事業の概要
- インナーウェア中心の製造小売ワコールホールディングスは、主にファンデーション、ランジェリー、ナイトウェアといったインナーウェアの製造から卸売、そして消費者への小売までを一貫して手掛けるビジネスモデルです。自社で企画・デザインした商品を国内外の工場で生産し、百貨店や量販店、直営店、Eコマース(EC)サイトなど多様なチャネルを通じて販売しています。これにより、製品の品質管理から顧客接点までを自社グループでコントロールし、ブランド価値を維持・向上させています。
- 多角的な繊維製品事業インナーウェアに加え、アウターウェア、スポーツウェア、その他の繊維製品も手掛けています。特にスポーツウェアブランド「CW-X」などは、機能性を重視した製品で特定の顧客層に支持されています。また、ピーチ・ジョン事業では、主にグループ外から調達した製品の小売販売を行い、多様なブランド展開で幅広い顧客ニーズに応えています。
- 飲食・文化・サービス事業の展開主要な繊維製品事業の他に、飲食・文化・サービスといった「その他の事業」も展開しています。これは、本業とのシナジー効果や、新たな収益源の確保を目指すものと考えられます。例えば、不動産賃貸業なども含まれており、事業ポートフォリオの多様化を図ることで、特定の市場変動リスクを分散させる狙いがあります。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
セグメント構成
- 国内ワコール事業ワコール事業(国内)は、持株会社である当社と国内子会社8社で構成されています。主要子会社である株式会社ワコールが製品の企画・デザイン、原材料調達を行い、国内外の縫製会社から仕入れた半製品を製品化し、国内の百貨店、量販店、直営店舗、Eコマース(EC)サイトを通じて最終消費者に供給しています。縫製会社や販売会社もグループ内に持ち、国内市場におけるインナーウェア、スポーツウェアの製造・販売を主軸としています。
- 海外ワコール事業ワコール事業(海外)は、海外子会社および関連会社合わせて39社で構成され、北中米、欧州、アジア・オセアニアの各地域で事業を展開しています。各地域のニーズに合わせたインナーウェアの製造・販売を主に行い、一部は株式会社ワコールやアジアの販売会社にも供給しています。例えば、北中米ではWACOAL AMERICA,INC.が製造・販売を担い、欧州ではWACOAL EMEA LTD.が販売を主導するなど、地域特性に応じた事業体制を構築し、グローバルな収益源となっています。
- ピーチ・ジョン事業およびその他事業ピーチ・ジョン事業は、国内子会社1社と海外子会社2社で構成され、主にグループ外から調達した製品の小売販売を行っています。これは、ワコール事業とは異なるブランドイメージと顧客層を持つことで、市場の多様なニーズに対応する戦略です。その他事業には、株式会社ルシアンによる婦人インナーや手芸用品の製造・卸売、不動産賃貸業、飲食・文化・サービス事業などが含まれ、事業ポートフォリオの多角化と安定的な収益基盤の構築に貢献しています。
有価証券報告書「事業の内容」の全文を見る(年度切替)
3【事業の内容】 当社の企業集団は、持株会社(当社)1社、子会社46社及び関連会社7社で構成され、インナーウェア(主にファンデーション、ランジェリー及びナイトウェア)、アウターウェア、スポーツウェア、その他の繊維製品及び関連製品の製造、卸売及び製品の消費者への小売を主な事業としており、さらにその他の事業として、飲食・文化・サービス等の事業を展開しております。 なお、当社は、有価証券の取引等の規制に関する内閣府令第49条第2項に規定する特定上場会社等に該当しており、これにより、インサイダー取引規制の重要事実の軽微基準については連結ベースの数値に基づいて判断することとなります。 当社グループの事業に関わる位置付け及びセグメントとの関連は、次のとおりであります。(1)ワコール事業(国内) ワコール事業(国内)に属する会社は、当社及び国内子会社8社であります。国内子会社のうち㈱ワコールは、上記製品の企画・デザインと原材料調達を行い、国内外の縫製会社及びその他の協力工場から仕入れた半製品の検査を経て製品化し、国内百貨店、量販店及びその他一般小売店、また直営店舗、Eコマース(EC)サイトや国内外の販売会社を通じて、それぞれ最終消費者へ供給しております。縫製会社は㈱ワコールマニュファクチャリングジャパン等2社あり、いずれも㈱ワコールから原材料の供給を受けてインナーウェア、スポーツウェアの縫製加工を行い、半製品を㈱ワコールへ納入しております。販売会社は㈱ウンナナクール、㈱ランジェノエルがあり、主としてインナーウェア、アウターウェアの製品の販売を行っております。(2)ワコール事業(海外) ワコール事業(海外)に属する会社は、海外子会社及び関連会社併せて38社であります。海外子会社は北中米地区9社、欧州地区に7社、アジア・オセアニア地区に16社、計32社あります。海外関連会社はアジア地区に6社あります。北中米地区の子会社9社のうちWACOAL DOMINICANA CORP.はインナーウェアの縫製会社で、製品を米国の製造・販売会社であるWACOAL AMERICA,INC.に納入しており、WACOAL AMERICA,INC.はこれら製品を現地の百貨店、専門小売店及びECサイトを通じて最終消費者へ供給しております。また、販売会社であるEVEDEN INC.は主としてWACOAL LANKA(PRIVATE) LTD.、WACOAL EMEA LTD.から供給を受けたインナーウェア等の製品を販売しております。欧州地区の子会社7社のうちWACOAL EMEA LTD.は主としてWACOAL LANKA(PRIVATE) LTD.から供給を受けたインナーウェア等の製品を主に英国の百貨店、専門小売店等を通じて最終消費者へ販売しております。BRAVISSIMO LTD.は主にグループ外から仕入れた製品の販売を行っております。アジア・オセアニア地区の子会社2社と関連会社4社は、製造・販売会社で、製品をそれぞれ現地の百貨店、専門小売店等を通じて最終消費者へ供給するとともに、一部を㈱ワコール及びアジアの販売会社に供給しております。販売会社は、WACOAL SINGAPORE PRIVATE LTD.、EVEDEN ISRAEL LTD.等子会社6社と関連会社1社であり、主としてグループ内より供給を受けたインナーウェアの製品をそれぞれ現地の百貨店、専門小売店、直営店舗を通じて最終消費者へ供給しております。残り8社の子会社のうち、4社はインナーウェアの縫製会社で、2社は原材料製造会社、1社はアジア地区における子会社・関連会社向けの材料調達等、1社は投資会社で現地のインナーウェア等の製造・販売子会社及び関連会社への投資をしております。(3)ピーチ・ジョン事業 ピーチ・ジョン事業に属する会社は、国内子会社及び海外子会社併せて3社であります。国内子会社1社、海外子会社2社は、すべて販売会社であり、㈱ピーチ・ジョンは主にグループ外から仕入れた製品の販売を行っております。(4)その他 その他に属する会社は、国内子会社3社、国内関連会社1社併せて4社であります。国内子会社3社のうち、㈱Aiは主にグループ外から仕入れた製品の販売を行っております。残り2社はその他の繊維関連及び不動産賃貸業、その他の事業を行っております。 以上の子会社及び関連会社の概要を図で示すと次頁のとおりであります。 無印:連結子会社 ※ :持分法適用会社
事業の優位性(モート)
事業の質(有価証券報告書から抽出)
数字に出ない事業の性質を、同じ物差しで全銘柄そろえています。FY2025時点の記載が出典です。
| 価格決定力値上げを通せるか。強いほどインフレ耐性が高い | 中程度 原材料費高騰に対応しつつ、顧客価値提供と新規顧客獲得・既存顧客維持に努めているため。 |
|---|---|
| 参入障壁新規参入を阻む要因の種類 | ブランド 長年の体型研究と製造技術、顧客データベースに基づくブランド力と商品開発力。 |
| 顧客集中度特定顧客への依存度。高いほど失注リスクが大きい | 中程度 |
| 設備投資の性質稼いだ現金がどれだけ設備維持に消えるか | 混合 |
会社が挙げる主要リスク:市場の構造変化 / 調達価格の上昇 / 競争・競合環境の変化
同じ条件で他の銘柄を探す → 定性スクリーニング(価格決定力・参入障壁・景気敏感度などで絞り込めます)
モート総合 9 / 25 5類型それぞれの強度と、そう判定した根拠
無形資産★★★☆☆
ワコールは「Wacoal」「Wing」といった強力なブランド力を有し、長年の歴史で培われたデザイン力と品質への信頼が強み。特に女性用下着市場におけるブランド認知度は高く、これが新規参入障壁となっている。海外展開も進めており、グローバルなブランド資産も構築しつつある。
スイッチングコスト★★★☆☆
女性用下着は、フィット感や快適性、デザインへのこだわりが強く、一度気に入ったブランドや商品を使い続ける顧客が多い。特にワコールの高価格帯商品は、品質やブランドへの信頼から、他社製品への乗り換えに対する心理的・経済的ハードルが存在する。
ネットワーク効果☆☆☆☆☆
該当するネットワーク効果は見られない。製品の価値は個々の顧客体験に依存し、ユーザー数の増加が直接的に製品価値を高める構造ではない。
コスト優位★☆☆☆☆
アパレル業界全体として、グローバルなサプライチェーンや生産委託によるコスト競争は存在するが、ワコールは高付加価値製品に注力しており、圧倒的なコスト優位性を持つとは言えない。一部のSPA(製造小売業)モデルによる効率化は見られる。
規模の経済★★☆☆☆
国内の女性用下着市場においては一定のシェアを持つが、グローバル市場全体で見ると、大手アパレル企業や専門ブランドと比較して、圧倒的な規模の経済による優位性は限定的。しかし、国内市場でのブランド力と販売網は一定の規模メリットを生んでいる。
- 長年のブランド育成と顧客基盤ワコールは長年にわたり培ってきた「ワコール」ブランドの信頼性と認知度を最大の強みとしています。特に、顧客の体型に関する研究や知見、心地よさを追求する製造技術は、高品質なインナーウェアを提供する上で重要な競争優位性となっています。この強みを活かし、ハイプレミアム層から若年層、シニア層まで、幅広い顧客層に愛されるブランド育成に注力しています。
- グローバルな生産・販売体制国内外に多数の子会社・関連会社を持ち、グローバルな生産・販売ネットワークを構築しています。特に、ベトナムやミャンマーなどのASEAN地域での調達・生産比率を高めることで、コスト競争力を維持しつつ、安定した製品供給を可能にしています。北中米、欧州、アジア・オセアニアといった各地域に合わせた商品展開と販売戦略により、国際市場でのプレゼンスを確立しています。
- 需要連動型生産と効率的なサプライチェーン顧客ニーズの明確な商品を短いリードタイムで開発・提供し、需要に応じて柔軟に生産・供給する「需要連動型生産体制」を構築しています。これにより、売れ筋商品の店頭充足率を高め、欠品による販売機会ロスを低減しています。また、資材・カラー集約や材料調達先の見直し、生産効率化の取り組みを通じて、サプライチェーン全体のコスト最適化と効率向上を図っています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
経営戦略
有価証券報告書「経営方針・対処すべき課題・MD&A」の全文を見る(年度切替)
経営方針・経営戦略
