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ワコム(6727)は何で稼いでいるか — 事業の柱と依存度

電気機器 電機・精密

事業の概要

  • ブランド製品事業
    ワコムは、液晶ディスプレイ付きペンタブレットや、筆圧感知機能を備えたペンタブレットを開発・製造・販売しています。これらの製品は、コンピューターグラフィックデザイン、映画・アニメ制作、写真編集、工業デザイン、イラストレーションといったプロフェッショナルなクリエイティブ分野で広く利用されています。また、オンライン教育やテレワークといったビジネス用途にも展開しており、クリエイターやビジネスパーソンがデジタルで「描く」「書く」作業を効率的に行えるよう支援しています。
  • テクノロジーソリューション事業
    この事業では、デジタルペン技術(AESやEMR)を搭載したデジタルペン、マルチタッチセンサー、タッチパネルなどの部品やモジュールを提供しています。これらの技術は、タブレットPC、電子書籍リーダー、携帯端末などのモバイル機器に組み込まれ、ユーザーがより直感的で自然な操作を行えるように貢献しています。ワコムの独自技術が、様々なデバイスの入力体験を支えることで収益を上げています。
  • サービス業務等
    製品の開発・製造・販売だけでなく、関連するサービス業務も行っています。これは、製品のサポート、ソリューション提供、そして将来的にはデータとサービスを組み合わせた新たな収益モデルの構築を目指すものです。特に、教育、物流、医療、ウェルビーイングといった分野で、ハードウェアとサービスを一体化したモデルを展開し、筆跡データや時系列データを活用した価値創出を図っています。
出典: FY2026 有価証券報告書(AI要約)
セグメント構成
  • ブランド製品事業(Brand Business)
    この事業は、主にペンタブレットや液晶ディスプレイ付きペンタブレットといった完成品を世界中で販売しています。クリエイティブなプロフェッショナルやビジネスユーザー向けに、デジタルでの描画や入力体験を提供しており、287.45億円の売上を計上していますが、営業利益は-28.79億円と赤字となっています。これは、市場競争の激化や投資フェーズにあることが影響している可能性があります。
  • テクノロジーソリューション事業(Technology Solution Business)
    この事業では、デジタルペン技術(AES、EMR)を搭載した部品やモジュールを、タブレットPCやスマートフォンなどのモバイル機器メーカーに提供しています。主にサムスングループなどの大手顧客向けに、デバイスに組み込まれる基幹技術を提供しており、869.36億円の売上と184.95億円の営業利益を計上しており、ワコムグループの収益の大部分を占める稼ぎ頭となっています。
  • 地域別構成
    ワコムグループは、日本国内だけでなく、ワコムヨーロッパ、ワコムチャイナ、ワコムコリア、ワコムオーストラリアなど、世界各地に子会社を展開し、グローバルに事業活動を行っています。これにより、各地域の市場ニーズに合わせた製品やサービスを提供し、多様な顧客層に対応しています。特にテクノロジーソリューション事業では、海外の大手メーカーとの取引が中心であり、グローバルなサプライチェーンと販売網が事業を支えています。
2025-03 セグメント別業績
セグメント区分売上(億)営業利益(億)営業利益率
BrandBusiness 地域 287 -29 -10.0%
TechnologySolutionBusiness 地域 869 185 21.3%
有価証券報告書「事業の内容」の全文を見る(年度切替)
FY2026|919 文字
3【事業の内容】当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、ブランド製品事業及びテクノロジーソリューション事業における製品の開発・製造・販売を主な活動としているほか、サービス業務等を行っております。当社グループの事業内容及び当社と関係会社の当該事業に係る位置付けは次のとおりであります。なお、次の2事業は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」の区分と同一であります。 (1)ブランド製品事業製品区分主要な製品主要な関係会社クリエイティブソリューション・ディスプレイ液晶ディスプレイ面に直接描画と文字入力ができるペンタブレット・ペンタブレット筆圧感知ができるペンにより繊細な描画等が可能なペンタブレット及び簡単な操作で使用できるペンタブレット <使用用途>コンピューターグラフィックを利用したグラフィックスデザイン、映画やアニメの制作、写真編集、工業デザイン及びイラストレーション、ホームページデザイン、オンライン教育及びテレワークでの利用等当社ワコムヨーロッパワコムテクノロジーワコムチャイナワコムコリアワコムオーストラリアワコムホンコンワコムシンガポールワコムタイワンインフォメーションワコムインディアワコムベトナムサイエンスアンドテクノロジービジネスソリューション上記ディスプレイ、ペンタブレット等のビジネス用途向け製品 <使用用途>クリエイティブ、教育、医療・公共、デジタルサイン分野での利用等 (2)テクノロジーソリューション事業製品区分主要な製品主要な関係会社AESテクノロジーソリューションデジタルペン技術(アクティブES:Active Electrostatic/EMR:Electro Magnetic Resonance)を搭載した、デジタルペン、マルチタッチセンサー、タッチパネル等の部品及びモジュール <使用用途>タブレットPC、電子書籍や携帯端末等のモバイル機器への組み込み利用等当社ワコムチャイナワコムタイワンインフォメーションワコムベトナムサイエンスアンドテクノロジーEMRテクノロジーソリューション 以上の状況について事業系統図を示すと次のとおりであります。

事業の優位性(モート)

事業の質(有価証券報告書から抽出)
数字に出ない事業の性質を、同じ物差しで全銘柄そろえています。FY2025時点の記載が出典です。
価格決定力値上げを通せるか。強いほどインフレ耐性が高い 中程度
ペンタブレット部門で89.4%の販売台数シェアを持つが、競合参入や市場変化がある
参入障壁新規参入を阻む要因の種類 技術
デジタルペン技術(アクティブES、EMR)や筆圧感知技術などのコア技術
顧客集中度特定顧客への依存度。高いほど失注リスクが大きい 高い(依存)
景気敏感度業績が景気循環にどれだけ振られるか 中程度
規制依存規制は障壁にも足枷にもなる 中程度
会社が挙げる主要リスク:為替レートの変動 / 市場環境の変化 / 特定の販売先への依存
同じ条件で他の銘柄を探す → 定性スクリーニング(価格決定力・参入障壁・景気敏感度などで絞り込めます)
モート総合 11 / 25 5類型それぞれの強度と、そう判定した根拠
無形資産★★★★☆
根拠:強いブランド・特許・許認可

