有価証券報告書「経営方針・対処すべき課題・MD&A」の全文を見る(年度切替)
経営方針・経営戦略
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】DNPグループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題は次のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、DNPグループが判断したものであります。 (1)会社の経営の基本方針DNPグループは、サステナブルな社会の実現を目指し、「人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する。」ことを企業理念に掲げています。この理念に基づき、持続可能なより良い社会と、より心豊かな暮らしを実現するために、長期を見据えて、自らが「より良い未来」をつくり出すための事業活動を展開していくことを「経営の基本方針」としています。さまざまな活動を通じて、社会課題を解決するとともに、人々の期待に応える新しい価値を創出し、それらの価値を生活者の身近に常に存在する「あたりまえ」のものにしていきます。人々にとって「欠かせない価値」を生み出し続けることで、DNPグループ自身が「欠かせない存在」になるように努めており、こうした姿勢を「未来のあたりまえをつくる。」というブランドステートメントで表明しています。DNPグループは、「経営の基本方針」に沿った取り組みを通じて、持続的に事業価値・株主価値を創出していきます。また、事業活動の評価指標としてROEやPBRなどを用いて、価値向上の達成状況を評価・分析し、次の施策の効果を高めていきます。 (2)中長期的な会社の経営戦略DNPグループは2026年4月を開始年度とする3か年の新しい中期経営計画を実行しています。この計画では、事業戦略として「注力事業の拡大と構造改革の推進」を掲げ、それを財務戦略と非財務戦略で支えることで持続的な事業価値・株主価値の創出を図り、企業価値の向上を目指します。中期経営計画の最終年度となる2028年度には過去最高の営業利益を超える1,300億円、ROE9.0%を計画しています。 <三つの戦略>〔1:事業戦略〕〔1-1:中長期の事業ポートフォリオの考え方〕「事業戦略」では、「注力事業の拡大と構造改革の推進」を掲げ、「P&I」(印刷と情報)から生まれた注力事業への積極投資による事業拡大、新たな価値の創出と構造改革による収益性強化、「P&I」を強みとする新たな注力事業の育成、の3つの施策を実行します。これらの取り組みを進めるにあたって、中期経営計画では、事業ポートフォリオの4象限を「注力事業(*)」「基盤事業」「再構築事業」「成長ポテンシャル事業」と定義付けました。高いシェアと良好な収益性を備え、持続的な成長が見込まれる「注力事業」については、引き続き積極的な投資を実施し、さらなる成長を目指します。*注力事業:情報セキュア関連、フォトイメージング関連、モビリティ関連、産業用高機能材関連、デジタルインターフェース関連、半導体関連「基盤事業」及び「再構築事業」は、現時点では注力事業に対して成長性が劣るものの、これらの事業も「P&I」の技術を活かして社会に対して新たな価値を提供できる製品やサービスを生み出すことを目指すとともに、「再構築事業」においては成長余地が低いと判断した製品やサービスについて縮小・撤退も検討することで、事業全体の収益性を強化していきます。また、今後高い成長性が期待でき、新たな注力事業となる可能性を持った事業を「成長ポテンシャル事業」と位置付け、育成に向けた取り組みを進めていきます。このような施策を着実に実行することで、事業ポートフォリオの変革を進めるとともに、3つのセグメントすべてを成長させることで、中期経営計画最終年度となる2028年度には過去最高の営業利益を超える1,300億円を計画しています。また、こうした営業利益の成長と、財務戦略の施策の一つである、機動的かつ継続的な株主還元を両立することで企業価値を最大化し、PBRの持続的向上を目指します。 〔1-2:各セグメントにおける戦略〕〇スマートコミュニケーション部門当部門では、「情報セキュア関連」及び「フォトイメージング関連」を注力事業と位置付け、中長期的な成長に向けた投資を積極的に実施することで事業を拡大していきます。情報セキュア関連では、社会全体におけるデジタル化の進展や、セキュリティ・信頼性への要求の高まりを背景に、ICカード、各種認証サービス、BPOサービス等の主力事業を中心とした、DNPが強みを有する安全・安心分野での提供価値拡大を図っていきます。また、連結子会社化したRubicon SEZC(ルビコン)とのシナジーにより、ID情報に関連するカードやカードプリンター等のグローバル展開を加速させていきます。フォトイメージング関連では、昇華型熱転写記録材等の主力製品を中心に、高品質・高付加価値を強みとした製品・サービスの提供を継続するとともに、グローバル生産体制・供給体制の強化と、新興国市場の開拓を進め、さらなる成長を目指します。出版印刷関連は、既存事業の収益性改善と新規事業拡大の両立により事業基盤の強化を進めます。マーケティング関連は、リアルとデジタルの強みを活かし、サプライチェーン上流から提供価値の最大化を図ります。また、新たな注力事業の育成として、各事業部門の強みを掛け合わせたコンテンツ(アニメ等のIP)ビジネスのグローバル展開や、情報加工・変換技術とAI・XRを組み合わせて社会課題解決に貢献する新たなサービスの創出に取り組みます。 〇ライフ&ヘルスケア部門当部門では、「モビリティ関連」及び「産業用高機能材関連」を注力事業と位置付けています。モビリティ関連では、自動車産業の構造変化を見据え、付加価値の高い材料開発や用途提案を進めることで、競争力の強化と持続的な成長を目指します。また、株式会社DNP光金属とのシナジーにより、HMI(Human Machine Interface)関連部材を拡大するとともに、グローバルも視野に事業を拡大させていきます。産業用高機能材関連は、リチウムイオン電池用バッテリーパウチの次世代電池への拡大や、太陽電池関連部材の生産増、他産業用途への各種機能性フィルム関連製品の展開を目指します。包装関連、生活空間関連については、製造拠点の再編やコスト構造の見直しを含めた継続的な構造改革を行い、強い収益体質を確立するとともに、包装関連では、グローバルを見据えた高付加価値フィルム関連製品を開発し、新たな価値の創出を目指すほか、国内トップシェアの無菌充填システムのグローバル展開を進めていきます。メディカル・ヘルスケア関連は、今後高い成長性が期待でき、新たな注力事業となる可能性を持った「成長ポテンシャル事業」の一つと位置付けており、シミックCMO株式会社とのシナジーにより原薬・製剤事業から包装まで一貫対応したビジネスを展開することで、事業拡大を目指します。 〇エレクトロニクス部門当部門では、「デジタルインターフェース関連」、「半導体関連」ともにグローバルでの需要拡大が期待できるため、注力事業として積極的な設備投資及び研究開発投資を継続し、事業規模の拡大と競争力の強化を図っていきます。デジタルインターフェース関連では、第8世代サイズの大型メタルマスクや、光学フィルムにおけるパネルの大型化に対応した広幅対応の新生産ラインの活用などにより事業拡大を図ります。半導体関連においては、フォトマスクの市場成長に応じた最適な体制を構築し、継続的な成長を図るとともに、EUV(極端紫外線)マスクや、ナノインプリントなどの最先端領域へも事業を展開していきます。加えて、次世代半導体パッケージ向けTGV(ガラス貫通電極)ガラスコア基板の事業化へ向けた活動を加速していきます。 ■中期経営計画における主な経営目標指標中期経営計画における経営目標(2027年3月期~2029年3月期)実績(当連結会計年度)営業利益1,300億円1,010億円ROE9.0%8.9% 〔2:財務戦略〕持続的な事業価値及び株主価値の創出に向け、安定的な財務基盤を維持しつつ、成長投資原資の確保と株主還元を両輪で進めていきます。 〇キャッシュ・アロケーション戦略成長投資の原資は、営業キャッシュ・フローの拡大に加え、政策保有株式等の資産縮減や手元資金の圧縮、有利子負債の積極活用などにより、資金効率を最大化して創出します。創出したキャッシュは、注力事業等への設備投資や、注力事業またはその周辺領域等へのM&Aを中心に活用します。また、持続的な成長を支える研究開発や人的資本への投資も進めていきます。株主還元については、利益成長に応じた累進配当及び配当性向の引き上げにより、配当水準の向上を図っていきます。自己株式の取得についても、成長投資とのバランス、株価水準、資本効率等を考慮した上で、機動的かつ継続的に実施していく方針です。 〔3:非財務戦略〕非財務戦略については、事業戦略・財務戦略と一体で推進し、競争力の源泉となる経営資本の強化を通じて、持続的な価値創出を図っていきます。特に、「人的資本の強化」による価値創出の源泉の最大化、「知的資本の強化」による競争優位性の獲得・拡張、並びに「環境への取り組み」による事業持続性と成長機会の確保を進めていきます。 〇人的資本の強化人的資本ポリシーに基づき、人への投資を拡大し、グローバルでの人的創造性を高めていくことで、事業を通じた付加価値の最大化を図っていきます。また、その成果をさらなる人への投資へ振り向けていく好循環の創出を目指します。具体的には、職群別キャリア・スキルマップによるスキル・経験の可視化を通じて、経営戦略と連動した戦略的人材配置と人材育成を推進していきます。あわせて、DNP価値目標(DVO:DNP Value Objectives)制度や各種研修・リスキリングの充実を通じて、組織力の強化にも取り組んでいきます。さらに、ジェンダーギャップの解消による意思決定の多様化やDNPウェルビーイング(健康・安全・幸せ)の浸透により、持続的な企業価値向上を支える経営基盤を強化していきます。 〇知的資本の強化DNP独自の強みと、社外のパートナーの強みとの連携を活かし、グローバル競争力と事業活動の持続性の向上を目指します。研究開発については、注力領域と成長戦略を設定し、領域別ロードマップを策定した上で、自社技術と社外技術の融合や戦略的パートナー連携により、新規事業創出を目指します。また、独自技術の高度化に加え、新設したオランダ・インドの研究開発拠点も活用し、グローバル展開を加速させていきます。加えて、生成AIを全社的に最適活用し、AI前提の業務・意思決定プロセスへの転換を進めることで、知的生産性向上と、強みを次世代へ継承する知識循環モデルの高度化に取り組んでいきます。 〇環境への取り組み気候変動による影響の激甚化や生物多様性の劣化など、地球環境を取り巻く課題が事業活動の前提条件となりつつある中、DNPグループは環境への対応を重要な経営課題の一つに位置付けています。「DNPグループ環境ビジョン2050」では、「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現を掲げており、ネイチャーポジティブなバリューチェーンの構築に向けて、取り組みを加速させています。脱炭素社会の構築に向けて、再生可能エネルギーの導入やエネルギー使用の効率化を進めるとともに、サプライチェーン全体を視野に入れた温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいきます。また、低炭素製品・サービスの開発や次世代エネルギーに関する研究を推進し、事業を通じた排出削減への貢献を図っていきます。循環型社会の構築に向けて、プラスチックや複合材料を中心に、マテリアルリサイクル及びケミカルリサイクルの高度化を進め、資源の効率的な利用を推進しています。加えて、原材料のトレーサビリティを確保することで、サプライチェーンの透明性を高め、持続可能な資源利用につなげていきます。自然共生社会の構築に向けて、原材料や水資源の管理の高度化を含め、事業活動全体を通じた生態系への影響低減に取り組んでいきます。生産拠点やサプライチェーンにおける環境負荷を把握・管理し、自然環境との調和を図りながら事業を展開していきます。これらの環境への取り組みについては、環境投資を継続的に行うとともに、温室効果ガス排出量、資源循環率、水使用量、環境配慮製品・サービスの売上比率などの指標を用いて進捗を管理していきます。環境課題への対応を事業の成長機会と捉え、経営を推進していきます。 〔4:ガバナンス〕近年、環境・社会・経済の急激な変化により、経営に影響を与えるリスク及び事業機会は多様化・複雑化しています。このような状況を踏まえ、DNPグループは、環境・社会・経済の持続可能性を高めるとともに、持続的な成長を推進するため、ガバナンス体制の強化に取り組んでいます。代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」は、中長期的な経営リスクの評価及び事業機会の把握を行い、経営戦略への反映に向けた検討を行っています。当委員会で協議した事項は、経営会議を経て取締役会に報告・提言しています。
対処すべき課題
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】DNPグループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題は次のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、DNPグループが判断したものであります。 (1)会社の経営の基本方針DNPグループは、サステナブルな社会の実現を目指し、「人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する。」ことを企業理念に掲げています。この理念に基づき、持続可能なより良い社会と、より心豊かな暮らしを実現するために、長期を見据えて、自らが「より良い未来」をつくり出すための事業活動を展開していくことを「経営の基本方針」としています。さまざまな活動を通じて、社会課題を解決するとともに、人々の期待に応える新しい価値を創出し、それらの価値を生活者の身近に常に存在する「あたりまえ」のものにしていきます。人々にとって「欠かせない価値」を生み出し続けることで、DNPグループ自身が「欠かせない存在」になるように努めており、こうした姿勢を「未来のあたりまえをつくる。」というブランドステートメントで表明しています。DNPグループは、「経営の基本方針」に沿った取り組みを通じて、持続的に事業価値・株主価値を創出していきます。また、事業活動の評価指標としてROEやPBRなどを用いて、価値向上の達成状況を評価・分析し、次の施策の効果を高めていきます。 (2)中長期的な会社の経営戦略DNPグループは2026年4月を開始年度とする3か年の新しい中期経営計画を実行しています。この計画では、事業戦略として「注力事業の拡大と構造改革の推進」を掲げ、それを財務戦略と非財務戦略で支えることで持続的な事業価値・株主価値の創出を図り、企業価値の向上を目指します。中期経営計画の最終年度となる2028年度には過去最高の営業利益を超える1,300億円、ROE9.0%を計画しています。 <三つの戦略>〔1:事業戦略〕〔1-1:中長期の事業ポートフォリオの考え方〕「事業戦略」では、「注力事業の拡大と構造改革の推進」を掲げ、「P&I」(印刷と情報)から生まれた注力事業への積極投資による事業拡大、新たな価値の創出と構造改革による収益性強化、「P&I」を強みとする新たな注力事業の育成、の3つの施策を実行します。これらの取り組みを進めるにあたって、中期経営計画では、事業ポートフォリオの4象限を「注力事業(*)」「基盤事業」「再構築事業」「成長ポテンシャル事業」と定義付けました。高いシェアと良好な収益性を備え、持続的な成長が見込まれる「注力事業」については、引き続き積極的な投資を実施し、さらなる成長を目指します。*注力事業:情報セキュア関連、フォトイメージング関連、モビリティ関連、産業用高機能材関連、デジタルインターフェース関連、半導体関連「基盤事業」及び「再構築事業」は、現時点では注力事業に対して成長性が劣るものの、これらの事業も「P&I」の技術を活かして社会に対して新たな価値を提供できる製品やサービスを生み出すことを目指すとともに、「再構築事業」においては成長余地が低いと判断した製品やサービスについて縮小・撤退も検討することで、事業全体の収益性を強化していきます。また、今後高い成長性が期待でき、新たな注力事業となる可能性を持った事業を「成長ポテンシャル事業」と位置付け、育成に向けた取り組みを進めていきます。このような施策を着実に実行することで、事業ポートフォリオの変革を進めるとともに、3つのセグメントすべてを成長させることで、中期経営計画最終年度となる2028年度には過去最高の営業利益を超える1,300億円を計画しています。また、こうした営業利益の成長と、財務戦略の施策の一つである、機動的かつ継続的な株主還元を両立することで企業価値を最大化し、PBRの持続的向上を目指します。 〔1-2:各セグメントにおける戦略〕〇スマートコミュニケーション部門当部門では、「情報セキュア関連」及び「フォトイメージング関連」を注力事業と位置付け、中長期的な成長に向けた投資を積極的に実施することで事業を拡大していきます。情報セキュア関連では、社会全体におけるデジタル化の進展や、セキュリティ・信頼性への要求の高まりを背景に、ICカード、各種認証サービス、BPOサービス等の主力事業を中心とした、DNPが強みを有する安全・安心分野での提供価値拡大を図っていきます。また、連結子会社化したRubicon SEZC(ルビコン)とのシナジーにより、ID情報に関連するカードやカードプリンター等のグローバル展開を加速させていきます。フォトイメージング関連では、昇華型熱転写記録材等の主力製品を中心に、高品質・高付加価値を強みとした製品・サービスの提供を継続するとともに、グローバル生産体制・供給体制の強化と、新興国市場の開拓を進め、さらなる成長を目指します。出版印刷関連は、既存事業の収益性改善と新規事業拡大の両立により事業基盤の強化を進めます。マーケティング関連は、リアルとデジタルの強みを活かし、サプライチェーン上流から提供価値の最大化を図ります。また、新たな注力事業の育成として、各事業部門の強みを掛け合わせたコンテンツ(アニメ等のIP)ビジネスのグローバル展開や、情報加工・変換技術とAI・XRを組み合わせて社会課題解決に貢献する新たなサービスの創出に取り組みます。 〇ライフ&ヘルスケア部門当部門では、「モビリティ関連」及び「産業用高機能材関連」を注力事業と位置付けています。モビリティ関連では、自動車産業の構造変化を見据え、付加価値の高い材料開発や用途提案を進めることで、競争力の強化と持続的な成長を目指します。また、株式会社DNP光金属とのシナジーにより、HMI(Human Machine Interface)関連部材を拡大するとともに、グローバルも視野に事業を拡大させていきます。産業用高機能材関連は、リチウムイオン電池用バッテリーパウチの次世代電池への拡大や、太陽電池関連部材の生産増、他産業用途への各種機能性フィルム関連製品の展開を目指します。包装関連、生活空間関連については、製造拠点の再編やコスト構造の見直しを含めた継続的な構造改革を行い、強い収益体質を確立するとともに、包装関連では、グローバルを見据えた高付加価値フィルム関連製品を開発し、新たな価値の創出を目指すほか、国内トップシェアの無菌充填システムのグローバル展開を進めていきます。メディカル・ヘルスケア関連は、今後高い成長性が期待でき、新たな注力事業となる可能性を持った「成長ポテンシャル事業」の一つと位置付けており、シミックCMO株式会社とのシナジーにより原薬・製剤事業から包装まで一貫対応したビジネスを展開することで、事業拡大を目指します。 〇エレクトロニクス部門当部門では、「デジタルインターフェース関連」、「半導体関連」ともにグローバルでの需要拡大が期待できるため、注力事業として積極的な設備投資及び研究開発投資を継続し、事業規模の拡大と競争力の強化を図っていきます。デジタルインターフェース関連では、第8世代サイズの大型メタルマスクや、光学フィルムにおけるパネルの大型化に対応した広幅対応の新生産ラインの活用などにより事業拡大を図ります。半導体関連においては、フォトマスクの市場成長に応じた最適な体制を構築し、継続的な成長を図るとともに、EUV(極端紫外線)マスクや、ナノインプリントなどの最先端領域へも事業を展開していきます。加えて、次世代半導体パッケージ向けTGV(ガラス貫通電極)ガラスコア基板の事業化へ向けた活動を加速していきます。 ■中期経営計画における主な経営目標指標中期経営計画における経営目標(2027年3月期~2029年3月期)実績(当連結会計年度)営業利益1,300億円1,010億円ROE9.0%8.9% 〔2:財務戦略〕持続的な事業価値及び株主価値の創出に向け、安定的な財務基盤を維持しつつ、成長投資原資の確保と株主還元を両輪で進めていきます。 〇キャッシュ・アロケーション戦略成長投資の原資は、営業キャッシュ・フローの拡大に加え、政策保有株式等の資産縮減や手元資金の圧縮、有利子負債の積極活用などにより、資金効率を最大化して創出します。創出したキャッシュは、注力事業等への設備投資や、注力事業またはその周辺領域等へのM&Aを中心に活用します。また、持続的な成長を支える研究開発や人的資本への投資も進めていきます。株主還元については、利益成長に応じた累進配当及び配当性向の引き上げにより、配当水準の向上を図っていきます。自己株式の取得についても、成長投資とのバランス、株価水準、資本効率等を考慮した上で、機動的かつ継続的に実施していく方針です。 〔3:非財務戦略〕非財務戦略については、事業戦略・財務戦略と一体で推進し、競争力の源泉となる経営資本の強化を通じて、持続的な価値創出を図っていきます。特に、「人的資本の強化」による価値創出の源泉の最大化、「知的資本の強化」による競争優位性の獲得・拡張、並びに「環境への取り組み」による事業持続性と成長機会の確保を進めていきます。 〇人的資本の強化人的資本ポリシーに基づき、人への投資を拡大し、グローバルでの人的創造性を高めていくことで、事業を通じた付加価値の最大化を図っていきます。また、その成果をさらなる人への投資へ振り向けていく好循環の創出を目指します。具体的には、職群別キャリア・スキルマップによるスキル・経験の可視化を通じて、経営戦略と連動した戦略的人材配置と人材育成を推進していきます。あわせて、DNP価値目標(DVO:DNP Value Objectives)制度や各種研修・リスキリングの充実を通じて、組織力の強化にも取り組んでいきます。さらに、ジェンダーギャップの解消による意思決定の多様化やDNPウェルビーイング(健康・安全・幸せ)の浸透により、持続的な企業価値向上を支える経営基盤を強化していきます。 〇知的資本の強化DNP独自の強みと、社外のパートナーの強みとの連携を活かし、グローバル競争力と事業活動の持続性の向上を目指します。研究開発については、注力領域と成長戦略を設定し、領域別ロードマップを策定した上で、自社技術と社外技術の融合や戦略的パートナー連携により、新規事業創出を目指します。また、独自技術の高度化に加え、新設したオランダ・インドの研究開発拠点も活用し、グローバル展開を加速させていきます。加えて、生成AIを全社的に最適活用し、AI前提の業務・意思決定プロセスへの転換を進めることで、知的生産性向上と、強みを次世代へ継承する知識循環モデルの高度化に取り組んでいきます。 〇環境への取り組み気候変動による影響の激甚化や生物多様性の劣化など、地球環境を取り巻く課題が事業活動の前提条件となりつつある中、DNPグループは環境への対応を重要な経営課題の一つに位置付けています。「DNPグループ環境ビジョン2050」では、「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現を掲げており、ネイチャーポジティブなバリューチェーンの構築に向けて、取り組みを加速させています。脱炭素社会の構築に向けて、再生可能エネルギーの導入やエネルギー使用の効率化を進めるとともに、サプライチェーン全体を視野に入れた温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいきます。また、低炭素製品・サービスの開発や次世代エネルギーに関する研究を推進し、事業を通じた排出削減への貢献を図っていきます。循環型社会の構築に向けて、プラスチックや複合材料を中心に、マテリアルリサイクル及びケミカルリサイクルの高度化を進め、資源の効率的な利用を推進しています。加えて、原材料のトレーサビリティを確保することで、サプライチェーンの透明性を高め、持続可能な資源利用につなげていきます。自然共生社会の構築に向けて、原材料や水資源の管理の高度化を含め、事業活動全体を通じた生態系への影響低減に取り組んでいきます。生産拠点やサプライチェーンにおける環境負荷を把握・管理し、自然環境との調和を図りながら事業を展開していきます。これらの環境への取り組みについては、環境投資を継続的に行うとともに、温室効果ガス排出量、資源循環率、水使用量、環境配慮製品・サービスの売上比率などの指標を用いて進捗を管理していきます。環境課題への対応を事業の成長機会と捉え、経営を推進していきます。 〔4:ガバナンス〕近年、環境・社会・経済の急激な変化により、経営に影響を与えるリスク及び事業機会は多様化・複雑化しています。このような状況を踏まえ、DNPグループは、環境・社会・経済の持続可能性を高めるとともに、持続的な成長を推進するため、ガバナンス体制の強化に取り組んでいます。代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」は、中長期的な経営リスクの評価及び事業機会の把握を行い、経営戦略への反映に向けた検討を行っています。当委員会で協議した事項は、経営会議を経て取締役会に報告・提言しています。
MD&A(経営者による分析)
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】 (1)経営成績等の状況の概要当連結会計年度におけるDNPグループの状況の概要は次のとおりであります。 ① 経営成績の状況当連結会計年度におけるDNPグループを取り巻く状況は、国内のインバウンド需要の拡大や個人消費の持ち直しなどにより、景気に緩やかな回復が見られました。一方で、長期化・拡大する地政学リスクの影響や、米国をはじめとする各国・地域の政策動向、原材料費・人件費・物価の変動など、景気の先行きは依然として不透明な状況にあります。また、地球環境や人権に関わる課題の解決も、サプライチェーン全体で一層強く求められています。DNPグループは、こうした環境・社会・経済の変化やリスクに対応するだけでなく、長期を見据えて自らが変革を起こし、「より良い未来」をつくり出す事業活動を展開しています。独自の「P&I」(印刷と情報)の強みを掛け合わせ、生成AIをはじめとする先進技術も活かし、多様なパートナーとの連携をさらに深めながら、事業領域の拡張と業績の向上に取り組んでいます。当年度は、2023-2025年度の中期経営計画の最終年度として、「事業戦略」「財務戦略」「非財務戦略」に基づく取り組みを通じて、持続的な事業価値・株主価値の創出に注力しました。「事業戦略」では、中長期的に強みを発揮する事業ポートフォリオを構築するとともに、市場成長性と収益性が高い事業を中心に価値の創出を加速させました。「財務戦略」では、創出したキャッシュを事業のさらなる成長投資と株主還元に適切に配分すべく、政策保有株式の売却、計画的な自己株式の取得を行いました。「非財務戦略」では、「人への投資の拡大」「知的資本の強化」「環境への取り組み」を中心に、サステナブルな成長を支える経営基盤の強化を図りました。 その結果、当連結会計年度のDNPグループの売上高は1兆5,125億円(前期比3.8%増)、営業利益は1,010億円(前期比7.9%増)、経常利益は1,192億円(前期比2.9%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券の売却にともなう特別利益の計上もあり、1,039億円(前期比6.1%減)となりました。 セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。 (スマートコミュニケーション部門)イメージングコミュニケーション関連は、新型プリンター関連の需要増加等が寄与して写真プリント用部材が欧米・アジア市場で好調に推移したほか、IDカード用インクリボンが市場回復などを背景に堅調に推移し、前年を上回りました。情報セキュア関連は、デュアルインターフェイスのICカード(ICチップ1つで接触型と非接触型の規格に対応)が前年から減少したものの、BPO(Business Process Outsourcing)の大型案件などがあり、当事業全体で前年を上回りました。また、本人情報を登録・認証する政府向けID認証サービスをアフリカ中心に提供し、Laxton(ラクストン)ブランドで事業展開しているRubicon SEZC(ルビコン)の株式を取得し、2025年7月より連結子会社として協業を開始しました。マーケティング関連は、企業向け施策の実績・知見とデジタルの強みを掛け合わせた価値の提供に努めましたが、紙媒体の市場縮小の影響もあり、前年を下回りました。なお、セールスプロモーション分野で、DNP独自の専門性や機能を集約・統合することによるグループ全体の機能の強化と事業運営の効率化、競争力の強化と持続的な成長を目的に、2025年10月にグループ会社間における組織再編を実施しました。出版関連は、雑誌等の市場縮小の影響を受けたものの、教育・研究施設、図書館等の設計・内装施工に関する大型案件の完工が増加したことや、図書館運営業務が好調に推移したことによって、前年を上回りました。 コンテンツ・XRコミュニケーション関連のうち、コンテンツ関連は、国内外で人気の知的財産(IP:Intellectual Property)を活用した巡回型イベントや物販、日本発IPの海外展開など、新たな価値の創出に努めました。XRコミュニケーション関連では、教育分野や行政サービスを中心に地域連動XRサービスを充実させ、各自治体等への提供を進めています。今後も継続して、国内各地域とともに新しい価値を創出・発信するコミュニケーションモデルを構築していきます。その結果、部門全体の売上高は7,503億円(前期比4.9%増)となりました。営業利益は、人的資本や固定資産の適正化などの事業構造改革により、400億円(前期比15.4%増)となりました。 (ライフ&ヘルスケア部門)モビリティ・産業用高機能材関連のうち、産業用高機能材関連は、リチウムイオン電池用バッテリーパウチが、スマートフォンやタブレット端末等のIT向けで新製品を中心に販売が伸長し、前年を上回りました。一方で車載向けは、米国の政策変更によってEVの販売が落ち込むなど電池需要が低迷し、前年を下回りました。太陽電池関連は、引き続き各国・地域で太陽電池等の再生可能エネルギー導入の拡大が見込まれるなか、太陽電池の電極やセル等を保護する封止材の生産能力を従来の約2倍に増強する生産ラインを2025年10月に泉崎工場(福島県)に導入し、これによる増産効果も寄与して、前年を上回りました。モビリティ関連は、自動車向け加飾フィルムが、内装用を中心に堅調に推移し、前年を上回りました。塗装工程の短縮に寄与する、環境に優しい高意匠外装用製品の販売にも注力しました。また、株式会社DNP光金属を中心として、高い意匠性や精度が求められる操作・表示部向けの自動車用加飾成型部品を対象としたハイエンドHMI(Human Machine Interface)領域への事業拡大を進めています。加えて、Turing(チューリング)株式会社との資本業務提携により、完全自動運転に必要な製品・サービスの開発を推進し、モビリティを中心としたスマート社会の実現に貢献していきます。生活空間関連は、高い耐久性とデザイン性を両立させた内・外装材「アートテック®」及び国内向け内装材は前年並みで推移しましたが、海外向け内装材は市況悪化の影響等により、全体で前年を下回りました。