事業の概要
- 多角的な事業展開東日本旅客鉄道は、鉄道事業を核としながらも、流通・サービス、不動産・ホテル、IT・Suicaなど多岐にわたる事業を展開しています。これにより、鉄道利用者だけでなく、駅ビルや商業施設、ホテル利用者など、幅広い顧客層から収益を得るビジネスモデルを構築しています。様々な事業が互いに連携し、相乗効果を生み出すことで、安定した収益基盤を築いています。
- 鉄道を中心とした旅客運送同社の主要事業は、関東・東北地方の1都16県にわたる広大なエリアでの鉄道旅客運送です。在来線6,108.0km、新幹線1,194.2km、合計7,302.2kmの営業キロと1,630駅を擁し、地域住民の生活やビジネスを支える重要なインフラを提供しています。この広範なネットワークが、他の事業への顧客誘導にも繋がっています。
- 生活ソリューション事業駅スペースを活用した小売・飲食業、ショッピングセンター運営、オフィスビル賃貸、ホテル運営など、人々の生活に密着したサービスを提供しています。これらの事業は、鉄道利用者の利便性向上だけでなく、駅周辺地域の活性化にも貢献し、鉄道事業以外の収益源として成長しています。特に駅ナカや駅ビルでの展開は、鉄道利用者の動線を捉えた効率的な収益確保に繋がっています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
セグメント構成
- 運輸事業(Transportation)鉄道事業を中心とした旅客運送が主要な収益源であり、売上高1兆9,457億円、営業利益1,760億円を計上しています。関東・東北地方の広範な鉄道ネットワークを基盤に、旅行業、清掃整備業、駅業務運営業、建設・設備工事業、鉄道車両製造・メンテナンス事業など多岐にわたる関連事業を展開し、安定した収益を確保しています。
- 流通・サービス事業(Trading and Service)駅スペースを活用した小売・飲食業、卸売業、貨物自動車運送事業、広告代理業などが含まれ、売上高3,937億円、営業利益605億円を計上しています。駅ナカや駅ビルでの商業施設運営が中心で、鉄道利用者の利便性向上と消費活動を促進することで、鉄道事業との相乗効果を生み出しています。
- 不動産・ホテル事業(Real Estate and Hotel)ショッピングセンター運営、オフィスビル賃貸、ホテル業、不動産開発・販売などが含まれ、売上高4,454億円、営業利益1,203億円を計上しています。駅周辺の優良な立地を活かした不動産開発と運営が特徴で、特にホテル事業はインバウンド需要の回復とともに高い収益性を実現しており、グループ全体の収益を牽引する重要な事業です。
2025-03 セグメント別業績
| セグメント | 区分 | 売上(億) | 営業利益(億) | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| TransportationReportableSegment | 事業 | 19,458 | 1,761 | 9.0% |
| TradingAndServiceReportableSegment | 事業 | 3,938 | 605 | 15.4% |
| RealEstateAndHotelReportableSegment | 事業 | 4,454 | 1,203 | 27.0% |
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3 【事業の内容】 当社及び当社の関係会社(子会社139社及び関連会社70社(2026年3月31日現在)においては、運輸事業、流通・サービス事業、不動産・ホテル事業、その他の事業を行っています。各事業における当社及び当社の関係会社の位置づけ等は次のとおりです。 なお、次の区分は「第5 経理の状況 1 (1)連結財務諸表 注記事項」に掲げるセグメント情報の区分と同一です。 (1)運輸事業 鉄道事業を中心とした旅客運送事業のほか、旅行業、清掃整備業、駅業務運営業、建設・設備工事業、鉄道車両製造事業及び鉄道車両メンテナンス事業等を展開しています。当社の鉄道事業の営業エリアは、主として関東及び東北地方の1都16県にわたり、駅数は1,632駅、営業キロは在来線が6,108.0km、新幹線が1,194.2km、総合計は7,302.2kmとなっています。当社の路線図は「第1 企業の概況 3 事業の内容」末尾に表示しています。主な関係会社:当社(鉄道旅客運送事業等)(自動車・鉄道旅客運輸サービス)◎ジェイアールバス関東㈱、◎東京モノレール㈱(旅行業) ◎㈱JR東日本びゅうツーリズム&セールス、○㈱JTB(清掃整備業) ◎㈱JR東日本環境アクセス(駅業務運営業) ◎㈱JR東日本ステーションサービス(建設・設備工事業) ○東鉄工業㈱、○第一建設工業㈱、○日本電設工業㈱、○日本リーテック㈱、○鉄建建設㈱(鉄道車両製造事業) ◎㈱総合車両製作所(鉄道車両メンテナンス事業) ◎JR東日本テクノロジー㈱ (2)流通・サービス事業 小売・飲食業、卸売業、貨物自動車運送事業及び広告代理業等の生活サービス事業を展開しています。主な関係会社:当社(駅スペースの創出等)(小売・飲食業) ◎㈱JR東日本クロスステーション、◎JR東日本東北総合サービス㈱(卸売業) ◎㈱JR東日本商事(貨物自動車運送事業) ◎㈱ジェイアール東日本物流(広告代理業) ◎㈱ジェイアール東日本企画 (3)不動産・ホテル事業 ショッピングセンターの運営事業、オフィスビル等の貸付業、ホテル業及びこれらを展開する不動産の開発・販売事業等の生活サービス事業を展開しています。主な関係会社:当社(ショッピングセンター・オフィスビル等の開発、ホテル業、不動産販売事業)(ショッピングセンター運営事業) ◎㈱ルミネ、◎㈱アトレ、◎㈱ジェイアール東日本都市開発(オフィスビル等貸付業) ◎㈱JR東日本ビルディング(ホテル業) ◎日本ホテル㈱、◎仙台ターミナルビル㈱(建設・設備工事業) ◎JR東日本ビルテック㈱(不動産開発事業) ◎JR東日本不動産㈱ (4)その他 クレジットカード事業等のIT・Suica事業及び情報処理業等を展開しています。主な関係会社:当社(IT・Suica事業、その他)(IT・Suica事業) ◎㈱ビューカード、◎JR東日本メカトロニクス㈱(情報処理業) ◎㈱JR東日本情報システム(発電事業) ◎JR東日本エネルギー開発㈱(建設コンサルタント業) ◎JR東日本コンサルタンツ㈱(その他) ○UQコミュニケーションズ㈱、○セントラル警備保障㈱ (注) ◎は連結子会社、○は持分法適用関連会社を示しています。なお、会社名は主たる事業において記載しています。 路線図
事業の優位性(モート)
事業の質(有価証券報告書から抽出)
数字に出ない事業の性質を、同じ物差しで全銘柄そろえています。FY2025時点の記載が出典です。
| 価格決定力値上げを通せるか。強いほどインフレ耐性が高い | 中程度 鉄道事業の運賃・料金は国土交通大臣の認可が必要なため。 |
|---|---|
| 参入障壁新規参入を阻む要因の種類 | 規制 鉄道事業法に基づき、国土交通大臣の許可及び運賃・料金の認可が必要。 |
| 顧客集中度特定顧客への依存度。高いほど失注リスクが大きい | 低い(分散) |
| 景気敏感度業績が景気循環にどれだけ振られるか | 中程度 |
| 設備投資の性質稼いだ現金がどれだけ設備維持に消えるか | 混合 |
| 規制依存規制は障壁にも足枷にもなる | 高い |
会社が挙げる主要リスク:鉄道事業における事故等の発生 / 気候変動及び自然災害等 / 感染症の発生等
同じ条件で他の銘柄を探す → 定性スクリーニング(価格決定力・参入障壁・景気敏感度などで絞り込めます)
モート総合 15 / 25 5類型それぞれの強度と、そう判定した根拠
無形資産★★★☆☆
JR東日本のブランド力は非常に高く、長年にわたり日本の鉄道インフラとしての信頼を確立している。Suicaなどの共通利用可能なサービスや、駅構内での商業施設展開(エキナカ)は、無形資産としての価値を高めている。ただし、新規参入や競合サービスによる代替可能性はゼロではない。
スイッチングコスト★★★★☆
首都圏における通勤・通学定期券の利用者は、JR東日本の路線網に強く依存しており、他社への乗り換えは時間的・地理的制約から非常に困難である。SuicaなどのICカードシステムへの慣れや、ポイントサービスなども乗り換え障壁となっている。
ネットワーク効果★☆☆☆☆
Suicaの普及は一定のネットワーク効果を生むが、決済手段としての汎用性は他社ICカードやスマホ決済とも競合しており、鉄道利用という限定的な範囲では、強力なネットワーク効果とは言えない。
コスト優位★★☆☆☆
鉄道インフラの維持・管理には莫大な固定費がかかるが、長年の経験と規模による効率化は進んでいる。しかし、新規参入が困難な一方で、既存インフラの老朽化対策や災害復旧コストは継続的に発生し、構造的なコスト優位性は限定的。
規模の経済★★★★★
首都圏を中心とした広範な鉄道路線網と、それに付随する駅、商業施設、ホテルなどを統合的に運営する規模は圧倒的であり、この規模で効率的な運営を行える競合は存在しない。インフラ投資の初期費用も膨大で、新規参入は極めて困難。
- 広範な鉄道ネットワーク東日本旅客鉄道は、関東および東北地方の1都16県にわたる広大な鉄道ネットワークを保有しており、これが最大の競争優位性です。この広範な路線網は、人々の移動手段として不可欠であり、他の交通機関との競争において有利な立場を確立しています。特に新幹線は、長距離移動における速達性と定時性で高いシェアを誇ります。
- 駅を核とした事業展開駅という立地を最大限に活用し、流通・サービス、不動産・ホテル、IT・Suicaといった多角的な事業を展開している点が強みです。駅は多くの人が集まる拠点であり、商業施設やホテル、オフィスビルなどを併設することで、鉄道利用者に加えて地域住民や観光客も取り込み、安定した収益を生み出しています。これにより、顧客の囲い込みと利便性向上を同時に実現しています。
- Suicaによる顧客基盤Suicaは、交通系ICカードとしてだけでなく、電子マネーとしても広く普及しており、同社の強力な顧客基盤となっています。Suicaの利用データは、顧客の行動分析やマーケティングに活用され、パーソナライズされたサービスの提供や新たな事業機会の創出に繋がっています。これにより、顧客のスイッチングコストを高め、継続的な利用を促進しています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
経営戦略
- 「究極の安全」の追求東日本旅客鉄道は、「究極の安全」を経営のトッププライオリティと位置づけ、不変の使命としています。東北新幹線の連結部外れや輪軸組立作業の不適切取扱いの反省を踏まえ、全車両の緊急総点検や恒久対策、社内規程の見直し、コンプライアンス教育の徹底など、グループ全体のガバナンス向上と安全レベルの継続的な向上を目指しています。
- 「ヒト起点」の価値創造グループ経営ビジョン「変革 2027」に基づき、「ヒト起点」の発想で輸送サービス、生活サービス、IT・Suicaサービスの融合と連携による新たな価値創造を目指しています。MaaSや「えきねっと」を活用した移動のシームレス化、多様なサービスのワンストップ化を推進し、顧客のあらゆる生活シーンで最適なサービスを提供することで、収益力向上を図ります。
- 経営体質の抜本的強化変化する経営環境に対応するため、国鉄時代に由来する事業運営体制と人事・賃金制度を抜本的に見直します。2本部・10支社体制から、地域の実情やニーズに密着した36の事業本部体制へ移行し、スピード感のある事業運営と高品質なサービス創造を目指します。また、社員の成長とチャレンジを後押しする人事・賃金制度を導入し、生産性向上と安定した人材確保にも取り組みます。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「経営方針・対処すべき課題・MD&A」の全文を見る(年度切替)
経営方針・経営戦略
