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シスメックス(6869)は何で稼いでいるか — 事業の柱と依存度

電気機器 電機・精密

事業の概要

  • 検体検査機器と試薬の開発・製造・販売: シスメックスは、病院などで使われる血液や尿などの検体を分析する機器や、検査に必要な試薬を開発・製造し、世界中で販売しています。これにより、病気の診断や治療方針の決定に貢献しています。
  • ソリューション提供: 単に製品を売るだけでなく、ソフトウェアや機器のメンテナンス、学術的なサポートまで含めた幅広いサービスを提供しています。医療機関が抱える様々な課題を解決するための総合的なソリューションを提供することで、顧客との関係を深め、安定的な収益源を確保しています。
  • グローバル展開: 世界190以上の国や地域に製品・サービスを供給しており、売上高の8割以上を海外が占めるグローバル企業です。本社統括、米州統括、EMEA統括、中国統括、AP統括といった地域ごとの統括会社を中心に事業を展開し、各地域のニーズに合わせた製品・サービスを提供しています。
出典: FY2026 有価証券報告書(AI要約)
セグメント構成
  • 本社統括(日本国内の開発・製造・販売・サービス): シスメックスグループの中核であり、主に製品の開発、製造、そして日本国内での販売とサービスを担当しています。一部の製品については、本社統括に含まれる連結子会社が国内外の販売も手掛けており、グループ全体の技術と生産の基盤を支えています。
  • 米州・EMEA・中国・AP統括(各地域での製造・販売): 米州(アメリカ大陸)、EMEA(欧州・中東・アフリカ)、中国、AP(アジア・パシフィック)の各地域において、それぞれの統括会社が中心となり、製品の製造や販売、サービスを行っています。各地域の市場特性やニーズに合わせた事業展開を行うことで、グローバルな収益を上げています。
  • グローバルな事業展開による収益構造: シスメックスグループは、これらの地域別セグメントを通じて、世界中で検体検査機器や試薬、関連サービスを提供しています。これにより、特定の地域に依存しない安定した収益構造を構築し、グローバル市場での競争力を維持・強化しています。
有価証券報告書「事業の内容」の全文を見る(年度切替)
FY2026|576 文字
3【事業の内容】 当社グループは、当社と連結子会社80社及び関連会社等2社で構成されており、主として医療分野における検体検査機器及び検体検査試薬の開発、製造、販売、サービス並びに輸出入を行っております。 また、検体検査機器、検体検査試薬に加え、ソフトウェア、検体検査機器のメンテナンスや、学術サポート等幅広い製品とサービスを融合し、医療機関の多様な課題を解決するソリューションを提案しております。 当社グループは「本社統括」「米州統括」「EMEA統括」「中国統括」「AP統括」の各統括会社を中心としたセグメントで事業展開しております。「本社統括」は当社が統括会社として製品の開発、製造、国内における販売及びサービスを担当し、一部の製品の開発、製造、国内及び海外における販売を「本社統括」に含まれる連結子会社が担当しております。また、「米州統括」「EMEA統括」「中国統括」「AP統括」は米州、EMEA(欧州・中東・アフリカ)、中国及びアジア・パシフィックの各地域において、製品の製造、販売等を各地域の統括会社を中心として連結子会社が担当しております。これらは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 5.セグメント情報」に掲げるセグメントの区分と同一であります。 当社グループの事業系統図は、以下のとおりであります。

事業の優位性(モート)

事業の質(有価証券報告書から抽出)
数字に出ない事業の性質を、同じ物差しで全銘柄そろえています。FY2025時点の記載が出典です。
価格決定力値上げを通せるか。強いほどインフレ耐性が高い 中程度
医療機関の多様な課題を解決するソリューションを提供し、高い海外売上比率を維持。
参入障壁新規参入を阻む要因の種類 技術
ヘマトロジー等の既存領域に加え、個別化医療・検査の精緻化、新規領域への技術開発。
景気敏感度業績が景気循環にどれだけ振られるか ディフェンシブ
設備投資の性質稼いだ現金がどれだけ設備維持に消えるか 混合
規制依存規制は障壁にも足枷にもなる 高い
会社が挙げる主要リスク:地政学に関わるリスク / 経済動向に関わるリスク / 為替の変動に関わるリスク
同じ条件で他の銘柄を探す → 定性スクリーニング(価格決定力・参入障壁・景気敏感度などで絞り込めます)
モート総合 12 / 25 5類型それぞれの強度と、そう判定した根拠
無形資産★★★★☆
根拠:強いブランド・特許・許認可

シスメックスは、体外診断用医薬品・医療用機器分野で高い技術力と研究開発力を有する。特に、血液検査分野における自動分析装置や試薬で世界トップクラスのシェアを誇り、長年の研究開発で培われたノウハウと特許が参入障壁となっている。グローバルな販売・サポート網も無形資産として機能している。

スイッチングコスト★★★★☆
根拠:強い乗り換えの手間・コスト

医療機関は、シスメックスの自動分析装置や関連試薬を導入すると、オペレーションの標準化、データ管理システムとの連携、オペレーターの習熟度などから、他社製品への切り替えは困難。切り替えに伴うコストやリスクが大きく、顧客のスイッチング・コストは高い。

ネットワーク効果☆☆☆☆☆
根拠:弱い利用者増が価値を生む

シスメックスのビジネスモデルは、直接的なネットワーク効果(ユーザーが増えるほど価値が増す)よりも、技術力や製品性能、顧客サポートによる優位性が中心であり、ネットワーク効果は限定的である。

コスト優位★☆☆☆☆
根拠:弱い同じ物を安く作れる

高度な製造技術と品質管理が求められるため、一般的な電気機器メーカーのような規模の経済による圧倒的なコスト優位性は築きにくい。ただし、長年の経験による製造効率の向上はある程度見られる。

規模の経済★★★☆☆
根拠:中程度規模が参入障壁になる

体外診断用医薬品・医療用機器市場、特に血液検査分野において、シスメックスはグローバルで高いシェアを有しており、一定の効率規模の経済が働いている。しかし、市場全体としては複数の大手企業が競合しており、完全な寡占状態ではない。

  • グローバルな事業基盤と安定供給体制: 世界190以上の国や地域に製品・サービスを供給する広範な顧客基盤と、診断薬の現地生産化を推進する安定供給体制が強みです。これにより、地政学リスクや経済情勢の変化にも柔軟に対応し、顧客からの信頼性を高めています。
  • 医療DXとデータ活用による付加価値: 世界中に広がる顧客基盤から得られる豊富な検査データとAI解析技術を組み合わせ、独自の医療DXソリューションを提供しています。検査室運営の効率化や公衆衛生支援など、医療課題の改善と経済性の両立に貢献する新たな価値を創出しています。
  • 個別化医療・予防への貢献: 創業以来のダイアグノスティクス事業で培った技術を活かし、一人ひとりに最適な治療や予防を提供する「個別化診断」や「個別化予防」に取り組んでいます。これにより、医療の質の向上と、人々の健康寿命延伸という社会的課題の解決に貢献しています。
出典: FY2026 有価証券報告書(AI要約)

