3863

日本製紙(3863)は何で稼いでいるか — 事業の柱と依存度

パルプ・紙 素材・化学

事業の概要

  • 紙・板紙事業
    洋紙、板紙、特殊紙、パルプなどの製造販売が主力です。新聞や雑誌に使われる洋紙、食品や飲料のパッケージに使われる板紙、特殊な機能を持つ特殊紙など、幅広い紙製品を提供しています。これらの製品は、日本製紙グループの基盤となる収益源です。
  • 生活関連事業
    家庭紙(ティッシュペーパー、トイレットペーパーなど)、紙加工品(紙容器、段ボールなど)、化成品などの製造販売を手掛けています。特に、日本製紙クレシアが家庭紙を、豪州のOpal社が紙器や段ボールを製造販売しており、日々の生活に密着した製品で収益を上げています。
  • エネルギー事業
    自社発電設備の運転・管理や、電力の卸供給販売を行っています。紙・パルプ製造はエネルギーを大量に消費するため、自社で発電することでコストを抑えつつ、余剰電力を販売することで新たな収益源を確保しています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
セグメント構成
  • 紙・板紙事業
    洋紙、板紙、特殊紙、パルプなどの製造販売が中心で、売上高5659.11億円、営業利益82.68億円と、グループの主要な収益源です。新聞用紙から段ボール原紙まで幅広い製品を扱い、日本製紙が製造販売、日本紙通商などが仕入販売を担っています。
  • 生活関連事業
    家庭紙、雑種紙、紙加工品、段ボール、化成品などの製造販売を手掛け、売上高4578.8億円、営業利益-61.37億円です。日本製紙クレシアが家庭紙を、豪州のOpal社が紙器や段ボールを製造販売しており、日々の生活に密着した製品を提供していますが、営業利益は赤字となっています。
  • エネルギー事業
    発電設備の運転・管理や電力の卸供給販売を行い、売上高482.95億円、営業利益35.59億円を計上しています。日本製紙石巻エネルギーセンターなどが電力供給を担っており、自社消費だけでなく外部への販売も行うことで、安定した収益を上げています。
2025-03 セグメント別業績
セグメント区分売上(億)営業利益(億)営業利益率
PaperAndPaperboard 事業 5,659 83 1.5%
Lifestyle 事業 4,579 -61 -1.3%
EnergyProject 事業 483 36 7.4%
WoodProductsAndConstructionRelated 事業 788 96 12.2%
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FY2026|866 文字
3 【事業の内容】当社グループは、当社、子会社120社及び関連会社29社で構成され、その主な事業内容と、主要な会社の当社グループの事業に係る位置付け及びセグメントとの関連は、次のとおりです。以下に示す区分は、セグメントと同一の区分です。 [紙・板紙事業]洋紙、板紙、特殊紙、パルプ等の製造販売を行っています。・洋紙は、当社が製造販売、当社及び日本紙通商㈱他が仕入販売を行っています。十條サーマル社が欧州市場を中心に感熱紙等の製造販売を行っています。・板紙は、当社他が製造販売、日本東海インダストリアルペーパーサプライ㈱他が販売を行っています。・特殊紙は、日本製紙パピリア㈱他が製造販売を行っています。・パルプは、当社他が製造仕入、販売を行っています。 [生活関連事業]家庭紙、雑種紙、紙加工品、段ボール、化成品等の製造販売を行っています。・家庭紙は、日本製紙クレシア㈱他が製造販売を行っています。・紙加工品では、当社他が紙容器等の製造販売を行っています。Opal社が豪州市場を中心に紙器の製造販売を行っています。日本ダイナウェーブパッケージング社が北米市場を中心に液体用紙容器原紙の製造販売を行っています。リンテック㈱が粘着関連製品の製造販売を行っています。・段ボールは、Opal社及び日本トーカンパッケージ㈱が製造販売を行っています。・化成品は当社が製造し、㈱フローリック、日本紙通商㈱他が販売しています。 [エネルギー事業]当社が発電設備の運転・管理、日本製紙石巻エネルギーセンター㈱、勇払エネルギーセンター合同会社他が電力の卸供給販売を行っています。 [木材・建材・土木建設関連事業]日本製紙木材㈱他が木材の仕入販売、日本製紙木材㈱が建材の仕入販売、エヌ・アンド・イー㈱他が建材の製造販売を行っています。また、日本製紙ユニテック㈱他が土木建設事業を行っています。 [その他]日本製紙物流㈱他が物流事業、日本製紙総合開発㈱他がレジャーその他の事業を行っています。 事業系統図2026年3月31日付の事業系統図は、次のとおりです。

事業の優位性(モート)

事業の質(有価証券報告書から抽出)
数字に出ない事業の性質を、同じ物差しで全銘柄そろえています。FY2025時点の記載が出典です。
価格決定力値上げを通せるか。強いほどインフレ耐性が高い 弱い
原燃料の価格は国内外の市況に大きく影響を受け、価格変動が顕在化する可能性。
参入障壁新規参入を阻む要因の種類 設備
エネルギー多消費型の紙・パルプを主要事業とし、高効率設備の導入や製造プロセスの最適化が必要。
景気敏感度業績が景気循環にどれだけ振られるか 中程度
設備投資の性質稼いだ現金がどれだけ設備維持に消えるか 混合
規制依存規制は障壁にも足枷にもなる 高い
会社が挙げる主要リスク:人材確保のリスク / Opal社収益改善の遅延に関するリスク / 気候変動に関するリスク
同じ条件で他の銘柄を探す → 定性スクリーニング(価格決定力・参入障壁・景気敏感度などで絞り込めます)
モート総合 10 / 25 5類型それぞれの強度と、そう判定した根拠
無形資産★☆☆☆☆
根拠:弱いブランド・特許・許認可

日本製紙は長年の歴史を持つ企業であり、一部のブランド認知度は存在するものの、特許や規制ライセンスによる明確な独占的優位性は限定的。紙製品の多くは汎用品であり、無形資産による競争優位性は強くない。

スイッチングコスト★★☆☆☆
根拠:中程度乗り換えの手間・コスト

一部の産業用紙や特殊紙においては、顧客との長年の取引関係や仕様への適合性から、一定のスイッチング・コストが存在する可能性がある。しかし、汎用的な印刷用紙などでは乗り換えは比較的容易と考えられる。

ネットワーク効果☆☆☆☆☆
根拠:弱い利用者増が価値を生む

パルプ・紙業界のビジネスモデルにおいて、ネットワーク効果は基本的に見られない。製品の価値は生産効率や品質に依存し、ユーザー数の増加が直接的な価値向上に繋がる構造ではない。

コスト優位★★★☆☆
根拠:中程度同じ物を安く作れる

日本製紙は、原燃料調達、生産プロセス、物流網において、長年の事業運営で培われた効率化努力や規模の経済を活かしたコスト競争力を持つ可能性がある。特に、国内での生産拠点やサプライチェーンの最適化は強みとなりうる。

規模の経済★★★★☆
根拠:強い規模が参入障壁になる

日本製紙は国内有数の製紙メーカーであり、生産能力、販売網、研究開発力において業界内で確固たる地位を築いている。この規模は、効率的な生産や新製品開発、市場への影響力において優位性をもたらす。

