研究開発費(時系列)
| 年度 | R&D費用(億円) | 設備投資(億円) |
|---|---|---|
| 2025-03 | - | 496 |
| 2024-03 | - | 562 |
| 2023-03 | - | 326 |
| 2022-03 | - | 261 |
| 2021-03 | - | 236 |
研究開発活動(本文)
FY2025|3,302 文字
6 【研究開発活動】当社グループは、腸内菌叢(腸内フローラ)を構成する微生物のヒトへの役割を中心とした生命科学の追究により、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献するという企業理念の達成を目指しています。その中にあって当社研究開発部門は、長期的展望に立った基礎研究を行うとともに、それら基礎研究の成果を活かした飲料・食品、化粧品、メディカルバイオーム(Medical(医療)とMicrobiome(細菌叢)を合わせた造語)製品等の研究開発に取り組んでいます。あわせて、事業戦略上求められる研究開発課題の解決や社会の要請に応じた商品の安全性確保と環境対策に関する研究にも力を注いでいます。当連結会計年度の研究開発費の総額は9,398百万円で、セグメント情報にかかわる研究開発活動の概要は、次のとおりです。 (1) 基礎研究開発分野基礎研究開発分野においては、腸内フローラとヒトの健康との関わりを明らかにするために、分子生物学・微生物学・免疫学・生理学・栄養学等の多面的な研究を行っています。プロバイオティクスとしての乳酸菌・ビフィズス菌がヒトの健康維持・増進に果たす役割の解明に重点をおくと同時に、新規の微生物や天然物の探索を行い、飲料・食品、化粧品、メディカルバイオーム製品等への利用を目指した機能性素材の開発に積極的に取り組んでいます。当連結会計年度の研究成果は次のとおりです。① 「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」の表層の構成成分である細胞壁多糖LCPS-1の本菌の増殖や生存における役割について検証しました。「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」または遺伝子組換え技術により「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」からLCPS-1を欠失させた菌(LCPS-1欠失株)を牛乳(脱脂乳)または豆乳をベースとする培地で培養した結果、LCPS-1欠失株では、培養16時間以降に増殖が抑えられましたが、「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」の増殖は維持されました。また、LCPS-1欠失株では、「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」と比べて人工胃液や人工胆汁に対する生存率が低くなることを確認しました。プロバイオティクスが有効性を発揮するには生きたまま腸に到達することが重要と考えており、本研究により、「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」が生きて腸に到達するためには、LCPS-1の存在が重要であることが示されました。本研究成果は、学術雑誌「International Journal of Food Microbiology」に掲載されました。② 「L.プランタルム YIT 0132(乳酸菌)」がスギ花粉症の症状を緩和するメカニズムについて検証しました。温州みかん果汁を「L.プランタルム YIT 0132(乳酸菌)」で発酵させた発酵果汁飲料を摂取したヒトの末梢血を用いて遺伝子解析を行った結果、本飲料の摂取による花粉症症状の緩和に関係する免疫調節遺伝子を特定することができました。本研究により、乳酸菌摂取によるアレルギー症状の緩和に関する新たな知見を得ることができました。本研究成果は、学術雑誌「Allergy」に掲載されました。③ 沖縄モズク由来の「ヤクルトフコイダン」および「ヤクルトフコイダン」に銀を付与したフコイダン銀塩の抗菌および抗ウイルス効果について調べました。その結果、「ヤクルトフコイダン」は新型コロナウイルスの感染に重要なスパイクタンパク質と細胞の接着を阻害することで、新型コロナウイルスの細胞への感染を阻害することを確認しました。また、フコイダン銀塩は、「ヤクルトフコイダン」よりも低濃度で同様の効果を示したほか、インフルエンザウイルスの感染も阻害することが示唆されました。さらに、フコイダン銀塩は、細菌(大腸菌、表皮ブドウ球菌)および真菌(黒カビ)の増殖抑制効果(抗菌効果)も確認しています。本研究により、「ヤクルトフコイダン」およびフコイダン銀塩を感染症予防に活用できる可能性が示されました。本研究成果は、学術雑誌「Marine Drugs」に掲載されました。 今後も、最先端のバイオテクノロジーに基づく腸内フローラ研究を推進し、プロバイオティクスの健康維持・増進機能の検証と解明に取り組んでいきます。さらに、当社独自の新規機能性素材の開発および応用化研究に力を注いでいきます。当分野の研究開発費は1,487百万円です。 (2) 飲料および食品製造販売事業分野飲料および食品研究開発分野においては、ヒトの健康に積極的に寄与する商品開発を目指しています。特に、研究開発の対象としては、生活環境の変化や加齢によってバランスのくずれた免疫調節機能を正常化する生体防御面と、世代を超えて拡大している生活習慣病の予防に配慮した生理・代謝機能面に加え、近年の研究により明らかになってきた脳と腸が自律神経を介してお互いに密接に影響を及ぼしあう「脳腸相関」に着目しています。具体的には、プロバイオティクスのパイオニアとして「乳酸菌シロタ株」や「ビフィズス菌 BY株」「B.ビフィダムY株」等を利用し、作用領域を拡大した乳酸菌飲料等、自然界に存在する多くの機能性素材を利用した食品の研究開発に力を注いでいます。また、より一層お客さまのニーズに応えるため、プロバイオティクスを使用した乳製品、清涼飲料等のラインアップの充実を図っています。当連結会計年度の成果は次のとおりです。① 乳製品機能性表示食品である乳製品乳酸菌飲料「Yakult(ヤクルト)1000」のシリーズ品として、糖質・カロリーを低減(32%オフ)し、より甘さを控えた乳製品乳酸菌飲料「Yakult(ヤクルト)1000 糖質オフ」を本年1月に全国で発売するとともに、3月には機能性表示食品として導入しました。② 清涼飲料等ア. 豆乳を乳酸菌とビフィズス菌で発酵させて作った植物素材利用食品「豆乳の力」3品を昨年10月に導入しました。イ. ストレート果汁100%りんごジュース「完熟王林」のシリーズ品として、赤りんごの代表品種であり、コクのある甘味と爽やかな酸味のバランスの優れた青森県産の完熟したふじのみを厳選して使用した「完熟ふじりんご」を昨年12月上旬から数量限定で導入しました。③ その他海外事業支援ア. ベトナムヤクルト株式会社が昨年4月に導入した「ヤクルトライト」の技術支援を行いました。イ. 中国ヤクルト株式会社および広州ヤクルト株式会社が昨年5月に導入した「ヤクルトピーチ風味(鉄プラス)」の技術支援を行いました。ウ. インドヤクルト・ダノン株式会社が昨年7月に導入した「ヤクルトライトマンゴー風味」の技術支援を行いました。 当分野の研究開発費は7,175百万円です。 (3) その他事業分野<化粧品製造販売事業分野>その他事業分野のうち化粧品研究開発分野においては、多様化するお客さまのニーズに応えることを目指し、「美」と「健康」の追究と当社独自の乳酸菌発酵技術を活かした「高機能・高品質で安全性の高い化粧品」の開発を志向しています。具体的には、乳酸菌生まれの保湿成分を配合したスキンケアシリーズ「ラクトデュウ」から、従来品にオリジナル保湿成分ビフィズス菌はっ酵エキス(大豆)等を新たに配合し、オリジナル保湿成分HBヒアルロン酸(持続型)を増量したリニューアル品3品を、昨年4月および10月に導入しました。当分野の研究開発費は735百万円です。 <医薬品製造販売事業分野>その他事業分野のうち医薬品研究開発分野においては、4SC社(ドイツ)から導入したHDAC阻害剤「レスミノスタット」について、皮膚T細胞リンパ腫を対象とした国際共同第Ⅱ相臨床試験を実施中です。なお、開発中の品目を除き、新たな抗がん剤の開発には着手していないため、当分野の研究開発費は計上していません。今後は当社の研究基盤である乳酸菌研究をベースに、マイクロバイオーム領域で、医薬部外品や一般用医薬品、サプリメント等への事業転換に取り組みます。
FY2024|3,281 文字
6 【研究開発活動】当社グループは、腸内菌叢(腸内フローラ)を構成する微生物のヒトへの役割を中心とした生命科学の追究により、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献するという企業理念の達成を目指しています。その中にあって当社研究開発部門は、長期的展望に立った基礎研究を行うとともに、それら基礎研究の成果を活かした飲料・食品、化粧品および医薬品などの研究開発に取り組んでいます。あわせて、事業戦略上求められる研究開発課題の解決や社会の要請に応じた商品の安全性確保と環境対策に関する研究にも力を注いでいます。当連結会計年度の研究開発費の総額は9,095百万円で、セグメント情報にかかわる研究開発活動の概要は、次のとおりです。 (1) 基礎研究開発分野基礎研究開発分野においては、腸内フローラとヒトの健康との関わりを明らかにするために、分子生物学・微生物学・免疫学・生理学・栄養学等の多面的な研究を行っています。プロバイオティクスとしての乳酸菌・ビフィズス菌がヒトの健康維持・増進に果たす役割の解明に重点をおくと同時に、新規の微生物や天然物の探索を行い、飲料・食品、化粧品および医薬品等への利用を目指した機能性素材の開発に積極的に取り組んでいます。当連結会計年度の研究成果は次のとおりです。① 睡眠に関する不満を抱える健康な内勤会社員を対象としたクロスオーバー・プラセボ対照試験により、「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含むはっ酵乳の摂取が、日中のパフォーマンスに及ぼす影響を調べました。その結果、「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含むはっ酵乳を摂取している期間では、乳酸菌を含まない未発酵乳(プラセボ)を摂取している期間に比べて、主観的評価では午後の時間帯の集中力が高く、同時間帯に測定された脳波θ波(眠気があるときや深い瞑想状態にあるときに出現する脳波)の強度が低いことを確認しました。本研究により、「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含むはっ酵乳は、日中のパフォーマンスを向上させる可能性があることが示されました。本研究成果は、学術雑誌「Nutrients」に掲載されました。② 国立成育医療研究センターとの共同研究で、牛乳アレルギーの小児を対象としたプラセボ対照比較試験により、「L.プランタルム YIT 0132(乳酸菌)」を含む発酵果汁飲料の摂取が、牛乳経口免疫療法の効果・安全性に及ぼす影響を調べました。その結果、「L.プランタルム YIT 0132(乳酸菌)」を含む発酵果汁飲料を摂取した群と乳酸菌を含まない果汁飲料(プラセボ)を摂取した群で、牛乳経口免疫療法の治療効果に違いはみられませんでしたが、発酵果汁飲料群ではプラセボ群に比べて、血液中の免疫グロブリンIgG4が高く、炎症やアレルギーに関わるインターロイキン(IL)-5とIL-9が有意に低いことを確認しました。また、発酵果汁飲料群では、腸内細菌叢のα-多様性の増加が観察されました。本研究により、「L.プランタルム YIT 0132(乳酸菌)」を含む発酵果汁飲料は、牛乳経口免疫療法に対する、安全で効果的な補助食品になりうることが考えられます。本研究成果は、学術雑誌「Beneficial Microbes」に掲載されました。 今後も、最先端のバイオテクノロジーに基づく腸内フローラ研究を推進し、プロバイオティクスの健康維持・増進機能の検証と解明に取り組んでいきます。さらに、生活習慣病予防をターゲットとした次世代プロバイオティクスや新規機能性素材の研究開発に重点的に力を注いでいきます。当分野の研究開発費は1,730百万円です。 (2) 飲料および食品製造販売事業分野飲料および食品研究開発分野においては、ヒトの健康に積極的に寄与する商品開発を目指しています。特に、研究開発の対象としては、生活環境の変化や加齢によってバランスのくずれた免疫調節機能を正常化する生体防御面と、世代を超えて拡大している生活習慣病の予防に配慮した生理・代謝機能面に加え、近年の研究により明らかになってきた脳と腸が自律神経を介してお互いに密接に影響を及ぼしあう「脳腸相関」に着目しています。具体的には、プロバイオティクスのパイオニアとして「乳酸菌 シロタ株」や「ビフィズス菌 BY株」「B.