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。これらの将来予測には、不確定な変動要素が含まれており、実際の成果や業績などは、記載の見通しとは異なる可能性があります。 (1) グループ経営理念 ワコールグループは、純粋持株会社である当社のもと、日本、米国、欧州、中国、東南アジアを中心に、インナーウェア事業などを展開し、従前から「人々の美しさに貢献することで、広く社会に寄与すること」を目指して活動を続けてきました。そして、2022年には、「世界中のあらゆる人々の豊かな生活に貢献すること」、「画一的な外見美ではなく、内面も含めた自分らしさの実現をお手伝いすること」、「環境や人権などさまざまな社会課題の解決に努めること」を目指し、現代社会において私たちが果たすべき社会的使命を「ミッション」として定義しました。この「ミッション」及び70年を超える歴史の中で受け継いできた「創業の精神」を礎として、各事業会社が複雑化・多様化する社会課題への取り組みを将来の「成長機会」として捉え、事業を通じて「社会課題の解決」と「持続的成長」の両立を目指す「サステナビリティ経営」を推進することで、企業価値の向上に努めていきます。 また、私たちの事業活動は、一人ひとりのお客さまの声に耳を傾け、謙虚に自らを変革し、人と人とが互いに信頼し合う「相互信頼」を積み重ねることで成り立っています。企業経営の透明性を高めることに継続して取り組み、公正性、独立性を確保することを通じて、「株主」「顧客」「従業員」「取引先」「地域社会」など、すべてのステークホルダーと「相互信頼」の関係を構築することで、社会になくてはならない存在を目指していきます。 ミッション ひとりひとりが 自分らしく美しく いられるように世の中が 自信と思いやりに あふれるようにからだに こころにいちばん近いところで 寄り添い続けます からだのここちよさ、こころの美しさ。それはまるで引力のように、自分と社会とを結びつけてくれる。ありたい自分を知り、一歩ずつ近づくこと。そこで生まれた自信は、多様な人々を受け入れる優しさを育む。その優しさは、やがて社会や地球へも広がり、思いやりあふれる豊かな未来へとつながっていく。からだに こころに いちばん近いところで、一人ひとりの輝きに寄り添い続けてきたワコールだから。変化に挑み、成長を続けることで、世界を美しくする力になれる。私たちは、そう信じています。 グローバル・コーポレートメッセージComfortable inside. Confident outside. ※「グローバル・コーポレートメッセージ」は、ワコールグループ共通のコミュニケーションメッセージです。詳しくは、当社ウェブサイトの「ワコールグループについて」をご覧ください。https://www.wacoalholdings.jp/group/ 創業の精神 目標世の女性に美しくなって貰う事によって広く社会に寄与する事こそわが社の理想であり目標であります 社是わが社は 相互信頼を基調とした格調の高い社風を確立し一丸となって 世界のワコールを目指し不断の前進を続けよう 経営の基本方針1. 愛される商品を作ります2. 時代の要求する新製品を開発します3. 大いなる将来を考え正々堂々と営業します4. より良きワコールはより良き社員によって造られます5. 失敗を恐れず成功を自惚れません 役員・従業員の行動指針(アクション) 「誰かの幸せを想おう」顧客、取引先、ともに働く社員など、周囲の人の幸せを考えられているだろうか「好奇心を持って、五感を使い観察しよう」最近、新たな発見や気づきはあっただろうか「なぜ?何のために?を考えよう」真意や根本原因を理解できているだろうか「異なる意見を尊重しよう」謙虚に人の意見に耳を傾け、忖度抜きで、建設的に議論をしているだろうか「未来志向で判断しよう」目先の結果だけではなく、豊かな未来の実現のために行動しているだろうか「まずやってみよう」リスクを恐れて立ち止まっていないだろうか 挑戦する人を応援しているだろうか「仲間と力を合わせよう」大きな成果を生むために、仲間と切磋琢磨し、共創できているだろうか「誠実に、責任を持ち行動しよう」相手に感謝を伝えているだろうか 人のせいにしていないだろうか (2) 中長期経営戦略フレーム「VISION 2030」①策定背景と目的 当社グループは、2022年6月に経営理念の実践に向けて、自社が抱える事業課題やお客さまの価値観、社会・環境の変化を見据えつつ、長期的なゴールからのバックキャスティングにより、2030年に向けたグループの将来ビジョンを示す「VISION 2030」を策定しました。「VISION 2030」では、「高い感性と品質で、ひとりひとりのからだとこころに、美しさと豊かさを提供し、『世界のワコールグループ』として進化・成長する」ことを中長期的に目指す姿として掲げています。また、「国内の収益性向上と事業領域拡大」「海外事業の拡大と高収益構造への変革」「グループ経営力の強化」「資本効率の高い経営への転換」に取り組むことで、持続的な成長と企業価値の向上を実現します。 ②全体像目指す姿:高い感性と品質で、ひとりひとりのからだとこころに、美しさと豊かさを提供し、『世界のワコールグループ』として進化・成長する 『世界のワコールグループ』の定義・グループの商品・サービスや社会的課題に係る取組みが、全てのステークホルダーから高い信頼を得ている・グループの人材、資産、ノウハウ、ネットワークを最大限活用し、世界的規模で競争優位性のある事業展開を行っている・革新的且つ高品質な商品・サービスで、新たな顧客体験を創造し続け、世界中のお客さまの生活を豊かに美しくし続けている・全世界の従業員がグループの目標、使命を理解し、その実現に向け、常識や過去にとらわれずに挑戦している 事業領域:「美」「快適」「健康」領域を、「高い感性と品質」で支えられた新たな商品・サービスで深耕・拡大していく実行方針:重点戦略を実行し、事業の拡大や収益性の向上、経営基盤の強化などに取り組み、社会課題の解決と持続的成長の両立を目指すサステナビリティ経営を推進する ③定量目標(2031年3月期): 定量目標については、前中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期)リバイズ(以下、中計リバイズ)の計画未達及び現状の市場環境変化や当社グループの戦略見直しを踏まえ、2022年6月に策定した定量目標から修正を行っています。 当初計画修正計画売上収益2,700億円2,170億円事業利益(事業利益率)270億円(10%)130億円(6.0%)営業利益(営業利益率)270億円(10%)138億円(6.4%)ROE10%7%以上ROIC10%6.5%以上棚卸資産(㈱ワコール:在庫回転率)-2.1回転 ④重点戦略: サステナビリティ経営の推進の方針及び4つの重点戦略については変更しておりませんが、それを実現する施策については現状の市場環境変化や当社グループの戦略見直しを踏まえ、2022年6月に策定した計画から修正を行っています。重点戦略マテリアリティ(重要課題)サステナビリティ経営の推進国内の収益性向上と事業領域拡大収益性向上に向けた事業の再構築及び新規事業の創出・ECシフトの加速と新規チャネル開拓による成長基盤の強化・事業ポートフォリオの見直し及びSCM・コスト構造改革の継続による収益性向上・「美・快適・健康」領域における事業領域拡大と新たな価値創出海外事業の拡大と高収益構造への変革欧州・インド市場での成長、EC強化による収益性向上・デジタルマーケティング高度化による認知拡大・M&A企業に対するPMI推進とシナジー創出・海外の事業運営体制を変更し、実行スピード向上及びエリア戦略を推進グループ経営力の強化グループガバナンスの強化、多様な人材の獲得、育成、活用・ROIC経営実践による事業ポートフォリオマネジメントの推進とガバナンス強化・成長循環につながる人的資本投資の継続、経営戦略に連動したリソースの最適配分資本効率の高い経営への転換資本コストを上回るROE創出及びステークホルダーへの価値配分最適化・ROE7%以上、資本構成の最適化への取り組み・株主還元と成長投資のバランス最適化 (3) 中期経営計画2029(2027年3月期~2029年3月期)①策定背景と目的 当社グループを取り巻く事業環境は、消費環境の変化や原材料価格の高騰、為替変動等の影響を受け、大きく変化しております。中計リバイズにおいては、一部施策の進展は見られたものの、売上収益及び事業利益は計画を下回り、事業全体としての収益力改善及び成長の実現には至りませんでした。この結果は、外部環境の見立ての甘さや変化への対応力に対する柔軟性の欠如に加え、実効力の不足による課題が顕在化したためであると認識しております。これらの事業環境及び経営課題を踏まえ、当社グループは、従来の事業構造を抜本的に見直し、変化する市場環境に対応した事業再構築を通じて、収益基盤の確立と新たな価値創造の両立を図るとともに、資本効率の向上を目指し、「中期経営計画2029」(以下、本中計)を策定しました。 本中計では、国内事業において事業ポートフォリオを見直し、チャネル環境の変化、多様化・高度化する顧客ニーズやトレンドに対応可能なビジネスモデルへの転換を進めるとともにデジタルと自社の強みを活用したブランド戦略及びチャネル戦略の強化に取り組みます。併せて、構造改革室によるモニタリング強化及び課題解決を通じ、施策の実効力向上を図ってまいります。さらに、将来を見据えた先行投資を実施し、新たな価値創造に取り組みます。海外事業では、従来のグローバル本部から欧米本部、中国・アジア本部の二本部体制にすることで、各地域特性を踏まえたエリア成長戦略の強化に加え、意思決定の迅速化、ガバナンス向上、実効力向上を図ってまいります。 また、これらの取り組みに加え、原価及び販管費率の低減や不採算事業の見直しを通じて収益力を向上させるとともに、資産効率の改善及び資本構成の最適化により資本効率の向上を図り、中長期的な企業価値の向上を実現してまいります。②全体像基本方針:既存事業の再構築及び新価値創造の強化により収益力向上と成長基盤を固め、資本効率向上と両輪で中長期的な企業価値向上を目指す重点戦略:(1)国内の収益性向上と事業領域拡大(2)海外事業の拡大と高収益構造への変革■事業の再構築(国内事業/海外事業)・インナーウェアを軸にボディデータを活用しからだとこころのソリューションビジネス「エンパワーメント ソリューション」への進化・コンディショニングウエア「CW-X」の国内外での売上拡大・B2B(卸主体)からD2C(直営/EC)へのチャネル転換・不採算事業の構造的な見直し・ビジネスモデル改革の継続■新価値創造(国内事業)・「SCANBE」の価値創出領域の拡大・「Melooop」研究開発強化、ビジネス拡大、量産化検証・「SPIRAL」唯一無二のワコール文化資産を活用したビジネス拡大(3)グループ経営力の強化・ROIC経営実践による事業ポートフォリオマネジメントの推進とガバナンス強化・成長循環につながる人的資本投資の継続、経営戦略に連動したリソースの最適配分(4)資本効率の高い経営への転換・ROE7%以上、資本構成の最適化への取り組み・株主還元と成長投資のバランス最適化 定量目標(2029年3月期): 本中計では、事業構造の再構築及び新たな価値創造の推進により、収益力の回復と資本効率の改善を図り、最終年度となる2029年3月期において、売上収益2,010億円、事業利益85億円、営業利益93億円、ROE 4.3%以上、ROIC 4.0%以上の達成を目標としています。当該目標は、中計リバイズにおける未達の要因を踏まえ、事業ポートフォリオの見直しやコスト構造改革の継続に加え、成長領域への資源配分の最適化等を通じた各施策の進展による収益性の改善を見込んでいます。 なお、資本効率性の改善を図り、筋肉質な企業体質を実現するために、当社グループではROICマネジメントの導入し、実践しております。全社としての財務目標管理として活用するだけでなく、各グループ会社や事業部門の投下資本に対する収益性を可視化し、事業ポートフォリオの最適化及び投資判断の高度化を図ることで、収益力及び資本効率の改善に取り組んでまいります。 2029年3月期売上収益2,010億円事業利益(事業利益率)85億円(4.2%)営業利益(営業利益率)93億円(4.6%)ROE4.3%以上ROIC4.0%以上EPS145円以上棚卸資産(㈱ワコール:在庫回転率)2.0回転 財務方針:1.収益力の改善を最優先課題として取り組むと同時に、棚卸資産(在庫)の圧縮や政策保有株式の縮減、企業価値向上に寄与しない不動産の整理を進めることで、資本効率を改善しROE向上を実現2.将来成長への投資を優先すると同時に、資本効率の改善に向けて積極的な株主還元を実施 配当方針: 当社は、株主の皆さまへの利益配分について、収益力向上のための積極的な投資による企業価値の向上を図りながら、1株当たり当期利益(EPS)の増加を図るとともに、連結業績を考慮しつつ安定的な配当を実施させていただくことを基本方針としております。キャッシュ・フロー・アロケーション(2027年3月期~2029年3月期): 本中計においては、収益力の向上に努めるとともに、引き続き、棚卸資産の圧縮や政策保有株式の縮減、企業価値向上に寄与しない不動産の整理を進めていきます。また、それにより創出したキャッシュについては、成長投資を優先しつつ、資本効率の向上に向けて、積極的な株主還元を実施する方針です。事業戦略と財務戦略の両面でROEやROIC目標の達成に向けて取り組んでまいります。 2029年3月期計画:キャッシュイン有利子負債、アセットライト450億円政策保有株式売却200億円営業キャッシュ・フロー300億円3カ年 創出キャッシュ 約950億円キャッシュアウト配当還元150億円自己株式取得350億円成長投資450億円 ③「VISION 2030」における中計経営計画2029の位置づけ 中計リバイズ期間は、「VISION 2030」の達成に向けた体質改善フェーズと位置付け、事業構造の見直しやコスト構造改革等の施策を推進してまいりましたが、本業の収益力の回復には課題を残す結果となりました。 これを踏まえ、本中計は、「VISION 2030」の達成に向けた事業再構築フェーズと位置付けており、事業の再構築及び新たな価値創造並びにビジネスモデル改革を推進することで、収益性の改善及び持続的成長に向けた基盤の確立を図る計画です。 また、本中計期間においては、各施策の実効性を高め着実に推進することで、収益力の回復及び資本効率の向上を進めるとともに、その成果を踏まえ、「VISION 2030」の成長移行フェーズにおける持続的成長の実現につなげてまいります。本中計の推進を通じて、経営の実効性を高め、「VISION 2030」に掲げる目標の達成確度の向上を図ります。 ④資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応 当社グループは、本中計及びVISION 2030においても企業価値向上(PBR向上)に向けた施策を推進しています。