  • 多様な事業ポートフォリオ
    紙・板紙、生活関連、エネルギー、木材・建材など多岐にわたる事業を展開しており、特定の市場変動リスクを分散しています。例えば、グラフィック用紙の需要減少を生活関連事業やバイオマス素材事業で補う戦略は、事業の安定性に寄与すると考えられます。
  • グローバルな事業展開
    豪州のOpal社や北米の日本ダイナウェーブパッケージング社など、海外にも製造・販売拠点を持ち、国際的な市場で事業を展開しています。これにより、特定の地域市場に依存することなく、成長市場の機会を捉えることが可能です。
  • 資源の有効活用と環境対応
    森林資源を基盤とし、パルプ製造から紙製品、さらにはバイオマス素材やエネルギー生成まで一貫したバリューチェーンを構築しています。また、2050年カーボンニュートラル達成を目指すなど、環境負荷低減への取り組みは、持続可能な事業運営と企業価値向上に繋がる可能性があります。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)

経営戦略

有価証券報告書「経営方針・対処すべき課題・MD&A」の全文を見る(年度切替)
経営方針・経営戦略
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであり、達成を保証するものではありません。 (1) 会社の経営の基本方針2026年5月、当社グループは、2026年度から2030年度までの経営計画として「中期経営計画2030」(中計2030)を策定しました。中期経営計画2025の成果・課題や、株主・投資家の皆さまからの様々なご意見などを勘案し、中計2030では、B/S(バランスシート)の最適化・構造改革の断行・収益性の向上の3点を基本戦略としました。有利子負債の削減、不採算事業の抜本的改革、森林・木材関連事業の拡大、生活関連事業の収益力強化などの重点課題に取り組み、資本効率の向上と持続的な成長を目指します。 (2) 目標とする経営指標 <中期経営計画2030 財務目標>・ROIC 4%以上・ROE 8%以上・ネットD/Eレシオ(自己資本ベース) 1.0倍以下・木材・建材・土木建設関連事業および生活関連事業の売上高比率 55.0%・営業利益 600億円以上・売上高営業利益率 5%以上・EBITDA 1,400億円以上 (3) 会社の対処すべき課題①中期経営計画2025(2021年度~2025年度)の振り返り当社は、2021年度に「中期経営計画2025」を策定し、新型コロナウイルスによる需要低迷や、ロシアのウクライナ侵攻に伴う原燃料価格高騰、円安など経営環境が激変する中、「事業構造転換の加速」をテーマに掲げ、各種施策に取り組みました。国内事業は、コスト削減と価格改定により、原燃料価格高騰などのコストアップを吸収し、2023年度以降の営業利益は概ね計画を達成しました。一方で、海外事業、特に豪州Opal社の収益低迷が続き、グループ全体の営業利益などの業績目標は未達となりました。 主な取り組みと課題紙事業から成長事業である生活関連事業へ経営資源のシフトを進めた結果、売上高に占める生活関連事業の比率は、2020年度の32%から、2025年度には40%となり、事業構造転換が着実に進みました。国内事業では、需要減少が続くグラフィック用紙の生産能力を約30%削減し、稼働率90%を維持することで、紙・板紙事業の競争力強化に努めました。原燃料費や固定費の上昇に対しては、グループを挙げてコスト削減を進めるとともに、各事業において複数回にわたる価格改定を行い、2023年度以降は目標とした収益水準を概ね維持しました。一方、海外事業は業績が低迷しました。特に豪州Opal社は、ビクトリア州有林からの原木供給停止を受け、2023年にグラフィック用紙事業からの撤退を余儀なくされるなど厳しい事業環境が続きました。生産体制の最適化と固定費削減、パッケージング加工事業の生産性向上など収益改善を進めたものの赤字が継続しており、引き続き立て直しに全力を挙げています。財務面では、資本効率向上のため資産売却と有利子負債削減に取り組みました。東京都北区の土地などの資産売却を進め、政策保有株式については原則として全廃する方針を2025年に公表し、計画を上回るペースで縮減しました。これらの結果、株主資本ベースでのネットD/Eレシオ1.7倍台、純有利子負債7,100億円以下など、2023年に設定した財務目標を達成しましたが、いずれもさらなる改善が必要です。営業利益率の低迷と構造改革に伴う特別損失の発生により、ROEも低水準にとどまりました。温室効果ガス(GHG)排出量については、2025年度に、2013年度比43%(暫定値)の削減を達成し、2030年度目標の同54%削減に向けて順調に進捗しています。以上のとおり、事業構造転換、既存事業の基盤強化、GHG排出量の削減については一定の成果を得たものの、グラフィック用紙の需要減少への対応、海外事業の収益力強化、資本効率の改善が引き続き課題と認識しています。 ②中期経営計画2030(2026年度~2030年度)の取り組み本年5月、中期経営計画2030を発表しました。主な課題は資本効率の向上と収益力の強化であり、基本戦略として「B/S(バランスシート)の最適化」「構造改革の断行」「収益性の向上」を掲げました。財務目標としてROIC4%以上、ROE8%以上、ネットD/Eレシオ1.0倍以下、営業利益600億円以上を設定し、資本市場との積極的な対話と情報開示に努め、資本コストや株価を意識した経営を実践していきます。(イ)重点課題a. B/S(バランスシート)の最適化財務基盤の健全化・効率化のため、政策保有株式の売却など資産のスリム化と有利子負債の削減を優先的に進め、2026年3月末において自己資本ベースで1.20倍となっているネットD/Eレシオを同1.0倍以下まで引き下げます。b. 構造改革の断行基盤事業を強靭化し競争優位性を確立するとともに、低収益事業の整理を進めます。 国内グラフィック用紙事業は、需要減少に対応し、早期に石巻・岩沼・岩国への生産拠点集約の検討を進め、競争力の向上と稼働率90%以上の維持を図り、利益率を向上させます。 豪州Opal社は、段ボール一貫事業への経営資源集中、一段の生産体制の最適化と固定費削減、低収益事業の検証、組織・人員体制の見直しなど抜本的改革を行い、成長軌道への回復を加速させます。c. 収益性の向上利益率・資本効率の高い森林・木材関連事業、生活関連事業を注力事業と位置付け、収益力を強化し拡大します。合わせて、パッケージング事業の川下戦略、新規バイオマス素材事業の早期戦力化などを進め、グループ全体の収益性向上を目指します。(ロ)個別事業の取り組みa. 森林・木材関連事業世界トップクラスの育種・増殖技術、国内外の木質資源サプライチェーン、自社森林資源などを活用し、森林・木材関連事業の拡大と社会課題解決への貢献を同時に目指すグリーン戦略を展開します。具体的には、国産材・海外材流通事業の拡大、育種・増殖技術を活用した海外植林事業・エリートツリー苗木事業の拡大、カーボン市場・自然資本市場における森林資源の価値化などに取り組みます。