ビフィダム Y株」等を利用し、作用領域を拡大した乳酸菌飲料等、自然界に存在する多くの機能性素材を利用した食品の研究開発に力を注いでいます。また、より一層お客さまのニーズに応えるため、プロバイオティクスを使用した乳製品、清涼飲料等のラインアップの充実を図っています。当連結会計年度の成果は次のとおりです。① 乳製品生きたまま腸内に到達する「乳酸菌 シロタ株」と腸内の良い菌を増やす「ガラクトオリゴ糖」を一緒に摂ることができる乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト400W」について、よりコクのある味わいが感じられる風味に変更するとともに、商品の特長がわかりやすいパッケージデザインに変更し、昨年9月に導入しました。② 清涼飲料等ア. 野菜系飲料「きになる野菜100」シリーズについて、使用する野菜を一部変更するとともに、各商品の特長がわかりやすいパッケージデザインに変更し、昨年4月に導入しました。イ. 袋入り即席めん「麵許皆伝」シリーズについて、めんにこんにゃくの主成分であるマンナン粉を練りこむことで独特のもちもちとした食感に仕上げ、ご当地風の風味を再現した粉末スープ、ソースに変更するとともに、ご当地風のラーメン、焼そばであることがわかりやすいパッケージデザインに変更し、昨年4月に導入しました。ウ. 「乳酸菌 シロタ株」と「ガラクトオリゴ糖」を配合したアイスクリーム「アイス de ヤクルト」のシリーズ品として、「ヤクルト」の風味が感じられるジェラートと濃厚なミルクアイスの2層を渦巻き状に織り交ぜた「アイス de ヤクルト ジェラート&ミルク」を、ECサイト「Yakult Wellness Online」で、昨年10月に導入しました。エ. 食物繊維やビタミン類等の豊富な栄養素を含んだケールをおいしく手軽に摂取できる野菜・果実混合飲料「おいしいケール青汁」を昨年12月に導入しました。当分野の研究開発費は6,311百万円です。 (3) その他事業分野<化粧品製造販売事業分野>その他事業分野のうち化粧品研究開発分野においては、多様化するお客さまのニーズに応えることを目指し、「美」と「健康」の追究と当社独自の乳酸菌発酵技術を活かした「高機能・高品質で安全性の高い化粧品」の開発を志向しています。基礎化粧品については、乳酸菌発酵技術と肌構造研究の知見を基に開発した高機能基礎化粧品「パラビオ」シリーズから、リニューアル品を中心にスキンケア商品計7品を昨年11月および本年1月に導入しました。また、乳酸菌由来のオリジナル保湿成分「高浸透乳酸菌エキス」を配合したスキンケアブランド「ラクティフル」を立ちあげ、「ラクティフル モイストアップ ローション」「ラクティフル モイストアップ ミルク」の2品を、通信販売専用商品として昨年11月に導入しました。トイレタリー商品については、高保湿ボディケアシリーズ「コクルム」から、汗のベタつきを抑え、サラっとしたお肌に仕上げる「コクルム ボディパウダー」を昨年7月に導入しました。当分野の研究開発費は711百万円です。 <医薬品製造販売事業分野>その他事業分野のうち医薬品研究開発分野においては、4SC社(ドイツ)から導入したHDAC阻害剤「レスミノスタット」について、皮膚T細胞リンパ腫を対象とした国際共同第Ⅱ相臨床試験を実施中です。なお、今後は開発中の品目を除き、新たな抗がん剤の開発には着手せず、当社の研究基盤である乳酸菌研究をベースに、マイクロバイオーム領域で、医薬部外品や一般用医薬品、サプリメント等への事業転換に取り組みます。当分野の研究開発費は342百万円です。
FY2023|3,795 文字
6 【研究開発活動】当社グループは、腸内菌叢(腸内フローラ)を構成する微生物のヒトへの役割を中心とした生命科学の追究により、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献するという企業理念の達成を目指しています。その中にあって当社研究開発部門は、長期的展望に立った基礎研究を行うとともに、それら基礎研究の成果を活かした飲料・食品、医薬品および化粧品などの研究開発に取り組んでいます。あわせて、事業戦略上求められる研究開発課題の解決や社会の要請に応じた商品の安全性確保と環境対策に関する研究にも力を注いでいます。当連結会計年度の研究開発費の総額は9,381百万円で、セグメント情報にかかわる研究開発活動の概要は、次のとおりです。 (1) 基礎研究開発分野基礎研究開発分野においては、腸内フローラとヒトの健康との関わりを明らかにするために、分子生物学・微生物学・免疫学・生理学・栄養学等の多面的な研究を行っています。プロバイオティクスとしての乳酸菌・ビフィズス菌がヒトの健康維持・増進に果たす役割の解明に重点をおくと同時に、新規の微生物や天然物の探索を行い、飲料・食品、医薬品および化粧品等への利用を目指した機能性素材の開発に積極的に取り組んでいます。当連結会計年度の研究成果は次のとおりです。① オフィスワーカーを対象とした飲用試験により、「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含むはっ酵乳の摂取が、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞等の免疫細胞に指示を与える役割を担う貪食細胞 (単球/マクロファージ、樹状細胞) に及ぼす影響を調べました。その結果、「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含むはっ酵乳を摂取した群では、乳酸菌を含まない未はっ酵乳を摂取した群と比べて、末梢血単核細胞中の単球、プラズマサイトイド樹状細胞および従来型樹状細胞において、貪食細胞の活性化指標であるCD40の発現強度が有意に増加したことを確認しました。本研究により、CD40の発現上昇は自然免疫と獲得免疫のいずれにも影響をもたらすことが知られていることから、「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」には貪食細胞の活性化を起点として免疫系に働きかける可能性が示されました。本研究成果は、学術雑誌「Bioscience of Microbiota, Food and Health」に掲載されました。② 大阪国際がんセンターとの共同研究で、食道がん患者を対象に、術前化学療法の有害事象の発症にシンバイオティクス(BL整腸薬およびオリゴメイトS-HP)の摂取が与える影響を多施設共同無作為化比較試験により検証しました。その結果、予防的に抗生剤を投与した患者(抗生剤投与群)に比べて、経腸栄養剤と一緒にシンバイオティクスを投与した患者(シンバイオティクス群)では、主要評価項目である発熱性好中球減少症の発症率が減少傾向を示しました。また、副次評価項目である重度の好中球減少症および重度の下痢の発症はシンバイオティクス群で有意に減少しました。その他、シンバイオティクス群では抗生剤投与群と比較して相対用量強度(=計画投与量に対する実投与量の比)が有意に高く、化学療法後の腸内のビフィズス菌、特定の乳酸桿菌(ラクチカゼイバチルス属)の菌数や酢酸等の有機酸濃度が有意に高いことが確認されました。本研究により、術前化学療法中の経腸栄養剤とシンバイオティクスの併用は、腸内細菌叢と腸内環境を改善し、化学療法中の有害事象を抑制することで化学療法に対する忍容性を良好にする可能性が示されました。本研究成果は、学術雑誌「Clinical Nutrition」に掲載されました。 今後も、最先端のバイオテクノロジーに基づく腸内フローラ研究を推進し、プロバイオティクスの健康維持・増進機能の検証と解明に取り組んでいきます。さらに、生活習慣病予防をターゲットとした次世代プロバイオティクスや新規機能性素材の研究開発に重点的に力を注いでいきます。当分野の研究開発費は1,554百万円です。 (2) 飲料および食品製造販売事業分野飲料および食品研究開発分野においては、ヒトの健康に積極的に寄与する商品開発を目指しています。特に、研究開発の対象としては、生活環境の変化や加齢によってバランスのくずれた免疫調節機能を正常化する生体防御面と、世代を超えて拡大している生活習慣病の予防に配慮した生理・代謝機能面に加え、近年の研究により明らかになってきた脳と腸が自律神経を介してお互いに密接に影響を及ぼしあう「脳腸相関」に着目しています。具体的には、プロバイオティクスのパイオニアとして「乳酸菌 シロタ株」や「ビフィズス菌 BY株」「B.ビフィダム Y株」等を利用し、作用領域を拡大した乳酸菌飲料等、自然界に存在する多くの機能性素材を利用した食品の研究開発に力を注いでいます。また、より一層お客さまのニーズに応えるため、プロバイオティクスを使用した乳製品、清涼飲料等のラインアップの充実を図っています。当連結会計年度の成果は次のとおりです。① 乳製品ハードタイプヨーグルト「ソフール」について、期間限定アイテムとして、「アップル」を昨年4月に、「白桃」を7月に、「ぶどう」を10月に発売しました。また、ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社とのコラボレーション商品として、同社の独自素材であるシチリア産レモン濃縮果汁を使用し、「植物性素材と乳酸菌のチカラで毎日の健康とおいしさを提供する」をテーマに開発した期間限定アイテム「レモン」を本年1月に導入しました。② 清涼飲料等ア. スムージーテイストの青汁・果汁入り飲料「フルーツ青汁」について、スッキリとした風味とするとともに、親しみやすく柔らかな色合いのパッケージデザインに変更し、昨年10月に導入しました。イ. ストレート果汁100%りんごジュース「完熟王林」について、紙容器から缶容器に変更し、パッケージデザインを変更するとともに、賞味期限を150日から12か月に延長し、昨年12月に数量限定で導入しました。ウ. 乳酸菌はっ酵果汁飲料「ヤクルトのおいしいはっ酵果実」について、花粉、ホコリ、ハウスダストなどによる鼻の不快感を軽減する機能があることが報告されている「乳酸菌LP0132(L.プランタルム YIT 0132)」を関与成分とする機能性表示食品として本年2月に導入しました。エ. 栄養ドリンク「Tough-Man Refresh(タフマン リフレッシュ)」について、日常生活における軽い運動後の一時的な疲労感を軽減する機能があることが報告されている「クエン酸」を1,000mg配合した機能性表示食品として本年3月に導入しました。③ その他海外事業支援ア. インドネシアヤクルト株式会社が昨年10月に導入した「ヤクルトライト」の技術支援を行いました。イ. 中国ヤクルト株式会社および広州ヤクルト株式会社が本年2月に導入した「ヤクルト500億ライト」の技術支援を行いました。ウ. シンガポールヤクルト株式会社が本年3月に導入した「ヤクルトゴールド」の技術支援を行いました。当分野の研究開発費は6,108百万円です。 (3) 医薬品製造販売事業分野医薬品研究開発分野においては、抗がん剤を中心とした薬剤の研究開発を進めています。 4SC社(ドイツ)から導入したHDAC阻害剤「レスミノスタット」については、皮膚T細胞リンパ腫を対象とした国際共同第Ⅱ相臨床試験を実施中です。セキュラ・バイオ社(米国)から日本における開発および商業化に関する独占的ライセンスを受けているPI3K阻害剤「デュベリシブ」については、再発または難治性の慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫に係る製造販売承認申請を行いましたが、規制当局との協議を踏まえ、昨年9月に本申請を取り下げました。これを踏まえ、濾胞性リンパ腫を対象とした国内第Ⅱ相臨床試験および成人T細胞白血病・リンパ腫を対象とした国内第Ⅱ相臨床試験については中止しました。当分野の研究開発費は980百万円です。 (4) その他事業分野<化粧品製造販売事業分野>その他事業分野のうち化粧品研究開発分野においては、多様化するお客さまのニーズに応えることを目指し、「美」と「健康」の追究と当社独自の乳酸菌はっ酵技術を活かした「高機能・高品質で安全性の高い化粧品」の開発を志向しています。基礎化粧品については、乳酸菌生まれの保湿成分を配合したスキンケアシリーズ「ラクトデュウ」から、昨年11月に「ラクトデュウ S.E.ローション2」を新発売、「ラクトデュウ S.E.ミルク」をリニューアル発売し、さらに本年4月に「ラクトデュウ S.E.ローション1」をリニューアル発売しました。また、当社独自の乳酸菌はっ酵技術から生まれたヒアルロン酸を配合した薬用保湿美容液「ベルフェ モイスチュア エッセンス」を1月にリニューアル発売しました。仕上化粧品については、「お手入れされたお肌をより美しく魅せ、大人の女性を演出する」をコンセプトとした仕上化粧品シリーズ「グランティア EX」から、「リップトリートメント(ティント)」を本年3月に発売しました。当分野の研究開発費は739百万円です。
FY2022|4,446 文字
