6501

日立製作所(6501)は何で稼いでいるか — 事業の柱と依存度

電気機器 電機・精密

事業の概要

  • 社会インフラの変革
    日立製作所は、最先端のIT(情報技術)、社会インフラを動かすOT(運用・制御技術)、高品質・高信頼のプロダクト(製品)を組み合わせることで、社会インフラの変革に貢献しています。これは、鉄道、電力、水処理などの社会を支える基盤に、デジタル技術を融合させて新たな価値を生み出すビジネスモデルです。例えば、鉄道システムの保守・運用をデジタル化し、効率化やコスト削減を実現しています。
  • デジタルソリューションの提供
    日立は、Lumada(ルマーダ)というデジタルソリューション、サービス、テクノロジーの総称を核に、顧客のデータから新たな価値を創出しています。Lumadaは、日立の持つ幅広い製品やシステム(インストールベース)をデジタル資産と捉え、AIと専門知識(ドメインナレッジ)を活用してデータを価値に変換するデジタルサービスを提供します。これにより、顧客の課題解決や社会全体の成長に貢献しています。
  • 幅広い事業活動
    日立グループは、連結子会社618社、持分法適用会社376社を含む994社から成り、製品の開発、生産、販売、サービスまで幅広い事業活動を展開しています。主要な事業セグメントは「デジタルシステム&サービス」「グリーンエナジー&モビリティ」「コネクティブインダストリーズ」の3つで、ITソリューション、エネルギー、鉄道、ビルシステム、家電、産業機器など多岐にわたる分野で収益を上げています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
セグメント構成
  • デジタルシステム&サービス
    このセグメントは、システムインテグレーション、コンサルティング、クラウドサービスなどのデジタルソリューション、ストレージやサーバなどのITプロダクツ、ソフトウェア、ATMなどを提供しています。日立ソリューションズや日立システムズなどが主要な関係会社です。生成AIの進化やDX需要の拡大を背景に、AI関連需要が急速に拡大しており、日立グループ全体のLumada事業を牽引する重要な稼ぎ頭となっています。
  • グリーンエナジー&モビリティ(2025年4月よりエナジーとモビリティに分割)
    このセグメントは、パワーグリッド、再生可能エネルギー、原子力などのエネルギーソリューションと、鉄道システムを提供しています。日立エナジーや日立レールなどが主要な関係会社です。気候変動対応や地政学リスクの高まりにより、エネルギー転換が加速し、電力網整備やクリーンエネルギー拡大、鉄道の環境負荷低減への需要が高まっており、グローバルでの成長が期待される分野です。
  • コネクティブインダストリーズ
    このセグメントは、エレベーターやエスカレーターなどのビルシステム、家電や空調などの生活・エコシステム、半導体製造装置や医用分析装置などの計測分析システム、産業・流通ソリューション、水・環境ソリューション、産業用機器などを提供しています。日立ビルシステムや日立ハイテクなどが主要な関係会社です。幅広い産業分野と社会インフラを支える多様な製品・サービスを展開しており、Lumadaとの連携により高付加価値化を進めています。
有価証券報告書「事業の内容」の全文を見る(年度切替)
FY2026|2,893 文字
3【事業の内容】 2026年3月31日現在、当社及び関係会社823社(連結子会社606社、持分法適用会社217社)から成る当グループは、「デジタルシステム&サービス」「エナジー」「モビリティ」「コネクティブインダストリーズ」の4つのセクターを成長分野として位置付け、関連するビジネスユニットを各セクターに配置しています。また、「その他」を加えた合計5セグメントにわたって、当グループは、製品の開発、生産、販売、サービスに至る幅広い事業活動を展開しています。 当グループは、最先端のデジタル技術としてのIT、190か国に広がる現場の知見に基づく制御・運用技術(OT)、116年にわたり磨き続けてきた高品質なプロダクトを併せ持つ世界でも類を見ない企業です。事業を通じて幅広い業界の現場で得たドメインナレッジを活かし、「社会インフラをデジタルで革新し続けるグローバルリーダー」をめざして世界中の社会インフラの現場が抱える課題の解決に挑んでいます。 社会やビジネスが生み出すデータが増え続ける現在、これらのデータから新たな価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するためのエンジンが日立のLumada(ルマーダ)です。Lumadaは、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション、サービス、テクノロジーの総称であり、顧客の持つデータに光をあてて新たな価値や知見を創出し、顧客や社会全体の課題解決や成長に貢献することを目的としています。Lumadaという名称は、“illuminate(照らす・輝かせる)”+“data(データ)”に由来しています。2016年にLumada事業を立ち上げて以来、LumadaはAIとドメインナレッジの活用により進化を重ね、Lumada3.0として展開しています。 Lumada3.0においては、日立の強みであるグローバルに展開するプロダクトやITシステムといったインストールベースを、データや価値を生み出す資産としての「デジタライズドアセット」と位置づけています。これらのデジタライズドアセットからリアルタイムに収集されるデータを、日立のドメインナレッジとAIを用いて分析し、顧客や社会の課題解決に資する「デジタルサービス」として提供しています。さらに、これらデジタルサービスの提供は、日立のプロダクトの拡販や、他社のインストールベースを含めたデータの収集・解析の拡大にも繋がり、デジタライズドアセットのさらなる拡充に寄与します。このような価値創出の循環を通じて、デジタル技術を活用した価値提供の拡大と社会課題の解決に取り組んでいます。 Lumada3.0におけるデジタルサービスの代表例が、AIで社会インフラを革新する次世代ソリューション群「HMAX」です。HMAXは、AIとデータに日立のドメインナレッジを掛け合わせることで、分野ごとの課題に対応するソリューション群であり、継続的に価値提供を行うリカーリング型のサービスです。Lumada事業の中核を成すソリューションとして、モビリティ、エネルギー、インダストリーなどの業界に向けて展開を進めています。 日立は、Lumada3.0により、社会インフラをデジタルで革新し続けるグローバルリーダーをめざします。 各セグメントにおける主な事業内容と当社のビジネスユニット(BU)及び主要な関係会社の位置付けは、概ね次のとおりです。 (2026年3月31日現在) セグメント主な製品・サービスBU及び主要な関係会社デジタルシステム&サービス・デジタルソリューション(システムインテグレーション、クラウドサービス、コンサルティングサービス)・ITプロダクツ(ストレージ、サーバ)・ソフトウェア・ATM〔BU〕社会BU金融BUAI&ソフトウェアサービスBUデジタルエンジニアリング&AIソリューションBU 〔連結子会社〕日立チャネルソリューションズ日立情報通信エンジニアリング日立ソリューションズ日立システムズ日立ヴァンタラGlobalLogic Worldwide HoldingsHitachi DigitalHitachi Digital ServicesHitachi Payment ServicesHitachi VantaraHitachi Vantara Manufacturing 〔持分法適用会社〕国際電気エナジー・エネルギーソリューション(パワーグリッド、原子力)〔BU〕原子力BUパワーグリッドBU 〔連結子会社〕日立GEベルノバニュークリアエナジー日立プラントコンストラクションHitachi Energyモビリティ・鉄道システム〔BU〕鉄道BU 〔連結子会社〕Hitachi Railコネクティブインダストリーズ・ビルシステム(エレベーター、エスカレーター)・生活・エコシステム(家電、空調)・産業機器・ソリューション・計測分析システム(半導体製造装置、医用分析装置)・産業・流通ソリューション・水・環境ソリューション〔BU〕アーバンシステムBUインダストリアルプロダクツ&サービスBUインダストリアルAIBU 〔連結子会社〕日立ビルシステム日立グローバルライフソリューションズ日立ハイテク日立産機システム日立インダストリアルプロダクツ日立産業制御ソリューションズ日立プラントサービス日立パワーソリューションズ日立電梯(中国)Hitachi Global Air Power USHitachi Industrial Holdings AmericasJR Technology Group 〔持分法適用会社〕Arcelik Hitachi Home Appliances セグメント主な製品・サービスBU及び主要な関係会社その他・不動産の管理・売買・賃貸・その他〔連結子会社〕日立リアルエステートパートナーズHitachi AmericaHitachi Asia日立(中国)Hitachi EuropeHitachi India(注)1.2026年4月1日付で事業群の再編を行いました。これに伴い、デジタルシステム&サービスセグメントに属していた社会BU及び金融BUは、デジタルサービスBUに再編されました。また、コネクティブインダストリーズセグメントに属していたアーバンシステムBU、インダストリアルプロダクツ&サービスBU及びインダストリアルAIBUは、インダストリアルソリューションBU、インダストリアルプロダクツBU及びアーバンソリューション&サービスBUに再編されました。2.Hitachi America, Ltd.、Hitachi Asia Ltd.、日立(中国)有限公司、Hitachi Europe Ltd.及びHitachi India Pvt. Ltd.は、当グループの米州、アジア、中国、欧州及びインドにおける地域統括会社であり、当グループの製品を販売しています。3.上表のほか、2026年3月31日現在の主要な持分法適用会社として、Astemo㈱があります。

事業の優位性(モート)

事業の質(有価証券報告書から抽出)
数字に出ない事業の性質を、同じ物差しで全銘柄そろえています。FY2025時点の記載が出典です。
価格決定力値上げを通せるか。強いほどインフレ耐性が高い 中程度
最先端のIT、社会インフラを動かすOT、高品質・高信頼のプロダクトを統合し、Lumadaで価値創出。
参入障壁新規参入を阻む要因の種類 技術
最先端のIT、社会インフラを動かすOT、高品質・高信頼のプロダクトを併せ持つ技術力。
景気敏感度業績が景気循環にどれだけ振られるか 中程度
設備投資の性質稼いだ現金がどれだけ設備維持に消えるか 成長投資
規制依存規制は障壁にも足枷にもなる 高い
会社が挙げる主要リスク:経済環境に係るリスク / サプライチェーンに係るリスク / 海外事業における地政学等のリスク
同じ条件で他の銘柄を探す → 定性スクリーニング(価格決定力・参入障壁・景気敏感度などで絞り込めます)
モート総合 14 / 25 5類型それぞれの強度と、そう判定した根拠
無形資産★★★☆☆
根拠:中程度ブランド・特許・許認可

日立は、Lumadaなどのデジタルソリューション事業における強力なブランド力と、長年にわたるITインフラ、産業機器分野での実績を持つ。特許ポートフォリオも広範であり、特にIoTプラットフォームやAI技術に関するものが競争優位の源泉となりうる。グローバルでの認知度も高い。

スイッチングコスト★★★☆☆
根拠:中程度乗り換えの手間・コスト

Lumadaプラットフォームや基幹システム導入顧客は、システム更改やデータ移行に多大なコストと時間を要するため、他社への乗り換えは容易ではない。特に、産業機器や社会インフラ分野での長期契約は、顧客のスイッチング・コストを高くしている。

ネットワーク効果★★☆☆☆
根拠:中程度利用者増が価値を生む

Lumadaプラットフォームは、利用者が増えることでデータが蓄積され、AI分析の精度が向上する可能性がある。しかし、現時点ではプラットフォーム間の連携やエコシステムの広がりは限定的であり、強力なネットワーク効果はまだ確立されていない。

コスト優位★★☆☆☆
根拠:中程度同じ物を安く作れる

グローバルでの生産・調達網を持つが、多岐にわたる事業ポートフォリオのため、特定の製品群で圧倒的なコスト優位を築くのは難しい。ただし、デジタル化による業務効率化や、サプライチェーン最適化は進めている。

規模の経済★★★★☆
根拠:強い規模が参入障壁になる

日立は、ITサービス、エネルギー、産業機器、モビリティなど、多岐にわたる事業分野でグローバルに展開しており、各分野で一定以上の規模を持つ。特に、社会インフラやITサービス分野では、大規模プロジェクト遂行能力とグローバルな事業基盤が強みとなっている。

  • IT・OT・プロダクトの融合
    日立の最大の強みは、最先端のIT(情報技術)、社会インフラを動かすOT(運用・制御技術)、そして高品質・高信頼のプロダクト(製品)を併せ持つことです。これにより、単なる製品提供に留まらず、テクノロジーと特定の領域に関する専門知識(ドメインナレッジ)を統合し、社会インフラ全体を変革できる独自の競争優位性を確立しています。この組み合わせは他社には真似しにくい強みと言えます。
  • Lumadaによる価値創造
    日立のLumadaは、顧客のデータに光を当て、新たな価値や知見を創出するデジタルイノベーションのエンジンです。日立が持つ幅広い製品やシステム(インストールベース)をデジタル資産として活用し、AIとドメインナレッジを組み合わせてデータから価値を生み出すデジタルサービスを提供します。このLumadaは、日立の多様な事業領域で培われた知見を結集したものであり、顧客の課題解決に貢献する独自のソリューションを提供できる点が強みです。
  • グローバルな事業展開と実績
    日立グループは世界各地で事業を展開しており、多様な事業分野と地域にわたる社会イノベーション事業を組み合わせることで、特定の市場や経済情勢に左右されにくい安定した経営基盤を持っています。例えば、鉄道システムではAIを活用したデジタルアセットマネジメントソリューション「HMAX」を開発し、鉄道事業者だけでなくエネルギーやインダストリーなど他業種への展開も進めており、グローバルな実績とネットワークが競争優位に繋がっています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)