ワコムはペンタブレット市場において、長年にわたり培ってきたブランド力と、業界標準となっているデジタイザ技術(特許・ノウハウ)を有している。特に、プロフェッショナル向け市場での高い認知度と信頼性は、新規参入障壁となっている。

スイッチングコスト★★★☆☆
根拠:中程度乗り換えの手間・コスト

プロフェッショナルクリエイターやデザイナーは、長年使い慣れたワコムのペンタブレットとその設定、ソフトウェアとの連携に慣れており、他社製品への乗り換えには学習コストや生産性低下のリスクが伴う。特に、特定のワークフローに最適化しているユーザーほど乗り換えにくい。

ネットワーク効果☆☆☆☆☆
根拠:弱い利用者増が価値を生む

ワコムの製品自体に直接的なネットワーク効果は存在しない。ユーザーが増えることで製品の価値が向上するような仕組みはない。

コスト優位★☆☆☆☆
根拠:弱い同じ物を安く作れる

製造プロセスにおける効率化やサプライチェーン管理の最適化は行われていると考えられるが、競合他社と比較して構造的なコスト優位性を示す明確な証拠はない。むしろ、高付加価値製品に注力している。

規模の経済★★★☆☆
根拠:中程度規模が参入障壁になる

ペンタブレット市場、特にプロフェッショナル向け市場において、ワコムは主要プレイヤーであり、一定の市場シェアを確保している。この規模は、研究開発投資や生産能力の維持に寄与している。

  • ペン技術の専門性
    ワコムは長年にわたり、デジタルペンとタブレット技術の分野で高い専門性を培ってきました。特に、筆圧感知機能を持つペンタブレットや、アクティブES(Active Electrostatic)およびEMR(Electro Magnetic Resonance)といった独自のデジタルペン技術は、競合他社に対する明確な優位性となっています。これにより、プロフェッショナルクリエイターから高い評価を得ており、繊細な表現を可能にするツールとして市場での地位を確立しています。
  • クリエイティブ市場でのブランド力
    クリエイティブソリューション事業において、ワコムの製品はグラフィックスデザイン、映画・アニメ制作、写真編集などのプロフェッショナルな現場で広く使用されており、高いブランド認知度と信頼性を築いています。これは、長年の実績と製品の品質が評価された結果であり、新規参入企業が容易に追いつけない強固な顧客基盤とブランドロイヤルティを形成しています。
  • 主要顧客との強固な関係
    テクノロジーソリューション事業では、サムスングループなどの大手モバイル機器メーカーを主要な販売先としており、安定した取引関係を構築しています。ワコムのデジタルペン技術はこれらの企業の製品に不可欠な部品として組み込まれており、長年にわたる協業を通じて技術的な連携を深めています。これにより、特定の市場において高いシェアを維持し、安定的な収益源を確保しています。
出典: FY2026 有価証券報告書(AI要約)