企業価値向上に向けては、事業の再構築及び新価値創造並びにビジネスモデル改革により収益力の改善を図るとともに、ROICマネジメントの実践を通じた投下資本の効率化及び事業ポートフォリオの最適化を進め、資本効率の向上に取り組みます。 また、株主還元を継続しつつ、将来の成長に向けた投資を強化するとともに、資産及び資本構成の最適化を図ることで、バランスシートの改善も進めます。 これらの取り組みにより、資本コスト(7%程度)を上回るROEの創出及び持続的成長に対する期待の醸成を通じてPERの改善を図り、PBRの向上につなげます。なお、中長期的にはROE10%以上を達成することを目標としています。 (4) 2027年3月期の方針 当社グループは、中長期経営戦略フレーム「VISION 2030」で「高い感性と品質で、ひとりひとりのからだとこころに、美しさと豊かさを提供し、『世界のワコールグループ』として進化・成長する」ことを中長期的に目指す姿として掲げています。2027年3月期については、VISION 2030の重点戦略である「国内の収益性向上と事業領域拡大」「海外事業の拡大と高収益構造への変革」「グループ経営力の強化」「資本効率の高い経営への転換」の4つの取り組みを継続、着実に実行することで、持続的な成長と企業価値向上の実現を目指します。 国内事業においては、「CW-X」の強化や新規チャネル開拓に加え、デジタルサービスによる顧客データ活用を通じて顧客接点の拡大と販売力の強化を推進します。また、サプライチェーン改革を進めるとともに、コスト構造改革も継続し、基礎収益力の回復に取り組みます。加えて社長直轄の専属チーム「構造改革室」を新設し、これらの施策や改革について、モニタリングの強化に加え、課題発生時には組織横断的に解決を主導し、計画達成への実効性向上を図ります。 海外事業については、不透明な事業環境が継続する中、従来体制を見直し、欧米及び中国・アジアの2本部体制へ再編し、エリア戦略の推進、意思決定の迅速化とガバナンス強化を図ります。あわせて、デジタルマーケティング等による顧客接点の拡大を通じてEC成長を推進するとともに、M&A先のPMIによるシナジー創出により、収益性向上と競争力強化に取り組みます。 以上の取り組みにより、2027年3月期の連結業績は、売上収益1,876億円、事業利益5億円、営業利益15億円、税引前利益26億円、親会社の所有者に帰属する当期利益18億円を見込んでいます。売上収益は、国内における商品力強化や新規チャネルの開拓、海外においては買収効果等により増収を見込んでいます。事業利益は、増収による増益を予定しておりますが、営業利益は、前期における固定資産売却益等の計上による反動で、大幅な減益となる見込みです。年間の主要な為替レートは、1米ドル=155.00円、1英ポンド=210.00円、1中国元=22.00円として計画を策定しています。 (5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 当社グループの対処すべき課題は以下のとおりです。 ①国内:市場環境の変化を踏まえた事業構造の変革 女性用インナーウェア市場は、人口動態の変化や消費行動の多様化を背景に縮小傾向にあり、加えて競争環境の激化や購買チャネルの変化が進んでいます。このような事業環境のもと、主力であるインナーウェア事業については、「成長回帰」を前提とするのではなく、市場規模に応じた適切な事業構造への転換を図っていきます。また、これまで培ってきた技術・知見や保有するボディデータなどの強みを生かし、当社グループだからこそ提供できる価値を通じて、利益を創出する事業モデルへの変革を進めてまいります。具体的には、従来の「インナーウェア」から、体型データに基づく「エンパワーメントソリューション」へと事業領域を再定義し、付加価値の高いソリューション提供を強化します。 ②国内:収益力改善に向けたコスト構造改革の継続 基礎収益力の回復を図るため、コスト構造改革を継続します。プライシングについては、原材料費などのコスト動向や需要特性を踏まえ、売上への影響を最小化しながら価格の最適化を行うことで、粗利率の安定化及び改善を図ります。また、生産体制や調達の見直しを通じて、構造的に上昇する製造コストの増加影響を低減するとともに、定番・継続品の比率を高めることで返品等のロス削減や業務効率の向上につなげていきます。これらの取り組みを通じて、選択と集中を徹底し、事業環境の変化に対応した最適なコスト構造の実現を目指します。 ③国内:デジタルと自社の強みを活かしたブランド・顧客戦略の強化 徹底した「顧客起点」でのブランドマネジメントを推進し、提供価値が明確で魅力あるブランドの育成に継続的に取り組みます。また、お客さまとの深く広く長い関係性を構築し、最適な顧客体験を提供するため、顧客起点のDXを推進します。「ワコールメンバーズ」の購買データに加え、「顧客の声」や「販売員の接客に基づく知見」についてもデジタルを活用して分析し、その知見を顧客体験の高度化に活かします。さらに、販売員によるコンサルティングサービスに加え、3D計測サービスやアプリを活用することで、リアルとオンラインを融合した顧客体験を提供するとともに、自社EC経由で実店舗へ取り置き・取り寄せするサービスの展開を強化するなど、多様な接点を通じた顧客体験の向上を図っていきます。 ④海外:グループ経営強化を目的とした事業運営体制の強化 従来のグローバル本部から、HD社長直下の「欧米本部」及び「中国・アジア本部」の2本部体制へ再編し、意思決定から実行までのスピード向上を図るとともに、ガバナンス及びモニタリングの強化を推進します。米国については、2026年4月に買収したGlamorise Foundations, Inc.とのPMIの着実な実行に加え、ECの拡大や「CW-X」を中心とした成長ブランドの育成を進めます。欧州については、2024年9月に買収したBravissimo Group Limitedとのシナジーの最大化、また、新たなチャネルの開拓やEC拡大による成長基盤の強化に努めます。また、中国については、店舗損益管理の厳格化や赤字店舗への対処を徹底するとともに、売上規模に見合った機能・体制の見直しとコストコントロールを通じて、事業効率の向上を図ります。 ⑤ガバナンス:経営管理基盤の強化を通じた収益力と資本効率の改善 資本効率性の改善を図り、筋肉質な企業体質を実現するために、当社グループではROICマネジメントを導入しております。ROICは、全社としての財務目標管理の指標として活用するとともに、成果を的確に測定するパフォーマンスマネジメントの手段として位置づけ、現場の改善活動と投資家をはじめとするステークホルダーが期待する収益力・資本効率の向上を定量的に結び付け、経営管理の実効性を高めることで、持続的な企業価値の向上に努めます。 ⑥その他の課題 気候変動などの環境問題や人権問題の深刻さは増しており、適切な対応と予防が必要であると認識しております。当社グループは引き続き、複雑化・多様化する社会課題への取り組みを将来の「成長機会」と捉え、事業を通じて「社会課題の解決」と「持続的成長」を両立する「サステナビリティ経営」を推進してまいります。マテリアリティ(重要課題)の項目として定めた「顧客への提供価値の最大化」、「従業員ひとりひとりの成長と働きがいの高い組織の構築」、「次世代に向けた地球環境の保全」、「すべての人が自分らしく活躍できる社会の実現」、「持続的成長の実現に向けたガバナンスの強化」への取り組みを着実に推進することで、「社会課題の解決」と「持続的成長」の両立を図り、企業価値の向上に努めます。
対処すべき課題
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。これらの将来予測には、不確定な変動要素が含まれており、実際の成果や業績などは、記載の見通しとは異なる可能性があります。 (1) グループ経営理念 ワコールグループは、純粋持株会社である当社のもと、日本、米国、欧州、中国、東南アジアを中心に、インナーウェア事業などを展開し、従前から「人々の美しさに貢献することで、広く社会に寄与すること」を目指して活動を続けてきました。そして、2022年には、「世界中のあらゆる人々の豊かな生活に貢献すること」、「画一的な外見美ではなく、内面も含めた自分らしさの実現をお手伝いすること」、「環境や人権などさまざまな社会課題の解決に努めること」を目指し、現代社会において私たちが果たすべき社会的使命を「ミッション」として定義しました。この「ミッション」及び70年を超える歴史の中で受け継いできた「創業の精神」を礎として、各事業会社が複雑化・多様化する社会課題への取り組みを将来の「成長機会」として捉え、事業を通じて「社会課題の解決」と「持続的成長」の両立を目指す「サステナビリティ経営」を推進することで、企業価値の向上に努めていきます。 また、私たちの事業活動は、一人ひとりのお客さまの声に耳を傾け、謙虚に自らを変革し、人と人とが互いに信頼し合う「相互信頼」を積み重ねることで成り立っています。企業経営の透明性を高めることに継続して取り組み、公正性、独立性を確保することを通じて、「株主」「顧客」「従業員」「取引先」「地域社会」など、すべてのステークホルダーと「相互信頼」の関係を構築することで、社会になくてはならない存在を目指していきます。 ミッション ひとりひとりが 自分らしく美しく いられるように世の中が 自信と思いやりに あふれるようにからだに こころにいちばん近いところで 寄り添い続けます からだのここちよさ、こころの美しさ。それはまるで引力のように、自分と社会とを結びつけてくれる。ありたい自分を知り、一歩ずつ近づくこと。そこで生まれた自信は、多様な人々を受け入れる優しさを育む。その優しさは、やがて社会や地球へも広がり、思いやりあふれる豊かな未来へとつながっていく。からだに こころに いちばん近いところで、一人ひとりの輝きに寄り添い続けてきたワコールだから。変化に挑み、成長を続けることで、世界を美しくする力になれる。私たちは、そう信じています。 グローバル・コーポレートメッセージComfortable inside. Confident outside. ※「グローバル・コーポレートメッセージ」は、ワコールグループ共通のコミュニケーションメッセージです。詳しくは、当社ウェブサイトの「ワコールグループについて」をご覧ください。https://www.wacoalholdings.jp/group/ 創業の精神 目標世の女性に美しくなって貰う事によって広く社会に寄与する事こそわが社の理想であり目標であります 社是わが社は 相互信頼を基調とした格調の高い社風を確立し一丸となって 世界のワコールを目指し不断の前進を続けよう 経営の基本方針1. 愛される商品を作ります2. 時代の要求する新製品を開発します3. 大いなる将来を考え正々堂々と営業します4. より良きワコールはより良き社員によって造られます5. 失敗を恐れず成功を自惚れません 役員・従業員の行動指針(アクション) 「誰かの幸せを想おう」顧客、取引先、ともに働く社員など、周囲の人の幸せを考えられているだろうか「好奇心を持って、五感を使い観察しよう」最近、新たな発見や気づきはあっただろうか「なぜ?何のために?を考えよう」真意や根本原因を理解できているだろうか「異なる意見を尊重しよう」謙虚に人の意見に耳を傾け、忖度抜きで、建設的に議論をしているだろうか「未来志向で判断しよう」目先の結果だけではなく、豊かな未来の実現のために行動しているだろうか「まずやってみよう」リスクを恐れて立ち止まっていないだろうか 挑戦する人を応援しているだろうか「仲間と力を合わせよう」大きな成果を生むために、仲間と切磋琢磨し、共創できているだろうか「誠実に、責任を持ち行動しよう」相手に感謝を伝えているだろうか 人のせいにしていないだろうか (2) 中長期経営戦略フレーム「VISION 2030」①策定背景と目的 当社グループは、2022年6月に経営理念の実践に向けて、自社が抱える事業課題やお客さまの価値観、社会・環境の変化を見据えつつ、長期的なゴールからのバックキャスティングにより、2030年に向けたグループの将来ビジョンを示す「VISION 2030」を策定しました。「VISION 2030」では、「高い感性と品質で、ひとりひとりのからだとこころに、美しさと豊かさを提供し、『世界のワコールグループ』として進化・成長する」ことを中長期的に目指す姿として掲げています。また、「国内の収益性向上と事業領域拡大」「海外事業の拡大と高収益構造への変革」「グループ経営力の強化」「資本効率の高い経営への転換」に取り組むことで、持続的な成長と企業価値の向上を実現します。 ②全体像目指す姿:高い感性と品質で、ひとりひとりのからだとこころに、美しさと豊かさを提供し、『世界のワコールグループ』として進化・成長する 『世界のワコールグループ』の定義・グループの商品・サービスや社会的課題に係る取組みが、全てのステークホルダーから高い信頼を得ている・グループの人材、資産、ノウハウ、ネットワークを最大限活用し、世界的規模で競争優位性のある事業展開を行っている・革新的且つ高品質な商品・サービスで、新たな顧客体験を創造し続け、世界中のお客さまの生活を豊かに美しくし続けている・全世界の従業員がグループの目標、使命を理解し、その実現に向け、常識や過去にとらわれずに挑戦している 事業領域:「美」「快適」「健康」領域を、「高い感性と品質」で支えられた新たな商品・サービスで深耕・拡大していく実行方針:重点戦略を実行し、事業の拡大や収益性の向上、経営基盤の強化などに取り組み、社会課題の解決と持続的成長の両立を目指すサステナビリティ経営を推進する ③定量目標(2031年3月期): 定量目標については、前中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期)リバイズ(以下、中計リバイズ)の計画未達及び現状の市場環境変化や当社グループの戦略見直しを踏まえ、2022年6月に策定した定量目標から修正を行っています。 当初計画修正計画売上収益2,700億円2,170億円事業利益(事業利益率)270億円(10%)130億円(6.0%)営業利益(営業利益率)270億円(10%)138億円(6.4%)ROE10%7%以上ROIC10%6.5%以上棚卸資産(㈱ワコール:在庫回転率)-2.1回転 ④重点戦略: サステナビリティ経営の推進の方針及び4つの重点戦略については変更しておりませんが、それを実現する施策については現状の市場環境変化や当社グループの戦略見直しを踏まえ、2022年6月に策定した計画から修正を行っています。重点戦略マテリアリティ(重要課題)サステナビリティ経営の推進国内の収益性向上と事業領域拡大収益性向上に向けた事業の再構築及び新規事業の創出・ECシフトの加速と新規チャネル開拓による成長基盤の強化・事業ポートフォリオの見直し及びSCM・コスト構造改革の継続による収益性向上・「美・快適・健康」領域における事業領域拡大と新たな価値創出海外事業の拡大と高収益構造への変革欧州・インド市場での成長、EC強化による収益性向上・デジタルマーケティング高度化による認知拡大・M&A企業に対するPMI推進とシナジー創出・海外の事業運営体制を変更し、実行スピード向上及びエリア戦略を推進グループ経営力の強化グループガバナンスの強化、多様な人材の獲得、育成、活用・ROIC経営実践による事業ポートフォリオマネジメントの推進とガバナンス強化・成長循環につながる人的資本投資の継続、経営戦略に連動したリソースの最適配分資本効率の高い経営への転換資本コストを上回るROE創出及びステークホルダーへの価値配分最適化・ROE7%以上、資本構成の最適化への取り組み・株主還元と成長投資のバランス最適化 (3) 中期経営計画2029(2027年3月期~2029年3月期)①策定背景と目的 当社グループを取り巻く事業環境は、消費環境の変化や原材料価格の高騰、為替変動等の影響を受け、大きく変化しております。中計リバイズにおいては、一部施策の進展は見られたものの、売上収益及び事業利益は計画を下回り、事業全体としての収益力改善及び成長の実現には至りませんでした。この結果は、外部環境の見立ての甘さや変化への対応力に対する柔軟性の欠如に加え、実効力の不足による課題が顕在化したためであると認識しております。これらの事業環境及び経営課題を踏まえ、当社グループは、従来の事業構造を抜本的に見直し、変化する市場環境に対応した事業再構築を通じて、収益基盤の確立と新たな価値創造の両立を図るとともに、資本効率の向上を目指し、「中期経営計画2029」(以下、本中計)を策定しました。 本中計では、国内事業において事業ポートフォリオを見直し、チャネル環境の変化、多様化・高度化する顧客ニーズやトレンドに対応可能なビジネスモデルへの転換を進めるとともにデジタルと自社の強みを活用したブランド戦略及びチャネル戦略の強化に取り組みます。併せて、構造改革室によるモニタリング強化及び課題解決を通じ、施策の実効力向上を図ってまいります。さらに、将来を見据えた先行投資を実施し、新たな価値創造に取り組みます。海外事業では、従来のグローバル本部から欧米本部、中国・アジア本部の二本部体制にすることで、各地域特性を踏まえたエリア成長戦略の強化に加え、意思決定の迅速化、ガバナンス向上、実効力向上を図ってまいります。 また、これらの取り組みに加え、原価及び販管費率の低減や不採算事業の見直しを通じて収益力を向上させるとともに、資産効率の改善及び資本構成の最適化により資本効率の向上を図り、中長期的な企業価値の向上を実現してまいります。②全体像基本方針:既存事業の再構築及び新価値創造の強化により収益力向上と成長基盤を固め、資本効率向上と両輪で中長期的な企業価値向上を目指す重点戦略:(1)国内の収益性向上と事業領域拡大(2)海外事業の拡大と高収益構造への変革■事業の再構築(国内事業/海外事業)・インナーウェアを軸にボディデータを活用しからだとこころのソリューションビジネス「エンパワーメント ソリューション」への進化・コンディショニングウエア「CW-X」の国内外での売上拡大・B2B(卸主体)からD2C(直営/EC)へのチャネル転換・不採算事業の構造的な見直し・ビジネスモデル改革の継続■新価値創造(国内事業)・「SCANBE」の価値創出領域の拡大・「Melooop」研究開発強化、ビジネス拡大、量産化検証・「SPIRAL」唯一無二のワコール文化資産を活用したビジネス拡大(3)グループ経営力の強化・ROIC経営実践による事業ポートフォリオマネジメントの推進とガバナンス強化・成長循環につながる人的資本投資の継続、経営戦略に連動したリソースの最適配分(4)資本効率の高い経営への転換・ROE7%以上、資本構成の最適化への取り組み・株主還元と成長投資のバランス最適化 定量目標(2029年3月期): 本中計では、事業構造の再構築及び新たな価値創造の推進により、収益力の回復と資本効率の改善を図り、最終年度となる2029年3月期において、売上収益2,010億円、事業利益85億円、営業利益93億円、ROE 4.3%以上、ROIC 4.0%以上の達成を目標としています。当該目標は、中計リバイズにおける未達の要因を踏まえ、事業ポートフォリオの見直しやコスト構造改革の継続に加え、成長領域への資源配分の最適化等を通じた各施策の進展による収益性の改善を見込んでいます。 なお、資本効率性の改善を図り、筋肉質な企業体質を実現するために、当社グループではROICマネジメントの導入し、実践しております。全社としての財務目標管理として活用するだけでなく、各グループ会社や事業部門の投下資本に対する収益性を可視化し、事業ポートフォリオの最適化及び投資判断の高度化を図ることで、収益力及び資本効率の改善に取り組んでまいります。 2029年3月期売上収益2,010億円事業利益(事業利益率)85億円(4.2%)営業利益(営業利益率)93億円(4.6%)ROE4.3%以上ROIC4.0%以上EPS145円以上棚卸資産(㈱ワコール:在庫回転率)2.0回転 財務方針:1.収益力の改善を最優先課題として取り組むと同時に、棚卸資産(在庫)の圧縮や政策保有株式の縮減、企業価値向上に寄与しない不動産の整理を進めることで、資本効率を改善しROE向上を実現2.将来成長への投資を優先すると同時に、資本効率の改善に向けて積極的な株主還元を実施 配当方針: 当社は、株主の皆さまへの利益配分について、収益力向上のための積極的な投資による企業価値の向上を図りながら、1株当たり当期利益(EPS)の増加を図るとともに、連結業績を考慮しつつ安定的な配当を実施させていただくことを基本方針としております。キャッシュ・フロー・アロケーション(2027年3月期~2029年3月期): 本中計においては、収益力の向上に努めるとともに、引き続き、棚卸資産の圧縮や政策保有株式の縮減、企業価値向上に寄与しない不動産の整理を進めていきます。また、それにより創出したキャッシュについては、成長投資を優先しつつ、資本効率の向上に向けて、積極的な株主還元を実施する方針です。事業戦略と財務戦略の両面でROEやROIC目標の達成に向けて取り組んでまいります。 2029年3月期計画:キャッシュイン有利子負債、アセットライト450億円政策保有株式売却200億円営業キャッシュ・フロー300億円3カ年 創出キャッシュ 約950億円キャッシュアウト配当還元150億円自己株式取得350億円成長投資450億円 ③「VISION 2030」における中計経営計画2029の位置づけ 中計リバイズ期間は、「VISION 2030」の達成に向けた体質改善フェーズと位置付け、事業構造の見直しやコスト構造改革等の施策を推進してまいりましたが、本業の収益力の回復には課題を残す結果となりました。 これを踏まえ、本中計は、「VISION 2030」の達成に向けた事業再構築フェーズと位置付けており、事業の再構築及び新たな価値創造並びにビジネスモデル改革を推進することで、収益性の改善及び持続的成長に向けた基盤の確立を図る計画です。 また、本中計期間においては、各施策の実効性を高め着実に推進することで、収益力の回復及び資本効率の向上を進めるとともに、その成果を踏まえ、「VISION 2030」の成長移行フェーズにおける持続的成長の実現につなげてまいります。本中計の推進を通じて、経営の実効性を高め、「VISION 2030」に掲げる目標の達成確度の向上を図ります。 ④資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応 当社グループは、本中計及びVISION 2030においても企業価値向上(PBR向上)に向けた施策を推進しています。企業価値向上に向けては、事業の再構築及び新価値創造並びにビジネスモデル改革により収益力の改善を図るとともに、ROICマネジメントの実践を通じた投下資本の効率化及び事業ポートフォリオの最適化を進め、資本効率の向上に取り組みます。 また、株主還元を継続しつつ、将来の成長に向けた投資を強化するとともに、資産及び資本構成の最適化を図ることで、バランスシートの改善も進めます。 これらの取り組みにより、資本コスト(7%程度)を上回るROEの創出及び持続的成長に対する期待の醸成を通じてPERの改善を図り、PBRの向上につなげます。なお、中長期的にはROE10%以上を達成することを目標としています。 (4) 2027年3月期の方針 当社グループは、中長期経営戦略フレーム「VISION 2030」で「高い感性と品質で、ひとりひとりのからだとこころに、美しさと豊かさを提供し、『世界のワコールグループ』として進化・成長する」ことを中長期的に目指す姿として掲げています。2027年3月期については、VISION 2030の重点戦略である「国内の収益性向上と事業領域拡大」「海外事業の拡大と高収益構造への変革」「グループ経営力の強化」「資本効率の高い経営への転換」の4つの取り組みを継続、着実に実行することで、持続的な成長と企業価値向上の実現を目指します。 国内事業においては、「CW-X」の強化や新規チャネル開拓に加え、デジタルサービスによる顧客データ活用を通じて顧客接点の拡大と販売力の強化を推進します。また、サプライチェーン改革を進めるとともに、コスト構造改革も継続し、基礎収益力の回復に取り組みます。加えて社長直轄の専属チーム「構造改革室」を新設し、これらの施策や改革について、モニタリングの強化に加え、課題発生時には組織横断的に解決を主導し、計画達成への実効性向上を図ります。 海外事業については、不透明な事業環境が継続する中、従来体制を見直し、欧米及び中国・アジアの2本部体制へ再編し、エリア戦略の推進、意思決定の迅速化とガバナンス強化を図ります。あわせて、デジタルマーケティング等による顧客接点の拡大を通じてEC成長を推進するとともに、M&A先のPMIによるシナジー創出により、収益性向上と競争力強化に取り組みます。 以上の取り組みにより、2027年3月期の連結業績は、売上収益1,876億円、事業利益5億円、営業利益15億円、税引前利益26億円、親会社の所有者に帰属する当期利益18億円を見込んでいます。売上収益は、国内における商品力強化や新規チャネルの開拓、海外においては買収効果等により増収を見込んでいます。事業利益は、増収による増益を予定しておりますが、営業利益は、前期における固定資産売却益等の計上による反動で、大幅な減益となる見込みです。年間の主要な為替レートは、1米ドル=155.00円、1英ポンド=210.00円、1中国元=22.00円として計画を策定しています。 (5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 当社グループの対処すべき課題は以下のとおりです。 ①国内:市場環境の変化を踏まえた事業構造の変革 女性用インナーウェア市場は、人口動態の変化や消費行動の多様化を背景に縮小傾向にあり、加えて競争環境の激化や購買チャネルの変化が進んでいます。このような事業環境のもと、主力であるインナーウェア事業については、「成長回帰」を前提とするのではなく、市場規模に応じた適切な事業構造への転換を図っていきます。また、これまで培ってきた技術・知見や保有するボディデータなどの強みを生かし、当社グループだからこそ提供できる価値を通じて、利益を創出する事業モデルへの変革を進めてまいります。具体的には、従来の「インナーウェア」から、体型データに基づく「エンパワーメントソリューション」へと事業領域を再定義し、付加価値の高いソリューション提供を強化します。 ②国内:収益力改善に向けたコスト構造改革の継続 基礎収益力の回復を図るため、コスト構造改革を継続します。