経営戦略

  • 「より良いヘルスケアジャーニーを、ともに。」の実現: 人々が一生涯を通じて経験するヘルスケアのプロセスを「ヘルスケアジャーニー」と捉え、一人ひとりに最適な医療・サービスを提供することで、生涯にわたり健康な状態が維持できる社会の実現を目指しています。これは、世界の人々のQOL向上という重要な社会的課題の解決に貢献するものです。
  • ダイアグノスティクス事業の強化と新規領域への挑戦: 主力の検体検査事業(ダイアグノスティクス)をさらに強化し、高い成長と収益性を追求するとともに、イノベーション創出や新興国市場への注力、個別化診断・予防、予後モニタリングに取り組んでいます。さらに、手術支援ロボットや再生細胞医療といった新たな治療領域への挑戦も行い、事業領域を拡大することで成長を目指しています。
  • 医療DXとデータ活用による価値創出: 世界190カ国以上に広がる顧客基盤から得られる豊富な検査データとAI解析技術を組み合わせ、シスメックス独自の医療DXソリューションを提供します。検査結果に基づく適切な診療へのナビゲートや、AIを活用した検査室運営支援を通じて、医療課題の改善と医療経済性の両立に貢献する新たな価値を創出することを目指しています。
出典: FY2026 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「経営方針・対処すべき課題・MD&A」の全文を見る(年度切替)
経営方針・経営戦略
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。 (1) 会社の経営の基本方針 当社グループは、創業以来の経営基本方針である「3つの安心」を再定義したグループ企業理念「Sysmex Way」及び「Shared Values」を定め、グループ全体で実践していく事でステークホルダーからの高い信頼の獲得と更なる飛躍を目指します。 (2) 長期経営戦略 医療を取り巻く環境は、人口動態の変化や生活環境の多様化並びに技術革新の進展を背景として今後一層大きく変化することが予測されております。特に医療資源の有効活用の観点からは、医療DXの推進に加え、医療機能の分散化、予防医療や個人によるセルフメディケーションの重要性がますます高まると見込まれます。また、医療の高度化の進展に伴い、新たな治療法の実用化や医療現場におけるロボット技術の活用等、医療の質及び運営効率の向上を実現する取り組みへの期待が高まっております。 このような中、当社グループではグループ企業理念「Sysmex Way」のもと、2033年度を最終年度とする以下長期ビジョンを含む長期経営戦略2033(VA33)を策定し、推進しております。 <長期ビジョン> 「より良いヘルスケアジャーニーを、ともに。」 当社グループは、健康で長生きしたいという人々の普遍的な願いに寄り添い、一人ひとりの身体状態を正確に捉え、個々に最適な医療・サービスが提供されることにより、生涯にわたり健康な状態が維持できる社会の実現を目指します。 「ヘルスケアジャーニー」は当社グループが新たに提唱する概念であります。人が一生の中(ライフステージ)で、自身のヘルスケアについて経験する各種イベントと、医療機関等を含む対応のプロセスを「旅路」として捉えるものであります。「より良いヘルスケアジャーニーの実現」は世界の人々のQOL向上という重要な社会的課題の一つであります。当社グループは、一人ひとりのヘルスケアジャーニーがより良いものになるよう、様々な協創を通じて新たな価値を提供し、社会にとって不可欠な存在として成長していくことを目指します。 当社が、創業以来取り組んでいるダイアグノスティクス事業はヘルスケアジャーニーの中で重要な役割を担うものであります。高い成長と収益性を実現すると共に、更に強化することによる「イノベーションの創出」や新たな価値提供を目指す「新興国市場へのフォーカス」、一人ひとりの最適な治療に不可欠な「個別化診断」、健常・未病・予防のための「個別化予防」、慢性疾患等を持ちながらも日常生活を続けるための「予後モニタリング」に取り組んでまいります。 またダイアグノスティクス事業とは異なる領域である手術支援ロボットや再生細胞医療の治療領域への挑戦等、価値創出できる領域を選択・追加し、当社の成長につなげてまいります。(3) 経営環境の認識 現在、当社事業及び経営を取り巻く環境は、特に地政学(地域紛争、右傾化)、経済安全保障(トランプ関税、報復合戦、資源の独占等)のリスクが世界的に拡大する中で先行きを見通すことが一層困難となっております。足元では、中東情勢の緊迫化に伴うエネルギー価格の変動や供給網の分断リスクに加え、主要国における通商政策の動向、更には金融・資本市場の変動等、不確実性の高い状況が継続しており、引き続き景気の下振れリスクに十分留意する必要があると見込まれます。 医療環境におきましては、引き続き新興国の経済成長や世界的な高齢化に伴う医療需要の拡大が継続すると見込まれております。特に、不足している医療従事者の安全・生産性向上、医療経済性の改善、医療アクセスの向上といった医療の質・サービス向上への期待は今後も高まると想定しております。加えて、人工知能(以下、AI)の普及をはじめ医療分野のDXは加速し、ロボット技術の実装・用途拡大も進展する予測であり、更なる成長機会の創出が期待されております。 (4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 当社グループでは、長期ビジョンの実現を目指し、2026年4月より新たな中期経営計画 (2027年3月期から2029年3月期まで)をスタートさせました。今後3年間で取り組むべき重点アクションを設定し、具体的施策の実行を推進しております。本中期経営計画では、当社の強みを確かな成長機会とすべく、以下4つのテーマに優先的に取り組んでまいります。 ① ダイアグノスティクス事業の競争力強化 主力のヘマトロジー分野をはじめとする各領域にてAI等の最新技術を融合させた新製品をグローバル市場へ順次投入し、診断価値の深化による競争優位性を確立いたします。また、高い成長が見込まれる新興国市場では、現地の医療ニーズに適した製品の提供と安定供給体制の強化を推進し、持続的な高成長を実現してまいります。② ダイアグノスティクス事業の強みを活かした医療DXとデータ活用の推進 世界190カ国以上に広がる顧客基盤に基づく豊富な検査データとAI解析技術を組み合わせ、シスメックス独自の医療DXソリューションを提供していきます。検査結果に基づく適切な診療へのナビゲートに加え、AIを活用した検査室運営支援を通じた業務効率化の推進、更には公衆衛生支援等、医療課題の改善と医療経済性の両立に寄与する新たな価値創出に取り組んでまいります。③ バリューチェーン改革による収益性向上 グループ全体の収益性及び資本効率の改善を図るため、特に安定的な収益源である診断薬においてバリューチェーン全体での変革を実行いたします。④ 財務・資本戦略の再設計 資本効率の向上を図り、ROE 12.0%(2028年度)の達成を目標といたします。有利子負債の活用による資本構成の最適化を検討すると共に、配当性向40%目途の累進配当及び機動的な自己株式取得により、株主還元を拡充いたします。 これらに加えて、地球環境の持続可能性が喫緊の課題となっている中、長期的な環境マネジメントの指針として「シスメックス・エコビジョン2033」を策定しており、製品ライフサイクルにおけるCO2排出量や水消費量の削減、環境に配慮したグリーン調達等を継続して推進いたします。このように製品・サービスの提供を通じた医療課題解決に取り組むと共に、環境への配慮や魅力ある職場の実現等、優先的に取り組むべき課題(マテリアリティ)をグループ全体で推進し、多様なステークホルダーの皆様へ安心をお届けすると共に、サステナビリティ経営の実現を目指します。 (5) 目標とする経営指標 新たな中期経営計画では、2029年3月期を最終年度として、連結売上高600,000百万円、連結営業利益100,000百万円を達成することを目指します。 その初年度に当たる2027年3月期の連結業績予想につきましては、製品ラインアップの拡充や販売・サービス体制の強化等により、売上・利益共に伸張することを想定しており、売上高535,000百万円、営業利益58,000百万円を予想しております。(注)2027年3月期の算定にあたりましては、通期の為替レートを対米ドル155.0円、対ユーロ180.0円、対中国元22.0円で想定しております。 なお、上記予想は、現時点で入手している情報に基づき算定したものであり、様々な要因により変動する可能性があります。
対処すべき課題
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。 (1) 会社の経営の基本方針 当社グループは、創業以来の経営基本方針である「3つの安心」を再定義したグループ企業理念「Sysmex Way」及び「Shared Values」を定め、グループ全体で実践していく事でステークホルダーからの高い信頼の獲得と更なる飛躍を目指します。 (2) 長期経営戦略 医療を取り巻く環境は、人口動態の変化や生活環境の多様化並びに技術革新の進展を背景として今後一層大きく変化することが予測されております。特に医療資源の有効活用の観点からは、医療DXの推進に加え、医療機能の分散化、予防医療や個人によるセルフメディケーションの重要性がますます高まると見込まれます。また、医療の高度化の進展に伴い、新たな治療法の実用化や医療現場におけるロボット技術の活用等、医療の質及び運営効率の向上を実現する取り組みへの期待が高まっております。 このような中、当社グループではグループ企業理念「Sysmex Way」のもと、2033年度を最終年度とする以下長期ビジョンを含む長期経営戦略2033(VA33)を策定し、推進しております。 <長期ビジョン> 「より良いヘルスケアジャーニーを、ともに。」 当社グループは、健康で長生きしたいという人々の普遍的な願いに寄り添い、一人ひとりの身体状態を正確に捉え、個々に最適な医療・サービスが提供されることにより、生涯にわたり健康な状態が維持できる社会の実現を目指します。 「ヘルスケアジャーニー」は当社グループが新たに提唱する概念であります。人が一生の中(ライフステージ)で、自身のヘルスケアについて経験する各種イベントと、医療機関等を含む対応のプロセスを「旅路」として捉えるものであります。「より良いヘルスケアジャーニーの実現」は世界の人々のQOL向上という重要な社会的課題の一つであります。当社グループは、一人ひとりのヘルスケアジャーニーがより良いものになるよう、様々な協創を通じて新たな価値を提供し、社会にとって不可欠な存在として成長していくことを目指します。 当社が、創業以来取り組んでいるダイアグノスティクス事業はヘルスケアジャーニーの中で重要な役割を担うものであります。