経営戦略

  • デジタルセントリックな企業変革
    日立は、Lumadaを核に社会インフラを革新し、デジタルを中心とした企業への変革を目指しています。これは、生成AIの急速な進化やグローバルDX市場の拡大といった経営環境の変化に対応し、IT・OT・プロダクトの強みを活かして高付加価値なLumada事業の比率を高めることで、持続的な成長を実現する戦略です。具体的には、デジタルシステム&サービスセクターが持つAIやデジタル技術を他セクターのデジタル化・サービス化に活用します。
  • 事業体制の再編と成長分野への注力
    日立は、2025年4月から「エナジー」と「モビリティ」の2つのセクターを新設し、従来の「コネクティブインダストリーズ」と「デジタルシステム&サービス」と合わせて4つのセクター体制に移行しました。これは、グリーントランスフォーメーション(GX)の追い風を受けるエネルギー事業と鉄道事業の機動性を高め、各セクター間の連携を強化することで、グローバルでの競争力向上と事業価値創出を加速させることを目的としています。
  • 新事業創出とグローバル展開の強化
    CEO直下に「戦略SIBビジネスユニット」を新設し、データセンター、eモビリティ、スマートシティ、ヘルスケアの4領域を戦略事業領域として、One Hitachiの強みを活かした新事業創出に注力します。また、北米・EMEA・APAC・日本・中国に加え、インドを加えたグローバル6極体制を構築し、地域ごとのニーズやリスク・機会を捉えた価値提供を強化することで、社会イノベーション事業のさらなる成長を目指します。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「経営方針・対処すべき課題・MD&A」の全文を見る(年度切替)
経営方針・経営戦略
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】(1)経営の基本方針 当グループは、「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」を企業理念として、顧客に対し、より高い価値をもたらす競争力のある製品・サービスを提供することで、一層の発展を遂げることをめざしています。当グループでは、グループ内の多様な経営資源を最大限に活用するとともに、キャッシュ・フロー創出力の強化やキャピタルアロケーションの最適化、さらにポートフォリオ改革の加速に取り組むことで、競争力を強化し、グローバル市場での持続的成長を実現します。こうした取組により、顧客、株主、従業員を含むステークホルダーの期待に応え、企業価値の向上を図っていくことを基本方針としています。 (2)経営環境及び対処すべき課題①当グループの経営環境及び対処すべき課題 現在の世界は、将来の予測が立てにくい時代です。国家間及び地域の紛争や緊張の高まり、気候変動や資源不足、高齢化による人口構造の変化、都市化の問題など様々な変化が生じています。一方で、複雑化する社会課題を解決するためのイノベーションが世界中で起きています。 かかる経営環境において、当グループは、経営計画「Inspire 2027」の下、デジタルを軸とした企業への変革を進め、持続的な成長を実現するとともに、環境・人々の幸福・経済成長が調和する「ハーモナイズドソサエティ」の実現に貢献することをめざしています。 激変する経営環境においても、変化に柔軟かつ迅速に対応し、グループ一体で日立ならではの価値を創出する「真のOne Hitachi」で、企業価値のさらなる向上に取り組んでいきます。 (イ)急拡大するAI市場の追い風を捉え、成長を加速 近年、製造やインフラの現場で労働力不足への対応や安全性・生産性の向上が求められており、物理空間での現場業務を革新するフィジカルAI(注)の領域に期待が集まり、今後さらなる市場拡大が見込まれています。こうした中、当グループは、社会インフラの現場に対するプロダクトやITシステムの導入実績により得られたデジタライズドアセットからデータを収集して、AIとドメインナレッジで分析し、デジタルサービスとして提供することで、更なる価値創出のサイクルを回すLumada 3.0を展開していきます。 Lumada事業の中核を成すソリューションとして、HMAXの展開を加速しています。2024年に鉄道事業者向けに生まれたHMAXは、現在、エネルギー・製造・ビルメンテナンスなど、幅広い業界への広がりを見せています。 今後も、フィジカルAIや自律的に判断・実行するAIであるエージェンティックAIといったAI市場の急拡大を追い風とし、Lumadaの成長エンジンであるHMAXの事業規模を拡大することで、全社の成長を加速し、収益性を強化していきます。(注)現実世界のデータをAIが自律的に解析・判断し、その結果を設備や機器の制御等の具体的な行動につなげるAI技術 (ロ)グローバル自律分散型経営を通じ、各地域の事業機会を成長に繋げる 不確実な事業環境下においても、地域ごとに自律的に事業機会を探索することができるグローバル自律分散経営を実践することで、全社の成長を実現します。 具体的には、グローバルの6極(米州、EMEA、APAC、インド、日本、中国)において、地域ごとの成長分野を見極め、地域特性に応じた事業拡大を推進します。英国においては、日立エナジー社が同国最長となるHVDC連系線向け変換所の提供元に選定されたのをはじめ、地域固有の事業機会を確実に捉え、成長を実現していきます。Eastern Green Link3 プロジェクトへ参画、HVDCの更なる拡大 (ハ)サステナブル経営の深化激変する経営環境への対応 グローバル自律分散型経営は、リスクの抑制にも有効であり、ERM(注)の高度化を通じてアジリティの高い経営を推進しています。工場の新設や拡張による現地調達率の向上や調達ルートの多様化により事業のレジリエンス強化を図るとともに、サプライチェーンの強靭化を継続します。すでに、米国相互関税の影響抑制に向け、適切な価格転嫁等の対策を講じています。(注)Enterprise Risk Management:事業環境の変化に伴うリスクと機会を全社的に把握し、経営戦略や意思決定に反映する仕組み Hitachi Rail社ヘイガースタウン工場(米国メリーランド州) 長期的な企業価値向上を支える人的資本の強化 Inspire 2027に掲げる人財戦略の実行に向け、持続的成長をけん引する次世代リーダーの育成やAIプロフェッショナル人財の拡充に取り組んでいます。また、従業員の企業価値向上への意識を引き出すため、従業員への株式報酬制度の導入を決定しました。役員向け株式報酬制度と合わせ、当グループ全体で株主との価値共有を通じた長期的な企業価値向上をめざします。 (ニ)今後の成長に向けた取組AIによる社内改革とカスタマーゼロ(注)として取り組むAI活用 従業員がAIを活用できる環境の整備を推進し、設計開発・品質保守・間接業務など幅広い領域において業務効率化に取り組んでいます。特に、システム開発においては、AIの活用によりシステムインテグレーション工程において生産性が向上するなど、社内業務改革を着実に進展させています。 幅広い事業領域を持つ当グループにおいて、AIによる社内業務改革を通じてナレッジやノウハウを体系化することは、カスタマーゼロとして大きな強みになります。社内での実績を、顧客のAIエージェントの導入効果を最大化するサービスや、フロントラインワーカーを支援するソリューションなどのサービスとして社外へ展開していきます。(注)自社を最初の顧客(カスタマーゼロ)と捉え、デジタル技術やAIを活用した変革を先行して実践する取組 次の成長をけん引する新事業・新技術の開発 戦略SIBビジネスユニットでは、「真のOne Hitachi」の強みが活かされ、次の成長をけん引するテーマを設定し、パートナーとの協創や資本提携を通じた事業創生の取組を加速しています。また、社会課題の解決に貢献する革新的な新技術の研究開発にも継続して取り組んでいます。 日立は、激変する経営環境においても、これらの取組を通じて成長を加速するとともに、キャピタルアロケーションの方針に則った投資をはじめ規律ある経営を推進することで、さらなる企業価値向上と株主への安定的な還元に取り組んでいきます。 ②注力分野における経営環境及び対処すべき課題 注力分野であるデジタルシステム&サービス、エナジー、モビリティ及びコネクティブインダストリーズの4セクターにおける経営環境及び対処すべき課題は、以下のとおりです。 デジタルシステム&サービス グローバル経済環境の不透明さが継続するものの、AIの急速な進化に伴い、企業のビジネス効率化や競争力向上に向けたAI導入の本格化によりAI関連需要が急速に拡大し、グローバルDX(デジタルトランスフォーメーション)市場を中心とした成長が進んでいます。加えて国内では、労働力不足が懸念される一方で、ITシステムのモダナイゼーションやDXの旺盛な需要が継続して生まれています。 デジタルシステム&サービスセクターは、このような市場環境において、先進デジタル技術を活用したAIやクラウド、セキュリティ等の高度なデジタルソリューションを提供し、お客さまや社会の課題解決に取り組んでいます。また、他セクターとの連携のもと、デジタルシステム&サービスセクターが持つAI及びデジタルに関する知見と技術力を結集し、他セクターのインストールベースのデジタル化及びサービス化を強力に推進しています。さらに、急速に進化するAIを当グループの成長エンジンと位置づけ、業務の生産性を飛躍的に向上させるとともに、新たな事業機会を創出するAIトランスフォーメーションを推進していきます。これにより、AIで社会インフラを革新する次世代ソリューション群「HMAX」をお客さまのアセットへ広くスケールさせ、Lumada事業の展開を加速していくとともに、高付加価値なLumada事業の比率を当グループ全体で高めていきます。 また、国内IT市場においては、AIを活用したシステムインテグレーション(SI)の生産性向上を図るとともに、GlobalLogic社等、海外グループ各社の最先端ナレッジを持つデジタル人財の活用を進めています。こうした取組により、国内において深刻な課題となっているデジタル人財の不足を補いつつ、引き続き高い需要がある大規模なミッションクリティカルSIのニーズに対応していきます。さらに、グローバルパートナーとの積極的な協業強化により、革新的なソリューション創出に注力するとともに、高度なAIスキルを持つ人財育成にも取り組んでいきます。 エナジー 気候変動や地政学リスクの高まりを背景に、脱炭素社会に向けた動きが加速し、世界的に低炭素エネルギーへの転換が進んでいます。また、デジタル化やAIの進展に伴うデータセンターの増加等により、今後も電力需要の増加が見込まれており、電力の安定供給能力の強化に対するニーズが高まっています。具体的には、クリーンエネルギーの導入拡大やそれに対応する電力網の整備、電源構成の多様化・分散化によるマイクログリッドの拡大、原子力を含む安定電源の再評価が進んでいます。 エナジーセクターでは、Lumadaを活用したデジタライズドアセットとデジタルサービスの提供を加速させ、グローバルトップレベルの製品群とインテグレーション力を通じて、地球環境と社会・経済の持続的な発展が調和するハーモナイズドソサエティの実現に貢献していきます。 パワーグリッドでは、日立エナジー社が世界中に持つインストールベースの価値と当グループのデジタル技術を組み合わせ、「HMAX Energy」の展開を通じたサービスの高度化及び継続的な価値提供の拡大により収益性の向上を加速させることで、世界トップクラスのサービス企業への変革を推進します。また、原子力発電システムにおいては、パートナーであるGE Vernovaと連携しながら、カナダにおける小型モジュール炉(SMR)初号機の建設開始を契機として、日米における投資拡大の動きも踏まえ、北米やポーランドをはじめとする欧州等へのSMR事業の展開を進めていきます。 モビリティ モビリティ分野、とりわけ鉄道事業を取り巻く経営環境は、脱炭素社会の実現に向けた世界的な動きや都市化、デジタル技術の高度化が進んでいます。鉄道は環境負荷の少ない大量輸送手段として再評価され、先進国のみならず新興国においてもインフラ投資が拡大しています。一方で、インフラの老朽化や保守人財不足、安全性・信頼性への要求高度化など、課題も複雑化しています。 当グループは、フィジカル、デジタル、AIを融合した鉄道ソリューションを基本戦略とし、2024年に買収したThales S.A.(以下、「Thales社」といいます。)の鉄道信号関連事業とのインテグレーションを通じ、車両から信号・制御、デジタルサービスまでを含む事業ポートフォリオを拡充しています。さらに、AIを活用した「HMAX Mobility」を中核に、デジタルアセットマネジメント事業を強化しています。 具体的には、2025年のOmnicomの買収によるデジタル監視技術の統合、国内での保守DX推進、北米・欧州での事業基盤強化を進めています。これらの取組を通じて、鉄道事業における付加価値の向上と競争力の強化を図り、持続可能なモビリティ社会への貢献と鉄道事業の持続的成長をめざします。 コネクティブインダストリーズ 産業界では、深刻な労働人口の減少・高齢化に加え、CAPEX(Capital Expenditure)投資の巨大化やOPEX(Operating Expense)変動の増大といった構造的課題に直面しています。また、AIによる自律化・省人化や、Time to Market(開発から市場投入までの期間)の短縮による投資の早期回収、そしてOPEXの低減・最適化を求めるニーズが急速に高まっています。 コネクティブインダストリーズセクターでは、インダストリー(計測・分析装置、ヘルスケア機器、産業・流通及び水・環境ソリューション)とファシリティ(ビルシステム、空調機器、産業機器)の各分野において、高い信頼性を有するプロダクトの豊富なインストールベースから創出されるデータに、現場の実運用を熟知したドメインナレッジ、及びフィジカルAIを掛け合わせた次世代ソリューション群「HMAX Industry」を展開し、お客さまのライフタイムバリューの最大化をめざします。 特に、AI関連投資の成長率が高く、当セクターの強いプロダクトとHMAXによって伸ばすことができる「ファシリティ」、「半導体製造」、「医療診断」、「医薬品製造」の4領域を注力事業領域と定めて、重点的に取り組んでいきます。例えば、ファシリティ領域においては、コネクテッド台数・率がグローバルトップクラスの昇降機を起点に、HMAXを用いて建物全体のエネルギー効率向上や運用の最適化を図ります。半導体製造、診断等の領域においては、グローバルNo.1のシェアを誇るCD-SEM(注)及び生化学免疫・分析装置を中心とした計測・分析技術を起点にHMAXを展開し、Time to Market短縮や生産性向上、ダウンタイム低減を図ります。 これらの成長を支える基盤として、高速・省電力エッジAI半導体などHMAX拡大に向けたフィジカルAIの研究開発を強化します。さらに、フィジカルAIを軸とした事業ポートフォリオ構築と次なるグローバルトッププロダクト創生を一層加速させていきます。 こうした成長戦略を加速するための事業体制として、2026年4月よりBU(ビジネスユニット)を「インダストリアルソリューションBU」、「インダストリアルプロダクツBU」及び「アーバンソリューション&サービスBU」の3つに再編しました。経営のスピードをさらに上げ、事業間のシナジーを創出し、One HitachiでLumadaによる成長をグローバルに加速していきます。(注)測長SEM(Critical Dimension-Scanning Electron Microscope):半導体等のウェーハ上に形成された微細パターンの寸法計測用に専用化した走査型電子顕微鏡(SEM)の応用装置 (3)経営計画における経営指標 Inspire 2027においては、以下の指標を経営上の業績目標としています。指 標Inspire 2027目標選定した理由売上収益年成長率(2024-2027年度 CAGR)(注)17-9%成長性を測る指標として選定Adjusted EBITA率(2027年度)(注)213-15%収益性を測る指標として選定キャッシュフローコンバージョン(2027年度)(注)390%超キャッシュ創出力を測る指標として選定投下資本利益率(ROIC)(2027年度)(注)412-13%投資効率を測る指標として選定(注)1.CAGR(Compound Annual Growth Rate)は、年平均成長率です。2.Adjusted EBITA(Adjusted Earnings before interest, taxes and amortization)は、調整後営業利益(売上収益から、売上原価並びに販売費及び一般管理費の額を減算して算出した指標)に、企業結合により認識した無形資産等の償却費を足し戻して算出しています。Adjusted EBITA率は、Adjusted EBITAを売上収益の額で除して算出した指標です。3.キャッシュフローコンバージョンは、コア・フリー・キャッシュ・フローを当期利益の額で除して算出した指標です。コア・フリー・キャッシュ・フローは、フリー・キャッシュ・フロー(営業活動に関するキャッシュ・フローと投資活動に関するキャッシュ・フローを合わせたもの)から、M&Aや資産売却他に係るキャッシュ・フローを除いた経常的なキャッシュ・フローです。4.ROIC(Return on invested capital)は、「(税引後の調整後営業利益+持分法損益)÷投下資本×100」により算出しています。なお、「税引後の調整後営業利益=調整後営業利益×(1-税金負担率)」、「投下資本=有利子負債+資本の部合計」です。 また、当グループは、Inspire 2027において、経営の長期目標として、Lumada事業の売上収益比率80%、Adjusted EBITA率20%をめざす「Lumada 80-20」を設定しています。Lumada事業への投資強化と事業ポートフォリオ改革を実行し、Lumada事業の更なる拡大と収益性向上を推進していきます。 上記の経営目標のほか、サステナブル経営を深化させるために、以下の項目を、サステナビリティ戦略「PLEDGES」に基づく取組として推進することで、社会への価値提供と当グループの持続的成長を加速していきます。