なお、事業構造改革の一環で、2025年10月にモビリティ関連と生活空間関連の事業を統合し、“モビリティと住まいがつながるスマート社会”の実現に向けた体制を構築しました。今後も、「オールDNP」で強みを掛け合わせ、社会や生活者への対応力と事業競争力をさらに強化していきます。包装関連は、2026年1月以降、物価高騰を背景とした買い控えの影響を受けたものの、紙カップやチューブ容器などが好調に推移したほか、PETボトル用無菌充填システムの販売も増加しました。また、「DNP環境配慮パッケージング GREEN PACKAGING®」シリーズをはじめとする機能性包材の開発・販売にも注力し、当事業全体で前年を上回りました。メディカル・ヘルスケア関連は、医療用パッケージが好調に推移したことに加え、医薬品の原薬事業・製剤事業も堅調に推移し、前年を上回りました。飲料事業は、自動販売機の業界がダウントレンドにあるなか、夏場の好天の恩恵に加え、価格改定が寄与し、量販店・飲食店・Webサイトでの販売が伸長したことで、前年を上回りました。その結果、部門全体の売上高は5,123億円(前期比3.3%増)となりました。営業利益は、固定費等のコストダウン、固定資産の適正化などの事業構造改革により、372億円(前期比56.6%増)となりました。 (エレクトロニクス部門)デジタルインターフェース関連は、有機ELディスプレイ製造用メタルマスクが、2024年5月に黒崎工場(福岡県)で生産開始した第8世代サイズのガラス基板向け大型メタルマスクの寄与があったものの、半導体メモリ不足に起因するミドルローエンドのスマートフォン減産の影響を受けて、第4四半期に需要が減少しました。ディスプレイ用光学フィルムは、液晶テレビ用パネルの大型化にともなう出荷面積の拡大や、2025年9月に三原工場(広島県)で生産を開始した2,500mmの広幅対応のコーティング装置が寄与したことで、堅調に推移し、当事業全体で前年を上回りました。半導体関連は、市況が堅調に推移し、積極的な投資により事業を拡大したことで、前年を上回りました。引き続き、EUV(Extreme Ultra-Violet:極端紫外線)リソグラフィ用フォトマスクやナノインプリントなどの最先端領域への事業展開に取り組んでいきます。その結果、部門全体の売上高は2,518億円(前期比1.6%増)となりました。営業利益は、為替の影響に加え、半導体製造用フォトマスクの設備投資・開発投資によって固定費が増加した影響等もあり、507億円(前期比11.6%減)となりました。なお、次世代半導体パッケージ向けのTGV(Through Glass Via:ガラス貫通電極)ガラスコア基板のパイロットラインを久喜工場(埼玉県)に新設し、2025年12月に稼働を開始しました。本ラインで当製品の量産検証を行い、2026年1月から高品質なサンプルの提供を開始しています。 ② 財政状態の状況当連結会計年度末の資産、負債、純資産については、総資産は、現金及び預金、のれん、退職給付に係る資産の増加や、投資有価証券の減少などにより、前連結会計年度末に比べ1,162億円増加し、2兆341億円となりました。負債は、社債、繰延税金負債の増加や、支払手形及び買掛金、未払法人税等の減少などにより、前連結会計年度末に比べ579億円増加し、7,670億円となりました。純資産は、当期純利益による増加や、退職給付に係る調整累計額の増加、剰余金の配当、自己株式の取得、その他有価証券評価差額金の減少などにより、前連結会計年度末に比べ583億円増加し、1兆2,671億円となりました。 ③ キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ70億円減少し、2,435億円となりました。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益1,555億円、減価償却費528億円などにより403億円の収入(前連結会計年度は1,327億円の収入)となりました。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出600億円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出227億円、投資有価証券の売却による収入578億円などにより736億円の支出(前連結会計年度は367億円の支出)となりました。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出507億円、配当金の支払額178億円、社債の発行による収入1,000億円などにより233億円の収入(前連結会計年度は874億円の支出)となりました。 ④ 生産、受注及び販売の実績a.生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)スマートコミュニケーション部門452,090+2.7ライフ&ヘルスケア部門424,938+3.0エレクトロニクス部門235,341+3.1合 計1,112,370+2.9 (注)金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。 b.受注実績当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 セグメントの名称受注高(百万円)前期比(%)受注残高(百万円)前期比(%)スマートコミュニケーション部門585,057△1.3110,139△13.2ライフ&ヘルスケア部門460,704+3.9130,930+7.0エレクトロニクス部門251,337+2.140,514△0.1合 計1,297,099+1.1281,584△2.8 (注)金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。 c.販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)スマートコミュニケーション部門748,674+4.9ライフ&ヘルスケア部門512,092+3.3エレクトロニクス部門251,804+1.6合 計1,512,571+3.8 (注)セグメント間取引については相殺消去しております。 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点によるDNPグループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。 ①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容DNPグループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高は、前連結会計年度(以下「前期」)に比べて549億円増加し、1兆5,125億円(前期比3.8%増)となりました。売上原価は、前期に比べて272億円増加して1兆1,465億円(前期比2.4%増)となり、売上高に対する比率は前期の76.8%から75.8%となりました。販売費及び一般管理費は、前期に比べて202億円増加して2,649億円(前期比8.3%増)となり、この結果、営業利益は前期に比べて74億円増加して1,010億円(前期比7.9%増)となりました。営業外収益は、持分法による投資利益の減少等により前期に比べて19億円減少して243億円(前期比7.5%減)となり、営業外費用は、支払利息の増加等により前期に比べて21億円増加して61億円(前期比52.7%増)となりました。この結果、経常利益は前期に比べて33億円増加して1,192億円(前期比2.9%増)となりました。特別利益は、投資有価証券売却益の減少等により、前期に比べて724億円減少して579億円(前期比55.6%減)となり、特別損失は、減損損失の減少等により前期に比べて560億円減少して216億円(前期比72.2%減)となりました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は1,039億円(前期比6.1%減)となりました。 DNPグループの経営成績に重要な影響を与えた要因は以下のとおりです。当連結会計年度におけるDNPグループを取り巻く状況は、国内のインバウンド需要の拡大や個人消費の持ち直しなどにより、景気に緩やかな回復が見られました。一方で、長期化・拡大する地政学リスクの影響や、米国をはじめとする各国・地域の政策動向、原材料費・人件費・物価の変動など、景気の先行きは依然として不透明な状況にあります。また、地球環境や人権に関わる課題の解決も、サプライチェーン全体で一層強く求められています。 セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。スマートコミュニケーション部門については、イメージングコミュニケーション関連は、新型プリンター関連の需要増加等が寄与して写真プリント用部材が欧米・アジア市場で好調に推移したほか、IDカード用インクリボンも堅調に推移し、前年を上回りました。情報セキュア関連は、デュアルインターフェイスのICカードが前年から減少したものの、BPOの大型案件などがあり、前年を上回りました。マーケティング関連は、紙媒体の市場縮小の影響もあり、前年を下回りました。出版関連は、雑誌等の市場縮小の影響を受けたものの、教育・研究施設、図書館等の設計・内装施工に関する大型案件の完工が増加したことや、図書館運営業務が好調に推移したことによって、前年を上回りました。コンテンツ・XRコミュニケーション関連のうち、コンテンツ関連は、国内外で人気の知的財産を活用した巡回型イベントや物販、日本発IPの海外展開など、新たな価値の創出に努めました。XRコミュニケーション関連では、教育や行政分野のサービスを充実させ、各自治体等への提供を進めています。その結果、部門全体の売上高は前期比4.9%増の7,503億円となりました。営業利益は、人的資本や固定資産の適正化などの事業構造改革により、前期比15.4%増の400億円となりました。営業利益率は、前期の4.8%から0.5ポイント上昇し、5.3%となりました。ライフ&ヘルスケア部門については、モビリティ・産業用高機能材関連のうち、産業用高機能材関連は、リチウムイオン電池用バッテリーパウチが、スマートフォンやタブレット端末等のIT向けで新製品を中心に販売が伸長し、前年を上回りました。一方で車載向けは、米国の政策変更によってEVの販売が落ち込むなど電池需要が低迷し、前年を下回りました。太陽電池関連は、太陽電池の電極やセル等を保護する封止材に関して、泉崎工場(福島県)に導入した新生産ラインの増産効果も寄与して、前年を上回りました。モビリティ関連は、自動車向け加飾フィルムが、内装用を中心に堅調に推移し、前年を上回りました。生活空間関連は、内・外装材「アートテック®」及び国内向け内装材は前年並みで推移しましたが、海外向け内装材は市況悪化の影響等により、全体で前年を下回りました。包装関連は、紙カップやチューブ容器などが好調に推移したほか、PETボトル用無菌充填システムの販売も増加しました。メディカル・ヘルスケア関連は、医療用パッケージが好調に推移したことに加え、医薬品の原薬事業・製剤事業も堅調に推移し、前年を上回りました。飲料事業は、夏場の好天の恩恵に加え、価格改定が寄与し、量販店・飲食店・Webサイトでの販売が伸長したことで、前年を上回りました。その結果、部門全体の売上高は前期比3.3%増の5,123億円となりました。営業利益は、固定費等のコストダウン、固定資産の適正化などの事業構造改革により、前期比56.6%増の372億円となりました。営業利益率は、前期の4.8%から2.5ポイント上昇し、7.3%となりました。エレクトロニクス部門については、デジタルインターフェース関連は、有機ELディスプレイ製造用メタルマスクが、第8世代サイズのガラス基板向け大型メタルマスクの寄与があったものの、半導体メモリ不足に起因するミドルローエンドのスマートフォン減産の影響を受けて、第4四半期に需要が減少しました。ディスプレイ用光学フィルムは、液晶テレビ用パネルの大型化にともなう出荷面積の拡大や、三原工場(広島県)に導入した広幅対応の新生産ラインが寄与したことで、堅調に推移し、当事業全体で前年を上回りました。半導体関連は、市況が堅調に推移し、積極的な投資により事業を拡大したことで、前年を上回りました。その結果、部門全体の売上高は前期比1.6%増の2,518億円となりました。営業利益は、為替の影響に加え、半導体製造用フォトマスクの設備投資・開発投資によって固定費が増加した影響等もあり、前期比11.6%減の507億円となりました。営業利益率は、前期の23.2%から3.1ポイント低下し、20.1%となりました。 セグメント資産の状況については、スマートコミュニケーション部門は前期末に比べて、26億円減少して7,858億円(前期末比0.3%減)となりました。ライフ&ヘルスケア部門は前期末に比べて、66億円増加して4,914億円(前期末比1.4%増)となりました。エレクトロニクス部門は前期末に比べて、251億円増加して4,108億円(前期末比6.5%増)となりました。報告セグメント合計では前期末に比べて、292億円増加して1兆6,881億円(前期末比1.8%増)となりました。 ②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報DNPグループの当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前期末に比べ70億円減少し、2,435億円となりました。営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益1,555億円、減価償却費528億円などにより403億円の収入(前期は1,327億円の収入)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出600億円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出227億円、投資有価証券の売却による収入578億円などにより736億円の支出(前期は367億円の支出)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出507億円、配当金の支払額178億円、社債の発行による収入1,000億円などにより233億円の収入(前期は874億円の支出)となりました。 a.財務戦略の基本的な考え方DNPグループは、社会課題を解決し、人々の期待に応える新しい価値の創出のため、成長領域を中心とした事業へ集中的に事業投資(研究開発投資、設備投資、戦略的提携やM&A投資)を行うとともに、それらを支える人的資本に経営資源を投入していきます。そのほか、資本効率の向上、財務基盤の安定化と株主還元の実施など、さまざまな資本政策を総合的に勘案して推進していきます。 b.DNPグループの資本の財源DNPグループは、主に営業活動により確保されるキャッシュ・フローにより、成長を維持・発展させていくために必要な資金を確保しております。設備投資資金などの資金需要については自己資金で賄うことを基本としておりますが、自己資金に加え、他人資本も活用し、成長投資資金を調達していきます。 c.DNPグループの経営資源の配分に関する考え方DNPグループは、成長領域を中心とした注力事業への投資などを進めていきます。重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源泉等については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1)新設等」に記載のとおりであります。また、利益の配分については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりであります。 ③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定DNPグループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
経営方針・経営戦略
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】DNPグループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題は次のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、DNPグループが判断したものであります。 (1)会社の経営の基本方針DNPグループは、サステナブルな社会の実現を目指し、「人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する。」ことを企業理念に掲げています。この理念に基づき、持続可能なより良い社会と、より心豊かな暮らしを実現するために、長期を見据えて、自らがより良い未来をつくり出すための事業活動を展開していくことを「経営の基本方針」としています。さまざまな活動を通じて、社会課題を解決するとともに、人々の期待に応える新しい価値を創出し、それらの価値を生活者の身近に常に存在する「あたりまえ」のものにしていきます。人々にとって「欠かせない価値」を生み出し続けることで、DNPグループ自身が「欠かせない存在」になるように努めており、こうした姿勢を「未来のあたりまえをつくる。」というブランドステートメントで表明しています。DNPグループは、「経営の基本方針」に沿った取り組みを通じて、持続的に事業価値・株主価値を創出していきます。また、事業活動の評価指標としてROEやPBRなどを用いて、価値向上の達成状況を評価・分析し、次の施策の効果を高めていきます。 (2)中長期的な会社の経営戦略DNPグループは、「経営の基本方針」に基づき、2026年3月期を最終年度とする3か年の中期経営計画を2023年4月から実行しています。この計画では、「事業戦略」を中心に持続的な価値創出の具体策を実行するとともに、それを支える経営資本の強化に向けて「財務戦略」と「非財務戦略」を推進し、事業価値・株主価値を高めていきます。 <三つの戦略>〔1:事業戦略〕〔1-1:中長期の事業ポートフォリオの考え方〕「事業戦略」では、市場成長性・魅力度と事業収益性を基準として、目指すべき中長期の事業ポートフォリオを明確にしています。市場成長性・魅力度が高い「成長牽引事業」(*1)と「新規事業」(*2)を「注力事業領域」と位置付け、この領域の事業にリソース(経営資源)を集中的に投入し、必要な組織・体制なども十分に整備して、利益を一層拡大させていきます。また、DNP独自の強みを進化・深耕させるほか、DNPならではの社会・関係資本である多様なパートナーとの共創(DNPと異なる強みを持った企業とのM&Aなど)も加速させて、「No.1」の獲得に努めていきます。 *1 成長牽引事業:デジタルインターフェース関連、半導体関連、モビリティ・産業用高機能材関連 *2 新規事業:コンテンツ・XRコミュニケーション関連、メディカル・ヘルスケア関連一方、市場成長性・魅力度の伸びは低水準ながら収益性の高い「基盤事業」(*3)については、事業プロセスの効率向上などによって、安定的なキャッシュの創出に努めていきます。また、現状では市場成長性と収益性がともに低い水準にある「再構築事業」(*4)については、生産能力や拠点の縮小・撤退を含めた最適化を進めるとともに、注力事業領域へのリソースの再配分や、独自の強みを有した製品・サービスの強化などを推進していきます。 *3 基盤事業:イメージングコミュニケーション関連、情報セキュア関連 *4 再構築事業:既存印刷関連、飲料事業 〔1-2:各セグメントにおける戦略〕〇スマートコミュニケーション部門当部門では、投下資本とキャッシュ創出のバランスを見ながら効率的・効果的な投資を行うほか、DNP独自の強みを活かし、国内外の企業との協業やサービス開発を進めていきます。また、紙メディアの印刷関連については、再構築事業の一つとして市場規模に対応した合理化・適正化をさらに進めます。新規事業の「コンテンツ・XRコミュニケーション関連」では、リアルとバーチャルの空間をシームレスかつセキュアに行き来できるメタバース上のDX(デジタルトランスフォーメーション)サービス等を実現し、人々の体験価値を高めていきます。国内外の多様なIPホルダーやクリエイターとの連携を深め、高精細画像処理やセキュリティ基盤を活かしたデータ処理の技術などの強みも活かし、人々のコミュニケーションの価値を高める新規市場を創出していきます。また、着実に収益を積み上げる基盤事業として、写真プリント等の多様な製品・サービスを展開する「イメージングコミュニケーション関連」や、国内トップシェアのICカードや各種認証サービス等の「情報セキュア関連」の事業で、グローバルな投資を拡大していきます。そのほか、企業・自治体等の業務効率化やDXのニーズを捉え、業務プロセスを最適化して関連業務を受託するBPO事業の拡大を図ります。 〇ライフ&ヘルスケア部門成長牽引事業である「モビリティ・産業用高機能材関連」では、世界シェアトップのリチウムイオン電池用バッテリーパウチのEV向けのグローバル展開について、海外拠点への積極的な設備投資などを推進します。この製品とモビリティ(移動用車両)向けの多様な内外装加飾材を中心に事業を展開し、数十年先を見据えて、EVの航続距離の延伸や自動運転、快適な移動空間の実現に取り組んでいきます。新規事業の「メディカル・ヘルスケア関連」では、各種印刷物や包装・半導体等の事業で培った画像処理やカラーマネジメント、無菌・無酸素充填、ミクロ・ナノ造形、精密有機合成などの技術を掛け合わせ、原薬製造・製剤・剤形変更・医療パッケージ製造などの製薬サポート事業を展開していきます。関連するパートナーとの相乗効果の最大化にも取り組み、画像診断やオンライン診療などのスマートヘルスケア事業の拡大に努め、人々の健康寿命の延伸に貢献していきます。包装関連事業等については、拠点の再編などによる収益性の改善・向上を図るとともに、「DNP透明蒸着フィルム IB(Innovative Barrier)-FILM®」等の独自製品や環境に配慮した各種包材のグローバル供給能力の拡大などに努めていきます。 〇エレクトロニクス部門当部門では、積極的な設備投資を推進するとともに、DNP独自の強みを活かした新製品の開発、社外のパートナーとのアライアンスによる半導体サプライチェーンへの提供価値拡大などによって、事業の拡大を加速させていきます。成長牽引事業の一つ「デジタルインターフェース関連」では、有機ELディスプレイ製造用メタルマスクやディスプレイ用光学フィルムなど、世界トップシェアの製品を中心に、技術革新の最新の潮流も捉えて、リアルとバーチャル、アナログとデジタルをつなぐ新しい価値を創出していきます。もう一つの成長牽引事業「半導体関連」では、自動運転や遠隔教育・遠隔医療、クラウド環境やデータセンターの広がりなどによって全世界のデータ流通量が飛躍的に増大するなか、半導体サプライチェーン全体に不可欠なファインデバイスを開発・提供していきます。 ■中期経営計画における主な経営目標指標中期経営計画における経営目標(2024年3月期~2026年3月期)実績(当連結会計年度)営業利益850億円936億円ROE8%以上9.6% 〔2:財務戦略〕持続的な事業価値と株主価値の創出に向けて、安定的な財務基盤を構築・維持した上で、キャッシュを成長投資に振り向けるとともに、株主還元にも適切に配分していきます。 〇キャッシュ・アロケーション戦略注力事業領域への積極的な投資と個々の事業の効率化を推進し、成長投資の原資となる営業キャッシュ・フローを安定的に創出していきます。資産効率の改善に向けては、政策保有株式の売却を加速し、遊休不動産の縮減にも着実に取り組んでいきます。また、有利子負債の活用を含む適切な資金調達方法を検討するなど、資金効率の最大化に努めていきます。創出したキャッシュは、注力事業領域に集中的に投資するとともに、経営基盤の構築に向けた投資にも配分していきます。長期にわたって企業活動を推進し、社会や人々に価値を提供し続けていくため、成長投資の推進と株主還元のバランスを考慮した上で、株主還元にも積極的に配分していきます。 〔3:非財務戦略〕〇人的資本の強化DNPグループは、引き続き「人への投資」を積極的に進めていきます。2022年には「人的資本ポリシー」を策定しており、「人への投資」を企業価値の向上にさらに明確に結びつけ、グローバルでの「人的創造性(付加価値生産性)」を飛躍的に高めていくための取り組みを進めています。価値創造に向けた社員のキャリア自律支援と組織力の強化に向けて、DNP版「よりジョブ型も意識した処遇と関連施策」を展開しています。また、複線型のポスト型処遇、キャリア自律支援に向けた人的投資、競争力の高い報酬の水準と体系の維持・確保、組織開発の充実などを進めています。健康経営については「DNPグループ健康宣言」に基づき、多様な個の強みを引き出すチーム力の強化とマネジメント改革に取り組んでいます。「DNP価値目標(DVO:DNP Value Objectives)制度」や組織のエンゲージメントを高める施策を展開し、社員の幸せ・幸福度を高めるよう推進しています。事業戦略に基づく適材適所の人材配置の実現については、タレントマネジメントシステムを活用したICT人材・DX人材のスキルレベルの可視化、人材ポートフォリオに基づく採用・育成、人材再配置に必要なリスキリングの強化などを進めていきます。また、DNPグループは、社員のあらゆる多様性を尊重し、一人ひとりの多様な強みを掛け合わせることが価値の創出に欠かせないと考え、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進を重要な経営課題の一つとしています。D&I推進の基本方針である「多様な人材の育成」「多様な働き方の実現」「多様な人材が活躍できる風土醸成」の具現化に向けた施策をさらに進めていきます。 〇知的資本の強化DNP独自の強みと、DNPとは異なる強みを持った社外のパートナーとの連携を活かして、知的資本を強化していきます。研究開発の方針として、DNP自身がつくり出したい「より良い未来」の姿を描き、それを起点とした“未来シナリオ”を実現するため、独自の技術等の強みを強化・連動させて、新製品・新サービスの開発・提供につなげていきます。注力事業領域を中心とした新規テーマの創出、基盤技術の強化と新製品開発、オープンイノベーションによる戦略的な技術の獲得と製品化・事業化などを推進します。ライフ&ヘルスケア部門をはじめ、3つの事業セグメントで海外での事業展開・マーケティング・研究開発の強化にも努めます。また、多様な事業を通じて獲得してきた特許等の知的資本の新製品・新サービスへの展開、社内外の強みを積極的に掛け合わせる組織風土の構築・醸成なども進めて、既存事業と新規事業の両方で新しい価値を創出していきます。DNPグループにとっての「DX」は、アナログとデジタル、リアルとバーチャル、モノづくりとサービスなど、異なる分野での強みを融合し、独自のビジネスモデルや価値を生み出すことであると位置付けています。新規事業の創出と既存事業の変革、生産性の飛躍的な向上、社内の情報基盤の革新などを進めていきます。 〇環境への取り組みDNPグループは常に、事業活動と地球環境の共生を考え、地球環境問題への対応を重要な経営課題の一つに位置付けています。「価値の創出(事業の推進)」と「基盤の強化」の両輪で環境関連の課題の解決に取り組み、「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現に貢献していきます。「価値の創出(事業の推進)」については、環境負荷の低減と事業の付加価値の向上をともに実現する事業ポートフォリオへの転換、環境をテーマとした新規事業の創出、低炭素材料・素材の開発・活用、製品単位のCO2排出量の算定と削減、循環型社会に向けたリサイクルスキームの構築、リサイクル材の活用促進などに取り組んでいきます。「基盤の強化」では、環境負荷の見える化、再生可能エネルギーの導入、環境負荷を考慮した省エネ設備への投資、生産拠点の最適化、プラスチックを中心とした資源の効率的な利用、原材料のトレーサビリティの確保、生態系への負荷の低減などに取り組んでいきます。 〔4:ガバナンス〕DNPグループは、環境・社会・経済の急激な変化など、経営に大きな影響を与えるリスクを評価して中長期的な経営戦略に反映し、そのリスクを事業機会に転換していくプロセスの強化に取り組んでいます。この取り組みを加速させるため、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」を運営しています。当委員会では、中期経営計画の実行の過程で環境・社会・経済の急激な変化を捉え、適切に経営戦略に反映していくため、経営会議・取締役会に報告・提言しています。
対処すべき課題
