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オーナー収益(Owner Earnings)の正しい計算
— バフェット流の本質的価値

バフェットが1986年の株主への手紙で定義した「オーナー収益」。会計上の純利益とどう違い、なぜこれが本質的価値の出発点なのか。

なぜ「純利益」ではダメか

会計上の純利益(Net Income)は、企業の本当の儲けを正確に表しません。理由は3つ:

  1. 減価償却費は現金支出を伴わない:費用計上されているが、現金は出ていかない
  2. 維持に必要な設備投資(CapEx)は引かれていない:純利益には反映されない
  3. 運転資本の増減は計上されない:売上拡大に伴う在庫・売掛金の増加は現金を消費

そこでバフェットは1986年の株主への手紙で、新しい指標を定義しました。

オーナー収益の計算式

オーナー収益とは、(a) 純利益 + (b) 減価償却・償却・繰延税金など現金支出を伴わない費用 - (c) 売上を維持するために必要な平均的な年間設備投資額(運転資本の純増を含む)である。 — バフェット 1986年 株主への手紙

数式で書くと:

Owner Earnings = 純利益 + 減価償却 + 償却 + 繰延税金 − 維持CapEx − 運転資本増加

各項目の意味

項目意味
+ 純利益出発点
+ 減価償却費現金が出ていかない費用を戻す
+ 償却費のれん・無形固定資産の償却を戻す
+ 繰延税金現金支出を伴わない税金影響
− 維持CapEx既存事業を維持するための設備投資
− 運転資本増加売上拡大に伴う在庫・売掛増を差し引く

最重要の難所 — 「維持CapEx」の見極め

計算式で最も難しいのが 維持CapEx です。減価償却費 ≠ 維持CapEx。注意点:

実務では、有報の「設備の状況」セクションを過去5-10年読んで、「既存事業の維持・更新」と「新規・拡張」を分離します。これは定量+定性の作業。

計算例 — 仮想企業 A 社

項目金額
純利益3,000億円
+ 減価償却費+800億円
+ のれん償却+50億円
+ 繰延税金+20億円
− 維持CapEx−600億円
− 運転資本増加−100億円
= オーナー収益3,170億円

純利益 3,000億円に対して、オーナー収益 3,170億円。会計上の純利益が、株主に帰属する本当のキャッシュとほぼ一致しているケース。

逆に維持CapExが減価償却を大きく上回る業界(鉄鋼・化学など)では、純利益 1,000億円でもオーナー収益 200億円、ということもあります。

本質的価値への応用 — DCF

バフェット流の本質的価値(Intrinsic Value):

本質的価値 = Σ(将来のオーナー収益 ÷ (1 + 割引率)^t)

割引率はリスクフリーレート(10年国債利回り)を用います。日本では現在約1.5%。

例:A社のオーナー収益が今後10年間 3,170億円継続、その後永久に維持と仮定すると:

もし時価総額が24兆円以下で、かつ安全域 25-33%を確保した16-18兆円程度で買えるなら、グレアム流のバリュー投資基準を満たします。

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まとめ — 純利益の罠を超える

多くの投資家は PER(株価÷純利益)でバリュエーションを判断しますが、純利益は会計の歪みを含んでいます。バフェットがオーナー収益を提唱したのは、この歪みを排除して「株主が本当に手にする現金」を見るため。

個別銘柄を分析するときは、有報のキャッシュフロー計算書を読み、減価償却・CapEx・運転資本を独自に拾って、オーナー収益を計算してみましょう。純利益とのギャップが大きい企業は、見え方より実態が良い/悪い — それが投資の起点になります。

※ 本記事は投資教育・情報提供を目的としており、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。