9502

中部電力(9502)は何で稼いでいるか — 事業の柱と依存度

電気・ガス業 電気・ガス

事業の概要

  • エネルギー事業の多角化
    中部電力グループは、電気やガスといった主要なエネルギー供給を核としつつ、海外でのエネルギー事業展開、建設業や製造業、不動産事業など、多岐にわたる事業を手掛けています。これにより、単一事業への依存を避け、収益源の多様化を図っています。
  • 事業再編による効率化
    2019年と2020年に、燃料調達・火力発電事業をJERAに、小売電気事業を中部電力ミライズに、送配電事業を中部電力パワーグリッドにそれぞれ承継させました。これにより、各事業の専門性を高め、効率的な運営体制を構築しています。
  • グループ会社による事業展開
    中部電力は、子会社78社と関連会社97社(2026年3月31日現在)からなる大規模なグループを形成しています。これにより、各専門分野での事業展開を加速させ、グループ全体の競争力強化と収益拡大を目指しています。
出典: FY2026 有価証券報告書(AI要約)
セグメント構成
  • ミライズ(電力・ガスの販売とサービス)
    電力・ガスの小売販売を主軸とし、顧客の暮らしを豊かにする多様なサービスを提供しています。売上高は2兆9111.29億円と、グループの主要な収益源の一つであり、顧客との接点を活かした新たな価値創造を目指しています。
  • パワーグリッド(電力ネットワークサービス)
    電力の安定供給を支える送配電事業を担っており、電力ネットワークの維持・運用・次世代化を進めています。売上高は4100.07億円で、社会インフラとしての重要な役割を果たすとともに、電力系統の効率化・強靭化に取り組んでいます。
  • JERA(燃料調達から発電・卸販売)
    燃料の上流・調達から火力発電、電力・ガスの卸販売までを一貫して手掛ける事業です。グループ全体の燃料安定確保と発電効率向上に貢献しており、最新鋭の火力発電設備へのリプレースや、水素・アンモニアなどゼロエミッション電源の追求を通じて脱炭素化を進めています。
2025-03 セグメント別業績
セグメント区分売上(億)営業利益(億)営業利益率
MiraizReportableSegment 事業 29,111 − −
PowergridReportableSegment 事業 4,100 − −
有価証券報告書「事業の内容」の全文を見る(年度切替)
FY2026|1,403 文字
3 【事業の内容】当社グループは,当社,子会社78社及び関連会社97社(2026年3月31日現在)で構成され,電気やガスなどを供給するエネルギー事業をコア領域として,海外エネルギー事業,エネルギー事業に関連する建設業・製造業,不動産事業など,さまざまな事業を展開している。当社は,2019年4月1日付で,燃料受入・貯蔵・送ガス事業及び既存火力発電事業等を吸収分割により㈱JERAに承継させ,2020年4月1日付で,当社が営む小売電気事業等を中部電力ミライズ㈱に,一般送配電事業等を中部電力パワーグリッド㈱に,権利義務を承継させた。この体制の下,「ミライズ」,「パワーグリッド」,「JERA」の3つを報告セグメントとしている。 [ミライズ]電力・ガスの販売と各種サービスの提供[パワーグリッド]電力ネットワークサービスの提供[JERA]燃料上流・調達から発電,電力・ガスの卸販売 当社及び関係会社の事業を「事業系統図」として示すと以下のとおりである。 ※1 ミライズエネチェンジ㈱,ENECHANGE EVラボ㈱,EV充電インフラ1号合同会社,EV充電インフラ2号合同 会社は,2026年5月26日に民事再生法の規定による再生手続き開始の決定を受けている。※2 ㈱日本エスコンは,㈱エスコンに商号変更している。※3 FUEL㈱は,㈱エスコンインベストメントパートナーズに商号変更している。※4 ㈱芝リアルエステートは,出資により,新たに連結の範囲に含めている。※5 ㈱モンテディオフットボールパークは,出資により,新たに連結の範囲に含めている。※6 能登フォレストデザイン㈱は,出資により,新たに連結の範囲に含めている。※7 丸紅伊那みらいでんき㈱は,ICT伊那みらいでんき㈱に商号変更している。※8 CeneC合同会社は,出資により,新たに持分法の適用範囲に含めている。※9 クリーンウッドエナジー㈱は,出資により,新たに持分法の適用範囲に含めている。※10 TCK Global Education合同会社は,出資により,新たに持分法の適用範囲に含めている。※11 Mithra Solar Holding Ltd及び傘下の会社6社は,出資により,新たに持分法の適用範囲に含めている。※12 Origin Chaengwattana Co. Ltdは,出資により,新たに持分法の適用範囲に含めている。※13 裾野バイオマス発電合同会社は,株式譲渡により,持分法の適用範囲から除外している。※14 渋川バイオマス発電合同会社は,株式譲渡により,持分法の適用範囲から除外している。※15 長野バイオマス発電合同会社は,株式譲渡により,持分法の適用範囲から除外している。※16 上越バイオマス発電合同会社は,株式譲渡により,持分法の適用範囲から除外している。※17 Greenway Grid Global Pte.Ltd.は,株式譲渡により,持分法の適用範囲から除外している。※18 Geothermie Rupertiwinkel GmbHは,株式譲渡により,持分法の適用範囲から除外している。※19 BRITANIA BANGNA KM.39 CO.,LTD.は,株式譲渡により,持分法の適用範囲から除外している。※20 ㈱大垣スクールランチサポートは,清算結了により,持分法の適用範囲から除外している。

事業の優位性(モート)

事業の質(有価証券報告書から抽出)
数字に出ない事業の性質を、同じ物差しで全銘柄そろえています。FY2025時点の記載が出典です。
価格決定力値上げを通せるか。強いほどインフレ耐性が高い 中程度
燃料費調整の仕組み導入やヘッジ取引により調達価格の安定化を図っているため。
参入障壁新規参入を阻む要因の種類 規制
電気事業制度やエネルギー政策の見直し、原子力発電所の新規制基準適合性確認審査など。
景気敏感度業績が景気循環にどれだけ振られるか 中程度
設備投資の性質稼いだ現金がどれだけ設備維持に消えるか 混合
規制依存規制は障壁にも足枷にもなる 高い
会社が挙げる主要リスク:燃料・電力価格の変動 / 競争激化と事業環境の変化 / 新成長分野の事業化リスク
同じ条件で他の銘柄を探す → 定性スクリーニング(価格決定力・参入障壁・景気敏感度などで絞り込めます)
モート総合 11 / 25 5類型それぞれの強度と、そう判定した根拠
無形資産★★☆☆☆
根拠:中程度ブランド・特許・許認可

中部電力は、長年にわたり培ってきた地域社会からの信頼と、電力供給というインフラ事業における規制上の優位性を持つ。しかし、明確な特許やブランドによる独占的IPは限定的であり、新規参入障壁は存在するものの、無形資産による強力な競争優位とは言えない。

スイッチングコスト★★★☆☆
根拠:中程度乗り換えの手間・コスト

電力自由化後も、多くの家庭や企業は電力会社を乗り換える際の事務手続きの手間や、料金プランの比較検討の煩雑さから、既存の電力会社を継続利用する傾向がある。特に、長年の取引実績がある法人顧客にとっては、乗り換えによるリスクを避けたい心理が働く。

ネットワーク効果☆☆☆☆☆
根拠:弱い利用者増が価値を生む

電力供給事業は、ユーザーが増えることでサービス価値が直接的に向上するネットワーク効果は基本的に見られない。供給網の整備は必要だが、これは規模の経済やインフラ投資の範疇であり、ネットワーク効果とは異なる。

コスト優位★★☆☆☆
根拠:中程度同じ物を安く作れる

中部電力は、大規模な発電設備や送配電網の効率的な運用により、一定のコスト競争力を持つ。しかし、燃料価格の変動や再生可能エネルギー導入コストなど、外部要因によるコスト変動リスクは大きく、構造的なコスト優位性は限定的である。

規模の経済★★★★☆
根拠:強い規模が参入障壁になる

中部電力は、東海地域における広範な電力供給網と大規模な発電設備を有しており、地域インフラとしての規模の経済が働く。この広範なインフラは、新規参入企業にとって莫大な初期投資が必要となり、容易な参入を阻害する要因となっている。

