3402

東レ(3402)は何で稼いでいるか — 事業の柱と依存度

繊維製品 素材・化学

事業の概要

  • 多角的な素材事業:東レは、繊維、機能化成品、炭素繊維複合材料、環境・エンジニアリング、ライフサイエンスといった多岐にわたる事業を展開しています。これらの事業は、衣料品から自動車、航空機、水処理、医薬品まで、幅広い産業と社会のニーズに応える素材や製品を提供することで収益を上げています。特に、高機能素材の開発・製造・販売を中核としています。
  • グローバルな事業展開:東レは、日本国内だけでなく、子会社266社、関連会社等42社を含む308社の関係会社を通じて世界中で事業を展開しています。これにより、特定の地域や産業の景気変動リスクを分散し、多様な市場からの収益獲得を目指しています。各地域のニーズに合わせた製品供給や技術提供を行うことで、安定的な収益基盤を構築しています。
  • 研究開発型ビジネス:東レのビジネスモデルは、先端技術の研究開発に基づいています。ナイロン、ポリエステル、炭素繊維などの基盤素材から、医薬品や医療機器といったライフサイエンス分野まで、常に新しい素材や技術を生み出すことで、高付加価値製品を提供しています。これにより、競合他社との差別化を図り、持続的な成長と収益確保を目指しています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
セグメント構成
  • 繊維事業:ナイロン、ポリエステル、アクリルなどの糸・綿、紡績糸、織編物、不織布、人工皮革、アパレル製品の製造、加工、販売を行っています。衣料品から産業資材まで幅広い用途に対応し、私たちの日常生活に密接に関わる製品を提供しています。この事業は、東レの創業以来の基盤であり、安定した収益源の一つとなっています。
  • 機能化成品事業:ナイロン、ABS、PBT、PPSなどの樹脂や樹脂成形品、ポリオレフィンフォーム、ポリエステル・ポリエチレン・ポリプロピレンなどのフィルムおよびフィルム加工品、合成繊維・プラスチック原料、ファインケミカル、電子情報材料、印写材料などを手掛けています。自動車、家電、IT機器など、多岐にわたる産業分野に高機能な素材を提供しており、東レの技術力が光る事業です。
  • 炭素繊維複合材料事業:炭素繊維および同複合材料、同成形品の製造、加工、販売を行っています。炭素繊維は、鉄よりも軽く、強度が高いという特性を持ち、航空機、自動車、風力発電ブレード、スポーツ用品などに使われる最先端素材です。この事業は、高い技術力と将来性を持つ東レの成長ドライバーの一つであり、世界の軽量化ニーズに応える重要な役割を担っています。
有価証券報告書「事業の内容」の全文を見る(年度切替)
FY2026|580 文字
3 【事業の内容】当社及び当社の関係会社308社(子会社269社・関連会社等39社)において営まれている主な事業の内容は、下記製品の製造、加工及び販売です。なお、以下の事業区分は、セグメント情報における事業区分と同一です。事業区分主要製品繊維事業ナイロン・ポリエステル・アクリル等の糸・綿・紡績糸及び織編物、不織布、人工皮革、アパレル製品機能化成品事業ナイロン・ABS・PBT・PPS等の樹脂及び樹脂成形品、ポリオレフィンフォーム、ポリエステル・ポリエチレン・ポリプロピレン等のフィルム及びフィルム加工品、合成繊維・プラスチック原料、ファインケミカル、電子情報材料、印写材料炭素繊維複合材料事業炭素繊維・同複合材料及び同成形品環境・エンジニアリング事業水処理用機能膜及び同機器、総合エンジニアリング、マンション、産業機械類、住宅・建築・土木材料ライフサイエンス事業医薬品、医療機器その他分析・調査・研究等のサービス関連事業 各事業区分における、当社及び当社の関係会社の位置付けや、主要な関係会社の名称を示した事業系統図は、以下のとおりです。(注) 1.複数の事業に携わっている会社は、各事業区分に記載しております。2.商事会社は事業区分が多岐にわたるため、事業規模が最大の事業区分に記載しております。3.上記会社名の○は子会社、△は関連会社等を示しております。

事業の優位性(モート)

事業の質(有価証券報告書から抽出)
数字に出ない事業の性質を、同じ物差しで全銘柄そろえています。FY2025時点の記載が出典です。
価格決定力値上げを通せるか。強いほどインフレ耐性が高い 中程度
独自技術による高機能・高付加価値素材の創出と幅広い産業への供給
参入障壁新規参入を阻む要因の種類 技術
有機合成化学、高分子化学、バイオテクノロジー、ナノテクノロジーをベースとした先端材料創出
顧客集中度特定顧客への依存度。高いほど失注リスクが大きい 低い(分散)
景気敏感度業績が景気循環にどれだけ振られるか 中程度
設備投資の性質稼いだ現金がどれだけ設備維持に消えるか 混合
規制依存規制は障壁にも足枷にもなる 高い
会社が挙げる主要リスク:戦争危険を踏まえた危機対応リスク / 製品供給途絶リスク / 製品の需要・市況の動向と事業計画に関わるリスク
同じ条件で他の銘柄を探す → 定性スクリーニング(価格決定力・参入障壁・景気敏感度などで絞り込めます)
モート総合 11 / 25 5類型それぞれの強度と、そう判定した根拠
無形資産★★★☆☆
根拠:中程度ブランド・特許・許認可

東レは長年培ってきた高機能繊維(炭素繊維、アラミド繊維など)やフィルム、化学品分野での高い技術力とブランド力を有する。特に炭素繊維複合材料は航空宇宙産業や自動車産業で採用実績があり、高い品質と信頼性が評価されている。これらの素材は特許やノウハウによって保護されている側面がある。

スイッチングコスト★★☆☆☆
根拠:中程度乗り換えの手間・コスト

東レの素材は、顧客であるメーカーの製品設計や製造プロセスに深く組み込まれている場合が多い。特に自動車や航空機などの分野では、一度採用された素材を変更するには、再設計、認証取得、テストなど多大な時間とコストがかかるため、一定のスイッチング・コストが発生する可能性がある。

ネットワーク効果☆☆☆☆☆
根拠:弱い利用者増が価値を生む

東レの事業モデルは、主に素材の製造・販売であり、ユーザーが増えることで価値が増大するネットワーク効果は基本的に見られない。

コスト優位★★☆☆☆
根拠:中程度同じ物を安く作れる

長年の経験と規模の経済により、一部の汎用素材においてはコスト競争力を持つ可能性がある。しかし、高機能素材分野では研究開発費や設備投資が先行するため、必ずしも構造的なコスト優位があるとは言えない。

規模の経済★★★★☆
根拠:強い規模が参入障壁になる

東レは炭素繊維、フィルム、化学品などの分野で世界有数の生産能力と販売網を持つ。特に炭素繊維ではグローバルでトップクラスのシェアを誇り、規模の経済を活かした効率的な生産体制を構築している。この規模は新規参入者にとって大きな障壁となる。

  • 高機能素材の技術力:東レは、ナイロン、ポリエステル、炭素繊維といった基盤素材から、高機能フィルム、電子情報材料、医薬品に至るまで、幅広い分野で独自の技術を保有しています。長年の研究開発で培われたこれらの技術は、製品の性能や品質において他社との差別化を可能にし、高い競争優位性を生み出しています。特に炭素繊維複合材料は、航空機や自動車の軽量化に貢献する重要な素材であり、高い技術障壁を誇ります。
  • 多角的な事業ポートフォリオ:東レは、繊維、機能化成品、炭素繊維複合材料、環境・エンジニアリング、ライフサイエンスといった多様な事業を展開しています。この多角的な事業構成により、特定の市場の変動リスクを分散し、安定した収益基盤を築いています。例えば、景気変動の影響を受けやすい事業がある一方で、ライフサイエンスのように安定した需要が見込める事業も持ち合わせることで、全体としての経営の安定性を高めています。
  • グローバルな供給網と顧客基盤:東レは、世界中に広がる生産拠点と販売ネットワークを通じて、多様な産業の顧客に製品を供給しています。子会社266社、関連会社等42社を含む308社の関係会社がこのネットワークを支え、地域ごとのニーズに合わせた迅速な対応を可能にしています。これにより、特定の顧客や地域に依存することなく、幅広い市場からの収益を確保し、事業の安定性を高めています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)

