事業の概要
- 主力は多角的な事業展開帝人グループは、高機能材料、繊維製品、医薬品・医療機器・在宅医療サービスという3つの主要事業領域を中心に収益を上げています。これにより、特定の市場変動リスクを分散し、安定した事業運営を目指しています。
- マテリアル事業の製品群アラミド繊維、炭素繊維、樹脂などの高機能材料や、自動車部品などに使われる複合成形材料の製造・販売が中心です。これらは、自動車、航空機、電子部品など幅広い産業で活用されています。
- ヘルスケア事業の貢献医薬品や医療機器の製造・販売に加え、在宅医療サービスも提供しており、高齢化社会における医療ニーズに応えています。この事業は安定した収益源となる可能性があります。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
セグメント構成
- マテリアル事業売上高4396.9億円、営業利益-61.63億円。アラミド繊維、樹脂、炭素繊維などの高機能材料や、自動車部品などに使われる複合成形材料の製造・販売が中心です。現状は赤字ですが、将来的な成長が期待される分野です。
- 繊維・製品事業売上高3214.7億円、営業利益121.32億円。ポリエステル繊維や織物などの繊維製品の製造・販売を手掛けています。安定した収益を上げており、グループの主要な稼ぎ頭の一つです。
- ヘルスケア事業売上高1447億円、営業利益73.27億円。医薬品、医療機器の製造・販売、在宅医療サービスを提供しています。高齢化社会の進展に伴い、今後も安定的な成長が見込まれる事業領域です。
2024-03 セグメント別業績
| セグメント | 区分 | 売上(億) | 営業利益(億) | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| Material | 事業 | 4,397 | -62 | -1.4% |
| FibersProducts | 事業 | 3,215 | 121 | 3.8% |
| Healthcare | 事業 | 1,447 | 73 | 5.1% |
| IT | 事業 | 721 | 95 | 13.2% |
有価証券報告書「事業の内容」の全文を見る(年度切替)
3【事業の内容】帝人グループは当社、子会社105社及び関連会社等21社で構成されています。その事業は高機能材料、複合成形材料の製造・販売等を行うマテリアル事業領域と、繊維製品等の製造・販売を行う繊維・製品事業と、医薬品と医療機器の製造・販売及び在宅医療サービス等を行うヘルスケア事業領域を中心とし、その他に電池部材及びメンブレンの製造・販売、再生医療等製品及び埋込医療機器等の開発・製造・販売等を展開しています。 帝人グループでは、「マテリアル」「繊維・製品」「ヘルスケア」の3つを報告セグメントとしています。 各セグメントにおける、主要な事業内容ならびに主な会社は次のとおりであり、注記「6.事業セグメント」に記載のセグメントと一致しています。 セグメント事業内容構成会社マテリアル高機能材料事業アラミド繊維、樹脂、炭素繊維等の製造・販売当社Teijin Aramid B.V.Teijin Polycarbonate China Ltd.Teijin Corporation (Thailand) Limited等 子会社27社、関連会社等3社複合成形材料事業複合成形材料の製造・販売 当社Teijin Automotive Technologies Portugal, S.A.Teijin Automotive Technologies Czech, s.r.o.等 子会社6社繊維・製品 繊維製品等の製造・販売、ポリエステル繊維及び織物の製造・販売等帝人フロンティア(株)南通帝人有限公司Teijin Polyester (Thailand) LimitedJ.H. Ziegler GmbH等 子会社40社、関連会社等6社ヘルスケア医薬品及び医療機器の製造・販売、 在宅医療サービス、その他ヘルスケア関連製品の製造・販売当社帝人ファーマ(株)帝人ヘルスケア(株)等 子会社12社、関連会社等3社その他 電池部材及びメンブレンの製造・販売当社Teijin Lielsort Korea. Co., Ltd.子会社1社 再生医療等製品及び埋込医療機器等の開発・製造・販売当社(株)ジャパン・ティッシュエンジニアリング等 子会社3社 その他帝人エージェンシー(株)等 子会社16社、関連会社等9社(注) 関連会社等には、共同支配企業を含んでいます。 以上に述べた「事業の内容」を概要図で示すと次のとおりです。 (注)連結対象会社は、連結子会社72社と持分法適用会社が53社です。
事業の優位性(モート)
事業の質(有価証券報告書から抽出)
数字に出ない事業の性質を、同じ物差しで全銘柄そろえています。FY2025時点の記載が出典です。
| 参入障壁新規参入を阻む要因の種類 | 技術 アラミド繊維、樹脂、炭素繊維等の高機能材料、医薬品、医療機器の開発・製造技術。 |
|---|---|
| 規制依存規制は障壁にも足枷にもなる | 高い |
会社が挙げる主要リスク:大規模自然災害(首都圏直下型地震、南海トラフ地震、富士山噴火) / 情報セキュリティ(サイバー攻撃、DX/AIDX人財枯渇) / 地政学(サプライチェーン寸断、技術情報流出、為替激変・エネルギーコスト高騰)
同じ条件で他の銘柄を探す → 定性スクリーニング(価格決定力・参入障壁・景気敏感度などで絞り込めます)
- 高機能材料の技術力アラミド繊維や炭素繊維といった高機能材料は、軽量性、高強度、耐熱性などの優れた特性を持ち、高い技術力が求められます。帝人はこれらの分野で長年の研究開発実績とノウハウを蓄積しており、競争優位性を持っています。
- 多角化によるリスク分散マテリアル、繊維・製品、ヘルスケアという異なる特性を持つ事業領域を展開することで、特定の市場や景気変動の影響を緩和しています。例えば、景気変動に左右されやすいマテリアル事業が不振でも、ヘルスケア事業が安定収益を上げることでグループ全体の業績を支えることができます。
- グローバルな事業展開帝人グループは多数の子会社や関連会社を国内外に持ち、製品やサービスを世界中で提供しています。これにより、特定の地域市場に依存することなく、多様な顧客ニーズに対応し、事業機会を拡大しています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
経営戦略
有価証券報告書「経営方針・対処すべき課題・MD&A」の全文を見る(年度切替)
経営方針・経営戦略