経営戦略

  • 「Life-long Ink」ビジョンの推進
    ワコムは「Life-long Ink」というビジョンの下、中期経営計画『Wacom Chapter 4』を推進しています。これは、ワコムの技術を通じて人間と社会にとって意味のある体験を長期にわたり提供し続けることを目指すものです。特に「創る」「学ぶ/教える」「はたらく/楽しむ」「より人間らしく生きる」という4つのユースケース領域で、「書く」こと全般の総合的な体験を提供する「道具屋」として事業モデルを進化させ、AIやデジタル技術と連携して新たな体験価値を創出することを目指しています。
  • サービス型ビジネスへの転換と新規収益モデル構築
    既存のデバイス提供を起点とした事業モデルから、ハードウェア販売に加え、データとサービスによる新たな収益モデルの構築を目指しています。教育、物流、医療、ウェルビーイングといった領域で、ハードウェアとサービスを一体化した「All in Oneモデル」を展開し、筆跡データや時系列データを活用して新たな価値を創出します。これにより、継続的な収益を生み出すサービス型ビジネスを拡大し、収益基盤の強化を図ります。
  • 知的財産保護とクリエイター支援の事業化
    ワコム独自の技術を活用した「Wacom Yuify(ワコム ユイファイ)」を通じて、デジタル作品と作者を結び付け、知的財産(IP)流通の信頼性向上を支援する事業化を進めています。主要アプリケーションとの連携拡大やWebtoon市場での共同事業を通じて、サービス展開を拡大する計画です。これは、クリエイターが安心して作品を制作・流通できる環境を整えることで、新たな市場を創造し、ワコムの事業領域を広げる戦略です。
出典: FY2026 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「経営方針・対処すべき課題・MD&A」の全文を見る(年度切替)
経営方針・経営戦略
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。 (1)経営方針、経営戦略及び対処すべき課題当社グループは、「Life-long Ink」のビジョンの下、人間と社会にとって意味のある体験を、ワコムの技術を通して長い期間ご提供し続け、この世界を少しでも人間的なものにすることに寄与すべく、中期経営計画『Wacom Chapter 4』を推進してまいります。当社グループがこれまで磨き上げてきた要素技術をさらに高め統合し、新たな「かく」体験を実現する技術革新に取り組んでおります。また、コミュニティのユースケースを深く理解、発掘すべく、パートナーとともに体験とコミュニティの共創にも努めております。そして、「創る(Creation)」「学ぶ/教える(Learning/Teaching)」「はたらく/楽しむ、その先へ(Work/Play & Beyond)」「より人間らしく生きる(Well-being)」といった4つのユースケース領域で、「かく」こと全般の『総合的な体験を届ける“道具屋”』として事業モデルを一段と進化させるための戦略の展開を図ってまいります。さらに、4つのユースケース領域において、「かく」という人間の思考プロセスや身体の動的な変化をAIやデジタル技術へ接続し、新たな体験価値を創出することで、サービス体験の提供者としての事業成長を加速させてまいります。当社グループの中期経営計画『Wacom Chapter 4』においては、既存のデバイス提供を起点とした事業モデルから、ハードウェア販売に加え、データとサービスによる新たな収益モデルを構築し、価値提供を目指してまいります。AI時代において、PenとInkを「人間がAIを使いこなすための最適インタフェース」として再定義し、従来アクセスできなかった成長市場への展開を進めてまいります。その中で、第一に、競争力強化と新たな収益基盤の確立に取り組んでまいります。新インプット技術である「USM(Universal Sensor Module)」については、専用デジタイザー不要という特長を活かし、薄型化・軽量化・コスト低減を可能とする次世代技術として、商用化に向けた開発を推進してまいります。第二に、サービス型ビジネスへの転換を図ってまいります。教育、物流、医療、ウェルビーイング等の領域において、ハード+サービスのAll in Oneモデルを展開し、筆跡データや時系列データを活用した新たな価値創出に取り組んでおります。今後は、これらのユースケースを標準化・横展開することで、継続収益型ビジネスの拡大を目指してまいります。第三に、知的財産保護及びクリエイター支援領域の事業化を推進してまいります。当社独自技術を活用した「Wacom Yuify(ワコム ユイファイ)」については、デジタル作品と作者を結び付けることでIP流通の信頼性向上を支援しており、現在はユースケース開発を進めております。今後は、主要アプリケーションとの連携拡大やWebtoon市場における共同事業等を通じ、サービス展開の拡大を図ってまいります。第四に、新規事業領域の実装力及び経営基盤の強化に取り組んでまいります。株式会社リクロスエクスパンションの子会社化を通じて、DX実装力やサービス事業推進力を強化するとともに、M&Aや戦略提携も活用することで「Pen×Ink×AI」を軸とした成長機会の獲得を目指してまいります。さらに、持続的な企業価値向上に向け、コーポレートガバナンス及び人的資本経営の高度化を推進してまいります。多様性と独立性を備えた次世代への取締役会構成へ進化を図るとともに、多様な人材が能力を最大限発揮できる組織づくりにも取り組んでまいります。加えて、サステナビリティエンゲージメントを推進し、環境負荷低減やコミュニティとの共創も図ってまいります。当社グループは、これらの課題に着実に対処しながら、中長期的な企業価値向上に努めてまいります。 (2)経営環境世界経済はロシア・ウクライナ情勢及び中東情勢に起因した地政学的緊張が高まるなか、エネルギー資源、原材料価格の上昇による景況感に及ぼす影響について不透明感が続く状況であります。これらの情勢を背景に、企業業績に与える影響の大きい今後の為替相場の動向についても不透明感があります。IT市場を中心とする事業環境については、AI、クラウド、ブロックチェーン、モバイルなどの技術革新に伴う情報処理コストの低減と社会への実装がさらに進んでいくことが見込まれております。 (3)目標とする経営指標当社グループは、2026年3月期~2029年3月期を対象期間とするグループ中期経営計画『Wacom Chapter 4』を推進し、企業価値向上に向けて最終年度(2029年3月期)までに、次の経営指標を達成することを目標としております。 「企業価値向上」=「利益創出力の強化(※1)」×「市場評価の向上(※2)」※1 事業成長 連結売上高1,500億円、連結営業利益150億円資本効率性の改善 ROE(自己資本利益率)20%以上、ROIC(投下資本利益率)18%以上将来に向けた投資 R&D+設備投資620億円、技術資本提携120億円以上※2 株主還元強化 総還元性向50%以上、累進配当制度導入(年間配当金下限22円)
対処すべき課題
