事実関係 — どこまで持ち、いつまで持つと言っているのか
整理しておくべき事実は3つあります。第一に、2025年3月にバークシャーの子会社が大量保有報告書を提出し、5大総合商社(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅)への保有比率を1ポイント以上引き上げたこと。第二に、2026年2月末時点での保有比率が、三菱商事10.8%、三井物産10.4%、伊藤忠10.1%、丸紅9.8%、住友商事9.7%と、いずれも当初示唆していた「9.9%上限」を超えて積み上がっていること。第三に、バフェット氏が2025年5月の年次総会で「これら5社の株を、これから50年売却することなど考えないだろう」と発言したことです。さらに2026年3月には東京海上HDと資本業務提携を発表し、約2.49%(18億米ドル)を取得しています。商社の枠を越えて、日本株への踏み込みが続いている局面です。
モート先生の視点 — なぜ「総合商社」なのか
バフェット氏が総合商社を選んだ論理は、彼が好む「予測可能なキャッシュフロー」と「資本配分の規律」という基準で読み解くと整理できます。
第一に、5大商社は資源・非資源・金融・物流・食品など多角的な事業ポートフォリオを持ち、いずれかのセクターが落ち込んでも他で支える「ポートフォリオ的安定」を実現しています。これはバフェット自身が好んできた米国の保険持ち株会社や鉄道のような構造に近い。第二に、5社はいずれも累進配当(配当を減らさず維持または増やす方針)と継続的な自社株買いを公言しており、株主還元の規律が長期で守られてきました。第三に、ROE目線で見ても、過去のショック期を除けば概ね2桁を維持してきており、ルックスルー利益の観点でも長期に意味のある投資先と判断しやすい。
もう一つ重要なのは、円建ての社債発行を通じて為替リスクを抑えながら日本株を買えていることです。バークシャーは2019年以降、円建て社債を継続的に発行し、その円資金で商社株を取得してきました。株式の配当(円建て)と社債の利払い(円建て)が同じ通貨で完結する——為替変動の影響を、構造的に小さくする工夫が施されています。
留意点 — 「バフェットが買っているから」だけで動かない
- 追随売買の罠:保有報告書が公表された時点で、株価には織り込みが進んでいることが多いです。「バフェットが買った」という見出しに反応して買うと、もっとも高い水準で買うことになりがちです。
- 商社のサイクル性:資源価格・為替・新興国の景気に大きく影響されます。バフェットは数十年の時間軸でこの上下を均す前提で持っていますが、短期保有を想定している投資家にとっては、サイクルの底と天井の振れは無視できません。
- 5社の中身は均一ではない:資源比率の高い三菱商事・三井物産と、非資源・消費財に強い伊藤忠では、景気サイクルへの感応度がかなり異なります。「商社株」と一括りにせず、ポートフォリオを分けて見ることが大切です。
- 「50年保有」の解釈:これは「絶対に売らない」というより、「短期的な株価変動で売る理由がない」という哲学の表明と読むのが妥当です。事業や経営方針が大きく変質すれば、判断は変わりうるという余地は残されています。
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※ 本記事は投資教育・情報提供を目的としており、金融商品取引法に定める投資助言・代理業ではありません。特定の銘柄・指数の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。