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりです。 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日時点において当社グループが判断したものです。 (1)経営の基本方針(グループ理念) JR東日本グループは、全社員で安心と感動を持続的に生み出し、ステークホルダーの信頼に応え、すべての人の心豊かな生活を実現します。 (2)今後の経営環境の変化国内では人口減少や少子高齢化、首都圏への一極集中や地方の過疎化が進んでいます。物価や金利はますます上昇傾向にあり、資本コストや株価を意識した経営への要請も高まっています。また、AI やロボティクス、自動運転技術など、テクノロジーの進化も急激に加速しています。さらに、脱炭素社会に向けた取組みは地球規模の課題になっています。 (3)中期的な会社の経営戦略当連結会計年度において発生させた一連の輸送トラブルについて、今一度すべての業務を抜本的に見直し、安全・安定輸送の強化向上を図ります。特に、鉄道のシステムは車両・線路・電気など様々な設備や業務が相互に連関しているため、輸送トラブルの発生防止と対応力向上に向け、業務分野をまたがる総合的な知識能力や技術力を高めていきます。また、当社グループにおいて連続して発生させた不適切事象について、グループにおける内部統制の基本的な考え方を更新しました。「健全な企業風土」、「必要な体制やルール」、「活発なコミュニケーション」をベースにグループガバナンスの確立に向けて改善策を実行するとともに、グループ社員の日々の真面目で誠実な業務遂行により「信頼」を築き上げていきます。グループ経営ビジョン「勇翔2034」においても「安全」がグループ全体の経営のトッププライオリティであること、そして社員が新たな価値創造の「主役」であることはいささかも変わるものではありません。そのうえで、鉄道を中心としたモビリティと生活ソリューションの二軸それぞれの成長と、二軸を有するからこそ可能となる様々なシナジーの創出を通じて「安心」と「感動」を実現していきます。めざすのは「ヒト起点」での「ライフスタイル・トランスフォーメーション(LX)」です。 TAKANAWA GATEWAY CITY開発に象徴されるように、二軸を持つ当社グループだからこそできる強みをビジネス化し、既存事業の成長に加え、M&Aや新規事業創造といった非連続な成長を通じて、2031年度の営業収益4.3兆円程度をめざし、2034年度5兆円に向けた成長軌道を描きます。より良い世の中を創るための事業活動で得られた「価値」をお客さまや地域の皆さま、株主や投資家の皆さま、社員と家族の幸福の実現に還元するとともにグループの成長にも振り向ける、「四方良しの経営」を推進していきます。これからもステークホルダーの皆さまのご期待に応え、社会の進運を支える「志の高い企業グループ」として持続的な成長を実現していきます。 (4)目標とする経営数値 「勇翔2034」の数値目標については、経営の変化点となる2031年度を一つのターゲットと設定しており、ROEをKGI(長期的な経営目標)とし、2031年度に10%以上をめざします。KGI達成のためのKPIとして、ROA、営業収益、EBITDA、ネット有利子負債/EBITDAを設定しており、具体的には以下のとおりです。 2031年度(目標値)2025年度(実績値)連結営業収益4.3兆円程度30,846億円EBITDA※11.2兆円程度8,429億円ROA※25%以上3.9%ネット有利子負債※3/EBITDA5倍程度5.8倍ROE※410%以上 = KGI8.4%※1 EBITDA=連結営業利益+連結減価償却費※2 ROA:総資産営業利益率※3 ネット有利子負債=連結有利子負債残高-連結現金及び現金同等物残高※4 ROE:自己資本当期純利益率(注) 2026年3月末時点で当社グループが適用している会計基準に基づく (5)経営方針と事業の経過及び対処すべき課題 当連結会計年度において発生させた一連の輸送トラブルにより、お客さまに多大なご心配とご迷惑をおかけしたこと、また、ステークホルダーの信頼を損なう不適切事象をグループ内で連続して発生させたことについて、心より深くお詫び申し上げます。安全・安定輸送に対する信頼、グループのガバナンスに対する信頼、この2つの信頼を揺るがす事態を引き起こしてしまったことを重く受け止めています。信頼が当社グループの最大の財産であり、成長の礎であることをグループ社員一人ひとりが改めて胸に刻み込み、一連の事象により大きく損なわれた信頼を、グループ一丸となって取り戻していきます。 当社グループは、「当たり前を超えていく。」をキーワードに、グループの持続的成長をステージアップするため、2025年7月にグループ経営ビジョン「勇翔2034」を発表しました。 「勇翔2034」においても「安全」がグループ経営のトッププライオリティであることに変わりはありません。安全とコンプライアンスを意識した「健全な業務遂行」により、鉄道を中心としたモビリティと生活ソリューションの二軸それぞれの成長と、二軸を有するからこそ可能となる様々なシナジーを創出し、「安心」と「感動」をお届けすることで、すべての人の心の豊かさを実現していきます。 当社グループの商品・サービスは毎日のべ3,500万人のお客さまにご利用いただいています。スピード感と構想力をもち、「ヒト起点のマーケットイン」で商品やサービスを常にバリューアップし、連結キャッシュ・フローの最大化に努めていきます。 また、2026年7月にはそれぞれの地域のマーケットやお客さまのご利用状況などを踏まえたより細やかでスピード感のある36の事業本部での事業運営体制に改正し、これまで以上に「お客さま第一」「地域密着」の事業運営を実現するとともに、社員の働き方を変革していきます。 「勇翔2034」で創造する価値としてライフスタイル・トランスフォーメーション(LX)を掲げ、社会課題や潜在ニーズに向き合い生活様式を革新し、思いやりとワクワクにあふれる社会を創ります。多くのステークホルダーのご期待に応え、社会の進運を支える「志の高い企業グループ」として持続的な成長を実現していきます。 ○ 「安全」がトッププライオリティ 「安全」はグループ経営のトッププライオリティです。当社グループの不変の使命である「究極の安全」を追求し、不断に安全レベルを向上させていきます。 当連結会計年度においては2025年5月に山手線新橋駅構内で架線断線に伴う輸送障害を、6月には山形新幹線E8系で車両故障を発生させたほか、2026年1月に山手線・京浜東北線・常磐線において、翌2月には宇都宮線においてそれぞれ停電による大規模輸送トラブルを発生させました。また、同月に京葉線八丁堀駅でエスカレーター火災を発生させ、3月には中央本線において走行中の車両のドアが開くという事象を発生させました。一連の輸送トラブルにより、お客さまに多大なご心配とご迷惑をおかけしました。 今一度すべての業務を抜本的に見直し、安全・安定輸送の強化向上に取り組みます。特に鉄道のシステムは、車両・線路・電気など様々な設備や業務が相互に連関しているため、輸送トラブルの発生防止と対応力向上に向け、業務分野をまたがる総合的な知識能力や技術力を高めていく必要があります。また、AIやドローンなど先端技術の導入にも努めていきます。 具体的には、安全の最後の砦はヒトであることを踏まえて、「①安全・安定輸送に関する業務フロー(作業手順)の見直し」「②異常時の対応力向上」「③検査や点検のレベルアップ」「④設備メンテナンスや事故復旧にあたる第一線社員の技術力の向上・強化」「⑤設備の維持管理に関わる修繕費の増額」「⑥グループ会社、パートナー会社の体制・技術力の維持」に取り組んでいきます。 「究極の安全」の追求は鉄道を中心としたモビリティ、生活ソリューションに区別なく、共通の課題です。お客さまに安心してご利用いただけるサービスを提供するため、グループ一体となって取り組んでいきます。 ○ グループ全体のガバナンスの改善と強化に向けた取組み 当社グループは2024年から2025年にかけて、中央省庁等向けの委託事業及び補助事業に関する不正な人件費請求をはじめ、輪軸組立作業における圧入力値の不適切事象、独占禁止法に抵触するおそれのある行為に対する公正取引委員会からの警告等、ステークホルダーの信頼を損なう事象を連続して発生させました。これらの事態を受けて、経営への信頼を取り戻すべく、2025年7月1日に外部有識者を招いた「グループ全体のガバナンスの改善と強化に向けた有識者委員会」を設置しました。 有識者委員会が取りまとめた報告書及び取締役会における議論を踏まえ、具体的な改善策を2026年3月18日に公表しました。グループにおける内部統制の基本的な考え方を更新するとともに、「健全な企業風土」、「必要な体制やルール」、「活発なコミュニケーション」をベースにグループガバナンスの確立に向けた改善策を実行することで、「勇翔2034」を推進し新たな事業領域に取り組んでいく基盤を構築します。 ○ すべての事業の基盤となる信頼 当社グループでは、「勇翔2034」において、「信頼」をすべての事業の基盤と位置づけています。一連の輸送トラブル、複数の不適切事象といった事業の基盤が崩壊しかねない事象を発生させたことを厳しい教訓と捉え、コンプライアンスの確保とグループ全体のガバナンスの改善と強化に継続して取り組みます。また、先人が培ってきた経験・技術を継承するだけでなく、最先端の技術力で社会を変えていく真の技術サービス産業をめざすことで、ステークホルダーの期待に応え、すべての事業の基盤である「信頼」をより強固なものにしていきます。 〇 モビリティ(運輸事業) 当社グループは、2025年9月にモビリティとして初となる中長期成長戦略「PRIDE & INTEGRITY」を発表しました。人手不足やAIに象徴される技術の急速な進化など、現在、日本や世界が直面している多岐にわたる大きな変化に正面から向き合い、成長を続けます。環境に優しく時間に正確で大量高速輸送が可能な鉄道と、駅から目的地まで柔軟に移動できる輸送モードを最適な形で組み合わせる「モビリティのベストミックス」を主体となって実現し、多様化するお客さまの移動ニーズにきめ細かくお応えすることで、すべての人の心豊かな生活を実現します。 10年後へのアプローチとして、輸送障害の防止と発生時の対応力強化により輸送品質を高めるとともに、新幹線車両増備などによりさらなる輸送力強化を推進します。加えて、新たな夜行特急列車など移動が楽しくなる付加価値の高い移動空間やコンサートの戦略的誘致などによる魅力的な目的地の創出、インバウンド向けプロモーションの強化などにより、交流人口の拡大を図ります。さらに、モビリティの資産である鉄道用地を再編・開発し、生活ソリューションとのシナジーにより地域の拠点と新たな流動を創造することで、収益力を向上させていきます。 また、人口減少や少子高齢化に加え、物価高騰など鉄道事業の収益確保が厳しさを増すなか、多様化するお客さまニーズや鉄道に求められる社会的役割を果たすための設備投資や修繕などに必要な資金を安定的に確保することが困難な状況となっていることから、会社発足以来、消費税転嫁やバリアフリー料金の導入等を除き、実質的に初めてとなる運賃改定を2026年3月14日に実施しました。ご利用いただく多くのお客さまにご負担をお願いすることとなりますが、ホームドア整備や自然災害対策、ターミナル駅の改良やシームレスな移動の実現など、安全やサービスを向上させるとともに、社会課題を解決していきます。また、シンプルかつ柔軟な運賃料金制度の実現に向けて、引き続き国に要望していきます。 さらに、地方ローカル線については、地域の関係者と連携した利用促進の取組みに加え、設備のスリム化、運行形態の見直しなどによる運営の効率化を推進する一方、引き続き沿線自治体などと協議を進め、地域とともに利便性・持続可能性の高い交通体系を実現していきます。 また、当社グループでは、鉄道業界全体のサステナブルな事業運営に貢献するため、他の鉄道事業者にも参画を呼び掛け、技術や部品の共通化を実現するとともに、一般社団法人海外鉄道技術協力協会(JARTS)の協力をいただき、特定技能人材育成研修をスタートさせました。本研修をはじめ、当社グループ及び鉄道業界の未来を創造する総合的な人材育成プログラムを展開していきます。 ○ 生活ソリューション(流通・サービス事業、不動産・ホテル事業、その他) 当社グループは、2024年6月に中長期ビジネス成長戦略「Beyond the Border」を策定しました。生活ソリューションにおいては「Beyond the Border」でめざす世界を具体化し、グループの豊富なアセットや、リアルとデジタルの顧客接点を活かし、既存事業の変革や新たな事業展開を推進します。また、「2033年度までの生活ソリューションの収益・利益を倍増(2023年度比)」という目標を2年前倒して実現し、さらに営業収益1,500億円、営業利益1,000億円の増をめざしていきます。 流通・サービス事業では、コンプライアンスと安全への確かな取組みを通じてお客さまの信頼を築き、「安心」を感じていただける商品やサービスを提供していきます。多様なニーズに応えるため、「ヒト起点のマーケットイン」を推進し、「JRE MALL」やデータに基づき最適な時間・場所で広告配信が可能なプラットフォーム「MASTRUM(マストラム)」などのデジタルサービスにより顧客接点を拡大し、新たなコミュニケーションを構築します。また、「NewDays」の鉄道他社等、交通結節点への出店や、スマートロッカー「マルチエキューブ」の当社グループ用地外への設置、列車荷物輸送サービス「はこビュン」のネットワーク拡大・サービス拡充などにより収益拡大を図ります。さらに、Beyond Stations構想に基づきイマーシブ空間やスマート健康ステーションの拡大等を通じて、駅の価値向上を進めます。 不動産・ホテル事業においては、当社グループの強みである利便性の高い立地や豊富なアセットを活かし、特に「成長のエンジン」に位置づけている不動産事業の成長をめざします。2026年4月15日に伊藤忠グループとの不動産事業分野における統合契約を締結しました。