経営戦略

有価証券報告書「経営方針・対処すべき課題・MD&A」の全文を見る(年度切替)
経営方針・経営戦略
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】以下の記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。 (1) 東レ理念東レグループは、1926年の創業以来、「企業は社会の公器であり、その事業を通じて社会に貢献する」との経営思想の下、社会から尊敬される企業体として存在することを目指してきました。1955年にはこの考え方を初めて明文化した「社是」を制定し、創立60周年を迎えた1986年には現在の「企業理念」を最上位とする経営理念体系を整備しました。この経営理念は一部改定しながら受け継がれており、2020年5月に「東レ理念」として創業以来の考え方を改めて体系化しております。「東レ理念」は、従来の経営理念である「企業理念」「経営基本方針」「企業行動指針」に加え、企業理念を具現化するための企業姿勢を端的に示した「コーポレートスローガン」、これらの考え方の基礎となる創業以来受け継いできた価値観・経営観などの「企業文化」から構成されております。当社は企業理念の具現化において、社会の中で、お客様、社員、株主など数多くのステークホルダーによって支えられていることを認識し、それぞれに対して責任を果たし、広く社会に貢献していきます。 (企業理念)わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します(経営基本方針)お客様のために新しい価値と高い品質の製品とサービスを 社員のために働きがいと公正な機会を 株主のために誠実で信頼に応える経営を 社会のために社会の一員として責任を果たし相互信頼と連携を (2) “TORAY VISION 2050”(ビジョン)人口増加、高齢化、気候変動、水不足、資源の枯渇など世界が直面する「発展」と「持続可能性」の両立をめぐる地球規模の課題に対し、革新技術・先端材料の提供によって、本質的なソリューションを提供していくことが東レグループの使命と考えます。“TORAY VISION 2050”は、「2050年に向け東レグループが目指す世界」として、以下の3つの世界の実現を目指しています。・人と地球が調和し 資源が循環し 自然が再生していく世界 (環境)・安全・安心な社会の中で 豊かさが生み出され 分かち合える世界 (社会)・すべての人が健やかに 心地よく暮らす世界 (人) これら3つの世界の実現に向け、社会課題の解決をリードし、誰もが安心して暮らせる公正な社会の実現に貢献することで、東レグループの企業理念を体現していきます。 (3) 長期経営方針“TORAY Challenges 2035”東レグループの長期経営方針は、“TORAY VISION 2050”に示す「2050年に向け東レグループが目指す世界」の実現に向けて、以下のとおり設定しています。方針1 確かな成長と次世代市場での飛躍:既存事業の競争力を着実に高めるとともに、次世代市場での新たな成長を通じて持続的な成長を実現します。方針2 ビジネスモデルの転換:市場や顧客ニーズの変化を捉え、付加価値の高い事業ポートフォリオ・ビジネスモデルへの転換を進めます。方針3 現場力強化とサプライチェーンの強靭化:企業活動の基盤である現場力を高めるとともに、変化やリスクに強いサプライチェーンを構築します。方針4 DXによる価値創出の仕組み強化:デジタル技術を活用し、業務効率化にとどまらず、新たな価値を継続的に生み出す仕組みを強化します。方針5 人材を核とした経営基盤強化:企業運営の源泉である「人」を起点に組織能力を高度化し、強固な「企業価値創造の基盤」を構築します。 マイルストーンとしての2035年のKPIは以下のとおりです。財務目標非財務目標・ROIC (注)1 10%を目指す・GHG排出量 35%削減(2013年度比)・EXスコア®(エンゲージメントスコア)(注)2 70以上(注)1.ROICは、税引後事業利益/投下資本(期首・期末平均)で算出しております。事業利益は、営業利益から非経常的な要因により発生した損益を除いて算出しております。2.EXスコア®は組織状態を示す指標であり、各個人の期待値と実感値、そのギャップを測定します。期待・実感共に高く、ギャップが小さい場合にスコアは最大化されます。調査委託先である㈱HRBrainの登録商標です。なお、数値目標は当社を対象としております。 今後の事業環境は、政治・経済の不確実性の高まり、地球環境問題や人口増加の深刻化に加え、生成AIの進展による産業構造や社会システムの変化により事業機会が創出される一方で、これまで存在した事業が縮小するリスクもあります。私たちは産業の潮流の変化を的確に捉えて、リスクを機会に変え、ビジネスモデルの転換を図りながら、社会課題の解決と持続的成長の両立を目指していきます。 (4) 中期経営課題“IGNITION 2028”2026年度から2028年度までの3年間を対象期間とする中期経営課題“IGNITION 2028”は、「東レ理念」を起点として、“TORAY VISION 2050”で掲げた世界を目指し、長期経営方針で掲げた方針を踏まえて、「経済的価値の向上」「社会的価値の向上」「経営基盤強化」に取り組みます。「経済的価値の向上」においては、既設設備からの利益極大化に加え、高収益事業の継続的な創出に向けて事業戦略に連動した研究技術開発戦略を推進し、成長戦略を加速するとともに、低収益事業の構造改革の確度を高め、ROIC向上を図ります。「社会的価値の向上」においては事業を通じた環境・社会課題へのソリューション提供によって「環境・社会・人」へ貢献していくとともに、環境負荷低減や情報開示などの社会的要請に対応していきます。「経営基盤強化」においては、「安全・防災・環境保全」「人を基本とする経営」「リスクマネジメント」「倫理・コンプライアンス」「知財・無形資産の活用」「ブランディング」「DX・AI活用」を強化します。同時に、財務健全性を確保し、成果を適切に配分するために、利益、キャッシュ・フロー、資産効率性のバランスに配慮した事業運営を行います。 (“IGNITION 2028”の財務目標) 2025年度実績2028年度目標(注)1ROIC4.7%約7%ROE (注)24.5%約8%(上記前提) 売上収益25,851億円30,000億円事業利益1,419億円2,300億円事業利益率5.5%8%D/Eレシオ0.500.7以下(ガイドライン)(注)1.為替レートの前提は150円/米ドル、原油価格前提は72.5米ドル/バレルです。2.ROEは、親会社の所有者に帰属する当期利益/親会社の所有者に帰属する持分(期首・期末平均)で算出しております。 (“IGNITION 2028”での各セグメント戦略と取り組み)① 繊維事業3大合成繊維(ナイロン、ポリエステル、アクリル)を有し、テキスタイル、縫製品までのサプライチェーン一貫型事業をグローバルに展開しております。また衣料用途のみならず、工業、土木、農業、ライフサイエンスといったあらゆる用途で進化しており、近年はサステナビリティへの要請の高まりを受けて、バイオマス由来素材やリサイクル素材の開発・展開を強化しております。当社グループは、(a) 技術開発力と多彩な素材群、(b) サプライチェーンへの対応力、(c) グローバルな事業展開、からお客様にソリューションを提供できることが特徴であり、“IGNITION 2028”では各事業の競争力に基づき、成長拡大戦略、成長回帰戦略及び事業構造改革を推進し、事業ポートフォリオの転換と強靭化を図ります。衣料用一貫型事業及びエアバッグ事業を成長ドライバーと位置付け、成長地域・分野への資本配分を傾斜し、強化していきます。また、人工皮革事業ではこれまでの投資の効果発現と新規用途開拓を通じた収益改善を進めます。あわせて、NANODESIGN®やリサイクル・バイオマス素材などの高付加価値製品の開発・拡大を目指します。 ② 機能化成品事業(樹脂・ケミカル事業)自動車の動力源が本格的に電動化し、自動化・IoT化が進むほか、サステナブル社会の本格化から、産業構造変化に応じた製品を先行的に投入することが重要となります。樹脂事業は、多くの自動車用部品や民生用途に採用されておりますが、材料供給に留まらず、設計・加工法まで含めたトータルソリューションを提供することでお客様とともに社会問題を解決するパートナーとしてバリューチェーンを築いており、成長領域であるxEV向け等での先行開発を進めて事業拡大を図ります。また、サステナブル社会への対応として、環境規制や市場ニーズを踏まえたリサイクル材料の事業規模を拡大するとともに、ケミカルリサイクル技術の確立と事業適用を進めていきます。ケミカル事業は、ラクタムチェーン製品事業の強化、ファインケミカル領域における競争力の高い製品群を軸とする事業拡大のほか、動物薬事業の海外展開を進めます。