対処すべき課題
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】(1)経営の基本方針 当グループは、「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」を企業理念として、顧客に対し、より高い価値をもたらす競争力のある製品・サービスを提供することで、一層の発展を遂げることをめざしています。当グループでは、グループ内の多様な経営資源を最大限に活用するとともに、キャッシュ・フロー創出力の強化やキャピタルアロケーションの最適化、さらにポートフォリオ改革の加速に取り組むことで、競争力を強化し、グローバル市場での持続的成長を実現します。こうした取組により、顧客、株主、従業員を含むステークホルダーの期待に応え、企業価値の向上を図っていくことを基本方針としています。 (2)経営環境及び対処すべき課題①当グループの経営環境及び対処すべき課題 現在の世界は、将来の予測が立てにくい時代です。国家間及び地域の紛争や緊張の高まり、気候変動や資源不足、高齢化による人口構造の変化、都市化の問題など様々な変化が生じています。一方で、複雑化する社会課題を解決するためのイノベーションが世界中で起きています。 かかる経営環境において、当グループは、経営計画「Inspire 2027」の下、デジタルを軸とした企業への変革を進め、持続的な成長を実現するとともに、環境・人々の幸福・経済成長が調和する「ハーモナイズドソサエティ」の実現に貢献することをめざしています。 激変する経営環境においても、変化に柔軟かつ迅速に対応し、グループ一体で日立ならではの価値を創出する「真のOne Hitachi」で、企業価値のさらなる向上に取り組んでいきます。 (イ)急拡大するAI市場の追い風を捉え、成長を加速 近年、製造やインフラの現場で労働力不足への対応や安全性・生産性の向上が求められており、物理空間での現場業務を革新するフィジカルAI(注)の領域に期待が集まり、今後さらなる市場拡大が見込まれています。こうした中、当グループは、社会インフラの現場に対するプロダクトやITシステムの導入実績により得られたデジタライズドアセットからデータを収集して、AIとドメインナレッジで分析し、デジタルサービスとして提供することで、更なる価値創出のサイクルを回すLumada 3.0を展開していきます。 Lumada事業の中核を成すソリューションとして、HMAXの展開を加速しています。2024年に鉄道事業者向けに生まれたHMAXは、現在、エネルギー・製造・ビルメンテナンスなど、幅広い業界への広がりを見せています。 今後も、フィジカルAIや自律的に判断・実行するAIであるエージェンティックAIといったAI市場の急拡大を追い風とし、Lumadaの成長エンジンであるHMAXの事業規模を拡大することで、全社の成長を加速し、収益性を強化していきます。(注)現実世界のデータをAIが自律的に解析・判断し、その結果を設備や機器の制御等の具体的な行動につなげるAI技術 (ロ)グローバル自律分散型経営を通じ、各地域の事業機会を成長に繋げる 不確実な事業環境下においても、地域ごとに自律的に事業機会を探索することができるグローバル自律分散経営を実践することで、全社の成長を実現します。 具体的には、グローバルの6極(米州、EMEA、APAC、インド、日本、中国)において、地域ごとの成長分野を見極め、地域特性に応じた事業拡大を推進します。英国においては、日立エナジー社が同国最長となるHVDC連系線向け変換所の提供元に選定されたのをはじめ、地域固有の事業機会を確実に捉え、成長を実現していきます。Eastern Green Link3 プロジェクトへ参画、HVDCの更なる拡大 (ハ)サステナブル経営の深化激変する経営環境への対応 グローバル自律分散型経営は、リスクの抑制にも有効であり、ERM(注)の高度化を通じてアジリティの高い経営を推進しています。工場の新設や拡張による現地調達率の向上や調達ルートの多様化により事業のレジリエンス強化を図るとともに、サプライチェーンの強靭化を継続します。すでに、米国相互関税の影響抑制に向け、適切な価格転嫁等の対策を講じています。(注)Enterprise Risk Management:事業環境の変化に伴うリスクと機会を全社的に把握し、経営戦略や意思決定に反映する仕組み Hitachi Rail社ヘイガースタウン工場(米国メリーランド州) 長期的な企業価値向上を支える人的資本の強化 Inspire 2027に掲げる人財戦略の実行に向け、持続的成長をけん引する次世代リーダーの育成やAIプロフェッショナル人財の拡充に取り組んでいます。また、従業員の企業価値向上への意識を引き出すため、従業員への株式報酬制度の導入を決定しました。役員向け株式報酬制度と合わせ、当グループ全体で株主との価値共有を通じた長期的な企業価値向上をめざします。 (ニ)今後の成長に向けた取組AIによる社内改革とカスタマーゼロ(注)として取り組むAI活用 従業員がAIを活用できる環境の整備を推進し、設計開発・品質保守・間接業務など幅広い領域において業務効率化に取り組んでいます。特に、システム開発においては、AIの活用によりシステムインテグレーション工程において生産性が向上するなど、社内業務改革を着実に進展させています。 幅広い事業領域を持つ当グループにおいて、AIによる社内業務改革を通じてナレッジやノウハウを体系化することは、カスタマーゼロとして大きな強みになります。社内での実績を、顧客のAIエージェントの導入効果を最大化するサービスや、フロントラインワーカーを支援するソリューションなどのサービスとして社外へ展開していきます。(注)自社を最初の顧客(カスタマーゼロ)と捉え、デジタル技術やAIを活用した変革を先行して実践する取組 次の成長をけん引する新事業・新技術の開発 戦略SIBビジネスユニットでは、「真のOne Hitachi」の強みが活かされ、次の成長をけん引するテーマを設定し、パートナーとの協創や資本提携を通じた事業創生の取組を加速しています。また、社会課題の解決に貢献する革新的な新技術の研究開発にも継続して取り組んでいます。 日立は、激変する経営環境においても、これらの取組を通じて成長を加速するとともに、キャピタルアロケーションの方針に則った投資をはじめ規律ある経営を推進することで、さらなる企業価値向上と株主への安定的な還元に取り組んでいきます。 ②注力分野における経営環境及び対処すべき課題 注力分野であるデジタルシステム&サービス、エナジー、モビリティ及びコネクティブインダストリーズの4セクターにおける経営環境及び対処すべき課題は、以下のとおりです。 デジタルシステム&サービス グローバル経済環境の不透明さが継続するものの、AIの急速な進化に伴い、企業のビジネス効率化や競争力向上に向けたAI導入の本格化によりAI関連需要が急速に拡大し、グローバルDX(デジタルトランスフォーメーション)市場を中心とした成長が進んでいます。加えて国内では、労働力不足が懸念される一方で、ITシステムのモダナイゼーションやDXの旺盛な需要が継続して生まれています。 デジタルシステム&サービスセクターは、このような市場環境において、先進デジタル技術を活用したAIやクラウド、セキュリティ等の高度なデジタルソリューションを提供し、お客さまや社会の課題解決に取り組んでいます。また、他セクターとの連携のもと、デジタルシステム&サービスセクターが持つAI及びデジタルに関する知見と技術力を結集し、他セクターのインストールベースのデジタル化及びサービス化を強力に推進しています。さらに、急速に進化するAIを当グループの成長エンジンと位置づけ、業務の生産性を飛躍的に向上させるとともに、新たな事業機会を創出するAIトランスフォーメーションを推進していきます。これにより、AIで社会インフラを革新する次世代ソリューション群「HMAX」をお客さまのアセットへ広くスケールさせ、Lumada事業の展開を加速していくとともに、高付加価値なLumada事業の比率を当グループ全体で高めていきます。 また、国内IT市場においては、AIを活用したシステムインテグレーション(SI)の生産性向上を図るとともに、GlobalLogic社等、海外グループ各社の最先端ナレッジを持つデジタル人財の活用を進めています。こうした取組により、国内において深刻な課題となっているデジタル人財の不足を補いつつ、引き続き高い需要がある大規模なミッションクリティカルSIのニーズに対応していきます。さらに、グローバルパートナーとの積極的な協業強化により、革新的なソリューション創出に注力するとともに、高度なAIスキルを持つ人財育成にも取り組んでいきます。 エナジー 気候変動や地政学リスクの高まりを背景に、脱炭素社会に向けた動きが加速し、世界的に低炭素エネルギーへの転換が進んでいます。また、デジタル化やAIの進展に伴うデータセンターの増加等により、今後も電力需要の増加が見込まれており、電力の安定供給能力の強化に対するニーズが高まっています。具体的には、クリーンエネルギーの導入拡大やそれに対応する電力網の整備、電源構成の多様化・分散化によるマイクログリッドの拡大、原子力を含む安定電源の再評価が進んでいます。 エナジーセクターでは、Lumadaを活用したデジタライズドアセットとデジタルサービスの提供を加速させ、グローバルトップレベルの製品群とインテグレーション力を通じて、地球環境と社会・経済の持続的な発展が調和するハーモナイズドソサエティの実現に貢献していきます。 パワーグリッドでは、日立エナジー社が世界中に持つインストールベースの価値と当グループのデジタル技術を組み合わせ、「HMAX Energy」の展開を通じたサービスの高度化及び継続的な価値提供の拡大により収益性の向上を加速させることで、世界トップクラスのサービス企業への変革を推進します。また、原子力発電システムにおいては、パートナーであるGE Vernovaと連携しながら、カナダにおける小型モジュール炉(SMR)初号機の建設開始を契機として、日米における投資拡大の動きも踏まえ、北米やポーランドをはじめとする欧州等へのSMR事業の展開を進めていきます。 モビリティ モビリティ分野、とりわけ鉄道事業を取り巻く経営環境は、脱炭素社会の実現に向けた世界的な動きや都市化、デジタル技術の高度化が進んでいます。鉄道は環境負荷の少ない大量輸送手段として再評価され、先進国のみならず新興国においてもインフラ投資が拡大しています。一方で、インフラの老朽化や保守人財不足、安全性・信頼性への要求高度化など、課題も複雑化しています。 当グループは、フィジカル、デジタル、AIを融合した鉄道ソリューションを基本戦略とし、2024年に買収したThales S.A.(以下、「Thales社」といいます。)の鉄道信号関連事業とのインテグレーションを通じ、車両から信号・制御、デジタルサービスまでを含む事業ポートフォリオを拡充しています。さらに、AIを活用した「HMAX Mobility」を中核に、デジタルアセットマネジメント事業を強化しています。 具体的には、2025年のOmnicomの買収によるデジタル監視技術の統合、国内での保守DX推進、北米・欧州での事業基盤強化を進めています。これらの取組を通じて、鉄道事業における付加価値の向上と競争力の強化を図り、持続可能なモビリティ社会への貢献と鉄道事業の持続的成長をめざします。 コネクティブインダストリーズ 産業界では、深刻な労働人口の減少・高齢化に加え、CAPEX(Capital Expenditure)投資の巨大化やOPEX(Operating Expense)変動の増大といった構造的課題に直面しています。また、AIによる自律化・省人化や、Time to Market(開発から市場投入までの期間)の短縮による投資の早期回収、そしてOPEXの低減・最適化を求めるニーズが急速に高まっています。 コネクティブインダストリーズセクターでは、インダストリー(計測・分析装置、ヘルスケア機器、産業・流通及び水・環境ソリューション)とファシリティ(ビルシステム、空調機器、産業機器)の各分野において、高い信頼性を有するプロダクトの豊富なインストールベースから創出されるデータに、現場の実運用を熟知したドメインナレッジ、及びフィジカルAIを掛け合わせた次世代ソリューション群「HMAX Industry」を展開し、お客さまのライフタイムバリューの最大化をめざします。 特に、AI関連投資の成長率が高く、当セクターの強いプロダクトとHMAXによって伸ばすことができる「ファシリティ」、「半導体製造」、「医療診断」、「医薬品製造」の4領域を注力事業領域と定めて、重点的に取り組んでいきます。例えば、ファシリティ領域においては、コネクテッド台数・率がグローバルトップクラスの昇降機を起点に、HMAXを用いて建物全体のエネルギー効率向上や運用の最適化を図ります。半導体製造、診断等の領域においては、グローバルNo.1のシェアを誇るCD-SEM(注)及び生化学免疫・分析装置を中心とした計測・分析技術を起点にHMAXを展開し、Time to Market短縮や生産性向上、ダウンタイム低減を図ります。 これらの成長を支える基盤として、高速・省電力エッジAI半導体などHMAX拡大に向けたフィジカルAIの研究開発を強化します。さらに、フィジカルAIを軸とした事業ポートフォリオ構築と次なるグローバルトッププロダクト創生を一層加速させていきます。 こうした成長戦略を加速するための事業体制として、2026年4月よりBU(ビジネスユニット)を「インダストリアルソリューションBU」、「インダストリアルプロダクツBU」及び「アーバンソリューション&サービスBU」の3つに再編しました。経営のスピードをさらに上げ、事業間のシナジーを創出し、One HitachiでLumadaによる成長をグローバルに加速していきます。(注)測長SEM(Critical Dimension-Scanning Electron Microscope):半導体等のウェーハ上に形成された微細パターンの寸法計測用に専用化した走査型電子顕微鏡(SEM)の応用装置 (3)経営計画における経営指標 Inspire 2027においては、以下の指標を経営上の業績目標としています。指 標Inspire 2027目標選定した理由売上収益年成長率(2024-2027年度 CAGR)(注)17-9%成長性を測る指標として選定Adjusted EBITA率(2027年度)(注)213-15%収益性を測る指標として選定キャッシュフローコンバージョン(2027年度)(注)390%超キャッシュ創出力を測る指標として選定投下資本利益率(ROIC)(2027年度)(注)412-13%投資効率を測る指標として選定(注)1.CAGR(Compound Annual Growth Rate)は、年平均成長率です。2.Adjusted EBITA(Adjusted Earnings before interest, taxes and amortization)は、調整後営業利益(売上収益から、売上原価並びに販売費及び一般管理費の額を減算して算出した指標)に、企業結合により認識した無形資産等の償却費を足し戻して算出しています。Adjusted EBITA率は、Adjusted EBITAを売上収益の額で除して算出した指標です。3.キャッシュフローコンバージョンは、コア・フリー・キャッシュ・フローを当期利益の額で除して算出した指標です。コア・フリー・キャッシュ・フローは、フリー・キャッシュ・フロー(営業活動に関するキャッシュ・フローと投資活動に関するキャッシュ・フローを合わせたもの)から、M&Aや資産売却他に係るキャッシュ・フローを除いた経常的なキャッシュ・フローです。4.ROIC(Return on invested capital)は、「(税引後の調整後営業利益+持分法損益)÷投下資本×100」により算出しています。なお、「税引後の調整後営業利益=調整後営業利益×(1-税金負担率)」、「投下資本=有利子負債+資本の部合計」です。 また、当グループは、Inspire 2027において、経営の長期目標として、Lumada事業の売上収益比率80%、Adjusted EBITA率20%をめざす「Lumada 80-20」を設定しています。Lumada事業への投資強化と事業ポートフォリオ改革を実行し、Lumada事業の更なる拡大と収益性向上を推進していきます。 上記の経営目標のほか、サステナブル経営を深化させるために、以下の項目を、サステナビリティ戦略「PLEDGES」に基づく取組として推進することで、社会への価値提供と当グループの持続的成長を加速していきます。