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】帝人グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において帝人グループが判断したものです。 (1) 帝人グループが目指す姿帝人グループは、2024年4月にグループの“パーパス”「Pioneering solutions together for a healthy planet」を策定しました。このパーパスに併せて、大切にしたい価値観を3つのバリュー「すべての挑戦をリスペクトします」「多様な仲間と専門性を活かして成長します」「地球とあらゆる生命に寄り添い、守ります」にまとめています。パーパスを軸に、バリューを重視することで、帝人グループの長期ビジョンである「未来の社会を支える会社」を目指していきます。 [パーパスに込めた想い]Pioneeringsolutionsテイジンは、世界の前進を支えます。社会が進歩を求めるとき、私たちは行動で応えます。together業界を超えた専門知識を活かし、社員やお客様と共に、より良い暮らしの基盤を築いていきます。for a healthy planet循環型社会を支える素材やソリューションから、人々の健康や安心を支える製品やサービスまで。私たちは、今も、これからも、地球環境とそこに暮らすあらゆる生命の健やかさを守り続けます。 (2) 対処すべき課題 -中期経営計画-「帝人グループ 中期経営計画2024-2025」では「収益性改善の完遂による基礎収益力の回復」及び「事業ポートフォリオ変革」を最重点課題に掲げ、非注力・不採算事業のダイベストを着実に推進しました。その結果、事業の選択と集中が進展し、「事業ポートフォリオ変革」を大きく前進させることができました。一方で、アラミド事業及び炭素繊維事業における業績の回復が遅れたこともあり、全社の財務目標値は未達となりました。こうした前中期経営計画に対する実績も踏まえ、帝人グループが再び成長軌道へと回帰することを目指して、2026年5月に「帝人グループ 中期経営計画2026-2028」を公表しました。その中で、①顧客起点型ビジネスでの確かな利益成長、②構造改革による質の高い収益基盤の確立、③顧客起点型ビジネスを支える経営基盤の強化、の3つを対処すべき課題として掲げています。これらの課題に対し、確固たる決意のもとで着実に施策を実行し、企業価値の向上を図っています。なお、顧客起点型ビジネスへの変革を推進するために、2026年4月1日付で行った組織体制の再編に併せて開示セグメントを「アパレル&インダストリーズ」、「ヘルスケア&ライフソリューションズ」、「エレクトロニクス&エナジー」、「スペシャリティマテリアルズ」へと変更いたしました。 [帝人グループ 中期経営計画2026-2028] ①顧客起点型ビジネスでの確かな利益成長 マテリアル事業を中心に、新興国のキャッチアップによる素材のコモディティ化が進み、設備投資先行のビジネスモデルの見直し局面を迎えています。また、社会課題は複雑化し、ステークホルダーも多様化しているため、自社素材だけで解決できる課題は限定的となり、従来型の「素材起点型ビジネス」からの変革が求められています。 そこで当社は、顧客起点型ビジネスの深化・変革に取り組んでいます。顧客起点型ビジネスは、次の2つのコンセプトを特徴としています。ⅰ)従来の自社のモノ・コトを提供するという発想を転換して、顧客の課題を理解し、その解決に資するモノ・コトを幅広く提供していく「スリアワセ」、ⅱ)自社素材や自社生産に必ずしも拘らず、社外の素材・加工・サービスも採用する「クミアワセ」です。これにより、顧客が解決を求める課題にしっかりと応えていく事業運営を進めてまいります。 この顧客起点型ビジネスを具現化し、継続して成長してきた事業が、アパレル&インダストリーズ(繊維・製品事業)とヘルスケア&ライフソリューションズ(在宅医療ビジネス)であり、帝人グループの顧客起点型ビジネスが企業価値向上につながることの裏付けとなっています。 2026年から2028年までの中期経営計画期間においては、既に顧客起点型ビジネスを確立しているアパレル&インダストリーズ(繊維・製品事業)及びヘルスケア&ライフソリューションズ(在宅医療ビジネス)を成長・収益の柱として、規律を持ちながらも必要な投資は積極的に行っていきます。具体的には、前者は水平統合を推進することにより、業界のマーケットリーダーとして圧倒的な地位を確立することを目指します。また、後者は、通院が出来ない患者様を対象とした訪問型在宅医療市場へと事業領域を拡張することにより、在宅医療における総合プロバイダーへの進化を目指します。 一方、エレクトロニクス&エナジー(樹脂事業及び電池・半導体ソリューション事業)については、各分野で培った多様な素材・技術を組み合わせ、顧客起点型ビジネスの深化・変革を図ります。また、スペシャリティマテリアルズ(アラミド事業、炭素繊維事業及び複合成形材料事業)については、抜本的なコスト構造改革を推進するとともに、素材起点の考え方から脱却し顧客・用途起点組織へと変革していくことを今中期経営計画の期間中に具体化していきます。 2025年度は、アパレル&インダストリーズの中核企業である帝人フロンティア株式会社と旭化成アドバンス株式会社の経営統合を公表しました。この経営統合を通じて、事業基盤、営業ネットワーク及び顧客基盤を相互に補完し合うことで、クロスセル等による顧客への提案の幅が広がり、顧客起点型ビジネスでの確かな利益成長につながると考えています。 [対処すべき課題]顧客起点型ビジネスでの確かな利益成長■成長・収益の柱であるアパレル&インダストリーズ(繊維・製品事業)におけるプレーヤーが分散する市場での水平統合の推進と、ヘルスケア&ライフソリューションズ(在宅医療ビジネス)における連携・M&Aによる基盤拡大を起点とした新たな在宅医療製品・サービスの展開■エレクトロニクス&エナジー(樹脂事業及び電池・半導体ソリューション事業)における、各分野で培った多様な素材・技術を組み合わせた顧客起点型ビジネスへの深化・変革■スペシャリティマテリアルズ(アラミド事業、炭素繊維事業及び複合成形材料事業)における、顧客・用途起点組織への変革の具体化 ②構造改革による質の高い収益基盤の確立 スペシャリティマテリアルズのうち、低調な欧州経済の継続、北米通商政策に起因するユーロ高・ドル安等の外部環境の変化、競合の生産能力拡大による需給バランス軟化及び価格下落圧力の影響を受けたアラミド事業及び炭素繊維事業については、2025年度より抜本的なコスト構造改革を実行しています。生産体制の見直し、低収益ビジネスからの撤退と高付加価値用途への集中、及び人員を含む固定費削減を進めています。 また、ヘルスケア&ライフソリューションズのうち、薬価改定や後発品の浸透加速の影響を受けた医薬品ビジネスについては、希少疾患・難病領域への絞り込みを加速し、ベストオーナー探索を進めています。今後、医薬品ビジネスは、在宅医療事業基盤を活用し、患者サポート及び医療者サポートを提供する顧客起点型ビジネス(在宅自己注射等を行う希少疾患・難病領域を含む)の実行・強化を目指します。こうした取り組みを通じて、ヘルスケア&ライフソリューションズにおいては、新たな成長が見込まれる在宅医療領域へと事業の軸足を明確に移し、経営資源を集中させていきます。 