(フィルム事業)自動車のxEV台数の拡大や自動化、コネクト化の進化により、車載用需要が拡大するほか、AI需要の高まり等による電子部品の高機能化、電力需要の拡大が進むと想定しております。また、食品包材は食品ロス削減、環境対応ニーズが強まっております。これらのニーズに対応するため、“IGNITION 2028”においては、「お客様に価値向上策を不断に提供し、サプライチェーン全体の成長を継続的に支える機能性フィルム」を成長戦略の核と位置づけ、事業拡大を図っていきます。機能膜製造工程用・保護用の離型用途やフィルムコンデンサ用途で薄膜化や高クリーン化等のお客様のニーズに対応した差別化を推進します。包装用途では、高バリア性等の機能を活かし薄膜化(プラスチック削減)、アルミ箔レス、モノマテリアル化等を推進していきます。(電子情報材料事業)半導体市場では、生成AIの需要拡大に伴うデータセンターの増加などを背景にメモリー、ロジック半導体が大きく増加、パワー半導体もxEVや再生可能エネルギーの普及に伴う需要が増加すると想定しております。高度なコア技術をベースに、お客様との強い信頼関係のもとで半導体、電子部品、ディスプレイ用途での高シェア維持・拡大を図るとともに、次世代半導体・光通信材料など新事業の創出を加速します。 ③ 炭素繊維複合材料事業航空用途において、ボーイング787の生産機数の回復が想定されるほか、宇宙・防衛用途での需要拡大が期待されます。中長期的には新エネルギーの拡大、環境対応ニーズによる風力発電翼や燃料電池車用途(水素タンクや電極基材)、UAM (Urban Air Mobility)といった新しい事業機会が期待できます。当社グループは50年におよぶ研究開発、データ蓄積に加えて、世界最高性能・最高品質を有するレギュラートウ、コスト競争力が強みのラージトウをグローバルに提案・供給できる事業体制を擁し、世界の有力企業との信頼関係を築いております。“IGNITION 2028”においては、航空、宇宙・防衛用途では顧客基盤の拡大と中間基材販売の強化、供給体制整備を進めるとともに、スポーツ・一般産業用途では差別化可能な領域への集中と迅速な製品投入により、これまで増設やM&Aを通じて投下してきた資本を刈り取り、事業規模の拡大と収益力向上を推進します。 ④ 水処理・ヘルスケア事業“IGNITION 2028”では、“TORAY VISION 2050”に掲げる「すべての人が健やかに心地よく暮らす世界」の実現に向け、水処理事業と医薬・医療事業を統合し、「水処理・ヘルスケア」セグメントとして位置付けました。人々の健康及び生活の質向上を両事業の共通の価値軸とし、成長性の高い事業領域として育成します。(水処理事業)人口の急速な増加などにより、自然の浄化作用だけでは「水量」と「水質」の確保が世界的に困難なことから、高品質・高速処理・省エネプロセスの膜処理技術が21世紀の必須技術となっております。当社グループが有する水処理分離膜のうち、海水淡水化・飲料水製造に用いられるRO膜(逆浸透膜)、及び下廃水再利用などに用いられるUF膜(限外ろ過)において高い市場成長を想定しております。“IGNITION 2028”においては、RO膜のグローバル開発体制を強化し、海淡No.1ポジション維持、かん水差別化による収益性の維持・向上を図るとともに、膜周辺技術を含めた膜ソリューション事業への展開や分離膜など新たな領域での拡大を推進し、水処理膜事業のリーディングカンパニーを目指します。(医薬・医療事業)血液浄化製品の新製品投入及び地域展開、膵がん診断補助用体外診断薬の拡販等を通じ、収益基盤の強化を図ります。 (5) 事業環境変化への対応当社を取り巻く事業環境は、地球環境問題の深刻化、地政学リスクの高まりなどにより、年々不透明感を増しています。しかし、地球環境問題や、エネルギー問題、健康長寿、新興国の人口増加など、世界が直面している大きな課題に変わりはなく、それら課題に、素材メーカーとして取り組んでいくという当社の姿勢も基本的には変わりません。“TORAY VISION 2050”で目指す3つの世界の実現に向け、長期経営方針“TORAY Challenges 2035”、中期経営課題“IGNITION 2028”の下、事業を通じた社会課題の解決を軸に社会的価値と経済的価値の両立を図り、「社会に貢献する高収益企業」を目指して、イノベーション創出による成長戦略と、環境変化へのレジリエンスを高めるための構造改革を推進します。
対処すべき課題
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】以下の記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。 (1) 東レ理念東レグループは、1926年の創業以来、「企業は社会の公器であり、その事業を通じて社会に貢献する」との経営思想の下、社会から尊敬される企業体として存在することを目指してきました。1955年にはこの考え方を初めて明文化した「社是」を制定し、創立60周年を迎えた1986年には現在の「企業理念」を最上位とする経営理念体系を整備しました。この経営理念は一部改定しながら受け継がれており、2020年5月に「東レ理念」として創業以来の考え方を改めて体系化しております。「東レ理念」は、従来の経営理念である「企業理念」「経営基本方針」「企業行動指針」に加え、企業理念を具現化するための企業姿勢を端的に示した「コーポレートスローガン」、これらの考え方の基礎となる創業以来受け継いできた価値観・経営観などの「企業文化」から構成されております。当社は企業理念の具現化において、社会の中で、お客様、社員、株主など数多くのステークホルダーによって支えられていることを認識し、それぞれに対して責任を果たし、広く社会に貢献していきます。 (企業理念)わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します(経営基本方針)お客様のために新しい価値と高い品質の製品とサービスを 社員のために働きがいと公正な機会を 株主のために誠実で信頼に応える経営を 社会のために社会の一員として責任を果たし相互信頼と連携を (2) “TORAY VISION 2050”(ビジョン)人口増加、高齢化、気候変動、水不足、資源の枯渇など世界が直面する「発展」と「持続可能性」の両立をめぐる地球規模の課題に対し、革新技術・先端材料の提供によって、本質的なソリューションを提供していくことが東レグループの使命と考えます。“TORAY VISION 2050”は、「2050年に向け東レグループが目指す世界」として、以下の3つの世界の実現を目指しています。・人と地球が調和し 資源が循環し 自然が再生していく世界 (環境)・安全・安心な社会の中で 豊かさが生み出され 分かち合える世界 (社会)・すべての人が健やかに 心地よく暮らす世界 (人) これら3つの世界の実現に向け、社会課題の解決をリードし、誰もが安心して暮らせる公正な社会の実現に貢献することで、東レグループの企業理念を体現していきます。 (3) 長期経営方針“TORAY Challenges 2035”東レグループの長期経営方針は、“TORAY VISION 2050”に示す「2050年に向け東レグループが目指す世界」の実現に向けて、以下のとおり設定しています。方針1 確かな成長と次世代市場での飛躍:既存事業の競争力を着実に高めるとともに、次世代市場での新たな成長を通じて持続的な成長を実現します。方針2 ビジネスモデルの転換:市場や顧客ニーズの変化を捉え、付加価値の高い事業ポートフォリオ・ビジネスモデルへの転換を進めます。方針3 現場力強化とサプライチェーンの強靭化:企業活動の基盤である現場力を高めるとともに、変化やリスクに強いサプライチェーンを構築します。方針4 DXによる価値創出の仕組み強化:デジタル技術を活用し、業務効率化にとどまらず、新たな価値を継続的に生み出す仕組みを強化します。方針5 人材を核とした経営基盤強化:企業運営の源泉である「人」を起点に組織能力を高度化し、強固な「企業価値創造の基盤」を構築します。 マイルストーンとしての2035年のKPIは以下のとおりです。財務目標非財務目標・ROIC (注)1 10%を目指す・GHG排出量 35%削減(2013年度比)・EXスコア®(エンゲージメントスコア)(注)2 70以上(注)1.ROICは、税引後事業利益/投下資本(期首・期末平均)で算出しております。事業利益は、営業利益から非経常的な要因により発生した損益を除いて算出しております。2.EXスコア®は組織状態を示す指標であり、各個人の期待値と実感値、そのギャップを測定します。期待・実感共に高く、ギャップが小さい場合にスコアは最大化されます。