  • 強固な顧客基盤とブランド力
    中部地域に深く根差した電力・ガス供給事業を通じて、長年にわたり築き上げてきた顧客基盤と信頼性の高いブランド力は、新規参入企業に対する大きな障壁となります。これにより、安定的な収益確保と顧客維持に繋がっています。
  • エネルギーインフラ運営の専門知識
    電力・ガス事業で培われた設備のインフラ運営ノウハウ、高度な技術を持つ人材、そして中部エリアを網羅する広範な拠点は、他社には容易に真似できない強みです。これは、マルチユーティリティ事業や不動産事業など、新たな事業展開の基盤となっています。
  • 多様な電源ポートフォリオと燃料調達力
    JERAとの連携により、燃料の上流・調達から発電、電力・ガスの卸販売までを一貫して手掛ける体制を構築しています。これにより、調達先の分散化や長期契約を通じて、燃料価格の変動リスクを緩和し、安定的なエネルギー供給を可能にしています。
出典: FY2026 有価証券報告書(AI要約)

経営戦略

  • 安全性の確保と信頼回復
    浜岡原子力発電所の不適切事案を受け、独立した調査委員会による調査に協力し、意識・行動、組織・組織風土、ルール・仕組みの強化を通じて信頼回復に努めています。安全性の確保は、事業継続の最重要課題として位置づけられています。
  • GX・DX推進による事業変革と成長
    グリーントランスフォーメーション(GX)とデジタルトランスフォーメーション(DX)を経営戦略の柱とし、電力の安定供給確保、脱炭素社会の実現、新たな収益源の獲得・拡大を目指しています。AIなどの先端技術を導入し、業務効率化と事業の高度化を図ります。
  • 「選択と集中」による事業ポートフォリオ最適化
    エネルギー事業をコアとし、シナジー効果が見込める事業に経営資源を集中させる「選択と集中」を進めています。これにより、ROE(自己資本利益率)8%以上を中期的な目標とし、持続的な成長と企業価値向上を目指します。
出典: FY2026 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「経営方針・対処すべき課題・MD&A」の全文を見る(年度切替)
経営方針・経営戦略
1 【経営方針,経営環境及び対処すべき課題等】文中における将来に関する事項は,有価証券報告書提出日(2026年6月24日)現在において判断したものである。 (1) 会社の経営の基本方針浜岡原子力発電所の新規制基準適合性審査における基準地震動策定に係る不適切事案につきましては,現在も独立した外部専門家のみで構成される調査委員会(以下,「調査委員会」という。)による調査が継続しておりますが,ステークホルダーのみなさまから再び信頼される企業へと生まれ変わるため,先行して改善すべき事項として,「意識・行動の変革」,「組織・組織風土の変革」,「ルール・仕組みの強化」を柱とする取り組みを着実に進めております。今後,調査委員会による調査結果も踏まえ,このような不適切事案を二度と生じさせることがないよう,さらなる改善策・対応策を検討・立案し,全社を挙げて取り組んでまいります。当社は,「人と社会のつながりを,幸せのエネルギーに」という企業理念のもと,経営ビジョン2.0の達成に向けグループ一体となって事業に取り組んでまいりました。当社を取り巻く事業環境として,燃料価格につきましては,中東情勢の影響などにより,不確実性がさらに高まっております。また,物価・労務単価・金利のさらなる上昇に加え円安も進行するなど,国内外における投資環境の不透明性がこれまで以上に増しております。さらに,人口減少などに伴う社会課題が顕在化しております。中長期的には,GX(グリーントランスフォーメーション)やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展などにより電力需要の見通しが増加傾向に変化しており,エネルギー安定供給確保,経済成長,脱炭素の同時実現に向けた制度設計の検討が進められております。当社は,経営ビジョン2.0の達成に向けグループ一体となって,電力の安定供給確保,分散・循環型システムが併用された安全で安心な脱炭素社会の実現,事業構造の変革を通じた新たな収益源の獲得・拡大,電化等による需要創出に取り組んでまいりました。また,ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点を踏まえた事業経営を深化させることで,SDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献し,持続的な成長と企業価値の向上に努めてまいります。 (2) 目標とする経営指標2025年度は,中期経営計画の最終年度であり,中期経営目標として掲げた「連結経常利益2,000億円以上,ROIC3.2%以上」を達成いたしました。2026年4月には,「中部電力グループ 新中期経営計画の骨子」を公表いたしました。新たな中期経営計画につきましては,調査委員会による調査結果を踏まえ,必要な事項を反映のうえ公表いたします。 (3) 中長期的な会社の経営戦略・会社の対処すべき課題「選択と集中」を進め,エネルギー事業をコアとした成長の実現に向けて,多角化から転換し,エネルギーとシナジーが発揮できる事業に集中することで,中期的にROE(自己資本利益率)8%以上の達成を目指してまいります。具体的には,中部地域に根差した顧客基盤・ブランド力や面的拠点,エネルギー事業で培った知見・人財,挑戦を続ける開拓者精神といった当社グループの強みを活かし,需要造成・安定供給,低・脱炭素価値提供,シナジー事業の展開,グループ経営の深化を成長戦略の4つの柱と位置づけ,これらを着実に推進することで,持続的な成長を実現してまいります。また,これらの柱を実現するための基盤として,AI等の先端技術を実装し,業務変革(生産性の向上)や事業・サービスの高度化を推進してまいります。「選択と集中」の方向性については,エネルギー事業とのシナジーの発揮を前提に,成長性・資本効率の観点から事業の選択を進めるとともに,持続的な成長に向けた経営資源の適切な配分を通じて,事業ポートフォリオの見直しを図ってまいります。資本政策につきましては,自己資本比率30%半ばから後半を目安とした最適資本構成の考え方は堅持し,中期的なROE8%以上実現の観点も踏まえた資本政策を検討・実施してまいります。このような経営戦略のもと,以下の課題への対応を通じて,中部電力グループ全体の持続的成長と企業価値の向上を果たしてまいります。 (S(安全性の確保)+3E(エネルギー安定供給・経済効率性・環境適合性)の実現に向けた取り組み)中部電力グループは,特定の電源に依存せず,多様かつバランスの取れた電源構成が重要であるとの考えにもとづき,エネルギー安全保障に寄与し脱炭素効果の高い再生可能エネルギーや原子力発電の最大限の活用などに取り組んでまいります。供給力・調整力として重要な役割を担う火力発電につきましては,その担い手であるJERAにおいて,短期的には,中東情勢の影響などを踏まえ,政府の方針にもとづいた石炭火力の活用や設備の確実な運用,トレーディングも活用した燃料の安定的な確保に取り組んでまいります。中長期的には,安定供給と低炭素化の両立に資するLNG火力発電の活用等に取り組むとともに,長期安定的な燃料の確保に努めてまいります。また,JERAゼロエミッション2050のもと,非効率石炭火力の停廃止や水素・アンモニアのサプライチェーンの構築を含むゼロエミッション電源の追求など,着実な脱炭素化にも取り組んでまいります。再生可能エネルギーにつきましては,2017年度比で「2030年頃に保有・施工・保守を通じた320万kW(80億kWh)以上」の拡大を目指し,投資環境・制度動向を見極めながら開発に取り組むとともに,グループ会社による太陽光発電設備の保守・施工などを進めてまいります。さらに,中長期的な電力需要の見通しが増加傾向にある中,経済合理的な設備形成やウェルカムゾーンの公表を通じた大規模需要の適地誘導等のより良い連系サービスの提供に取り組むとともに,系統の次世代化も進めてまいります。加えて,太陽光発電をはじめとした自然変動電源の予測精度向上,他の一般送配電事業者と連携した広域的な需給運用の拡大などにより,中部エリアに加え全国の安定供給の維持に寄与してまいります。 (浜岡原子力発電所の状況)浜岡原子力発電所につきましては,新規制基準を踏まえたさらなる安全性向上対策や原子力発電の理解向上に向けた取り組みを進めるとともに,3・4号機の新規制基準適合性審査を受けておりましたが,2026年1月に公表した基準地震動策定に係る不適切事案を受け,いずれも中断しております。