5 【研究開発活動】当社グループは、腸内菌叢(腸内フローラ)を構成する微生物のヒトへの役割を中心とした生命科学の追究により、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献するという企業理念の達成を目指しています。その中にあって当社研究開発部門は、長期的展望に立った基礎研究を行うとともに、それら基礎研究の成果を活かした飲料・食品、医薬品および化粧品などの研究開発に取り組んでいます。あわせて、事業戦略上求められる研究開発課題の解決や社会の要請に応じた商品の安全性確保と環境対策に関する研究にも力を注いでいます。当連結会計年度の研究開発費の総額は8,655百万円で、セグメント情報にかかわる研究開発活動の概要は、次のとおりです。 (1) 基礎研究開発分野基礎研究開発分野においては、腸内フローラとヒトの健康との関わりを明らかにするために、分子生物学・微生物学・免疫学・生理学・栄養学等の多面的な研究を行っています。プロバイオティクスとしての乳酸菌・ビフィズス菌がヒトの健康維持・増進に果たす役割の解明に重点をおくと同時に、新規の微生物や天然物の探索を行い、飲料・食品、医薬品および化粧品等への利用を目指した機能性素材の開発に積極的に取り組んでいます。当連結会計年度の研究成果は次のとおりです。① 国立精神・神経医療研究センターとの共同研究で、うつ症状を有する患者(大うつ病性障害または双極性障害)を対象に、患者の精神症状や腸内細菌叢等に「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳製品の摂取が与える影響を前後比較試験で検証しました。その結果、乳製品の摂取により、ハミルトンうつ病評価尺度によるうつ症状スコアとピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)による睡眠の質スコアが有意に改善されました。また、乳製品の摂取に伴う抑うつ症状の軽減は腸内細菌叢と関連しており、ビフィドバクテリウムとアトポビウムクラスターが高い数で維持されている患者で顕著であることを確認しました。本研究により、「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」の摂取によるうつ症状の緩和作用は、ビフィドバクテリウムやアトポビウムクラスターとの相互作用により高まる可能性が示され、今後、これら腸内常在菌との相互作用を活用した新たな治療法に繋がることが期待されます。本研究成果は、学術雑誌「Microorganisms」に掲載されました。② 東京都健康長寿医療センター研究所との共同研究で、群馬県吾妻郡中之条町に在住の高齢者を対象に、腸内細菌叢の経時変化と、「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳製品の習慣的摂取が腸内細菌叢の変化に与える影響を疫学的に調査しました。具体的には、高齢者の糞便を2年連続で採取し、次世代シーケンサーにより腸内細菌叢の構成を分類学上の「科」レベルで測定しました。その結果、高齢者のほとんどは腸内細菌叢が安定しているが、約10%の高齢者では1年の間に大きな腸内細菌叢変化が生じていること、また、「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳製品を習慣的に週3日以上摂取している高齢者では、摂取頻度が週3日未満の高齢者に比べて、1年間の腸内細菌叢変化が小さいことが明らかになりました。本研究により、「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳製品の習慣的な摂取が、高齢者の腸内細菌叢の安定化に貢献する可能性が示されました。「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳製品が腸内細菌叢を安定化するメカニズムと腸内細菌叢の安定性が高齢者の健康に及ぼす影響を明らかにすることは、健康長寿社会の実現への糸口になると考えられます。本研究成果は、学術雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。③ 名古屋大学との共同研究で、食道がん患者を対象に、術前化学療法によるバクテリアルトランスロケーション(BT)の発生にシンバイオティクスの摂取が与える影響を無作為化比較試験により検証しました。その結果、術前化学療法の7日前から手術の1日前まで毎日、シンバイオティクスとして「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳製品、「B.ブレーベ・ヤクルト株(ビフィズス菌)」を含む乳製品およびガラクトオリゴ糖液糖を摂取した患者では、シンバイオティクスを摂取しなかった患者と比較してBT発生率が有意に低いことが確認されました。さらに、シンバイオティクス摂取患者では、重度の胃腸障害の軽減や腸内環境の改善も確認されました。本研究により、シンバイオティクスの摂取は術前化学療法を受ける食道がん患者に対し、腸内環境の改善を介して、がん治療中の負担を軽減する可能性が示され、今後、医療領域でのさらなる活用が期待されます。本研究成果は、学術雑誌「Clinical Nutrition」に掲載されました。④ 弘前大学との共同研究で、健常成人を対象に、腸管各部位の内容物や粘液、便に含まれる腸内細菌叢を解析しました。具体的には、従来の死菌と生菌を区別しない測定法に加えて、生菌のみが検出可能なPropidium monoazide (PMA)と次世代シークエンシングを組み合わせて、ヒトの大腸各部位における“生きた”菌叢構成の解析を行いました。その結果、従来の測定法では大腸の各部位で細菌叢の構成に差は認められませんでしたが、PMAを用いた生菌の解析では、いくつかの細菌群の生菌構成比が部位により異なることが分かりました。ヒト腸内の生きた細菌が健康にどのような影響を与えるかについては、まだ多くのことが解明されていない中、本研究により、本手法を用いた生きた腸内細菌叢の解析は、腸内細菌叢の生態とヒトの健康や病態との関係を明らかにするうえで有用であると考えられます。本研究成果は、学術雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。 今後も、最先端のバイオテクノロジーに基づく腸内フローラ研究を推進し、プロバイオティクスの健康維持・増進機能の検証と解明に取り組んでいきます。さらに、生活習慣病予防をターゲットとした次世代プロバイオティクスや新規機能性素材の研究開発に重点的に力を注いでいきます。当分野の研究開発費は1,411百万円です。 (2) 飲料および食品製造販売事業分野飲料および食品研究開発分野においては、ヒトの健康に積極的に寄与する商品開発を目指しています。特に、研究開発の対象としては、生活環境の変化や加齢によってバランスのくずれた免疫調節機能を正常化する生体防御面と、世代を超えて拡大している生活習慣病の予防に配慮した生理・代謝機能面に加え、近年の研究により明らかになってきた脳と腸が自律神経を介してお互いに密接に影響を及ぼしあう「脳腸相関」に着目しています。具体的には、プロバイオティクスのパイオニアとして「乳酸菌 シロタ株」や「ビフィズス菌 BY株」「B.ビフィダム Y株」等を利用し、作用領域を拡大した乳酸菌飲料等、自然界に存在する多くの機能性素材を利用した食品の研究開発に力を注いでいます。また、より一層お客さまのニーズに応えるため、プロバイオティクスを使用した乳製品、清涼飲料等のラインアップの充実を図っています。当連結会計年度の成果は次のとおりです。① 乳製品ア. 機能性表示食品である乳製品乳酸菌飲料「Yakult(ヤクルト)1000」の店頭向けシリーズ品として、一時的な精神的ストレスがかかる状況での「ストレス緩和」「睡眠の質向上」の機能を有する乳製品乳酸菌飲料「Y1000」を昨年10月に導入しました。イ. 「乳酸菌 シロタ株」とガラクトオリゴ糖を配合したアイスクリーム「アイス de ヤクルト」を昨年6月に数量限定で導入しました。ウ. ハードタイプヨーグルト「ソフール」について、期間限定アイテムとして、「アップル」を昨年4月に、「白桃」を7月に、「ぶどう」を10月に、「ゆず&レモン」を本年1月に導入しました。② 清涼飲料等ア. 紫サツマイモ由来アントシアニンを有効量含み、肝機能に関連する酵素(AST、γ-GTP)値の低下に役立つ機能性表示食品「肝ファイン」を昨年10月に地域限定で導入しました。イ. ミルクをバランス良く配合し、すっきりした後味が特長の「オ・レ」シリーズの「カフェ・オ・レ」「いちご・オ・レ」について、生乳感を高めた風味に変更し、昨年9月に導入しました。ウ. 野菜入り低果汁飲料「きになる野菜」(125ml)シリーズについて、栄養成分を強化し、昨年10月に導入しました。当分野の研究開発費は5,433百万円です。 (3) 医薬品製造販売事業分野医薬品研究開発分野においては、抗がん剤を中心とした薬剤の研究開発を進めています。4SC社(ドイツ)から導入したHDAC阻害剤「レスミノスタット」については、皮膚T細胞リンパ腫を対象とした国際共同第Ⅱ相臨床試験を実施中です。セキュラ・バイオ社(米国)から日本における開発および商業化に関する独占的ライセンスを受けているPI3K阻害剤「デュベリシブ」については、再発または難治性の慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫を対象とした国内第Ⅰ相臨床試験の主要な解析が完了し、本年3月に製造販売承認申請を行いました。また、再発または難治性の末梢性T細胞リンパ腫を対象とした国際共同第Ⅱ相臨床試験、再発または難治性の濾胞性リンパ腫を対象とした国内第Ⅱ相臨床試験および再発または難治性の成人T細胞白血病・リンパ腫を対象とした国内第Ⅱ相臨床試験を実施中です。基礎創薬研究分野では、抗がん剤およびその周辺領域でのシーズを確保するための研究を引き続き実施しています。当分野の研究開発費は1,182百万円です。 (4) その他事業分野<化粧品製造販売事業分野>その他事業分野のうち化粧品研究開発分野においては、多様化するお客さまのニーズに応えることを目指し、「美」と「健康」の追究と当社独自の乳酸菌はっ酵技術を活かした「高機能・高品質で安全性の高い化粧品」の開発を志向しています。基礎化粧品については、乳酸菌生まれの保湿成分である「S.E.(シロタエッセンス)」を配合した保湿効果の高い基礎化粧品「ラクトデュウ」シリーズから、新たに「ラクトデュウ S.E.クリーム」を昨年10月に発売しました。また、エイジングケアブランドである「パラビオ」シリーズから、エイジングサインに幅広くアプローチする成分を贅沢に配合した高機能美容液「パラビオ ACセラム サイ」を本年3月に発売しました。トイレタリー商品については、大人の乾燥肌に向けた高保湿ボディケアシリーズ「Coculme(コクルム)」から3品(ボディシャンプー・ボディシャンプー(つめかえ用)・ボディミルク)を昨年7月に、ボディクリームを10月に発売しました。当分野の研究開発費は627百万円です。
FY2021|4,549 文字
5 【研究開発活動】当社グループは、腸内菌叢(腸内フローラ)を構成する微生物のヒトへの役割を中心とした生命科学の追究により、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献するという企業理念の達成を目指しています。その中にあって当社研究開発部門は、長期的展望に立った基礎研究を行うとともに、それら基礎研究の成果を活かした飲料・食品、医薬品および化粧品などの研究開発に取り組んでいます。あわせて、事業戦略上求められる研究開発課題の解決や社会の要請に応じた商品の安全性確保と環境対策に関する研究にも力を注いでいます。当連結会計年度の研究開発費の総額は8,487百万円で、セグメント情報にかかわる研究開発活動の概要は、次のとおりです。 (1) 基礎研究開発分野基礎研究開発分野においては、腸内フローラとヒトの健康との関わりを明らかにするために、分子生物学・微生物学・免疫学・生理学・栄養学などの多面的な研究を行っています。プロバイオティクスとしての乳酸菌・ビフィズス菌がヒトの健康維持・増進に果たす役割の解明に重点をおくと同時に、新規の微生物や天然物の探索を行い、飲料・食品、医薬品および化粧品などへの利用を目指した機能性素材の開発に積極的に取り組んでいます。当連結会計年度の研究成果は次のとおりです。① 弘前大学との共同研究で、「L.カゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳製品または「B.ブレーベ・ヤクルト株(ビフィズス菌)」を含む乳製品の単独摂取および両製品の同時摂取が、回腸(小腸の後部)末端部の細菌叢構成に及ぼす影響を内視鏡的逆行性腸管挿入法(ERBI)により調査しました。その結果、乳製品中の両菌株が回腸末端部まで到達し、数時間にわたり両菌株のいずれか、またはその両方が細菌叢の90%以上を占有するケースが確認されること、両菌株は、コロニー形成能(代謝活性を有し、増殖可能である状態)を有したまま、回腸末端部まで到達すること、ERBIがヒトの回腸末端部における細菌叢の経時変化の評価に有用であることが明らかになりました。