プライシングについては、原材料費などのコスト動向や需要特性を踏まえ、売上への影響を最小化しながら価格の最適化を行うことで、粗利率の安定化及び改善を図ります。また、生産体制や調達の見直しを通じて、構造的に上昇する製造コストの増加影響を低減するとともに、定番・継続品の比率を高めることで返品等のロス削減や業務効率の向上につなげていきます。これらの取り組みを通じて、選択と集中を徹底し、事業環境の変化に対応した最適なコスト構造の実現を目指します。 ③国内:デジタルと自社の強みを活かしたブランド・顧客戦略の強化 徹底した「顧客起点」でのブランドマネジメントを推進し、提供価値が明確で魅力あるブランドの育成に継続的に取り組みます。また、お客さまとの深く広く長い関係性を構築し、最適な顧客体験を提供するため、顧客起点のDXを推進します。「ワコールメンバーズ」の購買データに加え、「顧客の声」や「販売員の接客に基づく知見」についてもデジタルを活用して分析し、その知見を顧客体験の高度化に活かします。さらに、販売員によるコンサルティングサービスに加え、3D計測サービスやアプリを活用することで、リアルとオンラインを融合した顧客体験を提供するとともに、自社EC経由で実店舗へ取り置き・取り寄せするサービスの展開を強化するなど、多様な接点を通じた顧客体験の向上を図っていきます。 ④海外:グループ経営強化を目的とした事業運営体制の強化 従来のグローバル本部から、HD社長直下の「欧米本部」及び「中国・アジア本部」の2本部体制へ再編し、意思決定から実行までのスピード向上を図るとともに、ガバナンス及びモニタリングの強化を推進します。米国については、2026年4月に買収したGlamorise Foundations, Inc.とのPMIの着実な実行に加え、ECの拡大や「CW-X」を中心とした成長ブランドの育成を進めます。欧州については、2024年9月に買収したBravissimo Group Limitedとのシナジーの最大化、また、新たなチャネルの開拓やEC拡大による成長基盤の強化に努めます。また、中国については、店舗損益管理の厳格化や赤字店舗への対処を徹底するとともに、売上規模に見合った機能・体制の見直しとコストコントロールを通じて、事業効率の向上を図ります。 ⑤ガバナンス:経営管理基盤の強化を通じた収益力と資本効率の改善 資本効率性の改善を図り、筋肉質な企業体質を実現するために、当社グループではROICマネジメントを導入しております。ROICは、全社としての財務目標管理の指標として活用するとともに、成果を的確に測定するパフォーマンスマネジメントの手段として位置づけ、現場の改善活動と投資家をはじめとするステークホルダーが期待する収益力・資本効率の向上を定量的に結び付け、経営管理の実効性を高めることで、持続的な企業価値の向上に努めます。 ⑥その他の課題 気候変動などの環境問題や人権問題の深刻さは増しており、適切な対応と予防が必要であると認識しております。当社グループは引き続き、複雑化・多様化する社会課題への取り組みを将来の「成長機会」と捉え、事業を通じて「社会課題の解決」と「持続的成長」を両立する「サステナビリティ経営」を推進してまいります。マテリアリティ(重要課題)の項目として定めた「顧客への提供価値の最大化」、「従業員ひとりひとりの成長と働きがいの高い組織の構築」、「次世代に向けた地球環境の保全」、「すべての人が自分らしく活躍できる社会の実現」、「持続的成長の実現に向けたガバナンスの強化」への取り組みを着実に推進することで、「社会課題の解決」と「持続的成長」の両立を図り、企業価値の向上に努めます。
MD&A(経営者による分析)
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。 (1)経営成績(単位:百万円) 2025年3月期実績2026年3月期実績前期比 増減額増減率売上収益173,896171,510△2,386△1.4% 売上原価76,45273,279△3,173△4.2% 売上総利益97,44498,231+787+0.8% 販売費及び一般管理費100,88198,692△2,189△2.2%事業損失(△)△3,437△461+2,976- その他の収益11,21124,080+12,869+114.8% その他の費用4,4863,742△744△16.6%営業利益3,28819,877+16,589+504.5% 金融収益2,1702,075△95△4.4% 金融費用591785+194+32.8% 持分法による投資損益(△損失)813△1,514△2,327-税引前利益5,68019,653+13,973+246.0%親会社の所有者に帰属する当期利益7,21813,124+5,906+81.8% 当連結会計年度(2025年4月1日~2026年3月31日)における景況は、国内は、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果を背景に緩やかな回復が期待される一方で、中東情勢の緊迫化や米国の通商政策の動向、金融資本市場の変動等により先行き不透明な状況となりました。海外においては、米国は景気の拡大基調が緩やかに継続したものの、エネルギー価格の高騰や供給制約に伴う物価上昇リスクなどを背景に、足元では個人消費の鈍化が見られるなど、景気の拡大ペースが低下しました。欧州は、輸出関連分野を中心に持ち直しの動きが見られたものの、エネルギー価格の高騰が逆風となり、その動きは緩やかなものに留まりました。中国では、政策効果により一部で回復の動きが見られるものの、個人消費はやや回復が遅れています。このように、当社グループを取り巻く経済状況は地域ごとにばらつきがありました。 このような環境において、当社グループは、引き続き「収益力の改善に向けたビジネスモデル改革」、「“VISION2030”達成に向けた成長戦略」、「ROICマネジメントの導入」、「アセットライト化の推進」に取り組みました。国内では、中核ブランドの「WACOAL(ワコール)」は一部施策の効果が発現し下期以降に回復基調に転じたほか、高価格帯ブランドの「Salute(サルート)」は顧客投票によって選ばれた復刻ラインが好調に推移する等、前期を大幅に上回り、商品戦略やプロモーション戦略の成果が見え始めました。また、コンディショニングウェアの「CW-X(シーダブリュー・エックス)」は、大谷翔平選手の着用による露出拡大が奏功し、アームサポーターが大きく伸長する等、好調を維持しました。また、顧客戦略の一環として2025年7月に自社EC上で提供を開始した「わたしに合うブラ診断」の利用者は2026年3月末時点で累計50万人を突破し、多くのお客様へのパーソナライズされた購買体験の提供を実現しております。海外では、2025年6月に発生した物流倉庫火災の影響を受けた英国のBravissimo Group Limited(以下、Bravissimo Group)において、物流体制の早期復旧に努め、2025年9月に自社ECにおける出荷を順次再開し、2026年2月には当該物流倉庫を完全復旧しました。また、米国における売上拡大と大きいサイズ市場のシェア獲得及び収益性の改善を目指し、2026年3月30日にワコールインターナショナル(米国)の子会社Wacoal Direct Corp.を通じGlamorise Foundations, Inc.(以下、Glamorise社)の買収を決定しました。Glamorise社はプラスサイズ領域に特化したブランドであり、ワコールインターナショナル(米国)とは異なるポジションを有します。また、売上の大部分をECチャネルが占めており、米国におけるEC事業の加速を実現します。なお、本件買収が当期の連結業績に与える影響は軽微であります。そのほか、新京都ビルの売却や自己株式の取得等、継続的に資産効率の向上に取り組みました。 売上収益については、主要国におけるレディスインナーウェア等の販売の伸び悩みに加え、前期から当期にかけて事業ポートフォリオを見直し、一部の不採算事業を売却した結果、当期への減収影響が生じました。利益面については、不採算事業の対処やBravissimo Groupの買収に伴う小売売上比率の上昇により売上総利益率が改善したほか、各社においてコストコントロールを実施しました。なお、営業利益については、前述の新京都ビル等の固定資産売却益(195億45百万円)が寄与した一方、主力チャネルの成長鈍化、米国関税やインフレによる販管費の増加に伴う利益率の圧迫を踏まえ、ワコールヨーロッパに係るのれんの使用価値を再評価し、減損損失(10億6百万円)を計上しました。 以上の結果、当連結会計年度の連結売上収益は1,715億10百万円(前期比1.4%減)、事業利益は4億61百万円の事業損失(前期は34億37百万円の事業損失)、営業利益は198億77百万円(前期比504.5%増)、税引前利益は196億53百万円(前期比246.0%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は131億24百万円(前期比81.8%増)となりました。 なお、当該期間の為替換算レートは、1米ドル=150.77円(前期152.58円)、1英ポンド=202.10円(同194.61円)、1中国元=21.25円(同21.10円)です。 報告セグメントの経営成績を示すと次のとおりであります。(単位:百万円) 2025年3月期2026年3月期前期比 実績構成比実績構成比増減額増減率売上収益合計173,896100.0%171,510100.0%△2,386△1.4% ワコール事業(国内)87,82850.5%87,72351.2%△105△0.1% ワコール事業(海外)67,23738.7%68,46839.9%+1,231+1.8% ピーチ・ジョン事業10,4696.0%11,1446.5%+675+6.4% その他8,3624.8%4,1752.4%△4,187△50.1% (単位:百万円) 2025年3月期2026年3月期前期比 実績売上比実績売上比増減額増減率営業利益(△損失)3,2881.9%19,87711.6%+16,589+504.5% ワコール事業(国内)2,9703.4%18,79121.4%+15,821+532.7% ワコール事業(海外)4190.6%4880.7%+69+16.5% ピーチ・ジョン事業△266-1491.3%+415- その他1652.0%44910.8%+284+172.1% ① ワコール事業(国内) 当連結会計年度は、ブランドや事業、チャネルごとに強弱が入り混じる結果となりました。中核事業会社である㈱ワコールにおいては実店舗の閉店や来店客数の減少などの影響を受けたものの、EC事業の伸長や、一部のブランドの商品・プロモーション戦略等の奏功により売上収益は前期を上回りました。一方、販売会社である㈱ウンナナクールや㈱ランジェノエルの低調が響き、セグメント全体では前期を下回る結果となりました。 ブランド別では、プロモーションを強化し展開店舗を拡大した「CW-X」や、ノンワイヤーブラを中心に据える「GOCOCi(ゴコチ)」、シンクロブラトップが好調を維持する「Wing(ウイング)」に加え、高価格帯ブランドの「Salute」が前期を超える水準で推移し、前期にリブランディングを実施した「WACOAL」についても、下期以降に回復基調に転じました。さらに、スパイラル事業においても、新規出店の好調が寄与し売上が伸長しました。一方、直営店を中心に展開する「AMPHI(アンフィ)」、㈱ウンナナクール、㈱ランジェノエルに加え、百貨店を中心に展開するナイトウェア類については店舗閉店や売場縮小、来店客数減少の影響を受けて販売が伸び悩みました。 チャネル別では、実店舗については、得意先の閉店影響は縮小傾向にあるものの、来店客数減少の影響が大きく、低調に推移しました。他方、ECについては、自社EC・他社ECともに堅調な成長を継続しており、実店舗の苦戦を補っております。 これらの結果、当該セグメントの売上収益は877億23百万円(前期比0.1%減)となりました。営業利益は、新京都ビル等の固定資産売却益の計上が寄与したことから、187億91百万円(前期比532.7%増)と大幅な増益となりました。 ② ワコール事業(海外) ワコールインターナショナル(米国)は、実店舗の市場縮小に加え、EC事業の成長が想定を下回り、売上収益は前期を下回りました。チャネル別では、百貨店において大手得意先の閉店影響により厳しい状況が継続しました。ECについては、消費者への販売自体は堅調であったものの、主要ECプラットフォームにおいて厳しい仕入抑制を受け、納品は低調に推移しました。なお、主要生産拠点であるドミニカからのブラジャーの輸入に係る関税率が2026年2月末以降に0%へと変更されたため、関税による原価高騰の影響は2月末以降縮小傾向となりました。 ワコールヨーロッパは、2024年9月に買収したBravissimo Groupの売上が寄与し、売上収益は前期を上回りました。なお、2025年6月に発生した物流倉庫における火災により、収益へのマイナス影響がありましたが、当該倉庫には火災保険を付保しており、在庫や建物等の現物損失に加え、出荷停止や在庫不足に伴う逸失利益等についても保険金により大部分が補填されました。 