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】DNPグループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題は次のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、DNPグループが判断したものであります。 (1)会社の経営の基本方針DNPグループは、サステナブルな社会の実現を目指し、「人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する。」ことを企業理念に掲げています。この理念に基づき、持続可能なより良い社会と、より心豊かな暮らしを実現するために、長期を見据えて、自らがより良い未来をつくり出すための事業活動を展開していくことを「経営の基本方針」としています。さまざまな活動を通じて、社会課題を解決するとともに、人々の期待に応える新しい価値を創出し、それらの価値を生活者の身近に常に存在する「あたりまえ」のものにしていきます。人々にとって「欠かせない価値」を生み出し続けることで、DNPグループ自身が「欠かせない存在」になるように努めており、こうした姿勢を「未来のあたりまえをつくる。」というブランドステートメントで表明しています。DNPグループは、「経営の基本方針」に沿った取り組みを通じて、持続的に事業価値・株主価値を創出していきます。また、事業活動の評価指標としてROEやPBRなどを用いて、価値向上の達成状況を評価・分析し、次の施策の効果を高めていきます。 (2)中長期的な会社の経営戦略DNPグループは、「経営の基本方針」に基づき、2026年3月期を最終年度とする3か年の中期経営計画を2023年4月から実行しています。この計画では、「事業戦略」を中心に持続的な価値創出の具体策を実行するとともに、それを支える経営資本の強化に向けて「財務戦略」と「非財務戦略」を推進し、事業価値・株主価値を高めていきます。 <三つの戦略>〔1:事業戦略〕〔1-1:中長期の事業ポートフォリオの考え方〕「事業戦略」では、市場成長性・魅力度と事業収益性を基準として、目指すべき中長期の事業ポートフォリオを明確にしています。市場成長性・魅力度が高い「成長牽引事業」(*1)と「新規事業」(*2)を「注力事業領域」と位置付け、この領域の事業にリソース(経営資源)を集中的に投入し、必要な組織・体制なども十分に整備して、利益を一層拡大させていきます。また、DNP独自の強みを進化・深耕させるほか、DNPならではの社会・関係資本である多様なパートナーとの共創(DNPと異なる強みを持った企業とのM&Aなど)も加速させて、「No.1」の獲得に努めていきます。 *1 成長牽引事業:デジタルインターフェース関連、半導体関連、モビリティ・産業用高機能材関連 *2 新規事業:コンテンツ・XRコミュニケーション関連、メディカル・ヘルスケア関連一方、市場成長性・魅力度の伸びは低水準ながら収益性の高い「基盤事業」(*3)については、事業プロセスの効率向上などによって、安定的なキャッシュの創出に努めていきます。また、現状では市場成長性と収益性がともに低い水準にある「再構築事業」(*4)については、生産能力や拠点の縮小・撤退を含めた最適化を進めるとともに、注力事業領域へのリソースの再配分や、独自の強みを有した製品・サービスの強化などを推進していきます。 *3 基盤事業:イメージングコミュニケーション関連、情報セキュア関連 *4 再構築事業:既存印刷関連、飲料事業 〔1-2:各セグメントにおける戦略〕〇スマートコミュニケーション部門当部門では、投下資本とキャッシュ創出のバランスを見ながら効率的・効果的な投資を行うほか、DNP独自の強みを活かし、国内外の企業との協業やサービス開発を進めていきます。また、紙メディアの印刷関連については、再構築事業の一つとして市場規模に対応した合理化・適正化をさらに進めます。新規事業の「コンテンツ・XRコミュニケーション関連」では、リアルとバーチャルの空間をシームレスかつセキュアに行き来できるメタバース上のDX(デジタルトランスフォーメーション)サービス等を実現し、人々の体験価値を高めていきます。国内外の多様なIPホルダーやクリエイターとの連携を深め、高精細画像処理やセキュリティ基盤を活かしたデータ処理の技術などの強みも活かし、人々のコミュニケーションの価値を高める新規市場を創出していきます。また、着実に収益を積み上げる基盤事業として、写真プリント等の多様な製品・サービスを展開する「イメージングコミュニケーション関連」や、国内トップシェアのICカードや各種認証サービス等の「情報セキュア関連」の事業で、グローバルな投資を拡大していきます。そのほか、企業・自治体等の業務効率化やDXのニーズを捉え、業務プロセスを最適化して関連業務を受託するBPO事業の拡大を図ります。 〇ライフ&ヘルスケア部門成長牽引事業である「モビリティ・産業用高機能材関連」では、世界シェアトップのリチウムイオン電池用バッテリーパウチのEV向けのグローバル展開について、海外拠点への積極的な設備投資などを推進します。この製品とモビリティ(移動用車両)向けの多様な内外装加飾材を中心に事業を展開し、数十年先を見据えて、EVの航続距離の延伸や自動運転、快適な移動空間の実現に取り組んでいきます。新規事業の「メディカル・ヘルスケア関連」では、各種印刷物や包装・半導体等の事業で培った画像処理やカラーマネジメント、無菌・無酸素充填、ミクロ・ナノ造形、精密有機合成などの技術を掛け合わせ、原薬製造・製剤・剤形変更・医療パッケージ製造などの製薬サポート事業を展開していきます。関連するパートナーとの相乗効果の最大化にも取り組み、画像診断やオンライン診療などのスマートヘルスケア事業の拡大に努め、人々の健康寿命の延伸に貢献していきます。包装関連事業等については、拠点の再編などによる収益性の改善・向上を図るとともに、「DNP透明蒸着フィルム IB(Innovative Barrier)-FILM®」等の独自製品や環境に配慮した各種包材のグローバル供給能力の拡大などに努めていきます。 〇エレクトロニクス部門当部門では、積極的な設備投資を推進するとともに、DNP独自の強みを活かした新製品の開発、社外のパートナーとのアライアンスによる半導体サプライチェーンへの提供価値拡大などによって、事業の拡大を加速させていきます。成長牽引事業の一つ「デジタルインターフェース関連」では、有機ELディスプレイ製造用メタルマスクやディスプレイ用光学フィルムなど、世界トップシェアの製品を中心に、技術革新の最新の潮流も捉えて、リアルとバーチャル、アナログとデジタルをつなぐ新しい価値を創出していきます。もう一つの成長牽引事業「半導体関連」では、自動運転や遠隔教育・遠隔医療、クラウド環境やデータセンターの広がりなどによって全世界のデータ流通量が飛躍的に増大するなか、半導体サプライチェーン全体に不可欠なファインデバイスを開発・提供していきます。 ■中期経営計画における主な経営目標指標中期経営計画における経営目標(2024年3月期~2026年3月期)実績(当連結会計年度)営業利益850億円936億円ROE8%以上9.6% 〔2:財務戦略〕持続的な事業価値と株主価値の創出に向けて、安定的な財務基盤を構築・維持した上で、キャッシュを成長投資に振り向けるとともに、株主還元にも適切に配分していきます。 〇キャッシュ・アロケーション戦略注力事業領域への積極的な投資と個々の事業の効率化を推進し、成長投資の原資となる営業キャッシュ・フローを安定的に創出していきます。資産効率の改善に向けては、政策保有株式の売却を加速し、遊休不動産の縮減にも着実に取り組んでいきます。また、有利子負債の活用を含む適切な資金調達方法を検討するなど、資金効率の最大化に努めていきます。創出したキャッシュは、注力事業領域に集中的に投資するとともに、経営基盤の構築に向けた投資にも配分していきます。長期にわたって企業活動を推進し、社会や人々に価値を提供し続けていくため、成長投資の推進と株主還元のバランスを考慮した上で、株主還元にも積極的に配分していきます。 〔3:非財務戦略〕〇人的資本の強化DNPグループは、引き続き「人への投資」を積極的に進めていきます。2022年には「人的資本ポリシー」を策定しており、「人への投資」を企業価値の向上にさらに明確に結びつけ、グローバルでの「人的創造性(付加価値生産性)」を飛躍的に高めていくための取り組みを進めています。価値創造に向けた社員のキャリア自律支援と組織力の強化に向けて、DNP版「よりジョブ型も意識した処遇と関連施策」を展開しています。また、複線型のポスト型処遇、キャリア自律支援に向けた人的投資、競争力の高い報酬の水準と体系の維持・確保、組織開発の充実などを進めています。健康経営については「DNPグループ健康宣言」に基づき、多様な個の強みを引き出すチーム力の強化とマネジメント改革に取り組んでいます。「DNP価値目標(DVO:DNP Value Objectives)制度」や組織のエンゲージメントを高める施策を展開し、社員の幸せ・幸福度を高めるよう推進しています。事業戦略に基づく適材適所の人材配置の実現については、タレントマネジメントシステムを活用したICT人材・DX人材のスキルレベルの可視化、人材ポートフォリオに基づく採用・育成、人材再配置に必要なリスキリングの強化などを進めていきます。また、DNPグループは、社員のあらゆる多様性を尊重し、一人ひとりの多様な強みを掛け合わせることが価値の創出に欠かせないと考え、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進を重要な経営課題の一つとしています。D&I推進の基本方針である「多様な人材の育成」「多様な働き方の実現」「多様な人材が活躍できる風土醸成」の具現化に向けた施策をさらに進めていきます。 〇知的資本の強化DNP独自の強みと、DNPとは異なる強みを持った社外のパートナーとの連携を活かして、知的資本を強化していきます。研究開発の方針として、DNP自身がつくり出したい「より良い未来」の姿を描き、それを起点とした“未来シナリオ”を実現するため、独自の技術等の強みを強化・連動させて、新製品・新サービスの開発・提供につなげていきます。注力事業領域を中心とした新規テーマの創出、基盤技術の強化と新製品開発、オープンイノベーションによる戦略的な技術の獲得と製品化・事業化などを推進します。ライフ&ヘルスケア部門をはじめ、3つの事業セグメントで海外での事業展開・マーケティング・研究開発の強化にも努めます。また、多様な事業を通じて獲得してきた特許等の知的資本の新製品・新サービスへの展開、社内外の強みを積極的に掛け合わせる組織風土の構築・醸成なども進めて、既存事業と新規事業の両方で新しい価値を創出していきます。DNPグループにとっての「DX」は、アナログとデジタル、リアルとバーチャル、モノづくりとサービスなど、異なる分野での強みを融合し、独自のビジネスモデルや価値を生み出すことであると位置付けています。新規事業の創出と既存事業の変革、生産性の飛躍的な向上、社内の情報基盤の革新などを進めていきます。 〇環境への取り組みDNPグループは常に、事業活動と地球環境の共生を考え、地球環境問題への対応を重要な経営課題の一つに位置付けています。「価値の創出(事業の推進)」と「基盤の強化」の両輪で環境関連の課題の解決に取り組み、「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現に貢献していきます。「価値の創出(事業の推進)」については、環境負荷の低減と事業の付加価値の向上をともに実現する事業ポートフォリオへの転換、環境をテーマとした新規事業の創出、低炭素材料・素材の開発・活用、製品単位のCO2排出量の算定と削減、循環型社会に向けたリサイクルスキームの構築、リサイクル材の活用促進などに取り組んでいきます。「基盤の強化」では、環境負荷の見える化、再生可能エネルギーの導入、環境負荷を考慮した省エネ設備への投資、生産拠点の最適化、プラスチックを中心とした資源の効率的な利用、原材料のトレーサビリティの確保、生態系への負荷の低減などに取り組んでいきます。 〔4:ガバナンス〕DNPグループは、環境・社会・経済の急激な変化など、経営に大きな影響を与えるリスクを評価して中長期的な経営戦略に反映し、そのリスクを事業機会に転換していくプロセスの強化に取り組んでいます。この取り組みを加速させるため、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」を運営しています。当委員会では、中期経営計画の実行の過程で環境・社会・経済の急激な変化を捉え、適切に経営戦略に反映していくため、経営会議・取締役会に報告・提言しています。
MD&A(経営者による分析)
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】 (1)経営成績等の状況の概要当連結会計年度におけるDNPグループの状況の概要は次のとおりであります。 ① 経営成績の状況当連結会計年度におけるDNPグループを取り巻く状況は、国内の雇用・所得環境の改善による個人消費の持ち直しやインバウンド需要の拡大等により、景気に緩やかな回復が見られました。一方で、株価・為替の急激な変動、地政学リスクの長期化、原材料や燃料等のコストの高止まり、米国をはじめとする各国・地域の政策動向、国内の物価上昇など、景気の先行きは依然として不透明な状況にあります。また、地球環境や人権問題等への対応、AI(人工知能)やXR(Extended Reality)等の先進技術などによって、ビジネスはより複雑かつ多様になり、競争も激化しています。DNPグループは、環境・社会・経済の急激な変化やリスクに対応するだけでなく、自らが長期を見据えて変革を起こし、「より良い未来」をつくり出す事業活動を展開しており、独自の「P&I」(印刷と情報)の強みを掛け合わせ、多様なパートナーとの連携を深めて、事業領域の拡張と業績の向上に努めています。当期は2023-2025年度の3か年の「中期経営計画」の2年目として、「事業戦略」「財務戦略」「非財務戦略」に基づく具体的な取り組みを通じて、持続的な事業価値・株主価値の創出に注力しました。事業戦略では、中長期にわたって強みを発揮できる事業ポートフォリオの構築を進めるとともに、注力事業領域を中心に新しい価値の創出を加速させています。財務戦略では、創出したキャッシュを事業のさらなる成長のための投資と株主還元に適切に配分していきます。非財務戦略では、「人的資本の強化」「知的資本の強化」「環境への取り組み」を中心に推進し、サステナブルな成長を支える経営基盤の強化を図っています。三つの戦略のより詳細な内容は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的な会社の経営戦略 <三つの戦略>」に記載しています。また、常に経営環境の変化を見極めながら、グループを挙げて事業継続マネジメント(BCM)の徹底を図り、企業活動の持続的な推進に努めています。 これらの結果、当連結会計年度のDNPグループの売上高は1兆4,576億円(前期比2.3%増)、営業利益は936億円(前期比24.1%増)、経常利益は1,159億円(前期比17.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,106億円(前期比0.2%減)となりました。また、DNPグループが収益性指標の一つとしている自己資本利益率(ROE)は9.6%となりました。 セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。 (スマートコミュニケーション部門)イメージングコミュニケーション関連は、写真プリント用の昇華型熱転写記録材が欧米市場で好調に推移しました。また、国内の証明写真サービスや欧米での撮影サービスの増加もあり、前年を上回りました。情報セキュア関連は、1つのICチップで接触型と非接触型の規格に対応可能なデュアルインターフェイスカード等のICカードが堅調に推移したものの、BPO(Business Process Outsourcing)の大型案件が減少し、前年を下回りました。マーケティング関連は、長年培ったマーケティング施策の実績や知見とデジタルの強みを掛け合わせた価値の提供に努めましたが、紙媒体の市場縮小の影響もあり、前年を下回りました。出版関連は、図書館運営業務が受託館数の増加により堅調に推移したものの、雑誌等の市場縮小の影響などにより、前年を下回りました。なお、出版印刷事業は、意思決定の迅速化及び部門間の連携強化とともに、市場環境の変化の先取りをしていくため、2025年4月に組織再編を行い、製造・販売一体の事業推進体制に移行しました。 コンテンツ・XRコミュニケーション関連のうち、コンテンツ関連は、国内外で人気の知的財産(IP:Intellectual Property)を活用した大型企画展の主催をはじめ、イベント・物販ビジネスや、日本のIPの海外展開など、新たな価値の創出に努めました。XRコミュニケーション関連は、専門の強みを持つ社外のパートナーとの連携などに力を入れています。こうした取り組みやDNPの先進技術などが高く評価され、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)における「日本政府館」のバーチャルパビリオンの企画制作に採択されました。今後も多様なパートナーとの共創を拡げ、仮想空間(メタバース)の活用を通じて、不登校の子どもの教育機会や居場所の創出など、社会課題の解決や体験価値の提供に向けてさらに事業を強化・拡大していきます。その結果、部門全体の売上高は7,155億円(前期比0.5%減)となりました。営業利益は、紙媒体等の市場縮小による減収の影響を受けたものの、為替のプラス効果、人的資本や固定資産の適正化などの事業構造改革により、346億円(前期比32.5%増)となりました。 (ライフ&ヘルスケア部門)モビリティ・産業用高機能材関連は、リチウムイオン電池用バッテリーパウチが、スマートフォンやタブレット端末等の新機種用を中心にIT向けの需要が伸長しました。一方、車載向けは、2024年10月以降に需要の回復が見られたものの、年間を通じて電気自動車(EV)市場の需要停滞の影響が大きく、前年を下回りました。太陽電池関連は、世界的な需要の高まりにより、封止材を中心に好調に推移しました。自動車用部材の加飾フィルムは、内装用製品の販売が好調に推移しました。M&Aも積極的に行っており、2025年1月に、多様な成形品製造技術を駆使して、独自の自動車部品や産業機器向けの加飾部品等の事業を手掛ける株式会社光金属工業所の完全親会社であるHKホールディング株式会社の全株式を取得しました。2025年2月には、二次電池外装材・包装材などを手掛ける株式会社レゾナック・パッケージング(株式会社DNP高機能マテリアル彦根に社名変更)の全株式を取得しました。各社とDNPグループが培ってきた経営資源や技術・ノウハウなどの強みを掛け合わせることで、顧客への対応力をさらに強化し、競争力を向上させていきます。包装関連は、原材料の値上げの影響を受けたものの、価格転嫁が進展したことに加え、スナックや日用品向け包材、ペットボトル用無菌充填システムなどが増加しました。また、「DNP環境配慮パッケージング GREEN PACKAGING®」や各種機能性包材の開発・販売にも注力し、前年を上回りました。メディカル・ヘルスケア関連は、医療用パッケージの開発・販売に注力しました。また、メディカル・ヘルスケア業界向けの物流拠点として、2025年4月に、東京都に「小豆沢(あずさわ)センター」を開設しました。各企業が個別に行っている医薬品・医療機器の保管からセット作業、配送までをBPOとして請け負うことにより、低コストで物流の効率化を実現いたします。また、この施設は、商業印刷関連の製造拠点をメディカル物流向けに転用したもので、投資の効率化を実現するとともに、事業ポートフォリオの変革につながっています。生活空間関連は、高い耐久性とデザイン性を両立させた外装材「アートテック®」が国内外で好調に推移したものの、国内の新設住宅着工戸数(持家)の減少などによって住宅向け内装材が減少し、前年を下回りました。飲料事業は、北海道外のボトラーへの販売が減少したものの、主要な販売チャネルでの価格改定の効果や、自動販売機・コンビニエンスストア・Webサイトでの販売が好調に推移し、前年を上回りました。その結果、部門全体の売上高は4,960億円(前期比5.0%増)となりました。営業利益は、包装関連事業の売上増加に加え、固定費の圧縮等のコストダウン、為替のプラス効果なども寄与し、237億円(前期比78.2%増)となりました。 (エレクトロニクス部門)デジタルインターフェース関連は、有機ELディスプレイ製造用メタルマスクが前期の旺盛な開発需要からの反動で減少したものの、光学フィルムが液晶テレビ用パネルの大型化にともなう出荷面積の拡大等で堅調に推移し、前年を上回りました。なお、当期は、福岡県北九州市の黒崎工場内に新設したメタルマスクの生産ラインが稼働を開始しており、タブレット端末やノートPC、車載デバイスでの有機ELディスプレイの採用拡大の状況を先取りしていきます。半導体関連は、市場の回復によって半導体製造用フォトマスクが堅調に推移し、前年を上回りました。その結果、部門全体の売上高は2,477億円(前期比5.3%増)となりました。営業利益は、デジタルインターフェース関連を中心に注力事業の売上が増加しましたが、メタルマスクの生産ライン増設による設備費増加の影響を受け、573億円(前期比1.4%減)となりました。 ② 財政状態の状況当連結会計年度末の資産、負債、純資産については、総資産は、現金及び預金の増加や、退職給付に係る資産、有形固定資産の減少などにより、前連結会計年度末に比べ377億円減少し、1兆9,178億円となりました。負債は、未払法人税等の増加や、支払手形及び買掛金、繰延税金負債の減少などにより、前連結会計年度末に比べ98億円減少し、7,090億円となりました。純資産は、当期純利益による増加や、剰余金の配当、自己株式の取得、その他有価証券評価差額金、退職給付に係る調整累計額の減少などにより、前連結会計年度末に比べ279億円減少し、1兆2,087億円となりました。 ③ キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ160億円増加し、2,506億円となりました。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益1,686億円、減価償却費537億円などにより1,327億円の収入(前連結会計年度は725億円の収入)となりました。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出570億円、投資有価証券の取得による支出878億円、投資有価証券の売却による収入1,193億円などにより367億円の支出(前連結会計年度は183億円の収入)となりました。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出648億円、配当金の支払額150億円などにより874億円の支出(前連結会計年度は1,186億円の支出)となりました。 ④ 生産、受注及び販売の実績a.生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)スマートコミュニケーション部門440,083△3.1ライフ&ヘルスケア部門412,648+6.5エレクトロニクス部門228,299△0.8合 計1,081,031+0.9 (注)金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。 b.受注実績当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 セグメントの名称受注高(百万円)前期比(%)受注残高(百万円)前期比(%)スマートコミュニケーション部門592,923+0.6126,863+8.6ライフ&ヘルスケア部門443,396+1.2122,357+5.7エレクトロニクス部門246,275+0.940,570△2.7合 計1,282,596+0.8289,792+5.7 (注)金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。 c.販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)スマートコミュニケーション部門713,977△0.5ライフ&ヘルスケア部門495,855+5.0エレクトロニクス部門247,776+5.3合 計1,457,609+2.3 (注)セグメント間取引については相殺消去しております。 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点によるDNPグループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。 ①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容DNPグループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高は、前連結会計年度(以下「前期」)に比べて327億円増加し、1兆4,576億円(前期比2.3%増)となりました。売上原価は、前期に比べて82億円増加して1兆1,193億円(前期比0.7%増)となり、売上高に対する比率は前期の78.0%から76.8%となりました。販売費及び一般管理費は、前期に比べて64億円増加して2,446億円(前期比2.7%増)となり、この結果、営業利益は前期に比べて181億円増加して936億円(前期比24.1%増)となりました。営業外収益は、持分法による投資利益の減少等により前期に比べて20億円減少して263億円(前期比7.3%減)となり、営業外費用は、前期に比べて11億円減少して40億円(前期比22.0%減)となりました。この結果、経常利益は前期に比べて172億円増加して1,159億円(前期比17.4%増)となりました。特別利益は、投資有価証券売却益の増加等により、前期に比べて445億円増加して1,304億円(前期比51.8%増)となり、特別損失は、減損損失の増加等により前期に比べて360億円増加して776億円(前期比86.8%増)となりました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は1,106億円(前期比0.2%減)となりました。 DNPグループの経営成績に重要な影響を与えた要因は以下のとおりです。当連結会計年度におけるDNPグループを取り巻く状況は、国内の雇用・所得環境の改善による個人消費の持ち直しやインバウンド需要の拡大等により、景気に緩やかな回復が見られました。一方で、株価・為替の急激な変動、地政学リスクの長期化、原材料や燃料等のコストの高止まり、米国をはじめとする各国・地域の政策動向、国内の物価上昇など、景気の先行きは依然として不透明な状況にあります。また、地球環境や人権問題等への対応、AI(人工知能)やXR(Extended Reality)等の先進技術などによって、ビジネスはより複雑かつ多様になり、競争も激化しています。 セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。スマートコミュニケーション部門については、イメージングコミュニケーション事業や金融機関向けのICカードが増加したほか、図書館運営業務も堅調に推移しましたが、紙媒体の市場縮小の影響を受けて出版印刷物や商業印刷物が伸び悩んだことに加え、BPOの大型案件が減少し、結果、部門全体の売上高は前期比0.5%減の7,155億円となりました。営業利益は、紙媒体等の市場縮小による減収の影響を受けたものの、為替のプラス効果、人的資本や固定資産の適正化などの事業構造改革により、前期比32.5%増の346億円となりました。営業利益率は、前期の3.6%から1.2ポイント上昇し、4.8%となりました。ライフ&ヘルスケア部門については、包装関連事業は、価格転嫁が進展したことに加え、スナックや日用品向け包材、ペットボトル用無菌充填システムなどが増加し、前年を上回りました。生活空間関連事業は、国内の新設住宅着工戸数(持家)の減少などによって住宅向け内装材が減少し、前年を下回りました。モビリティ・産業用高機能材関連は、太陽電池関連が、世界的な需要の高まりにより、封止材を中心に好調であったほか、自動車用部材の加飾フィルムも、内装用製品の販売が好調に推移しましたが、年間を通じて電気自動車(EV)市場の需要停滞の影響が大きかった車載向けのリチウムイオン電池用バッテリーパウチが減少し、前年を下回りました。飲料事業は、主要な販売チャネルでの価格改定の効果もあり、前年を上回りました。メディカル・ヘルスケア関連は、医療用パッケージの開発・販売に注力しました。その結果、部門全体の売上高は前期比5.0%増の4,960億円となりました。営業利益は、包装関連事業の売上増加に加え、固定費の圧縮等のコストダウン、為替のプラス効果なども寄与し、前期比78.2%増の237億円となりました。営業利益率は、前期の2.8%から2.0ポイント上昇し、4.8%となりました。 エレクトロニクス部門については、デジタルインターフェース関連は、有機ELディスプレイ製造用メタルマスクが前期の旺盛な開発需要からの反動で減少したものの、光学フィルムが液晶テレビ用パネルの大型化にともなう出荷面積の拡大等で堅調に推移し、前年を上回りました。半導体関連は、市場の回復によって半導体製造用フォトマスクが堅調に推移し、前年を上回りました。その結果、部門全体の売上高は前期比5.3%増の2,477億円となりました。営業利益は、デジタルインターフェース関連を中心に注力事業の売上が増加しましたが、メタルマスクの生産ライン増設による設備費増加の影響を受け、前期比1.4%減の573億円となりました。営業利益率は、前期の24.7%から1.5ポイント低下し、23.2%となりました。 セグメント資産の状況については、スマートコミュニケーション部門は前期末に比べて、613億円減少して7,532億円(前期末比7.5%減)となりました。ライフ&ヘルスケア部門は前期末に比べて、631億円減少して4,847億円(前期末比11.5%減)となりました。エレクトロニクス部門は前期末に比べて、956億円増加して3,857億円(前期末比33.0%増)となりました。報告セグメント合計では前期末に比べて、288億円減少して1兆6,237億円(前期末比1.7%減)となりました。 ②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報DNPグループの当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前期末に比べ160億円増加し、2,506億円となりました。営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整当期純利益1,686億円、減価償却費537億円などにより1,327億円の収入(前期は725億円の収入)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出570億円、投資有価証券の取得による支出878億円、投資有価証券の売却による収入1,193億円などにより367億円の支出(前期は183億円の収入)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出648億円、配当金の支払額150億円などにより874億円の支出(前期は1,186億円の支出)となりました。 a.財務戦略の基本的な考え方DNPグループは、社会課題を解決し、人々の期待に応える新しい価値の創出のため、成長領域を中心とした事業へ集中的に事業投資(研究開発投資、設備投資、戦略的提携やM&A投資)を行うとともに、それらを支える人財投資に経営資源を投入していきます。そのほか、資本効率の向上、財務基盤の安定化と株主還元の実施など、さまざまな資本政策を総合的に勘案して推進していきます。 b.DNPグループの資本の財源DNPグループは、主に営業活動により確保されるキャッシュ・フローにより、成長を維持・発展させていくために必要な資金を確保しております。設備投資資金などの資金需要については自己資金で賄うことを基本としておりますが、自己資金に加え、他人資本も活用し、成長投資資金を調達していきます。 c.DNPグループの経営資源の配分に関する考え方DNPグループは、成長領域を中心とした注力事業への投資などを進めていきます。重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源泉等については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1)新設等」に記載のとおりであります。また、利益の配分については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりであります。 ③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定DNPグループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
経営方針・経営戦略