当社は,調査委員会による調査に全面的に協力するとともに,地域のみなさまなどに対し,本事案の概要や現在の発電所の状況をご説明するなどしております。 (エネルギー領域の成長に向けた取り組み)当社は,DXやAX(AIトランスフォーメーション)を推進する中核組織として,2026年4月にデジタル変革推進本部を設置いたしました。同本部のもと,先端技術の実装などを通じて生産性向上やビジネスモデル変革を進め,グループ全体の収益力の向上を目指してまいります。また,産業集積地である中部エリアの特性を踏まえ,産業プロセスの電化や地域産業のDX化に資するソリューションを提供し,電力需要の拡大につながる取り組みを推進してまいります。さらに,DER(分散型エネルギー資源)を活用した高度なエネルギーマネジメントを実現し,最適なエネルギー利用と多様な価値の創出を進めてまいります。 (エネルギー事業とのシナジーが見込まれる領域の取り組み)中部電力グループは,DXやAXを推進し,事業活動で得られた情報やデータの連携・利活用を進めるとともに,エネルギー事業とのシナジーが見込まれる領域で事業を展開し,新たな価値を創出してまいります。2026年4月には,社内外との連携・協業を加速し,サーキュラーエコノミーの実現に貢献する事業・サービスを機動的に展開するため,マルチユーティリティ本部を設置いたしました。同本部のもと,上下水道・資源循環事業などに取り組み,社会課題の解決に貢献してまいります。また,不動産事業につきましては,不動産事業本部が中心となり,エネルギーに加え,社会課題の解決に資する事業とのシナジーを発揮できるよう,グループ一体となってまちづくりを推進してまいります。 (資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた取り組み)中部電力グループは,企業価値向上を重要な経営課題と考えており,東京証券取引所の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請も踏まえ,取り組みを進めております。資本効率の向上については,政策保有株の売却などに取り組んできておりますが,今後は,事業ポートフォリオの組み替えや資産の入れ替え,事業別ROICの目標化などを進めるほか,安全・安定供給に関わる投資は着実に実施したうえで成長投資とのバランスを踏まえ,自己株取得の実施余地や時期・規模の考え方を整理するなど資本政策の検討も含め,ROE8%以上の達成を目指してまいります。また,資本市場の皆さまとの対話を継続し,定量的な情報の開示充実を進め,企業価値向上に努めてまいります。なお,これらの取り組みについては,新たな中期経営計画において具体的に取りまとめ,公表させていただきます。 中部電力グループは,脱炭素社会の実現,社会課題の解決,大規模災害時における事業継続やサイバーセキュリティの高度化など,ESGの観点を踏まえた事業経営を深化させることで,SDGsの達成に貢献し,持続的な成長と企業価値の向上に努めてまいります。今後とも,お客さまや社会からの信頼が事業運営の基盤であることを肝に銘じ,コンプライアンス経営を徹底するとともに,企業の社会的責任(CSR)を果たすことで,ステークホルダーのみなさまとともに,社会の持続的な発展(サステナビリティ)に貢献してまいります。
対処すべき課題
1 【経営方針,経営環境及び対処すべき課題等】文中における将来に関する事項は,有価証券報告書提出日(2026年6月24日)現在において判断したものである。 (1) 会社の経営の基本方針浜岡原子力発電所の新規制基準適合性審査における基準地震動策定に係る不適切事案につきましては,現在も独立した外部専門家のみで構成される調査委員会(以下,「調査委員会」という。)による調査が継続しておりますが,ステークホルダーのみなさまから再び信頼される企業へと生まれ変わるため,先行して改善すべき事項として,「意識・行動の変革」,「組織・組織風土の変革」,「ルール・仕組みの強化」を柱とする取り組みを着実に進めております。今後,調査委員会による調査結果も踏まえ,このような不適切事案を二度と生じさせることがないよう,さらなる改善策・対応策を検討・立案し,全社を挙げて取り組んでまいります。当社は,「人と社会のつながりを,幸せのエネルギーに」という企業理念のもと,経営ビジョン2.0の達成に向けグループ一体となって事業に取り組んでまいりました。当社を取り巻く事業環境として,燃料価格につきましては,中東情勢の影響などにより,不確実性がさらに高まっております。また,物価・労務単価・金利のさらなる上昇に加え円安も進行するなど,国内外における投資環境の不透明性がこれまで以上に増しております。さらに,人口減少などに伴う社会課題が顕在化しております。中長期的には,GX(グリーントランスフォーメーション)やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展などにより電力需要の見通しが増加傾向に変化しており,エネルギー安定供給確保,経済成長,脱炭素の同時実現に向けた制度設計の検討が進められております。当社は,経営ビジョン2.0の達成に向けグループ一体となって,電力の安定供給確保,分散・循環型システムが併用された安全で安心な脱炭素社会の実現,事業構造の変革を通じた新たな収益源の獲得・拡大,電化等による需要創出に取り組んでまいりました。また,ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点を踏まえた事業経営を深化させることで,SDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献し,持続的な成長と企業価値の向上に努めてまいります。 (2) 目標とする経営指標2025年度は,中期経営計画の最終年度であり,中期経営目標として掲げた「連結経常利益2,000億円以上,ROIC3.2%以上」を達成いたしました。2026年4月には,「中部電力グループ 新中期経営計画の骨子」を公表いたしました。新たな中期経営計画につきましては,調査委員会による調査結果を踏まえ,必要な事項を反映のうえ公表いたします。 (3) 中長期的な会社の経営戦略・会社の対処すべき課題「選択と集中」を進め,エネルギー事業をコアとした成長の実現に向けて,多角化から転換し,エネルギーとシナジーが発揮できる事業に集中することで,中期的にROE(自己資本利益率)8%以上の達成を目指してまいります。具体的には,中部地域に根差した顧客基盤・ブランド力や面的拠点,エネルギー事業で培った知見・人財,挑戦を続ける開拓者精神といった当社グループの強みを活かし,需要造成・安定供給,低・脱炭素価値提供,シナジー事業の展開,グループ経営の深化を成長戦略の4つの柱と位置づけ,これらを着実に推進することで,持続的な成長を実現してまいります。また,これらの柱を実現するための基盤として,AI等の先端技術を実装し,業務変革(生産性の向上)や事業・サービスの高度化を推進してまいります。「選択と集中」の方向性については,エネルギー事業とのシナジーの発揮を前提に,成長性・資本効率の観点から事業の選択を進めるとともに,持続的な成長に向けた経営資源の適切な配分を通じて,事業ポートフォリオの見直しを図ってまいります。資本政策につきましては,自己資本比率30%半ばから後半を目安とした最適資本構成の考え方は堅持し,中期的なROE8%以上実現の観点も踏まえた資本政策を検討・実施してまいります。このような経営戦略のもと,以下の課題への対応を通じて,中部電力グループ全体の持続的成長と企業価値の向上を果たしてまいります。 (S(安全性の確保)+3E(エネルギー安定供給・経済効率性・環境適合性)の実現に向けた取り組み)中部電力グループは,特定の電源に依存せず,多様かつバランスの取れた電源構成が重要であるとの考えにもとづき,エネルギー安全保障に寄与し脱炭素効果の高い再生可能エネルギーや原子力発電の最大限の活用などに取り組んでまいります。供給力・調整力として重要な役割を担う火力発電につきましては,その担い手であるJERAにおいて,短期的には,中東情勢の影響などを踏まえ,政府の方針にもとづいた石炭火力の活用や設備の確実な運用,トレーディングも活用した燃料の安定的な確保に取り組んでまいります。中長期的には,安定供給と低炭素化の両立に資するLNG火力発電の活用等に取り組むとともに,長期安定的な燃料の確保に努めてまいります。