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大日精化工業(4116)は何で稼いでいるか — 事業の柱と依存度

化学 素材・化学

事業の概要

  • 多角的な化学製品製造
    大日精化工業は、顔料・着色剤、合成樹脂・特殊コーティング剤、各種インキの3つの主要事業セグメントを展開しています。これにより、自動車、情報電子、建材、繊維、パッケージなど多岐にわたる産業に製品を供給し、特定の市場変動リスクを分散しています。
  • グローバルな事業展開
    日本国内だけでなく、イタリア、タイ、中国、インドネシアなど海外にも製造・販売拠点を持ち、グローバルに事業を展開しています。これにより、地域ごとの需要変動に対応し、収益機会を最大化するビジネスモデルを構築しています。
  • グループ会社との連携
    当社と26の関係会社(うち23社を連結、2社を持分法適用)が一体となって事業を運営しています。製品や原材料の取引をグループ内で行うことで、効率的なサプライチェーンを構築し、安定した事業運営と収益確保を目指しています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
セグメント構成
  • カラー&ファンクショナルプロダクト
    顔料やその二次加工品、繊維・プラスチック用着色剤、樹脂コンパウンド、機能性材料の製造・販売が中心です。売上高673.25億円、営業利益31.34億円と、最も大きな売上と利益を稼ぐ主力事業であり、DAICOLOR ITALY S.R.L.などが製造・販売を担っています。
  • ポリマー&コーティングマテリアル
    合成樹脂や特殊コーティング剤、ウレタン樹脂、天然物由来高分子、紫外線・電子線硬化型コーティング剤の製造・販売を行っています。売上高253.42億円、営業利益31.45億円と、売上規模は中程度ながら、高い利益率を誇る事業で、浮間合成㈱などが主要な役割を担っています。
  • グラフィック&プリンティングマテリアル
    パッケージ用および広告出版用インキを中心に、グラビア・フレキソインキ、オフセットインキなど幅広い種類のインキを製造・販売しています。売上高320.23億円、営業利益7.16億円で、売上は大きいものの、利益率は他のセグメントに比べて低い傾向にあります。P.T.HI-TECH INK INDONESIAなどがこの事業に携わっています。
2025-03 セグメント別業績
セグメント区分売上(億)営業利益(億)営業利益率
ColorAndFunctionalProducts 事業 673 31 4.7%
PolymerAndCoatingMaterials 事業 253 31 12.4%
GraphicAndPrintingMaterials 事業 320 7 2.2%
Otehr 事業 1 0 10.1%
有価証券報告書「事業の内容」の全文を見る(年度切替)
FY2026|812 文字
3【事業の内容】当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、当社(大日精化工業株式会社)及び関係会社24社により構成されております。当社は子会社21社を連結し、関連会社3社のうち2社について持分法を適用しております。当社グループが営んでいる主な事業内容及び当該事業に係る位置づけは、次のとおりであります。 (カラー&ファンクショナル プロダクト)当セグメントでは、顔料・繊維用着色剤、プラスチック用着色剤、樹脂コンパウンド、顔料分散体、機能性材料など、顔料及び顔料の2次加工品を中心に製造・販売を行っており、主として当社及び連結子会社であるDAICOLOR ITALY S.R.L. 、ハイテックケミ㈱、DAINICHI COLOR (THAILAND),LTD.が製造・販売に携わっております。なお、当社と関係会社との間に製品、原材料等の取引が行われております。 (ポリマー&コーティング マテリアル)当セグメントでは、ウレタン樹脂、天然物由来高分子、紫外線・電子線硬化型コーティング剤など、合成樹脂及び特殊コーティング剤を中心に製造・販売を行っており、主として当社及び連結子会社である浮間合成㈱及び大日精化(上海)化工有限公司が製造・販売に携わっております。なお、当社と関係会社との間に製品・原材料等の取引が行われております。 (グラフィック&プリンティング マテリアル)当セグメントでは、各種用途に対応した幅広い種類のグラビア・フレキソインキ、オフセットインキなど、パッケージ用及び広告出版用インキを中心に開発、製造及び販売を行っており、主として当社及び連結子会社であるP.T.HI-TECH INK INDONESIAが製造・販売に携わっております。なお、当社と関係会社との間に製品・原材料等の取引が行われております。[事業系統図]以上述べた事項を事業系統図によって示すと次のとおりであります。2026年3月31日現在

事業の優位性(モート)

事業の質(有価証券報告書から抽出)
数字に出ない事業の性質を、同じ物差しで全銘柄そろえています。FY2025時点の記載が出典です。
価格決定力値上げを通せるか。強いほどインフレ耐性が高い 弱い
原材料及びエネルギー価格の上昇をすぐさま製品価格に反映させるには時間を要すため。
参入障壁新規参入を阻む要因の種類 技術
顔料合成技術、分散加工技術、ウレタン樹脂合成技術、ケミカルリサイクル技術など。
顧客集中度特定顧客への依存度。高いほど失注リスクが大きい 低い(分散)
景気敏感度業績が景気循環にどれだけ振られるか 中程度
設備投資の性質稼いだ現金がどれだけ設備維持に消えるか 混合
規制依存規制は障壁にも足枷にもなる 高い
会社が挙げる主要リスク:需要構造変化への対応 / 原材料調達リスク、原材料及びエネルギー価格の変動リスク / 化学物質管理リスク、品質管理リスク
同じ条件で他の銘柄を探す → 定性スクリーニング(価格決定力・参入障壁・景気敏感度などで絞り込めます)
モート総合 6 / 25 5類型それぞれの強度と、そう判定した根拠
無形資産★☆☆☆☆
根拠:弱いブランド・特許・許認可

特定の機能性色素や樹脂に関する技術的ノウハウは存在するが、特許網の強さやブランド力は限定的。競合他社も類似技術を持つ可能性があり、明確な独占的IPとは言えない。

スイッチングコスト★★☆☆☆
根拠:中程度乗り換えの手間・コスト

顧客の製品開発に深く関与し、カスタマイズされた製品を提供しているため、一定のスイッチング・コストは存在する。しかし、代替材料の出現や顧客のコスト削減圧力により、乗り換えリスクはゼロではない。