b. パッケージング用紙事業グループ内外の加工会社との連携・協業による川下戦略を進め、原紙・加工の垂直事業モデルによるシナジー発現を目指します。段ボール原紙においては、2026年4月に当社グループ、段ボール業界大手トーモク、特種東海製紙の間で協業検討に関する覚書を締結し、取り組みを加速させています。c. パッケージング加工事業(紙パック事業)国内では、グループ製造原紙を活用した高付加価値・差別化パッケージの開発と、充填機メーカーの四国化工機との協業による原紙から加工・充填機にわたる一貫サービスの提供により市場シェアの拡大を目指します。海外では、Elopak社などパートナー企業と連携し、環太平洋地域を中心に事業拡大を図ります。d. 家庭紙・ヘルスケア事業高齢化など社会構造の変化に対応した高付加価値製品の開発・拡販を進めます。家庭用品は石巻・八代の新型抄紙機のフル活用により、また、需要が増加するヘルスケア製品は生産能力の増強により、それぞれ差別化製品の販売拡大を図ります。ビジネスパートナーと連携し、アジア・オセアニア、北米などへの輸出を拡大するとともに、e-コマース・D2C(Direct to Consumer)など新たなチャネルでの販売も強化します。e. ケミカル事業自動車用塗料などに使用される機能性コーティング樹脂は海外市場での拡販を進め、機能性フィルムは有機ELディスプレイ向けの採用拡大を図るなど、ともに成長市場での一段の収益拡大を目指します。また、ケミカル事業の中核生産拠点である江津工場の生産基盤強化・競争力改善を進め、主力製品である溶解パルプ、機能性セルロース、リグニンなど、バイオマス素材の販売拡大と収益力強化を図ります。 f. 新規バイオマス素材事業バイオマスの高付加価値化技術を活用し、脱炭素社会・循環型社会で求められる新規バイオマス製品の開発と早期戦力化を図ります。既に開発が進んでいるセルロースナノファイバーやバイオエタノールなどの本格的な社会実装を急ぐとともに、農林水産・食、ライフスタイル、社会インフラ・環境、先端機能材料など、今後当社が注力する活動領域で、オープンイノベーションも積極的に活用しながら、「低GHG」「リサイクル性」などの付加価値を付与した新規バイオマス素材を幅広く社会に提供していきます。(ハ)非財務戦略a. 人的資本戦略社員一人ひとりが持つ「高度な操業技術・木質資源に関する専門性」「誠実さ」「連携力」といった強みを基盤に、社員の成長をグループの成長につなげる人材マネジメントを推進していきます。これを通じて、多様な人材の確保、スキル・知識・技術の向上、エンゲージメント向上を図り、目指す企業像である「社員が誇りを持って明るく仕事に取り組む」ことを追求することで、グループの持続的な成長を実現していきます。b. 自然資本戦略事業活動が環境に与える影響を最小にする「ミニマム・インパクト」の実現を目指し、カーボンニュートラル(脱炭素の推進)、サーキュラーエコノミー(資源循環の拡大)、ネイチャーポジティブ(生物多様性の保全・回復)に取り組みます。GHG排出量削減については、2030年度目標の2013年度比54%削減に向けて2025年度までに43%(暫定値)の削減を達成し順調に進捗していることから、今回新たな目標として「2035年度60%削減、2040年度65%削減」を設定しました。2050年カーボンニュートラルに向けて取り組みを強化していきます。
対処すべき課題
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであり、達成を保証するものではありません。 (1) 会社の経営の基本方針2026年5月、当社グループは、2026年度から2030年度までの経営計画として「中期経営計画2030」(中計2030)を策定しました。中期経営計画2025の成果・課題や、株主・投資家の皆さまからの様々なご意見などを勘案し、中計2030では、B/S(バランスシート)の最適化・構造改革の断行・収益性の向上の3点を基本戦略としました。有利子負債の削減、不採算事業の抜本的改革、森林・木材関連事業の拡大、生活関連事業の収益力強化などの重点課題に取り組み、資本効率の向上と持続的な成長を目指します。 (2) 目標とする経営指標 <中期経営計画2030 財務目標>・ROIC 4%以上・ROE 8%以上・ネットD/Eレシオ(自己資本ベース) 1.0倍以下・木材・建材・土木建設関連事業および生活関連事業の売上高比率 55.0%・営業利益 600億円以上・売上高営業利益率 5%以上・EBITDA 1,400億円以上 (3) 会社の対処すべき課題①中期経営計画2025(2021年度~2025年度)の振り返り当社は、2021年度に「中期経営計画2025」を策定し、新型コロナウイルスによる需要低迷や、ロシアのウクライナ侵攻に伴う原燃料価格高騰、円安など経営環境が激変する中、「事業構造転換の加速」をテーマに掲げ、各種施策に取り組みました。国内事業は、コスト削減と価格改定により、原燃料価格高騰などのコストアップを吸収し、2023年度以降の営業利益は概ね計画を達成しました。一方で、海外事業、特に豪州Opal社の収益低迷が続き、グループ全体の営業利益などの業績目標は未達となりました。 主な取り組みと課題紙事業から成長事業である生活関連事業へ経営資源のシフトを進めた結果、売上高に占める生活関連事業の比率は、2020年度の32%から、2025年度には40%となり、事業構造転換が着実に進みました。国内事業では、需要減少が続くグラフィック用紙の生産能力を約30%削減し、稼働率90%を維持することで、紙・板紙事業の競争力強化に努めました。原燃料費や固定費の上昇に対しては、グループを挙げてコスト削減を進めるとともに、各事業において複数回にわたる価格改定を行い、2023年度以降は目標とした収益水準を概ね維持しました。一方、海外事業は業績が低迷しました。特に豪州Opal社は、ビクトリア州有林からの原木供給停止を受け、2023年にグラフィック用紙事業からの撤退を余儀なくされるなど厳しい事業環境が続きました。生産体制の最適化と固定費削減、パッケージング加工事業の生産性向上など収益改善を進めたものの赤字が継続しており、引き続き立て直しに全力を挙げています。財務面では、資本効率向上のため資産売却と有利子負債削減に取り組みました。東京都北区の土地などの資産売却を進め、政策保有株式については原則として全廃する方針を2025年に公表し、計画を上回るペースで縮減しました。これらの結果、株主資本ベースでのネットD/Eレシオ1.7倍台、純有利子負債7,100億円以下など、2023年に設定した財務目標を達成しましたが、いずれもさらなる改善が必要です。営業利益率の低迷と構造改革に伴う特別損失の発生により、ROEも低水準にとどまりました。温室効果ガス(GHG)排出量については、2025年度に、2013年度比43%(暫定値)の削減を達成し、2030年度目標の同54%削減に向けて順調に進捗しています。以上のとおり、事業構造転換、既存事業の基盤強化、GHG排出量の削減については一定の成果を得たものの、グラフィック用紙の需要減少への対応、海外事業の収益力強化、資本効率の改善が引き続き課題と認識しています。 ②中期経営計画2030(2026年度~2030年度)の取り組み本年5月、中期経営計画2030を発表しました。主な課題は資本効率の向上と収益力の強化であり、基本戦略として「B/S(バランスシート)の最適化」「構造改革の断行」「収益性の向上」を掲げました。財務目標としてROIC4%以上、ROE8%以上、ネットD/Eレシオ1.0倍以下、営業利益600億円以上を設定し、資本市場との積極的な対話と情報開示に努め、資本コストや株価を意識した経営を実践していきます。(イ)重点課題a. B/S(バランスシート)の最適化財務基盤の健全化・効率化のため、政策保有株式の売却など資産のスリム化と有利子負債の削減を優先的に進め、2026年3月末において自己資本ベースで1.20倍となっているネットD/Eレシオを同1.0倍以下まで引き下げます。b. 構造改革の断行基盤事業を強靭化し競争優位性を確立するとともに、低収益事業の整理を進めます。 国内グラフィック用紙事業は、需要減少に対応し、早期に石巻・岩沼・岩国への生産拠点集約の検討を進め、競争力の向上と稼働率90%以上の維持を図り、利益率を向上させます。 豪州Opal社は、段ボール一貫事業への経営資源集中、一段の生産体制の最適化と固定費削減、低収益事業の検証、組織・人員体制の見直しなど抜本的改革を行い、成長軌道への回復を加速させます。c. 収益性の向上利益率・資本効率の高い森林・木材関連事業、生活関連事業を注力事業と位置付け、収益力を強化し拡大します。合わせて、パッケージング事業の川下戦略、新規バイオマス素材事業の早期戦力化などを進め、グループ全体の収益性向上を目指します。(ロ)個別事業の取り組みa. 森林・木材関連事業世界トップクラスの育種・増殖技術、国内外の木質資源サプライチェーン、自社森林資源などを活用し、森林・木材関連事業の拡大と社会課題解決への貢献を同時に目指すグリーン戦略を展開します。具体的には、国産材・海外材流通事業の拡大、育種・増殖技術を活用した海外植林事業・エリートツリー苗木事業の拡大、カーボン市場・自然資本市場における森林資源の価値化などに取り組みます。b. パッケージング用紙事業グループ内外の加工会社との連携・協業による川下戦略を進め、原紙・加工の垂直事業モデルによるシナジー発現を目指します。段ボール原紙においては、2026年4月に当社グループ、段ボール業界大手トーモク、特種東海製紙の間で協業検討に関する覚書を締結し、取り組みを加速させています。c. パッケージング加工事業(紙パック事業)国内では、グループ製造原紙を活用した高付加価値・差別化パッケージの開発と、充填機メーカーの四国化工機との協業による原紙から加工・充填機にわたる一貫サービスの提供により市場シェアの拡大を目指します。海外では、Elopak社などパートナー企業と連携し、環太平洋地域を中心に事業拡大を図ります。d. 家庭紙・ヘルスケア事業高齢化など社会構造の変化に対応した高付加価値製品の開発・拡販を進めます。家庭用品は石巻・八代の新型抄紙機のフル活用により、また、需要が増加するヘルスケア製品は生産能力の増強により、それぞれ差別化製品の販売拡大を図ります。ビジネスパートナーと連携し、アジア・オセアニア、北米などへの輸出を拡大するとともに、e-コマース・D2C(Direct to Consumer)など新たなチャネルでの販売も強化します。e. ケミカル事業自動車用塗料などに使用される機能性コーティング樹脂は海外市場での拡販を進め、機能性フィルムは有機ELディスプレイ向けの採用拡大を図るなど、ともに成長市場での一段の収益拡大を目指します。また、ケミカル事業の中核生産拠点である江津工場の生産基盤強化・競争力改善を進め、主力製品である溶解パルプ、機能性セルロース、リグニンなど、バイオマス素材の販売拡大と収益力強化を図ります。 f. 新規バイオマス素材事業バイオマスの高付加価値化技術を活用し、脱炭素社会・循環型社会で求められる新規バイオマス製品の開発と早期戦力化を図ります。既に開発が進んでいるセルロースナノファイバーやバイオエタノールなどの本格的な社会実装を急ぐとともに、農林水産・食、ライフスタイル、社会インフラ・環境、先端機能材料など、今後当社が注力する活動領域で、オープンイノベーションも積極的に活用しながら、「低GHG」「リサイクル性」などの付加価値を付与した新規バイオマス素材を幅広く社会に提供していきます。(ハ)非財務戦略a. 人的資本戦略社員一人ひとりが持つ「高度な操業技術・木質資源に関する専門性」「誠実さ」「連携力」といった強みを基盤に、社員の成長をグループの成長につなげる人材マネジメントを推進していきます。これを通じて、多様な人材の確保、スキル・知識・技術の向上、エンゲージメント向上を図り、目指す企業像である「社員が誇りを持って明るく仕事に取り組む」ことを追求することで、グループの持続的な成長を実現していきます。b. 自然資本戦略事業活動が環境に与える影響を最小にする「ミニマム・インパクト」の実現を目指し、カーボンニュートラル(脱炭素の推進)、サーキュラーエコノミー(資源循環の拡大)、ネイチャーポジティブ(生物多様性の保全・回復)に取り組みます。GHG排出量削減については、2030年度目標の2013年度比54%削減に向けて2025年度までに43%(暫定値)の削減を達成し順調に進捗していることから、今回新たな目標として「2035年度60%削減、2040年度65%削減」を設定しました。2050年カーボンニュートラルに向けて取り組みを強化していきます。
MD&A(経営者による分析)
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」といいます。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。 (1) 経営成績当期におけるわが国の経済は、雇用・所得環境の改善により、緩やかな回復基調となりました。一方で、中東情勢の影響や継続的な物価上昇、米国の通商政策を巡る動向、金融資本市場の変動の影響などにより、景気の先行きは不透明な状況が続いています。このような状況の中、当社グループの当期の売上高は、洋紙の輸出販売数量が減少したものの、2024年度に稼働したクレシア宮城工場の売上高が全期間にわたり寄与したことや、前期に日本ダイナウェーブパッケージング(NDP)社で実施された例年に比べ大規模な製造設備のメンテナンス休転の影響が解消されたことなどにより、前期に比べ増収となりました。営業利益では、海外事業において、NDP社が通常操業に戻ったことや、Opal社のメアリーベール工場における操業効率改善によるコストダウン及び増産が寄与し、前期比で増益となりました。一方、国内事業では、継続的な人件費や物流費の上昇を受け、原価改善や価格修正に取り組みました。結果は、以下のとおりです。 連結売上高1,192,606百万円(前期比 0.9%増)連結営業利益25,205百万円(前期比 27.9%増)連結経常利益23,098百万円(前期比 49.0%増)親会社株主に帰属する当期純利益11,743百万円(前期比 158.7%増) セグメントの状況は、以下のとおりです。 (紙・板紙事業)売上高557,863百万円(前期比 1.4%減)営業利益564百万円(前期比 93.2%減) 洋紙の国内販売数量は、需要の減少は継続しているものの、他社の事業撤退などもあり、前期を上回りました。一方で、洋紙の輸出販売数量は、市況悪化の影響などにより前期を下回りました。 (生活関連事業)売上高482,017百万円(前期比 5.3%増)営業利益7,172百万円(前期は営業損失6,137百万円) 家庭紙は、2024年度に稼働したクレシア宮城工場の売上高が、全期間において寄与したことなどにより、売上高は前期を上回りました。液体用紙容器は、食品価格全般の値上がりによる生活防衛意識の高まりなどで依然として需要が減少しているものの、販売数量は前期並みで推移しました。機能性フィルムは、モバイル端末の買替需要等により堅調に推移し、販売数量は前期を上回りました。海外事業では、Opal社メアリーベール工場の労使協定を改定する過程で生じた、約1か月にわたる労働争議に伴う操業停止や、円高による為替換算の影響がありましたが、NDP社の前期の大規模な製造設備のメンテナンス休転の影響が解消されたことなどにより、売上高は前期を上回りました。 (エネルギー事業)売上高43,195百万円(前期比 10.6%減)営業利益3,332百万円(前期比 6.4%減) エネルギー事業は、石炭価格の下落に伴う販売電力価格の低下などにより、売上高は前期を下回りました。 (木材・建材・土木建設関連事業)売上高76,530百万円(前期比 2.8%減)営業利益10,033百万円(前期比 4.7%増) 木材・建材において、バイオマス燃料の需要は増加したものの、新設住宅着工戸数の減少に加え、海外植林会社における為替換算の影響などにより、売上高は前期を下回りました。 (その他)売上高33,000百万円(前期比 4.5%増)営業利益3,200百万円(前期比 6.6%増) (2) 財政状態総資産は、前期末の1,703,308百万円から35,171百万円増加し、1,738,479百万円となりました。この主な要因は、現金及び預金が増加したことや、円安の影響により在外子会社の資産が増加したことによるものです。負債は、前期末の1,192,873百万円から5,098百万円増加し、1,197,971百万円となりました。この主な要因は、円安の影響により在外子会社の負債が増加したことによるものです。純資産は、前期末の510,435百万円から30,072百万円増加し、540,507百万円となりました。この主な要因は、利益剰余金が増加したことや、円安の影響により為替換算調整勘定が増加したことによるものです。以上の結果、自己資本比率は、前期末の28.3%から29.2%となりました。 (3) キャッシュ・フローの状況当期末における現金及び現金同等物(以下、「資金」といいます。)は、207,411百万円となり、前期末に比べ21,470百万円増加しました。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動の結果得た資金は、前期に比べ2,195百万円増加し、74,986百万円となりました。この主な内訳は、税金等調整前当期純利益24,460百万円、減価償却費63,213百万円、運転資金の増減(売上債権、棚卸資産及び仕入債務の増減合計額)による支出9,377百万円です。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動の結果使用した資金は、前期に比べ10,145百万円増加し、43,581百万円となりました。この主な内訳は、固定資産の取得による支出54,287百万円、投資有価証券の売却による収入10,106百万円です。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動の結果使用した資金は、前期に比べ10,410百万円減少し、7,863百万円となりました。この主な内訳は、有利子負債の返済による支出です。 (4) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報 当社グループの運転資金需要の主なものは、製品製造のための原材料や燃料購入のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用です。また設備投資資金の主なものは、新規事業への投融資及び設備投資、既存事業の収益向上や操業安定化等を目的としたものです。 今後も引き続き成長分野や新規事業へ投資を行っていく予定であり、その必要資金については、自己資金と外部調達との適切なバランスを検討しながら調達していきます。 なお、長期借入金、社債等の長期の資金調達については、事業計画に基づく資金需要や既存借入の返済時期、金利動向等を考慮し、調達規模や調達手段を適宜判断し、キャッシュ・マネジメント・システム(CMS)により当社グループ内での余剰資金の有効活用を図り、有利子負債の圧縮や金利負担の軽減に努めています。 (5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しています。 (6) 生産、受注及び販売の状況 ① 生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。セグメントの名称当連結会計年度(自 2025年4月1日至 2026年3月31日)前期比(%)紙・板紙事業金額(百万円)470,323△2.5生活関連事業金額(百万円)443,9467.1エネルギー事業金額(百万円)43,195△10.6合計金額(百万円)957,4641.3 (注)1.木材・建材・土木建設関連事業、その他は、生産高が僅少であるため、記載を省略しています。 2.当連結会計年度において、エネルギー事業における生産実績に著しい変動がありました。その内容については、「(1) 経営成績」をご参照ください。 ② 受注実績 当社グループは主として需要と現有設備を勘案した見込生産のため、記載を省略しています。 ③ 販売実績 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。セグメントの名称当連結会計年度(自 2025年4月1日至 2026年3月31日)前期比(%)紙・板紙事業金額(百万円)557,863△1.4生活関連事業金額(百万円)482,0175.3エネルギー事業金額(百万円)43,195△10.6木材・建材・土木建設関連事業金額(百万円)76,530△2.8その他金額(百万円)33,0004.5合計金額(百万円)1,192,6060.9 (注)1.セグメント間取引については、相殺消去しています。2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10未満であるため、記載を省略しています。3.当連結会計年度において、エネルギー事業における販売実績に著しい変動がありました。その内容については、「(1) 経営成績」をご参照ください。

