事業の概要
- がん免疫治療薬の開発ブライトパス・バイオは、がん免疫治療薬の探索研究から早期臨床試験までを手がける創薬ベンチャーです。自社で新しい薬の候補を見つけたり、他社から導入したりして、初期段階の開発を進めます。医薬品開発は非常に長い期間と多額の資金が必要なため、同社は開発の後期段階を大手製薬会社にライセンスアウト(権利を売却)することで、早期に収益を得るビジネスモデルを採用しています。
- ライセンス収入モデル主な収入源は、製薬会社へのライセンスアウトによるものです。具体的には、ライセンス契約締結時の一時金、開発の進捗に応じて支払われるマイルストン収入(特定の開発段階を達成するごとに得られる報酬)、そして薬が市場に出て売上の一部を受け取る販売ロイヤリティ収入などがあります。これにより、開発投資を早期に回収し、持続的な成長を目指します。
- 複数のパイプライン同社は、様々な開発ステージにある複数の医薬品候補(パイプライン)を同時並行で進めています。これにより、一つの薬に依存するリスクを分散し、投資の早期回収と、将来的な継続収入の実現を目指しています。特に、開発後期に進むほど資金が必要になる医薬品開発において、この戦略はベンチャー企業にとって重要です。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
セグメント構成
- 細胞医薬(iPS細胞由来再生NKT細胞療法)iPS細胞から分化誘導したナチュラル・キラーT(NKT)細胞をがん治療に用いる新規の他家細胞医薬品候補「BP2201」を開発しています。NKT細胞はがん細胞を直接殺傷し、他の免疫細胞も活性化する能力を持ちますが、体内に少量しか存在しないため、iPS細胞技術で大量生産する点が特徴です。頭頸部がんを対象とした臨床第Ⅰ相医師主導治験が終了し、良好な結果が示されています。
- 細胞医薬(CAR-iPSNKT細胞療法)非遺伝子改変iPS-NKT細胞に、がんの目印を認識するキメラ抗原受容体(CAR)を付加し、がん細胞殺傷能を高めた新規のCAR-T細胞療法「BP2202」を開発しています。特に多発性骨髄腫を標的とするBCMA CAR-iPSNKTが最初の製品として位置づけられ、米国での第Ⅰ相臨床試験の準備が進められています。STAR-CRISPRTM遺伝子編集技術の導入により、固形がんを含む多様な適応症への展開を目指しています。
- 細胞医薬(HER2 CAR-T細胞療法)様々な固形がんで高発現するHER2を標的抗原とするCAR-T細胞療法「BP2301」を開発しています。従来のCAR-T細胞療法が固形がんに対して機能低下する課題に対し、体内での優れた複製能と長期生存能を持つ幹細胞様免疫記憶型細胞を用いることで、持続的な抗腫瘍効果を目指しています。信州大学との共同開発により、HER2陽性の再発・進行骨・軟部肉腫及び婦人科悪性腫瘍を対象とした臨床第Ⅰ相医師主導治験が進行中です。
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FY2026|5,374 文字
3 【事業の内容】 当社は、新規の「がん免疫治療薬」の開発に領域を定める、探索研究から早期臨床試験段階にある複数のパイプラインを有する創薬ベンチャーです。事業モデル、技術の特徴は以下のとおりであります。 (1) 事業モデル 当社の事業モデルは、新規がん免疫治療薬を自社創製もしくは導入し、探索研究から早期臨床試験までを手掛け、国内外の製薬会社に開発製造販売権をライセンスアウトし、ライセンス先からライセンス収入を得るものです。 医薬品開発は上市までに一般的に10年以上かかり、投資回収までが長く、開発後期段階になるほど要する資金が大きくなるため、ベンチャーで創薬を事業として成立させるためには、開発投資を早期に回収できる仕組みが必要ですが、医薬品産業においては大手製薬企業が開発途上にあるベンチャーが創製するシーズをライセンスインする取引が豊富に行われています。現在は承認薬に至ったシーズのうち、ベンチャーが創製するシーズの数が、従来の大手製薬企業のそれを上回るようになっています。 この事業モデルでは、上市前の開発段階で、ライセンス先製薬企業から開発進捗に応じたライセンス関連収入(ライセンス契約締結時の一時金、その後開発進捗に応じて設定したマイルストンを達成する毎に得られる開発マイルストン収入、上市後は製品売上高の一定割合を得る販売ロイヤリティ収入等)を得ることを目指します。ライセンス後もライセンス先企業と共同開発し、開発費の貢献に合わせて将来の利益を按分したり、ライセンス先から開発協力金を得て開発を主導する等、色々な形態があります。 当社は、様々な開発ステージにあるパイプライン(医薬品候補)の開発を同時並行で進めることにより、投資早期回収と黒字転換後の継続的な収入の実現を図ります。 (2) 開発中のがん免疫治療薬の特徴 がん免疫治療薬の開発では、動かなくなってしまったがん免疫を再び動くようにすること、いったん動いたがん免疫が、任務を終えた後に「元に戻る」仕組みによってブレーキをかけられるのを防ぎ、持続させることが、創薬のターゲットとなります。これに成功すればがんを治療できることは、2018年にノーベル賞を受賞したPD-1という免疫チェックポイント(免疫のブレーキ)を阻害する抗体が、がん治療に革新をもたらしたことによって、立証されてきました。今を生きる私たちは、この治療の革新の恩恵を受ける途上にあり、がんの個別性や免疫応答の多様性にどう対応していくか、未解明の領域がたくさん残されていると考えています。がん免疫にがんの目印を与えるがんワクチン、T細胞というがん免疫そのものを大量に外から投入する細胞医薬、PD-1以外にもいくつもある「免疫が元に戻る仕組み」を一定期間止める抗体医薬、これらが当社の開発している薬です。がんの克服を目指す人に、新たな治療選択肢を提供するために、これからも研究活動を推進してまいります。 (3) 開発パイプライン 当社の開発パイプラインは以下のとおりです。このほか、次世代パイプラインの構築を目的として複数の探索・非臨床試験研究を実施しております。 細胞医薬〔iPS細胞由来再生NKT細胞療法:BP2201〕 BP2201(iPS-NKT)は、がん細胞の殺傷を含め多面的な抗腫瘍効果をもつナチュラル・キラーT(NKT)細胞*1を、iPS細胞技術を使って大量製造し、作り置きしたうえでがん治療に用いる新規の他家細胞医薬候補です。国立大学法人千葉大学において、世界初のiPS-NKTを用いた頭頸部がん患者を対象とする医師主導の第Ⅰ相臨床試験(2020年6月開始)が実施され、2024年1月に終了しました。主要評価項目である忍容性および安全性に問題がないこと、並びに腫瘍増殖抑制例を含む初期的な臨床活性の確認が示され、「Nature Communications」誌2025年12月30日版で報告されています。 本治験で用いられた非遺伝子改変iPS-NKT細胞は、いろいろながん種のがん抗原に対するCAR(キメラ抗原受容 体)遺伝子を導入した、新たな遺伝子改変iPS-NKT細胞医薬へ展開する土台/プラットフォームとなり、幅広いがん種と世界の幅広い地域への展開を可能にします。 当社は、開発元の国立研究開発法人理化学研究所(以下「理研」)からのiPS細胞由来NKT細胞(iPS-NKT)のCAR-T(キメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞療法)をはじめとする他家細胞療法使用を広範かつ排他的に保護する特許(日米欧で登録済み)の独占使用権を取得しています。 〔iPS細胞由来BCMA CAR-NKT細胞療法:BP2202〕 BP2202(BCMA CAR-ipsNKT)は、非遺伝子改変iPS-NKT細胞に多発性骨髄腫の目印(抗原)となるBCMA(B細胞成熟抗原)を認識するキメラ抗原受容体(CAR: Chimeric Antigen Receptor)を発現させがん細胞殺傷能を高めた新規の他家CAR-T細胞療法*2です。 2026年度から米国における臨床試験実施を予定しており、米国食品医薬品局(FDA)に対する開始申請(IND)の最終段階に入っております。 BP2202は、これまで医薬品として承認されている自家CAR-T細胞に用いられる患者自身のT細胞の代わりに、健常人ドナーから作製した他家のiPS細胞由来NKT細胞を用いることによって作り置きが可能になったCAR-T細胞医薬品であることを特徴とします。臨床試験を通して検証されている作用メカニズムを有する細胞医薬の細胞部分を、患者自身のT細胞から、より利便性の高い他家NKT細胞に切り替えていくコンセプトで開発を進めています。 当社は2023年5月にSTAR-CRISPRTM遺伝子編集技術をライセンス導入し、固形がんを含む様々な適応症に対して高度な遺伝子組換型CAR-ipsNKT細胞療法プログラムを創出することが可能となりました。現在その先駆けの製品として、多発性骨髄腫治療薬候補となるBCMA CAR-ipsNKT (BP2202)の開発を進めています。 これまでにマスターiPSセルバンクの構築と、マスターiPSセルバンクからNKT細胞への分化誘導を行う製造工程の確立を終えています。後者については、当社で確立した高純度かつ高増殖の製造工程を、iPS細胞治療薬製造の先進企業で3Dバイオリアクターを用いる製造プラットフォームを有するCellistic社に移管し、より優れた製造工程を確立しました。 同プログラムは、2025年7月に米国食品医薬品局(FDA)より多発性骨髄腫を対象疾患とする希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)に指定されています。 〔HER2 CAR-T細胞療法:BP2301〕 BP2301は、様々な固形がんで高発現するHER2を標的とするCAR-T細胞療法です。現在、国立大学法人信州大学においてHER2陽性の再発・進行骨・軟部肉腫及び婦人科悪性腫瘍を対象とする遺伝子改変HER2 CAR-T細胞の臨床第Ⅰ相医師主導治験を継続しております。 これまで血液がんを標的とするCAR-T細胞療法は、優れた臨床効果が臨床試験で示され、承認されてきました。しかし、より患者数の多い固形がんへの展開においては、血液がんのような有効性を示すことができていません。投与されたCAR-T細胞が、免疫抑制的な腫瘍微小環境において疲弊して機能を喪失し、十分に臨床効果を発揮できないからと考えられています。 この課題を解決するために、BP2301では、体内での優れた複製能と長期生存能を特徴とし、それによって腫瘍微小環境における疲弊抵抗性と持続的抗腫瘍効果が期待される幹細胞様免疫記憶型(ステムセル・メモリー・フェノタイプ)細胞を多く含むCAR-T細胞を用いる技術の開発に成功しました。これは、国立大学法人信州大学の中沢洋三教授の非ウイルス遺伝子導入法に基づき、中沢教授及び同大学柳生茂希教授と新規の細胞培養法を共同開発したことによって可能になりました。 本製造方法は、国内、中国、及び米国にて特許査定を受けています。 抗体医薬 抗体医薬では、腫瘍組織においてがん細胞を排除する免疫の働きを抑制する免疫チェックポイント分子*3もしく は免疫調整分子に結合し、その機能を阻害する抗体の開発を進めています。 CD39分子とTIM-3分子を双方発現する免疫細胞においてこれらを同時に阻害する抗CD39×抗TIM-3二重特異性抗体 BP1212、がん細胞上に発現するCD39分子とT細胞上に発現するCD3分子双方を標的とするT細胞エンゲージャーBP1223 を開発パイプラインとして有します。 BP1212は、固形がんを対象に、腫瘍組織内の樹状細胞が陥る免疫抑制状態を解除し、抗腫瘍T細胞免疫を誘導させ るものです。この作用メカニズムを裏付ける非臨床試験データを、2025年6月に開催された学会Immune Response in Cancer and Infection(IRCI)2025において発表しております。 またBP1223は、急性骨髄性白血病を対象に、がん細胞が発現するCD39を標的に、T細胞に活性化刺激を入れながら がん細胞に接近させ、がん細胞を殺傷させる作用メカニズムのものです。急性骨髄性白血病を対象とする薬効薬理 試験及び作用機序解析を国立がん研究センター東病院と共同で進めており、研究成果の一部を2024年12月開催の米 国血液学会にて発表しました。 (4) 許認可、免許及び登録等の状況について① 許認可、免許及び登録、行政指導等医薬品開発は、各国の医薬品の開発及び当局への申請等に関する法律、日本では「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:薬機法、2014年11月25日施行、「薬事法」から改称)、米国では「連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)及びその関連する法令」、上記の他、日本及び米国を含め各国における当局の省令やガイダンス、ならびに安全性に関する非臨床試験の実施基準(GLP;Good Laboratory Practice)、臨床試験の実施基準(GCP;Good Clinical Practice)、製造管理及び品質管理規則(GMP;Good Manufacturing Practice)の下で進めております。 ② 知的財産権の状況当社は、2022年11月に理研からiPS由来NKT細胞を全世界で独占的に開発・製造・販売する権利を導入するオプション権を行使し、iPS由来NKT細胞の他家細胞療法使用を広範かつ排他的に保護する特許の独占実施権を得ました。<主要な特許の状況>発明の名称特許登録番号出願国(登録国)権利者NKT細胞由来iPS細胞およびそれ由来のNKT細胞5652783日本理研8945922米国2336303欧州アロNKT細胞を用いた免疫療法およびそのためのT細胞抗原受容体(TCR)遺伝子のα鎖領域が均一なVα-Jαに再構成されている細胞および該細胞由来NKT細胞のバンキング6320473日本理研10813950米国264738欧州CAR発現免疫細胞を含む細胞集団の製造方法7576547202080055102.7(出願番号)17/626,345日本中国米国当社国立大学法人信州大学京都府公立大学法人 (注)1.欧州については、欧州特許条約に則った特許出願(EPC出願)によっております。 2.「CAR発現免疫細胞を含む細胞集団の製造方法」の米国における出願は特許査定を受領しています。[用語解説]*1(NKT細胞) ナチュラル・キラー(NK)細胞とT細胞の特徴を併せもち、自然免疫と獲得免疫の橋渡しをする役割をもつ免疫細 胞。がん細胞をT細胞受容体やNK細胞受容体を通して直接殺傷する能力をもつと同時に、T細胞受容体を通して樹状 細胞など他の免疫細胞を活性化させる作用をもつ。活性化すると、多様なサイトカインを産生し、自然免疫系に 属するNK細胞の活性化と樹状細胞の成熟化を促す。成熟した樹状細胞は、さらに獲得免疫系に属するキラーT細胞 を増殖・活性化させることで、相乗的に抗腫瘍効果が高まる。 *2(CAR-T細胞療法) Chimeric Antigen Receptor T-cell Therapy:キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法。がん細胞が発現する抗原 を認識するキメラ抗原受容体を、T細胞(抗腫瘍免疫をもつリンパ球の一種)に遺伝子導入し、培養で増殖させて 投与する治療法。 *3(免疫チェックポイント分子) 免疫恒常性を保つために自己に対する免疫応答を抑制するとともに、過剰な免疫反応を抑制する分子群のこと。が ん免疫においては、過剰な活性化によって自己を攻撃するのを防ぐために存在しているが、発がん過程では、がん 細胞が免疫系からの攻撃を回避し増殖するために利用される。
FY2025|5,779 文字
3 【事業の内容】 当社は、新規の「がん免疫治療薬」の開発に領域を定める、探索研究から早期臨床試験段階にある複数のパイプラインを有する創薬ベンチャーです。事業モデル、技術の特徴は以下のとおりであります。 (1) 事業モデル 当社の事業モデルは、新規がん免疫治療薬を自社創製もしくは導入し、探索研究から早期臨床試験までを手掛け、国内外の製薬会社に開発製造販売権をライセンスアウトし、ライセンス先からライセンス収入を得るものです。 医薬品開発は上市までに一般的に10年以上かかり、投資回収までが長く、開発後期段階になるほど要する資金が大きくなるため、ベンチャーで創薬を事業として成立させるためには、開発投資を早期に回収できる仕組みが必要ですが、医薬品産業においては大手製薬企業が開発途上にあるベンチャーが創製するシーズをライセンスインする取引が豊富に行われています。現在は承認薬に至ったシーズのうち、ベンチャーが創製するシーズの数が、従来の大手製薬企業のそれを上回るようになっています。 この事業モデルでは、上市前の開発段階で、ライセンス先製薬企業から開発進捗に応じたライセンス関連収入(ライセンス契約締結時の一時金、その後開発進捗に応じて設定したマイルストンを達成する毎に得られる開発マイルストン収入、上市後は製品売上高の一定割合を得る販売ロイヤリティ収入等)を得ることを目指します。ライセンス後もライセンス先企業と共同開発し、開発費の貢献に合わせて将来の利益を按分したり、ライセンス先から開発協力金を得て開発を主導する等、色々な形態があります。 当社は、様々な開発ステージにあるパイプライン(医薬品候補)の開発を同時並行で進めることにより、投資早期回収と黒字転換後の継続的な収入の実現を図ります。 (2) 開発中のがん免疫治療薬の特徴 がん免疫治療薬の開発では、動かなくなってしまったがん免疫を再び動くようにすること、いったん動いたがん免疫が、任務を終えた後に「元に戻る」仕組みによってブレーキをかけられるのを防ぎ、持続させることが、創薬のターゲットとなります。これに成功すればがんを治療できることは、2018年にノーベル賞を受賞したPD-1という免疫チェックポイント(免疫のブレーキ)を阻害する抗体が、がん治療に革新をもたらしたことによって、立証されてきました。今を生きる私たちは、この治療の革新の恩恵を受ける途上にあり、がんの個別性や免疫応答の多様性にどう対応していくか、未解明の領域がたくさん残されていると考えています。がん免疫にがんの目印を与えるがんワクチン、T細胞というがん免疫そのものを大量に外から投入する細胞医薬、PD-1以外にもいくつもある「免疫が元に戻る仕組み」を一定期間止める抗体医薬、これらが当社の開発している薬です。がんの克服を目指す人に、新たな治療選択肢を提供するために、これからも研究活動を推進してまいります。 (3) 開発パイプライン 当社の開発パイプラインは以下のとおりです。このほか、次世代パイプラインの構築を目的として複数の探索・非臨床試験研究を実施しております。 細胞医薬〔iPS細胞由来再生NKT細胞療法:BP2201〕BP2201(iPS-NKT)は、iPS細胞から分化誘導したナチュラル・キラーT(NKT)細胞*1をがん治療に用いる新規の他家細胞医薬品候補です。NKT細胞は、がん細胞を直接殺傷する能力をもつと同時に、他の免疫細胞を活性化することにより、間接的にも抗腫瘍効果を発揮する免疫細胞です。しかし、ヒト末梢血中にわずか0.01~0.1%程度しか存在しないとされ、NKT細胞を体外に取り出し、がん治療に必要な細胞数まで培養・増殖させることが非常に難しいという課題がありました。 そこで国立研究開発法人理化学研究所(以下「理研」)では、生命医科学研究センター副センター長の古関明彦氏を中心に、この課題を解決する方法として、iPS細胞技術を用いることが計画されました。具体的には、NKT細胞を初期化して樹立したiPS細胞(NKT-iPS細胞)から再度NKT細胞(iPS-NKT細胞)に分化・誘導可能なことが示され、2010年、iPS細胞から抗腫瘍活性を備えたNKT細胞だけを大量に作り出すことに成功しました。 当社は、本細胞療法の研究開発に、開発元の理研とともに取り組んでまいりましたが、2022年11月に導入オプション権を行使し、全世界で独占的に開発・製造・販売するライセンスを取得しました。本ライセンスにより、1)iPS由来NKT細胞の他家細胞療法使用を広範かつ排他的に保護する「特許」(日米欧で登録済み)、2)現在進行中の治験によって臨床上の安全性と一定の有効性の示唆が期待される「マスターiPSセルバンク」、3)マスターiPSセルバンクからNKT細胞へ高純度で大量に分化誘導させる「製造法」の3つで構成されるプラットフォームを有することになりました。このプラットフォームは、いろいろながん種のがん抗原に対するCAR遺伝子を導入した、新たな遺伝子改変iPS-NKT細胞医薬へ展開する土台/プラットフォームとなり、幅広いがん種と世界の幅広い地域への展開を可能にします。また、2020年6月より国立大学法人千葉大学において、世界初のiPS-NKTを用いた頭頸部がんを対象とする臨床第Ⅰ相医師主導治験(以下「本治験」)が実施され、2024年1月に無事終了しました。本治験について、2024年2月に学会で発表されたトップライン・データでは、主要評価項目である忍容性および安全性に問題ないこと、並びに初期的な臨床活性の確認が示されました。 〔CAR-iPSNKT細胞療法:BP2202〕BP2202(CAR-iPSNKT)は、非遺伝子改変iPS-NKT細胞にがんの目印(抗原)を認識するキメラ抗原受容体(CAR: Chimeric Antigen Receptor)を付加し、がん細胞殺傷能を高めた新規のCAR-T細胞療法*2です。CAR-T細胞療法とは、がん細胞が細胞表面上に発現する抗原(がんの目印)を認識するキメラ抗原受容体(CAR:Chimeric Antigen Receptor)を、体外でT細胞に遺伝子導入し、CARを導入したCAR-T細胞を培養で増殖させて投与する治療法です。当社が試作したHER2を標的抗原とする CAR iPS-NKTは、非遺伝子改変iPS-NKTと比較して抗腫瘍効果が高まることをマウスモデルで確認しています。また、当社は2023年5月にSTAR-CRISPRTM遺伝子編集技術をライセンス導入し、固形がんを含む様々な適応症に対して高度な遺伝子組換型CAR-iPSNKT細胞療法プログラムを創出することが可能となりました。BP2202はその最初の製品として位置づけられた、多発性骨髄腫を標的とするBCMA CAR-iPSNKTです。現在、米国での第Ⅰ相臨床試験に向けての準備を進めています。 〔HER2 CAR-T細胞療法:BP2301〕BP2301は、様々な固形がんで高発現するHER2を標的抗原とするCAR-T細胞療法です。これまで血液がんを標的とするCAR-T細胞療法は、優れた臨床効果が臨床試験で示され、グローバルで承認されてきました。しかし、より多くの方が罹患される固形がんへの展開においては、投与されたCAR-T細胞が、免疫抑制的な腫瘍微小環境において疲弊して機能を喪失し、十分に臨床効果を発揮できないという課題が明らかになってきました。この課題を解決するために、BP2301では、体内での優れた複製能と長期生存能を特徴とし、それによって腫瘍微小環境における疲弊抵抗性と持続的抗腫瘍効果が期待される幹細胞様免疫記憶型(ステムセル・メモリー・フェノタイプ)細胞を多く含むCAR-T細胞を用います。これは、信州大学の中沢洋三教授の非ウイルス遺伝子導入法に基づき、中沢教授及び同大学柳生茂希教授と新規の細胞培養法を共同開発したことによって可能になりました。2022年5月より国立大学法人信州大学においてHER2陽性の再発・進行骨・軟部肉腫及び婦人科悪性腫瘍を対象とする遺伝子改変HER2 CAR-T細胞の臨床第Ⅰ相医師主導治験が行われています。 抗体医薬 抗体医薬では、腫瘍組織においてがん細胞を排除する免疫の働きを抑制する免疫チェックポイント分子*3もしくは免疫調整分子に結合し、その機能を阻害する抗体の開発を進めています。がん免疫を抑制するアデノシン産生に介入するCD73とCD39をそれぞれ標的とするBP1200とBP1202、免疫細胞に発現し、その抑制に関わるTIM-3を標的とするBP1210、CD39分子とTIM-3分子を双方発現する免疫細胞においてこれらを同時に阻害する抗CD39×抗TIM-3二重特異性抗体BP1212に加えて、がん細胞上に発現するCD39分子とT細胞上に発現するCD3分子双方を標的とするT細胞エンゲージャー*4BP1223を開発パイプラインとして有します。 がんワクチン 〔免疫チェックポイント抗体連結個別化ネオアンチゲン・ワクチン:BP1209〕 BP1209は、がん細胞由来の遺伝子変異に由来しヒトの免疫システムが高い反応性を示すネオアンチゲンを標的とするがん免疫を、患者1人ひとりに対応して誘導するのに最適化された、完全個別化ネオアンチゲン・ワクチン*5・プラットフォームです。ワクチンとなるネオアンチゲン・ペプチドを、T細胞へ標的情報を伝える樹状細胞へ送達するのに免疫チェックポイント抗体を用います。同抗体への結合が可能となるよう当社オリジナルのリンカー技術が組み込まれています。抗腫瘍免疫を指令する樹状細胞に効率よくワクチン抗原を送達することによって、ネオアンチゲンを標的とするT細胞をペプチド単体よりもはるかに強力に惹起させることを、担がんマウスモデルで証明しました。 (4) 許認可、免許及び登録等の状況について① 許認可、免許及び登録、行政指導等医薬品開発は、各国の医薬品の開発及び当局への申請等に関する法律、日本では「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:薬機法、2014年11月25日施行、「薬事法」から改称)、米国では「連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)及びその関連する法令」、上記の他、日本及び米国を含め各国における当局の省令やガイダンス、ならびに安全性に関する非臨床試験の実施基準(GLP;Good Laboratory Practice)、臨床試験の実施基準(GCP;Good Clinical Practice)、製造管理及び品質管理規則(GMP;Good Manufacturing Practice)の下で進めております。 ② 知的財産権の状況当社は、2022年11月に理研からiPS由来NKT細胞を全世界で独占的に開発・製造・販売する権利を導入するオプション権を行使し、iPS由来NKT細胞の他家細胞療法使用を広範かつ排他的に保護する特許の独占実施権を得ました。<主要な特許の状況>発明の名称特許登録番号出願国(登録国)権利者上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)由来ペプチド4579836日本当社がんペプチドワクチン5706895日本当社5980303日本NKT細胞由来iPS細胞およびそれ由来のNKT細胞5652783日本理研8945922米国2336303欧州アロNKT細胞を用いた免疫療法およびそのためのT細胞抗原受容体(TCR)遺伝子のα鎖領域が均一なVα-Jαに再構成されている細胞および該細胞由来NKT細胞のバンキング6320473日本理研10813950米国264738欧州CAR発現免疫細胞を含む細胞集団の製造方法7576547日本当社国立大学法人信州大学京都府公立大学法人 (注)欧州については、欧州特許条約に則った特許出願(EPC出願)によっております。 [用語解説]*1(NKT細胞)ナチュラル・キラー(NK)細胞とT細胞の特徴を併せもち、自然免疫と獲得免疫をつなぐ役割をもつ免疫細胞。がん細胞をT細胞受容体やNK細胞受容体を通して直接殺傷する能力をもつと同時に、T細胞や樹状細胞など他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用をもつ。活性化すると、多様なサイトカインを産生し、自然免疫系に属するNK細胞の活性化と樹状細胞の成熟化を促す。成熟した樹状細胞は、さらに獲得免疫系に属するキラーT細胞を増殖・活性化させることで、相乗的に抗腫瘍効果が高まる。 *2(CAR-T細胞療法) Chimeric Antigen Receptor T-cell Therapy:キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法。がん細胞が発現する抗原を認識するキメラ抗原受容体を、T細胞(抗腫瘍免疫をもつリンパ球の一種)に遺伝子導入し、培養で増殖させて投与する治療法。 *3(免疫チェックポイント分子) 免疫恒常性を保つために自己に対する免疫応答を抑制するとともに、過剰な免疫反応を抑制する分子群のこと。がん免疫においては、過剰な活性化によって自己を攻撃するのを防ぐために存在しているが、発がん過程では、がん細胞が免疫系からの攻撃を回避し増殖するために利用される。 *4(T細胞エンゲージャー)T細胞に結合して活性化させるとともに、T細胞を疾患の原因となるがん細胞等にも結合し、T細胞をがん細胞等に接近させることによって、T細胞にがん細胞等を排除させるように設計された抗体。 *5(完全個別化ネオアンチゲン・ワクチン) 個々の患者のがん細胞にあるネオアンチゲンを探索し、これに対するオーダーメイドのがんワクチン。海外ではアカデミアや先行開発企業による臨床試験が行われており、その中にはネオアンチゲンをコードするmRNAを脂質ナノパーティクル(LNP)に格納したmRNAワクチンも含まれる。
FY2024|5,563 文字
3 【事業の内容】 当社は、新規の「がん免疫治療薬」の開発に領域を定める、探索研究から早期臨床試験段階にある複数のパイプラインを有する創薬ベンチャーです。事業モデル、技術の特徴は以下のとおりであります。 (1) 事業モデル 当社の事業モデルは、新規がん免疫治療薬を自社創製もしくは導入し、探索研究から早期臨床試験までを手掛け、国内外の製薬会社に開発製造販売権をライセンスアウトし、ライセンス先からライセンス収入を得るものです。 医薬品開発は上市までに一般的に10年以上かかり、投資回収までが長く、開発後期段階になるほど要する資金が大きくなるため、ベンチャーで創薬を事業として成立させるためには、開発投資を早期に回収できる仕組みが必要ですが、医薬品産業においては大手製薬企業が開発途上にあるベンチャーが創製するシーズをライセンスインする取引が豊富に行われています。現在は承認薬に至ったシーズのうち、ベンチャーが創製するシーズの数が、従来の大手製薬企業のそれを上回るようになっています。 この事業モデルでは、上市前の開発段階で、ライセンス先製薬企業から開発進捗に応じたライセンス関連収入(ライセンス契約締結時の一時金、その後開発進捗に応じて設定したマイルストンを達成する毎に得られる開発マイルストン収入、上市後は製品売上高の一定割合を得る販売ロイヤリティ収入等)を得ることを目指します。ライセンス後もライセンス先企業と共同開発し、開発費の貢献に合わせて将来の利益を按分したり、ライセンス先から開発協力金を得て開発を主導する等、色々な形態があります。 当社は、様々な開発ステージにあるパイプライン(医薬品候補)の開発を同時並行で進めることにより、投資早期回収と黒字転換後の継続的な収入の実現を図ります。 (2) 開発中のがん免疫治療薬の特徴 がん免疫治療薬の開発では、動かなくなってしまったがん免疫を再び動くようにすること、いったん動いたがん免疫が、任務を終えた後に「元に戻る」仕組みによってブレーキをかけられるのを防ぎ、持続させることが、創薬のターゲットとなります。これに成功すればがんを治療できることは、2018年にノーベル賞を受賞したPD-1という免疫チェックポイント(免疫のブレーキ)を阻害する抗体が、がん治療に革新をもたらしたことによって、立証されてきました。今を生きる私たちは、この治療の革新の恩恵を受ける途上にあり、がんの個別性や免疫応答の多様性にどう対応していくか、未解明の領域がたくさん残されていると考えています。がん免疫にがんの目印を与えるがんワクチン、T細胞というがん免疫そのものを大量に外から投入する細胞医薬、PD-1以外にもいくつもある「免疫が元に戻る仕組み」を一定期間止める抗体医薬、これらが当社の開発している薬です。がんの克服を目指す人に、新たな治療選択肢を提供するために、これからも研究活動を推進してまいります。 (3) 開発パイプライン 当社の開発パイプラインは以下のとおりです。このほか、次世代パイプラインの構築を目的として複数の探索・非臨床試験研究を実施しております。 細胞医薬〔iPS細胞由来再生NKT細胞療法:BP2201〕BP2201(iPS-NKT)は、iPS細胞から分化誘導したナチュラル・キラーT(NKT)細胞*1をがん治療に用いる新規の他家細胞医薬品候補です。NKT細胞は、がん細胞を直接殺傷する能力をもつと同時に、他の免疫細胞を活性化することにより、間接的にも抗腫瘍効果を発揮する免疫細胞です。しかし、ヒト末梢血中にわずか0.01~0.1%程度しか存在しないとされ、NKT細胞を体外に取り出し、がん治療に必要な細胞数まで培養・増殖させることが非常に難しいという課題がありました。 そこで国立研究開発法人理化学研究所(以下「理研」)では、生命医科学研究センター副センター長の古関明彦氏を中心に、この課題を解決する方法として、iPS細胞技術を用いることが計画されました。具体的には、NKT細胞を初期化して樹立したiPS細胞(NKT-iPS細胞)から再度NKT細胞(iPS-NKT細胞)に分化・誘導可能なことが示され、2010年、iPS細胞から抗腫瘍活性を備えたNKT細胞だけを大量に作り出すことに成功しました。 当社は、本細胞療法の研究開発に、開発元の理研とともに取り組んでまいりましたが、2022年11月に導入オプション権を行使し、全世界で独占的に開発・製造・販売するライセンスを取得しました。 本ライセンスにより、1)iPS由来NKT細胞の他家細胞療法使用を広範かつ排他的に保護する「特許」(日米欧で登録済み)、2)現在進行中の治験によって臨床上の安全性と一定の有効性の示唆が期待される「マスターiPSセルバンク」、3)マスターiPSセルバンクからNKT細胞へ高純度で大量に分化誘導させる「製造法」の3つで構成されるプラットフォームを有することになりました。このプラットフォームは、いろいろながん種のがん抗原に対するCAR遺伝子を導入した、新たな遺伝子改変iPS-NKT細胞医薬へ展開する土台/プラットフォームとなり、幅広いがん種と世界の幅広い地域への展開を可能にします。また、2020年6月より国立大学法人千葉大学において、世界初のiPS-NKTを用いた頭頸部がんを対象とする臨床第Ⅰ相医師主導治験(以下「本治験」)が実施され、2024年1月に無事終了しました。本治験について、2024年2月に学会で発表されたトップライン・データでは、主要評価項目である忍容性および安全性に問題ないこと、並びに初期的な臨床活性の確認が示されました。 〔CAR-iPSNKT細胞療法:BP2202〕BP2202(CAR-iPSNKT)は、非遺伝子改変iPS-NKT細胞にがんの目印(抗原)を認識するキメラ抗原受容体(CAR: Chimeric Antigen Receptor)を付加し、がん細胞殺傷能を高めた新規のCAR-T細胞療法*2です。CAR-T細胞療法とは、がん細胞が細胞表面上に発現する抗原(がんの目印)を認識するキメラ抗原受容体(CAR:Chimeric Antigen Receptor)を、体外でT細胞に遺伝子導入し、CARを導入したCAR-T細胞を培養で増殖させて投与する治療法です。当社が試作したHER2を標的抗原とする CAR iPS-NKTは、非遺伝子改変iPS-NKTと比較して抗腫瘍効果が高まることをマウスモデルで確認しています。また、当社は2023年5月にSTAR-CRISPRTM遺伝子編集技術をライセンス導入し、固形がんを含む様々な適応症に対して高度な遺伝子組換型CAR-iPSNKT細胞療法プログラムを創出することが可能となり、現在そのプロトタイプ製品の研究開発を進めています。 〔HER2 CAR-T細胞療法:BP2301〕BP2301は、様々な固形がんで高発現するHER2を標的抗原とするCAR-T細胞療法です。これまで血液がんを標的とするCAR-T細胞療法は、優れた臨床効果が臨床試験で示され、グローバルで承認されてきました。しかし、より多くの方が罹患される固形がんへの展開においては、投与されたCAR-T細胞が、免疫抑制的な腫瘍微小環境において疲弊して機能を喪失し、十分に臨床効果を発揮できないという課題が明らかになってきました。この課題を解決するために、BP2301では、体内での優れた複製能と長期生存能を特徴とし、それによって腫瘍微小環境における疲弊抵抗性と持続的抗腫瘍効果が期待される幹細胞様免疫記憶型(ステムセル・メモリー・フェノタイプ)細胞を多く含むCAR-T細胞を用います。これは、信州大学の中沢洋三教授の非ウイルス遺伝子導入法に基づき、中沢教授及び同大学柳生茂希教授と新規の細胞培養法を共同開発したことによって可能になりました。 2022年5月より国立大学法人信州大学においてHER2陽性の再発・進行骨・軟部肉腫及び婦人科悪性腫瘍を対象とする遺伝子改変HER2 CAR-T細胞の臨床第Ⅰ相医師主導治験が行われています。 抗体医薬 抗体医薬では、腫瘍組織においてがん細胞を排除する免疫の働きを抑制する免疫チェックポイント分子*3もしくは免疫調整分子に結合し、その機能を阻害する抗体の開発を進めています。がん免疫を抑制するアデノシン産生に介入するCD73とCD39をそれぞれ標的とするBP1200とBP1202、免疫細胞に発現し、その抑制に関わるTIM-3を標的とするBP1210のほかに、CD39分子とTIM-3分子を双方発現する免疫細胞においてこれらを同時に阻害する抗CD39×抗TIM-3二重特異性抗体BP1212を開発パイプラインとして有します。 がんワクチン 〔免疫チェックポイント抗体連結個別化ネオアンチゲン・ワクチン:BP1209〕 BP1209は、がん細胞由来の遺伝子変異に由来しヒトの免疫システムが高い反応性を示すネオアンチゲンを標的とするがん免疫を、患者1人ひとりに対応して誘導するのに最適化された、完全個別化ネオアンチゲン・ワクチン*4・プラットフォームです。ワクチンとなるネオアンチゲン・ペプチドを、T細胞へ標的情報を伝える樹状細胞へ送達するのに免疫チェックポイント抗体を用います。同抗体への結合が可能となるよう当社オリジナルのリンカー技術が組み込まれています。抗腫瘍免疫を指令する樹状細胞に効率よくワクチン抗原を送達することによって、ネオアンチゲンを標的とするT細胞をペプチド単体よりもはるかに強力に惹起させることを、担がんマウスモデルで証明しました。今後、個別化ネオアンチゲン・ワクチン開発は、BP1209のフォーマットに絞って、臨床応用に向けて準備を進めていきます。 (4) 許認可、免許及び登録等の状況について① 許認可、免許及び登録、行政指導等医薬品開発は、各国の医薬品の開発及び当局への申請等に関する法律、日本では「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:薬機法、2014年11月25日施行、「薬事法」から改称)、米国では「連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)及びその関連する法令」、上記の他、日本及び米国を含め各国における当局の省令やガイダンス、ならびに安全性に関する非臨床試験の実施基準(GLP;Good Laboratory Practice)、臨床試験の実施基準(GCP;Good Clinical Practice)、製造管理及び品質管理規則(GMP;Good Manufacturing Practice)の下で進めております。 ② 知的財産権の状況当社は、2022年11月に理研からiPS由来NKT細胞を全世界で独占的に開発・製造・販売する権利を導入するオプション権を行使し、iPS由来NKT細胞の他家細胞療法使用を広範かつ排他的に保護する特許の独占実施権を得ました。<主要な特許の状況>発明の名称特許登録番号出願国(登録国)権利者上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)由来ペプチド4579836日本当社7655751米国がんペプチドワクチン5706895日本当社5980303日本NKT細胞由来iPS細胞およびそれ由来のNKT細胞5652783日本理研8945922米国2336303欧州アロNKT細胞を用いた免疫療法およびそのためのT細胞抗原受容体(TCR)遺伝子のα鎖領域が均一なVα-Jαに再構成されている細胞および該細胞由来NKT細胞のバンキング6320473日本理研10813950米国264738欧州 (注)欧州については、欧州特許条約に則った特許出願(EPC出願)によっております。 [用語解説]*1(NKT細胞)ナチュラル・キラー(NK)細胞とT細胞の特徴を併せもち、自然免疫と獲得免疫をつなぐ役割をもつ免疫細胞。がん細胞をT細胞受容体やNK細胞受容体を通して直接殺傷する能力をもつと同時に、T細胞や樹状細胞など他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用をもつ。活性化すると、多様なサイトカインを産生し、自然免疫系に属するNK細胞の活性化と樹状細胞の成熟化を促す。成熟した樹状細胞は、さらに獲得免疫系に属するキラーT細胞を増殖・活性化させることで、相乗的に抗腫瘍効果が高まる。 *2(CAR-T細胞療法) Chimeric Antigen Receptor T-cell Therapy:キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法。がん細胞が発現する抗原を認識するキメラ抗原受容体を、T細胞(抗腫瘍免疫をもつリンパ球の一種)に遺伝子導入し、培養で増殖させて投与する治療法。 *3(免疫チェックポイント分子) 免疫恒常性を保つために自己に対する免疫応答を抑制するとともに、過剰な免疫反応を抑制する分子群のこと。がん免疫においては、過剰な活性化によって自己を攻撃するのを防ぐために存在しているが、発がん過程では、がん細胞が免疫系からの攻撃を回避し増殖するために利用される。 *4(完全個別化ネオアンチゲン・ワクチン) 個々の患者のがん細胞にあるネオアンチゲンを探索し、これに対するオーダーメイドのがんワクチン。海外ではアカデミアや先行開発企業による臨床試験が行われており、その中にはネオアンチゲンをコードするmRNAを脂質ナノパーティクル(LNP)に格納したmRNAワクチンも含まれる。
FY2023|5,725 文字
3 【事業の内容】 当社は、新規の「がん免疫治療薬」の開発に領域を定める、探索研究から早期臨床試験段階にある複数のパイプラインを有する創薬ベンチャーです。事業モデル、技術の特徴は以下のとおりであります。 (1) 事業モデル当社の事業モデルは、新規がん免疫治療薬を自社創製もしくは導入し、探索研究から早期臨床試験までを手掛け、国内外の製薬会社に開発製造販売権をライセンスアウトし、ライセンス先からライセンス収入を得るものです。 医薬品開発は上市までに一般的に10年以上かかり、投資回収までが長く、開発後期段階になるほど要する資金が大きくなるため、ベンチャーで創薬を事業として成立させるためには、開発投資を早期に回収できる仕組みが必要ですが、医薬品産業においては大手製薬企業が開発途上にあるベンチャーが創製するシーズをライセンスインする取引が豊富に行われています。現在は承認薬に至ったシーズのうち、ベンチャーが創製するシーズの数が、従来の大手製薬企業のそれを上回るようになっています。 この事業モデルでは、上市前の開発段階で、ライセンス先製薬企業から開発進捗に応じたライセンス関連収入(ライセンス契約締結時の一時金、その後開発進捗に応じて設定したマイルストンを達成する毎に得られる開発マイルストン収入、上市後は製品売上高の一定割合を得る販売ロイヤリティ収入等)を得ることを目指します。ライセンス後もライセンス先企業と共同開発し、開発費の貢献に合わせて将来の利益を按分したり、ライセンス先から開発協力金を得て開発を主導する等、色々な形態があります。 当社は、様々な開発ステージにあるパイプライン(医薬品候補)の開発を同時並行で進めることにより、投資早期回収と黒字転換後の継続的な収入の実現を図ります。 (2) 開発中のがん免疫治療薬の特徴 がん免疫治療薬の開発では、動かなくなってしまったがん免疫を再び動くようにすること、いったん動いたがん免疫が、任務を終えた後に「元に戻る」仕組みによってブレーキをかけられるのを防ぎ、持続させることが、創薬のターゲットとなります。これに成功すればがんを治療できることは、2018年にノーベル賞を受賞したPD-1という免疫チェックポイント(免疫のブレーキ)を阻害する抗体が、がん治療に革新をもたらしたことによって、立証されてきました。今を生きる私たちは、この治療の革新の恩恵を受ける途上にあり、がんの個別性や免疫応答の多様性にどう対応していくか、未解明の領域がたくさん残されていると考えています。がん免疫にがんの目印を与えるがんワクチン、T細胞というがん免疫そのものを大量に外から投入する細胞医薬、PD-1以外にもいくつもある「免疫が元に戻る仕組み」を一定期間止める抗体医薬、これらが当社の開発している薬です。がんの克服を目指す人に、新たな治療選択肢を提供するために、これからも研究活動を推進してまいります。 (3) 開発パイプライン 当社の開発パイプラインは以下のとおりです。このほか、次世代パイプラインの構築を目的として複数の探索・非臨床試験研究を実施しております。 細胞医薬〔iPS細胞由来再生NKT細胞療法:BP2201〕BP2201(iPS-NKT)は、iPS細胞から分化誘導したナチュラル・キラーT(NKT)細胞*1をがん治療に用いる新規の他家細胞医薬です。NKT細胞は、がん細胞を直接殺傷する能力をもつと同時に、他の免疫細胞を活性化することにより、間接的にも抗腫瘍効果を発揮する免疫細胞です。しかし、ヒト末梢血中にわずか0.01~0.1%程度しか存在しないとされ、NKT細胞を体外に取り出し、がん治療に必要な細胞数まで培養・増殖させることが非常に難しいという課題がありました。 そこで国立研究開発法人理化学研究所(以下「理研」)では、生命医科学研究センター副センター長の古関明彦氏を中心に、この課題を解決する方法として、iPS細胞技術を用いることが計画されました。具体的には、NKT細胞を初期化して樹立したiPS細胞(NKT-iPS細胞)から再度NKT細胞(iPS-NKT細胞)に分化・誘導可能なことが示され、2010年、iPS細胞から抗腫瘍活性を備えたNKT細胞だけを大量に作り出すことに成功しました。 当社は、本細胞療法の研究開発に、開発元の理研とともに取り組んでまいりましたが、2022年11月に導入オプション権を行使し、全世界で独占的に開発・製造・販売するライセンスを取得しました。 本ライセンスにより、1)iPS由来NKT細胞の他家細胞療法使用を広範かつ排他的に保護する「特許」(日米欧で登録済み)、2)現在進行中の治験によって臨床上の安全性と一定の有効性の示唆が期待される「マスターiPSセルバンク」、3)マスターiPSセルバンクからNKT細胞へ高純度で大量に分化誘導させる「製造法」の3つで構成されるプラットフォームを有することになりました。このプラットフォームは、いろいろながん種のがん抗原に対するCAR遺伝子を導入した、新たな遺伝子改変iPS-NKT細胞医薬へ展開する土台となり、幅広いがん種と世界の幅広い地域への展開を可能にします。 また、2020年6月より国立大学法人千葉大学において頭頸部がんを対象とするiPS-NKTの臨床第Ⅰ相医師主導治験(以下「本治験」)が行われています。 〔HER2 CAR-T細胞療法:BP2301〕BP2301は、様々な固形がんで高発現するHER2を標的抗原とするCAR-T細胞療法*2です。CAR-T細胞療法とは、がん細胞が細胞表面上に発現する抗原(がんの目印)を認識するキメラ抗原受容体(CAR: Chimeric Antigen Receptor)を、体外でT細胞に遺伝子導入し、CARを導入したCAR-T細胞を培養で増殖させて投与する治療法です。これまで血液がんを標的とするCAR-T細胞療法は、優れた臨床効果が臨床試験で示され、グローバルで承認されてきました。しかし、より多くの方が罹患される固形がんへの展開においては、投与されたCAR-T細胞が、免疫抑制的な腫瘍微小環境において疲弊して機能を喪失し、十分に臨床効果を発揮できないという課題が明らかになってきました。 この課題を解決するために、BP2301 では、体内での優れた複製能と長期生存能を特徴とし、それによって腫瘍微小環境における疲弊抵抗性と持続的抗腫瘍効果が期待される幹細胞様免疫記憶型(ステムセル・メモリー・フェノタイプ)細胞を多く含むCAR-T細胞を用います。これは、信州大学の中沢洋三教授の非ウイルス遺伝子導入法に基づき、中沢教授及び同大学柳生茂希教授と新規の細胞培養法を共同開発したことによって可能になりました。 2022年5月より国立大学法人信州大学においてHER2陽性の再発・進行骨・軟部肉腫及び婦人科悪性腫瘍を対象とする遺伝子改変HER2 CAR-T細胞の臨床第Ⅰ相医師主導治験が行われています。 抗体医薬 抗体医薬では、腫瘍組織においてがん細胞を排除する免疫の働きを抑制する免疫チェックポイント分子*3もしくは免疫調整分子に結合し、その機能を阻害する抗体の開発を進めています。がん免疫を抑制するアデノシン産生に介入するCD73とCD39をそれぞれ標的とするBP1200とBP1202、免疫細胞に発現し、その抑制に関わるTIM-3を標的とするBP1210のほかに、CD39とTIM-3を共発現する免疫細胞において同時に阻害する抗CD39×抗TIM-3二重特異性抗体BP1212を開発パイプラインとして有します。 がんワクチン 〔免疫チェックポイント抗体連結個別化ネオアンチゲン・ワクチン:BP1209〕 BP1209は、がん細胞由来の遺伝子変異に由来しヒトの免疫システムが高い反応性を示すネオアンチゲンを標的とするがん免疫を、患者1人ひとりに対応して誘導するのに最適化された、完全個別化ネオアンチゲン・ワクチン*4・プラットフォームです。ワクチンとなるネオアンチゲン・ペプチドを、T細胞へ標的情報を伝える樹状細胞へ送達するのに免疫チェックポイント抗体を用います。同抗体への結合が可能となるよう当社オリジナルのリンカー技術が組み込まれています。抗腫瘍免疫を指令する樹状細胞に効率よくワクチン抗原を送達することによって、ネオアンチゲンを標的とするT細胞をペプチド単体よりもはるかに強力に惹起させることを、担がんマウスモデルで証明しました。今後、個別化ネオアンチゲン・ワクチン開発は、BP1209のフォーマットに絞って、臨床応用に向けて準備を進めていきます。 〔がんペプチドワクチンGRN-1201〕GRN-1201は、欧米人に多いHLA*5-A2型の共通抗原ペプチド4種で構成される、米国や欧州を始めとするグローバル展開を想定したがんペプチドワクチンです。2022年5月に米国で実施してきたGRN-1201の非小細胞肺がんを対象とする免疫チェックポイント抗PD-1抗体併用第Ⅱ相臨床試験の早期中止を決定し、現在は当初の治験対象と試験プロトコルを見直し、開発パートナーと新しく臨床試験を開始する道を模索しています。 (4) 許認可、免許及び登録等の状況について① 許認可、免許及び登録、行政指導等医薬品開発は、各国の医薬品の開発及び当局への申請等に関する法律、日本では「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:薬機法、2014年11月25日施行、「薬事法」から改称)、米国では「連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)及びその関連する法令」、上記の他、日本及び米国を含め各国における当局の省令やガイダンス、ならびに安全性に関する非臨床試験の実施基準(GLP;Good Laboratory Practice)、臨床試験の実施基準(GCP;Good Clinical Practice)、製造管理及び品質管理規則(GMP;Good Manufacturing Practice)の下で進めております。 ② 知的財産権の状況当社は、2022年11月に理研からiPS由来NKT細胞を全世界で独占的に開発・製造・販売する権利を導入するオプション権を行使し、iPS由来NKT細胞の他家細胞療法使用を広範かつ排他的に保護する特許の独占実施権を得ました。 <主要な特許の状況>発明の名称特許登録番号出願国(登録国)権利者上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)由来ペプチド4579836日本当社7655751米国副甲状腺ホルモン関連タンパク質のHLA-A24またはHLA-A2結合ペプチド4579581日本当社がんペプチドワクチン5706895日本当社5980303日本NKT細胞由来iPS細胞およびそれ由来のNKT細胞5652783日本理研8945922米国2336303欧州アロNKT細胞を用いた免疫療法およびそのためのT細胞抗原受容体(TCR)遺伝子のα鎖領域が均一なVα-Jαに再構成されている細胞および該細胞由来NKT細胞のバンキング6320473日本理研10813950米国264738欧州 (注)欧州については、欧州特許条約に則った特許出願(EPC出願)によっております。 [用語解説] *1(NKT細胞) ナチュラル・キラー(NK)細胞とT細胞の特徴を併せもち、自然免疫と獲得免疫をつなぐ役割をもつ免疫細胞。がん細胞をT細胞受容体やNK細胞受容体を通して直接殺傷する能力をもつと同時に、T細胞や樹状細胞など他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用をもつ。活性化すると、多様なサイトカインを産生し、自然免疫系に属するNK細胞の活性化と樹状細胞の成熟化を促す。成熟した樹状細胞は、さらに獲得免疫系に属するキラーT細胞を増殖・活性化させることで、相乗的に抗腫瘍効果が高まる。 *2(CAR-T細胞療法) Chimeric Antigen Receptor T-cell Therapy:キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法。がん細胞が発現する抗原を認識するキメラ抗原受容体を、T細胞(抗腫瘍免疫をもつリンパ球の一種)に遺伝子導入し、培養で増殖させて投与する治療法。 *3(免疫チェックポイント分子) 免疫恒常性を保つために自己に対する免疫応答を抑制するとともに、過剰な免疫反応を抑制する分子群のこと。がん免疫においては、過剰な活性化によって自己を攻撃するのを防ぐために存在しているが、発がん過程では、がん細胞が免疫系からの攻撃を回避し増殖するために利用される。 *4(完全個別化ネオアンチゲン・ワクチン) 個々の患者のがん細胞にあるネオアンチゲンを探索し、これに対するオーダーメイドのがんワクチン。海外ではアカデミアや先行開発企業による臨床試験が行われており、その中にはネオアンチゲンをコードするmRNAを脂質ナノパーティクル(LNP)に格納したmRNAワクチンも含まれる。 *5(HLA) Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原は、体のほとんど全ての細胞表面で発現がみられる、免疫機構において重要なタンパク質で、細菌やウイルスなどの病原体の排除やがん細胞の拒絶、臓器移植の際の拒絶反応などに関与しており「主要組織適合遺伝子複合体」とも呼ばれている。HLAはがん細胞でも細胞表面上に発現しており、がんワクチンの作用機序においては、がん細胞内でがん抗原タンパクが分解されて生成されたペプチドと結合して細胞表面に移動し、CTLにがん細胞として認識させるように機能する。HLAは自己と非自己(他)を区別する「自他認識のマーカー」であり、非常に多様な「他(た)」を自己と区別するために、非常に多様な型がある。ペプチドはHLAの特定の型に結合し、型が合わない場合は結合しない。
FY2022|8,325 文字
3 【事業の内容】 当社は、新規の「がん免疫治療薬」の開発に領域を定める、探索研究から早期臨床試験段階にある複数のパイプラインを有する創薬ベンチャーです。事業モデル、技術の特徴は以下のとおりであります。 (1) 事業モデル当社の事業モデルは、新規がん免疫治療薬を自社創製もしくは導入し、探索研究から早期臨床試験までを手掛け、国内外の製薬会社に開発製造販売権をライセンスアウトし、ライセンス先からライセンス収入を得るものです。 医薬品開発は上市までに一般的に10年以上かかり、投資回収までが長く、開発後期段階になるほど要する資金が大きくなるため、ベンチャーで創薬を事業として成立させるためには、開発投資を早期に回収できる仕組みが必要ですが、医薬品産業においては大手製薬企業が開発途上にあるベンチャーが創製するシーズをライセンスインする取引が豊富に行われています。現在は承認薬に至ったシーズのうち、ベンチャーが創製するシーズの数が、従来の大手製薬企業のそれを上回るようになっています。 この事業モデルでは、上市前の開発段階で、ライセンス先製薬企業から開発進捗に応じたライセンス関連収入(ライセンス契約締結時の一時金、その後開発進捗に応じて設定したマイルストンを達成する毎に得られる開発マイルストン収入、上市後は製品売上高の一定割合を得る販売ロイヤリティ収入等)を得ることを目指します。ライセンス後もライセンス先企業と共同開発し、開発費の貢献に合わせて将来の利益を按分したり、ライセンス先から開発協力金を得て開発を主導する等、色々な形態があります。 当社は、様々な開発ステージにあるパイプライン(医薬品候補)の開発を同時並行で進めることにより、投資早期回収と黒字転換後の継続的な収入の実現を図ります。 (2) 開発中のがん免疫治療薬の特徴 がん免疫治療薬の開発では、動かなくなってしまったがん免疫を再び動くようにすること、いったん動いたがん免疫が、任務を終えた後に「元に戻る」仕組みによってブレーキをかけられるのを防ぎ、持続させることが、創薬のターゲットとなります。これに成功すればがんを治療できることは、2018年にノーベル賞を受賞したPD-1という免疫チェックポイント(免疫のブレーキ)を阻害する抗体が、がん治療に革新をもたらしたことによって、立証されてきました。今を生きる私たちは、この治療の革新の恩恵を受ける途上にあり、がんの個別性や免疫応答の多様性にどう対応していくか、未解明の領域がたくさん残されていると考えています。がん免疫にがんの目印を与えるがんワクチン、T細胞というがん免疫そのものを大量に外から投入する細胞医薬、PD-1以外にもいくつもある「免疫が元に戻る仕組み」を一定期間止める抗体医薬、これらが当社の開発している薬です。がんの克服を目指す人に、新たな治療選択肢を提供するために、これからも研究活動を推進してまいります。 (3) 開発パイプライン 当社が優先して進めることを決めたパイプラインは以下のとおりです。このほか、次世代パイプラインの構築を目的として複数の探索・非臨床試験研究を実施しております。 細胞医薬iPS細胞由来再生NKT細胞療法(iPS-NKT)iPS-NKTは、iPS細胞から分化誘導したNKT細胞*1をがん治療に用いる新規の他家細胞医薬です。多面的な抗腫瘍効果を持つものの血中に僅かしか存在しないため細胞医薬へは適用困難と考えられていたNKT細胞が、iPS細胞技術によって、ドナー健常人の血液由来のiPSマスターセルバンクから大量かつ均質に製造可能になりました。 2020年6月より、世界でも初となるiPS細胞由来再生NKT細胞療法の医師主導治験が、頭頸部がんを対象として国立大学法人千葉大学医学部附属病院で進められています。当社は2018年に、理化学研究所が進める本開発プロジェクトに参画し、共同研究を進めており、iPS-NKTの独占的開発製造販売ライセンスの導入オプション権を有しています。本治験は順調に進んでおり、当社は本治験を支援するとともに、次相企業治験を見据えた製造工程改良を進めています。 iPS-NKTを幅広いがん種・地域へ展開するためのプラットフォームの構築を目指しており、その構成要素となるのが、iPS由来NKT細胞の活動領域を広範かつ排他的に保護する「特許」(日米欧で登録済み)、本治験によって臨床上の安全性と一定の有効性の示唆が期待される「iPSマスターセルバンク」及び現在工程改良に取り組んでいるマスターセルバンクからNKT細胞への「分化誘導法」の3つです。このプラットフォームにキメラ抗原受容体(CAR)導入等の遺伝子改変技術を組み合わせることによって、新たな遺伝子改変iPS-NKT細胞医薬への展開も可能になります。 HER2 CAR-T細胞療法(BP2301)BP2301は、さまざまな固形がんで高発現するHER2を標的抗原とするキメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞(CAR-T細胞)療法*2であり、2023年3月期の第1四半期にHER2陽性の再発・進行骨・軟部肉腫及び婦人科悪性腫瘍を対象に、第Ⅰ相医師主導治験が開始されます。数年間を予定する本治験で臨床上の安全性及び薬効が示唆された後は、企業治験となる第Ⅱ相臨床試験へ進みます。 これまで血液がんを標的とするCAR-T細胞療法は70-90%の奏効率に至ることもあり、優れた臨床効果をもってグローバルで承認されてきました。HER2を標的とするBP2301は、より多くの患者がいる固形がんへとCAR-T細胞療法の適用を拡げる可能性をもっています。しかし、固形がんへの展開には、がん免疫に抑制がかかる腫瘍微小環境においてCAR-T細胞が疲弊し十分に機能を発揮できないという課題がありました。この課題を解決するために、BP2301では、体内での優れた複製能と長期生存能を特徴とし、それによって腫瘍微小環境における疲弊抵抗性と持続的抗腫瘍効果が期待される幹細胞様免疫記憶型(ステムセル・メモリー・フェノタイプ)細胞を多く含むCAR-T細胞を用います。これは、国立大学法人信州大学の中沢洋三教授の非ウイルス遺伝子導入法に基づき、中沢教授及び同大学柳生茂希教授と新規の細胞培養法を共同開発したことによって可能になりました。 抗体医薬 抗CD73抗体(BP1200)、抗CD39抗体(BP1202)、抗TIM-3抗体(BP1210)について、「先行開発品と機能的に差別化された抗体の取得」を目指して開発を進めてきました。現在では複数のターゲットに対して先行品と差別化されたリード抗体を有し、担がんマウスモデルでの有効性を確認し、非臨床コンセプト証明に至っています。今後はこれらの非臨床試験を進めるとともに、まだ非臨床コンセプト証明に至っていない抗体をその段階へ到達させます。 また、これらの1つの標的抗原に対する抗体を基に、免疫抑制性の腫瘍微小環境でより高い抗腫瘍免疫を発揮させることを目的として、2つの標的抗原に対する二重特異性を付与したバイスペシフィック抗体を作製し、付加価値を高めていく展開を想定しています。他社先行抗体とスペックにおいて差別化されたシングル標的抗体の抗CD39抗体(BP1202)、抗TIM-3抗体(BP1210)に、BP1210 開発過程において樹立した二重特異性抗体化技術を掛け合わせることにより、抗CD39×抗TIM-3二重特異性抗体(BP1212)を創出しました。 がんワクチン 免疫チェックポイント抗体連結個別化ネオアンチゲン・ワクチン(BP1209)BP1209 は、腫瘍特異的で高い免疫原性を持つネオアンチゲンを標的にした抗腫瘍免疫を、患者一人ひとりに対応して惹起するのに最適化された、完全個別化ネオアンチゲン・ワクチン*3・プラットフォームです。これまで開発を進めてきたBP1101のモダリティ(医薬品形態)はペプチドワクチンであるのに対し、BP1209 は免疫チェックポイント抗体とネオアンチゲン・ペプチドの複合体ワクチンです。BP1101に免疫チェックポイント抗体への結合が可能となる当社オリジナルのリンカー技術を付加し、免疫チェックポイント抗体がワクチン抗原を樹状細胞へ送達するとともに、ワクチンによる腫瘍特異的T細胞誘導を促進する、新規の薬効メカニズムを織り込みました。抗腫瘍免疫を指令する樹状細胞に効率よくワクチン抗原を送達することによって、腫瘍抗原を標的とする細胞性免疫をBP1101よりもはるかに強力に惹起させることを、担癌マウスモデルで証明しました。 今後、個別化ネオアンチゲン・ワクチン開発は、BP1209のフォーマットに絞って、臨床応用に向けて準備を進めていきます。 がんペプチドワクチン(GRN-1201) GRN-1201は、欧米人に多いHLA-A2型の共通抗原ペプチド4種で構成される、米国や欧州を始めとするグローバル展開を想定したがんペプチドワクチンです。米国で、非小細胞肺がんの一次治療患者を対象に、免疫チェックポイント阻害抗体ペムブロリズマブとの併用による第Ⅱ相臨床試験を実施してきました。一定の症例数で中間評価を行い、併用療法の安全性とペムブロリズマブ単剤を上回ることが期待される臨床効果が示唆されたら、そのままライセンスアウトに移行する計画でした。 しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、米国で実施する臨床試験は、特に当事業年度後半から症例登録において影響を受けており、想定よりも長い試験期間がかかりました。この間に、同対象疾患における標準治療も免疫チェックポイント抗体と化学療法剤の併用療法が大いにシェアを占めるように変遷し、症例登録競争はますます激しくなる見通しです。 一方で、オープンラベル*4の臨床試験で、かつこれまで長期間かかっていることにより、本試験の主要評価項目であるORR*5(Objective Response Rate: 奏効率)の妥当性や、より長期的な指標となるPFS*6(Progression Free Survival: 無増悪生存期間)やOS*7(Overall Survival: 全生存期間)といった本来がんワクチンが存在感を示すことができる臨床データも見えてきました。 1.GRN-1201の米国第Ⅱ相臨床試験の早期中止の決定当社は、2022年5月12日開催の取締役会で、米国で実施してきたGRN-1201の非小細胞肺がんを対象とする免疫チェックポイント抗PD-1抗体併用第Ⅱ相臨床試験(以下、「本試験」)を計画より早く切り上げることを決議しました。 本試験は64例の症例登録を計画しておりました。しかし、2020年以降、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行が深刻化すると、医療機関における急性期医療・感染症外来への医療資源のシフト、患者側の受診抑制等が起こり、多くの臨床試験が滞りました。加えて、時間の経過とともに、試験開始当初は現在の治験対象(非小細胞肺がんで、50%以上のがん細胞でPD-L1が発現する患者: 約2割と推定される)では抗PD-1抗体のぺムブロリズマブ単剤投与が標準療法であったのに対し、現時点ではぺムブロリズマブと化学療法剤の併用が標準療法に加わり、むしろ主流を占めるようになりました。その結果、患者登録が当初計画に比べてかなりの遅れが生じており、2022年5月時点で、本試験の累計登録症例数は20例にとどまり、当初計画の約3割に過ぎない状況となっております。 一方で、本試験が長期に渡ったことから、オープンラベル試験として臨床成績がタイムリーに得られる中で、当初設計した試験プロトコルでは、本剤の適切な評価が難しいことが徐々に明らかになってきました。 ・主要評価項目であるORRでは、ペムブロリズマブ単剤と同程度であるが、臨床効果を見るのにより適切なPFSやOSではペムブロリズマブ単剤を上回ることが示唆されること ・奏功例*8以外でも、総合効果*9で安定(SD: Stable Disease) *10と評価された3例はいずれも生存期間が70 週以上に達しており、臨床効果の持続傾向が示唆されること 以上より、主要評価項目としては、ORRではなく、OSまたはPFSが適切と考えられます。 また、現在の治験対象患者の標準治療において、投与適格者をPD-L1発現率50%以上に限定しない化学療法剤併用が主流になってきている中で、もはやGRN-1201においてもこれに限定する必要はなくなってきています。 以上より、開発方針としては、このまま現在の治験対象と試験プロトコルで継続するよりも、評価項目、適格要件を再検討して、仕切り直す方が適切と判断しました。 2.その他、見直しを行ったパイプライン群 新型コロナウイルス感染症の世界的流行の長期化による臨床試験の停滞はその後の開発に爪跡を残しています。開発領域によっては、その間に発表された先行開発品の臨床試験成績がどれも振るわず、その特定の標的や作用メカニズムに依拠する創薬の可能性そのものに疑義が生じるようになったものもあります。さらに、開発投資が先行する創薬バイオベンチャーにとって重要な意味をなす資金調達環境が、特に2021年後半からグローバルで悪化しています。当社は、かかる環境に適合するために、優先して資金を投入し開発を進めるパイプラインの順位付けを見直し、整理を行いました。 ・TLR9アゴニストLNP製剤(BP1401) 強い免疫抑制下にある腫瘍(腫瘍微小環境)を、多くの免疫細胞が浸潤し抗腫瘍免疫が活性化している環境へと変えること、いわゆる“Cold Tumor”を“Hot Tumor”へと変えることをコンセプトとするTLR9アゴニスト製剤は、臨床開発段階にある先行品が数多くありました。それらはすべて、腫瘍にいるTLR9発現樹状細胞(pDC)に送達されるよう、腫瘍に直接投与する腫瘍局所投与を投与経路としています。BP1401は「薬効が示され承認へと向かう先行開発品を、腫瘍への集積の問題があるため少し薬効は落ちるかもしれないものの利便性が高い全身投与(静脈投与経路)が可能なLNP(脂質ナノパーティクル) 製剤をもって置き換える」ことを開発コンセプトとして、2019年末から国立大学法人大阪大学の青枝大貴特任准教授らのもつ技術を導入して開発に取り組んできました。これまでの大阪大学との共同研究で、担がんマウスモデルにおいて腫瘍局所投与に遜色ない腫瘍縮小効果を確認し、LNP製剤の安定性においても確認に成功しております。 しかし、2020年から2021年にかけて発表された腫瘍局所投与の先行臨床開発品の臨床試験成績が総じて不振で、有望な早期臨床試験結果をもって次相臨床試験へと進んでいるものがなくなってしまい、もはや当初想定した開発コンセプトが成立しなくなりました。 TLR9アゴニストを用いた創薬の難しさが浮き彫りとなった現在、パイプラインに開発資金投入の優先順位を付けるのであれば、BP1401については下げざるを得ないと判断し、パイプライン表からは外すことに致しました。 ・抗HLA-DR抗体(BP1206)、抗PVR抗体(BP1211) 標的分子の作用機序の複雑さから、抗体による阻害効果が他の免疫調整機構と免疫細胞へ影響が出ることと、その解決に時間を要することが開発を進めるにしたがって分かってきました。よって、CD73 (BP1200)、CD39 (BP1202) や TIM-3 (BP1210) といった臨床上の有用性の解明が進んでいる標的分子に対する抗体開発を優先し、BP1206とBP1211に関してもパイプライン表から外すことに致しました。 (4) 許認可、免許及び登録等の状況について① 許認可、免許及び登録、行政指導等医薬品開発は、各国の医薬品の開発及び当局への申請等に関する法律、日本では「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:薬機法、2014年11月25日施行、「薬事法」から改称)、米国では「連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)及びその関連する法令」、上記の他、日本及び米国を含め各国における当局の省令やガイダンス、ならびに安全性に関する非臨床試験の実施基準(GLP;Good Laboratory Practice)、臨床試験の実施基準(GCP;Good Clinical Practice)、製造管理及び品質管理規則(GMP;Good Manufacturing Practice)の下で進めております。 ② 知的財産権の状況知的財産は、個別のペプチドの物質特許を押さえ、その上で複数ペプチド投与を前提とするためその組み合わせの臨床上の有用性を、実際の臨床試験のデータを実施例として特許化する2層構造が骨格となります。なお、GRN-1201については、物質特許を含め当社が特許を有しております。 <主要な特許の状況>発明の名称特許登録番号出願国(登録国)権利者上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)由来ペプチド4579836日本当社7655751米国2554195カナダ腫瘍抗原4035845日本当社4624377日本CD4陽性T細胞に認識されるペプチド4443202日本当社副甲状腺ホルモン関連タンパク質のHLA-A24またはHLA-A2結合ペプチド4579581日本当社がんペプチドワクチン2591799欧州(注)当社5706895日本5980303日本 (注)欧州については、ドイツ、スペイン、フランス、英国、イタリアが含まれております。 [用語解説] *1(NKT細胞) がん細胞を直接殺傷する能力をもつと同時に、他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用をもつ免疫細胞のこと。活性化すると、多様なサイトカインを産生し、自然免疫系に属するNK細胞の活性化と樹状細胞の成熟化を促す。成熟した樹状細胞は、さらに獲得免疫系に属するキラーT細胞を増殖・活性化させることで、相乗的に抗腫瘍効果が高まる。また、自然免疫系を同時に活性化させることで、T細胞では殺傷できないHLA陰性のがん細胞に対しても殺傷能を持つ特徴がある。 *2(CAR-T細胞療法) Chimeric Antigen Receptor T-cell Therapy:キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法。がん細胞が発現する抗原を認識するキメラ抗原受容体を、T細胞(抗腫瘍免疫をもつリンパ球の一種)に遺伝子導入し、培養で増殖させて投与する治療法。 *3(完全個別化ネオアンチゲン・ワクチン) 個々の患者のがん細胞にあるネオアンチゲンを探索し、これに対するオーダーメイドのがんワクチン。海外ではアカデミアや先行開発企業による臨床試験が行われている。 *4(オープンラベル) 臨床試験を行う際に、患者がどのような治療を受けているか、医師、患者、スタッフがわかっている試験法。 *5(ORR Objective Response Rate:奏効率)あるがん治療法を患者に用いた際、その治療を実施した後に腫瘍が縮小もしくは消滅した患者の割合を示したもの。 *6(PFS Progression Free Survival: 無増悪生存期間)治療中あるいは治療後にがんが進行せず安定した状態である期間。 *7(0S Overall Survival: 全生存期間)致死的疾患の臨床試験において、患者の登録から死亡前の最終生存確認日までの期間。療中あるいは治療後にがんが進行せず安定した状態である期間。 *8(奏功例)腫瘍が縮小もしくは消滅した患者。 *9(総合評価)腫瘍縮小効果の判定法。 *10(安定)腫瘍縮小効果の判定: 完全寛解(PR: Complete Response)、 部分奏功(PR: Partial Response)、 安定(SD: Stable Disease)、進行(PD: Progressive Disease、評価不能(NE : Not Evaluable)のうちの1つで、腫瘍縮小や腫瘍増大を認めない場合をいう。
