事業の概要
- ステンレス鋼線の製造販売日本精線グループは、主にステンレス鋼線や金属繊維(ナスロン)の製造と販売を行っています。これらの製品は、自動車、エネルギー、IT・半導体、化学製品など、幅広い先端技術分野の産業で利用されており、多岐にわたる顧客ニーズに応えています。
- 金属繊維ナスロンの展開金属繊維「ナスロン」は、同社独自の高機能製品であり、日本国内だけでなく中国の子会社でも製造販売されています。この製品は、特定のフィルター機能や水素社会の基盤技術開発に貢献しており、同社の技術力の象徴とも言えます。
- グローバルな供給体制親会社である大同特殊鋼からの原材料供給を受け、日本、タイ、中国に製造販売拠点を持ち、グローバルなサプライチェーンを構築しています。これにより、各地域の市場ニーズに合わせた製品供給と、効率的な生産体制を実現しています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
セグメント構成
- 日本セグメントの収益貢献日本セグメントは売上高414.79億円、営業利益42.03億円と、グループ全体の収益の大部分を占める主要な稼ぎ頭です。主にステンレス鋼線と金属繊維「ナスロン」の製造販売を担い、グループの中核事業拠点としての役割を果たしています。
- タイセグメントの海外展開タイセグメントは売上高38.55億円、営業利益1.51億円を計上しており、海外における重要な製造販売拠点です。主にステンレス鋼線とダイヤモンド工具の製造販売を行い、アジア市場における事業拡大に貢献しています。
- 中国・韓国セグメントの成長中国・韓国セグメントは売上高14.14億円、営業利益2.91億円であり、成長が期待される地域です。ステンレス鋼線と金属繊維「ナスロン」の製造販売、および韓国での販売支援を通じて、アジア地域でのプレゼンスを強化しています。
2025-03 セグメント別業績
| セグメント | 区分 | 売上(億) | 営業利益(億) | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| Japan | 地域 | 415 | 42 | 10.1% |
| Thailand | 事業 | 39 | 2 | 3.9% |
| China | 地域 | 14 | 3 | 20.6% |
有価証券報告書「事業の内容」の全文を見る(年度切替)
3【事業の内容】 当社グループは、当社、親会社及び子会社5社で構成され、ステンレス鋼線・金属繊維(ナスロン)の製造販売を主な内容とし、当事業の構成、会社名及び事業に係る位置づけと事業部門別の関連は、次のとおりであります。 なお、次の2部門は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と異なるため、本文及び事業の系統図にセグメント名称を記載すると次のとおりとなります。 [伸線加工事業]ステンレス鋼線 :当社〔(セグメント)日本〕・大同特殊鋼㈱〔親会社〕・THAI SEISEN CO.,LTD.〔連結子会社(セグメント)タイ〕・大同不銹鋼(大連)有限公司〔連結子会社(セグメント)中国・韓国〕・日精テクノ㈱〔連結子会社(セグメント)日本〕ステンレス鋼線は、当社、THAI SEISEN CO., LTD.及び大同不銹鋼(大連)有限公司が製造販売しております。大同特殊鋼㈱は当社、THAI SEISEN CO., LTD.及び大同不銹鋼(大連)有限公司の原材料の主要供給元であり、THAI SEISEN CO., LTD.及び大同不銹鋼(大連)有限公司の製品の一部は、当社が仕入・販売しております。日精テクノ㈱は当社のステンレス鋼線製造のうち、主に直線切断加工及び磨引伸線加工の一部を行っております。ダイヤモンド工具は、当社及び THAI SEISEN CO., LTD. が製造販売しております。なお、THAI SEISEN CO., LTD. の製品は主に当社が仕入れ、その材料については当社が同社に販売しております。金属繊維(ナスロン):当社〔(セグメント)日本〕・耐素龍精密濾機(常熟)有限公司〔連結子会社(セグメント)中国・韓国〕・韓国ナスロン㈱〔連結子会社(セグメント)中国・韓国〕当社及び耐素龍精密濾機(常熟)有限公司が製造販売しております。耐素龍精密濾機(常熟)有限公司の材料の一部は当社が販売し、同社の製品の一部は当社が仕入れております。なお、韓国ナスロン㈱は、主に当社が韓国で販売活動をする際の販売支援を行なっております。上記のほか、大同興業㈱は当社グループのステンレス鋼線の主要販売先であり、また原材料の購入先でもあります。事業の系統図は、次のとおりであります。大同不銹鋼(大連)有限公司は、2025年11月に解散を決議し、現在、清算手続き中です。
事業の優位性(モート)
事業の質(有価証券報告書から抽出)
数字に出ない事業の性質を、同じ物差しで全銘柄そろえています。FY2025時点の記載が出典です。
| 価格決定力値上げを通せるか。強いほどインフレ耐性が高い | 中程度 原材料の価格変動に連動してステンレス鋼線の販売価格を変更したり、契約に基づくサーチャージ制度により、原材料変動リスクの影響は限定的となるため。 |
|---|---|
| 参入障壁新規参入を阻む要因の種類 | 技術 高機能・独自製品の開発力、超高強度ばね材や半導体プロセスガス用小型精製器などの新製品開発。 |
| 顧客集中度特定顧客への依存度。高いほど失注リスクが大きい | 中程度 |
| 景気敏感度業績が景気循環にどれだけ振られるか | 中程度 |
| 設備投資の性質稼いだ現金がどれだけ設備維持に消えるか | 混合 |
| 規制依存規制は障壁にも足枷にもなる | 中程度 |
会社が挙げる主要リスク:自然災害や外部からの攻撃によるリスク / 外部環境変化に伴うリスク / 安全・健康、品質やヒューマンエラーなどによるリスク
同じ条件で他の銘柄を探す → 定性スクリーニング(価格決定力・参入障壁・景気敏感度などで絞り込めます)
モート総合 8 / 25 5類型それぞれの強度と、そう判定した根拠
無形資産☆☆☆☆☆
日本精線は特殊鋼線・ばねの製造販売を手掛ける企業であり、特定の強力なブランド、特許、規制ライセンス、独占的IPに関する情報は公開情報からは確認できない。技術力は存在するものの、それが直接的な無形資産による競争優位に結びついているとは断定しにくい。
スイッチングコスト★★☆☆☆
自動車部品や産業機械向けに精密なばねやワイヤーを供給しており、顧客は仕様変更やサプライヤー変更にコストや時間を要する可能性がある。しかし、代替材料や競合他社も存在するため、スイッチング・コストは限定的と考えられる。
ネットワーク効果☆☆☆☆☆
日本精線の事業は、製品の利用者が増えることで価値が増すようなネットワーク効果を生むビジネスモデルではない。個別の顧客との取引が中心であり、プラットフォーム型ビジネスとは異なる。
コスト優位★★★☆☆
長年の操業で培われた生産ノウハウや効率的な生産体制により、一定のコスト競争力を有していると考えられる。特に、高品質な特殊鋼線・ばねの安定供給能力は、コスト面での優位性につながる可能性がある。
規模の経済★★★☆☆
特殊鋼線・ばね市場において、一定のシェアを確保しており、規模の経済による効率的な生産・調達が可能である。大手メーカーとしての地位は、価格交渉力や安定供給能力に寄与する。
- 高機能・独自製品の開発力日本精線グループは、ステンレス鋼線や金属繊維「ナスロン」といった高機能・独自製品の開発に強みを持っています。これらの製品は、特定の産業分野で高い評価を受けており、技術的な優位性を確立しています。
- サプライチェーンの強固さ主要原材料であるニッケルやクロムなどのレアメタルは国際市況の影響を受けやすいですが、同社は原材料価格の変動を販売価格に連動させるサーチャージ制度を導入しており、調達コストの増加リスクを限定的に抑えています。また、主要材料の調達を国内大手メーカーに依存することで、安定供給を確保しています。
- 多様な顧客基盤と市場対応自動車、エネルギー、IT・半導体など、多岐にわたる先端技術分野の顧客に製品を提供することで、特定の業界の景気変動に左右されにくい事業構造を目指しています。また、技術交流会や展示会を通じて市場ニーズを的確に捉え、タイムリーな新製品投入や品質改善に努めています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
経営戦略
有価証券報告書「経営方針・対処すべき課題・MD&A」の全文を見る(年度切替)
経営方針・経営戦略
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書の提出日現在において、当社グループが判断したものであります。 (1)経営の基本方針 ステンレス鋼線並びに金属繊維(ナスロン®)を主力製品とする当社グループは、長年にわたり培ってきた技術力と新しい分野への挑戦により、お客様にとって価値のある商品とサービスの提供を通じて社会の発展に貢献することを経営の基本理念としております。 産業構造が環境・エネルギーのクリーン化、デジタル化へと進むなか、ステンレス分野への期待はさらに高まり、「より細く、より強く、より精密な」方向が求められています。ステンレス鋼線のトップメーカーとして、これらの期待に適応すべく『Micro & Fine Technology』をスローガンに掲げ、次世代素材、技術開発をこれからもリードし続けてまいります。 また、株主並びにお客様など、内外の関係先からの信頼と期待に応えるため、常に市場の変化に迅速に対応できる柔軟な経営体制の構築を通じて、安定した収益基盤の維持・拡大を図るべく事業活動を展開してまいります。 (2)中長期的な経営戦略及び目標とする指標 当社グループは2024年4月より『中期経営計画(NSG26)』(最終年度2027年3月期、NSG : Nippon Seisen Sustainable Growth)をスタートさせ、「サステナビリティ成長分野へ高機能・独自製品の開発・拡販と企業価値向上により持続的成長を図る」を中期スローガンとして掲げ、資本コストや株価を意識した経営を推進してまいります。NSG26の検討にあたっては、高齢化社会や技術イノベーション、地球環境保護などの環境変化を想定し長期的な視点で2035年の「ありたい姿」を設定し、それを起点にNSG26として取り組むべき基本方針を策定しました。NSG26の経営目標として連結売上高500億円、連結経常利益52億円、連結ROE8%以上、連結配当性向50%程度などに加え、2030年CO2排出量削減目標▲30%(2013年度比)を引き続き掲げESG経営を推進しています。なお、NSG26の基本方針については、後述(5)中期経営計画(NSG26)の基本方針に記載しております。 ※2025年3月期よりCO2排出量の算定方法を変更しております。それに伴い、公表済の2024年3月期実績を変更後の算定方式による削減率に修正いたしております。 高機能・独自製品とは、当社グループで独自開発した技術を用いることなどにより実現可能となったシェアナンバーワンやオンリーワンの製品群となります。高機能・独自製品は、お客様の製品に高い付加価値をもたらす役割を担っています。 《高機能・独自製品の一例》 製品名説明ばね用材「ステンレス鋼線」とは、ステンレス鋼線材に二次加工を施し、表面性状、線径、機械的特性などの精度の高い機能を付加し、それを保証したワイヤーの総称をいい、ばね・ねじ・金網などに加工されます。当社のばね用材については、高強度や高耐熱、超非磁性などのお客様のニーズに応じ、線ぐせや光沢などを調整したオーダーメイド製品を提供しています。医療関連や精密電子機器、次世代の水素社会を支える素材となります。極細線線径100μm未満の製品を総称し、フィルター用途やスクリーン印刷用途に用いられています。細径化ニーズに対応してきた結果、現在7μmという単線としてはステンレス鋼線の極限の細さを実現しており、スクリーン印刷用途で用いられる極細線は、高精度・高細密が要求される太陽光発電パネルや電子部品の製造プロセスで使用されています。