以上により、アラミド事業、炭素繊維事業及び医薬品ビジネスにおける構造改革を今中期経営計画期間の早期に完遂することで、収益基盤の再生は概ね完了し、今後の回復に向けた基盤は整うものと考えています。 [対処すべき課題]構造改革による質の高い収益基盤の確立スペシャリティマテリアルズ(アラミド事業)■コスト構造の見直しと生産体制再編により400名超の人員と約150億円のコスト削減を2025年度から実施、2027年度にフル発現■さらなる事業体質の強靭化に向けた施策の実行■防衛・海底ケーブル等の高付加価値用途への集中(炭素繊維事業)■日・米・欧における生産ラインの適正化(2026年1月に北米工場休止)■約80名の人員と約50億円のコスト削減を2025年度から実施、2028年度にフル発現■次世代航空機の中間材料開発の推進等、航空機ビジネスへの集中ヘルスケア&ライフソリューションズ(医薬品ビジネス)■希少疾患・難病領域に特化した組織体制への再構築■在宅医療事業基盤の活用による希少疾患・難病薬の価値最大化 ③顧客起点型ビジネスを支える経営基盤の強化 顧客起点型ビジネスを推進するため、帝人グループ全体として、グローバルでの最適な機能組織の構築を進めています。今中期経営計画においては、特に、技術戦略管掌による事業間の技術横断的な連携及びシナジー創出、並びに次世代技術戦略の策定を進めるとともに、デジタル・情報システム管掌によるグローバルで最適化された統合IT基盤の構築やAI活用体制の整備を通じた生産性の向上等に取り組んでいます。 2025年度は、パーパスのさらなる浸透を図るべく、2024年度に引き続きパーパスを自分事として捉える「My Action」ワークショップを開催しました。特にパーパスの理解を深める取り組みを行った結果、従業員への事後アンケートでは高い満足度が確認されており、引き続きパーパスを軸とした経営の土台づくりを進めていきます。 ガバナンス体制については、監査等委員会設置会社への移行を完了し、執行における意思決定の迅速化、取締役会における経営重要課題に関する議論の充実、及び監督機能の強化を図りました。また、CEO直下に「サステナビリティ・コミティー」及び「リスクマネジメント・コミティー」を設置し、サステナビリティ及びリスクへの対応体制を強化しました。人的資本戦略としては、グローバルでの「適所適材」の実現に向け、経営管理職を対象としたジョブ型に対応した評価制度の導入を行うとともに、グローバルジョブグレード体系の統合に向けた取り組みも進めました。 [対処すべき課題]顧客起点型ビジネスを支える経営基盤の強化■顧客起点型ビジネスの推進に向け、事業・地域を横断したグローバルでの最適な機能組織の構築 2025年度は、中期経営計画の策定プロセスを通じて、顧客起点型ビジネスへと全社で変革していくための準備を進めてきました。また、顧客起点型ビジネスを確立しているアパレル&インダストリーズにおいて、帝人フロンティア株式会社と旭化成アドバンス株式会社の経営統合を公表する等、成長に向けた方向性を明確に打ち出しています。一方、スペシャリティマテリアルズのアラミド事業及び炭素繊維事業においては、高収益体質への回帰を目指し、構造改革を進めています。ヘルスケア&ライフソリューションズでは、希少疾患・難病領域を含む在宅医療事業基盤を活用した新たな体制への移行を速やかに進めてまいります。2026年度の業績予想は、事業利益300億円、税後事業利益ROIC3%、ROE12%(IFRSベース)となる見込みです。2026年度に構造改革の完遂を図り、今中期経営計画の最終年度である2028年度には、事業利益600億円、ROE8%以上(IFRSベース)の達成を目指し、各種施策を進めてまいります。帝人グループは、持続的な成長の実現と中長期的な企業価値の最大化を通じて、投資家を含むステークホルダーの期待に応えるため、早期にPBR1倍超の到達を目指してまいります。
対処すべき課題
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】帝人グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において帝人グループが判断したものです。 (1) 帝人グループが目指す姿帝人グループは、2024年4月にグループの“パーパス”「Pioneering solutions together for a healthy planet」を策定しました。このパーパスに併せて、大切にしたい価値観を3つのバリュー「すべての挑戦をリスペクトします」「多様な仲間と専門性を活かして成長します」「地球とあらゆる生命に寄り添い、守ります」にまとめています。パーパスを軸に、バリューを重視することで、帝人グループの長期ビジョンである「未来の社会を支える会社」を目指していきます。 [パーパスに込めた想い]Pioneeringsolutionsテイジンは、世界の前進を支えます。社会が進歩を求めるとき、私たちは行動で応えます。together業界を超えた専門知識を活かし、社員やお客様と共に、より良い暮らしの基盤を築いていきます。for a healthy planet循環型社会を支える素材やソリューションから、人々の健康や安心を支える製品やサービスまで。私たちは、今も、これからも、地球環境とそこに暮らすあらゆる生命の健やかさを守り続けます。 (2) 対処すべき課題 -中期経営計画-「帝人グループ 中期経営計画2024-2025」では「収益性改善の完遂による基礎収益力の回復」及び「事業ポートフォリオ変革」を最重点課題に掲げ、非注力・不採算事業のダイベストを着実に推進しました。その結果、事業の選択と集中が進展し、「事業ポートフォリオ変革」を大きく前進させることができました。一方で、アラミド事業及び炭素繊維事業における業績の回復が遅れたこともあり、全社の財務目標値は未達となりました。こうした前中期経営計画に対する実績も踏まえ、帝人グループが再び成長軌道へと回帰することを目指して、2026年5月に「帝人グループ 中期経営計画2026-2028」を公表しました。その中で、①顧客起点型ビジネスでの確かな利益成長、②構造改革による質の高い収益基盤の確立、③顧客起点型ビジネスを支える経営基盤の強化、の3つを対処すべき課題として掲げています。これらの課題に対し、確固たる決意のもとで着実に施策を実行し、企業価値の向上を図っています。なお、顧客起点型ビジネスへの変革を推進するために、2026年4月1日付で行った組織体制の再編に併せて開示セグメントを「アパレル&インダストリーズ」、「ヘルスケア&ライフソリューションズ」、「エレクトロニクス&エナジー」、「スペシャリティマテリアルズ」へと変更いたしました。 [帝人グループ 中期経営計画2026-2028] ①顧客起点型ビジネスでの確かな利益成長 マテリアル事業を中心に、新興国のキャッチアップによる素材のコモディティ化が進み、設備投資先行のビジネスモデルの見直し局面を迎えています。また、社会課題は複雑化し、ステークホルダーも多様化しているため、自社素材だけで解決できる課題は限定的となり、従来型の「素材起点型ビジネス」からの変革が求められています。 