ネットワーク効果☆☆☆☆☆
根拠:弱い利用者増が価値を生む

ネットワーク効果を享受するビジネスモデルではない。

コスト優位★☆☆☆☆
根拠:弱い同じ物を安く作れる

長年の製造経験による効率化の努力は見られるものの、化学業界全体として原料価格の変動や規模の経済によるコスト競争力で他社に大きく劣後するほどの優位性は確認できない。

規模の経済★★☆☆☆
根拠:中程度規模が参入障壁になる

特定分野では一定のシェアを持つものの、グローバルな化学メーカーと比較すると規模の経済は限定的。業界全体が多数のプレイヤーで構成されており、寡占化は進んでいない。

  • 幅広い製品と技術力
    顔料、着色剤、樹脂コンパウンド、機能性材料から、ウレタン樹脂、特殊コーティング剤、各種インキまで、多岐にわたる化学製品を製造・販売しています。これにより、顧客の多様なニーズに対応できる総合的な技術力を有しており、幅広い産業分野で事業を展開できる強みがあります。
  • 多様な顧客基盤
    車両、情報・電子、建材、繊維、パッケージなど、非常に幅広い業界の顧客に製品を提供しています。特定の業界に依存しないため、個々の業界の景気変動による影響を相互に補完し、安定した事業運営を可能にする顧客ポートフォリオを構築しています。
  • サステナビリティへの対応力
    脱炭素化、資源循環、生物多様性保全、サーキュラーエコノミーへの対応を経営戦略の柱としています。水性化製品の開発、再生材利用の推進、バイオマス原材料への転換など、環境負荷の低い製品・技術への投資を積極的に行うことで、将来的な市場ニーズの変化に対応し、持続可能な競争優位性を確立しようとしています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)