また,JERAゼロエミッション2050のもと,非効率石炭火力の停廃止や水素・アンモニアのサプライチェーンの構築を含むゼロエミッション電源の追求など,着実な脱炭素化にも取り組んでまいります。再生可能エネルギーにつきましては,2017年度比で「2030年頃に保有・施工・保守を通じた320万kW(80億kWh)以上」の拡大を目指し,投資環境・制度動向を見極めながら開発に取り組むとともに,グループ会社による太陽光発電設備の保守・施工などを進めてまいります。さらに,中長期的な電力需要の見通しが増加傾向にある中,経済合理的な設備形成やウェルカムゾーンの公表を通じた大規模需要の適地誘導等のより良い連系サービスの提供に取り組むとともに,系統の次世代化も進めてまいります。加えて,太陽光発電をはじめとした自然変動電源の予測精度向上,他の一般送配電事業者と連携した広域的な需給運用の拡大などにより,中部エリアに加え全国の安定供給の維持に寄与してまいります。 (浜岡原子力発電所の状況)浜岡原子力発電所につきましては,新規制基準を踏まえたさらなる安全性向上対策や原子力発電の理解向上に向けた取り組みを進めるとともに,3・4号機の新規制基準適合性審査を受けておりましたが,2026年1月に公表した基準地震動策定に係る不適切事案を受け,いずれも中断しております。当社は,調査委員会による調査に全面的に協力するとともに,地域のみなさまなどに対し,本事案の概要や現在の発電所の状況をご説明するなどしております。 (エネルギー領域の成長に向けた取り組み)当社は,DXやAX(AIトランスフォーメーション)を推進する中核組織として,2026年4月にデジタル変革推進本部を設置いたしました。同本部のもと,先端技術の実装などを通じて生産性向上やビジネスモデル変革を進め,グループ全体の収益力の向上を目指してまいります。また,産業集積地である中部エリアの特性を踏まえ,産業プロセスの電化や地域産業のDX化に資するソリューションを提供し,電力需要の拡大につながる取り組みを推進してまいります。さらに,DER(分散型エネルギー資源)を活用した高度なエネルギーマネジメントを実現し,最適なエネルギー利用と多様な価値の創出を進めてまいります。 (エネルギー事業とのシナジーが見込まれる領域の取り組み)中部電力グループは,DXやAXを推進し,事業活動で得られた情報やデータの連携・利活用を進めるとともに,エネルギー事業とのシナジーが見込まれる領域で事業を展開し,新たな価値を創出してまいります。2026年4月には,社内外との連携・協業を加速し,サーキュラーエコノミーの実現に貢献する事業・サービスを機動的に展開するため,マルチユーティリティ本部を設置いたしました。同本部のもと,上下水道・資源循環事業などに取り組み,社会課題の解決に貢献してまいります。また,不動産事業につきましては,不動産事業本部が中心となり,エネルギーに加え,社会課題の解決に資する事業とのシナジーを発揮できるよう,グループ一体となってまちづくりを推進してまいります。 (資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた取り組み)中部電力グループは,企業価値向上を重要な経営課題と考えており,東京証券取引所の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請も踏まえ,取り組みを進めております。資本効率の向上については,政策保有株の売却などに取り組んできておりますが,今後は,事業ポートフォリオの組み替えや資産の入れ替え,事業別ROICの目標化などを進めるほか,安全・安定供給に関わる投資は着実に実施したうえで成長投資とのバランスを踏まえ,自己株取得の実施余地や時期・規模の考え方を整理するなど資本政策の検討も含め,ROE8%以上の達成を目指してまいります。また,資本市場の皆さまとの対話を継続し,定量的な情報の開示充実を進め,企業価値向上に努めてまいります。なお,これらの取り組みについては,新たな中期経営計画において具体的に取りまとめ,公表させていただきます。 中部電力グループは,脱炭素社会の実現,社会課題の解決,大規模災害時における事業継続やサイバーセキュリティの高度化など,ESGの観点を踏まえた事業経営を深化させることで,SDGsの達成に貢献し,持続的な成長と企業価値の向上に努めてまいります。今後とも,お客さまや社会からの信頼が事業運営の基盤であることを肝に銘じ,コンプライアンス経営を徹底するとともに,企業の社会的責任(CSR)を果たすことで,ステークホルダーのみなさまとともに,社会の持続的な発展(サステナビリティ)に貢献してまいります。
MD&A(経営者による分析)
4 【経営者による財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(経営成績等の状況の概要) (1) 業績等の概要当連結会計年度におけるわが国経済は,米国の通商政策による影響が自動車産業を中心にみられたが,雇用・所得環境の改善や各種政策の効果に支えられ,緩やかな景気回復が継続した。一方で,中東情勢の影響や米国の通商政策をめぐる動向などによる景気の下押しが懸念されている。燃料価格については,中東情勢の影響などにより,不確実性がさらに高まっている。また,物価・労務単価・金利のさらなる上昇に加え円安も進行するなど,国内外における投資環境の不透明性がこれまで以上に増している。さらに,人口減少などに伴う社会課題が顕在化している。 このような中,当連結会計年度の収支状況について,連結売上高は,3兆5,460億円となり,前連結会計年度と比べ1,231億円の減収となった。連結経常損益は,2,910億円の利益となり,前連結会計年度と比べ146億円の増益となった。 (2) 生産,受注及び販売の状況当社グループは,電力・ガスの販売と各種サービスの提供を行う「ミライズ」,電力ネットワークサービスの提供を行う「パワーグリッド」,燃料上流・調達から発電,電力・ガスの卸販売を行う「JERA」等が,バリューチェーンを通じて,電気事業を運営している。当社グループにおける生産,受注及び販売の状況については,その大半を占める電気事業のうち主要な実績を記載している。 ① 発電実績種別当連結会計年度(自 2025年4月1日至 2026年3月31日)対前年増減率(%)発電電力量(百万kWh)水力8,770△5.3原子力――新エネルギー394△4.2合計9,165△5.3出水率(%)90.6― (注) 1 発電電力量及び出水率は,中部電力㈱の実績を記載している。2 出水率は,1994年度から2023年度までの30カ年平均に対する比である。3 発電電力量及び出水率は,有価証券報告書提出日(2026年6月24日)現在において把握している実績を記載している。4 四捨五入の関係で,合計が一致しない場合がある。 ② 販売実績ア 販売電力量及び料金収入種別当連結会計年度(自 2025年4月1日 至 2026年3月31日)対前年増減率(%)販売電力量(百万kWh)低圧30,260△3.2高圧・特別高圧78,7112.8合計108,9711.0料金収入(百万円)2,259,734△3.9 (注) 1 販売電力量及び料金収入は,中部電力ミライズ㈱の実績を記載している。2 販売電力量は,有価証券報告書提出日(2026年6月24日)現在において把握している実績を記載している。3 四捨五入の関係で,合計が一致しない場合がある。4 料金収入には「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」,「米国関税措置を受けた緊急対応パッケージ」及び「「強い経済」を実現する総合経済対策」に基づく施策である「電気・ガス料金支援」により受領する補助金67,161百万円を含む。 〔参考1〕グループ合計の販売電力量(百万kWh)119,9592.3 (注) 1 中部電力ミライズ㈱及びその主要な子会社,関連会社の実績を記載している。なお,グループ内の販売電力量は除いている。2 販売電力量は,有価証券報告書提出日(2026年6月24日)現在において把握している実績を記載している。 〔参考2〕他社販売電力量(百万kWh)21,110△1.8 (注) 1 中部電力ミライズ㈱の実績を記載している。なお,中部電力ミライズ㈱の主要な子会社及び関連会社への販売電力量は除いている。2 他社販売電力量は,有価証券報告書提出日(2026年6月24日)現在において把握している実績を記載している。 