そこで当社は、顧客起点型ビジネスの深化・変革に取り組んでいます。顧客起点型ビジネスは、次の2つのコンセプトを特徴としています。ⅰ)従来の自社のモノ・コトを提供するという発想を転換して、顧客の課題を理解し、その解決に資するモノ・コトを幅広く提供していく「スリアワセ」、ⅱ)自社素材や自社生産に必ずしも拘らず、社外の素材・加工・サービスも採用する「クミアワセ」です。これにより、顧客が解決を求める課題にしっかりと応えていく事業運営を進めてまいります。 この顧客起点型ビジネスを具現化し、継続して成長してきた事業が、アパレル&インダストリーズ(繊維・製品事業)とヘルスケア&ライフソリューションズ(在宅医療ビジネス)であり、帝人グループの顧客起点型ビジネスが企業価値向上につながることの裏付けとなっています。 2026年から2028年までの中期経営計画期間においては、既に顧客起点型ビジネスを確立しているアパレル&インダストリーズ(繊維・製品事業)及びヘルスケア&ライフソリューションズ(在宅医療ビジネス)を成長・収益の柱として、規律を持ちながらも必要な投資は積極的に行っていきます。具体的には、前者は水平統合を推進することにより、業界のマーケットリーダーとして圧倒的な地位を確立することを目指します。また、後者は、通院が出来ない患者様を対象とした訪問型在宅医療市場へと事業領域を拡張することにより、在宅医療における総合プロバイダーへの進化を目指します。 一方、エレクトロニクス&エナジー(樹脂事業及び電池・半導体ソリューション事業)については、各分野で培った多様な素材・技術を組み合わせ、顧客起点型ビジネスの深化・変革を図ります。また、スペシャリティマテリアルズ(アラミド事業、炭素繊維事業及び複合成形材料事業)については、抜本的なコスト構造改革を推進するとともに、素材起点の考え方から脱却し顧客・用途起点組織へと変革していくことを今中期経営計画の期間中に具体化していきます。 2025年度は、アパレル&インダストリーズの中核企業である帝人フロンティア株式会社と旭化成アドバンス株式会社の経営統合を公表しました。この経営統合を通じて、事業基盤、営業ネットワーク及び顧客基盤を相互に補完し合うことで、クロスセル等による顧客への提案の幅が広がり、顧客起点型ビジネスでの確かな利益成長につながると考えています。 [対処すべき課題]顧客起点型ビジネスでの確かな利益成長■成長・収益の柱であるアパレル&インダストリーズ(繊維・製品事業)におけるプレーヤーが分散する市場での水平統合の推進と、ヘルスケア&ライフソリューションズ(在宅医療ビジネス)における連携・M&Aによる基盤拡大を起点とした新たな在宅医療製品・サービスの展開■エレクトロニクス&エナジー(樹脂事業及び電池・半導体ソリューション事業)における、各分野で培った多様な素材・技術を組み合わせた顧客起点型ビジネスへの深化・変革■スペシャリティマテリアルズ(アラミド事業、炭素繊維事業及び複合成形材料事業)における、顧客・用途起点組織への変革の具体化 ②構造改革による質の高い収益基盤の確立 スペシャリティマテリアルズのうち、低調な欧州経済の継続、北米通商政策に起因するユーロ高・ドル安等の外部環境の変化、競合の生産能力拡大による需給バランス軟化及び価格下落圧力の影響を受けたアラミド事業及び炭素繊維事業については、2025年度より抜本的なコスト構造改革を実行しています。生産体制の見直し、低収益ビジネスからの撤退と高付加価値用途への集中、及び人員を含む固定費削減を進めています。 また、ヘルスケア&ライフソリューションズのうち、薬価改定や後発品の浸透加速の影響を受けた医薬品ビジネスについては、希少疾患・難病領域への絞り込みを加速し、ベストオーナー探索を進めています。今後、医薬品ビジネスは、在宅医療事業基盤を活用し、患者サポート及び医療者サポートを提供する顧客起点型ビジネス(在宅自己注射等を行う希少疾患・難病領域を含む)の実行・強化を目指します。こうした取り組みを通じて、ヘルスケア&ライフソリューションズにおいては、新たな成長が見込まれる在宅医療領域へと事業の軸足を明確に移し、経営資源を集中させていきます。 以上により、アラミド事業、炭素繊維事業及び医薬品ビジネスにおける構造改革を今中期経営計画期間の早期に完遂することで、収益基盤の再生は概ね完了し、今後の回復に向けた基盤は整うものと考えています。 [対処すべき課題]構造改革による質の高い収益基盤の確立スペシャリティマテリアルズ(アラミド事業)■コスト構造の見直しと生産体制再編により400名超の人員と約150億円のコスト削減を2025年度から実施、2027年度にフル発現■さらなる事業体質の強靭化に向けた施策の実行■防衛・海底ケーブル等の高付加価値用途への集中(炭素繊維事業)■日・米・欧における生産ラインの適正化(2026年1月に北米工場休止)■約80名の人員と約50億円のコスト削減を2025年度から実施、2028年度にフル発現■次世代航空機の中間材料開発の推進等、航空機ビジネスへの集中ヘルスケア&ライフソリューションズ(医薬品ビジネス)■希少疾患・難病領域に特化した組織体制への再構築■在宅医療事業基盤の活用による希少疾患・難病薬の価値最大化 ③顧客起点型ビジネスを支える経営基盤の強化 顧客起点型ビジネスを推進するため、帝人グループ全体として、グローバルでの最適な機能組織の構築を進めています。今中期経営計画においては、特に、技術戦略管掌による事業間の技術横断的な連携及びシナジー創出、並びに次世代技術戦略の策定を進めるとともに、デジタル・情報システム管掌によるグローバルで最適化された統合IT基盤の構築やAI活用体制の整備を通じた生産性の向上等に取り組んでいます。 2025年度は、パーパスのさらなる浸透を図るべく、2024年度に引き続きパーパスを自分事として捉える「My Action」ワークショップを開催しました。特にパーパスの理解を深める取り組みを行った結果、従業員への事後アンケートでは高い満足度が確認されており、引き続きパーパスを軸とした経営の土台づくりを進めていきます。 ガバナンス体制については、監査等委員会設置会社への移行を完了し、執行における意思決定の迅速化、取締役会における経営重要課題に関する議論の充実、及び監督機能の強化を図りました。また、CEO直下に「サステナビリティ・コミティー」及び「リスクマネジメント・コミティー」を設置し、サステナビリティ及びリスクへの対応体制を強化しました。人的資本戦略としては、グローバルでの「適所適材」の実現に向け、経営管理職を対象としたジョブ型に対応した評価制度の導入を行うとともに、グローバルジョブグレード体系の統合に向けた取り組みも進めました。 [対処すべき課題]顧客起点型ビジネスを支える経営基盤の強化■顧客起点型ビジネスの推進に向け、事業・地域を横断したグローバルでの最適な機能組織の構築 2025年度は、中期経営計画の策定プロセスを通じて、顧客起点型ビジネスへと全社で変革していくための準備を進めてきました。