に際し、重症熱傷においては「重症熱傷症例を適切に治療できる医療機関において十分な知識・経験のある医師が治療を行うこと」、「有効性及び安全性を確認するための製造販売後臨床試験の実施と並行して再審査期間(7年)中の全症例を対象とした使用成績調査を実施すること」、及び「最終製品を少なくとも30年間保存すること」等の条件が課されています。また、先天性巨大色素性母斑においては「再審査期間(10年)中の全症例を対象とした使用成績調査を実施すること」、及び「最終製品を少なくとも30年間保存すること」との条件が課されています。当社は、本品のさらなる適応拡大として、表皮水疱症の治療を目的とした治験を実施しました。本品は、平成23年3月に表皮水疱症、平成26年11月に先天性巨大色素性母斑の治療を目的とした希少疾病用再生医療等製品に指定されています。 ②自家培養軟骨ジャック膝や肘の関節軟骨は、血管がないために、ケガなどで一度損傷を受けると自然には治りません。また、これらを薬などで治療することは非常に困難です。広島大学大学院整形外科の越智光夫教授(現、広島大学長)は、アテロコラーゲンというゲル状の物質の中で軟骨細胞を3次元培養することで軟骨損傷治療用の移植組織を開発しました。従来、軟骨細胞懸濁液の移植治療が知られていましたが、越智教授が開発された移植組織は軟骨細胞が本来持っている性質を維持しており、細胞が漏出しない点において優位性を持っています。自家培養軟骨ジャックは、この技術を使用しており、開発者である越智教授から技術指導を受け、培養軟骨組織の開発を進めてきました。本品は、軟骨損傷患者の関節(非荷重部)から少量採取した軟骨細胞をアテロコラーゲンゲルの中で約4週間培養し、患者本人の軟骨欠損部に移植する自家培養軟骨組織です。本品の作製・移植フローは次のようになります。自家培養軟骨ジャックの作製・移植(膝関節)本品は、平成24年7月に製造販売承認を取得し、整形外科領域における我が国初の再生医療等製品となりました。また、平成25年4月より保険適用を受け、平成28年4月より保険機能区分が①採取・培養キットと②調製・移植キットの2つに細分化されました。本品の製品概要は以下のとおりです。 販 売 名 :ジャック一 般 的 名 称:ヒト(自己)軟骨由来組織承 認 番 号 :22400FZX00266001形状、構造及び原理:患者から採取した健常な軟骨組織より分離した軟骨細胞を、アテロコラーゲンゲルに包埋して培養し、患者自身に適用する「自家培養軟骨」である(下図)。軟骨細胞を含むアテロコラーゲンゲルを欠損部に移植することにより、臨床症状を緩和する。効能、効果又は性能:膝関節における外傷性軟骨欠損症又は離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)の臨床症状の緩和。ただし、他に治療法がなく、かつ軟骨欠損面積が4cm2以上の軟骨欠損部位に適用する場合に限る。自家培養軟骨ジャック また、本品の承認に際しては、「膝関節の外傷性軟骨欠損症及び離断性骨軟骨炎の治療に関する十分な知識・経験を有する医師及び施設において治療を行うこと」、「製造販売後の一定期間は、本品の使用症例の全例を対象に使用成績調査を実施し、本品の有効性及び安全性に関するデータを収集すること」等の条件が課されています。 ③自家培養角膜上皮角膜輪部(角膜(黒目)と結膜(白目)との境界部)には、角膜の源となる細胞(角膜上皮幹細胞)が存在し、角膜輪部が重度の損傷を受けて角膜上皮幹細胞を失うと透明な角膜が維持できず、角膜の瘢痕化(結膜化)が生じ大幅に視力が失われます。このような患者にとって視力を回復することは、QOLの向上につながります。1997(平成9)年、角膜輪部に損傷を受けた患者に対して、患者本人の受傷していない角膜輪部から採取した少量の組織から角膜上皮幹細胞を取り出して培養し培養細胞シートとして移植して治療する方法が、イタリアのGraziella Pellegrini博士とMichele De Luca博士らによって世界で初めて報告されました。当社は、開発者であるイタリアのGraziella Pellegrini博士とMichele De Luca博士から技術指導を受け、培養角膜上皮細胞シートの開発を進めてきました。