イ 中部エリアの需要電力量及び料金収入種別当連結会計年度(自 2025年4月1日 至 2026年3月31日)対前年増減率(%)中部エリアの需要電力量(百万kWh)123,921△0.5料金収入(百万円)636,775△0.5 (注) 1 中部エリアの需要電力量及び料金収入は,中部電力パワーグリッド㈱の実績を記載している。2 中部エリアの需要電力量は,有価証券報告書提出日(2026年6月24日)現在において把握している実績を記載している。3 料金収入は,接続供給託送収益(インバランスの供給に係る収益を除く)を記載している (経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)当社グループに関する財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析については,連結財務諸表に基づいて分析した内容である。 (1) 財政状態の分析① 資産固定資産については,㈱JERA などの関係会社長期投資の増加により投資その他の資産が増加したことなどから,前連結会計年度末と比べ3,759億円増加し,6兆3,579億円となった。流動資産については,現金及び預金が増加したことなどから,前連結会計年度末と比べ1,519億円増加し,1兆2,947億円となった。 ② 負債有利子負債が増加したことなどから,負債合計は,前連結会計年度末と比べ1,736億円増加し,4兆4,398億円となった。 ③ 純資産配当金の支払いはあったが,親会社株主に帰属する当期純利益の計上やその他の包括利益累計額の増加などから,純資産合計は,前連結会計年度末と比べ3,542億円増加し,3兆2,128億円となった。この結果,自己資本比率は,41.0%となった。 〔資産・負債・純資産比較表(要旨)〕項 目前連結会計年度末(2025年3月31日)当連結会計年度末(2026年3月31日)増 減金額(億円)金額(億円)金額(億円)増減率(%)資 産固定資産59,82063,5793,7596.3 電気事業固定資産23,63324,0924591.9 その他の固定資産4,0173,965△52△1.3 固定資産仮勘定5,2105,94673614.1 投資その他の資産24,95327,5152,56210.3流動資産11,42712,9471,51913.3 現金及び預金2,9353,36643114.7 受取手形、売掛金及び契約資産3,1192,739△379△12.2 棚卸資産3,0503,2351856.1 合 計71,24876,5275,2787.4負 債 ・ 純 資 産固定負債30,09231,6191,5275.1 社債6,7606,9672063.1 長期借入金18,19519,7141,5188.3流動負債12,55012,7662161.7 1年以内に期限到来の固定負債3,3283,038△289△8.7 短期借入金2,6152,668522.0 支払手形及び買掛金2,2932,53824410.7 負債合計42,66244,3981,7364.1株主資本24,00525,7951,7907.5 利益剰余金19,09620,8821,7869.4その他の包括利益累計額3,8595,5861,72744.7非支配株主持分720745253.5 純資産合計28,58532,1283,54212.4 合 計71,24876,5275,2787.4 前連結会計年度末(2025年3月31日)当連結会計年度末(2026年3月31日)増 減増減率(%)自己資本比率(%)39.141.01.94.9有利子負債残高(億円)30,77832,3341,5555.1 (注) 1 億円未満切り捨て2 有利子負債残高の増減の内訳は,次のとおりである。 連結範囲の変更による影響 110億円 調達・返済による影響 1,445億円 (2) 経営成績の分析中部電力ミライズ㈱の販売電力量は,中部エリア内外における競争が進展する中,エリア外における契約獲得などから,前連結会計年度と比べ1.0%増加し1,090億kWhとなった。なお,中部電力ミライズ㈱及びその主要な子会社,関連会社の合計の販売電力量は,中部エリア外を中心とした契約獲得などから,前連結会計年度と比べ2.3%増加し1,200億kWhとなった。 〔販売電力量〕 前連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)当連結会計年度(自 2025年4月1日 至 2026年3月31日)増 減増減率(%)低圧(億kWh)313303△10△3.2高圧・特別高圧(億kWh)766787212.8合 計1,0791,090111.0 (注) 1 販売電力量は,中部電力ミライズ㈱の実績を記載している。2 販売電力量は,有価証券報告書提出日(2026年6月24日)現在において把握している実績を記載している。3 四捨五入の関係で,合計が一致しない場合がある。 〔参考1〕グループ合計の販売電力量(億kWh)1,1731,200272.3 (注) 1 中部電力ミライズ㈱及びその主要な子会社,関連会社の実績を記載している。なお,グループ内の販売電力量は除いている。2 販売電力量は,有価証券報告書提出日(2026年6月24日)現在において把握している実績を記載している。 〔参考2〕他社販売電力量(億kWh)215211△4△1.8 (注) 1 中部電力ミライズ㈱の実績を記載している。なお,中部電力ミライズ㈱の主要な子会社及び関連会社への販売電力量は除いている。2 他社販売電力量は,有価証券報告書提出日(2026年6月24日)現在において把握している実績を記載している。 中部エリアの需要電力量は,冬季の気温影響による暖房設備の稼動減や検針期間の日数減などから,前連結会計年度と比べ0.5%減少し1,239億kWhとなった。 〔中部エリアの需要電力量〕 前連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)当連結会計年度(自 2025年4月1日 至 2026年3月31日)増 減増減率(%)中部エリアの需要電力量(億kWh)1,2451,239△6△0.5 (注) 1 中部エリアの需要電力量は,中部電力パワーグリッド㈱の実績を記載している。2 中部エリアの需要電力量は,有価証券報告書提出日(2026年6月24日)現在において把握している実績を記載している。 収支の状況については,連結売上高は,燃料費調整額(燃調収入)等の減少などから,前連結会計年度と比べ3.4%減少し3兆5,460億円となった。連結経常損益は,浜岡原子力発電所の新規制基準適合性審査における基準地震動策定に係る不適切事案を受け,審査に関係する業務などの委託契約を解約することとし,実施済みの業務に対応した費用を計上したものの,JERAの国内火力事業における石炭の調達競争力改善などによる利益の増加などから,前連結会計年度と比べ146億円増加し2,910億円の利益となった。また,子会社などにおける減損損失160億円を特別損失に計上した。これにより,親会社株主に帰属する当期純損益は,前連結会計年度と比べ257億円増加し2,277億円の利益となった。 当連結会計年度におけるセグメント別の業績(内部取引消去前)及び取り組みは以下のとおりである。なお,㈱JERAは持分法適用関連会社のため,売上高は計上されない。 [ミライズ]〔業績〕電力・ガスの販売と各種サービスの提供に伴う売上高については,燃調収入等の減少などから,前連結会計年度と比べ3.5%減少し2兆8,592億円となった。経常損益は,燃料価格等の変動が電力販売価格に反映されるまでの期ずれが差損から差益へ転じたことや電源調達ポートフォリオの組み替えによる費用削減効果等が拡大したことなどから,前連結会計年度と比べ209億円増加し1,379億円の利益となった。〔当連結会計年度の取り組み〕電気・ガスなどのお届けを通じて築いてきたお客さまとのつながりをもとに,お客さまのくらしを豊かにするサービスや,ビジネス上の課題解決を実現するサービスを提供し,新たな価値をお届けしている。「中部電力ミライズショップ」では,ご家庭のエネルギー最適化の提案を通じて,安心で快適な住まいづくりをお手伝いしている。また,ご家庭向け銀行サービス「カテエネBANK」に加え,2025年9月には,法人・個人事業主向けに「ビジエネBANK」の提供を開始するなど,中小企業をはじめとするお客さまのビジネスに役立つサービスも提供している。脱炭素の実現に向けては,ご家庭のお客さま向けに,「ミライズGreenでんき」やふるさと納税制度を通じてCO2フリー電気を提供している。