経営戦略

有価証券報告書「経営方針・対処すべき課題・MD&A」の全文を見る(年度切替)
経営方針・経営戦略
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。(1)企業理念、行動指針、必達当社グループでは、創業者である高橋 義博が1968年に制定した社是<必達>を経営方針の中心に据えて経営に取り組んで参りました。職場の目に付くところに掲示し、社是<必達>に込められた精神、考え方を常に確認すると同時に、従業員への浸透を図ることを行ってきました。社是<必達>の精神は、現在においても何らその価値を失っていないものと考えますが、既存の仕事、製品を軸に、役職員個々人の心構えや行動に重点を置いた内容としているため、近年の社会環境、経済環境が変化していく中で、社内外の人との関連性、新しい技術革新、製品開発への一層の目配り、社会の中における当社との連環という視点で、不十分さを感じるような状況になってきました。そのため、2015年12月開催の当社取締役会において、社是<必達>の考え方に加える形で、新たに<企業理念>、<行動指針>を規定し、経営方針を一層充実したものといたしました。これは、すべての経済原則や経営理論は「人」の行動原理に基づくものであるとの理解に立ち、まずは社内外を問わず全ての「人」に興味を持つべきであるとし、技術革新や商品開発など新しいことへの取り組みが、人や企業の活性化につながるという点を改めて確認し、一方、未来に目を向けると、人も企業も他者との連環(関連)の中で生き抜いていかざるをえないことを再認識した上で、社会に必要とされ、社会の発展に資する姿勢を打ち出していくべきとしたものであります。比較的平易な表現とすることで、若手従業員から経営トップに至るまで、<必達>と合わせて、浸透を図ることを企図したものであります。これらを踏まえ、当社グループは以下の<企業理念>、<行動指針>、<必達>の社是の下、事業活動を行うに当たって人財の付加価値を一層高めることに努め、全てのステークホルダーを尊重し連携を図りながら、地球環境保全などサステナブル社会に対する企業責任を積極的に果たしてまいります。 <企業理念>・人に興味を持とう・新しいことに興味を持とう・未来に興味を持とう <行動指針>人間は面白い。その面白い人間が作っているのが企業であり、また顧客である。全ての経済原則、経営理論は、人の行動原理に基本がある。人に興味を持とう。新しいことはワクワクする。技術革新や商品開発は顧客や市場を開拓すると同時に、人間も活性化する。新しいことに興味を持とう。未来を考えることは楽しい。未来は子供たちのものだ。未来を考えれば、人も企業も自分だけでは生きて行けないことが分かる。顧客の発展が無ければ、当社は富んでも長続きしない。更に、社会に生かされなければ、人も企業も存続し得ない。未来に興味を持とう。 一方、当社には1968年に制定した、社是「必達」が存在します。上記の企業理念と共に、歴史ある社是「必達」を、誇りを持って遵守しています。 <必達>私たちはカラーエイジを担う大日精化の社員として<必達>の社是のもとに誇りを持って仕事をすすめよう1.仕事は必ず目標を立てこれを必達しよう1.正しい製品知識を身につけ製品普及のチャンスを積極的に求めよう1.仕事を通じ製品を通じて会社の信用を更に高めよう1.社会人として常に教養を高め反省を深める機会を持とう1.仕事を通じて社会に貢献し大日精化を最高の企業体としよう(2)経営理念創業者 高橋 義博の「自分の生活が好きな色彩によって包まれたいと思うのが私たちの念願」との遺志を引き継ぎ、世界中の「もっと便利に、もっと安全に、もっと自由に彩りたい」という願いをかなえることを使命として、当社グループは企業理念や社是<必達>のもとに、企業としての持続的成長と価値向上を目指した「CSR・ESG基本方針」を、そしてこれを補完するために近年の社会的課題である地球環境、ガバナンス、人権尊重、情報管理、品質管理、安全衛生、人財育成、健康経営などに関する各種方針を制定し、役職員がこれらを徹底することで、全てのステークホルダーの課題に寄り添い、彩りと特性を持った素材をさまざまな分野に提供し、実現しております。また、2023年10月には社内公募により、新ブランドメッセージ「彩りの、その先へ(今日の未知は未来への道)」を決定し、コア技術である①有機無機合成・顔料処理技術、②分散加工技術、③樹脂合成技術を更に深化させ、「色彩のその先の可能性」を追求して「機能性マテリアル分野のエクセレントカンパニー」を目指しております。 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等当社グループは、2024年6月に公表した2025年3月期を初年度とする3か年中期経営計画「明日への変革 2027」(以下、「本中期経営計画」といいます。)において、前中期経営計画を引き継ぎ、ROE(自己資本利益率)9%、ROA(総資産経常利益率)5%とすることを長期の経営目標として、またその過程として本中期経営計画の最終年度である2027年3月期の目標として、ROE5%以上(2025年5月に4.6%から修正)、ROA4.3%を掲げております。初年度である2025年3月期は、ROE8.4%、ROA4.0%、2年目である2026年3月期は、ROE6.1%、ROA4.2%の結果となりました。これは、2025年3月期においては、埼玉県川口市に所有していた当社旧川口製造事業所跡地の売却に伴う固定資産売却益77億6千1百万円を、2026年3月期においては、政策保有株式の売却により投資有価証券売却益28億1千2百万円をそれぞれ特別利益に計上したことが主要因です。また、コロナ禍後の原材料高騰に対して当初は価格改定に苦戦していましたが、ここ数年で回収が進んだことが、業績面で好転している要因です。 (4)経営環境及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題等当社グループの置かれている経営環境については、以下のとおりと認識しております。 ①お客様の国内外の事業展開に寄り添い、収益性、効率性をご提案するために、当社では国内外の拠点の強みを活かし、国内、海外の一方に偏することなくバランスのよい業務展開をするべきであることが重要な課題であると認識しております。②当社グループの持続的な成長のためには、ESGへの取組みがあらゆる事業活動の基本理念であり、E(環境配慮)、S(社会貢献)の実現のための研究・開発が果たす役割が、特に重要であると認識しております。このため社会全体の持続性、安全性、収益性、効率性、採算性などの側面から十分に検証の上で、前述の「(2)経営理念」に記載の「3つのコア技術」を更に深化させること、新たな技術を取り入れることに、人財と設備、資金を投入していく必要があるものと認識しております。③ステークホルダーの皆様から信頼され常に選ばれる企業であり続けるためには、上記②で述べたように、長期的・持続的な成長とともに、製品や事業活動を通して地球規模の環境や社会問題へ取り組む企業姿勢と、意思決定の透明性、公正性を確保できるガバナンス体制の下で、従業員一人ひとりの思いが企業風土として醸成されることが企業価値の向上においても大きな影響を与えるものと再認識した上で、全社を挙げてE(環境配慮)、S(社会貢献)、G(企業統治)の側面から能動的に活動を促進することが必要と理解しております。また、2025年6月27日に開催いたしました第122期定時株主総会において、株主の皆様のご承認を得て、「監査役会設置会社」から「監査等委員会設置会社」へ移行しております。