MD&A(経営者による分析)
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1)経営計画の進捗①経営上の目標として掲げた指標の状況経営計画「Inspire 2027」において、経営上の目標として用いた主な指標の当連結会計年度における状況は次のとおりです。 指 標実 績Inspire 2027目標売上収益年成長率(対前期成長率)8.2%(2024-2027年度 CAGR)7-9%Adjusted EBITA率(2025年度)12.4%(2027年度)13-15%キャッシュフローコンバージョン(注)(2025年度)103%(2027年度)90%超投下資本利益率(ROIC)(2025年度)12.4%(2027年度)12-13%(注)特殊要因を除いて算出しています。 ②成長に向けた事業強化当期はInspire 2027の初年度として、主に以下の取組を行いました。・経営環境の変化に対し、アジリティの高い経営を推進 世界的な地政学リスクの高まりに対し、脅威の緩和と機会の創出を両立させるため、リスクマネジメントの高度化に取り組みました。具体的には、米国相互関税に対して価格転嫁等の対策を通じて影響を最小化したほか、中東情勢が事業に与える影響の可視化と極小化にも取り組みました。また、日立エナジー社による米国での10億ドル超の設備投資をはじめとする施策により現地調達率の向上や調達ルートの多様化を推進しました。こうした取組を通じて、事業のレジリエンス強化とサプライチェーンの強靭化を図りました。 AIエージェントやフィジカルAIに代表されるAIの急速な進化と市場の拡大に即応するため、「AIエージェント推進室」を立ち上げたほか、OpenAI社と次世代AIインフラの構築とグローバルなデータセンタの拡大を支える効率的なインフラソリューションの検討のため、戦略的パートナーシップに合意しました。加えて、サイバー攻撃の増加・高度化への対応強化にも注力するなど、経営環境が激変する中でも変化に即応するアジリティの高い経営を推進しました。 ・HMAXの本格始動によりLumada事業が力強く成長 AIで社会インフラを革新する次世代ソリューション群HMAXの展開を本格化しました。Lumada事業の中核を成すソリューションとして、モビリティ、エネルギー、インダストリーなど様々な業界に向けたソリューションを提供しており、当期におけるHMAXの売上収益は約3,000億円、Adjusted EBITA率は20%以上に達しています。 ・事業ポートフォリオ改革の実行 HMAXの展開強化のためAIを活用したビジネスデザインなどを強みとするドイツのsynvert社を買収し、また、電力インフラにおけるサービス事業の強化を目的に米国のShermco社の少数持分を取得しました。さらに、日立建機㈱及びAstemo㈱の株式の一部譲渡やATM等の事業を担う日立チャネルソリューションズ㈱の資本再編を決定したことに加え、本年4月には日立グローバルライフソリューションズ㈱の家電事業の資本再編を決定するなど、Inspire 2027の達成に向け事業ポートフォリオ改革を着実に実行しました。 (2)経営成績の状況の分析①業績の状況(注)米国関税影響△240億円を含みます。 売上収益は、前年度に比べて8%増加し、10兆5,867億円となりました。ビルシステム事業における新設昇降機の需要減少等に伴うコネクティブインダストリーズセグメント等の減収要因があったものの、強いパワーグリッド需要を取り込んだエナジーセクター、堅調な国内のデジタル需要を取り込んだデジタルシステム&サービスセクター等により、増収となりました。 売上原価は、前年度に比べて6%増加し、7兆4,072億円となり、売上収益に対する比率は、前年度に比べて1ポイント減少し、70%となりました。売上総利益は、前年度に比べて13%増加し、3兆1,795億円となりました。 販売費及び一般管理費は、前年度に比べて7%増加し、1兆9,802億円となり、売上収益に対する比率は、前年度と同水準の19%となりました。 これらの結果、Adjusted EBITA(Adjusted Earnings before interest, taxes and amortizationの略であり、売上収益から、売上原価並びに販売費及び一般管理費の額を減算して算出した指標に、企業結合により認識した無形資産等の償却費を足し戻して算出した指標)は、前年度に比べて2,279億円増加し、1兆3,114億円となりました。なお、当社は、当連結会計年度の期首より、Adjusted EBITAの算出式を見直しています。前年度のAdjusted EBITAの数値は、見直し後の算出式で計算した値に置き換えています。 その他の収益は、前年度に比べて838億円増加し、1,335億円となり、その他の費用は、前年度に比べて577億円増加し、2,008億円となりました。主な内訳は、以下のとおりです。 ・固定資産損益は、前年度に比べて261億円悪化し、74億円の損失となりました。 ・減損損失は、デジタルシステム&サービスセグメントにおいてファイルストレージ事業ののれんの減損損失を計上したこと等により、前年度に比べて593億円増加し、1,515億円となりました。 ・事業再編等損益は、Johnson Controls-Hitachi Air Conditioning (UK) Ltd.(以下、「JCH」といいます。)の株式売却に伴う事業再編等利益を計上したこと等により、前年度に比べて1,022億円増加し、1,318億円の利益となりました。 ・特別退職金は、前年度に比べて56億円増加し、161億円となりました。 金融収益(受取利息を除きます。)は、前年度に比べて528億円増加し、1,068億円となり、金融費用(支払利息を除きます。)は、前年度に比べて40億円減少し、88億円となりました。 持分法による投資損益は、前年度に比べて142億円減少し、441億円の利益となりました。 受取利息及び支払利息調整後税引前当期利益は、前年度に比べ2,964億円増加し、1兆2,740億円となりました。 受取利息は、前年度に比べて6億円増加し、327億円となり、支払利息は、前年度に比べて132億円減少し、336億円となりました。 税引前当期利益は、前年度に比べて3,103億円増加し、1兆2,731億円となりました。 法人所得税費用は、前年度に比べて1,158億円増加し、4,216億円となりました。 当期利益は、前年度に比べて1,945億円増加し、8,514億円となりました。 非支配持分に帰属する当期利益は、前年度に比べて79億円増加し、490億円となりました。 これらの結果、親会社株主に帰属する当期利益は、前年度に比べて1,866億円増加し、8,023億円となりました。 ②セグメントごとの業績の状況 セグメントごとに業績の状況を概観すると次のとおりです。各セグメントの売上収益には、セグメント間の内部売上収益が含まれています。また、当連結会計年度の期首より、報告セグメントの区分を、デジタルシステム&サービス、エナジー、モビリティ、コネクティブインダストリーズ、その他の5セグメントへ変更しており、比較する前年度の数値も新区分に組み替えています。 各表内の内数は、各セグメントの主な事業等の業績を表しており、また、売上収益については当該事業間の内部売上収益を含んでいるため、それらの合計額は、セグメント全体の業績と一致しない場合があります。 (デジタルシステム&サービス)(注)括弧内の数値は為替影響を除いた対前年度増減率の概算値を表しています。 売上収益は、欧米顧客の投資抑制影響等によりサービス&プラットフォーム事業が減収となったものの、国内のDX(デジタルトランスフォーメーション)及びモダナイゼーションを中心としたフロントビジネス事業の堅調な推移やLumada事業の拡大等により、増収となりました。 Adjusted EBITAは、売上収益の増加、プロジェクトマネジメントの強化及びコスト削減等による収益性の改善等により、増益となりました。 (エナジー)(注)括弧内の数値は為替影響を除いた対前年度増減率の概算値を表しています。 売上収益は、パワーグリッド事業における大型プロジェクト等の好調な推移、受注残の着実な売上転換及び為替影響等により、増収となりました。 Adjusted EBITAは、パワーグリッド事業における売上収益の増加、受注残の収益性改善、継続的な生産効率向上、着実なプロジェクト遂行、Lumada事業の拡大及び経営基盤刷新費用(システム統合費用等)の収束等により、増益となりました。 (モビリティ)(注)1. 括弧内の数値は為替影響を除いた対前年度増減率の概算値を表しています。2. 関連費用には、事業買収に伴うPMI(Post Merger Integration)に係る費用等が含まれています。 売上収益は、為替影響に加え、Thales社の鉄道信号関連事業の買収影響や信号システム事業を含むLumada事業の堅調な推移等により、増収となりました。 Adjusted EBITAは、Thales社の鉄道信号関連事業買収に伴うPMIに係る費用を含む関連費用等による減益要因があったものの、売上収益の増加や、信号システム事業における収益性向上等により、増益となりました。 (コネクティブインダストリーズ)(注)括弧内の数値は為替影響を除いた対前年度増減率の概算値を表しています。 売上収益は、半導体製造装置事業が堅調に推移した計測分析システム事業や産業機械事業が堅調に推移したインダストリアルプロダクツ&サービス事業等が増収となったものの、中国における新設昇降機の需要減少等に伴いビルシステム事業が減収となったこと等により、減収となりました。 Adjusted EBITAは、セグメント全体で減収となったものの、計測分析システム事業の売上収益の増加等により、増益となりました。 (その他) 売上収益は、前年度に比べて7%増加し、5,310億円となりました。 Adjusted EBITAは、前年度に比べて110億円増加し、229億円となりました。 ③地域ごとの売上収益の状況 仕向地別に外部顧客向け売上収益の状況を概観すると次のとおりです。 国内 国内売上収益は、増収となりました。これは主として、フロントビジネス事業やLumada事業が堅調に推移したデジタルシステム&サービスセグメントの増収等によるものです。 海外 海外売上収益は、増収となり、売上収益全体に占める比率は、前年度に比べて2ポイント増加し63%となりました。各地域の状況は、以下のとおりです。(北米) 増収となりました。これは主として、デジタルシステム&サービスセグメントのサービス&プラットフォーム事業における顧客投資抑制による減収影響等があったものの、エナジーセグメントにおけるパワーグリッド事業が増収となったこと等によるものです。 (欧州) 増収となりました。これは主として、エナジーセグメントにおいてパワーグリッド事業が増収となったこと及びモビリティセグメントにおいてThales社の鉄道信号関連事業の買収効果に伴う増収があったこと等によるものです。 (アジア) 中国及びASEAN・インド他から成るアジアは、増収となりました。これは主として、コネクティブインダストリーズセグメントにおいて中国における新設昇降機の需要減少による減収の影響等があったものの、同セグメントにおける計測分析システム事業が増収となったこと等によるものです。 (その他の地域) 増収となりました。これは主として、エナジーセグメント及びモビリティセグメントにおいて増収となったこと等によるものです。 (3)財政状態及びキャッシュ・フローの状況の分析①流動性と資金の源泉財務活動の基本方針当社は、現在及び将来の事業活動のための適切な水準の流動性の維持及び機動的・効率的な資金の確保を財務活動の重要な方針としています。当社は、運転資金の効率的な管理を通じて、事業活動における資本効率の最適化を図るとともに、グループ内の資金の管理を当社や海外の金融子会社に集中させることを推進しており、グループ内の資金管理の効率改善に努めています。当社は、経営管理指標にROICを導入し、資本効率の向上と収益性の高い事業の成長を経営として推進しています。ROICは、事業に投じた資金(投下資本)によって生み出されたリターンを評価する指標で、税引後の事業利益を投下資本で除すことで算出します。リターンを上げるためにはROICが投下資本の調達コストである加重平均資本コスト(WACC)を上回る必要があります。 また、収益性を図る主要な指標として、Adjusted EBITA(売上収益から、売上原価並びに販売費及び一般管理費の額を減算して算出した指標である調整後営業利益に、企業結合により認識した無形資産等の償却費を足し戻して算出した指標)を用いています。 今後は、Adjusted EBITA率13%から15%及びROIC12%から13%をめざすとともに、事業買収における投資判断の基準としてもAdjusted EBITA率及びROICを用いることで、投資判断の規律を徹底し、収益力の強化と事業資産の効率向上をさらに図っていきます。 資金需要の動向 当社の主要な資金使途は、成長に向けたM&A、人財への投資、設備投資や研究開発投資、株主還元等です。コア・フリー・キャッシュ・フロー及び資産売却で得た資金を、これらの成長投資や株主還元にバランスよく配分していきます。 主なM&A等の案件については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注5.事業再編等」に、設備投資の実績及び計画については、「第3 設備の状況」に、株主還元の方針及び実績については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載しています。 資金の源泉当社は、営業活動によるキャッシュ・フロー並びに現金及び現金同等物を内部的な資金の主な源泉と考えており、短期投資についても、直ちに利用できる財源となりうると考えています。また、資金需要に応じて、国内及び海外の資本市場における債券の発行及び株式等の資本性証券の発行並びに金融機関からの借入により資金を調達することが可能です。設備投資やM&Aのための資金については、主として内部資金により充当することとしており、必要に応じて社債や株式等の発行により資金を調達することとしています。借入により資金を調達する場合には、D/Eレシオ、有利子負債/EBITDA倍率等の財務規律に照らし、適正な財政状態を維持する方針としています。当社は、機動的な資金調達を可能とするため、3,000億円を上限とする社債の発行登録を行っています。 当社及び一部の子会社は、資金需要に応じた効率的な資金の調達を確保するため、複数の金融機関との間でコミットメントラインを設定しています。当社においては、契約期間1年・3年で期間満了時に更新するコミットメントライン契約を締結しています。2026年3月31日現在における当社のコミットメントライン契約に係る借入未実行残高は5,050億円です。 当社は、ムーディーズ・ジャパン㈱(ムーディーズ)、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン㈱(S&P)及び㈱格付投資情報センター(R&I)から債券格付けを取得しています。2026年3月31日現在における格付けの状況は、次のとおりです。 格付会社長期会社格付け短期会社格付けムーディーズA2P-1S&PAA-1R&IAAa-1+ 当社は、現在の格付け水準の下で、引き続き、国内及び海外の資本市場から必要な資金調達が可能であると考えており、格付け水準の維持・向上を図っていきます。 ②キャッシュ・フロー 当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は、以下のとおりです。 (営業活動に関するキャッシュ・フロー) 営業活動に関するキャッシュ・フローは、前年度に比べて4,958億円の資金の増加となり、1兆6,680億円の収入となりました。これは、事業再編等損益等を除く当期利益の増加や、前受金(契約負債)の獲得による収入の増加等によるものです。 (投資活動に関するキャッシュ・フロー) 投資活動に関するキャッシュ・フローは、前年度に比べて2,320億円の資金の増加となり、3,415億円の支出となりました。これは、有形固定資産の取得による支出が前年度に比べて増加したものの、前年度においてThales社の鉄道信号関連事業を買収したこと等による支出があったことに加え、当年度においてJCH株式を売却したことによる収入があったこと等によるものです。 (財務活動に関するキャッシュ・フロー) 財務活動に関するキャッシュ・フローは、前年度に比べて5,469億円の資金の減少となり、9,710億円の支出となりました。これは、自己株式の取得による支出の増加や、短期借入金及び長期借入金の純支出額(収入額と支出額の差)が増加したこと等によるものです。 フリー・キャッシュ・フロー(営業活動に関するキャッシュ・フローと投資活動に関するキャッシュ・フローを合わせたもの)は、前年度に比べて7,279億円の資金の増加となり、1兆3,265億円の収入となりました。 また、コア・フリー・キャッシュ・フロー(フリー・キャッシュ・フローから、M&Aや資産売却他に係るキャッシュ・フローを除いた経常的なキャッシュ・フロー)は、前年度に比べて3,896億円の資金の増加となり、1兆1,702億円の収入となりました。 これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前年度末に比べて4,572億円増加し、1兆3,234億円となりました。 ③資産、負債及び資本 当連結会計年度末の総資産は、受注・売上の拡大に伴う運転資金等の増加により、前年度末に比べて1兆7,564億円増加し、15兆412億円となりました。当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前年度末に比べて4,572億円増加し、1兆3,234億円となりました。 当連結会計年度末の有利子負債(短期借入金及び償還期長期債務を含む長期債務の合計)は、前年度末に比べて1,970億円減少し、1兆90億円となりました。金融機関からの借入やコマーシャル・ペーパー等から成る短期借入金は、前年度末に比べて297億円減少し、434億円となりました。償還期長期債務は、前年度末に比べて570億円増加し、4,258億円となりました。社債及び銀行や保険会社からの借入等から成る長期債務(償還期長期債務を除きます。)は、前年度末に比べて2,243億円減少し、5,397億円となりました。 当連結会計年度末の親会社株主持分は、前年度末に比べて7,212億円増加し、6兆5,683億円となりました。この結果、当連結会計年度末の親会社株主持分比率は、前年度末の44.0%に対して、43.7%となりました。 当連結会計年度末の非支配持分は、前年度末に比べて199億円増加し、2,042億円となりました。 当連結会計年度末の資本合計は、前年度末に比べて7,411億円増加し、6兆7,726億円となり、資本合計に対する有利子負債の比率は、前年度末から0.05ポイント減少し、0.15倍となりました。 (4)生産、受注及び販売の状況 当グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また、受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額又は数量で示すことはしていません。長期にわたり収益が認識される契約を有する主なセグメントについては、未履行の履行義務残高を、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注20.売上収益」に記載しています。また、販売の状況については、「(2)経営成績の状況の分析」において各セグメントの業績に関連付けて示しています。 (5)重要な会計方針及び見積り IFRSに基づく連結財務諸表の作成においては、期末日における資産・負債の報告金額及び偶発的資産・債務の開示並びに報告期間における収益・費用の報告金額に影響するような見積り及び仮定が必要となります。いくつかの会計上の見積りは、次の二つの理由により、連結財務諸表に与える重要性及びその見積りに影響する将来の事象が現在の判断と著しく異なる可能性があり、当グループの財政状態、財政状態の変化又は経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。第一は、会計上の見積りがなされる時点においては、不確実性がきわめて高い事項についての仮定が必要になるため、第二は、当連結会計年度における会計上の見積りに合理的に用いることがありえた別の見積りが存在し、又は時間の経過により会計上の見積りの変化が合理的に起こりうるためです。見積り及び仮定が必要となる重要な会計方針は、次のとおりです。 貸倒引当金 当グループは、売上債権及び契約資産並びにその他の債権に対して、測定した予想信用損失に等しい金額で貸倒引当金を計上しています。予想信用損失は、金融資産に関して契約上支払われるキャッシュ・フロー総額と、受取りが見込まれる将来キャッシュ・フロー総額との差額の割引現在価値を発生確率により加重平均して測定しています。支払遅延の存在、支払期日の延長、外部信用調査機関による否定的評価、債務超過等悪化した財政状況や経営成績の評価を含む、一つ又は複数の事象が発生している場合には、信用減損が生じた金融資産として個別的評価を行い、主に過去の貸倒実績や将来の回収可能額等に基づき予想信用損失を測定しています。信用減損が生じていない金融資産については、主に過去の貸倒実績に必要に応じて現在及び将来の経済状況等を踏まえて調整した引当率等に基づく集合的評価により予想信用損失を測定しています。予想信用損失は最善の見積りと判断により決定していますが、将来の取引先の財務状況の悪化や将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があります。 貸倒引当金の算定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注3 重要性がある会計方針の概要 (4)金融商品」に記載しています。貸倒引当金の増減内容は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注25 金融商品及び関連する開示 (2)財務上のリスク ③信用リスク」に記載しています。 長期請負契約等に係る見積り、コストの変動及び契約の解除 当グループは、インフラシステムの建設に係る請負契約をはじめ多数の長期契約を締結しており、一定の期間にわたり製品及びサービス等の支配の移転が行われる取引については、顧客に提供する当該製品及びサービス等の性質を考慮し、履行義務の充足に向けての進捗度を発生原価又はサービス提供期間に基づき測定し収益を認識しています。なお、当該進捗度を合理的に測定することができない場合は、発生したコストの範囲で収益を認識しています。長期請負契約等に基づく収益認識において、見積原価総額、見積収益総額、契約に係るリスクやその他の要因について重要な仮定を用いて見積る必要がありますが、かかる見積りは変動する可能性があります。当グループは、これらの見積りを継続的に見直し、必要と考える場合には調整を行っています。当グループは、価格が確定している契約の予測損失は、その損失が見積られた時点で費用計上していますが、かかる見積りは変動する可能性があります。また、コストの変動は、当グループのコントロールの及ばない様々な理由によって発生する可能性があります。さらに、当グループ又はその取引相手が契約を解除する可能性もあります。このような場合、当グループは、当該契約に関する当初の見積りを見直す必要が生じ、かかる見直しは、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。 企業結合 企業結合の会計処理は取得法を用いています。被取得会社の有形資産のほか、技術やブランド、顧客リストといった無形資産も公正価値にて評価を行いますが、かかる評価において、個々の事案に応じた適切な前提条件や将来予測に基づき、見積りを行います。評価は通常、独立した外部専門家が評価プロセスに関与しますが、評価における重要な見積り及び前提には固有の不確実性が含まれます。当グループは、主要な前提条件の見積りは合理的であると考えていますが、実際の結果が異なる可能性があります。 資産の減損 当グループは、保有し、かつ使用している資産の帳簿価額について、帳簿価額の回収ができなくなる可能性を示す事象又は状況の変化が生じた場合は、減損の兆候の有無を判定します。この判定において、資産の帳簿価額が減損していると判断された場合は、帳簿価額が回収可能価額を超える金額を減損損失として認識します。各資産及び資金生成単位又は資金生成単位グループごとの回収可能価額は、処分費用控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い方で算定しています。 公正価値を算定するために用いる評価技法として、主に当該資産等の使用及び最終処分価値から期待される見積将来キャッシュ・フローに基づくインカム・アプローチ(現在価値法)又は類似する公開企業との比較や当該資産等の時価総額等、市場参加者間の秩序ある取引において成立しうる価格を合理的に見積り算定するマーケット・アプローチを用いています。使用価値は、経営者により承認された事業計画を基礎とした将来キャッシュ・フローの見積額を、加重平均資本コストをもとに算定した割引率で現在価値に割り引いて算定しており、現時点で合理的であると判断される一定の前提に基づいていますが、マーケットに係るリスク、経営環境に係るリスク等により、実際の結果が大きく異なることがありえます。また、使用価値の算定に使用する割引率については、株式市場の動向や金利の変動等により影響を受けます。将来キャッシュ・フロー及び使用価値の見積りは合理的であると考えていますが、将来キャッシュ・フローや使用価値の減少をもたらすような予測不能な事業上の環境の変化に起因する見積りの変化が、資産の評価に不利に影響する可能性があります。当グループは、公正価値及び使用価値算定上の複雑さに応じ、外部専門家を適宜利用しています。 のれんは、事業買収で獲得する市場競争力を基礎とする超過収益力の源泉であり、被取得会社の純資産と、取得の対価の差額の内、無形資産等に計上された額以外をのれんとして計上します。のれんは、IFRSに基づき、償却をせず、減損の兆候の有無にかかわらず、毎年、主に第4四半期において、その資産の属する資金生成単位又は資金生成単位グループごとに回収可能価額を見積り、減損テストを実施しています。また、当初の見積りと直近の見積りを比較するモニタリングを継続し、事業戦略の変更や市場環境等の変化により、その価値が当初の見積りを下回り、帳簿価額が回収不可能であるような兆候がある場合には、その都度、減損テストを実施しています。当該事象や状況の変化には、世界的な経済や金融市場における危機も含まれ、その資産の属する資金生成単位又は資金生成単位グループの帳簿価額が回収可能価額を超える場合には、その超過額を減損損失として認識しています。 減損及びのれんのセグメントごとの内訳は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注4 セグメント情報」に記載しています。主な内容は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注9 有形固定資産 及び 注10 のれん及びその他の無形資産」に記載しています。 繰延税金資産 繰延税金資産は、将来の期に回収されることとなる税額であり、実現可能性を評価するにあたり、当グループは、同資産の一部又は全部が実現しない蓋然性の検討を行っています。実現可能性は確定的ではありませんが、実現可能性の評価において、当グループは、繰延税金負債の振り戻しの予定及び予測される将来の課税所得を考慮しています。将来の課税所得の見積りの基礎となる、将来の業績の見通しは、経済の動向、市場における需給動向、製品及びサービスの販売価格、原材料及び部品の調達価格、為替相場の変動、急速な技術革新等予見しえない事象により実際とは異なる結果となり、将来において修正される可能性があります。その結果、認識可能と判断された繰延税金資産の金額に不利な影響を及ぼす可能性があります。繰延税金資産の実現可能性の評価は、各納税地域の各納税単位で行われており、類似の事業を営む場合でも、製品や納税地域の違いにより異なった評価となりえます。同資産が最終的に実現するか否かは、これらの一時差異等が、将来、それぞれの納税地域における納税額の計算上、課税所得の減額あるいは税額控除が可能となる会計期間において、課税所得を計上しうるか否かによります。これらの諸要素に基づき当グループは、2026年3月31日現在で認識可能と判断された繰延税金資産が実現する蓋然性は高いと判断していますが、実際に課税所得が生じる時期及び金額は見積りと異なる可能性があります。 退職給付に係る負債 当グループは、数理計算によって算出される多額の退職給付費用を負担しています。この評価には、死亡率、脱退率、退職率、給与の変更及び割引率等の退職給付費用を見積る上で利用される様々な数理計算上の仮定が含まれています。当グループは、人員の状況、市況及び将来の金利の動向等の多くの要素を考慮に入れて、数理計算上の仮定を見積る必要があります。数理計算上の仮定の見積りは、基礎となる要素に基づき、合理的なものであると考えていますが、実際の結果と合致する保証はありません。数理計算上の仮定が実際の結果と異なった場合、その結果として実際の退職給付費用が見積費用から乖離して、当グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。割引率の低下は、数理上の退職給付に係る負債の増加をもたらす可能性があります。また、当グループは、割引率等の数理計算上の仮定を変更する可能性があります。数理計算上の仮定の変更も、当グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。 退職後給付の算定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注3 重要性がある会計方針の概要 (11)退職後給付」に記載しています。 (6)将来予想に関する記述 「第2 事業の状況」の「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」、「3 事業等のリスク」及び「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」並びに「第4 提出会社の状況」の「5 従業員の状況等」等は、当社又は当グループの今後の計画、見通し、戦略等の将来予想に関する記述を含んでいます。将来予想に関する記述は、当社又は当グループが当有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の業績等の結果は見通しと大きく異なることがありえます。その要因のうち、主なものは以下のとおりです。・主要市場における経済状況及び需要の急激な変動・為替相場変動・資金調達環境・株式相場変動・原材料・部品の不足及び価格の変動・信用供与を行った取引先の財政状態・主要市場・事業拠点(特に日本、アジア、米国及び欧州)における政治・社会状況及び貿易規制等各種規制・気候変動対策に関する規制強化等への対応・情報システムへの依存及び機密情報の管理・人財の確保・新技術を用いた製品の開発、タイムリーな市場投入、低コスト生産を実現する当社及び子会社の能力・地震・津波等の自然災害、気候変動、感染症の流行及びテロ・紛争等による政治的・社会的混乱・長期請負契約等における見積り、コストの変動及び契約の解除・価格競争の激化・製品等の需給の変動・製品等の需給、為替相場及び原材料価格の変動並びに原材料・部品の不足に対応する当社及び子会社の能力・社会イノベーション事業強化に係る戦略・企業買収、事業の合弁及び戦略的提携の実施並びにこれらに関連する費用の発生・事業再構築のための施策の実施・持分法適用会社への投資に係る損失・当社、子会社又は持分法適用会社に対する訴訟その他の法的手続・製品やサービスに関する欠陥・瑕疵等・自社の知的財産の保護及び他社の知的財産の利用の確保・退職給付に係る負債の算定における見積り

