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商船三井(9104)は何で稼いでいるか — 事業の柱と依存度

海運業 運輸・物流

事業の概要

  • 主力は海運業
    商船三井グループは、ドライバルク船、油送船、LNG船、自動車専用船、コンテナ船など、多種多様な船舶を世界規模で運航し、海上貨物輸送を中核事業としています。これにより、世界の物流を支え、国際貿易に不可欠な役割を担っています。
  • 多角的な事業展開
    海運業だけでなく、不動産賃貸・管理、フェリー・クルーズなどの旅客・貨物輸送、さらには曳船業、燃料・舶用資材販売、物流ソリューション(陸上輸送、倉庫保管、フォワーディング)など、幅広い事業を展開しています。これにより、収益源の多様化を図り、海運市況の変動リスクを軽減しています。
  • グローバルな収益構造
    世界中に579社の連結対象会社を持ち、各事業セグメントを通じてグローバルに収益を上げています。特にエネルギー事業や製品輸送事業は売上高が大きく、国際的なエネルギー輸送や完成品のサプライチェーンを支えることで、安定的な収益基盤を構築しています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
セグメント構成
  • ドライバルク事業
    鉄鉱石や石炭、穀物などを運ぶドライバルク船を保有・運航し、世界中で海上輸送を行っています。売上高は4000.15億円規模で、市況の変動を受けやすい事業ですが、好況時には高いリターンを目指しています。脱炭素化に伴う新規貨物輸送需要の取り込みや、環境対応船の整備に注力しています。
  • エネルギー事業
    油送船、LNG船、海洋事業・LNG船などの不定期専用船を保有・運航し、原油や液化天然ガスなどのエネルギー資源を世界規模で輸送しています。売上高は5715.31億円とグループ内で最も大きく、安定収益型事業への投資を強化し、クリーンメタノールやLPG・アンモニア船隊の整備、洋上風力発電への参画を通じて、エネルギーシフトをリードすることを目指しています。
  • 製品輸送事業
    自動車専用船を保有・運航し、完成車を世界中に輸送するほか、コンテナ船事業、コンテナターミナル運営、航空・海上フォワーディング、陸上輸送、倉庫保管などの総合物流ソリューションを提供しています。売上高は自動車船・ターミナル・物流で5566.55億円、コンテナ船で593.1億円と大規模です。コンテナ船と自動車船の競争優位性を高めつつ、物流分野でのM&Aによる事業拡大を図っています。
2025-03 セグメント別業績
セグメント区分売上(億)営業利益(億)営業利益率
DryBulkBusiness 地域 4,000 − −
EnergyBusiness 地域 5,715 − −
Containerships 事業 593 − −
CarCarriesTerminalAndLogistics 事業 5,567 − −
RealEstateBusiness 地域 434 − −
FerriesAndCoastalRoRoShipsCruiseBusinesses 地域 714 − −
AssociatedBusinesses 地域 537 − −
有価証券報告書「事業の内容」の全文を見る(年度切替)
FY2026|1,305 文字
3【事業の内容】 当社グループは、当社及び連結対象会社611社(うち、連結子会社470社、持分法適用会社141社)からなり、海運業を中心にグローバルな事業展開を図っています。当社グループの事業は、ドライバルク事業、エネルギー事業、製品輸送事業、ウェルビーイングライフ事業、関連事業及びその他の6セグメントに分類されており、それぞれの事業の概要及び主要関係会社は以下のとおりです。事業区分事業の概要主要関係会社(無印:連結子会社)(※印:持分法適用関連会社)ドライバルク事業当社並びに関係会社を通じて、ドライバルク船を保有、運航し、世界的な規模で海上貨物輸送を行っています。商船三井ドライバルク㈱、MOL OCEAN BULK PTE. LTD.、GEARBULK HOLDING AG 他 118社 計 121社エネルギー事業当社並びに関係会社を通じて、油送船、LNG船等を保有、運航し、世界的な規模で海上貨物輸送を行うほか、海洋事業を行っています。MOL CHEMICAL TANKERS PTE. LTD.、MOL ENERGIA PTE. LTD.、㈱北拓、※旭タンカー㈱、※三井海洋開発㈱ 他 241社 計 246社製品輸送事業当社並びに関係会社を通じて、自動車専用船を保有、運航し、世界的な規模で海上貨物輸送を行っています。また、コンテナ船の保有、運航、コンテナターミナルの運営、航空・海上フォワーディング、陸上輸送、倉庫保管及び重量物輸送などの事業を行っています。㈱宇徳、国際コンテナ輸送㈱、商船港運㈱、商船三井ロジスティクス㈱、日産専用船㈱、㈱ジャパンエキスプレス、MOL CONSOLIDATION SERVICE LTD.、LBC TANK TERMINALS GROUP HOLDING NETHERLANDS COÖPERATIEF U.A.、※OCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD. 他 161社 計 170社ウェルビーイングライフ事業関係会社を通じて、土地建物賃貸事業及びビル管理事業を始めとする不動産事業、主として太平洋沿海及び瀬戸内海での旅客及び貨物輸送事業、クルーズ事業を行っています。ダイビル㈱、商船三井興産㈱、㈱商船三井さんふらわあ、㈱ブルーシーネットワーク、商船三井クルーズ㈱、エムオーツーリスト㈱、※㈱名門大洋フェリー 他 37社 計 44社関連事業関係会社を通じて、曳船業、商社事業(燃料・舶用資材・機械販売等)などを営んでいます。㈱商船三井ベイ・リンクス、日本栄船㈱、グリーン海事㈱、グリーンシッピング㈱、商船三井テクノトレード㈱ 他 9社 計 14社その他船舶管理業、グループの資金調達等の金融業、情報サービス業、経理代行業、海事コンサルティング業などを営んでいます。商船三井マリテックス㈱、MOL TREASURY MANAGEMENT PTE. LTD.、MOLアカウンティングパートナーズ㈱、MOLビジネスサポート㈱、商船三井システムズ㈱ 他 11社 計 16社 合計 611社 なお、事業系統図を示すと次のとおりです。[事業系統図]

事業の優位性(モート)

事業の質(有価証券報告書から抽出)
数字に出ない事業の性質を、同じ物差しで全銘柄そろえています。FY2025時点の記載が出典です。
価格決定力値上げを通せるか。強いほどインフレ耐性が高い 中程度
中長期契約の獲得を推進し、市況変動リスクを低減しているため。
参入障壁新規参入を阻む要因の種類 設備
約800隻の多様な船舶や洋上設備を保有・運航し、世界的な規模で海上貨物輸送を行っている。
顧客集中度特定顧客への依存度。高いほど失注リスクが大きい 低い(分散)
景気敏感度業績が景気循環にどれだけ振られるか シクリカル
設備投資の性質稼いだ現金がどれだけ設備維持に消えるか 混合
規制依存規制は障壁にも足枷にもなる 高い
会社が挙げる主要リスク:運航・操業リスク / サイバーセキュリティリスク / 災害・感染症リスク
同じ条件で他の銘柄を探す → 定性スクリーニング(価格決定力・参入障壁・景気敏感度などで絞り込めます)
モート総合 11 / 25 5類型それぞれの強度と、そう判定した根拠
無形資産★☆☆☆☆
根拠:弱いブランド・特許・許認可

商船三井は長年の歴史と実績を持つ海運会社であり、一定のブランド認知度は存在する。しかし、特許や独自のIPによる競争優位性は限定的であり、無形資産による明確なモートは弱い。

スイッチングコスト★★☆☆☆
根拠:中程度乗り換えの手間・コスト

海運業界では、顧客(荷主)と船会社の間の長期契約や、特定の航路・輸送ニーズへの対応実績が、乗り換えの障壁となる場合がある。しかし、運賃やサービス内容で代替可能な側面も大きく、スイッチング・コストは限定的。

ネットワーク効果☆☆☆☆☆
根拠:弱い利用者増が価値を生む

海運業は、プラットフォーム型ビジネスではないため、ネットワーク効果は基本的に存在しない。船舶の利用者は荷主であり、荷主が増えることで船会社のサービス価値が直接的に向上するわけではない。