これは、委員の過半数が社外取締役で構成される監査等委員会が、取締役の業務執行の適法性、妥当性の監査・監督を担うことでより透明性の高い経営を実現し、国内外のステークホルダーの期待により的確に応えうる体制の構築を目指したものであります。④今後さらに、デジタル技術及びデータ分析の活用が当社グループの競争力の源泉のひとつとして重要性を増し、経営目標を達成するための重要な手段になると認識しております。当社は基幹システムを2018年10月に刷新し、さらなる活用のための周辺システムの整備も着々と進めてきておりますが、より高度化していく外部環境からの要請事項に対し、これまで以上に、適時かつ的確に対応していくことが必要であると認識しております。また、データ駆動型ビジネスへ転換し、効率的で確実性の高い戦略、独創性のある製品開発を強力に推進することが不可欠であり、そのためにも有効なデータ、優秀な人財と、柔軟で素早い意思決定が重要であると認識しており、これらへの取り組みを加速させるため、2024年11月にはグループウエアの刷新を行うことで、AIを日々の業務において活用できるようにしております。社内情報の共有化や組織を超えた連携など、DXを支える基盤になることを確信しております。⑤当社グループの掲げる長期目標の達成には、人的資本及び知的財産への投資と活用によるイノベーションの創出が不可欠であると認識し、企業にとって財産である「人財」の育成と活気溢れる企業風土の醸成は重要な経営課題のひとつと考え、従業員のモチベーションとエンゲージメント向上を目指したHR戦略を推し進めます。また別途定める「人財育成方針」「社内環境整備方針」に沿って、企業と人財が互いに高め合っていくビジョンを共有し、持続可能な成長に向けて地道にかつ着実に、相互に磨き上げていくことにより、当社グループの成長と人財の成長との間に好循環を生み出すことができるものと確信しております。本件については、「2.サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本投資・人財育成及び人財の多様性の活用」にて詳細を記載しております。 これらを踏まえ、2024年6月に公表しております本中期経営計画を引き続き重点的に進めております。 a.技術主導による競争優位性の確保当社グループでは、保有する技術を、技術マネジメント手法を用いて再評価し、社会的なニーズ(ESG)への貢献を最優先課題として、オープンイノベーション、セグメント間のシナジー、知財戦略などを組み合わせ、3つのコア技術(1 有機無機合成・顔料処理技術、2 分散加工技術、3 樹脂合成技術)を深化させた技術開発に取り組んでおります。本中期経営計画においても、これらコア技術は重要な基盤として、市場規模・収益性・成長性を評価し、新規発展分野として(a) IT・エレクトロニクス 機能性材料、(b) ライフサイエンス・パーソナルケアの2つを、継続発展分野において環境配慮型製品へのより一層のシフトをテーマとする(c) モビリティ、(d) 環境配慮型パッケージングを開発の中心に据え、人財と設備と資金とを積極的に投入することを行い、技術主導による競争優位性の確保を目的とした体制の構築を進めております。その体制構築の一環として、2025年4月1日より、技術機構の組織を、保有技術ごとの縦割り体制から開発ステージごとの組織体制に刷新し、お客様と対面で開発を進めている事業機構の技術部門を一部取り込んでおります。加えて、従来から取り組んできたオープンイノベーションなどにより技術開発・製品開発力を強化することで、技術主導により事業創出できる体制を構築してきております。これらの取り組みにより、10年後のありたい姿である「機能性マテリアル分野のエクセレントカンパニー」を目指し、製品の差別化、品質向上により社会貢献度を高め、同時に収益性の確保を図ることとしております。本中期経営計画では、技術主導による新規開発製品の売上高を2027年3月期までに2024年3月期比26億円増加させることを目標に掲げて取り組んでおります。新規開発製品が売上に寄与するまでには一定程度の時間が必要となることから、本中期経営計画の2年目を終了した2026年3月末時点では、売上高は12億円の増加となりました。個々の開発テーマの進捗については概ね順調に進んでおります。また、採用内定案件も多数あり、引き続き目標達成に向け新規開発製品の早期売上寄与を目指してまいります。本中期経営計画の2年目を終了した2026年3月末時点における状況は、以下のとおりと認識しております。(a) IT・エレクトロニクス 機能性材料二次電池用部材、導電性部材、熱マネジメント部材、機能性ポリマー、高付加価値顔料・分散体などの製品分野において、電池部材や半導体周辺部材、精密電子機器部材、ディスプレイ用部材などで複数アイテムが実績化及び採用内定であることに加えて、多数の新規テーマを獲得することができました。引き続き複数の大学やメーカーとのオープンイノベーションにより、新たな技術シーズ創出を進めてまいります。これらと並行して完成した技術シーズを積極的に発信し、社会ニーズに対応すべく応用開発を進め、生産設備を整備し、売上高への早期寄与を図ってまいります。(b) ライフサイエンス・パーソナルケア天然物由来化粧品原材料においては、アップサイクル原料を用いた菌糸パルプ分散液の開発を進め、基本処方を確立しユーザーワークを開始しました。また、甲殻アレルゲンフリーのキトサン誘導体に関しては、原材料安定調達の面よりキノコ由来を中止、黒麴菌由来に変更して製品設計を行い、お客様の評価を仰いでおります。生分解性微粒子においては、生産プロセスの見直しとともに市場ニーズの高い高機能性ビーズの開発に注力しております。(c) モビリティ軽量・高強度樹脂コンパウンドにおいては、リサイクル素材の使いこなしに加え、天然物由来フィラーの微分散技術を確立しました。今後は展示会などで外部発信し、積極的に市場開拓を進めてまいります。ウレタン・アクリル・シリコーンポリマーでは、海外の厳しい法規制に対応する製品設計を完了しました。海外での量産体制を整備し、拡販に繋げてまいります。加飾フィルムでは、高分子合成技術と分散加工技術を駆使し、事業機構の技術部門との融合による新たな開発を進めてまいります。(d) 環境配慮型パッケージング水性フレキソインキでは完全水性品の特徴を活かし、海外の市場ニーズにも対応しつつ、新たに水性フレキソラミネート用インキ剤の開発に注力しております。今後も市場ニーズを探りつつ、開発、販売の鋭意強化に努めてまいります。ガスバリアコート材・環境配慮型接着剤では、キーマテリアルのパイロットプラントの稼働を開始し、市場への本格投入に繋げていきます。また、消耗品パッケージングではないインフラ向け高耐久インキで新規採用を得ることができ、新たな展開に踏み出すことができました。 b.事業基盤の強化のための海外事業の拡大当社グループの収益、成長の源泉は、国内・海外双方に存在し、GDP高伸長国での事業展開などバランスよく事業育成をしていく必要があるとの認識の基に事業を展開してまいりました。本中期経営計画では、海外事業の売上高を2027年3月期までに2024年3月期比36億円増加させることを目標に掲げて取り組んでおります。本中期経営計画の2年目を終了した2026年3月末時点では、売上高は2億円の増加(為替影響除く)となりました。東南アジアや中国における日系車、北米では欧米車の販売不振や中国の景気低迷の影響を受け、低調に推移しました。