調査委託先である㈱HRBrainの登録商標です。なお、数値目標は当社を対象としております。 今後の事業環境は、政治・経済の不確実性の高まり、地球環境問題や人口増加の深刻化に加え、生成AIの進展による産業構造や社会システムの変化により事業機会が創出される一方で、これまで存在した事業が縮小するリスクもあります。私たちは産業の潮流の変化を的確に捉えて、リスクを機会に変え、ビジネスモデルの転換を図りながら、社会課題の解決と持続的成長の両立を目指していきます。 (4) 中期経営課題“IGNITION 2028”2026年度から2028年度までの3年間を対象期間とする中期経営課題“IGNITION 2028”は、「東レ理念」を起点として、“TORAY VISION 2050”で掲げた世界を目指し、長期経営方針で掲げた方針を踏まえて、「経済的価値の向上」「社会的価値の向上」「経営基盤強化」に取り組みます。「経済的価値の向上」においては、既設設備からの利益極大化に加え、高収益事業の継続的な創出に向けて事業戦略に連動した研究技術開発戦略を推進し、成長戦略を加速するとともに、低収益事業の構造改革の確度を高め、ROIC向上を図ります。「社会的価値の向上」においては事業を通じた環境・社会課題へのソリューション提供によって「環境・社会・人」へ貢献していくとともに、環境負荷低減や情報開示などの社会的要請に対応していきます。「経営基盤強化」においては、「安全・防災・環境保全」「人を基本とする経営」「リスクマネジメント」「倫理・コンプライアンス」「知財・無形資産の活用」「ブランディング」「DX・AI活用」を強化します。同時に、財務健全性を確保し、成果を適切に配分するために、利益、キャッシュ・フロー、資産効率性のバランスに配慮した事業運営を行います。 (“IGNITION 2028”の財務目標) 2025年度実績2028年度目標(注)1ROIC4.7%約7%ROE (注)24.5%約8%(上記前提) 売上収益25,851億円30,000億円事業利益1,419億円2,300億円事業利益率5.5%8%D/Eレシオ0.500.7以下(ガイドライン)(注)1.為替レートの前提は150円/米ドル、原油価格前提は72.5米ドル/バレルです。2.ROEは、親会社の所有者に帰属する当期利益/親会社の所有者に帰属する持分(期首・期末平均)で算出しております。 (“IGNITION 2028”での各セグメント戦略と取り組み)① 繊維事業3大合成繊維(ナイロン、ポリエステル、アクリル)を有し、テキスタイル、縫製品までのサプライチェーン一貫型事業をグローバルに展開しております。また衣料用途のみならず、工業、土木、農業、ライフサイエンスといったあらゆる用途で進化しており、近年はサステナビリティへの要請の高まりを受けて、バイオマス由来素材やリサイクル素材の開発・展開を強化しております。当社グループは、(a) 技術開発力と多彩な素材群、(b) サプライチェーンへの対応力、(c) グローバルな事業展開、からお客様にソリューションを提供できることが特徴であり、“IGNITION 2028”では各事業の競争力に基づき、成長拡大戦略、成長回帰戦略及び事業構造改革を推進し、事業ポートフォリオの転換と強靭化を図ります。衣料用一貫型事業及びエアバッグ事業を成長ドライバーと位置付け、成長地域・分野への資本配分を傾斜し、強化していきます。また、人工皮革事業ではこれまでの投資の効果発現と新規用途開拓を通じた収益改善を進めます。あわせて、NANODESIGN®やリサイクル・バイオマス素材などの高付加価値製品の開発・拡大を目指します。 ② 機能化成品事業(樹脂・ケミカル事業)自動車の動力源が本格的に電動化し、自動化・IoT化が進むほか、サステナブル社会の本格化から、産業構造変化に応じた製品を先行的に投入することが重要となります。樹脂事業は、多くの自動車用部品や民生用途に採用されておりますが、材料供給に留まらず、設計・加工法まで含めたトータルソリューションを提供することでお客様とともに社会問題を解決するパートナーとしてバリューチェーンを築いており、成長領域であるxEV向け等での先行開発を進めて事業拡大を図ります。また、サステナブル社会への対応として、環境規制や市場ニーズを踏まえたリサイクル材料の事業規模を拡大するとともに、ケミカルリサイクル技術の確立と事業適用を進めていきます。ケミカル事業は、ラクタムチェーン製品事業の強化、ファインケミカル領域における競争力の高い製品群を軸とする事業拡大のほか、動物薬事業の海外展開を進めます。(フィルム事業)自動車のxEV台数の拡大や自動化、コネクト化の進化により、車載用需要が拡大するほか、AI需要の高まり等による電子部品の高機能化、電力需要の拡大が進むと想定しております。また、食品包材は食品ロス削減、環境対応ニーズが強まっております。これらのニーズに対応するため、“IGNITION 2028”においては、「お客様に価値向上策を不断に提供し、サプライチェーン全体の成長を継続的に支える機能性フィルム」を成長戦略の核と位置づけ、事業拡大を図っていきます。機能膜製造工程用・保護用の離型用途やフィルムコンデンサ用途で薄膜化や高クリーン化等のお客様のニーズに対応した差別化を推進します。包装用途では、高バリア性等の機能を活かし薄膜化(プラスチック削減)、アルミ箔レス、モノマテリアル化等を推進していきます。(電子情報材料事業)半導体市場では、生成AIの需要拡大に伴うデータセンターの増加などを背景にメモリー、ロジック半導体が大きく増加、パワー半導体もxEVや再生可能エネルギーの普及に伴う需要が増加すると想定しております。高度なコア技術をベースに、お客様との強い信頼関係のもとで半導体、電子部品、ディスプレイ用途での高シェア維持・拡大を図るとともに、次世代半導体・光通信材料など新事業の創出を加速します。 ③ 炭素繊維複合材料事業航空用途において、ボーイング787の生産機数の回復が想定されるほか、宇宙・防衛用途での需要拡大が期待されます。中長期的には新エネルギーの拡大、環境対応ニーズによる風力発電翼や燃料電池車用途(水素タンクや電極基材)、UAM (Urban Air Mobility)といった新しい事業機会が期待できます。当社グループは50年におよぶ研究開発、データ蓄積に加えて、世界最高性能・最高品質を有するレギュラートウ、コスト競争力が強みのラージトウをグローバルに提案・供給できる事業体制を擁し、世界の有力企業との信頼関係を築いております。“IGNITION 2028”においては、航空、宇宙・防衛用途では顧客基盤の拡大と中間基材販売の強化、供給体制整備を進めるとともに、スポーツ・一般産業用途では差別化可能な領域への集中と迅速な製品投入により、これまで増設やM&Aを通じて投下してきた資本を刈り取り、事業規模の拡大と収益力向上を推進します。 ④ 水処理・ヘルスケア事業“IGNITION 2028”では、“TORAY VISION 2050”に掲げる「すべての人が健やかに心地よく暮らす世界」の実現に向け、水処理事業と医薬・医療事業を統合し、「水処理・ヘルスケア」セグメントとして位置付けました。人々の健康及び生活の質向上を両事業の共通の価値軸とし、成長性の高い事業領域として育成します。(水処理事業)人口の急速な増加などにより、自然の浄化作用だけでは「水量」と「水質」の確保が世界的に困難なことから、高品質・高速処理・省エネプロセスの膜処理技術が21世紀の必須技術となっております。当社グループが有する水処理分離膜のうち、海水淡水化・飲料水製造に用いられるRO膜(逆浸透膜)、及び下廃水再利用などに用いられるUF膜(限外ろ過)において高い市場成長を想定しております。“IGNITION 2028”においては、RO膜のグローバル開発体制を強化し、海淡No.1ポジション維持、かん水差別化による収益性の維持・向上を図るとともに、膜周辺技術を含めた膜ソリューション事業への展開や分離膜など新たな領域での拡大を推進し、水処理膜事業のリーディングカンパニーを目指します。(医薬・医療事業)血液浄化製品の新製品投入及び地域展開、膵がん診断補助用体外診断薬の拡販等を通じ、収益基盤の強化を図ります。 (5) 事業環境変化への対応当社を取り巻く事業環境は、地球環境問題の深刻化、地政学リスクの高まりなどにより、年々不透明感を増しています。しかし、地球環境問題や、エネルギー問題、健康長寿、新興国の人口増加など、世界が直面している大きな課題に変わりはなく、それら課題に、素材メーカーとして取り組んでいくという当社の姿勢も基本的には変わりません。“TORAY VISION 2050”で目指す3つの世界の実現に向け、長期経営方針“TORAY Challenges 2035”、中期経営課題“IGNITION 2028”の下、事業を通じた社会課題の解決を軸に社会的価値と経済的価値の両立を図り、「社会に貢献する高収益企業」を目指して、イノベーション創出による成長戦略と、環境変化へのレジリエンスを高めるための構造改革を推進します。