高い成長と収益性を実現すると共に、更に強化することによる「イノベーションの創出」や新たな価値提供を目指す「新興国市場へのフォーカス」、一人ひとりの最適な治療に不可欠な「個別化診断」、健常・未病・予防のための「個別化予防」、慢性疾患等を持ちながらも日常生活を続けるための「予後モニタリング」に取り組んでまいります。 またダイアグノスティクス事業とは異なる領域である手術支援ロボットや再生細胞医療の治療領域への挑戦等、価値創出できる領域を選択・追加し、当社の成長につなげてまいります。(3) 経営環境の認識 現在、当社事業及び経営を取り巻く環境は、特に地政学(地域紛争、右傾化)、経済安全保障(トランプ関税、報復合戦、資源の独占等)のリスクが世界的に拡大する中で先行きを見通すことが一層困難となっております。足元では、中東情勢の緊迫化に伴うエネルギー価格の変動や供給網の分断リスクに加え、主要国における通商政策の動向、更には金融・資本市場の変動等、不確実性の高い状況が継続しており、引き続き景気の下振れリスクに十分留意する必要があると見込まれます。 医療環境におきましては、引き続き新興国の経済成長や世界的な高齢化に伴う医療需要の拡大が継続すると見込まれております。特に、不足している医療従事者の安全・生産性向上、医療経済性の改善、医療アクセスの向上といった医療の質・サービス向上への期待は今後も高まると想定しております。加えて、人工知能(以下、AI)の普及をはじめ医療分野のDXは加速し、ロボット技術の実装・用途拡大も進展する予測であり、更なる成長機会の創出が期待されております。 (4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 当社グループでは、長期ビジョンの実現を目指し、2026年4月より新たな中期経営計画 (2027年3月期から2029年3月期まで)をスタートさせました。今後3年間で取り組むべき重点アクションを設定し、具体的施策の実行を推進しております。本中期経営計画では、当社の強みを確かな成長機会とすべく、以下4つのテーマに優先的に取り組んでまいります。 ① ダイアグノスティクス事業の競争力強化 主力のヘマトロジー分野をはじめとする各領域にてAI等の最新技術を融合させた新製品をグローバル市場へ順次投入し、診断価値の深化による競争優位性を確立いたします。また、高い成長が見込まれる新興国市場では、現地の医療ニーズに適した製品の提供と安定供給体制の強化を推進し、持続的な高成長を実現してまいります。② ダイアグノスティクス事業の強みを活かした医療DXとデータ活用の推進 世界190カ国以上に広がる顧客基盤に基づく豊富な検査データとAI解析技術を組み合わせ、シスメックス独自の医療DXソリューションを提供していきます。検査結果に基づく適切な診療へのナビゲートに加え、AIを活用した検査室運営支援を通じた業務効率化の推進、更には公衆衛生支援等、医療課題の改善と医療経済性の両立に寄与する新たな価値創出に取り組んでまいります。③ バリューチェーン改革による収益性向上 グループ全体の収益性及び資本効率の改善を図るため、特に安定的な収益源である診断薬においてバリューチェーン全体での変革を実行いたします。④ 財務・資本戦略の再設計 資本効率の向上を図り、ROE 12.0%(2028年度)の達成を目標といたします。有利子負債の活用による資本構成の最適化を検討すると共に、配当性向40%目途の累進配当及び機動的な自己株式取得により、株主還元を拡充いたします。 これらに加えて、地球環境の持続可能性が喫緊の課題となっている中、長期的な環境マネジメントの指針として「シスメックス・エコビジョン2033」を策定しており、製品ライフサイクルにおけるCO2排出量や水消費量の削減、環境に配慮したグリーン調達等を継続して推進いたします。このように製品・サービスの提供を通じた医療課題解決に取り組むと共に、環境への配慮や魅力ある職場の実現等、優先的に取り組むべき課題(マテリアリティ)をグループ全体で推進し、多様なステークホルダーの皆様へ安心をお届けすると共に、サステナビリティ経営の実現を目指します。 (5) 目標とする経営指標 新たな中期経営計画では、2029年3月期を最終年度として、連結売上高600,000百万円、連結営業利益100,000百万円を達成することを目指します。 その初年度に当たる2027年3月期の連結業績予想につきましては、製品ラインアップの拡充や販売・サービス体制の強化等により、売上・利益共に伸張することを想定しており、売上高535,000百万円、営業利益58,000百万円を予想しております。(注)2027年3月期の算定にあたりましては、通期の為替レートを対米ドル155.0円、対ユーロ180.0円、対中国元22.0円で想定しております。 なお、上記予想は、現時点で入手している情報に基づき算定したものであり、様々な要因により変動する可能性があります。
MD&A(経営者による分析)
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】1.経営成績等の概要 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において判断したものであります。(1) 経営成績の分析当連結会計年度における世界経済は、世界的なインフレ率の高止まりや米国の通商政策をめぐる不確実性が景気の不透明感として認識されたものの、世界経済全体としては穏やかな持ち直しが続きました。米国では物価上昇の影響を受けつつも、個人消費や設備投資が堅調に推移し、欧州においても持ち直しの動きが見られました。一方で、中国では国内需要の低迷が見られました。加えて、中東情勢の悪化により、エネルギー資源等に関する世界的な供給網に混乱が生じる等、日本及び世界経済の先行きに対する不透明な状況が継続しております。医療面におきましては、中国において医療費抑制政策が拡大しているものの、新興国の経済成長や世界的な高齢化に伴う医療需要の拡大が継続いたしました。このような状況のもと、売上高は、米州、EMEA(欧州・中東・アフリカ)及びAP(アジア・パシフィック)では増収となったものの、日本及び医療費抑制政策の影響を受けた中国において大きく減収となった結果、全体でも減収となりました。利益面では、減収に加え、売上原価率の上昇や販売費及び一般管理費の増加、事業環境の変化や戦略の変更等による減損損失を計上したため、減益となりました。 地域別売上高 前連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)当連結会計年度(自 2025年4月1日 至 2026年3月31日)前期比(%)金額(百万円)構成比(%)金額(百万円)構成比(%)国内67,78613.358,60311.786.5 米州131,14825.8139,25427.9106.2 EMEA(欧州・中東・アフリカ)140,39827.6158,03431.6112.6 中国117,97023.289,46517.975.8 AP(アジア・パシフィック)51,33910.154,64910.9106.4海外計440,85786.7441,40388.3100.1合計508,643100.0500,006100.098.3 国内販売につきましては、ヘマトロジー分野及び血液凝固検査分野の機器、試薬の売上が減少いたしました。その結果、国内売上高は58,603百万円(前期比13.5%減)、構成比11.7%(前期比1.6ポイント減)となりました。海外販売につきましては、血液凝固検査分野における試薬等の売上が減少いたしました。一方で、尿検査分野等における機器及び試薬、ヘマトロジー分野における試薬の売上が増加いたしました。その結果、海外売上高は441,403百万円(前期比0.1%増)、構成比88.3%(前期比1.6ポイント増)となりました。販売費及び一般管理費につきましては、事業規模拡大に伴う人員の増加並びにデジタル基盤構築に係る投資による償却費の増加により、164,351百万円(前期比9.0%増)となりました。研究開発費につきましては、29,162百万円(前期比7.3%減)となりました。この結果、当連結会計年度の連結業績は、売上高は500,006百万円(前期比1.7%減)、営業利益は51,831百万円(前期比40.8%減)、税引前利益は49,051百万円(前期比38.1%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は35,457百万円(前期比33.9%減)となりました。 各セグメントの経営成績は、以下のとおりであります。 ① 本社統括韓国では、ヘマトロジー分野の機器の売上が増加いたしましたが、日本において、ヘマトロジー分野及び血液凝固検査分野の機器、試薬の売上が減少いたしました。またメディカルロボット事業においては、保守サービスの売上が増加した一方で、機器の売上が減少いたしました。その結果、売上高は87,562百万円(前期比6.8%減)となりました。利益面につきましては、減収に加え、売上原価率の悪化、販売費及び一般管理費の増加により、セグメント利益(営業利益)は17,771百万円(前期比69.9%減)となりました。 ② 米州統括北米では、ヘマトロジー分野の機器及び試薬、尿検査分野の機器の売上が増加いたしました。中南米では、尿検査分野における機器及び試薬の売上が増加いたしました。その結果、売上高は130,456百万円(前期比6.1%増)となりました。利益面につきましては、増収等により、セグメント利益(営業利益)は8,507百万円(前期比26.1%増)となりました。 ③ EMEA統括ヘマトロジー分野では、試薬の売上が増加いたしました。また尿検査分野、血液凝固検査分野においても、主要国を中心に機器及び試薬の売上が増加し、その結果、売上高は152,110百万円(前期比12.1%増)となりました。利益面につきましては、売上が増加いたしましたが、事業規模拡大に伴う販売費及び一般管理費の増加により、セグメント利益(営業利益)は9,904百万円(前期比6.4%減)となりました。 ④ 中国統括医療費抑制政策による厳しい環境下において、ヘマトロジー分野の機器及び試薬の売上、血液凝固検査分野における試薬等の売上が大きく減少いたしました。その結果、売上高は89,296百万円(前期比24.2%減)となりました。利益面につきましては、販売費及び一般管理費が減少いたしましたが、減収の影響が大きく、セグメント利益(営業利益)は9,343百万円(前期比12.2%減)となりました。 ⑤ AP統括ヘマトロジー分野、血液凝固検査分野及び尿検査分野において、試薬の売上が増加いたしました。その結果、売上高は40,581百万円(前期比6.1%増)となりました。利益面につきましては、2024年8月に竣工したインドの新生産拠点の償却費等により売上原価率が悪化いたしましたが、増収により、セグメント利益(営業利益)は3,707百万円(前期比3.6%増)となりました。 (2) 財政状態の分析 当連結会計年度末の資産合計は、為替が円安に振れたこともあり、前連結会計年度末と比べて42,263百万円増加し、707,532百万円となりました。この主な要因は、減損損失の計上によりのれんが10,066百万円減少したものの、棚卸資産が13,802百万円、未収法人所得税が7,511百万円、有形固定資産が20,185百万円、非流動資産の営業債権及びその他の債権が7,777百万円増加したこと等によるものであります。 負債合計は、前連結会計年度末と比べて1,121百万円増加し、201,856百万円となりました。この主な要因は、未払法人所得税が9,804百万円減少したものの、営業債務及びその他の債務が2,251百万円、契約負債が2,671百万円、非流動負債のリース負債が6,153百万円増加したこと等によるものであります。 資本合計は、前連結会計年度末と比べて41,141百万円増加し、505,676百万円となりました。この主な要因は、利益剰余金が13,432百万円、その他の資本の構成要素が30,810百万円増加したこと等によるものであります。また、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末の69.7%から1.7ポイント増加して71.4%となりました。 (3) キャッシュ・フローの分析 当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下、資金)は、前連結会計年度末より5,453百万円減少し、84,117百万円となりました。 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。<営業活動によるキャッシュ・フロー> 営業活動の結果得られた資金は、73,848百万円(前期比14,397百万円減)となりました。この主な要因は、税引前利益が49,051百万円(前期比30,170百万円減)、減価償却費及び償却費が46,437百万円(前期比7,404百万円増)、減損損失が11,557百万円(前期比8,345百万円増)、法人所得税の支払額が29,720百万円(前期比1,996百万円増)となったこと等によるものであります。<投資活動によるキャッシュ・フロー> 投資活動の結果使用した資金は、51,472百万円(前期比1,016百万円減)となりました。この主な要因は、有形固定資産の取得による支出が32,904百万円(前期比3,677百万円増)、無形資産の取得による支出が18,065百万円(前期比2,668百万円減)となったこと等によるものであります。<財務活動によるキャッシュ・フロー> 財務活動の結果使用した資金は、37,659百万円(前期比13,337百万円増)となりました。この主な要因は、配当金の支払額が22,441百万円(前期比4,360百万円増)、リース負債の返済による支出が11,316百万円(前期比754百万円増)となったこと等によるものであります。 (4) 生産、受注及び販売の実績a.生産実績 当連結会計年度の生産実績をセグメント毎に示すと、以下のとおりであります。セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)本社統括71,395104.3米州統括4,579102.4EMEA統括3,687105.2中国統括6,916118.1AP統括2,980137.0合計89,559106.0(注)金額は製造原価によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。 b.受注実績 見込み生産を行っているため、該当事項はありません。 c.販売実績 当連結会計年度の販売実績をセグメント毎に示すと、以下のとおりであります。セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)本社統括87,56293.2米州統括130,456106.1EMEA統括152,110112.1中国統括89,29675.8AP統括40,581106.1合計500,00698.3(注)セグメント間の内部売上高は相殺消去しております。 2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。(1) 当連結会計年度の経営成績の分析 当連結会計年度の売上高は前期比8,636百万円減少(1.7%減)の500,006百万円、営業利益は前期比35,752百万円減少(40.8%減)の51,831百万円、税引前利益は前期比30,170百万円減少(38.1%減)の49,051百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比18,212百万円減少(33.9%減)の35,457百万円となりました。また、親会社所有者帰属持分当期利益率は前連結会計年度の12.0%から当連結会計年度は7.3%へと低下いたしました。 こうした中、2026年4月より2029年3月期を最終年度とする新たな中期経営計画をスタートしており、長期ビジョン「より良いヘルスケアジャーニーを、ともに。」の実現を目指して引き続き重要な課題に取り組み、2029年3月期の連結業績として、売上高600,000百万円、営業利益100,000百万円を達成することを目指します。 ① 売上高 当連結会計年度は、国内販売につきましては、ヘマトロジー分野及び血液凝固検査分野の機器、試薬の売上が減少いたしました。その結果、国内売上高は58,603百万円(前期比13.5%減)、構成比11.7%(前期比1.6%ポイント減)となりました。海外販売につきましては、血液凝固検査分野における試薬等の売上が減少いたしました。一方で、尿検査分野等における機器及び試薬、ヘマトロジー分野における試薬の売上が増加いたしました。その結果、海外売上高は441,403百万円(前期比0.1%増)、構成比88.3%(前期比1.6%ポイント増)となりました。以上により、売上高は前連結会計年度に比べて8,636百万円減少(1.7%減)の500,006百万円となりました。 国内での売上高は58,603百万円と9,183百万円の減少(13.5%減)となり、海外での売上高は441,403百万円と546百万円の増加(0.1%増)となった結果、海外売上高比率は前期比1.6ポイント増加の88.3%となりました。 海外の地域別では、米州が139,254百万円(前期比8,105百万円増、6.2%増)、EMEAが158,034百万円(前期比17,635百万円増、12.6%増)、中国が89,465百万円(前期比28,504百万円減、24.2%減)、アジア・パシフィックが54,649百万円(前期比3,309百万円増、6.4%増)となりました。 ② 売上原価 売上原価は、前期比7,659百万円増加(3.2%増)の244,324百万円となりました。また、売上原価率は48.9%(前期比2.4ポイント増加)でありました。 ③ 販売費及び一般管理費 販売費及び一般管理費は、主に事業規模拡大に伴う人員増加や販売促進活動、基幹システム稼働の結果、前期比13,502百万円増加(9.0%増)の164,351百万円となりました。また、売上高に対する比率は32.9%(前期比3.2ポイント増加)でありました。 ④ 研究開発費 研究開発費は、主に短中期的業績に関わらないテーマの見直しや効率化の結果、前期比2,292百万円減少(7.3%減)の29,162百万円となりました。また、売上高に対する比率は5.8%(前期比0.4ポイント減少)でありました。 ⑤ 損益の状況 営業利益は売上高の減少による売上総利益の収縮等により前期比35,752百万円減少(40.8%減)の51,831百万円、売上高営業利益率は10.4%(前期比6.8ポイント減少)となりました。なお、為替の影響は、前連結会計年度と比較して92百万円の増益要因となりました。 税引前利益は、為替差益が2,078百万円(前期は為替差損が3,850百万円)となりましたが、営業利益が減益となったこと等によって、前期比30,170百万円減少(38.1%減)の49,051百万円となりました。 親会社の所有者に帰属する当期利益は、法人所得税費用が前期比11,968百万円減少(46.7%減)の13,676百万円となり、前期比18,212百万円減少(33.9%減)の35,457百万円となりました。 (2) 経営成績に重要な影響を与える要因について 当社グループが事業を展開していく上で、経営成績に重大な影響を及ぼす可能性のある事項については、「3 事業等のリスク」に記載しておりますので、ご参照ください。 (3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析 ① 資金調達と流動性マネジメント 運転資金は必要に応じて短期銀行借入等で調達いたします。各連結子会社については、運転資金確保のために必要に応じて銀行借入を行いますが、国内の子会社については、2003年10月より当社と各社との資金決済にCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入し、資金の調達・運用を一元化して効率化を図っております。更に、海外の一部の地域統括会社についても、2024年1月より当社と各社間でCMSによる資金融通を開始し、グループ内の流動性確保、資金効率向上に努めております。 また、当社は、現在、株式会社格付投資情報センター(R&I)よりAA-(ダブルAマイナス)の発行体格付を取得しており、毎年レビューを受けて格付を更新しております。高い格付は資本市場から資金調達する際の調達コストを低減するだけではなく、ステークホルダーや世間一般からの信用向上にも貢献します。今後も格付を維持・向上していくために、売上高・利益と資産及び負債・資本のバランスに考慮してまいります。 設備投資等の長期資金需要に関しては、投資回収期間とリスクを勘案した上で調達方法を決定しております。なお、当連結会計年度は、設備投資及び研究開発活動等の資金について、主に営業活動の結果得られた資金から充当しております。 ② 財政状態の分析 財政状態の分析については、「1.経営成績等の概要 (2) 財政状態の分析」に記載しておりますので、ご参照ください。 ③ キャッシュ・フローの分析 キャッシュ・フローの分析については、「1.経営成績等の概要 (3) キャッシュ・フローの分析」に記載しておりますので、ご参照ください。 (4) 重要な会計方針及び見積り 当社グループは、IFRSに準拠して連結財務諸表を作成しております。この連結財務諸表の作成に関する重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 3.重要性がある会計方針」に記載しておりますので、ご参照ください。