また、顧客起点型ビジネスを確立しているアパレル&インダストリーズにおいて、帝人フロンティア株式会社と旭化成アドバンス株式会社の経営統合を公表する等、成長に向けた方向性を明確に打ち出しています。一方、スペシャリティマテリアルズのアラミド事業及び炭素繊維事業においては、高収益体質への回帰を目指し、構造改革を進めています。ヘルスケア&ライフソリューションズでは、希少疾患・難病領域を含む在宅医療事業基盤を活用した新たな体制への移行を速やかに進めてまいります。2026年度の業績予想は、事業利益300億円、税後事業利益ROIC3%、ROE12%(IFRSベース)となる見込みです。2026年度に構造改革の完遂を図り、今中期経営計画の最終年度である2028年度には、事業利益600億円、ROE8%以上(IFRSベース)の達成を目指し、各種施策を進めてまいります。帝人グループは、持続的な成長の実現と中長期的な企業価値の最大化を通じて、投資家を含むステークホルダーの期待に応えるため、早期にPBR1倍超の到達を目指してまいります。
MD&A(経営者による分析)
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において帝人グループが判断したものです。(1)経営成績等の状況の概要① 財政状態及び経営成績の状況2025年度の世界経済は、地政学的リスクの継続や通商・産業政策を巡る不確実性が引き続き高い水準で推移する中、金融政策や需要動向の違いを背景に、地域間で景況感にばらつきが見られる状況が続きました。米国では、雇用環境の底堅さを背景に個人消費が堅調に推移した一方、欧州では高金利環境の長期化や外需の弱含みを受け、製造業を中心に回復の動きは限定的なものにとどまりました。また、中国においては、内需回復の遅れが引き続き景気の重しとなりました。こうした環境のもと、為替動向やエネルギー・原材料価格の変動、各国の政策動向が企業活動に影響を及ぼす状況が続いており、マクロ環境は依然として不透明感を残しています。 帝人グループは、2024年5月に「帝人グループ 中期経営計画2024–2025」を公表し、「収益性改善の完遂による基礎収益力の回復」と「事業ポートフォリオ変革」を主要課題として、各種施策を推進してきました。2025年度は、マテリアル事業領域において回復の遅れが見られたことから、抜本的なコスト構造改革を実行に移しました。また、将来の成長に向けた布石として、繊維・製品事業の中核子会社である帝人フロンティア株式会社と旭化成アドバンス株式会社との経営統合を公表し、統合に向けた準備を進めています。2026年度から始まる新中期経営計画においては、これまで進めてきた構造改革を基盤とし、「顧客起点型ビジネス」を軸とした成長戦略を実行していきます。 1)経営成績帝人グループの当連結会計年度の経営成績は、売上収益8,732億円(前期比13.2%減)、営業損失707億円(前期 営業損失718億円)、事業利益258億円(同6.6%減)、親会社の所有者に帰属する当期損失880億円(前期 親会社の所有者に帰属する当期利益283億円)となりました。(単位:億円) 159期(2025年3月期)160期(2026年3月期)増減額増減率売上収益10,0558,732△1,323△13.2%営業損失(△)△718△70711-事業利益276258△18△6.6%親会社の所有者に帰属する当期利益(△は損失)283△880△1,164- 報告セグメントごとの経営成績の概況は次のとおりです。(単位:億円) 159期(2025年3月期)160期(2026年3月期)増減額増減率売上収益マテリアル4,5933,386△1,207△26.3%繊維・製品3,5193,501△19△0.5%ヘルスケア1,3701,386161.2%その他573460△113△19.7%合計10,0558,732△1,323△13.2%事業利益マテリアル601△59△98.0%繊維・製品178171△7△4.2%ヘルスケア5713477136.0%その他7146△25△35.6%消去又は全社△90△94△4-合計276258△18△6.6% 2)財政状態当期末の資産合計は、前期末に比べ1,412億円減少し、9,201億円となりました。帝人ナカシマメディカル株式会社(以下、帝人ナカシマメディカル)及びTeijin Automotive Technologies NA Holdings Corp.(以下、TAT)株式の譲渡により売却目的で保有する資産が減少したほか、償却ならびに多額の減損により有形固定資産や無形資産が減少しました。負債合計は、前期末に比べて712億円減少し、5,515億円となりました。帝人ナカシマメディカル及びTAT株式の譲渡により売却目的で保有する資産に直接関連する負債が減少したほか、借入金の返済により減少しました。資本合計(非支配持分を含む)は、多額の減損損失の計上等により、前期末に比べて699億円減少し、3,686億円となりました。これらの結果、D/Eレシオは0.92倍、親会社所有者帰属持分比率は39.6%となりました。(前期末 D/Eレシオ0.9倍、親会社所有者帰属持分比率40.6%)なお、当期末のBS換算レートは、160円/米ドル、183円/ユーロ、1.15米ドル/ユーロ(前期末150円/米ドル、162円/ユーロ、1.08米ドル/ユーロ)となっています。 ② キャッシュ・フローの状況当期の営業活動によるキャッシュ・フローは、減損損失や減価償却費等の非資金性費用を除いた利益等により、合計で987億円の収入(前期は698億円の収入)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資の実施等により、390億円の支出(前期は525億円の収入)となりました。この結果、営業活動に投資活動を加えたフリー・キャッシュ・フローは597億円の収入(前期は1,224億円の収入)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増加があった一方、長期借入金の返済や配当の支払により、733億円の支出(前期は1,345億円の支出)となりました。これらの結果、現金及び現金同等物に係る換算差額等も加え、当期における最終的な現金及び現金同等物の減少額は31億円となりました。 ③ 生産、受注及び販売の実績帝人グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その形態、単位等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多いため、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。このため生産、受注及び販売の状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況 1)経営成績」における各報告セグメントの経営成績に関連付けて示しています。 