統合会社において両者の強みを掛け合わせ、今後5年間で売上2,500億円規模をめざし、不動産事業を飛躍的に成長させていきます。引き続き、物件の取得・売却のスピードと規模を拡大し、不動産回転型ビジネスを加速させ、不動産ファンド事業における資産運用規模を2031年度までに1.2兆円へ拡大するとともに、6,000億円超の不動産販売営業利益を創出していきます。また、「TAKANAWA GATEWAY CITY」グランドオープン及び「OIMACHI TRACKS」のまちびらきなど、当社グループが浜松町駅から大井町駅で展開する「広域品川圏(Greater Shinagawa)」の共創まちづくりが本格始動しました。「広域品川圏」を都市生活のイノベーションが生まれる先進エリアと捉え、地域、企業、大学等の様々な関係者と共創して、先進性・エリア価値向上に資する取組みを展開していきます。さらに、新宿駅周辺や渋谷駅街区の大規模再開発など先進的かつ魅力的な街づくりを推進します。 2024年12月には「Suicaの当たり前を超えます~Suica Renaissance~」を公表しました。Suicaを「移動と少額決済のデバイス」から「生活のデバイス」へと進化させ、あらゆるビジネスの基盤として二軸経営によるシナジーを発揮していきます。2025年2月には分散していたIDをJRE IDに統合する取組みをスタートさせました。また、タッチ不要のウォークスルー改札を2027年春に広域品川圏に導入するほか、「上限額(2万円)」や「事前チャージ」という現在のSuicaの当たり前を超えるコード決済サービス「teppay」を2025年11月に発表し、2026年秋より提供を開始する予定です。さらに、2025年12月にはご当地Suica(モバイルSuicaとマイナンバーカードを連携することにより、「Suica」と「MaaS(Mobility as a Service)」と「生活サービス」を一体化したサービス)を2027年春に群馬県と宮城県へ導入することを発表しました。今後両県で磨いたモデルを各地へ広げ、地方創生を実現していきます。 ○ サステナビリティ グループ理念がめざす「すべての人の心豊かな生活の実現」に向け、サステナビリティをグループ経営の重要な方針と位置づけ、社会的価値と経済的価値の創出をめざします。事業活動で得られた価値を、お客さまや地域の皆さま、株主や投資家の皆さま、社員と家族の幸福の実現に還元するとともにグループの成長にも振り向ける、「四方良しの経営」を推進していきます。 環境(E)については、2020年度に公表した環境長期目標「ゼロカーボン・チャレンジ2050」に掲げる2050年度のCO₂排出量「実質ゼロ」の達成に向け、2035年度、2040年度の中間目標を新たに設定しました。引き続きゼロカーボンに向けた挑戦を続け、持続可能な社会の実現をめざして新たな価値をお届けしていきます。さらに、使用電力量の削減を目的とした在来線車両向け次世代車両駆動用インバータ装置の山手線車両への試験的搭載や水素ハイブリッド電車「HYBARI」についての実証試験を進め、2030年度の営業運転開始をめざします。 社会(S)については、伴走型地域づくり、DXを通じた社会課題の解決による地方創生を実現するとともに、ホスピタリティマインドのある社員の育成、障がい当事者との対話を通じたサービス品質の改善、パラスポーツの体験・支援を通じて共生社会への理解を促進し、お客さまや地域の皆さまとともに「心のバリアフリー」を推進します。また、2025年12月には、日本電気株式会社が運営するラグビーチーム「NECグリーンロケッツ東葛」を2026年7月に当社が引き継ぐことを発表しました。企業スポーツの推進を通じて健全な人材育成、競技人口のすそ野の拡大、地域の活力の醸成など、社会課題の解決に取り組みます。 企業統治(G)については、グループ全体のガバナンスの改善と強化に向けた取組みに加え、取締役会規則等の改正を行い、中長期的な経営戦略に関する議論の活性化や、業務執行状況のモニタリング強化、業務執行の迅速化を行っています。今後もコーポレート・ガバナンスを一層充実させ、さらなる企業価値向上をめざします。 ○ 成長の基盤となる戦略の推進 「勇翔2034」の実現に向け、その成長の基盤となる安全、CX、人材、イノベーション、財務・投資の戦略を策定し、グループ一体で取り組んでいきます。 安全については、経営のトッププライオリティとして、「グループ安全計画2028」のブラッシュアップに取り組みます。一連の輸送トラブルを踏まえ、2026年度の設備の維持管理に関わる修繕費を増額し、2026年度末までにコロナ期の影響をすべて取り戻すべく、交換・修繕を実施します。また、衝突や脱線防止、ホームドア整備を進めるとともに、倒木・倒竹などの自然災害に対するリスクの低減に向けて安全設備への計画的な投資を行います。さらに、当社グループ・パートナー会社・協力会社が一体となり構築しているJES-Net(JR East Safety Network)において、モビリティと生活ソリューションそれぞれの分科会を設置し、安全における価値観・方向性の一致、連携強化、安全の取組みの推進を通じ、グループ全体の安全レベルを向上させていきます。 CX(Customer eXperience)については、グループ全体でめざすサービス品質の方向性をまとめた「グループCX戦略ビジョン2030」を策定しました。お客さまや地域の皆さまから期待されるサービス品質のレベルは日々変化し高まっているため、「お客さま体験価値ファースト」を掲げてグループ全体の力を結集し、お客さまとの接点を可視化し、ニーズを分析してサービスを改善していきます。さらに、業務フロー(作業手順)の見直しや異常時の対応力向上(実践的な訓練、わかりやすい情報提供など)を通じた安全・安定輸送の強化向上など、お客さまとのすべての接点において安心・感動をお届けする取組みを推進していきます。 人材については、2025年5月に発表した「人事・賃金制度の改正」と「事業運営体制の再編」を「勇翔2034」を推進する両輪に位置づけ、社員の挑戦と活躍を後押ししていきます。「DEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)」と「健康経営」を人材戦略の土台と位置づけ、「多様性」「革新性」「柔軟性」の3つの基本方針を推進することで、社員と会社の新たなエンゲージメントを創出していきます。また、すべての技術分野の採用を従来計画よりさらに150名拡大するとともに、多様な人材が活躍できる企業文化を創造することで、グループ全体の生産性を向上させ、モビリティと生活ソリューションの二軸経営を推進します。 イノベーションについては、「技術サービス企業グループ」としてさらなる高みをめざし、業務へのAIの導入や水素の活用を加速させるとともに、フュージョン等の新エネルギー、宇宙を含む広いフィールドでの技術革新を通じて、持続可能な未来を拓きます。2026年度を「AI・DX元年」と位置づけ、取組みを進めます。 財務・投資については、2034年度営業収益5兆円に向けた成長軌道を確立し、「勇翔2034」の実現に向けた連結キャッシュ・フローの最大化に取り組みます。また、強靭でサステナブルな資材調達体制の構築や、適正かつ確実な決算の遂行とAI等の導入による業務変革を進めます。さらに、「事業運営体制の再編」を通じて、各事業本部における自律的な経営に取り組みます。 これらの戦略を着実に推進することで、ライフスタイル・トランスフォーメーション(LX)という新たな価値の創造に取り組んでいきます。 経営のモードを本格攻勢に切り替え、「すべての人の心豊かな生活」に向けて、「勇翔2034」を本格始動させていきます。
対処すべき課題
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりです。 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日時点において当社グループが判断したものです。 (1)経営の基本方針(グループ理念) JR東日本グループは、全社員で安心と感動を持続的に生み出し、ステークホルダーの信頼に応え、すべての人の心豊かな生活を実現します。 (2)今後の経営環境の変化国内では人口減少や少子高齢化、首都圏への一極集中や地方の過疎化が進んでいます。物価や金利はますます上昇傾向にあり、資本コストや株価を意識した経営への要請も高まっています。また、AI やロボティクス、自動運転技術など、テクノロジーの進化も急激に加速しています。さらに、脱炭素社会に向けた取組みは地球規模の課題になっています。 (3)中期的な会社の経営戦略当連結会計年度において発生させた一連の輸送トラブルについて、今一度すべての業務を抜本的に見直し、安全・安定輸送の強化向上を図ります。特に、鉄道のシステムは車両・線路・電気など様々な設備や業務が相互に連関しているため、輸送トラブルの発生防止と対応力向上に向け、業務分野をまたがる総合的な知識能力や技術力を高めていきます。また、当社グループにおいて連続して発生させた不適切事象について、グループにおける内部統制の基本的な考え方を更新しました。「健全な企業風土」、「必要な体制やルール」、「活発なコミュニケーション」をベースにグループガバナンスの確立に向けて改善策を実行するとともに、グループ社員の日々の真面目で誠実な業務遂行により「信頼」を築き上げていきます。グループ経営ビジョン「勇翔2034」においても「安全」がグループ全体の経営のトッププライオリティであること、そして社員が新たな価値創造の「主役」であることはいささかも変わるものではありません。そのうえで、鉄道を中心としたモビリティと生活ソリューションの二軸それぞれの成長と、二軸を有するからこそ可能となる様々なシナジーの創出を通じて「安心」と「感動」を実現していきます。めざすのは「ヒト起点」での「ライフスタイル・トランスフォーメーション(LX)」です。 TAKANAWA GATEWAY CITY開発に象徴されるように、二軸を持つ当社グループだからこそできる強みをビジネス化し、既存事業の成長に加え、M&Aや新規事業創造といった非連続な成長を通じて、2031年度の営業収益4.3兆円程度をめざし、2034年度5兆円に向けた成長軌道を描きます。より良い世の中を創るための事業活動で得られた「価値」をお客さまや地域の皆さま、株主や投資家の皆さま、社員と家族の幸福の実現に還元するとともにグループの成長にも振り向ける、「四方良しの経営」を推進していきます。これからもステークホルダーの皆さまのご期待に応え、社会の進運を支える「志の高い企業グループ」として持続的な成長を実現していきます。 (4)目標とする経営数値 「勇翔2034」の数値目標については、経営の変化点となる2031年度を一つのターゲットと設定しており、ROEをKGI(長期的な経営目標)とし、2031年度に10%以上をめざします。KGI達成のためのKPIとして、ROA、営業収益、EBITDA、ネット有利子負債/EBITDAを設定しており、具体的には以下のとおりです。 2031年度(目標値)2025年度(実績値)連結営業収益4.3兆円程度30,846億円EBITDA※11.2兆円程度8,429億円ROA※25%以上3.9%ネット有利子負債※3/EBITDA5倍程度5.8倍ROE※410%以上 = KGI8.4%※1 EBITDA=連結営業利益+連結減価償却費※2 ROA:総資産営業利益率※3 ネット有利子負債=連結有利子負債残高-連結現金及び現金同等物残高※4 ROE:自己資本当期純利益率(注) 2026年3月末時点で当社グループが適用している会計基準に基づく (5)経営方針と事業の経過及び対処すべき課題 当連結会計年度において発生させた一連の輸送トラブルにより、お客さまに多大なご心配とご迷惑をおかけしたこと、また、ステークホルダーの信頼を損なう不適切事象をグループ内で連続して発生させたことについて、心より深くお詫び申し上げます。安全・安定輸送に対する信頼、グループのガバナンスに対する信頼、この2つの信頼を揺るがす事態を引き起こしてしまったことを重く受け止めています。信頼が当社グループの最大の財産であり、成長の礎であることをグループ社員一人ひとりが改めて胸に刻み込み、一連の事象により大きく損なわれた信頼を、グループ一丸となって取り戻していきます。 当社グループは、「当たり前を超えていく。」をキーワードに、グループの持続的成長をステージアップするため、2025年7月にグループ経営ビジョン「勇翔2034」を発表しました。 「勇翔2034」においても「安全」がグループ経営のトッププライオリティであることに変わりはありません。安全とコンプライアンスを意識した「健全な業務遂行」により、鉄道を中心としたモビリティと生活ソリューションの二軸それぞれの成長と、二軸を有するからこそ可能となる様々なシナジーを創出し、「安心」と「感動」をお届けすることで、すべての人の心の豊かさを実現していきます。 当社グループの商品・サービスは毎日のべ3,500万人のお客さまにご利用いただいています。スピード感と構想力をもち、「ヒト起点のマーケットイン」で商品やサービスを常にバリューアップし、連結キャッシュ・フローの最大化に努めていきます。 