コスト優位★★★☆☆
根拠:中程度同じ物を安く作れる

商船三井は、大規模な運航ネットワーク、効率的な船舶管理、燃料調達における交渉力などを通じて、一定のコスト優位性を構築している。特に、コンテナ船事業におけるスケールメリットはコスト削減に寄与。

規模の経済★★★★★
根拠:強い規模が参入障壁になる

商船三井は、日本郵船、川崎汽船と共に日本の大手海運会社であり、世界でも有数の規模を誇る。特にコンテナ船事業においては、世界的なアライアンスへの参加や大規模船隊の運用により、効率規模の経済を享受しており、寡占的な市場構造の中で優位性を確立している。

  • 多様な船隊とネットワーク
    ドライバルク船、タンカー、LNG船、自動車専用船、コンテナ船など、約800隻に及ぶ多様な船舶を保有・運航し、世界中に広がる広範な輸送ネットワークを構築しています。これにより、様々な貨物や顧客ニーズに対応できる柔軟性と、効率的な輸送サービスを提供できる強みがあります。
  • 総合物流ソリューション
    海上輸送だけでなく、コンテナターミナル運営、航空・海上フォワーディング、陸上輸送、倉庫保管など、一貫した「トータル・物流ソリューション」を提供しています。これにより、顧客は単一の窓口で複雑な物流ニーズを解決でき、商船三井グループは顧客との関係性を強化し、スイッチングコストを高めています。
  • 環境対応への先行投資
    脱炭素化を経営の最重要課題の一つと位置づけ、クリーンエネルギー船の導入やクリーン燃料サプライチェーンの構築に積極的に取り組んでいます。これにより、環境規制が厳しくなる中で、顧客や社会からの評価を高め、将来的な競争優位性を確立しようとしています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)