FY2021|6,757 文字
3 【事業の内容】 当社は、新規の「がん免疫治療薬」の開発に領域を定める、探索研究から早期臨床試験段階にある複数のパイプラインを有する創薬ベンチャーです。事業モデル、技術の特徴は以下のとおりであります。 (1) 事業モデル当社の事業モデルは、新規がん免疫治療薬を自社創製もしくは導入し、探索研究から早期臨床試験までを手掛け、国内外の製薬会社に開発製造販売権をライセンスアウトし、ライセンス先からライセンス収入を得るものです。 医薬品開発は上市までに一般的に10年以上かかり、投資回収までが長く、開発後期段階になるほど要する資金が大きくなるため、ベンチャーで創薬を事業として成立させるためには、開発投資を早期に回収できる仕組みが必要ですが、医薬品産業においては大手製薬企業が開発途上にあるベンチャーが創製するシーズをライセンスインする取引が豊富に行われています。現在は承認薬に至ったシーズのうち、ベンチャーが創製するシーズの数が、従来の大手製薬企業のそれを上回るようになっています。 この事業モデルでは、上市前の開発段階で、ライセンス先製薬企業から開発進捗に応じたライセンス関連収入(ライセンス契約締結時の一時金、その後開発進捗に応じて設定したマイルストンを達成する毎に得られる開発マイルストン収入、上市後は製品売上高の一定割合を得る販売ロイヤリティ収入等)を得ることを目指します。ライセンス後もライセンス先企業と共同開発し、開発費の貢献に合わせて将来の利益を按分したり、ライセンス先から開発協力金を得て開発を主導する等、色々な形態があります。 当社は、様々な開発ステージにあるパイプライン(医薬品候補)の開発を同時並行で進めることにより、投資早期回収と黒字転換後の継続的な収入の実現を図ります。 (2) 開発中のがん免疫治療薬の特徴 当社は「一人ひとりが、自らの力で、がんを克服する世界を実現する」ことを目指し、新規のがん免疫治療薬の開発を行っています。 がん免疫療法は、がん細胞に対する免疫反応(がん免疫)を惹起または増強させ、がん免疫によりがん細胞を殺傷し、腫瘍縮小、がんの進行・転移抑制、再発予防を図るものです。これまでも、がん治療には約50年に一度生存率を大きく改善する治療法の革新が起こってきましたが、がん免疫治療は、近年において、外科手術・放射線療法・化学療法に次ぐ「第4の治療」としての地位を確立しました。特に、免疫チェックポイント阻害抗体※1は、多様ながん種、がんのステージにおいて標準療法に組み込まれ、がん治療を大きく変えました。一方で、今ある免疫チェックポイント阻害抗体単剤で治療効果が出せる領域にも限りがあることも分かってきており、他の新しいがん免疫治療薬を組み合わせる複合的がん免疫療法や、欧米に続き本邦でも承認されたCAR-T(キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞)療法※2に代表される細胞医薬という新しいモダリティ(医薬品形態)も出て来ています。 がん免疫治療薬は、人がもともと備え持つ、がんを排除する免疫システム=がん免疫を適正に「成立」させることによってがんの治療を図るものです。 がん免疫の成立を妨げる要因(がん免疫サイクルが滞る箇所)は、がん種、がんのステージ、個人差等によって、異なります。当社はパイプラインにおいて、複数のメカニズム/モダリティを有することによって、その滞りの解消に適した方法を選択することを可能にしています。 ■当社の事業領域 (3) 開発パイプライン当社が開発を手掛ける新規がん免疫治療薬のモダリティ(医薬品形態)は、がんワクチン、細胞、抗体に及んでいます。がんペプチド※3ワクチンGRN-1201が最も開発ステージにおいて進んでおり、現在、非小細胞肺がんを対象に本邦初の免疫チェックポイント阻害剤との併用による第Ⅱ相臨床試験を米国で進めています。それに、頭頸部がんを対象とする臨床試験が始まったiPS細胞由来再生NKT細胞※4療法(導入オプションを保有)が続き、その他各種固形がんを対象とする複数の探索・非臨床試験ステージのパイプラインを有します。 GRN-1201(がんペプチドワクチン)GRN-1201は、欧米人に多いHLA※5-A2型の腫瘍関連抗原ペプチド4種で構成される、米国や欧州を始めとするグローバル展開を想定したがんペプチドワクチンです。より多くの抗腫瘍効果をもつT細胞(リンパ球の一種で、抗腫瘍活性や抗腫瘍免疫促進機能をもつ)を誘導できるよう複数抗原をワクチンとして投与するところに特徴があります。米国でメラノーマ(悪性黒色腫)を対象に第一相臨床試験を実施し、安全性と免疫誘導が示され、現在は同じく米国で、非小細胞肺がんの、免疫細胞にダメージを与える化学療法をいくつも経た患者でなく一次治療(ファースト・ライン)の患者を対象に、免疫チェックポイント阻害抗体ペンブロリズマブとの併用による第二相臨床試験を実施しています。これまでのがんワクチンの開発では、ワクチンで誘導された活性化T細胞が、免疫抑制がかかる腫瘍局所に浸潤したとき「疲弊」(無機能化)してしまうことが、技術課題として挙げられてきました。そこで、本第二相臨床試験では、ペンブロリズマブをワクチンと併用することで免疫抑制を一部解除し、T細胞が本来の抗腫瘍効果を発揮できるようになることを想定しています。一定の累積症例数に至ったところで、中間評価を行い、目標とする奏効率をクリアしていれば、さらに症例数を積み重ねていきます。米国における新型コロナウイルス感染状況を受けて、臨床試験は停止や中止をすることなく継続できていますが、症例登録には時間がかかっています。 BP1101・BP1209(完全個別化ネオアンチゲンワクチン)一人一人で全く異なるがん特有の遺伝子変異由来の抗原(ネオアンチゲン※6)に対するがん免疫を誘導する完全個別化ネオアンチゲンワクチン※7です。がん遺伝子変異量(ネオアンチゲンの量)と免疫チェックポイント抗体療法の奏効が相関することから、同抗体によりネオアンチゲンをがんの目印として認識するT細胞の抗腫瘍効果が高まると考えられています。このネオアンチゲンは患者一人ひとりで全く異なるため、一人ひとりに個別のネオアンチゲンワクチンを製造し投与する完全個別化治療となり、一定の患者層に共通した薬剤を大量製造することを前提とする従来の医薬品とは異なる開発法が求められます。BP1209は、BP1101の次世代型で、投与されたネオアンチゲンワクチンが体内で効果的にT細胞を活性化できるように、樹状細胞※8とT細胞が会合するリンパ節へのネオアンチゲンワクチン送達能を高めた、樹状細胞マーカー抗体結合ワクチンです。現在探索研究を進めています。 BP1401(TLR9アゴニスト)BP1401は、免疫抑制が強くかかる腫瘍微小環境において抗腫瘍効果を持つT細胞が能動的に賦活化される環境を整えるために、樹状細胞の受容体TLR9を刺激するTLR9アゴニストです。がん細胞を攻撃するT細胞が腫瘍局所に存在しない“Cold Tumor”を、それらが多く存在する“Hot Tumor”へと転換することを図るものです。BP1401は、このTLR9アゴニストの有効成分である核酸を脂質に織り込む脂質製剤とすることで安定性を高め、標的とするTLR9発現樹状細胞への核酸のデリバリーを高めています。 iPS-NKT(iPS細胞由来再生NKT細胞療法)iPS-NKTは、iPS細胞から再分化誘導したNKT細胞を用い、固形がんを対象とする新規の他家細胞医薬です。NKT細胞は、多面的な抗腫瘍効果(直接傷害/自然免疫の活性化/獲得免疫の誘導/免疫抑制環境の改善)を持つものの血中に僅かしか存在しないため、従来の培養法では細胞療法として機能を保った細胞を十分量確保できないという課題がありました。そこで、NKT細胞を一旦iPS細胞化することによってiPS細胞ならではの高い増殖能を付与し、そこからNKT細胞に再び分化誘導する技術の開発に成功し、これをがん免疫細胞療法に用いられるようになりました。iPS細胞技術は、現在の患者さん自身の血液から製造開始する自家中心の細胞療法の世界に、ドナー健常人の血液からマスターiPSセルバンクを作製し、このマスターセルバンクから均質な細胞を大量製造する他家細胞療法を可能にしました。 2020年6月から頭頸部がんを対象として、世界でも初となるiPS細胞由来再生NKT細胞療法の医師主導治験が開始されました。固形がんを対象とするマスターセルバンク型の免疫細胞療法には大手製薬企業も参入を表明していますが、臨床試験に進むに当たって先行組の一つとなっております。当社は2018年に、理化学研究所が進める本開発プロジェクトに参画し、共同研究を進めており、iPS-NKTの独占的開発製造販売ライセンスの導入オプション権を有しています。当社は医師主導治験を後押しするとともに、医師主導治験に続く企業治験を見据えた製造工程改良を進めています。 BP2301(HER2 CAR-T)BP2301は、様々な固形がんで高発現しているHER2抗原を認識するキメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞(HER2 CAR-T細胞)療法です。血液がんで70-90%の奏効率に至ることもあり、優れた臨床効果を示し承認されたCAR-T療法を、より多くの患者がいる固形がんへと適応を拡げることを目指しています。固形がんへの展開には、がん免疫に抑制がかかる腫瘍微小環境においてCAR-T細胞が疲弊し十分に機能を発揮できないという課題があります。この課題を解決するために、当社は信州大学の中沢洋三教授及び京都府立医科大学の柳生茂希助教らと新規CAR-T細胞培養法を共同開発し、これを中沢教授の非ウイルス遺伝子導入法と組み合わせることにより、若いメモリーフェノタイプの、体内で長期生存可能で、したがって持続的な抗腫瘍効果発現が期待されるCAR-T細胞の製造に成功しました。最初の治験対象がん種として小児がんの一つである骨・軟部肉腫を対象とする臨床試験開始に向けて準備を進めています。 抗体医薬BP1200(抗CD73抗体)、BP1210(抗TIM-3抗体)等がん免疫を成立させることを目指した抗体を複数開発しています。T細胞ががん細胞を殺傷する「がん免疫」の成立を妨げる様々な要因が腫瘍局所には存在しますが、その要因のトリガーとなる免疫調整因子の代表的なものがPD-1/PD-L1です。ニボルマブやペンブロリズマブといった抗PD-1抗体は、T細胞疲弊を促す免疫チェックポイントPD-1を抗体で阻害することによってがん免疫の成立が可能となることを、科学的に証明しました。抗PD-1抗体はがん治療の革新をもたらしましたが、それでも奏効率はがん種により10-40%であり、残りの抗PD-1抗体で効果が得られない60-90%の患者においても効果が得られる次世代免疫調整因子抗体となることを目指して開発を進めています。現在複数候補の探索研究を進めています。 (4) 許認可、免許及び登録等の状況について① 許認可、免許及び登録、行政指導等医薬品開発は、各国の医薬品の開発及び当局への申請等に関する法律、日本では「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:薬機法、2014年11月25日施行、「薬事法」から改称)、米国では「連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)及びその関連する法令」、上記の他、日本及び米国を含め各国における当局の省令やガイダンス、ならびに安全性に関する非臨床試験の実施基準(GLP;Good Laboratory Practice)、臨床試験の実施基準(GCP;Good Clinical Practice)、製造管理及び品質管理規則(GMP;Good Manufacturing Practice)の下で進めております。 ② 知的財産権の状況知的財産は、個別のペプチドの物質特許を押さえ、その上で複数ペプチド投与を前提とするためその組み合わせの臨床上の有用性を、実際の臨床試験のデータを実施例として特許化する2層構造が骨格となります。なお、GRN-1201については、物質特許を含め当社が特許を有しております。 <主要な特許の状況>発明の名称特許登録番号出願国(登録国)権利者上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)由来ペプチド4579836日本当社7655751米国2554195カナダ腫瘍抗原4097178日本当社4035845日本4624377日本CD4陽性T細胞に認識されるペプチド4443202日本当社副甲状腺ホルモン関連タンパク質のHLA-A24またはHLA-A2結合ペプチド4579581日本当社がんペプチドワクチン2591799欧州(注)当社5706895日本5980303日本 (注)欧州については、ドイツ、スペイン、フランス、英国、イタリアが含まれております。 [用語解説] ※1(免疫チェックポイント阻害抗体)がん細胞がもつ、免疫チェックポイントと呼ばれる分子を介して免疫の働きにブレーキをかけて免疫細胞の攻撃から逃れる仕組みを阻止するため、免疫チェックポイント分子を阻害してブレーキを解除し、がん細胞に対する免疫反応を高める抗体医薬品。 ※2(CAR-T療法)Chimeric Antigen Receptor T-cell Therapy:キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法がん細胞が発現する抗原に対する抗体を改変したキメラ抗原受容体を、T細胞(抗腫瘍免疫をもつリンパ球の一種)に遺伝子導入し、がん細胞を抗原を目印として認識するキメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞を培養で増やして投与する治療法。 ※3(ペプチド)アミノ酸が複数個つながったもの。タンパク質の断片。 ※4(NKT細胞)がん細胞を直接殺傷する能力をもつと同時に、他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用をもつ免疫細胞のこと。活性化すると、多様なサイトカインを産生し、自然免疫系に属するNK細胞の活性化と樹状細胞の成熟化を促す。成熟した樹状細胞は、更に獲得免疫系に属するキラーT細胞を増殖・活性化させることで、相乗的に抗腫瘍効果が高まる。また、自然免疫系を同時に活性化させることで、T細胞では殺傷できないHLA陰性のがん細胞に対しても殺傷能を持つ特徴がある。 ※5(HLA)HLA(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原)は、体のほとんど全ての細胞表面で発現がみられる、免疫機構において重要なタンパク質で、細菌やウイルスなどの病原体の排除やがん細胞の拒絶、臓器移植の際の拒絶反応などに関与しており「主要組織適合遺伝子複合体」とも呼ばれている。HLAはがん細胞でも細胞表面上に発現しており、がんワクチンの作用機序においては、がん細胞内でがん抗原タンパクが分解されて生成されたペプチドと結合して細胞表面に移動し、CTLにがん細胞として認識させるように機能する。HLAは自己と非自己(他)を区別する「自他認識のマーカー」であり、非常に多様な「他(た)」を自己と区別するために、非常に多様な型がある。ペプチドはHLAの特定の型に結合し、型が合わない場合は結合しない。 ※6(ネオアンチゲン)がん細胞に独自の遺伝子異常が起きた際に生じる、遺伝子変異(アミノ酸変異)を含む抗原のこと。個々の患者のがん細胞に生じた独自の遺伝子変異によって発現されるようになったがん特異的な抗原で、正常な細胞には存在しない。免疫系から「非自己」として認識されるネオアンチゲンを標的とすることで、がん細胞を殺傷する免疫を効率よく誘導できるようになることが期待されている。 ※7(完全個別化ネオアンチゲンワクチン)個々の患者のがん細胞にあるネオアンチゲンを探索し、これに対するオーダーメイドのがんワクチン。海外で臨床試験が行われている。 ※8(樹状細胞)枝状、樹状の形態をした突起を有する細胞であり、抗原提示細胞としての機能を有する免疫細胞の一種。体内に侵入した細菌やウイルスなどの抗原を細胞内に取り込み消化し、免疫情報をリンパ球に伝える。がんにおいては、細胞傷害性T細胞にがん抗原の情報を伝達して、がん細胞への攻撃などの免疫反応を開始させる。
FY2020|7,957 文字
3 【事業の内容】 当社は、新規の「がん免疫治療薬」の開発に領域を定める、臨床試験段階にあるパイプラインを有する創薬ベンチャーです。事業モデル、技術の特徴は以下のとおりであります。 (1) 事業モデル 当社の事業モデルは、新規がん免疫治療薬を自社創製もしくは導入し、探索研究から早期臨床試験までを手掛け、国内外の製薬会社に開発製造販売権をライセンスアウトし、ライセンス先からライセンス収入を得るものです。 医薬品開発は上市までに一般的に10年以上かかります。よって、開発投資が先行し、後期段階になるほど要する資金が大きくなります。投資を早期に回収する仕組みを作らなければベンチャーで創薬を行うことは難しいですが、現在は承認薬に至ったシードのうち、直近ではベンチャーが創製するシードの数が、従来の大手製薬企業のそれを上回るようになっていることからもわかるように、医薬品産業においては大手製薬企業が開発途上にあるベンチャー創製シーズを導入する仕組みが成立しています。 この事業モデルでは、上市前の開発段階で、ライセンス先製薬企業から開発進捗に応じたライセンス関連収入(ライセンス契約締結時の一時金、その後開発進捗に応じて設定したマイルストンを達成する毎に得られる開発マイルストン収入、上市後は製品売上高の一定割合を得る販売ロイヤリティ収入等)を得ることを目指します。ライセンス後もライセンス先企業と共同開発し、開発費の貢献に合わせて将来の利益を按分したり、ライセンス先から開発協力金を得て開発を主導する等、色々なバリエーションがあります。 当社は、様々な開発ステージにあるパイプラインの開発を同時並行で進めることにより、投資早期回収と黒字転換後の継続的な収入の実現を図ります。 (2) 開発中のがん免疫治療薬の特徴 当社は「一人ひとりが、自らの力で、がんを克服する世界を実現する」ことを目指し、新規のがん免疫治療薬の開発を行っています。 がん免疫療法は、がん細胞に対する免疫反応(がん免疫)を惹起または増強させ、がん免疫によりがん細胞を殺傷し、腫瘍縮小、がんの進行・転移抑制、再発予防を図るものです。がん治療には約50年に一度生存率を大きく改善する治療法の革新が起こってきましたが、がん免疫治療は、近年において、外科手術・放射線療法・化学療法に次ぐ「第4の治療」としての地位を確立しました。特に、免疫チェックポイント阻害抗体※1は、多様ながん種、がんのステージにおいて標準療法に組み込まれ、がん治療を大きく変えました。一方で、今ある免疫チェックポイント阻害抗体単剤で治療効果が出せる領域にも限りがあることも分かってきており、他の新しいがん免疫治療薬を組み合わせる複合的がん免疫療法や、欧米に続き本邦でも承認されたCAR-T(キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞)療法※2に代表される細胞医薬という新しいモダリティ(医薬品形態)も出て来ています。 がん免疫治療薬は、人がもともと備え持つ、がんを排除する免疫システム=がん免疫を適正に「成立」させることによってがんの治療を図るものです。 がん免疫の成立を妨げる要因(がん免疫サイクルが滞る箇所)は、がん種、がんのステージ、個人差等によって、異なります。当社はパイプラインにおいて、複数のメカニズム/モダリティを有することによって、その滞りの解消に適した法を選択することを可能にしています。 ■当社の事業領域 (3) 開発パイプライン当社が開発を手掛ける新規がん免疫治療薬のモダリティ(医薬品形態)は、がんワクチン、細胞、抗体に及んでいます。4種抗原ペプチド※3で構成されるGRN-1201が最も開発ステージが進んでおり、現在、非小細胞肺がんを対象に本邦初の免疫チェックポイント阻害剤との併用による第Ⅱ相臨床試験を米国で進めています。それに、まもなく頭頸部がんを対象とする臨床試験が始まるiPS細胞由来再生NKT細胞※4療法(導入オプションを取得済み)が続き、その他各種固形がんを対象とする複数の探索・非臨床試験ステージのパイプラインを有します。 GRN-1201(がんペプチドワクチン)・米国でメラノーマ(悪性黒色腫)を対象とする単剤第一相臨床試験及び非小細胞肺がんを対象とした免疫チェックポイント阻害抗体ペンブロリズマブとの併用による第二相臨床試験を実施中 GRN-1201は、欧米人が多く有するA2型のHLA※5(HLA-A2)に結合するペプチド4種で構成される米国や欧州を始めとするグローバル展開を想定したがんペプチドワクチンです。米国でメラノーマ(悪性黒色腫)を対象に第一相臨床試験を実施し、安全性と免疫誘導が示され、現在は同じく米国で非小細胞肺がんを対象に免疫チェックポイント阻害抗体ペンブロリズマブとの併用による第二相臨床試験を実施しています。 がん細胞では、がん細胞特有のペプチドがHLAと結合して表出しており、それを認識する細胞傷害性T細胞(CTL※6)はがん細胞を特異的に直接攻撃します。このため、CTLはがん免疫において最も重要な免疫細胞の一つとされています。GRN-1201を構成するペプチドは、このCTLに認識される生体内のペプチドと同じアミノ酸配列をもつ化学合成ペプチドであり、このペプチドを投与することにより、これをがんの目印として認識するCTLを誘導・活性化し、活性化したCTLが生体内で同じペプチドを表出させているがん細胞を攻撃・傷害します。元来、患者がん細胞由来のcDNAライブラリ(がん細胞内のmRNA※7から逆転写酵素※8を用いて合成された相補的DNAのライブラリ)と、がん細胞に特異的に反応する患者T細胞株とを使ってスクリーニングされたもので、非臨床試験と久留米大学における臨床研究を通して、免疫原性と安全性を示唆するデータが得られています。ペプチドが結合するHLAには型があり、個人差・人種差があります。日本人に最も多いのはHLA-A24型で全体の60%を占めますが、欧米ではHLA-A2型が最も多く全体の50%を占めており、日本人ではHLA-A2型は40%といわれています。GRN-1201はグローバルで患者数の多いHLA-A2型に結合するペプチドで構成され、欧米での開発を先行させています。がんペプチドワクチンは、T細胞にがんの目印を与えてがん細胞を排除するよう誘導するものですが、腫瘍局所はそのようなT細胞の機能を抑え込む免疫抑制が働く環境にあります。一方で、現在米国の第二相臨床試験で併用している免疫チェックポイント阻害抗体ペンブロリズマブは、腫瘍局所においてT細胞の活性化を抑制するがん細胞側からの攻撃抑制シグナルをブロックします。すなわち、免疫チェックポイント阻害抗体は腫瘍局所に既に存在するT細胞を活性化する機能を有します。免疫チェックポイント阻害抗体はがん治療に革新をもたらし、様々ながん種で治療効果を示しており、がん種によりますが、単剤での奏効率は10-40%程度と言われております。現在は、治療効果の得られない患者が治療効果を得られるように、既存の化学療法や分子標的薬との併用に加えて、互いの作用メカニズムを補完して免疫サイクル(免疫機構によりがん細胞が認識され殺傷されるまでの一連の流れ)の複数のステップに働きかける作用を持つがん免疫治療薬同士を併用したいわゆる複合的がん免疫療法が盛んに検討されております。当社のがんペプチドワクチンGRN-1201と免疫チェックポイント阻害抗体ペンブロリズマブの併用も、このがん免疫療法の次のテーマである複合的がん免疫療法の一つなることを期待して臨床開発を進めています。 iPS-NKT(iPS細胞由来再生NKT細胞療法)・多面的な抗腫瘍効果を有する免疫細胞(直接傷害/自然免疫の活性化/獲得免疫の誘導/免疫抑制環境の改善)・理化学研究所との導入オプション付共同研究を実施中早期の免疫応答に関与しがん細胞を直接殺傷するとともに、自然免疫を増強するのみならず、自然免疫から獲得免疫への橋渡し役も担い、他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用をもちながら、体内には微量(末梢血リンパ球のうち0.1%以下)にしか存在しない免疫細胞であるNKT細胞を、iPS細胞の高い増殖性を活かして必要量を確保し、がん免疫治療として用います。 欧米に続き本邦でも昨年承認されたCAR-T(キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞)に代表される細胞医薬の次のテーマと言える、血液がん対象から固形がん対象への拡張、ならびにエフェクター細胞の自家(都度特注となり製造原価が高い)から他家(健常人由来で作り置きと診断後即時投与を可能にする)への移行を、iPS細胞技術のがん免疫療法に応用することによって実現しようとするものです。 当社は、2018年3月に、国立研究開発法人理化学研究所統合生命医科学研究センターが進める細胞医薬の技術開発と臨床応用に向けたプロジェクトに参画しました。本プロジェクトは、理化学研究所が中心となって日本医療研究開発機構(AMED)再生医療実現拠点ネットワークプログラム疾患・組織別実用化研究拠点(拠点B)に採択された「NKT細胞再生によるがん免疫治療技術開発拠点」プロジェクト及び理研創薬・医療技術基盤プログラムのプロジェクトとして進められているもので、頭頸部がんを対象とする医師主導治験を予定しています。当社は、理化学研究所からiPS-NKT細胞療法の独占的開発製造販売ライセンスのオプション権を取得しており、世界でも初となるiPS-NKT細胞療法の臨床応用実現にむけ、本医師主導治験を全面的に後押しいたします。 BP1101(ネオアンチゲン※9)一人一人で全く異なるがん特有の遺伝子変異由来の抗原(ネオアンチゲン)に対するがん免疫を誘導する完全個別化ネオアンチゲンワクチン※10です。がん遺伝子変異量(ネオアンチゲンの量)と免疫チェックポイント抗体療法の奏効が相関することから、ネオアンチゲンががん免疫の標的であると考えられています。 BP2301(HER2 CAR-T)BP2301は、様々な固形がんで高発現しているHER2抗原を認識するキメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞(HER2 CAR-T細胞)療法です。血液がんで優れた臨床効果を示し承認されたCAR-T療法は、より多くの患者がいる固形がんへと適応を拡げるにあたって、がん免疫に抑制がかかる腫瘍微小環境において疲弊し十分に機能を発揮できないという課題がありました。この課題を乗り越えるために、当社は中沢教授らと新規CAR-T細胞培養法を共同開発し、これを中沢教授の非ウイルス遺伝子導入法と組み合わせることにより、疲弊していない若いメモリーフェノタイプのまま体内で長期生存可能なCAR-T細胞の製造に成功しました。これにより、CAR-T細胞移入後の持続的な抗腫瘍効果発現が期待されます。 BP1401(TLR9アゴニスト)BP1401は、抗腫瘍効果を持つT細胞が能動的に賦活化される環境を整えるために樹状細胞の受容体TLR9を刺激するTLR9アゴニストです。BP1401による刺激はサイトカインシグナルを介して、賦活化されたT細胞をはじめとする免疫細胞が腫瘍局所に存在していない、いわゆる“Cold tumor”の状態を、それらが多く存在する“Hot tumor”へと転換することを図るものです。これにより、抗腫瘍免疫が効果的に働くことが期待されます。BP1401は、このTLR9アゴニストの有効成分である核酸を脂質に織り込む脂質製剤とすることで安定性を高め、標的とするTLR9発現樹状細胞への核酸のデリバリーを高めています。 BP1200(抗CD73抗体)CD73を標的とする新規腫瘍環境改善・免疫活性化抗体です。腫瘍内でのアデノシン産生は、T細胞の疲弊と抑制を引き起こし、抗腫瘍免疫活性を低下させます。CD73は多くの腫瘍で高発現し、予後不良を引き起こすことも報告されています。BP1200はアデノシン産生酵素の機能を阻害します。 BP1210(抗TIM-3抗体)世界各国の多様ながん種、ステージで医薬品承認が進む免疫チェックポイントPD-1/PD-L1阻害抗体に続く、免疫チェックポイントTIM-3を阻害する新規抗体です。BP1210は、細胞傷害性T細胞に発現するTIM-3を阻害することにより、TIM-3がもたらす細胞疲弊を抑制し、抗腫瘍免疫活性を亢進します。 (4) 許認可、免許及び登録等の状況について① 許認可、免許及び登録、行政指導等医薬品開発は、各国の医薬品の開発及び当局への申請等に関する法律、日本では「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:薬機法、2014年11月25日施行、「薬事法」から改称)、米国では「連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)及びその関連する法令」、上記の他、日本及び米国を含め各国における当局の省令やガイダンス、ならびに安全性に関する非臨床試験の実施基準(GLP;Good Laboratory Practice)、臨床試験の実施基準(GCP;Good Clinical Practice)、製造管理及び品質管理規則(GMP;Good Manufacturing Practice)の下で進めております。 ② 知的財産権の状況知的財産は、個別のペプチドの物質特許を押さえ、その上で複数ペプチド投与を前提とするためその組み合わせの臨床上の有用性を、実際の臨床試験のデータを実施例として特許化する2層構造が骨格となります。なお、GRN-1201については、物質特許を含め当社が特許を有しております。 <主要な特許の状況>発明の名称特許登録番号出願国(登録国)権利者上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)由来ペプチド4579836日本当社7655751米国2554195カナダ腫瘍抗原7465452米国当社1207199欧州(注)2381348カナダ4051602日本4097178日本4035845日本4624377日本CD4陽性T細胞に認識されるペプチド4443202日本当社副甲状腺ホルモン関連タンパク質のHLA-A24またはHLA-A2結合ペプチド4579581日本当社がんペプチドワクチン2591799欧州(注)当社5706895日本5980303日本 (注)欧州については、ドイツ、スペイン、フランス、英国、イタリアが含まれております。[用語解説] ※1(免疫チェックポイント阻害抗体)がん細胞がもつ、免疫の働きにブレーキをかけて免疫細胞の攻撃から逃れる仕組みを阻止するため、免疫チェックポイントと呼ばれる分子を阻害してブレーキを解除する抗体医薬品を指す。 ※2(CAR-T)Chimeric Antigen Receptor T-cell Therapy:キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法ある特定のがんに対する、キメラ抗原受容体の遺伝子を患者のT細胞という免疫細胞に導入し、その遺伝子導入されたT細胞を体外で増やして患者に戻すという治療法。ヒト白血球抗原(HLA)の型に依存せず、多くの患者に適用することができるといった特徴がある。 ※3(ペプチド)アミノ酸が複数個つながったもの。タンパク質の断片。 ※4(NKT細胞)NKT細胞は、がん細胞を直接殺傷する能力をもつと同時に、他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用をもつ免疫細胞のこと。活性化すると、多様なサイトカインといわれる物質を産生し、自然免疫系に属するNK細胞の活性化と樹状細胞の成熟化を促す。成熟した樹状細胞は、更に獲得免疫系に属するCTLを増殖・活性化させることで、相乗的に抗腫瘍効果が高まる。また、自然免疫系を同時に活性化させることで、T細胞では殺傷できないMHC陰性のがん細胞に対しても殺傷能を持つ特徴がある。 ※5(HLA)HLA(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原)は、体のほとんど全ての細胞表面で発現がみられる、免疫機構において重要なタンパク質で、細菌やウイルスなどの病原体の排除やがん細胞の拒絶、臓器移植の際の拒絶反応などに関与しており「主要組織適合遺伝子複合体」とも呼ばれています。HLAはがん細胞でも細胞表面上に発現しており、がんワクチンの作用機序においては、がん細胞内でがん抗原タンパクが分解されて生成されたペプチドと結合して細胞表面に移動し、CTLにがん細胞として認識させるように機能します。HLAは自己と非自己(他)を区別する「自他認識のマーカー」であり、非常に多様な「他(た)」を自己と区別するために、非常に多様な型があります。ペプチドはHLAの特定の型に結合し、型が合わない場合は結合しません。 ※6(CTL:細胞傷害性T細胞)CTLはCytotoxic T Lymphocyteの略語で、リンパ球のうちのT細胞の一種。細胞表面のT細胞受容体を通じて、樹状細胞等の抗原提示細胞から提示された異物を特異的に認識し、同じくその異物を表面上に提示しているウイルス感染細胞やがん細胞を認識し、細胞傷害物質のサイトカインであるパーフォリンやグランザイムなどを放出することで殺傷することができます。以前はキラーT細胞とも呼ばれていました。 ※7(RNA)リボ核酸(Ribonucleic Acid)の略称。DNAも核酸であるが、DNAは核の中で様々な情報を蓄積・保存をする役割があるのに対し、RNAはその情報の一時的な処理を行うという役割があります。生体内の働き・構造から、翻訳の鋳型となる伝令RNA(メッセンジャーRNA, mRNA)、リボソームの主要構成成分であり細胞内RNAの最多成分であるリボソームRNA(rRNA)などに分類されます。この中でメッセンジャーRNAは、DNAからタンパク質を合成するための塩基配列情報を持ったRNAで、mRNAと表記されます。タンパク質の合成は、DNAからタンパク質を合成するために必要な塩基配列情報をコピーしたmRNAが合成され、このmRNAの塩基配列情報に従ってタンパク質が合成されます。 ※8(逆転写酵素)RNA依存性DNAポリメラーゼ (RNA-dependent DNA polymerase) のこと。逆転写反応を触媒する酵素。この酵素は一本鎖RNAを鋳型としてDNAを合成(逆転写)するもので、レトロウイルスの増殖に必須の因子として発見されました。逆転写酵素は相補的DNA(cDNA)の合成に利用され(逆転写反応)、遺伝子工学や分子生物学的実験には必須のツールとなっています。 ※9(ネオアンチゲン)がん細胞に独自の遺伝子異常が起きた際に生じる、遺伝子変異(アミノ酸変異)を含む抗原を指します。個々の患者のがん細胞に生じた独自の遺伝子変異によって発現されるようになったがん特異的な抗原で、正常な細胞には存在しません。免疫系から「非自己」として認識されるネオアンチゲンを標的とすることで、がん細胞を殺傷する免疫を効率よく誘導できるようになることが期待されています。 ※10(完全個別化ワクチン)個々の患者のがん細胞にあるネオアンチゲンを探索し、これに対するオーダーメイドのがんワクチン。海外で臨床試験が行われている。
FY2019|6,935 文字
3 【事業の内容】 当社は、新規の「がん免疫治療薬」の開発に領域を定める、臨床試験段階にあるパイプラインを有する創薬ベンチャーです。事業モデル、技術の特徴は以下のとおりであります。 (1) 事業モデル 当社の事業モデルは、新規がん免疫治療薬候補品を自社創製、もしくは外部から開発初期の段階で導入し原則として探索研究から早期臨床試験までを手掛け、後期臨床試験以降は国内外の製薬会社に開発製造販売権をライセンスアウトし、ライセンス先からライセンス収入を得るものです。 医薬品開発は上市までに一般的に10年以上かかりますが、この事業モデルでは、各国の当局の製造販売承認を得て上市される前の開発段階から、ライセンス先製薬企業から開発進捗に応じたライセンス関連収入(ライセンス契約締結時の一時金、その後開発進捗に応じて設定したいくつかのマイルストンを達成する毎に得られる開発マイルストン収入、上市後は製品売上高の一定割合となる販売ロイヤリティ収入等)を得ることを目指します。製薬会社へライセンス後も開発協力金を得て開発を継続することもあります。 このような開発プロジェクトを段階的に複数並行で進めることにより、投資早期回収と黒字転換後の継続的な収入実現を図ります。 (2) 開発中のがん免疫治療薬の特徴 がん免疫療法は、がん細胞に対する免疫反応(がん免疫)を惹起または増強させ、がん免疫によりがん細胞を殺傷し、腫瘍縮小、がんの進行・転移抑制、再発予防を図るものです。近年において、外科手術・放射線療法・化学療法に次ぐ「第4のがん治療法」としての地位が確立されました。 特に、免疫チェックポイント阻害抗体※1は、標準療法に組み込まれ、がん治療を大きく変えつつあります。一方で、今ある免疫チェックポイント阻害抗体単剤で治療効果が出せる領域にも限りがあることも分かってきており、他の新しいがん免疫治療薬を組み合わせる複合的がん免疫療法や、欧米に続き本邦でも承認されたCAR-T※2(キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法)に代表される細胞医薬という新しいモダリティ(医薬品形態)も出て来ています。 ■当社の事業領域 免疫サイクル(免疫機構ががん細胞を殺傷する仕組み)と各プロセスで働きかける当社のがん免疫治療薬パイプライン (3) 開発パイプライン当社が現在開発を手掛ける新規がん免疫治療薬候補のモダリティ(医薬品形態)は、がんペプチド※3ワクチン、細胞医薬、抗体医薬に及び、それぞれHLA※4-A2拘束性がんペプチドワクチンGRN-1201とネオアンチゲン※5をターゲットとする完全個別化ネオアンチゲンワクチン、iPS細胞由来再生NKT細胞※6療法(導入オプションを取得済み)、各種固形がんを対象とする複数の免疫調整因子に対する抗体を開発パイプラインとして有します。 GRN-1201 (メラノーマ/非小細胞肺がん)・ グローバル向けがんペプチドワクチン・ 米国でメラノーマ(悪性黒色腫)を対象とする単剤第一相臨床試験及び非小細胞肺がんを対象とした免疫チェックポイント阻害抗体ペンブロリズマブとの併用による第二相臨床試験を実施中 GRN-1201は、欧米人が多く有するA2型のHLA(HLA-A2)に結合するペプチド4種で構成される米国や欧州を始めとするグローバル展開を想定したがんペプチドワクチンです。米国でメラノーマ(悪性黒色腫)を対象に第一相臨床試験を実施し、安全性と免疫誘導が示され、現在は同じく米国で非小細胞肺がんを対象に免疫チェックポイント阻害抗体ペンブロリズマブとの併用による第二相臨床試験を実施しています。 がん細胞では、がん細胞特有のペプチドがHLAと結合して表出しており、それを認識する細胞傷害性T細胞(CTL※7)はがん細胞を特異的に直接攻撃します。このため、CTLはがん免疫において最も重要な免疫細胞の一つとされています。GRN-1201を構成するペプチドは、このCTLに認識される生体内のペプチドと同じアミノ酸配列をもつ化学合成ペプチドであり、このペプチドを投与することにより、これをがんの目印として認識するCTLを誘導・活性化し、活性化したCTLが生体内で同じペプチドを表出させているがん細胞を攻撃・傷害します。元来、患者がん細胞由来のcDNAライブラリ(がん細胞内のmRNA※8から逆転写酵素※9を用いて合成された相補的DNAのライブラリ)と、がん細胞に特異的に反応する患者T細胞株とを使ってスクリーニングされたもので、非臨床試験と久留米大学における臨床研究を通して、免疫原性と安全性を示唆するデータが得られています。 ペプチドが結合するHLAには型があり、個人差・人種差があります。日本人に最も多いのはHLA-A24型で全体の60%を占めますが、欧米ではHLA-A2型が最も多く全体の50%を占めており、日本人ではHLA-A2型は40%といわれています。GRN-1201はグローバルで患者数の多いHLA-A2型に結合するペプチドで構成され、欧米での開発を先行させています。 がんペプチドワクチンは、T細胞にがんの目印を与えてがん細胞を排除するよう誘導するものですが、腫瘍局所はそのようなT細胞の機能を抑え込む免疫抑制が働く環境にあります。一方で、現在米国の第二相臨床試験で併用している免疫チェックポイント阻害抗体ペンブロリズマブは、腫瘍局所においてT細胞の活性化を抑制するがん細胞側からの攻撃抑制シグナルをブロックします。すなわち、免疫チェックポイント阻害抗体は腫瘍局所に既に存在するT細胞を活性化する機能を有します。免疫チェックポイント阻害抗体はがん治療に革新をもたらし、様々ながん種で治療効果を示しており、がん種によりますが、単剤での奏効率は10-40%程度と言われております。現在は、治療効果の得られない患者が治療効果を得られるように、既存の化学療法や分子標的薬との併用に加えて、互いの作用メカニズムを補完して免疫サイクル(免疫機構によりがん細胞が認識され殺傷されるまでの一連の流れ)の複数のステップに働きかける作用を持つがん免疫治療薬同士を併用したいわゆる複合的がん免疫療法が盛んに検討されております。当社のがんペプチドワクチンGRN-1201と免疫チェックポイント阻害抗体ペンブロリズマブの併用も、このがん免疫療法の次のテーマである複合的がん免疫療法の一つなることを期待して臨床開発を進めています。 ■GRN-1201と免疫チェックポイント阻害抗体の併用メカニズムiPS-NKT (頭頸部がん)・iPS細胞由来再生NKT細胞療法・多面的な抗腫瘍効果を有する免疫細胞(直接傷害/自然免疫の活性化/獲得免疫の誘導/免疫抑制環境の改善)・理化学研究所との導入オプション付共同研究を実施中 欧米に続き本邦でも直近承認されたCAR-T(キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞)に代表される細胞医薬の次のテーマと言える、血液がん対象から固形がん対象への拡張、ならびにエフェクター細胞の自家(都度特注となり製造原価が高い)から他家(健常人由来で作り置きと診断後即時投与を可能にする)への移行を、iPS細胞技術のがん免疫療法に応用することによって実現しようとするものです。早期の免疫応答に関与しがん細胞を直接殺傷するとともに、自然免疫を増強するのみならず、自然免疫から獲得免疫への橋渡し役も担い、他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用をもちながら、体内には微量(末梢血リンパ球のうち0.1%以下)にしか存在しない免疫細胞であるNKT細胞を、iPS細胞の高い増殖性を活かして必要量を確保し、がん免疫治療として用います。 当社は、2018年3月に、国立研究開発法人理化学研究所統合生命医科学研究センターが進める細胞医薬の技術開発と臨床応用に向けたプロジェクトに参画しました。本プロジェクトは、理化学研究所が中心となって日本医療研究開発機構(AMED)再生医療実現拠点ネットワークプログラム疾患・組織別実用化研究拠点(拠点B)に採択された「NKT細胞再生によるがん免疫治療技術開発拠点」プロジェクト及び理研創薬・医療技術基盤プログラムのプロジェクトとして進められているもので、頭頸部がんを対象とする医師主導治験が2019年度中をめどに開始される計画です。当社は、理化学研究所からiPS-NKT細胞療法の独占的開発製造販売ライセンスのオプション権を取得しており、世界でも初となるiPS-NKT細胞療法の臨床応用実現にむけ、本医師主導治験を全面的に後押しいたします。 ■iPS-NKTの特徴 その他 各研究機関(国立研究開発法人 国立がん研究センター、国立大学法人 東京大学、地方独立行政法人 神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター及び国立大学法人 三重大学)等との共同研究でネオアンチゲンをターゲットとする完全個別化ネオアンチゲンワクチン※10の創製を目指してまいります。本プロジェクトは、患者ごとに異なるネオアンチゲンを、一人ひとりに合わせてがん免疫療法として用いる完全個別対応型がん治療薬の創製を目指しております。個々の患者の免疫応答、がん細胞、がん組織の環境などの特性を解析したうえで、個々の患者に最適ながん免疫療法を提供する Personalized Medicine(個別化医療)の試みが始まっておりますが、本プロジェクトによって、できるだけ一つで多くの人に使える汎用品としての医薬“One-size-fits-all”から、個人差に対応する完全個別化を追求する次世代の医薬を目指してまいります。 (4) 許認可、免許及び登録等の状況について① 許認可、免許及び登録、行政指導等医薬品開発は、各国の医薬品の開発及び当局への申請等に関する法律、日本では「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:薬機法、2014年11月25日施行、「薬事法」から改称)、米国では「連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)及びその関連する法令」、上記の他、日本及び米国を含め各国における当局の省令やガイダンス、ならびに安全性に関する非臨床試験の実施基準(GLP;Good Laboratory Practice)、臨床試験の実施基準(GCP;Good Clinical Practice)、製造管理及び品質管理規則(GMP;Good Manufacturing Practice)の下で進めております。 ② 知的財産権の状況知的財産は、個別のペプチドの物質特許を押さえ、その上で複数ペプチド投与を前提とするためその組み合わせの臨床上の有用性を、実際の臨床試験のデータを実施例として特許化する2層構造が骨格となります。なお、GRN-1201については、物質特許を含め当社が特許を有しております。 <主要な特許の状況>発明の名称特許登録番号出願国(登録国)権利者上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)由来ペプチド4579836日本当社7655751米国2554195カナダ腫瘍抗原 7465452米国当社 1207199欧州(注)2381348カナダ4051602日本4097178日本4035845日本4624377日本CD4陽性T細胞に認識されるペプチド4443202日本当社副甲状腺ホルモン関連タンパク質のHLA-A24またはHLA-A2結合ペプチド4579581日本当社新規な腫瘍抗原タンパク質SART-3及びその腫瘍抗原ペプチド4436977日本当社4904384日本7541428米国7968676米国8097697米国8563684米国1116791欧州(注)2340888カナダ99812596.2中国660367韓国がんペプチドワクチン(出願中)米国当社2591799欧州(注)5706895日本5980303日本 (注)欧州については、ドイツ、スペイン、フランス、英国、イタリアが含まれております。 [用語解説] ※1(免疫チェックポイント阻害抗体)がん細胞がもつ、免疫の働きにブレーキをかけて免疫細胞の攻撃から逃れる仕組みを阻止するため、免疫チェックポイントと呼ばれる分子を阻害してブレーキを解除する抗体医薬品を指します。 ※2(CAR-T)Chimeric Antigen Receptor T-cell Therapy:キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法ある特定のがんに対する、キメラ抗原受容体の遺伝子を患者のT細胞という免疫細胞に導入し、その遺伝子導入されたT細胞を体外で増やして患者に戻すという治療法。ヒト白血球抗原(HLA)の型に依存せず、多くの患者に適用することができるといった特徴がある。 ※3(ペプチド)アミノ酸が複数個つながったもの。タンパク質の断片。 ※4(HLA)HLA(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原)は、体のほとんど全ての細胞表面で発現がみられる、免疫機構において重要なタンパク質で、細菌やウイルスなどの病原体の排除やがん細胞の拒絶、臓器移植の際の拒絶反応などに関与しており「主要組織適合遺伝子複合体」とも呼ばれています。HLAはがん細胞でも細胞表面上に発現しており、がんワクチンの作用機序においては、がん細胞内でがん抗原タンパクが分解されて生成されたペプチドと結合して細胞表面に移動し、CTLにがん細胞として認識させるように機能します。HLAは自己と非自己(他)を区別する「自他認識のマーカー」であり、非常に多様な「他(た)」を自己と区別するために、非常に多様な型があります。ペプチドはHLAの特定の型に結合し、型が合わない場合は結合しません。 ※5(ネオアンチゲン:Neoantigen)がん細胞に独自の遺伝子異常が起きた際に生じる、遺伝子変異(アミノ酸変異)を含む抗原を指します。個々の患者のがん細胞に生じた独自の遺伝子変異によって発現されるようになったがん特異的な抗原で、正常な細胞には存在しません。免疫系から「非自己」として認識されるネオアンチゲンを標的とすることで、がん細胞を殺傷する免疫を効率よく誘導できるようになることが期待されています。 ※6(NKT細胞)NKT細胞は、がん細胞を直接殺傷する能力をもつと同時に、他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用をもつ免疫細胞のこと。活性化すると、多様なサイトカインといわれる物質を産生し、自然免疫系に属するNK細胞の活性化と樹状細胞の成熟化を促す。成熟した樹状細胞は、更に獲得免疫系に属するCTLを増殖・活性化させることで、相乗的に抗腫瘍効果が高まる。また、自然免疫系を同時に活性化させることで、T細胞では殺傷できないMHC陰性のがん細胞に対しても殺傷能を持つ特徴がある。 ※7(CTL:細胞傷害性T細胞)CTLはCytotoxic T Lymphocyteの略語で、リンパ球のうちのT細胞の一種。細胞表面のT細胞受容体を通じて、樹状細胞等の抗原提示細胞から提示された異物を特異的に認識し、同じくその異物を表面上に提示しているウイルス感染細胞やがん細胞を認識し、細胞傷害物質のサイトカインであるパーフォリンやグランザイムなどを放出することで殺傷することができます。以前はキラーT細胞とも呼ばれていました。 ※8(RNA)リボ核酸(Ribonucleic Acid)の略称。DNAも核酸であるが、DNAは核の中で様々な情報を蓄積・保存をする役割があるのに対し、RNAはその情報の一時的な処理を行うという役割があります。 生体内の働き・構造から、翻訳の鋳型となる伝令RNA(メッセンジャーRNA, mRNA)、リボソームの主要構成成分であり細胞内RNAの最多成分であるリボソームRNA(rRNA)などに分類されます。この中でメッセンジャーRNAは、DNAからタンパク質を合成するための塩基配列情報を持ったRNAで、mRNAと表記されます。タンパク質の合成は、DNAからタンパク質を合成するために必要な塩基配列情報をコピーしたmRNAが合成され、このmRNAの塩基配列情報に従ってタンパク質が合成されます。 ※9(逆転写酵素)RNA依存性DNAポリメラーゼ (RNA-dependent DNA polymerase) のこと。逆転写反応を触媒する酵素。この酵素は一本鎖RNAを鋳型としてDNAを合成(逆転写)するもので、レトロウイルスの増殖に必須の因子として発見されました。逆転写酵素は相補的DNA(cDNA)の合成に利用され(逆転写反応)、遺伝子工学や分子生物学的実験には必須のツールとなっています。 ※10(完全個別化ワクチン)個々の患者のがん細胞にあるネオアンチゲンを探索し、これに対するオーダーメイドのがんワクチン。海外で臨床試験が行われている。
FY2018|9,881 文字
3 【事業の内容】 当社グループは、新規の「がん免疫治療薬」の開発を行い、現在臨床試験段階にあるパイプラインを有する創薬ベンチャーです。事業モデル、技術の特徴などについては以下のとおりであります。 (1) 事業モデル 当社グループの基本的な事業モデルは、がん免疫治療薬候補品を自社創製するか、もしくは外部から開発初期の段階で導入し開発を進め、後期臨床試験からは国内外の製薬会社に開発製造販売権をライセンスし開発を委ね、そのライセンス先製薬会社からライセンス収入を得るものです。 医薬品開発は一般的に10年以上かかりますが、この事業モデルでは、各国の当局の製造販売承認を得て上市される前の開発段階から、ライセンス先製薬企業から開発進捗に応じたライセンス関連収入(ライセンス契約締結時の一時金、その後開発進捗に応じて設定したいくつかのマイルストンを達成する毎に得られる開発マイルストン収入、上市後は製品売上高の一定割合となる販売ロイヤリティ収入等)を得ることができます。製薬会社へライセンス後も開発協力金を得て開発を継続することもあります。 当社グループでは、がん免疫療治療薬を開発領域とし、がんペプチド※1ワクチン、T細胞※2療法をはじめとする細胞医薬品、免疫調整因子抗体など多様なモダリティ(医薬品形態)のパイプラインについて、原則として探索研究から早期臨床試験までを手掛け、後期臨床試験からは国内外の製薬会社へ導出し、契約一時金から始まるライセンス収入を得ていきます。このような開発プロジェクトを段階的に複数並行で進めることにより、投資早期回収と黒字転換後の継続的な収入実現を図ります。 (2) 開発中のがん免疫治療薬の特徴 がん免疫療法は、がん免疫機構に関わる免疫細胞やペプチド・タンパク質分子を利用して、すべての人が備えもつ免疫活性を亢進することによって、がん細胞の死滅、再発・転移予防、進行抑制効果を発揮します。腫瘍を切除する外科的手術や、放射線でがん細胞を殺傷する放射線療法、低分子化合物による化学療法(いわゆる抗がん剤)とは作用機序が異なるため、これらの既存の治療法で効果が得られないがん患者を対象にすることが可能になり、手術・放射線療法・化学療法に次ぐ「第4の治療法」となることが期待されています。 近年免疫チェックポイント阻害剤※3に代表されるがん免疫療法は、がん治療に革新をもたらし、標準療法を大きく変えつつあります。一方で、今ある免疫チェックポイント阻害剤単剤で治療効果が出せる領域にも限りがあることもわかってきており、CAR-T※4(キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞)といった新しいコンセプトのがん免疫治療薬や、他の新しいがん免疫治療薬を組み合わせる複合的がん免疫療法に、更なる治療効果の期待が寄せられています。 ■当社の事業領域 免疫サイクル(免疫機構ががん細胞を殺傷する仕組み)と各プロセスで働きかける当社のがん免疫治療薬パイプライン (3) 開発パイプライン 当社グループにおける現在のパイプラインは、以下の通りです。・ HLA*A24※5拘束性ペプチドワクチンITK-1(前立腺がん※6)・ HLA*A2拘束性ペプチドワクチンGRN-1201(メラノーマ/非小細胞肺がん)・ ネオアンチゲン※7(遺伝子変異抗原)ペプチドワクチンGRN-1301(非小細胞肺がん)・ iPS細胞由来の再生T細胞療法(EBウイルス※8由来リンパ腫)及び再生NKT※9細胞療法(導入オプション)(頭頸部がん)ITK-1 (前立腺がん)・ 患者の免疫応答に最適ながんペプチドワクチンを選択投与・ 富士フイルム株式会社へライセンスアウト・ 国内で進行性の去勢抵抗性前立腺がん※10を対象とする第Ⅲ相臨床試験は、平成30年5月の開鍵(キーオープン)の結果、主要評価項目を達成できず がんペプチドワクチンITK-1は、富士フイルム株式会社へ導出済みで、平成25年6月より日本国内において進行性の去勢抵抗性前立腺がんを対象とするプラセボ対照第Ⅲ相二重盲検比較試験が実施されておりましたが、平成30年5月の開鍵(キーオープン)の結果、主要評価項目を達成することが出来ませんでした。今後のITK-1の方針については、導出先の富士フイルム株式会社が検討していく方針です。 GRN-1201 (メラノーマ/非小細胞肺がん)・ グローバル向けがんペプチドワクチン・ 米国でメラノーマ(悪性黒色腫)を対象とする第Ⅰ相臨床試験、及び非小細胞がんを対象とした免疫チェックポイント阻害剤との併用による第Ⅱ相臨床試験を実施中 「複合的がん免疫療法」を創薬コンセプトとするGRN-1201は、欧米人が多く有するA2型のHLA(HLA*A02)に結合するペプチドで構成される、米国や欧州を始めグローバルに展開できるがんペプチドワクチンです。ワクチンに用いられている抗原ペプチドは、がん患者から得られた腫瘍組織からcDNA(腫瘍細胞に発現するタンパク質情報を持つメッセンジャーRNA(mRNA)※11)から逆転写酵素※12を用いて合成された相補的DNAライブラリを作製し、そのcDNAライブラリの中からCTL※13の細胞株(がん患者から樹立された実際にがん細胞を攻撃することができるCTLの細胞株)が認識する抗原タンパク質を同定し、さらにCTLにより認識される9-10個のアミノ酸からなるペプチド分子を同定することによって見つけられました。実際のがん患者のCTLからより高いがん細胞殺傷力を引き出すペプチド抗原が厳選され、さらに久留米大学における臨床研究で実際にがん患者に投与され、高い免疫原性と安全性を示唆するデータが得られているものです。 これらの生体由来のがん抗原※14タンパク質から見出されたペプチドは、そのアミノ酸配列のまま化学合成されたペプチド製剤となります。人の体内に存在するものと同じ物質であるため、従来の抗がん剤(化学療法剤)に比べて安全性が高く、患者のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)※15を維持しながら、生存期間を延長させることが可能になると期待されています。また、これらのペプチドは化学合成で製造されることから、動物由来、血液由来のウイルス等の混入はありません。 CTLはHLAと抗原ペプチドとの結合を介して、ペプチドを攻撃対象の目印として記憶しますが、このHLAにも個人差、人種差があります。日本人に最も多いHLA-A24は日本人全体の60%、欧米ではHLA-A2が全体の50%を占めます。GRN-1201はHLA-A2に結合するペプチドで構成されているため、欧米においての展開を想定しています。 GRN-1201は、第1適応をメラノーマ(悪性黒色腫)として、米国FDA(米国食品医薬品局)へ平成27年10月に治験申請(IND)を行い、現在米国での第Ⅰ相臨床試験を実施中です。また、平成29年1月から、同じく米国で非小細胞肺がんを対象に、複合的がん免疫治療法としての展開を見据えて免疫チェックポイント阻害剤との併用による第Ⅱ相臨床試験を実施しています。 免疫チェックポイント阻害剤は、がん治療の歴史に大きな変革をもたらし、様々ながん種で治療効果を示しましたが、単剤ではその奏効率は20-30%と言われております。現在治療効果の得られない症例を効くように変える方法も含めた、治療効果を改善する複合的がん免疫療法が期待されており、単純に既存の化学療法、分子標的薬、放射線療法などの標準治療との併用に加えて、抗腫瘍T細胞応答に関与する免疫ネットワークの重要な調節ポイントを複数制御する方法が検討されております。当社はT細胞の抗腫瘍効果を加速させるがんペプチドワクチンの開発に長年の経験を有しており、免疫抑制状態を解除することを作用機序とする免疫チェックポイント阻害剤との相乗効果を狙った創薬コンセプトのもと、グローバルに注目を集める複合的がん免疫療法の一つとして臨床開発を進めております。 ■GRN-1201と免疫チェックポイント阻害剤の併用メカニズム GRN-1301 (非小細胞肺がん)・ネオアンチゲン(遺伝子変異抗原)ペプチドワクチン GRN-1301は、平成28年12月に、非小細胞肺がんを適応症とするネオアンチゲンペプチドワクチンを開発するべく、地方独立行政法人 神奈川県立病院機構が有する特許「上皮成長因子受容体(EGFR)のT790M点突然変異に由来する抗原ペプチド」の譲渡を受けました(EGFRは、細胞の増殖や成長を制御する上皮成長因子 (Epidermal Growth Factor) と結合し、シグナル伝達を行う受容体(Receptor))。肺がんは、米国では年間約22万人、日本では年間約13万人が新たに罹患すると報告されていますが、その内一部の患者は、治療の過程で既存の治療薬であるEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)に対し耐性を生じている状態でした。しかし、これらの患者の約6割にEGFR-T790M点突然変異(EGFRの790番目のアミノ酸がスレオニンからメチオニンへ遺伝子変異すること)という遺伝子変異が生じていることが分かっており、当社グループは、このEGFR-TKI耐性遺伝子変異を抗原とするペプチドワクチンの開発を行っています。 iPS-T (EBウイルス※28由来リンパ腫)・iPS細胞再生T細胞療法・再生医療のがん免疫療法分野における世界初の臨床応用 平成28年12月に、株式会社アドバンスト・イミュノセラピーを子会社化し、中内啓光東京大学医科学研究所教授兼スタンフォード大学教授らの創製技術を用いたiPS細胞由来再生T細胞療法の研究開発を開始しました。同社は、iPS技術を用いてがん細胞を攻撃するT細胞を再生させる(若返らせる)ことにより、がん免疫療法においてこれまで課題とされてきたT細胞の疲弊と、様々な過程で起こりうる副作用を回避する独自の技術を保有しております。当初はコンセプトを示しやすいウイルス性血液がんの一種であるEBウイルス由来リンパ腫を適応症としております。 iPS-NKT (頭頸部がん)・iPS細胞由来再生NKT細胞療法・多面的な抗腫瘍効果を有する免疫細胞(自然免疫の活性/獲得免疫の誘導/免疫抑制環境の改善)・理化学研究所との導入オプション付共同研究 NKT細胞由来iPS細胞から再分化誘導したNKT細胞を用いた新規他家がん免疫療法です。がん細胞を直接殺傷する能力をもつと同時に他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用をもつが、体内には微量にしか存在しない免疫細胞であるNKT細胞を、iPS細胞の高い増殖性を活かしてがん免疫療法へ応用することを試みるものです。当社は、平成30年3月に、国立研究開発法人理化学研究所統合生命医科学研究センターが進める細胞医薬の技術開発と臨床応用に向けたプロジェクトに参画しました。本プロジェクトは、理化学研究所が中心となって日本医療研究開発機構(AMED)再生医療実現拠点ネットワークプログラム疾患・組織別実用化研究拠点(拠点B)に採択された「NKT細胞再生によるがん免疫治療技術開発拠点」プロジェクト及び理研創薬・医療技術基盤プログラムのプロジェクトとして進められているもので、頭頸部がんを対象とする医師主導治験が平成31年度中をめどに開始される計画です。理化学研究所からiPS-NKT細胞療法の独占的開発製造販売ライセンスのオプション権を取得し、世界でも初となるiPS-NKT細胞療法の臨床応用実現にむけ、本医師主導治験を全面的に後押しいたします。 ■iPS-NKTの特徴 その他各研究機関(国立研究開発法人 国立がん研究センター、国立大学法人 東京大学、地方独立行政法人 神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター及び国立大学法人 三重大学)等との共同研究でネオアンチゲンをターゲットとする完全個別化ワクチン※16の創製を目指してまいります。本プロジェクトは、患者ごとに異なるネオアンチゲンを、一人ひとりに合わせてがん免疫療法として用いる完全個別対応型がん治療薬の創製を目指しております。個々の患者の免疫応答、がん細胞、がん組織の環境などの特性を解析したうえで、個々の患者に最適ながん免疫療法を提供する Personalized Medicine(個別化医療)の試みが始まっておりますが、本プロジェクトによって、できるだけ一つで多くの人に使える汎用品としての医薬から、個人差に対応する完全個別化を追求する次世代の医薬を目指してまいります。 ▲免疫チェックポイント阻害剤は、これまで遺伝子変異の多いがん種で良い臨床成績を得ており、これは、ネオアンチゲンががん免疫療法において有効なターゲットとなっている可能性を示唆している (4) 許認可、免許及び登録等の状況についてa. 許認可、免許及び登録、行政指導等医薬品販売業許可(福岡県)を平成25年5月27日付で得ています。医薬品開発は、各国の医薬品の開発及び当局への申請等に関する法律;日本では、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:薬機法、平成26年11月25日施行、「薬事法」から改称)、米国では「連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)及びその関連する法令」、上記の他、日本及び米国を含め各国における当局の省令やガイダンス、ならびに安全性に関する非臨床試験の実施基準(GLP;Good Laboratory Practice)、臨床試験の実施基準(GCP;Good Clinical Practice)、製造管理及び品質管理規則(GMP;Good Manufacturing Practice)の下で進めております。 b. 知的財産権の状況知財は、個別のペプチドの物質特許※17を押さえ、その上で複数ペプチド投与を前提とするためその組み合わせの臨床上の有用性を、実際の臨床試験のデータを実施例として特許化する2層構造が骨格となります。ITK-1を構成するペプチド物質及び関連特許は、独占的に富士フイルム株式会社に使用許諾されています。GRN-1201については、物質特許を含め当社グループが特許を有しております。その他の特許につきましては、地方独立行政法人 神奈川県立病院機構より、GRN-1301に係る上皮成長因子受容体(EGFR)の T790M 点突然変異に由来する抗原ペプチド及び当該ペプチドを含むがんを処置するための薬剤に関する特許の譲渡を受けております。また、国立大学法人 東京大学より、iPS-Tに係る抗原特異的T細胞の製造方法及び、多能性幹細胞を用いた免疫機能再建法に関する特許の実施許諾を得ております。 <主要な特許の状況>発明の名称特許登録番号出願国(登録国)権利者上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)由来ペプチド4579836日本当社7655751米国2554195カナダ腫瘍抗原 7465452米国当社 1207199欧州(注)2381348カナダ4051602日本4097178日本4035845日本4624377日本CD4陽性T細胞に認識されるペプチド4443202日本当社副甲状腺ホルモン関連タンパク質のHLA-A24または-A2結合ペプチド4579581日本当社新規な腫瘍抗原タンパク質SART-3及びその腫瘍抗原ペプチド4436977日本当社4904384日本7541428米国7968676米国8097697米国8563684米国1116791欧州(注)2340888カナダ99812596.2中国660367韓国がんペプチドワクチン(出願中)米国当社カナダ2591799欧州(注)5706895日本5980303日本 (注)欧州については、ドイツ、スペイン、フランス、英国、イタリアが含まれております。 [用語解説] ※1(ペプチド)アミノ酸が複数個つながったもの。タンパク質の断片。 ※2(T細胞)白血球のうち、リンパ球と称される細胞の一種で、骨髄で産生され胸腺でリンパ球へと分化される免疫細胞のこと。胸腺(Thymus)の頭文字をとってT細胞と呼ばれます。生体内に侵入した異物から人体を守る免疫応答システムの司令塔の働きを有し、マクロファージや細胞傷害性T細胞(CTL)などの免疫実働細胞に指示・命令を出します。 ※3(免疫チェックポイント阻害剤)がん細胞がもつ、免疫の働きにブレーキをかけて免疫細胞の攻撃から逃れる仕組みを阻止するため、免疫チェックポイントと呼ばれる分子を阻害してブレーキを解除する抗体医薬品を指します。 ※4(CAR-T)Chimeric Antigen Receptor T-cell Therapy:キメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞療法ある特定のがんに対する、キメラ抗原受容体の遺伝子を患者のT細胞という免疫細胞に導入し、その遺伝子導入されたT細胞を体外で増やして患者に戻すという治療法。ヒト白血球抗原(HLA)の型に依存せず、多くの患者に適用することができるといった特徴がある。 ※5(HLA)HLA(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原)は、体のほとんど全ての細胞表面で発現がみられる、免疫機構において重要なタンパク質で、細菌やウイルスなどの病原体の排除やがん細胞の拒絶、臓器移植の際の拒絶反応などに関与しており「主要組織適合遺伝子複合体」とも呼ばれています。HLAはがん細胞でも細胞表面上に発現しており、がんワクチンの作用機序においては、がん細胞内でがん抗原タンパクが分解されて生成されたペプチドと結合して細胞表面に移動し、CTLにがん細胞として認識させるように機能します。HLAは自己と非自己(他)を区別する「自他認識のマーカー」であり、非常に多様な「他(た)」を自己と区別するために、非常に多様な型があります。ペプチドはHLAの特定の型に結合し、型が合わない場合は結合しません。 ※6(前立腺がん)前立腺がんとは、前立腺(外腺)に発生する病気、がんの一つです。前立腺は男性の臓器で、膀胱の下で尿道をとり囲むようにしてあります。前立腺がんは50歳代から急速に増え始め、発生の平均年齢が70歳といわれるくらい高齢の男性にみられるがんです。前立腺がんは加齢による男性ホルモンのバランスの崩れや、前立腺の慢性的炎症、食生活や生活習慣などの要因が加わって発生すると言われています。前立腺がんは高齢者で発症することから、高齢化が進む日本を含む先進国で罹患率が増加しており、平成23年の罹患者数(年間の新規診断数)は7万8,728人であり、男性では胃がんに次いで2番目に多いがんです。前立腺がんによる死亡数も年々増加し、平成25年における死亡数は1万1,560人であり、この20年間で約3倍に増加しています(出所:独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター)。 ※7(ネオアンチゲン:Neoantigen)がん細胞に独自の遺伝子異常が起きた際に生じる、遺伝子変異(アミノ酸変異)を含む抗原を指します。個々の患者のがん細胞に生じた独自の遺伝子変異によって発現されるようになったがん特異的な抗原で、正常な細胞には存在しません。免疫系から「非自己」として認識されるネオアンチゲンを標的とすることで、がん細胞を殺傷する免疫を効率よく誘導できるようになることが期待されています。 ※8(EBウイルス)エプスタイン・バール・ウイルス。EBウイルスはヘルペスウイルスに属し、ほとんどの人が感染しており、その一部がヒトに腫瘍を発生させることで知られます。1964 年にEpsteinとBarrによって発見されたヒトの腫瘍から見つかった最初のウイルスです。 ※9(NKT細胞)NKT細胞は、がん細胞を直接殺傷する能力をもつと同時に、他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用をもつ免疫細胞のこと。活性化すると、多様なサイトカインといわれる物質を産生し、自然免疫系に属するNK細胞の活性化と樹状細胞の成熟化を促す。成熟した樹状細胞は、更に獲得免疫系に属するキラーT細胞を増殖・活性化させることで、相乗的に抗腫瘍効果が高まる。また、自然免疫系を同時に活性化させることで、T細胞では殺傷できないMHC陰性のがん細胞に対しても殺傷能を持つ特徴がある。 ※10(去勢抵抗性前立腺がん)ホルモン療法及び去勢を行っても効かなくなった状態の前立腺がん。前立腺がんの増殖や進行には男性ホルモンであるアンドロゲンとその受容体であり、転写因子として機能するアンドロゲン受容体が重要な役割を果たすことがわかっています。初めは男性ホルモンを抑える内分泌療法(ホルモン療法)が奏功するものの、暫くして再燃を繰り返した末に奏功しなくなり、「去勢抵抗性」状態になります。 ※11(RNA)リボ核酸(ribonucleic acid)の略称。DNAも核酸であるが、DNAは核の中で様々な情報を蓄積・保存をする役割があるのに対し、RNAはその情報の一時的な処理を行うという役割があります。 生体内の働き・構造から、翻訳の鋳型となる伝令RNA(メッセンジャーRNA, mRNA)、リボソームの主要構成成分であり細胞内RNAの最多成分であるリボソームRNA(rRNA)などに分類されます。この中でメッセンジャーRNAは、DNAからタンパク質を合成するための塩基配列情報を持ったRNAで、mRNAと表記されます。タンパク質の合成は、DNAからタンパク質を合成するために必要な塩基配列情報をコピーしたmRNAが合成され、このmRNAの塩基配列情報に従ってタンパク質が合成されます。 ※12(逆転写酵素)RNA依存性DNAポリメラーゼ (RNA-dependent DNA polymerase) のこと。逆転写反応を触媒する酵素。この酵素は一本鎖RNAを鋳型としてDNAを合成(逆転写)するもので、レトロウイルスの増殖に必須の因子として発見されました。逆転写酵素は相補的DNA(cDNA)の合成に利用され(逆転写反応)、遺伝子工学や分子生物学的実験には必須のツールとなっています。 ※13(細胞傷害性T細胞‐CTL)CTLはCytotoxic T Lymphocyteの略語で、リンパ球のうちのT細胞の一種。細胞表面のT細胞受容体を通じて、樹状細胞等の抗原提示細胞から提示された異物を特異的に認識し、同じくその異物を表面上に提示しているウイルス感染細胞やがん細胞を認識し、細胞傷害物質のサイトカインであるパーフォリンやグランザイムなどを放出することで殺傷することができます。以前はキラーT細胞とも呼ばれていました。 ※14(がん抗原)細胞傷害性T細胞等の免疫細胞が、正常細胞とがん細胞を見分けるための目印になるタンパク質。 ※15(QOL=Quality of Life)医療現場で、病気を治療することだけでなく、患者の生活機能ができるだけ保たれ、人間らしい生活を続けられること。「生活の質」、人間らしい充実した生活、暮らしのレベル。医療分野においては、がん等の長期療養を要する疾患、ならびに消耗の激しい疾患や進行性の疾患において、患者の体へのダメージの大きい治療を継続することによって、患者が自らの理想とする生き方、もしくは社会的にみて「人間らしい生活」と考える生活が実現できない状況を「QOL (生活の質)が低下する」と呼びます。 ※16(完全個別化ワクチン)個々の患者のがん細胞にあるネオアンチゲンを探索し、これに対するオーダーメイドのがんワクチン。海外で臨床試験が行われている。 ※17(物質特許)新規に生成された医薬品の成分など、一定の機能や効果を持った物質そのものに対して付与される特許権。その特許化された物質については、特許権者又は実施許諾者以外の実施(使用、生産、譲渡等)が制限されることにより、特許権者又は実施許諾者の実施が保護されることになります。