当社の自家培養角膜上皮は、受傷患者の受傷していない1mm2程度の角膜輪部の組織を採取し、約6週間の培養期間を経て、患者本人に移植する自家培養角膜上皮シートです(下図)。当社の自家培養角膜上皮の開発は、株式会社ニデックの委託開発として実施しており、本開発の結果生じた知的財産権は、当社とニデックとの共有となりますが、製造販売承認後の販売権は、ニデックに帰属します。 自家培養角膜上皮 当社は、平成26年10月に自家培養角膜上皮の治験計画届書を独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出し、治験を実施しています。また、当社自家培養角膜上皮は、平成27年3月に角膜上皮幹細胞疲弊症の治療を目的とした希少疾病用再生医療等製品に指定されています。 ④受託開発・受託製造当社は、自社製品の開発で積み重ねた経験と、研究開発、臨床開発、薬事、生産、信頼性保証、営業などの再生医療等製品の開発・製造・販売に必要な組織体制を保有しており、蓄積したノウハウと確立したシステムにより、製品開発・製品製造を支援する再生医療等製品の開発製造受託(CDMO)及び臨床試験などを支援する再生医療等製品の開発業務受託(CRO)を行っています。上記ニデックから受託している角膜上皮開発に加え、富士フイルムが開発した生体適合性に優れるリコンビナントペプチドを活用した再生医療等製品の開発を進めるとともに、大阪大学や東京医科歯科大学、東京慈恵会医科大学などから再生医療研究における業務を受託しています。また、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」(再生医療等安全性確保法)のもとでは、再生医療等提供機関及び特定細胞加工物製造事業者に向けたコンサルティング業務や医療機関からの細胞培養を受託しています。 ⑤最近の動向当社は、日本医療研究開発機構(AMED)が公募した「再生医療の産業化に向けた評価基盤技術開発事業」(「平成28年度 再生医療等の産業化に向けた評価手法等の開発」)など、採択された国の研究機関からの委託事業や助成事業についての研究を行っています。当社は、平成29年3月期まで再生医療製品事業に含まれていた、受託開発(特許譲渡含む)を分離・独立して再生医療受託事業とし、平成30年3月期より再生医療製品事業・再生医療受託事業・研究開発支援事業を事業セグメントとします。 (3)研究開発支援事業種々の医薬品や化粧品の開発に際して、開発製品の安全性や有効性を確認する等の目的により、動物を用いた試験が実施されています。当社では、再生医療等製品の開発を通じて蓄積したティッシュ・エンジニアリングに係る技術、ノウハウを試薬としての研究用培養組織の開発に水平展開し、研究用ヒト培養組織ラボサイトシリーズとして製造、販売しています。ラボサイトは、「エピ・モデル」「角膜モデル」「エピ・キット」の3つ製品ラインアップを揃えています。 ①研究用ヒト培養組織ラボサイトシリーズ(a)ヒト3次元培養表皮「ラボサイト エピ・モデル」ヒトの正常な表皮細胞を培養して重層化した3次元モデルであり、基底層、有棘層、顆粒層、角質層から構成され、ヒト表皮に類似した構造をしています。エピ・モデルは、ヒトの皮膚に適用される外用医薬品や化粧品の開発、皮膚科医の基礎研究、化成品原材料の安全性研究等に有用な材料であると同時に、動物を使った皮膚試験を代替し、以下に示す領域での使用が想定されます。-皮膚刺激性試験: 化学物質に皮膚刺激性があるかどうかを調べる試験、医薬品・化粧品等の安全性試験-皮膚腐食性試験: 化学物質の安全性を調べる試験、化学会社の取扱物質の安全性検討-皮膚透過性試験: 化学物質等の皮膚透過性を調べる試験、医薬品・化粧品の皮膚への浸透検討-皮膚代謝性試験: 皮膚細胞の酵素等による物質の代謝を調べる試験、皮膚組織の基礎研究なお、「ラボサイト エピ・モデル24」を用いた皮膚刺激性試験に関する試験法は、平成25年7月に経済協力開発機構(OECD)の試験法ガイドラインTG439へ収載されています。(b)ヒト3次元培養角膜上皮「ラボサイト 角膜モデル」ヒト正常角膜上皮細胞を重層培養したヒト3次元培養モデルです。