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モート診断は誰がどう作った?
— 信頼性と評価アルゴリズム完全公開

モート先生の「モート診断」は、AIによる定性評価です。だからこそ、誰が・どんなデータで・どんなプロンプトで作っているのかを、隠さず公開します。これが本サービスの肝です。

1. モート診断とは何か

「モート」は、ウォーレン・バフェットが1999年の Fortune 誌寄稿で投資哲学の中心概念として用いた言葉です。城(castle)に例えるなら、城=企業の利益基盤、堀(moat)=競合から守る障壁。堀がない企業の利益は、長期では競争で削られて消えるというのがバフェットの核となる洞察です。

本当に素晴らしい企業は、その経済的な城を守る、広く持続的な「堀」を持っていなければならない。理想的な企業は堀が毎年広がっていく。 — ウォーレン・バフェット 2007年 株主への手紙

モート先生のモート診断は、この概念を Morningstar / Pat Dorsey が体系化した5類型に分解し、各銘柄について 0〜5 点で採点します。合計 0〜25 点を moat_total として、12点以上を「ワイドモート候補」、8〜11 点を「ナローモート」と分類しています。

類型本質カラム名満点
無形資産ブランド・特許・規制ライセンスintangible_score5
スイッチング・コスト顧客の乗換コスト・乗換リスクswitching_cost_score5
ネットワーク効果利用者増 → 価値増network_effect_score5
コスト優位規模・立地・プロセスによる低コストcost_advantage_score5
効率規模市場規模が限定的で寡占が自然に成立efficient_scale_score5

2. 誰が作ったのか

本診断は、アルデンシア株式会社(AUDENTIA Inc.)の代表 田副寛太郎が監修しています。投資銀行・PE・スタートアップ経営を経て、バフェット流バリュー投資の体系をAIに移植するプロジェクトとして開発しました。

監修にあたって体系化のベースに置いたのは、以下の古典です。これらは「秘伝のタレ v2.0」と呼ばれる 10,000 字の評価プロンプトに、評価軸・スコアリング基準として落とし込まれています。

これらの理論を直接ヒトが個別銘柄に当てはめる従来手法と違い、モート先生は3,587社 × 過去10年の有価証券報告書を機械的に読み込み、定量・定性両面から自動採点します。ヒトが見落としがちな小型株や周辺銘柄まで、漏れなく同じ尺度で評価できることが最大の特徴です。

3. データソース — どんな情報から判断しているか

モート診断は「AIの直感」ではありません。あくまで具体的な一次データを根拠にしています。データレイクには以下が格納されています。

3-1. EDINET(金融庁が運営する電子開示システム)

有価証券報告書・四半期報告書・大量保有報告書などの全文を機械可読 XBRL/PDF/HTML で取得し、テキストとして格納しています。

3-2. J-Quants(JPX 公式マーケットデータ API)

東証公式の株価・財務時系列データです。PER/PBR/ROE/配当利回りなどの指標時系列を持ちます。

3-3. TDnet(適時開示情報伝達システム)