FY2017|14,452 文字
3 【事業の内容】当社グループは、新規の「がん免疫治療薬」の開発(現在、臨床試験段階)を行う創薬ベンチャーです。事業モデル、技術の特徴などについては以下のとおりであります。 (1) 事業モデル当社グループの基本的な事業モデルは、がん免疫治療薬シーズの探索研究から初期臨床試験までを行い、後期臨床試験からは国内外の製薬会社に開発製造販売権をライセンスし開発を委ね、そのライセンス先製薬会社からライセンス収入を得るものです。医薬品開発は一般的に10年以上かかりますが、各国の当局の製造販売承認を得て上市される前でも、ライセンス先製薬企業から開発進捗に応じたライセンス関連収入(ライセンス契約締結時の一時金、その後開発進捗に応じて設定したいくつかのマイルストンを達成する毎に得られる開発マイルストン収入、上市後は製品売上高の一定割合となる販売ロイヤリティ収入等)を得ることができます。製薬会社へライセンス後も開発協力金を得て開発を継続することもあります。当社は本邦において長くがんペプチドワクチンの研究を行ってきた久留米大学発のベンチャーとして、久留米大学で平成4年に始まる基礎研究と平成10年に始まる臨床研究を終えたがんペプチドワクチン・シーズを、平成15年の当社設立とともに特許の譲渡を受けて承継し、企業治験に用いる治験薬の製剤化検討に始まり、早期臨床試験までを自社単独で行ってきました。リード開発品のがんペプチドワクチンITK-1は、現在実施中である進行性の去勢抵抗性前立腺がん※1※2を対象とする国内第Ⅲ相臨床試験の開始前に富士フイルム株式会社へライセンス・アウトし、現在当社は同社から本臨床試験の実施を受託し開発協力金を得ながら、本臨床試験を遂行しています。また、海外戦略品として米国で開発を進めるがんペプチドワクチンGRN-1201は、平成27年に始まったメラノーマ(悪性黒色腫)を対象とする第Ⅰ相臨床試験、及び平成29年に非小細胞肺がんを対象とした免疫チェックポイント阻害剤※3との併用で第Ⅱ相臨床試験を開始しております。こちらにつきましては、第Ⅱ相臨床試験で有効性を示すことができれば、その臨床データをもってライセンスアウトし、契約一時金から始まるライセンス収入を得ていくことを想定しています。その他、これら既存パイプラインに重なるかたちで、導入および自社創製の新規パイプラインが収益化のタイミングを迎えるよう、多様な開発プロジェクトを進めております。 (2) 技術の特徴当社グループが開発しているがん免疫治療薬は、人間の体が本来持つ免疫機構にがん細胞を攻撃させるがん治療薬で、免疫機構を司る様々な免疫細胞や免疫に関与する物質を活用し、免疫応答(特定のペプチドを攻撃の目印としてがん細胞を攻撃した経験=免疫メモリー)をコントロールすることによって、がん細胞を死滅させたり、がんの再発・転移を防いだり、進行を遅らせたりする効果を有します。外科的に腫瘍を切除する手術とも、放射線でがん細胞を殺傷する放射線療法とも、化学合成物を直接がん細胞に作用させて殺傷する化学療法(いわゆる抗がん剤治療)とも作用メカニズムが異なるため、これらの既存の作用メカニズムによる治療が有効で無くなったがん患者にとって手術・放射線療法・化学療法に次ぐ「第4の治療法」となることが期待されています。当社グループは、がん免疫治療薬の中でも、免疫機構を司る細胞傷害性T細胞※4※5(CTL)を活性化させがん細胞を殺傷させることを作用メカニズムとするがんワクチンを開発しています。CTLはがん抗原※6を認識し、そのがん抗原を表面上に提示しているがん細胞を殺傷する機能を有します。 がん抗原は、がん細胞表面上にあって、CTLが正常細胞とがん細胞を見分けてがん細胞を攻撃するときの目印になるもので、現在の当社は、がん抗原としてペプチド※7(タンパク質の断片)を用いる「がんペプチドワクチン」を開発しています。 (TCR 用語解説※8、CD8 用語解説※9) ① がんペプチドワクチンの作用メカニズムがん細胞は正常細胞に比べ活発に増殖しているため、細胞の増殖に関連したタンパク質(アミノ酸が数百~数千個、長くつながったもの)が分解され断片化したペプチド(アミノ酸8~10個の短い鎖)が細胞表面に大量に存在しています。また、腫瘍マーカー※10として知られているがん特異的なペプチドも同様にがん細胞表面に存在しています。これらはがん抗原としてCTLの標的となります。そこで、がん細胞内で作り出され細胞表面上に存在しているペプチドと同じものを人工的に化学合成し、この合成ペプチドをがん患者に投与し、そのペプチドに反応するCTLを患者の体内で増やし、がん細胞を破壊しようというのが、がんペプチドワクチンです。投与されたがんペプチドワクチンは局所の樹状細胞※11やマクロファージ※12などの抗原提示細胞※13によって貪食※14され、細胞表面にHLA※15クラスⅠ分子(ヒト白血球抗原)と複合体を形成して細胞表面に表出(提示)されます。ペプチドを表面上に提示したこれらの抗原提示細胞は近傍のリンパ節へと移動し、そこで投与されたペプチドに特異的に反応するCTL前駆細胞※16に抗原提示を行い、この抗原提示を受けたCTL前駆細胞は活性化されて増殖します。増殖を遂げ成熟したCTLはリンパ流に乗ってがん局所へと移動します。がん細胞表面には投与されたがんペプチドワクチンと同じ配列のペプチドががん細胞内で作られHLA分子と複合体を形成して細胞表面に表出されており、CTLはこの複合体を認識してがん細胞をアポトーシス※17へと誘導します。 <ペプチドワクチンの作用メカニズム> ② 当社グループのペプチドの特徴平成3年にベルギーのThierry Boon博士らのグループによって、T細胞が認識する「抗原」の正体が、わずか9(±1)アミノ酸残基からなる短鎖ペプチドであることが突き止められ、分子生物学に基づいた科学的な腫瘍免疫が確立されました。抗原の実体が判明したことで、世界中の研究機関で、抗原の探索に始まるがんワクチンの開発が本格化しました。当社グループが久留米大学から承継しワクチンとして開発を進めているペプチドは、この抗原の正体が突き止められたすぐ後の平成4年から久留米大学の医学部免疫・免疫治療学講座において大規模に進められた抗原探索の成果物です。 ワクチンに用いられている抗原ペプチドは当時の久留米大学において、がん患者から得られた腫瘍組織からcDNA(腫瘍細胞に発現するタンパク質情報を持つメッセンジャーRNA(mRNA)※18)から逆転写酵素※19を用いて合成された相補的DNAライブラリを作製し、そのcDNAライブラリの中からCTLの細胞株(がん患者から樹立された実際にがん細胞を攻撃することができるCTLの細胞株)が認識する抗原タンパク質を同定し、さらにCTLにより認識される9-10個のアミノ酸からなるペプチド分子を同定することによって見つけられました。実際のがん患者のCTLからより高いがん細胞殺傷力を引き出すペプチド抗原が厳選され、さらに久留米大学における臨床研究で実際にがん患者に投与され、免疫応答の強度で絞り込まれたものとなっています。これらの生体由来のがん抗原タンパク質から見出されたペプチドは、そのアミノ酸配列のまま化学合成されたペプチド製剤となります。人の体内に存在するものと同じ物質であるため、従来の抗がん剤(化学療法剤)に比べて安全性が高く、患者のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)※20を維持しながら、生存期間を延長させることが可能になると期待されています。また、これらのペプチドは化学合成で製造されることから、動物由来、血液由来のウイルス等の混入はありません。 ③ ペプチド投与方法の特徴当社グループのワクチンはペプチドを用いますが、患者個々人の免疫機構が以前にそれを目印としてがん細胞を攻撃したこと(免疫メモリー)があるかどうかを投与前にバイオマーカー※21で確認し、免疫メモリーのあるペプチドを投与します。それによって、より強い免疫をより早く誘導でき、より高い臨床効果へ結びつくという考え方に基づいています。がんワクチン開発の課題の1つは、免疫反応(CTLの活性化)から活性化されたCTLががん細胞を攻撃し、それが臨床効果として現れるまでにタイムラグがあることと言われています。タイムラグがあるとその間にがん細胞が増殖してしまうからです。当社グループは、免疫メモリーに着目する独自の投与方法によって、この課題を克服することを考えています。さらに、当社グループは複数のペプチドを同時に投与します。がん細胞は免疫系の攻撃を免れるために特定の遺伝子発現を変化させて攻撃の目印を消失させたりすることがあります。これは、エスケープ現象、あるいは免疫逃避と呼ばれています。1つのペプチド投与では、最初は効いても、がん細胞の遺伝子変異により、すぐに効かなくなる可能性があると考えられています。一方で、複数の抗原投与ならがん細胞の遺伝子変異が追いつかず、エスケープ現象を回避できる可能性が高くなります。 <複数種の抗原ペプチドを同時投与> (3) 開発パイプライン当社グループにおける現在のパイプラインは、以下の通りです。・ 臨床開発段階にあるHLA-A24拘束性ペプチドで構成されるがんペプチドワクチンITK-1(適応症:前立腺がん)・ 米国において開発中のHLA-A2拘束性ペプチドで構成されるグローバル向けがんペプチドワクチンGRN-1201(適応症:メラノーマ(悪性黒色腫)/非小細胞肺がん)・ ネオアンチゲン※22(遺伝子変異抗原)ペプチドワクチンGRN-1301(適応症:非小細胞肺がん)・ 再生医療のがん免疫療法分野における世界初の臨床応用であるT-iPS(適応症:EBウイルス由来リンパ腫)ITK-1は第Ⅲ相臨床試験中であり、平成27年6月に中間解析を実施し、平成28年4月には症例の獲得活動を終了し、現在は最終解析実施までの観察期間となっております。GRN-1201は、平成27年10月に治験申請(IND)を行い、メラノーマを対象とする米国での第Ⅰ相臨床試験を開始し、平成29年1月には非小細胞肺がんを対象として米国で免疫チェックポイント阻害剤との併用による第Ⅱ相臨床試験を開始いたしました。GRN-1301、T-iPSにつきましては、現在基礎研究段階となっており、早期の臨床入りを目指しております。 ITK-1 前立腺がん・ 患者の免疫応答に最適ながんペプチドワクチンを投与・ 国内で進行性の去勢抵抗性前立腺がんを対象とする第Ⅲ相臨床試験を実施中(現在、観察期間)・ 富士フイルム株式会社へライセンス・アウト済み [開発とアライアンスの現状]リード開発品のがんペプチドワクチンITK-1は、富士フイルム株式会社へ導出済みで、平成25年6月より日本国内において進行性の去勢抵抗性前立腺がんを対象とするプラセボ対照第Ⅲ相二重盲検比較試験が実施されています。平成27年6月に中間解析を実施し、第三者機関である効果安全性評価委員会(臨床試験の進行、安全性データおよび有効性を適時に評価し、治験依頼者に試験の継続、変更または中止を提言することを目的に外部の医師などに依頼して設置することのできる委員会)より本臨床試験の継続が認められ、現在観察期間となっております。本臨床試験は、手術・放射線療法・ホルモン療法・化学療法剤の治療を経た進行性の去勢抵抗性前立腺がん患者を対象に、全国の施設で進められています。前立腺がんは中高年男性に多くみられるがんですが、日本においても近年の高齢化や生活環境・食生活の欧米化などにより患者数が増加しており、平成26年の患者数(有病者数)は約21万人と推定されています(出所:平成26年厚生労働省患者調査)。また平成28年の罹患者数(年間の新規診断数)は9万2,600人(予測)ともいわれ、男性では最も罹患者数の多いがん種となっています。前立腺がんによる死亡数は年々増加し、平成28年における死亡数は1万2,300人と推定され、この20年間で約3倍に増加しています(出所:国立研究開発法人 国立がん研究センターがん対策情報センター)。前立腺がんの標準的治療であるホルモン療法が無効になった去勢抵抗性前立腺がん患者数も増えています。本臨床試験において、当社は富士フイルム株式会社から治験実施を委託されており、開発協力金を得ております。この臨床試験において有意性が示されれば、本品は日本の当局に製造販売承認申請されます。当社は予め開発進捗に応じて設定したマイルストンが達成されることにより開発マイルストン収入を得て、更に本品の上市後は製品売上の一定割合を販売ロイヤリティ収入として得ます。 [開発品の特徴]ITK-1は、予め化学合成で製造された既製品の12種の抗原ペプチドの中から、投与前の患者の末梢血を用いたバイオマーカー検査によって、各患者に最適な抗原ペプチドを2~4種選択して投与する「テーラーメイド型」がんペプチドワクチンです。テーラーメイド型ワクチンは、バイオマーカーで免疫メモリーのあるペプチドを複数選択し、それらを同時投与することによって、患者個人の免疫反応を効率よく引き出すとともに、がんの免疫逃避を回避するので、臨床効果に結びつく可能性が高くなります。 [これまでの試験成績]久留米大学から基礎研究及び臨床研究を終えたがんペプチドワクチン・シーズ※23を承継し、ITK-1として製剤化及び非臨床試験を実施した後、平成17年度から i)去勢抵抗性エストラムスチン不応答再燃前立腺がん、及び ii)初期治療(術後放射線化学療法または放射線治療)抵抗性膠芽腫(脳腫瘍)※24患者を対象にITK-1の第Ⅰ相臨床試験及び継続投与試験を実施しました。その結果、前立腺がん患者15例と膠芽腫患者12例の計27例での主な副作用は、注射部位の反応で、「発熱」1例及び「注射部位の反応」2例がCTCAE Grade 3※25を認めた以外はCTCAE Grade 2以下であったことから、高い安全性が示唆されました。前立腺がん患者15例での全生存期間の中央値※26(Median Survival Time)は23.8ヶ月を示し(出所:Noguchi M, et al. The Prostate 2011; 71: 470-479)、これは久留米大学の臨床研究をよく再現する成績でした。臨床効果を生物学的に裏付けるワクチン投与患者の免疫応答、すなわちCTLの活性化と、抗体価の上昇も確認されております。また、膠芽腫患者12例の全生存期間中央値は10.6ヶ月で、うち2例で有効例(部分奏功※27;MRIによる画像診断で50%以上の腫瘍縮小)が認められました(出所:Terasaki M, et al. J Clin Oncol 2011; 29: 337-344) 。 GRN-1201 各種固形がん・ グローバル向けがんペプチドワクチン・ 米国でメラノーマ(悪性黒色腫)を対象とする第Ⅰ相臨床試験、及び非小細胞がんを対象とした第Ⅱ相臨床試験を実施中 ITK-1に続くパイプラインのGRN-1201は、欧米人が多く有するA2型のHLA(HLA-A2)に結合するペプチドで構成される、米国や欧州を始めグローバルに展開できるがんペプチドワクチンです。第1適応をメラノーマ(悪性黒色腫)として、米国FDA(米国食品医薬品局)へ平成27年10月に治験申請(IND)を行い、現在米国での第Ⅰ相臨床試験を実施中です。また、平成29年1月には、非小細胞肺がんへ適応拡大し、同じく米国で免疫チェックポイント阻害剤との併用による第Ⅱ相臨床試験を開始いたしました。CTLはHLAと抗原ペプチドとの結合を介して、ペプチドを攻撃対象の目印として記憶しますが、このHLAにも個人差、人種差があります。日本人に最も多いHLA-A24は日本人全体の60%、欧米ではHLA-A2が全体の50%を占めます。ITK-1はHLA-A24に結合するペプチドであるのに対し、GRN-1201はHLA-A2に結合するペプチドで構成されます。 GRN-1301 非小細胞肺がん・ネオアンチゲン(遺伝子変異抗原)ペプチドワクチン・個別化医療の実現に向けた新規ターゲット 平成28年12月に、非小細胞肺がんを適応症とするネオアンチゲンペプチドワクチンを開発するべく、地方独立行政法人 神奈川県立病院機構が有する特許「上皮成長因子受容体(EGFR)のT790M点突然変異に由来する抗原ペプチド」の譲渡を受けました(EGFRは、細胞の増殖や成長を制御する上皮成長因子 (Epidermal Growth Factor) と結合し、シグナル伝達を行う受容体(Receptor))。肺がんは、米国では年間約22万人、日本では年間約13万人が新たに罹患すると報告されていますが、その内一部の患者は、治療の過程で既存の治療薬であるEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)に対し耐性を生じている状態でした。しかし、これらの患者の約6割にEGFR-T790M点突然変異(EGFRの790番目のアミノ酸がスレオニンからメチオニンへ遺伝子変異すること)という遺伝子変異が生じていることが分かっており、当社グループは、このEGFR-TKI耐性遺伝子変異を抗原とするペプチドワクチンの開発を開始しました。 T-iPS EBウイルス※28由来リンパ腫・iPS細胞再生T細胞療法・再生医療のがん免疫療法分野における世界初の臨床応用 平成28年12月に、株式会社アドバンスト・イミュノセラピーを子会社化し、中内啓光東京大学医科学研究所教授兼スタンフォード大学教授らの創製技術を用いたiPS細胞由来再生T細胞療法の研究開発を開始しました。同社は、iPS技術を用いてがん細胞を攻撃するT細胞を再生させる(若返らせる)ことにより、がん免疫療法においてこれまで課題とされてきたT細胞の疲弊と、様々な過程で起こりうる副作用を回避する独自の技術を保有しております。当初はコンセプトを示しやすいウイルス性血液がんの一種であるEBウイルス由来リンパ腫を適応症としますが、将来的には固形がんへの展開を見込んでおります。世界初のiPS細胞のがん免疫療法への応用を試みるものであり、安全性が適正に担保されたところで臨床試験を進めるべく、準備を進めております。本開発品は、再生医療等製品として開発を進めており、早期承認制度に基づいた承認取得の可能性を想定しております。 その他当社グループの物質特許※29を有するがん抗原と免疫細胞を修飾して活性を高める技術との融合による治療薬または治療法を中心に、日本・海外を問わず、外部の研究機関との共同研究や導入も含め、引き続きがん免疫療法に焦点を当てたシーズを開発していきます。 (4) 許認可、免許及び登録等の状況についてa. 許認可、免許及び登録、行政指導等医薬品販売業許可(福岡県)を平成25年5月27日付で得ています。医薬品開発は、各国の医薬品の開発及び当局への申請等に関する法律;日本では、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:薬機法、平成26年11月25日施行、「薬事法」から改称)、米国では「連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)及びその関連する法令」、上記の他、日本及び米国を含め各国における当局の省令やガイダンス、ならびに安全性に関する非臨床試験の実施基準(GLP;Good Laboratory Practice)、臨床試験の実施基準(GCP;Good Clinical Practice)、製造管理及び品質管理規則(GMP;Good Manufacturing Practice)の下で進めております。 b. 知的財産権の状況知財は、個別のペプチドの物質特許を押さえ、その上で複数ペプチド投与を前提とするためその組み合わせの臨床上の有用性を、実際の臨床試験のデータを実施例として特許化する2層構造が骨格となります。ITK-1を構成するペプチド物質及び関連特許は、独占的に富士フイルム株式会社に使用許諾されています。GRN-1201については、物質特許を含め当社グループが特許を有しております。その他の特許につきましては、地方独立行政法人 神奈川県立病院機構より、GRN-1301に係る上皮成長因子受容体(EGFR)の T790M 点突然変異に由来する抗原ペプチド及び当該ペプチドを含むがんを処置するための薬剤に関する特許の譲渡を受けております。また、国立大学法人 東京大学より、T-iPSに係る抗原特異的T細胞の製造方法及び、多能性幹細胞を用いた免疫機能再建法に関する特許の実施許諾を得ております。 <主要な特許の状況>発明の名称特許登録番号出願国(登録国)権利者上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)由来ペプチド4579836日本当社7655751米国2554195カナダ腫瘍抗原 7465452米国当社 1207199欧州(注)2381348カナダ4051602日本4097178日本4035845日本4624377日本CD4陽性T細胞に認識されるペプチド4443202日本当社副甲状腺ホルモン関連タンパク質のHLA-A24または-A2結合ペプチド4579581日本当社ヒト癌退縮抗原タンパク質4138073日本当社新規な腫瘍抗原タンパク質SART-3及びその腫瘍抗原ペプチド4436977日本当社4904384日本7541428米国7968676米国8097697米国8563684米国1116791欧州(注)2340888カナダ99812596.2中国660367韓国がんペプチドワクチン(出願中)米国当社カナダ2591799欧州5706895日本5980303日本 (注)欧州については、ドイツ、スペイン、フランス、英国、イタリアが含まれております。 [用語解説] ※1(前立腺がん)前立腺がんとは、前立腺(外腺)に発生する病気、がんの一つです。前立腺は男性の臓器で、膀胱の下で尿道をとり囲むようにしてあります。前立腺がんは50歳代から急速に増え始め、発生の平均年齢が70歳といわれるくらい高齢の男性にみられるがんです。前立腺がんは加齢による男性ホルモンのバランスの崩れや、前立腺の慢性的炎症、食生活や生活習慣などの要因が加わって発生すると言われています。前立腺がんは高齢者で発症することから、高齢化が進む日本を含む先進国で罹患率が増加しており、平成23年の罹患者数(年間の新規診断数)は7万8,728人であり、男性では胃がんに次いで2番目に多いがんです。前立腺がんによる死亡数も年々増加し、平成25年における死亡数は1万1,560人であり、この20年間で約3倍に増加しています(出所:独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター)。 ※2(去勢抵抗性前立腺がん)ホルモン療法及び去勢を行っても効かなくなった状態の前立腺がん。前立腺がんの増殖や進行には男性ホルモンであるアンドロゲンとその受容体であり、転写因子として機能するアンドロゲン受容体が重要な役割を果たすことがわかっています。初めは男性ホルモンを抑える内分泌療法(ホルモン療法)が奏功するものの、暫くして再燃を繰り返した末に奏功しなくなり、「去勢抵抗性」状態になります。 ※3(免疫チェックポイント阻害剤)がん細胞がもつ、免疫の働きにブレーキをかけて免疫細胞の攻撃から逃れる仕組みを阻止するため、免疫チェックポイントと呼ばれる分子を阻害してブレーキを解除する抗体医薬品を指します。 ※4(T細胞)白血球のうち、リンパ球と称される細胞の一種で、骨髄で産生され胸腺でリンパ球へと分化される免疫細胞のこと。胸腺(Thymus)の頭文字をとってT細胞と呼ばれます。生体内に侵入した異物から人体を守る免疫応答システムの司令塔の働きを有し、マクロファージや細胞傷害性T細胞(CTL)などの免疫実働細胞に指示・命令を出します。 ※5(細胞傷害性T細胞‐CTL)CTLはCytotoxic T Lymphocyteの略語で、リンパ球のうちのT細胞の一種。細胞表面のT細胞受容体を通じて、樹状細胞等の抗原提示細胞から提示された異物を特異的に認識し、同じくその異物を表面上に提示しているウイルス感染細胞やがん細胞を認識し、細胞傷害物質のサイトカインであるパーフォリンやグランザイムなどを放出したりすることによって、殺傷することができます。以前はキラーT細胞とも呼ばれていました。 ※6(がん抗原)細胞傷害性T細胞等の免疫細胞が、正常細胞とがん細胞を見分けるための目印になるタンパク質。 ※7(ペプチド)アミノ酸が複数個つながったもの。タンパク質の断片。 ※8(TCR)T細胞受容体(T-cell Receptor)。T細胞の細胞膜上に発現している抗原受容体分子。T細胞に活性化シグナルを伝達する機能を持ち、他の細胞表面上にあるHLA分子に結合した抗原ペプチドを認識します。がんワクチンの作用機序においては、T細胞ががん細胞を認識するときと、樹状細胞等の抗原提示細胞から攻撃の目印としてがん抗原ペプチドの提示を受ける(情報を受け取る)ときに、このT細胞受容体を通して相手の細胞に表出されたペプチドとHLAの複合体を認識します。 ※9(CD8)CTLの補助レセプターのこと。抗原認識において、CD8はT細胞表面のT細胞レセプターと会合し、HLA・ペプチド複合体におけるHLAの定常部分に結合します。この結合は、T細胞が機能的な応答を示す際において不可欠であるため、補助レセプターと呼ばれます。 ※10(腫瘍マーカー)がん細胞が作り出す生体因子で、がんの進行とともに増加するため、がんの進行度を評価する指標(マーカー)となるもの。血液中又は尿中における当該物質の濃度を測定し、がんの進行度を評価します。前立腺がんの腫瘍マーカーとしては、PSA(前立腺特異抗原 Prostate Specific Antigen)などがあります。 ※11(樹状細胞)枝状、樹状の形態をした突起を有する細胞であり、抗原提示細胞としての機能を有する免疫細胞の一種です。体内に侵入した細菌やウイルスなどの抗原を細胞内に取り込み消化し、免疫情報をリンパ球に伝えます。がんにおいては、CTLにがん抗原の情報を伝達して、がん細胞への攻撃などの免疫反応を開始させます。 ※12(マクロファージ)白血球の一種であり、動物の組織内に存在するアメーバ状の細胞。生体内に侵入した細菌や異物などを捕食し、消化するため、清掃屋としての役割を有します。また、それらの異物に抵抗するため、それらの異物の情報を免疫情報としてリンパ球に伝える役割も有しています。 ※13(抗原提示細胞)体内に侵入した細菌やウイルスに取り込まれた細胞の断片、がん細胞の断片などを細胞内に取り込み、それらが含む抗原を細胞表面に表出(提示)しながら、近くのリンパ節へ移動し、T細胞に抗原の情報を伝達し活性化させる役割を担う免疫細胞。抗原提示細胞には、樹状細胞やマクロファージなどがあります。 ※14(貪食)細菌や死んだ細胞などの大型の粒子を取り込み、分解や処理などの消化を行うこと。この能力を有する細胞を総称して貪食細胞といい、マクロファージや樹状細胞などがあります。 ※15(HLA)HLA(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原)は、体のほとんど全ての細胞表面で発現がみられる、免疫機構において重要なタンパク質で、細菌やウイルスなどの病原体の排除やがん細胞の拒絶、臓器移植の際の拒絶反応などに関与しており「主要組織適合遺伝子複合体」とも呼ばれています。HLAはがん細胞でも細胞表面上に発現しており、がんワクチンの作用機序においては、がん細胞内でがん抗原タンパクが分解されて生成されたペプチドと結合して細胞表面に移動し、CTLにがん細胞として認識させるように機能します。HLAは自己と非自己(他)を区別する「自他認識のマーカー」であり、非常に多様な「他(た)」を自己と区別するために、非常に多様な型があります。ペプチドはHLAの特定の型に結合し、型が合わない場合は結合しません。 ※16(CTL前駆細胞)がん細胞を攻撃する細胞傷害性T細胞(CTL)になる前のT細胞のこと。 ※17(アポトーシス)細胞に内在する、あらかじめ遺伝子で決められたメカニズムにより自らが細胞死を誘導する機構。生体を良い状態に維持するために引き起こされる、生体を調整するための遺伝子によりプログラムされた細胞死のことです。細胞の発生や成長の過程で生じる不要となる細胞を排除する役割だけでなく、がん細胞やウイルスを排除するにあたっても重要な役割を果たします。 ※18(RNA)リボ核酸(ribonucleic acid)の略称。DNAも核酸であるが、DNAは核の中で様々な情報を蓄積・保存をする役割があるのに対し、RNAはその情報の一時的な処理を行うという役割があります。 生体内の働き・構造から、翻訳の鋳型となる伝令RNA(メッセンジャーRNA, mRNA)、リボソームの主要構成成分であり細胞内RNAの最多成分であるリボソームRNA(rRNA)などに分類されます。この中でメッセンジャーRNAは、DNAからタンパク質を合成するための塩基配列情報を持ったRNAで、mRNAと表記されます。タンパク質の合成は、DNAからタンパク質を合成するために必要な塩基配列情報をコピーしたmRNAが合成され、このmRNAの塩基配列情報に従ってタンパク質が合成されます。 ※19(逆転写酵素)RNA依存性DNAポリメラーゼ (RNA-dependent DNA polymerase) のこと。逆転写反応を触媒する酵素。この酵素は一本鎖RNAを鋳型としてDNAを合成(逆転写)するもので、レトロウイルスの増殖に必須の因子として発見されました。逆転写酵素は相補的DNA(cDNA)の合成に利用され(逆転写反応)、遺伝子工学や分子生物学的実験には必須のツールとなっています。 ※20(QOL=Quality of Life)医療現場で、病気を治療することだけでなく、患者の生活機能ができるだけ保たれ、人間らしい生活を続けられること。「生活の質」、人間らしい充実した生活、暮らしのレベル。医療分野においては、がん等の長期療養を要する疾患、ならびに消耗の激しい疾患や進行性の疾患において、患者の体へのダメージの大きい治療を継続することによって、患者が自らの理想とする生き方、もしくは社会的にみて「人間らしい生活」と考える生活が実現できない状況を「QOL (生活の質)が低下する」と呼びます。 ※21(バイオマーカー)客観的に人体の状態を測定し評価するための指標であり、観察、診断及び治療の際に使用される。臨床検査値(血液検査、腫瘍マーカーなど)、CTやMRIなどの画像診断データや、臨床試験においてその効果を測定する代替マーカーや前立腺がんの状態を調べるPSA(前立腺特異抗原)は診断マーカーであるなど、また広い意味では体温や脈拍なども含まれます。 ※22(ネオアンチゲン:Neoantigen)がん細胞に独自の遺伝子異常が起きた際に生じる、遺伝子変異(アミノ酸変異)を含む抗原を指します。個々の患者のがん細胞に生じた独自の遺伝子変異によって発現されるようになったがん特異的な抗原で、正常な細胞には存在しません。免疫系から「非自己」として認識されるネオアンチゲンを標的とすることで、がん細胞を殺傷する免疫を効率よく誘導できるようになることが期待されています。 ※23(シーズ)研究開発および事業化の対象となる医薬品候補物質。 ※24(膠芽腫)脳腫瘍の中でも最も悪性度の高い(WHO分類により星状細胞腫グレード4)腫瘍のこと。 ※25(CTCAE Grade) Common Terminology Criteria for Adverse Events(有害事象共通用語規準)の略で、臨床試験で発生する「有害事象」を世界共通の尺度で評価・集計するための規準。「有害事象(Adverse Event: AE)」とは、治療に際して観察される、あらゆる意図しないまたは好ましくない徴候や症状、疾患を指し、治療との因果関係は求めないため原疾患による合併症等の症状も治療に起因する副作用もすべてが含まれます。Gradeは、有害事象の重症度を示し、以下の原則に従いGrade1からGrade5まで5段階に分類され、各有害事象の重症度が定義されております。Grade 1 軽症; 症状がない, または軽度の症状がある; 臨床所見または検査所見のみ; 治療を要さない Grade 2 中等症; 最小限/局所的/非侵襲的治療を要する; 年齢相応の身の回り以外の日常生活動作の制限Grade 3 重症または医学的に重大であるが, ただちに生命を脅かすものではない; 入院または入院期間の延長を要する; 活動不能/動作不能; 身の回りの日常生活動作の制限Grade 4 生命を脅かす; 緊急処置を要する Grade 5 有害事象による死亡 ※26(全生存期間の中央値)「全生存期間」は、試験に登録された日からあらゆる原因による死亡日までの期間を指します。「全生存期間の中央値(MST; Median Survival Time)」は、試験に登録された症例の生存率が50%になるまでの期間をいいます。全生存期間はがん治療薬の臨床試験の評価項目として、特に後期臨床試験において一般的に用いられています。 ※27(部分奏功)がん治療薬の臨床効果を示す一つの指標に「奏効率」があり、MRI等の画像診断において測定可能ながん組織の断面の長径とそれに直角に交わる最大径の積の総和が50%以下に縮小し、かつ腫瘍による二次病変の増悪がなく、新病変がない場合(2方向測定法)、もしくは断面の最長径の和が30%以上減少し、かつ測定不能病変の明らかな増悪がなく、新病変がない場合(RECIST)が有効(部分奏効)、全ての腫瘍が消失した場合が著効(完全奏効)と判定されます。 ※28(EBウイルス)エプスタイン・バール・ウイルス。EBウイルスはヘルペスウイルスに属し、ほとんどの人が感染しており、その一部がヒトに腫瘍を発生させることで知られます。1964 年にEpsteinとBarrによって発見されたヒトの腫瘍から見つかった最初のウイルスです。 ※29(物質特許)新規に生成された医薬品の成分など、一定の機能や効果を持った物質そのものに対して付与される特許権。その特許化された物質については、特許権者又は実施許諾者以外の実施(使用、生産、譲渡等)が制限されることにより、特許権者又は実施許諾者の実施が保護されることになります。
FY2016|12,193 文字
3 【事業の内容】当社は、新規の「がん免疫治療薬」の開発(現在、臨床試験段階)を行う創薬ベンチャーです。事業モデル、技術の特徴などについては以下のとおりであります。 (1) 事業モデル当社の基本的な事業モデルは、がん免疫治療薬シーズの探索研究から初期臨床試験までを行い、後期臨床試験からは国内外の製薬会社に開発製造販売権をライセンスし開発を委ね、そのライセンス先製薬会社からライセンス収入を得るものです。医薬品開発は一般的に10年以上かかりますが、各国の当局の製造販売承認を得て上市される前でも、ライセンス先製薬企業から開発進捗に応じたライセンス関連収入(ライセンス契約締結時の一時金、その後開発進捗に応じて設定したいくつかのマイルストンを達成する毎に得られる開発マイルストン収入、上市後は製品売上高の一定割合となる販売ロイヤリティ収入等)を得ることができます。製薬会社へライセンス後も開発協力金を得て開発を継続することもあります。当社は本邦において長くがんペプチドワクチンの研究を行ってきた久留米大学発のベンチャーとして、久留米大学で平成4年に始まる基礎研究と平成10年に始まる臨床研究を終えたがんペプチドワクチン・シーズを、平成15年の当社設立とともに特許の譲渡を受けて承継し、企業治験に用いる治験薬の製剤化検討に始まり、早期臨床試験までを自社単独で行ってきました。リード開発品のがんペプチドワクチンITK-1は、現在実施中である進行性の去勢抵抗性前立腺がん※1※2を対象とする国内第Ⅲ相臨床試験の開始前に富士フイルム株式会社へライセンス・アウトし、現在当社は同社から本臨床試験の実施を受託し開発協力金を得ながら、本臨床試験を遂行しています。 (2) 技術の特徴当社が開発しているがん免疫治療薬は、人間の体が本来持つ免疫機構にがん細胞を攻撃させるがん治療薬で、免疫機構を司る様々な免疫細胞や免疫に関与する物質を活用し、免疫応答(特定のペプチドを攻撃の目印としてがん細胞を攻撃した経験=免疫メモリー)をコントロールすることによって、がん細胞を死滅させたり、がんの再発・転移を防いだり、進行を遅らせたりする効果を有します。外科的に腫瘍を切除する手術とも、放射線でがん細胞を殺傷する放射線療法とも、化学合成物を直接がん細胞に作用させて殺傷する化学療法(いわゆる抗がん剤治療)とも作用メカニズムが異なるため、これらの既存の作用メカニズムによる治療が有効で無くなったがん患者にとって手術・放射線療法・化学療法に次ぐ「第4の治療法」となることが期待されています。 当社は、がん免疫治療薬の中でも、免疫機構を司る細胞傷害性T細胞※3※4(CTL)を活性化させがん細胞を殺傷させることを作用メカニズムとするがんワクチンを開発しています。CTLはがん抗原※5を認識し、そのがん抗原を表面上に提示しているがん細胞を殺傷する機能を有します。 がん抗原は、がん細胞表面上にあって、CTLが正常細胞とがん細胞を見分けてがん細胞を攻撃するときの目印になるもので、現在の当社は、がん抗原としてペプチド※6(タンパク質の断片)を用いる「がんペプチドワクチン」を開発しています。 (TCR 用語解説※7、CD8 用語解説※8) ① がんペプチドワクチンの作用メカニズムがん細胞は正常細胞に比べ活発に増殖しているため、細胞の増殖に関連したタンパク質(アミノ酸が数百~数千個、長くつながったもの)が分解され断片化したペプチド(アミノ酸8~10個の短い鎖)が細胞表面に大量に存在しています。また、腫瘍マーカー※9として知られているがん特異的なペプチドも同様にがん細胞表面に存在しています。これらはがん抗原としてCTLの標的となります。そこで、がん細胞内で作り出され細胞表面上に存在しているペプチドと同じものを人工的に化学合成し、この合成ペプチドをがん患者に投与し、そのペプチドに反応するCTLを患者の体内で増やし、がん細胞を破壊しようというのが、がんペプチドワクチンです。投与されたがんペプチドワクチンは局所の樹状細胞※10やマクロファージ※11などの抗原提示細胞※12によって貪食※13され、細胞表面にHLA※14クラスⅠ分子(ヒト白血球抗原)と複合体を形成して細胞表面に表出(提示)されます。ペプチドを表面上に提示したこれらの抗原提示細胞は近傍のリンパ節へと移動し、そこで投与されたペプチドに特異的に反応するCTL前駆細胞※15に抗原提示を行い、この抗原提示を受けたCTL前駆細胞は活性化されて増殖します。増殖を遂げ成熟したCTLはリンパ流に乗ってがん局所へと移動します。がん細胞表面には投与されたがんペプチドワクチンと同じ配列のペプチドががん細胞内で作られHLA分子と複合体を形成して細胞表面に表出されており、CTLはこの複合体を認識してがん細胞をアポトーシス※16へと誘導します。 <ペプチドワクチンの作用メカニズム> ② 当社のペプチドの特徴平成3年にベルギーのThierry Boon博士らのグループによって、T細胞が認識する「抗原」の正体が、わずか9(±1)アミノ酸残基からなる短鎖ペプチドであることが突き止められ、分子生物学に基づいた科学的な腫瘍免疫が確立されました。抗原の実体が判明したことで、世界中の研究機関で、抗原の探索に始まるがんワクチンの開発が本格化しました。当社が久留米大学から承継しワクチンとして開発を進めているペプチドは、この抗原の正体が突き止められたすぐ後の平成4年から久留米大学の医学部免疫・免疫治療学講座において大規模に進められた抗原探索の成果物です。 ワクチンに用いられている抗原ペプチドは当時の久留米大学において、がん患者から得られた腫瘍組織からcDNA(腫瘍細胞に発現するタンパク質情報を持つメッセンジャーRNA(mRNA)※17)から逆転写酵素※18を用いて合成された相補的DNAライブラリを作製し、そのcDNAライブラリの中からCTLの細胞株(がん患者から樹立された実際にがん細胞を攻撃することができるCTLの細胞株)が認識する抗原タンパク質を同定し、さらにCTLにより認識される9-10個のアミノ酸からなるペプチド分子を同定することによって見つけられました。実際のがん患者のCTLからより高いがん細胞殺傷力を引き出すペプチド抗原が厳選され、さらに久留米大学における臨床研究で実際にがん患者に投与され、免疫応答の強度で絞り込まれたものとなっています。 これらの生体由来のがん抗原タンパク質から見出されたペプチドは、そのアミノ酸配列のまま化学合成されたペプチド製剤となります。人の体内に存在するものと同じ物質であるため、従来の抗がん剤(化学療法剤)に比べて安全性が高く、患者のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)※19を維持しながら、生存期間を延長させることが可能になると期待されています。また、これらのペプチドは化学合成で製造されることから、動物由来、血液由来のウイルス等の混入はありません。 ③ ペプチド投与方法の特徴当社のワクチンはペプチドを用いますが、患者個々人の免疫機構が以前にそれを目印としてがん細胞を攻撃したこと(免疫メモリー)があるかどうかを投与前にバイオマーカー※20で確認し、免疫メモリーのあるペプチドを投与します。それによって、より強い免疫をより早く誘導でき、より高い臨床効果へ結びつくという考え方に基づいています。がんワクチン開発の課題の1つは、免疫反応(CTLの活性化)から活性化されたCTLががん細胞を攻撃し、それが臨床効果として現れるまでにタイムラグがあることと言われています。タイムラグがあるとその間にがん細胞が増殖してしまうからです。当社は、免疫メモリーに着目する独自の投与方法によって、この課題を克服することを考えています。さらに、当社は複数のペプチドを同時に投与します。がん細胞は免疫系の攻撃を免れるために特定の遺伝子発現を変化させて攻撃の目印を消失させたりすることがあります。これは、エスケープ現象、あるいは免疫逃避と呼ばれています。1つのペプチド投与では、最初は効いても、がん細胞の遺伝子変異により、すぐに効かなくなる可能性があると考えられています。一方で、複数の抗原投与ならがん細胞の遺伝子変異が追いつかず、エスケープ現象を回避できる可能性が高くなります。 <複数種の抗原ペプチドを同時投与> (3) 開発パイプライン当社における現在のパイプラインは、臨床開発段階にあるHLA-A24拘束性ペプチドで構成されるがんペプチドワクチンITK-1と、米国において開発中のHLA-A2拘束性ペプチドで構成されるグローバル向けがんペプチドワクチンGRN-1201の2本があります。ITK-1は第Ⅲ相臨床試験中であり、平成27年6月に中間解析を実施し、平成28年4月には症例の獲得活動を終了し、最終解析実施までの観察期間となっております。GRN-1201は、平成27年10月に治験申請(IND)を行い、メラノーマ(悪性黒色腫)を対象とする米国での第Ⅰ相臨床試験を開始しております。 ITK-1 前立腺がん・ 患者の免疫応答に最適ながんペプチドワクチンを投与・ 国内で進行性の去勢抵抗性前立腺がんを対象とする第Ⅲ相臨床試験を実施中(中間解析を実施済み及び症例登録獲得活動終了)・ 富士フイルム株式会社へライセンス・アウト済み [開発とアライアンスの現状]リード開発品のがんペプチドワクチンITK-1は、富士フイルム株式会社へ導出済みで、平成25年6月より日本国内において進行性の去勢抵抗性前立腺がんを対象とするプラセボ対照第Ⅲ相二重盲検比較試験が実施されています。平成27年6月に中間解析を実施し、第三者機関である効果安全性評価委員会(臨床試験の進行、安全性データおよび有効性を適時に評価し、治験依頼者に試験の継続、変更または中止を提言することを目的に外部の医師などに依頼して設置することのできる委員会)より本臨床試験の継続が認められ、引き続き試験を進めております。 本臨床試験は、手術・放射線療法・ホルモン療法・化学療法剤の治療を経た進行性の去勢抵抗性前立腺がん患者を対象に、全国の施設で進められています。前立腺がんは中高年男性に多くみられるがんですが、日本においても近年の高齢化や生活環境・食生活の欧米化などにより患者数が増加しており、現在の患者数(有病者数)は約18万人と推定されます(出所:平成23年厚生労働省患者数調査)。平成23年の罹患者数(年間の新規診断数)は7万8,728人であり、男性では胃がんに次いで2番目に多いがんです。前立腺がんによる死亡数も年々増加し、平成25年における死亡数は1万1,560人であり、この20年間で約3倍に増加しています(出所:独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター)。前立腺がんの標準的治療であるホルモン療法が無効になった去勢抵抗性前立腺がん患者数も増えています。本臨床試験において、当社は富士フイルム株式会社から治験実施を委託されており、開発協力金を得ております。この臨床試験において有意性が示されれば、本品は日本の当局に製造販売承認申請されます。当社は予め開発進捗に応じて設定したマイルストンが達成されることにより開発マイルストン収入を得て、更に本品の上市後は製品売上の一定割合を販売ロイヤリティ収入として得ます。 [開発品の特徴]ITK-1は、予め化学合成で製造された既製品の12種の抗原ペプチドの中から、投与前の患者の末梢血を用いたバイオマーカー検査によって、各患者に最適な抗原ペプチドを2~4種選択して投与する「テーラーメイド型」がんペプチドワクチンです。テーラーメイド型ワクチンは、バイオマーカーで免疫メモリーのあるペプチドを複数選択し、それらを同時投与することによって、患者個人の免疫反応を効率よく引き出すとともに、がんの免疫逃避を回避するので、臨床効果に結びつく可能性が高くなります。 [これまでの試験成績]久留米大学から基礎研究及び臨床研究を終えたがんペプチドワクチン・シーズ※21を承継し、ITK-1として製剤化及び非臨床試験を実施した後、平成17年度から i)去勢抵抗性エストラムスチン不応答再燃前立腺がん、及び ii)初期治療(術後放射線化学療法または放射線治療)抵抗性膠芽腫(脳腫瘍)※22患者を対象にITK-1の第Ⅰ相臨床試験及び継続投与試験を実施しました。その結果、前立腺がん患者15例と膠芽腫患者12例の計27例での主な副作用は、注射部位の反応で、「発熱」1例及び「注射部位の反応」2例がCTCAE Grade 3※23を認めた以外はCTCAE Grade 2以下であったことから、高い安全性が示唆されました。前立腺がん患者15例での全生存期間の中央値※24(Median Survival Time)は23.8ヶ月を示し(出所:Noguchi M, et al. The Prostate 2011; 71: 470-479)、これは久留米大学の臨床研究をよく再現する成績でした。臨床効果を生物学的に裏付けるワクチン投与患者の免疫応答、すなわちCTLの活性化と、抗体価の上昇も確認されております。また、膠芽腫患者12例の全生存期間中央値は10.6ヶ月で、うち2例で有効例(部分奏功※25;MRIによる画像診断で50%以上の腫瘍縮小)が認められました(出所:Terasaki M, et al. J Clin Oncol 2011; 29: 337-344) 。 GRN-1201 各種固形がん・ グローバル向けがんペプチドワクチン・ 米国で第Ⅰ相臨床試験実施中 ITK-1に続くパイプラインのGRN-1201は、欧米人が多く有するA2型のHLA(HLA-A2)に結合するペプチドで構成される、米国や欧州を始めグローバルに展開できるがんペプチドワクチンです。米国FDA(米国食品医薬品局)に平成27年10月に治験申請(IND)を行い、現在米国での第Ⅰ相臨床試験を実施中です。第1適応として、メラノーマ(悪性黒色腫)患者を対象としております。CTLはHLAと抗原ペプチドとの結合を介して、ペプチドを攻撃対象の目印として記憶しますが、このHLAにも個人差、人種差があります。日本人に最も多いHLA-A24は日本人全体の60%、欧米ではHLA-A2が全体の50%を占めます。ITK-1はHLA-A24に結合するペプチドであるのに対し、GRN-1201はHLA-A2に結合するペプチドで構成されます。 新規パイプライン久留米大学から継承したITK-1及びGRN-1201に用いているもの以外のがん抗原(治療薬シード)をペプチドワクチンの形態以外に展開することも含めた、新しいがん免疫治療薬の探索研究も進めています。当社の物質特許※26を有するがん抗原と免疫細胞を修飾して活性を高める技術との融合による治療薬または治療法を中心に、日本・海外を問わず、外部の研究機関との共同研究や導入も含め、引き続きがん免疫療法に焦点を当てたシーズを開発していきます。 (4) 許認可、免許及び登録等の状況についてa. 許認可、免許及び登録、行政指導等医薬品販売業許可(福岡県)を平成25年5月27日付で得ています。医薬品開発は、各国の医薬品の開発及び当局への申請等に関する法律;日本では、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:薬機法、平成26年11月25日施行、「薬事法」から改称)、米国では「連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)及びその関連する法令」、上記の他、日本及び米国を含め各国における当局の省令やガイダンス、ならびに安全性に関する非臨床試験の実施基準(GLP;Good Laboratory Practice)、臨床試験の実施基準(GCP;Good Clinical Practice)、製造管理及び品質管理規則(GMP;Good Manufacturing Practice)の下で進めております。 b. 知的財産権の状況知財は、個別のペプチドの物質特許を押さえ、その上で複数ペプチド投与を前提とするためその組み合わせの臨床上の有用性を、実際の臨床試験のデータを実施例として特許化する2層構造が骨格となります。ITK-1を構成するペプチド物質及び関連特許は、独占的に富士フイルム株式会社に使用許諾されています。GRN-1201については、物質特許を含め当社が特許を有しております。 <主要な特許の状況>発明の名称特許登録番号出願国(登録国)権利者上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)由来ペプチド4579836日本当社7655751米国2554195カナダ腫瘍抗原 7465452米国当社 1207199欧州(注)2381348カナダ4051602日本4097178日本4035845日本4624377日本CD4陽性T細胞に認識されるペプチド4443202日本当社副甲状腺ホルモン関連タンパク質のHLA-A24または-A2結合ペプチド4579581日本当社ヒト癌退縮抗原タンパク質4138073日本当社新規な腫瘍抗原タンパク質SART-3及びその腫瘍抗原ペプチド4436977日本当社4904384日本7541428米国8097697米国8563684米国1116791欧州(注)2340888カナダ99812596.2中国660367韓国がんペプチドワクチン(出願中)米国当社欧州カナダ5706895日本 (注)欧州については、ドイツ、スペイン、フランス、英国、イタリアが含まれております。 [用語解説] ※1(前立腺がん)前立腺がんとは、前立腺(外腺)に発生する病気、がんの一つです。前立腺は男性の臓器で、膀胱の下で尿道をとり囲むようにしてあります。前立腺がんは50歳代から急速に増え始め、発生の平均年齢が70歳といわれるくらい高齢の男性にみられるがんです。前立腺がんは加齢による男性ホルモンのバランスの崩れや、前立腺の慢性的炎症、食生活や生活習慣などの要因が加わって発生すると言われています。前立腺がんは高齢者で発症することから、高齢化が進む日本を含む先進国で罹患率が増加しており、平成23年の罹患者数(年間の新規診断数)は7万8,728人であり、男性では胃がんに次いで2番目に多いがんです。前立腺がんによる死亡数も年々増加し、平成25年における死亡数は1万1,560人であり、この20年間で約3倍に増加しています(出所:独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター)。 ※2(去勢抵抗性前立腺がん)ホルモン療法及び去勢を行っても効かなくなった状態の前立腺がん。前立腺がんの増殖や進行には男性ホルモンであるアンドロゲンとその受容体であり、転写因子として機能するアンドロゲン受容体が重要な役割を果たすことがわかっています。初めは男性ホルモンを抑える内分泌療法(ホルモン療法)が奏功するものの、暫くして再燃を繰り返した末に奏功しなくなり、「去勢抵抗性」状態になります。 ※3(T細胞)白血球のうち、リンパ球と称される細胞の一種で、骨髄で産生され胸腺でリンパ球へと分化される免疫細胞のこと。胸腺(Thymus)の頭文字をとってT細胞と呼ばれます。生体内に侵入した異物から人体を守る免疫応答システムの司令塔の働きを有し、マクロファージや細胞傷害性T細胞(CTL)などの免疫実働細胞に指示・命令を出します。 ※4(細胞傷害性T細胞‐CTL)CTLはCytotoxic T Lymphocyteの略語で、リンパ球のうちのT細胞の一種。細胞表面のT細胞受容体を通じて、樹状細胞等の抗原提示細胞から提示された異物を特異的に認識し、同じくその異物を表面上に提示しているウイルス感染細胞やがん細胞を認識し、細胞傷害物質のサイトカインであるパーフォリンやグランザイムなどを放出したりすることによって、殺傷することができます。以前はキラーT細胞とも呼ばれていました。 ※5(がん抗原)細胞傷害性T細胞等の免疫細胞が、正常細胞とがん細胞を見分けるための目印になるタンパク質。 ※6(ペプチド)アミノ酸が複数個つながったもの。タンパク質の断片。 ※7(TCR)T細胞受容体(T-cell Receptor)。T細胞の細胞膜上に発現している抗原受容体分子。T細胞に活性化シグナルを伝達する機能を持ち、他の細胞表面上にあるHLA分子に結合した抗原ペプチドを認識します。がんワクチンの作用機序においては、T細胞ががん細胞を認識するときと、樹状細胞等の抗原提示細胞から攻撃の目印としてがん抗原ペプチドの提示を受ける(情報を受け取る)ときに、このT細胞受容体を通して相手の細胞に表出されたペプチドとHLAの複合体を認識します。 ※8(CD8)CTLの補助レセプターのこと。抗原認識において、CD8はT細胞表面のT細胞レセプターと会合し、HLA・ペプチド複合体におけるHLAの定常部分に結合します。この結合は、T細胞が機能的な応答を示す際において不可欠であるため、補助レセプターと呼ばれます。 ※9(腫瘍マーカー)がん細胞が作り出す生体因子で、がんの進行とともに増加するため、がんの進行度を評価する指標(マーカー)となるもの。血液中又は尿中における当該物質の濃度を測定し、がんの進行度を評価します。前立腺がんの腫瘍マーカーとしては、PSA(前立腺特異抗原 Prostate Specific Antigen)などがあります。 ※10(樹状細胞)枝状、樹状の形態をした突起を有する細胞であり、抗原提示細胞としての機能を有する免疫細胞の一種です。体内に侵入した細菌やウイルスなどの抗原を細胞内に取り込み消化し、免疫情報をリンパ球に伝えます。がんにおいては、CTLにがん抗原の情報を伝達して、がん細胞への攻撃などの免疫反応を開始させます。 ※11(マクロファージ)白血球の一種であり、動物の組織内に存在するアメーバ状の細胞。生体内に侵入した細菌や異物などを捕食し、消化するため、清掃屋としての役割を有します。また、それらの異物に抵抗するため、それらの異物の情報を免疫情報としてリンパ球に伝える役割も有しています。 ※12(抗原提示細胞)体内に侵入した細菌やウイルスに取り込まれた細胞の断片、がん細胞の断片などを細胞内に取り込み、それらが含む抗原を細胞表面に表出(提示)しながら、近くのリンパ節へ移動し、T細胞に抗原の情報を伝達し活性化させる役割を担う免疫細胞。抗原提示細胞には、樹状細胞やマクロファージなどがあります。 ※13(貪食)細菌や死んだ細胞などの大型の粒子を取り込み、分解や処理などの消化を行うこと。この能力を有する細胞を総称して貪食細胞といい、マクロファージや樹状細胞などがあります。 ※14(HLA)HLA(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原)は、体のほとんど全ての細胞表面で発現がみられる、免疫機構において重要なタンパク質で、細菌やウイルスなどの病原体の排除やがん細胞の拒絶、臓器移植の際の拒絶反応などに関与しており「主要組織適合遺伝子複合体」とも呼ばれています。HLAはがん細胞でも細胞表面上に発現しており、がんワクチンの作用機序においては、がん細胞内でがん抗原タンパクが分解されて生成されたペプチドと結合して細胞表面に移動し、CTLにがん細胞として認識させるように機能します。HLAは自己と非自己(他)を区別する「自他認識のマーカー」であり、非常に多様な「他(た)」を自己と区別するために、非常に多様な型があります。ペプチドはHLAの特定の型に結合し、型が合わない場合は結合しません。 ※15(CTL前駆細胞)がん細胞を攻撃する細胞傷害性T細胞(CTL)になる前のT細胞のこと。 ※16(アポトーシス)細胞に内在する、あらかじめ遺伝子で決められたメカニズムにより自らが細胞死を誘導する機構。生体を良い状態に維持するために引き起こされる、生体を調整するための遺伝子によりプログラムされた細胞死のことです。細胞の発生や成長の過程で生じる不要となる細胞を排除する役割だけでなく、がん細胞やウイルスを排除するにあたっても重要な役割を果たします。 ※17(RNA)リボ核酸(ribonucleic acid)の略称。DNAも核酸であるが、DNAは核の中で様々な情報を蓄積・保存をする役割があるのに対し、RNAはその情報の一時的な処理を行うという役割があります。 生体内の働き・構造から、翻訳の鋳型となる伝令RNA(メッセンジャーRNA, mRNA)、リボソームの主要構成成分であり細胞内RNAの最多成分であるリボソームRNA(rRNA)などに分類されます。この中でメッセンジャーRNAは、DNAからタンパク質を合成するための塩基配列情報を持ったRNAで、mRNAと表記されます。タンパク質の合成は、DNAからタンパク質を合成するために必要な塩基配列情報をコピーしたmRNAが合成され、このmRNAの塩基配列情報に従ってタンパク質が合成されます。 ※18(逆転写酵素)RNA依存性DNAポリメラーゼ (RNA-dependent DNA polymerase) のこと。逆転写反応を触媒する酵素。この酵素は一本鎖RNAを鋳型としてDNAを合成(逆転写)するもので、レトロウイルスの増殖に必須の因子として発見されました。逆転写酵素は相補的DNA(cDNA)の合成に利用され(逆転写反応)、遺伝子工学や分子生物学的実験には必須のツールとなっています。 ※19(QOL=Quality of Life)医療現場で、病気を治療することだけでなく、患者の生活機能ができるだけ保たれ、人間らしい生活を続けられること。「生活の質」、人間らしい充実した生活、暮らしのレベル。医療分野においては、がん等の長期療養を要する疾患、ならびに消耗の激しい疾患や進行性の疾患において、患者の体へのダメージの大きい治療を継続することによって、患者が自らの理想とする生き方、もしくは社会的にみて「人間らしい生活」と考える生活が実現できない状況を「QOL (生活の質)が低下する」と呼びます。 ※20(バイオマーカー)客観的に人体の状態を測定し評価するための指標であり、観察、診断及び治療の際に使用される。臨床検査値(血液検査、腫瘍マーカーなど)、CTやMRIなどの画像診断データや、臨床試験においてその効果を測定する代替マーカーや前立腺がんの状態を調べるPSA(前立腺特異抗原)は診断マーカーであるなど、また広い意味では体温や脈拍なども含まれます。 ※21(シーズ)研究開発および事業化の対象となる医薬品候補物質。 ※22(膠芽腫)脳腫瘍の中でも最も悪性度の高い(WHO分類により星状細胞腫グレード4)腫瘍のこと。 ※23(CTCAE Grade) Common Terminology Criteria for Adverse Events(有害事象共通用語規準)の略で、臨床試験で発生する「有害事象」を世界共通の尺度で評価・集計するための規準。「有害事象(Adverse Event: AE)」とは、治療に際して観察される、あらゆる意図しないまたは好ましくない徴候や症状、疾患を指し、治療との因果関係は求めないため原疾患による合併症等の症状も治療に起因する副作用もすべてが含まれます。Gradeは、有害事象の重症度を示し、以下の原則に従いGrade1からGrade5まで5段階に分類され、各有害事象の重症度が定義されております。Grade 1 軽症; 症状がない, または軽度の症状がある; 臨床所見または検査所見のみ; 治療を要さない Grade 2 中等症; 最小限/局所的/非侵襲的治療を要する; 年齢相応の身の回り以外の日常生活動作の制限Grade 3 重症または医学的に重大であるが, ただちに生命を脅かすものではない; 入院または入院期間の延長を要する; 活動不能/動作不能; 身の回りの日常生活動作の制限Grade 4 生命を脅かす; 緊急処置を要する Grade 5 有害事象による死亡 ※24(全生存期間の中央値)「全生存期間」は、試験に登録された日からあらゆる原因による死亡日までの期間を指します。「全生存期間の中央値(MST; Median Survival Time)」は、試験に登録された症例の生存率が50%になるまでの期間をいいます。全生存期間はがん治療薬の臨床試験の評価項目として、特に後期臨床試験において一般的に用いられています。 ※25(部分奏功)がん治療薬の臨床効果を示す一つの指標に「奏効率」があり、MRI等の画像診断において測定可能ながん組織の断面の長径とそれに直角に交わる最大径の積の総和が50%以下に縮小し、かつ腫瘍による二次病変の増悪がなく、新病変がない場合(2方向測定法)、もしくは断面の最長径の和が30%以上減少し、かつ測定不能病変の明らかな増悪がなく、新病変がない場合(RECIST)が有効(部分奏効)、全ての腫瘍が消失した場合が著効(完全奏効)と判定されます。 ※26(物質特許)新規に生成された医薬品の成分など、一定の機能や効果を持った物質そのものに対して付与される特許権。その特許化された物質については、特許権者又は実施許諾者以外の実施(使用、生産、譲渡等)が制限されることにより、特許権者又は実施許諾者の実施が保護されることになります。