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。 (1)経営方針、経営戦略及び対処すべき課題当社グループは、「Life-long Ink」のビジョンの下、人間と社会にとって意味のある体験を、ワコムの技術を通して長い期間ご提供し続け、この世界を少しでも人間的なものにすることに寄与すべく、中期経営計画『Wacom Chapter 4』を推進してまいります。当社グループがこれまで磨き上げてきた要素技術をさらに高め統合し、新たな「かく」体験を実現する技術革新に取り組んでおります。また、コミュニティのユースケースを深く理解、発掘すべく、パートナーとともに体験とコミュニティの共創にも努めております。そして、「創る(Creation)」「学ぶ/教える(Learning/Teaching)」「はたらく/楽しむ、その先へ(Work/Play & Beyond)」「より人間らしく生きる(Well-being)」といった4つのユースケース領域で、「かく」こと全般の『総合的な体験を届ける“道具屋”』として事業モデルを一段と進化させるための戦略の展開を図ってまいります。さらに、4つのユースケース領域において、「かく」という人間の思考プロセスや身体の動的な変化をAIやデジタル技術へ接続し、新たな体験価値を創出することで、サービス体験の提供者としての事業成長を加速させてまいります。当社グループの中期経営計画『Wacom Chapter 4』においては、既存のデバイス提供を起点とした事業モデルから、ハードウェア販売に加え、データとサービスによる新たな収益モデルを構築し、価値提供を目指してまいります。AI時代において、PenとInkを「人間がAIを使いこなすための最適インタフェース」として再定義し、従来アクセスできなかった成長市場への展開を進めてまいります。その中で、第一に、競争力強化と新たな収益基盤の確立に取り組んでまいります。新インプット技術である「USM(Universal Sensor Module)」については、専用デジタイザー不要という特長を活かし、薄型化・軽量化・コスト低減を可能とする次世代技術として、商用化に向けた開発を推進してまいります。第二に、サービス型ビジネスへの転換を図ってまいります。教育、物流、医療、ウェルビーイング等の領域において、ハード+サービスのAll in Oneモデルを展開し、筆跡データや時系列データを活用した新たな価値創出に取り組んでおります。今後は、これらのユースケースを標準化・横展開することで、継続収益型ビジネスの拡大を目指してまいります。第三に、知的財産保護及びクリエイター支援領域の事業化を推進してまいります。当社独自技術を活用した「Wacom Yuify(ワコム ユイファイ)」については、デジタル作品と作者を結び付けることでIP流通の信頼性向上を支援しており、現在はユースケース開発を進めております。今後は、主要アプリケーションとの連携拡大やWebtoon市場における共同事業等を通じ、サービス展開の拡大を図ってまいります。第四に、新規事業領域の実装力及び経営基盤の強化に取り組んでまいります。株式会社リクロスエクスパンションの子会社化を通じて、DX実装力やサービス事業推進力を強化するとともに、M&Aや戦略提携も活用することで「Pen×Ink×AI」を軸とした成長機会の獲得を目指してまいります。さらに、持続的な企業価値向上に向け、コーポレートガバナンス及び人的資本経営の高度化を推進してまいります。多様性と独立性を備えた次世代への取締役会構成へ進化を図るとともに、多様な人材が能力を最大限発揮できる組織づくりにも取り組んでまいります。加えて、サステナビリティエンゲージメントを推進し、環境負荷低減やコミュニティとの共創も図ってまいります。当社グループは、これらの課題に着実に対処しながら、中長期的な企業価値向上に努めてまいります。 (2)経営環境世界経済はロシア・ウクライナ情勢及び中東情勢に起因した地政学的緊張が高まるなか、エネルギー資源、原材料価格の上昇による景況感に及ぼす影響について不透明感が続く状況であります。これらの情勢を背景に、企業業績に与える影響の大きい今後の為替相場の動向についても不透明感があります。IT市場を中心とする事業環境については、AI、クラウド、ブロックチェーン、モバイルなどの技術革新に伴う情報処理コストの低減と社会への実装がさらに進んでいくことが見込まれております。 (3)目標とする経営指標当社グループは、2026年3月期~2029年3月期を対象期間とするグループ中期経営計画『Wacom Chapter 4』を推進し、企業価値向上に向けて最終年度(2029年3月期)までに、次の経営指標を達成することを目標としております。 「企業価値向上」=「利益創出力の強化(※1)」×「市場評価の向上(※2)」※1 事業成長 連結売上高1,500億円、連結営業利益150億円資本効率性の改善 ROE(自己資本利益率)20%以上、ROIC(投下資本利益率)18%以上将来に向けた投資 R&D+設備投資620億円、技術資本提携120億円以上※2 株主還元強化 総還元性向50%以上、累進配当制度導入(年間配当金下限22円)
MD&A(経営者による分析)
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1)経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。 ①財政状態及び経営成績の状況当連結会計年度(2025年4月1日から2026年3月31日まで)における当社グループを取り巻く事業環境において、世界経済は、ロシア・ウクライナ情勢に加えて中東地域に起因した地政学的緊張が高まるなか、エネルギー資源、原材料価格の上昇による経済活動への影響が見られるなど、先行き不透明感が続くものとなりました。このような情勢下、IT市場では、モバイル、クラウド、AI、ブロックチェーンなどに関連した技術革新や利便性向上などが見られました。なお、同期間の円相場は、景気や金融・貿易政策等に対する見方を反映し、前年同期の平均レートと比較すると対米ドルで円高となりました。このような事業環境のもと、当社グループは、2025年5月9日に発表した2029年3月期を最終年度とする中期経営計画『Wacom Chapter 4』を推進するため、当社がこれまで磨き上げてきた要素技術をさらに高め統合し、新たな「かく」体験を実現する技術革新に取り組んでおります。また、コミュニティのユースケースを深く理解、発掘すべく、パートナーとともに体験とコミュニティの共創にも努めております。そして、「創る(Creation)」「学ぶ/教える(Learning/Teaching)」「はたらく/楽しむ、その先へ(Work/Play & Beyond)」「より人間らしく生きる(Well-being)」といった4つのユースケース領域で、「かく」こと全般の『総合的な体験を届ける“道具屋”』として事業モデルを一段と進化させるための戦略の展開を図っております。当連結会計年度では、各ユースケース領域において、事業モデルを進化させるための戦略を協業パートナーと推し進めるとともに、生産性やコスト構造の改善にも努め、経営判断の質の向上を通して経営課題に取り組みました。そして、4つのユースケース領域において、「かく」という人間の思考プロセスや身体の動的な変化をAIやデジタル技術へ接続し、新たな体験価値を創出することで、サービス体験の提供者としての事業成長を加速させてまいります。テクノロジーソリューション事業については、デジタルペン技術(アクティブES:Active Electrostatic、EMR:Electro Magnetic Resonance)の事実上の標準化に取り組むとともに、タブレット・ノートPC市場での利用拡大や教育市場での事業機会の拡大に努めました。