中国ワコールは、消費者の価格感応度の高まりにより、実店舗・ECともに依然として厳しい状況が継続しました。店舗イメージの刷新に向けた改装や、利益率の改善及びブランド価値訴求を目的としたプロパー販売の推進などに取り組み、一部成果が見られたものの、施策効果の発現には至らず、売上は前期を下回りました。 これらの結果、当該セグメントの売上収益は684億68百万円(前期比1.8%増)となりました。営業利益は、Glamorise社の買収に係る一時費用及びワコールヨーロッパに係るのれんの減損損失を計上し、4億88百万円(前期比16.5%増)となりました。 ③ ピーチ・ジョン事業 当連結会計年度は、前期に引き続き新規顧客の獲得強化に重点を置いたコミュニケーション施策や商品戦略が奏功し、ECを中心に全てのチャネルで売上が伸長しました。商品面では、定番商品の「ナイスバディブラ」シリーズが全体をけん引したほか、秋冬シーズンにタレントを起用した「リボンモチーフブラ」やナイトウェア等も堅調に拡大しました。また、セール販売についても好調に推移し、全体を下支えしました。 これらの結果、当該セグメントの売上収益は111億44百万円(前期比6.4%増)となりました。営業利益は、1億49百万円(前期は2億66百万円の営業損失)となりました。 ④ その他 当連結会計年度における当該セグメントの売上収益は、七彩、ルシアンの連結除外が影響し、41億75百万円(前期比50.1%減)となりました。一方、連結子会社における一部事業の譲渡益が寄与し、営業利益は、4億49百万円(前期比172.1%増)と大幅な増益となりました。 (参考)主要子会社の売上収益・営業利益(△損失)(単位:百万円)売上収益2025年3月期2026年3月期前期比実績構成比実績構成比増減額増減率 ワコール82,36947.4%82,99848.4%+629+0.8% ワコールインターナショナル(米国)24,91714.3%22,95213.4%△1,965△7.9% ワコールヨーロッパ25,20114.5%30,82918.0%+5,628+22.3% 中国ワコール9,0855.2%7,4814.4%△1,604△17.7% ピーチ・ジョン10,4696.0%11,1446.5%+675+6.4%※外部売上収益のみを記載しております。(単位:百万円)営業利益(△損失)2025年3月期2026年3月期前期比実績売上比実績売上比増減額増減率 ワコール6,1807.5%18,54922.3%+12,369+200.1% ワコールインターナショナル(米国)6812.7%△335-△1,016- ワコールヨーロッパ8573.4%2,1807.1%+1,323+154.4% 中国ワコール△1,844-△853-+991- ピーチ・ジョン△266-1491.3%+415- (2)財政状態 当連結会計年度末における総資産は、現金及び現金同等物が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比して195億70百万円増加し、2,923億15百万円となりました。 負債は、借入金や営業債務及びその他の債務が減少したものの、未払法人所得税や繰延税金負債が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比して22億45百万円増加し、798億70百万円となりました。 親会社の所有者に帰属する持分は、新京都ビルの売却により利益剰余金が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比して175億51百万円増加し、2,095億98百万円となりました。 以上の結果により、当連結会計年度末における親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末に比して1.3ポイント増加し、71.7%となりました。 (3)キャッシュ・フローの状況 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比して207億51百万円増加し、441億70百万円となりました。(営業活動によるキャッシュ・フロー) 当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、当期利益129億41百万円に減価償却費及び償却費や法人所得税費用などによる調整を加えた金額に対して、資産及び負債の増減などによる調整を行った結果、84億87百万円の収入(前期に比し35億22百万円の収入増)となりました。(投資活動によるキャッシュ・フロー) 当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産等の売却などにより、360億97百万円の収入(前期に比し267億15百万円の収入増)となりました。(財務活動によるキャッシュ・フロー) 当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得などにより、262億86百万円の支出(前期に比し33億34百万円の支出増)となりました。 (4)生産、受注及び販売の実績①生産実績 当連結会計年度の生産実績を報告セグメントごとに示すと、次のとおりであります。なお、ピーチ・ジョン事業については、すべて販売会社のため該当事項はありません。また、その他のセグメントについては、生産実績を定義することが困難であるため「生産実績」は記載しておりません。報告セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)ワコール事業(国内)33,37494.4ワコール事業(海外)17,42395.9合計50,79794.9(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。2.生産実績の金額は製造原価によっております。 ②受注実績 当社グループは、主として販売計画に基づいた生産を行っております。一部の商品では受注生産を行っておりますが、受注高及び受注残高の金額に重要性がないため、記載を省略しております。 ③販売実績 当連結会計年度の販売実績を報告セグメントごとに示すと、次のとおりであります。報告セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)ワコール事業(国内)87,72399.9ワコール事業(海外)68,468101.8ピーチ・ジョン事業11,144106.4その他4,17549.9合計171,51098.6(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。2.その他の販売実績が減少したのは、主に㈱ルシアン株式の譲渡により同社を連結の範囲から除外したことによるものであります。3.総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。 (5)資本の財源及び資金の流動性 当社グループの資金の流動性は、主に営業活動による純現金収入によります。営業活動による純現金収入により、外部からの多額の借入や、その他の資金調達手段に頼らずに、大部分の運転資金の確保や設備投資、配当金の支払が可能となっております。ただし、金融機関に借入枠は設けており、2026年3月31日現在の借入枠の合計は521億円、借入枠を設けている借入金の残高は119億22百万円となっており、主な残高の内訳としては当社が77億80百万円、WACOAL EUROPE LTD.が33億88百万円となっております。 これらの借入枠の期限は、ほとんどが自動的に更新されるものであり、現状更新を妨げるような事象は発生していないと考えております。仮にいずれかの子会社において借入が不可能になったとしても、グループの各社から資金を供給することが可能であると考えております。また、資金需要について大きな季節変動はありません。 また、子会社からの親会社への配当に係る規制は特に無いと考えております。 今後も目的や収益性を厳格に見積もることで、資金の流動性を確保していきます。 ①設備投資 「第3 設備の状況 1 設備投資等の概要」に記載しております。 ②キャッシュ・フロー「(3)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。 (6)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 当社グループの連結財務諸表は、IFRS会計基準に準拠して作成されております。これらの連結財務諸表の作成にあたっては、当社グループは重要な見積りや仮定を行う必要があります。 なお、重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。
事業リスク
- 市場構造の変化による影響百貨店や量販店といった大規模小売店の減少は、これらのチャネルでの売上シェアが高いワコールグループの業績に大きな影響を与える可能性があります。また、消費者接点の減少はブランド認知度の低下や顧客の購買意欲の減退につながる恐れがあります。EC市場の拡大に対応できない場合、販売機会の損失や市場シェアの低下を招くリスクがあります。
- 調達価格の上昇リスクサプライチェーンの変化や原材料価格の高騰、人件費の上昇、輸送コストの増加などにより、製品の仕入価格が上昇する可能性があります。これにより、製品の原価が上がり、販売価格への転嫁が難しい場合には利益率の低下を招き、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。特に国際的な調達・生産を行っているため、為替変動の影響も受けやすいと考えられます。
- 競争激化とブランド価値低下の可能性国内外市場での競合激化、低価格品の台頭、異業種からの新規参入などにより、市場競争が激しくなるリスクがあります。適切な商品・サービス提案や宣伝販促ができない場合、ブランドの想起率や認知度が低下し、販売シェアを奪われる可能性があります。これにより、売上高の減少や広告宣伝費の増加を招き、長期的に業績が低下する恐れがあります。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「事業等のリスク」の全文を見る(年度切替)
3【事業等のリスク】 当社のリスク管理基本規程において「リスク」とは、「当社グループにおける事業目的の達成を阻害する要因すべて」と定義しております。また「リスク管理」とは、リスクの識別・評価を行い、リスクを低減する活動を行うとともに、その活動をモニタリングすることによって、継続的に改善を行う一連の措置(平常時のリスク管理)、及び経営に対する重大な障害・事故等の緊急事態への迅速な対応(緊急時のリスク管理)を指すと定めております。 この規程に基づいてリスクを適切に認識し、発生の可能性や影響度の評価を行い、優先度を定め、リスクへの対処を決定したうえで、リスク顕在化の可能性をできるだけ低減する活動を行っております。併せて、リスクが顕在化した場合には、発生する障害・事故へ迅速な対応を行い、人びとや社会をはじめとするステークホルダーへの影響を最小限に留めるべく、リスク管理を推進しております。(1)リスク管理体制 当連結会計年度(2026年3月期)における当社グループのリスク管理体制は、“リスク管理統括責任者(代表取締役社長執行役員)”、“企業倫理・リスク管理委員会の委員長(代表取締役副社長執行役員)”を基軸として、下図の通り、“企業倫理・リスク管理委員会(委員長が指名する委員による構成)”、また、企業倫理・リスク管理委員会の下部組織として、全社横断的な重要課題について活動方針策定やモニタリングを行う“リスク主管部署”、及び“リスク対応部会(企業倫理・リスク管理委員会が決定/設置)”、さらに、企業倫理・リスク管理委員会が定めるリスク管理(抽出、評価、対応、モニタリング)を行う“リスク管理組織”及び“リスク管理責任者”によって構成されております。 “企業倫理・リスク管理委員会”では、それぞれの“リスク管理組織”から抽出されたリスクについて、発生の可能性と影響度の観点から評価を実施し、当社グループの経営に重大な影響が想定されると評価したリスク項目を特定のうえ、毎年、“リスク管理統括責任者(代表取締役社長執行役員)”に提示し「グループ重要リスク」としての承認を踏まえております。その後、「グループ重要リスク」の項目ごとに、“リスク主管部署”、あるいは“リスク対応部会”を通してリスクを軽減化する対応策への取り組みを進め、併せて、“企業倫理・リスク管理委員会”を定期的(四半期ごと)、及び必要に応じて臨時に開催し「リスク管理体制」が有効に機能しているかどうかのモニタリングを行っております。 (2)事業等のリスク 当該有価証券報告書に記載している「第2 事業の状況」等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に、重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクとその対策は後述の通りであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。 