MD&A(経営者による分析)
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】当連結会計年度(2025年4月1日から2026年3月31日まで)における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。なお、文中の将来における事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。 (1) 経営成績の状況の概要及び分析当連結会計年度の世界経済は、米国は一部に弱さが見られるものの堅調を維持しました。欧州は緩やかな持ち直しの動きが見られましたが、国別のばらつきが大きくなっています。中国は緩やかに減速しています。国内経済については、緩やかな回復が続きました。ただし、トランプ政権による米国の政策転換や地政学リスクに対する不透明感の高まりを背景に、モノの流れの停滞や買い控えの動きも一部に見られました。このような事業環境の中で、当社グループは「持続的かつ健全な成長」を目指し、2023年度からは「持続的な成長の実現」「価値創出力強化」「競争力強化」「『人を基本とする経営』の深化」「リスクマネジメントとグループガバナンスの強化」の5つを基本戦略とした中期経営課題“プロジェクト AP-G 2025”を推進しました。以上の結果、当社グループの連結業績は、売上収益は前期比0.9%増の2兆5,851億円、事業利益は同0.6%減の1,419億円となりました。また、韓国子会社のバッテリーセパレータフィルム事業において減損損失を計上したこと等から、営業利益は同23.7%減の972億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同2.1%増の795億円となりました。 (単位:億円) 前連結会計年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)当連結会計年度(自 2025年4月1日至 2026年3月31日)増減率(%)売上収益25,63325,8510.9事業利益1,4281,419△0.6営業利益1,275972△23.7親会社の所有者に帰属する当期利益7797952.1 セグメントごとの売上収益は、前期に比べ、繊維事業、炭素繊維複合材料事業、環境・エンジニアリング事業で増収となった一方、機能化成品事業、ライフサイエンス事業で減収となりました。事業利益は、繊維事業、環境・エンジニアリング事業、ライフサイエンス事業で増益となった一方、機能化成品事業、炭素繊維複合材料事業で減益となりました。セグメントごとの売上収益及び事業利益、並びに事業利益の増減要因は、以下のとおりです。(単位:億円) 売上収益 前連結会計年度当連結会計年度増減繊維事業10,11110,511400機能化成品事業9,4498,944△504炭素繊維複合材料事業3,0003,0011環境・エンジニアリング事業2,3652,669304ライフサイエンス事業532524△7その他(注)117720225合計25,63325,851218 (単位:億円) 事業利益 増減の内訳 前連結会計年度当連結会計年度増減 数量差価格差費用差ほか海外子会社の邦貨換算差繊維事業64268039 45△106△2機能化成品事業600563△37 1367△112△5炭素繊維複合材料事業225176△49 103△66△85△1環境・エンジニアリング事業25928829 81△15△36△1ライフサイエンス事業△8△17 △82120その他(注)124250 25-△25△0調整額(注)2△315△3123 --3-合計1,4281,419△8 258△22△235△9(注) 1.「その他」は分析・調査・研究等のサービス関連事業等です。2.「調整額」はセグメント間取引消去及び全社費用です。 ・「数量差」は、主に炭素繊維複合材料事業及び環境・エンジニアリング事業において、需要の回復・伸長を背景に販売数量が増加し、合計で258億円の増益要因となりました。炭素繊維複合材料事業では、一般産業用途において欧米市場の需要伸び悩みを背景とした販売数量減・稼働調整の影響を受けた一方、航空宇宙用途における需要の回復が進み、販売数量が増加しました。環境・エンジニアリング事業では、中東向けの逆浸透膜を中心に堅調に事業が推移し、同様に販売数量が増加しました。・「価格差」は、価格是正、販売構成の改善や高付加価値品への転換などの「戦略的プライシング」が順調に進捗しましたが、炭素繊維複合材料事業における価格競争激化を主因に、合計で22億円の減益となりました。・「費用差ほか」は、稼働率向上に伴う費用の増加等により、合計で235億円の減益要因となりました。 セグメントごとの経営成績の詳細は、以下のとおりです。 (繊維事業)衣料用途は欧州市場の低迷や海外品との競争激化の影響が継続していますが、総じて堅調に推移しました。産業用途は自動車用途をはじめ市況に停滞感がみられる中、コスト改善に努めました。以上の結果、繊維事業全体では、売上収益は前期比4.0%増の1兆511億円、事業利益は同6.0%増の680億円となりました。 (機能化成品事業)樹脂・ケミカル事業は、樹脂事業が自動車用途の市況低迷の影響を受けて伸び悩み、ケミカル事業も市況悪化の影響を受けました。フィルム事業は、電子部品関連や車載用コンデンサ用途の需要が伸長しましたが、バッテリーセパレータフィルムの販売が低迷しました。電子情報材料事業は、パワーインダクタ向け新製品の販売が伸長しましたが、有機EL関連材料・回路材料において中国でのパネル需要低迷及び競争激化の影響を受けました。以上の結果、機能化成品事業全体では、売上収益は前期比5.3%減の8,944億円、事業利益は同6.2%減の563億円となりました。 (炭素繊維複合材料事業)航空宇宙用途は順調に回復していますが、一般産業用途が圧力容器用途などで調整局面となり、風力発電翼用途も回復が遅れました。以上の結果、炭素繊維複合材料事業全体では、売上収益は前期比横ばいの3,001億円、事業利益は同21.7%減の176億円となりました。 (環境・エンジニアリング事業)水処理事業は、中東向けの逆浸透膜や国内のプラント建設事業が堅調に推移しましたが、中国の市況低迷や競争激化の影響を受けました。エンジニアリング事業は、エンジニアリング子会社及び建設子会社が堅調に推移しました。以上の結果、環境・エンジニアリング事業全体では、売上収益は前期比12.8%増の2,669億円、事業利益は同11.2%増の288億円となりました。 (ライフサイエンス事業)医薬事業は、海外は中国を中心に販売が伸長しましたが、国内は後発医薬品浸透の影響を受けました。医療機器事業は、血液透析用ダイアライザー及びカテーテル等の販売が伸び悩みましたが、高付加価値品へのシフト及びコスト削減に努めました。以上の結果、ライフサイエンス事業全体では、売上収益は前期比1.4%減の524億円、事業利益は同7億円増の1億円の損失となりました。 (その他)売上収益は前期比14.0%増の202億円、事業利益は同1.1%増の25億円となりました。 (生産、受注及び販売の状況)当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その形態、単位等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多いため、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。このため生産、受注及び販売の状況については、各セグメントの業績に関連付けて示しております。 (2) 財政状態の状況の概要及び分析当連結会計年度末の財政状態は、資産・負債ともに、円安による海外子会社の円換算額増加の影響がありました。資産は、営業債権及びその他の債権や有形固定資産、退職給付に係る資産が増加したことを主因に、前連結会計年度末に比べ1,844億円増加し3兆4,770億円となりました。負債は、借入金が増加したことを主因に、前連結会計年度末に比べ771億円増加し1兆5,491億円となりました。資本は、自己株式の取得により減少した一方、その他の資本の構成要素が増加したことを主因に、前連結会計年度末に比べ1,073億円増加し1兆9,278億円となり、このうち親会社の所有者に帰属する持分は1兆8,001億円となりました。当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末に比べ0.1ポイント低下し51.8%、D/Eレシオは同0.01上昇し0.50となりました。 (3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析① キャッシュ・フローの状況の概要及び分析当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動による資金の増加が投資活動による資金の減少を1,448億円上回った一方、自己株式の取得による支出等を主因に財務活動による資金の減少が1,290億円となったこと、及び為替変動による増加が122億円となったことにより、前連結会計年度末に比べ280億円増の2,653億円となりました。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)営業債務及びその他の債務の減少額が前期比285億円減少した一方、営業債権及びその他の債権の増加額が同668億円増加したこと等により、営業活動による資金の増加は同433億円(17.0%)減の2,118億円となりました。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)有形固定資産及び無形資産の取得による支出が前期比327億円減少した一方、投資の売却及び償還による収入が同334億円減少したこと等により、投資活動による資金の減少は同37億円(5.9%)増の669億円となりました。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)自己株式の取得による支出が前期比733億円増加した一方、社債の発行及び長期借入れによる収入が同841億円増加したことや、社債の償還及び長期借入金の返済が同217億円減少したこと等により、財務活動による資金の減少は同595億円(31.6%)減の1,290億円となりました。 ② 資金需要当社グループの資金需要の主なものは、設備投資、投融資などの長期資金需要と当社製品製造のための原材料の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費などの運転資金需要です。このうち、設備投資の概要及び重要な設備の新設の計画については、「第3 設備の状況」に記載しております。 ③ 財務政策当社グループは、資金需要の見通しや金融市場の動向などを総合的に勘案した上で、最適なタイミング、規模、手段を判断して資金調達を実施しております。また、財務健全性を維持しつつ、事業拡大を推進することを基本方針とし、運転資金の圧縮、固定資産の稼働率向上、キャッシュ・マネジメント・システムによるグループ内余剰資金の有効活用等、資産効率の改善にも取り組んでおります。2024年5月、資本効率の改善を加速するため、2024年度から2026年度までの3年間で政策保有株式を50%、約1,000億円削減し、その売却代金を全額自己株式の取得に充当する方針を公表しました。この方針に基づき、政策保有株式を前連結会計年度において1,098億円、当連結会計年度において305億円売却しました。また、2024年11月に1,000億円、2025年11月に500億円の自己株式取得枠を設定し、前連結会計年度において384億円、当連結会計年度において1,116億円の自己株式を取得しました。財務状況は健全性を保っており、現金及び現金同等物などの流動性資産に加え、営業活動によるキャッシュ・フロー、コマーシャル・ペーパー、社債、借入金等による資金調達により、事業拡大に必要な資金を十分に賄えると考えております。また、業績やキャッシュ・フローの悪化等により緊急に資金が必要となる場合や金融市場の混乱に備え、国内外の金融機関とコミットメントライン契約、当座貸越契約等を締結し、資金流動性を確保しております。 (4) 経営上の目標の達成状況① 財務目標中期経営課題“プロジェクト AP-G 2025”の財務目標の達成状況は以下のとおりです。 2023年度実績2024年度実績2025年度実績2025年度目標(注)売上収益24,646億円25,633億円25,851億円28,000億円事業利益1,026億円1,428億円1,419億円1,800億円事業利益率4.2%5.6%5.5%6%ROIC2.8%4.4%4.7%約5%ROE1.3%4.5%4.5%約8%フリー・キャッシュ・フロー647億円1,918億円1,448億円プラス(3年間累計)D/Eレシオ0.550.490.500.7以下(ガイドライン)(注) 為替レートの前提は、125円/米ドルです。 2023年度から2025年度までの3か年を対象とする中期経営課題“プロジェクト AP-G 2025”においては、「持続的な成長の実現」「価値創出力強化」「競争力強化」「『人を基本とする経営』の深化」「リスクマネジメントとグループガバナンスの強化」の5つを基本戦略として、成長領域として設定した、サステナビリティイノベーション(SI)事業とデジタルイノベーション(DI)事業の拡大、事業の高度化・付加価値化及び品質力・コスト競争力強化に取り組んできました。また、ROICをKPIとした資本効率の向上を目指し、成長戦略と構造改革に取り組みました。“プロジェクト AP-G 2025”をスタートした2023年度以降、構造改革や「戦略的プライシング」の効果が発現し、2025年度の売上収益及び事業利益は、2022年度比で大幅に増加しました。一方で、“プロジェクト AP-G 2025”で掲げていた目標に対しては、中国競合の台頭による競争激化や保護主義の加速、インフレの急速な進行など、グローバルな事業環境変化の影響を受け、数量の未達を主因に、売上収益及び事業利益ともに目標未達となりました。フリー・キャッシュ・フローとD/Eレシオは、財務体質強化により目標を達成しました。 セグメントごとの事業利益は、繊維事業及び環境・エンジニアリング事業は目標を達成しました。一方で、機能化成品事業、炭素繊維複合材料事業及びライフサイエンス事業については目標未達となりました。セグメントごとの事業利益は以下のとおりです。 (単位:億円) 事業利益 2025年度目標2025年度実績増減繊維事業64068040機能化成品事業910563△347炭素繊維複合材料事業360176△184環境・エンジニアリング事業27028818ライフサイエンス事業0△1△1その他20255調整額△400△31288合計1,8001,419△381 ② サステナビリティ目標中期経営課題“プロジェクト AP-G 2025”のサステナビリティ目標の達成状況は以下のとおりです。 2013年度実績(基準年度)(日本基準)2025年度実績(2013年度比)(IFRS)2025年度目標(2013年度比)(IFRS)サステナビリティイノベーション事業の売上収益(注)15,624億円13,865億円(2.5倍)16,000億円(2.8倍)バリューチェーンへのCO2削減貢献量(注)20.4億トン12.2倍15.0倍水処理貢献量(注)32,723万トン/日3.1倍2.9倍生産活動によるGHG排出量の売上高・売上収益原単位(注)4、6、7356トン/億円45%削減40%削減日本国内のGHG排出量(注)5、6、7245万トン31%削減20%削減生産活動による用水使用量の売上高・売上収益原単位(注)714,693トン/億円37%削減40%削減(注) 1.(1)気候変動対策を加速させる製品、(2)持続可能な循環型の資源利用と生産に貢献する製品、(3)安全な水・空気を届け、環境負荷低減に貢献する製品、(4)医療の充実と公衆衛生の普及促進に貢献する製品2.製品のバリューチェーンを通じたライフサイクル全体でのCO2排出量削減効果を、日本化学工業協会、ICAA (国際化学工業協力協議会)及びWBCSD (持続可能な開発のための経済人会議)の化学セクターのガイドラインに従い、東レが独自に算出3.水処理膜により新たに創出される年間水処理量。各種水処理膜(RO/UF/MBR)毎の1日当たりの造水可能量に売上本数を乗じて算出4.世界各国における再生可能エネルギー等のゼロエミッション電源比率の上昇に合わせて、2030年度に同等以上のゼロエミッション電源導入を目指す5.地球温暖化対策推進法に基づく日本政府の総合計画(2021年10月22日閣議決定)における産業部門割当(2030年度までに絶対量マイナス38%)以上の削減を目指す6.国際的な算定ルールであるGHGプロトコルに則り、経営支配力を乗じて算出7.基準年度である2013年度の値は、2014年度以降に東レグループに加わった会社分を含めて算出 サステナビリティの取り組みについては、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。 (5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しております。連結財務諸表の作成にあたって用いた重要な会計上の見積り及び仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。