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容等経営者の視点による帝人グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。 ① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定帝人グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方針に関する記載」(以下、「連結財務諸表規則」という。)第312条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」及び「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。 ② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 1) 経営成績等a. 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容帝人グループの当期の経営成績は、売上収益が前期比で13.2%減の8,732億円となり、事業利益(注)は同6.6%減の258億円となりました。また、アラミド事業やヘルスケア事業での減損損失の計上等により営業損失は707億円(前期は718億円の営業損失)、親会社の所有者に帰属する当期損失は880億円(前期は283億円の当期利益)となりました。セグメント毎の事業利益は、マテリアル事業領域では、競争激化やアラミド事業での大型定修の影響により減益となりました。繊維・製品事業では、概ね販売量は堅調に推移したものの、若干の減益となりました。ヘルスケア事業では、在宅医療機器のレンタル台数の増加およびライセンス対価収入等により増益となりました。その結果、収益性を示すROEは△22.1%、ROICは2.6%となり、キャッシュ創出力を示すEBITDAは861億円となりました。 (注)事業利益は、営業利益に持分法による投資損益を加算し、非経常的な損益(持分法による投資損益のうち金融損益や減損損失等の非経常的な損益を含む)を除いて算出しています。 当期におけるセグメントごとの経営成績は次のとおりです。 マテリアル事業領域:[売上収益 3,386億円(前期比 26.3%減)、事業利益 1億円(同 98.0%減)、EBITDA 207億円(同 118億円減)]複合成形材料事業の収益性の改善およびアラミド事業における減損処理に伴う償却費減少等が収益に寄与しました。一方、アラミド事業での大型定修影響や炭素繊維での販売量減少に伴う操業度悪化の他、競争環境の激化による販売価格の低下等の影響を受けました。こうした状況を踏まえ、アラミド事業および炭素繊維事業では抜本的な収益改善に向けコスト構造改革を進めています。売上収益は3,386億円と前期比1,207億円の減収(26.3%減)、事業利益は1億円と前期比59億円の減益(98.0%減)となりました。EBITDAは前期比118億円減の207億円となり、ROICは0%となりました。アラミド事業では、主力のパラアラミド繊維「トワロン」において、欧州の自動車市場の回復遅れや、防弾防護用途における顧客のプロジェクト遅延等が影響しました。産業用途での拡販により販売量は増加しましたが、価格競争が厳しさを増している光ファイバー向け用途の比率が高まり、販売構成が悪化しました。加えて、第1四半期の大型定修等による操業度低下もあり、第2四半期末に計上した減損による償却費減少影響が下期に発現したものの、前期比では増収・減益となりました。アラミド事業は、現在実行中の抜本的なコスト構造改革により、早期に基礎収益力を回復させることを目指しています。樹脂事業では、主力のポリカーボネート樹脂において、中国景気の低迷や競争環境の激化が継続しましたが、販売量は堅調に推移しました。原料価格の低下に伴い、販売価格が低下しましたが、スプレッドは概ね横ばいとなりました。結果、前期比では減収となったものの、コスト改善を背景に増益となりました。炭素繊維事業では、航空機向け用途におけるサプライチェーン上の制約の継続、産業用途では、欧州経済の低迷や競争環境の激化により、販売量が減少し、操業度が低下しました。また、汎用品を中心とした販売価格の低下が継続し、前期比減収・減益となりました。炭素繊維事業においても、収益力の改善に向け、米国工場の一時休止を含む抜本的なコスト構造改革を実行しています。複合成形材料事業では、北米事業における収益性の改善および前年度の減損に伴う償却費減少等が収益に寄与しました(北米事業は、2025年7月1日に株式譲渡完了)。欧州では、自動車市場の減速を受け、一部車種での需要減により販売量が減少しました。結果、前期比減収・増益となりました。 マテリアル事業領域の事業利益の増減分析(前期比)は以下のとおりです。 繊維・製品事業:[売上収益 3,501億円(前期比 0.5%減)、事業利益 171億円(同 4.2%減)、EBITDA 249億円(同 6億円減)]衣料繊維分野、産業資材分野ともに堅調な販売を維持しましたが、前期比では若干の減収・減益となりました。売上収益は3,501億円と前期比19億円の減収(0.5%減)、事業利益は171億円と前期比7億円の減益(4.2%減)となりました。EBITDAは前期比6億円減の249億円となり、ROICは8%となりました。衣料繊維分野では、北米向けテキスタイルや国内向け衣料品の販売が好調に推移するとともに、中国における素材・製品の販売も業績に大きく貢献しました。産業資材分野では、自動車関連用途で需要回復遅れの影響がありましたが、各種フィルター向けのポリエステル短繊維やテレビ通販での生活雑貨の販売が好調を維持しました。また、持続的な成長と企業価値の最大化を目的として、帝人フロンティア(株)と旭化成アドバンス(株)との経営統合の準備を進めています。 繊維・製品事業の事業利益の増減分析(前期比)は以下のとおりです。 ヘルスケア事業:[売上収益 1,386億円(前期比 1.2%増)、事業利益 134億円(同 136.0%増)、EBITDA 392億円(同 45億円増)]在宅医療機器分野では、レンタル台数が堅調に推移しました。一方で、医薬品分野では、ライセンス対価収入が収益貢献したものの、後発医薬品の浸透、薬価改定等の影響を受けました。売上収益は1,386億円と前期比16億円の増収(1.2%増)、事業利益は134億円と前期比77億円の増益(136.0%増)となりました。EBITDAは前期比45億円増の392億円となり、ROICは7%となりました。在宅医療機器分野では、在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP)市場において、検査数の増加に伴い新規処方件数の拡大が継続し、レンタル台数は堅調に増加しました。また、在宅酸素療法(HOT)市場もレンタル台数は堅調に推移し、2023年上市の携帯型酸素濃縮装置のレンタル台数が増加しました。