本研究により、摂取したプロバイオティクスの回腸末端部での動態や細菌叢の構成を把握することは、プロバイオティクスを含む食品の機能性を解析するうえで重要であると考えられます。本研究成果は、学術雑誌「Gut Microbes」に掲載されました。② ベトナム保健省国立栄養研究所との共同研究で、ベトナムの幼児約1,000名を対象に「L.カゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳製品の飲用試験を実施しました。その結果、乳製品の継続飲用により、便秘および急性呼吸器感染症(ARI)の発生が抑制されることを確認しました。また、下痢の発生が抑制される傾向が認められました。本研究により、「L.カゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳製品の継続飲用は、ベトナムの子どもの健康的な生活づくりに寄与するのみならず、一般生活者の健康の維持・増進に貢献できるものと期待されます。本研究成果は、学術雑誌「European Journal of Clinical Nutrition」に掲載されました。③ 国立遺伝学研究所との共同研究で、乳幼児を対象に生後2年間の腸内細菌叢の形成過程および腸内細菌の代謝産物である短鎖脂肪酸(SCFA)の構成との関連性について調査しました。その結果、乳幼児の腸内細菌叢の構成は、Enterobacterales優勢からBifidobacteriales優勢、さらにClostridiales優勢へと段階的に移行し、それに伴い、SCFA構成が変化することを確認しました。また、授乳停止後の腸内の酪酸濃度の上昇には、Clostridialesに属する菌種が関与すること、母乳保育期において特徴的に観察される腸内の乳酸とギ酸の上昇には、母乳オリゴ糖の利用性が高いビフィズス菌が主要な役割を果たすことを見出しました。さらに、それぞれのSCFAの産生に中心的な役割を果たす遺伝子群や菌種間相互作用を明らかにしました。本研究により、乳幼児の腸内細菌叢を標的としたプロバイオティクスの開発や疾病予防法の検討には、腸内細菌叢と代謝産物の段階的な変化および腸内細菌の特性を考慮する必要があると考えられます。本研究成果は、学術雑誌「The ISME Journal」に掲載されました。④ スギ花粉症症状がある成人を対象に「L.プランタルム YIT 0132(乳酸菌)」を含む発酵果汁飲料と「L.カゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳製品の同時摂取が花粉症症状に及ぼす影響を調べるパイロット試験を実施しました。その結果、「L.カゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳製品の単独摂取群よりも「L.プランタルム YIT 0132(乳酸菌)」を含む発酵果汁飲料と「L.カゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳製品を同時摂取した群で有意に症状の軽減が認められました。本研究により、「L.プランタルム YIT 0132(乳酸菌)」を含む発酵果汁飲料のスギ花粉症症状軽減効果は、免疫調節作用があるプロバイオティクスとの併用の影響を受けないことが示唆されました。本研究成果は、学術雑誌「Bioscience of Microbiota, Food and Health」に掲載されました。⑤ 大阪国際がんセンターとの共同研究で、食道切除術の周術期にシンバイオティクス(BL整腸薬およびオリゴメイトS-HP)を投与された食道がん患者を対象に術後感染性合併症の発症と術前の便中有機酸濃度の関係を調査しました。その結果、術後感染性合併症を発症した患者では、発症しなかった患者に比べて、便中の酢酸、プロピオン酸および酪酸の濃度の合計から乳酸の濃度を差し引いた値(APB-L gap)が有意に低い値を示しました。乳酸は腸内の偏性嫌気性菌によって代謝されるため、APB-L gapの低値は腸内環境の乱れを示すと考えられます。本研究により、食道がん患者の術後感染性合併症を減らすためには、術前から腸内環境を調節して、短鎖脂肪酸濃度を高く維持しておくことの重要性が示されました。本研究成果は、学術雑誌「BMC Gastroenterology」に掲載されました。 今後も、最先端のバイオテクノロジーに基づく腸内フローラ研究を推進し、プロバイオティクスの健康維持・増進機能の検証と解明に取り組んでいきます。さらに、生活習慣病予防をターゲットとした次世代プロバイオティクスや新規機能性素材の研究開発に重点的に力を注いでいきます。当分野の研究開発費は1,367百万円です。 (2) 飲料および食品製造販売事業分野飲料および食品研究開発分野においては、ヒトの健康に積極的に寄与する商品開発を目指しています。特に、研究開発の対象としては、生活環境の変化や加齢によってバランスのくずれた免疫調節機能を正常化する生体防御面と、世代を超えて拡大している生活習慣病の予防に配慮した生理・代謝機能面に加え、近年の研究により明らかになってきた脳と腸が自律神経を介してお互いに密接に影響を及ぼしあう「脳腸相関」に着目しています。具体的には、プロバイオティクスのパイオニアとして「乳酸菌 シロタ株」や「ビフィズス菌 BY株」「B.ビフィダム Y株」などを利用し、作用領域を拡大した乳酸菌飲料等、自然界に存在する多くの機能性素材を利用した食品の研究開発に力を注いでいます。また、より一層お客さまのニーズに応えるため、プロバイオティクスを使用した乳製品および清涼飲料のラインアップの充実を図っています。当連結会計年度の成果は次のとおりです。① 乳製品ア.生きて腸内に到達する「乳酸菌 シロタ株」と腸内の乳酸菌を増やす「ガラクトオリゴ糖」を一緒に摂ることができる乳製品乳酸菌飲料「シンバイオティクス ヤクルトW」のリニューアル品「ヤクルトW」を昨年10月に導入しました。イ.乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト400W」について、腸内の環境を改善し、お通じを改善する機能がある「機能性表示食品」として、昨年10月に導入しました。② 清涼飲料等ア. 青汁に果汁をミックスして飲みやすくしたスムージーテイストの青汁・果実混合飲料「フルーツ青汁」を昨年4月に導入しました。イ. 野菜入り低果汁飲料「きになる野菜」のシリーズ品として、不足しがちな水溶性ビタミンをおいしく摂取できる「1食分のマルチビタミン トマト&赤ぶどう」を昨年4月に導入しました。ウ. 栄養ドリンク「タフマン」「タフマンⅤ」「タフマンスーパー」「Tough-Man Refresh(タフマン リフレッシュ)」について、内容成分とパッケージデザインを変更し、昨年4月に導入しました。エ.ヤクルト類に入っている「乳酸菌 シロタ株」とミルミル類に入っている「ビフィズス菌 BY株」を含む生菌含有食品「マルチプロバイオティクスサプリメント」の15包入りを昨年5月に、30包入りを昨年11月にインターネット販売限定で導入しました。当分野の研究開発費は4,920百万円です。 (3) 医薬品製造販売事業分野医薬品研究開発分野においては、抗がん剤を中心とした薬剤の研究開発を進めています。ドイツの4SC社から導入したHDAC阻害剤「レスミノスタット」については、皮膚T細胞リンパ腫を対象とした第Ⅱ相国際共同臨床試験を実施中です。米国のセキュラ・バイオ社より日本における開発および商業化に関する独占的ライセンスを受けているPI3K阻害剤「デュベリシブ」については、再発または難治性の慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫を対象とした第Ⅰ相臨床試験および再発または難治性の末梢性T細胞リンパ腫を対象とした第Ⅱ相国際共同臨床試験を実施中です。また、その他血液がんに対する開発の可能性についても検討中です。基礎創薬研究分野では、抗がん剤およびその周辺領域でのシーズを確保するための研究を引き続き実施しています。当分野の研究開発費は1,592百万円です。 (4) その他事業分野<化粧品製造販売事業分野>その他事業分野のうち化粧品研究開発分野においては、多様化するお客さまのニーズに応えることを目指し、「美」と「健康」の追究と当社独自の乳酸菌はっ酵技術を活かした「高機能・高品質で安全性の高い化粧品」の開発を志向しています。基礎化粧品については、乳酸菌生まれの保湿成分である「S.E.(シロタエッセンス)」を配合した保湿効果の高い基礎化粧品「ラクトデュウ」シリーズから、新たに「ラクトデュウ S.E.クレンジング(オイル)」および「ラクトデュウ S.E.ウォッシング」を昨年7月に発売しました。トイレタリー商品については、心地よい香りとともに、「S.E.(シロタエッセンス)」を配合した高い保湿力で乾燥した手肌にうるおいを与えるハンドクリーム「ヤクルト アロマモイスト ハンドクリーム」を昨年12月に発売しました。同商品は、使用シーンや気分に合わせて使用いただけるよう、使い心地と香りが異なる2品を展開しています。当分野の研究開発費は607百万円です。
FY2020|4,774 文字
5 【研究開発活動】当社グループは、腸内菌叢(腸内フローラ)を構成する微生物のヒトへの役割を中心とした生命科学の追究により、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献するという企業理念の達成を目指しています。その中にあって当社研究開発部門は、長期的展望に立った基礎研究を行うとともに、それら基礎研究の成果を活かした飲料・食品、医薬品および化粧品などの研究開発に取り組んでいます。あわせて、事業戦略上求められる研究開発課題の解決や社会の要請に応じた商品の安全性確保と環境対策に関する研究にも力を注いでいます。当連結会計年度の研究開発費の総額は8,968百万円で、セグメント情報にかかわる研究開発活動の概要は、次のとおりです。 (1) 基礎研究開発分野基礎研究開発分野においては、腸内フローラとヒトの健康との関わりを明らかにするために、分子生物学・微生物学・免疫学・生理学・栄養学などの多面的な研究を行っています。プロバイオティクスとしての乳酸菌・ビフィズス菌がヒトの健康維持・増進に果たす役割の解明に重点をおくと同時に、新規の微生物や天然物の探索を行い、飲料・食品、医薬品および化粧品などへの利用を目指した機能性素材の開発に積極的に取り組んでいます。当連結会計年度の研究成果は次のとおりです。① 東京都健康長寿医療センター研究所との共同研究で、群馬県吾妻郡中之条町の高齢者を対象に、「L.カゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳製品の摂取頻度および日常的な身体活動と便秘リスクとの関係を疫学的に調査しました。その結果、「L.カゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳製品の摂取頻度が高い高齢者や、1日7,000歩以上歩く高齢者は便秘になるリスクが低いことを明らかにしました。また、これらの組み合わせは便秘リスクの低減に効果的であることを明らかにしました。本研究により、高齢者の便秘対策のひとつとして、「L.カゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳製品の高頻度の摂取と定期的な運動の組み合わせが有効であることが期待されます。本研究成果は、学術誌「Frontiers in Microbiology」に掲載されました。② 神奈川工科大学との共同研究で、高齢者福祉施設に入居している高齢者を対象に、ウイルス感染のリスクが高くなる冬季を含む6か月間、「L.カゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳酸菌飲料の継続摂取試験を実施しました。その結果、乳酸菌飲料を継続摂取した群では、乳酸菌を含まないプラセボを継続摂取した群と比較して、摂取期間中の総発熱日数および発熱時の持続日数が有意に短いことを確認しました。本研究により、高齢者における感染症対策のひとつとして、「L.カゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳酸菌飲料の継続摂取が有効であることが期待されます。本研究成果は、学術誌「Bioscience of Microbiota, Food and Health」に掲載されました。 ③ 国立病院機構下志津病院との共同研究で、スギ花粉症症状を有する方を対象に、「L.プランタルム YIT 0132(乳酸菌)」を含む発酵果汁飲料の継続摂取試験をスギ花粉飛散時期に実施しました。その結果、発酵果汁飲料を継続摂取した群では、乳酸菌を含まないプラセボを継続摂取した群と比較して、花粉飛散初期のスギ花粉症症状が有意に軽減されました。また、プラセボ飲用群で認められた花粉飛散に伴う制御性T細胞(Treg)の減少が発酵果汁飲料飲用群では認められませんでした。