事業リスク

  • 人材確保・育成のリスク
    少子高齢化による労働力人口減少が進む中、事業の持続的な成長と競争力維持に必要な人材の確保と育成が困難になる可能性があります。適切な人材が不足すると、事業構造転換の遅延や生産性低下に繋がり、経営成績に影響を及ぼす恐れがあります。
  • Opal社収益改善の遅延
    豪州の連結子会社Opal社は、パッケージ事業への転換を進めていますが、収益改善が計画通りに進まないリスクがあります。メアリーベール工場の生産体制最適化や固定費削減などの取り組みが遅れると、グループ全体の経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
  • 気候変動に関するリスク
    エネルギー多消費型の事業構造を持つため、脱炭素化の動きが加速する中で、カーボンプライシング強化やGHG削減投資増大による財務リスク、顧客や投資家からの信頼低下によるレピュテーションリスクに直面する可能性があります。2050年カーボンニュートラル達成に向けた取り組みが遅れると、財務状況に影響が出る恐れがあります。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「事業等のリスク」の全文を見る(年度切替)
FY2026|11,059 文字
3 【事業等のリスク】有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。ただし、これらはすべてのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外も存在し、それらのリスクが影響を与える可能性があります。また文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものです。 (リスク管理体制)当社は、取締役会の監督のもと、代表取締役社長を責任者とするリスクマネジメント委員会を設置しています。当社グループの経営におけるリスク発生防止と実際にリスクが発生した場合の影響を最小限にとどめることを目的として、リスクマネジメント規程と危機対策規程を定め、平常時と緊急時の両面で対応することとしています。 ■ リスクマネジメント体制図 ■ リスクマネジメントプロセス 平常時の対応として、リスクマネジメント委員会では、当社グループのリスクを網羅的に抽出し、評価、防止対策 及び発生時の対策を検討・審議し、取締役会に報告します。 (1) 経営戦略に関する重要なリスク当社グループに与える負のインパクトが大きく、中長期的に経営目標の達成を阻害し、企業価値の毀損や事業機会の喪失につながる可能性のあるリスクを「経営戦略に関する重要なリスク」と位置付けています。① 人材確保のリスク当社グループは、人材の確保を事業活動における重要課題の一つと認識しています。必要な人材の確保が計画通りに進まない場合、中期経営計画2030の基本戦略である構造改革の断行や収益性の向上が妨げられ、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。このリスクに対応するため、社員の成長をグループの成長につなげる人材マネジメントを推進し、多様な人材の確保、スキル・知識の向上、並びにエンゲージメント向上に取り組んでいます。具体的には、リスキリングを支援するプログラムやキャリア採用者の定着を支援するための研修の導入、工場・事業所の幹部候補者の早期抜擢を目的とした選抜型教育等を実施しています。また、柔軟な働き方を支える各種制度や職場環境の整備を進め、多様な人材が最大限能力を発揮できる組織づくりに注力しています。2025年度には、ライフイベントにおける課題を持つ社員を支援する「ウェルネス休暇」及び「ライフサポート休業」を新設した他、工場における暑熱対策等、就業環境の改善も進めています。さらに、従業員エンゲージメント調査を定期的に実施し、その結果を経営層及び役職者へ共有しています。外部コンサルタントの助言も踏まえながら、職場内コミュニケーションの活性化、教育・研修の充実、労働環境の改善を継続的に図っています。加えて、すでに顕在化している少子高齢化に伴う労働力人口の減少に対しては、操業現場の自動化・省人化や、物流分野におけるIoT技術の導入等も検討しています。これらの取り組みを通じて適切な人材の確保を進め、社員の成長をグループの持続的な成長へとつなげていきます。 ② Opal社収益改善の遅延に関するリスク当社グループの連結子会社である豪州のOpal社の立て直しは非常に重要な経営課題と認識しており、早期の黒字化に向けて事業の選択と集中を進めます。しかしながら、これらの取り組みが予定通り進捗しない場合、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。需要拡大が見込まれる段ボール事業では、経営資源を集中することで収益性を向上させます。販売面では、Opal社の強みである原紙から加工までの一貫体制を活かし、高付加価値・差別化製品の開発と拡販を推進するとともに、納期管理など徹底した顧客サービスの提供や豪州で拡大する紙化需要を確実に取り込むことで販売を拡大していきます。競争力強化策としては、前中期経営計画で実施した加工機の新設、更新の効果を最大限に発現させ、加工事業の生産性をさらに高めます。併せて、組織・人員体制の抜本的な見直しや調達・物流の効率化を実施します。課題となっているメアリーベール工場については、もう一段の生産体制の最適化と固定費削減により速やかにEBITDAの黒字化を目指します。その他の収益性が低い事業についても整理を進め、早急にOpal社の営業利益黒字化を実現します。 ③ グラフィック製品の需要減少に関するリスク当社グループの主力事業の1つであるグラフィック用紙事業は、デジタル化の進展や、新型コロナウイルス感染症を契機とした働き方や生活様式の変化を受けて市場縮小の傾向が続いています。そのため、当社は成長事業である生活関連事業への経営資源のシフトとともに、グラフィック用紙事業については生産体制の最適化を進めることで、稼働率の維持と強靭化による利益率の向上を図っています。しかしながら、これらの検討・取り組みが予定通り進捗しない場合、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。当社グループは、グラフィック用紙事業の基盤強化のため、操業安定化及び継続的なコストダウン、労務費や物流費等のコストアップの吸収が難しい場合には安定供給を実現する適正価格の確保等、採算性改善策を講じています。また、顧客と連携した環境配慮型製品の開発・ラインアップ拡充による販売数量の維持・拡大に取り組んでいます。グラフィック用紙の生産体制最適化についても、温室効果ガス(GHG)排出量削減と連動して進めることで競争力を高めつつ、人材、原材料の調達力、パルプ、ユーティリティ等のグラフィック用紙事業の既存リソースは、森林・木材関連事業、生活関連事業、新規バイオマス素材事業等の成長分野の拡大に活用します。このように、リスク低減のために多数の対応手段を持つことで、市場の変化に対するレジリエンスを高め、安定した収益の確保に努めます。 ④ 成長分野(森林木材関連事業、生活関連事業及び新規バイオマス素材事業)の成長鈍化に関するリスク当社グループは、木質資源を最大限に活用する「総合バイオマス企業」として持続的に成長することを目指しており、グラフィック製品の需要減少へ対応するため、成長分野である森林・木材関連事業、生活関連事業(液体用紙容器事業、家庭紙・ヘルスケア事業、ケミカル事業が主要事業です。)への経営資源シフト及び新規バイオマス素材事業の拡大への取り組みを進めています。しかしながら、森林・木材関連事業、生活関連事業及び新規バイオマス素材事業の成長が計画通り進捗しない場合、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。当社グループは、グリーン戦略による森林・木材関連事業の拡大を推進しています。世界トップクラスの育種・増殖・育苗技術、国内外の強固な木質資源サプライチェーン及び国内外16万haの自社森林を活用し、森林経営及び木質資源の流通事業の拡大を進めます。国内では、林業・木材産業界と連携してサプライチェーンを強化し、国産材原木取扱量の拡大及びエリートツリー苗木生産体制の拡大を進め、低LCA国産材原料の安定供給を行います。海外では、独自育種・増殖技術等の高度利用による森林資源の価値化を推進し、優良クローン開発による海外植林事業の収益拡大を進めるとともに、植林サービス事業の展開や木材チップ、バイオマス燃料の取扱量の拡大を進めます。また、当社グループは生活関連事業の収益力強化のため、新製品開発・設備投資・パートナーとの協業等による販売の拡大を推進しています。液体用紙容器事業ではトータルパッケージングソリューションを提供する体制を構築し、グループ原紙を活用した差別化容器を開発・上市するとともに、ビジネスパートナーとの協業によるアジア・オセアニア地区での事業拡大を進めます。家庭紙・ヘルスケア事業においては、高齢化等、社会構造の変化に対応した高付加価値製品の開発と成長市場での拡販、グローバルパートナーと連携した輸出拡大を進めるとともに、e-コマース等販売チャネルの多様化と拡大を行います。