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】DNPグループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題は次のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、DNPグループが判断したものです。 (1)会社の経営の基本方針DNPグループは経営の基本方針として、「人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する。」という企業理念を掲げ、長期を見据えて、自らがより良い未来をつくり出すための事業活動を展開し、企業価値を安定的に拡大していくよう努めています。事業ビジョンには、「P&Iイノベーションにより、4つの成長領域を軸に事業を拡げていく。」ことを掲げ、独自の「P&I」(印刷と情報)の強みの掛け合わせとパートナーとの連携を通じた価値創出に努めています。また、社会課題を解決するとともに、人々の期待に応える新しい価値の創出に努め、それらの価値を生活者の身近に常に存在する「あたりまえ」のものにしていくように努めています。人々にとって「欠かせない価値」を生み出し続けるDNPの取り組みを、「未来のあたりまえをつくる。」というブランドステートメントで社内外に表明しています。そして、その実現のために、「価値の創造」「誠実な行動」「高い透明性(説明責任)」という3つの責任を果たし続けていきます。 例えば、近年特に地球環境に対する負荷の低減が強く求められるなか、DNPグループは従来から常に、事業活動と地球環境との共生を絶えず考え、行動規範のひとつに「環境保全と持続可能な社会の実現」を掲げてきました。サステナブルな地球の上で初めて、健全な社会と経済、快適で豊かな人々の暮らしが成り立つと捉え、環境関連の課題を解決するとともに、人々の期待に応える価値の創出に注力しています。2020年3月には「DNPグループ環境ビジョン2050」を策定し、「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現に向けた取り組みを加速させています。重要課題のひとつである気候変動対応については、事業に関するリスクと機会の抽出、シナリオ分析による財務への影響評価を実施しています。また、事業ポートフォリオの転換、省エネルギー活動の強化、再生可能エネルギーの導入などにより、自社拠点での事業活動にともなう温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロにすることを目指すとともに、製品・サービスを通じて脱炭素社会の構築などに貢献していきます。これらの取り組みについて、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の提言に沿った情報開示を進めるとともに、「自然関連財務情報開示タスクフォース」(TNFD: Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)への対応も視野に入れていきます。 (2)目標とする経営指標DNPグループは、環境・社会・経済の動向や人々の価値観などが大きく変化するなかでも、企業理念に基づき、自らが主体となって、持続可能なより良い社会、より快適な暮らしの実現に向けて、新しい価値の創出に取り組んでいます。グループの強みを活かすことで事業を拡大していく「4つの成長領域」を設定して、長期を見据えた戦略を展開し、いつまでに・何を・どの程度達成するかといった中間目標(マイルストーン)を具体的に設定しながら、成果を積み上げていきます。現在は、2025年3月期の経営指標として「営業利益750億円、営業利益率5.2%、ROE5.0%以上」を設定した上で、2020年度から2022年度までの3か年の中期経営計画を推進しています。 (3)中長期的な会社の経営戦略DNPグループは、2023年3月期を最終年度とする3か年の中期経営計画において、「P&Iイノベーションによる価値の創造」と「成長を支える経営基盤の強化」の2つを基本方針として、目標の達成に努めていきます。 <基本方針1>P&Iイノベーションによる価値の創造〔1-1:成長領域を中心とした価値の創出〕DNPグループは、社会の課題や大きな潮流(メガトレンド)、人々の価値観の変化などを分析し、ステークホルダーの関心、DNPグループの事業との関連における影響度などを考慮して重要課題を設定しています。メガトレンドとしては、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」をはじめ、「データ経済化」「国内の人口減少と世界の人口増」「人類の長寿命化」「都市のスマート化」「脱炭素社会の構築」などが続いていくと捉えています。こうした動向に対して、DNPだからこそ創出できる価値を設計し、収益性と市場成長性の軸でそれらの価値を適切に評価して、「注力事業」を設定しています。「IoT・次世代通信」「データ流通」「モビリティ」「環境」という「注力事業」を中心に経営資源を最適に配分することで、バランスの取れた強靭な事業ポートフォリオを構築していきます。 〔1-2:各国・地域への最適な価値の提供〕DNPグループは、それぞれの国・地域の特性や、そこで暮らす人々の課題・ニーズを的確に捉え、最適な製品・サービスを開発・提供することで、グローバルに事業を展開しています。リチウムイオン電池用バッテリーパウチ、有機ELディスプレイ製造用メタルマスク、ディスプレイ用光学フィルム、写真プリント用昇華型熱転写記録材など、世界トップシェアを獲得している事業のさらなる拡大に努めるほか、新規事業の創出にも取り組み、グローバル市場に新しい価値を提供していきます。 〔1-3:あらゆる構造改革による価値の拡大〕強い事業ポートフォリオの構築に向けて、DNPグループ全体で多種多様な構造改革を推進していきます。例えば、情報コミュニケーション部門での紙メディア製造拠点の縮小、生活・産業部門での低付加価値製品の見直しと拠点の再編のほか、エレクトロニクス部門では、データ解析やロボット・AI活用による生産性の大幅な向上などを進めていきます。こうした取り組みによって生み出した人的資源や土地・設備などのリソースを「注力事業」の開発・製造に振り向けることで、事業構造の転換を進め、事業競争力をさらに強化していきます。 <基本方針2>成長を支える経営基盤の強化〔2-1:財務・非財務資本の強化〕DNPグループは、中長期的な成長に向けて、財務資本と非財務資本を統合的に活かすことで経営基盤を強化していきます。事業の成長を支える資本政策を進めるほか、非財務資本(人的/知的/製造/自然/社会・関係の各資本)の強化・拡大に努め、具体的な行動計画を策定・実行していきます。資本政策については、<基本方針1>と連動させて、「注力事業」を中心とした投資を進めています。これらの事業投資の財源として、自己資金だけでなく、他人資本の活用による成長資金の調達や、遊休資産の圧縮、政策保有株式の売却などを進めていきます。そのほか、資本効率の向上、財務基盤の安定化と株主還元の実施など、さまざまな資本政策を総合的に勘案して推進していきます。非財務資本のうち、近年特に重要性を増している人的資本に関しては、行動規範のひとつに「人類の尊厳と多様性の尊重」を掲げるなど、従来から人財・人権を重視した企業活動を行っています。国連の「国際人権章典」「グローバル・コンパクト」「ビジネスと人権に関する指導原則」や国際労働機関(ILO)の「労働の基本原則および権利に関する宣言」等に基づいた活動を継続しており、2020年には「DNPグループ人権方針」を策定しています。また、DNPグループは社員一人ひとりのあらゆる違いを尊重し、お互いの強みを掛け合わせ、新たな価値の創出につなげています。多様な人材の育成と働き方の実現、社員が活躍できる組織風土の醸成に向けて、「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包摂:D&I)」の取り組みを推進し、特に意思決定層の多様性を高めるためにも、あらゆるジェンダーギャップの解消に努めているほか、職場の心理的安全性の向上に努め、障がいを持つ社員や各国・地域の社員、あらゆる年齢の社員やLGBTQ+の社員を含む全社員の活躍を支援する施策・制度の増強などに取り組んでいます。例えば、「D&I」に関する全社員の当事者意識を醸成していく社内イベント「ダイバーシティウィーク」を2021年から開催しています。また、「働き方の変革」には2009年度から、「人事諸制度の再構築」には2019年度から集中的に取り組んでいます。社員一人ひとりの状況に合わせて選択できる多様な働き方の制度を構築し、コロナ禍前からテレワークを推進してきたほか、短時間勤務・短日勤務、ワーケーション、社外での副業や、社内の他の部署の仕事に携わる社内複業、人材公募制度を利用した他企業への出向など、さまざまな取り組みを全社に広げています。女性社員に対しては、2000年代の初めからその活躍推進に力を入れており、研修等によるキャリア形成と管理職登用を促進しています。その結果、2021年度末に女性の管理職比率が7.4%となり、管理職層・リーダークラスの人数も2016年2月の2.2倍に増加して、2019年の設定目標を達成しました。また、2025年度末までに部長クラス以上を2021年度末の1.5倍に、課長クラスの割合を15%以上に、リーダークラスの割合を25%以上にする目標を新たに掲げ、その達成に努めていきます。そのほか、社員の健康管理を経営の重要課題のひとつと捉え、2021年4月に策定した「DNPグループ健康宣言」に基づき、戦略的に健康づくりを推進し、活力の向上や組織の活性化につなげる「健康経営」を実践しています。・外部評価なでしこ銘柄選定、PRIDE指標GOLD、D&I award、健康経営ホワイト500選定。 〔2-2:コーポレート・ガバナンスの強化〕DNPグループは経営の重要課題のひとつとして、コーポレート・ガバナンスの強化に努めています。迅速かつ的確な経営の意思決定や業務執行、及びそれらを監督・監査する強固な体制を構築して運用しています。取締役は12名のうち1名が女性であり、また全体の3分の1となる4名が社外取締役です。監査役は5名のうち1名が女性であり、また全体の過半となる3名が社外監査役です。取締役会の実効性の分析・評価は年1回実施しており、分析結果を社外役員で議論するとともに、取締役会で共有しています。2022年4月には、環境・社会・経済の持続可能性を高め、DNP自身の持続的な成長をさらに推進していくため、代表取締役社長を委員長、代表取締役専務を副委員長とし、本社の各部門を担当する取締役・執行役員を委員として構成した「サステナビリティ推進委員会」の体制を再編しました。当委員会は「企業倫理行動委員会」や「BCM推進委員会」とも連携し、環境・社会・ガバナンス(ESG)を重視した中長期的な企業活動のもとで、全社リスクを分析・管理していきます。また、リスクとして把握した変動要因は、同時に事業拡大の機会でもあるという認識に立って、多様な社会の多くの人々が期待し、「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成にも貢献する新しい価値の創出につなげていきます。社員に対しても、一人ひとりが企業としての社会的責任を果たしていくため、「DNPグループ行動規範」に基づいた行動を促すとともに、さまざまな研修・教育を実施してコンプライアンス意識の醸成をさらに図っていきます。
対処すべき課題
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】DNPグループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題は次のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、DNPグループが判断したものです。 (1)会社の経営の基本方針DNPグループは経営の基本方針として、「人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する。」という企業理念を掲げ、長期を見据えて、自らがより良い未来をつくり出すための事業活動を展開し、企業価値を安定的に拡大していくよう努めています。事業ビジョンには、「P&Iイノベーションにより、4つの成長領域を軸に事業を拡げていく。」ことを掲げ、独自の「P&I」(印刷と情報)の強みの掛け合わせとパートナーとの連携を通じた価値創出に努めています。また、社会課題を解決するとともに、人々の期待に応える新しい価値の創出に努め、それらの価値を生活者の身近に常に存在する「あたりまえ」のものにしていくように努めています。人々にとって「欠かせない価値」を生み出し続けるDNPの取り組みを、「未来のあたりまえをつくる。」というブランドステートメントで社内外に表明しています。そして、その実現のために、「価値の創造」「誠実な行動」「高い透明性(説明責任)」という3つの責任を果たし続けていきます。 例えば、近年特に地球環境に対する負荷の低減が強く求められるなか、DNPグループは従来から常に、事業活動と地球環境との共生を絶えず考え、行動規範のひとつに「環境保全と持続可能な社会の実現」を掲げてきました。サステナブルな地球の上で初めて、健全な社会と経済、快適で豊かな人々の暮らしが成り立つと捉え、環境関連の課題を解決するとともに、人々の期待に応える価値の創出に注力しています。2020年3月には「DNPグループ環境ビジョン2050」を策定し、「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現に向けた取り組みを加速させています。重要課題のひとつである気候変動対応については、事業に関するリスクと機会の抽出、シナリオ分析による財務への影響評価を実施しています。また、事業ポートフォリオの転換、省エネルギー活動の強化、再生可能エネルギーの導入などにより、自社拠点での事業活動にともなう温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロにすることを目指すとともに、製品・サービスを通じて脱炭素社会の構築などに貢献していきます。これらの取り組みについて、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の提言に沿った情報開示を進めるとともに、「自然関連財務情報開示タスクフォース」(TNFD: Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)への対応も視野に入れていきます。 (2)目標とする経営指標DNPグループは、環境・社会・経済の動向や人々の価値観などが大きく変化するなかでも、企業理念に基づき、自らが主体となって、持続可能なより良い社会、より快適な暮らしの実現に向けて、新しい価値の創出に取り組んでいます。グループの強みを活かすことで事業を拡大していく「4つの成長領域」を設定して、長期を見据えた戦略を展開し、いつまでに・何を・どの程度達成するかといった中間目標(マイルストーン)を具体的に設定しながら、成果を積み上げていきます。現在は、2025年3月期の経営指標として「営業利益750億円、営業利益率5.2%、ROE5.0%以上」を設定した上で、2020年度から2022年度までの3か年の中期経営計画を推進しています。 (3)中長期的な会社の経営戦略DNPグループは、2023年3月期を最終年度とする3か年の中期経営計画において、「P&Iイノベーションによる価値の創造」と「成長を支える経営基盤の強化」の2つを基本方針として、目標の達成に努めていきます。 <基本方針1>P&Iイノベーションによる価値の創造〔1-1:成長領域を中心とした価値の創出〕DNPグループは、社会の課題や大きな潮流(メガトレンド)、人々の価値観の変化などを分析し、ステークホルダーの関心、DNPグループの事業との関連における影響度などを考慮して重要課題を設定しています。メガトレンドとしては、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」をはじめ、「データ経済化」「国内の人口減少と世界の人口増」「人類の長寿命化」「都市のスマート化」「脱炭素社会の構築」などが続いていくと捉えています。こうした動向に対して、DNPだからこそ創出できる価値を設計し、収益性と市場成長性の軸でそれらの価値を適切に評価して、「注力事業」を設定しています。「IoT・次世代通信」「データ流通」「モビリティ」「環境」という「注力事業」を中心に経営資源を最適に配分することで、バランスの取れた強靭な事業ポートフォリオを構築していきます。 〔1-2:各国・地域への最適な価値の提供〕DNPグループは、それぞれの国・地域の特性や、そこで暮らす人々の課題・ニーズを的確に捉え、最適な製品・サービスを開発・提供することで、グローバルに事業を展開しています。リチウムイオン電池用バッテリーパウチ、有機ELディスプレイ製造用メタルマスク、ディスプレイ用光学フィルム、写真プリント用昇華型熱転写記録材など、世界トップシェアを獲得している事業のさらなる拡大に努めるほか、新規事業の創出にも取り組み、グローバル市場に新しい価値を提供していきます。 〔1-3:あらゆる構造改革による価値の拡大〕強い事業ポートフォリオの構築に向けて、DNPグループ全体で多種多様な構造改革を推進していきます。例えば、情報コミュニケーション部門での紙メディア製造拠点の縮小、生活・産業部門での低付加価値製品の見直しと拠点の再編のほか、エレクトロニクス部門では、データ解析やロボット・AI活用による生産性の大幅な向上などを進めていきます。こうした取り組みによって生み出した人的資源や土地・設備などのリソースを「注力事業」の開発・製造に振り向けることで、事業構造の転換を進め、事業競争力をさらに強化していきます。 <基本方針2>成長を支える経営基盤の強化〔2-1:財務・非財務資本の強化〕DNPグループは、中長期的な成長に向けて、財務資本と非財務資本を統合的に活かすことで経営基盤を強化していきます。事業の成長を支える資本政策を進めるほか、非財務資本(人的/知的/製造/自然/社会・関係の各資本)の強化・拡大に努め、具体的な行動計画を策定・実行していきます。資本政策については、<基本方針1>と連動させて、「注力事業」を中心とした投資を進めています。これらの事業投資の財源として、自己資金だけでなく、他人資本の活用による成長資金の調達や、遊休資産の圧縮、政策保有株式の売却などを進めていきます。そのほか、資本効率の向上、財務基盤の安定化と株主還元の実施など、さまざまな資本政策を総合的に勘案して推進していきます。非財務資本のうち、近年特に重要性を増している人的資本に関しては、行動規範のひとつに「人類の尊厳と多様性の尊重」を掲げるなど、従来から人財・人権を重視した企業活動を行っています。国連の「国際人権章典」「グローバル・コンパクト」「ビジネスと人権に関する指導原則」や国際労働機関(ILO)の「労働の基本原則および権利に関する宣言」等に基づいた活動を継続しており、2020年には「DNPグループ人権方針」を策定しています。また、DNPグループは社員一人ひとりのあらゆる違いを尊重し、お互いの強みを掛け合わせ、新たな価値の創出につなげています。多様な人材の育成と働き方の実現、社員が活躍できる組織風土の醸成に向けて、「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包摂:D&I)」の取り組みを推進し、特に意思決定層の多様性を高めるためにも、あらゆるジェンダーギャップの解消に努めているほか、職場の心理的安全性の向上に努め、障がいを持つ社員や各国・地域の社員、あらゆる年齢の社員やLGBTQ+の社員を含む全社員の活躍を支援する施策・制度の増強などに取り組んでいます。例えば、「D&I」に関する全社員の当事者意識を醸成していく社内イベント「ダイバーシティウィーク」を2021年から開催しています。また、「働き方の変革」には2009年度から、「人事諸制度の再構築」には2019年度から集中的に取り組んでいます。社員一人ひとりの状況に合わせて選択できる多様な働き方の制度を構築し、コロナ禍前からテレワークを推進してきたほか、短時間勤務・短日勤務、ワーケーション、社外での副業や、社内の他の部署の仕事に携わる社内複業、人材公募制度を利用した他企業への出向など、さまざまな取り組みを全社に広げています。女性社員に対しては、2000年代の初めからその活躍推進に力を入れており、研修等によるキャリア形成と管理職登用を促進しています。その結果、2021年度末に女性の管理職比率が7.4%となり、管理職層・リーダークラスの人数も2016年2月の2.2倍に増加して、2019年の設定目標を達成しました。また、2025年度末までに部長クラス以上を2021年度末の1.5倍に、課長クラスの割合を15%以上に、リーダークラスの割合を25%以上にする目標を新たに掲げ、その達成に努めていきます。そのほか、社員の健康管理を経営の重要課題のひとつと捉え、2021年4月に策定した「DNPグループ健康宣言」に基づき、戦略的に健康づくりを推進し、活力の向上や組織の活性化につなげる「健康経営」を実践しています。・外部評価なでしこ銘柄選定、PRIDE指標GOLD、D&I award、健康経営ホワイト500選定。 〔2-2:コーポレート・ガバナンスの強化〕DNPグループは経営の重要課題のひとつとして、コーポレート・ガバナンスの強化に努めています。迅速かつ的確な経営の意思決定や業務執行、及びそれらを監督・監査する強固な体制を構築して運用しています。取締役は12名のうち1名が女性であり、また全体の3分の1となる4名が社外取締役です。監査役は5名のうち1名が女性であり、また全体の過半となる3名が社外監査役です。取締役会の実効性の分析・評価は年1回実施しており、分析結果を社外役員で議論するとともに、取締役会で共有しています。2022年4月には、環境・社会・経済の持続可能性を高め、DNP自身の持続的な成長をさらに推進していくため、代表取締役社長を委員長、代表取締役専務を副委員長とし、本社の各部門を担当する取締役・執行役員を委員として構成した「サステナビリティ推進委員会」の体制を再編しました。当委員会は「企業倫理行動委員会」や「BCM推進委員会」とも連携し、環境・社会・ガバナンス(ESG)を重視した中長期的な企業活動のもとで、全社リスクを分析・管理していきます。また、リスクとして把握した変動要因は、同時に事業拡大の機会でもあるという認識に立って、多様な社会の多くの人々が期待し、「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成にも貢献する新しい価値の創出につなげていきます。社員に対しても、一人ひとりが企業としての社会的責任を果たしていくため、「DNPグループ行動規範」に基づいた行動を促すとともに、さまざまな研修・教育を実施してコンプライアンス意識の醸成をさらに図っていきます。
MD&A(経営者による分析)
3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】 (1)経営成績等の状況の概要当連結会計年度におけるDNPグループの状況の概要は次のとおりであります。 ① 経営成績の状況当連結会計年度におけるDNPグループを取り巻く環境は、新型コロナウイルス感染症の影響が続きましたが、ワクチンの普及などもあり、徐々に経済活動再開の動きも見られました。国内では働き方や生活様式の変化も続き、遠隔教育やオンライン診療、第5世代移動通信システム(5G)関連の需要が一層拡大しました。また、地球温暖化防止や環境負荷低減の取り組みが世界で広がるなか、脱炭素社会や循環経済の構築につながる環境配慮型の製品・サービスのニーズが高まりました。一方、期の後半には、ウクライナ情勢をはじめとする地政学リスク、原材料価格の一段の上昇、半導体不足の長期化など、2022年度にかけて影響が強まりました。こうした状況のなか、DNPグループは、持続可能なより良い社会、より快適な暮らしの実現に向けて、社会の課題を解決するとともに、人々の期待に応える新しい価値の創出に努めました。DNPグループは常に、社会に貢献していくこと、人々の暮らしを豊かにしていくことを「志」として持ち続けており、「未来のあたりまえをつくる。」というブランドステートメントにその思いを込めています。独自の「P&I」(印刷と情報)の強みを掛け合わせ、多くのパートナーとの連携も深めて、人々や社会に必要とされる価値を提供することで、欠かせない会社としての「存在意義」の発揮に努めています。 当期は、高い市場成長性と収益性を見込む「注力事業」として、「IoT・次世代通信」「データ流通」「モビリティ」「環境」関連のビジネスを設定し、経営資源を重点的かつ最適に配分して事業の拡大に取り組みました。「IoT・次世代通信」関連では、5G向けにナノインプリントリソグラフィによる次世代半導体製品の開発・供給を進めました。この技術は、半導体製造時の省電力化やコスト低減を実現し、脱炭素社会の実現にも貢献しています。「データ流通」関連では、2021年10月に、高等教育の高度化への取り組みを目的として、NTT西日本及びNTT東日本との共同出資で株式会社NTT EDXを設立しました。電子教科書・教材事業を軸に、高等教育の課題解決に向けた各種サービスの提供や、出版社・書店の業務の電子化・効率化の支援に取り組みました。また証明写真機「Ki-Re-i」を活用したマイナンバーカードの電子申請サービスも提供し、行政サービスのデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進して、新しい生活様式に対応した非接触での申請を可能にしました。「モビリティ」関連では、環境負荷の低減やエネルギー効率の向上、より高い情報セキュリティや安全性・快適性が求められる「次世代のモビリティ社会」に向けた製品・サービスの開発に努めました。例えば、電気自動車(EV)等に使用するリチウムイオン電池用のバッテリーパウチや、内外装材のデザインと機能をともに高める加飾フィルムやパネルなどを開発・提供しました。「環境」関連では、単一素材(モノマテリアル)のプラスチックで構成することでリサイクル性を高めた「モノマテリアル包材」の開発を強化しました。DNPグループの独自技術によって、酸素や水蒸気に対する高いバリア性に加えて、メタリック調の意匠・デザインを実現し、液体の内容物にも対応可能なポリプロピレン(PP)のフィルムパッケージを開発しました。この製品が2021年6月に世界的な消費財メーカーに採用され、東南アジア市場での販売がスタートしました。そのほか、競争力強化のための構造改革にも取り組み、強い事業ポートフォリオの構築を推進しています。長期的成長を支える経営基盤の強化に向けて、DXなどの大きな潮流(メガトレンド)を捉え、ICT活用による生産性の向上や情報基盤の強化のほか、環境及び人財・人権の取り組みを加速させました。 これらの結果、当連結会計年度のDNPグループの売上高は1兆3,441億円(前期比0.7%増)、営業利益は667億円(前期比34.8%増)、経常利益は812億円(前期比35.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は、退職給付制度の改定をはじめ、補修対策引当金の見直し及び投資有価証券の売却に伴う特別利益の計上もあり、971億円(前期比287.4%増)となりました。また、DNPグループが収益性指標の1つとしている自己資本利益率(ROE)は9.1%となりました。 セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。 〔印刷事業〕(情報コミュニケーション部門)情報イノベーション事業は、BPO(Business Process Outsourcing)の大型案件が減少したほか、ICカードもマイナンバーカードの需要拡大が一段落し、当事業全体で減収となりました。イメージングコミュニケーション事業は、主力の米国市場や国内において、写真の撮影・プリント用の部材とサービスの需要が大幅に回復したほか、その他の地域での事業も順調に推移し、当事業全体で増収となりました。出版関連事業は、電子書籍の販売が引き続き堅調に推移し、紙と電子の両方に対応したハイブリッド型総合書店「honto」の売上が増加したほか、電子図書館サービスや図書館運営業務が順調に推移しました。一方、雑誌の印刷が伸び悩むなどの影響も大きく、当事業全体で減収となりました。その結果、政策関連大型BPOが昨年実績から減少したことなどにより、部門全体の売上高は6,989億円(前期比3.2%減)となりましたが、営業利益はコスト構造改革の効果もあり276億円(前期比43.9%増)となりました。 (生活・産業部門)包装関連事業は、「DNP環境配慮パッケージング GREEN PACKAGING」の開発・販売に努めたほか、製造プロセスや業務の効率化などの構造改革が一定の成果を挙げました。紙器、軟包装がわずかに減少したものの、無菌充填システムの販売増加もあり、当事業全体で増収となりました。生活空間関連事業は、住宅や自動車市場の需要回復により、住宅用内外装材や自動車内装用の加飾フィルムなどが増加しました。また、感染防止対策に有効な抗菌・抗ウイルス製品の需要も拡大し、当事業全体で増収となりました。産業用高機能材関連事業は、世界的な半導体不足による、サプライチェーンにおける一時的な減産の影響を受けたものの、リチウムイオン電池用バッテリーパウチが、電気自動車の世界的な需要拡大により車載向けは増加、テレワークの広がり等によりタブレット端末やスマートフォン向け需要は堅調に推移し、当事業全体で増収となりました。その結果、部門全体の売上高は3,870億円(前期比5.2%増)となりました。営業利益は、産業用高機能材関連事業の拡大や、製造体制の最適化等によるコストダウンを進めましたが、原材料高の影響によって、136億円(前期比2.4%減)となりました。 (エレクトロニクス部門)ディスプレイ関連製品事業は、光学フィルム関連が巣ごもり消費需要の一巡による影響を受けたものの、全体では増加しました。また、有機ELディスプレイ製造用メタルマスクは、スマートフォン用のディスプレイ需要が堅調に推移し、当事業全体で増収となりました。電子デバイス事業は、企業や自治体等のDXの加速などによって半導体需要が拡大し、通信や車載、データセンター向けの半導体製品の製造用フォトマスクが増加しました。また、半導体パッケージ用部材であるリードフレームなど各種関連製品も好調に推移し、当事業全体で増収となりました。その結果、部門全体の売上高は2,110億円(前期比7.1%増)となり、営業利益は売上の増加によって、464億円(前期比26.7%増)となりました。 〔飲料事業〕(飲料部門)コロナ禍での生活様式の変化や環境負荷低減のニーズの拡大に対応して、商品名等のラベルを付けないPETボトル飲料のオンライン及び店頭での販売に注力しました。部門全体の売上高は、家庭内消費が主力のスーパーやウェブサイトでの販売は増加したものの、外出自粛や行動制限の影響を受けて飲食店での販売が伸び悩んだことにより、497億円(前期比3.4%減)となりました。営業利益は、シェア拡大に向けた販売促進費の増加や原材料・資材費の高騰の影響などにより、6億円(前期比17.8%減)となりました。 ② 財政状態の状況当連結会計年度末の資産、負債、純資産については、総資産は、退職給付に係る資産の増加などにより、前連結会計年度末に比べ516億円増加し、1兆8,766億円となりました。負債は、退職給付に係る負債の増加などにより、前連結会計年度末に比べ18億円増加し、7,282億円となりました。純資産は、利益剰余金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ497億円増加し、1兆1,484億円となりました。 ③ キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ108億円減少し、2,933億円となりました。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益1,268億円、減価償却費511億円などにより820億円の収入(前連結会計年度は616億円の収入)となりました。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出536億円などにより392億円の支出(前連結会計年度は562億円の支出)となりました。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出300億円、配当金の支払額176億円などにより577億円の支出(前連結会計年度は782億円の支出)となりました。 ④ 生産、受注及び販売の実績a.生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)情報コミュニケーション部門446,996△5.9生活・産業部門312,479+5.4エレクトロニクス部門202,719+6.3飲料部門30,604△2.2合 計992,799△0.1 (注)金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。 b.受注実績当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。なお、飲料部門においては、受注を主体とした生産を行っていないため、受注状況の記載を省略しております。 セグメントの名称受注高(百万円)前期比(%)受注残高(百万円)前期比(%)情報コミュニケーション部門579,360△2.1112,157+5.0生活・産業部門393,350+8.281,046+10.5エレクトロニクス部門216,590+8.335,850+19.2合 計1,189,302+2.9229,054+8.9 (注)金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。 