法人のお客さま向けには,「みんなで脱炭素プロジェクト」として,太陽光PPAや省エネソリューションなどの各種サービスを提供することで,お客さまとともに再生可能エネルギーを拡大・有効活用する取り組みを推進している。また,2024年度に続き,電気料金などの負担軽減策として,特別高圧・高圧とご家庭を中心とした低圧のお客さまの料金割引などを行った。2026年4月には,燃料価格及び卸電力市場価格の変動をより適切に反映させるため,特別高圧・高圧の標準料金メニューの見直しを行っている。今後も「とどける」「よりそう」「つなげる」をキーワードに,お客さまのニーズに応じた魅力的なサービスの開発・提供に努めていく。 [パワーグリッド]〔業績〕電力ネットワークサービスの提供に伴う売上高については,エリア需要の減少に伴う託送収益の減少や需給調整に係る収益の減少などから,前連結会計年度と比べ3.6%減少し9,286億円となった。経常損益は,エリア需要の減少に伴う託送収益の減少や設備関係費の増加はあったものの,需給調整に係る費用の減少などから,前連結会計年度並みの475億円の利益となった。〔当連結会計年度の取り組み〕日々の設備保守を確実に行うことに加え,再生可能エネルギーの導入拡大を踏まえた系統運用の高度化や高経年化した設備の更新を行うとともに,他の一般送配電事業者等との連携も含めた系統運用・需給調整を通じて,中部エリアの安定供給を確保し,全国の安定供給にも寄与してきた。また,中部エリアにおける電力需要の中長期的な見通しが増加傾向にある中,電力の安定供給と脱炭素を両立していくため,電源の追加調達など着実に供給力を確保し,他エリアとの電力融通の拡大に向けた設備の増強を進めている。加えて,地域の実情に応じた設備形成の最適化に取り組むとともに,系統用蓄電池を活用した電力系統の混雑対策の実証を開始するなど,電力系統の次世代化に向けた取り組みを推進している。さらに,業界全体で施工力・物流力不足などへの取り組みを推進しており,他の一般送配電事業者との共同輸送や,国内の電気工事士として活躍できる人財の海外での育成などに取り組んでいる。加えて,GX・DXの進展に伴い増加が見込まれるデータセンター需要等を踏まえ,中部エリアにおける適地の選定・公開を進めるなど,地域の持続的な経済成長に貢献していく。 [JERA]〔業績〕燃料上流・調達から発電,電力・ガスの卸販売に伴う経常損益は,国内火力事業における石炭の調達競争力改善などによる利益の増加などから,前連結会計年度と比べ268億円増加し941億円の利益となった。なお,燃料価格等の変動が電力販売価格に反映されるまでの期ずれを除いたJERAによる連結経常損益への影響は891億円程度の利益となった。〔当連結会計年度の取り組み〕燃料上流・調達から発電,電力・ガス卸販売にいたるバリューチェーンの最適運用,効率的運営に努めつつ,安定的な燃料調達などエネルギーの安定供給確保における重要な役割も担っている。燃料制約や需給ひっ迫の回避に向けては,最新鋭の火力発電設備へのリプレースに向けた検討を進めるとともに,火力発電所における補修点検時期の調整やボイラ等重要設備の重点巡視を実施するなど,安定的な供給力の確保に取り組んでいる。加えて,JERAの子会社であるJERA Global Marketsを通じた機動的な調達に取り組むとともに,将来の電力需要増加も見据え,米国産LNGの新規調達やカタール・エナジー社との長期売買契約締結を進めるなど,安定的な燃料確保にも努めている。また,エネルギーの安定供給を確保しながら,2050年時点で国内外の事業から排出されるCO₂を実質ゼロとするJERAゼロエミッション2050に向けた取り組みを進めている。具体的には,燃料アンモニアの製造や調達,輸送に向けた協業の検討を進めるなどサプライチェーン構築にも取り組むとともに,再生可能エネルギーの拡大に向けて,英国のbpと共同で,世界最大級の洋上風力発電事業会社であるJERA Nex bpを設立した。(注) JERAゼロエミッション2050は,脱炭素技術の着実な進展と経済合理性,政策との整合性を前提としている。JERAは,引き続き,自ら脱炭素技術の開発を進め,経済合理性の確保に向けて主体的に取り組んでいく。 (目標とする経営指標の達成状況等)燃料価格等の変動が電力販売価格に反映されるまでの期ずれを除いた連結経常損益は2,840億円程度の利益,ROIC(期ずれ除き)は4.4%となり,中期経営目標(2022年公表・2024年見直し)として掲げていた「連結経常利益2,000億円以上,ROIC3.2%以上」を達成した。 〔連結収支比較表〕項 目前連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)当連結会計年度(自 2025年4月1日 至 2026年3月31日)増 減金額(億円)金額(億円)金額(億円)増減率(%)経常収益営業収益(売上高)36,69235,460△1,231△3.4営業外収益7831,09130839.4合 計37,47536,552△923△2.5経常費用営業費用34,27133,159△1,111△3.2営業外費用439481419.5合 計34,71133,641△1,069△3.1(営業損益)(2,420)(2,300)(△120)(△5.0)経常損益2,7642,9101465.3渇水準備金5△7△12―特別損失6416096150.9法人税等603409△194△32.2非支配株主に帰属する当期純損益707000.1親会社株主に帰属する当期純損益2,0202,27725712.7 (注) 1 特別損失:有価証券評価損(前連結会計年度),減損損失(当連結会計年度)2 内部取引相殺消去後(億円未満切り捨て) (3) キャッシュ・フローの状況の分析営業活動によるキャッシュ・フローは,㈱JERAからの配当金の受取などから,前連結会計年度と比べ330億円増加し3,344億円の収入となった。投資活動によるキャッシュ・フローは,投融資による支出が減少したことなどから,前連結会計年度と比べ409億円支出が減少し3,507億円の支出となった。この結果,フリー・キャッシュ・フローは,前連結会計年度と比べ740億円改善し163億円の支出となった。財務活動によるキャッシュ・フローは,資金調達が増加したことなどから,前連結会計年度と比べ1,150億円増加し874億円の収入となった。これらにより,当連結会計年度末の現金及び現金同等物は,前連結会計年度末と比べ722億円増加した。 資本の財源及び資金の流動性について,当社グループは,主に電気事業の運営上必要な設備資金を,社債発行や銀行借入等により調達し,短期的な運転資金は,主に短期社債により調達することを基本としている。 〔連結キャッシュ・フロー比較表(要旨)〕項 目前連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)当連結会計年度(自 2025年4月1日 至 2026年3月31日)増 減金額(億円)金額(億円)金額(億円)増減率(%)営業活動によるキャッシュ・フロー ①3,0133,34433011.0投資活動によるキャッシュ・フロー ②△3,917△3,507409△10.5財務活動によるキャッシュ・フロー△2768741,150― フリー・キャッシュ・フロー ①+②△904△163740△81.9 項 目前連結会計年度末(2025年3月31日)当連結会計年度末(2026年3月31日)増 減金額(億円)金額(億円)金額(億円)増減率(%)現金及び現金同等物の期末残高2,9243,64772224.7 (注) 億円未満切り捨て (4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は,わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については,「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりである。当社グループは,固定資産の評価,繰延税金資産,貸倒引当金,退職給付に係る負債及び資産,企業結合などに関して,過去の実績や当該取引の状況に照らして,合理的と考えられる見積り及び判断を行い,その結果を資産・負債の帳簿価額及び収益・費用の金額に反映して連結財務諸表を作成しているが,実際の結果は見積り特有の不確実性があるため,これらの見積りと異なる場合がある。また,連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち,重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載している。