さらに、発酵果汁飲料飲用群の中で、摂取期間中にTregが増加した被験者群では、Tregが減少した被験者群と比較して、摂取期間中の鼻症状(鼻づまり、鼻水、くしゃみ)が軽減することを確認しました。本研究により、乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取が花粉飛散期におけるスギ花粉症症状を軽減すること、本効果にはTregの変化が関与することが示唆されました。本研究成果は、学術誌「Allergy」に掲載されました。④ 順天堂大学および沖縄県立南部医療センター・こども医療センターとの共同研究で、低出生体重児(出生時体重1,500g未満)を対象に、初乳および母乳とともに「B.ブレーベ・ヤクルト株(ビフィズス菌)」の菌末を継続的に投与した場合の成長に及ぼす影響を調査しました。その結果、生後24時間以内に菌末投与を開始した群では、菌を含まないプラセボを投与した群と比較して、生後8週までに有意な体重増加が確認されました。また、菌末投与群では、プラセボ投与群と比較して、便中のビフィズス菌の検出率、総菌数、有機酸濃度が有意に高い値を示しました。本研究により、低出生体重児における「B.ブレーベ・ヤクルト株(ビフィズス菌)」の継続摂取には、ビフィズス菌優位の腸内細菌叢の早期形成と腸内の有機酸を介した成長促進が期待されます。本研究成果は、学術誌「Biomedicine Hub」に掲載されました。⑤ 愛媛大学大学院との共同研究で、出生後に新生児集中治療室(NICU)で保育された早産児(在胎37週未満)と健康な正期産児(在胎37~42週)における腸内細菌叢の形成過程について調査しました。その結果、NICUで保育された早産児は、正期産児と比較して、ビフィズス菌の定着が遅れること、ブドウ球菌群が多いことを確認しました。また、ビフィズス菌優勢の腸内細菌叢が形成された産児では、腸内の有機酸濃度が上昇し、pHが低下することを明らかにしました。本研究により、NICUで保育される早産児の腸内細菌叢をビフィズス菌優勢の腸内細菌叢へ早期に導くことにより腸内環境が良好に保たれ、早産児が罹患しやすい疾病リスクの低減に繋がることが期待されます。本研究成果は、学術誌「Beneficial Microbes」に掲載されました。 今後も、最先端のバイオテクノロジーに基づく腸内フローラ研究を推進し、プロバイオティクスの健康維持・増進機能の検証と解明に取り組んでいきます。さらに、生活習慣病予防をターゲットとした次世代プロバイオティクスや新規機能性素材の研究開発に重点的に力を注いでいきます。当分野の研究開発費は1,572百万円です。 (2) 飲料および食品製造販売事業分野飲料および食品研究開発分野においては、ヒトの健康に積極的に寄与する商品開発を目指しています。特に、研究開発の対象としては、生活環境の変化や加齢によってバランスのくずれた免疫調節機能を正常化する生体防御面と、世代を超えて拡大している生活習慣病の予防に配慮した生理・代謝機能面に加え、近年の研究により明らかになってきた脳と腸が自律神経を介してお互いに密接に影響を及ぼしあう「脳腸相関」に着目しています。具体的には、プロバイオティクスのパイオニアとして「乳酸菌 シロタ株」や「ビフィズス菌 BY株」「B.ビフィダム Y株」などを利用し、作用領域を拡大した乳酸菌飲料等、自然界に存在する多くの機能性素材を利用した食品の研究開発に力を注いでいます。また、より一層お客さまのニーズに応えるため、プロバイオティクスを使用した乳製品および清涼飲料のラインアップの充実を図っています。当連結会計年度の成果は次のとおりです。① 乳製品ア.当社初の機能性表示食品で、一時的な精神的ストレスがかかる状況での「ストレス緩和」「睡眠の質向上」の機能がある「Yakult(ヤクルト)1000」を昨年10月に関東1都6県で導入しました。イ.ロングセラー商品である「ジョア」について、期間限定アイテムとして、「旬のピーチ」を昨年4月に、「南国パイン」を7月に、「贅沢オレンジ」を9月に導入しました。また、本年3月に栄養成分を強化して「ジョア」シリーズをリニューアルするとともに、新たに小容量(80ml)タイプを2品導入しました。 ウ. ソフトタイプヨーグルトとして、アロエ葉肉の食感とヨーグルトのなめらかな舌ざわりがマッチした「アロエヨーグルト」と、1日分の鉄と葉酸を含有し、ベリー系を主体とした4種の果汁とヨーグルトのなめらかさがマッチした「1日分の鉄&葉酸ヨーグルト」を昨年10月に導入しました。エ.国内初の胃に関する機能性表示食品として、ビフィズス菌「B.ビフィダム Y株」を含む乳製品乳酸菌飲料「BF-1(ビーエフワン)」を昨年11月に導入しました。オ.基幹商品である「ヤクルト400」のシリーズ品として、生きて腸内に到達する「乳酸菌 シロタ株」と腸内の乳酸菌を増やす「ガラクトオリゴ糖」を一緒に摂ることができる“シンバイオティクス”を訴求した「ヤクルト400W」を本年1月に九州地区限定で導入しました。② 清涼飲料等ア. 主に20~30代の女性に向けたブランド「三つ星Factory」商品として販売している美容ドリンク「CHOBI(チョビ)」について、新たに1日分のビタミンEを追加するとともに、より飲みやすいすっきりとした風味へリニューアルし、本年1月に導入しました。イ. 袋入り即席めん「ヤクルト麵許皆伝」のシリーズ品として、ガーリックをきかせた旨みのあるとんこつ味の「ヤクルト麵許皆伝 とんこつ味」を昨年10月に導入しました。③ その他海外事業支援メキシコヤクルト株式会社が昨年5月に導入した、「ソフールLT ピーチ」の技術支援を行いました。当分野の研究開発費は4,461百万円です。 (3) 医薬品製造販売事業分野医薬品研究開発分野においては、抗がん剤を中心とした薬剤の研究開発を進めています。ドイツの4SC社から導入したHDAC阻害剤「レスミノスタット」については、皮膚T細胞リンパ腫を対象とした第Ⅱ相国際共同臨床試験を実施中です。米国のベラステム社から導入したPI3K阻害剤「デュベリシブ」については、再発または難治性の慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫を対象とした第Ⅰ相臨床試験および再発または難治性の末梢性T細胞リンパ腫を対象とした第Ⅱ相国際共同臨床試験を実施中です。また、その他血液がんに対する開発の可能性についても検討中です。「結腸・直腸がん」「胃がん」などの標準的治療薬として広く用いられている抗悪性腫瘍剤「エルプラット」(一般名:オキサリプラチン)については、「進行・再発胃がん」の用法・用量の追加を目的とした第Ⅲ相臨床試験を大鵬薬品工業株式会社と共同で実施中です。基礎創薬研究分野では、抗がん剤およびその周辺領域でのシーズを確保するための研究を引き続き実施しています。当分野の研究開発費は2,343百万円です。 (4) その他事業分野<化粧品製造販売事業分野>その他事業分野のうち化粧品研究開発分野においては、多様化するお客さまのニーズに応えることを目指し、「美」と「健康」の追究と当社独自の乳酸菌はっ酵技術を活かした「高機能・高品質で安全性の高い化粧品」の開発を志向しています。基礎化粧品については、乳酸菌生まれの保湿成分である「S.E.(シロタエッセンス)」を配合した保湿効果の高い基礎化粧品「ラクトデュウ」シリーズのリニューアルを昨年7月に実施しました。また、当社独自の「浸透促進技術」により美白有効成分の効果を高め、輝く美しさへと導く薬用美白美容液「クリスタンス ホワイトリペア エッセンス」のリニューアルを本年3月に実施しました。トイレタリー商品については、大人の髪悩み(パサつき、うねり、つや、ボリューム、ハリ・コシ、切れ毛、指通り感の悪さ)に応える“髪の健康”を考えたヘアケアシリーズ「ラミーヌ S.E.」として昨年12月にリニューアルを実施しました。当分野の研究開発費は591百万円です。
FY2019|4,480 文字
5 【研究開発活動】当社グループは、腸内菌叢(腸内フローラ)を構成する微生物のヒトへの役割を中心とした生命科学の追究により、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献するという企業理念の達成を目指しています。その中にあって当社研究開発部門は、長期的展望に立った基礎研究を行うとともに、それら基礎研究の成果を活かした飲料・食品、医薬品および化粧品などの研究開発に取り組んでいます。あわせて、事業戦略上求められる研究開発課題の解決や社会の要請に応じた商品の安全性確保と環境対策に関する研究にも力を注いでいます。当連結会計年度の研究開発費の総額は10,563百万円で、セグメント情報にかかわる研究開発活動の概要は、次のとおりです。 (1) 基礎研究開発分野基礎研究開発分野においては、腸内フローラとヒトの健康との関わりを明らかにするために、分子生物学・微生物学・免疫学・生理学・栄養学などの多面的な研究を行っています。プロバイオティクスとしての乳酸菌・ビフィズス菌がヒトの健康維持・増進に果たす役割の解明に重点をおくと同時に、新規の微生物や天然物の探索を行い、飲料・食品、医薬品および化粧品などへの利用を目指した機能性素材の開発に積極的に取り組んでいます。当連結会計年度の研究成果は次のとおりです。① 宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同研究で、「L.カゼイ・シロタ株(乳酸菌)」の凍結乾燥粉末を含むカプセルを国際宇宙ステーション・「きぼう」日本実験棟で約1か月間保管した後、カプセル中の生菌数、菌の発酵性状、遺伝情報、免疫調節作用に関する各種解析を行いました。その結果、いずれも地上で保管していた対照品と同等であり、宇宙環境においてプロバイオティクスの機能が維持されることを確認しました。本研究により、国際宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士が摂取した場合でも、地上と同様にプロバイオティクスの効果が発揮されることが期待されます。本研究成果は、学術誌「Scientific Reports」に掲載されました。② 東邦大学との共同研究で、健常成人を対象とした「B.ビフィダム YIT 10347 (ビフィズス菌)」を含む乳製品の飲用試験を実施した結果、乳製品飲用群では、ビフィズス菌を含まないプラセボ飲用群と比較して、消化管症状に有意な緩和が認められました。本研究により、「B.ビフィダム YIT 10347 (ビフィズス菌)」の継続的な摂取は、食後の胃痛や不快症状等を含む消化管症状を緩和することが明らかになりました。本研究成果は、学術誌「Journal of Dairy Science」に掲載されました。③ 大阪大学医学部附属病院高度救命救急センターとの共同研究で、集中治療室で人工呼吸器管理された敗血症患者を対象としたシンバイオティクス「B.ブレーベ・ヤクルト株(ビフィズス菌)、L.カゼイ・シロタ株(乳酸菌)およびガラクトオリゴ糖」の投与試験を実施した結果、シンバイオティクス投与群では、シンバイオティクスを投与していない群と比較して、腸炎および人工呼吸器関連肺炎の発生率が有意に低いことを確認しました。さらに、シンバイオティクス投与群では、腸内の有用菌(ビフィズス菌および乳酸菌)ならびに酢酸等の有機酸濃度が有意に高いことが分かりました。本研究により、敗血症患者へのシンバイオティクスの投与は、患者の予後の改善に役立つことが示されました。本研究成果は、学術誌「Critical Care」に掲載されました。④ 腸内の腐敗産物であるフェノール類(フェノールおよびパラクレゾール)が人の健康に及ぼす影響を明らかにするため、当社保有の腸内細菌ライブラリーを対象にフェノール類産生菌を探索した結果、フェノール産生菌36株およびパラクレゾール産生菌55株を見出し、そのうち14株はフェノールおよびパラクレゾールの両方を産生することを確認しました。また、これら77菌株の分子系統学的分布を調べ、フェノール類産生菌が属するクラスターを明らかにするとともに、一部の菌について、既知の代謝酵素の遺伝子情報から保有する代謝経路を推定しました。本研究により、腸内で産生されるフェノール類の生理的意義や各種疾患と腸内細菌との関連の解明に役立つ情報を得ることができました。本研究成果は、学術誌「FEMS Microbiology Ecology」に掲載されました。⑤ 当社の子会社である非営利法人ヤクルト本社ヨーロッパ研究所は、幅広い年齢層でヒト腸管から検出されるビフィズス菌(Bifidobacterium longum subsp. longum)について、生後半年以内(乳児期)から約6歳(小児期)まで追跡調査しました。その結果、乳児期から6年以上の間、腸内に定着し続ける菌株(長期定着菌株)が存在することが明らかになりました。また、乳児腸内に母親と共通の菌株が存在し、その菌株が長期定着するケースもあること、さらに、長期定着菌株は、他のビフィズス菌と共存しながら腸内に定着し続けることが明らかになりました。本研究により、B. longum subsp. longumは、生後初期にヒト腸管に定着し、その後の成長過程において生理的な影響を及ぼし続ける可能性があることが示されました。