c.販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)情報コミュニケーション部門696,910△3.1生活・産業部門386,447+5.2エレクトロニクス部門211,094+7.1飲料部門49,694△3.4合 計1,344,147+0.7 (注)セグメント間取引については相殺消去しております。 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点によるDNPグループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。 ①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容DNPグループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高は、前連結会計年度(以下「前期」)に比べて87億円増加し、1兆3,441億円(前期比0.7%増)となりました。売上原価は、前期に比べて73億円減少して1兆512億円(前期比0.7%減)となり、売上高に対する比率は前期の79.3%から78.2%となりました。販売費及び一般管理費は、前期に比べて12億円減少して2,261億円(前期比0.5%減)となり、この結果、営業利益は前期に比べて172億円増加して667億円(前期比34.8%増)となりました。営業外収益は、持分法による投資利益の増加等により前期に比べて29億円増加して185億円(前期比18.7%増)となり、営業外費用は、寄付金の減少等により前期に比べて11億円減少して40億円(前期比22.0%減)となりました。この結果、経常利益は前期に比べて213億円増加して812億円(前期比35.6%増)となりました。特別利益は、退職給付制度改定益の計上等により、前期に比べて516億円増加して545億円(前期比1,747.1%増)となり、特別損失は、投資有価証券売却損の減少等により前期に比べて75億円減少して89億円(前期比45.7%減)となりました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は971億円(前期比287.4%増)となりました。 DNPグループの経営成績に重要な影響を与えた要因は以下のとおりです。当連結会計年度におけるDNPグループを取り巻く環境は、新型コロナウイルス感染症の影響が続きましたが、ワクチンの普及などもあり、徐々に経済活動再開の動きも見られました。国内では働き方や生活様式の変化も続き、遠隔教育やオンライン診療、第5世代移動通信システム(5G)関連の需要が一層拡大しました。また、地球温暖化防止や環境負荷低減の取り組みが世界で広がるなか、脱炭素社会や循環経済の構築につながる環境配慮型の製品・サービスのニーズが高まりました。一方、期の後半には、ウクライナ情勢をはじめとする地政学リスク、原材料価格の一段の上昇、半導体不足の長期化など、2022年度にかけて影響が強まりました。 セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。情報コミュニケーション部門については、イメージングコミュニケーション事業のほか、電子書籍の販売やハイブリッド型総合書店「honto」、電子図書館サービスや図書館運営業務が拡大したものの、BPOの大型案件やマイナンバーカード等のICカードが減少したことに加え、雑誌の印刷が伸び悩んだ結果、部門全体の売上高は前期比3.2%減の6,989億円となりました。営業利益は、コスト構造改革の効果などによって前期比43.9%増の276億円となりました。営業利益率は、前期の2.7%から1.3ポイント上昇し、4.0%となりました。生活・産業部門については、包装関連事業は、紙器や軟包装がわずかに減少したものの、無菌充填システムの販売増加もあり、増収となりました。また、生活空間関連事業も、住宅用内外装材や自動車内装用の加飾フィルムなどが増加したほか、抗菌・抗ウイルス製品の需要も拡大し、増収となりました。さらに、産業用高機能材関連事業は、リチウムイオン電池用バッテリーパウチが車載用を中心に好調に推移し、増収となりました。その結果、部門全体の売上高は前期比5.2%増の3,870億円となりました。営業利益は、産業用高機能材関連事業の拡大や、製造体制の最適化等によるコストダウンを進めましたが、原材料高の影響によって、前期比2.4%減の136億円となりました。営業利益率は、前期の3.8%から0.3ポイント低下し、3.5%となりました。エレクトロニクス部門については、ディスプレイ関連事業は光学フィルム関連が増加したほか、有機ELディスプレイ製造用メタルマスクも堅調に推移し、増収となりました。また、電子デバイス事業も、フォトマスクや半導体パッケージ用部材であるリードフレームなど各種関連製品が好調に推移し、増収となった結果、部門全体の売上高は前期比7.1%増の2,110億円となりました。また、営業利益は、売上の増加により、前期比26.7%増の464億円となりました。営業利益率は、前期の18.6%から3.4ポイント上昇し、22.0%となりました。 飲料部門については、家庭内消費が主力のスーパーやウェブサイトでの販売は増加したものの、外出自粛や行動制限の影響を受けて飲食店での販売が伸び悩んだことにより、部門全体の売上高は前期比3.4%減の497億円となりました。また、営業利益は、シェア拡大に向けた販売促進費の増加や原材料・資材費の高騰の影響などにより、前期比17.8%減の6億円となりました。営業利益率は、前期の1.6%から0.2ポイント低下し、1.4%となりました。 セグメント資産の状況については、情報コミュニケーション部門は前期末に比べて、155億円減少して8,832億円(前期末比1.7%減)となりました。生活・産業部門は前期末に比べて、153億円増加して4,586億円(前期末比3.5%増)となりました。エレクトロニクス部門は前期末に比べて、230億円増加して2,355億円(前期末比10.9%増)となりました。飲料部門は前期末に比べて、23百万円増加して490億円(前期末比0.0%増)となりました。報告セグメント合計では前期末に比べて、228億円増加して1兆6,264億円(前期末比1.4%増)となりました。 ②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資本の流動性に係る情報DNPグループの当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前期末に比べ108億円減少し、2,933億円となりました。営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益1,268億円、減価償却費511億円などにより820億円の収入(前期は616億円の収入)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出536億円などにより392億円の支出(前期は562億円の支出)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出300億円、配当金の支払額176億円などにより577億円の支出(前期は782億円の支出)となりました。 a.財務戦略の基本的な考え方DNPグループは、社会課題を解決し、人々の期待に応える新しい価値の創出のため、成長領域を中心とした事業へ集中的に事業投資(研究開発投資、設備投資、戦略的提携やM&A投資)を行うとともに、それらを支える人財投資に経営資源を投入していきます。そのほか、資本効率の向上、財務基盤の安定化と株主還元の実施など、さまざまな資本政策を総合的に勘案して推進していきます。 b.DNPグループの資本の財源DNPグループは、主に営業活動により確保されるキャッシュ・フローにより、成長を維持・発展させていくために必要な資金を確保しております。設備投資資金などの資金需要については自己資金で賄うことを基本としておりますが、自己資金に加え、他人資本も活用し、成長投資資金を調達していきます。 c.DNPグループの経営資源の配分に関する考え方DNPグループは、成長領域を中心とした注力事業への投資などを進めていきます。重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源泉等については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1)新設等」に記載のとおりであります。また、利益の配分については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりであります。 ③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定DNPグループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。 なお、新型コロナウイルス感染症の影響に関する会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載のとおりであります。
経営方針・経営戦略
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、DNPグループが判断したものです。 DNPグループは、経営の基本方針として、「DNPグループは、人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する。」という企業理念を掲げ、積極的な事業活動を展開し、中長期にわたり事業を安定的に拡大していくよう努めていきます。DNPグループの成長を持続的なものにし、中長期的に企業価値を向上していくためには、コーポレート・ガバナンスの充実が重要であると考えています。的確で統合的な経営の意思決定と、それに基づく適正かつ迅速な業務執行、そしてそれらの監督・監査を可能とする体制を構築・運用するとともに、社員一人ひとりのコンプライアンス意識を高めるための研修や教育の徹底に努めていきます。また、企業としての社会的責任を常に認識し、あらゆるステークホルダーに新しい価値を提供していきます。その実現のために、「価値の創造」「誠実な行動」「高い透明性(説明責任)」の3つを企業が果たすべき責任と捉え、その実践に努めています。これらの責任を果たすため、「DNPグループ行動規範」に基づいた活動を徹底するとともに、内部統制システムを整備して業務の適正性を確保し、株主の皆様や顧客企業、生活者、社員など、さまざまなステークホルダーから高い信頼を得られるよう、誠実な企業活動に努めていきます。今後の見通しについては、国内経済は、雇用・所得環境の改善が見られるものの、通商問題の動向、中国をはじめとする新興国経済の先行き、予定されている消費税率引き上げなどもあり、先行きには不透明感が強まっています。印刷業界では、紙媒体の需要減少や競争激化による受注単価の下落などが見込まれ、引き続き厳しい状況が予想されます。このような状況のなかで、DNPグループは、印刷(Printing)と情報(Information)の技術やノウハウ、営業や企画、製造や生産管理、知的財産やブランディングなど、さまざまな強みを柔軟に組み合わせた「P&Iイノベーション」により、社会課題を解決し、人々の期待に応える新しい価値を創出することで、DNPグループの持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指しています。そのために、1.成長領域を中心とした事業の拡大による価値の創出2.グローバル市場に向けた価値の提供3.利益最大化に向けた価値の拡大という3つの重点施策を推進していきます。 「成長領域を中心とした事業の拡大による価値の創出」については、「P&I」の強みと社外のパートナーの強みを掛け合わせ、「知とコミュニケーション」「食とヘルスケア」「住まいとモビリティ」「環境とエネルギー」という4つの成長領域で、社会課題を解決し、人々の期待に応える新しい価値を生み出していきます。「グローバル市場に向けた価値の提供」については、バリューチェーンがグローバルに広がるなか、国内にとどまることなく、世界的な視野で社会課題の解決に取り組み、人々の期待に応えていきます。2019年3月現在、15の製造拠点、27の営業拠点を海外で展開しており、地域特性やそこで暮らす人々の課題やニーズを的確に捉え、国内外に価値を広く提供していきます。「利益最大化に向けた価値の拡大」については、事業部門や拠点の統合・再編を含む事業構造改革やコスト構造改革などを推進していきます。また、人財や知的財産などの非財務の資本と財務資本を統合的に活用し、企業価値の最大化に努めていきます。 <各事業部門における取り組み>〔印刷事業〕(情報コミュニケーション部門)当部門では、高度な画像処理技術や情報セキュリティ技術などにより、情報の最適な表現と多様なメディアへの展開に取り組み、安全で安心な生活者と企業のさまざまなコミュニケーションを実現していきます。例えば、出版社との連携をさらに深め、各種出版物の企画・制作、流通・販売、コンテンツの著作権処理や海外展開などを推進し、出版市場の活性化に貢献していきます。また、キャッシュレス決済の拡大と各種電子マネーの普及に対応して、国際ブランドプリペイド・デビットカードのほか、キーホルダー型などの異形状タイプのICカードにも力を入れ、生活者に高いセキュリティと利便性を提供していきます。さらに、DNP柏データセンターや国内13箇所のBPOセンターなど、高度な情報セキュリティ環境を備えたインフラを活用し、クレジットカードやプリペイドカード、電子マネーやQRコードなど、さまざまな決済手段に対応するキャッシュレス決済プラットフォームの提供や、デジタルマーケティング事業など付加価値の高い多様なサービスを提供していきます。 (生活・産業部門)当部門では、地球環境への配慮やユニバーサルデザインへの対応などを進め、企業や生活者の多様なニーズに的確に応える製品・サービスを国内外に提供していきます。例えば、リチウムイオン電池用バッテリーパウチは、世界トップシェアの強みを活かし、電気自動車の普及にともない需要が拡大する車載用に加え、ドローンやロボットなどの新たな用途開拓に努めていきます。また、車体を軽量化して自動車の燃費向上を実現する曲面樹脂ガラスの開発などを進めていきます。包装関連では、持続可能な循環型社会の実現に向けて、植物由来の原料を使用した「DNP植物由来包材 バイオマテック」シリーズや、リサイクルの推進に寄与するパッケージの開発に取り組んでいます。海外では、インドネシアやベトナムの生産拠点を中心に、東南アジア地域でのシェア拡大を目指していきます。さらに、住宅や商業施設にとどまらず、自動車や鉄道車両等も快適性の求められる生活空間と捉え、EBコーティング技術等を活かした高付加価値製品のほか、感性工学等を活用した心地よい空間の設計や評価測定、より施工しやすい工法の開発などを行っていきます。欧米や新興国に対しても、意匠性に優れた金属パネルや自動車用内外装材について、グローバルな販売網を活かしてシェア拡大を図っていきます。また、生活空間関連事業の製品である壁紙の一部に生じた不具合の補修対策については、見直しした補修対策計画を着実に実行していくとともに、再発防止に向けた品質保証体制の整備・強化を一層推進していきます。 (エレクトロニクス部門)当部門では、次世代のエレクトロニクス製品を視野に入れ、機能性に優れた高付加価値製品の開発に取り組んでいきます。その際、新たなコア技術の開発に努めるとともに、取引先や専門的な強みを持つ企業との協業にも力を入れ、事業化のスピードアップを図っていきます。また、技術供与なども含めた他社とのアライアンスやロイヤリティビジネスなども積極的に展開していきます。また、国内外の市場の変化を見極めて、製造設備の最適化や生産・開発体制の見直しなど、構造改革を引き続き推進していきます。例えば、需要の急速な拡大が進む有機ELディスプレイ市場に対して、その製造に使用するメタルマスクの生産能力を増強し、ディスプレイの高解像度化に対応した製品の開発と安定供給の体制を整備して、市場シェアを維持・拡大していきます。また、位相差フィルムなど、有機ELディスプレイ用の各種光学フィルムの開発にも努めていきます。2019年10月には、世界的な大型テレビの需要拡大に対応するため、広島県・三原工場に増設した、大型テレビ向けの光学フィルムの製造装置が量産を開始する予定で、世界トップの市場シェアを有するディスプレイ用光学フィルムのさらなる拡大に注力していきます。半導体製品用フォトマスクについては、製造時の描画時間を大幅に短縮するマルチ電子ビームマスク描画装置やナノインプリントなどの次世代微細加工技術の活用により、次世代製品の生産体制を強化して、微細化や低コスト化という半導体メーカーのニーズに応えていきます。 〔清涼飲料事業〕(清涼飲料部門)清涼飲料業界でのシェア争いが激化すると予想されるなかで、「グローバルレベルでのブランド力を持つコカ・コーラビジネスを通して、道産子企業としての地域密着力で競合を圧倒し、常に新しい価値やサービスを提供することで地元北海道に貢献し、持続的成長可能な経営基盤を実現する」というビジョンに基づき、「北海道で唯一の総合飲料会社としてさわやかさと潤いを提供し、道民から愛され続ける企業を目指す」を基本方針とした中期経営計画の達成を目指していきます。 <事業体制の強化>DNPグループは、「対話と協働」という行動指針を掲げ、部門間の連携を一層強化してグループとしての総合力を高めるとともに、企業や生活者との対話を深めて新しい価値の提供に努めていきます。事業拡大に向けては、今後も国内外を問わずさまざまな強みを持ったパートナーとの連携を強化していきます。また、事業ビジョンを推進する拠点の整備を国内外で進めるなかで、東京・市谷地区の拠点の再開発に取り組んでいます。東京近郊に分散している各事業部門の企画や営業及び本社の機能をこの地区に集約し、有効に活用することで、新規事業開発を強力に推進していきます。 <事業継続のための体制構築>DNPグループは、東日本大震災の経験から事業継続計画(BCP)の重要性を再認識し、「災害発生時の人的安全対策を最優先すること」「会社の災害に対する対応力と復旧力を高めること」を基本に、日ごろから災害リスクを正しく認識して適切な予防対策を進めています。災害等、不測の事態に対しては、「DNPグループ災害対策基本規程」に基本方針や推進体制を定め、社員及び関係者の安全を確保し、さまざまなステークホルダーに安心していただけるよう防災対策を進めています。 <持続可能な社会の実現への貢献>気候変動や格差拡大などの社会課題の解決を目指し、2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けた、企業の取り組みの強化が期待されています。DNPグループは、中長期での安定的な成長のために、SDGsが達成された持続可能な社会の実現を目指しています。そのために、製品・サービスを通じた「価値創造」と、バリューチェーンにおける「価値創造を支える基盤」の構築を進めています。特に、気候変動については喫緊の環境課題と認識しており、事業活動及び製品・サービスを通じた環境負荷の低減を進めています。
対処すべき課題
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、DNPグループが判断したものです。 DNPグループは、経営の基本方針として、「DNPグループは、人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する。」という企業理念を掲げ、積極的な事業活動を展開し、中長期にわたり事業を安定的に拡大していくよう努めていきます。DNPグループの成長を持続的なものにし、中長期的に企業価値を向上していくためには、コーポレート・ガバナンスの充実が重要であると考えています。的確で統合的な経営の意思決定と、それに基づく適正かつ迅速な業務執行、そしてそれらの監督・監査を可能とする体制を構築・運用するとともに、社員一人ひとりのコンプライアンス意識を高めるための研修や教育の徹底に努めていきます。また、企業としての社会的責任を常に認識し、あらゆるステークホルダーに新しい価値を提供していきます。その実現のために、「価値の創造」「誠実な行動」「高い透明性(説明責任)」の3つを企業が果たすべき責任と捉え、その実践に努めています。これらの責任を果たすため、「DNPグループ行動規範」に基づいた活動を徹底するとともに、内部統制システムを整備して業務の適正性を確保し、株主の皆様や顧客企業、生活者、社員など、さまざまなステークホルダーから高い信頼を得られるよう、誠実な企業活動に努めていきます。今後の見通しについては、国内経済は、雇用・所得環境の改善が見られるものの、通商問題の動向、中国をはじめとする新興国経済の先行き、予定されている消費税率引き上げなどもあり、先行きには不透明感が強まっています。印刷業界では、紙媒体の需要減少や競争激化による受注単価の下落などが見込まれ、引き続き厳しい状況が予想されます。このような状況のなかで、DNPグループは、印刷(Printing)と情報(Information)の技術やノウハウ、営業や企画、製造や生産管理、知的財産やブランディングなど、さまざまな強みを柔軟に組み合わせた「P&Iイノベーション」により、社会課題を解決し、人々の期待に応える新しい価値を創出することで、DNPグループの持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指しています。そのために、1.成長領域を中心とした事業の拡大による価値の創出2.グローバル市場に向けた価値の提供3.利益最大化に向けた価値の拡大という3つの重点施策を推進していきます。 「成長領域を中心とした事業の拡大による価値の創出」については、「P&I」の強みと社外のパートナーの強みを掛け合わせ、「知とコミュニケーション」「食とヘルスケア」「住まいとモビリティ」「環境とエネルギー」という4つの成長領域で、社会課題を解決し、人々の期待に応える新しい価値を生み出していきます。「グローバル市場に向けた価値の提供」については、バリューチェーンがグローバルに広がるなか、国内にとどまることなく、世界的な視野で社会課題の解決に取り組み、人々の期待に応えていきます。2019年3月現在、15の製造拠点、27の営業拠点を海外で展開しており、地域特性やそこで暮らす人々の課題やニーズを的確に捉え、国内外に価値を広く提供していきます。「利益最大化に向けた価値の拡大」については、事業部門や拠点の統合・再編を含む事業構造改革やコスト構造改革などを推進していきます。また、人財や知的財産などの非財務の資本と財務資本を統合的に活用し、企業価値の最大化に努めていきます。 <各事業部門における取り組み>〔印刷事業〕(情報コミュニケーション部門)当部門では、高度な画像処理技術や情報セキュリティ技術などにより、情報の最適な表現と多様なメディアへの展開に取り組み、安全で安心な生活者と企業のさまざまなコミュニケーションを実現していきます。例えば、出版社との連携をさらに深め、各種出版物の企画・制作、流通・販売、コンテンツの著作権処理や海外展開などを推進し、出版市場の活性化に貢献していきます。また、キャッシュレス決済の拡大と各種電子マネーの普及に対応して、国際ブランドプリペイド・デビットカードのほか、キーホルダー型などの異形状タイプのICカードにも力を入れ、生活者に高いセキュリティと利便性を提供していきます。さらに、DNP柏データセンターや国内13箇所のBPOセンターなど、高度な情報セキュリティ環境を備えたインフラを活用し、クレジットカードやプリペイドカード、電子マネーやQRコードなど、さまざまな決済手段に対応するキャッシュレス決済プラットフォームの提供や、デジタルマーケティング事業など付加価値の高い多様なサービスを提供していきます。 (生活・産業部門)当部門では、地球環境への配慮やユニバーサルデザインへの対応などを進め、企業や生活者の多様なニーズに的確に応える製品・サービスを国内外に提供していきます。例えば、リチウムイオン電池用バッテリーパウチは、世界トップシェアの強みを活かし、電気自動車の普及にともない需要が拡大する車載用に加え、ドローンやロボットなどの新たな用途開拓に努めていきます。また、車体を軽量化して自動車の燃費向上を実現する曲面樹脂ガラスの開発などを進めていきます。包装関連では、持続可能な循環型社会の実現に向けて、植物由来の原料を使用した「DNP植物由来包材 バイオマテック」シリーズや、リサイクルの推進に寄与するパッケージの開発に取り組んでいます。海外では、インドネシアやベトナムの生産拠点を中心に、東南アジア地域でのシェア拡大を目指していきます。さらに、住宅や商業施設にとどまらず、自動車や鉄道車両等も快適性の求められる生活空間と捉え、EBコーティング技術等を活かした高付加価値製品のほか、感性工学等を活用した心地よい空間の設計や評価測定、より施工しやすい工法の開発などを行っていきます。欧米や新興国に対しても、意匠性に優れた金属パネルや自動車用内外装材について、グローバルな販売網を活かしてシェア拡大を図っていきます。また、生活空間関連事業の製品である壁紙の一部に生じた不具合の補修対策については、見直しした補修対策計画を着実に実行していくとともに、再発防止に向けた品質保証体制の整備・強化を一層推進していきます。 (エレクトロニクス部門)当部門では、次世代のエレクトロニクス製品を視野に入れ、機能性に優れた高付加価値製品の開発に取り組んでいきます。その際、新たなコア技術の開発に努めるとともに、取引先や専門的な強みを持つ企業との協業にも力を入れ、事業化のスピードアップを図っていきます。また、技術供与なども含めた他社とのアライアンスやロイヤリティビジネスなども積極的に展開していきます。また、国内外の市場の変化を見極めて、製造設備の最適化や生産・開発体制の見直しなど、構造改革を引き続き推進していきます。例えば、需要の急速な拡大が進む有機ELディスプレイ市場に対して、その製造に使用するメタルマスクの生産能力を増強し、ディスプレイの高解像度化に対応した製品の開発と安定供給の体制を整備して、市場シェアを維持・拡大していきます。また、位相差フィルムなど、有機ELディスプレイ用の各種光学フィルムの開発にも努めていきます。2019年10月には、世界的な大型テレビの需要拡大に対応するため、広島県・三原工場に増設した、大型テレビ向けの光学フィルムの製造装置が量産を開始する予定で、世界トップの市場シェアを有するディスプレイ用光学フィルムのさらなる拡大に注力していきます。半導体製品用フォトマスクについては、製造時の描画時間を大幅に短縮するマルチ電子ビームマスク描画装置やナノインプリントなどの次世代微細加工技術の活用により、次世代製品の生産体制を強化して、微細化や低コスト化という半導体メーカーのニーズに応えていきます。 〔清涼飲料事業〕(清涼飲料部門)清涼飲料業界でのシェア争いが激化すると予想されるなかで、「グローバルレベルでのブランド力を持つコカ・コーラビジネスを通して、道産子企業としての地域密着力で競合を圧倒し、常に新しい価値やサービスを提供することで地元北海道に貢献し、持続的成長可能な経営基盤を実現する」というビジョンに基づき、「北海道で唯一の総合飲料会社としてさわやかさと潤いを提供し、道民から愛され続ける企業を目指す」を基本方針とした中期経営計画の達成を目指していきます。 <事業体制の強化>DNPグループは、「対話と協働」という行動指針を掲げ、部門間の連携を一層強化してグループとしての総合力を高めるとともに、企業や生活者との対話を深めて新しい価値の提供に努めていきます。事業拡大に向けては、今後も国内外を問わずさまざまな強みを持ったパートナーとの連携を強化していきます。また、事業ビジョンを推進する拠点の整備を国内外で進めるなかで、東京・市谷地区の拠点の再開発に取り組んでいます。東京近郊に分散している各事業部門の企画や営業及び本社の機能をこの地区に集約し、有効に活用することで、新規事業開発を強力に推進していきます。 <事業継続のための体制構築>DNPグループは、東日本大震災の経験から事業継続計画(BCP)の重要性を再認識し、「災害発生時の人的安全対策を最優先すること」「会社の災害に対する対応力と復旧力を高めること」を基本に、日ごろから災害リスクを正しく認識して適切な予防対策を進めています。災害等、不測の事態に対しては、「DNPグループ災害対策基本規程」に基本方針や推進体制を定め、社員及び関係者の安全を確保し、さまざまなステークホルダーに安心していただけるよう防災対策を進めています。 <持続可能な社会の実現への貢献>気候変動や格差拡大などの社会課題の解決を目指し、2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けた、企業の取り組みの強化が期待されています。DNPグループは、中長期での安定的な成長のために、SDGsが達成された持続可能な社会の実現を目指しています。そのために、製品・サービスを通じた「価値創造」と、バリューチェーンにおける「価値創造を支える基盤」の構築を進めています。特に、気候変動については喫緊の環境課題と認識しており、事業活動及び製品・サービスを通じた環境負荷の低減を進めています。
MD&A(経営者による分析)