経営戦略

  • 持続的成長の追求
    2035年度のグループビジョン実現に向けた経営計画「BLUE ACTION 2035」を策定し、社会課題や環境面にも配慮したサステナビリティ経営を推進しています。これは、企業価値向上と社会貢献の両立を目指すもので、長期的な視点での成長戦略を明確にしています。
  • ポートフォリオ変革
    海運市況の変動に左右されにくい安定収益型事業(非海運事業含む)への投資を強化し、2035年度までに市況享受型と安定収益型のアセット比率を40:60にすることを目指しています。これにより、海運市況が軟調な時期でも黒字を維持できる強固な収益基盤を構築し、ROE9~10%の達成を目指します。
  • 環境戦略の推進
    2050年ネットゼロ・エミッション達成に向けた「環境ビジョン2.2」を掲げ、クリーンエネルギーの導入やクリーン燃料サプライチェーンの構築をリードする存在を目指しています。これは、脱炭素化という世界的な潮流に対応し、環境技術への先行投資を通じて、将来の競争優位性を確立する重要な戦略です。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「経営方針・対処すべき課題・MD&A」の全文を見る(年度切替)
経営方針・経営戦略
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社が判断したものです。 (1)会社の経営の基本方針 当社は、商船三井グループの企業理念、グループビジョン、価値観・行動規範(MOL CHARTS)を2021年4月1日から、以下のとおり定めています。これらは、脱炭素化を始めとする環境意識の高まりや、企業として社会のサステナビリティに貢献することへの期待が高まる中、輸送にとどまらない事業領域への拡大を反映し、更なる成長を実現するために、当社グループの存在意義、目指す姿、及び価値観を確認したものです。価値観・行動規範について、2015年4月1日の当初制定時はMOL CHARTとしていましたが、世界最高水準の「安全品質を追求する」という意識を改めて当社及び当社グループ社員に強く認識させるべく、MOL CHARTを構成する5つの行動指針に新たに「Safety」を追加し、MOL CHARTSと改定しています。また、Reliabilityの対象を「お客様」から「ステークホルダー」に拡大し、社会的課題に取り組んでいく姿勢を行動規範に取り込んでいます。商船三井グループの社員一人ひとりが業務遂行にあたり、この価値観を共有し判断の拠り所とすることで、グループの総合力を強化・結集しながら長期ビジョンを達成し、企業価値を高めることを目的としています。 また、2023年3月に13年間のグループ経営計画「BLUE ACTION 2035」を策定し、2035年のありたい姿であるグループビジョンの実現に向けて取組んでいます。2026年度より開始するPhase 2(2026年度-2030年度)では、長期的な戦略に基づいた持続的な成長の実現を目指し、サステナビリティ課題(マテリアリティ)とガバナンスを経営基盤として経営計画そのものに組み込み、経済価値と社会価値を一体的に創出し、企業価値を高めてまいります。当社グループが創出する経済価値については、「BLUE ACTION 2035」で定める財務Core KPIにて主要な成果を測定・管理し、社会価値については「暮らしと産業を支えるインフラの提供」「持続可能な海洋・地球環境の実現」「ウェルビーイングの向上」の3つに整理しています。当社グループの企業理念と価値観・行動規範であるMOL CHARTSに沿って「BLUE ACTION 2035」を推進し、グループビジョンの実現へと繋げていきます。 (2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 「BLUE ACTION 2035」 Phase 2(2026年度-2030年度)においては、Phase 1(2023年度-2025年度)での取組を着実に成果へと繋げるため、経営の重心を「変革と拡大」から「成果実現」へとシフトし、優先的に対処する事項として3つの重点テーマ、3つの主要戦略、4つのサステナビリティ課題を掲げています。 「BLUE ACTION 2035」Phase 2で掲げる、Core KPI・利益計画・投資計画・財務計画については、「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (7)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況」をご参照ください。また、株主還元策については、「第4 提出会社の状況 3.配当政策」をご参照ください。 <「BLUE ACTION 2035」における主要なテーマ>Phase 2における3つの重点テーマは次のとおりです。① 稼ぐ力を磨き上げる個々の事業の強みを伸ばし、グループ全体の収益力を強化していく。特に、投資効果の確実な発揮、事業・地域間シナジーの創出、市況エクスポージャーを持つ事業での規律あるリスクテイクに取り組む。 ② バランスのとれた資本配分成長投資・財務健全性・株主還元を同時に追求し、資本効率を上げていく。キャッシュ創出力の着実な成長を踏まえた株主還元の強化や、戦略的意義や収益性が低下した事業・アセットのリサイクル推進に取り組む。 ③ 確かな経営基盤を築くサステナビリティ課題(マテリアリティ)への取り組みとガバナンス高度化を通じ、事業の持続的成長基盤を強化していく。特に、事業を支える「人と組織の力」の最大化、デジタル化・AI活用による事業変革に注力する。 また、Phase 2における3つの主要戦略は次のとおりです。① ポートフォリオ戦略・「個々の事業の競争優位性の強化」、「安定収益型事業を基盤とした市況アップサイドの獲得」、「強い事業を軸とした水平・垂直展開や事業・地域間のシナジー創出」の3点を基本的な考え方として、磨き上げた個々の事業の効果的な組み合わせにより新たな勝ち筋を描く。・投資選別の強化、事業のモニタリング、事業・アセットの入れ替えという一連のプロセスにより事業ポートフォリオの強化を行う。・従来の市況享受型、安定収益型に、それぞれの特徴を併せ持つハイブリッド型の区分を新たに加え、市況サイクルが異なる事業ポートフォリオによる分散効果を目指す。 ② 地域戦略・世界中で地域の成長に取り組むべく、地域ごとの特性を踏まえ、当社グループの強みを発揮できる重点事業領域 に注力する。・Phase 1で強化したグループ会社を含む海外組織の人財が主体となり、本社と連携して推進していく。・中長期的な経済成長が見通せる東アフリカ~南アジア~東南アジアの環インド洋を重点エリアとし、Phase 1で実施した様々な投資を基盤に、Phase 2では早期の利益貢献を図りつつ、事業開発を継続していく。 ③ 環境戦略・2026年4月に更新した環境ビジョンの下、環境への取り組みをリードする存在であり続ける。・2050年ネットゼロ・エミッションの達成を長期的な目標とし、代替燃料の導入と燃費効率の改善を主要なアクションとして推進する。・脱炭素社会の実現への貢献と当社グループの成長の観点より、低・脱炭素事業の拡大にも取り組む。 4つのサステナビリティ課題及びガバナンスについては、「第2 事業の状況 2.サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。 また、「BLUE ACTION 2035」Phase 2における各事業本部の具体的なアクションプランについては、経営計画開示資料をご参照ください。https://www.mol.co.jp/corporate/plan/pdf/blueaction2035.pdf <コンプライアンス上の対処すべき課題> コンプライアンス上の対処すべき課題・取組については、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等 (2)役員の状況 ⑤業務の適正を確保するための体制の概要」をご参照ください。 <アドバイザリーボード> 経営戦略及びリスク管理の観点で優先度の高い分野について社外の有識者から意見を得ることを目的とし、2024年4月から社長のもとにアドバイザリーボードを設置しています。今年度は以下6名の有識者を選任しました。 氏名主な経歴専門分野石井 菜穂子氏東京大学グローバルコモンズ担当総長特使未来ビジョン研究センター特任教授、グローバル・コモンズ・センター ダイレクターサステナビリティ江藤 名保子氏学習院大学法学部教授地政学上月 豊久氏前・駐ロシア日本国特命全権大使地政学櫛田 健児氏カーネギー国際平和財団シニアフェロー兼日本プログラム責任者DX小柴 満信氏SAIMEMORY株式会社社外取締役技術経営Rajesh Madhavan Unni氏 (ラジェシュ・マダヴァン・ウンニ氏)Synergy Maritime Group 創業者兼会長船舶管理
対処すべき課題