事業リスク

  • 燃料・電力価格の変動リスク
    LNG、石炭、原油などの市場価格や為替相場の変動は、燃料調達費用に直接影響を与え、収益を圧迫する可能性があります。地政学リスクや異常気象による需給逼迫も価格変動を増幅させ、経営成績に大きな影響を及ぼす恐れがあります。
  • 事業環境の変化と競争激化
    中東や欧州の紛争、アジア情勢などの地政学リスク、物価・賃金・金利の上昇、小売事業の競争激化、電気事業制度の見直しなど、外部環境の変化は多岐にわたります。これらの変化に適切に対応できない場合、収益性が低下する可能性があります。
  • 電力需給の不安定化と制度変更
    自然変動電源の大量導入や異常気象による需要増加、設備トラブルなどが重なると、電力需給が逼迫する懸念があります。また、エネルギー政策や電気事業制度の見直しが、事業計画や収益構造に予期せぬ影響を与える可能性があります。
出典: FY2026 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「事業等のリスク」の全文を見る(年度切替)
FY2026|8,999 文字
3 【事業等のリスク】当社グループの財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する変動要因のうち,投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる事項には,主に以下のようなものがある。なお,文中における将来に関する事項は,有価証券報告書提出日(2026年6月24日)現在において判断したものであり,今後のエネルギー政策や電気事業制度の見直しなどの影響を受ける可能性がある。 (1)事業環境の変化2025年度の期ずれを除いた連結経常損益は,2024年度に比べミライズにおける電源調達ポートフォリオの組み換えによる費用削減効果等の拡大,パワーグリッドにおける需給調整にかかる費用の減少などから,2,840億円程度確保することができた。しかしながら,先行きを不透明にする事象として,中東や欧州における紛争・アジア情勢などの地政学リスク,燃料価格の高止まりや石油製品の供給支障の継続に加え,為替変動リスクも含めた燃料価格のボラティリティが高いことや,世界の気候や景気等の動向に起因する燃料需要の大幅な増加,物価・賃金・金利の上昇,小売事業の競争激化,電気事業の制度変更などがある。また,出力が不安定な自然変動電源が大量導入された中,異常気象等による想定外の需要の増加や悪天候による太陽光発電量などの低下が重なり,さらに設備のトラブルが発生した場合や資源国において不測の事態が生じた場合などには,日本国内における需給状況が悪化することが懸念される。このような事業環境の変化のもと,電力需給への対応として当社グループは,再生可能エネルギー発電出力の予測精度向上,他の一般送配電事業者との連携も含めた日々の系統運用・需給調整や水力発電所の安定的な運用,電力系統の次世代化,㈱JERAによる最新鋭の火力発電設備へのリプレース,火力発電所における補修点検時期の調整や重要設備の巡視強化,㈱JERAの子会社であるJERA Global Markets Pte. Ltd.を通じた機動的な燃料調達や,将来の電力需要増加も見据えた新規調達や長期売買契約締結などによる安定的な燃料確保,お客さまに電気を効率的にご利用いただくデマンドレスポンスの活用などにより,グループ一丸となってエネルギーの安定供給を継続する。安定的な事業成長に向けて,国内エネルギー事業においては,内外無差別な卸取引の進展も踏まえ,電源調達ポートフォリオの最適化,市場リスク管理の高度化などに引き続き取り組んでいく。中長期的には,GX(グリーントランスフォーメーション)やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展などにより電力需要の見通しは増加傾向に変化しており,エネルギー安定供給確保,経済成長,脱炭素の同時実現に向けた制度設計の検討が進められている。このような中,当社は,グループ一体となって,電力の安定供給確保,分散・循環型システムが併用された安全で安心な脱炭素社会の実現,事業構造の変革を通じた新たな収益源の獲得・拡大,電化等による需要創出に取り組んでいく。また,「S(安全性の確保)+3E(エネルギー安定供給・経済効率性・環境適合性)」の実現に向けた設備形成や燃料調達などを適切に行うとともに,これに資するエネルギー政策や電気事業制度に関する提言を実施していく。ただし,産業構造の変化などに的確に対応できない場合や,中東や欧州における紛争・アジア情勢などの地政学リスクに起因する影響の拡大,各種市場における想定と異なる制度見直しの実施など,当社グループを取り巻く事業環境が変化した場合,財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローは影響を受ける可能性がある。 ①燃料・電力価格の変動等 当社グループの電源調達費用は,LNG,石炭,原油,卸電力などの市場価格及び為替相場の変動により影響を受ける可能性がある。これに対して中部電力ミライズ㈱では,これら価格のボラティリティが高い中においても,お客さまに安定して電気をお届けするため,2026年4月には,燃料価格及び卸電力市場価格の変動をより適切に反映した特別高圧・高圧の標準料金メニューに見直した。また,電力先物取引などのヘッジ取引により,調達価格の安定化を実施している。これらにより財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローへの影響は緩和される。 ㈱JERAによる燃料調達や中部電力ミライズ㈱による市場などを通じた電力調達において,調達先の分散化,契約の長期化・柔軟性の確保など,燃料・電力等の市場変動に影響されにくい事業構造への移行を行っている。加えて,市場変動性の高まりを踏まえリスク管理の高度化や市場価格変動に柔軟に対応した販売施策に取り組んでいく。 ただし,中東や欧州における紛争・アジア情勢などの地政学リスクに起因する影響の拡大,長期化などの政治・経済・社会情勢の悪化や天候の変動,調達先の設備・操業トラブルなどにより,需給状況や市場価格が大きく変動することがある。これらのリスクの顕在化に伴う,調達費用の増減,調達価格と販売価格の差異,電力の市場価格・卸価格の変動などにより,財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローは影響を受ける可能性がある。 ②競争等への対応 脱炭素化に伴うエネルギー需給構造の転換によりGXやDXが進展しており,中長期的な電力需要の見通しも増加傾向に変化している。 厳しい競争環境が継続する中でも,中部地域及び中部電力グループを選んでいただくべく,グループ全体で的確に対応していく。 中部電力ミライズ㈱では,これまでの電気・ガスなどのお届けを通じて築いてきたお客さまとの「つながり」をもとに,お客さまの暮らしを豊かにするサービスや,ビジネス上の課題解決を実現するサービスを提供し,新たな価値の提供を進めていく。 ㈱JERAは,燃料制約や需給ひっ迫の回避に向けて,最新鋭の火力発電設備へのリプレース,火力発電所における補修点検時期の調整や重要設備の巡視強化など,安定的な供給力の確保に取り組んでいる。加えて,㈱JERAの子会社であるJERA Global Markets Pte. Ltd.を通じた機動的な調達に取り組むとともに,将来の電力需要増加も見据え,新規調達や長期売買契約締結を進めるなど,安定的かつ競争力のある燃料確保にも努めている。 ただし,産業構造の変化などに的確に対応できない場合や,中東や欧州における紛争・アジア情勢などの地政学リスクのさらなる高まりによる調達環境の悪化,競争激化や景気動向・気温変動などにより,財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローは影響を受ける可能性がある。 ③シナジー領域等 当社グループは,DXやAX(AIトランスフォーメーション)を推進し,事業活動で得られた情報やデータの連携・利活用を進める。加えて,シナジー領域として,エネルギー事業で培った設備のインフラ運営ノウハウ,技術人財や中部エリアを網羅する拠点,電化・省エネソリューション等も活用し,マルチユーティリティ事業(上下水道・資源循環事業など)や不動産事業を展開して新たな価値を創出していく。2026年4月には,社内外との連携・協業を加速し,事業・サービスを機動的に展開するため,マルチユーティリティ本部を設置した。同本部のもと社会課題の解決に貢献していく。また,不動産事業については,不動産事業本部が中心となり,エネルギーに加え,社会課題解決に資する取り組みとのシナジーを発揮できるよう,グループ一体となってまちづくりを推進していく。 また,当社は,株式会社東芝及びそのグループ会社の企業価値向上を目的とするTB投資事業有限責任組合に,有限責任組合員として出資している。 グローバル事業においては,再生可能エネルギーなどの「グリーン領域」,水素・アンモニアなどの「ブルー領域」,マイクログリッド・アジア配電事業などの「小売・送配電・新サービス領域」及び地熱発電などの「フロンティア領域」の4領域を組み合わせて最適なポートフォリオを形成し,各国・地域の社会課題解決への貢献と,収益の拡大を目指している。 なお,当社は,2016年7月1日付で会社分割により海外発電・エネルギーインフラ事業を㈱JERAへ承継した取引について,2022年12月17日に,メキシコ税務当局から約759億円(2022年12月時点の為替レートに基づく)の納付を命じる更正決定通知を受領した。本通知の内容は,日墨租税条約及びメキシコ税法に反する不合理なものであることから,2023年2月10日に,当局に対し行政不服審査を申し立てた。加えて,日墨租税条約に基づく両国税務当局間の相互協議も実施中である。 また,足元では資機材価格高騰などの継続が見込まれることから,投資案件を厳選するとともに,適切なリスク評価と定期的なモニタリングを実施している。 ただし,これらの事業が,他事業者との競争激化やカントリーリスクの顕在化,新技術の導入遅延や政策・制度等の変更などにより,当社グループの期待するような結果をもたらさない場合には,財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローは影響を受ける可能性がある。 ④地球環境保全国の2050年カーボンニュートラル宣言以降,エネルギー安定供給,経済成長,脱炭素を同時実現するべく「GX2040ビジョン」及び「第7次エネルギー基本計画」が閣議決定されるなど,地球環境保全に向けた取り組みは喫緊の課題となっている。 当社グループでは,「中部電力グループ環境基本方針」のもと,カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを「ゼロエミチャレンジ2050」としてとりまとめた。社会やお客さまとともに,エネルギーインフラの革新を通じて「脱炭素」と「安全・安定・効率性」の同時達成を目指していく。具体的には,2030年頃に向けた再生可能エネルギーの拡大目標(保有・施工・保守含む)に関し,320万kW以上を目指すとともに,原子力の活用,水素・アンモニアサプライチェーンの構築,碧南火力発電所におけるアンモニア転換の商用化,非効率石炭火力発電の停廃止,火力発電のさらなる高効率化,再生可能エネルギー接続可能量の拡大に向けた電力系統設備・運用の高度化,需給運用の広域化,水力発電の最適運用,「ミライズGreenでんき」をはじめとするCO2フリーメニューの多様化などのあらゆる施策を総動員し,「2030年までに,お客さまへ販売する電気由来のCO2排出量を2013年度比で50%以上削減」を達成する。