本研究成果は、学術誌「BMC Microbiology」に掲載されました。 今後も、最先端のバイオテクノロジーに基づく腸内フローラ研究を推進し、プロバイオティクスの健康維持・増進機能の検証と解明に取り組んでいきます。さらに、生活習慣病予防をターゲットとした次世代プロバイオティクスや新規機能性素材の研究開発に重点的に力を注いでいきます。当分野の研究開発費は1,622百万円です。 (2) 飲料および食品製造販売事業分野飲料および食品研究開発分野においては、ヒトの健康に積極的に寄与する商品開発を目指しています。特に、研究開発の対象としては、生活環境の変化や加齢によってバランスのくずれた免疫調節機能を正常化する生体防御面と、世代を超えて拡大している生活習慣病の予防に配慮した生理・代謝機能面に着目しています。具体的には、プロバイオティクスのパイオニアとして「乳酸菌 シロタ株」や「ビフィズス菌 BY株」「B.ビフィダム Y株」などを利用した食品や、自然界に存在する多くの機能性素材を利用した食品の研究開発に力を注いでいます。また、より一層お客さまのニーズに応えるため、プロバイオティクスを使用した乳製品および清涼飲料のラインアップの充実を図っています。当連結会計年度の成果は次のとおりです。① 乳製品ア.ロングセラー商品である「ジョア」について、期間限定アイテムとして、「旬のピーチ」を昨年5月に、「はちみつレモン」を7月に、「贅沢オレンジ」を10月に導入しました。イ. ハードタイプヨーグルト「ソフール」について、期間限定アイテムとして、爽やかなりんごの果汁感とヨーグルトの風味がマッチした「アップル」を昨年6月に導入しました。ウ. 生きて腸内に到達する「乳酸菌 シロタ株」と5種の栄養成分を配合した乳製品乳酸菌飲料「ヤクルトファイブ」を本年3月に導入しました。② 清涼飲料ア. いちごとミルクをバランスよくブレンドした甘くてまろやかな味わいのいちご果汁入り清涼飲料「いちご・オ・レ」を昨年9月に導入しました。イ. スポーツシーンだけでなく、日常の様々なシーンでの水分補給・熱中症対策に適し、発汗により失われた水分およびミネラルを素早く補給できるスポーツドリンク「クイックチャージ」を本年3月に導入しました。ウ.「ヤクルト」をイメージしやすく、ごくごく飲めてすっきりとしたヤクルト風味の褐色系乳性飲料「ミルージュ」を本年3月に導入しました。エ.「ジョア」の原料はっ酵乳を使用したヨーグルト風味のさわやかな炭酸入り白色系乳性飲料「ミルージュ ソーダ」(490ml缶容器)を本年3月に期間限定で導入しました。③ その他海外事業支援タイヤクルト株式会社が昨年6月に導入した、「ヤクルト」と比較してカロリーを50%低減した「ヤクルトライト」の技術支援を行いました。当分野の研究開発費は4,491百万円です。 (3) 医薬品製造販売事業分野医薬品研究開発分野においては、抗がん剤を中心とした薬剤の研究開発を進めています。ドイツの4SC AG社から導入したHDAC阻害剤「レスミノスタット」については、国内にて胆道がん第Ⅱ相臨床試験および4SC AG社による皮膚T細胞リンパ腫を対象とした第Ⅱ相国際共同臨床試験を実施中です。日産化学株式会社から導入した血小板増加薬「YHI-1501」については、日本人健常人を対象とした第Ⅰ相臨床試験が終了し、現在、今後の開発計画を検討中です。昨年6月に米国のベラステム社から導入したPI3K阻害剤「デュベリシブ」については、9月にベラステム社が米国において、再発または難治性の慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫の治療としての承認、および再発または難治性の濾胞性リンパ腫の治療としての迅速承認を取得しました。現在、国内開発計画を検討中です。 「結腸・直腸がん」「胃がん」などの標準的治療薬として広く用いられている抗悪性腫瘍剤「エルプラット」(一般名:オキサリプラチン)については、「進行・再発胃がん」の用法・用量の追加を目的とした第Ⅲ相臨床試験を大鵬薬品工業株式会社と共同で実施中です。基礎創薬研究分野では、抗がん剤およびその周辺領域でのシーズを確保するための研究を引き続き実施しています。当分野の研究開発費は3,830百万円です。 (4) その他事業分野<化粧品製造販売事業分野>その他事業分野のうち化粧品研究開発分野においては、多様化するお客さまのニーズに応えることを目指し、「美」と「健康」の追究と当社独自の乳酸菌はっ酵技術を活かした「高機能・高品質で安全性の高い化粧品」の開発を志向しています。基礎化粧品については、ビフィズス菌研究から生まれたオリジナル成分「ビフィズス菌はっ酵エキス(大豆)」を配合し、お肌のハリ・弾力にアプローチする美容液「ビサイクル リフトリペア エッセンス」のリニューアルを昨年11月に実施しました。さらに、美白有効成分と「乳酸菌×植物」のチカラにより、シミとくすみを同時に防ぎ、明るく透明感のあるお肌へ導く高保湿美白基礎化粧品「リベシィホワイト」シリーズのリニューアルを本年3月に実施しました。トイレタリー商品については、むし歯・歯周病予防および美白効果を強化した薬用歯みがき剤「ヤクルト 薬用アパコートS.E.<ナノテクノロジー>」のリニューアルを昨年5月に実施しました。加えて、少量サイズである「ヤクルト 薬用アパコートS.E.<ナノテクノロジー> ポータブル」を新たに導入しました。当分野の研究開発費は619百万円です。
FY2018|5,168 文字
5 【研究開発活動】当社グループは、腸内菌叢(腸内フローラ)を構成する微生物のヒトへの役割を中心とした生命科学の追究により、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献するという企業理念の達成を目指しています。その中にあって当社研究開発部門は、長期的展望に立った基礎研究を行うとともに、それら基礎研究の成果を活かした食品・医薬品・化粧品などの研究開発に取り組んでいます。あわせて、事業戦略上求められる研究開発課題の解決や社会の要請に応じた商品の安全性確保と環境対策に関する研究にも力を注いでいます。当連結会計年度の研究開発費の総額は10,207百万円で、セグメント情報にかかわる研究開発活動の概要は、次のとおりです。 (1) 基礎研究開発分野基礎研究開発分野においては、腸内フローラとヒトの健康との関わりを明らかにするために、分子生物学・微生物学・免疫学・生理学・栄養学などの多面的な研究を行っています。プロバイオティクスとしての乳酸菌・ビフィズス菌がヒトの健康維持・増進に果たす役割の解明に重点をおくと同時に、新規の微生物や天然物の探索を行い、食品・医薬品・化粧品などへの利用を目指した機能性素材の開発に積極的に取り組んでいます。当連結会計年度の研究成果は次のとおりです。① 順天堂大学との共同研究で、日本人2型糖尿病患者を対象とした「L.カゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含むプロバイオティクス飲料の飲用試験を実施した結果、本飲料を継続的に飲用することにより腸内フローラが変化し、慢性炎症の原因となる腸内細菌の血液中への移行(バクテリアルトランスロケーション)が抑制されることを明らかにしました。本研究により、プロバイオティクス飲料の継続飲用による腸管バリア機能の強化が、慢性炎症による糖尿病患者の病態悪化の抑制に役立つことが期待されます。本研究成果は、学術誌「Scientific Reports」に掲載されました。② 健康な勤労者を対象とした「L.カゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含むプロバイオティクス飲料の飲用試験を実施した結果、本飲料の飲用期間中における上気道感染症の罹患率および発症回数の低下ならびに有病日数および発症時の症状持続日数の短縮が認められました。さらに、免疫力の指標となるNK細胞活性の低下およびストレスの指標となる唾液コルチゾールの上昇がそれぞれ抑制されることを明らかにしました。本研究により、プロバイオティクス飲料の継続飲用による免疫機能の修飾を介して上気道感染症発症リスクが軽減される可能性が示されました。本研究成果は、学術誌「European Journal of Nutrition」に掲載されました。③ 徳島大学との共同研究で、進級のための学術試験を受ける健康な医学部生を対象とした「L.カゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含むプロバイオティクス飲料の飲用試験を実施した結果、プロバイオティクスを含まないプラセボ飲用群では学術試験が近づくにつれて睡眠状態(起床時眠気、睡眠時間)が悪化しましたが、プロバイオティクス飲用群では睡眠状態の悪化が軽減されることが認められました。さらに、睡眠脳波解析の結果、プロバイオティクス飲料は深い眠りであるノンレム睡眠ステージ3の維持およびデルタパワーの増加により睡眠状態の体感を改善させることが認められました。本研究により、プロバイオティクス飲料の継続飲用はストレス状況下での睡眠状態の悪化を軽減させる可能性が示されました。本研究成果は、学術誌「Beneficial Microbes」に掲載されました。④ 大阪国際がんセンターとの共同研究で、胸部食道癌患者を対象としたシンバイオティクス「BL整腸薬(乳酸菌、ビフィズス菌)、オリゴメイトS-HP(ガラクトオリゴ糖)」の投与試験を実施した結果、シンバイオティクスの服用により化学療法後の発熱性好中球減少症、下痢およびリンパ球減少といった重篤な有害事象を軽減させることが認められました。本研究により、食道癌術前化学療法中のシンバイオティクス投与が、化学療法による腸内細菌叢や腸内環境の乱れを改善し、有害事象の軽減に有用であることを明らかにしました。本研究成果は、学術誌「Clinical Nutrition」に掲載されました。⑤ 関東労災病院との共同研究で、日本人2型糖尿病患者を対象とした「オリゴメイトS-HP(ガラクトオリゴ糖)」の飲用試験を実施した結果、低下していたビフィズス菌の占有率の回復が認められました。本研究により、ガラクトオリゴ糖の飲用は、炎症やインスリン感受性に関連すると考えられている血液中のLPS結合タンパク質(LBP)や耐糖能への影響は認められなかったものの、腸内フローラの異常を改善し、日本人2型糖尿病の改善に有望な手法となる可能性が示されました。本研究成果は、学術誌「Beneficial Microbes」に掲載されました。⑥ 閉経前の健常女性を対象とした「L.カゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む発酵豆乳飲料の飲用試験を実施した結果、発酵豆乳および豆乳(対照飲料)の飲用により体内のイソフラボンレベルが上昇し、肌性状が改善することが認められました。さらに、発酵豆乳の飲用群では、腸内の乳酸菌およびビフィズス菌の増加ならびに大腸菌群の減少が認められました。本研究により、発酵豆乳は肌性状および腸内フローラの改善に寄与する可能性が示されました。本研究成果は、学術誌「Beneficial Microbes」に掲載されました。⑦ 順天堂大学との共同研究で、同じ学生寮に居住する大学生を対象とした食習慣が腸内細菌叢に及ぼす影響を検討する試験を実施した結果、共通した環境の健康な若年成人においてヨーグルトの摂取頻度と腸内細菌叢との関連性およびその関連性には性差があることが認められました。本研究成果は、学術誌「Frontiers in Microbiology」に掲載されました。 今後も、最先端のバイオテクノロジーに基づく腸内フローラ研究を推進し、プロバイオティクスの健康維持・増進機能の検証と解明に取り組んでいきます。さらに、生活習慣病予防をターゲットとした次世代プロバイオティクスや新規機能性素材の研究開発に重点的に力を注いでいきます。当分野の研究開発費は1,697百万円です。 (2) 飲料および食品製造販売事業分野飲料および食品研究開発分野においては、ヒトの健康に積極的に寄与する商品開発を目指しています。特に、研究開発の対象としては、生活環境の変化や加齢によってバランスのくずれた免疫調節機能を正常化する生体防御面と、世代を超えて拡大している生活習慣病の予防に配慮した生理・代謝機能面に着目しています。具体的には、プロバイオティクスのパイオニアとして「乳酸菌 シロタ株」や「ビフィズス菌 BY株」「B.ビフィダム Y株」などを利用した食品や、自然界に存在する多くの機能性素材を利用した食品の研究開発に力を注いでいます。また、より一層お客さまのニーズに応えるため、プロバイオティクスを使用した乳製品およびジュース・清涼飲料のラインアップの充実を図っています。当連結会計年度の成果は次のとおりです。① 乳製品ア. 生きて腸内に到達する「乳酸菌 シロタ株」と腸内のビフィズス菌を増やす「ガラクトオリゴ糖」を一緒に摂ることができるパーソナルタイプの乳製品乳酸菌飲料「シンバイオティクス ヤクルト W」を昨年10月に導入しました。イ. 