また、2026年7月にはそれぞれの地域のマーケットやお客さまのご利用状況などを踏まえたより細やかでスピード感のある36の事業本部での事業運営体制に改正し、これまで以上に「お客さま第一」「地域密着」の事業運営を実現するとともに、社員の働き方を変革していきます。 「勇翔2034」で創造する価値としてライフスタイル・トランスフォーメーション(LX)を掲げ、社会課題や潜在ニーズに向き合い生活様式を革新し、思いやりとワクワクにあふれる社会を創ります。多くのステークホルダーのご期待に応え、社会の進運を支える「志の高い企業グループ」として持続的な成長を実現していきます。 ○ 「安全」がトッププライオリティ 「安全」はグループ経営のトッププライオリティです。当社グループの不変の使命である「究極の安全」を追求し、不断に安全レベルを向上させていきます。 当連結会計年度においては2025年5月に山手線新橋駅構内で架線断線に伴う輸送障害を、6月には山形新幹線E8系で車両故障を発生させたほか、2026年1月に山手線・京浜東北線・常磐線において、翌2月には宇都宮線においてそれぞれ停電による大規模輸送トラブルを発生させました。また、同月に京葉線八丁堀駅でエスカレーター火災を発生させ、3月には中央本線において走行中の車両のドアが開くという事象を発生させました。一連の輸送トラブルにより、お客さまに多大なご心配とご迷惑をおかけしました。 今一度すべての業務を抜本的に見直し、安全・安定輸送の強化向上に取り組みます。特に鉄道のシステムは、車両・線路・電気など様々な設備や業務が相互に連関しているため、輸送トラブルの発生防止と対応力向上に向け、業務分野をまたがる総合的な知識能力や技術力を高めていく必要があります。また、AIやドローンなど先端技術の導入にも努めていきます。 具体的には、安全の最後の砦はヒトであることを踏まえて、「①安全・安定輸送に関する業務フロー(作業手順)の見直し」「②異常時の対応力向上」「③検査や点検のレベルアップ」「④設備メンテナンスや事故復旧にあたる第一線社員の技術力の向上・強化」「⑤設備の維持管理に関わる修繕費の増額」「⑥グループ会社、パートナー会社の体制・技術力の維持」に取り組んでいきます。 「究極の安全」の追求は鉄道を中心としたモビリティ、生活ソリューションに区別なく、共通の課題です。お客さまに安心してご利用いただけるサービスを提供するため、グループ一体となって取り組んでいきます。 ○ グループ全体のガバナンスの改善と強化に向けた取組み 当社グループは2024年から2025年にかけて、中央省庁等向けの委託事業及び補助事業に関する不正な人件費請求をはじめ、輪軸組立作業における圧入力値の不適切事象、独占禁止法に抵触するおそれのある行為に対する公正取引委員会からの警告等、ステークホルダーの信頼を損なう事象を連続して発生させました。これらの事態を受けて、経営への信頼を取り戻すべく、2025年7月1日に外部有識者を招いた「グループ全体のガバナンスの改善と強化に向けた有識者委員会」を設置しました。 有識者委員会が取りまとめた報告書及び取締役会における議論を踏まえ、具体的な改善策を2026年3月18日に公表しました。グループにおける内部統制の基本的な考え方を更新するとともに、「健全な企業風土」、「必要な体制やルール」、「活発なコミュニケーション」をベースにグループガバナンスの確立に向けた改善策を実行することで、「勇翔2034」を推進し新たな事業領域に取り組んでいく基盤を構築します。 ○ すべての事業の基盤となる信頼 当社グループでは、「勇翔2034」において、「信頼」をすべての事業の基盤と位置づけています。一連の輸送トラブル、複数の不適切事象といった事業の基盤が崩壊しかねない事象を発生させたことを厳しい教訓と捉え、コンプライアンスの確保とグループ全体のガバナンスの改善と強化に継続して取り組みます。また、先人が培ってきた経験・技術を継承するだけでなく、最先端の技術力で社会を変えていく真の技術サービス産業をめざすことで、ステークホルダーの期待に応え、すべての事業の基盤である「信頼」をより強固なものにしていきます。 〇 モビリティ(運輸事業) 当社グループは、2025年9月にモビリティとして初となる中長期成長戦略「PRIDE & INTEGRITY」を発表しました。人手不足やAIに象徴される技術の急速な進化など、現在、日本や世界が直面している多岐にわたる大きな変化に正面から向き合い、成長を続けます。環境に優しく時間に正確で大量高速輸送が可能な鉄道と、駅から目的地まで柔軟に移動できる輸送モードを最適な形で組み合わせる「モビリティのベストミックス」を主体となって実現し、多様化するお客さまの移動ニーズにきめ細かくお応えすることで、すべての人の心豊かな生活を実現します。 10年後へのアプローチとして、輸送障害の防止と発生時の対応力強化により輸送品質を高めるとともに、新幹線車両増備などによりさらなる輸送力強化を推進します。加えて、新たな夜行特急列車など移動が楽しくなる付加価値の高い移動空間やコンサートの戦略的誘致などによる魅力的な目的地の創出、インバウンド向けプロモーションの強化などにより、交流人口の拡大を図ります。さらに、モビリティの資産である鉄道用地を再編・開発し、生活ソリューションとのシナジーにより地域の拠点と新たな流動を創造することで、収益力を向上させていきます。 また、人口減少や少子高齢化に加え、物価高騰など鉄道事業の収益確保が厳しさを増すなか、多様化するお客さまニーズや鉄道に求められる社会的役割を果たすための設備投資や修繕などに必要な資金を安定的に確保することが困難な状況となっていることから、会社発足以来、消費税転嫁やバリアフリー料金の導入等を除き、実質的に初めてとなる運賃改定を2026年3月14日に実施しました。ご利用いただく多くのお客さまにご負担をお願いすることとなりますが、ホームドア整備や自然災害対策、ターミナル駅の改良やシームレスな移動の実現など、安全やサービスを向上させるとともに、社会課題を解決していきます。また、シンプルかつ柔軟な運賃料金制度の実現に向けて、引き続き国に要望していきます。 さらに、地方ローカル線については、地域の関係者と連携した利用促進の取組みに加え、設備のスリム化、運行形態の見直しなどによる運営の効率化を推進する一方、引き続き沿線自治体などと協議を進め、地域とともに利便性・持続可能性の高い交通体系を実現していきます。 また、当社グループでは、鉄道業界全体のサステナブルな事業運営に貢献するため、他の鉄道事業者にも参画を呼び掛け、技術や部品の共通化を実現するとともに、一般社団法人海外鉄道技術協力協会(JARTS)の協力をいただき、特定技能人材育成研修をスタートさせました。本研修をはじめ、当社グループ及び鉄道業界の未来を創造する総合的な人材育成プログラムを展開していきます。 ○ 生活ソリューション(流通・サービス事業、不動産・ホテル事業、その他) 当社グループは、2024年6月に中長期ビジネス成長戦略「Beyond the Border」を策定しました。生活ソリューションにおいては「Beyond the Border」でめざす世界を具体化し、グループの豊富なアセットや、リアルとデジタルの顧客接点を活かし、既存事業の変革や新たな事業展開を推進します。また、「2033年度までの生活ソリューションの収益・利益を倍増(2023年度比)」という目標を2年前倒して実現し、さらに営業収益1,500億円、営業利益1,000億円の増をめざしていきます。 流通・サービス事業では、コンプライアンスと安全への確かな取組みを通じてお客さまの信頼を築き、「安心」を感じていただける商品やサービスを提供していきます。多様なニーズに応えるため、「ヒト起点のマーケットイン」を推進し、「JRE MALL」やデータに基づき最適な時間・場所で広告配信が可能なプラットフォーム「MASTRUM(マストラム)」などのデジタルサービスにより顧客接点を拡大し、新たなコミュニケーションを構築します。また、「NewDays」の鉄道他社等、交通結節点への出店や、スマートロッカー「マルチエキューブ」の当社グループ用地外への設置、列車荷物輸送サービス「はこビュン」のネットワーク拡大・サービス拡充などにより収益拡大を図ります。さらに、Beyond Stations構想に基づきイマーシブ空間やスマート健康ステーションの拡大等を通じて、駅の価値向上を進めます。 不動産・ホテル事業においては、当社グループの強みである利便性の高い立地や豊富なアセットを活かし、特に「成長のエンジン」に位置づけている不動産事業の成長をめざします。2026年4月15日に伊藤忠グループとの不動産事業分野における統合契約を締結しました。統合会社において両者の強みを掛け合わせ、今後5年間で売上2,500億円規模をめざし、不動産事業を飛躍的に成長させていきます。引き続き、物件の取得・売却のスピードと規模を拡大し、不動産回転型ビジネスを加速させ、不動産ファンド事業における資産運用規模を2031年度までに1.2兆円へ拡大するとともに、6,000億円超の不動産販売営業利益を創出していきます。また、「TAKANAWA GATEWAY CITY」グランドオープン及び「OIMACHI TRACKS」のまちびらきなど、当社グループが浜松町駅から大井町駅で展開する「広域品川圏(Greater Shinagawa)」の共創まちづくりが本格始動しました。「広域品川圏」を都市生活のイノベーションが生まれる先進エリアと捉え、地域、企業、大学等の様々な関係者と共創して、先進性・エリア価値向上に資する取組みを展開していきます。さらに、新宿駅周辺や渋谷駅街区の大規模再開発など先進的かつ魅力的な街づくりを推進します。 2024年12月には「Suicaの当たり前を超えます~Suica Renaissance~」を公表しました。Suicaを「移動と少額決済のデバイス」から「生活のデバイス」へと進化させ、あらゆるビジネスの基盤として二軸経営によるシナジーを発揮していきます。2025年2月には分散していたIDをJRE IDに統合する取組みをスタートさせました。また、タッチ不要のウォークスルー改札を2027年春に広域品川圏に導入するほか、「上限額(2万円)」や「事前チャージ」という現在のSuicaの当たり前を超えるコード決済サービス「teppay」を2025年11月に発表し、2026年秋より提供を開始する予定です。さらに、2025年12月にはご当地Suica(モバイルSuicaとマイナンバーカードを連携することにより、「Suica」と「MaaS(Mobility as a Service)」と「生活サービス」を一体化したサービス)を2027年春に群馬県と宮城県へ導入することを発表しました。今後両県で磨いたモデルを各地へ広げ、地方創生を実現していきます。 ○ サステナビリティ グループ理念がめざす「すべての人の心豊かな生活の実現」に向け、サステナビリティをグループ経営の重要な方針と位置づけ、社会的価値と経済的価値の創出をめざします。事業活動で得られた価値を、お客さまや地域の皆さま、株主や投資家の皆さま、社員と家族の幸福の実現に還元するとともにグループの成長にも振り向ける、「四方良しの経営」を推進していきます。 環境(E)については、2020年度に公表した環境長期目標「ゼロカーボン・チャレンジ2050」に掲げる2050年度のCO₂排出量「実質ゼロ」の達成に向け、2035年度、2040年度の中間目標を新たに設定しました。引き続きゼロカーボンに向けた挑戦を続け、持続可能な社会の実現をめざして新たな価値をお届けしていきます。さらに、使用電力量の削減を目的とした在来線車両向け次世代車両駆動用インバータ装置の山手線車両への試験的搭載や水素ハイブリッド電車「HYBARI」についての実証試験を進め、2030年度の営業運転開始をめざします。 社会(S)については、伴走型地域づくり、DXを通じた社会課題の解決による地方創生を実現するとともに、ホスピタリティマインドのある社員の育成、障がい当事者との対話を通じたサービス品質の改善、パラスポーツの体験・支援を通じて共生社会への理解を促進し、お客さまや地域の皆さまとともに「心のバリアフリー」を推進します。また、2025年12月には、日本電気株式会社が運営するラグビーチーム「NECグリーンロケッツ東葛」を2026年7月に当社が引き継ぐことを発表しました。企業スポーツの推進を通じて健全な人材育成、競技人口のすそ野の拡大、地域の活力の醸成など、社会課題の解決に取り組みます。 企業統治(G)については、グループ全体のガバナンスの改善と強化に向けた取組みに加え、取締役会規則等の改正を行い、中長期的な経営戦略に関する議論の活性化や、業務執行状況のモニタリング強化、業務執行の迅速化を行っています。今後もコーポレート・ガバナンスを一層充実させ、さらなる企業価値向上をめざします。 ○ 成長の基盤となる戦略の推進 「勇翔2034」の実現に向け、その成長の基盤となる安全、CX、人材、イノベーション、財務・投資の戦略を策定し、グループ一体で取り組んでいきます。 安全については、経営のトッププライオリティとして、「グループ安全計画2028」のブラッシュアップに取り組みます。