医薬品分野では、複数のライセンス対価収入が収益に貢献しました。一方、後発品の浸透加速および長期収載品を中心とした2025年4月の薬価改定が影響しました。また、2025年11月には、副甲状腺機能低下症治療剤「ヨビパス」を上市しました。また、糖尿病治療剤の販売権減損処理に伴う償却費減、および事業構造転換の推進に伴う固定費削減効果が発現しました。 ヘルスケア事業の事業利益の増減分析(前期比)は以下のとおりです。 その他:[売上収益 460億円(前期比 19.7%減)、事業利益 46億円(同 35.6%減)]売上収益は460億円と前期比113億円の減収(19.7%減)、事業利益は46億円と前期比25億円の減益(35.6%減)となりました。電池部材・メンブレン分野は、堅調な販売により安定的に収益を確保しました。再生医療分野はCDMO事業の立上げが順調に進展しました。埋込医療機器分野では、帝人メディカルテクノロジー(株)が営む吸収性骨接合材等の事業が着実に伸長しました。また、人工関節等の事業を営んでいた帝人ナカシマメディカル(株)は株式売却により連結対象から外れました。 その他の事業利益の増減分析(前期比)は以下のとおりです。 b. 財政状態及びキャッシュ・フローの状況当連結会計年度の財政状態、キャッシュ・フローの状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 2)財政状態、② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。 (帝人グループの資本の財源及び資金の流動性について)帝人グループの資金需要の主なものは、製品製造のための原材料等の購入、製造費、販売費やサービス提供費用等の運転資金需要に加え、設備投資や研究開発活動費等の投資があります。これらに必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用、金融機関からの借入及び社債発行等により資金調達を行っているほか、複数の金融機関とのコミットメントライン契約や当座貸越枠を含む十分な借入枠を有しています。このように、帝人グループの事業運営に必要な運転資金や投資資金の調達に関しては問題なく実施可能と認識しており、高水準で維持している現預金も含め、緊急時の流動性を確保しています。また、帝人グループではグループ内余剰資金を活用するため、日米欧中の各拠点におけるキャッシュ・マネジメント・システムおよび日米欧間のグローバル・キャッシュ・マネジメント・システムを導入し、資金効率の向上に努めています。資金調達にあたっては、D/Eレシオ0.9を目安に財務体質の健全性を維持しながら、資金需要の見通しや金融情勢に応じて最適な手段を選択しています。なお、資金調達コストの低減に努める一方、設備投資に対応する借入の大部分については長期調達するとともに、過度に金利変動リスクに晒されないよう金利スワップ等の手段を活用し、固定化しています。 2) 経営成績に重要な影響を与える要因経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりです。 3) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等2025年度は、アラミド事業及び炭素繊維事業について、低調な欧州経済の継続、北米通商政策に起因するユーロ高・ドル安等の外部環境の変化、競合の生産能力拡大による需給バランス軟化及び価格下落圧力の影響を受け、抜本的なコスト構造改革を開始しました。また、薬価改定や後発品の浸透加速の影響を受けたヘルスケア事業の医薬品ビジネスについては、希少疾患・難病領域への絞り込みを進めてまいりました。その結果、アラミド事業及びヘルスケア事業における減損損失の計上などの影響により、ROEは△22.1%、事業利益ROICは2.6%、事業利益は258億円となり、このような状況を背景とし、当社経営に対する市場評価の一つであるPBR(Price Book-value Ratio: 株価純資産倍率)が1倍割れの状況にあります。 また、各種指標の実績と目標は以下のとおりです。 第160期(2026年3月期)見通し(2027年3月期)ROE(%)△22.112ROIC(%)2.63事業利益(億円)258300(注)各指標はいずれも当社連結ベースの財務数値を用いて算出しています。・ROE:親会社の所有者に帰属する当期利益/期首・期末平均親会社の所有者に帰属する持分・ROIC:税引後事業利益/期首・期末平均投下資本※投下資本・・・資本+有利子負債・事業利益:営業利益に持分法による投資損益を加算し、非経常的な損益(持分法による投資損益のうち金融損益や減損損失等の非経常的な損益を含む)を除いて算出しています。 2026年度は、2026年5月に公表した「帝人グループ 中期経営計画2026-2028」のとおり、①顧客起点型ビジネスでの確かな利益成長、②構造改革による質の高い収益基盤の確立、③顧客起点型ビジネスを支える経営基盤の強化を3つの主要課題として掲げ、顧客起点型ビジネスを軸とする確かな成長の実現に向けて、各種施策を進めてまいります。2026年度は、ROEは12%、事業利益ROICは3%、事業利益は300億円を予想しており、今中期経営計画の最終年度である2028年度に掲げるROE8%、事業利益600億円の達成に向けた初年度として、着実な収益の達成を目指してまいります。
事業リスク
- 大規模自然災害のリスク首都圏直下型地震や南海トラフ地震、富士山噴火など、日本国内での大規模自然災害が発生した場合、主要事業所が被災し、製造や供給が停止する可能性があります。これにより、顧客への製品供給が滞り、売上減少や事業継続に大きな影響を及ぼす恐れがあります。
- 情報セキュリティリスクサイバー攻撃による重要情報の流出やシステムダウンは、業務停止や顧客からの信頼失墜、損害賠償請求につながる可能性があります。特にDX推進に伴い、情報システムへの依存度が高まる中で、このリスクは増大しています。
- サプライチェーン寸断リスク地政学的な問題や経済安全保障上の理由により、主要原材料の供給が停止する可能性があります。これにより、製品の製造が困難になり、生産計画の遅延やコスト増加、ひいては顧客喪失につながる恐れがあります。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「事業等のリスク」の全文を見る(年度切替)