事業の優位性(モート)
事業の質(有価証券報告書から抽出)
数字に出ない事業の性質を、同じ物差しで全銘柄そろえています。FY2025時点の記載が出典です。
| 参入障壁新規参入を阻む要因の種類 | 技術 新規のがん免疫治療薬の開発には、探索研究から早期臨床試験段階まで複数のパイプラインが必要。 |
|---|---|
| 景気敏感度業績が景気循環にどれだけ振られるか | ディフェンシブ |
| 設備投資の性質稼いだ現金がどれだけ設備維持に消えるか | 成長投資 |
| 規制依存規制は障壁にも足枷にもなる | 高い |
会社が挙げる主要リスク:研究開発の進捗がライセンスアウトの成否を左右 / 薬事規制等の変更による研究開発の遅延・中止 / 競合他社の先行による競争力低下
同じ条件で他の銘柄を探す → 定性スクリーニング(価格決定力・参入障壁・景気敏感度などで絞り込めます)
モート総合 1 / 25 5類型それぞれの強度と、そう判定した根拠
無形資産★☆☆☆☆
根拠:弱いブランド・特許・許認可
再生医療等製品の開発・製造・販売を行うバイオベンチャーであり、特定の疾患領域における技術やノウハウは無形資産となりうる。しかし、現時点では上市製品がなく、特許等の具体的な優位性は不明瞭。
スイッチングコスト☆☆☆☆☆
根拠:弱い乗り換えの手間・コスト
現時点では上市製品がなく、医療機関や患者が同社製品にスイッチングする状況は想定されないため、スイッチング・コストは発生しない。
ネットワーク効果☆☆☆☆☆
根拠:弱い利用者増が価値を生む
事業モデル上、ネットワーク効果が発生する要素は見当たらない。製品が普及しても、ユーザー数の増加が直接的に製品価値を高める構造ではない。
コスト優位☆☆☆☆☆
根拠:弱い同じ物を安く作れる
バイオベンチャーであり、研究開発費や製造コストは高額になる傾向がある。他社と比較して構造的なコスト優位性を持つ可能性は低い。
規模の経済☆☆☆☆☆
根拠:弱い規模が参入障壁になる
現時点では上市製品がなく、事業規模は小さい。業界全体で見ても、特定のニッチ領域での展開であり、効率規模の優位性は見られない。
- iPS細胞由来NKT細胞技術同社は、理化学研究所からiPS細胞由来NKT細胞療法の全世界での独占的な開発・製造・販売ライセンスを取得しています。この技術は、がん細胞を直接攻撃し、他の免疫細胞も活性化させるNKT細胞を、iPS細胞から大量に作り出すことを可能にします。このプラットフォームは、幅広い種類のがんや地域への展開を可能にする独自の強みです。
- 特許と製造技術のプラットフォームiPS細胞由来NKT細胞療法に関する広範な特許(日米欧で登録済み)、臨床上の安全性と有効性が期待されるマスターiPSセルバンク、そして高純度で大量にNKT細胞を分化誘導させる製造法という3つの要素で構成されるプラットフォームを保有しています。これにより、競合他社に対する高い参入障壁を築き、将来的な新薬開発の基盤を確立しています。
- 多様な免疫治療薬の開発がん免疫治療薬として、がんワクチン、T細胞を投入する細胞医薬、免疫のブレーキを止める抗体医薬など、複数のアプローチで開発を進めています。特に、PD-1阻害抗体でノーベル賞が受賞されたように、がん免疫治療は革新的な分野であり、同社は未解明の領域に挑戦し、がんの個別性や免疫応答の多様性に対応する新たな治療選択肢の提供を目指しています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
経営戦略
有価証券報告書「経営方針・対処すべき課題・MD&A」の全文を見る(年度切替)
経営方針・経営戦略
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。 (1) 経営の基本方針当社は、「私たちは、がん免疫治療分野の最先端を切り拓くことにより、一人ひとりが自らの力でがんを克服する世界を実現します。」を経営理念として、新規がん免疫治療薬を創製することによって、現在進行しているがん治療革新の一翼を担いたいと考えております。これを実現するために、当社は①開発領域をがん免疫治療薬に特化し、②シーズ導入・創製において国内外のアカデミアやベンチャー企業と広く連携するオープンイノベーションを進めながら、③ライセンスアウト型事業モデルによる好循環で持続可能な開発及び企業成長を目指してまいります。 ① がん免疫治療薬にフォーカスするのは、がん免疫に働きかけてがんを排除するという創薬コンセプトの有効性が免疫チェックポイント阻害抗体によって証明されており、この創薬コンセプトを具現化する方法を拡げることによって、従来の治療法では治療効果を得られなかったアンメットメディカルニーズを満たすことができるフロンティアが依然として大きく存在するからです。それは、当社が創業以来取り組んで来た経験とノウハウの蓄積がある領域であり、世界の医薬品市場の成長を他のどの医薬品カテゴリーよりも牽引している領域でもあります。 ② オープンイノベーションを進めるのは、今や日進月歩でサイエンスが更新されていくがん免疫療法の領域において、最先端のサイエンスへのアクセスを可能にするためです。がん免疫治療のフロンティアには、アンメットメディカルニーズを満たすためのサイエンスがまだ数多く存在しています。創薬ベンチャーとして創薬を好循環で進めるために、当社は③のライセンスアウト型の事業モデルを採っています。知的財産を導出することによって収益化を図るモデルで、その知的財産は、最先端のサイエンスが織り込まれていないと成立しません。 ③ ライセンスアウト型の事業モデル(シーズの創製や創薬コンセプト証明に集中し、大掛かりな組織体制を必要とする後期臨床試験以降は、製造販売網を有する製薬企業にライセンスアウトして早期収益化を図る事業モデル)を採るのは、創薬ベンチャーとして開発を持続して行えるようにするためです。一つひとつの新規医薬品候補物質の研究開発は、シーズの創製から規制当局の承認を得て医薬品として製造販売に至るまで、薬事規制等に則って探索的研究から第Ⅲ相臨床試験まで段階を踏みながら進められ、全体として長期間に及ぶとともに多額の資金を必要とします。よって、財務負担が蓄積し経営の機動性を喪失する前に、早期収益化を図ります。 (2) 目標とする経営指標当社では、ライセンスアウト時の契約一時金と、その後の継続的なマイルストン報酬(マイルストン収入、販売ロイヤリティなど)を収益とするビジネスモデルを採っているため、製薬企業へのライセンスアウト(タイミングとライセンス取引額)、原則としてライセンスアウト成立の前提となる、創薬コンセプトを証明する非臨床試験または臨床試験成績の取得、そこに至るまでの開発イベント(例えば、当局による治験開始申請の受理)が、重要な経営イベントとなります。持続可能な企業成長と企業価値の向上を目指して、また技術革新著しいがん免疫治療薬分野における事業機会を逃さないために、開発ポートフォリオの継続的な更新を重視しており、既存のパイプラインの開発推進や新規パイプラインの自社創製のみならず、新規パイプラインの導入やオープンイノベーションに基づく共同創出も積極的に進めてまいります。なお、研究開発型の創薬ベンチャーは、研究開発投資からライセンスアウトによる収益化までの長期間に及ぶ事業サイクルが、開発パイプライン複数個によって資産(企業価値を構成するソフトな資産)構成されるため、売上高や当期純損益や、ROE、ROAといった年単位で見る指標は、適切な経営指標となりにくいと考えております。 (3) 中長期的な会社の経営戦略現在当社は、免疫システムに働きかけ免疫を使ってがんを排除させるメカニズムの「がん免疫治療」薬に開発領域を定め、その医薬品形態として細胞医薬、抗体医薬という2つのモダリティでパイプラインを構成し、医薬品開発プロセス上は探索研究から早期臨床試験までを国内外で手掛け、早期収益化を図るために国内外の製薬企業に開発途中段階でライセンスアウトしていく事業モデルを採っています。中長期的には、開発領域は、軸足をがん免疫治療薬に置き続けることは変わりませんが、がん免疫治療薬で築いた創薬プラットフォームを他の疾患の治療薬(例えば感染症)に用いる可能性はあり、モダリティも現在の主力の2つに軸足を置きながらもより新しいモダリティ(例えば核酸、融合タンパク)を採用していく可能性はあります。手掛ける医薬品開発プロセスは、現在のモデルでいずれかのパイプラインのライセンスアウトが成功し、開発費の負担に耐えうる資金力がついた暁には、より多くの収益を当社が取り込めるよう、それに続く複数のパイプラインのうちいくつかは後期臨床試験以降まで進め、創薬ベンチャーから製薬企業へ転換を図っていくことも想定しています。そのときには、各パイプラインの開発が進み、一つひとつを独立したものでなく、複合的に治療に用いて相乗効果を引き出す統合的ながん免疫治療アプローチを採ることができるようになっていると考えています。 (4) 会社の対処すべき課題持続的な企業価値の向上を図るうえで、当社が対処すべき課題として認識している事項は、以下のとおりです。 ① 各開発パイプラインの次の開発段階への移行当社は、資金や人的リソースを効率的に活用して研究開発を推進するために共同開発パートナーやアカデミア等の連携先と綿密なコミュニケーションをとり、協業を進めることが既存の開発パイプラインの価値を高め、次の開発段階へと前進させる原動力と認識しています。当社はパイプライン別に他社の開発動向を精査した上で競争力を保ちつつ開発を進めるための戦略・戦術を策定し、製薬企業等へのライセンスアウトを模索しております。 ② 競争力のあるパイプラインのポートフォリオ構築当社は、現時点では新薬候補を後期臨床試験に至る前に製薬企業にライセンスアウトする事業モデルを採っています。ライセンスを成功させるためには当該新薬候補がその時点でサイエンスの面で陳腐化していてはならず、さらにがん免疫療法は全医薬品業界の成長を牽引する領域であるからこそ日進月歩でサイエンスが進んでいるため、当社は常に同分野全体のサイエンスが向かう方向性と進捗をみながら、各パイプラインの開発ステージを探索から非臨床試験、そして臨床試験へと一定期間内に上げて行くとともに、必要に応じてパイプラインの入れ替えを図っていくことを求められています。 ③ 最先端のサイエンスへのアクセスを可能とする研究開発体制の構築当社が関わるがん免疫療法は、医薬品業界の成長を牽引するとともにサイエンスが日進月歩で進展する領域であるため、社内に専門性の高い研究員と充実した研究施設を有することが不可欠で、常にこれを向上させていく必要があります。 ④ 経営体制の強化 (ⅰ)人材の確保と育成他の創薬ベンチャーと同様に当社も新規性のある医薬品の開発を行っておりますので、個々の社員には非常に高度な専門性が要求されます。そのため、適切な人材の確保が重要な課題となります。十分な技術・知識のみならずベンチャーマインドを有し、成長意欲のある人材を全部門において採用し、OJTによる人材育成により、今後拡大・加速していくことが予想される事業・研究開発スピードに対応してまいりたいと考えております。 (ⅱ)コーポレート・ガバナンスの強化当社にとって前述のアライアンス・ネットワーク体制の構築は重要な課題であり、また株主を含めたステークホルダーとの良好な関係も重要な課題であります。社外関係者との良好な関係の構築のためには、社会的信用を維持・向上させていく必要があると認識しております。特に、当社の取引先は主に上場企業、医療機関、公的な研究機関でありますので、協業体制を構築し、取引関係を維持していくには、当社も社会的信用を維持していく必要があります。また、世間に広く製品を提供していく創薬企業としての社会的責任を果たしていく必要があると認識しております。そのため、当社は小規模ではありますが、コーポレート・ガバナンス体制を構築し、内部管理体制及び管理部門の強化を推進してまいります。また、内部監査の充実及び監査役との連携強化などの施策により業務執行の適法性・妥当性を監視する機能を強化し、財務報告に係るリスクを最小化して、経営の健全化に努めてまいります。 (ⅲ)資金調達・財務基盤の強化当社は創薬ベンチャーであり、実際の製品化までの研究開発活動において年単位での時間を要します。製品化までの研究開発活動において設備投資、人材の採用・育成、また、企業価値向上のための新規パイプラインの創製(最新の技術の探索、導入及び共同研究など)に多額の資金が必要となります。これらの資金を外部から調達する必要があり、中長期的な視点から、財務基盤の強化のためにも、様々な資金調達の可能性を検討してまいります。 ⑤ IR活動の推進当社は、株主・投資家等のステークホルダーからの意見を収集し、経営のさらなる改善に努め、また、企業情報及び研究開発の状況等を正確、適時及び適切に発信し、信頼と正当な評価を得ていくことを目指します。
対処すべき課題
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。 (1) 経営の基本方針当社は、「私たちは、がん免疫治療分野の最先端を切り拓くことにより、一人ひとりが自らの力でがんを克服する世界を実現します。」を経営理念として、新規がん免疫治療薬を創製することによって、現在進行しているがん治療革新の一翼を担いたいと考えております。これを実現するために、当社は①開発領域をがん免疫治療薬に特化し、②シーズ導入・創製において国内外のアカデミアやベンチャー企業と広く連携するオープンイノベーションを進めながら、③ライセンスアウト型事業モデルによる好循環で持続可能な開発及び企業成長を目指してまいります。 ① がん免疫治療薬にフォーカスするのは、がん免疫に働きかけてがんを排除するという創薬コンセプトの有効性が免疫チェックポイント阻害抗体によって証明されており、この創薬コンセプトを具現化する方法を拡げることによって、従来の治療法では治療効果を得られなかったアンメットメディカルニーズを満たすことができるフロンティアが依然として大きく存在するからです。それは、当社が創業以来取り組んで来た経験とノウハウの蓄積がある領域であり、世界の医薬品市場の成長を他のどの医薬品カテゴリーよりも牽引している領域でもあります。 ② オープンイノベーションを進めるのは、今や日進月歩でサイエンスが更新されていくがん免疫療法の領域において、最先端のサイエンスへのアクセスを可能にするためです。がん免疫治療のフロンティアには、アンメットメディカルニーズを満たすためのサイエンスがまだ数多く存在しています。創薬ベンチャーとして創薬を好循環で進めるために、当社は③のライセンスアウト型の事業モデルを採っています。知的財産を導出することによって収益化を図るモデルで、その知的財産は、最先端のサイエンスが織り込まれていないと成立しません。 ③ ライセンスアウト型の事業モデル(シーズの創製や創薬コンセプト証明に集中し、大掛かりな組織体制を必要とする後期臨床試験以降は、製造販売網を有する製薬企業にライセンスアウトして早期収益化を図る事業モデル)を採るのは、創薬ベンチャーとして開発を持続して行えるようにするためです。一つひとつの新規医薬品候補物質の研究開発は、シーズの創製から規制当局の承認を得て医薬品として製造販売に至るまで、薬事規制等に則って探索的研究から第Ⅲ相臨床試験まで段階を踏みながら進められ、全体として長期間に及ぶとともに多額の資金を必要とします。よって、財務負担が蓄積し経営の機動性を喪失する前に、早期収益化を図ります。 (2) 目標とする経営指標当社では、ライセンスアウト時の契約一時金と、その後の継続的なマイルストン報酬(マイルストン収入、販売ロイヤリティなど)を収益とするビジネスモデルを採っているため、製薬企業へのライセンスアウト(タイミングとライセンス取引額)、原則としてライセンスアウト成立の前提となる、創薬コンセプトを証明する非臨床試験または臨床試験成績の取得、そこに至るまでの開発イベント(例えば、当局による治験開始申請の受理)が、重要な経営イベントとなります。持続可能な企業成長と企業価値の向上を目指して、また技術革新著しいがん免疫治療薬分野における事業機会を逃さないために、開発ポートフォリオの継続的な更新を重視しており、既存のパイプラインの開発推進や新規パイプラインの自社創製のみならず、新規パイプラインの導入やオープンイノベーションに基づく共同創出も積極的に進めてまいります。なお、研究開発型の創薬ベンチャーは、研究開発投資からライセンスアウトによる収益化までの長期間に及ぶ事業サイクルが、開発パイプライン複数個によって資産(企業価値を構成するソフトな資産)構成されるため、売上高や当期純損益や、ROE、ROAといった年単位で見る指標は、適切な経営指標となりにくいと考えております。 (3) 中長期的な会社の経営戦略現在当社は、免疫システムに働きかけ免疫を使ってがんを排除させるメカニズムの「がん免疫治療」薬に開発領域を定め、その医薬品形態として細胞医薬、抗体医薬という2つのモダリティでパイプラインを構成し、医薬品開発プロセス上は探索研究から早期臨床試験までを国内外で手掛け、早期収益化を図るために国内外の製薬企業に開発途中段階でライセンスアウトしていく事業モデルを採っています。中長期的には、開発領域は、軸足をがん免疫治療薬に置き続けることは変わりませんが、がん免疫治療薬で築いた創薬プラットフォームを他の疾患の治療薬(例えば感染症)に用いる可能性はあり、モダリティも現在の主力の2つに軸足を置きながらもより新しいモダリティ(例えば核酸、融合タンパク)を採用していく可能性はあります。手掛ける医薬品開発プロセスは、現在のモデルでいずれかのパイプラインのライセンスアウトが成功し、開発費の負担に耐えうる資金力がついた暁には、より多くの収益を当社が取り込めるよう、それに続く複数のパイプラインのうちいくつかは後期臨床試験以降まで進め、創薬ベンチャーから製薬企業へ転換を図っていくことも想定しています。そのときには、各パイプラインの開発が進み、一つひとつを独立したものでなく、複合的に治療に用いて相乗効果を引き出す統合的ながん免疫治療アプローチを採ることができるようになっていると考えています。 (4) 会社の対処すべき課題持続的な企業価値の向上を図るうえで、当社が対処すべき課題として認識している事項は、以下のとおりです。 ① 各開発パイプラインの次の開発段階への移行当社は、資金や人的リソースを効率的に活用して研究開発を推進するために共同開発パートナーやアカデミア等の連携先と綿密なコミュニケーションをとり、協業を進めることが既存の開発パイプラインの価値を高め、次の開発段階へと前進させる原動力と認識しています。当社はパイプライン別に他社の開発動向を精査した上で競争力を保ちつつ開発を進めるための戦略・戦術を策定し、製薬企業等へのライセンスアウトを模索しております。 ② 競争力のあるパイプラインのポートフォリオ構築当社は、現時点では新薬候補を後期臨床試験に至る前に製薬企業にライセンスアウトする事業モデルを採っています。ライセンスを成功させるためには当該新薬候補がその時点でサイエンスの面で陳腐化していてはならず、さらにがん免疫療法は全医薬品業界の成長を牽引する領域であるからこそ日進月歩でサイエンスが進んでいるため、当社は常に同分野全体のサイエンスが向かう方向性と進捗をみながら、各パイプラインの開発ステージを探索から非臨床試験、そして臨床試験へと一定期間内に上げて行くとともに、必要に応じてパイプラインの入れ替えを図っていくことを求められています。 ③ 最先端のサイエンスへのアクセスを可能とする研究開発体制の構築当社が関わるがん免疫療法は、医薬品業界の成長を牽引するとともにサイエンスが日進月歩で進展する領域であるため、社内に専門性の高い研究員と充実した研究施設を有することが不可欠で、常にこれを向上させていく必要があります。 ④ 経営体制の強化 (ⅰ)人材の確保と育成他の創薬ベンチャーと同様に当社も新規性のある医薬品の開発を行っておりますので、個々の社員には非常に高度な専門性が要求されます。そのため、適切な人材の確保が重要な課題となります。十分な技術・知識のみならずベンチャーマインドを有し、成長意欲のある人材を全部門において採用し、OJTによる人材育成により、今後拡大・加速していくことが予想される事業・研究開発スピードに対応してまいりたいと考えております。 (ⅱ)コーポレート・ガバナンスの強化当社にとって前述のアライアンス・ネットワーク体制の構築は重要な課題であり、また株主を含めたステークホルダーとの良好な関係も重要な課題であります。社外関係者との良好な関係の構築のためには、社会的信用を維持・向上させていく必要があると認識しております。特に、当社の取引先は主に上場企業、医療機関、公的な研究機関でありますので、協業体制を構築し、取引関係を維持していくには、当社も社会的信用を維持していく必要があります。また、世間に広く製品を提供していく創薬企業としての社会的責任を果たしていく必要があると認識しております。そのため、当社は小規模ではありますが、コーポレート・ガバナンス体制を構築し、内部管理体制及び管理部門の強化を推進してまいります。また、内部監査の充実及び監査役との連携強化などの施策により業務執行の適法性・妥当性を監視する機能を強化し、財務報告に係るリスクを最小化して、経営の健全化に努めてまいります。 (ⅲ)資金調達・財務基盤の強化当社は創薬ベンチャーであり、実際の製品化までの研究開発活動において年単位での時間を要します。製品化までの研究開発活動において設備投資、人材の採用・育成、また、企業価値向上のための新規パイプラインの創製(最新の技術の探索、導入及び共同研究など)に多額の資金が必要となります。これらの資金を外部から調達する必要があり、中長期的な視点から、財務基盤の強化のためにも、様々な資金調達の可能性を検討してまいります。 ⑤ IR活動の推進当社は、株主・投資家等のステークホルダーからの意見を収集し、経営のさらなる改善に努め、また、企業情報及び研究開発の状況等を正確、適時及び適切に発信し、信頼と正当な評価を得ていくことを目指します。
MD&A(経営者による分析)
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(業績等の概要)(1) 業績当事業年度(2025年4月1日から2026年3月31日まで)は、世界経済はインフレ圧力の緩和や主要国の金融政策の動向により、緩やかな回復基調を維持していますが、一方で依然として変動性が高い状況も継続しています。我が国の経済は、国内外の景気回復の兆しを背景に、民間消費や設備投資が緩やかに持ち直しつつあります。一方で、国際情勢の不確実性や地政学的リスクの高まりに加え、物価上昇や金融資本市場の変動等により、依然として先行き不透明な状況が継続しています。特にバイオテクノロジー企業を取り巻く資金調達環境は、国内外の金利動向や投資家のリスク選好の変化等の影響を受け、引き続き慎重な状況が継続しています。当社は、当事業年度におきましては、第17回乃至第20回新株予約権を発行して調達した資金を、主にCAR-ipsNKT細胞療法の2026年度から予定している米国臨床試験の準備に投じ、事業化に向けて着実に前進しました。 細胞医薬〔iPS細胞由来再生NKT細胞療法:BP2201〕 BP2201(iPS-NKT)は、がん細胞の殺傷を含め多面的な抗腫瘍効果をもつナチュラル・キラーT(NKT)細胞を、iPS細胞技術を使って大量製造し、作り置きしたうえでがん治療に用いる新規の他家細胞医薬候補です。国立大学法人千葉大学において、世界初のiPS-NKTを用いた頭頸部がん患者を対象とする医師主導の第Ⅰ相臨床試験(2020年6月開始)が実施され、2024年1月に終了しました。主要評価項目である忍容性および安全性に問題がないこと、並びに腫瘍増殖抑制例を含む初期的な臨床活性の確認が示され、「Nature Communications」誌2025年12月30日版で報告されています。 本治験で用いられた非遺伝子改変iPS-NKT細胞は、いろいろながん種のがん抗原に対するCAR(キメラ抗原受容体)遺伝子を導入した、新たな遺伝子改変iPS-NKT細胞医薬へ展開する土台/プラットフォームとなり、幅広いがん種と世界の幅広い地域への展開を可能にします。 当社は、開発元の国立研究開発法人理化学研究所(以下「理研」)からのiPS細胞由来NKT細胞(iPS-NKT)のCAR-T(キメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞療法)をはじめとする他家細胞療法使用を広範かつ排他的に保護する特許(日米欧で登録済み)の独占使用権を取得しています。 〔iPS細胞由来BCMA CAR-NKT細胞療法:BP2202〕 BP2202(BCMA CAR-ipsNKT)は、非遺伝子改変iPS-NKT細胞に多発性骨髄腫の目印(抗原)となるBCMA(B細胞成熟抗原)を認識するキメラ抗原受容体(CAR: Chimeric Antigen Receptor)を発現させがん細胞殺傷能を高めた新規の他家CAR-T細胞療法です。 2026年度から米国における臨床試験実施を予定しており、米国食品医薬品局(FDA)に対する開始申請(IND)の最終段階に入っております。 BP2202は、これまで医薬品として承認されている自家CAR-T細胞に用いられる患者自身のT細胞の代わりに、健常人ドナーから作製した他家のiPS細胞由来NKT細胞を用いることによって作り置きが可能になったCAR-T細胞医薬品であることを特徴とします。臨床試験を通して検証されている作用メカニズムを有する細胞医薬の細胞部分を、患者自身のT細胞から、より利便性の高い他家NKT細胞に切り替えていくコンセプトで開発を進めています。 当社は2023年5月にSTAR-CRISPRTM遺伝子編集技術をライセンス導入し、固形がんを含む様々な適応症に対して高度な遺伝子組換型CAR-ipsNKT細胞療法プログラムを創出することが可能となりました。現在その先駆けの製品として、多発性骨髄腫治療薬候補となるBCMA CAR-ipsNKT (BP2202)の開発を進めています。 これまでにマスターiPSセルバンクの構築と、マスターiPSセルバンクからNKT細胞への分化誘導を行う製造工程の確立を終えています。後者については、当社で確立した高純度かつ高増殖の製造工程を、iPS細胞治療薬製造の先進企業で3Dバイオリアクターを用いる製造プラットフォームを有するCellistic社に移管し、より優れた製造工程を確立しました。 同プログラムは、2025年7月に米国食品医薬品局(FDA)より多発性骨髄腫を対象疾患とする希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)に指定されています。 〔HER2 CAR-T細胞療法:BP2301〕 BP2301は、様々な固形がんで高発現するHER2を標的とするCAR-T細胞療法です。現在、国立大学法人信州大学においてHER2陽性の再発・進行骨・軟部肉腫及び婦人科悪性腫瘍を対象とする遺伝子改変HER2 CAR-T細胞の臨床第Ⅰ相医師主導治験を継続しております。 これまで血液がんを標的とするCAR-T細胞療法は、優れた臨床効果が臨床試験で示され、承認されてきました。しかし、より患者数の多い固形がんへの展開においては、血液がんのような有効性を示すことができていません。投与されたCAR-T細胞が、免疫抑制的な腫瘍微小環境において疲弊して機能を喪失し、十分に臨床効果を発揮できないからと考えられています。 この課題を解決するために、BP2301では、体内での優れた複製能と長期生存能を特徴とし、それによって腫瘍微小環境における疲弊抵抗性と持続的抗腫瘍効果が期待される幹細胞様免疫記憶型(ステムセル・メモリー・フェノタイプ)細胞を多く含むCAR-T細胞を用いる技術の開発に成功しました。これは、国立大学法人信州大学の中沢洋三教授の非ウイルス遺伝子導入法に基づき、中沢教授及び同大学柳生茂希教授と新規の細胞培養法を共同開発したことによって可能になりました。 本製造方法は、国内、中国、及び米国にて特許査定を受けています。 抗体医薬抗体医薬では、腫瘍組織においてがん細胞を排除する免疫の働きを抑制する免疫チェックポイント分子もしくは免疫調整分子に結合し、その機能を阻害する抗体の開発を進めています。CD39分子とTIM-3分子を双方発現する免疫細胞においてこれらを同時に阻害する抗CD39×抗TIM-3二重特異性抗体BP1212、がん細胞上に発現するCD39分子とT細胞上に発現するCD3分子双方を標的とするT細胞エンゲージャーBP1223を開発パイプラインとして有します。BP1212は、固形がんを対象に、腫瘍組織内の樹状細胞が陥る免疫抑制状態を解除し、抗腫瘍T細胞免疫を誘導させるものです。この作用メカニズムを裏付ける非臨床試験データを、2025年6月に開催された学会Immune Response in Cancer and Infection(IRCI)2025において発表しております。またBP1223は、急性骨髄性白血病を対象に、がん細胞が発現するCD39を標的に、T細胞に活性化刺激を入れながらがん細胞に接近させ、がん細胞を殺傷させる作用メカニズムのものです。急性骨髄性白血病を対象とする薬効薬理試験及び作用機序解析を国立がん研究センター東病院と共同で進めており、研究成果の一部を2024年12月開催の米国血液学会にて発表しました。 これらの結果、当事業年度につきましては、売上高は84千円(前年同期の売上高は1,133千円)、営業損失は1,295,001千円(前年同期の営業損失は1,160,918千円)、経常損失は1,293,533千円(前年同期の経常損失は1,147,879千円)、当期純損失は1,304,951千円(前年同期の当期純損失は1,151,149千円)となりました。 (2) 財政状態の状況 ① 流動資産当事業年度末における流動資産は前事業年度末より1,482,915千円増加し2,554,230千円となりました。これは、現金及び預金が、研究開発に関連する支出があったものの、株式の発行による収入により1,345,727千円増加したことが主な要因であります。 ② 固定資産当事業年度末における固定資産は前事業年度末より1,337千円増加し50,634千円となりました。これは、オフィス賃料の上昇に伴い差入保証金が増加したことによるものです。 ③ 流動負債当事業年度末における流動負債は前事業年度末より29,696千円増加し161,358千円となりました。これは、未払金が37,670千円増加し、資産除去債務が5,056千円増加した一方で、1年内償還予定の社債が25,000千円減少したことが主な要因であります。 ④ 固定負債当事業年度末における固定負債は前事業年度末より11,091千円増加し75,053千円となりました。これは、退職給付引当金が7,247千円増加したこと及び資産除去債務が3,844千円増加したことが主な要因であります。 ⑤ 純資産当事業年度末における純資産は前事業年度末より1,443,464千円増加し、2,368,452千円となりました。これは、新株予約権の行使により資本金及び資本剰余金の合計が2,749,730千円増加し、当期純損失により利益剰余金が1,304,951千円減少したことが主な要因であります。以上の結果、自己資本比率は前事業年度末の80.6%から90.1%となりました。 (3) キャッシュ・フローの状況当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末と比べて1,345,727千円増加し、2,156,198千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動の結果使用した資金は1,365,851千円(前事業年度は1,250,359千円の支出)となりました。これは主に税引前当期純損失1,302,531千円を計上したことによるものであります。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動の結果使用した資金は1,928千円(前事業年度は1,370千円の支出)となりました。これは、主に差入保証金の支出1,337千円によるものであります。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動の結果得られた資金は2,713,507千円(前事業年度は1,004,840千円の収入)となりました。これは、主に新株予約権の行使による株式の発行による収入2,737,224千円によるものであります。 (生産、受注及び販売の状況)(1) 生産実績当事業年度における生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。セグメントの名称生産高(千円)前年同期比(%)医薬品開発事業--合計-- (注)前事業年度及び当事業年度ともに生産実績がありませんでした。 (2) 受注実績当事業年度における受注実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。セグメントの名称受注高(千円)前年同期比(%)受注残高(千円)前年同期比(%)医薬品開発事業----合計---- (注)前事業年度及び当事業年度ともに受注実績がありませんでした。 (3) 販売実績当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。セグメントの名称販売高(千円)前年同期比(%)医薬品開発事業84△92.6合計84△92.6 (注)1.当事業年度において、販売実績に著しい変動がありました。これは、医薬品開発事業におきまし て、当事業年度に特許実施許諾による一時金収入があったことによるものであります。2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合相手先前事業年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)当事業年度(自 2025年4月1日至 2026年3月31日)販売高(千円)割合(%)販売高(千円)割合(%)株式会社A-SEEDS1,00488.6--株式会社日本バイオセラピー研究所12811.484100.0 (経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は下記のとおりであります。なお、当社は、医薬品開発事業の単一事業であるため、セグメント別の業績に関する記載を省略しております。また、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。 (経営指標について)当社は、創薬ベンチャーであり、研究開発活動という投資期間が長く、その研究開発活動の成果として、ライセンスアウトによる契約一時金やマイルストン収入等などを獲得するビジネスモデルであります。中長期的視点からの経営の安定化、企業価値の向上を目指して、また著しい技術革新がなされ、大きな期待を受けているがん免疫治療薬分野における大きな事業機会を逃さないために、既存のパイプラインの推進のみならず、新規のパイプラインを積極的に導入していく方針であります。従いまして、売上高や当期純損益の推移やROE、ROAといった経営指標を目的とすることはせずに、現預金残高の推移、研究開発活動の効率化、パイプライン数の拡大・充実について、財務状況を勘案しながら、早期のライセンスアウト及び黒字化の実現に向けて、事業を進めてまいります。 (1) 重要な会計方針及び見積り当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されております。この財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。この見積りに関しては、過去の実績や適切と判断する仮定に基づいて合理的に算出しておりますが、実際の結果はこれらの見積りと相違する可能性があります。 (2) 当事業年度末の財政状態の分析① 資産の状況当事業年度末における資産合計は、前事業年度末より1,484,252千円増加し2,604,864千円となりました。これは、現金及び預金が、株式の発行等により1,482,915千円増加し、前払金が150,342千円増加したことが主な理由であります。また、当事業年度末における資産の内訳としましては、現金及び預金が2,156,198千円と、資産の合計の82.78%を占めており、研究開発を推進していくにあたり、当面の資金は確保している状況にあります。今後の現金及び預金の残高については、株式市場等からの資金調達やライセンスアウトによる契約一時金収入・マイルストン収入の獲得が実施されるまでの期間において、主に研究開発費用及び研究機器等の購入に伴う支出により減少する傾向にあります。現金及び預金の残高を注視しつつ、がん免疫治療薬分野の最先端の研究開発を積極的に推進してまいります。 ② 負債の状況当事業年度末における負債合計は、前事業年度末より40,787千円増加し236,412千円となりました。これは、未払金が37,670千円増加し、未払法人税等が12,072千円増加したこと及び、1年内償還予定の社債が25,000千円減少したことが主な理由であります。当社の有するパイプライン開発の推進に伴い、未払金が負債の大部分を占める傾向にあります。また、当事業年度末における現金及び預金の残高に対する負債の割合は、比較的小さく、引き続き効率的な研究開発活動を推進してまいります。 ③ 純資産の状況当事業年度末における純資産は、前事業年度末より1,443,464千円増加し2,368,452千円となりました。これは、新株予約権の行使により資本金及び資本剰余金の合計が2,749,730千円増加し、当期純損失により利益剰余金が1,304,951千円減少したことが主な理由であります。自己資本比率は前事業年度末の80.6%から90.1%となりました。 (3) 当事業年度の経営成績の分析① 売上高の状況当事業年度の売上高につきましては、前事業年度と比べ1,049千円減少(92.6%減)し、84千円となりました。これは、前事業年度に当社保有特許の実施許諾に係る一時金収入を計上していたことから、前年同期比では減少となったものであります。 ② 営業損益の状況当事業年度における営業損失は、前事業年度と比べ134,082千円損失が増加し1,295,001千円となりました。当社は新規のがん免疫治療薬に開発領域を特化し、細胞医薬、抗体医薬、がんワクチンモダリティに関する探索から早期臨床試験段階にある複数のパイプラインの開発を同時並行で進めておりますが、当事業年度の研究開発費は前事業年度と比べ12.8%増加し1,002,493千円となりました。研究開発費の増額は、主にBP2202の米国臨床試験に向けた準備(マスターセルバンク製造準備や製造工程移管準備など)を進めていることによります。当社の販管費に占める研究開発費の割合は77.4%となり、研究開発費の推移が営業損益に直接影響を与える構造となっております。各パイプラインの推進に加え、日進月歩でサイエンスが進む環境に迅速に適合していくためにも、新規シーズの導入は今後も引き続き積極的に行っていく方針であるとともに、川崎創薬研究所及び細胞医薬研究所において創出している新規医薬品候補の開発を順次進めてまいります。 ③ 当期純損益の状況当事業年度における当期純損益は、前事業年度と比べ153,802千円損失が増加し1,304,951千円となりました。当事業年度の売上総利益が前事業年度と比べ1,046千円減少し、販売費及び一般管理費が前事業年度と比べ133,036千円増加した一方、営業外費用で、為替差損6,679千円を計上したことが主な要因であります。 (4) 当事業年度のキャッシュ・フローの分析当事業年度のキャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 業績等の概要 (3) キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。 (5) 経営成績に重要な影響を与える要因について経営成績に重要な影響を与える要因は、当社が推進する研究開発を遅延又は中止させる事象でありますが、詳細については「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。 (6) 資金の財源及び資金の流動性についての分析当社の資金需要は、研究開発にかかる人件費、試薬等材料費、消耗品費、外部委託費及び研究機器の購入等及び事業運営・上場維持にかかる人件費、外部委託費及び特許関連費用等であります。これらの費用及び研究機器の購入等については、自己資金により支出していく予定であります。自己資金については、すべて銀行預金としておりますので、すべての支出について迅速かつ確実に対応できるよう資金の流動性を確保しております。
経営方針・経営戦略
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。 (1) 経営の基本方針当社は、「私たちは、がん免疫治療分野の最先端を切り拓くことにより、一人ひとりが自らの力でがんを克服する世界を実現します。」を経営理念として、新規がん免疫治療薬を創製することによって、現在進行しているがん治療革新の一翼を担いたいと考えております。これを実現するために、当社は①開発領域をがん免疫治療薬に特化し、②シーズ導入・創製において国内外のアカデミアやベンチャー企業と広く連携するオープンイノベーションを進めながら、③ライセンスアウト型事業モデルによる好循環で持続可能な開発及び企業成長を目指してまいります。 ① がん免疫治療薬にフォーカスするのは、がん免疫に働きかけてがんを排除するという創薬コンセプトの有効性が免疫チェックポイント阻害抗体によって証明されており、この創薬コンセプトを具現化する方法を拡げることによって、従来の治療法では治療効果を得られなかったアンメットメディカルニーズを満たすことができるフロンティアが依然として大きく存在するからです。それは、当社が創業以来取り組んで来た経験とノウハウの蓄積がある領域であり、世界の医薬品市場の成長を他のどの医薬品カテゴリーよりも牽引している領域でもあります。 ② オープンイノベーションを進めるのは、今や日進月歩でサイエンスが更新されていくがん免疫療法の領域において、最先端のサイエンスへのアクセスを可能にするためです。がん免疫治療のフロンティアには、アンメットメディカルニーズを満たすためのサイエンスがまだ数多く存在しています。創薬ベンチャーとして創薬を好循環で進めるために、当社は③のライセンスアウト型の事業モデルを採っています。知的財産を導出することによって収益化を図るモデルで、その知的財産は、最先端のサイエンスが織り込まれていないと成立しません。 ③ ライセンスアウト型の事業モデル(シーズの創製や創薬コンセプト証明に集中し、大掛かりな組織体制を必要とする後期臨床試験以降は、製造販売網を有する製薬企業にライセンスアウトして早期収益化を図る事業モデル)を採るのは、創薬ベンチャーとして開発を持続して行えるようにするためです。一つひとつの新規医薬品候補物質の研究開発は、シーズの創製から規制当局の承認を得て医薬品として製造販売に至るまで、薬事規制等に則って探索的研究から第Ⅲ相臨床試験まで段階を踏みながら進められ、全体として長期間に及ぶとともに多額の資金を必要とします。よって、財務負担が蓄積し経営の機動性を喪失する前に、早期収益化を図ります。 (2) 目標とする経営指標当社では、ライセンスアウト時の契約一時金と、その後の継続的なマイルストン報酬(マイルストン収入、販売ロイヤリティなど)を収益とするビジネスモデルを採っているため、製薬企業へのライセンスアウト(タイミングとライセンス取引額)、原則としてライセンスアウト成立の前提となる、創薬コンセプトを証明する非臨床試験または臨床試験成績の取得、そこに至るまでの開発イベント(例えば、当局による治験開始申請の受理)が、重要な経営イベントとなります。持続可能な企業成長と企業価値の向上を目指して、また技術革新著しいがん免疫治療薬分野における事業機会を逃さないために、開発ポートフォリオの継続的な更新を重視しており、既存のパイプラインの開発推進や新規パイプラインの自社創製のみならず、新規パイプラインの導入やオープンイノベーションに基づく共同創出も積極的に進めてまいります。なお、研究開発型の創薬ベンチャーは、研究開発投資からライセンスアウトによる収益化までの長期間に及ぶ事業サイクルが、開発パイプライン複数個によって資産(企業価値を構成するソフトな資産)構成されるため、売上高や当期純損益や、ROE、ROAといった年単位で見る指標は、適切な経営指標となりにくいと考えております。 (3) 中長期的な会社の経営戦略現在当社は、免疫システムに働きかけ免疫を使ってがんを排除させるメカニズムの「がん免疫治療」薬に開発領域を定め、その医薬品形態としてがんワクチン、細胞医薬、抗体医薬という3つのモダリティでパイプラインを構成し、医薬品開発プロセス上は探索研究から早期臨床試験までを国内外で手掛け、早期収益化を図るために国内外の製薬企業に開発途中段階でライセンスアウトしていく事業モデルを採っています。中長期的には、開発領域は、軸足をがん免疫治療薬に置き続けることは変わりませんが、がん免疫治療薬で築いた創薬プラットフォームを他の疾患の治療薬(例えば感染症)に用いる可能性はあり、モダリティも現在の主力の3つに軸足を置きながらもより新しいモダリティ(例えば核酸、融合タンパク)を採用していく可能性はあります。手掛ける医薬品開発プロセスは、現在のモデルでいずれかのパイプラインのライセンスアウトが成功し、開発費の負担に耐えうる資金力がついた暁には、より多くの収益を当社が取り込めるよう、それに続く複数のパイプラインのうちいくつかは後期臨床試験以降まで進め、創薬ベンチャーから製薬企業へ転換を図っていくことも想定しています。そのときには、各パイプラインの開発が進み、一つひとつを独立したものでなく、複合的に治療に用いて相乗効果を引き出す統合的ながん免疫治療アプローチを採ることができるようになっていると考えています。 (4) 会社の対処すべき課題持続的な企業価値の向上を図るうえで、当社が対処すべき課題として認識している事項は、以下のとおりです。 ① 各開発パイプラインの次の開発段階への移行当社は、資金や人的リソースを効率的に活用して研究開発を推進するために共同開発パートナーやアカデミア等の連携先と綿密なコミュニケーションをとり、協業を進めることが既存の開発パイプラインの価値を高め、次の開発段階へと前進させる原動力と認識しています。当社はパイプライン別に他社の開発動向を精査した上で競争力を保ちつつ開発を進めるための戦略・戦術を策定し、製薬企業等へのライセンスアウトを模索しております。 ② 競争力のあるパイプラインのポートフォリオ構築当社は、現時点では新薬候補を後期臨床試験に至る前に製薬企業にライセンスアウトする事業モデルを採っています。ライセンスを成功させるためには当該新薬候補がその時点でサイエンスの面で陳腐化していてはならず、さらにがん免疫療法は全医薬品業界の成長を牽引する領域であるからこそ日進月歩でサイエンスが進んでいるため、当社は常に同分野全体のサイエンスが向かう方向性と進捗をみながら、各パイプラインの開発ステージを探索から非臨床試験、そして臨床試験へと一定期間内に上げて行くとともに、必要に応じてパイプラインの入れ替えを図っていくことを求められています。 ③ 最先端のサイエンスへのアクセスを可能とする研究開発体制の構築当社が関わるがん免疫療法は、医薬品業界の成長を牽引するとともにサイエンスが日進月歩で進展する領域であるため、社内に専門性の高い研究員と充実した研究施設を有することが不可欠で、常にこれを向上させていく必要があります。 ④ 経営体制の強化 (ⅰ)人材の確保と育成他の創薬ベンチャーと同様に当社も新規性のある医薬品の開発を行っておりますので、個々の社員には非常に高度な専門性が要求されます。そのため、適切な人材の確保が重要な課題となります。十分な技術・知識のみならずベンチャーマインドを有し、成長意欲のある人材を全部門において採用し、OJTによる人材育成により、今後拡大・加速していくことが予想される事業・研究開発スピードに対応してまいりたいと考えております。 (ⅱ)コーポレート・ガバナンスの強化当社にとって前述のアライアンス・ネットワーク体制の構築は重要な課題であり、また株主を含めたステークホルダーとの良好な関係も重要な課題であります。社外関係者との良好な関係の構築のためには、社会的信用を維持・向上させていく必要があると認識しております。特に、当社の取引先は主に上場企業、医療機関、公的な研究機関でありますので、協業体制を構築し、取引関係を維持していくには、当社も社会的信用を維持していく必要があります。また、世間に広く製品を提供していく創薬企業としての社会的責任を果たしていく必要があると認識しております。そのため、当社は小規模ではありますが、コーポレート・ガバナンス体制を構築し、内部管理体制及び管理部門の強化を推進してまいります。また、内部監査の充実及び監査役との連携強化などの施策により業務執行の適法性・妥当性を監視する機能を強化し、財務報告に係るリスクを最小化して、経営の健全化に努めてまいります。 (ⅲ)資金調達・財務基盤の強化当社は創薬ベンチャーであり、実際の製品化までの研究開発活動において年単位での時間を要します。製品化までの研究開発活動において設備投資、人材の採用・育成、また、企業価値向上のための新規パイプラインの創製(最新の技術の探索、導入及び共同研究など)に多額の資金が必要となります。これらの資金を外部から調達する必要があり、中長期的な視点から、財務基盤の強化のためにも、様々な資金調達の可能性を検討してまいります。 ⑤ IR活動の推進当社は、株主・投資家等のステークホルダーからの意見を収集し、経営のさらなる改善に努め、また、企業情報及び研究開発の状況等を正確、適時及び適切に発信し、信頼と正当な評価を得ていくことを目指します。
対処すべき課題
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。 (1) 経営の基本方針当社は、「私たちは、がん免疫治療分野の最先端を切り拓くことにより、一人ひとりが自らの力でがんを克服する世界を実現します。」を経営理念として、新規がん免疫治療薬を創製することによって、現在進行しているがん治療革新の一翼を担いたいと考えております。これを実現するために、当社は①開発領域をがん免疫治療薬に特化し、②シーズ導入・創製において国内外のアカデミアやベンチャー企業と広く連携するオープンイノベーションを進めながら、③ライセンスアウト型事業モデルによる好循環で持続可能な開発及び企業成長を目指してまいります。 ① がん免疫治療薬にフォーカスするのは、がん免疫に働きかけてがんを排除するという創薬コンセプトの有効性が免疫チェックポイント阻害抗体によって証明されており、この創薬コンセプトを具現化する方法を拡げることによって、従来の治療法では治療効果を得られなかったアンメットメディカルニーズを満たすことができるフロンティアが依然として大きく存在するからです。それは、当社が創業以来取り組んで来た経験とノウハウの蓄積がある領域であり、世界の医薬品市場の成長を他のどの医薬品カテゴリーよりも牽引している領域でもあります。 ② オープンイノベーションを進めるのは、今や日進月歩でサイエンスが更新されていくがん免疫療法の領域において、最先端のサイエンスへのアクセスを可能にするためです。がん免疫治療のフロンティアには、アンメットメディカルニーズを満たすためのサイエンスがまだ数多く存在しています。創薬ベンチャーとして創薬を好循環で進めるために、当社は③のライセンスアウト型の事業モデルを採っています。知的財産を導出することによって収益化を図るモデルで、その知的財産は、最先端のサイエンスが織り込まれていないと成立しません。 ③ ライセンスアウト型の事業モデル(シーズの創製や創薬コンセプト証明に集中し、大掛かりな組織体制を必要とする後期臨床試験以降は、製造販売網を有する製薬企業にライセンスアウトして早期収益化を図る事業モデル)を採るのは、創薬ベンチャーとして開発を持続して行えるようにするためです。一つひとつの新規医薬品候補物質の研究開発は、シーズの創製から規制当局の承認を得て医薬品として製造販売に至るまで、薬事規制等に則って探索的研究から第Ⅲ相臨床試験まで段階を踏みながら進められ、全体として長期間に及ぶとともに多額の資金を必要とします。よって、財務負担が蓄積し経営の機動性を喪失する前に、早期収益化を図ります。 (2) 目標とする経営指標当社では、ライセンスアウト時の契約一時金と、その後の継続的なマイルストン報酬(マイルストン収入、販売ロイヤリティなど)を収益とするビジネスモデルを採っているため、製薬企業へのライセンスアウト(タイミングとライセンス取引額)、原則としてライセンスアウト成立の前提となる、創薬コンセプトを証明する非臨床試験または臨床試験成績の取得、そこに至るまでの開発イベント(例えば、当局による治験開始申請の受理)が、重要な経営イベントとなります。持続可能な企業成長と企業価値の向上を目指して、また技術革新著しいがん免疫治療薬分野における事業機会を逃さないために、開発ポートフォリオの継続的な更新を重視しており、既存のパイプラインの開発推進や新規パイプラインの自社創製のみならず、新規パイプラインの導入やオープンイノベーションに基づく共同創出も積極的に進めてまいります。なお、研究開発型の創薬ベンチャーは、研究開発投資からライセンスアウトによる収益化までの長期間に及ぶ事業サイクルが、開発パイプライン複数個によって資産(企業価値を構成するソフトな資産)構成されるため、売上高や当期純損益や、ROE、ROAといった年単位で見る指標は、適切な経営指標となりにくいと考えております。 (3) 中長期的な会社の経営戦略現在当社は、免疫システムに働きかけ免疫を使ってがんを排除させるメカニズムの「がん免疫治療」薬に開発領域を定め、その医薬品形態としてがんワクチン、細胞医薬、抗体医薬という3つのモダリティでパイプラインを構成し、医薬品開発プロセス上は探索研究から早期臨床試験までを国内外で手掛け、早期収益化を図るために国内外の製薬企業に開発途中段階でライセンスアウトしていく事業モデルを採っています。中長期的には、開発領域は、軸足をがん免疫治療薬に置き続けることは変わりませんが、がん免疫治療薬で築いた創薬プラットフォームを他の疾患の治療薬(例えば感染症)に用いる可能性はあり、モダリティも現在の主力の3つに軸足を置きながらもより新しいモダリティ(例えば核酸、融合タンパク)を採用していく可能性はあります。手掛ける医薬品開発プロセスは、現在のモデルでいずれかのパイプラインのライセンスアウトが成功し、開発費の負担に耐えうる資金力がついた暁には、より多くの収益を当社が取り込めるよう、それに続く複数のパイプラインのうちいくつかは後期臨床試験以降まで進め、創薬ベンチャーから製薬企業へ転換を図っていくことも想定しています。そのときには、各パイプラインの開発が進み、一つひとつを独立したものでなく、複合的に治療に用いて相乗効果を引き出す統合的ながん免疫治療アプローチを採ることができるようになっていると考えています。 (4) 会社の対処すべき課題持続的な企業価値の向上を図るうえで、当社が対処すべき課題として認識している事項は、以下のとおりです。 ① 各開発パイプラインの次の開発段階への移行当社は、資金や人的リソースを効率的に活用して研究開発を推進するために共同開発パートナーやアカデミア等の連携先と綿密なコミュニケーションをとり、協業を進めることが既存の開発パイプラインの価値を高め、次の開発段階へと前進させる原動力と認識しています。当社はパイプライン別に他社の開発動向を精査した上で競争力を保ちつつ開発を進めるための戦略・戦術を策定し、製薬企業等へのライセンスアウトを模索しております。 ② 競争力のあるパイプラインのポートフォリオ構築当社は、現時点では新薬候補を後期臨床試験に至る前に製薬企業にライセンスアウトする事業モデルを採っています。ライセンスを成功させるためには当該新薬候補がその時点でサイエンスの面で陳腐化していてはならず、さらにがん免疫療法は全医薬品業界の成長を牽引する領域であるからこそ日進月歩でサイエンスが進んでいるため、当社は常に同分野全体のサイエンスが向かう方向性と進捗をみながら、各パイプラインの開発ステージを探索から非臨床試験、そして臨床試験へと一定期間内に上げて行くとともに、必要に応じてパイプラインの入れ替えを図っていくことを求められています。 ③ 最先端のサイエンスへのアクセスを可能とする研究開発体制の構築当社が関わるがん免疫療法は、医薬品業界の成長を牽引するとともにサイエンスが日進月歩で進展する領域であるため、社内に専門性の高い研究員と充実した研究施設を有することが不可欠で、常にこれを向上させていく必要があります。 ④ 経営体制の強化 (ⅰ)人材の確保と育成他の創薬ベンチャーと同様に当社も新規性のある医薬品の開発を行っておりますので、個々の社員には非常に高度な専門性が要求されます。そのため、適切な人材の確保が重要な課題となります。十分な技術・知識のみならずベンチャーマインドを有し、成長意欲のある人材を全部門において採用し、OJTによる人材育成により、今後拡大・加速していくことが予想される事業・研究開発スピードに対応してまいりたいと考えております。 (ⅱ)コーポレート・ガバナンスの強化当社にとって前述のアライアンス・ネットワーク体制の構築は重要な課題であり、また株主を含めたステークホルダーとの良好な関係も重要な課題であります。社外関係者との良好な関係の構築のためには、社会的信用を維持・向上させていく必要があると認識しております。特に、当社の取引先は主に上場企業、医療機関、公的な研究機関でありますので、協業体制を構築し、取引関係を維持していくには、当社も社会的信用を維持していく必要があります。また、世間に広く製品を提供していく創薬企業としての社会的責任を果たしていく必要があると認識しております。そのため、当社は小規模ではありますが、コーポレート・ガバナンス体制を構築し、内部管理体制及び管理部門の強化を推進してまいります。また、内部監査の充実及び監査役との連携強化などの施策により業務執行の適法性・妥当性を監視する機能を強化し、財務報告に係るリスクを最小化して、経営の健全化に努めてまいります。 (ⅲ)資金調達・財務基盤の強化当社は創薬ベンチャーであり、実際の製品化までの研究開発活動において年単位での時間を要します。製品化までの研究開発活動において設備投資、人材の採用・育成、また、企業価値向上のための新規パイプラインの創製(最新の技術の探索、導入及び共同研究など)に多額の資金が必要となります。これらの資金を外部から調達する必要があり、中長期的な視点から、財務基盤の強化のためにも、様々な資金調達の可能性を検討してまいります。 ⑤ IR活動の推進当社は、株主・投資家等のステークホルダーからの意見を収集し、経営のさらなる改善に努め、また、企業情報及び研究開発の状況等を正確、適時及び適切に発信し、信頼と正当な評価を得ていくことを目指します。
MD&A(経営者による分析)
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(業績等の概要)(1) 業績当事業年度(2024年4月1日から2025年3月31日まで)は、国際紛争が長期化する傍ら主要欧米各国の政権交代等により、継続して先行きが不透明な様相を呈していますが、世界経済はインフレの鈍化もあり緩やかに回復しました。海外株式市場は2024年末にかけて概ね上昇傾向となりましたが、バイオテク企業の株価は一進一退を繰り返しながら停滞しています。我が国の経済は弱含んでいた民間消費に底打ち感がみられ、緩やかに持ち直しつつありますが、株価は昨夏の乱高下を挟みながら全体的には軟調に推移し、国内中小企業をめぐる株式市場の状況は引き続き厳しいものとなっています。当社は第17回乃至第19回新株予約権を発行して調達した資金を、主にCAR-iPS細胞療法の米国臨床試験の準備に投じ、事業化に向けて着実に前進しております。 細胞医薬〔iPS細胞由来再生NKT細胞療法:BP2201〕BP2201(iPS-NKT)は、がん細胞の殺傷を含め多面的な抗腫瘍効果をもつナチュラル・キラーT(NKT)細胞を、iPS細胞技術を使って大量製造し、がん治療に用いる新規の他家細胞医薬品候補です。これまでに当社は、開発元の国立研究開発法人理化学研究所(以下「理研」)から、iPS細胞由来NKT細胞(iPS-NKT)のCAR-T(キメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞療法)を始めとする他家細胞療法使用を広範かつ排他的に保護する特許(日米欧で登録済み)の独占使用権を取得し、マスターiPSセルバンクからNKT細胞へ高純度で大量に分化誘導させる製造法の構築や、遺伝子編集技術の導入等を進めてまいりました。一方で、2000年代初期より自家NKT細胞療法の臨床研究を進めてきた国立大学法人千葉大学において、世界初のiPS-NKTを用いた頭頸部がん患者を対象とする医師主導の第Ⅰ相臨床試験(2020年6月開始)が実施されました。本治験について、2024年2月に学会で発表されたトップライン・データでは、主要評価項目である忍容性および安全性に問題ないこと、並びに初期的な臨床活性の確認が示されました。本治験で用いられた非遺伝子改変iPS-NKT細胞は、いろいろながん種のがん抗原に対するCAR(キメラ抗原受容体)遺伝子を導入した、新たな遺伝子改変iPS-NKT細胞医薬(CAR-iPSNKT)へ展開する土台/プラットフォームとなり、幅広いがん種と世界の幅広い地域への展開を可能にします。 〔CAR-iPSNKT細胞療法:BP2202〕CAR-iPSNKT細胞療法は、iPS細胞由来再生NKT細胞(非遺伝子改変iPS-NKT細胞)にがんの目印(抗原)を認識するCARを付加し、がん細胞殺傷能を高めた新規のCAR-T細胞療法です。これまで承認されている自家CAR-T細胞に用いられている患者自身のT細胞の代わりに、健常人ドナーから作製した他家のiPS細胞由来NKT細胞を用いることを特徴とします。医薬品として承認されている、すなわち臨床試験を通して検証されている作用メカニズムを有する細胞医薬のパーツ(エフェクター細胞)をより利便性の高いものに切り替えていくという考え方で開発を進めています。当社が試作したHER2またはBCMAを標的抗原とするCAR-iPSNKTは非遺伝子改変iPS-NKTと比較して抗腫瘍効果が高まることをマウスモデルで確認しています。当社は2023年5月にSTAR-CRISPRTM遺伝子編集技術をライセンス導入し、固形がんを含む様々な適応症に対して高度な遺伝子組換型CAR-iPSNKT細胞療法プログラムを創出することが可能となりましたが、現在そのプロトタイプ製品として多発性骨髄腫を標的とするBCMA CAR-iPSNKT(BP2202)の研究開発を進めています。BP2202は、2026年3月の米国臨床試験開始申請を目指し、マスターセルバンクの構築と、GMP準拠でマスターセルバンクからNKT細胞への分化誘導を行う治験薬製造の準備を進めています。前者については、健常人ドナー由来のiPS細胞バンクの構築に取りかかっており、後者については、当社で確立した高純度かつ高増殖の製造工程を、iPS細胞治療薬製造の先進企業で3Dバイオリアクター(三次元細胞培養)ベースの製造プラットフォームを有するCellistic社に移管するための戦略的提携を2024年12月に締結しました。 〔HER2 CAR-T細胞療法:BP2301〕BP2301は、様々な固形がんで高発現するHER2を標的抗原とするCAR-T細胞療法です。これまで血液がんを標的とするCAR-T細胞療法は、優れた臨床効果が臨床試験で示され、グローバルで承認されてきました。しかし、より多くの方が罹患される固形がんへの展開においては、投与されたCAR-T細胞が、免疫抑制的な腫瘍微小環境において疲弊して機能を喪失し、十分に臨床効果を発揮できないという課題が明らかになってきました。この課題を解決するために、BP2301では、体内での優れた複製能と長期生存能を特徴とし、それによって腫瘍微小環境における疲弊抵抗性と持続的抗腫瘍効果が期待される幹細胞様免疫記憶型(ステムセル・メモリー・フェノタイプ)細胞を多く含むCAR-T細胞を用いる技術の開発に成功しました。これは、信州大学の中沢洋三教授の非ウイルス遺伝子導入法に基づき、中沢教授及び同大学柳生茂希教授と新規の細胞培養法を共同開発したことによって可能になったものです。2022年5月より国立大学法人信州大学においてHER2陽性の再発・進行骨・軟部肉腫及び婦人科悪性腫瘍を対象とする遺伝子改変HER2 CAR-T細胞の臨床第Ⅰ相医師主導治験が行われています。 抗体医薬抗体医薬では、腫瘍組織においてがん細胞を排除する免疫の働きを抑制する免疫チェックポイント分子もしくは免疫調整分子に結合し、その機能を阻害する抗体の開発を進めています。がん免疫を抑制するアデノシン産生に介入するCD73とCD39をそれぞれ標的とするBP1200とBP1202、免疫細胞に発現し、その抑制に関わるTIM-3を標的とするBP1210のほかに、CD39分子とTIM-3分子を双方発現する免疫細胞においてこれらを同時に阻害する抗CD39×抗TIM-3二重特異性抗体BP1212のほかに、がん細胞上に発現するCD39分子とT細胞上に発現するCD3分子双方を標的とするT細胞エンゲージャーBP1223を開発パイプラインとして有します。これらの抗体医薬パイプラインについて、ライセンス活動の過程で望まれる非臨床コンセプトを裏付けるための追加データを取得し、事業開発活動を行っているところです。BP1223については、急性骨髄性白血病を始めとする血液がんを対象とする薬効薬理試験及び作用機序解析を国立がん研究センター東病院と共同で進めており、研究成果の一部を2024年12月開催の米国血液学会(ASH2024)にて発表しました。 がんワクチン〔免疫チェックポイント抗体連結個別化ネオアンチゲン・ワクチン:BP1209〕BP1209は、がん細胞由来の遺伝子変異に由来しヒトの免疫システムが高い反応性を示すネオアンチゲンを標的とするがん免疫を、患者1人ひとりに対応して誘導するのに最適化された、完全個別化ネオアンチゲン・ワクチン・プラットフォームです。ワクチンとなるネオアンチゲン・ペプチドを、T細胞へ標的情報を伝える樹状細胞へ送達するのに免疫チェックポイント抗体を用います。同抗体への結合が可能となるよう当社オリジナルのリンカー技術が組み込まれています。抗腫瘍免疫を指令する樹状細胞に効率よくワクチン抗原を送達することによって、ネオアンチゲンを目印にがん細胞を殺傷するT細胞をペプチド単体よりもはるかに多く誘導することを、担がんマウスモデルで証明しています。 これらの結果、当事業年度につきましては、売上高は1,133千円(前年同期の売上高は72千円)、営業損失は1,160,918千円(前年同期の営業損失は1,155,078千円)、経常損失は1,147,879千円(前年同期の経常損失は1,158,929千円)、当期純損失は1,151,149千円(前年同期の当期純損失は1,168,082千円)となりました。 (2) 財政状態の状況 ① 流動資産当事業年度末における流動資産は前事業年度末より109,644千円減少し1,071,315千円となりました。これは、現金及び預金が、株式の発行による収入があったものの、研究開発に関連する支出等で246,889千円減少したことが主な要因であります。 ② 固定資産当事業年度末における固定資産は前事業年度末より0千円減少し49,296千円となりました。これは、長期前払費用の費用効果の及ぶ期間が期末後1年以内に終了するため前払費用に振り替えたことが主な要因であります。 ③ 流動負債当事業年度末における流動負債は前事業年度末より59,349千円減少し131,661千円となりました。これは、1年内償還予定の社債が87,500千円減少したことが主な要因であります。 ④ 固定負債当事業年度末における固定負債は前事業年度末より3,703千円増加し63,962千円となりました。これは、退職給付引当金が3,611千円増加したことが主な要因であります。 ⑤ 純資産当事業年度末における純資産は前事業年度末より53,999千円減少し、924,987千円となりました。これは、新株予約権の行使により資本金及び資本剰余金の合計が1,098,417千円増加し、当期純損失により利益剰余金が1,151,149千円減少したことが主な要因であります。以上の結果、自己資本比率は前事業年度末の77.7%から80.6%となりました。 (3) キャッシュ・フローの状況当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末と比べて246,889千円減少し、810,470千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動の結果使用した資金は1,250,359千円(前事業年度は1,156,920千円の支出)となりました。これは主に税引前当期純損失1,149,249千円を計上したことによるものであります。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動の結果使用した資金は1,370千円(前事業年度は7,648千円の支出)となりました。これは、主に研究開発機器等の有形固定資産の取得による支出1,370千円によるものであります。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動の結果得られた資金は1,004,840千円(前事業年度は690,959千円の収入)となりました。これは、主に新株予約権の行使による株式の発行による収入1,090,805千円によるものであります。 (生産、受注及び販売の状況)(1) 生産実績当事業年度における生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。セグメントの名称生産高(千円)前年同期比(%)医薬品開発事業--合計-- (注)前事業年度及び当事業年度ともに生産実績がありませんでした。 (2) 受注実績当事業年度における受注実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。セグメントの名称受注高(千円)前年同期比(%)受注残高(千円)前年同期比(%)医薬品開発事業----合計---- (注)前事業年度及び当事業年度ともに受注実績がありませんでした。 (3) 販売実績当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。セグメントの名称販売高(千円)前年同期比(%)医薬品開発事業1,1331,456.8合計1,1331,456.8 (注)1.当事業年度において、販売実績に著しい変動がありました。これは、医薬品開発事業におきまし て、当事業年度に特許実施許諾による一時金収入があったことによるものであります。2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合相手先前事業年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)当事業年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)販売高(千円)割合(%)販売高(千円)割合(%)株式会社A-SEEDS--1,00488.6株式会社日本バイオセラピー研究所72100.012811.4 (経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は下記のとおりであります。なお、当社は、医薬品開発事業の単一事業であるため、セグメント別の業績に関する記載を省略しております。また、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。 (経営指標について)当社は、創薬ベンチャーであり、研究開発活動という投資期間が長く、その研究開発活動の成果として、ライセンスアウトによる契約一時金やマイルストン収入等などを獲得するビジネスモデルであります。中長期的視点からの経営の安定化、企業価値の向上を目指して、また著しい技術革新がなされ、大きな期待を受けているがん免疫治療薬分野における大きな事業機会を逃さないために、既存のパイプラインの推進のみならず、新規のパイプラインを積極的に導入していく方針であります。従いまして、売上高や当期純損益の推移やROE、ROAといった経営指標を目的とすることはせずに、現預金残高の推移、研究開発活動の効率化、パイプライン数の拡大・充実について、財務状況を勘案しながら、早期のライセンスアウト及び黒字化の実現に向けて、事業を進めてまいります。 (1) 重要な会計方針及び見積り当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されております。この財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。この見積りに関しては、過去の実績や適切と判断する仮定に基づいて合理的に算出しておりますが、実際の結果はこれらの見積りと相違する可能性があります。 (2) 当事業年度末の財政状態の分析① 資産の状況当事業年度末における資産合計は、前事業年度末より109,644千円減少し1,120,612千円となりました。これは、現金及び預金が、財務活動による収入があったものの研究開発に関連する支出が大きかったこと等により246,889千円減少し、前払金が111,629千円増加したことが主な理由であります。また、当事業年度末における資産の内訳としましては、現金及び預金が810,470千円と、資産の合計の72.3%を占めており、研究開発を推進していくにあたり、当面の資金は確保している状況にあります。今後の現金及び預金の残高推移については、株式市場等からの資金調達やライセンスアウトによる契約一時金収入・マイルストン収入の獲得が実施されるまでの期間において、主に研究開発費用及び研究機器等の購入に伴う支出により減少する傾向にあります。現金及び預金の残高推移を注視しつつ、がん免疫治療薬分野の最先端の研究開発を積極的に推進してまいります。 ② 負債の状況当事業年度末における負債合計は、前事業年度末より55,645千円減少し195,624千円となりました。これは、1年内償還予定の社債が87,500千円減少したことが主な理由であります。当事業年度末における総資産に占める負債の割合は、未償還の社債を一時的に有するため17.5%であります。当社の有するパイプライン開発の推進に伴い、未払金が負債の大部分を占める傾向にあります。また、当事業年度末における現金及び預金の残高に対する負債の割合は、比較的小さいと考えており、引き続き効率的な研究開発活動を推進してまいります。 ③ 純資産の状況当事業年度末における純資産は、前事業年度末より53,999千円減少し924,987千円となりました。これは、新株予約権の行使により資本金及び資本剰余金の合計が1,098,417千円増加し、当期純損失により利益剰余金が1,151,149千円減少したことが主な理由であります。自己資本比率は前事業年度末の77.7%から80.6%となりました。 (3) 当事業年度の経営成績の分析① 売上高の状況当事業年度の売上高につきましては、前事業年度と比べ1,060千円増加(1,456.8%増)し、1,133千円となりました。これは、当事業年度に当社保有特許の実施許諾による一時金収入があったためです。 ② 営業損益の状況当事業年度における営業損失は、前事業年度と比べ5,839千円損失が増加し1,160,918千円となりました。当社は新規のがん免疫治療薬に開発領域を特化し、細胞医薬、抗体医薬、がんワクチンモダリティに関する探索から早期臨床試験段階にある複数のパイプラインの開発を同時並行で進めておりますが、当事業年度の研究開発費は前事業年度と比べ14.5%増加し888,064千円となりました。研究開発費の増額は、主にBP2202の米国臨床試験に向けた準備(マスターセルバンク製造準備や製造工程移管準備など)を進めていることによります。当社の販管費に占める研究開発費の割合は76.5%となり、研究開発費の推移が営業損益に直接影響を与える構造となっております。各パイプラインの推進に加え、日進月歩でサイエンスが進む環境に迅速に適合していくためにも、新規シーズの導入は今後も引き続き積極的に行っていく方針であるとともに、川崎創薬研究所及び細胞医薬研究所において創出している新規医薬品候補の開発を順次進めてまいります。 ③ 当期純損益の状況当事業年度における当期純損益は、前事業年度と比べ16,933千円損失が減少し1,151,149千円となりました。当事業年度の売上総利益が前事業年度と比べ1,046千円増加し、販売費及び一般管理費が前事業年度と比べ6,886千円増加した一方、営業外収益では、受取和解金を15,108千円計上したことが主な要因であります。 (4) 当事業年度のキャッシュ・フローの分析当事業年度のキャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 業績等の概要 (3) キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。 (5) 経営成績に重要な影響を与える要因について経営成績に重要な影響を与える要因は、当社が推進する研究開発を遅延又は中止させる事象でありますが、詳細については「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。 (6) 資金の財源及び資金の流動性についての分析当社の資金需要は、研究開発にかかる人件費、試薬等材料費、消耗品費、外部委託費及び研究機器の購入等及び事業運営・上場維持にかかる人件費、外部委託費及び特許関連費用等であります。これらの費用及び研究機器の購入等については、自己資金により支出していく予定であります。自己資金については、すべて銀行預金としておりますので、すべての支出について迅速かつ確実に対応できるよう資金の流動性を確保しております。