一連の輸送トラブルを踏まえ、2026年度の設備の維持管理に関わる修繕費を増額し、2026年度末までにコロナ期の影響をすべて取り戻すべく、交換・修繕を実施します。また、衝突や脱線防止、ホームドア整備を進めるとともに、倒木・倒竹などの自然災害に対するリスクの低減に向けて安全設備への計画的な投資を行います。さらに、当社グループ・パートナー会社・協力会社が一体となり構築しているJES-Net(JR East Safety Network)において、モビリティと生活ソリューションそれぞれの分科会を設置し、安全における価値観・方向性の一致、連携強化、安全の取組みの推進を通じ、グループ全体の安全レベルを向上させていきます。 CX(Customer eXperience)については、グループ全体でめざすサービス品質の方向性をまとめた「グループCX戦略ビジョン2030」を策定しました。お客さまや地域の皆さまから期待されるサービス品質のレベルは日々変化し高まっているため、「お客さま体験価値ファースト」を掲げてグループ全体の力を結集し、お客さまとの接点を可視化し、ニーズを分析してサービスを改善していきます。さらに、業務フロー(作業手順)の見直しや異常時の対応力向上(実践的な訓練、わかりやすい情報提供など)を通じた安全・安定輸送の強化向上など、お客さまとのすべての接点において安心・感動をお届けする取組みを推進していきます。 人材については、2025年5月に発表した「人事・賃金制度の改正」と「事業運営体制の再編」を「勇翔2034」を推進する両輪に位置づけ、社員の挑戦と活躍を後押ししていきます。「DEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)」と「健康経営」を人材戦略の土台と位置づけ、「多様性」「革新性」「柔軟性」の3つの基本方針を推進することで、社員と会社の新たなエンゲージメントを創出していきます。また、すべての技術分野の採用を従来計画よりさらに150名拡大するとともに、多様な人材が活躍できる企業文化を創造することで、グループ全体の生産性を向上させ、モビリティと生活ソリューションの二軸経営を推進します。 イノベーションについては、「技術サービス企業グループ」としてさらなる高みをめざし、業務へのAIの導入や水素の活用を加速させるとともに、フュージョン等の新エネルギー、宇宙を含む広いフィールドでの技術革新を通じて、持続可能な未来を拓きます。2026年度を「AI・DX元年」と位置づけ、取組みを進めます。 財務・投資については、2034年度営業収益5兆円に向けた成長軌道を確立し、「勇翔2034」の実現に向けた連結キャッシュ・フローの最大化に取り組みます。また、強靭でサステナブルな資材調達体制の構築や、適正かつ確実な決算の遂行とAI等の導入による業務変革を進めます。さらに、「事業運営体制の再編」を通じて、各事業本部における自律的な経営に取り組みます。 これらの戦略を着実に推進することで、ライフスタイル・トランスフォーメーション(LX)という新たな価値の創造に取り組んでいきます。 経営のモードを本格攻勢に切り替え、「すべての人の心豊かな生活」に向けて、「勇翔2034」を本格始動させていきます。
MD&A(経営者による分析)
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1) 経営成績等の状況の概要 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。 ① 財政状態及び経営成績の状況 当連結会計年度におけるわが国経済は、緩やかな回復基調でしたが、物価高騰、米国の通商政策及び中東情勢等の不透明さを伴い推移しました。 当社グループにおいては、これまでの当たり前を超えグループの持続的成長をステージアップするため、2025年7月に新たなグループ経営ビジョン「勇翔2034」を発表しました。「勇翔2034」においても「安全」はグループ経営のトッププライオリティに位置づけられることに変わりはなく、そのうえで「グループ全体のガバナンスの改善と強化」、「すべての事業の基盤となる信頼」、「モビリティ(運輸事業)」と「生活ソリューション(流通・サービス事業、不動産・ホテル事業、その他)」の二軸経営、「サステナビリティ」及び「成長の基盤となる戦略の推進」に取り組みました。 「究極の安全」の追求に向けて、「グループ安全計画2028」のもと、「本質をふまえ、想定外も想像して安全を先取る」をテーマに掲げ、「お客さまの死傷事故ゼロ、社員の死亡事故ゼロ」を実現するため、グループ一体で安全の基盤を強固にし、安全を先取る取組みを進めました。安全・安定輸送のさらなるレベルアップを図るために、システム・地上装置等の強化、モニタリング技術を活用した故障の予兆の把握や新幹線のトンネル検査への「ひび割れ自動抽出技術」及び「二時期比較技術」の導入を進めました。また、高架橋柱や電化柱の耐震補強及び新幹線車両の逸脱防止対策を進めたほか、新幹線早期地震検知システムに導入している日本海溝海底地震津波観測網の海底地震計情報を在来線早期地震警報システムにも導入するなど、地震対策に取り組みました。さらに、駅におけるさらなる安全レベルの向上をめざし、エスカレーター滞留停止システムやお客さまの車両への接近を検知するシステムを導入したほか、鉄道駅バリアフリー料金制度を活用したホームドアなどの整備を進めました。 「モビリティ」では、「Japanese Beauty Hokurikuキャンペーン」での北陸エリアの魅力発信、新型車両E8系に置き換わる山形新幹線を盛り上げる「つばさ、つなぐ。」プロジェクトの実施、訪日外国人向けに「JR EAST PASS」の新規設定や「JR East-South Hokkaido Rail Pass」の東北や新潟へのエリア拡大など、当社エリアにおけるお客さまの流動促進と収益の拡大に取り組みました。「えきねっと」では、「えきねっとQチケ」サービスエリア拡大や新幹線を乗車日の3か月前からご購入いただける「早期予約サービス」を開始したほか、輸送障害時におけるWEB上での変更・払戻し機能や「JRE ID」及び「JAL MaaS」との連携を開始しました。また、モビリティとして初となる中長期成長戦略「PRIDE & INTEGRITY」を発表したほか、安全・サービスの維持向上、車両・設備の更新、バリアフリー設備の拡充や激甚化する災害への対策等を着実に進めました。さらに、今後も鉄道事業を持続的に運営していくため、2026年3月14日に運賃を改定したほか、横浜・根岸線(八王子・大船間)でワンマン運転を実施しました。地方ローカル線については沿線自治体などと持続可能な交通体系の構築に向けた協議を進めました。鉄道の特性を十分に発揮できていない津軽線(蟹田・三厩間)及び久留里線(久留里・上総亀山間)については、自治体との合意を経て、2027年4月に鉄道事業を廃止することを発表し、新たな交通モードへの転換の準備を進めました。 「生活ソリューション」では、「TAKANAWA GATEWAY CITY」のグランドオープン、「OIMACHI TRACKS」のまちびらきにより、広域品川圏の共創まちづくりを本格始動させました。2025年5月には沿線まるごとホテル「Satologue」のオープン、2025年9月には「BLUE FRONT SHIBAURA TOWER S」の全体開業、2026年3月には「LiSH AKITA」の開設やホテル「和のゐ 角館」をリニューアル開業しました。また、不動産回転型ビジネスを加速させるため、伊藤忠グループと不動産分野における戦略的提携に関する基本合意書を締結しました。列車荷物輸送サービス「はこビュン」においては、荷物専用新幹線の運行を開始したほか、JALグループと連携した新輸送サービス「JAL de はこビュン」の販売を開始しました。さらに、「Welcome Suica Mobile」と「JR-EAST Train Reservation」との連携を開始するとともに、しなの鉄道へのSuica導入や上越新幹線においてウォークスルー改札の実現に向けた実証実験を実施するなど、「Suicaの当たり前を超えます~Suica Renaissance~」を推進しました。 「サステナビリティ」では、持続可能な社会の実現に向け、環境(E)・社会(S)・企業統治(G)の取組みを行いました。環境(E)については、「ゼロカーボン・チャレンジ2050」達成に向けた取組みに加え、食品廃棄物を活用したお米の生産や地産地消による「農業リサイクルループ」の実現、さらに再生可能エネルギー由来の電力を東北新幹線における運転用電力の一部として導入しました。また、国内最大級のプラスチックリサイクル施設「Jサーキュラーシステム」が本格稼働したほか、初めて一関市にて森づくりを開催しました。社会(S)については、「東京2025 デフリンピック」について、交通広告媒体を活用し認知向上と気運醸成を図ったほか、パラスポーツや障がいのある作家が描くアート作品などを通じて、共生社会の実現に向けた取組みを実施しました。企業統治(G)については、社員の果敢なチャレンジを支援促進する仕組み・制度(チャレンジツールマップ)の更新を行ったほか、非常勤役員とグループ会社社員とのコミュニケーション強化を図る取組みを実施しました。 「成長の基盤となる戦略の推進」では、安全において、安全シンポジウムや安全行動表彰での好事例の共有など、モビリティと生活ソリューション二軸の相互の強みを生かす施策を実施しました。また、安全のレベルアップに向けて「安全に関する取組み状態を把握するための指標」の導入や、「安全の取組みの核となる人」のさらなる活躍に向けた基盤の構築を行いました。CXにおいては、南武線における慢性遅延対策など、輸送品質の向上に取り組んだほか、グループ全体のサービス介助士資格取得率向上に注力しました。人材においては、新卒初任給の引上げや育児・介護関連の短時間勤務の対象の拡大など育児・介護関連の勤務制度を新設・拡充しました。また、海外における鉄道ビジネスの推進・開発に強みを発揮する能力や専門性のある人材として「海外戦略職」の採用を行いました。さらに、グループ一体で戦略的にDEIの取組みを推進し、働く社員の力を最大限に引き出すため、「JR東日本グループDEIポリシー」を策定しました。イノベーションにおいては、モビリティと生活ソリューションの二軸経営を推進するためのDXのめざす姿をDXストーリーとしてまとめた「DX REPORT 2025」を発行しました。また、生成AIを用いた自動音声アシスタント「どこトレダイヤル」による運行情報の提供や駅放送案内を文字化しお客さまのスマートフォン等に表示するサービス「みえるアナウンス」の試行導入など、ヒト起点の発想とデジタル技術、オープンイノベーションの活用により、お客さまのニーズに応えたサービスを展開しました。さらに、従来よりも電線本数が少ない「SMART インテグレート架線」を新たに導入したほか、首都圏線区の全線区に架線設備モニタリングを導入拡大するなど、スマートメンテナンスの取組みを推進しました。財務・投資においては、「勇翔2034」で掲げる二軸経営による2031年度の数値目標及び2031年度までのキャッシュ・アロケーションを策定しました。また、各ビジネスの利益成長による営業キャッシュ・フローの拡大に加え、不動産販売の規模拡大や政策保有株式の縮減によるアセットマネジメントを着実に推進し、キャッシュインの最大化を図りました。 今後も、グループ経営ビジョン「勇翔2034」の実現に向けてグループ一体で取り組みます。 当連結会計年度の決算については、鉄道のご利用増やエキナカ店舗の売上増に伴い、すべてのセグメントで増収となったことなどにより、営業収益は前期比6.8%増の3兆846億円となりました。また、これに伴って営業利益は前期比9.9%増の4,142億円、経常利益は前期比9.4%増の3,516億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比10.5%増の2,478億円となりました。 セグメントの業績は次のとおりであります。 a 運輸事業 運輸事業では、安全・安定輸送及びサービス品質の確保にグループの総力を挙げて取り組み、中長期成長戦略「PRIDE & INTEGRITY」などを推進しました。 この結果、鉄道の利用増に伴い、鉄道運輸収入が増加したことなどにより、売上高は前期比5.1%増の2兆458億円となり、営業利益は前期比10.4%増の1,944億円となりました。 b 流通・サービス事業 流通・サービス事業では、駅を交通の拠点からヒト・モノ・コトがつながる暮らしのプラットフォームへと転換する「Beyond Stations構想」などを推進しました。 この結果、お客さまのご利用増に伴い、エキナカ店舗の売上が増加したことなどにより、売上高は前期比5.7%増の4,161億円となり、営業利益は前期比12.5%増の680億円となりました。 c 不動産・ホテル事業 不動産・ホテル事業では、大規模ターミナル駅開発や沿線開発など「くらしづくり(まちづくり)」を推進し、地域とともに街の魅力を高めました。 この結果、不動産販売の売上増に加え、オフィス賃貸収入やショッピングセンター・ホテルの売上が増加したことなどにより、売上高は前期比15.2%増の5,132億円となり、営業利益は前期比6.6%増の1,282億円となりました。 