事業リスク

  • 経済環境の変動
    日立の事業は、世界経済や特定の国・地域の経済情勢、地政学的情勢に大きく影響されます。景気減速や紛争の激化は、個人消費や設備投資の低下、経済活動の制約・停止を招き、製品・サービスの需要減少や供給網の混乱を通じて、日立の事業、財政状態、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。日立は多様な事業分野と地域で事業を展開することでリスク分散を図っていますが、影響を完全に排除することは困難です。
  • 為替相場の変動
    日立は世界各地で事業を展開しているため、為替相場の変動リスクに常にさらされています。円高は、海外での売上を円換算した際に減少させたり、原材料・部品の輸入コストを上昇させたりする可能性があります。これにより、日立の経営成績が悪化する恐れがあります。また、為替変動が価格競争力に影響を与え、収益性を損なう可能性もあります。日立は為替予約や地産地消戦略で対応していますが、変動の影響を完全に回避することはできません。
  • 資金調達環境の変化
    日立は、事業活動に必要な資金を営業キャッシュ・フロー、金融機関からの借入、資本市場からの資金調達に依存しています。世界経済の悪化や金利上昇は、営業キャッシュ・フローの減少や資金調達コストの増加を招き、日立の財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、債券格付けの引き下げは、有利な条件での資金調達を困難にし、事業拡大や投資計画に支障をきたす恐れがあります。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「事業等のリスク」の全文を見る(年度切替)
FY2026|18,729 文字
3【事業等のリスク】(1)リスクマネジメントについて 日立の事業活動は、AI等のデジタル技術の革新やグローバル化の進展等を経て変容しており、経営に重大な影響を与えうるリスクの種類が多様化しています。個々のリスクは、相互に作用し、連鎖的・複合的に事業活動に影響を及ぼしうるため、当該リスクの性質や発生可能性、発生した場合の日立への影響度等の観点から、多面的に捉える必要があります。また、日立が中長期的に企業価値を向上させていくためには、リスクを単に「脅威」として捉えるだけでなく、ビジネスの「機会」としてのポジティブな側面を捉え収益機会を創出しながら、リスクマネジメントを実施することが重要です。そのため、グループ全体で網羅的・効率的・組織的なリスクマネジメントを推進するべく、COSO-ERMやISO31000等の国際的なリスク管理フレームワークを参照し、グループ全体でのリスクマネジメント体制及びリスクマネジメントプロセスを整備しています。 ①リスクマネジメント体制 日立は、グループリスクマネジメントにかかる社内規程に基づき、グループのリスク情報を管理し、重要度の高いリスクに優先的に対応するための体制を整備しています。グループ全体におけるリスクマネジメントの責任者であるCRMO(Chief Risk Management Officer)が、リスクをグループ横断で把握し、経営会議及び取締役会に対してリスクへの対応状況等を報告します。 また、グループにおけるリスクマネジメントの機能及び役割を3つに分類・整理し、リスクマネジメント体制を構築しています(「3ラインモデル」)。それぞれの機能及び役割は以下の通りです。 第1ラインであるセクター及びビジネスユニット(BU)は、それぞれにセクターRMO(Risk Management Officer)とBU RMOを配置し、所管のセクター/BUのリスクマネジメントを実施・統括して、その状況をCRMO及びグループ・コーポレートへ報告します。 第2ラインであるグループ・コーポレートは、必要に応じてRMOを配置して各部門におけるリスクマネジメントを行うとともに、CRMOと連携し、第1ラインにおけるリスクマネジメントへの助言や支援、モニタリング等を行います。 第3ラインである監査室は、第1ライン、第2ラインから独立して、リスクマネジメントについての検証・評価をし、必要に応じて助言を行います。 上記に加えて、日本を含む各リージョンにもRMOを配置してCRMOと連携しながら、第1ラインに対して所管する地域の視点からリスクマネジメントの助言を行います。 今後は、RMO間の情報共有及び横断的な連携を一層活性化させ、グループ全体でのリスクマネジメント推進体制の強化を図っていきます。 ②リスクマネジメントプロセス 日立では、グループ共通のリスク項目及びリスクの評価方法等を定めた社内規程に基づき、社内外における経営環境の変化に合わせて、以下のようなプロセスにより、リスクの特定・評価、リスクへの対応及び改善を継続的に行っています。 (イ)リスクの特定・評価 セクター及びBUが、グループ共通のリスク項目を基に、当該事業活動に関連するリスクを特定し、発生時の影響度((注)1)と発生可能性((注)2)を評価します(ボトムアップアプローチ)。ボトムアップアプローチでの評価結果について、経営会議メンバー等が、グループ全体及びリスク全体等の観点から調整を行います(トップダウンアプローチ)。 トップダウンアプローチの結果をリスクヒートマップ等で整理しながら、経営会議において、グループトップリスクを選定します。さらに、その中で重点的に議論や対応が必要なものを重点取組み分野として設定します。(注)1.影響度「財務」「従業員」「顧客・ビジネスパートナー」「法規制」といった要素やステークホルダーの観点から評価します。 2.発生可能性過去の発生実績と、推定される将来の発生確度の観点から評価します。 (ロ)リスクへの対応 特定・評価されたリスクについて、回避、低減、移転又は受容等の観点から、リスク対応策を策定・実行します。また、戦略的な人財確保、サプライチェーン体制の強化等といった経営上の重要な分野を含む、上記(イ)のプロセスで設定された重点取組み分野については、経営会議において対応状況が報告され、対応策、対応スケジュール等について有効性や妥当性が議論されます。 (ハ)改善 リスクの特定、分析・評価、対応が適切に行われているかを確認し、必要に応じて改善を継続的に実施しながら、変化する経営環境に対応します。 また、「We Are All Risk Managers」というスローガンのもと、行動変革を促す教育プログラムや人財強化に取り組むことで、グループ全体のリスクカルチャー及びリスク・オーナーシップを醸成し、リスクマネジメントプロセスの実効性を高めることに努めています。 (2)リスク要因 当グループは、幅広い事業分野にわたり、世界各地において事業活動を行っています。また、事業を遂行するために高度で専門的な技術を利用しています。そのため、当グループの事業活動は、多岐にわたる要因の影響を受けています。その要因及び各リスク要因に対する対応策の主なものは、次のとおりです。 なお、これらは当有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断している一定の前提に基づいています。また、これらの対応策は各リスク要因の影響を完全に排除するものではなく、また、影響を軽減する有効な手段とはならない可能性があります。 ①経済環境に係るリスク経済の動向 当グループの事業活動は、世界経済及び特定の国・地域の経済情勢や地政学的情勢の影響を受けます。各国・地域や日本の景気が減速・後退する場合は、個人消費や設備投資の低下等をもたらします。また、特定の国・地域における紛争や緊張の高まりにより、当該国・地域を含むグローバルでの経済活動の制約や停止を余儀なくされることも考えられます。その結果、当グループが提供する製品・システム又はサービスの一部制限や需要の減少等により、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。 かかるリスクへの対応として、当グループは、様々な事業分野・地域において、多様な特性を持つ社会イノベーション事業を組み合わせる経営をしています。また、リスク評価等を通じて地政学的情勢の変化への迅速な対応を図っています。 為替相場の変動 当グループは、取引先及び取引地域が世界各地にわたっているため、為替相場の変動リスクにさらされています。当グループは、現地通貨建てで製品・サービスの販売・提供及び原材料・部品の購入を行っていることから、為替相場の変動は、円建てでの売上の低下やコストの上昇を招き、円建てで報告される当グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。当グループが、売上の低下を埋め合わせるために現地通貨建ての価格を上げた場合やコストの上昇分を吸収するために円建ての価格を上げた場合、当グループの価格競争力が低下し、それに伴い、経営成績は悪影響を受ける可能性があります。また、当グループは、現地通貨で表示された資産及び負債を保有していることから、為替相場の変動は、円建てで報告される当グループの財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 当事業年度末時点における2027年3月31日に終了する連結会計年度の為替感応度(見通しの為替レートから1円変動した場合の業績影響額)の見積りは、以下のとおりです。 通貨見通し為替感応度(億円)売上収益Adjusted EBITAドル150円/ドル14515ユーロ175円/ユーロ908 かかるリスクへの対応として、当グループでは、先物為替予約契約や通貨スワップ契約等の為替変動リスクのヘッジや製品・サービスの地産地消戦略の推進等を実行しています。 資金調達環境 当グループの主な資金の源泉は、営業活動によるキャッシュ・フロー、銀行等の金融機関からの借入並びにコマーシャル・ペーパー及びその他の債券、株式の発行等による資本市場からの資金調達です。当グループは、これらの資金源により事業活動やその他の流動資金の需要を充足できると考えていますが、世界経済の悪化や金融市場の混乱等により、資金調達環境や条件に影響を及ぼす可能性があります。世界経済が悪化した場合、当グループの営業活動によるキャッシュ・フロー、業績及び財政状態に悪影響を及ぼし、これに伴い当社の債券格付けにも悪影響を及ぼす可能性があります。債券格付けが引き下げられた場合や、金融市場の混乱等が生じた場合、当グループの資金調達コストが上昇し、当グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当グループの主要な取引金融機関が倒産した場合又は当該取引金融機関が当グループに対して融資条件の変更や融資の停止を決定した場合、当グループの資金調達に悪影響を及ぼす可能性があります。 かかるリスクへの対応として、当グループは、主にキャッシュ・フロー創出力強化及び継続的な保有資産の見直し推進等による資金源泉の確保に努めるとともに、金利上昇リスクを軽減するために金利スワップ取引等を利用しています。しかしながら、資金調達環境の変化によっては、当グループが有利と考える条件での追加的な資金調達が困難となる可能性があります。 株価の下落等 当グループは、他社との事業上の関係等を維持又は促進するため、株式等の有価証券を保有しています。かかる有価証券は、価値の下落リスクにさらされています。株式の市場価格等の価値の下落に伴い、当社及び連結子会社は、保有する株式等の評価損を計上しなければならない可能性があります。さらに、当社及び連結子会社は、契約その他の義務により、株価の下落等にかかわらず、株式等を保有し続けなくてはならない可能性があり、このことにより多額の損失を被る可能性もあります。 当事業年度末時点において、当社が保有している投資株式の銘柄数及び貸借対照表計上額は、以下のとおりです。 銘柄数(銘柄)貸借対照表計上額の合計額(百万円)非上場株式10421,206非上場株式以外の株式31250,312 かかるリスクへの対応として、当社は、取引や事業上必要である場合を除き、投資株式を取得・保有しないことを基本方針とし、既に保有している株式についても、保有意義や合理性が認められない限り、売却を進めています(保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式の保有方針及び保有の合理性の検証について、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (5) 株式の保有状況」参照)。 ②サプライチェーンに係るリスク原材料・部品の調達 当グループの生産活動は、調達パートナーが時宜に適った方法により、合理的な価格で適切な品質及び量の原材料、部品及びサービスを当グループに供給する能力に依存しています。需要過剰の場合、調達パートナーは当グループの全ての要求を満たすための十分な供給能力を有しない可能性があります。原材料、部品及びサービスの不足は、急激な価格の高騰を引き起こす可能性があります。また、米ドルやユーロをはじめとする現地通貨建てで購入を行っている原材料及び部品については、為替相場の変動の影響を受けます。石油、銅、鉄鋼、合成樹脂、レアメタル、レアアース等の市況価格の上昇は当グループの製造コストの上昇要因であり、当グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。一方、原材料及び部品等の商品価格が下落した場合には、棚卸資産の評価損等の損失が発生する可能性があります。さらに、自然災害等により、調達パートナーの事業活動やサプライチェーンが被害を受けた場合、当グループの生産活動に悪影響を及ぼす可能性があります。また、調達パートナーにおいて児童労働や強制労働等の労働者の人権に関する法令違反等が発生した場合、発注元としての当グループの評判の低下や、当該調達パートナーからの安定した原材料・部品の調達に支障が生じ、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。 かかるリスクへの対応として、当グループは、複数の調達パートナーとの緊密な関係構築や製品・サービスの地産地消戦略の推進による各地域における需要変動への適切な対応、長期契約等による価格変動リスク低減、国内及び主要海外拠点における事業継続計画(BCP)の策定による事業中断リスクへの対応力強化、グループ全体としての調達機能の活用・強化等を実行しているほか、調達パートナーにおける法令違反等の発生を防ぐため、質問票を用いた自己点検や監査、理解促進の取組を実施しています。 取引先の信用リスク 当グループは、国内外の様々な顧客及び調達パートナーと取引を行っており、売掛金、前渡金等の信用供与を行っています。取引相手の財政状態の悪化や経営破綻等が生じた場合、当グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに悪影響を及ぼす可能性があります。 かかるリスクへの対応として、当グループでは、定期的な信用調査や信用リスクに応じた取引限度額の設定等、信用リスクの管理のための施策を実施しています。 ③海外事業における地政学等のリスク海外における事業活動 当グループは、事業戦略の一環として海外市場における事業の拡大を図っており、これを通じて、売上の増加、コストの削減及び収益性の向上等の実現をめざしています。当グループの海外事業は、事業を行う海外の各国において、以下を含む様々な要因による悪影響を受ける可能性があります。