事業リスク

  • 地政学リスクによる事業活動制限: 世界中で事業を展開しているため、国家間の対立や貿易摩擦、紛争など地政学的な緊張が高まると、販売や調達などの事業活動が制限される可能性があります。例えば、輸出入規制の厳格化や自国産業保護の動きが顕在化すると、製品の供給に影響が出る恐れがあります。
  • 経済情勢悪化による販売機会低下: 比較的需要が安定しているヘルスケア分野が主力ですが、世界的な経済情勢の悪化により、各国の医療財政がひっ迫したり、医療機関の予算が縮小したりすると、設備投資意欲が低下し、製品の販売機会が減少する可能性があります。特に中国での医療費抑制政策は既に影響が出ています。
  • 為替変動による業績への影響: 海外売上高比率が8割以上と高いため、為替レートの変動が連結業績に大きな影響を与えます。円高に推移した場合、海外関係会社の現地通貨建て売上高や資産が円換算で減少し、連結業績にマイナスに作用する可能性があります。例えば、1円の円高で売上高や営業利益が大きく変動する可能性があります。
出典: FY2026 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「事業等のリスク」の全文を見る(年度切替)
FY2026|15,689 文字
3【事業等のリスク】 当社グループは、主たる事業である検体検査分野を中心に、個別化医療や個別化予防、更にはメディカルロボット事業や再生細胞医療等の取り組みを推進し、医療機関に不可欠な製品・サービスを安定的に提供しております。世界190以上の国や地域に製品・サービスを供給しており、当社グループの業績は、国内外で今後発生し得る様々な要因によって影響を受ける可能性があります。 当社グループでは、グループ内外における様々なリスクを組織的・体系的に管理する取り組みを推進しております。事業の継続と発展のための成長戦略の実行により、顕在化するリスクを適切に識別・評価し、事業機会の創出と持続的な企業価値向上の両立を図ると共に、経営及びその持続性に影響を与える可能性について、それぞれの重要度に応じて予防及び発生時の対策を講じております。また、それらの対応状況を共有することにより、投資家をはじめとするステークホルダーの皆さまに安心いただけるよう取り組んでおります。 <リスク管理の体制及びプロセスについて> グループ全体のリスクマネジメントを推進する体制として内部統制委員会を設置し、事業部門から独立した組織である内部統制室が事務局を務めております。内部統制委員会は、当社グループの内部統制・リスクマネジメント全般を統括しております。内部統制委員会の委員長は取締役社長が務め、メンバーは取締役会長、担当執行役員及び常勤監査等委員、オブザーバーは社外取締役が務めております。 また、下図のとおり、主要なリスク領域については、コンプライアンス委員会等、関連委員会を設置しております。各委員会はグループ横断的に活動を統括すると共に、部門・関係会社での取り組み状況を定期的にモニタリングし、内部統制委員会へ報告しております。 上述のリスクマネジメント体制において、当社グループは社内外の環境変化を考慮した上、毎年リスクアセスメントを実施しております。リスクの抽出に漏れが生じないよう、主要なリスク領域を担当する委員会や部門、及び関係会社にてリスクを特定し、影響度と発生可能性等の観点からリスクの重要度を分析・評価しております。その後、業務全般にわたるリスクを管轄する内部統制委員会や、戦略の意思決定に係るリスクを管轄するグローバル戦略会議・執行役員会議等において、グループ全体を俯瞰する観点から重点的に管理すべきリスクや具体的な対応計画等について審議・決定し、定期的に進捗をモニタリングしております。以上のプロセスにおける審議及び報告内容はタイムリーに取締役会に報告され、必要に応じて審議されております。 <リスク及びその対応について> 有価証券報告書に記載した事業及び経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重大な影響を及ぼす可能性のある事項は14項目あり、それらを以下のとおりマクロ環境に由来するリスクとミクロ環境に由来するリスクに分類しております。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであると共に全てのリスクを網羅したものではなく、記載以外のリスクにより将来的に予期せぬ影響を受ける可能性があります。 ① 地政学に関わるリスクについて脅威・機会<脅威>地政学的な緊張の高まりによる事業への影響 当社グループは、生産、販売・サービス、研究開発等の活動をグローバルに展開しており、世界中に拠点を有しております。国家間の対立・分断や貿易摩擦等、地政学的な緊張はますます高まっており、国家間紛争等のリスクが顕在化しております。当社グループの活動拠点を有する国や周辺地域において、紛争や輸出入規制の厳格化、更なる自国産業保護の動き等が生じ、販売・調達等の事業活動が制限される可能性があります。 また、上述のような事業活動の制限のみならず、従業員等の安全に影響を及ぼす可能性があります。 <機会>製品・サービスの供給継続による信頼性向上 診断薬の現地生産化をグローバルに推進し、安定供給体制を強化することにより、お客様からの信頼性や競争力が向上する可能性があります。更に、活動拠点を各地に有することにより、現地のニーズを的確に把握すると共に、きめ細やかに対応した製品・サービスを提供できる可能性があります。対応 当社グループではグローバルなネットワークを活用し、地政学・経済安全保障のリスクを見据え、各国・地域の情勢に関する情報収集を継続的に行うと共に、グローバル調達や海外生産機能の強化に取り組んでおります。特に、自国産業保護の動きが見られる国においては、現地での生産や部品・原材料の調達等が必要となる場合があるため、最新情報の把握に努めると共に、主に診断薬において現地への生産移管に向けた取り組みを行っております。インドにおいては、Make in India 政策等に対応したグループ初の診断薬・機器双方の生産機能を備える新たな生産拠点が本格稼働し、現地生産を行っております。また、中国やインドにおいては、各国内での原材料調達を推進し、グループの供給力強化に取り組んでまいります。 更に、国家間紛争等の有事の際には、人命保護を最優先に、安全保障に関する輸出入規制等を遵守しつつ、人道支援・医療に貢献する製品の供給が中断することがないよう対策を講じております。 今後も刻々と変化する世界情勢に対して、当社グループの事業への影響を考慮し、適切に対応してまいります。 ② 経済動向に関わるリスクについて脅威・機会<脅威>経済情勢悪化による販売機会低下 当社グループは比較的需要が安定しているヘルスケアを主たる事業としておりますが、世界的な経済情勢の悪化により、各国政府の医療財政ひっ迫や医療機関における予算縮小等が発生した場合、設備投資意欲が低下し、経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。特に、中国における医療費抑制政策等の影響に関しては、既に顕在化しております。 また、関税を含む輸出入規制や急速なインフレ進行、エネルギー価格の高騰、金利動向の変化等、経済環境の著しい変化により、原材料や各国の輸出入等に係るコストが更に増加し、業績へ影響を及ぼす可能性があります。 <機会>経済好況に伴う医療インフラへの投資増加 世界経済が好調に推移した際は、医療インフラへの投資増加等に伴い、当社グループの製品についても販売機会が拡大する可能性があります。特に、インド・中南米等の人口増加及び経済成長が見込まれる新興国においては、医療水準向上のニーズが高まっており、検査需要の増加を背景に更なる市場の拡大が期待できます。対応 当社グループは、不確実性が高まる中、各国・地域の市場環境の変化に関する情報を適宜グローバルに収集し、お客様に付加価値の高い製品・サービスを提供してまいります。また、ロボティクスやAI等を活用した医療機関の収益向上に資するソリューションの提供により、検査の標準化・効率化を実現しております。更に、経済成長及び人口増加に伴い、医療インフラへの投資が大きく期待される新興国において、多種多様な市場ニーズに適した製品の開発・市場導入を進め、医療アクセスや医療の質を向上させることにより、ユニバーサルヘルスカバレッジにも貢献しております。特に、高成長市場であるグローバルサウスの中でも、インド、ブラジル、中東、アフリカ等に対し、戦略商品を展開し、成長を持続してまいります。今後も、グループ全体で更なる付加価値の創出を進めてまいります。 ③ 為替の変動に関わるリスクについて脅威・機会<脅威>円高による海外売上・資産の減少等、連結業績へのマイナス影響 <機会>円安による海外売上・資産の増加等、連結業績へのプラス影響 当社グループは海外関係会社及び代理店を経由して各国・地域へ販売を行っており、連結売上高に占める海外売上高の比率は、2025年3月期86.7%、2026年3月期88.3%と高い水準で推移しております。海外関係会社の現地通貨建て財務諸表の各項目は、円換算時に為替レートの変動による影響を受けるため、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼします。為替が円高に推移した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。一方、円安時には海外関係会社における販管費等が円換算ベースで増加しますが、それを上回る売上増加により連結業績では好影響を受ける可能性があります。 