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社が判断したものです。 (1)会社の経営の基本方針 当社は、商船三井グループの企業理念、グループビジョン、価値観・行動規範(MOL CHARTS)を2021年4月1日から、以下のとおり定めています。これらは、脱炭素化を始めとする環境意識の高まりや、企業として社会のサステナビリティに貢献することへの期待が高まる中、輸送にとどまらない事業領域への拡大を反映し、更なる成長を実現するために、当社グループの存在意義、目指す姿、及び価値観を確認したものです。価値観・行動規範について、2015年4月1日の当初制定時はMOL CHARTとしていましたが、世界最高水準の「安全品質を追求する」という意識を改めて当社及び当社グループ社員に強く認識させるべく、MOL CHARTを構成する5つの行動指針に新たに「Safety」を追加し、MOL CHARTSと改定しています。また、Reliabilityの対象を「お客様」から「ステークホルダー」に拡大し、社会的課題に取り組んでいく姿勢を行動規範に取り込んでいます。商船三井グループの社員一人ひとりが業務遂行にあたり、この価値観を共有し判断の拠り所とすることで、グループの総合力を強化・結集しながら長期ビジョンを達成し、企業価値を高めることを目的としています。 また、2023年3月に13年間のグループ経営計画「BLUE ACTION 2035」を策定し、2035年のありたい姿であるグループビジョンの実現に向けて取組んでいます。2026年度より開始するPhase 2(2026年度-2030年度)では、長期的な戦略に基づいた持続的な成長の実現を目指し、サステナビリティ課題(マテリアリティ)とガバナンスを経営基盤として経営計画そのものに組み込み、経済価値と社会価値を一体的に創出し、企業価値を高めてまいります。当社グループが創出する経済価値については、「BLUE ACTION 2035」で定める財務Core KPIにて主要な成果を測定・管理し、社会価値については「暮らしと産業を支えるインフラの提供」「持続可能な海洋・地球環境の実現」「ウェルビーイングの向上」の3つに整理しています。当社グループの企業理念と価値観・行動規範であるMOL CHARTSに沿って「BLUE ACTION 2035」を推進し、グループビジョンの実現へと繋げていきます。 (2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 「BLUE ACTION 2035」 Phase 2(2026年度-2030年度)においては、Phase 1(2023年度-2025年度)での取組を着実に成果へと繋げるため、経営の重心を「変革と拡大」から「成果実現」へとシフトし、優先的に対処する事項として3つの重点テーマ、3つの主要戦略、4つのサステナビリティ課題を掲げています。 「BLUE ACTION 2035」Phase 2で掲げる、Core KPI・利益計画・投資計画・財務計画については、「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (7)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況」をご参照ください。また、株主還元策については、「第4 提出会社の状況 3.配当政策」をご参照ください。 <「BLUE ACTION 2035」における主要なテーマ>Phase 2における3つの重点テーマは次のとおりです。① 稼ぐ力を磨き上げる個々の事業の強みを伸ばし、グループ全体の収益力を強化していく。特に、投資効果の確実な発揮、事業・地域間シナジーの創出、市況エクスポージャーを持つ事業での規律あるリスクテイクに取り組む。 ② バランスのとれた資本配分成長投資・財務健全性・株主還元を同時に追求し、資本効率を上げていく。キャッシュ創出力の着実な成長を踏まえた株主還元の強化や、戦略的意義や収益性が低下した事業・アセットのリサイクル推進に取り組む。 ③ 確かな経営基盤を築くサステナビリティ課題(マテリアリティ)への取り組みとガバナンス高度化を通じ、事業の持続的成長基盤を強化していく。特に、事業を支える「人と組織の力」の最大化、デジタル化・AI活用による事業変革に注力する。 また、Phase 2における3つの主要戦略は次のとおりです。① ポートフォリオ戦略・「個々の事業の競争優位性の強化」、「安定収益型事業を基盤とした市況アップサイドの獲得」、「強い事業を軸とした水平・垂直展開や事業・地域間のシナジー創出」の3点を基本的な考え方として、磨き上げた個々の事業の効果的な組み合わせにより新たな勝ち筋を描く。・投資選別の強化、事業のモニタリング、事業・アセットの入れ替えという一連のプロセスにより事業ポートフォリオの強化を行う。・従来の市況享受型、安定収益型に、それぞれの特徴を併せ持つハイブリッド型の区分を新たに加え、市況サイクルが異なる事業ポートフォリオによる分散効果を目指す。 ② 地域戦略・世界中で地域の成長に取り組むべく、地域ごとの特性を踏まえ、当社グループの強みを発揮できる重点事業領域 に注力する。・Phase 1で強化したグループ会社を含む海外組織の人財が主体となり、本社と連携して推進していく。・中長期的な経済成長が見通せる東アフリカ~南アジア~東南アジアの環インド洋を重点エリアとし、Phase 1で実施した様々な投資を基盤に、Phase 2では早期の利益貢献を図りつつ、事業開発を継続していく。 ③ 環境戦略・2026年4月に更新した環境ビジョンの下、環境への取り組みをリードする存在であり続ける。・2050年ネットゼロ・エミッションの達成を長期的な目標とし、代替燃料の導入と燃費効率の改善を主要なアクションとして推進する。・脱炭素社会の実現への貢献と当社グループの成長の観点より、低・脱炭素事業の拡大にも取り組む。 4つのサステナビリティ課題及びガバナンスについては、「第2 事業の状況 2.サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。 また、「BLUE ACTION 2035」Phase 2における各事業本部の具体的なアクションプランについては、経営計画開示資料をご参照ください。https://www.mol.co.jp/corporate/plan/pdf/blueaction2035.pdf <コンプライアンス上の対処すべき課題> コンプライアンス上の対処すべき課題・取組については、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等 (2)役員の状況 ⑤業務の適正を確保するための体制の概要」をご参照ください。 <アドバイザリーボード> 経営戦略及びリスク管理の観点で優先度の高い分野について社外の有識者から意見を得ることを目的とし、2024年4月から社長のもとにアドバイザリーボードを設置しています。今年度は以下6名の有識者を選任しました。 氏名主な経歴専門分野石井 菜穂子氏東京大学グローバルコモンズ担当総長特使未来ビジョン研究センター特任教授、グローバル・コモンズ・センター ダイレクターサステナビリティ江藤 名保子氏学習院大学法学部教授地政学上月 豊久氏前・駐ロシア日本国特命全権大使地政学櫛田 健児氏カーネギー国際平和財団シニアフェロー兼日本プログラム責任者DX小柴 満信氏SAIMEMORY株式会社社外取締役技術経営Rajesh Madhavan Unni氏 (ラジェシュ・マダヴァン・ウンニ氏)Synergy Maritime Group 創業者兼会長船舶管理
MD&A(経営者による分析)
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1)経営成績 前連結会計年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)当連結会計年度(自 2025年4月1日至 2026年3月31日)増減額/増減率売上高(億円)17,75418,250496 / 2.8%営業損益(億円)1,5081,270△238 / △15.8%経常損益(億円)4,1971,758△2,438 / △58.1%親会社株主に帰属する当期純損益(億円)4,2542,132△2,122 / △49.9%為替レート\152.79/US$\149.91/US$△\2.88/US$船舶燃料油価格 ※US$603/MTUS$550/MT△US$54/MT※平均補油価格(全油種) 当期の対ドル平均為替レートは、前期比¥2.88/US$円高の¥149.91/US$となりました。また、当期の船舶燃料油価格平均は、前期比US$54/MT下落し、US$550/MTとなりました。 当期の業績につきましては、売上高1兆8,250億円、営業損益1,270億円、経常損益1,758億円、親会社株主に帰属する当期純損益は2,132億円となりました。 売上高は、エネルギー事業や自動車輸送事業の貢献により前期比で増収となりました。 経常損益では、コンテナ船事業の運賃市況下落等により前期比で減益となりました。 親会社株主に帰属する当期純損益には、固定資産売却益や投資有価証券売却益等が含まれますが、主として経常損益の悪化により前期比で減益となりました。 なお、税金等調整前当期純利益は2,390億円となり、「BLUE ACTION 2035」Phase 1で掲げた2,400億円をほぼ達成しました。 セグメントごとの売上高及びセグメント損益(経常損益)、それらの対前期比較及び概況は以下のとおりです。 