当社のロングセラー商品である「ジョア」について、期間限定アイテムとして、「手摘みキウイ」を昨年5月に、「旬のピーチ」を7月に、「まろやかハニー」を10月に、「手摘みりんご」を本年2月に導入しました。ウ. ハードタイプヨーグルト「ソフール」について、期間限定アイテムとして、温州みかん果汁とデコポン果汁をミックスした爽やかな果汁感とヨーグルトの風味がマッチした「温州みかん&デコポン」を昨年10月に導入しました。エ.当社独自のビフィズス菌「B.ビフィダム Y株」を含んだ乳製品乳酸菌飲料「BF-1」について、紙とポリエチレンの複合容器から宅配チャネルでの積載効率に優れたストロー付紙容器に変更し、昨年9月に導入しました。② ジュース・清涼飲料等ア. 栄養ドリンク「タフマン」について、アルコール含量を0.9%から0.7%に低減し、昨年5月に導入しました。また、「タフマン」シリーズ初の缶容器入りで、スタイリッシュなデザインが特長のカフェインレス炭酸タイプリフレッシュドリンク「Tough-Man Refresh(タフマン リフレッシュ)」を本年3月に導入しました。イ. 野菜系飲料「きになる野菜」シリーズについて、「アップル&キャロット」および「白ぶどう&ほうれん草」に一新し、昨年9月に導入しました。さらに、「きになる野菜100」シリーズについて、「緑黄色野菜ミックス」および「紫野菜ミックス」は野菜の使用量を1食分相当量に増量し、それぞれ「β-カロテン」「ポリフェノール」を訴求するとともに、「贅沢野菜1日分」は野菜の使用量はそのままにすっきりとした風味に変更し、昨年9月に導入しました。ウ.「ジョア」の原料はっ酵乳を使用した乳性飲料「ミルージュ」シリーズの新商品として、ヨーグルト風味の白色系乳清飲料「ミルージュ ホワイトウォーター」を昨年10月に導入しました。エ.特定保健用食品「ヤクルト 蕃爽麗茶」に含まれるグァバ葉ポリフェノールが手軽に摂れる粉末タイプの健康茶「手軽に蕃爽麗茶」を昨年9月に導入しました。オ.乾めん「佐賀の神埼」シリーズについて、「ひやむぎ」、「うどん」および「そば」の処方などを一部変更し、本年3月に導入しました。③ その他海外事業支援インドヤクルト・ダノン株式会社が本年2月に導入した、「ヤクルト」と比較してカロリーを50%低減した「ヤクルトライト」の技術支援を行いました。当分野の研究開発費は4,624百万円です。 (3) 医薬品製造販売事業分野医薬品研究開発分野においては、抗がん剤を中心とした薬剤の研究開発を進めています。ドイツの4SC AG社から導入したHDAC阻害剤「レスミノスタット」については、胆道がんおよび膵がんを対象とした第Ⅰ相臨床試験が終了し、本年3月から胆道がんについて第Ⅱ相臨床試験を実施しています。さらに、4SC AG社が実施している皮膚T細胞リンパ腫を対象とした第Ⅱ相国際共同臨床試験に、本年3月から当社も参加しています。なお、肝細胞がんを対象とした第Ⅱ相臨床試験が終了しましたが、標準治療環境の変化を考慮し、肝がんでの開発戦略を検討中です。日産化学工業株式会社から導入した血小板増加薬「YHI-1501」については、日本人健常人を対象とした第Ⅰ相臨床試験が終了し、現在、今後の開発計画を検討中です。「結腸・直腸がん」「胃がん」などの標準的治療薬として広く用いられている抗悪性腫瘍剤「エルプラット」(一般名:オキサリプラチン)については、「進行・再発胃がん」の用法・用量の追加を目的とした第Ⅲ相臨床試験を大鵬薬品工業株式会社と共同で実施中です。なお、本年4月に開催された厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の事前評価に基づいて、「エルプラット」は、本年5月に「小腸がん」に対する効能・効果追加を公知申請しました。基礎創薬研究分野では、抗がん剤およびその周辺領域でのシーズを確保するための研究を引き続き実施しています。当分野の研究開発費は3,262百万円です。 (4) その他事業分野<化粧品製造販売事業分野>その他事業分野のうち化粧品研究開発分野においては、多様化するお客さまのニーズに応えることを目指し、「美」と「健康」の追究と当社独自の乳酸菌はっ酵技術を活かした「高機能・高品質で安全性の高い化粧品」の開発を志向しています。基礎化粧品については、永年積み重ねた当社の乳酸菌研究と植物研究の成果を結集し、開発された基礎化粧品「リベシィ」シリーズのリニューアルを昨年6月に実施しました。さらに、化粧品機能評価法ガイドラインに基づく各種試験により、乾燥による小ジワを目立たなくする効果が実証された高機能クリーム状美容液「エジティックス モイストリペア エッセンス」のリニューアルを昨年11月に導入しました。仕上化粧品については、流行や季節に応じた新色を開発し、口紅やアイシャドウなどのポイントメイクを導入することにより、「グランティア EX」シリーズのラインアップの充実を図りました。当分野の研究開発費は623百万円です。
FY2017|4,488 文字
6 【研究開発活動】当社グループは、腸内菌叢(腸内フローラ)を構成する微生物のヒトへの役割を中心とした生命科学の追究により、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献するという企業理念の達成を目指しています。その中にあって当社研究開発部門は、長期的展望に立った基礎研究を行うとともに、それら基礎研究の成果を活かした食品・医薬品・化粧品などの研究開発に取り組んでいます。あわせて、事業戦略上求められる研究開発課題の解決や社会の要請に応じた商品の安全性確保と環境対策に関する研究にも力を注いでいます。当連結会計年度の研究開発費の総額は10,549百万円で、セグメント情報にかかわる研究開発活動の概要は、次のとおりです。 (1) 基礎研究開発分野基礎研究開発分野においては、腸内フローラとヒトの健康との関わりを明らかにするために、分子生物学・微生物学・免疫学・生理学・栄養学などの多面的な研究を行っています。プロバイオティクスとしての乳酸菌・ビフィズス菌がヒトの健康維持・増進に果たす役割の解明に重点をおくと同時に、新規の微生物や天然物の探索を行い、食品・医薬品・化粧品などへの利用を目指した機能性素材の開発に積極的に取り組んでいます。 当連結会計年度の研究成果は次のとおりです。① 帝京大学との共同研究で、育児粉乳で哺育される乳児がプレバイオティクスの一種であるガラクトオリゴ糖を継続的に摂取することにより便中のビフィズス菌の占有率が増加し、腸内フローラが母乳栄養児型へ変化することを明らかにしました。本研究により、ガラクトオリゴ糖の継続摂取が育児粉乳で哺育される乳児のおなかの健康に役立つことが期待されます。本研究成果は、学術誌「Beneficial Microbes」に掲載されました。② 国立精神・神経医療研究センター神経研究所との共同研究で、大うつ病性障害患者と健常者の腸内細菌について、ビフィズス菌と乳酸桿菌の菌数を比較した結果、うつ病患者で、ビフィズス菌の菌数が有意に少ないこと、さらにビフィズス菌・乳酸桿菌ともに一定の菌数以下である人が有意に多いことを明らかにしました。本研究により、腸内の善玉菌が少ないとうつ病リスクが高まることが示唆されました。本研究成果は、学術誌「Journal of Affective Disorders」に掲載されました。③ 東京工業大学および帝京大学との共同研究で、母乳オリゴ糖主成分であるフコシルラクトース(以下、FL)を利用できるビフィズス菌が定着した乳児は、FLを利用できないビフィズス菌が定着している乳児に比べて、便中のビフィズス菌の占有率や酢酸濃度が高く、大腸菌群の占有率やpHが低いことを確認しました。また、ビフィズス菌のFLの利用には菌体内にFLを取り込むFL輸送体が重要であることを見出しました。これらの結果から、母乳中のFLの存在と一部のビフィズス菌が有するFL輸送体は、乳児とビフィズス菌が共生関係を構築するための重要な因子であることが示唆されました。本研究により、乳児の腸内ビフィズス菌の定着機構が明らかとなり、今後、乳児の腸内フローラを標的とした疾病の予防法や新たなプロバイオティクスの開発につながることが期待されます。本研究成果は、学術誌「Nature Communications」に掲載されました。④ 順天堂大学との共同研究で、小児外科疾患患児において周術期(手術の術前・術中・術後を含めた期間)に菌血症が高率に発症し得ることを世界で初めて明らかにしました。さらに、「B.ブレーベ・ヤクルト株(ビフィズス菌)」を継続的に摂取することで、周術期感染症の発症が抑えられること、腸内フローラや腸内環境の乱れが改善されることおよび血液からの細菌の検出が顕著に抑制(菌血症予防)されることを明らかにしました。本研究により、ビフィズス菌の継続摂取が小児外科疾患患児の周術期管理に役立つことが期待されます。本研究成果は、学術誌「Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition」に掲載されました。⑤ NPO 法人日本健康増進支援機構との共同研究で、通年性アレルギー性鼻炎症状を有する被験者を対象とした「L.プランタルム YIT 0132(乳酸菌)」を含む発酵果汁飲料の飲用試験を実施した結果、同症状を改善する効果が確認されました。これにより、本発酵果汁飲料は、これまでの花粉症およびアトピー性皮膚炎の症状改善といった研究成果に加えて、通年性アレルギー性鼻炎の症状も改善することを明らかにしました。本研究成果は、学術誌「Beneficial Microbes」に掲載されました。 ⑥ 東京都健康長寿医療センター研究所との共同研究で、高齢者を対象に「L.カゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳製品の摂取頻度と高血圧発症リスクの関係を調査した結果、「L.カゼイ・シロタ株」を含む乳製品の週3回以上の習慣的摂取は、高血圧発症リスクの低下に繋がることが示唆されました。本研究成果は、学術誌「Beneficial Microbes」に掲載されました。⑦ 当社の分析試験研究所では、分析結果の信頼性を確保するため、精度管理手法の導入と組織体制の整備を行うとともに、試験所の技術能力に関する国際規格であるISO/IEC17025の認定取得に向けた作業を進めてきました。その結果、昨年4月に原料水分析の一項目である「上水中の揮発性有機化合物(VOC)試験」でISO/IEC17025認定を取得しました。これにより、国際的に通用する信頼性の高い分析試験結果を提供することが可能となりました。 今後も、最先端のバイオテクノロジーに基づく腸内フローラ研究を推進し、プロバイオティクスの健康維持・増進機能の検証と解明に取り組んでいきます。さらに、生活習慣病予防をターゲットとした次世代プロバイオティクスや新規機能性素材の研究開発に重点的に力を注いでいきます。当分野の研究開発費は1,689百万円です。 (2) 飲料および食品製造販売事業分野飲料および食品研究開発分野においては、ヒトの健康に積極的に寄与する商品開発を目指しています。特に、研究開発の対象としては、生活環境の変化や加齢によってバランスのくずれた免疫調節機能を正常化する生体防御面と、世代を超えて拡大している生活習慣病の予防に配慮した生理・代謝機能面に着目しています。具体的には、プロバイオティクスのパイオニアとして「乳酸菌 シロタ株」や「ビフィズス菌 BY株」「B.ビフィダム Y株」などを利用した食品や、自然界に存在する多くの機能性素材を利用した食品の研究開発に力を注いでいます。また、より一層お客さまのニーズに応えるため、プロバイオティクスを使用した乳製品および清涼飲料水のラインアップの充実を図っています。当連結会計年度の成果は次のとおりです。① 乳製品ア. カロリーと甘さを抑えた「Newヤクルト カロリーハーフ」について、すっきりとした風味はそのままに、従来品よりも酸味を抑えて、よりおいしく飲みやすい風味に変更し、昨年5月に導入しました。イ. 「ジョア」のシリーズ品「ジョア マスカット」について、「鉄」を1日に必要な摂取推奨量である6.8mgに増量し、昨年9月に導入しました。さらに、期間限定アイテムとして、「ジョア ピーチ」を昨年6月に、「ジョア 贅沢オレンジ」を9月に、「ジョア 手摘みりんご」を本年2月に、「ジョア ローズ&カシス」を3月に導入しました。ウ. ハードタイプヨーグルト「ソフール」のシリーズ品「ソフール元気ヨーグルト」の「鉄」を1.0mgから4.0mgに、「カルシウム」を68mgから100mgにそれぞれ増量し、昨年10月に導入しました。さらに、期間限定アイテムとして、ゆずとレモンの爽やかな果汁感とヨーグルトの風味がマッチした「ソフール ゆず&レモン」を昨年10月に導入しました。② ジュース・清涼飲料ア. ミルクとコーヒーをバランス良くブレンドした、甘くてまろやかな味わいのコーヒー入り清涼飲料「カフェ・オ・レ」を昨年9月に導入しました。イ. 果汁入り飲料「さっぱり」シリーズの新商品として、パインアップル果汁入り炭酸飲料「さっぱりパイン Sparkling(スパークリング)」を本年3月に導入しました。③ その他海外事業支援ブラジルヤクルト商工株式会社が昨年7月に導入した、「ヤクルト40」と比較してカロリーを41%低減した「ヤクルト40ライト」の技術支援を行いました。