3【事業等のリスク】(1) トータル・リスクマネジメント(TRM)の基本原則 リスクマネジメントは、コンプライアンスとともに、内部統制を支える要と位置づけ、帝人グループの経営全般をカバーする総合的な体制としてトータル・リスクマネジメント(TRM)体制を構築しています。当社は、その株主価値を高め、さらに株主を始めとするステークホルダーが満足できる事業活動を継続する使命があり、その実現を脅かすあらゆるリスク(不確実性)に対処する必要があるとの認識のもと、グループ全体が晒されるかかるリスクを統合的かつ効率的に把握・評価・管理し、グループ経営に活かすための組織的・体系的アプローチを行うこととしています。 当社取締役会は、帝人グループ全体のリスクマネジメントを監督し、経営戦略・経営計画策定、戦略的なアクション、個別投資プロジェクトの決定等に伴う「経営戦略リスク」と、会社に悪影響をもたらす様々な有害事象である「業務運営リスク」のアセスメントを、意思決定を行うに際しての重要な判断材料として位置づけています。また、当社は、グループ会社とその役員に対し、上記の原則を充分理解し、会社活動を脅かすあらゆるリスクに対処するよう求めています。 上記の基本原則に則り、TRM推進のため、「経営戦略リスク」と「業務運営リスク」について、以下の体制を整備しています。[経営戦略リスク]CEOが議長を務め、業務執行に関する重要事項を審議する「グループ経営戦略会議」において、当社グループの経営戦略上の重要な取り組み及びリスク対応の推進を行っています。当面認識している主なリスクとしては、中東情勢の不安定化によるエネルギー価格の変動や原材料調達、国際物流網への影響、中国を含む主要国間における地政学的緊張の継続・拡大、並びに主要国における通商政策・産業政策及び経済安全保障政策の不確実性等が挙げられます。また、同意なき買収や事業構造の見直しが当社グループ全体に及ぼす影響、AIをはじめとするデジタル技術の進展等による業界構造の変化、国際秩序の流動化に伴う経済環境の変化についても、中長期的な経営戦略上のリスクとして認識しています。[業務運営リスク]サステナビリティ管掌が担当するものとし、CEOの下に設置する「リスクマネジメント・コミティー」において、業務運営リスクマネジメントに関する方針の検討、この方針に基づく取り組みの推進・進捗管理を行います。リスクマネジメント・コミティーの委員長はCEOとし、その他の委員は、サステナビリティ管掌及びCEOが指名した者とします。業務運営リスクの詳細については、下記「(2)2026年度重大リスク」をご参照ください。 なお、以下の文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において帝人グループが判断したものです。当社グループは、下記リスクのほか、本有価証券報告書中の他の箇所に記載されているリスクに直面しており、これらリスクの影響により、実際の業績は、将来の見通しに関する記述と異なる可能性があります。 (2) 2026年度重大リスク リスクマネジメント・コミティーでは、発現すると経営への影響が大きい業務運営リスクに対応するため、リスク領域を9領域(広域災害、情報、地政学・経済安全保障、品質、コンプライアンス、人財、安全、環境、社会)に整理し、各領域のリスクについて、①影響度、②発生確率、③発生時期から評価を行い、重大リスクを特定しています。リスクマネジメントの実効性を高めるため、重大リスクの中でも特に重点管理が必要と判断したリスクについては、リスクマネジメント・オーナー(担当役員)を任命して、その責任と範囲を明確化した上で、リスクの管理に取り組んでいます。 リスク領域主要リスクリスク内容対応方針影響度(a)発生確率(b)発生時期リスク評価a×b重点管理広域災害大規模自然災害大規模自然災害(首都直下地震・南海トラフ地震、富士山噴火等)により、操業停止、物流寸断、人員確保の困難化、経営機能の中断等が生じ、事業継続に重大な影響が発生災害対応マニュアルの見直し、SOP整備等を通じた実務レベルでの実効性強化32短~長期6●情報情報セキュリティ取引先を含むサプライチェーン全体への高度化した攻撃拡大により、情報漏えいだけでなく、操業停止、設備トラブル、安全事故等につながるリスクの連鎖的発生により、事業継続困難グループ全体のセキュリティレベル向上に向けた取組みの継続推進、BCP訓練実施33短期9●AI・デジタルリスクAI活用の遅れや誤用(偽情報利用、機密情報入力、誤判断等)、AI規制/データ規制への対応不足により、業務プロセスや統制プロセスの設計/運用に不備が生じ、情報漏えい、品質不良、業務停止等が連鎖的に発生情報系人財の教育プログラム整備とキャリアパスの明確化、DX人財育成プログラムの継続的提供22短~中期4-地政学・経済安全保障サプライチェーン分断中東情勢の不安定化等による地政学的対立の拡大や制裁・輸出規制、物流・エネルギー制約の長期化により、特定地域/品目の調達や輸送が継続的に制約され、原材料の供給遅延/不足やコスト上昇により、生産、製品供給、事業継続にも重大な影響が発生安定調達体制の構築及び結果事象型の観点からの対策検討を通じた想定外事象に対するレジリエンス強化33短期9●技術情報流出不正アクセスや内部不正等により重要技術・機密が流出。競争優位性の毀損と共に、経済安全保障を理由とする制裁/処分に発展重要技術情報及び管理状況の棚卸を踏まえた情報整備、管理強化策検討・展開23短期6●為替激変急激な為替変動により輸出入コストや海外拠点収益が大きく変動し、事業採算・財務計画に重大な影響が生じる事業損益管理の中での対応継続22短~中期4-品質重大品質不正・偽装重大な品質不正・偽装が原因で顧客に多大な被害・損害が発生し、事業停止処分、巨額の補償負担が発生、他事業へもレピュテーション影響波及品質コンプライアンスに特化した内部監査強化23短期6● リスク領域主要リスクリスク内容対応方針影響度(a)発生確率(b)発生時期リスク評価a×b重点管理コンプライアンス重大不祥事社会的注目を集めるコンプライアンス問題が発生し、マスコミ報道過熱、レピュテーション低下により、顧客喪失、事業継続困難目の届きにくい地域・グループ会社への対応強化23短期6●人財人財流出・採用人財流出や採用難の長期化により専門技術・保全・品質管理等の重要機能の継続性が損なわれ、事業運営力が低下し、経営基盤が弱体化労働環境改善推進(ジョブ型、キャリア自律支援等の制度整備含む)、主要会社における離職率水準の定期的確認22中~長期4-安全火災・漏洩設備不良・オペレーションミスに伴い漏洩や異常が発生し、火災事故まで発展。製造工程の停止や市場からの信頼低下により事業環境が悪化。頻発する漏洩により社外・環境への影響が生じたことによる操業停止漏洩・火災など重大な防災事故の未然防止に向けた各所の対応検証・診断と防災マネジメントの見直し32短期6●環境気候変動(移行リスク)環境規制や情報開示義務、顧客からのCO2削減要請への対応遅れにより、顧客喪失、投資家離れが発生グローバルの規制動向モニタリングを継続、遅延なく対応12中~長期2-社会サプライチェーン人権規制強化への対応不備や人権侵害の発覚により、レピュテーション低下、顧客喪失、訴訟、人財流出が発生外部リスクアセスメント(サーベイ)に基づくハイリスク事業の課題対応とモニタリング21中期2-(注) 影響度、発生確率を各1~3の3段階で評価。重大リスクの内、影響度×発生確率で評価されるリスク評価6点以上を「重点管理リスク」として特定(「発生時期」は「発生確率」にも含まれる概念のため参考扱い)