金属繊維(ナスロン®)当社が独自の技術で開発したステンレス鋼繊維であり、その線径は1~50μmと非常に細く柔軟性を有します。金属の性質を保持しながら有機繊維と同様にニット状やフェルト状などへの加工が可能となります。このナスロン®を用いた高機能メタルフィルターは、より高強度、より高耐熱で耐食性も優れており、フィルムや樹脂、炭素繊維などの製造の濾過プロセスで使用されています。超精密ガスフィルター(NASclean®)金属繊維(ナスロン®)をもとに製作した薄層のメタルメンブレンフィルターであり、半導体・フラットパネルディスプレイ、太陽電池パネル等の生産過程に用いられるガスの濾過に用いられ、半導体製造装置などに組み込まれています。社会のデジタル化に伴いデータ処理の高速化と機器の低発熱化・省電力化が必要となり、カーボンニュートラルに向けたより高性能な半導体が必要となるに伴い、超精密ガスフィルター(NASclean®)に対する需要も高まっています。 (3)サステナビリティ経営当社グループは、中期経営計画スローガン「サステナビリティ成長分野へ高機能・独自製品の開発・拡販と企業価値向上により持続的成長を図る」を基に、環境問題、人権尊重、健康経営、公正な取引、事業継続マネジメント(BCM)などの重要な経営課題に対して計画的に取り組んでいます。製造業である当社では、生産プロセスで排出されるCO2や廃棄物の削減といった社会的な責務を意識しており、その中でも、事業活動に伴うCO2排出量削減の目標(2030年目標30%削減(2013年度比)、2050年目標:カーボンニュートラル)を設定し持続可能な社会の実現を目指しています。また、当社グループの製造する高機能・独自製品は、最終製品の付加価値を高めるために不可欠な素材であり、サステナビリティ追求の潮流を大きなビジネスチャンスとして位置づけています。また、当社グループは、ビジネス規範に対するコンプライアンス教育の徹底、健康・安全や生産性向上など働きやすい環境の整備、多能工化やスキルマトリクス評価による人的資本の質の向上など、人的資本への投資を通じて持続的成長の基盤を培っています。知的財産の活用・拡張に対しても、伸線加工や金属繊維ナスロン®などのコア技術を活かした新たな高機能・独自製品の創出のほか、水素関連などのサステナビリティ成長分野に対する中長期視点での研究開発の推進に取り組んでいます。当社グループは、2022年3月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を決議・表明し、気候変動に係るリスク及び収益機会が当社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、リスクと機会を特定するとともに、シナリオ分析による戦略のレジリエンスを検証しています。また、投資家等とのエンゲージメントにも資するよう、TCFDが推奨する開示項目である「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」を含め、同提言に沿った情報開示を当社ウェブサイトにて行っています。「TCFD提言への賛同」に関する詳細な情報は、「統合報告書2025」(25頁から26頁)をご参照ください。「統合報告書2025」は、当社ウェブサイト(URL:https://www.n-seisen.co.jp/ir/library/integrated-report/)に掲載しております。 (4)コーポレート・ガバナンスとコンプライアンスの充実当社グループは、東証市場区分再編に際しプライム市場を選択し、プライム市場上場企業に求められる改訂CGコードのフルコンプライに向け、2022年1月25日に大同特殊鋼株式会社の形式支配力基準による連結子会社となり、同社関係者の役員派遣の制約が外れました。これを受け、2022年度からは独立社外取締役3名体制(うち女性取締役は1名)、2025年度からは独立社外取締役4名体制(うち女性取締役は2名)とし、独立社外取締役が過半数となりました。さらに、大同特殊鋼株式会社を親会社とする当社では、独立社外取締役及び独立社外監査役全員を構成員とする特別委員会を設置し、支配株主と少数株主との利益が相反する重要な取引行為について審議・検討を行っております。また、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」にて気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重などサステナビリティ課題への取組みを組織的に推進しており、2025年度は「CDP気候変動質問書」に4年連続で「B」評価を取得し、「水セキュリティ質問書」は2年連続で「B」評価を受けました。また、2024年から「統合報告書」を発刊し、株主・投資家をはじめとする様々なステークホルダーに対する非財務情報の開示充実に取り組んでいます。2023年9月には「日本精線グループ贈収賄防止方針」を制定、2025年10月に「贈収賄防止規程」、2026年1月に「交際費管理規程」をそれぞれ制定するなど、コンプライアンス強化を展開しました。(注)CDPとは企業や自治体を対象とした世界的な環境情報開示システムを運営する国際環境非営利団体。CDPは2003年以来、世界の主要企業を対象に、温室効果ガスの排出や気候変動による事業リスク・機会などの情報開示を求める質問書を年1回送付し、その回答をもとに企業の気候変動問題への対応を「A」から「D-」の8段階で評価しています。 (5)中期経営計画(NSG26)の基本方針中期経営計画(NSG26)では、従来の日本精線リニューアル計画(NSR)で培った経営リソースや事業計画を承継するとともに、企業価値のさらなる向上を目指すために以下の4つの基本方針を掲げています。 a.サステナビリティ成長分野に向けた高機能・独自製品の開発深化b.生産基盤強化と生産性向上c.水素回収技術の深化d.ESG経営 : 資本コストや株価を意識した経営(PBR1倍以上を目指して) a.サステナビリティ成長分野に向けた高機能・独自製品の開発深化 従来より注力してきた高機能・独自製品に関する機能能力を高めるとともに技術力向上のための設備投資・開発投資に注力していきます。また、需要増大が見込まれるサステナビリティ成長分野向け製品の生産能力の上方弾力を確保するための増産投資も計画的かつ機動的に展開していきます。こうした取り組みを通じて圧倒的な競争力を備え、競合他社が追随できない領域を目指していきます。具体的なアイテムとしては、極細線、極細ばね用材、超精密ガスフィルターの開発深化を展開していきます。また、サステナビリティ成長分野として、①再生可能エネルギー ②医療 ③IoT/AI ④自動車CASE を取り上げ、これらの分野で求められる要求特性の高度化に対応するため、当社の「Micro & Fine Technology」を駆使した製品で社会に貢献していきます。カーボンニュートラルによる気候変動対策と安定的なエネルギー需給構造を考えるうえで再生可能エネルギーは欠かせない重要テーマとなっています。太陽光発電や風力発電、水素エネルギーなどを支える部材・素材や製造プロセスに不可欠な製品を提供しており、エネルギー効率のさらなる向上を図っていきます。スクリーン印刷に用いられる極細線の細径化は太陽光発電パネルの発電効率の向上に寄与するため、線径9μmに続き、線径8μm・7μmも量産できる体制を整えていきます。高齢化及び少子化の進行により経済成長や社会保障制度、医療人材不足などの医療分野の社会的な課題を認識しています。治療により生じる身体の損傷を極力抑えQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を高めるとともに健康寿命を延ばし医療体制の維持に貢献できる素材を開発深化させていきます。具体的にはカテーテルガイドワイヤーやインシュリン自己注射器用ばねの素材提供を通じて貢献していきます。目覚ましいAIやIoTの技術革新は、業務効率化や省人化など第4次産業革命を惹き起こすと期待されています。膨大な計算量やセンシング技術などを支える半導体やデジタルデバイスの製造プロセスにおいて超精密ガスフィルターは不可欠な位置づけとなっており、機能向上と供給能力アップを続けていきます。また、半導体検査装置に組み込まれる超高強度の極細ばね用材の提供を通じてデジタル社会のイノベーションに貢献していきます。カーボンニュートラル、高齢者ドライバーによる交通事故の増加、地方で増加する交通弱者などの課題解決アプローチとして自動車CASEが注目されています。自動車のIoT、自動運転、電動化の技術プラットフォームの革新に必要となる素材の開発・提供を通じて、社会的な課題解決に貢献していきます。 b.生産基盤強化と生産性向上 当社グループでは従来より①高機能・独自製品の機能能力増強 ②新商品・独自製品開発 ③生産基盤強化を中心に設備投資を展開してきましたが、NSG26においては、将来起こりうる少子化影響による人材不足に対応するための設備の省人化や自動化、さらなる極細線の細径化や高強度化に向けた技術開発、ワールドワイドの拡販を意識した海外拠点の機能拡大などに対応するための設備投資に注力していきます。カーボンニュートラルの潮流もあり、NSG26では太陽光発電パネルの製造プロセスで使用されるスクリーン印刷向け極細線の需要拡大を見込んでおりましたが、中国での太陽光発電パネル生産の急減により在庫調整が継続、またスクリーン印刷用メッシュの素材がステンレス以外の金属に置き換わる動きがみられるなど、太陽光発電パネル向け極細線を取り巻く環境がNSG26策定時とは大きく変化しております。当社といたしましては更なる細径化・高強度化に取り組んでいくとともに、太陽光発電パネル向けに過度に依存しない新たな用途開発により拡販を目指します。また、省力化投資や自動化を通じて生産性アップを推進するとともに、女性やシニアが活躍できる労働環境整備による労働力確保、作業の安全性やエネルギー効率の向上、環境負荷低減につなげていきます。さらに、IoTの活用によって生産現場に限らず、販売や管理の効率性や品質管理の高度化を推進していきます。THAI SEISEN CO.,LTD.、耐素龍精密濾機(常熟)有限公司は、生産及び販売における海外展開の拠点として重要な位置づけを担っています。日系企業の海外展開のニーズに止まらず、グローバルニッチな素材を海外企業にも提供するため、さまざまな連携を図っていきます。 また、製造業である当社はエネルギー使用が不可欠であり、カーボンニュートラルに向けた取り組みは社会的な責務として認識しています。エネルギーの使用効率向上、漏れや放熱などのロス低減、排熱再利用などの省エネ投資やプロセス見直しを継続的に推進しSDGsに貢献していきます。c.水素回収技術の深化 枚方工場内に整備した「MCH(メチルシクロヘキサン)からの水素回収、貯蔵、分離精製一体型の小型プラント」により実証実験を推進中で、商用化を展望した改良を重ねていきます。具体的には、安全を最優先とした設計、水素回収の高効率、長期耐久性、エネルギーロスの極小化など、連続運転により装置性能における信頼性の検証を進めていきます。実験により分離精製された水素は、熱処理炉の雰囲気ガスとして社内利用して実用化に向けたアプローチを確認していきます。また、アンモニアからの水素回収に関する技術についても研究開発を加速させていきます。MCHとアンモニアという既存インフラの流用が可能な2つの水素キャリアに対するアプローチを展開することで、水素の事業化の選択肢を広げていきます。水素キャリアをタンクローリー輸送し、過疎地域や郊外の工場や発電設備などにおいてオンサイトの小型プラントで水素を消費するような利用シーンを想定しています。今後の水素社会においては、燃料電池自動車や発電のために水素を燃焼させるほかに、半導体や液晶ディスプレイの製造プロセスの雰囲気ガスとして利用するなど、水素の多様な用途活用の可能性があります。当社が保有する金属フィルター加工技術、並びに特殊な独自の接合技術により開発した水素分離膜モジュールを用いることによって、超高純度の水素を精製することができます。