なお、2026年3月期の売上高、営業利益における為替の1円変動の影響は、以下のとおりであります。 売上高営業利益USD798百万円207百万円EUR596百万円71百万円CNY4,089百万円2,993百万円 対応 外貨建営業債権、関係会社貸付金及び借入金等を含む、外貨建の債権債務について、主に為替予約を行うことによりリスクをヘッジしております。 また、診断薬を中心に生産拠点をグローバルに分散することにより、為替による影響を軽減させる措置を講じております。 ④ コンプライアンスに関わるリスクについて脅威・機会<脅威>コンプライアンス違反による社会的信用の失墜 当社グループはグローバルに事業を展開しており、関連する法令・規制は多岐にわたります。法令違反や不正等が発生した場合、社会的信用を失墜させると共に、訴訟や賠償が発生する可能性があります。また、予期しない法規制の大幅な変更や適用への対応に不備や遅れが発生した場合、事業活動に影響を及ぼす可能性があります。 法規制にとどまらず、社会規範の逸脱、倫理に反する行為等が発生した場合にも、社内外のステークホルダーの安心や信頼性に影響を及ぼす可能性があります。 <機会>コンプライアンス遵守によるステークホルダーからの信頼性向上 当社グループは、コンプライアンスの遵守を、持続的な企業経営の重要な要素と捉えております。グループ全体でのコンプライアンス遵守に向けた取り組みにより、社内外のステークホルダーからの更なる信頼性の向上が期待できます。また、それらの取り組みによる健全な企業文化の醸成により、エンゲージメントが高まり生産性の向上、ひいては更なる企業価値の向上につながることが期待できます。対応 当社グループでは、企業理念「Sysmex Way」及びそれに基づく「Shared Values」を踏まえ、コンプライアンスを「法令遵守と共に高い倫理観に基づいた正々堂々とした事業活動を行うこと」と定義しております。コンプライアンス違反は社会的信用を失墜させる最も重要なリスクの一つと捉え、グループ全体のリスク管理体制の下で、コンプライアンスの統括組織としてコンプライアンス委員会を設置し、コンプライアンスの推進・強化に取り組んでおります。 また、グループの役職員が遵守すべき特に重要なルールや行動のガイドラインとしてグローバルコンプライアンスコードを制定しております。 更に、当社グループは、全役職員が贈収賄や人権侵害等を含むコンプライアンス上の問題に関して相談・通報できるグローバル体制を構築している他、ビジネスパートナーの皆さまにも、当社グループのコンプライアンス違反若しくはその疑いがある行為について通報を受け付ける「パートナーホットライン」を設けております。加えて、役職員への教育・啓発活動をコンプライアンス推進・徹底の基盤と位置付け、グループ全体で継続的な教育を実施しております。 当社は、独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会の調査を受け、同法に基づき当社が提出した確約計画が2025年2月に認定されました。現在、当社は当該確約計画を着実に実行しております。なお、本認定は、当社が独占禁止法に違反したことを認定するものではありませんが、独占禁止法違反の疑いにより公正取引委員会の調査を受けた事実を真摯に受け止め、当社グループは、確約計画の履行にとどまらず、独占禁止法の遵守をはじめとするコンプライアンス体制の一層の強化に努めてまいります。 ⑤ 人権に関わるリスクについて脅威・機会<脅威>人権対応の不備による社会的信用の低下 企業活動において人権を尊重することは非常に重要な要素の一つであり、各国においても様々な施策が講じられております。当社グループの人権尊重に対する取り組みの不備や遅れにより、人種・性別等による差別や強制労働・児童労働等の人権侵害が発生した場合、取引先や投資家をはじめとするステークホルダーからの信用を低下させる可能性があります。 <機会>適切な人権対応による信頼性向上 多様な人材が安心して働きやすい環境を整備し受容するDE&Iの推進やサプライチェーンにおける差別の排除等、公正かつ持続可能な企業経営を推進し、人権に対して適切に対応することにより、ステークホルダーからの信頼性の向上、ひいては競争優位性の創出につながる可能性があります。対応 当社グループでは、人権尊重と差別撤廃をグローバルコンプライアンスコードに掲げ、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」及びILO中核的労働基準の趣旨を踏まえ、人権を尊重した企業経営及び職場環境づくりに取り組んでおります。また、人権方針においては、人権デュー・デリジェンスの実施を規定し、自社内にとどまらず、サプライチェーンに関わる外部パートナーを含め、人権への影響を特定し、負の影響を防止・緩和する取り組みを進めております。強制労働・児童労働の禁止、ジェンダー・障がい・人種・思想等に対する差別の排除等、事業活動が人権侵害に関与・加担することのないよう、予防的に対処する仕組みを整備しております。 また、国内外に設けた内部通報窓口に加え、サプライチェーンを含む外部ステークホルダーからの人権に関する相談・通報を、第三者機関であるJaCERが運営する「対話救済プラットフォーム」から受け付けております。通報窓口に寄せられた情報は適切に取り扱い、相談・通報者が不利益を受けないよう保護すると共に、必要な是正・救済措置を講じる体制を整備しております。 更にハラスメントの防止や、労働に関する正しい知識の浸透等を目的とする教育を実施し、人権侵害の未然防止に努めております。 ⑥ 技術革新に関わるリスクについて脅威・機会<脅威>技術革新への対応遅延による競争優位性低下 近年の技術革新により、ヘルスケア領域においてもAI・ロボティクス等の技術が急速に高度化しており、遠隔医療ソリューション、AI診断等の技術の進展により、ビジネスモデルが大きく変化する可能性があります。このような環境下においては、当社グループの対応が遅れることにより、競争優位性の低下を招く可能性があります。 また、社内のデジタル化やデータ活用の取り組みが十分に進展せず、その効果を発揮できない場合、業務の生産性・効率性が向上せず、結果として事業推進コストの増加や組織全体の競争力低下を招く可能性があります。 <機会>イノベーションによる付加価値向上 革新的技術の創出及び積極的な活用により、検査業務をはじめとする医療の効率化・高度化等の更なるイノベーションを実現することで、高付加価値な製品・サービスの提供が可能になります。また、革新的技術の普及に伴うビジネスモデルの変革に対し、いち早く適応することにより、新たな市場機会の創出や販売機会拡大につながる可能性があります。 更に、データ活用を基盤とした社内の業務プロセスの見直しや、デジタル化による業務効率・生産性の向上は、企業価値の向上に寄与する可能性があります。対応 当社グループは、企業理念「Sysmex Way」及びそれに基づく「Shared Values」を踏まえ、様々な技術開発を通じたイノベーションを創出し、社会課題の解決に資する製品・サービスの提供に努めております。新たな技術の開発に向け積極的な投資を継続すると共に、大学や研究機関、企業等が持つ技術と当社グループの技術を融合させ、新たな臨床価値を効果的に生み出すオープンイノベーションを推進しております。また、グループ内に蓄積されたデータの活用やAI・デジタル技術の導入を通じて、生産性・効率性の向上に取り組んでおります。 更に、世界各地にこれらの活動を促進する研究開発拠点を開設し、従来の検体検査領域のみならず、個別化医療や予防医療等への貢献に取り組んでおります。 その一環として、アルツハイマー病検査におけるプレゼンスの向上と市場浸透に取り組んでおります。アルツハイマー病治療薬(抗アミロイドβ抗体薬)は認知症の進行を抑える効果が期待される一方で、一部の患者さんには副作用が現れることがあります。当社は、この副作用リスクを予測する検査試薬について、国内で初めて製造販売承認を取得いたしました。更に、富士レビオ・ホールディングス株式会社とのグローバルな販売協業を開始する等、早期市場参入による市場優位性の確保を図ると共に、アルツハイマー病検査をはじめとした免疫分野での更なる成長を目指してまいります。 また、近年高度化する医療現場において、検査プロセスの更なる自動化や、AIを活用した検査結果解析システムの開発等を進めることにより、生産性を高め、深刻化する検査技師不足を補う検査室の自動化を推進してまいります。今後も、新たな技術やイノベーションの創出を通じて医療環境のデジタルトランスフォーメーションを進め、検査データとAIを軸とするデジタル戦略で、医療の現場や社会全体が抱える切実な課題の解決に取り組むことにより、人々の健康寿命の延伸へ貢献すると共に、持続的な成長を目指してまいります。 ⑦ 気候変動等の環境に関わるリスクについて脅威・機会<脅威>環境対応の不備や自然災害による事業への影響 持続可能な社会への要請が高まる中、各国において環境負荷低減等の環境への配慮が一層求められております。当社グループにおいて、規制等への対応の遅延や不適切な対応が生じた場合、罰則や入札制限等を招く可能性があります。 また、気候変動に由来する自然災害により、世界各国のお客様への製品安定供給や従業員等の安全へ影響を及ぼす可能性があります。 <機会>環境課題への取り組みによる信頼性・競争優位性向上 各国における環境に関する法規制等の情報を適宜把握し、プロアクティブに対応を実施することにより、ステークホルダーからの信頼性向上並びに販売機会の拡大につながる可能性があります。 