決算短信・業績修正・自己株取得・配当変更・M&A・大量保有報告など、四半期決算外の重要IRをリアルタイムで取得しています。

3-4. モート診断結果テーブル

4. どう作っているか — アルゴリズム7ステップ

モート診断の処理は、以下7ステップのパイプラインで動いています。1社あたりの所要時間は概ね 5〜10 分です。

1EDINET から過去10年分の有価証券報告書を取得
証券コードを起点に、対応する EDINET コードへ変換し、過去10事業年度分の有報を XBRL/HTML で取得します。1社あたり 100〜300KB のテキストになります。
2セクション解析(パース)
「事業の状況」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題」「事業等のリスク」「MD&A(経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)」「研究開発活動」を XPath / 正規表現で個別セクションに切り分け、iv_edinet_text_sections へ格納します。
3財務指標と組み合わせ
J-Quants の財務時系列から、営業利益率・粗利率・ROIC・ROE・R&D 売上高比率の10 年分の推移を抽出。テキスト分析だけでは見逃される「数字に裏付けられたモート」を補完します。例:高 ROIC が 10 年連続で 15% 超なら、何らかのモートがある証拠。
45類型ごとに LLM で 0〜5 点採点
評価プロンプト「秘伝のタレ v2.0」(10,000字、固定)を使い、複数の高性能 LLM のアンサンブルで 5 類型を独立に採点します。例えば「無形資産」では、有報「事業の状況」のブランド・特許・規制ライセンスへの言及量と、粗利率推移を組み合わせて 0〜5 点を判定します。同じプロンプトを 2 つの異なるモデルに流し、スコアが 2 点以上乖離した場合は人手レビューに回します。
5moat_total の集計と分類
5 サブスコアを単純加算(最大 25 点)し、12 点以上を「ワイドモート候補」、8〜11 点を「ナローモート」、7 点以下を「モート弱」とラベリングします。
6モートの持続性(moat_durability)の別軸評価
「このモートは今後10年で広がるか、狭まるか」を別途 widening / stable / eroding の3段階で判定します。これがバフェットの「方向性」の概念です。たとえ現在のスコアが 15 点でも、eroding(縮退)なら長期投資には不向きと判定。
7月次再計算+ IR トリガー再計算
毎月初日(1日 03:00 JST)に全銘柄を再計算します。加えて、重要 IR(業績修正、M&A、社長交代、大量保有報告など)を TDnet で検知したら、その銘柄だけ 24 時間以内に追加再計算。スコア変動が ±2 点以上なら、変動理由を iv_moat_detailed に注釈として記録します。

5. 評価モデルと「秘伝のタレ v2.0」プロンプト

評価の核心は、5類型それぞれに与える 10,000 字のシステムプロンプトです。これを「秘伝のタレ v2.0」と呼んでいます。一般公開はしていませんが、構造は以下の通りです。

類型主な評価軸(要約)
無形資産① ブランドの認知度・想起率/② 特許の独占期間・主力売上比率/③ 規制ライセンス(金融業免許、医薬品承認等)/④ 粗利率が業界平均より 10pt 以上高いか/⑤ 広告費削減でも売上が落ちないか
スイッチング・コスト① 顧客の取引年数中央値/② 解約率(チャーン)/③ 代替品への乗換に要する金額・時間/④ 顧客の業務に深く食い込んでいるか/⑤ データの移行コスト
ネットワーク効果① 利用者数の前年比成長率/② 市場シェアが2位以下の何倍か/③ プラットフォームの両面性/④ 利用者増が他者の参入障壁を高めているか
コスト優位① 売上原価率が業界平均より低い度合い/② 規模の経済の根拠/③ 独自プロセスの有無/④ 立地・サプライチェーンの優位/⑤ 過去10年の利益率トレンド
効率規模① 市場規模/② 上位3社シェア合計/③ 過去10年での新規参入数/④ 規制で守られた寡占か/⑤ 自然独占性

各評価軸ごとに、「どのスコアならどのテキスト証拠が必要か」を 30〜40 個の判定ルールで規定しています。LLM はこのルールに従って、必ず「該当する有報セクションの引用」とともにスコアを返します。引用が出せないスコアは、品質保証システムで棄却されます。

6. モート診断の使い方 — 実例

具体的にどう出力されるかを2社で示します。

任天堂 7974(モート総合 16/25)

intangible: 5/5(マリオ・ゼルダ・ポケモンの IP は 40 年でも色あせない)
network_effect: 4/5(Switch のオンライン会員 3,800 万人)
switching_cost: 3/5(ニンテンドーアカウントへのソフト購入履歴)
cost_advantage: 2/5(製造はEMS委託で規模優位は限定的)
efficient_scale: 2/5(コンソール市場はSony/MSと寡占)
durability: stable