当連結会計年度では、OEM顧客の需要動向に加えて円高や米国の関税政策による影響を受けた需要期の変化等から、当事業の売上高は前年同期を下回り、その結果、セグメント利益も前年同期を下回りました。ブランド製品事業については、創造性発揮のための最高体験をお客様にお届けするため、技術革新に取り組むとともに、顧客サービスの向上に努めました。当連結会計年度では、商品ポートフォリオの刷新に努めたことなどから、当事業の売上高は5期振りに前年同期を上回るとともに、セグメント利益は前期に実施した事業構造改革が奏功し、4期振りとなる黒字化を達成しました。中期経営計画『Wacom Chapter 4』の戦略軸に沿った全社的な取り組みとしては、前期に実施したブランド製品事業の事業構造改革を確実なものとすべく、海外一部地域を日本からの直売モデルに変更するなど販売オペレーションの効率化を図りました。商品ポートフォリオの刷新にも努め、2025年6月には描き心地と集中しやすさを追求したミドルレンジのディスプレイ新製品となる「Wacom Cintiq(ワコム シンティック)」を、さらには描くことに特化したオールインワン設計により軽さと使いやすさを追求したポータブルクリエイティブ新製品「Wacom MovinkPad(ワコム ムービンクパッド) 11」と、そのプロフェッショナル向け機種となる「Wacom MovinkPad Pro(ワコム ムービンクパッド プロ) 14」をそれぞれ2025年7月と10月に発表しました。また、企業価値の中長期的な向上を目指す観点からは、当社グループが持つデジタルペンの技術価値や各要素を「ペンとインクの統合体験」として市場実装すべく、次世代の成長エンジンとなる技術開発を推進し、積極的な投資や提携を行っております。2025年4月には業務用モニター上でのインク体験といった新しいユースケースを開拓するためSYNCORE TECHNOLOGY(シンコアテクノロジー)社に、2025年5月には医療現場/メディカルワークフローの中で「かく」体験を共創するためHoloeyes(ホロアイズ)株式会社にそれぞれ出資しました。2025年8月には世界的オープンソース3D制作ソフトウェアBlender(ブレンダー)との戦略的パートナーシップを強化すべくBlender開発基金プログラムの支援を最高ランクレベルに引き上げることを発表しました。そして、2025年11月にはこれら多様な領域のパートナーと共創するコミュニティイベント「Connected Ink(コネクテッド・インク) 2025」を開催し、注力するユースケース領域において最新のデジタルペンとインクのテクノロジーを駆使したサービスの実装例や開発状況などを発表するとともに、投資家向けのIRガイドツアーも開催しました。サステナビリティの取り組みについては、中期経営計画『Wacom Chapter 4』を補足するため、2025年6月に「Wacom Story Book Issue 2『薄い本』」を発行しました。この「Wacom Story Book」シリーズは、ワコムに関わる人々の多様なストーリーを集めたアンソロジー(選集)形式の読み物となっており、「Issue 2」は4つのテーマ「Chapter 4 サイドストーリー」「コミュニティと共に、生きる」「わたしたちのサステナビリティ」「わたしたちのガバナンス」の小冊子で構成されております。 また、2026年2月には、当社はアニメーション業界で最も権威ある賞と称されるアニー賞の第53回授賞式において、アニメーションの芸術又は業界に大きな影響を与えた技術的進歩に貢献した個人又は企業に贈られる「Ub Iwerks(アブ・アイワークス)賞」を受賞しております。 これらの結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。 a. 財政状態当連結会計年度末における資産の残高は、64,957百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,813百万円減少しました。これは、のれんが1,638百万円増加し、現金及び預金が7,864百万円減少したことなどによるものであります。負債の残高は、27,538百万円となり、前連結会計年度末に比べ12,373百万円減少しました。これは、短期借入金が4,337百万円、流動負債のその他が2,513百万円、長期借入金(1年内返済予定の長期借入金を含む)が5,493百万円減少したことなどによるものであります。純資産の残高は、37,419百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,560百万円増加しました。これは、親会社株主に帰属する当期純利益9,548百万円、為替換算調整勘定の増加1,193百万円により増加し、剰余金の配当4,439百万円により減少したことなどによるものであります。これらの結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ14.0ポイント増加し、57.6%となりました。 b. 経営成績当連結会計年度の売上高は109,995百万円(前年同期比4.9%減)、営業利益は13,382百万円(同31.1%増)、経常利益は14,003百万円(同34.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は9,548百万円(同82.8%増)となりました。 ②キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、16,499百万円となり、前連結会計年度末に比べ7,864百万円減少しました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは、10,343百万円の収入(前年同期は8,330百万円の収入)となりました。これは、税金等調整前当期純利益12,806百万円及びその他の流動負債の減少額3,151百万円などによるものであります。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは、3,656百万円の支出(前年同期は2,274百万円の支出)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出1,843百万円及び連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出1,342百万円などによるものであります。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは、15,951百万円の支出(前年同期は13,169百万円の支出)となりました。これは、短期借入金の返済による支出5,000百万円、長期借入金の返済による支出6,000百万円及び配当金の支払額4,432百万円などによるものであります。 ③生産、受注及び販売の実績a. 生産実績当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)ブランド製品事業17,660116.1テクノロジーソリューション事業42,29383.5合計59,95491.0(注)上記の金額には、製品仕入実績を含んでおります。 b. 受注実績当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。 c. 