上段が売上高(億円)、下段がセグメント損益(経常損益)(億円)セグメントの名称前連結会計年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)当連結会計年度(自 2025年4月1日至 2026年3月31日)増減額/増減率ドライバルク事業4,6074,557△49 / △1.1%154108△45 / △29.7%エネルギー事業5,1085,257149 / 2.9%1,021555△465 / △45.6%製品輸送事業6,1596,415255 / 4.2%3,029959△2,069 / △68.3% うち、コンテナ船事業593536△56 / △9.6%2,176266△1,909 / △87.7%ウェルビーイングライフ事業1,1471,22275 / 6.6%81△27△108 / -% うち、不動産事業43448955 / 12.7%10967△41 / △38.3%関連事業53658245 / 8.5%253611 / 43.4%その他19421420 / 10.3%64437 / 541.9%(注)「売上高」は外部顧客に対する売上高を表示しています。 ① ドライバルク事業 大型バルカーであるケープサイズでは、西豪州・ブラジルからの鉄鉱石及びボーキサイト出荷が堅調に推移したことを背景に、市況は底堅く推移しました。 中型・小型バルカーであるパナマックス以下では、穀物・石炭・マイナーバルクの荷動きに支えられ、季節的な需要減退はあったものの11月末まで底堅い市況となりました。12月は南米産穀物が端境期に入ったこと等により軟化したものの、1月以降は中国旧正月明けの荷動き増加と南米穀物出荷の本格化により急速に回復し、前期を上回る水準に達しました。 連結子会社であるGearbulk Holding AGのオープンハッチ船事業では、主要貨物であるパルプの輸送需要が軟化した一方、配船効率改善に加えてアルミニウム輸送や高採算のプロジェクト貨物輸送の成約を重ねたことで、収益性が改善しました。 なお、いずれの船型においても、3月以降は中東情勢悪化に伴い市況が不安定となりました。 このような事業環境下、Gearbulk Holding AGの連結子会社化に伴う減価償却費の増加や木材チップ船の市況低迷等の影響を受け、ドライバルク事業全体としては前期比で減益となりました。 ② エネルギー事業<タンカー> 原油船は、上期は前年同様底堅く推移し、9月以降はOPECプラス諸国の自主減産解除による貨物量の増加により船腹需給が引き締まり、市況は高水準で推移しました。 石油製品船は、中東情勢やロシア関連制裁の強化により大型船舶の市況が強含みで推移したことを背景に、堅調に推移しました。 LPG船は、米国通商代表部(USTR)による入港料措置や米中関税問題により、トレードが複雑化した結果、運航距離と輸送量の両面からトンマイルが増加し、船腹需給が引き締まりました。 ホルムズ海峡の事実上の封鎖を含む中東情勢の更なる悪化後も市況は維持されました。 ケミカル船は、米国の高関税政策や中東情勢に起因する世界経済の不透明感を背景に市況が軟化したことと、タンクコンテナ事業において持分法適用会社ののれんの一括償却により、前期比で減益となりました。 このような事業環境下、タンカー事業全体としては前期比で減益となりました。 <オフショア> FPSO事業においては、既存の長期貸船契約により引き続き安定的な利益を確保しました。前期比では、前連結会計年度に計上した、三井海洋開発株式会社の持分法適用化に伴う株式再評価による、持分法による投資利益が剥落した影響により、減益となりました。 <液化ガス> LNG・エタン船事業は、既存プロジェクトの長期貸船契約により安定利益を確保した一方、持分法適用会社におけるファイナンス事由に伴う一過性費用を計上したことにより、前期比で減益となりました。 ガスインフラ事業は、一部プロジェクトにおいて機器不具合による操業効率の低下もあり、前期比で減益となりました。 ③ 製品輸送事業<コンテナ船> コンテナ船事業では、季節要因による貨物需要の下支えはみられたものの、新造船竣工による船腹供給の拡大を背景に、運賃市況には引き続き下落圧力がかかりました。その結果、当社持分法適用会社であるOCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD.は、前期比で減益となりました。 <自動車輸送> 自動車輸送事業は、完成車輸送需要が引き続き堅調に推移したものの、港湾混雑や中東情勢の影響により配船効率に制約を受けました。加えて、インフレによる費用上昇、為替変動の影響等により、前期比で減益となりました。 <その他製品輸送> 港湾事業において、国内コンテナターミナル事業の取扱量は概ね堅調に推移しました。海外ターミナル事業については、米国の高関税政策による影響で生産地シフトが進んだことにより、当社が出資するベトナムターミナルの取扱量は引き続き堅調に推移しました。 一方、ロジスティクス事業は、航空貨物全体の取扱量は増加したものの、米国の高関税政策の影響による東アジア発米国向けの荷動き鈍化等により、前期比で減益となりました。LBC Tank Terminals Group Holding Netherlands Coöperatief U.A.(以下、LBC社)タンクターミナル事業においては、長期契約による安定収入を計上した一方、同社株式取得に関連した一時費用、のれん償却額が発生しました。 ④ ウェルビーイングライフ事業<不動産事業> 当社グループの不動産事業の中核であるダイビル株式会社は、保有する既存オフィス・商業ビル等の堅調な利益に加え、新規取得物件(豪州135 King Street及び英国Capital House)が利益貢献したものの、一部の物件建替えの影響及び前連結会計年度に計上した持分法による一過性の投資利益の剥落により、前期比で減益となりました。 <フェリー・内航RORO船> 株式会社商船三井さんふらわあにおいて、便数減や荷況低調による荷量減少はあったものの、関西航路を中心とした、旅客事業の好調及び貨物運賃の改定等によりこれを補い、前期比で増益となりました。 <クルーズ事業> クルーズ事業では、MITSUI OCEAN FUJIの不稼働及び修繕と需要創出に時間を要したこと等から、前期比で減益となりました。 ⑤ 関連事業 曳船事業は、作業件数が堅調に推移し、前期比で増益となりました。 ⑥ その他 その他の事業には、船舶運航業、船舶管理業、金融業等がありますが、前期比で増益となりました。 (2)生産、受注及び販売の実績 当社グループ(当社及び連結子会社。以下同じ。)は「第1 企業の概況 3.事業の内容」に記載したとおり、6つの事業区分からなり、提供するサービス内容も、多種多様です。したがって、受注の形態、内容も各社ごとに異なっているため、それらをセグメントごとに金額、数量で示していません。 セグメントの売上高セグメントの名称当連結会計年度(自 2025年4月1日至 2026年3月31日)金額(百万円)前期比(%)ドライバルク事業455,73498.9%エネルギー事業525,793102.9%製品輸送事業641,529104.2% うち、コンテナ船事業53,64190.4%ウェルビーイングライフ事業122,298106.6% うち、不動産事業48,912112.7%関連事業58,252108.5%その他21,489110.3%合 計1,825,098102.8% (3)財政状態 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ9,777億円増加し、5兆9,622億円となりました。これは主に建物及び構築物が増加したことによるものです。 負債は、前連結会計年度末に比べ7,729億円増加し、3兆331億円となりました。これは主に長期借入金が増加したことによるものです。 純資産は、前連結会計年度末に比べ2,048億円増加し、2兆9,290億円となりました。これは主に利益剰余金が増加したことによるものです。 以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ、5.7ポイント低下し、48.2%となりました。 (4)キャッシュ・フローの状況 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて、455億円増加し、2,014億円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりです。 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が2,390億円となったこと等により、4,509億円(前期3,604億円)となりました。 投資活動によるキャッシュ・フローは、船舶を中心とする固定資産の取得や、連結の範囲の変更を伴う子会社株式等の取得等により、△7,215億円(前期△4,508億円)となりました。 財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金による収入等により、3,129億円(前期1,170億円)となりました。 (5)財務戦略 2023年3月に策定した経営計画「BLUE ACTION 2035」のPhase 1(2023~2025年度)において、海運不況時でも黒字を維持できる事業ポートフォリオへの変革に取り組み、一定の成果を上げました。Phase 2(2026~2030年度)では、Phase 1で培った事業基盤を活かしつつ、経営の重心を「変革と拡大」から「成果実現」へと移し、成長投資・財務健全性・株主還元を同時に実現しながら資本効率の向上を図る方針です。Phase 2では財務規律をより意識し、ネットギアリングレシオの一時的な上昇は最小限に抑え、1.0~1.1を目安にコントロールする方針としています。(有利子負債額は将来傭船料などオフバランス債務を含む)。 ① 資金調達の方針 当社は事業活動を支える資金調達に際して、調達の安定性と低コストを重視しています。