ラボサイト 角膜モデルでは、ムチンなどのタンパク質の発現や細胞間接着構造などを確認しており、化合物の眼刺激性試験に加えて、角膜上皮の分子生物学的解析に利用できます。(c)ヒト表皮モデル作製キット「ラボサイト エピ・キット」顧客自身でヒト表皮モデルを作製できる3次元表皮モデルの作製キットです。ヒト表皮モデルへの評価物質の添加やモデルの解析などを自由に設定できます。また、予め細胞に処理を行ったヒト表皮モデルの作製・解析など応用研究に使用できます。 ②最近の動向当社は、ラボサイト 角膜モデルを用いた眼刺激性試験法についても、OECDが推進する角膜に関する試験法のガイドライン収載を目指しています。
FY2016|6,806 文字|出典 docID: S1007UEO
3【事業の内容】 当社は、「医療の質的変化をもたらすティッシュ・エンジニアリングをベースに、組織再生による根本治療を目指し、21世紀の医療そのものを変えてゆく事業を展開する」ことを会社設立の趣旨とする企業であり、再生医療製品及び研究開発支援製品の開発、製造、販売を主要な事業目的としています。 当社は、提出日現在において連結子会社及び非連結子会社を保有していません。 (1) 当社事業の根幹となる技術 近年、細胞培養や生体材料工学などの技術進歩により、生物から採取した細胞を用いて、性質の改変、体外での培養、組織・臓器の再形成、新たな機能の付加あるいは機能の修復等が試みられるようになりました。このような要素技術を利用して組織の再生を実現するための技術がティッシュ・エンジニアリングと呼ばれるものであり、当社事業の根幹となる技術です。 ティッシュ・エンジニアリングを実現するためには、生きた細胞、人工的に作られた材料・素材、細胞や生体に影響をもたらす種々の生理活性物質が必要であり、医学・工学・理学・薬学等の異分野間の国際的な研究交流が必要とされます。我が国では、ティッシュ・エンジニアリングにより作り出された組織や臓器を製品として医療目的で製造・販売するためには、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)のもとで、厚生労働省からの許認可が必要になります。この許認可には、製造及び品質管理に関する基準が含まれており、当社が保有している製造施設・設備、創業以来の研究開発活動で培ってきた製造方法、品質管理に関するノウハウ、そして販売に関する組織体制やノウハウも、当社事業の根幹となる技術であるといえます。 また、細胞培養に用いる細胞は、その由来に応じて、自家細胞(本人)、同種細胞(本人以外)、異種細胞(ヒト以外の動物)に分類されますが、自家移植は、一般的に免疫拒絶反応が少なく、生体への生着能が高いといわれています。 当社は、当該技術を活用することにより、ヒトの細胞を培養して組織や臓器を作り出し、これを医療用途及び研究用途に提供することを事業目的として、医薬品医療機器等法の適用を受ける「再生医療製品事業」と、医薬品医療機器等法の適用を受けない「研究開発支援事業」を展開しています。また、これまで再生医療製品事業により培ってきたノウハウを活用し、再生医療等の提供機関及び細胞培養加工製造事業者等に対する「コンサルティング事業」及び「細胞培養受託事業」、ならびに再生医療等製品に特化した「CRO(臨床開発業務受託)事業」を開始しました。 (2) 再生医療製品事業 再生医療とは、従来の薬物治療とは異なり、われわれの身体に備わっている組織の再生能力を引き出すことにより、失われた組織や臓器の機能を細胞を使って回復させることに主眼をおいた医療です。当社は、ティッシュ・エンジニアリングを利用した再生医療等製品を開発し、当該製品を医療機関向けに医療目的で製造販売することを主たる事業目的としています。開発パイプライン ①自家培養表皮ジェイス 1975(昭和50)年、米国マサチューセッツ工科大学のHoward Green教授(2015年没、米国ハーバード大学医学部 名誉教授)らは、ヒトの正常な表皮細胞の培養方法を確立し、皮膚(表皮)に類似した細胞シートを開発しました。1984(昭和59)年には、重症熱傷を負った米国の2人の小児に対して、わずかに焼け残った自身の皮膚から培養表皮シートを作製・移植した報告が、大きな注目を集めました。 