また、前述のとおり、“企業倫理・リスク管理委員会”では当社グループの経営に重大な影響が想定されると評価・特定したリスク項目を、“リスク管理統括責任者(代表取締役社長執行役員)”へ提示し承認を受けることによって「グループ重要リスク」を定めております。なお、下図の項印、★印は「経営環境・事業戦略」に関するリスク、■印は「事業運営上」のリスクであります。 (2)-1 経営環境・事業戦略に関するリスク市場の構造変化□ 発生の可能性:高□ 影響度:大● リスクの内容百貨店・量販店をはじめとする大規模小売店や商業施設の減少、施設上層階への売場移動、売場の縮小は、百貨店・量販店の売上シェアが高い当社グループの業績に大きな影響を与える可能性があります。また、肌着売場の展開がない商業施設などの市場構造の変化は、既存業態の再編、営業政策の変更等をもたらし、グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。● 対応策小売市場の構造変化(オンラインモールやフリマアプリの市場拡大)が進んでおり、旧来の百貨店、量販店及び専門店といった卸売店舗の売上シェアは漸減していくと予測しています。ワコールではEC事業拡大を目的に、既存のECプラットフォームでのブランド拡大に加え、新規のECプラットフォームへの出店や、オンラインとオフラインをシームレスでつなぐOMO型店舗「WACOAL is」の展開をおこなっています。一方、顧客ニーズの明確な商品を短いリードタイムで開発・提供するとともに、需要に応じて柔軟に生産・供給することで、売れ筋商品の店頭充足率を上げ、欠品による販売機会ロスを低減しています。また、「最適化されたチャネル別ブランド及び商品構成」と「継続・定番品を柱とする需要連動型生産」を組み合わせることで、売上機会の損失を最小化させ、さらなる売上拡大と在庫効率の向上を目指しています。 調達価格の上昇□ 発生の可能性:高□ 影響度:大● リスクの内容サプライチェーンの構造変化が進行し、原材料の値上がりや生産地の人件費高騰、輸送コストの上昇等により仕入価格が上昇した結果、業績に影響を及ぼす可能性があります。● 対応策材料の調達や製品の生産においては、適切に品質とコストの両面を照合しながら、ベトナムやミャンマーをはじめとするASEANの国々や地域での調達・生産の比重を増やしています。併せて、製品の企画・設計段階から、資材・カラー集約を前提に、可能な限り、材料品種を増やさない取り組みや、海外における地産地消の取り組み、廃棄に至る製品・材料の最少化への取り組み、省力化機器導入による生産効率化への取り組みなどを進めています。さらには、製品検査工程と材料品質基準のシンプル化・適正化、商品ブランド再編による生産ロット拡大と作業能率向上などにも努めています。他方、国内縫製会社においては、高い縫製技術を継承しつつ、顧客ニーズや市場変化の変化に迅速に対応できる需要連動型生産体制を整備することにより、競争優位性強化と事業効率向上の両立を目指します。同時に、新技術や新設備のグループ内工場における汎用的活用の実現や技術支援といった役割を果たし、短納期・高難度・小ロット生産に対応できる生産体制を広く整備し、事業効果の強化に取り組んでいます。 競争・競合環境の変化□ 発生の可能性:中□ 影響度:大● リスクの内容国内外の市場において、競合会社、低価格品、また、異業種からの新規参入者などにより、市場競争が激化する中、当社が販売戦略の見直しを実施するも、商品・サービス・宣伝販促・業態開発の適切な提案ができず、結果としてブランドの想起率・認知率が低下、販売シェアが奪われ、長期的に業績が低下する可能性があります。● 対応策競争激化は、価格の下落、広告宣伝費の増加、売上高及び市場シェアの減少等につながり、当社グループの事業、業績及び財政状態に重大な影響を及ぼします。㈱ワコールの収益力の改善と成長軌道への回帰を実現するためには、「顧客起点」を軸に、長年に亘り蓄積した顧客のデータベース、様々な体型にかかる研究・知見、心地よさを実現する製造技術、パーソナライズなニーズに寄り添いサービスを提供できる組織力といった「ワコールの強み」に、デジタル技術を用いて、顧客の「自分らしさ」を引き出しエンパワーメントする商品とサービスを提供し続けることが欠かせません。ワコールブランドのリブランディングの効果発現の早期化に加え、強みが活かせるシニア・高補正・高価格帯等の市場強化に努めています。さらに、海外事業においては、欧州では売れ筋品番に絞ったアプローチ「Most Loved Styles」を充実させることで採用品番比率や品番効率を向上、米国ではEC売上拡大に向けて顧客が購入しやすいスマートサイズ商品を展開、中国では売れ筋商品にキャッチアップした商品構成へ短いリードタイムで変更し、顧客起点の品揃えの徹底を進めています。 消費者の価値観変化□ 発生の可能性:中□ 影響度:大● リスクの内容ブランド戦略、商品、サービスが消費者の価値観変化に合わずに、顧客を獲得できず、もしくは顧客を失って経営が悪化する可能性があります。また、ブランドマネジメント、マーケティングミックスの失敗により、若年層顧客の囲い込みが適わず、一方で既存顧客の離反が進み、ブランド価値を毀損する可能性があります。さらには、資源価格高騰、賃金の上昇、為替相場の変動を受けて原材料・製品の輸入価格が上昇する中、商品の価格に見合った顧客価値の提供が実現できないと、新規顧客の獲得の失敗や既存顧客の逸失を招く可能性があります。● 対応策顧客戦略においては、デジタルを活用し、最適な顧客体験の提供を進めています。店舗接点施策である3D計測「SCANBE」に、「わたしを知る骨格診断」「わたしに合うブラ診断」「からだバランス診断」サービスを新たに加え、お客さまと深く広く長い関係性を構築しています。チャネル戦略においては、自社ECから商品を「取り置き・取り寄せ」できるサービスを開始することで、卸売チャネルの効率的な運用に取り組んでいます。ブランド戦略においては、ブランドの価値向上、顧客体験価値の最大化、需要連動型のSCM構築の継続に加え、CW-Xの大型プロモーションや新たな業態・領域の開拓により、各ブランドの拡大に取り組んでいます。 新しい市場・顧客の開拓□ 発生の可能性:中□ 影響度:大● リスクの内容顧客の下着やファッションに対する相対的な関心の低下、日本の人口減少や少子高齢化による国内市場の縮小を踏まえて、当社グループは、海外市場の開拓や新業態・新分野への進出等、新規市場の開拓に取り組んでいるものの、この先、一層多様化するであろう消費者の価値観に応えきれず、計画した成果が出せないとグループ業績に影響を与える可能性があります。● 対応策国内では、当社ブランドとの接点が少ない潜在顧客、とりわけ若年層やアフォーダブル価格志向層に対し、購入意欲を喚起できる商品・マーケティング施策が打ち出せず、新規の顧客獲得に苦慮しています。新規顧客の獲得や既存顧客のロイヤルカスタマー化を目的に、ワコールメンバーズや公式アプリなどのデジタルを活用した流入接点開発、OMO施策の更なる拡大やアクション・属性に応じたポイント付与などのパーソナライズされた顧客体験を強化しています。また、販売員やお客様の声の見える化に着手し、一層多様化するであろう消費者の価値観に対応するよう努めています。一方、欧州では、Bravissimo社のECサイトで「WACOAL」ブランドの取り扱いを開始したり、米国自社ECサイトで英国「elomi」ブランド取り扱いを開始するなど、当社グループが展開するブランドポートフォリオの事業成長をねらいに、デジタルマーケティングへの投資を積極的に実施することで、EC重視のビジネスモデルへの転換を加速させています。米国では、自社ECにおいてCRMシステムを活用したロイヤリティプログラム、パーソナライズされた広告施策に着手しています。中国では、全方位的なチャネル戦略を見直し、ECを中心とした利益率の高い販売チャネルへの選択と集中を行なっています。あわせて、ライブ販売・WEB広告・SNS等のデジタルツールを活用し、ワコールがもつ商品の強みを拡散しています。 人材・人員の確保□ 発生の可能性:高□ 影響度:中● リスクの内容特にものづくり(企画力・技術力・研究開発力)、IT・デジタル、販売員、海外経営・物流において人材・人員の確保、育成ができないと、今後の成長や競合会社に対する優位性を作り出せず、グループの業績が低迷する可能性があります。また、販売員の効率的配置ができないと、人件費効率の低下やモチベーションの低下が起こり、業績の低迷を及ぼす可能性があります。● 対応策当社グループではジョブ型採用をはじめ、新しい採用手段の導入による人材確保に併せて、集団型講義やオンラインでの専門知識研修の実施やOJT、他社と合同で実施する異業種クロスラーニングの開催などといった、実地研修機会の充実によって人材の育成を行っています。また、キャリア採用の比重を拡大するほか、リファラル採用にも注力し多様な人材の確保による活性化も進めています。また、初任給の見直しや基本給ベースアップの実施をはじめ、職務・役割をベースとしたメリハリのある処遇(報酬体系)を実現すべく、職務価値・成果に応じた処遇、役割給の見直しなどといった人的資本への投資姿勢を鮮明にした制度改革を推し進め、事業の中核を担う人材、将来価値を生む人材の確保を図っています。 (2)-2 事業運営上のリスク情報システム可用性障害の発生□ 発生の可能性:高□ 影響度:大● リスクの内容システム開発のミスや遅延、また、重要なシステムに障害が発生することで、事業継続が困難になってしまうと、得意先・顧客はじめ、すべてのステークホルダーからの信頼を失う可能性があります。標的型メールの開封や外部公開IT機器に対するサイバー攻撃によるランサムウェア感染、あるいは天災被害等により、基幹システムやWEB販売サイト等の稼働が不可能となった場合、ファイルサーバーや従業員のPCから機密情報が流出した場合、事業への悪影響が出る可能性があります。● 対応策当社では「情報セキュリティ基本方針」、「情報セキュリティ規程」等を定め、すべての従業員に対して情報保護の必要性と責任についての理解促進を図っています。“企業倫理・リスク管理委員会”の傘下に「情報セキュリティ部会」を設置し、情報セキュリティ上のリスクの特定、調査・分析を行うとともに、インシデントの未然防止および発生時の影響最小化に向けた体制を整備しています。具体的には、グループ全体の情報セキュリティ水準の向上を目的として、本社主導で各社外部公開IT資産を把握・監視、多言語教育ツールを展開、各社でのセキュリティ対策状況を把握およびモニタリング等を実施し、継続的な改善に取り組んでいます。加えて、サイバーインシデントの発生に備え、対応手順や事業継続に関する取組を含め、被害の拡大防止および早期復旧を図るための体制整備を進めています。 情報管理の不備□ 発生の可能性:中□ 影響度:大● リスクの内容情報管理の不備により、機密情報や個人情報の漏えいや紛失が発生すると、事業活動上、不利益を被るばかりか、社会的信用の失墜、事業運営の停止といった重大な損失影響が出る可能性があります。● 対応策当社では「情報セキュリティ規程」、「個人情報保護規程」等を定め、取り扱うすべての情報を、機密性、一貫性及び可用性の観点から適切に分類し、保護および漏えい防止に取り組んでいます。また、当社グループの重要情報一覧表の整備等を通じて経営、事業・販売戦略、製品開発、自社ノウハウ、個人情報、情報システム等の区分ごとに管理および保護の徹底を図っています。当社グループは事業活動上、多数の顧客に関わる個人情報を取り扱っています。日本ワコールではデジタルを活用し、一人ひとりに最適な顧客体験を提供する「顧客戦略」を成長の柱と位置付けており、収集した個人情報を含むデジタルデータを基盤としたビジネスモデルを構築しています。さらに、海外においても顧客の個人情報を直接取得するEC事業を強化しており、個人情報保護は当社グループ事業活動における最重要課題の一つです。“企業倫理・リスク管理委員会”の傘下に設置した「情報セキュリティ部会」では個人情報の保護・管理の強化、関連法規制への対応、従業員への教育等を含め、個人情報を外部の脅威から守るために、国内外の関係会社を対象に管理状況の調査と対策における指導・助言を継続的に実施しています。 債券相場・金利の変動□ 発生の可能性:中□ 影響度:大● リスクの内容保有する上場株式や債券等の市場価値が下落、また、金利上昇や経済環境の不確実性によって回収可能額が減少することによって、無形資産(のれんや商標権)の減損が発生する可能性があります。他方、年金資産の評価減・積立不足は追加拠出や引当が必要となりグループ業績に影響を与える可能性があります。● 対応策当社及び当社の特定完全子会社の㈱ワコールが保有している株式の状況は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (5)株式の保有状況」を参照ください。中期経営計画(リバイズ)期間(2024年3月期~2026年3月期)において当社は、資産効率向上の観点から、政策保有株式を300億円(2023年3月末時価)縮減させ、対連結純資産比10%未満とする方針とし、当中期経営計画期間中に19銘柄・約251億円(2023年3月末時価)の処分・縮減を進めましたが、株価の上昇もあり、2026年3月期末においての対連結純資産比率は19.3%となりました。