また、金利変動リスクや為替変動リスク等の市場リスクを把握し、過度に市場リスクに晒されないように、金利固定化比率や借入通貨構成を金利スワップや通貨スワップ等の手法も利用しながら、リスクを許容範囲に収めるようにしています。加えて、経営計画「BLUE ACTION 2035」Phase 2においては財務健全性を重視する方針のもと、営業キャッシュ・フローの積み上げに加え、これまで以上にアセット入替を促進し、Phase 1の投資先行型から一線を引き、新規の外部資金調達に基本的に依拠しない計画です。一方、採算性が高いなど、有望な投資機会があった場合には、限定的に新規外部資金調達を活用します。 ② 資金調達の多様性 当社は調達の安定性と低コスト調達を実現するために、調達方法の多様化や調達期間の分散を進めています。 直接調達については、2025年度は9月に1,150億円の国内普通社債を発行しました。2026年3月末の国内普通社債発行残高は1,886億円、劣後特約付社債発行残高は500億円となっています。円滑な直接調達を進めるため、当社は国内2社及び海外1社の格付機関から格付を取得しており、2026年3月末時点の発行体格付は、格付投資情報センター(R&I)「A」、日本格付研究所(JCR)「A+」、ムーディーズ・インベスターズ・サービス(Moody's)「Ba1」となっています。また、短期債格付(CP格付)についてはR&I/JCRより「a-1」/「J-1」を取得しています。 更に、当社は社債発行残高の上限として2,000億円の社債発行登録、CP発行枠として1,500億円を設定しているほか、政府系や内外金融機関との幅広い取引関係をベースとする間接調達により、運転資金や設備資金の需要に迅速に対応できるものと考えています。加えて、安定的な経常運転資金枠の確保・緊急時の流動性補完を目的にコミットメントラインを設定しており、資金の流動性確保に努めています。 当社の環境戦略を資金調達の面から支えるESGファイナンスについては、2025年7月にトランジション・リンク・ローン、2025年12月にトランジション・ローンを組成しています。 ③ 資金需要 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、各事業運営に関する海運業費用です。この中には燃料費・港費・貨物費等の運航費、船員費・船舶修繕費等の船費及び借船料などが含まれます。このほか物流事業の運営に関わる労務費等の役務原価、各事業についての人件費・情報処理費用・その他物件費等の一般管理費があります。また、設備資金需要としては、船舶への投資のほか、特に非コンテナ船事業への投資を進め、当連結会計年度中に5,432億円の設備投資を実施しました。 ④ グループ資金の効率化 当社及び主要子会社間でキャッシュマネージメントサービス(CMS)を導入しており、グループ内の資金効率化を図ることにより、外部借入の削減に努めています。 (6)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されています。その作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下のとおりです。・のれんの評価 詳細は「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。・固定資産の減損 当社グループは、資産又は資産グループが使用されている事業の経営環境及び営業活動から生ずる損益等から減損の兆候判定を行っており、減損の兆候が識別された場合、減損損失の認識の判定を行い、必要に応じて回収可能価額まで減損処理を行うこととしています。将来の市況悪化等により減損の兆候及び認識の判定の前提となる事業計画等が修正される場合、減損処理を行う可能性があります。・貸倒引当金 当社グループは、売上債権及び貸付金等の貸倒損失に備えて回収不能となる見積額を貸倒引当金として計上しています。将来、債務者の財政状況の悪化等の事情によってその支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。 (7)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況 当期の業績は、コンテナ船事業において、前期に見られた高水準の運賃市況が調整局面に入り、前期比で大幅な減益となったものの、好市況を享受したタンカー事業や、長期契約を基盤とした安定利益を確保したFPSO事業等のエネルギー事業、堅調な完成車輸送需要に支えられた自動車輸送事業が業績を下支えしました。また円安の追い風もあり、経常利益1,758億円、税金等調整前当期純利益2,390億円となり、グループ経営計画「BLUE ACTION 2035」Phase 1 最終年度である2025年度の利益目標として定めた、税引前当期純利益2,400億円を初年度から3期連続で概ね達成する結果となりました。 事業セグメントごとの状況につき、ドライバルク事業は、鉄鉱石、穀物、石炭等の荷動きが底堅く推移したものの、Gearbulk Holding AGの連結子会社化に伴う減価償却費の増加や木材チップ船の市況低迷の影響を受け、前期比で減益となりました。エネルギー事業は、ケミカル船において市況のピークアウトにより減益となった一方、市況が高水準で推移した原油船・LPG船に支えられたタンカー事業、及びFPSO事業における長期契約を通じた安定収益に加え、地政学リスクの継続に伴うトンマイル需要の構造的な増加を背景として、前期比では減益となったものの堅調な収益水準を維持しました。コンテナ船事業は、季節要因による貨物需要の下支えはみられたものの、市況の平常化が進む局面に入り前期比大幅減益となりました。自動車輸送事業は、完成車輸送需要が引き続き堅調に推移する中、安定的な契約ポートフォリオを背景として、前期比減益となったものの堅調な業績となりました。不動産事業は、保有する既存物件からの賃貸収入を中心に安定した収益を計上しました。フェリー・内航RORO船事業は、貨物輸送及び旅客輸送ともに安定的に推移し、収益性の改善が進みました。 翌期2026年度は、米国を始めとする主要国の通商・貿易政策によりインフレ進行・世界経済停滞が懸念される中、荷動きの弱含みと円高影響を見込み、前期比で減益を予想しています。ロシア・ウクライナや中東等での地政学的緊張の継続を始めとして当社グループを取り巻く事業環境の不確実性は引き続き高いですが、「BLUE ACTION 2035」に基づき、グローバルな社会インフラ事業への飛躍を目指し邁進します。 経営計画の主な内容は「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。なお、「BLUE ACTION 2035」Phase 2で掲げるCore KPI・利益計画・投資計画・財務計画は以下のとおりです。 <Core KPI> グループ経営計画「BLUE ACTION 2035」Phase 2では、その目標の達成状況を判断するための指標(Core KPI)として、3つの財務KPI・5つの非財務KPIを設定しています。 <利益計画> 「BLUE ACTION 2035」における税引前当期純利益目標は、Phase 1(2023~2025年度)で積み上げた投資実績やPhase 2(2026~2030年度)以降の投資計画を踏まえ、事業ポートフォリオとアセット量にふさわしい水準とすべく、2030年度の計画値を2023年3月に開示した3,400億円から4,200億円に、2035年度の最終到達点を同じく4,000億円から5,000億円に引き上げました。なお、将来的な国際財務報告基準(IFRS)の適用を想定し、基準とする利益目標は税引前当期純利益(*)を選択しています。(*)日本会計基準を前提に算出しており、実際に国際財務報告基準(IFRS)を適用した場合の算出値とは相違する可能性があります。 <投資計画> 「BLUE ACTION 2035」では、2023~2035年度の累計で約3.8兆円の投資を想定しています。うち、Phase 1(2023~2025年度)の3年間では機会を積極的に捉え、当初計画を上回るペースで投資を積み上げたことで、安定収益型事業への投資1.6兆円を含む、2.0兆円の投資を実行しました。Phase 2(2026~2030年度)では、Phase 1で前倒しして実行した投資ペースを調整しつつ、有利な投資機会があった場合には、限定的に外部資金も活用しながら、成長投資も継続して行います。 <財務計画> 当社は、創出したキャッシュ・フローで成長投資を行い、キャッシュ創出力の強化を通じて中長期的に企業価値を高めていくことを経営の基本方針としています。Phase 1において実施した成長投資を基盤に、Phase 2では財務健全性をより重視する方針のもと、基礎営業キャッシュ・フローの積み上げに加え、これまで以上にアセット入替を促進し、新規外部調達を抑制しつつ、成長投資と株主還元強化の両立を図ります。 2026年度からのPhase 2期間においては、安定収益の伸長を踏まえ1株当たり年間205円を起点とする累進配当を導入するとともに、総還元性向40%を目安として、市況アップサイドによる超過利益は機動的な自社株買いによる還元を行う方針です。累進配当により配当の予見性を高めるとともに自社株買いを通じて資本効率を向上させることで、目標として掲げるROE10%超の達成を目指します。 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断したものです。