事業リスク

  • 地政学リスクの増大:軍事侵攻や経済安全保障といった地政学的なリスクが高まることで、海外の事業拠点における従業員の安全確保が困難になったり、長期的な事業停止や事業撤退を余儀なくされる可能性があります。また、重要な資産(建物、装置、技術情報など)が接収されたり、利用不能になるリスクも考えられます。これにより、東レグループの経営成績や財政状態に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
  • 製品供給途絶リスク:原油価格の変動、資源保有国の政情不安、気候変動、人権問題など、グローバルサプライチェーンを取り巻く環境の急激な変化により、製品製造に必要な原材料や部材の調達が困難になる可能性があります。これにより、安定した数量・品質の製品供給ができなくなり、最終製品メーカーの事業継続に影響を与えたり、供給契約の債務不履行による賠償責任が発生するリスクがあります。これは東レグループの収益性や信用に悪影響を及ぼす可能性があります。
  • 需要・市況変動リスク:東レグループが供給する多種多様な基礎素材製品は、世界的・地域的な需給環境の変動、素材代替の進行、取引先の購買方針変更などにより、需要が減退する可能性があります。景気変動や国内の人口減少による特定顧客・用途での大幅な需要変動、価格下落、新規企業の参入による競争激化、物価上昇圧力による消費マインドの減退などが、東レグループの売上高や利益に悪影響を及ぼす可能性があります。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「事業等のリスク」の全文を見る(年度切替)
FY2026|6,328 文字
3 【事業等のリスク】気候変動がもたらす異常気象の増加や、国家間の武力衝突、政治・経済領域における対立といった地政学リスクの高まりなどにより、当社を取り巻く事業環境は不確実性を増しております。当社グループは、以下(1)項に記載のとおり急激に顕在化するリスクや危機発生時に迅速に対応するための体制を構築し、専任組織によって平時のリスクマネジメントと有事(危機発生時)の即応を統括管理しておりますが、リスクが顕在化した場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。「第2 事業の状況」、「第5 経理の状況」等での記載事項に関して、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下(3) (4)項に記載のとおりです。これらは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、事業等のリスクはこれらに限定されるものではありません。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。 (1) 当社グループにおけるリスクマネジメント体制、活動当社グループでは、周辺環境の変化により急激に顕在化するリスクへの対応や、危機発生時に迅速に対応するため、専任組織を設置し、取締役会及びトップマネジメントと緊密に意思疎通を行い、経営戦略の一環としてリスクマネジメントを推進しております。リスクマネジメント推進のための審議・協議・情報共有機関としては、総務・法務・リスクマネジメント部門長を委員長とする「リスクマネジメント委員会」を設置しております(図1)。リスクマネジメント委員会における審議・協議内容については、取締役会に定期的に報告しているほか、重要かつ緊急の案件については、発生した都度もれなく報告しております。また、リスクマネジメント委員会の下部組織として海外危機管理委員会、現地危機管理委員会を設置し、平時には社員の海外渡航管理や海外リスクの情報収集、有事の際には社員の安全確保に向けた対応などを行っております。当社グループでは、平時のリスク管理と有事の即応を統括してリスクマネジメントと定義しております。平時のリスク管理は、後述する「東レグループ優先対応リスク(以下「優先対応リスク」という。)」及び「特定リスク」を管理するPDCAサイクルを構築し、活動しております(図2)。 「優先対応リスク」は、当社グループが定期的に(3年に1度)網羅的に洗い出したリスクを評価した上で、影響度及び切迫度が高く全社的な対応が必要と判断したものを設定しており、各リスクについては推進責任部署が重点的にリスク低減を図ります。一方、「特定リスク」は、専任部署が国内外のリスク動向を定常的に注視し、調査・分析を行い、経営に重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクを検出、評価し、トップマネジメントと協議の上設定します。「特定リスク」は短期間で発現したリスクへの対応が可能で、3年を1期としている「優先対応リスク」と補完関係にあります。また、有事においては、社内規程に則り、危機のレベルに応じて即応体制を立ち上げ、対応しております。 (2) リスクの洗い出し・評価2025年に第7期となる「優先対応リスク」の洗い出し・評価を実施しました。第7期は、当社グループ全体を対象に、2026~2028年度の中期経営課題達成を阻害するリスクの洗い出し・評価を主目的とし、以下のプロセスで実施しました。 ① 当社グループを取り巻くリスク(「経営環境」「災害」「業務」「E(環境)」「S(社会)」「G(ガバナンス)」の区分で網羅的に整理した110項目のリスク(図3))について、その影響や切迫性、対策状況などを把握するためのアンケート調査を実施。② アンケート調査で得られた情報を集約・分析の上、リスク関係部署及び経営層を対象にリスク認識・課題や対処についてディスカッションを実施。③ アンケートの分析、ディスカッションで得られた情報を総合し、「優先対応リスク案」を取りまとめ、リスクマネジメント委員会で審議・決定。 (3) 優先対応リスク第7期(2026-2028年度)優先対応リスクとして、下記2テーマを推進しております。製品供給途絶リスクリスク概要原油価格動静等の市況面、資源保有国の政情等の地政学面、気候変動等の環境面や人権等の社会面の混乱に伴う、生産に必要な原材料・部材等の調達逼迫、取引先からのフォースマジュール条項の発動の顕在化により、以下のリスクが高まる可能性があります。 ・原燃料の調達困難を契機とした安定した数量・品質の製品供給困難・当社グループの製品供給途絶に伴う最終製品メーカーの事業継続困難・供給契約の債務不履行に伴う賠償責任の発生 など対応当社グループは社会生活上の必需品や、企業の事業戦略上の重要製品の製造に不可欠な素材を安定的に供給する社会的責任・使命を有しているという認識のもと、製品供給途絶リスクを第6期(2023-2025年度)「優先対応リスク」に設定してサプライチェーンにおける脆弱性の分析を行い、原材料における複数購買化やレシピ変更、在庫備蓄化などのリスク低減策を実行してきました。2026年度以降も、当社グループ全体でリスク低減を一層強化するため、本テーマを引き続き「優先対応リスク」と位置付けて対策を拡充しております。全社横断的な推進体制のもと、これまでに蓄積してきたリスク低減に関するノウハウをグループ全体で共有し、製品供給の継続性のさらなる強靭化に取り組んでおります。サイバー攻撃による事業活動停止リスクリスク概要サイバー攻撃は高度化・巧妙化が進み、特に製造業を標的とした攻撃が増加しております。攻撃を受けた企業の中には、基幹システム・生産設備の停止や機密情報・個人情報の漏洩などが発生し、事業活動の停止に至るケースが確認されております。当社グループにおいても、同様の事象が発生した場合、事業活動への影響が生じるリスクがあります。対応当社グループが事業活動を行う上で、情報システム及び情報ネットワークは欠くことのできない基盤であり、構築・運用にあたっては十分なセキュリティの確保に努めております。当社グループでは情報セキュリティを重要な経営課題と位置付け、「東レグループ情報セキュリティ基本方針」を定め、「東レグループ情報セキュリティ推進委員会」が統括してグループ全体のリスク状況を把握しております。その上で、グループ共通のセキュリティ管理基準の策定・運用や、定期的なセキュリティ診断及びモニタリングを通じて、情報セキュリティの維持・向上を図っております。