引き続き、「地産地消」の推進と海外拠点の拡充及び新規ビジネスの創出を軸に、積極的な業務の展開に注力してまいります。本中期経営計画の2年目を終了した2026年3月末時点における状況は、以下のとおりと認識しております。(a) カラー&ファンクショナル プロダクト高機能着色剤、機能製品の拡販に注力し、ケーブル用途などでアジアを中心に実績化に繋げることができました。情報電子分野のIJ分散液では、前期から継続して顧客開拓を行った結果、北米等で新規採用を獲得しました。コンパウンドでは、電装部品用途でタイで増設したラインが順調に稼働し販売に寄与しました。しかしながら、コンパウンド全体としては、東南アジアや中国におけるOA機器向けや日系車の販売不振に加え中国の景気低迷の影響を受け、低調に推移しました。今後も、高機能着色剤・機能製品ではアジアを中心とした拡販、情報電子分野では欧米の新規顧客開拓、コンパウンドでは高付加価値案件の獲得に引き続き注力していきます。(b) ポリマー&コーティング マテリアル北米では、車両メーカーの販売不振によりシート用表面処理剤が低調に推移しました。今後の車両メーカーの増産に備えるため、サステナビリティ貢献製品である水性表面処理剤の現地生産移管を計画通り進めると同時に、同製品の拡販に向けて注力していきます。また、中国では、好調に推移していたスポーツアパレル向けの透湿性ウレタン樹脂が欧州の業界自主規制のため減少しました。インドでは、接着剤事業の進展を図ることができました。今後も用途に合わせた商品開発とともに更なる拡販を進めていきます。(c) グラフィック&プリンティング マテリアルインドネシア現地法人では、期前半において海外メーカー参入による失注がありましたが、各種合理化施策の実行や従来から続けてきたタイムリーな製品の技術改良・開発により、期後半からは商権を奪還しました。今後も伸長する市場の中で付加価値を拡大させるため、インドネシア現地法人の隣地の土地取得を行っており、能力増強投資や技術力強化などの対応策を検討しております。また、アジア向けでは環境規制対応製品の販売にも注力していきます。c.サステナブル社会の実現に向けたESG重視の経営推進当社グループでは、サステナブルな社会の実現と中長期的な企業価値向上のため、ESG経営を本中期経営計画の戦略のひとつに掲げております。サプライチェーンパートナーとのあらたな価値の共創を目指して原材料調達段階から製品の廃棄に至るライフサイクル全体において、「(a) サステナビリティ貢献製品開発・拡販」、「(b) 気候変動への取り組み」、「(c) 資源循環促進」、「(d) 生物多様性への取り組み」、「(e) 社会貢献の一層の促進」、「(f) コーポレート・ガバナンスへの一層の取り組み」、「(g) 人的資本投資・人財育成」を推進しております。また、これら重要な経営課題におけるさまざまな外部環境、内部環境の変化に対して、リスクと機会に効率よく対処できるように統合型リスクマネジメント(ERM)を運用しております。本中期経営計画では、「d.HR戦略」と「e.DX推進」を戦略に追加し、10年後のありたい姿である「機能性マテリアル分野のエクセレントカンパニーになる」の実現に向け、当社グループ一丸となって価値共創に邁進してまいります。(a) サステナビリティ貢献製品開発・拡販当社グループでは、環境負荷低減に貢献できる環境配慮型製品に加え、人々の暮らしを豊かにする製品を含めたサステナビリティ貢献製品の拡販により、サステナブル社会の実現を推進しております。本中期経営計画では、サステナビリティ貢献製品の売上高を2027年3月期までに2024年3月期比30億円増加させることを目標に掲げて取り組んでおります。本中期経営計画の2年目を終了した2026年3月末時点では、自動車の内装向けウレタン樹脂表面処理剤や建材向けコーティング剤が低調に推移しましたが、情報電子材関連が好調に推移した結果、サステナビリティ貢献製品の売上高は、2024年3月期比で19億円増となりました。(b) 気候変動への取り組み当社グループでは、気候変動は地球規模で取組むべき喫緊の課題と捉えており、リスクと機会の両面から積極的に課題解決に取り組んでおります。日本政府が掲げる2050年カーボンニュートラルに貢献するために、事業活動に伴い発生する当社グループ全体のCO2排出量の削減について、最新の国際的な目標(※)に沿って2020年3月期を基準年度とし、2027年3月期までに31%削減、2031年3月期までに48%削減する中長期目標を立て、継続的な省エネルギー対策と再生可能エネルギーの導入を進めております。※Intergovernmental Panel on Climate Change(IPCC)の第6次報告の1.5℃シナリオ本中期経営計画の2年目を終了した2026年3月末時点では、国内生産拠点を中心に、再生可能エネルギーの導入、熱利用設備の効率改善、生産工程の高効率化などのCO2排出量削減対策を実施しました。その結果、当社グループ全体のCO2排出量(Scope1&2)は、2026年3月期に2020年3月期比で54%削減となり、中長期目標達成に向けて順調に推移しております(Scope2はGHGプロトコル・マーケット基準にて算定)。また、当社製品を通じて世の中のCO2排出量(Scope3)も削減できるようにTCFDの枠組みに沿って当社グループの気候変動に関するリスクと収益機会を管理し、企業価値向上に貢献してまいります。詳細は「2.サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動への取り組み TCFD提言に沿った情報開示」を参照ください。(c) 資源循環促進(サーキュラーエコノミー)当社グループでは、資源循環型社会への移行を成長の機会と捉え、プラスチック資源のライフサイクルの最適化に注力しております。特に世界的に関心の高まっているプラスチック資源の循環に関して、化石由来資源の枯渇防止と廃棄の際の環境負荷低減といった環境リスクの低減と収益機会の創出を目指し、当社グループでは、原材料のバイオマス化及び廃プラスチックの排出量抑制・リサイクル促進を進めております。当社グループでは、使用済みプラスチックは廃棄物ではなく資源であるという考え方に基づき、廃プラスチックのリサイクル率を前中期経営計画期間中3か年平均値から毎年1ポイント向上させることを本中期経営計画の目標に掲げて全社的に取り組んでおります。本中期経営計画の2年目を終了した2026年3月末時点では、8ポイント改善を達成しており、引き続き原材料のバイオマス化及び廃プラスチックの排出量抑制・リサイクル促進を目指し、生産工程から生じるロスを削減するための工程管理の強化と廃プラスチックの分別強化をグローバルに展開してまいります。(d) 生物多様性への取り組み化学物質を扱う当社グループは、事業活動のみならず製品のライフサイクル全般において生態系に与えるさまざまな影響をリスクと機会の両面から把握し、生態系への負荷を最小限に抑える義務があると認識しております。2024年3月期にはこの考え方に加え、当社技術を活かして「生物多様性の保全と持続可能な利用」に貢献する価値の創出に努めることが重要であると認識し、それまでの「環境負荷低減」というマテリアリティを「生物多様性の保全」に改訂いたしました。この課題解決に向けて、有機溶剤などの使用時に生じる大気汚染や水質汚染等の環境負荷軽減に向けた自らの管理活動と当社グループの製品使用段階で生じる環境負荷軽減に貢献する製品開発の両輪でTNFDの枠組みに沿って推進してまいります。