自家培養表皮ジェイスは、この技術を使用しており、当社は、開発者であるHoward Green教授から技術指導を受け、培養表皮シートの開発を進めてきました。本品は、重症熱傷患者の受傷していない皮膚組織を少量取り、約3週間の培養期間を経て、患者本人に移植する自家培養表皮シートです。本品の作製・移植フローは次のようになります。自家培養表皮ジェイスの作製・移植 本品は、平成19年10月に製造販売承認を取得し、我が国で第1号となる再生医療等製品となりました。また、平成21年1月より保険適用を受け、平成28年4月より保険機能区分が①採取・培養キットと②調製・移植キットの2つに細分化されました。 本品の製品概要は以下のとおりです。 販 売 名 :ジェイス一 般 的 名 称:ヒト(自己)表皮由来細胞シート承 認 番 号 :21900FZX00039001形状、構造及び原理:患者自身の皮膚組織を採取し、分離した表皮細胞を培養し、シート状に形成して患者自身に使用する「自家培養表皮」である(下図)。患者の皮膚から作製された自家培養表皮シートを真皮が存在する熱傷創面に適用すると、移植された本人の表皮細胞が生着することによって創面が上皮化し、速やかに創を閉鎖することができる。効能、効果又は性能:自家植皮のための恵皮面積が確保できない重篤な広範囲熱傷で、かつ、受傷面積として深達性Ⅱ度熱傷創及びⅢ度熱傷創の合計面積が体表面積の30%以上の熱傷を適応対象とする。自家培養表皮ジェイス 本品の承認に際しては、「重症熱傷症例を適切に治療できる医療機関において十分な知識・経験のある医師が治療を行うこと」、「有効性及び安全性を確認するための製造販売後臨床試験の実施と並行して再審査期間(7年)中の全症例を対象とした使用成績調査を実施すること」、及び「最終製品を少なくとも30年間保存すること」等の条件が課されています。 当社は、本品の適応拡大として、表皮水疱症及び巨大色素性母斑の治療を目的とした治験を実施しています。医薬品医療機器等法による製造販売承認では、当該製品を使用できる患者(適応対象)が明確に決められており、それ以外の疾患の治療には、当該製品を使用することはできません。そこで、使用できる疾患の範囲を拡大するためには、拡大の対象となる疾患につき、承認取得後に適応対象を拡大するための追加治験を実施し、その有効性を確認したうえで治療の対象となる疾患を追加するための一部変更申請を行うことが医薬品医療機器等法上必要とされています。このように、再生医療等製品につき、治療対象となる疾患の種類を増やすことを「適応拡大」といいます。 本品は、平成23年3月に表皮水疱症の治療を目的とした希少疾病用再生医療等製品に、平成26年11月に巨大色素性母斑の治療を目的とした希少疾病用再生医療等製品に指定されています。当社は、巨大色素性母斑について医師主導治験にて実施されたものを企業主導治験として引き継ぎ、平成28年1月に一部変更承認申請書を提出しました。 ②自家培養軟骨ジャック 膝や肘の関節軟骨は、血管がないために、ケガなどで一度損傷を受けると自然には治りません。また、これらを薬などで治療することは非常に困難です。広島大学大学院整形外科の越智光夫教授(現、広島大学長)は、アテロコラーゲンというゲル状の物質の中で軟骨細胞を3次元培養することで軟骨損傷治療用の移植組織を開発しました。従来、軟骨細胞懸濁液の移植治療が知られていましたが、越智教授が開発された移植組織は軟骨細胞が本来持っている性質を維持しており、細胞が漏出しない点において優位性を持っています。 自家培養軟骨ジャックは、この技術を使用しており、開発者である越智教授から技術指導を受け、培養軟骨組織の開発を進めてきました。本品は、軟骨損傷患者の関節(非荷重部)から少量採取した軟骨細胞をアテロコラーゲンゲルの中で約4週間培養し、患者本人の軟骨欠損部に移植する自家培養軟骨組織です。本品の作製・移植フローは次のようになります。 自家培養軟骨ジャックの作製・移植(膝関節) 本品は、平成24年7月に製造販売承認を取得し、整形外科領域における我が国初の再生医療等製品となりました。