d その他 その他の事業では、Suicaの利用シーンのさらなる拡大と、シームレスでストレスフリーな移動を実現することに加え、「生活のデバイス」への進化を通じた新たな体験価値の創造に向けて「Suicaの当たり前を超えます~Suica Renaissance~」を推進しました。 この結果、ICカード事業関連の売上が増加したことなどにより、売上高は前期比6.8%増の1,094億円となり、営業利益は前期比32.0%増の302億円となりました。 (注) 当社は、「セグメント情報等の開示に関する会計基準」(企業会計基準第17号 平成22年6月30日)及び「セグメント情報等の開示に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第20号 平成20年3月21日)におけるセグメント利益について、各セグメントの営業利益としています。 (参考)当社の鉄道事業の営業実績 当社の鉄道事業の最近の営業実績は次のとおりであります。 輸送実績区分単位第38期(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)第39期(自 2025年4月1日至 2026年3月31日)営業日数日365365営業キロ新幹線キロ1,194.21,194.2在来線〃6,108.06,108.0計〃7,302.27,302.2客車走行キロ新幹線千キロ545,760555,984在来線〃1,705,7531,716,191計〃2,251,5142,272,176輸送人員定期千人3,404,2543,487,035定期外〃2,463,3482,547,267計〃5,867,6036,034,303輸送人キロ新幹線定期千人キロ1,758,3191,885,660定期外〃20,920,93821,850,287計〃22,679,25723,735,947在来線関東圏定期〃58,757,37460,516,368定期外〃37,532,86538,716,239計〃96,290,24099,232,608その他定期〃2,768,4152,772,902定期外〃2,570,3382,522,287計〃5,338,7535,295,189計定期〃61,525,78963,289,270定期外〃40,103,20341,238,527計〃101,628,993104,527,798合計定期〃63,284,10965,174,931定期外〃61,024,14263,088,814計〃124,308,251128,263,745乗車効率新幹線%60.462.5在来線〃42.643.6計〃45.046.2(注)1 乗車効率は次の方法により算出しています。乗車効率=輸送人キロ×100客車走行キロ×客車平均定員2 「関東圏」とは、当社首都圏本部、横浜支社、八王子支社、大宮支社、高崎支社、水戸支社及び千葉支社管内の範囲であります。 収入実績区分単位第38期(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)第39期(自 2025年4月1日至 2026年3月31日)旅客運輸収入新幹線定期百万円23,68325,426定期外〃559,637592,051計〃583,320617,477在来線関東圏定期〃388,126395,767定期外〃732,136768,217計〃1,120,2631,163,985その他定期〃16,61216,557定期外〃48,63950,517計〃65,25267,074計定期〃404,739412,325定期外〃780,776818,735計〃1,185,5151,231,060合計定期〃428,422437,751定期外〃1,340,4131,410,786計〃1,768,8361,848,537荷物収入〃0-合計〃1,768,8361,848,537鉄道線路使用料収入〃5,6396,616運輸雑収〃157,821165,288収入合計〃1,932,2962,020,442 ② キャッシュ・フローの状況 当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローについては、税金等調整前当期純利益の増加などにより、流入額は前連結会計年度に比べ328億円増の7,650億円となりました。 投資活動によるキャッシュ・フローについては、有形及び無形固定資産の取得による支出が増加したことなどにより、流出額は前連結会計年度に比べ941億円増の8,776億円となりました。 財務活動によるキャッシュ・フローについては、流入額は前連結会計年度に比べ1,350億円増の1,387億円となりました。 なお、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ285億円増の2,620億円となりました。 また、当連結会計年度末のネット有利子負債残高は4兆9,001億円となりました。なお、「ネット有利子負債」とは、連結有利子負債残高から連結現金及び現金同等物の期末残高を差し引いた数値であります。 ③ 生産、受注及び販売の実績 当社及び当社の連結子会社の大多数は、受注生産形態をとらない業態です。 なお、販売の実績については、「(1)経営成績等の状況の概要」におけるセグメントの業績に関連づけて示しています。 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。 ① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容a 経営成績○ 営業収益 当連結会計年度の営業収益は、鉄道の利用増やエキナカ店舗、ショッピングセンター、ホテルの売上増に伴い、すべてのセグメントで増収となったことなどにより、前期比6.8%増の3兆846億円(対10月業績予想266億円増)となりました。 運輸事業の外部顧客への売上高は、前期比5.1%増の2兆458億円(対10月業績予想148億円増)となりました。 これは、鉄道の利用増に伴い、鉄道運輸収入が増加したことなどによるものであります。 新幹線に関しては、鉄道の利用増に伴い、輸送人キロは前期比4.7%増の237億人キロとなりました。定期収入は前期比7.4%増の254億円、定期外収入は前期比5.8%増の5,920億円となり、全体では前期比5.9%増の6,174億円となりました。 関東圏の在来線に関しては、鉄道の利用増に伴い、輸送人キロは前期比3.1%増の992億人キロとなりました。定期収入は前期比2.0%増の3,957億円、定期外収入は前期比4.9%増の7,682億円となり、全体では前期比3.9%増の1兆1,639億円となりました。 関東圏以外の在来線に関しては、輸送人キロは前期比0.8%減の52億人キロとなりました。定期収入は前期比0.3%減の165億円、定期外収入は前期比3.9%増の505億円となり、全体では前期比2.8%増の670億円となりました。 運輸事業以外の事業の外部顧客への売上高については、以下のとおりであります。 流通・サービス事業では、お客さまのご利用増に伴い、エキナカ店舗の売上が増加したことなどにより、前期比5.7%増の4,161億円(対10月業績予想18億円減)となりました。 不動産・ホテル事業では、不動産販売の売上増に加え、オフィス賃貸収入やショッピングセンター・ホテルの売上が増加したことなどにより、前期比15.2%増の5,132億円(対10月業績予想72億円増)となりました。 その他の事業では、ICカード事業関連の売上が増加したことなどにより、前期比6.8%増の1,094億円(対10月業績予想64億円増)となりました。 ○ 営業費用 営業費用は、前期比6.4%増の2兆6,704億円となりました。営業収益に対する営業費用の比率は、前連結会計年度の87.0%に対し、当連結会計年度は86.6%となりました。 運輸業等営業費及び売上原価は、前期比5.2%増の1兆9,528億円となりました。これは、物件費が増加したことなどによるものであります。 販売費及び一般管理費は、前期比9.5%増の7,175億円となりました。これは、物件費が増加したことなどによるものであります。 ○ 営業利益 営業利益は、前期比9.9%増の4,142億円(対10月業績予想92億円増)となりました。営業収益に対する営業利益の比率は、前連結会計年度の13.0%に対し、当連結会計年度は13.4%となりました。 ○ 営業外損益 営業外収益は、前期比2.4%増の286億円となりました。これは、受取利息が増加したことなどによるものであります。 営業外費用は、前期比9.7%増の912億円となりました。これは、支払利息が増加したことなどによるものであります。 ○ 経常利益 経常利益は、前期比9.4%増の3,516億円(対10月業績予想106億円増)となりました。営業収益に対する経常利益の比率は、前連結会計年度の11.1%に対し、当連結会計年度は11.4%となりました。 ○ 特別損益 特別利益は、前期比78.2%増の803億円となりました。これは、投資有価証券売却益が増加したことなどによるものであります。 特別損失は、前期比41.1%増の979億円となりました。これは、人事・賃金制度改正に伴う退職給付制度改定損を計上したことなどによるものであります。 ○ 税金等調整前当期純利益 税金等調整前当期純利益は、前期比12.4%増の3,340億円となりました。営業収益に対する税金等調整前当期純利益の比率は、前連結会計年度の10.3%に対し、当連結会計年度は10.8%となりました。 ○ 親会社株主に帰属する当期純利益 親会社株主に帰属する当期純利益は、税金等調整前当期純利益の増加などにより、前期比10.5%増の2,478億円(対10月業績予想108億円増)となりました。1株当たり当期純利益は、前連結会計年度の198.29円に対し、当連結会計年度は219.42円となりました。また、営業収益に対する親会社株主に帰属する当期純利益の比率は、前連結会計年度の7.8%に対し、当連結会計年度は8.0%となりました。 b 財政状態 当連結会計年度末の資産残高は前連結会計年度末に比べ6,465億円増の10兆8,207億円、負債残高は前連結会計年度末に比べ4,586億円増の7兆7,606億円、純資産残高は前連結会計年度末に比べ1,878億円増の3兆600億円となりました。 運輸事業においては、大規模地震対策やホームドア整備、車両新造などに伴う工事などに4,239億円の投資を行ったことなどにより、当連結会計年度末の資産残高は7兆5,220億円となりました。 流通・サービス事業においては、新規店舗の展開や既存店舗の改良などに349億円の投資を行ったことなどにより、当連結会計年度末の資産残高は4,324億円となりました。 不動産・ホテル事業においては、「TAKANAWA GATEWAY CITY」や「OIMACHI TRACKS」、「渋谷スクランブルスクエア」建設工事など、ショッピングセンターやオフィスビル、ホテルの建設などに4,543億円の投資を行ったことなどにより、当連結会計年度末の資産残高は2兆7,656億円となりました。 その他の事業においては、システム開発などに358億円の投資を行ったことなどにより、当連結会計年度末の資産残高は1兆4,821億円となりました。 ② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報a キャッシュ・フロー 営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ328億円の資金の増加となり、7,650億円の流入となりました。これは、税金等調整前当期純利益の増加などによるものであります。 投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ941億円の資金の減少となり、8,776億円の流出となりました。これは、有形及び無形固定資産の取得による支出が増加したことなどによるものであります。 なお、設備投資の概要は以下のとおりです。 運輸事業に関しては、大規模地震対策やホームドア整備、車両新造などの設備投資を実施しました。流通・サービス事業に関しては、新規店舗の展開や既存店舗の改良などを行いました。不動産・ホテル事業に関しては、「TAKANAWA GATEWAY CITY」や「OIMACHI TRACKS」、「渋谷スクランブルスクエア」建設工事など、ショッピングセンターやオフィスビル、ホテルの建設等の設備投資を実施しました。その他の事業においては、システム開発などの設備投資を実施しました。 また、フリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ613億円の資金の減少となり、1,125億円の流出となりました。 財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ1,350億円の資金の増加となり、1,387億円の流入となりました。 