また、当社グループが現在加盟しているCLOMAをはじめとするイニシアティブへの参加や事業所の近隣地域コミュニティーとの協働作業にも積極的に参加し、生物多様性の保全に努めてまいります。詳細は「2.サステナビリティに関する考え方及び取組 (4)生物多様性の保全に関する取り組み及び考え方」を参照ください。(e) 社会貢献の一層の促進お客様とのかかわりにおいては、お客様の信頼と期待に応えられるように適切な化学物質管理(新管理システムの導入、リスクアセスメントの徹底など)、品質保証(ISO9001による全社的なQMS活動実施、内部監査実施)、ビジネスパートナーとの共存・共栄を目指したパートナーシップ構築宣言の社内展開、責任ある原材料調達(CSR調達基準によるサプライヤー調査)、サステナブルな物流業務の展開(輸送ロットアップ、在庫拠点集約など)に取り組んでおります。また、お客様から積極的に選ばれるサプライヤーになるために、お客様からいただくサプライヤー調査には誠実に回答すると同時に自らの取り組みを反省する機会と捉え、お客様との対話の機会には積極的に参加させていただいております。このお客様との対話を通じて、当社グループの取り組みを見直す動きが盛んになり、当社内の制度の認識が深まり、見直しにもつながっております。従業員とのかかわりにおいては、ワークライフバランスの充実、女性、外国人、中途採用者の一層の活躍などの点から、人事制度の充実を図っております。また、サステナブルな成長を実現させるためには従業員の心身の健康維持・増進と多様な人財が働きやすい職場環境・企業風土づくりが重要であるという考えから、 2023年に健康経営宣言を行い、2026年3月も引き続き健康経営優良法人2026(大規模法人部門)に認定されております。健康経営を積極的に推進し、従業員がポテンシャルを最大限発揮することで事業活動を通じて社会に貢献してまいります。地域社会とのかかわりにおいては、生産拠点の近隣に対する安全・安心を最優先に、防災活動に加え、生物多様性の保全の一環として近隣の生態系に一層の配慮を行い、環境負荷の低減と自然環境の保全に努めてまいります。これらの諸施策は着実に、継続的に実施することにより効果を得られるものであるため、今後も注力して対応してまいります。(f) コーポレート・ガバナンスへの一層の取り組み単に法令遵守、ルール遵守に留まるだけでは実質的なガバナンスの向上につながらないとの認識から、コンプライアンスの徹底のために経営層からのメッセージの発信・従業員からのフィードバックを継続的に実施しております。経営層からのトップダウンと実行部門からのボトムアップを活性化させた双方向コミュニケーションを充実させ、経営戦略を社員一人ひとりが「自分ゴト」として捉えて行動できるように社内環境を整備しております。また、2025年6月27日開催の第122期定時株主総会での株主の皆様のご承認により、「監査等委員会設置会社」へ移行したことにより、委員の過半数が社外取締役で構成される監査等委員会が、取締役の業務執行の適法性、妥当性の監査・監督を担っており、より透明性の高い経営を実現することで、国内外のステークホルダーの期待により的確に応えうる体制を運営しております。加えて、2026年1月21日開催の当社取締役会において、取締役会は経営戦略の決定や監督に専念し、執行役員はその戦略を実行する役割を担うことや経営の効率性を向上し、迅速な意思決定を可能にすることを目的とした新執行役員制度の導入を決議しております。さらには、当社が特に重要と考える業務執行分野に関して、責任と権限の範囲を一層明確にし、業務執行を確実に推進することを目的としたチーフ・オフィサー制度の導入を決議しており、これらにより、より一層のコーポレート・ガバナンスの強化を図ってまいります。(g) 人的資本投資・人財育成当社グループでは、新たな価値の創出には、新たな発想が必要であり、それには“人の力”が不可欠と考えております。“人の力”を引き出し、“人を育成する”ことで、人は価値を生み出す企業の財産であるとの認識から、当社グループでは「人材」ではなく「人財」と表現しております。本中期経営計画では、最優先に取り組む施策として、モノづくりメーカーの従業員としての“働き甲斐”、“誇り”、“仲間への貢献意欲”といったエンゲージメント向上を目指した「人事制度改革」を重点戦略のひとつに掲げ、ステークホルダーの皆様と価値共創に努めてまいります。詳細は「d.HR戦略」をご参照ください。 d.HR戦略上記のa.~c.の戦略を推し進めるために、従業員の将来のありたい姿の実現に向けて「イノベーションが湧き上がる活力に満ちた企業風土」を醸成させていくことが不可欠であるとの認識を前提に、モノづくり企業の従業員としてのエンゲージメント向上を目指したHR戦略を推し進めてまいりました。2026年3月期に実施したエンゲージメント調査では、本中期経営計画のエンゲージメントスコア目標値3ポイントアップに対して3.4ポイントアップとなり、本中期経営計画の2年目で目標値を超えることができました。これは、本中期経営計画の諸施策が従業員に浸透したことにより、「会社が変わっていくことに対する期待」として捉えられた結果であると考えます。その中には、2025年4月に導入した新人事制度や、2年間にわたり経営層と従業員との対話の機会を増やしてきたことなどがその要因として挙げられると考えております。今後は新人事制度を更に発展させ、従業員の働きがいとエンゲージメントを更に高めていく段階と捉え、成長を支える研修体系の再構築により従業員のキャリアアップを支援し、「頑張って成果を出した人が報われる」仕組みを充実させることが重要と考え、人事制度を更に深化させてまいります。 e.DX推進上記のa.~c.の戦略を推し進めるために、業務のデジタル化による効率化、データ蓄積・共有の基盤構築を進め、データ駆動型ビジネスへの転換を目指し、効率的で確実性の高い戦略、独創性のある製品開発を重点的に推進します。本中期経営計画の2年目を終了した2026年3月末時点の状況としては、従業員の7割が生成AIを日常的に活用しており、生成AI浸透の元年と言える成果を上げました。今後の施策として、マーケティング分野では、部門横断的に市場ニーズをデータベースとして蓄積し、市場ニーズと当社技術を結び付け新規案件を開拓します。技術開発分野では、使用する原材料や開発情報を横断的にデータベースとして蓄積し、これらを組み合わせ、MI(マテリアルズ・インフォマティクス)により開発期間の短縮を図ります。これらの施策を加速させるために、AIを業務プロセスそのものに組み込み、分析に利用するデータの蓄積を高速化します。生産活動においては、製造工程をリアルタイムに見える化し、生産計画と生産実績を高度に連動させることで、生産活動の効率化を促進していきます。また、必要なデータの蓄積を進め、経営における迅速かつ的確な意思決定を支える強力な基盤として活用していきます。これらの施策を確実にするために、デジタルリテラシー向上やAI活用の研修、データ分析のOJTなども効率的に行うことにより、一層のデジタル人財の基盤強化を図ることといたします。 併せて、本中期経営計画にて掲げている中長期の経営目標を達成するために、2026年5月15日開催の当社取締役会において、成長事業や新規・育成事業などの戦略製品へ更なる設備投資や人的資源の集中的投下が必要であると判断し、全社的な事業構造改革として「事業ポートフォリオの見直し」、「国内における生産・販売及び間接業務の効率化、事業所の再編等に関する施策」を実施することを決議しております。本事業構造改革の具体的な内容につきましては、2026年秋頃の公表を予定しております。