当社が培ってきた技術を複合的に組み合わせるとともに外部リソースとの連携によって、将来の事業の柱となるよう努めていきます。 d.ESG経営 : 資本コストや株価を意識した経営(PBR1倍以上を目指して) 環境(E)については、2030年度に2013年度比でCO2排出量を30%削減、2050年度にはカーボンニュートラルを目指すため、排熱回収や断熱化などを行いエネルギーの使用効率向上を図るとともに、電気炉への更新投資によって都市ガス使用量を削減していきます。また、既に導入済のCO2フリー電力の使用拡大についても状況に応じて進めていきます。さらに、サプライチェーン排出量(Scope1+2+3)削減と情報開示の充実についても積極的に取り組んでいきます。そのほか、化学物質の管理強化や廃棄物量の低減やリサイクルの推進、水資源の保全などを行うことにより、サーキュラーエコノミーへの移行を推進していきます。 社会(S)については、人的資本経営に注力していきます。経営理念や2035年のありたい姿の実現には「成長し続ける組織の構築」が必要不可欠と考え、変革を実現する人材の育成と多様な人材・多様な働き方の確保をキーワードに人的資本の充実に向けた施策を推進していきます。体系的な教育研修の実施、女性活躍推進を中心としたダイバーシティ&インクルージョン、ワークライフバランスの推進、人権の尊重、ワークエンゲージメントの強化、健康経営の推進の各項目それぞれにKPIを設定し、一層充実した人的資本経営に取り組んでいきます。 ガバナンス(G)については、ステークホルダーとのコミュニケーション強化を図るために経営トップによる決算説明会や工場見学会を開催するなど、SR・IRの拡充を通じて市場から適正な評価を得られるよう努めていきます。また、サステナビリティ経営の推進や、コーポレート・ガバナンスのレベルアップとコンプライアンスの充実、CDPスコアなどの非財務情報も含めた情報開示の充実など、ステークホルダーに対して経営の透明性を確保することで、期待株主資本コストの抑制に努めていきます。研究開発部門の将来投資や非財務戦略投資を積極的に行い持続的成長の基盤の整備にも注力し、ROEや資本コストを意識し資本収益性の維持・向上を図りPBR1倍以上の維持・向上を目指していきます。NSG26においては連結配当性向50%程度とし、株主還元も強化していきます。 ※2024年度よりCO2排出量の算定方法を変更しております。それに伴い、公表済の2023年度以前の実績及び2030年度の目標値を変更後の算定方式による排出量に修正いたしております。また、2025年度の排出量は第三者検証前の数値となります。 (6)中期経営計画(NSG26)の進捗状況中期経営計画(NSG26)の基本方針に則り、各施策を着実に実施・展開しました。 a.サステナビリティ成長分野に向けた高機能・独自製品の開発深化ステンレス鋼線部門においては、太陽光発電パネルの高効率化に伴い、その製造プロセスで使用されるスクリーン印刷向け極細線の細径化が求められる中、9μmの量産対応に続き7μmも技術確立を行い、量産化に注力いたしております。また、今後成長が見込まれる医療用途では、内視鏡用やカテーテル用など、用途に応じた鋼種や線径などの要求に的確に対応してまいります。更には、インシュリン自己注射器に使用されるニッケル鍍金ばね用材増産のための設備投資をTHAI SEISEN CO.,LTD.にて継続的に実施するなど、グローバル拠点の機能拡充も進めております。金属繊維部門においては、より低圧損かつ高い濾過精度を有する超精密ガスフィルター(NASclean®)の新製品開発と拡販に注力しています。具体的には、近年半導体デバイスの微細化が進み、そのデバイス製造時に使用されるガスが蒸気圧の低いガス種に代わってきており、装置ライン全体の圧力損失を抑えるべくガスフィルターにも低圧損が求められています。この要求に対応すべく、超低圧損かつ高濾過精度を有したフィルターを開発し顧客に提案・評価いただいており、今後の更なる半導体デバイス微細化に対応してまいります。また、樹脂用のナスロン®フィルターにおいては、濾過時の樹脂の滞留低減を目指しフィルター構造や濾材を改良した新製品を顧客で評価いただいており、今後の高機能フィルムの品質向上に対応してまいります。 b.生産基盤強化と生産性向上ステンレス鋼線部門においては、生産基盤強化として極細線の細径化及び高強度化、また医療用途や半導体検査装置向け極細ばね用材の設備増設に対応する製造工場増築に着手しております。更に、海外向けで需要拡大が見込まれる細物ばね用材の増産に向けた伸線機の増設などを実施しております。金属繊維部門においては、AIやデータセンター向け半導体需要の高まりを背景に、半導体関連業界向け超精密ガスフィルター(NASclean®)需要が旺盛であり、これに確実に応えていくとともに更なる需要増に備えるため、製造工場やその周辺の整備を行っております。将来起こりうる少子化影響による人材不足に対応するための省人化・自動化投資につきましては、ナスロン®フィルターの再生洗浄工程での作業のロボット化や識別照合工程でのAIカメラ導入検討など継続的に進めております。カーボンニュートラルに向けた省エネ投資についても、放熱ロスの低減や排熱再利用などを進め、効率的なエネルギー利用を推進しております。また、金属繊維(ナスロン®)の素材製造に使用する酸洗装置の更新や東大阪工場の耐震・防火対応など、生産基盤の維持更新やBCM(事業継続マネジメント)対応にも取り組んでおります。 c.水素回収技術の深化枚方工場内に整備した、MCH(メチルシクロヘキサン)からの水素貯蔵回収モジュールにより回収した水素を熱処理炉の雰囲気ガスとして利用し、連続運転下での実証実験により安全を最優先にしながら水素の回収効率や触媒の耐久性、プロセス内でのエネルギーロスなどを確認し、装置の信頼性とコスト検証を進めています。アンモニアからの水素回収技術についても継続して開発を推進しており、小型アンモニアクラッキング装置(アンモニアに熱を加えて水素と窒素に分解し、触媒に反応させて水素を取り出す装置)の実用化に向け、エンジニアリング企業や電力会社などとの共同検討を推進しテスト装置を設計・製作しました。また、当社が保有する金属フィルター加工技術並びに特殊な独自の接合技術により開発した水素分離膜モジュールは、超高純度水素精製の更なる流量拡大に向け、モジュールの製作・装置化と市場展開を進めております。これまで当社が培ってきた技術を複合的に組み合わせるとともに外部リソースとの連携によって商用化を目指し、将来の事業の柱となるよう注力します。 d.ESG経営 : 資本コストや株価を意識した経営(PBR1倍以上を目指して)環境(E)については、2030年度に2013年度比でCO2排出量を30%削減、2050年度にはカーボンニュートラルを目指しており、2025年度(第三者検証前)は29%の削減となりました。目標達成に向け、引き続きエネルギーの使用効率向上や電気炉への更新による都市ガス使用量の削減などに取り組みます。また、海外2工場においてもCO2削減に向けたロードマップを策定し、グループ全体としてカーボンニュートラルを推進しています。サプライチェーン排出量(Scope1+2+3)削減と情報開示の充実については、CDP気候変動質問書の評価B(4年連続)、同水セキュリティ質問書の評価B(2年連続)となっており、更なるスコアアップに向け課題解決に取り組みます。社会(S)については、健康経営推進の成果として「健康経営優良法人」に7年連続で選定、上位500法人である「ホワイト500」にも2年連続で認定されました。また、リニューアルした教育体系に沿った研修の実施、女性活躍推進、人権の尊重、ワークエンゲージメント強化などにより、人的資本経営の強化に引き続き取り組みます。また、大阪市が発行するグリーンボンド(大阪市第4回公募公債)に投資を行いました。グリーンボンドは環境改善効果等を有する事業に限定して資金を調達するために発行される債券です。大阪市には当社の本社が所在し、多くの従業員が勤務または居住しております。当社は本投資を通じて、当社にとっての重要拠点である大阪市の地域・社会や環境対策などに深く関わることで当社の本業を通じたサステナビリティへの貢献と相乗効果が期待できると考えております。ガバナンス(G)については、ステークホルダーとのコミュニケーション強化を図るために、一般株主向けの工場見学会、経営トップによる機関投資家向け決算説明会や工場見学会を開催しております。また、コーポレート・ガバナンスのレベルアップに向け取締役会の実効性評価、政策保有株式の縮減などに取り組むとともに、親会社との取引については独立社外取締役及び独立社外監査役が出席する特別委員会でのチェックを強化し、少数株主の利益保護を図っております。ROEや資本コストを意識し資本収益性の維持・向上を図りPBR1倍以上の維持・向上を今後も目指していきます。NSG26では連結配当性向50%程度としており、2025年度は60.0%となる予定です。 e.目標とする経営指標当社グループは、NSG26において以下の指標を経営目標として設定しております。2年目となる2025年度の結果は下表のとおりとなります。引き続きこれらを重要指標とし、企業価値の向上に努めてまいります。※第三者検証前のCO2排出量を基とした数値。 (7)経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題①経営環境2025年度の世界経済は、米国の通商政策の不確実性や中国経済の低迷、またロシア・ウクライナ戦争の長期化に加え中東情勢の一層の緊迫化とホルムズ海峡をめぐる争いなど地政学リスクは日増しに高まっており、景気の先行きの不透明感がこれまで以上に大きくなっています。日本経済は雇用や所得環境の改善などにより緩やかな回復基調が続いたものの、継続的な物価上昇や幅広い業界での人手不足問題などに加え、原油及びその由来製品の価格高騰と安定調達への懸念が広がっており景気の先行きに影響する可能性があります。中長期的な視点では、ステンレス鋼線の汎用品に対する需要が頭打ちとなるニューノーマル経済のリスクシナリオを想定しつつも、サステナビリティ成長分野に対する高機能・独自製品の需要の増大を見込んでいます。地球環境保護や人口減少、デジタル社会の進展に向けたイノベーションなど、当社を巡る経営環境は「リスク」と「ビジネス機会」の両面を包含しています。②優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題今後につきましては、米国の通商政策や不動産不況が継続する中国経済の動向が世界経済に不確実性の高まりをもたらしています。また、緊迫化する中東情勢を背景とした原油及びその由来製品の価格高騰と安定調達への懸念は世界経済の大きな下振れリスクと認識しております。国内においても、継続する物価や人件費の上昇、人手不足問題などに加え、原油の調達不安・価格高騰がもたらす悪影響など、多くのリスクシナリオを認識しています。当社グループの主力製品であるステンレス鋼線は、中国や韓国のステンレス鋼線メーカーとの競争激化による収益低下などの懸念があり、同様に、金属繊維(ナスロン®)も化合繊維向けなどの一般汎用製品については競争が激しくなっております。このような経営環境を踏まえ、当社グループは2024年度より2027年3月期を最終年度とする『第16次中期経営計画(NSG26)』をスタートさせ、「サステナビリティ成長分野へ高機能・独自製品の開発・拡販と企業価値向上により持続的成長を図る」を中期スローガンとして掲げ、①サステナビリティ成長分野に向けた高機能・独自製品の開発深化、②生産基盤強化と生産性向上、③水素回収技術の深化、④ESG経営(資本コストや株価を意識した経営)を基本方針として企業価値向上に努めてまいります。NSG26の経営目標としては連結経常利益52億円、連結売上高経常利益率(ROS)10%以上、連結総資産経常利益率(ROA)10%以上などに加え、2030年度CO2排出量30%削減(2013年度対比)目標を掲げております。