さらに,イノベーションによる革新的技術実用化・採用を通じ,「2050年までに,事業全体のCO2排出量ネット・ゼロに挑戦」していく。そのような中,想定を上回る事業環境の変化を受け,当社グループの㈱シーテックは,3海域で進める洋上風力発電事業に関して,事業性再評価のうえ,事業パートナー間で協議を行った結果,開発取り止めを決定した。これに伴い当連結会計年度において,損失を計上した。ただし,今後撤退を進める中で追加損失が発生する可能性がある。今後も脱炭素社会の実現に向けた方針に変わりはないが,化石燃料賦課金や排出量取引制度などのカーボンプライシング制度をはじめとした脱炭素関連の制度や事業環境の変化に的確に対応できない場合,また,非化石価値の動向や技術革新などを踏まえたビジネスモデルの変革を的確に実施できない場合,財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローは影響を受ける可能性がある。 ⑤金利及び物価・賃金の上昇等金利の上昇については,当社グループの有利子負債残高のうち91.4%は,社債,長期借入金の長期資金であり,その大部分を固定金利で調達しているため,財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローへの影響は短期的には限定的である。ただし,今後新たに調達する資金等においては,金利の上昇の影響が見込まれる。市場金利の動向や資金需要の状況を引き続き見極めながら,適時適切に資金を調達していく。物価・賃金の上昇については,その影響を最小限に抑えられるよう効率化等に引き続き取り組んでいく。また,取引先の置かれた状況の把握に努め,適切な価格により取引先の皆さまと対等な立場で公平・公正な取引を実施している。ただし,金利・物価・賃金の上昇が継続する場合,財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローは影響を受ける可能性がある。 ⑥米国の通商政策 米国の関税政策をはじめとする自国産業保護を目的とした通商政策により,今後,自動車等の輸出量が減少する場合,自動車関連の産業集積地である中部エリアの電力需要に一定の影響が生じる可能性がある。電力需要が減少する場合においても,市場価格や燃料価格の変動を捉えた電源調達費用の削減等により収支悪化の抑制に努めていく。 ただし,電力需要の減少が継続する場合,財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローは影響を受ける可能性がある。 (2)基準地震動策定に係る不適切事案及び原子力発電設備の非稼働 国の2050年カーボンニュートラル宣言以降,エネルギー安定供給,経済成長,脱炭素を同時実現するべく「GX2040ビジョン」及び「第7次エネルギー基本計画」が閣議決定され,そのなかで再生可能エネルギーと原子力発電を最大限活用する方針が示された。 浜岡原子力発電所については,新規制基準を踏まえたさらなる安全性向上対策や原子力発電の理解向上に向けた取り組みを進めるとともに,3・4号機については,新規制基準適合性審査を受けていた。また,5号機については,海水流入事象に対する具体的な復旧方法の検討と並行して,新規制基準を踏まえた対策を検討し,審査の申請に向けた準備を進めていた。しかしながら,2026年1月に公表した基準地震動策定に係る不適切事案を受け,いずれも中断している。当社は,独立した外部専門家のみで構成される調査委員会による調査に全面的に協力するとともに,当社として改善すべき事項は先行して着実に取り組むべく,社長を議長とする「解体的再構築に向けた検討会議」を設置し,「意識・行動の変革」,「組織・組織風土の変革」,「ルール・仕組みの強化」を柱とする取り組みを進めている。 当社グループは,浜岡原子力発電所全号機の運転停止状況下において,火力電源での代替を行っており,これによる電源調達費用の大幅な増加などにより,財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローは影響を受ける見込みである。 また,原子力規制委員会等の判断,浜岡原子力発電所の運転停止状況の継続や当社グループが受電している他社の原子力発電設備の状況などによっては,財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローは影響を受ける可能性がある。 (3)原子力バックエンド費用等 原子力のバックエンド事業は,使用済燃料の再処理,放射性廃棄物の処分,原子力発電施設等の廃止措置など,超長期の事業で不確実性を有する。この不確実性は,使用済燃料再処理・廃炉推進機構が,再処理や廃止措置等に係る資金を確保・管理する仕組みをはじめとした国による制度措置などに基づき,必要な費用を引当て・拠出していることにより低減されている。しかしながら,原子力バックエンド費用及び原子燃料サイクルに関する費用は,制度の見直し,制度内外の将来費用の見積り額の増減,再処理施設の稼働状況などにより増減するため,財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローは影響を受ける可能性がある。 (4)大規模自然災害等 当社グループの事業活動においては,南海トラフ地震・巨大台風・異常気象などの大規模自然災害,武力攻撃,テロ行為,疫病の流行,事故などのリスクが存在する。当社グループでは,これらの事象が発生した場合に備えて,BCP(事業継続計画)などを策定のうえ,設備の形成,維持,運用などの事前対策に取り組むとともに,発生後における体制の整備や訓練などを実施している。 2025年3月31日に国は「南海トラフ巨大地震における被害想定見直し」及び「南海トラフ巨大地震対策」について報告書を取りまとめ,2025年7月1日に南海トラフ地震防災対策推進基本計画を変更している。国が地形データの高精度化等により公表した新被害想定に基づき,再評価を行った結果,事前の追加設備対策の必要はないことを確認している。今後も,国・自治体の動向を注視し,最新知見をもとに当社グループBCP(事業継続計画)などの見直しを行っていく。 また,台風災害で得られた教訓などを踏まえ,アクションプランに基づき,各種復旧支援システムの整備による設備復旧体制の強化,ホームページやスマートフォンアプリによるお客さまへの情報発信の強化,自治体・他電力会社などとの連携強化に取り組んでいる。さらに,レジリエンス(強靭化・回復力)の強化に向けて,自治体などと連携しながら,予防保全のための樹木の事前伐採や無電柱化の一層の加速,水力発電用ダムの洪水発生が予想される場合における治水協力などに取り組んでいく。 ただし,大規模自然災害,武力攻撃,テロ行為,疫病の流行,事故などにより,供給支障や設備の損壊などが発生した場合には,その被害状況などによっては,財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローは影響を受ける可能性がある。 (5)セキュリティ(経済安全保障・情報管理等)当社グループでは,重要インフラであるエネルギーの安定供給を確保するため,サイバー攻撃などによる電力の供給支障や機微情報漏えいのリスクに対応すべく,経営層のリーダーシップのもと,ガバナンス体制の強化,電力ISACなどを通じた他事業者・関係機関などとの情報共有・分析,各種セキュリティ対策や訓練などを継続的に実施している。特に,基幹インフラ役務の安定的な提供の確保に関する制度の対象となる重要設備については,経済安全保障推進法やサイバー対処能力強化法などの関係法令に基づき,妨害行為を防止するために必要な措置を講じていく。今後も,国際情勢などの変化や脅威動向を継続的に把握し,サイバー攻撃の高度化・巧妙化に備えて,政府との連携も密にしたうえで,リスクの低減及び影響の最小化に向けた対策を継続的に実施していく。また,個人情報(特定個人情報を含む)をはじめとした各種情報の管理の徹底に向け,専任部署を設置し,個人情報保護法などの関係法令に基づき,規程類を整備することに加え,教育や意識啓発活動の実施などの取り組みをこれまで以上に強化していく。加えて,リスクアセスメントの実施・分析を通じて,より高度なガバナンス体制の構築やITシステムの脆弱性の発見・解消,運用ルールの強化などに努め,さらなるセキュリティ確保に万全を期す。 ただし,サイバー攻撃やITシステムの不備,情報の漏えいなどにより,対応に要する直接的な費用のほか,社会的信用の低下などが発生した場合には,財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローは影響を受ける可能性がある。 (6)人的資本・人権 今後,社会構造の変容が見込まれる中,変化に適切に対応していくためにも,将来を見据えた人財の確保・高度スキルの獲得等が重要な課題となっている。 当社グループでは,この課題に対し,「安全」と「健康」を最優先事項として,「一人ひとりの成長・活躍が企業価値そのもの」との考えに基づき人財戦略を公表するとともに,経営層においても多様な専門性を確保している。 また,企業の人権に関する影響力が拡大する中,人権尊重の取り組みに対する要請は一層高まっている。 当社グループでは,「中部電力グループ人権基本方針」に基づき,人権デュー・ディリジェンスをはじめとする人権尊重の実践に取り組んでいる。 ただし,今後の人的資本の十分な質と量の確保ができない場合や,人権リスクが顕在化し社会的な信用の低下等が発生した場合には,財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローは影響を受ける可能性がある。 (7)コンプライアンス 当社グループでは,法令及び社会規範の遵守に関する基本方針及び行動原則を示した「中部電力グループコンプライアンス基本方針」のもと,「中部電力グループ贈収賄・腐敗防止方針」及び「金品授受に関するガイドライン」を制定するなど,コンプライアンスの徹底,企業倫理の向上に努めている。 浜岡原子力発電所の安全性向上対策工事の一部で,一部の取引先との間で長期間未精算になっている事案が判明し,また,当社原子力部門の役員が,社内規程に反し,これらの事実を取締役会等に対して長期に亘って報告を行っていなかった事案が判明した。調達ルールの見直しや管理体制の強化,予算管理の徹底,定期的な会議の設置,教育の充実,他部門出身の副本部長の配置によるサポート強化,他部門との交流,モニタリングの強化を継続的に実施し,再発防止に努めていく。 また,原子力規制委員会による原子炉等規制法に基づく浜岡原子力発電所3・4号機の新規制基準適合性審査において,浜岡原子力発電所の地震動の評価を不適切な方法で実施していた事案が発生した。当社は,当社から独立した外部専門家のみで構成される調査委員会の調査に全面的に協力するとともに,当社として改善すべき事項は先行して着実に取り組むべく,社長を議長とする「解体的再構築に向けた検討会議」を設置し,「意識・行動の変革」,「組織・組織風土の変革」,「ルール・仕組みの強化」を柱とする取り組みを進めている。今後,調査委員会による調査結果も踏まえ,このような不適切事案を二度と生じさせることがないよう,さらなる改善策・対応策を検討・立案し,全社を挙げて取り組んでいく。 当社グループは,今後も,常にコンプライアンスに関する取り組み状況を確認し,その結果に基づいて説明責任を果たすとともに,コンプライアンス徹底に向けた不断の取り組みを進めていく。 ただし,コンプライアンスに反する事象により,社会的信用の低下などが発生した場合には,財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローは影響を受ける可能性がある。

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