事業リスク
- 創薬事業の不確実性医薬品開発は、研究開発の長期化と多額の資金を必要とします。目標とする試験成績が達成できない場合や、競合薬の影響、技術の陳腐化などにより、研究開発が遅延・中止される可能性があります。これにより、製薬会社へのライセンスアウトが成立しなかったり、契約が解消されたり、ロイヤリティ収入が低迷したりするリスクがあり、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
- 法的規制の変更リスク医薬品の研究開発は、各国の薬事法規や医療保険制度、規制当局の基準(GLP、GMP、GCPなど)に厳しく規制されています。これらの法律や基準は技術の進歩や市場動向によって改定される可能性があり、その変更に対応できない場合、研究開発の遅延・中止や、計画外の追加資金が必要となるリスクがあります。これにより、事業計画に大きな影響が出る可能性があります。
- 競合激化と製品競争力がん免疫治療薬の市場は急速に拡大しており、国内外の多くの企業が参入しています。競合他社の医薬品候補が先行したり、新薬が上市されたりした場合、同社の開発品の競争力が低下する可能性があります。その結果、臨床試験の遅延や中止、ライセンス契約の解約、あるいは上市後のロイヤリティ収入の減少などにより、事業戦略や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「事業等のリスク」の全文を見る(年度切替)
FY2026|6,687 文字
3 【事業等のリスク】当社の事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。また、当社として必ずしも重要なリスクと考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で又は当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、それらのすべてについて回避できる保証はありません。また、以下の記載内容は当社のリスクすべてを網羅するものではありませんのでご留意ください。 なお、本項記載の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。 (1) 創薬事業全般にかかるリスクについて 当社の手掛ける創薬事業では、一つひとつの新規医薬品候補物質の研究開発が、シーズの創製から規制当局の承認を得て医薬品として製造販売に至るまで、薬事規制等に則って探索的研究から第三相臨床試験まで段階を踏みながら進められ、全体として長期間に及ぶとともに多額の資金を必要とします。 そのため、財務状況への負荷の蓄積をところどころで緩和し、持続可能な成長を実現させるために、当社は医薬品候補物質毎に、シーズの創製や創薬コンセプト証明に集中し、大掛かりな組織体制を必要とする後期臨床試験以降は、製造販売網を有する製薬企業にライセンスアウトして早期収益化を図る事業モデルを採っています。 ライセンスアウトは、開発の段階毎に目標とする試験成績が積み上げられていくことが前提となるので、いずれにせよ研究開発の進捗がライセンスアウトの成否を大きく左右します。そのため、試験成績の目標未達、開発が先行する競合新薬候補が及ぼす影響や、技術革新がもたらす当該技術の陳腐化等により、研究開発が進行遅延若しくは終了・中止を免れない状況になった場合には、ライセンスアウトが成立しなくなる可能性があり、成立した後でも、ライセンス契約解消若しくはロイヤリティ収入の低迷の可能性があります。その場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (2) 法的規制等にかかる不確実性について 当社が携わる研究開発領域は、研究開発を実施する国ごとに薬事に係る法律、薬価等が関係する医療保険制度及びその他の関係法規・法令による規制が存在します。当社の事業計画・研究開発計画は、現行の薬事関連法規・法令や規制当局の承認・認可の基準(Good Laboratory Practice、Good Manufacturing Practice、Good Clinical Practice等)を前提に作成しておりますが、これらの法律・法令及び基準は技術の発展・市場の動向などにより適宜改定されます。これにより既存の研究開発の体制(組織的な体制、製造方法、開発手法、臨床試験の進め方、追加試験を行う必要性の発生など)の変更が必要となる場合、その体制の変更に速やかに対処できず研究開発が遅延・中止となるリスク、人員確保や設備投資に計画外の追加資金が必要となり、追加資金確保のために新たな資金調達が必要となるリスクがあり、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (3) 競合について 当社が携わる研究開発領域は、急激な市場規模の拡大が見込まれており、欧米を中心にベンチャー企業を含む多くの企業が参入する可能性があります。競合他社の有する医薬品候補物質の研究開発が当社の有する医薬品候補物質と同じ疾患領域で先行した場合又は競合新薬が上市された場合、当社の開発品の競争力が低下する可能性があります。その結果として、当社が進める臨床試験の被験者登録が停滞する等により臨床試験が遅延する可能性若しくは目標被験者数に届かない等により臨床試験が中止となる可能性、導出していた場合はライセンス契約解約の可能性又は上市後に想定したロイヤリティが得られない可能性があり、当社の事業戦略や経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。 (4) 研究開発活動について ① 製造物責任のリスクについて 臨床試験実施中に使用する治験薬、大学及びその提携施設が実施する医師主導治験用に提供する治験薬等並びに当社が研究開発した上市後の医薬品に起因して、未知の重篤な健康被害を被験者又は患者に与えた場合、製造物責任を当社が負う可能性又は治験薬等の提供先若しくは導出先の企業から損害賠償の請求を受ける可能性があります。これらの場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ② 副作用に関するリスクについて 当社が研究開発を実施した治験薬及び上市後の医薬品で、臨床試験段階から製品上市後にかけて、予期せぬ重篤な副作用が発現する可能性があります。重篤な副作用が発現した場合、製造物責任等の損害賠償リスクが発生する可能性がありますが、保険の加入などにより財政的な影響を回避又は最小限にしていくよう対応しておりますが、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ③ 研究開発施設等における事故等の発生に関するリスクについて 当社は、本店及び事業所に研究開発施設を有しております。事故防止の管理教育は徹底しておりますが、何らかの原因により火災や環境汚染事故、感染等が発生した場合、研究開発活動の中断、停止、又は、損害賠償や風評被害等重大な損失を招く可能性があります。また、当社は、経営の機動性・効率性の観点、コスト低減や専門性の高い分野における協業などの観点から、研究開発業務の一部を専門機関である外部委託先(CRO-医薬品開発業務受託機関、治験実施施設、原薬・製剤の製造業者等)に委託しており、これら外部委託先において何らかの原因により火災や環境汚染事故等が発生した場合にも、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (5) 知的財産権について ① 特許の状況について 現在出願中の特許については、特許出願時に特許性等に関する調査を行っておりますが、すべてのものが特許として成立するとは限りません。出願中の特許が成立しなかった場合又は登録された特許権が無効化された場合、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。また、特許の出願は、特許の内容、対象国などについて費用対効果を考慮して行いますので、研究開発で得られたすべての特許を出願するものではありません。また、出願費用・維持費用等のコストを回収できない可能性があります。 なお、当社のパイプラインにおいて、その実施に支障又は支障をきたす可能性のある事項は、当社が調査した限りにおいて存在しておりません。 ② 知的財産権に関する訴訟及びクレーム等について 本書提出日現在において、当社の事業に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレームといった問題が発生した事実はありません。当社は、弁護士及び弁理士との連携を図って可能な限り特許侵害・被侵害の発生リスクを軽減する対策を講じております。 ただし、今後において当社が第三者との間の法的紛争に巻き込まれた場合、弁護士等と協議のうえ、その内容によって個別に対応策を検討していく方針でありますが、解決に時間及び多大の費用を要する可能性があり、場合によっては当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (6) 研究開発費が多額の見通しであることについて 当社による医薬品候補物質の研究開発の期間は長期間にわたります。また、研究開発の期間においては非常に多くの実証・確認すべき事項があること、また当社では日本国内のみならず海外においても研究開発活動を行っていることなどから研究開発費は多額となる見通しであります。 製薬企業等とのライセンス契約から発生する契約一時金収入、マイルストン収入、ロイヤリティ収入を研究開発中のパイプライン及び新規パイプラインに再投資することを事業及び資金サイクルとしていくこととしておりますが、製薬企業等との契約締結が想定通りに進まない場合又は既存のパイプラインにおいて想定以上の研究開発費が必要となった場合などにおいては、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (7) 社内体制について ① 小規模組織であることについて 当社は、役員7名(取締役4名、監査役3名)、従業員は23名(2026年3月31日現在)であり小規模な組織となっており、内部管理体制も規模に応じたものとなっております。人員については、研究開発の状況に応じて増員を図っていく予定であり、内部管理体制も規模に応じて体制の強化を図っていく予定であります。 しかし、小規模組織のため、役員はじめ従業員においてもそれぞれが重要な役割を持って業務に従事しており、特定の役員・従業員への過度な負担・依存とならないよう経営組織の強化を図る予定でありますが、退任・退職により人材が流出した場合、長期休養等により長期間業務の遂行が困難となった場合、代替要員を適時に確保できない場合、業務の引継ぎが不十分となった場合などにおいては、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ② 情報管理について 当社の事業においては、研究開発におけるデータ、ノウハウ、技術など、経理業務における財務データ、人事業務における役員、社員に関する情報などは非常に重要な機密事項になります。また、業務を通して入手した個人情報も重要な機密事項となります。その機密事項の流出リスクを低減するために、機密事項を取り扱う役員、社員に対しては規程等を整備し、情報管理の重要性を周知徹底するとともに、取引先等と守秘義務に関する契約を締結するなど、厳重な情報管理に努めております。 しかしながら、当社の通信インフラの破壊や故障などにより当社が利用しているシステム全般が正常に稼働しない状況に陥ってしまった場合、システムに不具合が発生した場合、又は役員・職員、取引先等により情報管理が十分に遵守されず、重要な機密情報・個人情報などが漏えいした場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (8) その他 ① 新株予約権にかかる事項 当社は、優秀な人材を確保するため、また当社の事業及び研究開発活動へのモチベーションの維持・向上を目的として、新株予約権(ストック・オプション)を役員、社員及び社外の協力者等に付与しております。今後においても上記の目的のため新たに新株予約権を付与していく予定であります。また、研究開発領域の拡大に伴い、研究開発費及び事業運営経費が多額に必要となることから新株予約権を活用した資金調達を実施する可能性があります。これらの新株予約権が行使された場合には、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。なお、当社が発行した新株予約権にかかる潜在的株式の数は56,500株(2026年5月31日現在)であり、発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は0.04%であります。 ② 資金使途にかかる事項 2015年10月の株式上場時における公募増資の資金使途につきましては、主にGRN-1201の臨床開発試験、新規パイプライン導入のための研究開発費及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。また、2016年5月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、主にGRN-1201の新規適応症への新規パイプラインに関する臨床開発試験、新規パイプラインの探索・研究開発のための研究開発費、M&A資金及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。2017年11月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、がん免疫治療領域における研究開発費用及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。2020年4月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、次世代型へのシフトを進める「ワクチン」、固形がんへの展開を図るiPS-NKT細胞療法やHER2 CAR-T細胞療法を始めとする「細胞医薬」、抗PD-1抗体の次に来る免疫調整因子を標的とする「抗体」の3分野のがん免疫治療薬パイプライン開発の推進に充当しております。2022年1月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、次の開発ステージに移行するとともに新規展開を含む細胞医薬と抗体医薬パイプラインの開発に充当しております。2023年11月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、主にBP2202の非臨床試験や製造移管の準備に充当しております。2024年6月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、主にBP2202の米国における臨床試験に向けた準備に充当しました。また2025年11月に開示いたしました第三者割当増資による調達資金につきましては、主にBP2202の米国臨床試験実施に関連する費用、新規パイプライン開発費用に充当してまいります。しかしながら、今後において事業環境の変化等により、また、上記本項目「事業等のリスク」に記載のリスクの発生により、たとえ計画通りに使用した場合でも、想定している成果を達成できない可能性があります。 なお、当社が携わる研究開発の領域においては、技術開発の変化など外部環境が急速に変化する可能性があります。新薬の上市、法令等の改正、当社の研究開発・臨床試験の進捗状況によっては、上記の資金使途以外の事象に資金を充当する可能性があり、今後の戦略の策定において新たな事象の発生、新たな戦略の実行により、研究開発資金が想定以上に増加する可能性もあります。 ③ M&A等(買収、合併等)による事業拡大に関する事項 当社は、事業拡大へ向けた新たな経営資源を取得するため、また保有する経営資源の効率的運用と企業価値を最大化するため、M&A等を活用して事業規模の拡大を図ることを検討してまいります。M&A候補の選定に当たりましては、詳細なデューデリジェンスを行うことにより極力リスクを回避してまいりますが、買収後の偶発債務の発生や、のれんが発生する場合は買収後の事業環境や競合状況の変化等により想定通りの効果が得られない場合にのれんの減損損失を計上する等、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。 ④ 資金調達にかかる事項 当社のパイプラインの研究開発が完了し製品化となるまでまだ長期間を要しますので、今後も多額の資金調達を必要とします。この期間において、事業計画の修正を必要とする状況になった場合、資金不足が生じる可能性があります。その場合、公的補助金の活用や日本国内のみならず海外企業・機関を含めた新規提携契約の締結、新株発行等により資金需要に対応していく予定であります。しかしながら、適切なタイミングで資金調達ができなかった場合には、当社の事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。 また、今後において、さらなる事業拡大等のための資金調達の方法として新株発行や新株予約権付社債などを発行する可能性があります。新株等発行の結果、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。 ⑤ 自然災害について 当社は、東京都千代田区及び神奈川県川崎市に事業所及び研究施設を設けております。当社の事業地域で地震等の大規模な災害が発生した場合には、不測の事態の発生により事業活動が停滞する可能性があります。いずれかの地域で大規模な災害が発生した場合でも、いずれかで業務を継続できる体制となっており、また電子データ等のバックアップも前述の各地域以外の場所に設置しております。しかしながら、自然災害の規模、状況によっては、当社及び外部委託先の設備・インフラが支障をきたし稼働できない状況、従業員等が出社できない状況など一時的又は長期間業務が停止し、臨床開発及び事業活動を一時的又は長期間休止せざるを得ない状況が発生した場合には、当社の臨床開発、事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
FY2025|7,181 文字
3 【事業等のリスク】当社の事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。また、当社として必ずしも重要なリスクと考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で又は当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、それらのすべてについて回避できる保証はありません。また、以下の記載内容は当社のリスクすべてを網羅するものではありませんのでご留意ください。なお、本項記載の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。 (1) 創薬事業全般にかかるリスクについて 当社の手掛ける創薬事業では、一つひとつの新規医薬品候補物質の研究開発が、シーズの創製から規制当局の承認を得て医薬品として製造販売に至るまで、薬事規制等に則って探索的研究から第三相臨床試験まで段階を踏みながら進められ、全体として長期間に及ぶとともに多額の資金を必要とします。そのため、財務状況への負荷の蓄積をところどころで緩和し、持続可能な成長を実現させるために、当社は医薬品候補物質毎に、シーズの創製や創薬コンセプト証明に集中し、大掛かりな組織体制を必要とする後期臨床試験以降は、製造販売網を有する製薬企業にライセンスアウトして早期収益化を図る事業モデルを採っています。 ライセンスアウトは、開発の段階毎に目標とする試験成績が積み上げられていくことが前提となるので、いずれにせよ研究開発の進捗がライセンスアウトの成否を大きく左右します。そのため、試験成績の目標未達、開発が先行する競合新薬候補が及ぼす影響や、技術革新がもたらす当該技術の陳腐化等により、研究開発が進行遅延若しくは終了・中止を免れない状況になった場合には、ライセンスアウトが成立しなくなる可能性があり、成立した後でも、ライセンス契約解消若しくはロイヤリティ収入の低迷の可能性があります。その場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (2) 法的規制等にかかる不確実性について 当社が携わる研究開発領域は、研究開発を実施する国ごとに薬事に係る法律、薬価等が関係する医療保険制度及びその他の関係法規・法令による規制が存在します。当社の事業計画・研究開発計画は、現行の薬事関連法規・法令や規制当局の承認・認可の基準(Good Laboratory Practice、Good Manufacturing Practice、Good Clinical Practice等)を前提に作成しておりますが、これらの法律・法令及び基準は技術の発展・市場の動向などにより適宜改定されます。これにより既存の研究開発の体制(組織的な体制、製造方法、開発手法、臨床試験の進め方、追加試験を行う必要性の発生など)の変更が必要となる場合、その体制の変更に速やかに対処できず研究開発が遅延・中止となるリスク、人員確保や設備投資に計画外の追加資金が必要となり、追加資金確保のために新たな資金調達が必要となるリスクがあり、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (3) 競合について 当社が携わる研究開発領域は、急激な市場規模の拡大が見込まれており、欧米を中心にベンチャー企業を含む多くの企業が参入する可能性があります。競合他社の有する医薬品候補物質の研究開発が当社の有する医薬品候補物質と同じ疾患領域で先行した場合又は競合新薬が上市された場合、当社の開発品の競争力が低下する可能性があります。その結果として、当社が進める臨床試験の被験者登録が停滞する等により臨床試験が遅延する可能性若しくは目標被験者数に届かない等により臨床試験が中止となる可能性、導出していた場合はライセンス契約解約の可能性又は上市後に想定したロイヤリティが得られない可能性があり、当社の事業戦略や経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。 (4) 研究開発活動について ① 製造物責任のリスクについて 臨床試験実施中に使用する治験薬、大学及びその提携施設が実施する医師主導治験用に提供する治験薬等並びに当社が研究開発した上市後の医薬品に起因して、未知の重篤な健康被害を被験者又は患者に与えた場合、製造物責任を当社が負う可能性又は治験薬等の提供先若しくは導出先の企業から損害賠償の請求を受ける可能性があります。これらの場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ② 副作用に関するリスクについて 当社が研究開発を実施した治験薬及び上市後の医薬品で、臨床試験段階から製品上市後にかけて、予期せぬ重篤な副作用が発現する可能性があります。重篤な副作用が発現した場合、製造物責任等の損害賠償リスクが発生する可能性がありますが、保険の加入などにより財政的な影響を回避又は最小限にしていくよう対応しておりますが、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ③ 研究開発施設等における事故等の発生に関するリスクについて 当社は、本店及び事業所に研究開発施設を有しております。事故防止の管理教育は徹底しておりますが、何らかの原因により火災や環境汚染事故、感染等が発生した場合、研究開発活動の中断、停止、又は、損害賠償や風評被害等重大な損失を招く可能性があります。また、当社は、経営の機動性・効率性の観点、コスト低減や専門性の高い分野における協業などの観点から、研究開発業務の一部を専門機関である外部委託先(CRO-医薬品開発業務受託機関、治験実施施設、原薬・製剤の製造業者等)に委託しており、これら外部委託先において何らかの原因により火災や環境汚染事故等が発生した場合にも、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (5) 知的財産権について ① 特許の状況について 現在出願中の特許については、特許出願時に特許性等に関する調査を行っておりますが、すべてのものが特許として成立するとは限りません。出願中の特許が成立しなかった場合又は登録された特許権が無効化された場合、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。また、特許の出願は、特許の内容、対象国などについて費用対効果を考慮して行いますので、研究開発で得られたすべての特許を出願するものではありません。また、出願費用・維持費用等のコストを回収できない可能性があります。 なお、当社のパイプラインにおいて、その実施に支障又は支障をきたす可能性のある事項は、当社が調査した限りにおいて存在しておりません。 ② 知的財産権に関する訴訟及びクレーム等について 本書提出日現在において、当社の事業に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレームといった問題が発生した事実はありません。当社は、弁護士及び弁理士との連携を図って可能な限り特許侵害・被侵害の発生リスクを軽減する対策を講じております。 ただし、今後において当社が第三者との間の法的紛争に巻き込まれた場合、弁護士等と協議のうえ、その内容によって個別に対応策を検討していく方針でありますが、解決に時間及び多大の費用を要する可能性があり、場合によっては当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (6) 研究開発費が多額の見通しであることについて 当社による医薬品候補物質の研究開発の期間は長期間にわたります。また、研究開発の期間においては非常に多くの実証・確認すべき事項があること、また当社では日本国内のみならず海外においても研究開発活動を行っていることなどから研究開発費は多額となる見通しであります。 製薬企業等とのライセンス契約から発生する契約一時金収入、マイルストン収入、ロイヤリティ収入を研究開発中のパイプライン及び新規パイプラインに再投資することを事業及び資金サイクルとしていくこととしておりますが、製薬企業等との契約締結が想定通りに進まない場合又は既存のパイプラインにおいて想定以上の研究開発費が必要となった場合などにおいては、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (7) 社内体制について ① 小規模組織であることについて 当社は、役員8名(取締役5名、監査役3名)、従業員は24名(2025年3月31日現在)であり小規模な組織となっており、内部管理体制も規模に応じたものとなっております。人員については、研究開発の状況に応じて増員を図っていく予定であり、内部管理体制も規模に応じて体制の強化を図っていく予定であります。しかし、小規模組織のため、役員はじめ従業員においてもそれぞれが重要な役割を持って業務に従事しており、特定の役員・従業員への過度な負担・依存とならないよう経営組織の強化を図る予定でありますが、退任・退職により人材が流出した場合、長期休養等により長期間業務の遂行が困難となった場合、代替要員を適時に確保できない場合、業務の引継ぎが不十分となった場合などにおいては、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ② 情報管理について 当社の事業においては、研究開発におけるデータ、ノウハウ、技術など、経理業務における財務データ、人事業務における役員、社員に関する情報などは非常に重要な機密事項になります。また、業務を通して入手した個人情報も重要な機密事項となります。その機密事項の流出リスクを低減するために、機密事項を取り扱う役員、社員に対しては規程等を整備し、情報管理の重要性を周知徹底するとともに、取引先等と守秘義務に関する契約を締結するなど、厳重な情報管理に努めております。 しかしながら、当社の通信インフラの破壊や故障などにより当社が利用しているシステム全般が正常に稼働しない状況に陥ってしまった場合、システムに不具合が発生した場合、又は役員・職員、取引先等により情報管理が十分に遵守されず、重要な機密情報・個人情報などが漏えいした場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (8) その他 ① 新株予約権にかかる事項 当社は、優秀な人材を確保するため、また当社の事業及び研究開発活動へのモチベーションの維持・向上を目的として、新株予約権(ストック・オプション)を役員、社員及び社外の協力者等に付与しております。今後においても上記の目的のため新たに新株予約権を付与していく予定であります。また、研究開発領域の拡大に伴い、研究開発費及び事業運営経費が多額に必要となることから新株予約権を活用した資金調達を実施する可能性があります。これらの新株予約権が行使された場合には、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。なお、当社が発行した新株予約権にかかる潜在的株式の数は18,006,500株(2025年5月31日現在)であり、発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は19.27%であります。 ② 資金使途にかかる事項 2015年10月の株式上場時における公募増資の資金使途につきましては、主にGRN-1201の臨床開発試験、新規パイプライン導入のための研究開発費及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。また、2016年5月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、主にGRN-1201の新規適応症への新規パイプラインに関する臨床開発試験、新規パイプラインの探索・研究開発のための研究開発費、M&A資金及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。2017年11月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、がん免疫治療領域における研究開発費用及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。2020年4月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、次世代型へのシフトを進める「ワクチン」、固形がんへの展開を図るiPS-NKT細胞療法やHER2 CAR-T細胞療法を始めとする「細胞医薬」、抗PD-1抗体の次に来る免疫調整因子を標的とする「抗体」の3分野のがん免疫治療薬パイプライン開発の推進に充当しております。2022年1月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、次の開発ステージに移行するとともに新規展開を含む細胞医薬と抗体医薬パイプラインの開発に充当しております。2023年11月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、主にBP2202の非臨床試験や製造移管の準備に充当しております。2024年6月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、主にBP2202の米国における臨床試験に向けた準備に充当しております。しかしながら、今後において事業環境の変化等により、また、上記本項目「事業等のリスク」に記載のリスクの発生により、たとえ計画通りに使用した場合でも、想定している成果を達成できない可能性があります。 なお、当社が携わる研究開発の領域においては、技術開発の変化など外部環境が急速に変化する可能性があります。新薬の上市、法令等の改正、当社の研究開発・臨床試験の進捗状況によっては、上記の資金使途以外の事象に資金を充当する可能性があり、今後の戦略の策定において新たな事象の発生、新たな戦略の実行により、研究開発資金が想定以上に増加する可能性もあります。 ③ M&A等(買収、合併等)による事業拡大に関する事項 当社は、事業拡大へ向けた新たな経営資源を取得するため、また保有する経営資源の効率的運用と企業価値を最大化するため、M&A等を活用して事業規模の拡大を図ることを検討してまいります。M&A候補の選定に当たりましては、詳細なデューデリジェンスを行うことにより極力リスクを回避してまいりますが、買収後の偶発債務の発生や、のれんが発生する場合は買収後の事業環境や競合状況の変化等により想定通りの効果が得られない場合にのれんの減損損失を計上する等、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。 ④ 資金調達にかかる事項 当社のパイプラインの研究開発が完了し製品化となるまでまだ長期間を要しますので、今後も多額の資金調達を必要とします。この期間において、事業計画の修正を必要とする状況になった場合、資金不足が生じる可能性があります。その場合、公的補助金の活用や日本国内のみならず海外企業・機関を含めた新規提携契約の締結、新株発行等により資金需要に対応していく予定であります。しかしながら、適切なタイミングで資金調達ができなかった場合には、当社の事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。 また、今後において、さらなる事業拡大等のための資金調達の方法として新株発行や新株予約権付社債などを発行する可能性があります。新株等発行の結果、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。 ⑤ 自然災害について 当社は、東京都千代田区及び神奈川県川崎市に事業所及び研究施設を設けております。当社の事業地域で地震等の大規模な災害が発生した場合には、不測の事態の発生により事業活動が停滞する可能性があります。いずれかの地域で大規模な災害が発生した場合でも、いずれかで業務を継続できる体制となっており、また電子データ等のバックアップも前述の各地域以外の場所に設置しております。しかしながら、自然災害の規模、状況によっては、当社及び外部委託先の設備・インフラが支障をきたし稼働できない状況、従業員等が出社できない状況など一時的又は長期間業務が停止し、臨床開発及び事業活動を一時的又は長期間休止せざるを得ない状況が発生した場合には、当社の臨床開発、事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ⑥ 継続企業の前提に関する重要事象等当社の手がける創薬事業では、一つひとつの新規医薬品候補物質の研究開発が、シーズの創製から規制当局の承認を得て医薬品として製造販売に至るまで、薬事規制等に則って探索的研究から第Ⅲ相臨床試験まで段階を踏みながら進められ、全体として長期間に及ぶとともに多額の資金を必要とします。研究開発費用が先行する事業モデルであるため、営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなり、営業損失を計上する状況が継続し、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。このような状況に対し、研究開発投資を重要パイプラインに集約し、早期に導出が可能なパイプラインについては精力的にライセンス契約締結による導出一時金の獲得のための提携交渉を継続しています。資金面では、当期末時点で現預金810百万円を有しており、2024年6月19日に決議した第17回乃至第19回新株予約権による資金調達は順調に行使が進んでいるとともに、金融機関と今後の資金調達の協議を継続していることから、今後も継続的な支援を頂ける可能性は高いと思われます。さらに、開発段階の移行に応じてより一層の固定費削減を図ることが可能となるため、研究開発活動を展開するための資金を確保できており、継続企業の前提に関する重要な不確実性はないと認識しております。
FY2024|6,530 文字
3 【事業等のリスク】当社の事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。また、当社として必ずしも重要なリスクと考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で又は当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、それらのすべてについて回避できる保証はありません。また、以下の記載内容は当社のリスクすべてを網羅するものではありませんのでご留意ください。なお、本項記載の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。 (1) 創薬事業全般にかかるリスクについて 当社の手掛ける創薬事業では、一つひとつの新規医薬品候補物質の研究開発が、シーズの創製から規制当局の承認を得て医薬品として製造販売に至るまで、薬事規制等に則って探索的研究から第三相臨床試験まで段階を踏みながら進められ、全体として長期間に及ぶとともに多額の資金を必要とします。そのため、財務状況への負荷の蓄積をところどころで緩和し、持続可能な成長を実現させるために、当社は医薬品候補物質毎に、シーズの創製や創薬コンセプト証明に集中し、大掛かりな組織体制を必要とする後期臨床試験以降は、製造販売網を有する製薬企業にライセンスアウトして早期収益化を図る事業モデルを採っています。 ライセンスアウトは、開発の段階毎に目標とする試験成績が積み上げられていくことが前提となるので、いずれにせよ研究開発の進捗がライセンスアウトの成否を大きく左右します。そのため、試験成績の目標未達、開発が先行する競合新薬候補が及ぼす影響や、技術革新がもたらす当該技術の陳腐化等により、研究開発が進行遅延若しくは終了・中止を免れない状況になった場合には、ライセンスアウトが成立しなくなる可能性があり、成立した後でも、ライセンス契約解消若しくはロイヤリティ収入の低迷の可能性があります。その場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (2) 法的規制等にかかる不確実性について 当社が携わる研究開発領域は、研究開発を実施する国ごとに薬事に係る法律、薬価等が関係する医療保険制度及びその他の関係法規・法令による規制が存在します。当社の事業計画・研究開発計画は、現行の薬事関連法規・法令や規制当局の承認・認可の基準(Good Laboratory Practice、Good Manufacturing Practice、Good Clinical Practice等)を前提に作成しておりますが、これらの法律・法令及び基準は技術の発展・市場の動向などにより適宜改定されます。これにより既存の研究開発の体制(組織的な体制、製造方法、開発手法、臨床試験の進め方、追加試験を行う必要性の発生など)の変更が必要となる場合、その体制の変更に速やかに対処できず研究開発が遅延・中止となるリスク、人員確保や設備投資に計画外の追加資金が必要となり、追加資金確保のために新たな資金調達が必要となるリスクがあり、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (3) 競合について 当社が携わる研究開発領域は、急激な市場規模の拡大が見込まれており、欧米を中心にベンチャー企業を含む多くの企業が参入する可能性があります。競合他社の有する医薬品候補物質の研究開発が当社の有する医薬品候補物質と同じ疾患領域で先行した場合又は競合新薬が上市された場合、当社の開発品の競争力が低下する可能性があります。その結果として、当社が進める臨床試験の被験者登録が停滞する等により臨床試験が遅延する可能性若しくは目標被験者数に届かない等により臨床試験が中止となる可能性、導出していた場合はライセンス契約解約の可能性又は上市後に想定したロイヤリティが得られない可能性があり、当社の事業戦略や経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。 (4) 研究開発活動について ① 製造物責任のリスクについて 臨床試験実施中に使用する治験薬、大学及びその提携施設が実施する医師主導治験用に提供する治験薬等並びに当社が研究開発した上市後の医薬品に起因して、未知の重篤な健康被害を被験者又は患者に与えた場合、製造物責任を当社が負う可能性又は治験薬等の提供先若しくは導出先の企業から損害賠償の請求を受ける可能性があります。これらの場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ② 副作用に関するリスクについて 当社が研究開発を実施した治験薬及び上市後の医薬品で、臨床試験段階から製品上市後にかけて、予期せぬ重篤な副作用が発現する可能性があります。重篤な副作用が発現した場合、製造物責任等の損害賠償リスクが発生する可能性がありますが、保険の加入などにより財政的な影響を回避又は最小限にしていくよう対応しておりますが、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ③ 研究開発施設等における事故等の発生に関するリスクについて 当社は、本店及び事業所に研究開発施設を有しております。事故防止の管理教育は徹底しておりますが、何らかの原因により火災や環境汚染事故、感染等が発生した場合、研究開発活動の中断、停止、又は、損害賠償や風評被害等重大な損失を招く可能性があります。また、当社は、経営の機動性・効率性の観点、コスト低減や専門性の高い分野における協業などの観点から、研究開発業務の一部を専門機関である外部委託先(CRO-医薬品開発業務受託機関、治験実施施設、原薬・製剤の製造業者等)に委託しており、これら外部委託先において何らかの原因により火災や環境汚染事故等が発生した場合にも、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (5) 知的財産権について ① 特許の状況について 現在出願中の特許については、特許出願時に特許性等に関する調査を行っておりますが、すべてのものが特許として成立するとは限りません。出願中の特許が成立しなかった場合又は登録された特許権が無効化された場合、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。また、特許の出願は、特許の内容、対象国などについて費用対効果を考慮して行いますので、研究開発で得られたすべての特許を出願するものではありません。また、出願費用・維持費用等のコストを回収できない可能性があります。 なお、当社のパイプラインにおいて、その実施に支障又は支障をきたす可能性のある事項は、当社が調査した限りにおいて存在しておりません。 ② 知的財産権に関する訴訟及びクレーム等について 本書提出日現在において、当社の事業に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレームといった問題が発生した事実はありません。当社は、弁護士及び弁理士との連携を図って可能な限り特許侵害・被侵害の発生リスクを軽減する対策を講じております。 ただし、今後において当社が第三者との間の法的紛争に巻き込まれた場合、弁護士等と協議のうえ、その内容によって個別に対応策を検討していく方針でありますが、解決に時間及び多大の費用を要する可能性があり、場合によっては当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (6) 研究開発費が多額の見通しであることについて 当社による医薬品候補物質の研究開発の期間は長期間にわたります。また、研究開発の期間においては非常に多くの実証・確認すべき事項があること、また当社では日本国内のみならず海外においても研究開発活動を行っていることなどから研究開発費は多額となる見通しであります。 製薬企業等とのライセンス契約から発生する契約一時金収入、マイルストン収入、ロイヤリティ収入を研究開発中のパイプライン及び新規パイプラインに再投資することを事業及び資金サイクルとしていくこととしておりますが、製薬企業等との契約締結が想定通りに進まない場合又は既存のパイプラインにおいて想定以上の研究開発費が必要となった場合などにおいては、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (7) 社内体制について ① 小規模組織であることについて 当社は、役員8名(取締役5名、監査役3名)、従業員は24名(2024年3月31日現在)であり小規模な組織となっており、内部管理体制も規模に応じたものとなっております。人員については、研究開発の状況に応じて増員を図っていく予定であり、内部管理体制も規模に応じて体制の強化を図っていく予定であります。しかし、小規模組織のため、役員はじめ従業員においてもそれぞれが重要な役割を持って業務に従事しており、特定の役員・従業員への過度な負担・依存とならないよう経営組織の強化を図る予定でありますが、退任・退職により人材が流出した場合、長期休養等により長期間業務の遂行が困難となった場合、代替要員を適時に確保できない場合、業務の引継ぎが不十分となった場合などにおいては、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ② 情報管理について 当社の事業においては、研究開発におけるデータ、ノウハウ、技術など、経理業務における財務データ、人事業務における役員、社員に関する情報などは非常に重要な機密事項になります。また、業務を通して入手した個人情報も重要な機密事項となります。その機密事項の流出リスクを低減するために、機密事項を取り扱う役員、社員に対しては規程等を整備し、情報管理の重要性を周知徹底するとともに、取引先等と守秘義務に関する契約を締結するなど、厳重な情報管理に努めております。 しかしながら、当社の通信インフラの破壊や故障などにより当社が利用しているシステム全般が正常に稼働しない状況に陥ってしまった場合、システムに不具合が発生した場合、又は役員・職員、取引先等により情報管理が十分に遵守されず、重要な機密情報・個人情報などが漏えいした場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (8) その他 ① 新株予約権にかかる事項 当社は、優秀な人材を確保するため、また当社の事業及び研究開発活動へのモチベーションの維持・向上を目的として、新株予約権(ストック・オプション)を役員、社員及び社外の協力者等に付与しております。今後においても上記の目的のため新たに新株予約権を付与していく予定であります。また、研究開発領域の拡大に伴い、研究開発費及び事業運営経費が多額に必要となることから新株予約権を活用した資金調達を実施する可能性があります。これらの新株予約権が行使された場合には、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。なお、当社が発行した新株予約権にかかる潜在的株式の数は8,400,800株(2024年5月31日現在)であり、発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は11.84%であります。 ② 資金使途にかかる事項 2015年10月の株式上場時における公募増資の資金使途につきましては、主にGRN-1201の臨床開発試験、新規パイプライン導入のための研究開発費及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。また、2016年5月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、主にGRN-1201の新規適応症への新規パイプラインに関する臨床開発試験、新規パイプラインの探索・研究開発のための研究開発費、M&A資金及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。2017年11月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、がん免疫治療領域における研究開発費用及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。2020年4月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、次世代型へのシフトを進める「ワクチン」、固形がんへの展開を図るiPS-NKT細胞療法やHER2 CAR-T細胞療法を始めとする「細胞医薬」、抗PD-1抗体の次に来る免疫調整因子を標的とする「抗体」の3分野のがん免疫治療薬パイプライン開発の推進に充当しております。2022年1月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、次の開発ステージに移行するとともに新規展開を含む細胞医薬と抗体医薬パイプラインの開発に充当しております。2023年11月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、主にBP2202の非臨床試験や製造移管の準備に充当しております。しかしながら、今後において事業環境の変化等により、また、上記本項目「事業等のリスク」に記載のリスクの発生により、たとえ計画通りに使用した場合でも、想定している成果を達成できない可能性があります。 なお、当社が携わる研究開発の領域においては、技術開発の変化など外部環境が急速に変化する可能性があります。新薬の上市、法令等の改正、当社の研究開発・臨床試験の進捗状況によっては、上記の資金使途以外の事象に資金を充当する可能性があり、今後の戦略の策定において新たな事象の発生、新たな戦略の実行により、研究開発資金が想定以上に増加する可能性もあります。 ③ M&A等(買収、合併等)による事業拡大に関する事項 当社は、事業拡大へ向けた新たな経営資源を取得するため、また保有する経営資源の効率的運用と企業価値を最大化するため、M&A等を活用して事業規模の拡大を図ることを検討してまいります。M&A候補の選定に当たりましては、詳細なデューデリジェンスを行うことにより極力リスクを回避してまいりますが、買収後の偶発債務の発生や、のれんが発生する場合は買収後の事業環境や競合状況の変化等により想定通りの効果が得られない場合にのれんの減損損失を計上する等、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。 ④ 資金調達にかかる事項 当社のパイプラインの研究開発が完了し製品化となるまでまだ長期間を要しますので、今後も多額の資金調達を必要とします。この期間において、事業計画の修正を必要とする状況になった場合、資金不足が生じる可能性があります。その場合、公的補助金の活用や日本国内のみならず海外企業・機関を含めた新規提携契約の締結、新株発行等により資金需要に対応していく予定であります。しかしながら、適切なタイミングで資金調達ができなかった場合には、当社の事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。 また、今後において、さらなる事業拡大等のための資金調達の方法として新株発行や新株予約権付社債などを発行する可能性があります。新株等発行の結果、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。 ⑤ 自然災害について 当社は、東京都千代田区及び神奈川県川崎市に事業所及び研究施設を設けております。当社の事業地域で地震等の大規模な災害が発生した場合には、不測の事態の発生により事業活動が停滞する可能性があります。いずれかの地域で大規模な災害が発生した場合でも、いずれかで業務を継続できる体制となっており、また電子データ等のバックアップも前述の各地域以外の場所に設置しております。しかしながら、自然災害の規模、状況によっては、当社及び外部委託先の設備・インフラが支障をきたし稼働できない状況、従業員等が出社できない状況など一時的又は長期間業務が停止し、臨床開発及び事業活動を一時的又は長期間休止せざるを得ない状況が発生した場合には、当社の臨床開発、事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
FY2023|6,827 文字