具体的には、ステンレス鋼線部門の販売面においては、再生可能エネルギー、医療、IоTなどのサステナビリティ成長分野に極細線、極細ばね用材、高強度ばね用材など当社グループの高機能・独自製品の拡販に努めてまいります。生産面においては、更なる細径化と高強度化が求められる極細線の開発や医療用途や半導体検査装置向けなどに成長が見込まれる極細ばね用材の増産、将来起こりうる労働力不足に対応した省人化・自動化、クラウド化やAIなどのIоT活用を含めた生産基盤強化と生産性向上を図ります。また、海外生産拠点であるTHAI SEISEN CO.,LTD.と一丸となった最適生産・販売体制を再構築してまいります。金属繊維部門においては、AIやデータセンター向けを中心に半導体需要が拡大しており、半導体製造装置向け超精密ガスフィルター(NASclean®)の安定供給を果たすとともに、更なる需要拡大に向けた生産体制の構築と新製品の開発・供給を行ってまいります。また、ナスロン®フィルターについては、海外への更なる拡販に向け耐素龍精密濾機(常熟)有限公司の活用を図ってまいります。水素ビジネスについては、MCH(メチルシクロヘキサン)やアンモニアからの水素回収技術をさらに深化させ、水素回収技術、貯蔵技術、分離精製技術を組合せた小型プラントの商用化に向けた取り組みを加速させていきます。ESG経営としては、省エネ投資などの排出抑制を含めたサプライチェーン排出量(Scope1+2+3)削減を推進し、2050年のカーボンニュートラルを目指します。また、資本コストや株価を意識した経営にも注力し、ステークホルダーとのコミュニケーション強化を図ります。働き方改革や人的資本経営への投資も積極的に行うとともにリスク管理やガバナンスの体制強化にも鋭意取り組んでまいります。また、当社の自助努力では吸収困難な労務費、エネルギー・副資材費、物流費などの製造コストの増加を販売価格へ転嫁するとともに、サプライチェーンの柔軟性確保や適正在庫の運用を図るなど、状況に応じた取り組みを展開いたします。以上の諸施策を確実に実行することにより、収益の一段の向上を図るとともに、事業のグローバル化推進や高度化・多様化する顧客ニーズへの対応、サステナブル社会への貢献を通じ、『さらなる企業価値の向上』にグループ一丸となって取り組んでまいります。
対処すべき課題
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書の提出日現在において、当社グループが判断したものであります。 (1)経営の基本方針 ステンレス鋼線並びに金属繊維(ナスロン®)を主力製品とする当社グループは、長年にわたり培ってきた技術力と新しい分野への挑戦により、お客様にとって価値のある商品とサービスの提供を通じて社会の発展に貢献することを経営の基本理念としております。 産業構造が環境・エネルギーのクリーン化、デジタル化へと進むなか、ステンレス分野への期待はさらに高まり、「より細く、より強く、より精密な」方向が求められています。ステンレス鋼線のトップメーカーとして、これらの期待に適応すべく『Micro & Fine Technology』をスローガンに掲げ、次世代素材、技術開発をこれからもリードし続けてまいります。 また、株主並びにお客様など、内外の関係先からの信頼と期待に応えるため、常に市場の変化に迅速に対応できる柔軟な経営体制の構築を通じて、安定した収益基盤の維持・拡大を図るべく事業活動を展開してまいります。 (2)中長期的な経営戦略及び目標とする指標 当社グループは2024年4月より『中期経営計画(NSG26)』(最終年度2027年3月期、NSG : Nippon Seisen Sustainable Growth)をスタートさせ、「サステナビリティ成長分野へ高機能・独自製品の開発・拡販と企業価値向上により持続的成長を図る」を中期スローガンとして掲げ、資本コストや株価を意識した経営を推進してまいります。NSG26の検討にあたっては、高齢化社会や技術イノベーション、地球環境保護などの環境変化を想定し長期的な視点で2035年の「ありたい姿」を設定し、それを起点にNSG26として取り組むべき基本方針を策定しました。NSG26の経営目標として連結売上高500億円、連結経常利益52億円、連結ROE8%以上、連結配当性向50%程度などに加え、2030年CO2排出量削減目標▲30%(2013年度比)を引き続き掲げESG経営を推進しています。なお、NSG26の基本方針については、後述(5)中期経営計画(NSG26)の基本方針に記載しております。 ※2025年3月期よりCO2排出量の算定方法を変更しております。それに伴い、公表済の2024年3月期実績を変更後の算定方式による削減率に修正いたしております。 高機能・独自製品とは、当社グループで独自開発した技術を用いることなどにより実現可能となったシェアナンバーワンやオンリーワンの製品群となります。高機能・独自製品は、お客様の製品に高い付加価値をもたらす役割を担っています。 《高機能・独自製品の一例》 製品名説明ばね用材「ステンレス鋼線」とは、ステンレス鋼線材に二次加工を施し、表面性状、線径、機械的特性などの精度の高い機能を付加し、それを保証したワイヤーの総称をいい、ばね・ねじ・金網などに加工されます。当社のばね用材については、高強度や高耐熱、超非磁性などのお客様のニーズに応じ、線ぐせや光沢などを調整したオーダーメイド製品を提供しています。医療関連や精密電子機器、次世代の水素社会を支える素材となります。極細線線径100μm未満の製品を総称し、フィルター用途やスクリーン印刷用途に用いられています。細径化ニーズに対応してきた結果、現在7μmという単線としてはステンレス鋼線の極限の細さを実現しており、スクリーン印刷用途で用いられる極細線は、高精度・高細密が要求される太陽光発電パネルや電子部品の製造プロセスで使用されています。金属繊維(ナスロン®)当社が独自の技術で開発したステンレス鋼繊維であり、その線径は1~50μmと非常に細く柔軟性を有します。金属の性質を保持しながら有機繊維と同様にニット状やフェルト状などへの加工が可能となります。このナスロン®を用いた高機能メタルフィルターは、より高強度、より高耐熱で耐食性も優れており、フィルムや樹脂、炭素繊維などの製造の濾過プロセスで使用されています。超精密ガスフィルター(NASclean®)金属繊維(ナスロン®)をもとに製作した薄層のメタルメンブレンフィルターであり、半導体・フラットパネルディスプレイ、太陽電池パネル等の生産過程に用いられるガスの濾過に用いられ、半導体製造装置などに組み込まれています。社会のデジタル化に伴いデータ処理の高速化と機器の低発熱化・省電力化が必要となり、カーボンニュートラルに向けたより高性能な半導体が必要となるに伴い、超精密ガスフィルター(NASclean®)に対する需要も高まっています。 (3)サステナビリティ経営当社グループは、中期経営計画スローガン「サステナビリティ成長分野へ高機能・独自製品の開発・拡販と企業価値向上により持続的成長を図る」を基に、環境問題、人権尊重、健康経営、公正な取引、事業継続マネジメント(BCM)などの重要な経営課題に対して計画的に取り組んでいます。製造業である当社では、生産プロセスで排出されるCO2や廃棄物の削減といった社会的な責務を意識しており、その中でも、事業活動に伴うCO2排出量削減の目標(2030年目標30%削減(2013年度比)、2050年目標:カーボンニュートラル)を設定し持続可能な社会の実現を目指しています。また、当社グループの製造する高機能・独自製品は、最終製品の付加価値を高めるために不可欠な素材であり、サステナビリティ追求の潮流を大きなビジネスチャンスとして位置づけています。また、当社グループは、ビジネス規範に対するコンプライアンス教育の徹底、健康・安全や生産性向上など働きやすい環境の整備、多能工化やスキルマトリクス評価による人的資本の質の向上など、人的資本への投資を通じて持続的成長の基盤を培っています。知的財産の活用・拡張に対しても、伸線加工や金属繊維ナスロン®などのコア技術を活かした新たな高機能・独自製品の創出のほか、水素関連などのサステナビリティ成長分野に対する中長期視点での研究開発の推進に取り組んでいます。当社グループは、2022年3月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を決議・表明し、気候変動に係るリスク及び収益機会が当社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、リスクと機会を特定するとともに、シナリオ分析による戦略のレジリエンスを検証しています。また、投資家等とのエンゲージメントにも資するよう、TCFDが推奨する開示項目である「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」を含め、同提言に沿った情報開示を当社ウェブサイトにて行っています。「TCFD提言への賛同」に関する詳細な情報は、「統合報告書2025」(25頁から26頁)をご参照ください。「統合報告書2025」は、当社ウェブサイト(URL:https://www.n-seisen.co.jp/ir/library/integrated-report/)に掲載しております。 (4)コーポレート・ガバナンスとコンプライアンスの充実当社グループは、東証市場区分再編に際しプライム市場を選択し、プライム市場上場企業に求められる改訂CGコードのフルコンプライに向け、2022年1月25日に大同特殊鋼株式会社の形式支配力基準による連結子会社となり、同社関係者の役員派遣の制約が外れました。これを受け、2022年度からは独立社外取締役3名体制(うち女性取締役は1名)、2025年度からは独立社外取締役4名体制(うち女性取締役は2名)とし、独立社外取締役が過半数となりました。さらに、大同特殊鋼株式会社を親会社とする当社では、独立社外取締役及び独立社外監査役全員を構成員とする特別委員会を設置し、支配株主と少数株主との利益が相反する重要な取引行為について審議・検討を行っております。また、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」にて気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重などサステナビリティ課題への取組みを組織的に推進しており、2025年度は「CDP気候変動質問書」に4年連続で「B」評価を取得し、「水セキュリティ質問書」は2年連続で「B」評価を受けました。また、2024年から「統合報告書」を発刊し、株主・投資家をはじめとする様々なステークホルダーに対する非財務情報の開示充実に取り組んでいます。2023年9月には「日本精線グループ贈収賄防止方針」を制定、2025年10月に「贈収賄防止規程」、2026年1月に「交際費管理規程」をそれぞれ制定するなど、コンプライアンス強化を展開しました。(注)CDPとは企業や自治体を対象とした世界的な環境情報開示システムを運営する国際環境非営利団体。CDPは2003年以来、世界の主要企業を対象に、温室効果ガスの排出や気候変動による事業リスク・機会などの情報開示を求める質問書を年1回送付し、その回答をもとに企業の気候変動問題への対応を「A」から「D-」の8段階で評価しています。 (5)中期経営計画(NSG26)の基本方針中期経営計画(NSG26)では、従来の日本精線リニューアル計画(NSR)で培った経営リソースや事業計画を承継するとともに、企業価値のさらなる向上を目指すために以下の4つの基本方針を掲げています。 a.サステナビリティ成長分野に向けた高機能・独自製品の開発深化b.生産基盤強化と生産性向上c.水素回収技術の深化d.ESG経営 : 資本コストや株価を意識した経営(PBR1倍以上を目指して) a.サステナビリティ成長分野に向けた高機能・独自製品の開発深化 従来より注力してきた高機能・独自製品に関する機能能力を高めるとともに技術力向上のための設備投資・開発投資に注力していきます。