3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】 「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 2018年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態の状況については、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。 (1)経営成績等の状況の概要当連結会計年度におけるDNPグループの状況の概要は次のとおりであります。① 経営成績の状況当連結会計年度の国内経済は、雇用や所得環境に改善が見られたものの、個人消費は力強さに欠け、天候不順や地震等の自然災害、世界的な通商問題や中国経済の減速の影響もあり、景気の先行きに不透明感が強まりました。印刷業界においては、電子書籍やインターネット広告の市場拡大による紙媒体の需要減少や、それにともなう競争の激化などもあり、厳しい経営環境が続きました。そうした状況のなかで、DNPグループは、新しい価値を生み出し続ける「強い事業ポートフォリオの構築」に向けて、トップシェアを獲得している「ICカード」「写真プリント用の熱転写記録材」「リチウムイオン電池用バッテリーパウチ」「ディスプレイ用光学フィルム」「有機ELディスプレイ製造用のメタルマスク」などを中心とした重点事業に対する積極的な投資と、事業部門やグループ会社の再編など競争力強化のための構造改革に取り組みました。また、今後の事業の成長領域として「知とコミュニケーション」「食とヘルスケア」「住まいとモビリティ」「環境とエネルギー」を掲げ、「P&I(印刷と情報)」の強みを掛け合わせて、「新しい価値」の創出に努めました。具体的には、マーケティングにおける集客から販売までの一連のプロセスにおいて、生活者一人ひとりに最適化した販売促進施策を行うデジタルマーケティングプラットフォームや、安心・安全で便利なキャッシュレス社会を実現する決済プラットフォームの提供を推進しました。また、環境負荷の低減やエネルギー効率の向上、より高いセキュリティや安全性・快適性が求められる「次世代のクルマ社会」に対しては、電気自動車等に使うリチウムイオン電池用バッテリーパウチや、フロントガラスへのカーナビ画面の光の映り込みを防ぐフィルム、暗号化技術等を活かした各種セキュリティソリューションや個人を認証するサービスの提供を推進しました。さらに、第28回地球環境大賞の「大賞」を受賞した「DNP多機能断熱ボックス」を、ICタグやセンサーと組み合わせ、環境負荷が少なく適切に温度管理したコールドチェーンの構築にも取り組みました。また、壁紙製品の一部に生じた不具合への補修対策については、これまでに得られた補修現場での現物サンプルや使用状況に関するデータ等を基に新たに実施した科学的検証・分析の結果を踏まえ、改めて今後の影響範囲を合理的に最大限の規模で見積り、追加的補修対策費用750億円を計上して補修対策計画の見直しを行いました。その結果、当連結会計年度のDNPグループの売上高は1兆4,015億円(前期比0.8%減)、営業利益は498億円(前期比7.6%増)、経常利益は582億円(前期比14.3%増)、親会社株主に帰属する当期純損失は356億円(前期は275億円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。 セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。 〔印刷事業〕(情報コミュニケーション部門)出版関連事業は、販売データをAI(人工知能)で分析して書店の需要予測を進めるなど、出版業界の課題解決に取り組みましたが、出版メディア関連の売上高は書籍、雑誌とも減少しました。一方、教育・出版流通関連では、書店とネット通販、電子書籍販売を連動させた「honto」事業において電子書籍が順調に推移し、また、図書館運営業務で大型図書館の新規受託もあり、増収となりました。しかしながら、2017年12月に、子会社の株式会社主婦の友社の全保有株式を譲渡した影響があり、当事業全体では減収となりました。 情報イノベーション事業は、チラシやカタログ、ビジネスフォームなどの紙媒体が減少し、当事業全体では減収となりました。一方、キャッシュレス化を背景に需要が拡大しているICカードや決済サービス関連事業、人手不足や働き方改革への対応として企業等の業務を代行するBPO(Business Process Outsourcing)事業など、重点事業は順調に拡大しました。イメージングコミュニケーション事業は、スポーツやイベント会場、観光地などで写真撮影からプリント出力までを行う「DNPマーケティングフォトブース sharingbox PRIME(シェアリングボックス プライム)」のサービスを開始するなど、写真を通じて人々の体験価値を高める「コトづくり」事業を推進しました。しかし、写真プリント用の熱転写記録材の販売が、北米や東南アジアでは増加したものの、国内や欧州で減少し、当事業全体では減収となりました。営業利益については、「honto」事業の黒字化をはじめ、重点事業の拡大と、生産体制の見直しなどのコスト構造改革により、大幅な増益となりました。その結果、部門全体の売上高は7,623億円(前期比2.1%減)、営業利益は248億円(前期比14.2%増)となりました。 (生活・産業部門)包装関連事業は、よりリサイクルしやすい単一素材(モノマテリアル)のパッケージや、分別廃棄の容易な液体用紙容器など、環境配慮製品の開発・販売に取り組みました。その結果、フィルムパッケージが堅調に推移したほか、プラスチック成形品は増加しましたが、紙パッケージやペットボトル用無菌充填システムの販売が減少し、当事業全体では減収となりました。生活空間関連事業は、独自のEB(Electron Beam)コーティング技術を活かした環境配慮製品や、木や石などの質感を演出する内外装用アルミパネル「アートテック」の販売に注力しました。しかし、国内の新設住宅着工戸数が伸び悩んだ影響を受け、当事業全体で減収となりました。産業資材関連事業は、太陽電池用部材は減少しましたが、自動車の電動化の本格的な進展により、車載用途のリチウムイオン電池用バッテリーパウチが大幅に増加したため、当事業全体では増収となりました。営業利益については、原材料価格高騰による影響が大きく、減益となりました。その結果、部門全体の売上高は3,971億円(前期比0.7%増)、営業利益は83億円(前期比30.9%減)となりました。 (エレクトロニクス部門)ディスプレイ関連製品事業は、スマートフォンにおける液晶ディスプレイからの切り替えが年々進み、大幅な伸長が期待される有機ELディスプレイ製造用のメタルマスクが順調に増加しました。また、光学フィルムは液晶テレビ向けが画面サイズの大型化により順調に推移したほか、車載ディスプレイ用視野角制御フィルムも大幅に増加しました。その結果、当事業全体で増収となりました。電子デバイス事業は、IoT機器の普及などを背景に、半導体製品用フォトマスクが増加しました。営業利益については、重点事業の拡大により、増益となりました。その結果、部門全体の売上高は1,924億円(前期比2.0%増)、営業利益は369億円(前期比8.2%増)となりました。 〔清涼飲料事業〕(清涼飲料部門)主力ブランドの新商品を発売したほか、自動販売機事業の展開、量販店向けの販促強化などを行い、シェア拡大と顧客獲得に努めました。しかしながら、夏季の天候不順や北海道胆振東部地震の影響による販売の減少と、競争の激化等により、部門全体の売上高は559億円(前期比0.1%減)、営業利益は21億円(前期比5.5%減)となりました。 ② 財政状態の状況当連結会計年度末の資産、負債、純資産については、総資産は、建物及び構築物の減少などにより、前連結会計年度末に比べ197億円減少し、1兆7,750億円となりました。負債は、補修対策引当金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ361億円増加し、7,284億円となりました。純資産は、利益剰余金の減少などにより、前連結会計年度末に比べ559億円減少し、1兆466億円となりました。 ③ キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ1,111億円減少し、1,337億円となりました。営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失186億円、減価償却費590億円などにより689億円の収入(前連結会計年度は484億円の収入)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の純増加額1,369億円などにより1,469億円の支出(前連結会計年度は230億円の収入)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額197億円、借入金の純減少額39億円などにより321億円の支出(前連結会計年度は427億円の支出)となりました。 ④ 生産、受注及び販売の実績a.生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)情報コミュニケーション部門511,232△2.7生活・産業部門313,426+1.7エレクトロニクス部門184,478+2.3清涼飲料部門40,707+1.2合 計1,049,844△0.4 (注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。 b.受注実績当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。なお、清涼飲料部門においては、受注を主体とした生産を行っていないため、受注状況の記載を省略しております。 セグメントの名称受注高(百万円)前期比(%)受注残高(百万円)前期比(%)情報コミュニケーション部門642,060△0.7107,379+2.5生活・産業部門403,758+3.882,872+13.1エレクトロニクス部門189,459△0.321,873△10.8合 計1,235,278+0.8212,125+4.7 (注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。 c.販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)情報コミュニケーション部門757,902△2.2生活・産業部門395,182+0.7エレクトロニクス部門192,436+2.0清涼飲料部門55,984△0.1合 計1,401,505△0.8 (注)1.セグメント間取引については相殺消去しております。2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点によるDNPグループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。 ① 重要な会計方針及び見積りDNPグループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたっては、決算日における資産・負債の貸借対照表計上金額並びに当連結会計年度における収益・費用の損益計算書計上金額に影響する判断、見積りを実施する必要があります。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。DNPグループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。 ②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容DNPグループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高は、前連結会計年度(以下「前期」)に比べて107億円減少し、1兆4,015億円(前期比0.8%減)となりました。売上原価は、前期に比べて122億円減少して1兆1,193億円(前期比1.1%減)となり、売上高に対する比率は前期の80.1%から79.9%となりました。販売費及び一般管理費は、前期に比べて20億円減少して2,322億円(前期比0.9%減)となり、この結果、営業利益は前期に比べて35億円増加して498億円(前期比7.6%増)となりました。営業外収益は、持分法による投資利益の増加等により前期に比べて13億円増加して151億円(前期比9.9%増)となり、営業外費用は、為替差損の減少等により前期に比べて23億円減少して68億円(前期比25.9%減)となりました。この結果、経常利益は前期に比べて72億円増加して582億円(前期比14.3%増)となりました。特別利益は、投資有価証券売却益の減少等により、前期に比べて362億円減少して230億円(前期比61.1%減)となり、特別損失は、補修対策引当金繰入額の増加等により前期に比べて351億円増加して1,000億円(前期比54.2%増)となりました。この結果、親会社株主に帰属する当期純損失は356億円(前期は275億円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。 DNPグループの資本の財源及び資金の流動性については、主に営業活動により確保されるキャッシュ・フローにより、成長を維持・発展させていくために必要な資金を確保しており、設備投資資金などの資金需要については自己資金で賄うことを基本としております。重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源泉等については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1)新設等」に記載のとおりであります。また、キャッシュ・フローの概要について、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前期末に比べ1,111億円減少し、1,337億円となりました。営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失186億円、減価償却費590億円などにより689億円の収入(前期は484億円の収入)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の純増加額1,369億円などにより1,469億円の支出(前期は230億円の収入)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額197億円、借入金の純減少額39億円などにより321億円の支出(前期は427億円の支出)となりました。 DNPグループの経営成績に重要な影響を与えた要因は以下のとおりです。国内経済は、雇用や所得環境に改善が見られたものの、個人消費は力強さに欠け、天候不順や地震等の自然災害、世界的な通商問題や中国経済の減速の影響もあり、景気の先行きに不透明感が強まりました。印刷業界においては、電子書籍やインターネット広告の市場拡大による紙媒体の需要減少や、それにともなう競争の激化などもあり、厳しい経営環境が続きました。 セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。情報コミュニケーション部門は、出版印刷物や商業印刷物、ビジネスフォームなどの紙媒体が減少したほか、2017年12月に、子会社の株式会社主婦の友社の全保有株式を譲渡した影響があり、売上高は前期比2.1%減の7,623億円となりました。営業利益は、「honto」事業の黒字化をはじめ、重点事業の拡大と、生産体制の見直しなどのコスト構造改革により、前期比14.2%増の248億円となりました。営業利益率は、前期の2.8%から0.5ポイント上昇し、3.3%となりました。生活・産業部門は、包装関連事業と生活空間関連事業が減収となったものの、産業資材関連事業は増収となり、売上高は前期比0.7%増の3,971億円となりました。営業利益については、原材料価格高騰による影響が大きく、前期比30.9%減の83億円となりました。営業利益率は、前期の3.1%から1.0ポイント低下し、2.1%となりました。エレクトロニクス部門については、有機ELディスプレイの製造に使用するメタルマスクや薄型ディスプレイ用の光学フィルム関連、半導体製品用フォトマスクの販売が順調に推移し、売上高は前期比2.0%増の1,924億円となりました。営業利益は、メタルマスクや光学フィルムなどの重点事業の拡大により、前期比8.2%増の369億円となりました。営業利益率は、前期の18.1%から1.1ポイント上昇し、19.2%となりました。清涼飲料部門については、夏季の天候不順や北海道胆振東部地震の影響による販売の減少等により、売上高は0.1%減の559億円となりました。営業利益は、徹底したコスト削減を実施したものの、原材料価格高騰の影響が大きく、前期比5.5%減の21億円となりました。営業利益率は、前期の4.0%から0.2ポイント低下し、3.8%となりました。 セグメント資産の状況については、情報コミュニケーション部門は前連結会計年度に比べて、88億円減少して8,938億円(前期末比1.0%減)となりました。生活・産業部門は前連結会計年度に比べて、87億円減少して4,453億円(前期末比1.9%減)となりました。エレクトロニクス部門は前連結会計年度に比べて、90億円減少して2,250億円(前期末比3.9%減)となりました。清涼飲料部門は前連結会計年度に比べて、2億円増加して484億円(前期末比0.5%増)となりました。報告セグメント合計では前連結会計年度に比べて、264億円減少して1兆6,126億円(前期末比1.6%減)となりました。
経営方針・経営戦略
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、DNPグループが判断したものです。 DNPグループは、経営の基本方針である「DNPグループビジョン2015」において、「DNPグループは、人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する。」という企業理念を掲げ、積極的な事業活動を展開し、中長期にわたり事業を安定的に拡大していくよう努めていきます。DNPグループの成長を持続的なものにしていくためには、コーポレート・ガバナンスの充実が重要であると考えています。的確で統合的な経営の意思決定と、それに基づく適正かつ迅速な業務執行、そしてそれらを監督・監査する体制を構築・運用するとともに、社員一人ひとりのコンプライアンス意識を高めるための研修や教育の徹底に努めていきます。また、企業としての社会的責任を常に認識し、あらゆるステークホルダーに新しい価値を提供していきます。その実現のために、「価値の創造」「誠実な行動」「高い透明性(説明責任)」の3つを企業が果たすべき責任と捉え、その実践に努めています。これらの責任を果たすため、「DNPグループ行動規範」に基づいた活動を徹底するとともに、内部統制システムを整備して業務の適正性を確保し、株主の皆様や顧客企業、生活者、社員など、さまざまなステークホルダーから高い信頼を得られるよう、誠実な企業活動に努めていきます。今後の見通しについては、国内経済は、雇用・所得環境の改善傾向も見られ、緩やかな景気回復が続くものと期待されています。しかし、海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響、為替や原油価格の動向など、先行きには不透明感があります。印刷業界では、紙媒体の需要減少や競争激化による受注単価の下落などが見込まれ、引き続き厳しい状況が予想されます。このような状況のなかで、DNPグループは、「知とコミュニケーション」「食とヘルスケア」「住まいとモビリティ」「環境とエネルギー」という4つの成長領域を軸として、印刷(Printing)と情報(Information)の技術やノウハウ、営業や企画、製造や生産管理、知的財産やブランディングなど、さまざまな強みを柔軟に組み合わせた「P&Iイノベーション」により、社会課題を解決する新しい価値の創造に注力しています。「知とコミュニケーション」では、活発なコミュニケーションによって暮らしを支え、豊かな文化を育んでいきます。高度な情報セキュリティ技術を強みとし、安全・安心なコミュニケーションの仕組みづくりなども推進します。「食とヘルスケア」では、質の高い生活を支え、生涯にわたる健康維持をサポートする事業の開発を推進します。人の健康と食を支える安全で衛生的な食品・飲料・医薬品向けのパッケージに加え、再生医療などのライフサイエンスや農業などの分野にも高機能な製品・サービスを提供していきます。「住まいとモビリティ」では、住宅や商業施設、オフィスや医療施設、自動車や鉄道車両など、住宅/非住宅のさまざまな空間で、高い快適性と、安全・安心な暮らしを実現する製品・サービスを提供していきます。「環境とエネルギー」では、経済的発展と環境保全を両立させる持続可能な社会の実現に取り組みます。省資源、省エネルギー、生物多様性の保全などにつがなる環境配慮製品やサービスの開発に努めていきます。これらの成長領域を中心に、社会課題を解決する新しい価値を創出し、生活者の暮らしや企業の業務プロセスに欠かせない「未来のあたりまえ」となる製品・サービスをつくり出していきます。 <各事業部門における取り組み>〔印刷事業〕(情報コミュニケーション部門)当部門では、高度な画像処理技術や情報セキュリティ技術などにより、情報の最適な表現と多様なメディアへの展開に取り組み、安全で安心な生活者と企業のさまざまなコミュニケーションを実現していきます。例えば、出版社との連携をさらに深め、各種出版物の企画・制作、流通・販売、コンテンツの著作権処理や海外展開などを推進し、出版市場の活性化に貢献していきます。またDNPグループは、IoTの有効活用には情報の安全性が欠かせないという認識に立ち、IoTにセキュアを加えた「IoST(Internet of Secure Things®)」というコンセプトを掲げ、ICカードの開発などで培ってきた強みを活かしたプラットフォーム開発などを進めています。DNP柏データセンターや国内13箇所のBPOセンターなど、高度な情報セキュリティ環境を備えたインフラを活用し、ブランドプリペイド・デビットの決済サービスや、企業の業務プロセスを総合的に受託するBPOサービスなど、付加価値の高い多様なサービスを提供していきます。 (生活・産業部門)当部門では、地球環境への配慮やユニバーサルデザインへの対応などを進め、企業や生活者の多様なニーズに的確に応える製品・サービスを国内外に提供していきます。例えば、水蒸気や酸素などの透過を防ぐ「DNP透明蒸着フィルム IB-Film」シリーズや、植物由来の原料を使用した「DNP植物由来包材 バイオマテック」シリーズなどの高機能製品の販売を強化していきます。海外では、東南アジア市場におけるシェア拡大を目指し、インドネシアやベトナムの生産体制の整備を進めており、これを基盤として周辺国への販売強化に注力していきます。また、住宅や商業施設に加えて、自動車や鉄道車両等も含めた生活空間に向けて、EBコーティング技術等を活かした高付加価値製品のほか、感性工学等を活用した心地よい空間の設計や評価測定、より施工しやすい工法の開発などを行っていきます。欧米や新興国に対しても、意匠性に優れた金属パネルなどで、グローバルな販売網を活かしてシェア拡大を図っていきます。なお、DNPグループでは生活空間関連事業の製品である壁紙の一部に生じた不具合の補修対策を実施しています。平成28年7月には、補修対象範囲の把握と補修対策を早期に実施するための体制をより強化しており、引き続きこの件に対応していきます。 (エレクトロニクス部門)当部門では、保有技術の高度化と融合、新たなコア技術の開発などを進め、変化する企業や生活者のニーズを先取りする製品やサービス、システムを提供していきます。また、国内外の市場の変化を見極めて、製造設備の最適化や生産・開発体制の見直しなど、構造改革を引き続き推進していきます。例えば、需要の急速な拡大が進む有機ELディスプレイ市場に対して、その製造に使用するメタルマスクの生産能力を増強し、ディスプレイの高解像度化に対応した製品の開発と安定供給の体制を整備して、市場シェアを維持・拡大していきます。また、位相差フィルムなど、有機ELディスプレイ用の各種光学フィルムの開発にも努めていきます。半導体製品用フォトマスクについては、製造時の描画時間を大幅に短縮するマルチ電子ビームマスク描画装置やナノインプリントなどの次世代微細加工技術の活用により、次世代製品の生産体制を強化して、微細化や低コスト化という半導体メーカーのニーズに応えていきます。また、中国での需要拡大に対応するため、平成30年に、米国のフォトマスクメーカーのフォトロニクス社と共同でフォトマスクの製造・販売を行う合弁会社を現地に設立するなど、グローバルな事業展開にも努めていきます。 〔清涼飲料事業〕(清涼飲料部門)清涼飲料業界でのシェア争いが激化すると予想されるなかで、「グローバルレベルでのブランド力を持つコカ・コーラビジネスを通して、道産子企業としての地域密着力で競合を圧倒し、常に新しい価値やサービスを提供することで地元北海道に貢献し、持続的成長可能な経営基盤を実現する」というビジョンに基づき、「シェアアップ」「競合を圧倒する」「グループ総コスト削減」の3つの戦略を遂行していきます。 <事業体制の強化>DNPグループは、「対話と協働」という行動指針を掲げ、部門間の連携を一層強化してグループとしての総合力を高めるとともに、企業や生活者との対話を深めて新しい価値の提供に努めていきます。事業拡大に向けては、今後も国内外を問わずさまざまな強みを持ったパートナーとの連携を強化していきます。また、事業ビジョンを推進する拠点の整備を国内外で進めるなかで、東京・市谷地区の拠点の再開発に取り組んでいます。東京近郊に分散している各事業部門の企画や営業及び本社の機能をこの地区に集約し、有効に活用することで、新規事業開発を強力に推進していきます。 <事業継続のための体制構築>DNPグループは、東日本大震災の経験から事業継続計画(BCP)の重要性を再認識し、「災害発生時の人的安全対策を最優先すること」「会社の災害に対する対応力と復旧力を高めること」を基本に、日ごろから災害リスクを正しく認識して適切な予防対策を進めています。災害等、不測の事態に対しては、「DNPグループ災害対策基本規程」に基本方針や推進体制を定め、社員及び関係者の安全を確保し、さまざまなステークホルダーに安心していただけるよう防災対策を進めています。 <持続可能な社会の実現への貢献>気候変動や格差拡大などの社会課題の解決を目指し、平成27年に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けた、企業の取り組みの強化が期待されています。DNPグループは、中長期での安定的な成長のために、SDGsが達成された持続可能な社会の実現を目指しています。そのために、社会課題の解決に資する製品・サービスの提供と、社会に対する負の影響を低減して正のインパクトを増加させるバリューチェーンの構築に注力していきます。特に、喫緊の課題である気候変動への対応については、事業活動を通じた環境負荷の低減や、気候変動への対応に資する製品・サービスの提供を進めています。 株式会社の支配に関する基本方針 (1) 当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針当社は、株式を上場して市場での自由な取引に委ねているため、会社を支配する者のあり方は、最終的には株主全体の意思に基づいて決定されるべきであり、会社の支配権の移転をともなう買収提案に応じるか否かの判断についても、最終的には、株主全体の意思に基づいて行われるべきものと考えます。しかし、当社株式の大量買付行為の中には、大量買付者のみが他の株主の犠牲の上に利益を得るような大量買付行為、株主が買付けに応じるか否かの判断をするために合理的に必要な期間・情報を与えない大量買付行為、大量買付け後の経営の提案が不適切である大量買付行為、大量買付者の買付価格が不当に低い大量買付行為等、株主共同の利益を毀損するものもあり得ます。当社は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者のあり方として、当社の企業理念を理解し、当社の様々なステークホルダーとの信頼関係を築きながら、企業価値ひいては株主共同の利益を中長期的に確保・向上させることができる者でなければならないと考えています。したがいまして、企業価値ひいては株主共同の利益を毀損するおそれのある不適切な大量買付行為を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として不適切であると考えます。 (2) 会社の支配に関する基本方針の実現のための取り組みこの基本方針に基づき、当社株式の大量買付けが行われる場合の手続を定め、株主が適切な判断をするために必要かつ十分な情報と時間を確保するとともに、大量買付者との交渉の機会を確保することで、当社の企業価値・株主共同の利益の確保・向上に資するために、当社は、買収防衛策を導入しており、平成28年6月29日開催の当社第122期定時株主総会において継続の承認を得ました(以下、継続後のプランを「本プラン」)。本プランの概要は次のとおりです。① 買付説明書及び必要情報の提出株券等保有割合が20%以上となる当社株式の買付け等をする者(以下「買付者」)は、買付行為を開始する前に、本プランに従う旨の買付説明書、及び買付内容の検討に必要な、買付者の詳細、買付目的、買付方法その他の情報を、当社に提出するものとします。② 独立委員会による情報提供の要請下記(3)に記載された独立委員会(以下「独立委員会」)は、買付者より提出された情報が不十分であると判断した場合は、買付者に対して、回答期限(最長60日)を定めて、追加的に情報を提供するよう求めることがあります。また、当社取締役会に対して、回答期限(最長30日)を定めて、買付けに対する意見、代替案等の提示を求めることがあります。③ 独立委員会の検討期間独立委員会は、買付者及び当社取締役会から情報を受領した後60日間の評価期間をとり、受領した情報の検討を行います。なお、独立委員会は、買付者の買付け等の内容の検討、買付者との協議・交渉、代替案の作成等に必要とされる合理的な範囲内(最長30日)で期間延長の決議を行うことがあります。④ 情報の開示当社は、買付説明書が提出された事実及び買付者より提供された情報のうち独立委員会が適切と判断する事項等を、独立委員会が適切と判断する時点で株主に開示します。⑤ 独立委員会による勧告独立委員会は、買付者が本プランに従うことなく買付け等を開始したと認められる場合、又は独立委員会における検討の結果、買付者の買付け等が当社の企業価値ひいては株主共同の利益を害するおそれがあると判断した場合は、当社取締役会に対して、本プランの発動(新株予約権の無償割当て)を勧告します。なお、独立委員会は当該勧告にあたり、本プランの発動に関して事前に株主総会の承認を得るべき旨の留保を付すことがあります。⑥ 当社取締役会による決議当社取締役会は、独立委員会からの勧告を最大限尊重して、新株予約権の無償割当ての実施又は不実施に関して決議します。なお、当該決議を行った場合は、速やかに、当該決議の概要の情報開示を行います。 ⑦ 大量買付行為の開始買付者は、当社取締役会が新株予約権の無償割当ての不実施を決議した後に、買付け等を開始するものとします。 (3) 独立委員会の設置本プランを適正に運用し、取締役の恣意性を排するためのチェック機関として、独立委員会を設置します。独立委員会の委員は3名以上とし、公正で客観的な判断を可能とするため、当社の業務執行を行う経営陣から独立している当社社外取締役、当社社外監査役、又は社外の有識者の中から選任するものとし、当社社外取締役の塚田忠夫氏及び宮島司氏並びに当社社外監査役の松浦恂氏が就任しています。 (4) 本プランの合理性本プランは、買収防衛策に関する指針等の要件を完全に充足していること、株主意思を重視するものとなっていること、経営陣から独立した独立委員会の判断が最大限尊重されること等の点で、合理性のあるプランとなっています。そのため、本プランは、当社の上記基本方針に沿い、当社株主の共同の利益を損なうものではなく、かつ、当社役員の地位の維持を目的とするものではないと判断しています。 なお、本プランの詳細については、インターネット上の当社ウェブサイトをご参照ください。(http://www.dnp.co.jp/topic/__icsFiles/afieldfile/2016/06/29/info_1600629_1.pdf)
対処すべき課題