さらに、サイバー攻撃による事業活動停止リスクについては、近年のリスクの高まりを踏まえ、2026年度より「優先対応リスク」に位置づけ、全社横断的に対策を強化し、当社グループ及びサプライチェーンのリスク低減を推進しております。 (4) 主要なリスク(区分:「事業」「E(環境)」「S(社会)」「G(ガバナンス)」の順で掲載)優先対応リスクのほか、当社グループにおいて影響が大きいと評価している主要なリスクは以下のとおりです。これらのリスクについては、全社委員会や専門部署、事業本部などが中心となってリスク低減対応を推進しております。製品の需要・市況の動向と事業計画に関わるリスク区分事業リスク概要当社グループは、多種多様な基礎素材製品を広範な産業及び地域に供給しており、世界的あるいは地域的な需給環境の変動や素材代替の進行、取引先の購買方針の変更等による当社グループの製品に対する需要減退などにより、以下のリスクが高まる可能性があります。・景気・市場変動・国内の人口減少による特定顧客・用途の大幅な需要変動並びに価格下落・新規企業の参入による当社の相対的な優位性低下・物価上昇圧力による消費マインド減退・取引先の与信リスク顕在化 など対応当社グループは、製品の需要や市況の変化に対応すべく、持続的に競争優位の製品確保に努めており、広範囲にわたる事業領域で設備投資を実施しております。また、事業拡大・競争力強化を目的として、事前に収益性や投資回収の可能性について様々な観点から十分な検討を行った上で、第三者との間で様々な合弁事業や戦略的提携、事業買収等を行っております。中期経営課題“IGNITION 2028”の達成に向けては、高収益事業の拡大、低収益事業の構造改革、次世代市場への参入に向けた研究開発投資の継続などにより事業ポートフォリオの改善に取り組んでおります。各事業領域においても、新たな販売チャネル開発、手戻りのない効率的な差別化商品の開発、サプライチェーン見直し、在庫適正化など、様々な課題を個別に設定、推進しております。グローバル事業展開に関わるリスク区分事業リスク概要当社グループは、アジア・欧州・米国をはじめ海外で広く事業を展開しておりますが、事業を展開している国・地域において、紛争・政情不安・治安悪化などが発生した場合、当社グループの事業に影響を与える可能性があります。また、近年では、地域間の政治的・軍事的緊張、国境を越えた紛争、通商政策の変更、輸出管理規制の強化など地政学リスクや経済安全保障リスクが高まっております。こうした背景のもと、以下のようなリスクがあります。・紛争地域における従業員の安全確保の困難・サプライチェーンの不安定化による重要資源の確保困難・輸出入規制や関税の引き上げ・経済安全保障上の機微技術の漏洩・経済制裁や輸出管理規制の違反認定 など対応当社グループでは、海外危機管理委員会において海外で想定される危機への予防的取り組みや危機発生時の対応体制の強化を推進しております。なかでも、戦争のリスクが高い国・地域においては、有事対応のマニュアルを整備し、対応訓練を行っております。経済安全保障への対応については、法務、購買・物流、マーケティング、研究・技術などの幅広いメンバーから成る専任チームを設置し、各国の政治・経済動向や規制動向に関する情報を継続的に収集・分析し、その内容をグループ内に共有し、事業運営に活かしております。また、当社グループの事業活動(サプライチェーン、資金、研究開発、人事管理、データ管理など)に関する情報に基づき、リスク回避・軽減のための仕組みづくりを推進するとともにリスクが顕在化した場合には機動的に必要な対策を講じております。為替相場の変動、金利の変動に関わるリスク区分事業リスク概要当社グループは、原材料等の調達を含む外国通貨建て取引を行っております。また、海外事業の現地通貨建て財務諸表の各項目は連結財務諸表作成のために円換算されます。事業資金においては主に金融機関からの借入、コマーシャル・ペーパーや社債の発行等により調達しております。これらには以下のようなリスクがあります。・為替相場の変動による財務諸表の各項目における円換算への影響・資金調達及び調達コストへの影響 など対応当社グループは、グローバルに事業拠点を保有する強みを活かしながら、地産地消を推進するとともに、グローバルオペレーションを機動的に展開することで為替変動の影響を受けにくい経営体質の構築に努めております。また本社及び各国・地域代表や各地区財経チーフ・海外関係会社の駐在員などが常に最新の情報を把握・共有化するとともに、外貨建債権・債務に関して為替予約などのリスクヘッジを実施し、急激な為替レート変動にも対応可能な体制をとっております。また、将来の急激な金利上昇に備え、金利動向を注視し、最適な資金調達を実行していきます。 気候変動、資源の枯渇、生態系の破壊等の環境課題に関わるリスク区分E(環境)リスク概要環境課題に対する企業への要求や期待の高まりから、当社グループにおいて、以下のリスクが高まる可能性があります。・GHG削減や資源循環、生物多様性・自然資本の保全と回復などへの対応の遅れによる競争力低下(環境負荷の低い素材への代替推進など)・石油化学産業へのレピュテーションの悪化による企業ブランド価値の低下・世界的なカーボンプライシング等の導入 など対応「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおり、当社グループは、“TORAY VISION 2050”で示す「2050年に向けて目指す世界」の実現に向けて、資源循環推進、GHG削減、ネイチャーポジティブ、サステナビリティ情報開示の各プロジェクトを推進しております。自然災害・事故災害に関わるリスク区分E(環境)リスク概要気候変動により台風や洪水等といった風水害の規模が大きくなるなど、自然災害へのリスクが高まっており、当社グループにおいても以下のようなリスクがあります。・突発的な災害や天災、感染症流行、不慮の事故等による製造設備等の損害や原材料等の供給不足・電力・物流をはじめとする社会インフラ機能の低下 など対応当社グループは、「安全・防災・環境保全」をあらゆる経営課題に優先しております。安全・防災・環境保全に関する検討・審議を行うための諮問会議である生産役員会が中心となり、生産活動の中断による損害を最小限に抑えるため、製造設備の定期的な防災点検及び設備保守、また安全活動を推進しております。また大規模地震や水災などに関して、従業員・地域社会への安全対策、事業継続のガイドラインを定め、対策を推進しております。人材戦略リスク区分S(社会)リスク概要働き方や就労観の多様化、労働力人口の減少、長寿・高齢化の加速など、人材戦略に関わる環境は変化しており、当社グループにおいても、以下のようなリスクがあります。・生産継続・事業拡大を支える人材の不足・人材採用競争激化、賃金上昇によるコスト増加・キーマン不足による技術・ノウハウ継承の途絶 など対応「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 人的資本への取り組み」に記載のとおり、当社グループは、経営戦略と連動した人材戦略を策定し、人材育成、処遇・評価、働き方改革及び社内環境整備に関する基本方針を定め、将来の事業競争力を支える人材ポートフォリオの構築を進めております。コンプライアンスに関わるリスク区分G(ガバナンス)リスク概要当社グループは、事業活動を行っている各国及び地域において、環境、商取引、労務、知的財産権、租税、為替、独占禁止法や不正競争防止法等の各種関係法令、投資に関する許認可や輸出入規制の適用を受けており、以下のようなリスクがあります。・新たな環境規制や環境税の導入、法人税率の変動等これらの法令の改変、各種法令での違反判定・競争当局による行政処分、税務当局による更正通知・従業員によるデータ偽装などのコンプライアンス違反・財務報告に係る内部統制の不備・知的財産権、製造物責任、環境、労務等の法令違反に基づく訴訟 など対応全社委員会である倫理・コンプライアンス委員会を中心に、動機・機会・正当化の観点でのリスク抑止、不祥事を起こさせない組織風土づくり、内部通報制度やAIツール活用などを促進し、当社グループ全体の倫理・コンプライアンス活動の深化及びコンプライアンス意識の徹底を図っております。また、当社グループは、内部統制の一層の強化を図り、内部監査の高度化を推進することにより、グループ内部統制の実効性向上に取り組んでおります。

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