対処すべき課題
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。(1)企業理念、行動指針、必達当社グループでは、創業者である高橋 義博が1968年に制定した社是<必達>を経営方針の中心に据えて経営に取り組んで参りました。職場の目に付くところに掲示し、社是<必達>に込められた精神、考え方を常に確認すると同時に、従業員への浸透を図ることを行ってきました。社是<必達>の精神は、現在においても何らその価値を失っていないものと考えますが、既存の仕事、製品を軸に、役職員個々人の心構えや行動に重点を置いた内容としているため、近年の社会環境、経済環境が変化していく中で、社内外の人との関連性、新しい技術革新、製品開発への一層の目配り、社会の中における当社との連環という視点で、不十分さを感じるような状況になってきました。そのため、2015年12月開催の当社取締役会において、社是<必達>の考え方に加える形で、新たに<企業理念>、<行動指針>を規定し、経営方針を一層充実したものといたしました。これは、すべての経済原則や経営理論は「人」の行動原理に基づくものであるとの理解に立ち、まずは社内外を問わず全ての「人」に興味を持つべきであるとし、技術革新や商品開発など新しいことへの取り組みが、人や企業の活性化につながるという点を改めて確認し、一方、未来に目を向けると、人も企業も他者との連環(関連)の中で生き抜いていかざるをえないことを再認識した上で、社会に必要とされ、社会の発展に資する姿勢を打ち出していくべきとしたものであります。比較的平易な表現とすることで、若手従業員から経営トップに至るまで、<必達>と合わせて、浸透を図ることを企図したものであります。これらを踏まえ、当社グループは以下の<企業理念>、<行動指針>、<必達>の社是の下、事業活動を行うに当たって人財の付加価値を一層高めることに努め、全てのステークホルダーを尊重し連携を図りながら、地球環境保全などサステナブル社会に対する企業責任を積極的に果たしてまいります。 <企業理念>・人に興味を持とう・新しいことに興味を持とう・未来に興味を持とう <行動指針>人間は面白い。その面白い人間が作っているのが企業であり、また顧客である。全ての経済原則、経営理論は、人の行動原理に基本がある。人に興味を持とう。新しいことはワクワクする。技術革新や商品開発は顧客や市場を開拓すると同時に、人間も活性化する。新しいことに興味を持とう。未来を考えることは楽しい。未来は子供たちのものだ。未来を考えれば、人も企業も自分だけでは生きて行けないことが分かる。顧客の発展が無ければ、当社は富んでも長続きしない。更に、社会に生かされなければ、人も企業も存続し得ない。未来に興味を持とう。 一方、当社には1968年に制定した、社是「必達」が存在します。上記の企業理念と共に、歴史ある社是「必達」を、誇りを持って遵守しています。 <必達>私たちはカラーエイジを担う大日精化の社員として<必達>の社是のもとに誇りを持って仕事をすすめよう1.仕事は必ず目標を立てこれを必達しよう1.正しい製品知識を身につけ製品普及のチャンスを積極的に求めよう1.仕事を通じ製品を通じて会社の信用を更に高めよう1.社会人として常に教養を高め反省を深める機会を持とう1.仕事を通じて社会に貢献し大日精化を最高の企業体としよう(2)経営理念創業者 高橋 義博の「自分の生活が好きな色彩によって包まれたいと思うのが私たちの念願」との遺志を引き継ぎ、世界中の「もっと便利に、もっと安全に、もっと自由に彩りたい」という願いをかなえることを使命として、当社グループは企業理念や社是<必達>のもとに、企業としての持続的成長と価値向上を目指した「CSR・ESG基本方針」を、そしてこれを補完するために近年の社会的課題である地球環境、ガバナンス、人権尊重、情報管理、品質管理、安全衛生、人財育成、健康経営などに関する各種方針を制定し、役職員がこれらを徹底することで、全てのステークホルダーの課題に寄り添い、彩りと特性を持った素材をさまざまな分野に提供し、実現しております。また、2023年10月には社内公募により、新ブランドメッセージ「彩りの、その先へ(今日の未知は未来への道)」を決定し、コア技術である①有機無機合成・顔料処理技術、②分散加工技術、③樹脂合成技術を更に深化させ、「色彩のその先の可能性」を追求して「機能性マテリアル分野のエクセレントカンパニー」を目指しております。 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等当社グループは、2024年6月に公表した2025年3月期を初年度とする3か年中期経営計画「明日への変革 2027」(以下、「本中期経営計画」といいます。)において、前中期経営計画を引き継ぎ、ROE(自己資本利益率)9%、ROA(総資産経常利益率)5%とすることを長期の経営目標として、またその過程として本中期経営計画の最終年度である2027年3月期の目標として、ROE5%以上(2025年5月に4.6%から修正)、ROA4.3%を掲げております。初年度である2025年3月期は、ROE8.4%、ROA4.0%、2年目である2026年3月期は、ROE6.1%、ROA4.2%の結果となりました。これは、2025年3月期においては、埼玉県川口市に所有していた当社旧川口製造事業所跡地の売却に伴う固定資産売却益77億6千1百万円を、2026年3月期においては、政策保有株式の売却により投資有価証券売却益28億1千2百万円をそれぞれ特別利益に計上したことが主要因です。また、コロナ禍後の原材料高騰に対して当初は価格改定に苦戦していましたが、ここ数年で回収が進んだことが、業績面で好転している要因です。 (4)経営環境及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題等当社グループの置かれている経営環境については、以下のとおりと認識しております。 ①お客様の国内外の事業展開に寄り添い、収益性、効率性をご提案するために、当社では国内外の拠点の強みを活かし、国内、海外の一方に偏することなくバランスのよい業務展開をするべきであることが重要な課題であると認識しております。②当社グループの持続的な成長のためには、ESGへの取組みがあらゆる事業活動の基本理念であり、E(環境配慮)、S(社会貢献)の実現のための研究・開発が果たす役割が、特に重要であると認識しております。このため社会全体の持続性、安全性、収益性、効率性、採算性などの側面から十分に検証の上で、前述の「(2)経営理念」に記載の「3つのコア技術」を更に深化させること、新たな技術を取り入れることに、人財と設備、資金を投入していく必要があるものと認識しております。③ステークホルダーの皆様から信頼され常に選ばれる企業であり続けるためには、上記②で述べたように、長期的・持続的な成長とともに、製品や事業活動を通して地球規模の環境や社会問題へ取り組む企業姿勢と、意思決定の透明性、公正性を確保できるガバナンス体制の下で、従業員一人ひとりの思いが企業風土として醸成されることが企業価値の向上においても大きな影響を与えるものと再認識した上で、全社を挙げてE(環境配慮)、S(社会貢献)、G(企業統治)の側面から能動的に活動を促進することが必要と理解しております。