なお、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末の2,334億円から285億円増加し、2,620億円となりました。 b 財務政策 グループ経営ビジョン「勇翔2034」の実現に向けて、キャッシュ・アロケーションについて、「成長資金」においては、収益力向上や生産性向上に資する投資を積極的に実施します。また、稼ぐための「基盤維持・強化資金」においては、大規模地震対策やホームドア整備など安全のレベルアップに資する投資を引き続き着実に進めるとともに、安全の確保を大前提とした投資の選択と集中を徹底します。さらに「LX資金」を新設し、革新的なイノベーションを推進します。2025年度から2031年度まで総額6.6兆円の投資を計画しています。また、株主還元については、配当性向40%をめざすこととしています。このために必要な資金については、営業キャッシュ・フローによるほか、社債の発行や金融機関からの借入等による資金調達を行っており、連結有利子負債残高は、連結営業収益、利益に応じた水準とすることを中長期的な考え方としています。具体的には、ネット有利子負債/EBITDAを2031年度に5倍程度とすることをめざしています。 「ネット有利子負債」とは、連結有利子負債残高から連結現金及び現金同等物の期末残高を差し引いた数値であり、当連結会計年度末のネット有利子負債残高は4兆9,001億円となりました(なお、当連結会計年度末の有利子負債残高は5兆1,622億円であります)。また、「EBITDA」とは、連結営業利益に連結減価償却費を加えた数値であり、当連結会計年度のEBITDAは8,429億円となりました。 当社グループはキャッシュマネジメントシステム(CMS)を導入しており、CMS参加各社の余裕資金の運用と資金調達の管理を一括して行い、連結ベースでの資金効率の向上に努めています。また、グループ間決済の相殺やグループ内の支払業務を集約する支払代行制度などの資金管理手法を採用しています。 当社は、健全な財務体質の維持・向上及び十分な手元流動性の確保を基本方針に置き、社債の発行や金融機関等からの借入により資金調達を行っています。 当連結会計年度に国内において償還期限を2030年から2045年の間とする5本の無担保普通社債を総額1,350億円発行しました。これらの社債については、株式会社格付投資情報センターよりAA+の格付けを取得しています。また、海外において償還期限を2037年及び2045年とする2本の無担保普通社債を総額8.5億ユーロ(1,460億円)及び3億ポンド(596億円)発行しました。これらの社債は、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン株式会社よりA+、ムーディーズ・ジャパン株式会社よりA1の長期債格付けを取得しています。その他、金融機関等から2,409億円の長期資金を借り入れました。なお、借入先の拡大や中期年限の活用等により安定調達と支払利息の抑制に努めました。 新幹線鉄道施設に関連する鉄道施設購入長期未払金は、元利均等半年賦支払であり、年利6.55%の固定利率により2051年9月30日までに支払われる3,020億円であります。 このほか、当連結会計年度末現在、東京モノレール㈱が1億円の鉄道施設購入長期未払金を有しています。 短期資金の需要に対応するため、当連結会計年度末現在、主要な銀行に総額3,600億円の当座借越枠を設定しています。また、コマーシャル・ペーパーについては、当連結会計年度末現在、株式会社格付投資情報センターよりa-1+、株式会社日本格付研究所よりJ-1+の短期債(CP)格付けを取得しています。なお、当連結会計年度末における当座借越残高及びコマーシャル・ペーパーの発行残高はありません。さらに、当連結会計年度末現在、銀行からのコミットメント・ライン(一定の条件のもと契約内での借入れが自由にできる融資枠)を600億円設定していますが、当連結会計年度末におけるコミットメント・ラインの使用残高はありません。 ③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 当社の連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されており、連結財務諸表の作成に当たっては、連結決算日における資産・負債及び当連結会計年度における収益・費用の数値に影響を与える事項について、過去の実績や現在の状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき見積りを行った上で、継続して評価を行っています。ただし、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。 連結財務諸表の作成に当たって用いた見積りや仮定のうち、財政状態及び経営成績に重要な影響を与える可能性がある項目は以下のとおりです。 a 固定資産の減損 固定資産の減損に関する仮定に関しては、「第5 経理の状況 1 (1) 連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しています。 b 退職給付債務の見積り 従業員の退職給付債務は、割引率、昇給率、退職率、死亡率等の数理計算上の前提条件を用いて見積りを行っています。数理計算上の前提条件と実績が異なる場合又は前提条件の変更があった場合は、翌連結会計年度の退職給付債務の見積りに影響を与える可能性があります。
事業リスク
- 鉄道事故による影響鉄道事業における事故は、顧客の信頼失墜や社会的評価の低下を招くだけでなく、補償費用や事業中断による収益減少など、経営に重大な影響を与える可能性があります。同社は安全を最優先事項とし、自動列車停止装置(ATS-P)の整備やホームドアの設置など、ハード・ソフト両面から安全対策を強化していますが、予期せぬ事故のリスクは常に存在します。
- 自然災害の激甚化近年、集中豪雨や大型台風、大規模地震などの自然災害が頻発・激甚化しており、鉄道施設や関連設備の損壊、大規模停電による運行停止など、事業継続に大きな支障をきたす可能性があります。同社は耐震補強や早期地震検知システム、レーダ雨量規制の導入など対策を進めていますが、想定を超える災害が発生した場合、復旧に多大な時間と費用を要するリスクがあります。
- 感染症流行の影響国内外での感染症の流行は、外出自粛や経済活動の制限により、鉄道の輸送量減少、商業施設の休業や利用者の減少、インバウンド需要の激減など、同社グループの財政状態や経営成績に多大な影響を与える可能性があります。過去の新型コロナウイルス感染症の経験を踏まえ、感染拡大防止策を講じていますが、新たな感染症の発生や再拡大は依然として大きなリスクです。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「事業等のリスク」の全文を見る(年度切替)
3 【事業等のリスク】 当社グループでは、各事業に共通・特有のリスクの回避・低減に取り組んでおります。具体的には、毎年事業全体のリスクを外部の知見や社内の意見等をもとに洗い出し、発生頻度及び影響度を踏まえた分析・評価を行ったうえでその年度の重要リスクを定め、回避・低減策を検討・実施しております。このように、PDCAサイクルを回してリスクの見直し等を図り、取締役会でリスク回避・低減に向けた取組みの達成度・進捗をモニタリングするとともに今後の方針について検討を行い、リスクマネジメントの実効性を確保しております。 今後、当社グループが収益力の向上や構造改革に取り組むためには、リスクを損失回避等のマイナス要素を減らす観点から捉えるだけでなく、リスクテイクも含め、当社グループの価値を積極的に向上させる観点を含めた「幅広いリスクマネジメント」が重要です。 これにより、安定的で適正な業務の運営の確保に加えて、当社グループ社員の成長に向けた果敢なチャレンジを支援・促進してまいります。 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。 (1) 鉄道事業における事故等の発生 鉄道事業において事故等が発生した場合、当社グループに対するお客さまの信頼や社会的評価が失墜するだけでなく、お客さまへの補償や事故等の影響による事業の中断等により経営に重大な影響を与える可能性があります。 当社グループは、安全を経営のトッププライオリティと位置づけ、ハード、ソフトの両面から安全性の高い鉄道システムづくりに取り組み、会社発足時から8回目となる安全5ヵ年計画「グループ安全計画2028~本質をふまえ、想定外も想像して安全を先取る~」に基づき施策を着実に実施しました。 具体的には、当社グループに起因する鉄道運転事故を防止するため、自動列車停止装置(ATS-P)整備などの列車脱線事故等の対策や、駅や車両基地等の屋根の落下対策などの基幹設備の強靭化を進めました。 踏切事故対策については、踏切の整理統廃合、踏切支障報知装置の増設や障害物検知装置の高機能化等を進めるとともに、警察や道路管理者等と連携し「踏切事故0(ゼロ)運動」として踏切通行者等への啓発活動を行いました。 また、ホームにおけるお客さまと列車の接触や線路への転落を防止する対策として、東京圏在来線の主要路線330駅758番線へのホームドアの整備を進めており、2025年度末現在、線区単位の162駅345番線に整備が完了しました。また、他の鉄道社局と合同で「プラットホーム事故0運動」等の啓発活動を実施しました。 当社グループを取り巻く環境は、自然災害の激甚化・頻発化、人口減少、DXの進展など、激しく変化しています。これらの変化に対応するために、築いてきた「安全文化」や安全の「しくみ」「設備」など、安全の基盤を強固にし「これまでは想定外であったリスク」を本質の理解により想像し、安全を先取る取組みを進め「究極の安全」を追求してまいります。 (2) 気候変動及び自然災害等 近年、集中豪雨や大型化した台風などの異常気象リスクが高まっております。これらの集中豪雨や台風だけでなく、大規模地震・津波、洪水、火山といった自然災害等によって、当社グループの鉄道及び関連施設等が損壊し、大きな被害を受ける可能性があります。また、自然災害等に起因する大規模停電により、鉄道の運行を継続できない可能性があります。さらに、大規模災害時においてサプライヤーの被災や配送網の寸断により事業継続に必要な物品の安定的な供給を受けることができなくなることも考えられます。 自然災害に対するリスクの低減として、当社グループは次の取組みを進めています。大規模地震対策として、高架橋柱や電柱等の耐震補強を進めるとともに、走行中の列車を早く止める早期地震検知システムを導入しています。また、新幹線は脱線後被害軽減を目的に車両の逸脱防止対策の整備と改良を進めています。局地的大雨に対しては、詳細に雨を把握し運転規制を行う「レーダ雨量規制」を従来の運転規制に追加して在来線全線区に導入し、浸水対策としては「車両疎開判断支援システム」を浸水の可能性のある車両留置箇所に導入しています。また、各種自然災害発生時の対応力を向上するための訓練を定期的に実施しています。今後も「グループ安全計画2028」に基づき、自然災害に対するリスク低減の取組みを進めてまいります。 一方、自然災害等による大規模停電に備えて、主要なターミナル駅などにおける非常用発電機の運転時間の長時間化を進めております。さらに、安定した調達を継続するため、複数のサプライヤーから調達できるように取組みを進めております。 (3) 感染症の発生等 重大な感染症が国内外において流行した場合、経済活動の制限やお客さまの外出自粛、社員の罹患等により、当社グループの事業が継続できなくなるおそれがあり、当社グループの財政状態及び経営成績に多大な影響を与える可能性があります。 コロナ禍では、鉄道の輸送量の大幅な減少、当社グループの商業施設の休業や利用者の減少等が発生したほか、海外からの入国制限等によりインバウンド需要が減少し、当社グループの業績は大きな影響を受けました。 今後も社会に影響を与えるような感染症の発生・拡大に際しては、政府・自治体等と連携しながら、当社で定める「新型インフルエンザ等対策業務計画」に基づき、お客さまの安全・安心の確保を最優先に、適切な輸送を確保するため必要な措置を講じてまいります。 (4) 他事業者等との競合及び外部環境の変化 当社グループは、鉄道事業において他の鉄道及び航空機、自動車、バス等の対抗輸送機関と競合関係にあるほか、生活ソリューションにつながる事業においても、既存及び新規の事業者と競合しております。これらに加え、外部環境の変化の加速や、当社グループではコントロールできない要因などにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。 鉄道事業においては、格安航空会社(LCC)の路線拡大、高速道路の拡充、自動運転技術の実用化などによる交通市場の競争激化や人口減少、少子高齢化の進行、在宅勤務などの働き方改革の浸透等により、輸送量が減少し、同事業の収益等に影響を与える可能性があります。また、採用難による人材不足や資材の供給不安などにより、事業の正常な運営に影響を与える可能性があります。 