また、需要増大が見込まれるサステナビリティ成長分野向け製品の生産能力の上方弾力を確保するための増産投資も計画的かつ機動的に展開していきます。こうした取り組みを通じて圧倒的な競争力を備え、競合他社が追随できない領域を目指していきます。具体的なアイテムとしては、極細線、極細ばね用材、超精密ガスフィルターの開発深化を展開していきます。また、サステナビリティ成長分野として、①再生可能エネルギー ②医療 ③IoT/AI ④自動車CASE を取り上げ、これらの分野で求められる要求特性の高度化に対応するため、当社の「Micro & Fine Technology」を駆使した製品で社会に貢献していきます。カーボンニュートラルによる気候変動対策と安定的なエネルギー需給構造を考えるうえで再生可能エネルギーは欠かせない重要テーマとなっています。太陽光発電や風力発電、水素エネルギーなどを支える部材・素材や製造プロセスに不可欠な製品を提供しており、エネルギー効率のさらなる向上を図っていきます。スクリーン印刷に用いられる極細線の細径化は太陽光発電パネルの発電効率の向上に寄与するため、線径9μmに続き、線径8μm・7μmも量産できる体制を整えていきます。高齢化及び少子化の進行により経済成長や社会保障制度、医療人材不足などの医療分野の社会的な課題を認識しています。治療により生じる身体の損傷を極力抑えQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を高めるとともに健康寿命を延ばし医療体制の維持に貢献できる素材を開発深化させていきます。具体的にはカテーテルガイドワイヤーやインシュリン自己注射器用ばねの素材提供を通じて貢献していきます。目覚ましいAIやIoTの技術革新は、業務効率化や省人化など第4次産業革命を惹き起こすと期待されています。膨大な計算量やセンシング技術などを支える半導体やデジタルデバイスの製造プロセスにおいて超精密ガスフィルターは不可欠な位置づけとなっており、機能向上と供給能力アップを続けていきます。また、半導体検査装置に組み込まれる超高強度の極細ばね用材の提供を通じてデジタル社会のイノベーションに貢献していきます。カーボンニュートラル、高齢者ドライバーによる交通事故の増加、地方で増加する交通弱者などの課題解決アプローチとして自動車CASEが注目されています。自動車のIoT、自動運転、電動化の技術プラットフォームの革新に必要となる素材の開発・提供を通じて、社会的な課題解決に貢献していきます。 b.生産基盤強化と生産性向上 当社グループでは従来より①高機能・独自製品の機能能力増強 ②新商品・独自製品開発 ③生産基盤強化を中心に設備投資を展開してきましたが、NSG26においては、将来起こりうる少子化影響による人材不足に対応するための設備の省人化や自動化、さらなる極細線の細径化や高強度化に向けた技術開発、ワールドワイドの拡販を意識した海外拠点の機能拡大などに対応するための設備投資に注力していきます。カーボンニュートラルの潮流もあり、NSG26では太陽光発電パネルの製造プロセスで使用されるスクリーン印刷向け極細線の需要拡大を見込んでおりましたが、中国での太陽光発電パネル生産の急減により在庫調整が継続、またスクリーン印刷用メッシュの素材がステンレス以外の金属に置き換わる動きがみられるなど、太陽光発電パネル向け極細線を取り巻く環境がNSG26策定時とは大きく変化しております。当社といたしましては更なる細径化・高強度化に取り組んでいくとともに、太陽光発電パネル向けに過度に依存しない新たな用途開発により拡販を目指します。また、省力化投資や自動化を通じて生産性アップを推進するとともに、女性やシニアが活躍できる労働環境整備による労働力確保、作業の安全性やエネルギー効率の向上、環境負荷低減につなげていきます。さらに、IoTの活用によって生産現場に限らず、販売や管理の効率性や品質管理の高度化を推進していきます。THAI SEISEN CO.,LTD.、耐素龍精密濾機(常熟)有限公司は、生産及び販売における海外展開の拠点として重要な位置づけを担っています。日系企業の海外展開のニーズに止まらず、グローバルニッチな素材を海外企業にも提供するため、さまざまな連携を図っていきます。 また、製造業である当社はエネルギー使用が不可欠であり、カーボンニュートラルに向けた取り組みは社会的な責務として認識しています。エネルギーの使用効率向上、漏れや放熱などのロス低減、排熱再利用などの省エネ投資やプロセス見直しを継続的に推進しSDGsに貢献していきます。c.水素回収技術の深化 枚方工場内に整備した「MCH(メチルシクロヘキサン)からの水素回収、貯蔵、分離精製一体型の小型プラント」により実証実験を推進中で、商用化を展望した改良を重ねていきます。具体的には、安全を最優先とした設計、水素回収の高効率、長期耐久性、エネルギーロスの極小化など、連続運転により装置性能における信頼性の検証を進めていきます。実験により分離精製された水素は、熱処理炉の雰囲気ガスとして社内利用して実用化に向けたアプローチを確認していきます。また、アンモニアからの水素回収に関する技術についても研究開発を加速させていきます。MCHとアンモニアという既存インフラの流用が可能な2つの水素キャリアに対するアプローチを展開することで、水素の事業化の選択肢を広げていきます。水素キャリアをタンクローリー輸送し、過疎地域や郊外の工場や発電設備などにおいてオンサイトの小型プラントで水素を消費するような利用シーンを想定しています。今後の水素社会においては、燃料電池自動車や発電のために水素を燃焼させるほかに、半導体や液晶ディスプレイの製造プロセスの雰囲気ガスとして利用するなど、水素の多様な用途活用の可能性があります。当社が保有する金属フィルター加工技術、並びに特殊な独自の接合技術により開発した水素分離膜モジュールを用いることによって、超高純度の水素を精製することができます。当社が培ってきた技術を複合的に組み合わせるとともに外部リソースとの連携によって、将来の事業の柱となるよう努めていきます。 d.ESG経営 : 資本コストや株価を意識した経営(PBR1倍以上を目指して) 環境(E)については、2030年度に2013年度比でCO2排出量を30%削減、2050年度にはカーボンニュートラルを目指すため、排熱回収や断熱化などを行いエネルギーの使用効率向上を図るとともに、電気炉への更新投資によって都市ガス使用量を削減していきます。また、既に導入済のCO2フリー電力の使用拡大についても状況に応じて進めていきます。さらに、サプライチェーン排出量(Scope1+2+3)削減と情報開示の充実についても積極的に取り組んでいきます。そのほか、化学物質の管理強化や廃棄物量の低減やリサイクルの推進、水資源の保全などを行うことにより、サーキュラーエコノミーへの移行を推進していきます。 社会(S)については、人的資本経営に注力していきます。経営理念や2035年のありたい姿の実現には「成長し続ける組織の構築」が必要不可欠と考え、変革を実現する人材の育成と多様な人材・多様な働き方の確保をキーワードに人的資本の充実に向けた施策を推進していきます。体系的な教育研修の実施、女性活躍推進を中心としたダイバーシティ&インクルージョン、ワークライフバランスの推進、人権の尊重、ワークエンゲージメントの強化、健康経営の推進の各項目それぞれにKPIを設定し、一層充実した人的資本経営に取り組んでいきます。 ガバナンス(G)については、ステークホルダーとのコミュニケーション強化を図るために経営トップによる決算説明会や工場見学会を開催するなど、SR・IRの拡充を通じて市場から適正な評価を得られるよう努めていきます。また、サステナビリティ経営の推進や、コーポレート・ガバナンスのレベルアップとコンプライアンスの充実、CDPスコアなどの非財務情報も含めた情報開示の充実など、ステークホルダーに対して経営の透明性を確保することで、期待株主資本コストの抑制に努めていきます。研究開発部門の将来投資や非財務戦略投資を積極的に行い持続的成長の基盤の整備にも注力し、ROEや資本コストを意識し資本収益性の維持・向上を図りPBR1倍以上の維持・向上を目指していきます。NSG26においては連結配当性向50%程度とし、株主還元も強化していきます。 ※2024年度よりCO2排出量の算定方法を変更しております。それに伴い、公表済の2023年度以前の実績及び2030年度の目標値を変更後の算定方式による排出量に修正いたしております。また、2025年度の排出量は第三者検証前の数値となります。 (6)中期経営計画(NSG26)の進捗状況中期経営計画(NSG26)の基本方針に則り、各施策を着実に実施・展開しました。 a.サステナビリティ成長分野に向けた高機能・独自製品の開発深化ステンレス鋼線部門においては、太陽光発電パネルの高効率化に伴い、その製造プロセスで使用されるスクリーン印刷向け極細線の細径化が求められる中、9μmの量産対応に続き7μmも技術確立を行い、量産化に注力いたしております。また、今後成長が見込まれる医療用途では、内視鏡用やカテーテル用など、用途に応じた鋼種や線径などの要求に的確に対応してまいります。更には、インシュリン自己注射器に使用されるニッケル鍍金ばね用材増産のための設備投資をTHAI SEISEN CO.,LTD.にて継続的に実施するなど、グローバル拠点の機能拡充も進めております。金属繊維部門においては、より低圧損かつ高い濾過精度を有する超精密ガスフィルター(NASclean®)の新製品開発と拡販に注力しています。具体的には、近年半導体デバイスの微細化が進み、そのデバイス製造時に使用されるガスが蒸気圧の低いガス種に代わってきており、装置ライン全体の圧力損失を抑えるべくガスフィルターにも低圧損が求められています。この要求に対応すべく、超低圧損かつ高濾過精度を有したフィルターを開発し顧客に提案・評価いただいており、今後の更なる半導体デバイス微細化に対応してまいります。また、樹脂用のナスロン®フィルターにおいては、濾過時の樹脂の滞留低減を目指しフィルター構造や濾材を改良した新製品を顧客で評価いただいており、今後の高機能フィルムの品質向上に対応してまいります。 b.生産基盤強化と生産性向上ステンレス鋼線部門においては、生産基盤強化として極細線の細径化及び高強度化、また医療用途や半導体検査装置向け極細ばね用材の設備増設に対応する製造工場増築に着手しております。更に、海外向けで需要拡大が見込まれる細物ばね用材の増産に向けた伸線機の増設などを実施しております。金属繊維部門においては、AIやデータセンター向け半導体需要の高まりを背景に、半導体関連業界向け超精密ガスフィルター(NASclean®)需要が旺盛であり、これに確実に応えていくとともに更なる需要増に備えるため、製造工場やその周辺の整備を行っております。将来起こりうる少子化影響による人材不足に対応するための省人化・自動化投資につきましては、ナスロン®フィルターの再生洗浄工程での作業のロボット化や識別照合工程でのAIカメラ導入検討など継続的に進めております。カーボンニュートラルに向けた省エネ投資についても、放熱ロスの低減や排熱再利用などを進め、効率的なエネルギー利用を推進しております。また、金属繊維(ナスロン®)の素材製造に使用する酸洗装置の更新や東大阪工場の耐震・防火対応など、生産基盤の維持更新やBCM(事業継続マネジメント)対応にも取り組んでおります。 c.水素回収技術の深化枚方工場内に整備した、MCH(メチルシクロヘキサン)からの水素貯蔵回収モジュールにより回収した水素を熱処理炉の雰囲気ガスとして利用し、連続運転下での実証実験により安全を最優先にしながら水素の回収効率や触媒の耐久性、プロセス内でのエネルギーロスなどを確認し、装置の信頼性とコスト検証を進めています。アンモニアからの水素回収技術についても継続して開発を推進しており、小型アンモニアクラッキング装置(アンモニアに熱を加えて水素と窒素に分解し、触媒に反応させて水素を取り出す装置)の実用化に向け、エンジニアリング企業や電力会社などとの共同検討を推進しテスト装置を設計・製作しました。