3 【事業等のリスク】当社の事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。また、当社として必ずしも重要なリスクと考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で又は当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、それらのすべてについて回避できる保証はありません。また、以下の記載内容は当社のリスクすべてを網羅するものではありませんのでご留意ください。なお、本項記載の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。 (1) 創薬事業全般にかかるリスクについて 当社の手掛ける創薬事業では、一つひとつの新規医薬品候補物質の研究開発が、シーズの創製から規制当局の承認を得て医薬品として製造販売に至るまで、薬事規制等に則って探索的研究から第三相臨床試験まで段階を踏みながら進められ、全体として長期間に及ぶとともに多額の資金を必要とします。そのため、財務状況への負荷の蓄積をところどころで緩和し、持続可能な成長を実現させるために、当社は医薬品候補物質毎に、シーズの創製や創薬コンセプト証明に集中し、大掛かりな組織体制を必要とする後期臨床試験以降は、製造販売網を有する製薬企業にライセンスアウトして早期収益化を図る事業モデルを採っています。 ライセンスアウトは、開発の段階毎に目標とする試験成績が積み上げられていくことが前提となるので、いずれにせよ研究開発の進捗がライセンスアウトの成否を大きく左右します。そのため、試験成績の目標未達、開発が先行する競合新薬候補が及ぼす影響や、技術革新がもたらす当該技術の陳腐化等により、研究開発が進行遅延若しくは終了・中止を免れない状況になった場合には、ライセンスアウトが成立しなくなる可能性があり、成立した後でも、ライセンス契約解消若しくはロイヤリティ収入の低迷の可能性があります。その場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (2) 法的規制等にかかる不確実性について 当社が携わる研究開発領域は、研究開発を実施する国ごとに薬事に係る法律、薬価等が関係する医療保険制度及びその他の関係法規・法令による規制が存在します。当社の事業計画・研究開発計画は、現行の薬事関連法規・法令や規制当局の承認・認可の基準(Good Laboratory Practice、Good Manufacturing Practice、Good Clinical Practice等)を前提に作成しておりますが、これらの法律・法令及び基準は技術の発展・市場の動向などにより適宜改定されます。これにより既存の研究開発の体制(組織的な体制、製造方法、開発手法、臨床試験の進め方、追加試験を行う必要性の発生など)の変更が必要となる場合、その体制の変更に速やかに対処できず研究開発が遅延・中止となるリスク、人員確保や設備投資に計画外の追加資金が必要となり、追加資金確保のために新たな資金調達が必要となるリスクがあり、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (3) 競合について 当社が携わる研究開発領域は、急激な市場規模の拡大が見込まれており、欧米を中心にベンチャー企業を含む多くの企業が参入する可能性があります。競合他社の有する医薬品候補物質の研究開発が当社の有する医薬品候補物質と同じ疾患領域で先行した場合又は競合新薬が上市された場合、当社の開発品の競争力が低下する可能性があります。その結果として、当社が進める臨床試験の被験者登録が停滞する等により臨床試験が遅延する可能性若しくは目標被験者数に届かない等により臨床試験が中止となる可能性、導出していた場合はライセンス契約解約の可能性又は上市後に想定したロイヤリティが得られない可能性があり、当社の事業戦略や経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。 (4) 研究開発活動について ① 製造物責任のリスクについて 臨床試験実施中に使用する治験薬、大学及びその提携施設が実施する医師主導治験用に提供する治験薬等並びに当社が研究開発した上市後の医薬品に起因して、未知の重篤な健康被害を被験者又は患者に与えた場合、製造物責任を当社が負う可能性又は治験薬等の提供先若しくは導出先の企業から損害賠償の請求を受ける可能性があります。これらの場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ② 副作用に関するリスクについて 当社が研究開発を実施した治験薬及び上市後の医薬品で、臨床試験段階から製品上市後にかけて、予期せぬ重篤な副作用が発現する可能性があります。重篤な副作用が発現した場合、製造物責任等の損害賠償リスクが発生する可能性がありますが、保険の加入などにより財政的な影響を回避又は最小限にしていくよう対応しておりますが、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ③ 研究開発施設等における事故等の発生に関するリスクについて 当社は、本店及び事業所に研究開発施設を有しております。事故防止の管理教育は徹底しておりますが、何らかの原因により火災や環境汚染事故、感染等が発生した場合、研究開発活動の中断、停止、又は、損害賠償や風評被害等重大な損失を招く可能性があります。また、当社は、経営の機動性・効率性の観点、コスト低減や専門性の高い分野における協業などの観点から、研究開発業務の一部を専門機関である外部委託先(CRO-医薬品開発業務受託機関、治験実施施設、原薬・製剤の製造業者等)に委託しており、これら外部委託先において何らかの原因により火災や環境汚染事故等が発生した場合にも、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (5) 知的財産権について ① 特許の状況について 現在出願中の特許については、特許出願時に特許性等に関する調査を行っておりますが、すべてのものが特許として成立するとは限りません。出願中の特許が成立しなかった場合又は登録された特許権が無効化された場合、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。また、特許の出願は、特許の内容、対象国などについて費用対効果を考慮して行いますので、研究開発で得られたすべての特許を出願するものではありません。また、出願費用・維持費用等のコストを回収できない可能性があります。 なお、当社のパイプラインにおいて、その実施に支障又は支障をきたす可能性のある事項は、当社が調査した限りにおいて存在しておりません。 ② 知的財産権に関する訴訟及びクレーム等について 本書提出日現在において、当社の事業に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレームといった問題が発生した事実はありません。当社は、弁護士及び弁理士との連携を図って可能な限り特許侵害・被侵害の発生リスクを軽減する対策を講じております。 ただし、今後において当社が第三者との間の法的紛争に巻き込まれた場合、弁護士等と協議のうえ、その内容によって個別に対応策を検討していく方針でありますが、解決に時間及び多大の費用を要する可能性があり、場合によっては当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (6) 研究開発費が多額の見通しであることについて 当社による医薬品候補物質の研究開発の期間は長期間にわたります。また、研究開発の期間においては非常に多くの実証・確認すべき事項があること、また当社では日本国内のみならず海外においても研究開発活動を行っていることなどから研究開発費は多額となる見通しであります。 製薬企業等とのライセンス契約から発生する契約一時金収入、マイルストン収入、ロイヤリティ収入を研究開発中のパイプライン及び新規パイプラインに再投資することを事業及び資金サイクルとしていくこととしておりますが、製薬企業等との契約締結が想定通りに進まない場合又は既存のパイプラインにおいて想定以上の研究開発費が必要となった場合などにおいては、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (7) 社内体制について ① 小規模組織であることについて 当社は、役員8名(取締役5名、監査役3名)、従業員は32名(2023年3月31日現在)であり小規模な組織となっており、内部管理体制も規模に応じたものとなっております。人員については、研究開発の状況に応じて増員を図っていく予定であり、内部管理体制も規模に応じて体制の強化を図っていく予定であります。しかし、小規模組織のため、役員はじめ従業員においてもそれぞれが重要な役割を持って業務に従事しており、特定の役員・従業員への過度な負担・依存とならないよう経営組織の強化を図る予定でありますが、退任・退職により人材が流出した場合、長期休養等により長期間業務の遂行が困難となった場合、代替要員を適時に確保できない場合、業務の引継ぎが不十分となった場合などにおいては、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ② 情報管理について 当社の事業においては、研究開発におけるデータ、ノウハウ、技術など、経理業務における財務データ、人事業務における役員、社員に関する情報などは非常に重要な機密事項になります。また、業務を通して入手した個人情報も重要な機密事項となります。その機密事項の流出リスクを低減するために、機密事項を取り扱う役員、社員に対しては規程等を整備し、情報管理の重要性を周知徹底するとともに、取引先等と守秘義務に関する契約を締結するなど、厳重な情報管理に努めております。 しかしながら、当社の通信インフラの破壊や故障などにより当社が利用しているシステム全般が正常に稼働しない状況に陥ってしまった場合、システムに不具合が発生した場合、又は役員・職員、取引先等により情報管理が十分に遵守されず、重要な機密情報・個人情報などが漏えいした場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (8) その他 ① 新株予約権にかかる事項 当社は、優秀な人材を確保するため、また当社の事業及び研究開発活動へのモチベーションの維持・向上を目的として、新株予約権(ストック・オプション)を役員、社員及び社外の協力者等に付与しております。今後においても上記の目的のため新たに新株予約権を付与していく予定であります。また、研究開発領域の拡大に伴い、研究開発費及び事業運営経費が多額に必要となることから新株予約権を活用した資金調達を実施する可能性があります。これらの新株予約権が行使された場合には、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。なお、当社が発行した新株予約権にかかる潜在的株式の数は790,900株(2023年5月31日現在)であり、発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は1.26%であります。 ② 資金使途にかかる事項 2015年10月の株式上場時における公募増資の資金使途につきましては、主にGRN-1201の臨床開発試験、新規パイプライン導入のための研究開発費及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。また、2016年5月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、主にGRN-1201の新規適応症への新規パイプラインに関する臨床開発試験、新規パイプラインの探索・研究開発のための研究開発費、M&A資金及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。2017年11月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、がん免疫治療領域における研究開発費用及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。2020年4月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、次世代型へのシフトを進める「ワクチン」、固形がんへの展開を図るiPS-NKT細胞療法やHER2 CAR-T細胞療法を始めとする「細胞医薬」、抗PD-1抗体の次に来る免疫調整因子を標的とする「抗体」の3分野のがん免疫治療薬パイプライン開発の推進に充当しております。2022年1月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、次の開発ステージに移行するとともに新規展開を含む細胞医薬と抗体医薬パイプラインの開発に充当しております。しかしながら、今後において事業環境の変化等により、また、上記本項目「事業等のリスク」に記載のリスクの発生により、たとえ計画通りに使用した場合でも、想定している成果を達成できない可能性があります。 なお、当社が携わる研究開発の領域においては、技術開発の変化など外部環境が急速に変化する可能性があります。新薬の上市、法令等の改正、当社の研究開発・臨床試験の進捗状況によっては、上記の資金使途以外の事象に資金を充当する可能性があり、今後の戦略の策定において新たな事象の発生、新たな戦略の実行により、研究開発資金が想定以上に増加する可能性もあります。 ③ M&A等(買収、合併等)による事業拡大に関する事項 当社は、事業拡大へ向けた新たな経営資源を取得するため、また保有する経営資源の効率的運用と企業価値を最大化するため、M&A等を活用して事業規模の拡大を図ることを検討してまいります。M&A候補の選定に当たりましては、詳細なデューデリジェンスを行うことにより極力リスクを回避してまいりますが、買収後の偶発債務の発生や、のれんが発生する場合は買収後の事業環境や競合状況の変化等により想定通りの効果が得られない場合にのれんの減損損失を計上する等、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。 ④ 資金調達にかかる事項 当社のパイプラインの研究開発が完了し製品化となるまでまだ長期間を要しますので、今後も多額の資金調達を必要とします。この期間において、事業計画の修正を必要とする状況になった場合、資金不足が生じる可能性があります。その場合、公的補助金の活用や日本国内のみならず海外企業・機関を含めた新規提携契約の締結、新株発行等により資金需要に対応していく予定であります。しかしながら、適切なタイミングで資金調達ができなかった場合には、当社の事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。 また、今後において、さらなる事業拡大等のための資金調達の方法として新株発行や新株予約権付社債などを発行する可能性があります。新株等発行の結果、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。 ⑤ 自然災害について 当社は、東京都千代田区及び神奈川県川崎市に事業所及び研究施設を設けております。当社の事業地域で地震等の大規模な災害が発生した場合には、不測の事態の発生により事業活動が停滞する可能性があります。いずれかの地域で大規模な災害が発生した場合でも、いずれかで業務を継続できる体制となっており、また電子データ等のバックアップも前述の各地域以外の場所に設置しております。しかしながら、自然災害の規模、状況によっては、当社及び外部委託先の設備・インフラが支障をきたし稼働できない状況、従業員等が出社できない状況など一時的又は長期間業務が停止し、臨床開発及び事業活動を一時的又は長期間休止せざるを得ない状況が発生した場合には、当社の臨床開発、事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ⑥ 新型コロナウイルス感染症拡大の影響 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、当社の事業所及び研究施設並びに国内外の臨床試験・非臨床試験・製造委託先及び共同研究開発先社員等の罹患や移動制限・自粛等に伴う要員不足や原材料の納入遅延、並びに製造機能や物流・卸機能の停滞が生じ、結果として研究開発活動に影響を及ぼす可能性があります。また、臨床試験施設においても感染拡大回避のための新規登録の一時中断や来院制限の措置が取られ、現在進行中または新規に立ち上げようとしている臨床試験の遅延等の発生の可能性があります。当社は、リスク情報共有会議を立ち上げ、頻回開催し、当社の国内・海外の製造委託先、共同研究開発のパートナー及び臨床試験施設の状況確認やビジネスにおける影響等について、情報の把握と対応の検討、経営レベルでの議論と意思決定を行っています。
FY2022|6,829 文字
2 【事業等のリスク】当社の事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。また、当社として必ずしも重要なリスクと考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で又は当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、それらのすべてについて回避できる保証はありません。また、以下の記載内容は当社のリスクすべてを網羅するものではありませんのでご留意ください。なお、本項記載の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。 (1) 創薬事業全般にかかるリスクについて 当社の手掛ける創薬事業では、一つひとつの新規医薬品候補物質の研究開発が、シーズの創製から規制当局の承認を得て医薬品として製造販売に至るまで、薬事規制等に則って探索的研究から第三相臨床試験まで段階を踏みながら進められ、全体として長期間に及ぶとともに多額の資金を必要とします。そのため、財務状況への負荷の蓄積をところどころで緩和し、持続可能な成長を実現させるために、当社は医薬品候補物質毎に、シーズの創製や創薬コンセプト証明に集中し、大掛かりな組織体制を必要とする後期臨床試験以降は、製造販売網を有する製薬企業にライセンスアウトして早期収益化を図る事業モデルを採っています。 ライセンスアウトは、開発の段階毎に目標とする試験成績が積み上げられていくことが前提となるので、いずれにせよ研究開発の進捗がライセンスアウトの成否を大きく左右します。そのため、試験成績の目標未達、開発が先行する競合新薬候補が及ぼす影響や、技術革新がもたらす当該技術の陳腐化等により、研究開発が進行遅延若しくは終了・中止を免れない状況になった場合には、ライセンスアウトが成立しなくなる可能性があり、成立した後でも、ライセンス契約解消若しくはロイヤリティ収入の低迷の可能性があります。その場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (2) 法的規制等にかかる不確実性について 当社が携わる研究開発領域は、研究開発を実施する国ごとに薬事に係る法律、薬価等が関係する医療保険制度及びその他の関係法規・法令による規制が存在します。当社の事業計画・研究開発計画は、現行の薬事関連法規・法令や規制当局の承認・認可の基準(Good Laboratory Practice、Good Manufacturing Practice、Good Clinical Practice等)を前提に作成しておりますが、これらの法律・法令及び基準は技術の発展・市場の動向などにより適宜改定されます。これにより既存の研究開発の体制(組織的な体制、製造方法、開発手法、臨床試験の進め方、追加試験を行う必要性の発生など)の変更が必要となる場合、その体制の変更に速やかに対処できず研究開発が遅延・中止となるリスク、人員確保や設備投資に計画外の追加資金が必要となり、追加資金確保のために新たな資金調達が必要となるリスクがあり、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (3) 競合について 当社が携わる研究開発領域は、急激な市場規模の拡大が見込まれており、欧米を中心にベンチャー企業を含む多くの企業が参入する可能性があります。競合他社の有する医薬品候補物質の研究開発が当社の有する医薬品候補物質と同じ疾患領域で先行した場合又は競合新薬が上市された場合、当社の開発品の競争力が低下する可能性があります。その結果として、当社が進める臨床試験の被験者登録が停滞する等により臨床試験が遅延する可能性若しくは目標被験者数に届かない等により臨床試験が中止となる可能性、導出していた場合はライセンス契約解約の可能性又は上市後に想定したロイヤリティが得られない可能性があり、当社の事業戦略や経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。 (4) 研究開発活動について ① 製造物責任のリスクについて 臨床試験実施中に使用する治験薬、大学及びその提携施設が実施する医師主導治験用に提供する治験薬等並びに当社が研究開発した上市後の医薬品に起因して、未知の重篤な健康被害を被験者又は患者に与えた場合、製造物責任を当社が負う可能性又は治験薬等の提供先若しくは導出先の企業から損害賠償の請求を受ける可能性があります。これらの場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ② 副作用に関するリスクについて 当社が研究開発を実施した治験薬及び上市後の医薬品で、臨床試験段階から製品上市後にかけて、予期せぬ重篤な副作用が発現する可能性があります。重篤な副作用が発現した場合、製造物責任等の損害賠償リスクが発生する可能性がありますが、保険の加入などにより財政的な影響を回避又は最小限にしていくよう対応しておりますが、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ③ 研究開発施設等における事故等の発生に関するリスクについて 当社は、本店及び事業所に研究開発施設を有しております。事故防止の管理教育は徹底しておりますが、何らかの原因により火災や環境汚染事故、感染等が発生した場合、研究開発活動の中断、停止、又は、損害賠償や風評被害等重大な損失を招く可能性があります。また、当社は、経営の機動性・効率性の観点、コスト低減や専門性の高い分野における協業などの観点から、研究開発業務の一部を専門機関である外部委託先(CRO-医薬品開発業務受託機関、治験実施施設、原薬・製剤の製造業者等)に委託しており、これら外部委託先において何らかの原因により火災や環境汚染事故等が発生した場合にも、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能があります。 (5) 知的財産権について ① 特許の状況について 現在出願中の特許については、特許出願時に特許性等に関する調査を行っておりますが、すべてのものが特許として成立するとは限りません。出願中の特許が成立しなかった場合又は登録された特許権が無効化された場合、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。また、特許の出願は、特許の内容、対象国などについて費用対効果を考慮して行いますので、研究開発で得られたすべての特許を出願するものではありません。また、出願費用・維持費用等のコストを回収できない可能性があります。 なお、当社のパイプラインにおいて、その実施に支障又は支障をきたす可能性のある事項は、当社が調査した限りにおいて存在しておりません。 ② 知的財産権に関する訴訟及びクレーム等について 本書提出日現在において、当社の事業に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレームといった問題が発生した事実はありません。当社は、弁護士及び弁理士との連携を図って可能な限り特許侵害・被侵害の発生リスクを軽減する対策を講じております。 ただし、今後において当社が第三者との間の法的紛争に巻き込まれた場合、弁護士等と協議のうえ、その内容によって個別に対応策を検討していく方針でありますが、解決に時間及び多大の費用を要する可能性があり、場合によっては当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (6) 研究開発費が多額の見通しであることについて 当社による医薬品候補物質の研究開発の期間は長期間にわたります。また、研究開発の期間においては非常に多くの実証・確認すべき事項があること、また当社では日本国内のみならず海外においても研究開発活動を行っていることなどから研究開発費は多額となる見通しであります。 製薬企業等とのライセンス契約から発生する契約一時金収入、マイルストン収入、ロイヤリティ収入を研究開発中のパイプライン及び新規パイプラインに再投資することを事業及び資金サイクルとしていくこととしておりますが、製薬企業等との契約締結が想定通りに進まない場合又は既存のパイプラインにおいて想定以上の研究開発費が必要となった場合などにおいては、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (7) 社内体制について ① 小規模組織であることについて 当社は、役員7名(取締役4名、監査役3名)、従業員は38名(2022年3月31日現在)であり小規模な組織となっており、内部管理体制も規模に応じたものとなっております。人員については、研究開発の状況に応じて増員を図っていく予定であり、内部管理体制も規模に応じて体制の強化を図っていく予定であります。しかし、小規模組織のため、役員はじめ従業員においてもそれぞれが重要な役割を持って業務に従事しており、特定の役員・従業員への過度な負担・依存とならないよう経営組織の強化を図る予定でありますが、退任・退職により人材が流出した場合、長期休養等により長期間業務の遂行が困難となった場合、代替要員を適時に確保できない場合、業務の引継ぎが不十分となった場合などにおいては、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ② 情報管理について 当社の事業においては、研究開発におけるデータ、ノウハウ、技術など、経理業務における財務データ、人事業務における役員、社員に関する情報などは非常に重要な機密事項になります。また、業務を通して入手した個人情報も重要な機密事項となります。その機密事項の流出リスクを低減するために、機密事項を取り扱う役員、社員に対しては規程等を整備し、情報管理の重要性を周知徹底するとともに、取引先等と守秘義務に関する契約を締結するなど、厳重な情報管理に努めております。 しかしながら、当社の通信インフラの破壊や故障などにより当社が利用しているシステム全般が正常に稼働しない状況に陥ってしまった場合、システムに不具合が発生した場合、又は役員・職員、取引先等により情報管理が十分に遵守されず、重要な機密情報・個人情報などが漏えいした場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (8) その他 ① 新株予約権にかかる事項 当社は、優秀な人材を確保するため、また当社の事業及び研究開発活動へのモチベーションの維持・向上を目的として、新株予約権(ストック・オプション)を役員、社員及び社外の協力者等に付与しております。今後においても上記の目的のため新たに新株予約権を付与していく予定であります。また、研究開発領域の拡大に伴い、研究開発費及び事業運営経費が多額に必要となることから新株予約権を活用した資金調達を実施する可能性があります。これらの新株予約権が行使された場合には、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。 なお、当社が発行した新株予約権にかかる潜在的株式の数は7,131,500株(2022年5月31日現在)であり、発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は12.61%であります。 ② 資金使途にかかる事項 2015年10月の株式上場時における公募増資の資金使途につきましては、主にGRN-1201の臨床開発試験、新規パイプライン導入のための研究開発費及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。また、2016年5月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、主にGRN-1201の新規適応症への新規パイプラインに関する臨床開発試験、新規パイプラインの探索・研究開発のための研究開発費、M&A資金及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。2017年11月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、がん免疫治療領域における研究開発費用及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。2020年4月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、次世代型へのシフトを進める「ワクチン」、固形がんへの展開を図るiPS-NKT細胞療法やHER2 CAR-T細胞療法を始めとする「細胞医薬」、抗PD-1抗体の次に来る免疫調整因子を標的とする「抗体」の3分野のがん免疫治療薬パイプライン開発の推進に充当しております。2022年1月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、次の開発ステージに移行するとともに新規展開を含む細胞医薬と抗体医薬パイプラインの開発に充当しております。しかしながら、今後において事業環境の変化等により、また、上記本項目「事業等のリスク」に記載のリスクの発生により、たとえ計画通りに使用した場合でも、想定している成果を達成できない可能性があります。 なお、当社が携わる研究開発の領域においては、技術開発の変化など外部環境が急速に変化する可能性があります。新薬の上市、法令等の改正、当社の研究開発・臨床試験の進捗状況によっては、上記の資金使途以外の事象に資金を充当する可能性があり、今後の戦略の策定において新たな事象の発生、新たな戦略の実行により、研究開発資金が想定以上に増加する可能性もあります。 ③ M&A等(買収、合併等)による事業拡大に関する事項 当社は、事業拡大へ向けた新たな経営資源を取得するため、また保有する経営資源の効率的運用と企業価値を最大化するため、M&A等を活用して事業規模の拡大を図ること検討してまいります。M&A候補の選定に当たりましては、詳細なデューデリジェンスを行うことにより極力リスクを回避してまいりますが、買収後の偶発債務の発生や、のれんが発生する場合は買収後の事業環境や競合状況の変化等により想定通りの効果が得られない場合にのれんの減損損失を計上する等、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。 ④ 資金調達にかかる事項 当社のパイプラインの研究開発が完了し製品化となるまでまだ長期間を要しますので、今後も多額の資金調達を必要とします。この期間において、事業計画の修正を必要とする状況になった場合、資金不足が生じる可能性があります。その場合、公的補助金の活用や日本国内のみならず海外企業・機関を含めた新規提携契約の締結、新株発行等により資金需要に対応していく予定であります。しかしながら、適切なタイミングで資金調達ができなかった場合には、当社の事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。 また、今後において、さらなる事業拡大等のための資金調達の方法として新株発行や新株予約権付社債などを発行する可能性があります。新株等発行の結果、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。 ⑤ 自然災害について 当社は、東京都千代田区及び神奈川県川崎市に事業所及び研究施設を設けております。当社の事業地域で地震等の大規模な災害が発生した場合には、不測の事態の発生により事業活動が停滞する可能性があります。いずれかの地域で大規模な災害が発生した場合でも、いずれかで業務を継続できる体制となっており、また電子データ等のバックアップも前述の各地域以外の場所に設置しております。しかしながら、自然災害の規模、状況によっては、当社及び外部委託先の設備・インフラが支障をきたし稼働できない状況、従業員等が出社できない状況など一時的又は長期間業務が停止し、臨床開発及び事業活動を一時的又は長期間休止せざるを得ない状況が発生した場合には、当社の臨床開発、事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ⑥ 新型コロナウイルス感染症拡大の影響 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、当社の事業所及び研究施設並びに国内外の臨床試験・非臨床試験・製造委託先及び共同研究開発先社員等の罹患や移動制限・自粛等に伴う要員不足や原材料の納入遅延、並びに製造機能や物流・卸機能の停滞が生じ、結果として研究開発活動に影響を及ぼす可能性があります。また、臨床試験施設においても感染拡大回避のための新規登録の一時中断や来院制限の措置が取られ、現在進行中または新規に立ち上げようとしている臨床試験の遅延等の発生の可能性があります。当社は、リスク情報共有会議を立ち上げ、頻回開催し、当社の国内・海外の製造委託先、共同研究開発のパートナー及び臨床試験施設の状況確認やビジネスにおける影響等について、情報の把握と対応の検討、経営レベルでの議論と意思決定を行っています。
FY2021|6,737 文字
2 【事業等のリスク】当社の事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。また、当社として必ずしも重要なリスクと考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で又は当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、それらのすべてについて回避できる保証はありません。また、以下の記載内容は当社のリスクすべてを網羅するものではありませんのでご留意ください。なお、本項記載の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。 (1) 創薬事業全般にかかるリスクについて 当社の手掛ける創薬事業では、一つ一つの新規医薬品候補物質の研究開発が、シーズの創製から規制当局の承認を得て医薬品として製造販売に至るまで、薬事規制等に則って探索的研究から第三相臨床試験まで段階を踏みながら進められ、全体として長期間におよぶとともに多額の資金を必要とします。そのため、財務状況への負荷の蓄積をところどころで緩和し、持続可能な成長を実現させるために、当社は医薬品候補物質毎に、シーズの創製や創薬コンセプト証明に集中し、大掛かりな組織体制を必要とする後期臨床試験以降は、製造販売網を有する製薬企業にライセンスアウトして早期収益化を図る事業モデルを採っています。 ライセンスアウトは、開発の段階毎に目標とする試験成績が積み上げられていくことが前提となるので、いずれにせよ研究開発の進捗がライセンスアウトの成否を大きく左右します。そのため、試験成績の目標未達、開発が先行する競合新薬候補が及ぼす影響や、技術革新がもたらす当該技術の陳腐化等により、研究開発が進行遅延若しくは終了・中止を免れない状況になった場合には、ライセンスアウトが成立しなくなる可能性があり、成立した後でも、ライセンス契約解消若しくはロイヤリティ収入の低迷の可能性があります。その場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (2) 法的規制等にかかる不確実性について 当社が携わる研究開発領域は、研究開発を実施する国ごとに薬事に係る法律、薬価等が関係する医療保険制度及びその他の関係法規・法令による規制が存在します。当社の事業計画・研究開発計画は、現行の薬事関連法規・法令や規制当局の承認・認可の基準(Good Laboratory Practice、Good Manufacturing Practice、Good Clinical Practice等)を前提に作成しておりますが、これらの法律・法令及び基準は技術の発展・市場の動向などにより適宜改定されます。これにより既存の研究開発の体制(組織的な体制、製造方法、開発手法、臨床試験の進め方、追加試験を行う必要性の発生など)の変更が必要となる場合、その体制の変更に速やかに対処できず研究開発が遅延・中止となるリスク、人員確保や設備投資に計画外の追加資金が必要となり、追加資金確保のために新たな資金調達が必要となるリスクがあり、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (3) 競合について 当社が携わる研究開発領域は、急激な市場規模の拡大が見込まれており、欧米を中心にベンチャー企業を含む多くの企業が参入する可能性があります。競合他社の有する医薬品候補物質の研究開発が当社の有する医薬品候補物質と同じ疾患領域で先行した場合又は競合新薬が上市された場合、当社の開発品の競争力が低下する可能性があります。その結果として、当社が進める臨床試験の被験者登録が停滞する等により臨床試験が遅延する可能性若しくは目標被験者数に届かない等により臨床試験が中止となる可能性、導出していた場合はライセンス契約解約の可能性又は上市後に想定したロイヤリティが得られない可能性があり、当社の事業戦略や経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。 (4) 研究開発活動について ① 製造物責任のリスクについて 臨床試験実施中に使用する治験薬、大学及びその提携施設が実施する医師主導治験用に提供する治験薬等並びに当社が研究開発した上市後の医薬品に起因して、未知の重篤な健康被害を被験者又は患者に与えた場合、製造物責任を当社が負う可能性又は治験薬等の提供先若しくは導出先の企業から損害賠償の請求を受ける可能性があります。これらの場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ② 副作用に関するリスクについて 当社が研究開発を実施した治験薬及び上市後の医薬品で、臨床試験段階から製品上市後にかけて、予期せぬ重篤な副作用が発現する可能性があります。重篤な副作用が発現した場合、製造物責任等の損害賠償リスクが発生する可能性がありますが、保険の加入などにより財政的な影響を回避又は最小限にしていくよう対応しておりますが、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ③ 研究開発施設等における事故等の発生に関するリスクについて 当社は、本店及び事業所に研究開発施設を有しております。事故防止の管理教育は徹底しておりますが、何らかの原因により火災や環境汚染事故、感染等が発生した場合、研究開発活動の中断、停止、又は、損害賠償や風評被害等重大な損失を招く可能性があります。また、当社は、経営の機動性・効率性の観点、コスト低減や専門性の高い分野における協業などの観点から、研究開発業務の一部を専門機関である外部委託先(CRO-医薬品開発業務受託機関、治験実施施設、原薬・製剤の製造業者等)に委託しており、これら外部委託先において何らかの原因により火災や環境汚染事故等が発生した場合にも、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能があります。 (5) 知的財産権について ① 特許の状況について 現在出願中の特許については、特許出願時に特許性等に関する調査を行っておりますが、すべてのものが特許として成立するとは限りません。出願中の特許が成立しなかった場合又は登録された特許権が無効化された場合、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。また、特許の出願は、特許の内容、対象国などについて費用対効果を考慮して行いますので、研究開発で得られたすべての特許を出願するものではありません。また、出願費用・維持費用等のコストを回収できない可能性があります。 なお、当社のパイプラインにおいて、その実施に支障又は支障をきたす可能性のある事項は、当社が調査した限りにおいて存在しておりません。 ② 知的財産権に関する訴訟及びクレーム等について 本書提出日現在において、当社の事業に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレームといった問題が発生した事実はありません。当社は、弁護士及び弁理士との連携を図って可能な限り特許侵害・被侵害の発生リスクを軽減する対策を講じております。 ただし、今後において当社が第三者との間の法的紛争に巻き込まれた場合、弁護士等と協議のうえ、その内容によって個別に対応策を検討していく方針でありますが、解決に時間及び多大の費用を要する可能性があり、場合によっては当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (6) 研究開発費が多額の見通しであることについて 当社による医薬品候補物質の研究開発の期間は長期間にわたります。また、研究開発の期間においては非常に多くの実証・確認すべき事項があること、また当社では日本国内のみならず海外においても研究開発活動を行っていることなどから研究開発費は多額となる見通しであります。 製薬企業等とのライセンス契約から発生する契約一時金収入、マイルストン収入、ロイヤリティ収入を研究開発中のパイプライン及び新規パイプラインに再投資することを事業及び資金サイクルとしていくこととしておりますが、製薬企業等との契約締結が想定通りに進まない場合又は既存のパイプラインにおいて想定以上の研究開発費が必要となった場合などにおいては、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (7) 社内体制について ① 小規模組織であることについて 当社は、役員7名(取締役4名、監査役3名)、従業員は44名(2021年3月31日現在)であり小規模な組織となっており、内部管理体制も規模に応じたものとなっております。人員については、研究開発の状況に応じて増員を図っていく予定であり、内部管理体制も規模に応じて体制の強化を図っていく予定であります。しかし、小規模組織のため、役員はじめ従業員においてもそれぞれが重要な役割を持って業務に従事しており、特定の役員・従業員への過度な負担・依存とならないよう経営組織の強化を図る予定でありますが、退任・退職により人材が流出した場合、長期休養等により長期間業務の遂行が困難となった場合、代替要員を適時に確保できない場合、業務の引継ぎが不十分となった場合などにおいては、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ② 情報管理について 当社の事業においては、研究開発におけるデータ、ノウハウ、技術など、経理業務における財務データ、人事業務における役員、社員に関する情報などは非常に重要な機密事項になります。また、業務を通して入手した個人情報も重要な機密事項となります。その機密事項の流出リスクを低減するために、機密事項を取り扱う役員、社員に対しては規程等を整備し、情報管理の重要性を周知徹底するとともに、取引先等と守秘義務に関する契約を締結するなど、厳重な情報管理に努めております。 しかしながら、当社の通信インフラの破壊や故障などにより当社が利用しているシステム全般が正常に稼働しない状況に陥ってしまった場合、システムに不具合が発生した場合、又は役員・職員、取引先等により情報管理が十分に遵守されず、重要な機密情報・個人情報などが漏えいした場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (8) その他 ① 新株予約権にかかる事項 当社は、優秀な人材を確保するため、また当社の事業及び研究開発活動へのモチベーションの維持・向上を目的として、新株予約権(ストック・オプション)を役員、社員及び社外の協力者等に付与しております。今後においても上記の目的のため新たに新株予約権を付与していく予定であります。また、研究開発領域の拡大に伴い、研究開発費及び事業運営経費が多額に必要となることから新株予約権を活用した資金調達を実施する可能性があります。これらの新株予約権が行使された場合には、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。 なお、当社が発行した新株予約権にかかる潜在的株式の数は2,372,600株(2021年5月31日現在)であり、発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は4.67%であります。 ② 資金使途にかかる事項 2015年10月の株式上場時における公募増資の資金使途につきましては、主にGRN-1201の臨床開発試験、新規パイプライン導入のための研究開発費及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。また、2016年5月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、主にGRN-1201の新規適応症への新規パイプラインに関する臨床開発試験、新規パイプラインの探索・研究開発のための研究開発費、M&A資金及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。2017年11月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、がん免疫治療領域における研究開発費用及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。さらに、2020年4月から実施している第三者割当増資の資金使途につきましては、次世代型へのシフトを進める「ワクチン」、固形がんへの展開を図るiPS-NKT細胞療法やHER2 CAR-Tを始めとする「細胞医薬」、抗PD-1抗体の次に来る免疫調整因子を標的とする「抗体」の3分野のがん免疫治療薬パイプライン開発の推進に充当しております。 しかしながら、今後において事業環境の変化等により、また、上記本項目「事業等のリスク」に記載のリスクの発生により、たとえ計画通りに使用した場合でも、想定している成果を達成できない可能性があります。 なお、当社が携わる研究開発の領域においては、技術開発の変化など外部環境が急速に変化する可能性があります。新薬の上市、法令等の改正、当社の研究開発・臨床試験の進捗状況によっては、上記の資金使途以外の事象に資金を充当する可能性があり、今後の戦略の策定において新たな事象の発生、新たな戦略の実行により、研究開発資金が想定以上に増加する可能性もあります。 ③ M&A等(買収、合併等)による事業拡大に関する事項 当社は、事業拡大へ向けた新たな経営資源を取得するため、また保有する経営資源の効率的運用と企業価値を最大化するため、M&A等を活用して事業規模の拡大を図ること検討してまいります。M&A候補の選定に当たりましては、詳細なデューデリジェンスを行うことにより極力リスクを回避してまいりますが、買収後の偶発債務の発生や、のれんが発生する場合は買収後の事業環境や競合状況の変化等により想定通りの効果が得られない場合にのれんの減損損失を計上する等、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。 ④ 資金調達にかかる事項 当社のパイプラインの研究開発が完了し製品化となるまでまだ長期間を要しますので、今後も多額の資金調達を必要とします。この期間において、事業計画の修正を必要とする状況になった場合、資金不足が生じる可能性があります。その場合、公的補助金の活用や日本国内のみならず海外企業・機関を含めた新規提携契約の締結、新株発行等により資金需要に対応していく予定であります。しかしながら、適切なタイミングで資金調達ができなかった場合には、当社の事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。 また、今後において、さらなる事業拡大等のための資金調達の方法として新株発行や新株予約権付社債などを発行する可能性があります。新株等発行の結果、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。 ⑤ 自然災害について 当社は、東京都千代田区及び神奈川県川崎市に事業所及び研究施設を設けております。当社の事業地域で地震等の大規模な災害が発生した場合には、不測の事態の発生により事業活動が停滞する可能性があります。いずれかの地域で大規模な災害が発生した場合でも、いずれかで業務を継続できる体制となっており、また電子データ等のバックアップも前述の各地域以外の場所に設置しております。しかしながら、自然災害の規模、状況によっては、当社及び外部委託先の設備・インフラが支障をきたし稼働できない状況、従業員等が出社できない状況など一時的又は長期間業務が停止し、臨床開発及び事業活動を一時的又は長期間休止せざるを得ない状況が発生した場合には、当社の臨床開発、事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ⑥ 新型コロナウイルス感染拡大の影響 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、当社の事業所及び研究施設並びに国内外の臨床試験・非臨床試験・製造委託先及び共同研究開発先社員等の罹患や移動制限・自粛等に伴う要員不足や原材料の納入遅延、並びに製造機能や物流・卸機能の停滞が生じ、結果として研究開発活動に影響を及ぼす可能性があります。また、臨床試験施設においても感染拡大回避のための新規登録の一時中断や来院制限の措置が取られ、現在進行中または新規に立ち上げようとしている臨床試験の遅延等の発生の可能性があります。当社は、リスク情報共有会議を立ち上げ、頻回開催し、当社の国内・海外の製造委託先、共同研究開発のパートナー及び臨床試験施設の状況確認やビジネスにおける影響等について、情報の把握と対応の検討、経営レベルでの議論と意思決定を行っています。
FY2020|6,577 文字
2 【事業等のリスク】当社の事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。また、当社として必ずしも重要なリスクと考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で又は当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、それらのすべてについて回避できる保証はありません。また、以下の記載内容は当社のリスクすべてを網羅するものではありませんのでご留意ください。なお、本項記載の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。 (1) 創薬事業全般にかかるリスクについて 当社の手掛ける創薬事業では、一つ一つの新規医薬品候補物質の研究開発が、シーズの創製から規制当局の承認を得て医薬品として製造販売に至るまで、薬事規制等に則って探索的研究から第三相臨床試験まで段階を踏みながら進められ、全体として長期間におよぶとともに多額の資金を必要とします。そのため、財務状況への負荷の蓄積をところどころで緩和し、持続可能な成長を実現させるために、当社は医薬品候補物質毎に、シーズの創製や創薬コンセプト証明に集中し、大掛かりな組織体制を必要とする後期臨床試験以降は、製造販売網を有する製薬企業にライセンスアウトして早期収益化を図る事業モデルを採っています。 ライセンスアウトは、開発の段階毎に目標とする試験成績が積み上げられていくことが前提となるので、いずれにせよ研究開発の進捗がライセンスアウトの成否を大きく左右します。そのため、試験成績の目標未達、開発が先行する競合新薬候補が及ぼす影響や、技術革新がもたらす当該技術の陳腐化等により、研究開発が進行遅延若しくは終了・中止を免れない状況になった場合には、ライセンスアウトが成立しなくなる可能性があり、成立した後でも、ライセンス契約解消若しくはロイヤリティ収入の低迷の可能性があります。その場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (2) 法的規制等にかかる不確実性について 当社が携わる研究開発領域は、研究開発を実施する国ごとに薬事に係る法律、薬価等が関係する医療保険制度及びその他の関係法規・法令による規制が存在します。当社の事業計画・研究開発計画は、現行の薬事関連法規・法令や規制当局の承認・認可の基準(Good Laboratory Practice、Good Manufacturing Practice、Good Clinical Practice等)を前提に作成しておりますが、これらの法律・法令及び基準は技術の発展・市場の動向などにより適宜改定されます。これにより既存の研究開発の体制(組織的な体制、製造方法、開発手法、臨床試験の進め方、追加試験を行う必要性の発生など)の変更が必要となる場合、その体制の変更に速やかに対処できず研究開発が遅延・中止となるリスク、人員確保や設備投資に計画外の追加資金が必要となり、追加資金確保のために新たな資金調達が必要となるリスクがあり、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (3) 競合について 当社が携わる研究開発領域は、急激な市場規模の拡大が見込まれており、欧米を中心にベンチャー企業を含む多くの企業が参入する可能性があります。競合他社の有する医薬品候補物質の研究開発が当社の有する医薬品候補物質と同じ疾患領域で先行した場合又は競合新薬が上市された場合、当社の開発品の競争力が低下する可能性があります。その結果として、当社が進める臨床試験の被験者登録が停滞する等により臨床試験が遅延する可能性若しくは目標被験者数に届かない等により臨床試験が中止となる可能性、導出していた場合はライセンス契約解約の可能性又は上市後に想定したロイヤリティが得られない可能性があり、当社の事業戦略や経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。 (4) 研究開発活動について ① 製造物責任のリスクについて 臨床試験実施中に使用する治験薬、大学及びその提携施設が実施する医師主導治験用に提供する治験薬等並びに当社が研究開発した上市後の医薬品に起因して、未知の重篤な健康被害を被験者又は患者に与えた場合、製造物責任を当社が負う可能性又は治験薬等の提供先若しくは導出先の企業から損害賠償の請求を受ける可能性があります。これらの場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ② 副作用に関するリスクについて 当社が研究開発を実施した治験薬及び上市後の医薬品で、臨床試験段階から製品上市後にかけて、予期せぬ重篤な副作用が発現する可能性があります。重篤な副作用が発現した場合、製造物責任等の損害賠償リスクが発生する可能性がありますが、保険の加入などにより財政的な影響を回避又は最小限にしていくよう対応しておりますが、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ③ 研究開発施設等における事故等の発生に関するリスクについて 当社は、本店及び事業所に研究開発施設を有しております。事故防止の管理教育は徹底しておりますが、何らかの原因により火災や環境汚染事故、感染等が発生した場合、研究開発活動の中断、停止、又は、損害賠償や風評被害等重大な損失を招く可能性があります。また、当社は、経営の機動性・効率性の観点、コスト低減や専門性の高い分野における協業などの観点から、研究開発業務の一部を専門機関である外部委託先(CRO-医薬品開発業務受託機関、治験実施施設、原薬・製剤の製造業者等)に委託しており、これら外部委託先において何らかの原因により火災や環境汚染事故等が発生した場合にも、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能があります。 (5) 知的財産権について ① 特許の状況について 現在出願中の特許については、特許出願時に特許性等に関する調査を行っておりますが、すべてのものが特許として成立するとは限りません。出願中の特許が成立しなかった場合又は登録された特許権が無効化された場合、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。また、特許の出願は、特許の内容、対象国などについて費用対効果を考慮して行いますので、研究開発で得られたすべての特許を出願するものではありません。また、出願費用・維持費用等のコストを回収できない可能性があります。 なお、当社のパイプラインにおいて、その実施に支障又は支障をきたす可能性のある事項は、当社が調査した限りにおいて存在しておりません。 ② 知的財産権に関する訴訟及びクレーム等について 本書提出日現在において、当社の事業に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレームといった問題が発生した事実はありません。当社は、弁護士及び弁理士との連携を図って可能な限り特許侵害・被侵害の発生リスクを軽減する対策を講じております。 ただし、今後において当社が第三者との間の法的紛争に巻き込まれた場合、弁護士等と協議のうえ、その内容によって個別に対応策を検討していく方針でありますが、解決に時間及び多大の費用を要する可能性があり、場合によっては当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (6) 研究開発費が多額の見通しであることについて 当社による医薬品候補物質の研究開発の期間は長期間にわたります。また、研究開発の期間においては非常に多くの実証・確認すべき事項があること、また当社では日本国内のみならず海外においても研究開発活動を行っていることなどから研究開発費は多額となる見通しであります。 製薬企業等とのライセンス契約から発生する契約一時金収入、マイルストン収入、ロイヤリティ収入を研究開発中のパイプライン及び新規パイプラインに再投資することを事業及び資金サイクルとしていくこととしておりますが、製薬企業等との契約締結が想定通りに進まない場合又は既存のパイプラインにおいて想定以上の研究開発費が必要となった場合などにおいては、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (7) 社内体制について ① 小規模組織であることについて 当社は、役員7名(取締役4名、監査役3名)、従業員は44名(2020年3月31日現在)であり小規模な組織となっており、内部管理体制も規模に応じたものとなっております。人員については、研究開発の状況に応じて増員を図っていく予定であり、内部管理体制も規模に応じて体制の強化を図っていく予定であります。しかし、小規模組織のため、役員はじめ従業員においてもそれぞれが重要な役割を持って業務に従事しており、特定の役員・従業員への過度な負担・依存とならないよう経営組織の強化を図る予定でありますが、退任・退職により人材が流出した場合、長期休養等により長期間業務の遂行が困難となった場合、代替要員を適時に確保できない場合、業務の引継ぎが不十分となった場合などにおいては、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ② 情報管理について 当社の事業においては、研究開発におけるデータ、ノウハウ、技術など、経理業務における財務データ、人事業務における役員、社員に関する情報などは非常に重要な機密事項になります。また、業務を通して入手した個人情報も重要な機密事項となります。その機密事項の流出リスクを低減するために、機密事項を取り扱う役員、社員に対しては規程等を整備し、情報管理の重要性を周知徹底するとともに、取引先等と守秘義務に関する契約を締結するなど、厳重な情報管理に努めております。 しかしながら、当社の通信インフラの破壊や故障などにより当社が利用しているシステム全般が正常に稼働しない状況に陥ってしまった場合、システムに不具合が発生した場合、又は役員・職員、取引先等により情報管理が十分に遵守されず、重要な機密情報・個人情報などが漏えいした場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (8) その他 ① 新株予約権にかかる事項 当社は、優秀な人材を確保するため、また当社の事業及び研究開発活動へのモチベーションの維持・向上を目的として、新株予約権(ストック・オプション)を役員、社員及び社外の協力者等に付与しております。今後においても上記の目的のため新たに新株予約権を付与していく予定であります。また、研究開発領域の拡大に伴い、研究開発費及び事業運営経費が多額に必要となることから新株予約権を活用した資金調達を実施する可能性があります。これらの新株予約権が行使された場合には、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。 なお、当社が発行した新株予約権にかかる潜在的株式の数は10,708,600株(2020年5月31日現在)であり、発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は25.14%であります。 ② 資金使途にかかる事項 2015年10月の株式上場時における公募増資の資金使途につきましては、主にGRN-1201の臨床開発試験、新規パイプライン導入のための研究開発費及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。また、2016年5月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、主にGRN-1201の新規適応症への新規パイプラインに関する臨床開発試験、新規パイプラインの探索・研究開発のための研究開発費、M&A資金及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。さらに、2017年11月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、がん免疫治療領域における研究開発費用及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。 しかしながら、今後において事業環境の変化等により、また、上記本項目「事業等のリスク」に記載のリスクの発生により、たとえ計画通りに使用した場合でも、想定している成果を達成できない可能性があります。 なお、当社が携わる研究開発の領域においては、技術開発の変化など外部環境が急速に変化する可能性があります。新薬の上市、法令等の改正、当社の研究開発・臨床試験の進捗状況によっては、上記の資金使途以外の事象に資金を充当する可能性があり、今後の戦略の策定において新たな事象の発生、新たな戦略の実行により、研究開発資金が想定以上に増加する可能性もあります。 ③ M&A等(買収、合併等)による事業拡大に関する事項 当社は、事業拡大へ向けた新たな経営資源を取得するため、また保有する経営資源の効率的運用と企業価値を最大化するため、M&A等を活用して事業規模の拡大を図ること検討してまいります。M&A候補の選定に当たりましては、詳細なデューデリジェンスを行うことにより極力リスクを回避してまいりますが、買収後の偶発債務の発生や、のれんが発生する場合は買収後の事業環境や競合状況の変化等により想定通りの効果が得られない場合にのれんの減損損失を計上する等、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。 ④ 資金調達にかかる事項 当社のパイプラインの研究開発が完了し製品化となるまでまだ長期間を要しますので、今後も多額の資金調達を必要とします。この期間において、事業計画の修正を必要とする状況になった場合、資金不足が生じる可能性があります。その場合、公的補助金の活用や日本国内のみならず海外企業・機関を含めた新規提携契約の締結、新株発行等により資金需要に対応していく予定であります。しかしながら、適切なタイミングで資金調達ができなかった場合には、当社の事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。 また、今後において、さらなる事業拡大等のための資金調達の方法として新株発行や新株予約権付社債などを発行する可能性があります。新株等発行の結果、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。 ⑤ 自然災害について 当社は、東京都千代田区及び神奈川県川崎市に事業所及び研究施設を設けております。当社の事業地域で地震等の大規模な災害が発生した場合には、不測の事態の発生により事業活動が停滞する可能性があります。いずれかの地域で大規模な災害が発生した場合でも、いずれかで業務を継続できる体制となっており、また電子データ等のバックアップも前述の各地域以外の場所に設置しております。しかしながら、自然災害の規模、状況によっては、当社及び外部委託先の設備・インフラが支障をきたし稼働できない状況、従業員等が出社できない状況など一時的又は長期間業務が停止し、臨床開発及び事業活動を一時的又は長期間休止せざるを得ない状況が発生した場合には、当社の臨床開発、事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ⑥ 新型コロナウイルス感染拡大の影響 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、当社の事業所及び研究施設並びに国内外の臨床試験・非臨床試験・製造委託先及び共同研究開発先社員等の罹患や移動制限・自粛等に伴う要員不足や原材料の納入遅延、並びに製造機能や物流・卸機能の停滞が生じ、結果として研究開発活動に影響を及ぼす可能性があります。また、臨床試験施設においても感染拡大回避のための新規登録の一時中断や来院制限の措置が取られ、現在進行中または新規に立ち上げようとしている臨床試験の遅延等の発生の可能性があります。当社は、リスク情報共有会議を立ち上げ、頻回開催し、当社の国内・海外の製造委託先、共同研究開発のパートナー及び臨床試験施設の状況確認やビジネスにおける影響等について、情報の把握と対応の検討、経営レベルでの議論と意思決定を行っています。
FY2019|6,284 文字
2 【事業等のリスク】当社の事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。また、当社として必ずしも重要なリスクと考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で又は当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、それらのすべてについて回避できる保証はありません。また、以下の記載内容は当社のリスクすべてを網羅するものではありませんのでご留意ください。なお、本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。 (1) 創薬事業全般にかかるリスクについて 当社の手掛ける創薬事業では、一つ一つの新規医薬品候補物質の研究開発が、シーズの創製から規制当局の承認を得て医薬品として製造販売に至るまで、薬事規制等に則って探索的研究から第三相臨床試験まで段階を踏みながら進められ、全体として長期間におよぶとともに多額の資金を必要とします。そのため、財務状況への負荷の蓄積をところどころで緩和し、持続可能な成長を実現させるために、当社は医薬品候補物質毎に、シーズの創製や創薬コンセプト証明に集中し、大掛かりな組織体制を必要とする後期臨床試験以降は、製造販売網を有する製薬企業にライセンスアウトして早期収益化を図る事業モデルを採っています。 ライセンスアウトは、開発の段階毎に目標とする試験成績が積み上げられていくことが前提となるので、いずれにせよ研究開発の進捗がライセンスアウトの成否を大きく左右します。そのため、試験成績の目標未達、開発が先行する競合新薬候補が及ぼす影響や、技術革新がもたらす当該技術の陳腐化等により、研究開発が進行遅延若しくは終了・中止を免れない状況になった場合には、ライセンス・アウトが成立しなくなる可能性があり、成立した後でも、ライセンス契約解消若しくはロイヤルティ収入の低迷の可能性があります。その場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (2) 法的規制等にかかる不確実性について 当社が携わる研究開発領域は、研究開発を実施する国ごとに薬事に係る法律、薬価等が関係する医療保険制度及びその他の関係法規・法令による規制が存在します。当社の事業計画・研究開発計画は、現行の薬事関連法規・法令や規制当局の承認・認可の基準(Good Laboratory Practice、Good Manufacturing Practice、Good Clinical Practice等)を前提に作成しておりますが、これらの法律・法令及び基準は技術の発展・市場の動向などにより適宜改定されます。これにより既存の研究開発の体制(組織的な体制、製造方法、開発手法、臨床試験の進め方、追加試験を行う必要性の発生など)の変更が必要となる場合、その体制の変更に速やかに対処できず研究開発が遅延・中止となるリスク、人員確保や設備投資に計画外の追加資金が必要となり、追加資金確保のために新たな資金調達が必要となるリスクがあり、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (3) 競合について 当社が携わる研究開発領域は、急激な市場規模の拡大が見込まれており、欧米を中心にベンチャー企業を含む多くの企業が参入する可能性があります。競合他社の有する医薬品候補物質の研究開発が当社の有する医薬品候補物質と同じ疾患領域で先行した場合又は競合新薬が上市された場合、当社の開発品の競争力が低下する可能性があります。その結果として、当社が進める臨床試験の被験者登録が停滞する等により臨床試験が遅延する可能性若しくは目標被験者数に届かない等により臨床試験が中止となる可能性、導出していた場合はライセンス契約解約の可能性又は上市後に想定したロイヤリティが得られない可能性があり、当社の事業戦略や経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。 (4) 研究開発活動について ① 製造物責任のリスクについて 臨床試験実施中に使用する治験薬、大学及びその提携施設が実施する医師主導治験用に提供する治験薬等並びに当社が研究開発した上市後の医薬品に起因して、未知の重篤な健康被害を被験者又は患者に与えた場合、製造物責任を当社が負う可能性又は治験薬等の提供先若しくは導出先の企業から損害賠償の請求を受ける可能性があります。これらの場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ② 副作用に関するリスクについて 当社が研究開発を実施した治験薬及び上市後の医薬品で、臨床試験段階から製品上市後にかけて、予期せぬ重篤な副作用が発現する可能性があります。重篤な副作用が発現した場合、製造物責任等の損害賠償リスクが発生する可能性がありますが、保険の加入などにより財政的な影響を回避又は最小限にしていくよう対応しておりますが、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ③ 研究開発施設等における事故等の発生に関するリスクについて 当社は、本店及び事業所に研究開発施設を有しております。事故防止の管理教育は徹底しておりますが、何らかの原因により火災や環境汚染事故、感染等が発生した場合、研究開発活動の中断、停止、又は、損害賠償や風評被害等重大な損失を招く可能性があります。また、当社は、経営の機動性・効率性の観点、コスト低減や専門性の高い分野における協業などの観点から、研究開発業務の一部を専門機関である外部委託先(CRO-医薬品開発業務受託機関、治験実施施設、原薬・製剤の製造業者等)に委託しており、これら外部委託先において何らかの原因により火災や環境汚染事故等が発生した場合にも、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能があります。 (5) 知的財産権について ① 特許の状況について 現在出願中の特許については、特許出願時に特許性等に関する調査を行っておりますが、すべてのものが特許として成立するとは限りません。出願中の特許が成立しなかった場合又は登録された特許権が無効化された場合、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。また、特許の出願は、特許の内容、対象国などについて費用対効果を考慮して行いますので、研究開発で得られたすべての特許を出願するものではありません。また、出願費用・維持費用等のコストを回収できない可能性があります。 なお、当社のパイプラインにおいて、その実施に支障又は支障をきたす可能性のある事項は、当社が調査した限りにおいて存在しておりません。 ② 知的財産権に関する訴訟及びクレーム等について 本書提出日現在において、当社の事業に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレームといった問題が発生した事実はありません。当社は、弁護士及び弁理士との連携を図って可能な限り特許侵害・被侵害の発生リスクを軽減する対策を講じております。 ただし、今後において当社が第三者との間の法的紛争に巻き込まれた場合、弁護士等と協議のうえ、その内容によって個別に対応策を検討していく方針でありますが、解決に時間及び多大の費用を要する可能性があり、場合によっては当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (6) 研究開発費が多額の見通しであることについて 当社による医薬品候補物質の研究開発の期間は長期間にわたります。また、研究開発の期間においては非常に多くの実証・確認すべき事項があること、また当社では日本国内のみならず海外においても研究開発活動を行っていることなどから研究開発費は多額となる見通しであります。 製薬企業等とのライセンス契約から発生する契約一時金収入、マイルストン収入、ロイヤリティ収入を研究開発中のパイプライン及び新規パイプラインに再投資することを事業及び資金サイクルとしていくこととしておりますが、製薬企業等との契約締結が想定通りに進まない場合又は既存のパイプラインにおいて想定以上の研究開発費が必要となった場合などにおいては、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (7) 社内体制について ① 小規模組織であることについて 当社は、役員7名(取締役4名、監査役3名)、従業員は42名(2019年3月31日現在)であり小規模な組織となっており、内部管理体制も規模に応じたものとなっております。人員については、研究開発の状況に応じて増員を図っていく予定であり、内部管理体制も規模に応じて体制の強化を図っていく予定であります。しかし、小規模組織のため、役員はじめ従業員においてもそれぞれが重要な役割を持って業務に従事しており、特定の役員・従業員への過度な負担・依存とならないよう経営組織の強化を図る予定でありますが、退任・退職により人材が流出した場合、長期休養等により長期間業務の遂行が困難となった場合、代替要員を適時に確保できない場合、業務の引継ぎが不十分となった場合などにおいては、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ② 情報管理について 当社の事業においては、研究開発におけるデータ、ノウハウ、技術など、経理業務における財務データ、人事業務における役員、社員に関する情報などは非常に重要な機密事項になります。また、業務を通して入手した個人情報も重要な機密事項となります。その機密事項の流出リスクを低減するために、機密事項を取り扱う役員、社員に対しては規程等を整備し、情報管理の重要性を周知徹底するとともに、取引先等と守秘義務に関する契約を締結するなど、厳重な情報管理に努めております。 しかしながら、当社の通信インフラの破壊や故障などにより当社が利用しているシステム全般が正常に稼働しない状況に陥ってしまった場合、システムに不具合が発生した場合、又は役員・職員、取引先等により情報管理が十分に遵守されず、重要な機密情報・個人情報などが漏えいした場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (8) その他 ① 新株予約権にかかる事項 当社は、優秀な人材を確保するため、また当社の事業及び研究開発活動へのモチベーションの維持・向上を目的として、新株予約権(ストック・オプション)を役員、社員及び社外の協力者等に付与しております。今後においても上記の目的のため新たに新株予約権を付与していく予定であります。また、研究開発領域の拡大に伴い、研究開発費及び事業運営経費が多額に必要となることから新株予約権を活用した資金調達を実施する可能性があります。これらの新株予約権が行使された場合には、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。 なお、当社が発行した新株予約権にかかる潜在的株式の数は2,329,600株(2019年5月31日現在)であり、発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は5.54%であります。新株予約権の状況及び内容につきましては、「第4 提出会社の状況 1.株式等の状況(2)新株予約権等の状況」をご参照ください。 ② 資金使途にかかる事項 2015年10月の株式上場時における公募増資の資金使途につきましては、主にGRN-1201の臨床開発試験、新規パイプライン導入のための研究開発費及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。また、2016年5月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、主にGRN-1201の新規適応症への新規パイプラインに関する臨床開発試験、新規パイプラインの探索・研究開発のための研究開発費、M&A資金及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。さらに、2017年11月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、がん免疫治療領域における研究開発費用及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。 しかしながら、今後において事業環境の変化等により、また、上記本項目「事業等のリスク」に記載のリスクの発生により、たとえ計画通りに使用した場合でも、本書提出日現在において想定している成果を達成できない可能性があります。 なお、当社が携わる研究開発の領域においては、技術開発の変化など外部環境が急速に変化する可能性があります。新薬の上市、法令等の改正、当社の研究開発・臨床試験の進捗状況によっては、上記の資金使途以外の事象に資金を充当する可能性があり、今後の戦略の策定において新たな事象の発生、新たな戦略の実行により、研究開発資金が想定以上に増加する可能性もあります。 ③ M&A等(買収、合併等)による事業拡大に関する事項 当社は、事業拡大へ向けた新たな経営資源を取得するため、また保有する経営資源の効率的運用と企業価値を最大化するため、M&A等を活用して事業規模の拡大を図ること検討してまいります。 M&A候補の選定に当たりましては、詳細なデューデリジェンスを行うことにより極力リスクを回避してまいりますが、買収後の偶発債務の発生や、のれんが発生する場合は買収後の事業環境や競合状況の変化等により想定通りの効果が得られない場合にのれんの減損損失を計上する等、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。 ④ 資金調達にかかる事項 当社のパイプラインの研究開発が完了し製品化となるまでまだ長期間を要しますので、今後も多額の資金調達を必要とします。この期間において、事業計画の修正を必要とする状況になった場合、資金不足が生じる可能性があります。その場合、公的補助金の活用や日本国内のみならず海外企業・機関を含めた新規提携契約の締結、新株発行等により資金需要に対応していく予定であります。しかしながら、適切なタイミングで資金調達ができ なかった場合には、当社の事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。 また、今後において、さらなる事業拡大等のための資金調達の方法として新株発行や新株予約権付社債などを発行する可能性があります。新株等発行の結果、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。 ⑤ 自然災害について 当社は、東京都千代田区及び神奈川県川崎市に事業所及び研究施設を設けております。当社の事業地域で地震等の大規模な災害が発生した場合には、不測の事態の発生により事業活動が停滞する可能性があります。いずれかの地域で大規模な災害が発生した場合でも、いずれかで業務を継続できる体制となっており、また電子データ等のバックアップも前述の各地域以外の場所に設置しております。しかしながら、自然災害の規模、状況によっては、当社及び外部委託先の設備・インフラが支障をきたし稼働できない状況、従業員等が出社できない状況など一時的又は長期間業務が停止し、臨床開発及び事業活動を一時的又は長期間休止せざるを得ない状況が発生した場合には、当社の臨床開発、事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