事業リスク

  • 海運市況の変動リスク
    ドライバルク事業やエネルギー事業など、海運市況に大きく影響される事業を多く抱えています。市況の変動は、運賃収入や船舶の資産価値に直接影響し、業績や財務状況に大きな影響を与える可能性があります。このリスクに対し、同社は安定収益型事業への投資比率を高めることで、影響の緩和を図っています。
  • 運航・操業事故リスク
    約800隻の船舶を運航する中で、衝突、座礁、火災、油濁事故などの重大な海難事故が発生するリスクがあります。これらの事故は、船体・積み荷・乗組員への損害、環境汚染、賠償責任、さらには企業の評判(レピュテーション)に甚大な影響を及ぼす可能性があります。同社は、安全運航体制の強化や各種保険への加入で備えています。
  • サイバーセキュリティリスク
    事業運営が情報システムに大きく依存しているため、サイバー攻撃やシステム障害が発生した場合、事業活動の停止、情報漏洩、顧客への影響、信頼性の低下など、広範な損害が生じる可能性があります。同社は、インシデント対応規程やガイドラインを整備し、対策本部を設置することで、迅速な対応体制を構築しています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「事業等のリスク」の全文を見る(年度切替)
FY2026|9,191 文字
3【事業等のリスク】<リスク管理に関する基本的な考え方> 世界中で幅広く事業を展開する当社グループは、様々なリスクに晒されています。当社は、下表のとおり、当社グループの事業が晒される主要なリスクを、管理手法に基づき「エマージングリスク」、「事業遂行上のリスク」に分類し、種別ごとにリスク管理主体を置き、管理規程やガイドライン等にしたがって、リスク量の把握やヘッジによるエクスポージャーの削減、保険付保等によるリスク移転を含めたリスク低減策を講じています。 「エマージングリスク」とは、当社グループの事業に影響を与える外部環境の変化のうち、発生確率や影響度合いを定量的に把握できないリスクを指します。当該リスクについては、取締役会が経営の基本方針に則り、直近の兆候情報と専門家の見解を踏まえ、当社グループの事業への影響及び取り得る対応策について議論を行うとともに、事業機会としての側面も認識した上で、経営計画や事業戦略の策定に反映しています。一方、「事業遂行上のリスク」とは、事業活動に伴い発生するリスクであり、市況変動リスク、信用リスク、オペレーショナルリスク等が含まれます。 各管理主体によるリスク管理の状況は定期的に経営会議(特に重要なものについては、取締役会)に報告され、情報の一元管理と必要な判断・対応が行われています。また、新規の投資判断を含む重要な意思決定にあたっては、予め発議する各事業部がリスクの洗い出しを行い、専任の社内審査部署のほか、案件内容に応じて財務部・法務部等専門部署によるアセスメントを経て、意思決定プロセスに入ります。意思決定の内容・重要性に応じて、経営会議の下部機関として設けている6つの委員会(「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ② 当社のコーポレート・ガバナンス体制」をご参照)の場で事前審議をおこなうことにより、リスクの掘り下げや論点整理がなされます。また、最重要案件については、経営会議における慎重な審議を経て取締役会に付議され、リスク管理を重視した判断を行っています。 <リスク管理の高度化に向けた施策> 当社は、上記の二分類それぞれについて、リスク管理手法の高度化に継続的に取り組んでいます。 (エマージングリスク)2021年度に全社リスクマッピングに向けた検討を開始し、2022年度以降は取締役会において管理手法の確立に向けた議論を重ねてまいりました。これまでの議論を通じ、重要なリスクシナリオに基づく事業上の重要な制約要因(チョークポイント)の特定、当社グループの事業ポートフォリオに対する潜在的な影響の把握に努めており、今後も外部環境の変化を踏まえた継続的なモニタリングに取り組んでまいります。 (事業遂行上のリスク)当社グループの事業リターンの主な源泉でもある海運市況変動に伴う資産価値の変動リスクに対しては、2014年からアセットリスクコントロール(詳細後述)と呼ぶ仕組みを導入し、バリューアットリスク(VaR)に基づくリスク量に対して自己資本が十分な水準にあることを検証する形でリスクの定量評価を行い、半年に一度、取締役会と経営会議に報告し監督を受けています。 更に、オペレーション、事業継続(BCP)、コンプライアンス等に係わるリスクに対する管理体制の高度化も続けています。2020年7月26日にモーリシャス沖で発生した当社がチャーターするドライバルク船WAKASHIO号の油濁事故を踏まえ、当社又は当社グループ全体の事業活動に対して甚大な影響を及ぼしうる事象(クライシス)が発生した場合に迅速に対策を講じる体制(クライシス対策本部)を整備しました。事業継続と企業価値維持を図るべく、社会的インパクトを考慮しつつ当社グループ一丸となった対応を実施するものです。 クライシスに至らない重大海難事故を含む海難事故、地震等の災害や感染症及び重大ICTインシデント等が生じた場合には、それぞれ関連する規程に基づき、事業継続を含む早期復旧・再開を図るための組織として各対策本部を設置して適切に対処する体制を整えています。 <事業遂行上のリスクの概要と対応策>1.経営計画・投資計画の進捗に影響を与えうるリスク項目 当社グループは、海運事業を中心として当社グループが強みを持つ分野に経営資源を重点的に投入していますが、以下に記載する各種リスクによって、投資した事業が想定通りに進展せず、投下資金の回収不能、損失発生、及び計画した利益が上がらないなどの可能性があります。 新規の投資決定にあたっては、投資の意義・目的を明確にした上で、各種リスクの発現可能性・影響度を認識・測定し、投下資金に対する利回りが期待収益率を上回る蓋然性を評価し、選別を行っています。しかしながら、投資評価の段階で案件の選別を厳格に行ったとしても、期待したとおりの利益が上がらない可能性を完全に排除することは困難であり、事業環境の変化や案件からの撤退等に伴い、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。 (1)運航・操業リスク 約900隻の多様な船舶や洋上設備を運航・操業し、海運業を中心とした様々な社会インフラを提供する当社グループにとって、衝突・座礁・火災といった事故による船体・積み荷・乗組員への損害や損傷、貨物油や燃料油流出による環境汚染(油濁)は最も重大なリスクの一つです。当社グループでは事故を未然に防ぐため、保有船・傭船の区別に関わらず、安全・品質推進本部と各事業本部、船主(傭船の場合)、及び船舶管理会社との緊密な連携のもと、乗組員に対する教育・指導や、安全を担保する船体仕様の整備などソフト面・ハード面で様々な対策を講じています。また、海賊やテロの危険に対しても、十分な訓練、緻密な運航ルール設定、陸上からのサポート、必要な設備の設置など、様々な備えを行っています。 なお、最善を尽くした上でも避けきれない事故によって当社グループ自身もしくは関係者に損害が発生した場合においても、業績に大きな影響を受けることを回避するため、また十分な補償原資を確保するため、必要な金額の各種保険(賠償責任保険・船体保険・戦争保険・不稼働損失保険)を付保し、備えとしています。 また、レピュテーションリスクを抑えるため、事故発生時のメディア対応や情報発信について、年に一度重大海難対応訓練を実施しているほか、必要に応じメディアコンサルタントを起用しています。 (2)サイバーセキュリティリスク 当社グループの事業及び業務は、情報システムに大きく依存しており、重大ICTインシデント(ICTシステム障害、サイバー攻撃、自然災害、オペレーションミス等を起因として発生又は発生の可能性があるセキュリティ・プライバシーの侵害及び当社グループの信頼低下等)が発生した場合には、大きな影響を受ける可能性があります。当社グループでは「重大ICTインシデント対策本部規程」及び「重大ICTインシデント対応ガイドライン」において、グループ共通のインシデントレベルの判断基準、インシデントレベルに応じた対応方針を定めています。重大なICTインシデントが発生した場合には、対策本部が設置され、ステークホルダー(株主、顧客、メディアなど)への報告・説明、技術的・法的対応等を速やかかつ組織的に実施し、当社グループの利益、ブランド、信用を著しく損なう事態の発生を防ぐ体制としています。 (3)災害・感染症リスク 大規模な災害や感染症等は当社グループ運航船の乗組員のみならず、陸上で勤務する従業員の活動を制限し、当社グループの持続的な事業活動に大きく影響が及ぶことが想定されます。 大規模な地震等の災害発生時にも船舶等の運航・操業を維持し、サプライチェーンを支える社会的役割を果たすため、当社はBCPマニュアルを定め、サテライトオフィスやシステムのバックアップ体制を整備しています。災害等を想定した本社・社外での訓練等を定期的に実施し、そこで明確になった課題に対処することで、より実効性を高めています。 また、災害や感染症の流行に際して、船舶等と役職員の安全を最優先に確保し、事業の中核である「海上運送サービス」の提供継続と、万が一それが中断した場合に早期復旧を図ることを目的に、事業継続計画(BCP)を策定しています。また本社役職員全員にノート型PCを配布することにより、クラウド型ツール等を活用してリモート環境から勤務可能な就労体制を整備しています。 (4)グループガバナンスリスク 当社はグループの経営戦略上特に重要なグループ会社であるMOL Global Ship Management Pte. Ltd.、商船三井マリテックス株式会社、商船三井ドライバルク株式会社、MOL Chemical Tankers Pte. Ltd.、株式会社宇徳、ダイビル株式会社、株式会社商船三井さんふらわあ、商船三井クルーズ株式会社をはじめ、子会社、関連会社を有しています。当社グループとしての企業価値の向上と業務の適正を確保する体制を整備していますが、子会社の統治が十分に機能せず、発生したインシデントの対応の遅れなどが生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。 当該リスクに対応するため、2023年度から「チーフ・オフィサー制」を整備して、当社グループのコーポレート機能を横断的に統括し、一体的かつ戦略的な取り組みを強力に支援する体制に移行しました。各チーフ・オフィサーは、社長(CEO)の権限と責任の一部について委任を受け、特定の横断的機能において、当社(本社)のみならず当社グループ全体を指揮・統制することをその任務としています。 また、2022年度から国内外グループ会社に対するリスクアセスメントを導入しました。各グループ会社のセルフアセスメントを通じ、各社及び本社管理担当部署がリスクの所在・内容を把握し、また本社経営陣及びコーポレート部門がグループ全体のリスクについて把握することで、それぞれがより実効的なリスク管理体制の構築を行うための基礎資料とすることを目的としています。 (5)コンプライアンスリスク 当社グループにおいて、各種ハラスメント、贈賄、独禁法・競争法違反、インサイダー取引等のコンプライアンス関連のリスクは、時に巨額の損害賠償請求につながる恐れがあり、当社グループの持続的な事業活動に大きく影響が及ぶことが想定されます。 ・コンプライアンス実現に向けた取り組み 当社は、2014年に公正取引委員会から、特定自動車運送業務の取引に関連して独占禁止法第3条に違反する行為があったと認定されました。当社グループでは、コンプライアンス遵守が企業活動の大前提であることを役職員一人ひとりが深く心に刻み、日々の業務において適切な判断を下せるよう、規範とすべき行動基準を定めたコンプライアンス規程を整備し、継続的な研修によりその徹底を図っています。また、コンプライアンス委員会を3カ月ごとに開催し、グループ内のコンプライアンス事案を審議、違反案件への対応を行っているほか、事例の件数や内容を社内に公開することにより、役職員の意識向上を促しています。 ・コンプライアンス相談窓口 当社グループでは、当社及び当社グループの役職員、派遣社員が日本語・英語で利用することのできるコンプライアンス社内・社外相談窓口を設置しています。社外相談窓口については社外の弁護士がその任にあたり、受け付けた報告・相談をコンプライアンス委員会事務局に伝えるとともに、それ以降も報告・相談者と会社間の連絡を取り次ぎます。いずれの窓口においても報告・相談者の秘密は厳守されるとともに、調査協力者も含めて、不利益な処遇がなされないことが保証されています。更に、当社Webサイトにおいて、国内外取引先など一般外部からのコンプライアンスに関する問い合わせも受け付けています。 ・独禁法遵守及び腐敗防止への取り組み 当社グループでは、独禁法遵守行動指針及び贈賄等防止規程、加えてより具体的なガイドラインである「DO!s &DON’T!sガイド」等を作成し、各種研修を通じて国内外における法規制の概要と留意点を全従業員に周知することにより、独禁法遵守及び腐敗防止の徹底に努めています。 (6)公的規制に関わるリスク 当社グループにおいて、外航海運業では、設備の安全性や船舶の安全運航のために、国際機関及び各国政府の法令、船級協会の規則等様々な公的規制を受けています。また、その他の事業分野も含め、事業を展開する各国において、事業・投資の許可をはじめ、運送、通商、独占禁止、租税、為替規制、環境、各種安全確保等の法規制の適用を受けています。これらの規制を遵守するためには費用が発生しており、また、これらの規制が変更された場合、もしくは新たな規制等が導入された場合には、新たな費用が発生する可能性があります。加えて、当社グループは、これらの規制の遵守体制を構築し、運用状況について情報収集を行っていますが、関係当局による調査の対象となることや、その調査の結果によっては処分や処罰を受けることがあります。 とりわけ、各国・地域の経済制裁に関する規制は、国際情勢の変動に伴い対象国・取引制限の範囲が急速に変化し得るものであり、違反した場合には取引の禁止、資産の凍結、金融システムへのアクセス制限等を通じて、個別の罰則にとどまらず事業の継続そのものが困難となる重大な影響が生じるおそれがあります。このため当社グループでは、専門部署による制裁対象国・地域リストの管理、取引開始時及び取引継続中のスクリーニングの実施、各事業部門・グループ会社における対応要領の整備、並びに内部監査を通じた実効性の検証を柱とする管理体制を構築し、予防的な対応の強化に努めています。 (7)人権に関わるリスク、バリューチェーンにおける各種リスク 当社グループにおける全てのバリューチェーンにおいては、人権・安全・環境面等、バリューチェーン全体の持続可能性に関する様々なリスクが存在します。特に、あらゆる形での差別・長時間労働・ハラスメント・強制労働・児童労働等の人権に関わるリスクは社会的な関心事となっていることから、それらの発現は当社グループの企業価値の毀損につながる恐れがあります。 このため、当社グループでは「商船三井グループ人権方針」、「商船三井グループ調達基本方針」、及び「取引先調達ガイドライン」を整備しており、当社グループとしての「人権尊重」への姿勢を改めて社内外に示すとともに、人権・安全・環境等に配慮した持続可能なバリューチェーン構築のため、取引先を含む、多様なステークホルダーから理解・協力が得られるような内容としています。 また、社内方針整備のみならず、バリューチェーンマネジメントの仕組み構築も推進しています。以下に示す各ステップのとおり、人権デューデリジェンスを包含したバリューチェーンのモニタリングスキームの立案・実装を進め、環境・人権・ガバナンス関連のリスクについて実態の把握及び解消に努めます。これらは適時適切に効果の検証と情報の開示を行うことにより、ステークホルダーへの説明責任を果たします。 (8)技術革新リスク 当社グループの主たる事業分野である外航海運業では、投資対象となる船舶等資産の保有期間は通常20年~30年にも及ぶものとなります。デジタル技術や代替燃料に関する技術が急速な発展を遂げている中、当社グループが保有する資産の陳腐化、或いは競争力の低下等が生じる可能性があります。また、技術革新に対応するために、設備投資等の負担が増加する可能性があり、かかる場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、このような技術革新の動向を捉えて、国内外造船所や外部研究機関との密な連携をはじめ、社内でも先進的な技術開発を行うことで、新規技術の評価・検証を実施し事業展開に活用しています。 (9)海運市況・顧客信用・カントリーリスク 当社グループは、海運市況の変動、顧客の信用状態の悪化、及び事業展開先の国・地域に係る政治・経済情勢の変動により、業績及び財務状況に影響を受ける可能性があります。当社は、以下のとおり各リスクの特性に応じた低減策を講じるとともに、これらのリスクを統合的に定量管理する枠組みとして「アセットリスクコントロール」を導入しています。 ・市況リスク 中長期契約を前提としない船舶等に投資する場合、貸船料・運賃等が市況によって左右される可能性があります。当社グループは、将来的な需給バランスの見通しを注意深く精査し、同リスクの低減を図っています。加えて市況変動パターンが異なる幅広い種類の船舶や海運関連事業を手掛けるとともに、海洋事業、洋上風力発電事業、物流事業、或いは不動産事業といった非海運事業への積極投資を掲げるポートフォリオ戦略によって、事業ごとの市況リスクを分散しています。また、期中リスクの低減については、例えばケープサイズバルカーやVLCCといった船種において、FFA(運賃先物取引)をヘッジ手段として活用することにより、既に進行中の事業年度における市況エクスポージャーを削減し、損益とリスクの安定化を図っています。 ・顧客信用リスク 顧客の信用不安により、貸船料・運賃等を回収できない、又は減額を求められるリスクがあります。当社グループは、国内外の信用力の高いお客様との中長期契約獲得を積極的に推し進めることで同リスクの低減を図っています。また、融資においては、融資先の信用状態の悪化に伴う貸倒引当金の計上等により、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。このため、融資先の財務状況等は定期的にモニタリングする体制としています。 ・カントリーリスク 当社グループは世界各地で事業を展開しており、各国・地域における政治・経済情勢の変動、法制度の変更、為替・送金規制の強化等により、投下資本の回収が困難となるリスクや資産価値が毀損するリスクがあります。重要リスクの見込まれる国・地域別の投下資本全体(関連資産総額)について、半年に一度、取締役会、及び経営会議にて定期的に把握する体制としています。 なお、現時点において地政学リスクが発現しているロシア関連の事業については、LNG船15隻、コンデンセートタンカー1隻が貸船契約に従事中、もしくは貸船契約開始前の状態にあります。この内、砕氷機能を有する、LNG船3隻及びコンデンセートタンカー1隻(合計投資額約1,008億円(*))の貸船契約について、当社は欧米の制裁強化に対応し、必要な措置を講じています。契約スキームの変更を要さないものも含めた砕氷機能を有する等特殊仕様の7隻(合計投資額約1,591億円(**))は他事業への転用が難しいため、万一契約が継続できない状況になった場合、関係先への船舶の売却など最大限の対策を講じるものの、資産価値が減少する可能性があります。(*)当連結会計年度末投資残高559億円及び今後投資予定の448億円の合計であり、関連会社保有分は当社持分相当を含めて算出している。(**)当連結会計年度末投資残高1,143億円及び今後投資予定の448億円の合計であり、関連会社保有分は当社持分相当を含めて算出している。なお、いずれの隻数も関連会社保有分を含めた隻数。 各数値(金額)は単位未満を切り捨てて記載している。 <アセットリスクコントロールの考え方>上記の市況リスク、顧客信用リスク及びカントリーリスクに加え、グループ会社の事業リスクを含めた当社グループ全体のリスクを統合的に定量管理する枠組みとして、2014年より「アセットリスクコントロール」を導入しています。これは、金融機関で幅広く利用されているバリューアットリスク(VaR)の手法を海運業向けに応用したもので、保有アセットに対して同時に相当程度のストレスシナリオを適用し、それが一定期間継続した場合に想定される最大の損失額を総リスク量として算定した上で、自己資本との比較において過大とならないよう管理するものです。本枠組みにおいては、アセットごとの市況が異なるタイミングで変動することによる分散効果も考慮しており、半年に一度、取締役会及び経営会議に報告し監督を受けています。 (10)為替・金利・燃料油価格変動リスク・為替 外航海運業においては、収入のほとんどが米ドル建てであるのに対し、日米の金利水準なども踏まえて費用や借入の一部を円建てとしているため、為替リスクを負っています。当社は財務部門を通じた将来的な金融環境の見通しを踏まえ、必要に応じて費用のドル化やドル借入によりエクスポージャーを限定し、その上で期中に機動的な為替ヘッジも行うことで、更なるリスク低減に努めています。 ・金利 当社グループでは、船舶等の新規建造や更新、不動産の購入のために継続的な投資を行っていますが、長期の資金調達時には、固定金利借入や金利スワップを活用することで金利変動リスクを低減しています。 ・燃料油価格 燃料油は船舶運航費用の大きな部分を占めることから、かつてその価格変動は当社グループの損益に多大な影響を及ぼしていました。しかしながら、現在では中長期契約の大部分に燃料油価格変動リスクをお客様にご負担いただく条項が含まれているほか、短期契約においても、その時々の燃料油価格に基づく運賃提示を行うか、一定の算式によって燃料油価格変動を運賃に反映する契約としています。それでも残る限られたエクスポージャーに関しても、燃料油先物取引を活用してリスク量の縮減に努めており、燃料油価格変動による損益影響は今では極めて限定的となっています。 なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。 また、上記は当社グループの事業その他に関し、予想される主なリスクを具体的に例示したものであり、ここに記載されたものが当社グループのすべてのリスクではありません。加えて、将来の予測等に関する記述は、現時点で入手された情報に基づき合理的と判断した予想であり、潜在的なリスクや不確実性その他の要因が内包されています。したがって、実際の業績は、見通しと異なる結果となる可能性があります。

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