また、当社が保有する金属フィルター加工技術並びに特殊な独自の接合技術により開発した水素分離膜モジュールは、超高純度水素精製の更なる流量拡大に向け、モジュールの製作・装置化と市場展開を進めております。これまで当社が培ってきた技術を複合的に組み合わせるとともに外部リソースとの連携によって商用化を目指し、将来の事業の柱となるよう注力します。 d.ESG経営 : 資本コストや株価を意識した経営(PBR1倍以上を目指して)環境(E)については、2030年度に2013年度比でCO2排出量を30%削減、2050年度にはカーボンニュートラルを目指しており、2025年度(第三者検証前)は29%の削減となりました。目標達成に向け、引き続きエネルギーの使用効率向上や電気炉への更新による都市ガス使用量の削減などに取り組みます。また、海外2工場においてもCO2削減に向けたロードマップを策定し、グループ全体としてカーボンニュートラルを推進しています。サプライチェーン排出量(Scope1+2+3)削減と情報開示の充実については、CDP気候変動質問書の評価B(4年連続)、同水セキュリティ質問書の評価B(2年連続)となっており、更なるスコアアップに向け課題解決に取り組みます。社会(S)については、健康経営推進の成果として「健康経営優良法人」に7年連続で選定、上位500法人である「ホワイト500」にも2年連続で認定されました。また、リニューアルした教育体系に沿った研修の実施、女性活躍推進、人権の尊重、ワークエンゲージメント強化などにより、人的資本経営の強化に引き続き取り組みます。また、大阪市が発行するグリーンボンド(大阪市第4回公募公債)に投資を行いました。グリーンボンドは環境改善効果等を有する事業に限定して資金を調達するために発行される債券です。大阪市には当社の本社が所在し、多くの従業員が勤務または居住しております。当社は本投資を通じて、当社にとっての重要拠点である大阪市の地域・社会や環境対策などに深く関わることで当社の本業を通じたサステナビリティへの貢献と相乗効果が期待できると考えております。ガバナンス(G)については、ステークホルダーとのコミュニケーション強化を図るために、一般株主向けの工場見学会、経営トップによる機関投資家向け決算説明会や工場見学会を開催しております。また、コーポレート・ガバナンスのレベルアップに向け取締役会の実効性評価、政策保有株式の縮減などに取り組むとともに、親会社との取引については独立社外取締役及び独立社外監査役が出席する特別委員会でのチェックを強化し、少数株主の利益保護を図っております。ROEや資本コストを意識し資本収益性の維持・向上を図りPBR1倍以上の維持・向上を今後も目指していきます。NSG26では連結配当性向50%程度としており、2025年度は60.0%となる予定です。 e.目標とする経営指標当社グループは、NSG26において以下の指標を経営目標として設定しております。2年目となる2025年度の結果は下表のとおりとなります。引き続きこれらを重要指標とし、企業価値の向上に努めてまいります。※第三者検証前のCO2排出量を基とした数値。 (7)経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題①経営環境2025年度の世界経済は、米国の通商政策の不確実性や中国経済の低迷、またロシア・ウクライナ戦争の長期化に加え中東情勢の一層の緊迫化とホルムズ海峡をめぐる争いなど地政学リスクは日増しに高まっており、景気の先行きの不透明感がこれまで以上に大きくなっています。日本経済は雇用や所得環境の改善などにより緩やかな回復基調が続いたものの、継続的な物価上昇や幅広い業界での人手不足問題などに加え、原油及びその由来製品の価格高騰と安定調達への懸念が広がっており景気の先行きに影響する可能性があります。中長期的な視点では、ステンレス鋼線の汎用品に対する需要が頭打ちとなるニューノーマル経済のリスクシナリオを想定しつつも、サステナビリティ成長分野に対する高機能・独自製品の需要の増大を見込んでいます。地球環境保護や人口減少、デジタル社会の進展に向けたイノベーションなど、当社を巡る経営環境は「リスク」と「ビジネス機会」の両面を包含しています。②優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題今後につきましては、米国の通商政策や不動産不況が継続する中国経済の動向が世界経済に不確実性の高まりをもたらしています。また、緊迫化する中東情勢を背景とした原油及びその由来製品の価格高騰と安定調達への懸念は世界経済の大きな下振れリスクと認識しております。国内においても、継続する物価や人件費の上昇、人手不足問題などに加え、原油の調達不安・価格高騰がもたらす悪影響など、多くのリスクシナリオを認識しています。当社グループの主力製品であるステンレス鋼線は、中国や韓国のステンレス鋼線メーカーとの競争激化による収益低下などの懸念があり、同様に、金属繊維(ナスロン®)も化合繊維向けなどの一般汎用製品については競争が激しくなっております。このような経営環境を踏まえ、当社グループは2024年度より2027年3月期を最終年度とする『第16次中期経営計画(NSG26)』をスタートさせ、「サステナビリティ成長分野へ高機能・独自製品の開発・拡販と企業価値向上により持続的成長を図る」を中期スローガンとして掲げ、①サステナビリティ成長分野に向けた高機能・独自製品の開発深化、②生産基盤強化と生産性向上、③水素回収技術の深化、④ESG経営(資本コストや株価を意識した経営)を基本方針として企業価値向上に努めてまいります。NSG26の経営目標としては連結経常利益52億円、連結売上高経常利益率(ROS)10%以上、連結総資産経常利益率(ROA)10%以上などに加え、2030年度CO2排出量30%削減(2013年度対比)目標を掲げております。具体的には、ステンレス鋼線部門の販売面においては、再生可能エネルギー、医療、IоTなどのサステナビリティ成長分野に極細線、極細ばね用材、高強度ばね用材など当社グループの高機能・独自製品の拡販に努めてまいります。生産面においては、更なる細径化と高強度化が求められる極細線の開発や医療用途や半導体検査装置向けなどに成長が見込まれる極細ばね用材の増産、将来起こりうる労働力不足に対応した省人化・自動化、クラウド化やAIなどのIоT活用を含めた生産基盤強化と生産性向上を図ります。また、海外生産拠点であるTHAI SEISEN CO.,LTD.と一丸となった最適生産・販売体制を再構築してまいります。金属繊維部門においては、AIやデータセンター向けを中心に半導体需要が拡大しており、半導体製造装置向け超精密ガスフィルター(NASclean®)の安定供給を果たすとともに、更なる需要拡大に向けた生産体制の構築と新製品の開発・供給を行ってまいります。また、ナスロン®フィルターについては、海外への更なる拡販に向け耐素龍精密濾機(常熟)有限公司の活用を図ってまいります。水素ビジネスについては、MCH(メチルシクロヘキサン)やアンモニアからの水素回収技術をさらに深化させ、水素回収技術、貯蔵技術、分離精製技術を組合せた小型プラントの商用化に向けた取り組みを加速させていきます。ESG経営としては、省エネ投資などの排出抑制を含めたサプライチェーン排出量(Scope1+2+3)削減を推進し、2050年のカーボンニュートラルを目指します。また、資本コストや株価を意識した経営にも注力し、ステークホルダーとのコミュニケーション強化を図ります。働き方改革や人的資本経営への投資も積極的に行うとともにリスク管理やガバナンスの体制強化にも鋭意取り組んでまいります。また、当社の自助努力では吸収困難な労務費、エネルギー・副資材費、物流費などの製造コストの増加を販売価格へ転嫁するとともに、サプライチェーンの柔軟性確保や適正在庫の運用を図るなど、状況に応じた取り組みを展開いたします。以上の諸施策を確実に実行することにより、収益の一段の向上を図るとともに、事業のグローバル化推進や高度化・多様化する顧客ニーズへの対応、サステナブル社会への貢献を通じ、『さらなる企業価値の向上』にグループ一丸となって取り組んでまいります。
MD&A(経営者による分析)
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1)経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。 ①財政状態及び経営成績の状況2025年度の世界経済は、米国の通商政策の不確実性や中国経済の低迷、またロシア・ウクライナ戦争の長期化に加え中東情勢の一層の緊迫化とホルムズ海峡をめぐる争いなど地政学リスクは日増しに高まっており、景気の先行きの不透明感がこれまで以上に大きくなっています。日本経済は雇用や所得環境の改善などにより緩やかな回復基調が続いたものの、継続的な物価上昇や幅広い業界での人手不足問題などに加え、原油及びその由来製品の価格高騰と安定調達への懸念が広がっており景気の先行きに影響する可能性があります。このような事業環境の中で、当社及び連結子会社(以下「当社グループ」という。)は、2024年度より『第16次中期経営計画(NSG26)』(最終年度2027年3月期)をスタートし、①サステナビリティ成長分野に向けた高機能・独自製品の開発深化 ②生産基盤強化と生産性向上 ③水素回収技術の深化 ④ESG経営(資本コストや株価を意識した経営)を基本方針として企業価値向上に努めてまいりました。結果として通期の売上高は、466億1百万円(前期比0.3%減)となりました。損益については、金属繊維部門は堅調に推移しましたが、太陽光発電パネルの製造プロセスで使用されるステンレス極細線の需要が引き続き低迷したことから減益となりました。この結果、営業利益30億77百万円(同32.8%減)、経常利益32億41百万円(同29.3%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、中国の連結子会社解散に伴う特別損失を計上したことなどにより21億47百万円(同33.9%減)となりました。 セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。なお、セグメントごとの経営成績については、セグメント間の内部売上高又は振替高の相殺消去前の金額を記載しています。 [日本]金属繊維部門は超精密ガスフィルター及びナスロン®フィルターが堅調に推移しましたが、主力のステンレス鋼線部門は販売数量が微増に留まったことに加え、極細線の販売が好調であった前期と比べ大きく減少し、売上高は415億36百万円(前期比0.2%減)、セグメント利益は27億99百万円(同33.4%減)となりました。 [タイ]ステンレス鋼線の販売数量が減少し、現地通貨ベースでは減収減益となりましたが、前期比で円安・現地通貨高が進んだことから、売上高は56億99百万円(前期比1.8%増)、セグメント利益は1億25百万円(前期比17.1%減)となりました。 [中国・韓国]ナスロン®フィルターの需要が低調に推移し、売上高は16億57百万円(前期比3.5%減)、セグメント利益は2億4百万円(同29.8%減)となりました。なお、中国の大同不銹鋼(大連)有限公司は2025年11月19日付をもって解散いたしております。 当連結会計年度末における総資産は567億47百万円となり、前連結会計年度末に比べ8億62百万円増加しました。流動資産は現金及び預金や棚卸資産の減少などにより、前連結会計年度末に比べ7億76百万円減少しました。固定資産は建設仮勘定の増加などにより、16億39百万円増加しました。負債は132億67百万円となり、前連結会計年度末に比べ7億12百万円減少しました。流動負債は未払法人税等の減少などにより、前連結会計年度末に比べ5億27百万円減少しました。固定負債は1億85百万円減少しました。純資産は434億80百万円となり、前連結会計年度末に比べ15億75百万円増加しました。 ②キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物は159億9百万円となり、前連結会計年度末に比べ5億70百万円減少しました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは36億17百万円の収入となり、前期に比べ11億1百万円減少しました。これは税金等調整前当期純利益及び仕入債務の減少などによるものです。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは34億円の支出となり、前期に比べ20億59百万円支出が増加しました。これは有形固定資産の取得及び投資有価証券の取得による支出が増加したことなどによるものです。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは10億45百万円の支出となり、前期に比べ6億60百万円支出が減少しました。これは長期借入れによる収入が増加したことなどによるものです。 (キャッシュ・フロー指標)なお、キャッシュ・フロー指標のトレンドは以下のとおりです。 2023年3月期2024年3月期2025年3月期2026年3月期自己資本比率 (%) 68.5 72.8 73.7 75.4時価ベースの自己資本比率(%) 52.0 81.1 70.0 68.0キャッシュ・フロー対有利子負債比率 0.4 0.1 0.1 0.2インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) 534.6 1,099.5 1,133.6 1,015.4 ※ 自己資本比率:自己資本/総資産 時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産 キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い (注)1.各指標はいずれも連結ベースの財務数値により計算しております。 2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数により計算しております。 3.営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。 4.有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を払っている負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。 ③生産、受注及び販売の実績a.生産実績当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。セグメントの名称当連結会計年度(自 2025年4月1日至 2026年3月31日)前年同期比(%)日 本(百万円)38,211△4.1タ イ(百万円)5,5921.1中国・韓国(百万円)1,590△2.0合計(百万円)45,394△3.4(注)金額は平均販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。 b.受注実績当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。セグメントの名称当連結会計年度(自 2025年4月1日 至 2026年3月31日)受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高(百万円)前年同期比(%)日 本41,9940.26,15512.2タ イ4,0005.671910.2中国・韓国1,226△6.5163△41.2合計47,2220.57,0399.7(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。 c.販売実績当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。セグメントの名称当連結会計年度(自 2025年4月1日至 2026年3月31日)前年同期比(%)日 本(百万円)41,536△0.2タ イ(百万円)5,6991.8中国・韓国(百万円)1,657△3.5 消 去(百万円)△2,2924.2合計(百万円)46,601△0.3(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。 相手先前連結会計年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)当連結会計年度(自 2025年4月1日至 2026年3月31日) 金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)大同興業株式会社10,92623.410,90423.4株式会社メタルワン5,73112.33,7108.0 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書の提出日現在において判断したものであります。 ①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成に当たり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりです。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。なお、見積り及び判断・評価につきましては、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。 ②財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容a.財政状態の分析当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ8億62百万円増加し567億47百万円となりました。負債については、前連結会計年度末に比べ7億12百万円減少し132億67百万円となりました。当連結会計年度の売上高が減収(前連結会計年度比1億47百万円減)となり、売上債権(同比39百万円増)や買入債務(同比14百万円減)の増減はあったものの、棚卸資産(同比4億2百万円減)の減少により、運転資金は3億48百万円減少しました。また、減価償却費を上回る設備投資を実施したこともあり固定資産は16億39百万円増加しました。純資産は、主に利益剰余金が前連結会計年度末に比べ7億86百万円増加し434億80百万円となりました。結果として、運転資金の減少による資金増加要因はあったものの、設備投資資金の増加により、現金及び預金の残高は前連結会計年度末に比べ2億97百万円減少しました。利益の積み上がりによって自己資本比率は75.4%(前期比1.6ポイント増)に高まり、経常利益が減益(前連結会計年度比13億43百万円減)となったためROA(経常利益/総資産)は5.8%(前期比2.6ポイント減)となりました。 b.経営成績の分析(売上高)当連結会計年度における売上高は466億1百万円(前期比0.3%減)となり、前連結会計年度に比べ1億47百万円減少しました。高機能・独自製品が売上高全体に占めるシェアは66.1%(前期比0.3ポイント減)となりました。金属繊維部門は好調に推移しましたが、ステンレス極細線の販売が大きく減少したことが主な要因です。 事業部門別の売上状況は、次のとおりとなります。 [ステンレス鋼線]ステンレス鋼線においては、国内の住宅着工件数が低調に推移したことなどにより建築・土木関連向け鋲螺用材が前期比減少となりましたが、高機能・独自製品のうち日用品や電子部品向けが堅調に推移し、2025年度通期の販売数量は月当たり2,914トン(前期比2.5%増)となりました。米国関税影響については、一部アイテムにて数量の増減があったものの影響は限定的となりました。また、太陽光発電パネルの製造プロセスで使用されるスクリーン印刷向け極細線は、中国での太陽光パネルの在庫調整の影響が継続したことに加え、スクリーン印刷用メッシュの素材がステンレス以外の金属に置き換わる動きが見られたことなどにより大幅な販売減となりました。LMEニッケル価格については、今年度に入り緩やかな下落基調が継続しましたが2025年末に急騰し一時8ドル台半ばまで値を上げました。2025年4~6月平均価格はポンドあたり6.88ドル、7~9月は同6.81ドル、10~12月は同6.75ドル、2026年1~3月は同7.87ドルとなりました。結果として、通期でのステンレス鋼線部門全体の売上高は377億19百万円(同3.0%減)となりました。また、海外現地法人であるTHAI SEISEN CO., LTD.は増収となりました。なお、大同不銹鋼(大連)有限公司につきましては、中国経済が低迷する中、同社が製造・販売する自動車関連向けステンレス鋼線の需要が減少するとともに、為替環境の悪化や日系企業の中国からの撤退増加など同社を取り巻く経営環境の変化を踏まえ、同社を解散しステンレス鋼線事業を再編することが、当社グループの企業価値向上につながるものと判断し、2025年11月19日付にて同社を解散いたしております。解散に伴い、従業員への経済補償金支払など特別損失2億75百万円を計上いたしております。 [金属繊維(ナスロン®)]金属繊維においては、半導体関連業界向け超精密ガスフィルター(NASclean®)について、AIやデータセンター向け半導体需要の高まりを背景に、半導体製造装置メーカー向けを中心に堅調に推移し、通期での売上高は50億12百万円(前期比22.3%増)となりました。ナスロン®フィルターについては、ポリエステル繊維やレーヨン繊維向けの中国での販売が減少したものの、ポリエステルフィルム用途で販売が低迷した前期に比べ増加となり、また炭素繊維関連が海外向け大型案件を中心に増加したことなどにより、通期における売上高は38億69百万円(同2.8%増)となりました。結果として、通期での金属繊維部門全体の売上高は88億81百万円(同13.0%増)となりました。なお、海外現地法人の耐素龍精密濾機(常熟)有限公司は減収となりました。 (経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益)当連結会計年度における経常利益は32億41百万円(前期比29.3%減)となりました。ROSは7.0%となり前期比2.8ポイント減少しました。中国の連結子会社である大同不銹鋼(大連)有限公司の解散に伴い、従業員への経済補償金支払など特別損失2億75百万円を計上したことなどから、親会社株主に帰属する当期純利益は21億47百万円(同33.9%減)となり、ROEは5.1%(同3.0ポイント減)となりました。経常利益が前期比減益となった主な要因は、太陽光発電パネルなどの製造プロセスで使用される極細線の販売が、好調だった前期に比べ大きく減少したことなどです。 ③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報a.キャッシュ・フローの分析キャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。 b.資金需要成長投資への支出については、「サステナビリティ成長分野への高機能・独自製品の開発・拡販による持続的成長」を実現するために、主力の製造拠点である国内工場及びタイ、中国の在外子会社における生産効率向上や増産を目的とした設備投資を図ってまいります。また、お客様のニーズに対応した新製品開発と新市場創出に向け研究開発にも注力してまいります。将来の成長に向けた戦略的な資金需要に対しては、財務健全性の維持と資本コストを意識しつつ、積極的に対応していくことを方針としています。運転資金としては、当社グループ製品製造のための材料及び部品の購入のほか、製造費用や営業費用が必要となります。事業運営上の必要資金に加え、大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧に備えるために、後述の退職給付債務の支払い原資の控除後、月商3ヵ月分の現金及び現金同等物の流動性確保を目途としています。株主還元への支出については、連結業績や財政状態などを総合的に勘案し、連結配当性向50%程度を目途に配当を行うことを基本としています。なお、当社グループでは退職一時金制度のみを採用しており、退職給付債務39億76百万円(2026年3月末現在)の支払い原資を、現金及び現金同等物にて実質的に保全しています。 c.資金調達当社グループの運転資金及び投資資金は、原則として営業活動により獲得したキャッシュ・フローにより充当することを基本方針としています。ただし、有事の場合など、必要に応じ銀行借入による資金調達ができるように、取引金融機関との取引関係の維持強化に配慮した財務政策に努めています。