当分野の研究開発費は4,672百万円です。 (3) 医薬品製造販売事業分野医薬品研究開発分野においては、抗がん剤を中心とした薬剤の研究開発を進めています。ドイツの4SC AG社から導入したHDAC阻害剤「レスミノスタット」については、肝細胞がんを対象とした第Ⅱ相臨床試験が終了し、現在、グローバル第Ⅲ相臨床試験の実施を検討中です。また、胆道がんおよび膵がんを対象とした第Ⅰ相臨床試験を実施しています。日産化学工業株式会社から導入した血小板増加薬「YHI-1501」については、現在、日本人健常人を対象とした第Ⅰ相臨床試験を実施中です。「結腸・直腸がん」「胃がん」などの標準的治療薬として広く用いられている抗悪性腫瘍剤「エルプラット」(一般名:オキサリプラチン)については、「進行・再発胃がん」の用法・用量の追加を目的とした第Ⅲ相臨床試験を大鵬薬品工業株式会社と共同で実施中です。ドイツのエテルナゼンタリス社から導入したPI3K/Akt阻害剤「ペリフォシン」については、小児神経芽腫を対象とした第Ⅰ相臨床試験が終了しました。基礎創薬研究分野では、抗がん剤およびその周辺領域でのシーズを確保するための研究を引き続き実施しています。当分野の研究開発費は3,486百万円です。 (4) その他事業分野<化粧品製造販売事業分野>その他事業分野のうち化粧品研究開発分野においては、多様化するお客さまのニーズに応えることを目指し、「美」と「健康」の追究と当社独自の乳酸菌はっ酵技術を活かした「高機能・高品質で安全性の高い化粧品」の開発を志向しています。高機能化粧品「パラビオ」シリーズについては、乳酸菌はっ酵技術を集結することで、エイジングケアを可能にした「パラビオ ベースメイク(3品)」のリニューアルを昨年6月に実施しました。さらに、代表的な肌悩みである「シミ」「シワ」「たるみ」を多面的に分析・検証し、科学的根拠に基づき開発された高機能クリーム「パラビオ ACクリーム サイ」のリニューアルを昨年11月に実施しました。仕上化粧品「グランティア EX」シリーズについては、流行や季節に応じた新色を開発し、口紅やアイシャドウなどのポイントメイクを導入することによりラインアップの充実を図りました。当分野の研究開発費は699百万円です。
FY2016|4,506 文字
6 【研究開発活動】当社グループは、腸内菌叢(腸内フローラ)を構成する微生物のヒトへの役割を中心とした生命科学の追究により、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献するという企業理念の達成を目指しています。その中にあって当社研究開発部門は、長期的展望に立った基礎研究を行うとともに、それら基礎研究の成果を活かした食品・医薬品・化粧品などの研究開発に取り組んでいます。あわせて、事業戦略上求められる研究開発課題の解決や社会の要請に応じた商品の安全性確保と環境対策に関する研究にも力を注いでいます。当連結会計年度の研究開発費の総額は12,677百万円で、セグメント情報にかかわる研究開発活動の概要は、次のとおりです。 (1) 基礎研究開発分野基礎研究開発分野においては、腸内フローラとヒトの健康との関わりを明らかにするために、分子生物学・微生物学・免疫学・生理学・栄養学などの多面的な研究を行っています。プロバイオティクスとしての乳酸菌・ビフィズス菌がヒトの健康維持・増進に果たす役割の解明に重点をおくと同時に、新規の微生物や天然物の探索を行い、食品・医薬品・化粧品などへの利用を目指した機能性素材開発に積極的に取り組んでいます。 当連結会計年度の研究成果は次のとおりです。① 慶應義塾大学医学部を中心とする研究グループとの共同研究で、感染防御ならびに炎症性腸疾患および自己免疫疾患などの病態形成に関与するTh17細胞(免疫細胞)の誘導機構を検証した結果、腸内細菌が小腸上皮に強く接着することにより、Th17細胞が誘導されることを明らかにしました。さらに、ヒトの腸内細菌叢においてTh17細胞を誘導する20種類の細菌を同定しました。今回の成果は、Th17細胞が関与する炎症性腸疾患などの自己免疫疾患の診断・治療法の確立や感染症の制御に寄与するプロバイオティクスの開発研究に役立つことが期待されます。本研究成果は、学術誌「Cell」に掲載されました。② アトピー性皮膚炎患者を対象とした「ラクトバチルス プランタルム YIT 0132(乳酸菌)」を含む発酵果汁飲料の飲用試験を実施した結果、アトピー性皮膚炎症状およびQOLの改善ならびにアレルギー性疾患と関わりが深い血液中のマーカー(ECP、IgE 等)の低減が確認されました。この研究により、本発酵果汁飲料は、アトピー性皮膚炎患者の免疫バランスを調節し、アレルギー症状の軽減に役立つことが期待されます。本研究成果は、学術誌「Bioscience of Microbiota, Food and Health」の電子版に掲載されました。③ 順天堂大学大学院プロバイオティクス研究講座 との共同研究で、健常小児を対象とした「L.カゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含むプロバイオティクス飲料の飲用試験を実施しました。この結果、健常小児の腸内には有害菌および日和見感染菌が一定の割合で存在し、さらにプロバイオティクス飲料の継続摂取により腸内フローラおよび腸内環境が改善されることが確認されました。この研究により、プロバイオティクス飲料の継続摂取は、有害菌や日和見感染菌を減少させ、健康の維持・増進につながることが期待されます。本研究成果は、学術誌「Annals of Nutrition & Metabolism」に掲載されました。④ 順天堂大学大学院プロバイオティクス研究講座、東京女子医科大学病院小児科との共同研究で、高齢者施設入所者などを対象とした「L.カゼイ シロタ株(乳酸菌)」を含むプロバイオティクス飲料の飲用試験を実施しました。この結果、施設入所者の発熱日数の短縮および下痢や便秘日数の減少などの健康状態の改善と腸内フローラおよび腸内環境の改善が確認されました。この研究により、プロバイオティクス飲料の継続摂取は高齢者施設入所者の感染症リスク低減およびQOLの向上に役立つことが期待されます。本研究成果は、学術誌「Annals of Nutrition & Metabolism」に掲載されました。 今後も、最先端のバイオテクノロジーに基づく腸内フローラ研究を推進し、プロバイオティクスの健康維持・増進機能の検証と解明に取り組んでいきます。さらに、生活習慣病予防をターゲットとした次世代プロバイオティクスや新規機能性素材の研究開発に重点的に力を注いでいきます。 当分野の研究開発費は1,766百万円です。 (2) 飲料および食品製造販売事業分野飲料および食品研究開発分野においては、ヒトの健康に積極的に寄与する商品開発を目指しています。特に、研究開発の対象としては、生活環境の変化や加齢によってバランスのくずれた免疫調節機能を正常化する生体防御面と、世代を超えて拡大している生活習慣病の予防に配慮した生理・代謝機能面に着目しています。具体的には、プロバイオティクスのパイオニアとして「乳酸菌 シロタ株」や「ビフィズス菌 BY株」「B.ビフィダム Y株」などを利用した食品や、自然界に存在する多くの機能性素材を利用した食品の研究開発に力を注いでいます。また、より一層お客さまのニーズに応えるため、プロバイオティクスを使用した乳製品および清涼飲料水のラインアップの充実を図っています。当連結会計年度の成果は次のとおりです。① 乳製品ア. 当社のロングセラー商品である「ジョア」について、昨年6月に、「ストロベリー」および「ブルーベリー」の果汁使用量を従来品より増量し、果汁とヨーグルトのおいしさをさらに際立たせた風味に変更するととともに、マスカットの果汁とヨーグルトのまろやかさがマッチした「ジョア マスカット」を導入しましたさらに、期間限定アイテムとして、「ジョア マンゴー」を昨年8月に、「ジョア アップル」を11月に、「ジョア レモン」を本年2月に導入しました。イ. 60代以上のシニア層において摂取意向の高い「グルコサミン」「ローヤルゼリー」「カルシウム」「ビタミンC」および「ビタミンD」が含まれている高付加価値タイプの乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト ゴールド」を、従来品よりもさらに酸味を抑えたまろやかな風味に変更し、昨年9月に導入しました。ウ. ハードタイプヨーグルト「ソフール」の期間限定アイテムとして、巨峰の果汁とヨーグルトの風味が程よくマッチした「ソフール 巨峰」を昨年10月に導入しました。エ. ビジネスパーソンをサポートする乳製品乳酸菌飲料「毎日飲むヤクルト」を、首都圏エリア限定で昨年11月に導入し、本年1月に販売エリアを北関東、東北地区に拡大しました。オ. のむヨーグルト「ミルミル」および「ミルミルS」について、大腸ではたらく当社独自の「ビフィズス菌 BY株」を1本当たり100億個以上から120億個以上に増やし、本年3月に導入しました。② ジュース・清涼飲料等ア. 栄養ドリンク「タフマン」「タフマンV」および「タフマンスーパー」のガラスびんを、省資源化による環境負荷の低減のため、軽量化するとともに、「タフマンV」に新たに「ガラナ」を配合し、昨年5月に導入しました。イ. 袋入り即席めん「麺許皆伝」シリーズ4品(「しょうゆ味」「みそ味」「しお味」「ソース焼そば」)のめんに新たに国産米粉を練りこみ、もちもちした食感に変更するとともに、新シリーズ品として、数種の香辛料をブレンドしスパイスをきかせたコク深いスープの「カレーラーメン」を昨年9月に導入しました。ウ. 果汁入り飲料「さっぱり」シリーズの新商品として、レモン果汁入り炭酸飲料「さっぱりレモン Sparkling(スパークリング)」を本年3月に導入しました。③ その他海外事業支援ア.メキシコヤクルト株式会社が昨年8月に導入した、従来品と比較してカロリーを30%以上低減した「ソフールLT」(ドリンクタイプ)の技術支援を行いました。イ.広州ヤクルト株式会社が昨年10月に、中国ヤクルト株式会社および上海ヤクルト株式会社が本年1月に導入した、「ヤクルト」と比較してカロリーを約40%低減し、「カルシウム」および「ビタミンD」を強化した「ヤクルトライト」の技術支援を行いました。 当分野の研究開発費は4,632百万円です。 (3) 医薬品製造販売事業分野医薬品研究開発分野においては、抗がん剤を中心とした薬剤の研究開発を進めています。抗悪性腫瘍剤「エルプラット」(一般名:オキサリプラチン)は、「進行・再発の結腸・直腸がん」「結腸がんにおける術後補助化学療法」「治癒切除不能の膵がん」および「進行・再発胃がん」の標準的治療薬として広く用いられています。これらの効能・効果に加え、胃がん術後補助化学療法についての適応拡大のため、平成26年12月に承認申請を行い、昨年11月に効能・効果として「胃がん」で承認を取得しました。これにより、エルプラットは胃がんにおいて進行・再発に加え、術後補助化学療法における治療薬としての使用が可能となりました。このほか、「進行・再発胃がん」について、用法・用量の追加を目的とした第Ⅲ相臨床試験を実施中です。ドイツのエテルナゼンタリス社から導入したPI3K/Akt阻害剤「ペリフォシン」については、婦人科がんを対象とした第Ⅱ相臨床試験を終了し、現在、小児神経芽腫を対象とした第Ⅰ相臨床試験を実施中です。ドイツの4SC AG社から導入したHDAC阻害剤「レスミノスタット」については、肺がんを対象とした第Ⅱ相臨床試験を終了し、現在、肝細胞がんを対象とした第Ⅱ相臨床試験を実施中です。また、胆道がんおよび膵がんを対象とした第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を実施しています。昨年10月に日産化学工業株式会社から導入した血小板増加薬「NIP-022(当社開発コードはYHI-1501)」については、現在、日本人を対象とした治験を計画中です。基礎研究分野では、抗がん剤およびその周辺領域でのシーズを確保するための研究を引き続き実施しています。当分野の研究開発費は5,559百万円です。 (4) その他事業分野<化粧品製造販売事業分野>その他事業分野のうち化粧品研究開発分野においては、多様化するお客さまニーズに応えることを目指し、「美」と「健康」の追究と当社独自の乳酸菌はっ酵技術を活かした「高機能・高品質で安全性の高い化粧品」の開発を志向しています。基礎化粧品については、化粧品事業を代表するロングセラー商品「S.E.ローション」シリーズにエイジングケア効果が期待できる「プラチナケア S.E.ローション」を昨年4月に導入し、また、当社の乳酸菌研究と肌構造研究の成果を結集し、開発された高機能基礎化粧品「パラビオ」シリーズのリニューアルを昨年11月に実施しました。仕上化粧品については、流行や季節に応じた新色を開発し、口紅やアイシャドウなどのポイントメイクを導入することにより、「グランティア EX」シリーズのラインアップの充実を図りました。当分野の研究開発費は719百万円です。