・投資、輸出、関税、公正な競争、贈賄禁止、消費者及び企業に関する税制、知的財産、外国貿易及び外国為替に関する規制、人権や雇用・労働に関する規制、環境及び資源・エネルギーに関する規制・取引条件等の商慣習の相違・労使関係、労働慣行の変化・対日感情、地域住民感情の悪化、各種団体等による批判やキャンペーン・国家間や国内における紛争の拡大と頻発・国家の安全保障や外交政策の変化・各国の経済安全保障政策の強化・その他の政治的及び社会的要因、地政学リスク、経済の動向並びに為替相場の変動 これらの要因により、当グループが、海外における成長戦略の目的を達成できる保証はなく、当グループの事業の成長見通し及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。 かかるリスクへの対応として、当グループは、グローバルな政治・経済情勢等を定常的に把握して事業に及ぼす影響を分析し、海外リスク資産の移転を行う等、グループ全体での対応を実行しています。 ④環境に係るリスク気候変動対策に関する規制強化等(脱炭素への移行リスク) 当グループは、炭素税、燃料・エネルギー消費への課税、非化石エネルギーの調達や排出権取引等の導入に伴う事業コストの負担増、製品・サービスの技術開発の遅れによる販売機会の逸失、投資家や社会に当グループの気候変動問題への取組姿勢が評価されない場合に、当グループの事業活動、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 かかるリスクへの対応として、環境長期目標「日立環境イノベーション2050」を掲げ、脱炭素化の実現に向けた様々な取組を進めており、今後も目標達成に向けた取組をさらに加速していきます。事業所においては2030年度カーボンニュートラルをめざしており、日立インターナルカーボンプライシング導入等による省エネ機器・再生可能エネルギーによる電力の導入の推進、生産・輸送のさらなる効率化、非化石エネルギー由来の電力利用の促進等により、炭素税等の事業コスト負担増加等の回避・軽減や評価リスクの低減を図っています。バリューチェーンにおいては2050年度までのネットゼロをめざし、温室効果ガス(GHG)排出量削減につながる革新的な製品・サービスの開発・拡販に加え、省エネルギー化を通じたエネルギー削減に資する製品・サービスの開発等をめざしています。 ⑤人的資本に係るリスク人財確保等 当グループの競争力を維持するためには、事業遂行に必要な優秀な人財を採用し、確保し続ける必要があります。特に、当グループは、現在、グローバルに活躍できる人財や顧客に近いところでニーズをくみ取り、最適なソリューション・サービスを提供することができる人財、持続的な成長をけん引するグローバルリーダー、AIプロフェッショナル人財等を求めています。しかしながら、優秀な人財は限られており、かかる人財の採用及び確保の競争は激化しています。当グループがこのような優秀な人財を新たに採用し、又は雇用し続けることができる保証はありません。また、当グループは、グローバルに事業を展開する中で、当グループ及び調達パートナー等の従業員等を含む、事業活動に関与する人員の安全及び健康の確保が事業継続の前提となっています。重大な労働災害や事故、職場における安全衛生管理の不備等が発生した場合には、従業員等の就労不能、操業停止、プロジェクトの遅延等を招き、当グループの事業活動、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 かかるリスクへの対応として、当グループは、国内外で必要な人財をタイムリーに確保するため、競争力のある報酬の設定、多様な視点を取り入れた事業活動の推進、多様な人財が働きやすい職場づくりの推進とエンゲージメントの向上、グローバル共通の人事制度、人財プラットフォームの活用、社内教育プログラムの実践等による優秀な人財の確保・育成を図っています。加えて、当グループは、事業活動に関与する人員の安全及び健康の確保のため、国内外のグループ会社において統一的な安全衛生管理の枠組みのもと、事業特性に応じた労働安全衛生マネジメント体制の構築及び導入、定期的なリスクアセスメントの実施、教育・訓練の実施等を通じて、労働災害の未然防止と安全で健康的な就労環境の確保に努めています。 ⑥テクノロジーに係るリスク情報システムへの依存 当グループの事業活動において、情報システムの利用とその重要性は増大しています。コンピュータウイルスその他の要因によってかかる情報システムの機能に支障が生じた場合、当グループの事業活動、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 かかるリスクへの対応として、当グループは、継続的にサイバーセキュリティ対策等を推進しており、情報システムに適用される技術・製品・利用手順等を厳格に定めて運用していますが、従来にないサイバー攻撃を受けた場合や当社管理外のシステムに脆弱性があった場合には有効な手段とはならない可能性があります。 急速な技術革新 当グループの事業分野においては、新しい技術が急速に発展しています。先端技術の開発に加えて、先端技術を継続的に、迅速かつ優れた費用効率で製品・システム・サービスに適用し、これらの製品等のマーケティングを効果的に行うことは、競争力を維持するために不可欠です。例えば、現在、AIの活用、デジタル化・ロボット等による自動化、電動化、脱炭素や資源循環等の環境への技術革新への対応等が重要となっています。このような変化の潮流を捉え、顧客に価値を提供し続けるために、グループ内の研究開発及びコーポレートベンチャーファンドを通じたスタートアップへの投資に対して多くの経営資源を投入しています。これらの先端技術の開発が予定どおり進展しなかった場合、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。 かかるリスクへの対応として、当グループは、産官学によるオープンイノベーションやデジタル人財の確保・育成、Lumadaによる協創プロセスを通じた顧客ニーズの把握のほか、これらを通じたイノベーションエコシステムの形成を図っています。 ⑦自然災害に係るリスク大規模災害及び気候変動による物理的影響等(気候変動の物理的影響に関連したリスクを含む) 当グループは、日本国内において、研究開発拠点、製造拠点及び当社の本社部門を含む多くの主要施設を有しています。過去において、日本は、地震、津波、台風等多くの自然災害に見舞われており、今後も、大規模な自然災害により当グループの生産から販売に至る一連の事業活動が大きな影響を受ける可能性があります。また、海外においても、アジア、米国及び欧州等に拠点を有しており、各地の自然災害によって、当グループの事業拠点のほか、サプライチェーンや顧客の事業活動にも被害が生じる可能性があります。さらに、気候変動に起因して、渇水や海面上昇、長期的な熱波や洪水等の大規模な自然災害が、今後より一層深刻化する可能性があります。かかる大規模な自然災害により当グループの施設が直接損傷を受けたり破壊された場合、当グループの事業活動が中断したり、新たな生産や在庫品の出荷が遅延する可能性があるほか、多額の修理費、交換費用、その他の費用が生じる可能性があり、これらの要因により多額の損失が発生する可能性があります。大規模な自然災害により当グループの施設が直接の影響を受けない場合であっても、流通網又は供給網が混乱する可能性があります。また、感染症の流行や、テロ、犯罪、騒乱及び紛争等の各国・地域の不安定な政治的及び社会的状況により、当グループの事業活動が混乱する可能性があり、当グループの従業員が就労不能となったり、当グループの製品に対する消費者需要の低下や販売網及び供給網に混乱が生じたりする可能性があります。さらに、全ての潜在的損失に対して保険が付保されているわけではなく、保険の対象となる損失であってもその全てが対象とはならない可能性があり、また、保険金の支払いが異議の申立て等により遅延する可能性があります。自然災害その他の事象により当グループの事業遂行に直接的又は間接的な混乱が生じた場合、当グループの事業活動、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 かかるリスクへの対応として、当グループは、BCPの策定による事業中断リスクへの対応力強化等を図っており、また、工場新設時における洪水被害を想定した建設・工場内設備の配置等を行っています。 ⑧その他会社経営全般に影響を及ぼすリスク長期請負契約等に係る見積り、コストの変動及び契約の解除 当グループは、インフラシステムの建設に係る請負契約をはじめ多数の長期契約を締結しており、かかる長期請負契約等に基づく収益を認識するために、当該契約の成果が信頼性をもって見積ることができる場合、工事契約の進捗に応じて収益及び費用を認識しています。収益については、主に、見積原価総額に対する実際発生原価の割合で測定される進捗度に基づいて認識しています。また、当該契約の成果が信頼性をもって見積ることができない場合には、発生した工事契約原価のうち、回収される可能性が高い範囲でのみ収益を認識し、工事契約原価は発生した期間に費用として認識しています。長期請負契約等に基づく収益認識において、見積原価総額、見積収益総額、契約に係るリスクやその他の要因について重要な仮定を用いて見積る必要がありますが、かかる見積りは変動する可能性があります。当グループは、これらの見積りを継続的に見直し、必要と考える場合には調整を行っています。当グループは、価格が確定している契約の予測損失は、その損失が見積られた時点で費用計上していますが、かかる見積りは変動する可能性があります。また、コストの変動は、当グループのコントロールの及ばない様々な理由によって発生する可能性があります。さらに、当グループ又はその取引相手が契約を解除する可能性もあります。加えて、当該契約における仕様、役割分担、工程・納期、原価や品質等に関し、内外の要因によりプロジェクトマネジメントが適切に機能しない場合や、長期にわたる契約又は新規技術に関する案件等の高リスク案件においては、工程遅延や原価増加、契約違反に伴う損害賠償の発生、製品やシステム上の瑕疵への対応遅延等が生じるおそれがあります。これらの事象により、当該契約に関する見積りの前提に重大な変更が生じる場合があり、また、契約条件の見直しや契約の解除が必要となる可能性があります。このような場合、当グループは、当該契約に関する当初の見積りを見直す必要が生じ、かかる見直しは、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。 かかるリスクへの対応として、当グループは、契約締結前から受注形態、契約条件、リスク及びプロジェクト特性を把握・評価し、これらを踏まえてリスク管理を行っています。また、契約締結後も事業部門と財務部門等の関係部門間で情報共有を行い、プロジェクトの進捗、原価及びリスクを継続的に管理することにより、適時かつ正確な見積り及び適切なプロジェクト管理ができるよう努めています。 競争の激化 当グループの事業分野においては、大規模な国際的企業からスタートアップを含む専業企業に至るまで、多様な競合相手が存在しています。さらに近年では、AIやロボティクスをはじめとする先端テクノロジーの急速な進展と浸透により、競争環境や競争の在り方そのものが大きく変化しており、当グループの競争力に影響を及ぼす重要な要因となっています。 かかる状況下で競争力を維持するためには、当グループが提供するソリューション及びサービスは、技術、品質及びブランド価値に加え、機能性や使いやすさの面においても競争力を有するものでなければなりません。当グループは、かかるソリューション及びサービスを適時に市場に投入する必要がありますが、これらが競争力を有する保証はなく、競争力を有していない場合、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。 また、先端的なソリューション・システムやサービス等においても汎用品化や低コストの地域における製造・開発・サービス提供やクラウド化・自動化が進んでおり、価格競争を激化させています。その一方で、原材料価格や人件費等の高騰、関税影響、為替変動により、製品の製造・販売やサービスの提供等に係るコストが増加する可能性があります。これらの状況において、当グループが競合相手の価格と対等な価格を設定できない場合、当グループの競争力及び収益性が低下する可能性があり、競合相手の価格と対等な価格を設定した場合、そのソリューション及びサービスの提供が損失をもたらす可能性があります。 かかるリスクへの対応として、当グループは、研究開発によるイノベーションの強化や顧客との協創、Lumada事業の拡大の一環としてAIの活用及びHMAXの展開によるソリューションの高付加価値化、バリューエンジニアリング等による原価低減、グループ内リソースの活用拡大、顧客企業との価格転嫁交渉を図っています。 需要の急激な減少 当グループが他社と競合する市場における急激な需要の減少と供給過剰は、販売価格の下落、ひいては売上の減少及び収益性の低下を招く可能性があります。加えて、当グループは、需要と供給のバランスを取るため、過剰在庫や陳腐化した設備の処分又は生産調整を強いられる場合があり、これにより損失が発生する可能性があります。例えば、情報機器、昇降機、産業用機器等並びにエネルギー分野における送配電設備や関連システム及び鉄道分野における車両や信号・運行管理システム等の市場において需要と供給のバランスが崩れ、市況が低迷した場合、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、エネルギー分野及び鉄道分野においては、長期案件やプロジェクト型ビジネスの特性上、需要変動の影響が売上・損益に遅れて顕在化する可能性があります。 かかるリスクへの対応として、当グループは、製品等、ソリューション及びサービスの競争力の強化に加え、需要予測に基づく供給・在庫の適切な管理、案件ポートフォリオの最適化等を図っています。 社会イノベーション事業強化に係る戦略 当グループは、事業戦略として、主に社会イノベーション事業の強化によって、成長性が高く、安定的な収益を得られる事業構造を確立することをめざしています。当グループは、社会イノベーション事業を強化するため、設備投資や研究開発等の経営資源を重点的に配分することを計画しているほか、企業買収・新規プロジェクトへの投資も行っています。また、市場の変化に応じて社会イノベーション事業を効果的に展開するため、適切な事業体制の構築を図っています。かかる戦略を実行するため、当グループは、多額の資金を支出しており、今後も継続する予定です。かかる戦略のための当グループの取組は、成功しない、又は当グループが現在期待している効果を得られない可能性があります。また、かかる取組によって、当グループが収益性の維持又は向上を実現できる保証はありません。 かかるリスクへの対応として、当グループは、各ビジネスユニット(BU)においてフェーズゲート管理を行っています。加えて、市場動向、他社動向、技術動向及び潜在リスク等様々な視点からの分析・議論についても、投融資戦略委員会、経営会議、取締役会及び監査委員会において実施しています。 企業買収、合弁事業及び戦略的提携 当グループは、各事業分野において、重要な新技術や新製品の設計・開発、製品・システムやサービスの補完・拡充、事業規模拡大による市場競争力の強化及び新たな地域や事業への進出のための拠点や顧客基盤の獲得等のため、他企業への買収及び出資、事業の合弁や外部パートナーとの戦略的提携を実施しています(当グループの経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性がある案件について、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注5.