事業リスク
- 自然災害と気候変動リスク大規模な自然災害(地震、気象災害など)や新たな感染症の発生・拡大により、生産設備の破損、サプライチェーンの寸断、操業停止、従業員の健康被害、経済活動の自粛などが生じる可能性があります。これにより、製品供給の遅延や損益への悪影響が懸念されます。
- 外部環境変化による影響自動車、エネルギー、IT・半導体などの先端技術分野への依存度が高いため、これらの業界の需給環境、投資計画、通商政策、地政学リスク、為替変動などが受注環境に影響を与える可能性があります。特に、半導体関連の禁輸・制裁問題は特定製品の販売減につながる恐れがあります。
- 情報セキュリティリスク製造ノウハウ、顧客情報、設計図などの営業秘密や個人データの流出リスクがあります。サイバー攻撃や不正アクセスにより情報が漏洩した場合、顧客からの信用失墜、製品競争力の低下、損害賠償責任発生など、事業基盤を脅かす可能性があります。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「事業等のリスク」の全文を見る(年度切替)
3【事業等のリスク】 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主要なリスク及びその対応状況について、以下に記載いたします。 当社グループでは、こうしたリスクの可能性を認識した上で、発生を回避し、または、発生した場合の影響を抑制する観点から、現状想定し得るリスクを洗い出し評価した上で、事業運営上のリスクについては経営会議にて、また、コンプライアンス上のリスクについてはコンプライアンス・リスクマネジメント委員会において、サステナビリティに関するリスクについてはサステナビリティ委員会においても、それぞれ優先順位に応じて具体的な対策を講じ、定期的にその妥当性について協議・検討を図っております。 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書の提出日現在において当社グループが判断したものであります。(1)自然災害などの不可抗力や外部からの攻撃によるリスク 激甚化する気象災害など気候変動リスクがクローズアップされ、脱炭素社会の実現に向けた取り組みが世界的に加速しています。炭素税導入による調達・操業コストの増加や内燃機関車用部品材料の需要減少などのリスクへの対策の準備が必要となっています。また、当社グループの提供する素材は、お客様の製品を通じてグローバルに提供されることとなるため、世界各地における環境関連法令の適用に対応することが求められます。地球温暖化防止など、環境規制は厳格化の傾向にあり、ひいては当社グループの製造コストを増加させるリスクがあると認識しております。 新たな感染症の発生・拡大によって、再度、経済活動の自粛を求められることが想定されます。国内外の工場内での感染発生による製造ライン停止やサプライチェーンの寸断によって、お客様に製品が供給できないリスクを認識しています。また、従業員のほか、お客様や協力会社などの生命・健康を脅かす虞もあります。さらに、工場休業に伴う補償や操業度悪化が損益や資金繰りに与える影響も生じます。 当社グループは、気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、健康経営、公正な取引、事業継続マネジメント(BCM)などサステナビリティ課題を重要な経営課題であると認識し、これら課題への取り組みを組織的に推進するため、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置し、サステナビリティ担当役員を選任しております。同委員会の場でサステナビリティに関する諸課題への取り組み報告や議論を継続的に行うガバナンス体制を整備しました。特に、地球環境の保護に対する事業活動の取り組みとしては、『中期経営計画(NSG26)』において事業活動に伴うCO2排出削減の目標を設定し持続可能な社会の実現を目指してまいります。また、当社グループは、エネルギー効率の向上、各種のフィルター機能の提供や水素社会の基盤技術の開発など、高機能・独自製品を通じてサステナブル社会への貢献を図ってまいります。また、「日本精線グループ人権方針」や「日本精線グループ贈収賄防止方針」を制定し社内教育やモニタリングなどを継続的に実施し、当社グループのみならずサプライチェーンを通じてサステナビリティ課題に取り組んでいます。 南海トラフの巨大地震や当社事業拠点周辺の断層による直下型地震リスクがあり、海外拠点においても当該地毎に大規模災害等のリスクが存在しています。当社グループの生産拠点において大規模災害やテロなどが発生した場合には、生産設備の破損やサプライチェーンの機能停止に伴い操業停止や資産価値の減損を強いられる虞があります。当社グループでは、人命最優先を基本方針としています。安否確認システムやマニュアル整備などの事業継続計画(BCP)については、コロナ禍を教訓に見直しを図るとともに、万が一の際に事業継続計画書が実効的に機能するように日頃からの安全在庫の管理・運用を徹底するとともに、復旧のボトルネックと必要な事前対策をリストアップし、耐震補強・浸水対策や受配電設備等の整備、ITシステムの運用見直しを計画的に推進してまいります。また、地震発生などの際に、誤操作・誤動作による障害が発生した場合にも制御できるように設備のフェイルセーフ化も進めています。事業継続マネジメント(BCM)の取り組み方針・施策の決定や拠点の活動確認などについては、年2回経営会議に報告する体制を整備しました。 さらに、当社グループでは、製造ノウハウや顧客情報、各種設計図など生産・営業・開発に関して多くの営業的な秘密を保有しています。また、従業員やお客様に関する個人データを保有していますが、一般消費者との取引がないため、データ量は限定的となります。コンピュータウィルスや不正アクセスなど社外からのサーバー攻撃によって、情報が流出し、第三者がこれを不正に取得・使用するような事態が生じると、お客様からの信用力や製品競争力など、当社グループの事業基盤を脅かす虞が認められます。さらに損害賠償責任を負う可能性も含め財務上のリスクもあります。こうしたリスクを抑制するために、従業員へのセキュリティポリシーの徹底や、常に最新のセキュリティ技術を用いた未然防止策を図るとともに、日々のセキュリティログのチェックで被害拡大回避に努めております。 (2)外部環境変化に伴うリスク 当社グループの付加価値の源泉である高機能・独自製品については、その一部のアイテムの販売先が、自動車、エネルギー、IT・半導体、化学製品など先端技術分野の産業・業種に依存する構造となっています。そのため、その業界に属するお客様の需給環境や投資計画、流通在庫の多寡によって、当社グループの受注環境が変動するリスクがあります。 また、グローバル化しているお客様においては、その販売先のカントリーリスクが間接的に当社グループの受注環境に影響を与えています。一方、米国の相互関税をはじめとする通商政策が世界経済に与える不確実性、紛争などの地政学リスクや所謂チャイナリスク、原油及びその由来製品の価格高騰や調達懸念などが顕在化すると、当社グループの受注減少につながると認識しています。例えば、半導体関連の禁輸・制裁問題が超精密ガスフィルター(NASclean®)の販売減を引き起こす虞なども想定しています。同様に、為替水準の変動は、お客様の製品・サービスの価格競争力を押し下げる効果があるため、為替リスクも間接的に当社の受注環境に影響いたします。なお、当社グループにおける外貨建て取引は僅少であり直接的な為替リスクは大きくありません。 このような外部環境の変化による受注・販売の減少リスクに対しては、多能工化などフレキシブルな生産体制で固定費抑制を図るほか、多様な業種・業界のお客様に提供できる製品ポートフォリオの充実によって受注変動リスクの分散を図っています。 一方、当社グループの材料調達については、主力のステンレス鋼線部門の原材料は主成分であるニッケルやクロムなどのレアメタル相場の影響を受けます。原産国のカントリーリスクの発現などによりレアメタルの需給がひっ迫すると国際市況価格が高騰し当社の調達コストも増加しますが、為替変動リスクも含めた原材料の価格変動に連動してステンレス鋼線の販売価格を変更したり、契約に基づくサーチャージ制度により、原材料変動リスクの影響は限定的となります。ただし、ニッケル価格が極端に高騰すると、お客様が安価な代替品へ移行するリスクを認識しています。同様に、異業種企業や技術革新等により、当社グループのステンレス鋼線や金属繊維製品を代替するような素材や構造などが開発されるリスクもあります。当社グループでは、市場調査や技術交流会・展示会などを通じて、お客様やマーケットのニーズの変化を的確に捕捉し、タイムリーな新製品の市場投入や品質改善活動に努めています。また、材料調達の大部分を一部の国内大手メーカーに依存しています。主要材料については調達できないというリスクは限定的ですが、メーカー指定の独自鋼種の材料調達に関しては、当該メーカーの生産停止などにより影響を受ける虞があります。 (3)安全・健康、品質やヒューマンエラーなどによるリスク 当社グループにおいては、1トンに及ぶ重量物を取り扱うことや伸線機などの回転する危険な設備があることのほか、健康被害をもたらす特定化学物質の取扱い工程があるため、従業員の安全と健康を脅かす労働災害のリスクがあります。当社グループでは、安全と健康が幸せの原点と捉え、作業者による誤操作・誤動作による障害が発生した場合にも制御できるように設備のフェイルセーフ化へ継続的に投資するとともに、人間ドックの費用補助や健康維持向上活動に積極的な支援を行い、働きやすい職場環境づくりに努めています。当社は7年連続で「健康経営優良法人」に認定されるとともに、上位500法人である「ホワイト500」にも2年連続で認定されました。今後も継続して健康経営に取り組みます。 また、当社製品は、半導体製造装置・医療・自動車関連などの素材として利用されています。そのため、当社製品の欠陥に起因して重大事故が起きるなど、ユーザーの生命・健康に害を及ぼすリスクがあり、当社グループには損害賠償を求められる虞を認識しています。損害保険加入などの対策のほか、異材や疵などの不適合製品の流出防止に向け、品質関連の教育を徹底するとともに、誤入力や識別異常の防止など検査工程のシステム化投資を継続的に実施しています。また、検査データの不正や改ざんによって、お客様や社会からの信頼を失墜し、当社の事業基盤を失うリスクについても重く捉えています。当社グループでは、検査データ不正防止に向け、測定データの自動取込みシステムを導入するとともに、規格外や仕様登録のない材料や製品を取り扱うことのできない仕組みを運用しています。 そのほか、(1)自然災害などの不可抗力や外部からの攻撃によるリスクで記述したとおり、当社グループでは生産、営業、開発などに関して多くの営業的な秘密や個人データを保有しています。過失などによって情報漏洩するリスクがあり、その影響は不正アクセスによる漏洩と同様と認識しています。当社グループでは、機密情報へのアクセスを制限したり、ソフトウェアなどで外部へのデータ持ち出しを防止するほか、定期的にIT監査を通じて牽制を図っています。また、外部メールの運用ルールや重要情報の公開時の手続きの明確化にも努めています。