販売実績当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)ブランド製品事業32,737113.9テクノロジーソリューション事業77,25788.9合計109,99595.1(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。相手先前連結会計年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)当連結会計年度(自 2025年4月1日至 2026年3月31日)金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)サムスングループ(※)48,53442.045,65241.5(※)サムスングループには、Samsung Electronics Japan Co., Ltd.、Samsung Electronics Co., Ltd.を含んでおります。 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。 ①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容a. 経営成績等当社グループのセグメントごとの業績に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、当連結会計年度より、各セグメントの業績説明における記載順序、記載方法等を一部変更しております。 (テクノロジーソリューション事業)販売数量の減少や円高の影響などにより、AESテクノロジーソリューション及びEMRテクノロジーソリューションともに売上高が前年同期を下回り、事業全体としては前年同期の売上高を下回りました。これらの結果、テクノロジーソリューション事業の売上高は77,257百万円(前年同期比11.1%減)、セグメント利益は17,095百万円(同7.6%減)となりました。また、未収入金が減少した一方で、連結子会社の増加に伴い建設仮勘定やのれんが増加したことなどから、セグメント資産は前連結会計年度末に比べ1,274百万円増加し、23,645百万円となりました。 (ブランド製品事業)商品ポートフォリオを刷新するなか、新製品の投入によりポータブルクリエイティブ製品及びミドルレンジのディスプレイ製品などの売上高が前年同期を上回り、事業全体として前年同期の売上高を上回りました。これらの結果、ブランド製品事業の売上高は32,737百万円(前年同期比13.9%増)、セグメント利益は前連結会計年度に実施した事業構造改革による固定費削減の効果から2,019百万円(前年同期はセグメント損失2,879百万円)となりました。また、売掛金、棚卸資産及び投資有価証券が増加したことなどから、セグメント資産は前連結会計年度末に比べ1,879百万円増加し、13,283百万円となりました。 b. 経営成績に重要な影響を与える要因当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。当社グループは、これらのリスクに対して、継続的にモニタリングを行って現状把握に努めるとともに、低減・回避等の対応に努めております。 ②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報a. キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容当連結会計年度における当社グループのキャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。当社グループの事業活動における資金需要の主なものは、「創る(Creation)」「学ぶ/教える(Learning/Teaching)」「はたらく/楽しむ、その先へ(Work/Play & Beyond)」「より人間らしく生きる(Well-being)」といった4つのユースケース領域に対応した新製品や次世代デジタルペン技術に係る研究開発費、量産出荷のための金型設備投資、事業領域拡張のための技術資本提携であります。 b. 資本の財源及び資金の流動性当社グループの資金調達、資金運用等に関する取組方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(金融商品関係)」に記載のとおりであります。なお、当連結会計年度末における借入金及びリース負債を含む有利子負債の残高は29億円、現金及び現金同等物の残高は165億円であります。(注)記載の金額は、億円未満を四捨五入して表示しております。 ③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成には、経営者による会計方針の採用や、資産・負債及び収益・費用の計上及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り項目特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。また、会計上の見積りを行うに際して使用した重要な仮定は、合理的であると判断しております。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。 ④経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等当社グループは、2026年3月期~2029年3月期を対象期間とするグループ中期経営計画『Wacom Chapter 4』を推進し、企業価値向上に向けて最終年度(2029年3月期)までに、次の経営指標を達成することを目標としております。 「企業価値向上」=「利益創出力の強化(※1)」×「市場評価の向上(※2)」※1 事業成長 連結売上高1,500億円、連結営業利益150億円資本効率性の改善 ROE(自己資本利益率)20%以上、ROIC(投下資本利益率)18%以上将来に向けた投資 R&D+設備投資620億円、技術資本提携120億円以上※2 株主還元強化 総還元性向50%以上、累進配当制度導入(年間配当金下限22円) 当連結会計年度における『Wacom Chapter 4』で掲げた各経営指標の結果は次のとおりであります。 前連結会計年度(2025年3月期 実績)『Wacom Chapter 3』期間内当連結会計年度(2026年3月期 実績) 2029年3月期目標連結売上高1,157億円1,100億円1,500億円連結営業利益102億円134億円150億円ROE(自己資本利益率)15.6%28.0%20%以上ROIC(投下資本利益率)(注)216.3%23.8%18%以上R&D+設備投資101億円 103億円(累計103億円)2026年3月期~2029年3月期の累計で620億円技術資本提携10億円 21億円(累計21億円)2026年3月期~2029年3月期の累計で120億円以上総還元性向(注)3200.2% 36.6%(52.3%)総還元性向50%以上(累進配当+機動的な自己株式の取得)(注)1.実績の金額は、億円未満を四捨五入して表示しております。2.ROIC=税引後営業利益 / (純資産+有利子負債)3.総還元性向=(配当金の総額+自己株式取得額)/親会社株主に帰属する当期純利益×100なお、当連結会計年度のカッコ書きの数値は、2026年5月12日付「自己株式の取得に関するお知らせ」で公表した自己株式の取得における取得価額の総額の上限(15億円)を実績とみなして上記計算式の自己株式取得額に含めて計算した総還元性向であります。