→ 強みの中核は無形資産(IP)。コスト優位は弱め。Switch の世代交代でハード売上は変動するが、IP は世代を超えて稼ぐ。

キーエンス 6861(モート総合 15/25)

intangible: 5/5(ファブレス+直販モデルへの圧倒的ノウハウ)
switching_cost: 3/5(センサーが製造ラインに組み込まれ乗換困難)
cost_advantage: 4/5(営業利益率50%超を15年維持=独自プロセス)
efficient_scale: 3/5(センサ・計測機器のニッチで上位独占)
network_effect: 0/5(ネットワーク効果は事業構造上存在せず)
durability: widening

→ コスト優位とブランド(営業力)の組み合わせ。営業利益率の絶対水準がモートの強さを裏付け。海外展開で堀がさらに拡がっている。

各社の詳細スコアと根拠テキストは、銘柄ページ /stocks/{証券コード} や API /api/iv/stocks/{code} から取得できます。

7. 限界と注意点 — 正直に書きます

AIによる定性評価には、必ず限界があります。利用者の判断を歪めないよう、率直に共有します。

① 評価者バイアスがゼロではない

LLM はバフェット・グレアム・マンガーの世界観を反映するよう調整されていますが、学習データ全体の偏りはどうしても残ります。結果として「自分が好きな業界」「自分が理解しやすい業界」を高く評価しがちです。

② 業種間の絶対比較は危険

銀行と SaaS、商社と医薬品は、同じ尺度ではモートの強さを比較できません。必ず同業他社との相対比較で使ってください。スコア絶対値だけで「銀行はモートが弱い」と結論しないでください。

③ 直近の業績変動には弱い

モート診断は10年スパンの構造を見るため、直近1年の業績悪化やコロナのような短期ショックには鈍感です。短期の事業環境変化は、別途 TDnet 適時開示や決算短信で確認してください。

④ スコア絶対値より時系列の変化

本当に重要なのは「moat_total が 15 か 12 か」ではなく、「3年前と比べて広がっているか狭まっているか」です。durability(widening/stable/eroding)と合わせて読み解いてください。

⑤ 投資助言ではない

本診断は金融商品取引法に定める投資助言・代理業ではありません。あくまで投資教育・分析の参考情報です。スコアが高いからといって買い推奨ではなく、最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。

⑥ AIの間違いは必ず起きる

2 LLM のアンサンブルで一致しないケースは人手レビューにかけていますが、それでも全銘柄を完璧にカバーするのは不可能です。スコアが直感と大きく違う銘柄は、お手数ですが iv_moat_detailed の根拠テキストを必ず確認してください。

8. 賢者の言葉 — 私たちが拠り所にしているもの

素晴らしい企業を妥当な価格で買うほうが、平凡な企業を割安な価格で買うよりも遥かに良い。 — ウォーレン・バフェット 1989年 株主への手紙
持続的競争優位は「Power」であり、Power は定量化可能である。Power がない企業は、長期では平均利益率に回帰する。 — ハミルトン・ヘルマー『7 Powers』
逆から考えよ。常に逆から考えよ。失敗するシナリオから先に列挙すれば、成功確率はおのずと上がる。 — チャーリー・マンガー

モート診断は、これら賢者が直感と経験で行ってきた「企業の堀の見極め」を、機械的に・漏れなく・同一の尺度で3,587社に適用しようとする試みです。完璧ではありません。が、ヒトひとりが追える銘柄数の限界(せいぜい数十社)を、桁違いに超えてカバーできるのが強みです。

9. 更新頻度・透明性ポリシー

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10. 関連ページ

※ 本ページは投資教育・情報提供を目的としており、金融商品取引法に定める投資助言・代理業ではありません。記載したスコアおよび個別銘柄は理論の解説例であり、特定銘柄の購入・売却を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。AI による定性評価には誤りが含まれる可能性があります。