また、平成25年4月より保険適用を受け、平成28年4月より保険機能区分が①採取・培養キットと②調製・移植キットの2つに細分化されました。 本品の製品概要は以下のとおりです。 販 売 名 :ジャック一 般 的 名 称:ヒト(自己)軟骨由来組織承 認 番 号 :22400FZX00266001形状、構造及び原理:患者から採取した健常な軟骨組織より分離した軟骨細胞を、アテロコラーゲンゲルに包埋して培養し、患者自身に適用する「自家培養軟骨」である(下図)。軟骨細胞を含むアテロコラーゲンゲルを欠損部に移植することにより、臨床症状を緩和する。効能、効果又は性能:膝関節における外傷性軟骨欠損症又は離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)の臨床症状の緩和。ただし、他に治療法がなく、かつ軟骨欠損面積が4cm2以上の軟骨欠損部位に適用する場合に限る。自家培養軟骨ジャック また、本品の承認に際しては、「膝関節の外傷性軟骨欠損症及び離断性骨軟骨炎の治療に関する十分な知識・経験を有する医師及び施設において治療を行うこと」、「製造販売後の一定期間は、本品の使用症例の全例を対象に使用成績調査を実施し、本品の有効性及び安全性に関するデータを収集すること」等の条件が課されました。 ③自家培養角膜上皮 角膜輪部(角膜(黒目)と結膜(白目)との境界部)には、角膜の源となる細胞(角膜上皮幹細胞)が存在し、角膜輪部が重度の損傷を受けて角膜上皮幹細胞を失うと透明な角膜が維持できず、角膜の瘢痕化(結膜化)が生じ大幅に視力が失われます。このような患者にとって視力を回復することは、QOLの向上につながります。 1997(平成9)年、角膜輪部に損傷を受けた患者に対して、患者本人の受傷していない角膜輪部から採取した少量の組織から角膜上皮幹細胞を取り出して培養し培養細胞シートとして移植して治療する方法が、イタリアのGraziella Pellegrini博士とMichele De Luca博士らによって世界で初めて報告されました。 当社は、開発者であるGraziella Pellegrini博士とMichele De Luca博士から技術指導を受け、培養角膜上皮細胞シートの開発を進めてきました。当社の自家培養角膜上皮は、受傷患者の受傷していない1mm2程度の角膜輪部の組織を採取し、約6週間の培養期間を経て、患者本人に移植する自家培養角膜上皮シートです(下図)。 当社の自家培養角膜上皮の開発は、株式会社ニデックの委託開発として実施しており、本開発の結果生じた知的財産権は、当社とニデックとの共有となりますが、製造販売承認後の販売権は、ニデックに帰属します。また、平成23年1月に株式会社セルシードと共同研究開発契約を締結し、同社の保有する細胞シート工学の技術・ノウハウを用いた温度応答性培養器材を使用することとし、製品仕様の一部を変更し、開発を進めています。自家培養角膜上皮 当社は、平成26年10月に自家培養角膜上皮の治験計画届書を独立行政法人医薬品医療機器総合機構に提出しました。また、当社自家培養角膜上皮は、平成27年3月に角膜上皮幹細胞疲弊症の治療を目的とした希少疾病用再生医療等製品に指定されました。 ④最近の動向 再生医療製品事業に関しては、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)が平成26年11月より施行されました。これにより、再生医療等製品の上市を早期に実現する早期承認(条件及び期限付承認)制度が導入されました。 平成27年9月には、新たにヒト(同種)骨髄由来間葉系幹細胞「テムセルHS注」とヒト(自己)骨格筋由来細胞シート「ハートシート」の2つの再生医療等製品が承認されました。ハートシートは、初の条件及び期限付承認です。更に、同年11月、テムセルHS注とハートシートが保険収載され、自家細胞を使うハートシートには、組織採取時のAキット(採取・継代培養キット)と移植時のBキット(回収・調製キット)の2段階での保険償還価格が決定されました。これを受け、当社再生医療等製品である自家培養表皮ジェイス、自家培養軟骨ジャックについても平成28年4月より保険機能区分が2つに細分化され、対応する保険償還価格が見直されました。 (3) 研究開発支援事業 種々の医薬品や化粧品の開発に際して、開発製品の安全性や有効性を確認する等の目的により、動物を用いた試験が実施されています。当社では、再生医療等製品の開発を通じて蓄積したティッシュ・エンジニアリングに係る技術、ノウハウを試薬としての研究用培養組織の開発に水平展開し、研究用ヒト培養組織ラボサイトシリーズ表皮モデルとしてラボサイト エピ・モデルを平成17年4月から販売しています。その後、当社は製品ラインアップの拡充を進め、現在、エピ・モデル、角膜モデル、エピ・キットを揃えています。 ①研究用ヒト培養組織ラボサイトシリーズ ヒト3次元培養表皮「ラボサイト エピ・モデル」は、ヒトの正常な表皮細胞を培養して重層化した3次元モデルであり、基底層、有棘層、顆粒層、角質層から構成され、ヒト表皮に類似した構造をしています。エピ・モデルは、ヒトの皮膚に適用される外用医薬品や化粧品の開発、皮膚科医の基礎研究、化成品原材料の安全性研究等に有用な材料であると同時に、動物を使った皮膚試験を代替し、以下に示す領域での使用が想定されます。- 皮膚刺激性試験:化学物質に皮膚刺激性があるかどうかを調べる試験、医薬品・化粧品等の安全性試験※「ラボサイト エピ・モデル24」を用いた皮膚刺激性試験に関する試験法は、平成25年7月に経済協力開発機構(OECD)の試験法ガイドラインTG439へ収載されています。- 皮膚腐食性試験:化学物質の安全性を調べる試験、化学会社の取扱物質の安全性検討- 皮膚透過性試験:化学物質等の皮膚透過性を調べる試験、医薬品・化粧品の皮膚への浸透検討- 皮膚代謝性試験:皮膚細胞の酵素等による物質の代謝を調べる試験、皮膚組織の基礎研究 メラノサイト含有ヒト3次元培養表皮「ラボサイト メラノ・モデル」は、ヒト正常表皮細胞にメラノサイトを加えた3次元モデルであり、薬剤・UVなどの各種刺激により、培養中のメラノサイト増殖やメラニン産生誘導を確認できます。平成18年11月から販売していましたが、平成28年3月をもって販売を終了しています。 ヒト3次元培養角膜上皮「ラボサイト 角膜モデル」は、ヒト正常角膜上皮細胞を重層培養したヒト3次元培養モデルであり、平成22年7月から販売しています。ラボサイト 角膜モデルでは、ムチンなどのタンパク質の発現や細胞間接着構造などを確認しており、化合物の眼刺激性試験に加えて、角膜上皮の分子生物学的解析に利用できます。 ヒト表皮モデル作製キット「ラボサイト エピ・キット」は、顧客自身でヒト表皮モデルを作製できる3次元表皮モデルの作製キットであり、平成25年4月から販売しています。ヒト表皮モデルへの評価物質の添加やモデルの解析などを自由に設定できます。また、予め細胞に処理を行ったヒト表皮モデルの作製・解析など応用研究に使用できます。 ②最近の動向 当社は、OECDが推進する角膜に関する試験法のガイドライン化を目指して、ラボサイト 角膜モデルを用いた眼刺激性試験法に関する開発を進めています。 (4) その他の取り組み iPS細胞(人工多能性幹細胞)などの細胞を用いた再生医療を安全で迅速に提供するために「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」(再生医療等安全性確保法)が平成26年11月より施行されました。当社は、これまで再生医療製品事業により培ってきたノウハウを活用し、再生医療等安全性確保法に基づいて再生医療等を提供する医療機関や細胞培養加工製造事業者等に対する法規制対応コンサルティング事業を開始しました。また、平成27年10月には「特定細胞加工物製造許可」を取得し、医療機関等から細胞培養加工を受託する細胞培養受託事業を開始しました。 当社は、2つの再生医療等製品(自家培養表皮ジェイス、自家培養軟骨ジャック)を通して培ってきた臨床開発のノウハウを活用し、平成28年3月に再生医療等製品に特化したCRO(臨床開発業務受託)事業を開始することを決定し、平成28年4月以降、再生医療等製品の承認を目的として治験を実施する全ての企業、医師主導治験を実施する医療機関を対象に、治験開始前のコンサルティングから承認申請まで臨床開発を一貫してサポートするCROサービスの提供を開始しました。