ケミカル事業においては自動車・ディスプレイ等の成長市場向け製品で収益を拡大し、新製品・新用途の開発と各事業の成長を支える生産体制・能力の整備を行うとともに、海外市場での積極的な販売拡大を進めます。さらに、当社グループは脱炭素・循環型社会の構築に寄与する新規バイオマス素材事業の拡大を進めます。持続可能な森林経営・管理で木質資源を生み出し、当社独自技術とオープンイノベーションの活用により環境価値と優れた機能特性を併せ持つ新規バイオマス素材を開発し、農林水産・食、社会インフラ・資源、ライフスタイル、先端機能材料を注力する活動領域と定めて事業展開を進めます。環境配慮性等の市場要望をタイムリーに実現していくためには、十分な技術力、販売力、ネットワークを備えておくことが必須です。当社は、成長分野への投資や人材の再配置を積極的に進めることで、既存事業とのシナジーも生み出していますが、同時にオープンイノベーションを推進するための「産・官・学・金」のネットワーク構築にも取り組み、その研究成果を製品・サービスとして市場に提供することで、市場の変化に対応するレジリエンスを高めていきます。当社グループは、成長分野である森林・木材関連事業及び生活関連事業、新規バイオマス素材事業の拡大を通じて、サプライチェーン全体でのGHG排出量の削減や、リサイクルによる資源循環・資源自律、国内森林の活用による林業の活性化等を実現することで、持続可能な社会の構築への貢献と、グループ全体の持続的な成長を追求していきます。 ⑤ 気候変動に関するリスクエネルギー多消費型の紙・パルプを主要事業とする当社グループは、気候変動への包括的な対応を、企業グループ理念の実現における重要な課題と位置づけ、2050年までのカーボンニュートラル達成を目指し、GHG排出量削減に積極的に取り組んでいます。日本においても排出量取引制度が導入される等、脱炭素化への動きが加速する中、当社グループの対応が遅れた場合、カーボンプライシング政策強化等の規制リスク、クレジット購入費用の発生やGHG排出量削減投資の増大による財務リスク、さらに顧客や投資家からの信頼低下によるレピュテーションリスク等に直面する可能性があります。また、異常気象の激甚化や水資源の枯渇等の「物理的リスク」により、当社グループの生産拠点の操業停止や、原材料である木材チップの調達難・価格高騰、サプライチェーンの寸断等が発生する懸念があります。これらの気候変動リスクが顕在化した場合、当社グループの経営成績及び財政状態等に重大な影響を与える可能性があります。当社グループは、これらのリスクに関わる財務影響を適切に評価し、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の推奨する枠組みに基づき、透明性の高い開示を行っています。また移行リスク低減のため、2030年度までに2013年度比でGHG排出量(Scope1と2の合計)を54%削減する目標を掲げ、高効率設備の導入や製造プロセスの最適化による省エネルギー対策や再生可能・廃棄物エネルギーへの転換を進めています。加えてさらなる削減を図るため、2028年度中に石巻工場において高効率な黒液回収ボイラー1基を新設し、あわせて既存の石炭ボイラー1基の運転を停止することでGHG排出量の削減を一層加速していきます。気候変動のリスクに対しては、中長期的な視野に立った移行計画の策定と実行が必要です。当社グループは、水素・アンモニアなどの次世代燃料技術の開発動向や社会実装時期を想定した移行計画に基づき、GHG排出量(Scope1と2の合計)を2013年度比で2035年までに60%、2040年までに65%削減する中期目標を新たに策定し、GHG排出量削減施策の確実な実行を進めています。また、当社グループは、物流におけるGHG排出についても、取引先のみならず同業や異業種企業等ステークホルダーとの連携を強化し、ラウンド輸送やモーダルシフト化、輸送距離の短縮等の協働を通じて、サプライチェーン全体での排出量削減に取り組んでいます。さらに、適切な森林管理による森林吸収やカーボンリサイクル等の取り組みも積極的に行っており、多面的にGHG排出量の削減を推進し、2050年カーボンニュートラル達成への取り組みを強化しています。2026年度から本格的に導入される排出量取引制度に対しては、石炭など化石燃料使用量の削減を加速すると同時に、カーボンクレジット市場のモニタリングや調達体制等カーボンマネジメント体制を整備し、同制度に適切に対応することで、財務影響リスクを管理、低減していきます。気候変動問題への対応は、リスク管理にとどまらず、新たなビジネスチャンスの創出にもつながります。当社グループは、GHG排出量の削減投資を通じて、低GHGで環境価値の高いバイオマス素材を生み出すことができます。当社グループは、幅広いステークホルダーとの連携をより一層強化しながら、多様なバイオマス素材をグリーン製品市場に先駆けて投入していくことで、企業の成長と持続可能な社会づくりの同時実現を目指していきます。 ⑥ サプライチェーンマネジメントに関するリスク当社グループは、原燃料であるチップ、古紙、重油、石炭、薬品等を調達して、製品の製造・販売を行っています。原燃料の価格は、国内外の市況に大きく影響を受け、また脱化石燃料の気運の高まりやグラフィック用紙生産量の減少に伴い、原燃料サプライヤーの事業縮小や事業撤退に起因した調達の不安定性や価格変動が顕在化する可能性があり、それらが当社の経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。また、物流従事者不足(荷役作業者・港湾労働者・輸送力)、地政学的緊張の高まりによるグローバルサプライチェーンにおける輸送網での遅延、気候変動対応による脱炭素政策を主要因とした原燃料価格上昇に起因する輸送費の上昇は今後も継続すると予想され、当社の経営成績及び財政状態等にさらなる影響を与える可能性があります。主な対策として、原燃料の一部について、リスクヘッジのため予約購入の設定・運用等の施策を講じている他、特に製紙用木材チップについては、国内外に16万haの森林資源を保有するとともに、国内外のチップサプライヤーとの長きにわたる取引実績に基づく信頼関係の強化や、近距離での安価な資源の開発・採用により、原材料確保と購入価格の安定化を図っています。安定調達のためサプライヤーや物流会社との良好な関係を強化するとともに、海外を含む複数地域、複数ソースからの調達、代替品への切り替え、グループ横連携強化による融通及び調達網拡大等や在庫水準の見直し等、適正在庫の管理強化による財務状況の適正化も進めています。こうした対策を取ったうえで、吸収しきれない輸送コスト上昇分については、適正な水準での価格転嫁を行っていきます。物流問題に対しては、製品販売及び原燃料調達においてグループ横断での会議体にて、法規制の遵守とコストアップ抑制の両立に取り組んでいます。取引先とも協働し、計画的な納入時間や輸送体制の変更、積載率の向上や消費地近隣に在庫拠点を新設する等の対策を実行しています。トラック荷役待機時間の削減対策としては、各工場でトラック受付予約システムを導入し、待機時間の短縮を図っています。さらに、他社との共同輸送を実現し、GHG排出量の削減に取り組むとともに、人手不足への対応として物流DXの取り組みを促進していきます。 ⑦ 自然災害のリスク当社グループの生産及び販売拠点が位置する地域において、地震や台風、洪水、山火事といった大規模な自然災害の他、渇水、猛暑等の災害が発生した場合、事業の継続性に大きな影響を及ぼす可能性があります。生産活動の停止、設備復旧のための費用増加、製品や原材料の損害等が発生し、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。なお、自然災害に対する保険を付保していますが、当社が負う可能性がある損害賠償責任を補償するには十分ではない可能性があります。このため当社グループでは、危機対策規程に基づき、緊急時には危機対策本部を迅速に立ち上げ、従業員及び家族の安否確認、被災状況の把握、供給継続のための対策を実施します。また緊急事態への対応のためBCM(事業継続マネジメント)を強化し、複数工場での供給体制構築の検討や、災害想定に基づく避難訓練や安否確認訓練を定期的に行っています。これらの取り組みにより、予期せぬ事態にも柔軟に対応し、従業員の安全を守る体制と事業の継続性を構築・維持しています。今後も、リスク対策の継続的な見直しと強化を通じて、変化する社会情勢に対応していきます。 ⑧ 情報セキュリティに関するリスク当社グループは、原材料仕入れから受注、生産、出荷過程において様々なシステムを利用して業務管理を行っており、外部からのサイバー攻撃等による不正アクセスや情報漏えいが生じた場合、当社グループの社会的信頼の喪失、事業活動の停止、設備復旧のための費用増加等が発生し、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。このため当社グループは、情報システムに関するセキュリティを徹底・強化し、時流に合わせた防衛システムを導入しています。急速に普及した在宅勤務環境においても十分な情報セキュリティ対策を講じており、定期的な情報セキュリティ教育により従業員のリテラシーを高めるとともに、セキュリティインシデントが発生した際の連絡ルートを整備する等、管理体制を強化しています。また、社内での運用検証及び外部専門業者による脆弱性診断を定期的に実施し、システムの脆弱性を発見・修正することで、セキュリティインシデントの予防に努めています。 (2) 事業環境及び事業活動に関するリスク日々の事業活動の円滑な遂行を阻害し、当社グループの短期的な目標達成に悪影響をもたらす可能性のあるリスクを「事業環境及び事業活動に関するリスク」と位置付けています。 ① 生産設備に関するリスク当社グループは、市場需要と既存設備の能力を考慮した計画生産を基本として事業活動を行っています。しかし、設備の故障や火災、自然災害による設備事故等により生産設備の稼働率が低下すると、製品の供給能力が不足し、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。また、このような設備の故障や事故が発生した場合には、従業員が巻き込まれることによる労働災害が発生する可能性や、周辺環境に悪影響を及ぼす可能性もあります。これらのリスクに対応するため、定期的な設備点検とメンテナンス、脆弱箇所の計画的な更新を含む老朽化対策工事の実施、複数工場での供給体制構築の検討、在庫の適正化等を行っています。 ② 製造物責任に基づくリスク当社グループは、製品について製造物責任に基づく損害賠償を請求される対象であり、現在のところ重大な損害賠償請求を受けていませんが、将来的には直面する可能性があります。製造物責任にかかる保険(生産物賠償責任保険)を付保していますが、当社グループが負う可能性がある損害賠償責任を補償するには十分でない場合があります。当社グループではグループ製品リスク委員会を設置し、グループ各社の製品安全リスクの監督、支援を行っています。また、主要製造会社はそれぞれに製品リスク委員会を設置するとともに、製品リスク管理規程の整備を進め、製品安全事故の防止に努めています。 ③ 環境法令関連のリスク当社グループは、事業活動において、環境関連の法規制の適用を受けています。これらの規制の変更や改正により、生産活動が制限される、あるいは新たな対策のための費用が発生する可能性があり、これらは経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。また、法規制値の超過や工場や事業所の周辺環境に影響を与えた場合は、行政指導による事業の停止や信用失墜等のリスクがあります。これらのリスクに対応するため、環境関連の法改正状況等を定期的にモニタリングし、また社外からの情報収集や、日々の操業を監視し設備を適切に維持管理することで、環境法令を遵守し、工場や事業所の周辺環境への負の影響を可能な限り最小にする体制を整えています。 ④ コンプライアンスに関するリスク当社グループが展開する紙・板紙事業、生活関連事業、エネルギー事業、木材・建材・土木建設関連事業等の幅広い分野において、関連する法令や規制は常に変化しており、新たなコンプライアンスの課題が生じています。特に、デジタル化の進展、グローバル化の加速、環境保護や人権尊重への関心の高まり等、社会情勢の変化に合わせた、コンプライアンス違反のリスクはさらに複雑化しています。その対策として、当社グループでは、社会情勢の変化に応じたコンプライアンス研修の実施や、コンプライアンスに関する意識調査を行い、従業員のコンプライアンス意識の向上に努めています。また、法令、社会規範、企業倫理、行動憲章、行動規範及びグループ各社の社内規則に抵触するおそれのある行為等について、日常の指示系統を離れて直接通報・相談できる「日本製紙グループヘルプライン」を設置し、コンプライアンス違反の懸念があるものについては事実調査を行っています。事案の重要性に鑑み、社内処分や注意・指導、教育による従業員への意識啓発等の是正措置・再発防止策を実施しています。また、当社グループは、取引先や自社だけでは遂行が難しい業務については様々な委託協力会社の協力のもとで事業活動を展開しているため、取引先や委託協力会社との関係においても、公正かつ健全な業務実施を重視しています。独占禁止法や中小受託取引適正化法(取適法)の遵守はもちろんのこと、社会的な価値観の変化を反映した公正な取引慣行を目指していますが、違反があった場合には、訴訟リスクや社会的信頼の喪失等、経営上の大きなリスクとなることが予想されます。これらに対応するため、「パートナーシップ構築宣言」に基づき、委託事業者と中小受託事業者との望ましい取引慣行を遵守し、取引先とのパートナーシップ構築の妨げとなる取引慣行や商慣行の是正に積極的に取り組んでいます。また、2023年11月に公表された「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を踏まえ、グループ全体でのリスク評価と対策の実施を進めています。これらの取り組みにより、社会情勢の変化にも柔軟に対応し、コンプライアンス違反のリスクを最小限に抑えることを目指しています。 ⑤ 労働者の安全衛生に関するリスク当社グループは、全事業所で安全最優先での操業に努めていますが、労働災害の発生は、労働者の健康や人命が失われる重大なリスクです。災害内容によっては貴重な人材を失う可能性や、安全を確保し、再発防止策を講じるために生産設備を停止しなければならなくなる可能性があり、さらには企業としての管理責任を問われ信用を失うリスクもあります。これらリスクへの対策として、当社では労働災害を防ぐため独自の労働安全衛生マネジメントシステムを運用し、事業所ごとに具体的、継続的かつ自主的な活動を安全衛生計画として組み込み、労働災害の防止と労働者の健康増進、快適な職場環境づくり等の安全衛生水準向上に努めています。また、生産設備について、定期的な設備点検とメンテナンス、脆弱箇所の計画的な更新を含む老朽化対策工事の実施等を行っています。これらの取り組みを、当社グループ各社と共有し、労働災害の防止を推進することで、グループ全体で安全な職場環境の確保に努めています。 ⑥ インターネットにおける批判・中傷に関するリスク当社グループは、SNS等の普及により、インターネット上での批判・中傷を受けるリスクも増大しています。これにより、企業ブランドの失墜、取引停止、人材の離職等、深刻なレピュテーションリスクを引き起こす可能性があり、これらは経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。 このリスクに対応するため、SNSをはじめとするインターネット上の当社グループの情報について定期的なモニタリング及び情報収集を行い、不測の事態が発生した際に迅速かつ適切に対応できる体制を整備しています。 (3) 財務・会計リスク① 株価の変動リスク当社グループは、取引先や関連会社等を中心に市場性のある株式を保有しており、株価の変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。このため保有株式の定期的な株価のモニタリングを行うことにより、財政状態に重要な影響を及ぼす可能性を注視しています。 ② 金利の変動リスク当社グループは、有利子負債等について金利の変動リスクを負っており、その変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。当社では、長期借入金の固定金利借入の比率を一定水準以上に保っています。また、返済年限の分散化、調達の多様化に加えて金利スワップ等の金融商品の利用により、金利変動リスクへの対応を行っています。 ③ 信用リスク当社グループは与信管理規程に従い、取引先の財務情報等を継続的に評価した与信限度の設定等により、信用リスクに備えていますが、取引先の経営悪化や破綻等の結果、債権回収に支障をきたす事象が発生した場合には、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。 ④ 固定資産の減損リスク当社グループは、生産設備や土地をはじめとする固定資産を保有しています。事業環境等の変化により当該資産から得られる将来キャッシュ・フローが著しく減少した場合、減損損失が発生し、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。 ⑤ 退職給付債務に関するリスク当社グループの退職給付費用及び債務は、年金資産の運用収益率や割引率等の数理計算上の前提に基づいて算出していますが、数理計算上の前提を変更する必要が生じた場合や株式市場の低迷等により年金資産が毀損した場合には、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。このため年金資産の運用については、外部コンサルタントの助言をもとに、リスク・リターン特性の異なる複数の資産クラス・運用スタイルへの分散投資を行っており、年金資産全体のリスク・リターンの分析を定期的に実施することで、分散効果の有効性について評価を実施しています。 ⑥ 繰延税金資産の取崩しリスク当社グループは、将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に対して、将来の課税所得を見積った上で回収可能性を判断し、繰延税金資産を計上しています。しかし、事業環境等の変化による課税所得の減少や税制改正等により回収可能性を見直した結果、繰延税金資産の取崩しが発生し、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

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