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、DNPグループが判断したものです。 DNPグループは、経営の基本方針である「DNPグループビジョン2015」において、「DNPグループは、人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する。」という企業理念を掲げ、積極的な事業活動を展開し、中長期にわたり事業を安定的に拡大していくよう努めていきます。DNPグループの成長を持続的なものにしていくためには、コーポレート・ガバナンスの充実が重要であると考えています。的確で統合的な経営の意思決定と、それに基づく適正かつ迅速な業務執行、そしてそれらを監督・監査する体制を構築・運用するとともに、社員一人ひとりのコンプライアンス意識を高めるための研修や教育の徹底に努めていきます。また、企業としての社会的責任を常に認識し、あらゆるステークホルダーに新しい価値を提供していきます。その実現のために、「価値の創造」「誠実な行動」「高い透明性(説明責任)」の3つを企業が果たすべき責任と捉え、その実践に努めています。これらの責任を果たすため、「DNPグループ行動規範」に基づいた活動を徹底するとともに、内部統制システムを整備して業務の適正性を確保し、株主の皆様や顧客企業、生活者、社員など、さまざまなステークホルダーから高い信頼を得られるよう、誠実な企業活動に努めていきます。今後の見通しについては、国内経済は、雇用・所得環境の改善傾向も見られ、緩やかな景気回復が続くものと期待されています。しかし、海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響、為替や原油価格の動向など、先行きには不透明感があります。印刷業界では、紙媒体の需要減少や競争激化による受注単価の下落などが見込まれ、引き続き厳しい状況が予想されます。このような状況のなかで、DNPグループは、「知とコミュニケーション」「食とヘルスケア」「住まいとモビリティ」「環境とエネルギー」という4つの成長領域を軸として、印刷(Printing)と情報(Information)の技術やノウハウ、営業や企画、製造や生産管理、知的財産やブランディングなど、さまざまな強みを柔軟に組み合わせた「P&Iイノベーション」により、社会課題を解決する新しい価値の創造に注力しています。「知とコミュニケーション」では、活発なコミュニケーションによって暮らしを支え、豊かな文化を育んでいきます。高度な情報セキュリティ技術を強みとし、安全・安心なコミュニケーションの仕組みづくりなども推進します。「食とヘルスケア」では、質の高い生活を支え、生涯にわたる健康維持をサポートする事業の開発を推進します。人の健康と食を支える安全で衛生的な食品・飲料・医薬品向けのパッケージに加え、再生医療などのライフサイエンスや農業などの分野にも高機能な製品・サービスを提供していきます。「住まいとモビリティ」では、住宅や商業施設、オフィスや医療施設、自動車や鉄道車両など、住宅/非住宅のさまざまな空間で、高い快適性と、安全・安心な暮らしを実現する製品・サービスを提供していきます。「環境とエネルギー」では、経済的発展と環境保全を両立させる持続可能な社会の実現に取り組みます。省資源、省エネルギー、生物多様性の保全などにつがなる環境配慮製品やサービスの開発に努めていきます。これらの成長領域を中心に、社会課題を解決する新しい価値を創出し、生活者の暮らしや企業の業務プロセスに欠かせない「未来のあたりまえ」となる製品・サービスをつくり出していきます。 <各事業部門における取り組み>〔印刷事業〕(情報コミュニケーション部門)当部門では、高度な画像処理技術や情報セキュリティ技術などにより、情報の最適な表現と多様なメディアへの展開に取り組み、安全で安心な生活者と企業のさまざまなコミュニケーションを実現していきます。例えば、出版社との連携をさらに深め、各種出版物の企画・制作、流通・販売、コンテンツの著作権処理や海外展開などを推進し、出版市場の活性化に貢献していきます。またDNPグループは、IoTの有効活用には情報の安全性が欠かせないという認識に立ち、IoTにセキュアを加えた「IoST(Internet of Secure Things®)」というコンセプトを掲げ、ICカードの開発などで培ってきた強みを活かしたプラットフォーム開発などを進めています。DNP柏データセンターや国内13箇所のBPOセンターなど、高度な情報セキュリティ環境を備えたインフラを活用し、ブランドプリペイド・デビットの決済サービスや、企業の業務プロセスを総合的に受託するBPOサービスなど、付加価値の高い多様なサービスを提供していきます。 (生活・産業部門)当部門では、地球環境への配慮やユニバーサルデザインへの対応などを進め、企業や生活者の多様なニーズに的確に応える製品・サービスを国内外に提供していきます。例えば、水蒸気や酸素などの透過を防ぐ「DNP透明蒸着フィルム IB-Film」シリーズや、植物由来の原料を使用した「DNP植物由来包材 バイオマテック」シリーズなどの高機能製品の販売を強化していきます。海外では、東南アジア市場におけるシェア拡大を目指し、インドネシアやベトナムの生産体制の整備を進めており、これを基盤として周辺国への販売強化に注力していきます。また、住宅や商業施設に加えて、自動車や鉄道車両等も含めた生活空間に向けて、EBコーティング技術等を活かした高付加価値製品のほか、感性工学等を活用した心地よい空間の設計や評価測定、より施工しやすい工法の開発などを行っていきます。欧米や新興国に対しても、意匠性に優れた金属パネルなどで、グローバルな販売網を活かしてシェア拡大を図っていきます。なお、DNPグループでは生活空間関連事業の製品である壁紙の一部に生じた不具合の補修対策を実施しています。平成28年7月には、補修対象範囲の把握と補修対策を早期に実施するための体制をより強化しており、引き続きこの件に対応していきます。 (エレクトロニクス部門)当部門では、保有技術の高度化と融合、新たなコア技術の開発などを進め、変化する企業や生活者のニーズを先取りする製品やサービス、システムを提供していきます。また、国内外の市場の変化を見極めて、製造設備の最適化や生産・開発体制の見直しなど、構造改革を引き続き推進していきます。例えば、需要の急速な拡大が進む有機ELディスプレイ市場に対して、その製造に使用するメタルマスクの生産能力を増強し、ディスプレイの高解像度化に対応した製品の開発と安定供給の体制を整備して、市場シェアを維持・拡大していきます。また、位相差フィルムなど、有機ELディスプレイ用の各種光学フィルムの開発にも努めていきます。半導体製品用フォトマスクについては、製造時の描画時間を大幅に短縮するマルチ電子ビームマスク描画装置やナノインプリントなどの次世代微細加工技術の活用により、次世代製品の生産体制を強化して、微細化や低コスト化という半導体メーカーのニーズに応えていきます。また、中国での需要拡大に対応するため、平成30年に、米国のフォトマスクメーカーのフォトロニクス社と共同でフォトマスクの製造・販売を行う合弁会社を現地に設立するなど、グローバルな事業展開にも努めていきます。 〔清涼飲料事業〕(清涼飲料部門)清涼飲料業界でのシェア争いが激化すると予想されるなかで、「グローバルレベルでのブランド力を持つコカ・コーラビジネスを通して、道産子企業としての地域密着力で競合を圧倒し、常に新しい価値やサービスを提供することで地元北海道に貢献し、持続的成長可能な経営基盤を実現する」というビジョンに基づき、「シェアアップ」「競合を圧倒する」「グループ総コスト削減」の3つの戦略を遂行していきます。 <事業体制の強化>DNPグループは、「対話と協働」という行動指針を掲げ、部門間の連携を一層強化してグループとしての総合力を高めるとともに、企業や生活者との対話を深めて新しい価値の提供に努めていきます。事業拡大に向けては、今後も国内外を問わずさまざまな強みを持ったパートナーとの連携を強化していきます。また、事業ビジョンを推進する拠点の整備を国内外で進めるなかで、東京・市谷地区の拠点の再開発に取り組んでいます。東京近郊に分散している各事業部門の企画や営業及び本社の機能をこの地区に集約し、有効に活用することで、新規事業開発を強力に推進していきます。 <事業継続のための体制構築>DNPグループは、東日本大震災の経験から事業継続計画(BCP)の重要性を再認識し、「災害発生時の人的安全対策を最優先すること」「会社の災害に対する対応力と復旧力を高めること」を基本に、日ごろから災害リスクを正しく認識して適切な予防対策を進めています。災害等、不測の事態に対しては、「DNPグループ災害対策基本規程」に基本方針や推進体制を定め、社員及び関係者の安全を確保し、さまざまなステークホルダーに安心していただけるよう防災対策を進めています。 <持続可能な社会の実現への貢献>気候変動や格差拡大などの社会課題の解決を目指し、平成27年に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けた、企業の取り組みの強化が期待されています。DNPグループは、中長期での安定的な成長のために、SDGsが達成された持続可能な社会の実現を目指しています。そのために、社会課題の解決に資する製品・サービスの提供と、社会に対する負の影響を低減して正のインパクトを増加させるバリューチェーンの構築に注力していきます。特に、喫緊の課題である気候変動への対応については、事業活動を通じた環境負荷の低減や、気候変動への対応に資する製品・サービスの提供を進めています。 株式会社の支配に関する基本方針 (1) 当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針当社は、株式を上場して市場での自由な取引に委ねているため、会社を支配する者のあり方は、最終的には株主全体の意思に基づいて決定されるべきであり、会社の支配権の移転をともなう買収提案に応じるか否かの判断についても、最終的には、株主全体の意思に基づいて行われるべきものと考えます。しかし、当社株式の大量買付行為の中には、大量買付者のみが他の株主の犠牲の上に利益を得るような大量買付行為、株主が買付けに応じるか否かの判断をするために合理的に必要な期間・情報を与えない大量買付行為、大量買付け後の経営の提案が不適切である大量買付行為、大量買付者の買付価格が不当に低い大量買付行為等、株主共同の利益を毀損するものもあり得ます。当社は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者のあり方として、当社の企業理念を理解し、当社の様々なステークホルダーとの信頼関係を築きながら、企業価値ひいては株主共同の利益を中長期的に確保・向上させることができる者でなければならないと考えています。したがいまして、企業価値ひいては株主共同の利益を毀損するおそれのある不適切な大量買付行為を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として不適切であると考えます。 (2) 会社の支配に関する基本方針の実現のための取り組みこの基本方針に基づき、当社株式の大量買付けが行われる場合の手続を定め、株主が適切な判断をするために必要かつ十分な情報と時間を確保するとともに、大量買付者との交渉の機会を確保することで、当社の企業価値・株主共同の利益の確保・向上に資するために、当社は、買収防衛策を導入しており、平成28年6月29日開催の当社第122期定時株主総会において継続の承認を得ました(以下、継続後のプランを「本プラン」)。本プランの概要は次のとおりです。① 買付説明書及び必要情報の提出株券等保有割合が20%以上となる当社株式の買付け等をする者(以下「買付者」)は、買付行為を開始する前に、本プランに従う旨の買付説明書、及び買付内容の検討に必要な、買付者の詳細、買付目的、買付方法その他の情報を、当社に提出するものとします。② 独立委員会による情報提供の要請下記(3)に記載された独立委員会(以下「独立委員会」)は、買付者より提出された情報が不十分であると判断した場合は、買付者に対して、回答期限(最長60日)を定めて、追加的に情報を提供するよう求めることがあります。また、当社取締役会に対して、回答期限(最長30日)を定めて、買付けに対する意見、代替案等の提示を求めることがあります。③ 独立委員会の検討期間独立委員会は、買付者及び当社取締役会から情報を受領した後60日間の評価期間をとり、受領した情報の検討を行います。なお、独立委員会は、買付者の買付け等の内容の検討、買付者との協議・交渉、代替案の作成等に必要とされる合理的な範囲内(最長30日)で期間延長の決議を行うことがあります。④ 情報の開示当社は、買付説明書が提出された事実及び買付者より提供された情報のうち独立委員会が適切と判断する事項等を、独立委員会が適切と判断する時点で株主に開示します。⑤ 独立委員会による勧告独立委員会は、買付者が本プランに従うことなく買付け等を開始したと認められる場合、又は独立委員会における検討の結果、買付者の買付け等が当社の企業価値ひいては株主共同の利益を害するおそれがあると判断した場合は、当社取締役会に対して、本プランの発動(新株予約権の無償割当て)を勧告します。なお、独立委員会は当該勧告にあたり、本プランの発動に関して事前に株主総会の承認を得るべき旨の留保を付すことがあります。⑥ 当社取締役会による決議当社取締役会は、独立委員会からの勧告を最大限尊重して、新株予約権の無償割当ての実施又は不実施に関して決議します。なお、当該決議を行った場合は、速やかに、当該決議の概要の情報開示を行います。 ⑦ 大量買付行為の開始買付者は、当社取締役会が新株予約権の無償割当ての不実施を決議した後に、買付け等を開始するものとします。 (3) 独立委員会の設置本プランを適正に運用し、取締役の恣意性を排するためのチェック機関として、独立委員会を設置します。独立委員会の委員は3名以上とし、公正で客観的な判断を可能とするため、当社の業務執行を行う経営陣から独立している当社社外取締役、当社社外監査役、又は社外の有識者の中から選任するものとし、当社社外取締役の塚田忠夫氏及び宮島司氏並びに当社社外監査役の松浦恂氏が就任しています。 (4) 本プランの合理性本プランは、買収防衛策に関する指針等の要件を完全に充足していること、株主意思を重視するものとなっていること、経営陣から独立した独立委員会の判断が最大限尊重されること等の点で、合理性のあるプランとなっています。そのため、本プランは、当社の上記基本方針に沿い、当社株主の共同の利益を損なうものではなく、かつ、当社役員の地位の維持を目的とするものではないと判断しています。 なお、本プランの詳細については、インターネット上の当社ウェブサイトをご参照ください。(http://www.dnp.co.jp/topic/__icsFiles/afieldfile/2016/06/29/info_1600629_1.pdf)
MD&A(経営者による分析)
3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】 (1)経営成績等の状況の概要当連結会計年度におけるDNPグループの状況の概要は次のとおりであります。① 経営成績の状況当連結会計年度におけるわが国経済は、政府の経済政策などにより雇用・所得情勢が改善したほか、各企業における成長分野への対応等を背景に設備投資にも持ち直しの動きが見られるなど、緩やかな回復基調が続きました。一方、個人消費は力強さに欠け、中国などの海外経済の減速や原材料価格の上昇の影響もあり、本格的な回復には至りませんでした。印刷業界においては、インターネット広告市場の拡大などによる紙媒体の需要減少や、それにともなう競争の激化などもあり、厳しい経営環境が続きました。このような状況のなか、DNPグループは、「知とコミュニケーション」「食とヘルスケア」「住まいとモビリティ」「環境とエネルギー」という4つの成長領域を軸として、印刷(Printing)と 情報(Information)の強みを掛け合わせて、国内外の社会課題を解決する新しい価値を生み出していく「P&Iイノベーション」を推進しました。具体的には、モビリティ関連事業では、一般のガラスよりも軽く、燃費向上を目的とした軽量化ニーズに対応した「曲面樹脂ガラス」を開発し、自動車のリアウィンドウなどへの展開を目指しました。また、ディスプレイ用光学フィルム等で培った技術を活かして「車載ディスプレイ用視野角制御フィルム」を開発しました。このフィルムは、ディスプレイの光がフロントガラスに映りこむことを防ぎ、運転席からの視認性を高めるとともに、車内のデザイン設計の自由度を広げる高い機能があります。また、ICカード事業などを通じて培ってきた情報セキュリティの強みを活かした製品・サービスの開発にも注力しました。例えば、自動車・家・宅配ロッカーなどの各種シェアリングサービスや、IoT(モノのインターネット)機器の利用者認証用デバイス向けに、スマートフォンで鍵の開閉を行うデジタルキーのサービスを開発しました。さらに、電子タグから取得した情報をサプライチェーンで共有するシステムの構築や、家計簿アプリ「レシーピ!」を利用した電子レシートデータの標準化とプラットフォームの構築などにも積極的に取り組み、事業化の促進を図りました。そのほか、平成30年4月には、飲料や食品向け紙容器メーカーの世界大手であるSIG(エスアイジー)コンビブロックグループと合弁会社を設立し、日本市場における新しい形状のパッケージと無菌充填機の提供を開始しました。また、事業競争力の強化については、事業部門やグループ会社の再編など構造改革に取り組み、 収益の改善に努めました。その結果、当連結会計年度のDNPグループの売上高は1兆4,122億円(前期比0.1%増)、営業利益は463億円(前期比47.6%増)、経常利益は509億円(前期比38.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は275億円(前期比9.0%増)となりました。 セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。 〔印刷事業〕(情報コミュニケーション部門)出版関連事業は、出版市場の低迷が続くなか、AI(人工知能)を活用した書店の販売情報等の分析による需要予測や、書籍の製造・物流・販売の連動性を高める体制の構築などに努めましたが、出版メディア関連は、書籍、雑誌とも減少し、前年を下回りました。教育・出版流通関連は、書店での販売とネット通販、電子書籍販売サービスを連携させたハイブリッド型総合書店「honto」の事業拡大に注力し、ネット通販と電子書籍が順調に推移したほか、図書館サポート事業における、大学や公共の図書館等の受託件数も増加しました。一方、株式の一部譲渡により、平成28年10月に株式会社文教堂グループホールディングスを持分法適用会社としたため、教育・出版流通関連全体の売上は減少し、当事業全体で前年を下回りました。 情報イノベーション事業は、平成29年6月に、データ集計やコンタクトセンターなど、企業等の幅広い業務を代行するBPO(Business Process Outsourcing)サービスの運用拠点を東京都新宿区と福岡県福岡市に新設しました。これによりDNPグループのBPOセンターは全国13箇所となり、生活者に最適な情報をタイムリーに届けて販促効果を高めるデジタルマーケティングの支援サービスの拡大に努めました。こうしたなか、カタログやパンフレットは前年を下回りましたが、POPなどの販促関連ツールが好調に推移したほか、チラシが堅調に推移しました。また、金融機関や電子マネー向けのICカードやパーソナルメール等のデータ入力・印刷・発送等を行うIPS(Information Processing Services)を中心とした情報セキュリティ関連も順調に推移し、当事業全体で前年を上回りました。イメージングコミュニケーション事業は、記念撮影フォトブース「写Goo!(シャグー)」やクラウド型画像販売ソリューション「Imaging Mall(イメージングモール)」など、イベントやプロモーション等で写真プリントが楽しめる付加価値の高いサービスの展開に努めました。また、世界各地で事業展開している写真プリント用昇華型熱転写記録材(カラーインクリボンと受像紙)は、東南アジアや欧州向けが増加しましたが、国内や北米向けが減少し、当事業全体では前年を下回りました。その結果、部門全体の売上高は7,786億円(前期比2.8%減)、営業利益は217億円(前期比15.2%増)となりました。 (生活・産業部門)包装関連事業は、フィルムパッケージは国内向けが減少しましたが、東南アジア向けは増加しました。プラスチック成型品はペットボトルの部材であるプリフォームなどが増加しましたが、紙のパッケージやペットボトル用無菌充填システムの販売が減少し、当事業全体では前年を下回りました。生活空間関連事業は、DNPグループ独自のEB(Electron Beam)コーティング技術を活かした環境配慮製品の拡販を推進しました。また、店舗の商品陳列やレイアウトの変更負荷を低減する「壁面装飾システム」や、改装・補修を簡便に行える「壁面リフォーム材」など、容易かつ効果的な空間演出を実現する建装材ソリューションの提供に注力しました。そのほか、内外装アルミパネル「アートテック」や、木目・金属等のデザインや触感を施した加飾フィルムが、商業施設やオフィス、自動車や鉄道車両などの非住宅分野向けに増加し、当事業全体で前年を上回りました。産業資材関連事業は、複数のフィルムを貼り合わせるラミネートや、精密塗工等の技術を活かし、世界で高いシェアを獲得しているフィルムタイプのリチウムイオン電池用パウチがモバイル用、車載用ともに順調に推移したほか、太陽電池用部材も海外向けが増加し、当事業全体で前年を上回りました。その結果、部門全体の売上高は3,943億円(前期比1.6%増)、営業利益は121億円(前期比16.0%減)となりました。 (エレクトロニクス部門)ディスプレイ関連製品事業は、光学フィルム関連が、有機ELディスプレイの普及により、有機ELテレビ向けが増加したほか、液晶テレビ向けも画面サイズの大型化により堅調に推移しました。また、有機ELディスプレイ用メタルマスクは、モバイル端末向けが増加しました。液晶ディスプレイ用カラーフィルターは、スマートフォン向けの中小型品とテレビ向けの大型品がともに減少しましたが、当事業全体では前年を上回りました。電子デバイス事業は、スマートフォン等の内蔵メモリの大容量化やIoT機器の普及を背景に、半導体市場全体が大きく成長するなか、半導体向けフォトマスクが増加しました。その結果、部門全体の売上高は1,887億円(前期比11.4%増)、営業利益は341億円(前期比106.9%増)となりました。 〔清涼飲料事業〕(清涼飲料部門)清涼飲料業界で販促施策の展開や価格競争などによるシェア争いが続くなか、特定保健用食品や機能性表示食品などの新製品の販売を強化したほか、自動販売機事業でエリアマーケティングに基づく活発な販促活動を展開して、既存市場でのシェア拡大と新規顧客の獲得に努めました。その結果、主力ブランドの「コカ・コーラ」や、「綾鷹」などの無糖茶飲料が増加しましたが、北海道地域以外のグループボトラーへの販売減少に加え、ミネラルウォーター関連が減少し、部門全体の売上高は560億円(前期比1.0%減)、営業利益は22億円(前期比7.6%減)となりました。 ② 財政状態及びキャッシュ・フローの状況当連結会計年度末の資産、負債、純資産については、総資産は、現金及び預金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ685億円増加し、1兆8,104億円となりました。負債は、補修対策引当金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ473億円増加し、7,079億円となりました。純資産は、その他有価証券評価差額金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ212億円増加し、1兆1,025億円となりました。また、当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、2,449億円(前期比14.2%増)となり、前連結会計年度末より303億円増加しました。(営業活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度において営業活動による資金の増加は484億円(前期比32.6%減)となりました。これは、税金等調整前当期純利益453億円、減価償却費610億円等によるものであります。(投資活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度において投資活動による資金の増加は230億円(前期比64.7%増)となりました。これは、投資有価証券の売却による収入546億円、有形固定資産の取得による支出325億円等によるものであります。(財務活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度において財務活動による資金の減少は427億円(前期比5.4%減)となりました。これは、配当金の支払額199億円、自己株式の取得150億円等によるものであります。 ③ 生産、受注及び販売の実績a.生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)情報コミュニケーション部門525,162△1.5生活・産業部門308,221+1.0エレクトロニクス部門180,263+14.4清涼飲料部門40,239△4.7合 計1,053,886+1.5 (注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。 b.受注実績当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。なお、清涼飲料部門においては、受注を主体とした生産を行っていないため、受注状況の記載を省略しております。 セグメントの名称受注高(百万円)前期比(%)受注残高(百万円)前期比(%)情報コミュニケーション部門646,495△0.8104,742△0.9生活・産業部門388,810+0.373,265△3.4エレクトロニクス部門190,112+9.024,521+7.3合 計1,225,419+1.0202,529△0.9 (注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。 c.販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)情報コミュニケーション部門774,997△2.8生活・産業部門392,458+1.4エレクトロニクス部門188,745+11.4清涼飲料部門56,049△0.9合 計1,412,251+0.1 (注)1.セグメント間取引については相殺消去しております。2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点によるDNPグループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。 ① 重要な会計方針及び見積りDNPグループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたっては、決算日における資産・負債の貸借対照表計上金額並びに当連結会計年度における収益・費用の損益計算書計上金額に影響する判断、見積りを実施する必要があります。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。DNPグループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。 ②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容DNPグループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高は、前連結会計年度(以下「前期」)に比べて20億円増加し、1兆4,122億円(前期比0.1%増)となりました。売上原価は、前期に比べて115億円減少して1兆1,316億円(前期比1.0%減)となり、売上高に対する比率は前期の81.1%から80.1%となりました。販売費及び一般管理費は、前期に比べて13億円減少して2,342億円(前期比0.6%減)となり、この結果、営業利益は前期に比べて149億円増加して463億円(前期比47.6%増)となりました。営業外収益は、受取配当金の増加等により前期に比べて1億円増加して138億円前期比1.1%増)となり、営業外費用は、為替差損の増加等により前期に比べて8億円増加して92億円(前期比10.5%増)となりました。この結果、経常利益は前期に比べて142億円増加して509億円(前期比38.7%増)となりました。特別利益は、固定資産売却益の増加等により、前期に比べて96億円増加して593億円(前期比19.5%増)となり、特別損失は、補修対策引当金繰入額の増加等により前期に比べて183億円増加して648億円(前期比39.4%増)となりました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は275億円(前期比9.0%増)となりました。 DNPグループの資本の財源及び資金の流動性については、主に営業活動により確保されるキャッシュ・フローにより、成長を維持・発展させていくために必要な資金を確保しており、設備投資資金などの資金需要については自己資金で賄うことを基本としております。重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源泉等については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1)新設等」に記載のとおりであります。また、キャッシュ・フローの概要については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② 財政状態及びキャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。 DNPグループの経営成績に重要な影響を与えた要因は以下のとおりです。当期の日本経済は、政府の経済政策などにより雇用・所得情勢が改善したほか、各企業における成長分野への対応等を背景に設備投資にも持ち直しの動きが見られるなど、緩やかな回復基調が続きました。一方、個人消費は力強さに欠け、中国などの海外経済の減速や原材料価格の上昇の影響もあり、本格的な回復には至りませんでした。印刷業界においては、インターネット広告市場の拡大などによる紙媒体の需要減少や、それにともなう競争の激化などもあり、厳しい経営環境が続きました。 セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。情報コミュニケーション部門は、情報セキュリティ関連やマーケティング関連の情報イノベーション事業が増収となったものの、出版関連事業やイメージングコミュニケーション事業の販売減少により、売上高は前期比2.8%減の7,786億円となりました。営業利益は、情報セキュリティ関連やマーケティング関連での売上増やコストダウンの推進により、前期比15.2%増の217億円となりました。営業利益率は、前期の2.4%から0.4ポイント上昇し、2.8%となりました。生活・産業部門は、包装関連事業が減収となったものの、生活空間関連事業と産業資材関連事業は増収となり、売上高は前期比1.6%増の3,943億円となりました。営業利益については、プラスチックフィルムなどの石化製品を中心とした原材料の値上がりにともなうコスト増などにより、前期比16.0%減の121億円となりました。営業利益率は、前期の3.7%から0.6ポイント低下して、3.1%となりました。エレクトロニクス部門については、有機ELディスプレイの製造に使用するメタルマスクや薄型ディスプレイ用の光学フィルム関連、半導体製品用フォトマスクの販売が好調に推移し、売上高は前期比11.4%増の1,887億円となりました。営業利益は、増収効果に加え、主力製品の売上伸長にともなう売上総利益率の改善により、前期比106.9%増の341億円となりました。営業利益率は、前期の9.7%から8.4ポイント上昇し、18.1%となりました。清涼飲料部門については、主力ブランドの「コカ・コーラ」のほか、「綾鷹」などの無糖茶飲料の販売が増加しましたが、ミネラルウォーター関連や北海道地域以外のグループボトラーへの販売減少もあり、売上高は1.0%減の560億円となりました。営業利益は、価格競争激化にともなう広告・販売促進費の増加などにより、前期比7.6%減の22億円となりました。営業利益率は、前期の4.3%から0.3ポイント低下して、4.0%となりました。 セグメント資産の状況については、情報コミュニケーション部門は前連結会計年度に比べて、285億円増加して9,044億円(前期末比3.3%増)となりました。生活・産業部門は前連結会計年度に比べて、144億円増加して4,537億円(前期末比3.3%増)となりました。エレクトロニクス部門は前連結会計年度に比べて、157億円減少して2,424億円(前期末比6.1%減)となりました。清涼飲料部門は前連結会計年度に比べて、10億円増加して485億円(前期末比2.2%増)となりました。報告セグメント合計では前連結会計年度に比べて、283億円増加して1兆6,492億円(前期末比1.7%増)となりました。
経営方針・経営戦略