事業再編等」参照)。このような施策は、事業遂行、技術、製品及び人事上の統合又は投資の回収が容易でないことから、本質的にリスクを伴っています。統合は、時間と費用がかかる複雑な問題を含んでおり、適切な計画のもとで実行されない場合、当グループの事業に悪影響を及ぼす可能性もあります。また、事業提携は、当グループがコントロールできない提携先の決定や能力又は市場の動向によって影響を受ける可能性があります。これらの施策に関連して、統合に関する費用や買収事業の再構築に関する費用等、買収、運営その他に係る多額の費用が当グループに発生する可能性があります。これらの費用のため、大規模な資金調達を行う場合、財政状態の悪化や資金調達能力の低下が発生する可能性があります。また、投資先事業の収益性が低下し、投資額の回収が見込めない場合、のれんの減損等、多額の損失が発生する可能性があります。当連結会計年度末時点で、デジタルシステム&サービスセグメントにおいて1,429,043百万円、エナジーセグメントにおいて659,712百万円、モビリティセグメントにおいて275,583百万円、コネクティブインダストリーズセグメントにおいて283,163百万円ののれんを計上しています(セグメント別ののれんの金額について、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注4.セグメント情報」参照)。これらの施策が当グループの事業及び財政状態に有益なものとなる保証はなく、これらの施策が有益であるとしても、当グループが買収した事業の統合に成功せず、又は当該施策の当初の目的の全部又は一部を実現できない可能性があります。 かかるリスクへの対応として、当グループは、各ビジネスユニット(BU)におけるフェーズゲート管理に加え、市場動向、業界動向、戦略、買収価格、PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)プロセス及び潜在リスク等様々な視点からの分析・議論を、投融資戦略委員会、経営会議、取締役会及び監査委員会において実施しています。 事業再構築 当グループは、以下の事業ポートフォリオ再構築の取組等により、成長性が高く、安定的な収益の得られる事業構造の確立を図っています。 ・不採算事業からの撤退 ・当社の子会社及び関連会社の売却 ・製造拠点及び販売網の再編 ・資産の売却 当グループによる事業再構築の取組は、各国政府の規制、雇用問題又は当グループが売却を検討している事業に対するM&A市場における需要不足等により、時宜に適った方法によって実行されないか、又は全く実行されない可能性があります。事業再構築の取組は、顧客又は従業員からの評価の低下等、予期せぬ結果をもたらす可能性もあり、また、過去に事業再構築に関連して有形固定資産や無形資産の減損、在庫の評価減、有形固定資産の処分及び有価証券の売却に関連する損失等が生じましたが、このような多額の費用が将来も発生する可能性があります。現在及び将来における事業再構築の取組は、成功しない、又は当グループが現在期待している効果を得られず、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。 かかるリスクへの対応として、当グループは、市場動向、業界動向、戦略、売却価格、プロセス及び潜在リスク等様々な視点からの分析・議論を、投融資戦略委員会、経営会議、取締役会及び監査委員会において実施しています。 持分法適用会社の業績の悪化 当社及び連結子会社は、多数の持分法適用会社を有しています。持分法適用会社の損失は、当社及び連結子会社の持分比率に応じて、連結財務諸表に計上されます。また、当社及び連結子会社は、持分法適用会社の回収可能価額が取得原価又は帳簿価額を下回る場合、当該持分法適用会社の株式について減損損失を計上しなければならない可能性もあります。 当連結会計年度末において、持分法で会計処理されている投資は、以下のとおりです。 (単位:百万円) セグメント2026年3月31日デジタルシステム&サービス68,517エナジー119,071モビリティ73,771コネクティブインダストリーズ55,696その他4,839小計321,894全社及び消去(注)290,248合計612,142(注)Astemo㈱及びその子会社に係る持分法で会計処理されている投資については、「全社及び消去」に含まれています。 かかるリスクへの対応として、当グループは、投下資本利益率(ROIC)を用いた投資収益管理を推進し、収益性・成長性の高い分野へ投資を集中させるとともに、投資した持分法適用会社については投資実行後も事業計画の達成状況や財務状況を把握し、低収益事業や将来の競争力に懸念のある投資先については売却を行う等の施策を行っています。 訴訟その他の法的手続 当グループは、事業を遂行する上で、訴訟や規制当局による調査及び処分等に関するリスクを有しています。訴訟その他の法的手続により、当グループに対して巨額又は算定困難な金銭支払いの請求又は命令がなされ、また、事業の遂行に対する制限が加えられる可能性があり、これらの内容や規模は長期間にわたって予測し得ない可能性があります。過去、当グループは、一部の製品において、競争法違反の可能性に関する日本、欧州及び北米等の規制当局による調査の対象となり、また、顧客等から損害賠償等の請求を受けています(当グループの経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性がある案件について、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注29.コミットメント及び偶発事象」参照)。これらの調査や紛争の結果、複数の法域において多額の課徴金や損害賠償金等の支払いが課される可能性があります。かかる重大な法的責任又は規制当局による処分は、当グループの事業、経営成績、財政状態、キャッシュ・フロー、信用及び評判に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当グループに対する法的責任が認められず、規制当局による処分や損害賠償金等の支払いが課されなかった場合であっても、当グループの信用及び評判に悪影響を及ぼす可能性があります。 さらに、当グループの事業活動は、当グループが事業を行う国々で様々な政府による規制の対象となります。かかる政府による規制は、投資、輸出、関税、公正な競争、贈賄禁止、消費者及び企業に関する税制、知的財産、外国貿易及び外国為替に関する規制、人権や雇用・労働に関する規制、環境及び資源・エネルギーに関する規制を含みます。これらの規制は、当グループの事業活動を制限し又はコストを増加させ、また、新たな規制又は規制の変更は、当グループの事業活動をさらに制限し又はコストを増加させる可能性もあります。さらに、規制違反に係る罰金又は課徴金等、規制の執行が、当グループの経営成績、財政状態、キャッシュ・フロー、信用及び評判に悪影響を及ぼす可能性があります。また、個人データ保護規制等への対応についても、事業に悪影響を及ぼす可能性があります。 かかるリスクへの対応として、当グループは、規制の適用を受ける業務の特定、リスク評価、リスクに応じた措置の実行及び従業員に対する教育等を実施しています。 製品の品質と責任 当グループの製品・サービスには、高度で複雑な技術を利用したものが増えています。また、部品等を外部の調達パートナーから調達することにより、品質確保へのコントロールが低下します。当グループの製品・サービスに欠陥等が生じた場合又は品質に関する不適切行為があった場合、当グループの製品・サービスの質に対する信頼が悪影響を受け、当該欠陥等から生じた損害について当グループが責任を負う可能性があるとともに、当グループの製品の販売能力に悪影響を及ぼす可能性があり、当グループの経営成績、財政状態及び将来の業績見通しに悪影響を及ぼす可能性があります。 かかるリスクへの対応として、当グループは、事故未然防止活動、技術法令の遵守活動、リスクアセスメントの徹底、品質・信頼性や製品事故発生時の対応に関する教育等を行っています。さらに、当グループでは、顧客の安全と安心を第一に行動できる体制として、品質保証部門を事業部門内の設計部門及び製造部門から独立させています。加えて、過去の当社子会社における品質に関する不適切行為を受け、品質保証部門を、組織上事業部門からも分けることで、より独立性を強化しています。また、事業部門を担当する品質保証部門と本社の品質保証統括本部とのレポートラインを強化し、品質保証部門間で密な情報共有を図る仕組みを構築しています。 機密情報の管理 当グループは、顧客から入手した個人情報並びに当グループ及び顧客の技術、研究開発、製造、販売及び営業活動等に関する機密情報を様々な形態で保持及び管理しています。かかる情報が権限なく開示された場合、当グループが損害賠償を請求され又は訴訟を提起される可能性があり、また、当グループの事業、財政状態、経営成績、信用及び評判に悪影響を及ぼす可能性があります。 かかるリスクへの対応として、当グループは、機密情報管理に関する規則・運用を定め、暗号化や認証基盤の構築によるID管理とアクセス制御等を行うとともに、調達パートナーに対しても情報セキュリティ状況の確認・審査等を行っています。 AIの利活用 当グループの事業活動において、イノベーションの源泉としてのAIの利活用は欠かせないこととなっています。AIエージェント、フィジカルAIを含むすべてのAIの利活用には、多くの利点がある反面、情報漏えい、知的財産権やプライバシーの侵害、誤った判断や想定外の動作等による製品の品質への影響や製品事故等により、当グループの信用・評判の棄損や、経済的な損失が生じる可能性があります。また、AI技術に対する国内外の法規制の不確実性が当グループの事業活動、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。 かかるリスクへの対応として、当グループは、AIに関する倫理原則及び倫理方針を策定し、当方針のもと設置されたAI統括委員会において、当グループにおけるAIに関するリスクを統制することにより、AIガバナンスに取り組んでいます。また、AIエージェントの利活用に関するガイドラインの作成や、社員教育の実施により、当グループの社員がAIを利活用する際のリスクを正しく理解し、安心安全な事業活動ができるよう努めています。さらに、AIに関する国内外の法規制の動向や事案等を把握、分析するとともに、外部専門家と連携を図ることで、社会変化に則したAIガバナンスの強化を図っています。AIに関するリスクを適切にマネジメントしながら、最先端技術を安全に利用することで、未来の課題を解決し、サステナブルな社会の実現に貢献していきます。 知的財産 当グループの事業は、製品、製品のデザイン、製造過程及び製品・ソフトウェアを組み合わせてサービスの提供を行うシステム等に関する特許権、意匠権、商標権及びその他の知的財産権を日本及び各国において取得できるか否かに依存する側面があります。当グループがかかる知的財産権を保有しているとしても、競争上優位に立てるという保証はありません。様々な当事者が当グループの特許権、意匠権、商標権及びその他の知的財産権について異議を申し立て、無効とし、又はその使用を避ける可能性があります。また、将来取得する特許権に関する特許請求の範囲が当グループの技術を保護するために十分に広範なものである保証はありません。当グループが事業を行っている国において、特許権、意匠権、著作権及び企業秘密に対する有効な保護手段が整備されていないか、又は不十分である可能性があり、当グループの企業秘密が従業員、契約先等によって開示又は不正流用される可能性があります。 かかるリスクへの対応として、当グループは、出願前に公知例調査を行うことで、権利の成立可能性の向上及び事業に即した権利の取得を図っています。また、知的財産の保護手段が整備されていない、又は、不十分な国においては、従業員や契約先との契約等により、不正利用の抑制を図っています。 当グループの多くの製品には、第三者からライセンスを受けたソフトウェア又はその他の知的財産が含まれています。当グループは、競合他社の保護された技術を使用することができない、又は不利な条件のもとでのみ使用しうることとなる可能性があります。かかる知的財産に関するライセンスを取得したとしても経済的理由等からこれを維持できる保証はなく、また、かかる知的財産が当グループの期待する商業上の優位性をもたらす保証もありません。 かかるリスクへの対応として、当グループは、当該第三者と契約・交渉により良好な関係を維持し、知的財産の実施権の確保を図っています。 当グループは、特許権、意匠権及びその他の知的財産に関して、提訴され、又は権利侵害を主張する旨の通知を受け取ることがあります。これらの請求に正当性があるか否かにかかわらず、応訴するためには多額の費用等が必要となる可能性があり、また、経営陣が当グループの事業運営に専念できない可能性や当グループの評判を損ねる可能性があります。さらに、権利侵害の主張が成功し、侵害の対象となった技術のライセンスを当グループが取得することができない場合、又は他の権利侵害を行っていない代替技術を使用することができない場合、当グループの事業は悪影響を受ける可能性があります。 かかるリスクへの対応として、当グループは、新たな製品の販売やサービスの提供開始前に、当該製品やサービスについて他社特許クリアランスを実施するとともに、必要な場合には製品やサービスの設計変更を行うこと等で、他社との係争の回避を図っています。 退職給付に係る負債 当グループは、数理計算によって算出される多額の退職給付費用を負担しています。この評価には、死亡率、脱退率、退職率、給与の変更及び割引率等の退職給付費用を見積る上で利用される様々な数理計算上の仮定が含まれています。当グループは、人員の状況、市況及び将来の金利の動向等の多くの要素を考慮に入れて、数理計算上の仮定を見積る必要があります。数理計算上の仮定の見積りは、基礎となる要素に基づき、合理的なものであると考えていますが、実際の結果と合致する保証はありません。数理計算上の仮定が実際の結果と異なった場合、その結果として実際の退職給付費用が見積費用から乖離して、当グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。割引率の低下は、数理上の退職給付に係る負債の増加をもたらす可能性があります。また、当グループは、割引率等の数理計算上の仮定を変更する可能性があります。数理計算上の仮定の変更も、当グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。 かかるリスクへの対応として、当社及び日立企業年金基金に加入する連結子会社においてはリスク分担型企業年金制度を採用し、掛金負担が固定化されること及び退職給付に係る負債が認識されないことにより財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼすリスクを低減しています。 株式の追加発行に伴う希薄化 当社は、将来、株式の払込金額が時価を大幅に下回らない限り、株主総会決議によらずに、発行可能株式総数のうち未発行の範囲において、株式を追加的に発行する可能性があります。将来における株式の発行は、その時点の時価を下回る価格で行われ、かつ、株式の希薄化を生じさせる可能性があります。

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