今後、2029年3月期末までに政策保有株式を約200億円(2026年3月末時価)縮減させ、対連結純資産比15%未満とする方針です。他方、退職給付費用及び債務は、年金資産の期待運用利回りや将来の退職給付債務算出に用いる年金数理上の仮定に基づき算出していますが、有価証券の相場並びに金利環境の変化等により、実際の結果が仮定と異なる場合、または仮定に変化があった場合には、退職給付費用及び債務が増加するリスクがあります。当社は国内社債の利回りに基づいて割引率を設定しています。割引率については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記23.従業員給付」を参照ください。企業年金のアセットオーナーとして期待される機能を発揮できるよう、財務・人事・経理等の部門長らで構成する年金委員会を設置し、四半期単位で資産運用方針や政策的資産構成割合等を検討すると同時に、外部の運用コンサルティング会社を起用し専門能力・知見を補完しています。 自然災害・事故等の発生□ 発生の可能性:中□ 影響度:大● リスクの内容地震などの自然災害や火災・爆発等が発生し事業所・生産拠点が被害を受ける、あるいは、従業員が被災する可能性があります。また、交通網の遮断や電力供給の停止、インターネット回線の不通等、大型小売店や直営店舗、通販サイトや物流網の被災により事業活動に支障が出る可能性があります。● 対応策首都直下型地震をはじめとする大規模事故の緊急事態に備え、“企業倫理・リスク管理委員会”の傘下に設置した「BCP・災害対策部会」では、主要な事業拠点が被災した際のBCP策定を順次整備するなど、予防・減災、応急・初動、復旧・復興の観点で事業継続マネジメントに取り組んでいます。具体的には建物の耐震化、データ関連サーバーのクラウド化、災害発生時の従業員安否確認システム、テレワークなどといった環境整備に加え、社会的責任を踏まえて、緊急時においてもサービスや製品の安定供給ができるよう、販売事業所の業務バックアップ体制の確立や生産拠点の分散化配置によって、リスクの低減を図っています。 企業倫理・コンプライアンスの姿勢□ 発生の可能性:高□ 影響度:中● リスクの内容第三者から、サプライチェーンにおける人権、労働、環境問題等を指摘・公表され、事業活動に影響を与える、企業価値を毀損する可能性があります。また、企業倫理・コンプライアンスに反する行為が増加する、あるいは、ソーシャルメディアやブログ等のWEBサイト上を含めた広告表現や発言に問題が発生することによって、社会的な信頼を失い、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。● 対応策当社グループを取り巻く国内外の法令や規制等への違反、社会的要請に反する行為等があった場合は、処罰や社会的な信用の低下などにより、経済的・社会的な影響を受けるリスクがあります。「企業倫理・ワコールの行動指針」を定め、従業員に頒布し周知徹底を図るだけでなく、“企業倫理・リスク管理委員会”の傘下に設置した「コンプライアンス部会」の活動を通じて、従業員への啓発活動、内部通報制度、外部専門機関による法令ヘルスチェックなどの施策を拡充し、法令順守の強化に努めています。2026年3月期は新任課長対象コンプライアンス研修の実施に加え、着任10年以上の管理職対象コンプライアンス研修を実施したほか、e-ラーニングの実施や、グループコンプライアンス通信(こんぷらかわら版)の定期配信を継続するなどの啓発活動を進めました。また、当社グループの事業領域において特に注力すべき点として、サプライチェーンでの労務・人権問題が挙げられます。過去には人権NPOから連結子会社の発注先である海外縫製工場における労務・人権問題について指摘を受けたことや、国内において二次製造委託先の外国人技能実習生に対する超過勤務手当の未払いが発覚したことがありました。現在は“サステナビリティ委員会”の傘下に設置した「CSR調達部会」の活動を通じ、人権の尊重、環境・社会との調和、法令の順守、労働慣行、事業慣行の観点などから、現地監査を行い、是正・改善計画の策定とモニタリングを行う取り組みを高めています。当連結会計年度においては、全ての製造委託先等の工場に対して自己評価を通じた「CSR調達ガイドライン」に定める内容の遵守状況の把握と分析評価フィードバックを実施すると共に、CSR調達活動の製造委託先一覧を当社ホームページで開示しています。 知的財産権の侵害・被侵害□ 発生の可能性:高□ 影響度:中● リスクの内容知的財産権を侵害されたり侵害したりすることで、訴訟や経済的損失が起きる可能性があります。また、近年、インターネット上で当社ブランドを詐称した「なりすまし広告・偽サイトへの誘導」が拡がっています。注意喚起や排除措置といった適切な対策を怠れば、消費者や市場からの信頼失墜を招きかねず、戦略的な知的財産権の保護や活用ができないでいると、事業に影響を及ぼす可能性があります。● 対応策当社グループは知的財産権があらゆる事業活動に関わり、競争優位性を確保する重要な資産であると認識しています。ブランドや、独自の技術、デザイン、サービス等を、自社の競争力の源泉として知的財産権で保護・活用できるよう、一方で他社の知的財産権を尊重し侵害しないよう、従業員に対しセミナーによる教育や業界知財動向の共有を行い、正しい理解を促しています。また、外部専門家との連携を強化するなど、知的財産担当部門の知見を高めDXやCX戦略、新規事業における知的財産権の保護、活用を進めています。また、国内外における模倣商品の出現や、他社による商標、特許等の無断使用といった知的財産権の侵害には、侵害者に対して権利主張を行い、厳格に対応を行うこととしています。最近ではEC事業のボーダーレス化に伴ったブランド価値の毀損、とりわけ、SNSを中心とした当社ブランドを騙る「なりすまし」の広告・販売の出現について、消費者への注意喚起の実施、京都府警察と連携した販路等の追跡と監視、排除措置の実施等に力を注ぐとともに、日本国内に留まらない消費者保護、ブランド保護対策に努めています。この問題に対しては、同じ被害を受けている他社と協働し、知的財産業界団体としてSNS運営者や政府と連携した対策に取り組んでいます。 デジタルマーケティングの加速による表現訴求、品質表示・取扱表示等の記載□ 発生の可能性:高□ 影響度:中● リスクの内容デジタルマーケティングにおいて、従業員参加型を含むSNS上の発信内容、サステナビリティを巡るWEBサイト上の表現や発言に問題が発生することによって、ネガティブキャンペーンや発信者への誹謗中傷をはじめとする社会問題を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。他方、品質表示や薬機法等の法令違反やステルスマーケティング等の不適切な表現は社会的な信用を損なう可能性があります。また、商品の回収・表示変更のコスト発生、販売中止によって経済的な損失影響が出る可能性があります。● 対応策消費者が適正に商品を選択し使用するための品質表示については、商品そのものに付帯させる法定表示に始まり、店頭やメディアでの広告・宣伝、販促表現、知的財産保護表示など多岐にわたっており、リスクが顕在化しやすい事案だと認識しています。また、加熱するデジタルマーケティングを背景に、SNSでの当社の発信や参加者の言動が社会的な批判に晒される、あるいは、昨今においては、その内容の真偽に関わらず拡散されるリスクも認識しています。“企業倫理・リスク管理委員会”傘下の「品質保証審議会」、「品質管理委員会」の活動を通して、表示内容を決定する部門でのダブルチェックを前提にした表示確認体制の整備、表示決定のプロセスにおける可能な限りのシステム化、表示ミス発生時の迅速な対応、問題発生後の再発防止のための徹底的な原因究明と対策の実施といった、一連のサイクルをルール化し運用しています。また、品質表示に関わる社内啓発活動と担当者教育を定期的に実施しています。サステナビリティを巡るWEBサイト上の表現や発言においても、“サステナビリティ委員会”や関連する部門でチェックを行う体制を整備し活動をすることで、社会的な使命を果たすよう努めています。併せて、国内外の関係会社ごとの事業環境に照らしたSNS運用規程を定めて周知徹底を行うとともに、マーケティングやコミュニケーション部門の従業員を対象に、訴求表現内容の事前確認・適否判断を行うための教育を推進しています。加えて当社ブランドを騙る「なりすまし」の広告・販売に対して、消費者への注意喚起の実施だけでなく、販路の追跡と監視、排除措置の実施等に毅然として注力しています。このほか、独禁法、景表法、薬機法などと絡めたガイドライン各種の制定と改訂、e-ラーニングやセミナー開催による従業員を対象にした教育の実施などによってリスクの軽減を図っています。また、機能・効能表現においては、商品化計画部門と研究部門、品質保証部門間の連携フローと併せて表記ルールの再整備を行い、外部の機関を交えたエビデンスデータの確認体制を整えています。 設計・製造上の品質保証□ 発生の可能性:中□ 影響度:中● リスクの内容不良品を販売することや商品が人体へ危害を及ぼすこと等により、お客さま等への補償や商品回収等のコストが発生する、当社が高品質の商品を提供するというレピュテーションが損なわれ社会的信用を失うといった、業績への悪影響を及ぼす可能性があります。● 対応策高品質な商品をグローバルに提供できることが、当社グループの強みの一つです。“企業倫理・リスク管理委員会”の傘下に「品質保証審議会」を設置し、安全性ガイドラインを整備すると同時に、製品企画・設計・開発時点での安全性確認ルールの順守、製造時の検査の徹底、問題発生時の原因追及と再発防止策の策定に取り組んでいます。併せて、こうした活動・情報内容については、グループの国内外関係会社へ水平展開・共有化を図ったり、お申し出のあった商品を展示する品質展を開催することで、品質意識の高揚、全体での管理体制の底上げを行っています。また、「品質保証審議会」の傘下では、商品化計画を担う部門ごとのメンバー選出による「品質管理委員会」を運営し、個別課題への対策フォローアップ、品質管理全般に対する社内教育を実施しています。他方、生産拠点の現場では、定めた品質管理・検査の徹底のみならず、製品受入ロックシステム(材料基準達成製品のみの受け入れ)の運用による基準未達品の排除、検査人員の技量の標準化に取り組んでいます。 新興国の社会情勢変動□ 発生の可能性:中□ 影響度:中● リスクの内容新興国に事業拠点を構える当社グループは、政治的不安定状態、法改正や制度変更、ストライキの発生、人材の確保難などによって材料調達や生産が滞る、自国産業保護政策(輸入関税、外資規制等)が継続し事業効率の改善が遅れる、あるいは新規の多額投資を必要とするなど、事業業績に影響を与える可能性があります。● 対応策各国・地域の法律・規制の動向には常に十分な注意を払い、現地情報の収集・分析に努めています。現地の“リスク管理責任者”と連携し、地域の実情を把握し、必要に応じ外部の弁護士、コンサルタントなど、専門機関の協力を得て対応を行うよう整備と運用を図っています。軍事政権による掌握が続くミャンマーでは法律・規制の動向に加え、人権課題への対応についても注視しています。また、地政学的なリスクも見据え、適切な生産拠点の分散を行いリスクの軽減化に努めています。このほか、高い輸入関税が適用されるインドでは、国内における商品企画・生産比率を高めることで競争優位性を強化するよう努めています。 税務の管理□ 発生の可能性:中□ 影響度:中● リスクの内容税制改正や移転価格の調査等による多額の課税がなされた場合には、風評被害の他、当社グループの財政状況及び業績に影響を及ぼす可能性があります。● 対応策繰延税金資産については、現行の会計基準に従い、将来の課税所得を合理的に見積もったうえで計上しています。将来の課税所得見積額の変更や税制改正に伴う税率の変更等により、繰延税金資産が減少し、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼすリスクがあります。これを踏まえて、当社では、適宜、経営環境の変化等に照らし、将来の課税所得の見積もりに関する見直しを行い、回収可能性を合理的に判断しています。事業を展開する国・地域の法令、国際税務関連法規を順守し、透明性の高い税務管理を行い、ステークホルダーからの信頼を得ることをねらいに「税務行動指針」を策定しています。この指針では、国内外の連結子会社を対象に、税務の最新情報入手や研修による啓発活動を含めたグループ税務体制の構築をはじめ、不確実な税務ポジションへの対応、優遇税制の適用、グループ会社間取引、租税回避行為の禁止、税務に関するディスクロージャー等のガイドラインを示しています。また、同指針に記載したガイドラインの運用状況については、IFRIC23の指針に基づいた対応状況と併せて、国内外の連結子会社から、事業年度末に報告書を受けることによってモニタリングを行っています。このほか、税制改正やBEPSをはじめ国際税務に関する動向を把握し、適宜、国内外の連結子会社と最新情報を共有するなど、当社グループにおける税務体制の整備に努めています。