FY2018|18,863 文字
2 【事業等のリスク】当社グループの事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。また、当社グループとして必ずしも重要なリスクと考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で又は当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、リスクの発生をすべて回避できる保証はありません。また、以下の記載内容は当社グループのリスクすべてを網羅するものではありませんのでご留意ください。 なお、本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。 (1) 創薬事業全般にかかるリスクについて当社グループは、研究の初期段階の探索的研究から第Ⅲ相臨床試験に至るまで、幅広い段階の医薬品開発の経験を有しておりますが、研究の初期段階から医薬品の製造販売の段階に至るまでには、数多くの課題・項目をクリアし、規制当局からの承認及び認可の取得を要し、薬事規制等の法的な規制にも対応していく必要があります。そのため、長期間におよぶ研究開発体制を維持するために多額の資金を必要とします。また、新規の医薬品候補物質の市場は、国内外を問わないことから、資金力の豊富な国際的な製薬企業や国内においても多くの企業・研究開発機関と競合しております。 ① 収益の不確実性について当社グループの事業は、医薬品候補物質の有効性及び安全性を評価するための初期段階の研究開発(探索的研究、非臨床試験、初期臨床試験等)を自社で行い、その後、製薬企業に対して当社グループが有する医薬品候補物質の開発製造販売に係る知的財産権の使用実施許諾(ライセンス・アウト)を行い、当該製薬企業からライセンス収入を得るものです。 ライセンス収入の形態は、ライセンス契約締結時に発生する契約一時金、開発進捗に伴って発生するマイルストン収入(臨床試験の開始や終了時、又は製造販売承認申請時等の予め定めた開発の節目(マイルストン)毎に支払われる収入)、上市後においてライセンス・アウト先である製薬会社が行う医薬品販売に対するロイヤリティ収入等があります。この他に、ライセンス・アウト後に当社グループがライセンス・アウト先製薬企業から委託を受けて共同で開発を継続する場合に、当該ライセンス・アウト先製薬企業から開発協力金として研究開発費を受領することもあります。ライセンス契約の締結は、製薬企業から、それまでの研究開発で得られた医薬品候補物質の有効性及び安全性に関して、並びに予想される対象患者数や薬価、特許存続期間等の事業性に関して一定の評価をされる必要があります。従って、製薬企業から評価されうる研究開発成果が得られない可能性、研究成果が得られたとしても、研究開発の遅延により想定通りのタイミングで評価されない可能性、想定通りの評価が得られず、契約一時金をはじめ上記の各種収入を当社グループの想定する規模の金額で契約できない可能性、当社グループが想定するタイミングでライセンス契約を締結できない可能性、又はライセンス契約に至らない可能性があります。 またライセンス・アウト後も、次の開発段階に進むために必要な臨床試験成績が得られない可能性、開発途中で競合新薬の上市、治療法そのものの変化のほか、特許係争の発生等で事業性が大きく毀損されたとライセンス・アウト先製薬企業が判断する場合は、開発スケジュールが遅延する可能性や、ライセンス契約解消に至る可能性があります。さらに、上市に至った場合においても、薬価が当初の想定を大きく下回ることや、市場環境等の状況が当初の想定より悪化する可能性があります。上記の場合には、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 また、マイルストン収入及びロイヤリティ収入の発生については、ライセンス・アウト先製薬企業等の研究開発の進捗及び医薬品発売・販売の状況等に依存するものであり、事業収益として計上されるには長期間を要する可能性があり、またマイルストンに至らない場合、これらの事業収益が計上されない可能性もあります。さらに、契約一時金収入、マイルストン収入は継続的な収入ではなく、一定の条件の達成等を前提として一時的に発生する収入ですので、その収入の計上時期により、年度決算・四半期決算の売上高・利益等が非連続的に偏重する可能性、年度決算比較・四半期決算比較の売上高・利益等において大幅な変動・乖離が生じる可能性があります。また上記の収入の計上時期が想定から遅れた場合、決算短信で公表する業績予想が大幅に変更される可能性があります。 ② 医薬品開発の不確実性について当社グループが開発している医薬品候補物質が上市に至るまで、有効性及び安全性の評価に関する数多くの探索及び検証並びに規制当局からの承認が必要とされ、それぞれに対応しなければ、研究開発が進捗しません。研究開発の各段階において、次の段階へ進むか否かの判断は、ライセンス・アウト前であれば当社グループが、ライセンス・アウト後であればライセンス・アウト先製薬企業が行いますが、有効性及び安全性に良い評価が得られなかった場合、外部環境の変更等で事業性の喪失が懸念された場合などには、次の研究開発段階への進行が遅れる可能性、研究開発自体を終了・中止せざるを得ない状況になる可能性があります。当社グループは、医薬品開発の不確実性を低減するために、開発ターゲットの疾患領域に精通する医師(キー・オピニオン・リーダー)、非臨床試験・臨床試験・CMC(Chemistry, Manufacturing and Control:原薬及び製剤の開発)・薬事それぞれに精通する外部専門家(コンサルタント)、並びに規制当局との事前相談を通じた情報収集に基づき試験を設計及び実施しています。しかしながら、予めすべての要因を想定することは極めて困難であり、研究開発中であれば研究開発の大幅な遅れや中止の可能性、製造販売承認申請後であれば国内外の規制当局から追加の臨床試験を求められ、または承認が得られないなどの事態が発生する可能性があります。研究開発が遅れた場合や追加試験が必要となる場合には、計画外の追加資金が必要となり、追加資金確保のために新たな資金調達が必要となる可能性がありますし、その資金調達の実現自体にも不確実性があります。またライセンス契約の存続期間は、特許権の存続・有効期間が終了するまでの期間とされているため、ライセンス契約中にマイルストンが達成できず、当初想定した投資回収額を回収できないリスクがあります。 研究開発を終了・中止せざるを得ない状況になった場合又は研究開発を終えて製造販売に関する承認申請を規制当局に行っても、規制当局から承認されなかった場合には、当初想定していた投資回収額を回収できないリスクがあります。これらの事象が発生した場合、当社グループのような規模においては影響が非常に大きく、当社グループの事業、業績や財務状況等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。 ③ 法的規制等にかかる不確実性について 当社グループが携わる研究開発領域は、研究開発を実施する国ごとに薬事に係る法律、薬価等が関係する医療保険制度及びその他の関係法規・法令による規制が存在します。 非臨床試験においては、医薬品の安全性試験の実施に関する基準であるGLP(Good Laboratory Practice)、原薬等の治験薬の製造においては、医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準であるGMP(Good Manufacturing Practice)に準ずる治験薬GMP、そして臨床試験においては、医薬品の臨床試験の実施に関する基準であるGCP(Good Clinical Practice)を確実に実施していることが研究開発上必須条件となっており、製造販売の段階においては、販売を行う各国で定められている薬事関連法規・法令に従った承認・認可・許可を得る必要があります。当社グループの事業計画・研究開発計画は、現行の薬事関連法規・法令や規制当局の承認・認可の基準を前提に作成しておりますが、これらの法律・法令及び基準は技術の発展・市場の動向などにより適宜改定されます。創薬事業は、年単位の長期間にわたる事業であり、その間にこれらの法律・法令・基準等が大きく改定される可能性、これら法令等が変更される可能性があります。これにより既存の研究開発の体制(組織的な体制、製造方法、開発手法、臨床試験の進め方、追加試験を行う必要性の発生など)の変更が必要となる場合、その体制の変更に速やかに対処できず研究開発が遅延・中止となるリスク、人員確保や設備投資に計画外の追加資金が必要となり、追加資金確保のために新たな資金調達が必要となるリスクがあり、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ④ 競合について当社グループが携わる研究開発領域は、急激な市場規模の拡大が見込まれており、欧米を中心にベンチャー企業を含む多くの企業が参入する可能性があります。 競合他社の有する医薬品候補物質の研究開発が当社グループの有する医薬品候補物質と同じ疾患領域で先行した場合、当社グループの事業の優位性は低下する可能性があります。競合他社による新薬の登場により当社グループの臨床試験において被験者の登録が停滞し臨床試験が遅延する可能性、目標被験者数に届かず臨床試験が中止となる可能性があります。また、この場合、当社グループの事業において想定以上の資金が必要となる可能性があり、当社グループの事業戦略や経営成績等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。さらに、競合する新薬の開発が先行し、又は競合新薬が上市されたことにより、事業性が大きく毀損されたとライセンス・アウト先製薬企業が判断する場合は、開発スケジュールが遅延する可能性や、ライセンス契約解消に至る可能性があります。上市に至った場合においても、他社が同様の効果や、より安全性のある製品を販売した場合、薬価が付かず、想定したロイヤリティが得られない等により、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ⑤ 技術革新について当社グループが携わる研究開発領域は、技術の革新及び進歩が著しく早いバイオ・テクノロジー分野に属しております。そのため、当社グループは、大学、公的研究機関及びコンサルタントなどとの連携を通じ、最先端の研究成果・情報を速やかに導入できる体制を構築していく必要があります。しかしながら、急激な研究の進歩などにより医薬品の研究開発において有効と思われる研究成果等への対応が困難となった場合、当社グループの事業展開に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。また、必要な研究成果を常に追求するためには多額の費用と時間を要することから、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ⑥ 医療費の抑制策について 日本政府は、今後の人口の高齢化及びそれに伴うさらなる医療費の増加を抑制するため、薬価の引き下げ、ジェネリック医薬品の使用推進などの施策を行っております。また、日本のみならず米国や諸外国においても、同様の傾向がみられます。今後の医療費抑制の政策に関する動向によっては、上市した医薬品に想定した薬価が付かず、想定したロイヤリティが得られない等により、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ⑦ 業界の動向について当社グループの開発するがん治療薬の市場は、患者の高齢化を背景に市場の拡大が予想されております。また、がん治療薬の市場の中で、がん免疫療法(Immuno-Oncology)の分野に属しており、現状、外科的手術、放射線療法そして化学療法(ホルモン療法含む)に加え、いわゆる第4の治療法と言われております。がん免疫療法とは、免疫細胞にがん細胞を狙い撃ちするよう免疫系をコントロールすることによってがん細胞を破壊、または増殖を抑制する治療法です。 当社グループは、第4の治療法のがん免疫療法のうち、がんペプチドワクチン、ネオアンチゲン及び細胞医薬等の研究開発に取り組んでおりますが、日本及び米国ではまだがんペプチドワクチン等が承認・上市された実績がないため、想定外の製造上の課題が発生する可能性、予期せぬ副作用が発生する可能性があります。また、急激な技術革新、第5の治療法や新薬の登場により、臨床開発活動に影響を受ける可能性もあります。これらの場合、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (2) パイプラインについて当社グループの開発するパイプラインは、上市まで数多くの開発課題を解決していく必要があります。各パイプラインが抱えるリスクは以下のとおりです。① ITK-1平成30年5月に第Ⅲ相臨床試験の開鍵(キーオープン)を行いましたが、主要評価項目を達成できませんでした。今後の方針等につきましては、富士フイルム株式会社が検討してまいります。なお、富士フイルム株式会社における検討の結果、当社と締結しております商業化許諾契約を解約する可能性があります。また、今後商業化許諾契約及びITK-1を継続する場合でありましても、以下に記載するような理由・事象などにより、開発・申請が遅延又は中止となる可能性、または商業化許諾契約が終了となる可能性があります。・主に安全性等に起因する理由に基づく規制当局によるITK-1に係る臨床試験の中断又は中止命令が出る場合・富士フイルム株式会社がITK-1の方針を変更した場合・富士フイルム株式会社が医薬品候補物質の有効性及び安全性が認められる臨床試験成績が得られなかったと判断した場合・富士フイルムグループと進める製造販売承認申請に係る業務及び製剤開発業務において、期待した成績・データが得られなかったことなどによりスケジュール・方針が変更される場合・外部環境の変化 また、富士フイルムグループが規制当局へ製造販売承認申請を行いますが、規制当局が申請データからはITK-1の有効性及び安全性を認められないと判断する場合、規制当局から承認を取得できない可能性、追加の臨床試験を求められる可能性及び商業化許諾契約が解約・終了となる可能性があります。 富士フイルムグループは、製造販売承認取得後、引き続き薬価収載を申請しますが、承認されない可能性、想定した薬価とならず事業性が毀損する可能性があります。 これら上市に至る各プロセスにおいて延期、遅延又は中止(商業化許諾契約の解約・終了を含む)とされた場合、当社グループの事業、業績や財務状況等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。また、追加の資金調達の必要性、業績予想の修正が必要となる可能性があります。ITK-1の第Ⅲ相臨床試験の開鍵(キーオープン)において、副作用に関しましては、安全で十分な忍容性を示しましたが、今後ITK-1の開発を継続する場合において、未知の重篤な副作用が発生しないという保証はありません。今後において、重篤な副作用が検出された場合には、当社グループの事業、業績や財務状況等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。 ② GRN-1201GRN-1201は、現在米国においてメラノーマを対象とした第Ⅰ相臨床試験と、非小細胞肺がんを対象とした第Ⅱ相試験を実施中であります。GRN-1201では、がんペプチドワクチンと他のがん免疫治療薬などを併用した臨床試験を第Ⅱ相臨床試験まで実施し、グローバル製薬企業へライセンス・アウトする予定です。GRN-1201においては、自社で研究開発を行っておりますので、ライセンス・アウトまでの研究開発費を当社が負担する予定であります。今後、以下に記載するような理由などにより、開発が遅延又は中止となる可能性があります。・臨床試験実施中に疾患領域において競合する新薬が上市される等の理由により、必要となる被験者数を適時に獲得できない場合・主に安全性等に起因する理由に基づくFDAによる当該試験の中断又は中止命令が出る場合・第Ⅰ相臨床試験及び第Ⅱ相臨床試験において期待する有効性及び安全性を示すデータが得られない場合 ・GRN-1201における製剤開発において、期待する十分なデータが得られなかった場合・臨床開発の後期を担うライセンス・アウト先が見つかるのに想定を大幅に越える時間がかかる、又は見つからない場合・外部環境の変化この場合、当社の事業、業績や財務状況等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。また、追加の資金調達の必要性が生じる可能性があります。 ③ 新規パイプライン(ネオアンチゲン、細胞医薬等)当社グループの企業価値の向上及び経営理念「私たちは、がん免疫治療分野の最先端を切り拓くことにより、一人ひとりが自らの力でがんを克服する世界を実現します」に基づき、当社グループは、がん免疫治療薬分野を中心に順次開発領域を拡大しながら医薬品候補物質を創出・獲得し、共同研究等の第三者との連携も視野に入れ開発を進める方針です。 このような新規パイプラインを適時に創出・獲得及び開発できない場合、これらに想定以上の資金が必要となった場合、又は開発後に引受け手となるライセンス・アウト先が見つからず、適時にライセンス契約を締結できない場合などにおいて、事業計画の修正が必要となり、または、既存パイプラインの開発が遅延又は中止された場合には、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。また、追加の資金調達の必要性、業績予想の大幅な修正が必要となる可能性があります。 また、当社グループが提供する医薬品候補物質が、製薬企業等の研究開発の方針・ニーズに適時・的確に合致する保証はなく、契約の締結、研究開発の進捗が想定通りに進まない可能性ががあり、ライセンス許諾契約、提携契約等の契約を締結した場合であっても、当社グループに追加的な義務や金銭的負担等が生じる可能性、または締結した契約が解約・終了となる可能性があります。 (3) 特定の取引先への依存について当社グループの販売先は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (生産、受注及び販売の状況) (3) 販売実績」に記載の通り、ITK-1のライセンス・アウト先である富士フイルム株式会社への依存度が高いものとなっております。平成30年5月の第Ⅲ相臨床試験の開鍵(キーオープン)の結果を受けまして、今後のITK-1の方針等につきましては、富士フイルム株式会社が検討してまいります。なお、同社がITK-1の開発を継続することとなった場合でありましても、同社への依存度が高い状況は当面続く見込みです。当社は、同社に対し、ITK-1に関する特許及びノウハウの独占的通常実施権を許諾し、製造販売承認申請にかかる一定のマイルストン毎に一時金を受領し、上市後は、医薬品の販売高の一定率の実施料を受領する契約を締結しております。また、実施権許諾後も、同社からITK-1に関する治験実施の委託を受け、当該業務から収益を得ております。当社は、同社と良好な取引関係を維持・継続していく方針ですが、平成30年5月の第Ⅲ相臨床試験の開鍵(キーオープン)の結果を受けて、同社が契約を終了する場合、また、ITK-1の開発を継続することとなった場合でも、同社の経営方針の変更あるいは何らかの事情により、契約の解除・終了や契約条件の変更等が生じた場合には、当社グループの事業、業績や財務状況等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。後期の臨床開発・製造販売承認申請等は富士フイルムグループが実施することとなっており、同社グループが同社グループに課せられる各種規制等を遵守できない場合や、同社グループの判断により開発・申請等が遅延・中止する場合又は開発の方針が変更される場合には、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。今後においては、新規パイプラインの増加を図り新たな取引先を開拓することで、特定の取引先への依存度の低下を図る方針でありますが、製薬企業等とのライセンス契約締結までには長期間を要するため、当面、売上高が特定の取引先に大きく依存する状況にあります。また、新たな製薬企業等とライセンス契約を締結できる保証はありません。 (4) 研究開発活動について① 製造物責任のリスクについて 臨床試験実施中に使用する治験薬、大学及びその提携施設が実施する医師主導治験用に提供する治験薬等に起因して未知の重篤な健康被害を被験者又は患者に与えた場合、製造物責任を当社が負う可能性があります。また、治験薬等の提供先もしくはライセンス・アウト先から損害賠償金を請求される可能性があり、その場合には当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ② 副作用に関するリスクについて 当社グループが研究開発を実施した治験薬及び上市後の医薬品で、臨床試験段階から製品上市後にかけて、予期せぬ重篤な副作用が発現する可能性があります。重篤な副作用が発現した場合、製造物責任などの損害賠償リスクが発生する可能性がありますが、保険の加入などにより財政的な影響を回避又は最小限にしていくよう対応しております。しかしながら、最終的に当社グループが負担すべき損害賠償額の全額について保険金が支払われない可能性があります。その場合、当社グループの業績及び財務状況等に直接的な悪影響を及ぼす可能性があります。これ以外にも、当社グループへの損害賠償が結果として認められなかった場合であっても、また、損害賠償額の全額が保険で補償された場合であっても、損害賠償請求がなされたという事実により、当社グループに対してネガティブなイメージをステークホルダーに持たれ、その結果、研究開発中の医薬品候補物質及び上市後の医薬品に対する信頼性が損なわれ、その後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。 ③ 研究開発施設等における事故等の発生に関するリスクについて 当社グループは、久留米本社、東京支社及び川崎創薬研究所に研究開発施設を有しております。事故防止の管理教育は徹底しておりますが、何らかの原因により火災や環境汚染事故、感染等が発生した場合、研究開発活動の中断、停止、または、損害賠償や風評被害等重大な損失を招く可能性があり、その場合には当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。また、下記④に記載のとおり、当社グループは、研究開発業務の一部を専門機関である外部委託先(CRO-医薬品開発業務受託機関、治験実施施設、原薬・製剤の製造業者等)に委託しており、これら外部委託先において何らかの原因により火災や環境汚染事故等が発生した場合、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループ及び外部委託先において地震、水害等の自然災害・治安不安などの発生により、設備・インフラが支障をきたし稼働できない状況、従業員等が出社できない状況など一時的又は長期間業務が停止し、臨床開発を一時的又は長期間休止せざるを得ない状況が発生した場合には、当社グループの臨床開発、事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ④ 外部委託先との連携について 当社グループは、経営の機動性・効率性の観点、コスト低減や専門性の高い分野における協業などの観点から主に以下の業務の一部を専門機関に委託しております。・原薬・製剤(治験薬)の製造・評価試験・薬理効果試験・毒性試験等の非臨床試験・臨床試験のモニタリング・データマネジメント・統計解析委託先とは今後も取引を継続していきますが、委託先における自然災害等の不測の事態等により、原薬の安定供給や適時なサービス業務を受けられなくなる可能性がないとは言えません。この場合には当社グループの研究開発の進捗及び業績等に影響を及ぼす可能性があります。上記の委託及び上記以外の業務に関する委託において、当社グループにとって不利な契約改定が行われた場合又は予期せぬ事情により契約が終了した場合には、当社グループの研究開発の進捗、事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 また、外部委託先は日本国内のみならず外国の企業・医療機関にも委託しております。今後も日本・外国を問わず、研究開発において最善の企業・医療機関等に業務の委託を行う予定であります。 外国の企業・医療機関等に業務を委託するに際して、現地のコンサルタントを利用し、コミュニケーションを密にして情報収集に努めるなどトラブルを回避するための措置を講じておりますが、外国における法令等及びその解釈などの法的規制又は商取引慣行などにおいて現地の委託先と問題が生じる可能性、国際税務上の問題又は戦争・紛争などの治安不安などにより事業運営に制約を受ける可能性があります。この場合、当社グループの研究開発の進捗、事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (5) 久留米大学との関係について 当社は、久留米大学との間で、ITK-1にかかる特許権等を同大学から譲り受け、その対価の支払い方法として、かかる特許権等を第三者に実施許諾又は譲渡したことによる収入(実施許諾料、一時金、マイルストン収入、ロイヤリティ等を含む。)の一定料率に相当する金額を同大学に支払う等の契約を締結しており、当該契約に基づき、富士フイルム株式会社等から上記に該当する収入を受け取った場合には、一定率の金額を久留米大学に支払うことになります。また、久留米大学から譲り受けた特許権等を、非商業目的の研究開発に用途を限定して、同大学に対して実施権許諾しております。 さらに、同大学との間には、同大学との協議により、以下のような取引等があります。・久留米大学が実施する膠芽腫(脳腫瘍)に関する治験関連業務の受託及び治験薬の提供 (入金額)平成29年3月期 5百万円、平成30年3月期 3百万円 (無償提供の治験薬にかかる当社負担分)平成29年3月期 5百万円、平成30年3月期 0百万円 ・久留米大学先端癌治療研究センター山田亮教授の当社取締役(非常勤)就任上記の取引及び兼業において利益相反・競合取引等の行為が発生しないように法規制等を遵守するとともに、当社の企業運営上取締役会の監視等を通じて十分留意しております。しかしながら、このような留意にかかわらず、利益相反・競合取引等の行為が発生した場合には、当社の利益及び社会的評価を損ねる可能性があり、その結果として当社グループの事業、業績や財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。 (6) 知的財産権について① 特許の状況について当社グループは、久留米大学等から「特許権又は特許を受ける権利」を正当に譲り受け、又は「実施権の許諾」を受けて、事業を行っております。現在出願中の特許については、特許出願時に特許性等に関する調査を行っておりますが、すべてのものが特許として成立するとは限りません。出願中の特許が成立しなかった場合、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。なお、特許の出願は、特許の内容、対象国などについて費用対効果を考慮して行いますので、研究開発で得られたすべての特許を出願するものではありません。また、出願費用・維持費用等のコストを回収できない可能性があります。 他社において優れた特許・発明が成立する可能性は常に存在しており、当社グループの特許が成立しても、他社の特許・発明により、当社グループの特許が無力化される可能性が潜在しています。天然物に関連する特許については、日本・米国・欧州の特許庁においてそれぞれ審査基準が発行されておりますが、これとは別のガイドライン等を発行する国があり、国によって法令・ガイドラインが異なり複雑な状況となっている場合があります。また国によってその法令・ガイダンス等における解釈や事実認定の方法・解釈が異なる場合があり、他国において当社グループが申請した特許が想定通りに取得・登録されない可能性があります。日本を含め他国においても、解釈等により、第三者が当社グループに通知・補償・支払をすることなく当社グループの特許及びそれに関連する技術を利用し、研究開発、医薬品・薬剤の販売をする可能性があります。 なお、上記について、現在、当社グループのパイプラインにおいて、その実施に支障もしくは支障をきたす可能性のある事項は、調査した限りにおいて存在しておりません。 ② 知的財産権に関する訴訟及びクレーム等について本書提出日現在において、当社グループの事業に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレームといった問題が発生した事実はありません。当社グループは、弁護士及び弁理士との連携を図って可能な限り特許侵害・被侵害の発生リスクを軽減する対策を講じております。また当社グループは、現時点において、当社グループの事業に関し他社が保有する特許等への抵触により、事業に重大な影響を及ぼす可能性は少ないと考えております。ただし、今後において当社グループが第三者との間の法的紛争に巻き込まれた場合、弁護士等と協議のうえ、その内容によって個別に対応策を検討していく方針でありますが、解決に時間及び多大の費用を要する可能性があり、場合によっては当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ③ 職務発明について役員、従業員等の職務発明の発明者に対し、今後相当の対価を支払う場合があります。当社グループでは職務発明に関する規程を設けておりますが、これまで発明者との間で問題は生じておりません。しかしながら、将来、発明者との間で対価の支払請求等について問題が生じる可能性があります。その場合、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (7) 経営成績の推移等について① 研究開発費が多額の見通しであることについて当社グループによる医薬品候補物質の研究開発の期間は長期間にわたります。また、研究開発の期間においては非常に多くの実証・確認すべき事項があること、また当社グループでは日本国内のみならず海外においても研究開発活動を行い、外部委託先も海外の企業等となることなどから研究開発費は多額となる見通しであります。 製薬企業等とのライセンス契約から発生する契約一時金収入、マイルストン収入、ロイヤリティ収入を研究開発中のパイプライン及び新規パイプラインに再投資することを事業及び資金サイクルとしていくこととしておりますが、製薬企業等との契約締結が想定通りに進まない場合、既存のライセンス・アウト先との契約解消等が生じた場合又は既存のパイプラインにおいて想定以上の研究開発費が必要となった場合などにおいては、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ② 過年度の業績について主要な経営指標等の推移は以下のとおりであります。 回次第11期第12期第13期第14期第15期決算年月平成26年3月平成27年3月平成28年3月平成29年3月平成30年3月売上高(千円)933,388821,625822,556529,612354,410経常利益又は経常損失(△)(千円)19,144△413,501△992,977△1,116,556△1,573,292親会社株主に帰属する当期純利益又は当期純損失(△)(千円)17,485△412,435△994,464△1,113,661△1,577,142営業活動によるキャッシュ・フロー(千円)37,487△447,197△908,711△1,067,512△1,591,336 (注) 1.売上高には、消費税等は含まれておりません。2.第14期(当連結会計年度)が連結初年度となりますので、第13期以前については、単体の数値を記載しております。3.第11期から第13期の親会社株主に帰属する当期純利益又は当期純損失については、単体の当期純利益又は当 期純損失を記載しております。 過年度の業績については、以下のとおりであります。(売上高について)第11期の平成25年6月に第Ⅲ相臨床試験を開始しました。富士フイルム株式会社から第Ⅲ相臨床試験にかかる関連業務を受託したことにより、治験施設に関連する売上及び臨床開発受託に関する報酬を計上することとなりました。第12期においては、売上高の内容は第11期と同様でありますが、第Ⅲ相臨床試験の初年度に多く計上される治験施設との契約金が、第Ⅲ相臨床試験の2年目である第12期においては減少したことなどにより、第11期と比べて売上高は減少しました。第13期においては、内容・金額ともに第12期と同水準の売上を計上しました。第14期においては、ITK-1の第Ⅲ相試験の症例登録が完了し、臨床開発受託業務の活動量が平準化されたことに伴い、売上高が減少しました。第15期においては、ITK-1の第Ⅲ相臨床試験は通期において観察期間となり、第14期と比べ臨床開発受託業務の活動量がさらに減少したことにより、売上高が減少しました。(親会社株主に帰属する当期純利益及び当期純損失について)第11期においては、平成25年6月からITK-1第Ⅲ相臨床試験を開始したことにより、富士フイルム株式会社から売上高を計上することとなり、第Ⅲ相臨床試験にかかる費用も増加しましたが、適切にコストをコントロールしたことにより、当期純利益を計上いたしました。第12期においては、GRN-1201が米国で研究開発活動を本格的に開始したため、その研究開発費の増加を主要因として、当期純損失を計上することとなりました。第13期においては、GRN-1201の治験申請(IND)に向けた非臨床試験の実施、製剤開発及び治験申請(IND)後の第Ⅰ相臨床試験の準備と第12期に比べて研究開発活動を積極的に実施したため、また、株式公開に係る費用が発生したため、第12期と比べて当期純損失が増加することとなりました。第14期においては、新規パイプラインの研究開発の推進および事業開発を担う人材を積極的に採用したことにより人件費などが増加し、第13期と比べて親会社株主に帰属する当期純損失が増加することとなりました。第15期においては、がん免疫治療分野における研究開発領域をさらに拡大したため、主に創薬及び細胞医薬に関する研究開発費が増加し、第14期と比べて親会社株主に帰属する当期純損失が増加することとなりました。 当社グループの携わる事業は創薬事業であり、研究開発期間においては、ライセンス・アウト先からの契約一時金収入、開発協力金収入及びマイルストン収入が主な収入になります。なお、今後、株式市場からの資金調達やライセンス・アウト先からの収入により財務基盤の強化を図ってまいりますが、資金調達やライセンス・アウト先からの収入の状況によっては、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。資金収支及び資金残高の推移を勘案しながら研究開発を行ってまいります。また、GRN-1201などのパイプラインにかかる研究開発費は今後もライセンス・アウトまでは引き続き発生し、損失を計上することが予想されます。当初想定した通りにライセンス・アウトができない場合及びライセンス・アウトの条件が当初の想定より下回った場合には、引き続き損失を計上することが予想されます。新規パイプラインの導入(ネオアンチゲン、細胞医薬等)においても、今後は積極的にがん免疫治療薬分野での開発領域の拡張を図る予定でありますので、探索的研究(シーズの開発)から、技術の導入及び共同研究の締結・実施まで様々な形態を模索しながら推進していく予定であります。そのため、今後、多額の研究開発費が発生いたします。新規パイプライン導入の可否を判断するために行う事前の研究、導入した新規パイプラインの研究開発業務が想定よりも増大し、費用の増加・スケジュールの遅延、または想定したライセンス・アウト時期の遅延などにより、多額の損失を計上する可能性があります。さらに、平成30年5月の第Ⅲ相臨床試験の開鍵(キーオープン)の結果を受けて、ITK-1の今後の方針については富士フイルム株式会社が検討いたしますが、ITK-1を継続する場合でも、がんペプチドワクチンが日本において承認・上市した実績がまだありませんので、持続的な売上成長や経常的なキャッシュ・フローを獲得できるか否か等を予測する判断材料としては、過去の業績及びその推移は不十分であると考えられます。 ③ 為替相場変動リスクにかかる事項グローバルな展開を予定しているがんペプチドワクチンのパイプラインであるGRN-1201は米国で研究開発を行っており、米国及び欧州の外部委託先への委託費を外貨建てで支払いをしております。また、創薬研究においても、海外の会社に研究の一部を委託する場合があり、外貨建てで支払いをしております。外貨建てで支払われる研究開発費が今後増加する可能性があり、換算レートの変動によっては、円換算後の支払額が想定よりも多額になる可能性があり当社の業績、財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (8) 経営上の重要な契約について経営上重要と思われる契約の概要は、「第2 事業の状況 4 経営上の重要な契約等」に記載の通りであります。平成30年5月の第Ⅲ相臨床試験の開鍵(キーオープン)の結果を受けまして、今後、契約の解約を含め大幅な見直しがなされる可能性があります。また、現行の契約を継続する場合でありましても、今後において、当該契約の期間満了、相手先の経営状態の悪化や経営方針の変更よる契約解除その他の理由による終了、もしくは当社グループにとって不利な改定が行われた場合、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (9) 社内体制について① 小規模組織であることについて 当社グループは、役員9名(取締役6名、監査役3名)、従業員は42名(平成30年3月31日現在)であり小規模な組織となっており、内部管理体制も規模に応じたものとなっております。人員については、研究開発の状況に応じて増員を図っていく予定であり、内部管理体制も規模に応じて体制の強化を図っていく予定であります。しかし、小規模組織のため、役員はじめ従業員においてもそれぞれが重要な役割を持って業務に従事しており、特定の役員・従業員への過度な負担・依存とならないよう経営組織の強化を図る予定でありますが、退任・退職により人材が流出した場合、長期休養等により長期間業務の遂行が困難となった場合、代替要員を適時に確保できない場合、業務の引継ぎが不十分となった場合などにおいては、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ② 人材育成・確保について当社グループが成長を続けていくために不可欠な要素の一つが、優秀な人材の確保育成であります。今後も、特に研究開発分野における専門的な知識・技能をもった優秀な人材の確保育成が必要であると考えております。しかしながら、当社グループの想定した人材の確保に支障が生じた場合、又は優秀な人材の社外流出が生じた場合には、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ③ 情報管理について当社グループの事業においては、研究開発におけるデータ、ノウハウ、技術など、経理業務における財務データ、人事業務における役員、社員に関する情報などは非常に重要な機密事項になります。また、業務を通して入手した個人情報も重要な機密事項となります。その機密事項の流出リスクを低減するために、機密事項を取り扱う役員、社員に対しては規程等を整備し、情報管理の重要性を周知徹底するとともに、取引先等と守秘義務に関する契約を締結するなど、厳重な情報管理に努めております。 しかしながら、当社グループの通信インフラの破壊や故障などにより当社グループが利用しているシステム全般が正常に稼働しない状況に陥ってしまった場合、システムに不具合が発生した場合、もしくは役員・職員、取引先等により情報管理が十分に遵守されず、重要な機密情報・個人情報などが漏えいした場合には、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (10) その他① 新株予約権にかかる事項当社グループは、優秀な人材を確保するため、また当社グループの事業及び研究開発活動へのモチベーションの維持・向上を目的として、新株予約権(ストック・オプション)を役員、社員及び社外の協力者等に付与しております。今後においても上記の目的のため新たに新株予約権を付与していく予定であります。また、研究開発領域の拡大に伴い、研究開発費及び事業運営経費が多額に必要となることから新株予約権を活用した資金調達を実施する可能性があります。これらの新株予約権が行使された場合には、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。なお、当社が発行した新株予約権にかかる潜在的株式の数は2,513,700株(平成30年5月31日現在)であり、発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は6.01%であります。新株予約権の状況及び内容につきましては、「第4 提出会社の状況 1.株式等の状況 (2) 新株予約権等の状況」をご参照ください。 ② 資金使途にかかる事項平成27年10月の株式上場時における公募増資の資金使途につきましては、主にGRN-1201の臨床開発試験、新規パイプライン導入のための研究開発費及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。また、平成28年5月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、主にGRN-1201の新規適応症への新規パイプラインに関する臨床開発試験、ITK-1及びGRN-1201に続く新規パイプラインの探索・研究開発のための研究開発費、M&A資金及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。さらに、平成29年11月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、がん免疫治療領域における研究開発費用及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。しかしながら、今後において事業環境の変化等により、また、上記本項目「事業等のリスク」に記載のリスクの発生により、たとえ計画通りに使用した場合でも、本書提出日現在において想定している成果を達成できない可能性があります。なお、当社グループが携わる研究開発の領域においては、技術開発の変化など外部環境が急速に変化する可能性があります。新薬の上市、法令等の改正、当社の研究開発・臨床試験の進捗状況によっては、上記の資金使途以外の事象に資金を充当する可能性があり、今後の戦略の策定において新たな事象の発生、新たな戦略の実行により、研究開発資金が想定以上に増加する可能性もあります。 ③ M&A等(買収、合併等)による事業拡大に関する事項当社グループは、事業拡大へ向けた新たな経営資源を取得するため、また保有する経営資源の効率的運用と企業価値を最大化するため、M&A等を活用して事業規模の拡大を図ること検討してまいります。M&A候補の選定に当たりましては、詳細なデューデリジェンスを行うことにより極力リスクを回避してまいりますが、買収後の偶発債務の発生や、のれんが発生する場合は買収後の事業環境や競合状況の変化等により想定通りの効果が得られない場合にのれんの減損損失を計上する等、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。 ④ 資金調達にかかる事項当社グループのパイプラインの研究開発が完了し製品化となるまでまだ長期間を要しますので、今後も多額の資金調達を必要とします。この期間において、事業計画の修正を必要とする状況になった場合、資金不足が生じる可能性があります。その場合、公的補助金の活用や日本国内のみならず海外企業・機関を含めた新規提携契約の締結、新株発行等により資金需要に対応していく予定であります。しかしながら、適切なタイミングで資金調達ができなかった場合には、当社グループの事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。また、今後において、さらなる事業拡大等のための資金調達の方法として新株発行や新株予約権付社債などを発行する可能性があります。新株等発行の結果、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。 ⑤ 自然災害について 当社グループは、久留米本社、東京支社及び川崎創薬研究所に事業所及び研究施設を設けております。久留米本社では、臨床検査の実施、原薬・製剤の保管などの業務を行っており、東京支社では、当社の管理部門及び研究・開発部門を設置しております。また、川崎創薬研究所では、がん免疫治療薬分野における新しい技術・治療薬に関する新規パイプラインを創製する研究活動を行っております。当社グループの事業地域で地震等の大規模な災害が発生した場合には、不測の事態の発生により事業活動が停滞する可能性があります。久留米、東京のいずれかで大規模な災害が発生した場合でも、いずれかで業務を継続できる体制となっており、また電子データ等のバックアップも前述の各地域以外の場所に設置しております。しかしながら、自然災害の規模、状況によっては、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
FY2017|18,849 文字
4 【事業等のリスク】当社グループの事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。また、当社グループとして必ずしも重要なリスクと考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で又は当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、リスクの発生をすべて回避できる保証はありません。また、以下の記載内容は当社グループのリスクすべてを網羅するものではありませんのでご留意ください。 なお、本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。 (1) 創薬事業全般にかかるリスクについて当社グループは、研究の初期段階の探索的研究から現在ITK-1について実施中の第Ⅲ相臨床試験に至るまで、幅広い段階の医薬品開発を実施しております。研究の初期段階から医薬品の製造販売の段階に至るまで、数多くの課題・項目をクリアし、規制当局からの承認及び認可の取得を要し、薬事規制等の法的な規制にも対応していく必要があります。そのため、長期間におよぶ研究開発体制を維持するために多額の資金を必要とします。また、新規の医薬品候補物質の市場は、国内外を問わないことから、資金力の豊富な国際的な製薬企業や国内においても多くの企業・研究開発機関と競合しております。 ① 収益の不確実性について当社グループの事業は、医薬品候補物質の有効性及び安全性を評価するための初期段階の研究開発(探索的研究、非臨床試験、初期臨床試験等)を自社で行い、その後、製薬企業に対して当社グループが有する医薬品候補物質の開発製造販売に係る知的財産権の使用実施許諾(ライセンス・アウト)を行い、当該製薬企業からライセンス収入を得るものです。 ライセンス収入の形態は、ライセンス契約締結時に発生する契約一時金、開発進捗に伴って発生するマイルストン収入(臨床試験の開始や終了時、又は製造販売承認申請時等の予め定めた開発の節目(マイルストン)毎に支払われる収入)、上市後においてライセンス・アウト先である製薬会社が行う医薬品販売に対するロイヤリティ収入等があります。この他に、ライセンス・アウト後に当社グループがライセンス・アウト先製薬企業から委託を受けて共同で開発を継続する場合に、当該ライセンス・アウト先製薬企業から開発協力金として研究開発費を受領することもあります。ライセンス契約の締結は、製薬企業から、それまでの研究開発で得られた医薬品候補物質の有効性及び安全性に関して、並びに予想される対象患者数や薬価、特許存続期間等の事業性に関して一定の評価をされる必要があります。従って、製薬企業から評価されうる研究開発成果が得られない可能性、研究成果が得られたとしても、研究開発の遅延により想定通りのタイミングで評価されない可能性、想定通りの評価が得られず、契約一時金をはじめ上記の各種収入を当社グループの想定する規模の金額で契約できない可能性、当社グループが想定するタイミングでライセンス契約を締結できない可能性、又はライセンス契約に至らない可能性があります。 またライセンス・アウト後も、次の開発段階に進むために必要な臨床試験成績が得られない可能性、開発途中で競合新薬の上市、治療法そのものの変化のほか、特許係争の発生等で事業性が大きく毀損されたとライセンス・アウト先製薬企業が判断する場合は、開発スケジュールが遅延する可能性や、ライセンス契約解消に至る可能性があります。さらに、上市に至った場合においても、薬価が当初の想定を大きく下回ったり、市場環境等の状況が当初の想定より悪化する可能性があります。上記の場合には、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 また、マイルストン収入及びロイヤリティ収入の発生については、ライセンス・アウト先製薬企業等の研究開発の進捗及び医薬品発売・販売の状況等に依存するものであり、事業収益として計上されるには長期間を要する可能性があり、またマイルストンに至らない場合、これらの事業収益が計上されない可能性もあります。さらに、契約一時金収入、マイルストン収入は継続的な収入ではなく、一定の条件の達成等を前提として一時的に発生する収入ですので、その収入の計上時期により、年度決算・四半期決算の売上高・利益等が非連続的に偏重する可能性、年度決算比較・四半期決算比較の売上高・利益等において大幅な変動・乖離が生じる可能性があります。また上記の収入の計上時期が想定から遅れた場合、決算短信で公表する業績予想が大幅に変更される可能性があります。 ② 医薬品開発の不確実性について当社グループが開発している医薬品候補物質が上市に至るまで、有効性及び安全性の評価に関する数多くの探索及び検証並びに規制当局からの承認が必要とされ、それぞれに対応しなければ、研究開発が進捗しません。研究開発の各段階において、次の段階へ進むか否かの判断は、ライセンス・アウト前であれば当社グループが、ライセンス・アウト後であればライセンス・アウト先製薬企業が行いますが、有効性及び安全性に良い評価が得られなかった場合、外部環境の変更等で事業性の喪失が懸念された場合などには、次の研究開発段階への進行が遅れる可能性、研究開発自体を終了・中止せざるを得ない状況になる可能性があります。当社グループは、医薬品開発の不確実性を低減するために、開発ターゲットの疾患領域に精通する医師(キー・オピニオン・リーダー)、非臨床試験・臨床試験・CMC(Chemistry, Manufacturing and Control:原薬及び製剤の開発)・薬事それぞれに精通する外部専門家(コンサルタント)、並びに規制当局との事前相談を通じた情報収集に基づき試験を設計及び実施しています。しかしながら、予めすべての要因を想定することは極めて困難であり、研究開発中であれば研究開発の大幅な遅れや中止の可能性、製造販売承認申請後であれば国内外の規制当局から追加の臨床試験を求められ、または承認が得られないなどの事態が発生する可能性があります。研究開発が遅れた場合や追加試験が必要となる場合には、計画外の追加資金が必要となり、追加資金確保のために新たな資金調達が必要となる可能性がありますし、その資金調達の実現自体にも不確実性があります。またライセンス契約の存続期間は、特許権の存続・有効期間が終了するまでの期間とされているため、ライセンス契約中にマイルストンが達成できず、当初想定した投資回収額を回収できないリスクがあります。 研究開発を終了・中止せざるを得ない状況になった場合又は研究開発を終えて製造販売に関する承認申請を規制当局に行っても、規制当局から承認されなかった場合には、当初想定していた投資回収額を回収できないリスクがあります。これらの事象が発生した場合、当社グループのような規模においては影響が非常に大きく、当社グループの事業、業績や財務状況等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。 ③ 法的規制等にかかる不確実性について 当社グループが携わる研究開発領域は、ITK-1などであれば日本、GRN-1201であれば米国というように研究開発を実施する国ごとに薬事に係る法律、薬価等が関係する医療保険制度及びその他の関係法規・法令による規制が存在します。 非臨床試験においては、医薬品の安全性試験の実施に関する基準であるGLP(Good Laboratory Practice)、原薬等の治験薬の製造においては、医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準であるGMP(Good Manufacturing Practice)に準ずる治験薬GMP、そして臨床試験においては、医薬品の臨床試験の実施に関する基準であるGCP(Good Clinical Practice)を確実に実施していることが研究開発上必須条件となっており、製造販売の段階においては、販売を行う各国で定められている薬事関連法規・法令に従った承認・認可・許可を得る必要があります。当社グループの事業計画・研究開発計画は、現行の薬事関連法規・法令や規制当局の承認・認可の基準を前提に作成しておりますが、これらの法律・法令及び基準は技術の発展・市場の動向などにより適宜改訂されます。創薬事業は、年単位の長期間にわたる事業であり、その間にこれらの法律・法令・基準等が大きく改訂される可能性、これら法令等が変更される可能性があります。これにより既存の研究開発の体制(組織的な体制、製造方法、開発手法、臨床試験の進め方、追加試験を行う必要性の発生など)の変更が必要となる場合、その体制の変更に速やかに対処できず研究開発が遅延・中止となるリスク、人員確保や設備投資に計画外の追加資金が必要となり、追加資金確保のために新たな資金調達が必要となるリスクがあり、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ④ 競合について当社グループが携わる研究開発領域は、急激な市場規模の拡大が見込まれており、欧米を中心にベンチャー企業を含む多くの企業が参入する可能性があります。 競合他社の有する医薬品候補物質の研究開発が当社グループの有する医薬品候補物質と同じ疾患領域で先行した場合、当社グループの事業の優位性は低下する可能性があります。競合他社による新薬の登場により当社グループの臨床試験において被験者の登録が停滞し臨床試験が遅延する可能性、目標被験者数に届かず臨床試験が中止となる可能性があります。また、この場合、当社グループの事業において想定以上の資金が必要となる可能性があり、当社グループの事業戦略や経営成績等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。さらに、競合する新薬の開発が先行し、又は競合新薬が上市されたことにより、事業性が大きく毀損されたとライセンス・アウト先製薬企業が判断する場合は、開発スケジュールが遅延する可能性や、ライセンス契約解消に至る可能性があります。上市に至った場合においても、他社が同様の効果や、より安全性のある製品を販売した場合、薬価が付かず、想定したロイヤリティが得られない等により、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ⑤ 技術革新について当社グループが携わる研究開発領域は、技術の革新及び進歩が著しく早いバイオ・テクノロジー分野に属しております。そのため、当社グループは、大学、公的研究機関及びコンサルタントなどとの連携を通じ、最先端の研究成果・情報を速やかに導入できる体制を構築していく必要があります。しかしながら、急激な研究の進歩などにより医薬品の研究開発において有効と思われる研究成果等への対応が困難となった場合、当社グループの事業展開に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。また、必要な研究成果を常に追求するためには多額の費用と時間を要することから、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ⑥ 医療費の抑制策について 日本政府は、今後の人口の高齢化及びそれに伴うさらなる医療費の増加を抑制するため、薬価の引き下げ、ジェネリック医薬品の使用推進などの施策を行っております。また、日本のみならず米国や諸外国においても、同様の傾向がみられます。今後の医療費抑制の政策に関する動向によっては、上市した医薬品に想定した薬価が付かず、想定したロイヤリティが得られない等により、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ⑦ 業界の動向について当社グループの開発するがん治療薬の市場は、患者の高齢化を背景に市場の拡大が予想されております。また、がん治療薬の市場の中で、がん免疫療法(Immuno-Oncology)の分野に属しており、現状、外科的手術、放射線療法そして化学療法(ホルモン療法含む)に加え、いわゆる第4の治療法と言われております。がん免疫療法とは、免疫細胞にがん細胞を狙い撃ちするよう免疫系をコントロールすることによってがん細胞を破壊、または増殖を抑制する治療法です。 当社グループは、第4の治療法のがん免疫療法のうち、リード開発品として主にがんペプチドワクチンの研究開発に取り組んでおりますが、日本及び米国ではまだがんペプチドワクチンが承認・上市された実績がないため、想定外の製造上の課題が発生する可能性、予期せぬ副作用が発生する可能性があります。また、急激な技術革新、第5の治療法や新薬の登場により、臨床開発活動に影響を受ける可能性もあります。これらの場合、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (2) パイプラインについて当社グループの開発するパイプラインは、上市まで数多くの開発課題を解決していく必要があります。各パイプラインが抱えるリスクは以下のとおりです。① ITK-1ITK-1は富士フイルム株式会社にライセンス・アウトされ、日本国内で第Ⅲ相臨床試験を実施中です。富士フイルム株式会社がライセンス・アウト後の研究開発費を原則として負担します。現在は中間解析(注)を平成27年6月に終えて第Ⅲ相臨床試験を計画通りに続行することが適切であると判断され、平成28年4月に症例登録活動を終了して一定数の被験者数を確保し、観察期間に入っております。この観察期間の後に臨床試験が終了する予定ですが、以下に記載するような理由により、開発が遅延又は中止となる可能性があります。・主に安全性等に起因する理由に基づく規制当局による当該試験の中断又は中止命令が出る場合・富士フイルム株式会社が開発の方針を変更した場合・富士フイルム株式会社が医薬品候補物質の有効性及び安全性が認められる臨床試験成績が得られなかったと判断した場合・富士フイルムグループと進める製造販売承認申請に係る業務及び製剤開発業務において、期待した成績・データが得られなかったことなどによりスケジュール・方針が変更される場合・外部環境の変化 また、第Ⅲ相臨床試験終了後は、富士フイルムグループが規制当局へ製造販売承認申請を行いますが、規制当局が申請データからはITK-1の有効性及び安全性を認められないと判断する場合、規制当局から承認を取得できない、又は追加の臨床試験を求められる可能性があります。 富士フイルムグループは、製造販売承認取得後、引き続き薬価収載を申請しますが、承認されない可能性又は想定した薬価とならず事業性が毀損する可能性があります。 これら上市に至る各プロセスにおいて延期、遅延又は中止とされた場合、当社グループの事業、業績や財務状況等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。また、追加の資金調達の必要性、業績予想の大幅な修正が必要となる可能性があります。現在までにおいては臨床試験を中断又は中止させなければならないような未知の重篤な副作用は出て来ておりませんが、今後そのような重篤な副作用が出ないという保証はありません。今後において、重篤な副作用が検出された場合には、当社グループの事業、業績や財務状況等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。 (注)ICH(日米EU医薬品規制調和国際会議)E9ガイドライン「臨床試験のための統計的原則」(平成10年11月30日医薬審第1047号)によりますと、「中間解析とは臨床試験の正式な完了に先立ち、有効性や安全性に関して治療群間を比較することを意図したすべての解析」とされております。医学専門家及び生物統計家から構成される独立した外部機関(データ・モニタリング委員会もしくは効果安全性評価委員会)から中間データのレビューを受け、臨床試験の被験者の利益を保護することを第一義として、試験を計画通りに続行することの適切性に関して勧告を受けます。 ② GRN-1201GRN-1201は、現在米国においてメラノーマを対象とした第Ⅰ相臨床試験と、非小細胞肺がんを対象とした第Ⅱ相試験を実施中であります。GRN-1201では、がんペプチドワクチンと他のがん免疫治療薬などを併用した臨床試験を第Ⅱ相臨床試験まで実施し、グローバル製薬企業へライセンス・アウトする予定です。GRN-1201においては、自社で研究開発を行っておりますので、ライセンス・アウトまでの研究開発費を当社が負担する予定であります。今後、以下に記載するような理由により、開発が遅延又は中止となる可能性があります。・臨床試験実施中に疾患領域において競合する新薬が上市される等の理由により、必要となる被験者数を適時に獲得できない場合・主に安全性等に起因する理由に基づくFDAによる当該試験の中断又は中止命令が出る場合・第Ⅰ相臨床試験及び第Ⅱ相臨床試験において期待する有効性及び安全性を示すデータが得られない場合 ・GRN-1201における製剤開発において、期待する十分なデータが得られなかった場合・臨床開発の後期を担うライセンス・アウト先が見つかるのに想定を大幅に越える時間がかかる、又は見つからない場合・外部環境の変化この場合、当社の事業、業績や財務状況等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。また、追加の資金調達の必要性が生じる可能性があります。 ③ 新規パイプライン当社グループの企業価値の向上及び経営理念「私たちは、がん免疫治療分野の最先端を切り拓くことにより、一人ひとりが自らの力でがんを克服する世界を実現します」に基づき、当社グループは、がん免疫治療薬分野を中心に順次開発領域を拡大しながら医薬品候補物質を創出・獲得し、共同研究等の第三者との連携も視野に入れ開発を進める方針です。 このような新規パイプラインを適時に創出・獲得及び開発できない場合、これらに想定以上の資金が必要となった場合、又は開発後に引受け手となるライセンス・アウト先が見つからず、適時にライセンス契約を締結できない場合などにおいて、事業計画の修正が必要となり、または、既存パイプラインの開発が遅延又は中止された場合には、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。また、追加の資金調達の必要性、業績予想の大幅な修正が必要となる可能性があります。 また、当社グループが提供する医薬品候補物質が、製薬企業等の研究開発の方針・ニーズに適時・的確に合致する保証はなく、契約の締結、研究開発の進捗が想定通りに進まない可能性、締結する契約の内容において、当社グループに追加的な義務や金銭的負担等が生じる可能性があります。 (3) 特定の取引先への依存について当社グループの販売先は、「第2 事業の状況 2 生産、受注及び販売の状況 (3) 販売実績」に記載の通り、ITK-1のライセンス・アウト先である富士フイルム株式会社への依存度が高いものとなっており、当面はこの状況が続く見込みです。当社は、同社に対し、ITK-1に関する特許及びノウハウの独占的通常実施権を許諾し、製造販売承認申請にかかる一定のマイルストン毎に一時金を受領し、上市後は、医薬品の販売高の一定率の実施料を受領する契約を締結しております。また、実施権許諾後も、同社からITK-1に関する治験実施の委託を受け、当該業務から収益を得ております。当社は、同社と良好な取引関係を維持・継続していく方針ですが、同社の経営方針の変更あるいは何らかの事情により、契約の解除・終了や契約条件の変更等が生じた場合には、当社グループの事業、業績や財務状況等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。後期の臨床開発・製造販売承認申請等は富士フイルムグループが実施することとなっており、同社グループが同社グループに課せられる各種規制等を遵守できない場合や、同社グループの判断により開発・申請等が遅延・中止する場合又は開発の方針が変更される場合には、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。