また、環境に配慮した製品開発や生産活動等により付加価値を提供することは、競争優位性の更なる向上及び事業成長に寄与する可能性があります。対応 当社グループでは、環境マネジメントを推進する組織として環境管理委員会を設置しております。資源循環型社会の実現に取り組んでおり、製品・サービスを通じた社会課題解決と事業成長の両立により、持続的な環境・社会への価値提供を目指しております。 『シスメックス・エコビジョン 2033』を策定し、生産・開発・販売・サービス等のあらゆるバリューチェーンにおいて、水平リサイクル容器※1の採用、濃縮試薬の普及促進、ドライアイスフリー輸送の導入、脱動物由来の原材料を使用した製品の開発等、CO2排出や水使用、生物多様性等に配慮した環境配慮型製品・サービスを通じて環境負荷低減に取り組んでおります。水平リサイクル容器※1は業界初のプラ新法に認定されました。 また、TNFD※2の提言に賛同し、業界で初となるTNFD Adopterへの登録を行いました。更に、SBTi※3の認定を取得し、世界で唯一の独立した環境情報開示を行うCDPの2025年調査においても最高評価となるAリストに選定されました。ヘルスケア業界においても気候変動と健康の関係性が注目され、国内外の医療機関から環境対応要請が高まっている中、グリーンイノベーションを推進し、自然環境の回復・再生を目指すネイチャーポジティブと持続可能な社会の実現に貢献するため、環境課題への取り組みを加速しております。 ※1 使用済み製品を原料として、再び同じ種類の製品を製造するリサイクル方法※2 Taskforce on Nature-related Financial Disclosures(自然関連財務情報開示タスクフォース)※3 Science Based Targets initiative(気候科学に基づき環境危機克服に取り組む国際的イニシアチブ) ⑧ 医療制度改革に関わるリスクについて脅威・機会<脅威>医療制度改革等への対応不備・遅延による販売機会減少 当社グループの機器・診断薬製品の販売には薬事承認の取得が必要であり、各国において承認取得に関する要求事項が複雑・高度化する傾向にあります。特に、近年ではデジタル技術やソフトウェアを活用した新たな診断手法の実用化等により、製品に関する規制の枠組みが見直される動きも見られております。このような傾向は、対応コストを増加させる可能性があると共に、対応が遅れた場合は新製品の発売への影響等、市場獲得機会の喪失を招く可能性があります。 また、各国において保険収載に関する制度の見直しや、保険点数等の検査に係る費用引き下げ等が発生した場合は、当社製品の販売機会減少の可能性があります。中国においては、医療費抑制政策である必要最小限の原則や集中購買制度等の影響が、既に顕在化しております。 <機会>規制やニーズへの迅速な対応による競争優位性向上 ヘルスケア業界での、欧州におけるIVDR※1をはじめとした厳格化する薬事規制への対応は、新規参入企業に対する障壁となり、当社グループの競争優位性が向上する要因となる可能性があります。また、各国での医療財政の改善により医療機関の予算が増加した場合、販売機会の拡大が見込める可能性があります。更に、新興国での医療制度拡充、及び医療インフラへの投資増加等により、需要の拡大が期待できます。 ※1 In Vitro Diagnostic Medical Devices Regulation(体外診断用医療機器規則)対応 薬事規制に対しては各国業界団体への参画等を通じて最新情報の把握に努めると共に、当社グループのグローバルなネットワークを活用した体制により、競争優位性を更に強化すべく適時的確な薬事承認の取得・維持に取り組んでおります。各国・地域における様々な環境変化において、多様化・高度化するニーズを正確に捉えた上、個別化医療に資する新たな診断技術の開発を推進しております。また、検体検査機器・診断薬・IT・サービス&サポートをトータルに保有する強みを活かし、医療ワークフローの効率化や疾病の早期発見、更には新興国における医療アクセス向上等の医療課題解決に取り組んでまいります。 2025年度には、グループ全体における品質保証・薬事のガバナンスを統括する「グローバルQARA統括部」を新設しております。高度化・厳格化する各国規制に対応しつつ成長戦略を実行するため、今後も世界各国のお客様に安定的に製品をお届けするため、各国の制度改革や要請の変化に適切に対応してまいります。 ⑨ 知的財産に関わるリスクについて脅威・機会<脅威>知的財産権の侵害や被侵害による事業への影響 当社グループは、特許、商標、意匠等の知的財産権をグローバルに出願しておりますが、一部又は全ての国で権利が付与されない可能性があります。更に、当社グループの知的財産権を侵害する模倣品が市場に流通した場合、検査結果の信頼性が確保できず、医療機関及び患者さんへ影響をもたらす可能性があります。 また、当社グループの正当性の有無に関わらず、第三者の知的財産権の侵害に対する訴訟の提起や、ロイヤルティの支払い要求等の知的財産権を巡る紛争が生じる可能性があります。 <機会>知的財産権取得による独自性のある製品・サービスの提供 当社グループが保有する知的財産権の適切な保護により、独自性及び競争力の強化や、ブランドイメージの向上が期待できます。 また、当社グループが保有する知的財産権のみならず、第三者のライセンスを適切に活用することにより、更にイノベーションを加速させる可能性があります。対応 当社グループでは、知的財産活動基本方針を定め、当社及び第三者の知的財産権を尊重し、全ての事業活動で創出された価値のある知的財産を積極的に権利化すると共に、第三者の知的財産権に対して適切に対応することにより、グローバルな競争優位性の確立を目指しております。従業員に対しても社内教育を通じ、当社グループ及び第三者の知的財産権を尊重しながら事業活動を推進することを周知徹底しております。更に、研究開発者の「知」の創造の推進と従業員のモチベーション向上を目的とした表彰制度を設けております。 また、当社グループの知的財産権侵害への対策として、グローバルに知的財産権を取得すると共に、徹底的に模倣品を排除することにより、お客様に安心して製品をお使いいただけるよう取り組んでおります。重要なブランドの保護のために、新興国や開発途上国を含めグローバルに商標権の確保を進め、特にコーポレートロゴについては195の国・地域に商標権を出願しております。これらの結果、全体の知的財産権のうち海外保有比率は約88%に達しております。 ⑩ 安定供給に関わるリスクについて脅威・機会<脅威>調達や生産の中断・遅延による製品供給への影響 当社グループでは、医療機関が日々の検査を実施するために不可欠な検体検査機器及び診断薬等を世界各国のお客様に供給しております。お客様への製品の供給が中断しないよう努めておりますが、急激な市況の変化、特定国・地域における政策動向、サプライヤーの事業停止等により、希少鉱物を含む部品・原材料等の調達が困難となり、製品供給に影響を与える可能性があります。 また、国家間紛争・貿易摩擦による流通ルートの遮断等が発生した場合や、生産工場・倉庫等を含むサプライチェーン拠点における大規模な自然災害や火災等の重大な事故、パンデミック等が発生した場合には、製品の安定供給に支障を及ぼす可能性があります。 <機会>製品・サービスの安定供給への取り組みによる安心の提供・信頼性向上 自然災害や重大な事故等、有事の際にも検査に必要な製品を安定的に供給し、医療業務を中断させる事態を回避すると共に、そのような有事に備えた体制の構築により、緊急時の製品の供給継続に対する信頼を獲得することは、更なるブランドイメージの向上につながる可能性があります。対応 世界中に高品質な製品をお届けすることにより、正確な検査結果と確かな安心を提供し、医療を支えるという社会的使命のもと、当社グループはグローバルに製品・サービスの安定供給に取り組んでおります。災害や地政学的要因等によるサプライチェーンの寸断・停滞にも備え、平時より製品・原材料の在庫の確保や原材料の複数社購買等に取り組むと共に、工場や倉庫での地震・風水害等の大規模災害に対する予防及び復旧対策の充実並びに代替輸送手段の確保等に取り組んでおります。特に、当社グループ売上高の61.6%(2026年3月期)を占める診断薬に関しては、事業継続に必要な復旧期間を考慮した在庫確保に加え、複数拠点での生産を行っており、特に主力事業であるヘマトロジー分野の診断薬については、主要拠点間で相互供給のネットワークを構築し、安定的な供給を継続できる体制を整えております。 また、当社グループ全体で事業継続計画(BCP)を策定し、日頃から訓練により定着を図ることで、有事の際にも迅速に復旧し、医療機関の検査業務を継続いただけるよう備えております。今年度竣工したシスメックスRA株式会社の新工場では、生産エリアの拡張による生産能力の拡大に加え、工場内物流の自動化を活かした原材料在庫の積み増しにより、グループ他工場での有事発生時においても、速やかなバックアップを可能とするBCP機能を強化いたしました。 更に、調達方針及びガイドラインを定め、取引先の皆さまと共に発展する企業を目指し、お客様に安心して製品をお使いいただけるよう取り組みを強化してまいります。 ⑪ 品質に関わるリスクについて脅威・機会<脅威>製品・サービスの品質不良による信頼性の低下 ヘルスケア業界の製品においては高い品質と安全性が要求されますが、当社製品や仕入商品等に品質不良が発生した場合、医療機関での検査に遅れや誤りが発生し、お客様や患者さんへ影響を及ぼす可能性があります。