3 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものである。 DNPは、経営の基本方針である「DNPグループビジョン2015」において、「DNPグループは、人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する。」という企業理念を掲げ、積極的な事業活動を展開し、中長期にわたり事業を安定的に拡大していくよう努めていく。DNPは、企業としての社会的責任(CSR)を果たし、あらゆるステークホルダーに新しい価値を提供していく上で、コーポレート・ガバナンスの充実が重要と考えている。的確な経営の意思決定と、それに基づく適正かつ迅速な業務執行、そしてそれらを監督・監査する体制を構築・運用するとともに、社員一人ひとりのコンプライアンス意識を高めるための研修や教育を徹底している。またDNPは、「価値の創造」「誠実な行動」「高い透明性(説明責任)」を企業が果たすべき3つの責任と捉え、その実践に努めている。これらの責任を果たすため、「DNPグループ行動規範」に基づいた活動を徹底するとともに、内部統制システムを整備して業務の適正性を確保し、株主の皆様や顧客企業、生活者、社員など、さまざまなステークホルダーから高い信頼を得られるよう、誠実な企業活動に努めていく。今後の見通しについては、政府や日銀の各種施策の効果などにより、国内の景気は緩やかに回復するものと期待されている。一方、海外では依然として景気減速の影響が懸念されており、為替や原油価格の動向など、先行き不透明な状況が続くと予想される。印刷業界においては、需要の伸び悩みや競争激化による受注単価の下落などが見込まれ、引き続き厳しい状況が予想される。このような状況のなかで、DNPは、「知とコミュニケーション」「食とヘルスケア」「住まいとモビリティ」「環境とエネルギー」という4つの成長領域において、DNPの強みである、印刷(Printing)と情報(Information)を組み合わせた「P&Iイノベーション」により、社会課題を解決する新しい価値の創造に注力している。「知とコミュニケーション」では、情報化社会における安全・安心な情報流通を支援することによって暮らしを支え、文化を育む取り組みを進める。紙と電子の書籍に対応するハイブリッド型総合書店「honto」の展開や、教育ICTサービスの開発、増加する訪日外国人に向けたインバウンド対応の多言語コミュニケーションツールの開発に向けた取り組みなどを推進していく。「食とヘルスケア」では、超高齢社会において、安全で質の高い生活を支え、生涯にわたる健康維持をサポートする製品やサービスの開発に取り組む。人の健康と食を支える安全で衛生的な食品や飲料、医薬品向けのパッケージに加え、再生医療などのライフサイエンスや農業などの分野にも高機能な製品・サービスを提供していく。「住まいとモビリティ」では、住宅やオフィス、医療施設や自動車、鉄道車両などのさまざまな空間に対して、高い快適性と機能性を備えた製品・サービスを提供していく。快適な生活空間に必要なスマートセンシング機器のほか、樹脂成型分野で優れた技術を持つDNP田村プラスチック株式会社と共同で自動車の内・外装品を提供していく。「環境とエネルギー」では、経済的発展と環境保全を両立させる持続可能な社会の実現に取り組む。省資源、省エネルギーを目指し、リデュース・リユース・リサイクルを実現する環境配慮製品やサービスのほか、熱・光・水などをコントロールする高機能製品やエネルギーマネジメントなどのソリューションを提供していく。これらの成長領域を中心に、DNPの強みを活かした新しい価値を創出して、事業の拡大と社会課題の解決を同時に図っていく。 <各事業部門における取り組み>〔印刷事業〕(情報コミュニケーション部門)当部門では、高度な印刷技術や情報セキュリティ技術などにより、情報の最適な表現と多様なメディアへの展開に取り組み、生活者と企業のさまざまなコミュニケーションを実現していく。例えば、出版社との連携をさらに深め、各種出版物の企画から制作、流通・販売、コンテンツの二次利用における著作権処理や海外展開など、出版に関するあらゆるビジネスを推進していく。 また、DNP柏データセンターや国内5箇所のBPO(Business Process Outsourcing)センターなど、高度な情報セキュリティ環境を備えたインフラを活用し、国際ブランドプリペイド・デビット決済サービス等の決済連動マーケティングや、企業の業務プロセスを代行するBPOサービスなど、付加価値の高い多様なサービスを提供していく。そのほか、写真プリントやフォトアルバムなどの生活者ニーズの拡大に対応するとともに、ネットワークを活用して付加価値を高めた写真関連の新たなサービスを提供していく。 (生活・産業部門)当部門では、地球環境への配慮やユニバーサルデザインへの対応などを進め、企業や生活者の多様なニーズに的確に応える製品・サービスを国内外に提供していく。包装事業では、水蒸気や酸素などのバリア性に優れた「DNP透明蒸着フィルム(IB〔Innovative Barrier〕フィルム)」シリーズや、植物由来の原料を使用した「DNPバイオマスプラスチック包材 バイオマテック」シリーズなどの高機能製品のシェア拡大を図っていく。海外展開については、昭和47年からインドネシアで包装材の製造・販売を行っており、日用品や食品などの分野で同国のトップシェアを獲得している。平成25年5月に開設したベトナム工場などの拠点も活用して、海外進出する日系企業やグローバル企業に付加価値の高い製品とサービスを提供していく。また、住宅や商業施設はもちろん、自動車や鉄道車両等も含めた生活空間に向けて、EBコーティング技術等を活用した高付加価値製品のほか、感性工学等を活用した心地よい空間の設計や評価測定、より施工しやすい工法の開発などを展開していく。欧米や新興国に対しても、意匠性に優れた金属パネルなどで、グローバルな販売網を活かしてシェア拡大を図っていく。なお、生活空間関連事業の一部の製品に生じた不具合により、補修対策を実施している。この不具合の発生は、使用される環境、経時変化等によるため、個別に、製品の使用状況、状態等を調査した上で、必要な補修対策を行っている。平成28年7月、補修対象範囲の把握と補修対策を早期に実施するための体制をより強化し、この件の対応に取り組んでいる。 (エレクトロニクス部門)当部門では、保有技術の高度化と融合、新たなコア技術の開発などを進め、変化する企業や生活者のニーズを先取りする製品やサービス、システムを提供していく。また、国内外の市場環境の変化を見極めて、製造設備の最適化や生産・開発体制の見直しなど、コスト構造改革を推進していく。例えば、4K・8Kテレビや車載ディスプレイ、高精細スマートフォンなどに向けて、DNPが強みとする加工技術や材料技術を活用し、高精細と広色域、大型化と軽量・薄型化、省エネルギーや高機能などの多様なニーズに対応したディスプレイ関連製品を開発していく。光学フィルムについては、クリーンな製造環境で素材を加工するコンバーティング技術を活かした新製品開発に注力する。また、有機ELディスプレイ関連では、高度なフォトリソグラフィ技術やエッチング技術を活かしたメタルマスクの生産能力を増強するなど、需要の拡大に対応していく。半導体製品用フォトマスクについては、製造時の描画時間を大幅に短縮するマルチ電子ビームマスク描画装置を導入し、次世代製品の生産体制を強化して、微細化や低コスト化という半導体メーカーのニーズに応えていく。また、ナノインプリントなどの次世代微細加工技術の実用化も加速させていく。 〔清涼飲料事業〕(清涼飲料部門)清涼飲料業界でのシェア争いが激化すると予想されるなかで、「グローバルレベルでのブランド力を持つコカ・コーラビジネスを通して、道産子企業としての地域密着力で競合を圧倒し、常に新しい価値やサービスを提供することで地元北海道に貢献し、持続的成長可能な経営基盤を実現する」というビジョンに基づき、「シェアアップ」「競合を圧倒する」「グループ総コスト削減」の3つの戦略を遂行していく。 <事業体制の強化>DNPは、「対話と協働」という行動指針を掲げ、部門間の連携を一層強化してグループとしての総合力を高めるとともに、企業や生活者との対話を深めて新しい価値の提供に努めていく。事業拡大に向けては、今後も国内外を問わずさまざまな強みを持った企業との連携を強化していく。また、事業ビジョンを推進する拠点の整備を国内外で進めるなかで、東京・市谷地区の拠点の再開発に取り組んでいる。東京近郊に分散している各事業部門の企画や営業及び本社の機能をこの地区に集約し、有効に活用することで、新規事業開発を強力に推進していく。平成29年4月には、DNPのICT分野での事業競争力強化を目的として株式会社DNPデジタルソリューションズを発足させた。平成28年10月に設立した株式会社DNPコミュニケーションデザインと連携した新たな体制のもとで、マーケティングと決済サービスの融合を進めるとともに、ICTやBPO関連での相乗効果を高め、デジタルマーケティング事業などを推進していく。 <事業継続のための体制構築>DNPは、東日本大震災の経験から事業継続計画(BCP)の重要性を再認識し、「災害発生時の人的安全対策を最優先すること」「会社の災害に対する対応力と復旧力を高めること」を基本に、日ごろから災害リスクを正しく認識して適切な予防対策を進めている。災害等、不測の事態に対しては、「DNPグループ災害対策基本規程」に基本方針や推進体制を定め、社員及び関係者の安全を確保し、さまざまなステークホルダーに安心していただけるよう防災対策を進めている。 <持続可能な社会の実現への貢献>環境問題に関しては、気候変動が深刻化しつつあり、エネルギーや水などに関するリスクが顕在化している。DNPはサプライチェーン全体をグローバルな視点で捉え、自然と共生する持続可能な社会の実現に向けた取り組みを進めている。DNPは、地球温暖化防止の取り組みを一層進めるため、温室効果ガス排出量削減の2030年度目標を定めている。また、サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量(Scope3)を国内外で算定し、国内外で削減への取り組みを行っている。原材料関連では、生態系への依存と影響が大きく、気候変動や森林資源とも関わりが深い「用紙」について、調達のガイドラインを制定し、サプライヤーと協働でガイドラインに適合した用紙調達を進めている。また、「DNP採光フィルム」「DNP調光ブラインド スマートシェード」やエネルギー使用量を見える化する省エネ診断システムなど、持続可能な社会の実現に寄与するような製品・サービスの開発にも注力している。今後も、省資源や省エネ、生物多様性の保全などに繋がる製品・サービスの開発を加速させ、社会課題の解決に貢献していく。 株式会社の支配に関する基本方針 (1) 当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針当社は、株式を上場して市場での自由な取引に委ねているため、会社を支配する者のあり方は、最終的には株主全体の意思に基づいて決定されるべきであり、会社の支配権の移転を伴う買収提案に応じるか否かの判断についても、最終的には、株主全体の意思に基づいて行われるべきものと考えている。しかし、当社株式の大量買付行為の中には、大量買付者のみが他の株主の犠牲の上に利益を得るような大量買付行為、株主が買付けに応じるか否かの判断をするために合理的に必要な期間・情報を与えない大量買付行為、大量買付け後の経営の提案が不適切である大量買付行為、大量買付者の買付価格が不当に低い大量買付行為等、株主共同の利益を毀損するものもあり得る。当社は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者のあり方として、当社の企業理念を理解し、当社の様々なステークホルダーとの信頼関係を築きながら、企業価値ひいては株主共同の利益を中長期的に確保・向上させることができる者でなければならないと考えている。したがって、企業価値ひいては株主共同の利益を毀損するおそれのある不適切な大量買付行為を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として不適切であると考えている。 (2) 会社の支配に関する基本方針の実現のための取り組みこの基本方針に基づき、当社株式の大量買付けが行われる場合の手続を定め、株主が適切な判断をするために必要かつ十分な情報と時間を確保するとともに、大量買付者との交渉の機会を確保することで、当社の企業価値・株主共同の利益の確保・向上に資するために、当社は、買収防衛策を導入しており、平成28年6月29日開催の当社第122期定時株主総会において継続の承認を得た(以下、継続後のプランを「本プラン」)。本プランの概要は次のとおりである。① 買付説明書及び必要情報の提出株券等保有割合が20%以上となる当社株式の買付け等をする者(以下「買付者」)は、買付行為を開始する前に、本プランに従う旨の買付説明書、及び買付内容の検討に必要な、買付者の詳細、買付目的、買付方法その他の情報を、当社に提出するものとする。② 独立委員会による情報提供の要請下記(3)に記載された独立委員会(以下「独立委員会」)は、買付者より提出された情報が不十分であると判断した場合は、買付者に対して、回答期限(最長60日)を定めて、追加的に情報を提供するよう求めることがある。また、当社取締役会に対して、回答期限(最長30日)を定めて、買付けに対する意見、代替案等の提示を求めることがある。③ 独立委員会の検討期間独立委員会は、買付者及び当社取締役会から情報を受領した後60日間の評価期間をとり、受領した情報の検討を行う。なお、独立委員会は、買付者の買付け等の内容の検討、買付者との協議・交渉、代替案の作成等に必要とされる合理的な範囲内(最長30日)で期間延長の決議を行うことがある。④ 情報の開示当社は、買付説明書が提出された事実及び買付者より提供された情報のうち独立委員会が適切と判断する事項等を、独立委員会が適切と判断する時点で株主に開示する。⑤ 独立委員会による勧告独立委員会は、買付者が本プランに従うことなく買付け等を開始したと認められる場合、又は独立委員会における検討の結果、買付者の買付け等が当社の企業価値ひいては株主共同の利益を害するおそれがあると判断した場合は、当社取締役会に対して、本プランの発動(新株予約権の無償割当て)を勧告する。なお、独立委員会は当該勧告にあたり、本プランの発動に関して事前に株主総会の承認を得るべき旨の留保を付すことがある。⑥ 当社取締役会による決議当社取締役会は、独立委員会からの勧告を最大限尊重して、新株予約権の無償割当ての実施又は不実施に関して決議する。なお、当該決議を行った場合は、速やかに、当該決議の概要の情報開示を行う。⑦ 大量買付行為の開始買付者は、当社取締役会が新株予約権の無償割当ての不実施を決議した後に、買付け等を開始するものとする。 (3) 独立委員会の設置本プランを適正に運用し、取締役の恣意性を排するためのチェック機関として、独立委員会を設置する。独立委員会の委員は3名以上とし、公正で客観的な判断を可能とするため、当社の業務執行を行う経営陣から独立している当社社外取締役、当社社外監査役、又は社外の有識者の中から選任するものとし、当社社外取締役の塚田忠夫氏及び宮島司氏並びに当社社外監査役の松浦恂氏が就任している。 (4) 本プランの合理性本プランは、買収防衛策に関する指針等の要件を完全に充足していること、株主意思を重視するものとなっていること、経営陣から独立した独立委員会の判断が最大限尊重されること等の点で、合理性のあるプランとなっている。そのため、本プランは、当社の上記基本方針に沿い、当社株主の共同の利益を損なうものではなく、かつ、当社役員の地位の維持を目的とするものではないと判断している。 なお、本プランの詳細については、インターネット上の当社ウェブサイト参照。(http://www.dnp.co.jp/topic/__icsFiles/afieldfile/2016/06/29/info_1600629_1.pdf)
対処すべき課題
3 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものである。 DNPは、経営の基本方針である「DNPグループビジョン2015」において、「DNPグループは、人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する。」という企業理念を掲げ、積極的な事業活動を展開し、中長期にわたり事業を安定的に拡大していくよう努めていく。DNPは、企業としての社会的責任(CSR)を果たし、あらゆるステークホルダーに新しい価値を提供していく上で、コーポレート・ガバナンスの充実が重要と考えている。的確な経営の意思決定と、それに基づく適正かつ迅速な業務執行、そしてそれらを監督・監査する体制を構築・運用するとともに、社員一人ひとりのコンプライアンス意識を高めるための研修や教育を徹底している。またDNPは、「価値の創造」「誠実な行動」「高い透明性(説明責任)」を企業が果たすべき3つの責任と捉え、その実践に努めている。これらの責任を果たすため、「DNPグループ行動規範」に基づいた活動を徹底するとともに、内部統制システムを整備して業務の適正性を確保し、株主の皆様や顧客企業、生活者、社員など、さまざまなステークホルダーから高い信頼を得られるよう、誠実な企業活動に努めていく。今後の見通しについては、政府や日銀の各種施策の効果などにより、国内の景気は緩やかに回復するものと期待されている。一方、海外では依然として景気減速の影響が懸念されており、為替や原油価格の動向など、先行き不透明な状況が続くと予想される。印刷業界においては、需要の伸び悩みや競争激化による受注単価の下落などが見込まれ、引き続き厳しい状況が予想される。このような状況のなかで、DNPは、「知とコミュニケーション」「食とヘルスケア」「住まいとモビリティ」「環境とエネルギー」という4つの成長領域において、DNPの強みである、印刷(Printing)と情報(Information)を組み合わせた「P&Iイノベーション」により、社会課題を解決する新しい価値の創造に注力している。「知とコミュニケーション」では、情報化社会における安全・安心な情報流通を支援することによって暮らしを支え、文化を育む取り組みを進める。紙と電子の書籍に対応するハイブリッド型総合書店「honto」の展開や、教育ICTサービスの開発、増加する訪日外国人に向けたインバウンド対応の多言語コミュニケーションツールの開発に向けた取り組みなどを推進していく。「食とヘルスケア」では、超高齢社会において、安全で質の高い生活を支え、生涯にわたる健康維持をサポートする製品やサービスの開発に取り組む。人の健康と食を支える安全で衛生的な食品や飲料、医薬品向けのパッケージに加え、再生医療などのライフサイエンスや農業などの分野にも高機能な製品・サービスを提供していく。「住まいとモビリティ」では、住宅やオフィス、医療施設や自動車、鉄道車両などのさまざまな空間に対して、高い快適性と機能性を備えた製品・サービスを提供していく。快適な生活空間に必要なスマートセンシング機器のほか、樹脂成型分野で優れた技術を持つDNP田村プラスチック株式会社と共同で自動車の内・外装品を提供していく。「環境とエネルギー」では、経済的発展と環境保全を両立させる持続可能な社会の実現に取り組む。省資源、省エネルギーを目指し、リデュース・リユース・リサイクルを実現する環境配慮製品やサービスのほか、熱・光・水などをコントロールする高機能製品やエネルギーマネジメントなどのソリューションを提供していく。これらの成長領域を中心に、DNPの強みを活かした新しい価値を創出して、事業の拡大と社会課題の解決を同時に図っていく。 <各事業部門における取り組み>〔印刷事業〕(情報コミュニケーション部門)当部門では、高度な印刷技術や情報セキュリティ技術などにより、情報の最適な表現と多様なメディアへの展開に取り組み、生活者と企業のさまざまなコミュニケーションを実現していく。例えば、出版社との連携をさらに深め、各種出版物の企画から制作、流通・販売、コンテンツの二次利用における著作権処理や海外展開など、出版に関するあらゆるビジネスを推進していく。 また、DNP柏データセンターや国内5箇所のBPO(Business Process Outsourcing)センターなど、高度な情報セキュリティ環境を備えたインフラを活用し、国際ブランドプリペイド・デビット決済サービス等の決済連動マーケティングや、企業の業務プロセスを代行するBPOサービスなど、付加価値の高い多様なサービスを提供していく。そのほか、写真プリントやフォトアルバムなどの生活者ニーズの拡大に対応するとともに、ネットワークを活用して付加価値を高めた写真関連の新たなサービスを提供していく。 (生活・産業部門)当部門では、地球環境への配慮やユニバーサルデザインへの対応などを進め、企業や生活者の多様なニーズに的確に応える製品・サービスを国内外に提供していく。包装事業では、水蒸気や酸素などのバリア性に優れた「DNP透明蒸着フィルム(IB〔Innovative Barrier〕フィルム)」シリーズや、植物由来の原料を使用した「DNPバイオマスプラスチック包材 バイオマテック」シリーズなどの高機能製品のシェア拡大を図っていく。海外展開については、昭和47年からインドネシアで包装材の製造・販売を行っており、日用品や食品などの分野で同国のトップシェアを獲得している。平成25年5月に開設したベトナム工場などの拠点も活用して、海外進出する日系企業やグローバル企業に付加価値の高い製品とサービスを提供していく。また、住宅や商業施設はもちろん、自動車や鉄道車両等も含めた生活空間に向けて、EBコーティング技術等を活用した高付加価値製品のほか、感性工学等を活用した心地よい空間の設計や評価測定、より施工しやすい工法の開発などを展開していく。欧米や新興国に対しても、意匠性に優れた金属パネルなどで、グローバルな販売網を活かしてシェア拡大を図っていく。なお、生活空間関連事業の一部の製品に生じた不具合により、補修対策を実施している。この不具合の発生は、使用される環境、経時変化等によるため、個別に、製品の使用状況、状態等を調査した上で、必要な補修対策を行っている。平成28年7月、補修対象範囲の把握と補修対策を早期に実施するための体制をより強化し、この件の対応に取り組んでいる。 (エレクトロニクス部門)当部門では、保有技術の高度化と融合、新たなコア技術の開発などを進め、変化する企業や生活者のニーズを先取りする製品やサービス、システムを提供していく。また、国内外の市場環境の変化を見極めて、製造設備の最適化や生産・開発体制の見直しなど、コスト構造改革を推進していく。例えば、4K・8Kテレビや車載ディスプレイ、高精細スマートフォンなどに向けて、DNPが強みとする加工技術や材料技術を活用し、高精細と広色域、大型化と軽量・薄型化、省エネルギーや高機能などの多様なニーズに対応したディスプレイ関連製品を開発していく。光学フィルムについては、クリーンな製造環境で素材を加工するコンバーティング技術を活かした新製品開発に注力する。また、有機ELディスプレイ関連では、高度なフォトリソグラフィ技術やエッチング技術を活かしたメタルマスクの生産能力を増強するなど、需要の拡大に対応していく。半導体製品用フォトマスクについては、製造時の描画時間を大幅に短縮するマルチ電子ビームマスク描画装置を導入し、次世代製品の生産体制を強化して、微細化や低コスト化という半導体メーカーのニーズに応えていく。また、ナノインプリントなどの次世代微細加工技術の実用化も加速させていく。 〔清涼飲料事業〕(清涼飲料部門)清涼飲料業界でのシェア争いが激化すると予想されるなかで、「グローバルレベルでのブランド力を持つコカ・コーラビジネスを通して、道産子企業としての地域密着力で競合を圧倒し、常に新しい価値やサービスを提供することで地元北海道に貢献し、持続的成長可能な経営基盤を実現する」というビジョンに基づき、「シェアアップ」「競合を圧倒する」「グループ総コスト削減」の3つの戦略を遂行していく。 <事業体制の強化>DNPは、「対話と協働」という行動指針を掲げ、部門間の連携を一層強化してグループとしての総合力を高めるとともに、企業や生活者との対話を深めて新しい価値の提供に努めていく。事業拡大に向けては、今後も国内外を問わずさまざまな強みを持った企業との連携を強化していく。また、事業ビジョンを推進する拠点の整備を国内外で進めるなかで、東京・市谷地区の拠点の再開発に取り組んでいる。東京近郊に分散している各事業部門の企画や営業及び本社の機能をこの地区に集約し、有効に活用することで、新規事業開発を強力に推進していく。平成29年4月には、DNPのICT分野での事業競争力強化を目的として株式会社DNPデジタルソリューションズを発足させた。平成28年10月に設立した株式会社DNPコミュニケーションデザインと連携した新たな体制のもとで、マーケティングと決済サービスの融合を進めるとともに、ICTやBPO関連での相乗効果を高め、デジタルマーケティング事業などを推進していく。 <事業継続のための体制構築>DNPは、東日本大震災の経験から事業継続計画(BCP)の重要性を再認識し、「災害発生時の人的安全対策を最優先すること」「会社の災害に対する対応力と復旧力を高めること」を基本に、日ごろから災害リスクを正しく認識して適切な予防対策を進めている。災害等、不測の事態に対しては、「DNPグループ災害対策基本規程」に基本方針や推進体制を定め、社員及び関係者の安全を確保し、さまざまなステークホルダーに安心していただけるよう防災対策を進めている。 <持続可能な社会の実現への貢献>環境問題に関しては、気候変動が深刻化しつつあり、エネルギーや水などに関するリスクが顕在化している。DNPはサプライチェーン全体をグローバルな視点で捉え、自然と共生する持続可能な社会の実現に向けた取り組みを進めている。DNPは、地球温暖化防止の取り組みを一層進めるため、温室効果ガス排出量削減の2030年度目標を定めている。また、サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量(Scope3)を国内外で算定し、国内外で削減への取り組みを行っている。原材料関連では、生態系への依存と影響が大きく、気候変動や森林資源とも関わりが深い「用紙」について、調達のガイドラインを制定し、サプライヤーと協働でガイドラインに適合した用紙調達を進めている。また、「DNP採光フィルム」「DNP調光ブラインド スマートシェード」やエネルギー使用量を見える化する省エネ診断システムなど、持続可能な社会の実現に寄与するような製品・サービスの開発にも注力している。今後も、省資源や省エネ、生物多様性の保全などに繋がる製品・サービスの開発を加速させ、社会課題の解決に貢献していく。 株式会社の支配に関する基本方針 (1) 当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針当社は、株式を上場して市場での自由な取引に委ねているため、会社を支配する者のあり方は、最終的には株主全体の意思に基づいて決定されるべきであり、会社の支配権の移転を伴う買収提案に応じるか否かの判断についても、最終的には、株主全体の意思に基づいて行われるべきものと考えている。しかし、当社株式の大量買付行為の中には、大量買付者のみが他の株主の犠牲の上に利益を得るような大量買付行為、株主が買付けに応じるか否かの判断をするために合理的に必要な期間・情報を与えない大量買付行為、大量買付け後の経営の提案が不適切である大量買付行為、大量買付者の買付価格が不当に低い大量買付行為等、株主共同の利益を毀損するものもあり得る。当社は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者のあり方として、当社の企業理念を理解し、当社の様々なステークホルダーとの信頼関係を築きながら、企業価値ひいては株主共同の利益を中長期的に確保・向上させることができる者でなければならないと考えている。したがって、企業価値ひいては株主共同の利益を毀損するおそれのある不適切な大量買付行為を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として不適切であると考えている。 (2) 会社の支配に関する基本方針の実現のための取り組みこの基本方針に基づき、当社株式の大量買付けが行われる場合の手続を定め、株主が適切な判断をするために必要かつ十分な情報と時間を確保するとともに、大量買付者との交渉の機会を確保することで、当社の企業価値・株主共同の利益の確保・向上に資するために、当社は、買収防衛策を導入しており、平成28年6月29日開催の当社第122期定時株主総会において継続の承認を得た(以下、継続後のプランを「本プラン」)。本プランの概要は次のとおりである。① 買付説明書及び必要情報の提出株券等保有割合が20%以上となる当社株式の買付け等をする者(以下「買付者」)は、買付行為を開始する前に、本プランに従う旨の買付説明書、及び買付内容の検討に必要な、買付者の詳細、買付目的、買付方法その他の情報を、当社に提出するものとする。② 独立委員会による情報提供の要請下記(3)に記載された独立委員会(以下「独立委員会」)は、買付者より提出された情報が不十分であると判断した場合は、買付者に対して、回答期限(最長60日)を定めて、追加的に情報を提供するよう求めることがある。また、当社取締役会に対して、回答期限(最長30日)を定めて、買付けに対する意見、代替案等の提示を求めることがある。③ 独立委員会の検討期間独立委員会は、買付者及び当社取締役会から情報を受領した後60日間の評価期間をとり、受領した情報の検討を行う。なお、独立委員会は、買付者の買付け等の内容の検討、買付者との協議・交渉、代替案の作成等に必要とされる合理的な範囲内(最長30日)で期間延長の決議を行うことがある。④ 情報の開示当社は、買付説明書が提出された事実及び買付者より提供された情報のうち独立委員会が適切と判断する事項等を、独立委員会が適切と判断する時点で株主に開示する。⑤ 独立委員会による勧告独立委員会は、買付者が本プランに従うことなく買付け等を開始したと認められる場合、又は独立委員会における検討の結果、買付者の買付け等が当社の企業価値ひいては株主共同の利益を害するおそれがあると判断した場合は、当社取締役会に対して、本プランの発動(新株予約権の無償割当て)を勧告する。なお、独立委員会は当該勧告にあたり、本プランの発動に関して事前に株主総会の承認を得るべき旨の留保を付すことがある。⑥ 当社取締役会による決議当社取締役会は、独立委員会からの勧告を最大限尊重して、新株予約権の無償割当ての実施又は不実施に関して決議する。なお、当該決議を行った場合は、速やかに、当該決議の概要の情報開示を行う。⑦ 大量買付行為の開始買付者は、当社取締役会が新株予約権の無償割当ての不実施を決議した後に、買付け等を開始するものとする。 (3) 独立委員会の設置本プランを適正に運用し、取締役の恣意性を排するためのチェック機関として、独立委員会を設置する。独立委員会の委員は3名以上とし、公正で客観的な判断を可能とするため、当社の業務執行を行う経営陣から独立している当社社外取締役、当社社外監査役、又は社外の有識者の中から選任するものとし、当社社外取締役の塚田忠夫氏及び宮島司氏並びに当社社外監査役の松浦恂氏が就任している。 (4) 本プランの合理性本プランは、買収防衛策に関する指針等の要件を完全に充足していること、株主意思を重視するものとなっていること、経営陣から独立した独立委員会の判断が最大限尊重されること等の点で、合理性のあるプランとなっている。そのため、本プランは、当社の上記基本方針に沿い、当社株主の共同の利益を損なうものではなく、かつ、当社役員の地位の維持を目的とするものではないと判断している。 なお、本プランの詳細については、インターネット上の当社ウェブサイト参照。(http://www.dnp.co.jp/topic/__icsFiles/afieldfile/2016/06/29/info_1600629_1.pdf)