このような中、当社グループは、グループ経営ビジョン「勇翔2034」を策定し、鉄道を中心としたモビリティと生活ソリューションの二軸それぞれの成長と、二軸を有するからこそ可能となる、様々なシナジーの創出を通じて、ライフスタイル・トランスフォーメーション(LX)の実現をめざしています。「モビリティ」においては、モビリティ中長期成長戦略「PRIDE & INTEGRITY」のもと、列車内でしか味わえない特別な体験や新たな夜行特急列車の運行など楽しくなる付加価値の高い移動空間を届け、出かけたくなる魅力的な目的地を創出するほか、海外向けプロモーションの強化や海外メジャー予約サイトとの連携を通じて訪れたくなる東日本の魅力を世界に発信するなど、多様化するお客さまの移動ニーズにきめ細かくお応えします。「生活ソリューション」においては、中長期ビジネス戦略「Beyond the Border」のもと、当社グループの強みであるリアルとデジタルの接点を活かしながら、ヒト起点のマーケットインによる「移動の目的地づくり」や「Suicaを軸としたDXによる個客との接点強化」、「魅力的なまちづくり」等を推進していきます。経営環境の変化を先取りした新たな社会的価値や経済的価値をステークホルダーに提供していくことをめざして取り組んでまいります。また、ワンマン運転の拡大、将来の自動運転やドライバレス運転の実現、ウォークスルー改札の開発・導入、メンテナンス業務の仕組みの見直しといった、技術革新・生産性向上に取り組むことにより、モビリティをより強靭なシステムへと進化させていきます。そのほか、安定した人材確保に向けたグループ全体での採用活動や、安定調達を継続するための新たなサプライヤーの開拓などにも取り組んでおります。 (5) 犯罪・テロ行為及び情報システム障害等の発生 犯罪・テロ行為の発生により、当社の鉄道事業等における安全性が脅かされる可能性があります。 当社グループでは、鉄道のセキュリティ強化に向け、車内の防犯カメラの増設や、鉄道施設におけるカメラの増設・ネットワーク化による集中監視を実施しているほか、新幹線・在来線のすべての車両や主要駅等に防犯・護身用具を配備する等の対策を実施しております。 また、当社グループは、モビリティに関する事業と生活ソリューションにつながる様々な業務分野で、多くの情報システムを用いております。当社グループと密接な取引関係にある他の会社や鉄道情報システム株式会社等においても、情報システムが重要な役割を果たしております。サイバー攻撃や人為的ミス等によってこれらの情報システムの機能に重大な障害が発生した場合、当社グループの業務運営に影響を与える可能性があります。さらに、コンピュータウイルスの感染や人為的不正操作等により情報システム上の個人情報等が外部に流出した場合やデータが改ざんされた場合、社会的信用の失墜等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。また、近年のAI技術の進展により、AIの予期せぬ動作や機密情報の漏えいなど、AI特有の新たなリスクが発生する可能性があります。 当社グループでは、日常より情報システムの機能向上やセキュリティの常時監視、関係する社員の教育など、障害対策及びセキュリティ対策を講じるとともに、万一問題が発生した場合においても速やかに初動体制を構築し、各部署が連携して対策をとることで、影響を最小限のものとするよう努めております。また、社内規程を整備し、個人情報の厳正な取扱いについて定め、個人情報を取り扱う者の限定、アクセス権限の管理を行うほか、社内のチェック体制を構築するなど、個人情報の厳正な管理・保護に努めております。AIについてはグループ共通のポリシーを定め、生成AIを利活用するシステムのチェック体制を構築しております。(6) 企業不祥事 当社グループは、モビリティに関する事業と生活ソリューションにつながる事業などの様々な業務分野において、鉄道事業法をはじめとする関係法令を遵守し、企業倫理に従って事業を行っておりますが、これらに反する行為が発生した場合、行政処分や社会的信用の失墜などにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。 当社グループでは、「法令遵守及び企業倫理に関する指針」及び「コンプライアンス・アクションプラン」を策定し、業務全般に関わる法令の遵守状況の点検を実施してまいりました。これらの指針等については、当社グループの事業領域が大きく変化していることをふまえ見直しを行い、コンプライアンス重視の健全な企業風土の醸成に向けて、グループ社員が法令・企業倫理等を遵守し誠実に行動するための「よりどころ」として、「JR東日本グループの『決意と約束』」を2026年6月10日に制定しました。また、社員教育では、当社グループの事業内容に即した事例を用いたディスカッションを取り入れるなどコンプライアンスを自ら考える場となるよう改善しており、今後も継続するとともに、全社員教育以外でもコンプライアンスの意味や重要性を「自分ごと」として考える機会を設けてまいります。また、外部機関との連携によるJR東日本グループコンプライアンス意識調査を実施しております。本調査で得られた結果をもとに課題等の抽出や改善策の検討などに活用することで、コンプライアンス施策のさらなる推進をめざしてまいります。さらに、2025年7月1日に設置した「グループ全体のガバナンスの強化と改善に向けた有識者委員会」報告書を受け、2026年3月18日に改善策を公表し、あわせて総務・法務戦略部担当役員を当社グループにおけるコンプライアンスの全体責任者に指定しました。今後、当社及びグループ会社において責任者や担当部署を明確にし、コンプライアンスの推進体制を改めて整備し、各職場のコンプライアンスに関する課題に応じた柔軟で主体的な取組みを強化することや、心理的安全性の高い職場づくりやハラスメント撲滅の取組みなど、改善策を推進してまいります。 (7) 国内外の経済情勢等の変化 国内外の経済情勢の変化や、金利・為替・物価等の動向などにより、当社グループの財政状態及び経営成績が影響を受ける可能性がある他、サプライチェーン上の問題により社会的評価が失墜する可能性があります。 日本経済及び世界経済の情勢は、経済的要因だけではなく、戦争やテロ行為等の地政学的リスク、世界的な感染症の流行及び大規模な自然災害等により影響を受ける可能性があります。このような事態が発生又は拡大した場合、経済の低迷が長期化し、当社グループのモビリティに関する事業と生活ソリューションにつながる事業などの様々な業務分野において、需要が減少する可能性があります。また、国内外の経済情勢の変化や金利・為替・物価等の動向などにより、物品調達コストや資金調達コストが上昇し、当社グループの収益に影響を与える可能性があります。さらに、グローバル化したサプライチェーンは様々な要因により寸断される可能性がある他、人権課題の多様化・複雑化により調達活動に影響が生じる可能性があります。 当社グループは、鉄道を中心としたモビリティでは安全安定輸送のレベルアップとさらなる増収に取り組み、生活ソリューションには既存事業の強化に加え、「成長のエンジン」と位置づけた不動産事業の加速や戦略的M&Aを推進し、「勇翔2034」で掲げた数値目標の達成をめざしてまいります。また、物品調達コストの上昇については、国内外を問わない幅広い調達やスケールメリットを活用した価格交渉等を通じて、調達コスト上昇を抑制しております。資金調達コストの上昇については、債務償還額の平準化及び債務の長期化、債務の円建払いや支払金利の長期固定化を行うことにより、将来の金利変動リスク・為替変動リスクを抑制しております。サプライチェーンを維持し、寸断を回避するため取引先とのコミュニケーションを強化するとともに、複数のサプライヤーから調達ができるように取組みを進めています。人権問題等については、当社グループ調達方針に基づき浸透を図る取組みに努めてまいります。 (8) 海外での事業展開 海外での事業においては、政治体制や社会的要因の変動、投資規制・税制や環境規制等に関する現地の法令変更、商慣習の相違、契約の履行やルールの遵守に関する意識の違い及びそれらに起因する工期等の遅延、経済動向、為替レートの変動等様々なリスク要因があります。海外で政治リスクや遅延リスク等が顕在化すると債権回収に影響を及ぼすことがあるため、プロジェクトごとにきめ細やかな収支管理を行っています。現に、政変や紛争等によるリスクが顕在化していますが、予期せぬ情勢変化等が生じた場合に当社グループの財政状態及び経営成績、またグループ社員の身の安全に影響を与えることのないよう、これら様々なリスクについて、弁護士やコンサルタント等、専門家の助言を踏まえたリスク分析を行ったうえで、場合によっては日本政府の協力を得ながら対応に努めております。 (9) 特有の法的規制① 鉄道事業に対する法的規制 当社は、「鉄道事業法(昭和61年法律第92号)」の定めに基づき事業運営を行っており、鉄道事業者は営業する路線及び鉄道事業の種別ごとに国土交通大臣の許可を受けなければならない(第3条)とされております。また、旅客の運賃及び新幹線特急料金の上限について国土交通大臣の認可を受け、その範囲内での設定・変更を行う場合は、事前届出を行うこととされております(第16条)。さらに、鉄道事業の休廃止については、国土交通大臣に事前届出(廃止の場合は廃止日の1年前まで)を行うこととされております(第28条、第28条の2)。 これらの手続きが変更される場合、または何らかの理由により手続きに基づいた運賃・料金の変更を機動的に行えない場合には、当社の収益に影響を与える可能性があります。当社では、運賃値上げに依存しない強固な経営基盤を確立すべく、収入の確保と経費削減による効率的な事業運営に努めておりますが、経営環境の変化等により適正な利潤を確保できない場合は、運賃改定を適時実施する必要があると考えております。この考えに基づき、鉄道に求められる社会的な役割や多様化するお客さまのニーズにお応えし、今後も鉄道事業をサステナブルに運営していくため、2026年3月に運賃改定を実施しました。新幹線自由席料金の届出化やインフレにタイムリーに対応できるしくみの導入など、シンプルかつ柔軟な制度の実現や総括原価方式そのものの見直しも、引き続き国に要望していきます。 なお、当社は、「旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律(昭和61年法律第88号)」の平成13年改正により、同法の適用対象からは除外されているものの、同法の改正附則に基づき「当分の間配慮すべき事項に関する指針」等が定められております。指針に定められた事項は以下の3点です。・会社間における旅客の運賃及び料金の適切な設定、鉄道施設の円滑な使用その他の鉄道事業に関する会社間における連携及び協力の確保に関する事項・日本国有鉄道の改革の実施後の輸送需要の動向その他の新たな事情の変化を踏まえた現に営業している路線の適切な維持及び駅その他の鉄道施設の整備に当たっての利用者の利便の確保に関する事項・新会社がその事業を営む地域において当該事業と同種の事業を営む中小企業者の事業活動に対する不当な妨害又はその利益の不当な侵害を回避することによる中小企業者への配慮に関する事項 指針に定められているこれらの事項については、当社は、従来から十分留意した事業運営を行っております。しかしながら、鉄道を取り巻く環境は当時から大きく変化していることから、これらが経営に及ぼす影響を踏まえ、必要により柔軟な運用について関係者のご理解を求めていく考えです。 ② 整備新幹線 日本国有鉄道の分割民営化後、当社は、北陸新幹線(高崎市~上越市)及び東北新幹線(盛岡市~青森市)の2路線の整備新幹線の営業主体とされ、1997年10月1日に北陸新幹線高崎~長野間が、2002年12月1日に東北新幹線盛岡~八戸間が、2010年12月4日に東北新幹線八戸~新青森間が、2015年3月14日に北陸新幹線長野~上越妙高間がそれぞれ開業しました。 「独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法施行令」第6条において、整備新幹線の貸付料の額は、当該新幹線開業後の営業主体の受益に基づいて算定された額に、貸付けを受けた鉄道施設に関して独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が支払う租税及び同機構の管理費の合計額を加えた額を基準として、同機構において定めるものとされております。このうち受益については、開業後30年間の需要予測及び収支予測に基づいて算定されることとなり、この受益に基づいて算定される額については、開業後30年間は原則定額とされております。 貸付けから30年経過後の取扱いについては、施設の状態に見合った維持管理等に要する費用を支払うことを基本的な考え方としつつ、関係者間の協議により新たに定めてまいります。なお、貸付けを受けている整備新幹線区間と貸付終了年度は、次のとおりです。a 北陸新幹線(高崎~長野間) 2027年度b 北陸新幹線(長野~上越妙高間) 2044年度c 東北新幹線(盛岡~八戸間) 2032年度d 東北新幹線(八戸~新青森間) 2040年度