今後においては、新規パイプラインの増加を図り新たな取引先を開拓することで、特定の取引先への依存度の低下を図る方針でありますが、製薬企業等とのライセンス契約締結までには長期間を要するため、当面、売上高が特定の取引先に大きく依存する状況にあります。また、新たな製薬企業等とライセンス契約を締結できる保証はありません。 (4) 研究開発活動について① 製造物責任のリスクについて 臨床試験実施中に使用する治験薬、大学及びその提携施設が実施する医師主導治験用に提供する治験薬及び先進医療B(注)に提供している試験薬に起因して未知の重篤な健康被害を被験者又は患者に与えた場合、製造物責任を当社が負う可能性があります。また、治験薬等の提供先もしくはライセンス・アウト先から損害賠償金を請求される可能性があり、その場合には当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。(注)先進医療Bとは、未承認の医薬品や医療機器の使用や適応外使用を伴う医療技術を対象とする制度で、厚生労働省の先進医療会議で先進医療Bとして認められると、保険診療と保険外診療の併用(混合診療)が可能になります。 ② 副作用に関するリスクについて 当社グループが研究開発を実施した治験薬及び上市後の医薬品で、臨床試験段階から製品上市後にかけて、予期せぬ重篤な副作用が発現する可能性があります。重篤な副作用が発現した場合、製造物責任などの損害賠償リスクが発生する可能性がありますが、保険の加入などにより財政的な影響を回避又は最小限にしていくよう対応しております。しかしながら、最終的に当社グループが負担すべき損害賠償額の全額について保険金が支払われない可能性があります。その場合、当社グループの業績及び財務状況等に直接的な悪影響を及ぼす可能性があります。これ以外にも、当社グループへの損害賠償が結果として認められなかった場合であっても、また、損害賠償額の全額が保険で補償された場合であっても、損害賠償請求がなされたという事実により、当社グループに対してネガティブなイメージをステークホルダーに持たれ、その結果、研究開発中の医薬品候補物質及び上市後の医薬品に対する信頼性が損なわれ、その後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。 ③ 研究開発施設等における事故等の発生に関するリスクについて 当社グループは、久留米本社、東京支社及び川崎創薬研究所に研究開発施設を有しております。事故防止の管理教育は徹底しておりますが、何らかの原因により火災や環境汚染事故、感染等が発生した場合、研究開発活動の中断、停止、または、損害賠償や風評被害等重大な損失を招く可能性があり、その場合には当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。また、下記④に記載のとおり、当社グループは、研究開発業務の一部を専門機関である外部委託先(CRO-医薬品開発業務受託機関、治験実施施設、原薬・製剤の製造業者等)に委託しており、これら外部委託先において何らかの原因により火災や環境汚染事故等が発生した場合、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループ及び外部委託先において地震、水害等の自然災害・治安不安などの発生により、設備・インフラが支障をきたし稼働できない状況、従業員等が出社できない状況など一時的又は長期間業務が停止し、臨床開発を一時的又は長期間休止せざるを得ない状況が発生した場合には、当社グループの臨床開発、事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ④ 外部委託先との連携について 当社グループは、経営の機動性・効率性の観点、コスト低減や専門性の高い分野における協業などの観点から主に以下の業務の一部を専門機関に委託しております。・原薬・製剤(治験薬)の製造・評価試験・薬理効果試験・毒性試験等の非臨床試験・臨床試験のモニタリング・データマネジメント・統計解析委託先とは今後も取引を継続していきますが、委託先における自然災害等の不測の事態等により、原薬の安定供給や適時なサービス業務を受けられなくなる可能性がないとは言えません。この場合には当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。上記の委託及び上記以外の業務に関する委託において、当社グループにとって不利な契約改定が行われた場合又は予期せぬ事情により契約が終了した場合には、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 また、外部委託先は日本国内のみならず外国の企業・医療機関にも委託しております。今後も日本・外国を問わず、研究開発において最善の企業・医療機関等に業務の委託を行う予定であります。 外国の企業・医療機関等に業務を委託するに際して、現地のコンサルタントを利用し、コミュニケーションを密にして情報収集に努めるなどトラブルを回避するための措置を講じておりますが、外国における法令等及びその解釈などの法的規制又は商取引慣行などにおいて現地の委託先と問題が生じる可能性、国際税務上の問題又は戦争・紛争などの治安不安などにより事業運営に制約を受ける可能性があります。この場合、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (5) 久留米大学との関係について 当社は、久留米大学との間で、ITK-1にかかる特許権等を同大学から譲り受け、その対価の支払い方法として、かかる特許権等を第三者に実施許諾又は譲渡したことによる収入(実施許諾料、一時金、マイルストン収入、ロイヤリティ等を含む。)の一定料率に相当する金額を同大学に支払う等の契約を締結しており、当該契約に基づき、今後、富士フイルム株式会社から上記に該当する収入を受け取った場合には、一定率の金額を久留米大学に支払うことになります。また、久留米大学から譲り受けた特許権等を、非商業目的の研究開発に用途を限定して、同大学に対して実施権許諾しております。 さらに、同大学との間には、同大学との協議により、以下のような取引等があります。・久留米大学が実施する膠芽腫(脳腫瘍)に関する治験関連業務の受託及び治験薬の提供 (入金額)平成28年3月期 2百万円、平成29年3月期 5百万円 (無償提供の治験薬にかかる当社負担分)平成28年3月期 19百万円、平成29年3月期 5百万円 ・久留米大学が先進医療Bの制度下で実施する前立腺がん対象の臨床試験に対する試験薬(製剤)の供給及び一部検査の受託 (入金額)平成28年3月期 1百万円、平成29年3月期 0円・久留米大学先端癌治療研究センター山田亮教授の当社取締役(非常勤)就任上記の取引及び兼業において利益相反・競合取引等の行為が発生しないように法規制等を遵守するとともに、当社の企業運営上取締役会の監視等を通じて十分留意しております。しかしながら、このような留意にかかわらず、利益相反・競合取引等の行為が発生した場合には、当社の利益及び社会的評価を損ねる可能性があり、その結果として当社グループの事業、業績や財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。 (6) 知的財産権について① 特許の状況について当社グループは、久留米大学等から「特許権又は特許を受ける権利」を正当に譲り受け、又は「実施権の許諾」を受けて、事業を行っております。現在出願中の特許については、特許出願時に特許性等に関する調査を行っておりますが、すべてのものが特許として成立するとは限りません。出願中の特許が成立しなかった場合、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。なお、特許の出願は、特許の内容、対象国などについて費用対効果を考慮して行いますので、研究開発で得られたすべての特許を出願するものではありません。また、出願費用・維持費用等のコストを回収できない可能性があります。 他社において優れた特許・発明が成立する可能性は常に存在しており、当社グループの特許が成立しても、他社の特許・発明により、当社グループの特許が無力化される可能性が潜在しています。天然物に関連する特許については、日本・米国・欧州の特許庁においてそれぞれ審査基準が発行されておりますが、これとは別のガイドライン等を発行する国があり、国によって法令・ガイドラインが異なり複雑な状況となっている場合があります。また国によってその法令・ガイダンス等における解釈や事実認定の方法・解釈が異なる場合があり、他国において当社グループが申請した特許が想定通りに取得・登録されない可能性があります。日本を含め他国においても、解釈等により、第三者が当社グループに通知・補償・支払をすることなく当社グループの特許及びそれに関連する技術を利用し、研究開発、医薬品・薬剤の販売をする可能性があります。 なお、上記について、現在、当社グループのパイプラインにおいて、その実施に支障もしくは支障をきたす可能性のある事項は、調査した限りにおいて存在しておりません。 ② 知的財産権に関する訴訟及びクレーム等について本書提出日現在において、当社グループの事業に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレームといった問題が発生した事実はありません。当社グループは、弁護士及び弁理士との連携を図って可能な限り特許侵害・被侵害の発生リスクを軽減する対策を講じております。また当社グループは、現時点において、当社グループの事業に関し他社が保有する特許等への抵触により、事業に重大な影響を及ぼす可能性は少ないと考えております。ただし、今後において当社グループが第三者との間の法的紛争に巻き込まれた場合、弁護士等と協議のうえ、その内容によって個別に対応策を検討していく方針でありますが、解決に時間及び多大の費用を要する可能性があり、場合によっては当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ③ 職務発明について役員、従業員等の職務発明の発明者に対し、今後相当の対価を支払う場合があります。当社グループでは職務発明に関する規程を設けておりますが、これまで発明者との間で問題は生じておりません。しかしながら、将来、発明者との間で対価の支払請求等について問題が生じる可能性があります。その場合、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (7) 経営成績の推移等について① 研究開発費が多額の見通しであることについて当社グループによる医薬品候補物質の研究開発の期間は長期間にわたります。また、研究開発の期間においては非常に多くの実証・確認すべき事項があること、また当社グループでは日本国内のみならず海外においても研究開発活動を行い、外部委託先も海外の企業等となることなどから研究開発費は多額となる見通しであります。 製薬企業等とのライセンス契約から発生する契約一時金収入、マイルストン収入、ロイヤリティ収入を研究開発中のパイプライン及び新規パイプラインに再投資することを事業及び資金サイクルとしていくこととしておりますが、製薬企業等との契約締結が想定通りに進まない場合、既存のライセンス・アウト先との契約解消等が生じた場合又は既存のパイプラインにおいて想定以上の研究開発費が必要となった場合などにおいては、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ② 過年度の業績について主要な経営指標等の推移は以下のとおりであります。 回次第10期第11期第12期第13期第14期決算年月平成25年3月平成26年3月平成27年3月平成28年3月平成29年3月売上高(千円)451,495933,388821,625822,556529,612経常利益又は経常損失(△)(千円)219,53719,144△413,501△992,977△1,116,556親会社株主に帰属する当期純利益又は当期純損失(△)(千円)217,61017,485△412,435△994,464△1,113,661営業活動によるキャッシュ・フロー(千円)―37,487△447,197△908,711△1,067,512 (注) 1.売上高には、消費税等は含まれておりません。2.第10期までは、キャッシュ・フロー計算書を作成しておりませんので、営業活動によるキャッシュ・フローは記載しておりません。3.第14期(当連結会計年度)が連結初年度となりますので、第13期以前については、単体の数値を記載しております。4.第10期から第13期の親会社株主に帰属する当期純利益又は当期純損失については、単体の当期純利益又は当 期純損失を記載しております。 過年度の業績については、以下のとおりであります。(売上高について)第10期においては、第Ⅲ相臨床試験にかかる準備業務を行っており、その準備業務に係る売上高として、第Ⅲ相臨床試験に使用される治験薬の売却及び開発協力金収入を計上いたしました。第11期の平成25年6月に第Ⅲ相臨床試験を開始しました。富士フイルム株式会社から第Ⅲ相臨床試験にかかる関連業務を受託したことにより、治験施設に関連する売上及び臨床開発受託に関する報酬を計上することとなりました。第12期においては、売上高の内容は第11期と同様でありますが、第Ⅲ相臨床試験の初年度に多く計上される治験施設との契約金が、第Ⅲ相臨床試験の2年目である第12期においては減少したことなどにより、第11期と比べて売上高は減少しました。第13期においては、内容・金額ともに第12期と同水準の売上を計上しました。第14期においては、ITK-1の第Ⅲ相試験の症例登録が完了し、臨床開発受託業務の活動量が平準化されたことに伴い、売上高が減少しました。(親会社株主に帰属する当期純利益及び当期純損失について)第10期においては、研究開発用に製造していた治験薬を第Ⅲ相臨床試験に使用することになり、当該治験薬を富士フイルム株式会社に譲渡し、その対価を受領しましたが、この治験薬の費用は過年度において研究開発費として費用計上していたため、当期には費用が発生しなかったことにより、多額の当期純利益の計上となりました。第11期においては、売上高が大幅に増加しましたが、その売上高に対応する費用も増加したため、また、第10期で行った治験薬の譲渡は発生しなかったため、当期純利益は第10期と比べて減少しました。第12期においては、GRN-1201が米国で研究開発活動を本格的に開始したため、その研究開発費の増加を主要因として、当期純損失を計上することとなりました。第13期においては、GRN-1201の治験申請(IND)に向けた非臨床試験の実施、製剤開発及び治験申請(IND)後の第Ⅰ相臨床試験の準備と第12期に比べて研究開発活動を積極的に実施したため、また、株式公開に係る費用が発生したため、第12期と比べて当期純損失が増加することとなりました。第14期においては、新規パイプラインの研究開発の推進および事業開発を担う人材を積極的に採用したことにより人件費などが増加し、第13期と比べて親会社株主に帰属する当期純損失が増加することとなりました。 当社グループの携わる事業は創薬事業であり、当面は研究開発のステージが続き、製品の販売までまだ数年を要します。研究開発期間においては、ライセンス・アウト先からの契約一時金収入、開発協力金収入及びマイルストン収入が主な収入になります。今後、株式市場からの資金調達やライセンス・アウト先からの収入により財務基盤の強化を図ってまいりますが、資金調達やライセンス・アウト先からの収入の状況によっては、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性がありますので、資金収支を勘案しながら研究開発を行ってまいります。また、GRN-1201などのパイプラインにかかる研究開発費は今後もライセンス・アウトまでは引き続き発生し、損失を計上することが予想されます。当初想定した通りにライセンス・アウトができない場合及びライセンス・アウトの条件が当初の想定より下回った場合には、引き続き損失を計上することが予想されます。新規パイプラインの導入においても、今後は積極的にがん免疫治療薬分野での開発領域の拡張を図る予定でありますので、探索的研究(シーズの開発)から、技術の導入及び共同研究の締結・実施まで様々な形態を模索しながら推進していく予定であります。そのうえ、今後、多額の研究開発費が発生いたします。新規パイプライン導入の可否を判断するために行う事前の研究、導入した新規パイプラインの研究開発業務が想定よりも増大し費用の増加・スケジュールの遅延、または想定したライセンス・アウト時期の遅延などにより、多額の損失を計上する可能性があります。さらに、がんペプチドワクチンが日本において承認・上市した実績がまだありませんので、持続的な売上成長や経常的なキャッシュ・フローを獲得できるか否か等を予測する判断材料としては、過去の業績及びその推移は不十分であると考えられます。 ③ 為替相場変動リスクにかかる事項グローバルな展開を予定しているがんペプチドワクチンのパイプラインであるGRN-1201は米国で研究開発を行っており、米国及び欧州の外部委託先への委託費を外貨建てで支払いをしております。また、ITK-1においても、原薬を輸入しており、外貨建てで支払いをしております。外貨建てで支払われる研究開発費が今後増加する可能性があり、換算レートの変動によっては、円換算後の支払額が想定よりも多額になる可能性があり当社の業績、財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (8) 経営上の重要な契約について経営上重要と思われる契約の概要は、「第2 事業の状況 5 経営上の重要な契約等」に記載の通りであります。現時点において、経営上の重要な契約の相手先とは、当該契約の遂行に支障をきたすような事象は発生しておりませんが、今後において、当該契約の期間満了、相手先の経営状態の悪化や経営方針の変更よる契約解除その他の理由による終了、もしくは当社グループにとって不利な改定が行われた場合、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (9) 社内体制について① 小規模組織であることについて 当社グループは、役員8名(取締役5名、監査役3名)、従業員は37名(平成29年3月31日現在)であり小規模な組織となっており、内部管理体制も規模に応じたものとなっております。人員については、研究開発の状況に応じて増員を図っていく予定であり、内部管理体制も規模に応じて体制の強化を図っていく予定であります。しかし、小規模組織のため、役員はじめ従業員においてもそれぞれが重要な役割を持って業務に従事しており、特定の役員・従業員への過度な負担・依存とならないよう経営組織の強化を図る予定でありますが、退任・退職により人材が流出した場合、長期休養等により長期間業務の遂行が困難となった場合、代替要員を適時に確保できない場合、業務の引継ぎが不十分となった場合などにおいては、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ② 人材育成・確保について当社グループが成長を続けていくために不可欠な要素の一つが、優秀な人材の確保育成であります。今後も、特に研究開発分野における専門的な知識・技能をもった優秀な人材の確保育成が必要であると考えております。しかしながら、当社グループの想定した人材の確保に支障が生じた場合、又は優秀な人材の社外流出が生じた場合には、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ③ 情報管理について当社グループの事業においては、研究開発におけるデータ、ノウハウ、技術など、経理業務における財務データ、人事業務における役員、社員に関する情報などは非常に重要な機密事項になります。また、業務を通して入手した個人情報も重要な機密事項となります。その機密事項の流出リスクを低減するために、機密事項を取り扱う役員、社員に対しては規程等を整備し、情報管理の重要性を周知徹底するとともに、取引先等と守秘義務に関する契約を締結するなど、厳重な情報管理に努めております。 しかしながら、当社グループの通信インフラの破壊や故障などにより当社グループが利用しているシステム全般が正常に稼働しない状況に陥ってしまった場合、システムに不具合が発生した場合、もしくは役員・職員、取引先等により情報管理が十分に遵守されず、重要な機密情報・個人情報などが漏えいした場合には、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (10) その他① 新株予約権にかかる事項当社グループは、優秀な人材を確保するため、また当社グループの事業及び研究開発活動へのモチベーションの維持・向上を目的として、新株予約権(ストック・オプション)を役員、社員及び社外の協力者等に付与しております。今後においても上記の目的のため新たに新株予約権を付与していく予定であります。これらの新株予約権が行使された場合には、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。なお、当社が発行した新株予約権にかかる潜在的株式の数は1,586,700株(平成29年5月31日現在)であり、発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は4.26%であります。新株予約権の状況及び内容につきましては、「第4 提出会社の状況 1.株式等の状況 (2) 新株予約権等の状況」及び「第4 提出会社の状況 1.株式等の状況 (9)ストックオプション制度の内容」をご参照ください。 ② 資金使途にかかる事項平成27年10月の株式上場時における公募増資の資金使途につきましては、主にGRN-1201の臨床開発試験、新規パイプライン導入のための研究開発費及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。また、平成28年5月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、主にGRN-1201の新規適応症への新規パイプラインに関する臨床開発試験、ITK-1及びGRN-1201に続く新規パイプラインの探索・研究開発のための研究開発費、M&A資金及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。しかしながら、今後において事業環境の変化等により、また、上記本項目「事業等のリスク」に記載のリスクの発生により、たとえ計画通りに使用した場合でも、本書提出日現在において想定している成果を達成できない可能性があります。なお、当社グループが携わる研究開発の領域においては、技術開発の変化など外部環境が急速に変化する可能性があります。新薬の上市、法令等の改正、当社の研究開発・臨床試験の進捗状況によっては、上記の資金使途以外の事象に資金を充当する可能性があり、今後の戦略の策定において新たな事象の発生、新たな戦略の実行により、研究開発資金が想定以上に増加する可能性もあります。 ③ M&A等(買収、合併等)による事業拡大に関する事項当社グループは、事業拡大へ向けた新たな経営資源を取得するため、また保有する経営資源の効率的運用と企業価値を最大化するため、M&A等を活用して事業規模の拡大を図ること検討してまいります。M&A候補の選定に当たりましては、詳細なデューデリジェンスを行うことにより極力リスクを回避してまいりますが、買収後の偶発債務の発生や、のれんが発生する場合は買収後の事業環境や競合状況の変化等により想定通りの効果が得られない場合にのれんの減損損失を計上する等、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。 ④ 資金調達にかかる事項当社グループのパイプラインの研究開発が完了し製品化となるまでまだ長期間を要しますので、今後も多額の資金調達を必要とします。この期間において、事業計画の修正を必要とする状況になった場合、資金不足が生じる可能性があります。その場合、公的補助金の活用や日本国内のみならず海外企業・機関を含めた新規提携契約の締結、新株発行等により資金需要に対応していく予定であります。しかしながら、適切なタイミングで資金調達ができなかった場合には、当社グループの事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。また、今後において、さらなる事業拡大等のための資金調達の方法として新株発行や新株予約権付社債などを発行する可能性があります。新株等発行の結果、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。 ⑤ 自然災害について 当社グループは、久留米本社、東京支社及び川崎創薬研究所に事業所及び研究施設を設けております。久留米本社では、臨床検査の実施、原薬・製剤の保管などの業務を行っており、東京支社では、当社の管理部門及び研究・開発部門を設置しております。また、川崎創薬研究所では、がん免疫治療薬分野における新しい技術・治療薬に関する新規パイプラインを創製する研究活動を行っております。当社グループの事業地域で地震等の大規模な災害が発生した場合には、不測の事態の発生により事業活動が停滞する可能性があります。久留米、東京のいずれかで大規模な災害が発生した場合でも、いずれかで業務を継続できる体制となっており、また電子データ等のバックアップも前述の各地域以外の場所に設置しております。しかしながら、自然災害の規模、状況によっては、当社グループの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
FY2016|18,415 文字
4 【事業等のリスク】当社の事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。また、当社として必ずしも重要なリスクと考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で又は当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、リスクの発生をすべて回避できる保証はありません。また、以下の記載内容は当社のリスクすべてを網羅するものではありませんのでご留意ください。 なお、本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。 (1) 創薬事業全般にかかるリスクについて当社は、研究の初期段階の探索的研究から現在ITK-1について実施中の第Ⅲ相臨床試験に至るまで、幅広い段階の医薬品開発を実施しております。研究の初期段階から医薬品の製造販売の段階に至るまで、数多くの課題・項目をクリアし、規制当局からの承認及び認可の取得を要し、薬事規制等の法的な規制にも対応していく必要があります。そのため、長期間におよぶ研究開発体制を維持するために多額の資金を必要とします。また、新規の医薬品候補物質の市場は、国内外を問わないことから、資金力の豊富な国際的な製薬企業や国内においても多くの企業・研究開発機関と競合しております。 ① 収益の不確実性について当社の事業は、医薬品候補物質の有効性及び安全性を評価するための初期段階の研究開発(探索的研究、非臨床試験、初期臨床試験等)を自社で行い、その後、製薬企業に対して当社が有する医薬品候補物質の開発製造販売に係る知的財産権の使用実施許諾(ライセンス・アウト)を行い、当該製薬企業からライセンス収入を得るものです。 ライセンス収入の形態は、ライセンス契約締結時に発生する契約一時金、開発進捗に伴って発生するマイルストン収入(臨床試験の開始や終了時、又は製造販売承認申請時等の予め定めた開発の節目(マイルストン)毎に支払われる収入)、上市後においてライセンス・アウト先である製薬会社が行う医薬品販売に対するロイヤリティ収入等があります。この他に、ライセンス・アウト後に当社がライセンス・アウト先製薬企業から委託を受けて共同で開発を継続する場合に、当該ライセンス・アウト先製薬企業から開発協力金として研究開発費を受領することもあります。ライセンス契約の締結は、製薬企業から、それまでの研究開発で得られた医薬品候補物質の有効性及び安全性に関して、並びに予想される対象患者数や薬価、特許存続期間等の事業性に関して一定の評価をされる必要があります。従って、製薬企業から評価されうる研究開発成果が得られない可能性、研究成果が得られたとしても、研究開発の遅延により想定通りのタイミングで評価されない可能性、想定通りの評価が得られず、契約一時金をはじめ上記の各種収入を当社の想定する規模の金額で契約できない可能性、当社が想定するタイミングでライセンス契約を締結できない可能性、又はライセンス契約に至らない可能性があります。 またライセンス・アウト後も、次の開発段階に進むために必要な臨床試験成績が得られない可能性、開発途中で競合新薬の上市、治療法そのものの変化のほか、特許係争の発生等で事業性が大きく毀損されたとライセンス・アウト先製薬企業が判断する場合は、開発スケジュールが遅延する可能性や、ライセンス契約解消に至る可能性があります。さらに、上市に至った場合においても、薬価が当初の想定を大きく下回ったり、市場環境等の状況が当初の想定より悪化する可能性があります。 上記の場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 また、マイルストン収入及びロイヤリティ収入の発生については、ライセンス・アウト先製薬企業等の研究開発の進捗及び医薬品発売・販売の状況等に依存するものであり、事業収益として計上されるには長期間を要する可能性があり、またマイルストンに至らない場合、これらの事業収益が計上されない可能性もあります。さらに、契約一時金収入、マイルストン収入は継続的な収入ではなく、一定の条件の達成等を前提として一時的に発生する収入ですので、その収入の計上時期により、年度決算・四半期決算の売上高・利益等が非連続的に偏重する可能性、年度決算比較・四半期決算比較の売上高・利益等において大幅な変動・乖離が生じる可能性があります。また上記の収入の計上時期が想定から遅れた場合、決算短信で公表する業績予想が大幅に変更される可能性があります。 ② 医薬品開発の不確実性について当社が開発している医薬品候補物質が上市に至るまで、有効性及び安全性の評価に関する数多くの探索及び検証並びに規制当局からの承認が必要とされ、それぞれに対応しなければ、研究開発が進捗しません。研究開発の各段階において、次の段階へ進むか否かの判断は、ライセンス・アウトの前であれば当社が、ライセンス・アウト後であればライセンス・アウト先製薬企業が行いますが、有効性及び安全性に良い評価が得られなかった場合、外部環境の変更等で事業性の喪失が懸念された場合などには、次の研究開発段階への進行が遅れる可能性、研究開発自体を終了・中止せざるを得ない状況になる可能性があります。当社は、医薬品開発の不確実性を低減するために、開発ターゲットの疾患領域に精通する医師(キー・オピニオン・リーダー)、非臨床試験・臨床試験・CMC(Chemistry, Manufacturing and Control:原薬及び製剤の開発)・薬事それぞれに精通する外部専門家(コンサルタント)、並びに規制当局との事前相談を通じた情報収集に基づき試験を設計及び実施しています。しかしながら、予めすべての要因を想定することは極めて困難であり、研究開発中であれば研究開発の大幅な遅れや中止の可能性、製造販売承認申請後であれば国内外の規制当局から追加の臨床試験を求められ、または承認が得られないなどの事態が発生する可能性があります。研究開発が遅れた場合や追加試験が必要となる場合には、計画外の追加資金が必要となり、追加資金確保のために新たな資金調達が必要となる可能性がありますし、その資金調達の実現自体にも不確実性があります。またライセンス契約の存続期間は、特許権の存続・有効期間が終了するまでの期間とされているため、ライセンス契約中にマイルストンが達成できず、当初想定した投資回収額を回収できないリスクがあります。 研究開発を終了・中止せざるを得ない状況になった場合又は研究開発を終えて製造販売に関する承認申請を規制当局に行っても、規制当局から承認されなかった場合には、当初想定していた投資回収額を回収できないリスクがあります。これらの事象が発生した場合、当社のような規模の企業においては影響が非常に大きく、当社の事業、業績や財務状況等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。 ③ 法的規制等にかかる不確実性について 当社が携わる研究開発領域は、ITK-1であれば日本、GRN-1201であれば米国というように研究開発を実施する国ごとに薬事に係る法律、薬価等が関係する医療保険制度及びその他の関係法規・法令による規制が存在します。 非臨床試験においては、医薬品の安全性試験の実施に関する基準であるGLP(Good Laboratory Practice)、原薬等の治験薬の製造においては、医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準であるGMP(Good Manufacturing Practice)に準ずる治験薬GMP、そして臨床試験においては、医薬品の臨床試験の実施に関する基準であるGCP(Good Clinical Practice)を確実に実施していることが研究開発上必須条件となっており、製造販売の段階においては、販売を行う各国で定められている薬事関連法規・法令に従った承認・認可・許可を得る必要があります。当社の事業計画・研究開発計画は、現行の薬事関連法規・法令や規制当局の承認・認可の基準を前提に作成しておりますが、これらの法律・法令及び基準は技術の発展・市場の動向などにより適宜改訂されます。創薬事業は、年単位の長期間にわたる事業であり、その間にこれらの法律・法令・基準等が大きく改訂される可能性、これら法令等が変更される可能性があります。これにより既存の研究開発の体制(組織的な体制、製造方法、開発手法、臨床試験の進め方、追加試験を行う必要性の発生など)の変更が必要となる場合、その体制の変更に速やかに対処できず研究開発が遅延・中止となるリスク、人員確保や設備投資に計画外の追加資金が必要となり、追加資金確保のために新たな資金調達が必要となるリスクがあり、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ④ 競合について当社が携わる研究開発領域は、急激な市場規模の拡大が見込まれており、欧米を中心にベンチャー企業を含む多くの企業が参入する可能性があります。 競合他社の有する医薬品候補物質の研究開発が当社の有する医薬品候補物質と同じ疾患領域で先行した場合、当社の事業の優位性は低下する可能性があります。競合他社による新薬の登場により当社の臨床試験において被験者の登録が停滞し臨床試験が遅延する可能性、目標被験者数に届かず臨床試験が中止となる可能性があります。また、この場合、当社の事業において想定以上の資金が必要となる可能性があり、当社の事業戦略や経営成績等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。さらに、競合する新薬の開発が先行し、又は競合新薬が上市されたことにより、事業性が大きく毀損されたとライセンス・アウト先製薬企業が判断する場合は、開発スケジュールが遅延する可能性や、ライセンス契約解消に至る可能性があります。上市に至った場合においても、他社が同様の効果や、より安全性のある製品を販売した場合、薬価が付かず、想定したロイヤリティが得られない等により、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ⑤ 技術革新について当社が携わる研究開発領域は、技術の革新及び進歩が著しく早いバイオ・テクノロジー分野に属しております。そのため、当社は、大学、公的研究機関及びコンサルタントなどとの連携を通じ、最先端の研究成果・情報を速やかに導入できる体制を構築していく予定であります。しかしながら、急激な研究の進歩などにより医薬品の研究開発において有効と思われる研究成果等への対応が困難となった場合、当社の事業展開に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。また、必要な研究成果を常に追求するためには多額の費用と時間を要することから、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ⑥ 医療費の抑制策について 日本政府は、今後の人口の高齢化及びそれに伴うさらなる医療費の増加を抑制するため、薬価の引き下げ、ジェネリック医薬品の使用推進などの施策を行っております。また、日本のみならず米国や諸外国においても、同様の傾向がみられます。今後の医療費抑制の政策に関する動向によっては、上市した医薬品に想定した薬価が付かず、想定したロイヤリティが得られない等により、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ⑦ 業界の動向について当社の開発するがん治療薬の市場は、患者の高齢化を背景に市場の拡大が予想されております。また、がん治療薬の市場の中で、がん免疫療法(Immuno-Oncology)の分野に属しており、現状、外科的手術、放射線療法そして化学療法(ホルモン療法含む)に加え、いわゆる第4の治療法と言われております。がん免疫療法とは、免疫細胞にがん細胞を狙い撃ちするよう免疫系をコントロールすることによってがん細胞を破壊、または増殖を抑制する治療法です。 当社は、第4の治療法のがん免疫療法のうち、がんペプチドワクチンの研究開発に取り組んでおりますが、日本及び米国ではまだがんペプチドワクチンが承認・上市された実績がないため、想定外の製造上の課題が発生する可能性、予期せぬ副作用が発生する可能性があります。また、急激な技術革新、第5の治療法や新薬の登場により、臨床開発活動に影響を受ける可能性もあります。これらの場合、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (2) パイプラインについて当社の開発するパイプラインは、上市まで数多くの開発課題を解決していく必要があります。各パイプラインが抱えるリスクは以下のとおりです。① ITK-1ITK-1は富士フイルム株式会社にライセンス・アウトされ、日本国内で第Ⅲ相臨床試験を実施中です。富士フイルム株式会社がライセンス・アウト後の研究開発費を原則として負担します。現在は中間解析(注)を平成27年6月に終えて第Ⅲ相臨床試験を計画通りに続行することが適切であると判断され、症例登録活動を終了して一定数の被験者数を確保し、観察期間に入っております。この観察期間の後に臨床試験が終了する予定ですが、以下に記載するような理由により、開発が遅延又は中止となる可能性があります。・主に安全性等に起因する理由に基づく規制当局による当該試験の中断又は中止命令が出る場合・富士フイルム株式会社が開発の方針を変更した場合・富士フイルム株式会社が医薬品候補物質の有効性及び安全性が認められる臨床試験成績が得られなかったと判断した場合・富士フイルム株式会社及び同社のグループ会社(富士フイルムグループ)と進める製造販売承認申請に係る業務及び製剤開発業務において、期待した成績・データが得られなかったことなどによりスケジュール・方針が変更される場合・外部環境の変化 また、第Ⅲ相臨床試験終了後は、富士フイルムグループが規制当局へ製造販売承認申請を行いますが、規制当局が申請データからはITK-1の有効性及び安全性を認められないと判断する場合、規制当局から承認を取得できない、又は追加の臨床試験を求められる可能性があります。 富士フイルムグループは、製造販売承認取得後、引き続き薬価収載を申請しますが、承認されない可能性又は想定した薬価とならず事業性が毀損する可能性があります。 これら上市に至る各プロセスにおいて延期、遅延又は中止とされた場合、当社の事業、業績や財務状況等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。また、追加の資金調達の必要性、業績予想の大幅な修正が必要となる可能性があります。現在までにおいては臨床試験を中断又は中止させなければならないような未知の重篤な副作用は出て来ておりませんが、今後そのような重篤な副作用が出ないという保証はありません。今後において、重篤な副作用が検出された場合には、当社の事業、業績や財務状況等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。 (注)ICH(日米EU医薬品規制調和国際会議)E9ガイドライン「臨床試験のための統計的原則」(平成10年11月30日医薬審第1047号)によりますと、「中間解析とは臨床試験の正式な完了に先立ち、有効性や安全性に関して治療群間を比較することを意図したすべての解析」とされております。医学専門家及び生物統計家から構成される独立した外部機関(データ・モニタリング委員会もしくは効果安全性評価委員会)から中間データのレビューを受け、臨床試験の被験者の利益を保護することを第一義として、試験を計画通りに続行することの適切性に関して勧告を受けます。 ② GRN-1201GRN-1201は、米国で平成27年10月にFDA(米国食品医薬品局)に治験申請(IND)を行い、同年11月にFDAによる審査が終了し、第Ⅰ相臨床試験を実施中であります。GRN-1201では、がんペプチドワクチンと他のがん免疫治療薬などを併用した臨床試験を初期第Ⅱ相臨床試験まで実施し、グローバル製薬企業へライセンス・アウトする予定です。GRN-1201においては、自社で研究開発を行っておりますので、初期第Ⅱ相臨床試験までの研究開発費を当社が負担する予定であります。今後、以下に記載するような理由により、開発が遅延又は中止となる可能性があります。・臨床試験実施中に疾患領域において競合する新薬が上市される等の理由により、必要となる被験者数を適時に獲得できない場合・主に安全性等に起因する理由に基づくFDAによる当該試験の中断又は中止命令が出る場合・第Ⅰ相臨床試験及び初期第Ⅱ相臨床試験において期待する有効性及び安全性を示すデータが得られない場合 ・GRN-1201における製剤開発において、期待する十分なデータが得られなかった場合・臨床開発の後期を担うライセンス・アウト先が見つかるのに想定を大幅に越える時間がかかる、又は見つからない場合・外部環境の変化この場合、当社の事業、業績や財務状況等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。また、追加の資金調達の必要性が生じる可能性があります。 ③ 新規パイプライン当社の企業価値の向上及び患者のクオリティ・オブ・ライフを維持できる新しいがん治療薬を創出するという経営理念に基づき、当社は、がん免疫治療薬分野を中心に順次開発領域を拡大し、アンメット・メディカル・ニーズを満たす医薬品候補物質を創出・獲得し、共同研究等の第三者との連携も視野に入れ開発を進める方針です。 このような新規パイプラインを適時に創出・獲得及び開発できない場合、これらに想定以上の資金が必要となった場合、又は開発後に引受け手となるライセンス・アウト先が見つからず、適時にライセンス契約を締結できない場合などにおいて、事業計画の修正が必要となり、または、既存パイプラインの開発が遅延又は中止された場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。また、追加の資金調達の必要性、業績予想の大幅な修正が必要となる可能性があります。 また、当社が提供する医薬品候補物質が、製薬企業等の研究開発の方針・ニーズに適時・的確に合致する保証はなく、契約の締結、研究開発の進捗が想定通りに進まない可能性、締結する契約の内容において、当社に追加的な義務や金銭的負担等が生じる可能性があります。 (3) 特定の取引先への依存について当社の販売先は、「第2 事業の状況 2 生産、受注及び販売の状況 (3) 販売実績」に記載の通り、ITK-1のライセンス・アウト先である富士フイルム株式会社への依存度が高いものとなっており、当面はこの状況が続く見込みです。当社は、同社に対し、ITK-1に関する特許及びノウハウの独占的通常実施権を許諾し、製造販売承認申請にかかる一定のマイルストン毎に一時金を受領し、上市後は、医薬品の販売高の一定率の実施料を受領する契約を締結しております。また、実施権許諾後も、同社からITK-1に関する治験実施の委託を受け、当該業務から収益を得ております。当社は、同社と良好な取引関係を維持・継続していく方針ですが、同社の経営方針の変更あるいは何らかの事情により、契約の解除・終了や契約条件の変更等が生じた場合には、当社の事業、業績や財務状況等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。後期の臨床開発・製造販売承認申請等は富士フイルムグループが実施することとなっており、同社グループが同社グループに課せられる各種規制等を遵守できない場合や、同社グループの判断により開発・申請等が遅延・中止する場合又は開発の方針が変更される場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。今後においては、新規パイプラインの増加を図り新たな取引先を開拓することで、特定の取引先への依存度の低下を図る方針でありますが、製薬企業等とのライセンス契約締結までには長期間を要するため、当面、売上高が特定の取引先に大きく依存する状況にあります。また、新たな製薬企業等とライセンス契約を締結できる保証はありません。 (4) 研究開発活動について① 製造物責任のリスクについて 臨床試験実施中に使用する治験薬、久留米大学及びその提携施設において実施している医師主導治験用に提供している治験薬及び先進医療B(注)に提供している試験薬に起因して未知の重篤な健康被害を被験者又は患者に与えた場合、製造物責任を当社が負う可能性があります。また、治験薬等の提供先もしくはライセンス・アウト先から損害賠償金を請求される可能性があり、その場合には当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。(注)先進医療Bとは、未承認の医薬品や医療機器の使用や適応外使用を伴う医療技術を対象とする制度で、厚生労働省の先進医療会議で先進医療Bとして認められると、保険診療と保険外診療の併用(混合診療)が可能になります。 ② 副作用に関するリスクについて 当社が研究開発を実施した治験薬及び上市後の医薬品で、臨床試験段階から製品上市後にかけて、予期せぬ重篤な副作用が発現する可能性があります。重篤な副作用が発現した場合、製造物責任などの損害賠償リスクが発生する可能性がありますが、保険の加入などにより財政的な影響を回避又は最小限にしていくよう対応しております。しかしながら、最終的に当社が負担すべき損害賠償額の全額について保険金が支払われない可能性があります。その場合、当社の業績及び財務状況等に直接的な悪影響を及ぼす可能性があります。これ以外にも、当社への損害賠償が結果として認められなかった場合であっても、また、損害賠償額の全額が保険で補償された場合であっても、損害賠償請求がなされたという事実により、当社に対してネガティブなイメージをステークホルダーに持たれ、その結果、研究開発中の医薬品候補物質及び上市後の医薬品に対する信頼性が損なわれ、その後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。 ③ 研究開発施設等における事故等の発生に関するリスクについて 当社は、久留米本社及び東京支社に研究開発施設を有しております。事故防止の管理教育は徹底しておりますが、何らかの原因により火災や環境汚染事故、感染等が発生した場合、研究開発活動の中断、停止、または、損害賠償や風評被害等重大な損失を招く可能性があり、その場合には当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。また、下記④に記載のとおり、当社は、当社の研究開発業務の一部を専門機関である外部委託先(CRO-医薬品開発業務受託機関、治験実施施設、原薬・製剤の製造業者等)に委託しており、これら外部委託先において何らかの原因により火災や環境汚染事故等が発生した場合、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 当社及び外部委託先において地震、水害等の自然災害・治安不安などの発生により、設備・インフラが支障をきたし稼働できない状況、従業員等が出社できない状況など一時的又は長期間業務が停止し、臨床開発を一時的又は長期間休止せざるを得ない状況が発生した場合には、当社の臨床開発、事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ④ 外部委託先との連携について 当社は、経営の機動性・効率性の観点、コスト低減や専門性の高い分野における協業などの観点から主に以下の業務の一部を専門機関に委託しております。・原薬・製剤(治験薬)の製造・評価試験・薬理効果試験・毒性試験等の非臨床試験・臨床試験のモニタリング・データマネジメント・統計解析委託先とは今後も取引を継続していきますが、委託先における自然災害等の不測の事態等により、原薬の安定供給や適時なサービス業務を受けられなくなる可能性がないとは言えません。この場合には当社の業績等に影響を及ぼす可能性があります。上記の委託及び上記以外の業務に関する委託において、当社にとって不利な契約改定が行われた場合又は予期せぬ事情により契約が終了した場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 また、外部委託先は日本国内のみならず外国の企業・医療機関にも委託しております。今後も日本・外国を問わず、研究開発において最善の企業・医療機関等に業務の委託を行う予定であります。 外国の企業・医療機関等に業務を委託するに際して、現地のコンサルタントを利用し、コミュニケーションを密にして情報収集に努めるなどトラブルを回避するための措置を講じておりますが、外国における法令等及びその解釈などの法的規制又は商取引慣行などにおいて現地の委託先と問題が生じる可能性、国際税務上の問題又は戦争・紛争などの治安不安などにより事業運営に制約を受ける可能性があります。この場合、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (5) 久留米大学との関係について 当社は、久留米大学との間で、ITK-1にかかる特許権等を同大学から譲り受け、その対価の支払い方法として、かかる特許権等を第三者に実施許諾又は譲渡したことによる収入(実施許諾料、一時金、マイルストン収入、ロイヤリティ等を含む。)の一定料率に相当する金額を同大学に支払う等の契約を締結しており、当該契約に基づき、今後、富士フイルム株式会社から上記に該当する収入を受け取った場合には、一定率の金額を久留米大学に支払うことになります。また、久留米大学から譲り受けた特許権等を、非商業目的の研究開発に用途を限定して、同大学に対して実施権許諾しております。 さらに、同大学との間には、同大学との協議により、以下のような取引等があります。・久留米大学が実施する膠芽腫(脳腫瘍)及び前立腺がん医師主導治験に関する治験関連業務の受託及び治験薬の提供(膠芽腫対象の治験のみ) (入金額)平成27年3月期 4百万円、平成28年3月期 2百万円 (無償提供の治験薬にかかる当社負担分)平成27年3月期 10百万円、平成28年3月期 19百万円 なお、前立腺がん対象の医師主導治験に関する治験関連業務の受託は平成27年3月期の上半期に終了しております。・久留米大学が先進医療Bの制度下で実施する前立腺がん対象の臨床試験に対する試験薬(製剤)の供給及び一部検査の受託 (入金額)平成27年3月期 1百万円、平成28年3月期 1百万円 ・久留米大学との共同研究費用 (支払額)平成27年3月期 10百万円・久留米大学先端癌治療研究センター山田亮教授の当社取締役(非常勤)就任上記の取引及び兼業において利益相反・競合取引等の行為が発生しないように法規制等を遵守するとともに、当社の企業運営上取締役会の監視等を通じて十分留意しております。しかしながら、このような留意にかかわらず、利益相反・競合取引等の行為が発生した場合には、当社の利益及び社会的評価を損ねる可能性があり、その結果として当社の事業、業績や財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。 (6) 知的財産権について① 特許の状況について当社は、久留米大学等から「特許権又は特許を受ける権利」を正当に譲り受け、又は「実施権の許諾」を受けて、事業を行っております。現在出願中の特許については、特許出願時に特許性等に関する調査を行っておりますが、すべてのものが特許として成立するとは限りません。出願中の特許が成立しなかった場合、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。なお、特許の出願は、特許の内容、対象国などについて費用対効果を考慮して行いますので、研究開発で得られたすべての特許を出願するものではありません。また、出願費用・維持費用等のコストを回収できない可能性があります。 他社において優れた特許・発明が成立する可能性は常に存在しており、当社の特許が成立しても、他社の特許・発明により、当社の特許が無力化される可能性が潜在しています。天然物に関連する特許については、日本・米国・欧州の特許庁においてそれぞれ審査基準が発行されておりますが、これとは別のガイドライン等を発行する国があり、国によって法令・ガイドラインが異なり複雑な状況となっている場合があります。また国によってその法令・ガイダンス等における解釈や事実認定の方法・解釈が異なる場合があり、他国において当社が申請した特許が想定通りに取得・登録されない可能性があります。日本を含め他国においても、解釈等により、第三者が当社に通知・補償・支払をすることなく当社の特許及びそれに関連する技術を利用し、研究開発、医薬品・薬剤の販売をする可能性があります。 なお、上記について、現在、当社のパイプラインにおいて、その実施に支障もしくは支障をきたす可能性のある事項は、調査した限りにおいて存在しておりません。 ② 知的財産権に関する訴訟及びクレーム等について本書提出日現在において、当社の事業に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレームといった問題が発生した事実はありません。当社は、弁護士及び弁理士との連携を図って可能な限り特許侵害・被侵害の発生リスクを軽減する対策を講じております。また当社は、現時点において、当社の事業に関し他社が保有する特許等への抵触により、事業に重大な影響を及ぼす可能性は少ないと考えております。ただし、今後において当社が第三者との間の法的紛争に巻き込まれた場合、弁護士等と協議のうえ、その内容によって個別に対応策を検討していく方針でありますが、解決に時間及び多大の費用を要する可能性があり、場合によっては当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ③ 職務発明について役員、従業員等の職務発明の発明者から特許等を譲り受ける場合、当社は特許法に基づき相当の対価を支払わなければなりません。当社では社内ルールを設けておりますが、これまで発明者との間で問題は生じておりません。しかしながら、将来、発明者との間で対価の支払請求等について問題が生じる可能性があります。その場合、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (7) 経営成績の推移等について① 研究開発費が多額の見通しであることについて当社による医薬品候補物質の研究開発の期間は長期間にわたります。また、研究開発の期間においては非常に多くの実証・確認すべき事項があること、また当社では日本国内のみならず海外においても研究開発活動を行い、外部委託先も海外の企業等となることなどから研究開発費は多額となる見通しであります。 製薬企業等とのライセンス契約から発生する契約一時金収入、マイルストン収入、ロイヤリティ収入を研究開発中のパイプライン及び新規パイプラインに再投資することを事業及び資金サイクルとしていくこととしておりますが、製薬企業等との契約締結が想定通りに進まない場合、既存のライセンス・アウト先との契約解消等が生じた場合又は既存のパイプラインにおいて想定以上の研究開発費が必要となった場合などにおいては、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ② 過年度の業績について当社の主要な経営指標等の推移は下記のとおりであります。 回次第9期第10期第11期第12期第13期決算年月平成24年3月平成25年3月平成26年3月平成27年3月平成28年3月売上高(千円)194,806451,495933,388821,625822,556経常利益又は経常損失(△)(千円)29,786219,53719,144△413,501△992,977当期純利益又は当期純損失(△)(千円)27,864217,61017,485△412,435△994,464営業活動によるキャッシュ・フロー(千円)――37,487△447,197△908,711 (注) 1.売上高には、消費税等は含まれておりません。2.第10期までは、キャッシュ・フロー計算書を作成しておりませんでしたので、営業活動によるキャッシュ・フローは記載しておりません。 過年度の業績については、下記のとおりであります。(売上高について)第9期の平成23年11月に富士フイルム株式会社にITK-1をライセンス・アウトいたしました。これにより、第9期以降はITK-1の第Ⅲ相臨床試験に注力するため、富士フイルム株式会社からの開発協力金が主な売上高となりました。第9期及び第10期においては、第Ⅲ相臨床試験にかかる準備業務を行っており、その準備業務に係る売上高として、第9期に共同開発金収入、第10期には第Ⅲ相臨床試験に使用される治験薬の売却及び開発協力金収入を計上いたしました。第11期の平成25年6月に第Ⅲ相臨床試験を開始しました。富士フイルム株式会社から第Ⅲ相臨床試験にかかる関連業務を受託したことにより、治験施設に関連する売上及び臨床開発受託に関する報酬を計上することとなりました。第12期においては、売上高の内容は第11期と同様でありますが、第Ⅲ相臨床試験の初年度に多く計上される治験施設との契約金が、第Ⅲ相臨床試験の2年目である第12期においては減少したことなどにより、第11期と比べて売上高は減少しました。第13期においては、内容・金額ともに第12期と同水準の売上を計上しました。(当期純利益及び当期純損失について)第9期においては、平成23年11月に富士フイルム株式会社にライセンス・アウトしたことにより共同開発金収入を計上することとなり、研究開発費等の費用を賄うこととなり当期純利益を計上いたしました。第10期においては、研究開発用に製造していた治験薬を第Ⅲ相臨床試験に使用することになり、当該治験薬を富士フイルム株式会社に譲渡し、その対価を受領しましたが、この治験薬の費用は過年度において研究開発費として費用計上していたため、当期には費用が発生しなかったことにより、多額の当期純利益の計上となりました。第11期においては、売上高が大幅に増加しましたが、その売上高に対応する費用も増加したため、また、第10期で行った治験薬の譲渡は発生しなかったため、当期純利益は第10期と比べて減少しました。第12期においては、GRN-1201が米国で研究開発活動を本格的に開始したため、その研究開発費の増加を主要因として、当期純損失を計上することとなりました。第13期においては、GRN-1201の治験申請(IND)に向けた非臨床試験の実施、製剤開発及び治験申請(IND)後の第Ⅰ相臨床試験の準備と第12期に比べて研究開発活動を積極的に実施したため、また、株式公開に係る費用が発生したため、第12期と比べて当期純損失が増加することとなりました。 当社の携わる事業は創薬事業であり、当面は研究開発のステージが続き、製品の販売までまだ数年を要します。研究開発期間においては、ライセンス・アウト先からの契約一時金収入、開発協力金収入及びマイルストン収入が主な収入になります。今後、株式市場からの資金調達やライセンス・アウト先からの収入により財務基盤の強化を図ってまいりますが、資金調達やライセンス・アウト先からの収入の状況によっては、当社の業績及び財政状態に影響を与える可能性がありますので、資金収支を勘案しながら研究開発を行ってまいります。また、GRN-1201の研究開発費は今後もライセンス・アウトまでは引き続き発生し、損失を計上することが予想されます。当初想定した通りにライセンス・アウトができない場合及びライセンス・アウトの条件が当初の想定より下回った場合には、引き続き損失を計上することが予想されます。新規パイプラインの導入においても、今後は積極的にがん免疫治療薬分野での開発領域の拡張を図る予定でありますので、探索的研究(シーズの開発)から、技術の導入及び共同研究の締結・実施まで様々な形態を模索しながら推進していく予定であります。そのうえ、今後、多額の研究開発費が発生いたします。新規パイプライン導入の可否を判断するために行う事前の研究、導入した新規パイプラインの研究開発業務が想定よりも増大し費用の増加・スケジュールの遅延、または想定したライセンス・アウト時期の遅延などにより、多額の損失を計上する可能性があります。さらに、がんペプチドワクチンが日本において承認・上市した実績がまだありませんので、持続的な売上成長や経常的なキャッシュ・フローを獲得できるか否か等を予測する判断材料としては、過去の業績及びその推移は不十分であると考えられます。 ③ 為替相場変動リスクにかかる事項グローバルな展開を予定しているがんペプチドワクチンのパイプラインであるGRN-1201は米国で研究開発を行っており、米国及び欧州の外部委託先への委託費を外貨建てで支払いをしております。また、ITK-1においても、原薬を輸入しており、外貨建てで支払いをしております。外貨建てで支払われる研究開発費が今後増加する可能性があり、換算レートの変動によっては、円換算後の支払額が想定よりも多額になる可能性があり当社の業績、財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (8) 経営上の重要な契約について経営上重要と思われる契約の概要は、「第2 事業の状況 5 経営上の重要な契約等」に記載の通りであります。現時点において、経営上の重要な契約の相手先とは、当該契約の遂行に支障をきたすような事象は発生しておりませんが、今後において、当該契約の期間満了、相手先の経営状態の悪化や経営方針の変更よる契約解除その他の理由による終了、もしくは当社にとって不利な改定が行われた場合、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (9) 社内体制について① 小規模組織であることについて 当社は、役員8名(取締役5名、監査役3名)、従業員は21名(平成28年3月31日現在)であり小規模な組織となっており、内部管理体制も規模に応じたものとなっております。人員については、研究開発の状況に応じて増員を図っていく予定であり、内部管理体制も規模に応じて体制の強化を図っていく予定であります。しかし、小規模組織のため、役員はじめ従業員においてもそれぞれが重要な役割を持って業務に従事しており、特定の役員・従業員への過度な負担・依存とならないよう経営組織の強化を図る予定でありますが、退任・退職により人材が流出した場合、長期休養等により長期間業務の遂行が困難となった場合、代替要員を適時に確保できない場合、業務の引継ぎが不十分となった場合などにおいては、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ② 人材育成・確保について当社が成長を続けていくために不可欠な要素の一つが、優秀な人材の確保育成であります。今後も、特に研究開発分野における専門的な知識・技能をもった優秀な人材の確保育成が必要であると考えております。しかしながら、当社の想定した人材の確保に支障が生じた場合、又は優秀な人材の社外流出が生じた場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 ③ 情報管理について当社の事業においては、研究開発におけるデータ、ノウハウ、技術など、経理業務における財務データ、人事業務における役員、社員に関する情報などは非常に重要な機密事項になります。また、業務を通して入手した個人情報も重要な機密事項となります。その機密事項の流出リスクを低減するために、機密事項を取り扱う役員、社員に対しては規程等を整備し、情報管理の重要性を周知徹底するとともに、取引先等と守秘義務に関する契約を締結するなど、厳重な情報管理に努めております。 しかしながら、通信インフラの破壊や故障などにより当社が利用しているシステム全般が正常に稼働しない状況に陥ってしまった場合、システムに不具合が発生した場合、もしくは役員・職員、取引先等により情報管理が十分に遵守されず、重要な機密情報・個人情報などが漏えいした場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (10) その他① 新株予約権にかかる事項当社は、優秀な人材を確保するため、また当社事業及び研究開発活動へのモチベーションの維持・向上を目的として、新株予約権(ストック・オプション)を役員、社員及び社外の協力者等に付与しております。今後においても上記の目的のため新たに新株予約権を付与していく予定であります。これらの新株予約権が行使された場合には、当社の1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。なお、本書提出日現在、当社が発行した新株予約権にかかる潜在的株式の数は1,331,700株であり、発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は4.19%であります。新株予約権の状況及び内容につきましては、「第4 提出会社の状況 1.株式等の状況 (2) 新株予約権等の状況」及び「第4 提出会社の状況 1.株式等の状況 (9)ストックオプション制度の内容」をご参照ください。 ② 資金使途にかかる事項平成27年10月の株式上場時における公募増資の資金使途につきましては、主にGRN-1201の臨床開発試験、新規パイプライン導入のための研究開発費及び事業運営上必要となる経費等に充当する予定であります。また、平成28年5月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、主にGRN-1201の新規適応症への新規パイプラインに関する臨床開発試験、ITK-1及びGRN-1201に続く新規パイプラインの探索・研究開発のための研究開発費、M&A資金及び事業運営上必要となる経費等に充当する予定であります。しかしながら、今後において事業環境の変化等により、また、上記本項目「事業等のリスク」に記載のリスクの発生により、たとえ計画通りに使用した場合でも、本書提出日現在において想定している成果を達成できない可能性があります。なお、当社が携わる研究開発の領域においては、技術開発の変化など外部環境が急速に変化する可能性があります。新薬の上市、法令等の改正、当社の研究開発・臨床試験の進捗状況によっては、上記の資金使途以外の事象に資金を充当する可能性がありますし、今後の戦略の策定において新たな事象の発生、新たな戦略の実行により、研究開発資金が想定以上に増加する可能性もあります。 ③ M&A等(買収、合併等)による事業拡大に関する事項当社は、事業拡大へ向けた新たな経営資源を取得するため、また保有する経営資源の効率的運用と企業価値を最大化するため、M&A等を活用して事業規模の拡大を図ること検討してまいります。M&A候補の選定に当たりましては、詳細なデューデリジェンスを行うことにより極力リスクを回避してまいりますが、買収後の偶発債務の発生や、のれんが発生する場合は買収後の事業環境や競合状況の変化等により想定通りの効果が得られない場合にのれんの減損損失を計上する等、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。 ④ 資金調達にかかる事項当社のパイプラインの研究開発が完了し製品化となるまでまだ長期間を要しますので、今後も多額の資金調達を必要とします。この期間において、事業計画の修正を必要とする状況になった場合、資金不足が生じる可能性があります。その場合、公的補助金の活用や日本国内のみならず海外企業・機関を含めた新規提携契約の締結、新株発行等により資金需要に対応していく予定であります。しかしながら、適切なタイミングで資金調達ができなかった場合には、当社の事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。また、今後において、さらなる事業拡大等のための資金調達の方法として新株発行や新株予約権付社債などを発行する可能性があります。新株等発行の結果、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。 ⑤ 自然災害について 当社は、久留米本社及び東京支社に事業所及び研究施設を設けております。東京支社では、当社の管理部門及び研究部門が設置されており、久留米本社では、臨床検査の実施、原薬・製剤の保管などの業務を行っております。当社の事業地域で地震等の大規模な災害が発生した場合には、不測の事態の発生により事業活動が停滞する可能性があります。久留米、東京のいずれかで大規模な災害が発生した場合でも、いずれかで業務を継続できる体制となっており、また電子データ等のバックアップも前述の各地域以外の場所に設置しております。しかしながら、自然災害の規模、状況によっては、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。