また、製品並びに当社グループ全体に対する信頼性の低下を招く可能性があると同時に、業績へ影響が生じる可能性があります。 <機会>品質向上による信頼性・競争優位性の向上 各国の法令・国際規格等に準拠する品質管理の仕組みの整備・運用を通じて更なる品質の向上を図ることにより、お客様からの信頼の獲得、並びに販売機会拡大につながる可能性があります。 また、当社グループでは創業以来、確かな品質によりお客様に安心をお届けすることを企業理念「Sysmex Way」に掲げており、これまで築き上げたブランドイメージは、企業価値並びに競争優位性の維持・向上につながる可能性があります。対応 当社グループでは、各国の法令・国際規格等に準拠する品質維持のためのマネジメントにグループ全体で取り組んでおります。グループの品質方針を策定し、製品・サービスの品質及び安全性のモニタリングと改善に向けた対策を行っております。また、全ての生産拠点において品質マネジメントシステムに関する国際規格ISO9001又はISO13485の認証を取得しております。更に、製品の信頼性や安全性に関する情報を幅広く国内外から収集・分析し、製品の品質向上に活かしております。 また、グローバルでの品質保証・法規制対応を推進するため、QARA委員会を設置しております。品質に係る法令が厳格化され、より迅速・適切なグローバルでの品質保証・法規制対応が求められる中、今後も更に強化を進め、当社グループの高品質な製品・サービスを通じた、グローバルな医療の質向上とお客様の安心の創出に取り組んでまいります。 ⑫ 情報システム・セキュリティに関わるリスクについて脅威・機会<脅威>サイバー攻撃等によるお客様及び事業への影響 当社グループの製品にはネットワークを活用したサービス機能が搭載されております。万一、医療機関を標的としたサイバー攻撃により製品が感染した場合、検査業務の停止や、第三者による個人情報への不正なアクセスが行われる可能性があります。 また、社内においても各種情報システムを導入し業務効率化を図っており、事業上の情報の多くはネットワークを介して管理・運用されております。これらのシステム及びネットワークにおける障害やサイバー攻撃によりシステムの稼働停止や機密情報の漏えいが発生した場合、又は生成AIの利活用における情報管理の不備により誤情報の提供や第三者の権利侵害等が発生した場合、当社グループの業務の効率性や信頼性の低下を招く可能性があります。 <機会>セキュリティ対応強化による製品・サービスの信頼性向上 製品・サービスにおけるセキュリティ対応を充実させることにより、製品への更なる信頼性向上や、お客様へ安心してご利用いただけるネットワークを活用したサービスの提供が可能になります。 また、セキュリティ強化を含めたDXの推進や適切な生成AIの活用等を通じ、適切な情報管理を行いながらグループ内の情報連携を強化することにより、更なる業務の効率化及び生産性の向上が期待できます。対応 当社グループでは、お客様や患者さんに確かな安心をお届けするために、製品サイバーセキュリティ委員会を中心として、製品・サービスにおけるサイバーセキュリティ対策を進めております。その一環として、「製品セキュリティポリシー」を定め、PSIRT※1を設置し、各地域の製品セキュリティ責任者と連携して、セキュリティポリシーに基づいた製品の設計・生産、及び販売後の脆弱性管理に取り組んでおります。更に、お客様やビジネスパートナーの情報資産を保護することが、信頼と品質の証であると認識し、「情報セキュリティポリシー」を定め、情報セキュリティ委員会を中心に、情報資産の機密性、完全性、可用性の維持・向上に努めております。 情報システムやネットワーク回線の障害、あるいはコンピューターウイルスや外部からの情報システムへの侵入等による業務への影響を最小限に抑えるために、不正通信検知やマルウェアの隔離等の仕組みの導入、24時間の監視、CSIRT※2の設置、有事や重大インシデントに対する情報の早期入手のための外部団体加盟等によるセキュリティ対策や、事業継続に関する体制整備・訓練等、情報管理の厳格化に取り組んでおります。加えて、グローバル基幹システムを含む重要システムについては、権限管理、変更管理、監視、バックアップ等を通じて安定稼働と業務継続を確保し、生産性・効率性の向上及び情報セキュリティの強化に取り組んでおります。 また、AI技術全般に関しても、従業員に対しセキュリティを考慮した利用ルールを周知すると共に、積極的な活用により、イノベーションを加速させる取り組みを推進し、企業活動の効率性・生産性を高めてまいります。 ※1 Product Security Incident Response Team(製品セキュリティインシデント対応チーム)※2 Computer Security Incident Response Team(コンピューターセキュリティインシデント対応チーム) ⑬ 企業買収等、投資に関わるリスクについて脅威・機会<脅威>投資効果の発揮不足による戦略目標達成の遅延 当社グループは、研究開発や生産等の拠点拡充を図ると共に、ITインフラ及び最新技術等への積極的な投資や企業買収、資本提携等を通じた成長加速を目指しております。これらの取り組みにおいて、経営環境の変化や事前に予測し得なかったリスクの顕在化等により、期待されていた効果が十分に発揮できず、戦略目標の達成に影響を及ぼす可能性があります。 <機会>投資効果の最大化によるビジネスの加速 経営戦略に基づき、長期的かつグローバルな視点で積極的な投資を行うことにより、事業基盤の強化や製品ポートフォリオの拡充に伴うお客様への新たな価値提供等、当初の想定以上に高いシナジーを発揮することで、戦略実現のスピードを加速させる可能性があります。対応 当社グループでは、投資に対する検討・意思決定、及びPMI※1のモニタリングにおける仕組みの強化により、投資効果の最大化を目指しております。投資判断については、事前に十分な調査を行った上、目的・効果・想定されるリスク等について経営会議等で審議し決定しております。意思決定後においても、機動的な変化への対応と柔軟な軌道修正が重要であると捉え、定期的にモニタリングを実施し、投資に対する管理プロセス強化に取り組んでおります。 その一例として、日本電子株式会社の医用機器事業である生化学検査事業を譲り受けることにより、製品ポートフォリオの拡充及びグローバル展開の取り組みを進めております。 また、これまでのデジタル化投資により、社内業務の効率化と共に、検査データとAI活用による医療DXを推進してまいります。 今後も適切な意思決定のもと、事業成長に必要な投資については積極的なリスクテイクを行い、事業の拡大や新たな技術獲得を通じた高付加価値な製品・サービスの提供を継続し、当社グループの成長を加速させてまいります。 ※1 Post Merger Integration(合併・買収後の統合プロセス) ⑭ 人材確保に関わるリスクについて脅威・機会<脅威>人材獲得競争の激化及び人材流出による競争力低下 グローバルな人材市場における獲得競争は激化しており、それにより事業推進に必要な人材が獲得できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。 また、職場環境の安全衛生の確保が十分でなかった場合、従業員の心身の健康を損ない、士気低下や人材流出等につながるおそれがあります。 <機会>人的資本の最大化による企業価値向上 当社グループは、事業戦略や技術戦略と同様に人的資本戦略を経営戦略の中核に位置付け、人材を価値創出の源泉として捉えております。付加価値生産性を重要な指標として人的資本マネジメントを行うと共に、高度専門人材や次世代リーダーの育成・獲得に注力しております。 これらの取り組みは、企業価値向上に向けた本質的な取り組みとして外部からも評価されており、当社は「人的資本経営品質2025(ゴールド)」に選定されました。人的資本の最大化を通じて付加価値創出力が高まることで、中長期的な企業価値向上につながる可能性があります。対応 当社グループでは、人材を持続的成長のための重要な経営資源と捉えております。企業理念「Sysmex Way」では、役職員に対し「多様性を受け入れ、一人ひとりの人格や個性を大切にすると共に、安心して能力が発揮できる職場環境を整えること、自主性とチャレンジ精神を尊重し、自己実現と成長の機会、成果に応じた公正な処遇を提供すること」を宣言しており、この考え方に基づき、人材育成及び人材活躍のための環境整備を推進しております。 従業員が自身のキャリアを主体的に形成できるよう、キャリア段階に応じた教育プログラムを提供すると共に、グループ全体でジョブ型人事制度を導入しております。これによりライフイベントを経た後も、能力・ポテンシャルに応じた登用が可能な仕組みを実現しております。また、全従業員を対象に、業務内容や生活スタイルに応じて働く場所や時間を選択できるハイブリッドワークスタイルを導入している他、信託型株式報酬をはじめとした魅力ある処遇制度の整備にも取り組んでおります。 更に、当社グループはアジアの製造業として初めて、人的資本情報開示に関する国際的なガイドラインであるISO30414を取得しております。今後も透明性の高い人的資本情報の開示に努めると共に、人材確保と人材維持の両面で企業の持続的成長を支える人事制度を充実させ、人的資本の最大化を目指してまいります。

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