事業リスク

  • 為替レートの変動
    ワコムグループは、製品の販売を国内外で行い、生産を海外の外注製造会社に委託しているため、米ドル、ユーロ、日本円など複数の通貨で決済しています。そのため、各国の経済状況や政治情勢による金利変動が為替レートに影響を与え、急激な変動があった場合には、製品の販売価格や原材料の調達コストに影響を及ぼし、業績が悪化する可能性があります。
  • 市場環境の変化と競争激化
    PC市場ではディスプレイ技術の進化やIoTデバイスの普及により競合他社の参入が増え、ペンの価値提案が難しくなっています。また、クリエイティブ市場では生成AIの一般化やデバイス環境の変化、貿易政策による消費冷え込み、VFX市場のリセッションなどが影響し、製品ポートフォリオの見直しや関税リスク回避策が求められています。これらの市場環境の悪化は、棚卸資産評価損や減損損失の計上につながり、業績に影響を及ぼす可能性があります。
  • 特定の販売先への依存
    テクノロジーソリューション事業において、サムスングループへの売上高が連結売上高の約41.5%を占めています。そのため、サムスングループの製品需要動向や経営戦略の変更が、ワコムグループの業績に直接的かつ大きな影響を与える可能性があります。ワコムは顧客の多様化に努めていますが、この依存度が高い状態はリスク要因となります。
出典: FY2026 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「事業等のリスク」の全文を見る(年度切替)
FY2026|6,251 文字
3【事業等のリスク】有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。 (1)経営環境に関するリスク①為替レートの変動当社グループにおける製品の販売は、日本国内に関しては当社で、海外に関しては大半を在外子会社で、また、製品の生産は、海外の外注製造会社にて行っており、決済通貨は米ドル、ユーロ、日本円等であります。そのため、各国の経済環境、関税規制、政治的状況による金利水準の上下動等による為替レートの変動リスクが一定程度存在しており、為替動向を見据えた通貨の売買、為替予約の利用、外国通貨の保有手段の多様化、取得通貨での支払いの推進等の実施により、当該リスクの回避に努めております。しかしながら、為替レートが急激に変動した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。 (2)事業活動に関するリスク①市場環境の変化当社グループは、世界各国で販売活動を行っていること、クリエイティブソリューションにおいて当社製品がデザイン制作現場等のプロフェッショナルクリエイターに使用されていること、テクノロジーソリューション事業の主要顧客がスマートフォンメーカー、ノートPC・タブレットメーカーであること等から、世界各国の経済動向、グラフィックス業界の動向、PC市場動向等が業績に影響を及ぼす可能性があります。PC市場においては、ディスプレイ技術の劇的な変化、ペン技術やIoTデバイスの浸透による多くの競合他社の参入、また、教育のDX化及び生成AI進化等に伴い、ペンの価値提案が高難度化しております。これらに対応して、ペンの価値の再定義及びリソース配分やロードマップを見直すとともに、特定の教育サービスパートナーと協業し、ニーズにマッチしたサービス開発を進めております。クリエイティブ市場においては、①ワークフローの変化や生成AIの一般化、デバイス環境の変化及び競合環境の激化により求められるツールの変化、②貿易政策の転換その他の政策による世界的な消費冷え込みに伴うコンシューマトレンドの変化、③VFX(ブイエフエックス)市場のリセッションに伴うメディア&エンターテインメント市場の投資ホールドの影響等が生じております。これらに対応して、製品ポートフォリオの見直し、注力カテゴリー(製品、市場、地域)の設定、開発・SCMと連携した関税リスク回避施策(生産国変更等)をタイムリーに展開しております。なお、市場環境が著しく悪化した場合、棚卸資産評価損や固定資産に係る減損損失の計上により、業績に影響を及ぼす可能性があります。 ②海外進出及び国際的活動当社グループは、国境・地域を越えた生産、販売等を行っているため、地政学的観点から地域紛争が発生する場合や現地の労使関係に問題が発生した場合などは、生産委託先による製品の製造や物流活動、当該地域の当社子会社の販売活動等に支障を生じる可能性があります。その他、主要な海外市場における経済情勢の悪化、競争激化、移転価格税制等の国際税務リスクが発生した場合においても、業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、CSR調査の一環として、ビジネスパートナーからサプライチェーン全体に対して、人権、強制労働に加え、情報セキュリティに関する取り組み状況について確認されるケースが増加しております。諸外国の関連法令を分析し、必要に応じて社内のプロジェクト体制を整えるなど、ビジネス機会の喪失を防止してまいります。 ③特定の販売先への依存当社グループの販売先は多岐にわたっておりますが、テクノロジーソリューション事業における主要販売先であるサムスングループへの売上高の割合は、連結売上高に対し、前連結会計年度は42.0%、当連結会計年度は41.5%であります。サムスングループへの売上高は、サムスングループ製品の需要動向の影響を間接的に受ける可能性があり、サムスングループの経営戦略の変更等が、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、今後も引き続き、最適なソリューションの提供等による顧客満足の獲得に努め、顧客の多様化による当該リスクの最小化に努めてまいります。 ④外部企業への製造依存生産委託先は、大量生産能力とコスト競争力に加えて、急速な需要変動に対応する供給力を備えており、当社グループの事業戦略において重要な位置を占めております。中国を中心とした外注製造会社に生産を委託しているなか、米中貿易摩擦に対する関税リスク軽減策として、一部製品ラインの生産については中国以外の地域に移管するなど、コスト面にも配慮しつつ生産委託先の最適化・分散化を進めております。しかしながら、今後、生産委託先の経営上の問題、あるいは、生産委託先の工場において自然災害等の不慮の事故が発生し、製品の継続的生産が難しくなる場合、もしくは、生産委託先の工場を変更又は追加し、工場側の習熟に時間を要する場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。 ⑤基幹部品、部材の供給と価格今後、プラスチックケースや汎用部品のコストが上昇したり、IC、プリント基板、液晶等の汎用基幹部品が不足する場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、ペンスイッチ用セラミック部品やカスタムICなど当社グループ独自の基幹部品についても、自然災害等によりセラミックメーカーやICメーカーからの継続的供給に問題が発生するなど、供給体制に問題が生じる場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、基幹部品についてのセカンドソースの早期確保や代替部品の開発に努めておりますが、汎用部品に関しては、長期需要予測による早期部品手配などによりリスクとコストの削減を図る必要があります。なお、当社グループ又は生産委託先が調達する部品に含まれる重金属・プラスチック等の素材について、各国の法規制又は当社製品の販売先の基準等により使用又は使用量の制限等に変更がある場合には、部品・設計の変更等が必要となり、製造コストや管理コストが上昇するなど、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、かかる部品を含む製品を販売した後に、これらの規制又は基準が変更された場合にも、製品の取替えが要求されるなど、業績に影響を及ぼす可能性があります。直近においては、半導体を中心とした電子部品や材料の調達納期が長期化し、納期を守れないリスクが増大するなか、鍵となる主要部品に関して、在庫増加や長期供給契約のリスクを十分に勘案しつつ、先行手配と納期管理を強化しております。また、開発体制を見直し、サプライチェーンを強化することによって価格競争力を高めるよう努めております。 ⑥製品の欠陥又は重大な品質問題当社グループは、品質維持に万全を期しておりますが、製造物責任賠償や大規模なリコールにつながる欠陥が明らかとなった場合は、賠償金その他による多額のコスト負担はもとより、当社グループ及び当社製品への信頼・評価に深刻な影響を与え、業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、これらの問題に対処するため、引き続き、生産委託先における生産状況の監視、社内及びベンダー側での品質管理体制や評価方法の強化、管理プロセス及び市場において発見された品質問題の共有データベースシステムの強化等に取り組んでまいります。 ⑦人材の確保当社グループは、企画、開発、設計、製造、販売、サービス等の各機能に必要な人材確保にグローバルで努めております。しかしながら、労働市場における人材の獲得競争は激化しており、有能な人材の採用や雇用の継続が困難になった場合は、研究開発に十分な資源を投入できないことによる製品競争力の低下や労働力不足による製品の安定供給への支障など、結果として当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、有能な人材が流出してしまった場合には、今後の事業展開に制約を受けることとなり、その結果、業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、これらの問題に対処するため、新たな人材確保ルートの開拓、報酬レベルの見直し、社内におけるリスキリングの推奨等を進めております。 ⑧情報セキュリティ当社グループは、コンピューターウイルス等によるサイバー攻撃に対しての備えとして、IT環境の整備・強化や社員の情報リテラシー(情報活用能力)を高めるため定期的な教育等の対応を継続的に行っておりますが、想定外の攻撃によるリスクは残るものと考えております。そのため、外部からのサイバー攻撃やコンピューターウイルスの侵入等によるデータの棄損や漏洩を完全に防止できるものではなく、被害の規模により、業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、今後も引き続き、外部によるサイバーセキュリティ評価への対応、全社の情報区分・管理体制の構築、社内外に対する技術情報管理対応、全社トレーニングの改善、ローカルサーバーのクラウド移行の継続等に取り組んでまいります。 ⑨自然災害と事故等当社グループでは、自然災害・事故等の発生に備えたリスク管理を実施しておりますが、大地震等の大規模自然災害や火災等の突発的な事故が発生した場合には、製造設備の損害等によりサプライチェーン全体へ支障が生じるおそれがあり、被害の規模により、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、新型の感染症等が拡大した場合も同様に、業績に影響を及ぼす可能性があります。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行においては、当社グループは、全世界的にテレワークの実施等柔軟な勤務体制を継続することで、コロナ禍後の新しい働き方の在り方を検討するとともに、従業員の安全を確保し、感染拡大防止に向けた社会的責任を果たしております。 (3)法的規制及び訴訟等に関するリスク①知的財産権への抵触・侵害当社グループは、新製品の開発・発売に際し、他社及び個人の特許権・商標権等への抵触・侵害が発生しないよう現地特許事務所等を利用して事前調査を行い、可能性が予見できる場合には回避策をとるなど、他社及び個人の知的財産権の侵害を未然に防止できるよう、万全の注意を払っております。しかしながら、各国の法制度の違いや、データベース調査の限界によって予見できない場合、さらには当社製品の発売後に権利化された場合には、特許権等に抵触するなどの可能性は完全に排除することはできません。そのような場合には、他社又は個人から特許権等の知的財産権の侵害としてクレームを受けたり、提訴される可能性があります。一方、他社から侵害があった場合も、クレームや訴訟等断固たる処置をとりますが、経過によっては、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの特許権等の知的財産権の権利期間が満了したり、あるいは、特許訴訟や無効審判請求などによって特許権の権利範囲の変更や無効の判断が出された場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、今後も引き続き、第三者の知的財産権に対する侵害の予防や当社グループが保有する知的財産権の保護への対策を検討、実施してまいります。 ②法的規制等当社製品が販売されている各国においては、電磁波規制や安全規制、製造物責任(PL)関連法等が定められており、新規規制の制定や規制変更に関して十分な対応がとれない場合や、我が国又は当社製品の生産委託先国において、輸出規制又は輸入規制の変更があった場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、関税などの監督当局による法令の解釈、規制、税率の変更などにより、業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、社外への委託を含め監視体制を強化するなど、業績に影響を及ぼす可能性がある法規制の動向に留意し、適時・適切な対策を検討、実施してまいります。 ③独占禁止法適用等世界主要地域において、当社グループのペンタブレット市場シェア(※)がさらに拡大し、各国政府より当社グループが技術の発達や自由な競争を妨げ、市場の発展や顧客利益を損なっていると判断された場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。(※)株式会社BCN公表による「BCNランキング」(株式会社BCNとデータ提供契約を締結している全国の主要家電量販店やネットショップ等のPOSデータを集計)によれば、ペンタブレット部門における当社製品の年間(2025年1月~12月)販売台数のシェアは71.9%となっております。世界シェアについては、公表されたデータがないため、記載しておりません。 ④機密情報及び個人情報の管理当社グループは、事業上の重要情報及び事業活動の過程で入手した個人情報や顧客、取引先、提携先等の機密情報を保有しておりますが、昨今、国内外においてはGDPR(EU一般データ保護規則)やCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)に代表される個人情報を主体とする各種情報の保護に対する法令の制定が進んでおり、その遵守のためのルール整備や情報システムの強化が求められております。当社グループにおいても、関係法令遵守のため、当社グループの個人情報保護方針を明示し、社内規程類の整備と運用及び社員への教育を行っておりますが、万一、不測の事態によってこれらの情報が漏洩した場合や、違反に対する当局からの制裁金や訴訟による損害賠償金等を支払うこととなった場合は、被害の規模により、業績に影響を及ぼす可能性があります。直近においては、WEBセミナーの増加や、教育などの新規分野へのアプローチにより、個人情報の収集機会は増加しており、各国の法令に合わせたプライバシーポリシーの変更、CCPA対応、クッキー管理ツールの導入、プロジェクト支援等の対応を進めております。今後はさらに、各国毎のポリシーの整備継続、中国個人情報保護法への対応、越境データへの対応、社内トレーニングの実施等に取り組んでまいります。 ⑤コンプライアンス当社グループは、国内外で事業活動を行っており、また、関連する法令や規則は広範囲にわたっております。国内では、会社法、税法、金融商品取引法、独占禁止法、知的財産法、情報管理・個人情報保護法、労働法、貿易・環境規制など、海外でもその地域における事業活動に関連する法令や規則を遵守することが求められております。当社グループでは、コンプライアンス リスク コミッティや第三者が運営する内部通報制度であるWacom Speak-up Lineを設置し、コンプライアンス推進体制を確立しております。役員及び従業員に対しては、ワコム倫理・行動規範を社内ポータルサイトに掲示し、定期的なオンライン教育やセミナーを実施するなどして、コンプライアンスの全社的な徹底を図っております。しかしながら、このような施策を講じてもコンプライアンス上のリスクを完全に取り除くことは困難であり、関連する法令や規則の義務を実行できない事態が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

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