また、2025年6月27日に開催いたしました第122期定時株主総会において、株主の皆様のご承認を得て、「監査役会設置会社」から「監査等委員会設置会社」へ移行しております。これは、委員の過半数が社外取締役で構成される監査等委員会が、取締役の業務執行の適法性、妥当性の監査・監督を担うことでより透明性の高い経営を実現し、国内外のステークホルダーの期待により的確に応えうる体制の構築を目指したものであります。④今後さらに、デジタル技術及びデータ分析の活用が当社グループの競争力の源泉のひとつとして重要性を増し、経営目標を達成するための重要な手段になると認識しております。当社は基幹システムを2018年10月に刷新し、さらなる活用のための周辺システムの整備も着々と進めてきておりますが、より高度化していく外部環境からの要請事項に対し、これまで以上に、適時かつ的確に対応していくことが必要であると認識しております。また、データ駆動型ビジネスへ転換し、効率的で確実性の高い戦略、独創性のある製品開発を強力に推進することが不可欠であり、そのためにも有効なデータ、優秀な人財と、柔軟で素早い意思決定が重要であると認識しており、これらへの取り組みを加速させるため、2024年11月にはグループウエアの刷新を行うことで、AIを日々の業務において活用できるようにしております。社内情報の共有化や組織を超えた連携など、DXを支える基盤になることを確信しております。⑤当社グループの掲げる長期目標の達成には、人的資本及び知的財産への投資と活用によるイノベーションの創出が不可欠であると認識し、企業にとって財産である「人財」の育成と活気溢れる企業風土の醸成は重要な経営課題のひとつと考え、従業員のモチベーションとエンゲージメント向上を目指したHR戦略を推し進めます。また別途定める「人財育成方針」「社内環境整備方針」に沿って、企業と人財が互いに高め合っていくビジョンを共有し、持続可能な成長に向けて地道にかつ着実に、相互に磨き上げていくことにより、当社グループの成長と人財の成長との間に好循環を生み出すことができるものと確信しております。本件については、「2.サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本投資・人財育成及び人財の多様性の活用」にて詳細を記載しております。 これらを踏まえ、2024年6月に公表しております本中期経営計画を引き続き重点的に進めております。 a.技術主導による競争優位性の確保当社グループでは、保有する技術を、技術マネジメント手法を用いて再評価し、社会的なニーズ(ESG)への貢献を最優先課題として、オープンイノベーション、セグメント間のシナジー、知財戦略などを組み合わせ、3つのコア技術(1 有機無機合成・顔料処理技術、2 分散加工技術、3 樹脂合成技術)を深化させた技術開発に取り組んでおります。本中期経営計画においても、これらコア技術は重要な基盤として、市場規模・収益性・成長性を評価し、新規発展分野として(a) IT・エレクトロニクス 機能性材料、(b) ライフサイエンス・パーソナルケアの2つを、継続発展分野において環境配慮型製品へのより一層のシフトをテーマとする(c) モビリティ、(d) 環境配慮型パッケージングを開発の中心に据え、人財と設備と資金とを積極的に投入することを行い、技術主導による競争優位性の確保を目的とした体制の構築を進めております。その体制構築の一環として、2025年4月1日より、技術機構の組織を、保有技術ごとの縦割り体制から開発ステージごとの組織体制に刷新し、お客様と対面で開発を進めている事業機構の技術部門を一部取り込んでおります。加えて、従来から取り組んできたオープンイノベーションなどにより技術開発・製品開発力を強化することで、技術主導により事業創出できる体制を構築してきております。これらの取り組みにより、10年後のありたい姿である「機能性マテリアル分野のエクセレントカンパニー」を目指し、製品の差別化、品質向上により社会貢献度を高め、同時に収益性の確保を図ることとしております。本中期経営計画では、技術主導による新規開発製品の売上高を2027年3月期までに2024年3月期比26億円増加させることを目標に掲げて取り組んでおります。新規開発製品が売上に寄与するまでには一定程度の時間が必要となることから、本中期経営計画の2年目を終了した2026年3月末時点では、売上高は12億円の増加となりました。個々の開発テーマの進捗については概ね順調に進んでおります。また、採用内定案件も多数あり、引き続き目標達成に向け新規開発製品の早期売上寄与を目指してまいります。本中期経営計画の2年目を終了した2026年3月末時点における状況は、以下のとおりと認識しております。(a) IT・エレクトロニクス 機能性材料二次電池用部材、導電性部材、熱マネジメント部材、機能性ポリマー、高付加価値顔料・分散体などの製品分野において、電池部材や半導体周辺部材、精密電子機器部材、ディスプレイ用部材などで複数アイテムが実績化及び採用内定であることに加えて、多数の新規テーマを獲得することができました。引き続き複数の大学やメーカーとのオープンイノベーションにより、新たな技術シーズ創出を進めてまいります。これらと並行して完成した技術シーズを積極的に発信し、社会ニーズに対応すべく応用開発を進め、生産設備を整備し、売上高への早期寄与を図ってまいります。(b) ライフサイエンス・パーソナルケア天然物由来化粧品原材料においては、アップサイクル原料を用いた菌糸パルプ分散液の開発を進め、基本処方を確立しユーザーワークを開始しました。また、甲殻アレルゲンフリーのキトサン誘導体に関しては、原材料安定調達の面よりキノコ由来を中止、黒麴菌由来に変更して製品設計を行い、お客様の評価を仰いでおります。生分解性微粒子においては、生産プロセスの見直しとともに市場ニーズの高い高機能性ビーズの開発に注力しております。(c) モビリティ軽量・高強度樹脂コンパウンドにおいては、リサイクル素材の使いこなしに加え、天然物由来フィラーの微分散技術を確立しました。今後は展示会などで外部発信し、積極的に市場開拓を進めてまいります。ウレタン・アクリル・シリコーンポリマーでは、海外の厳しい法規制に対応する製品設計を完了しました。海外での量産体制を整備し、拡販に繋げてまいります。加飾フィルムでは、高分子合成技術と分散加工技術を駆使し、事業機構の技術部門との融合による新たな開発を進めてまいります。(d) 環境配慮型パッケージング水性フレキソインキでは完全水性品の特徴を活かし、海外の市場ニーズにも対応しつつ、新たに水性フレキソラミネート用インキ剤の開発に注力しております。今後も市場ニーズを探りつつ、開発、販売の鋭意強化に努めてまいります。ガスバリアコート材・環境配慮型接着剤では、キーマテリアルのパイロットプラントの稼働を開始し、市場への本格投入に繋げていきます。また、消耗品パッケージングではないインフラ向け高耐久インキで新規採用を得ることができ、新たな展開に踏み出すことができました。 b.事業基盤の強化のための海外事業の拡大当社グループの収益、成長の源泉は、国内・海外双方に存在し、GDP高伸長国での事業展開などバランスよく事業育成をしていく必要があるとの認識の基に事業を展開してまいりました。本中期経営計画では、海外事業の売上高を2027年3月期までに2024年3月期比36億円増加させることを目標に掲げて取り組んでおります。本中期経営計画の2年目を終了した2026年3月末時点では、売上高は2億円の増加(為替影響除く)となりました。東南アジアや中国における日系車、北米では欧米車の販売不振や中国の景気低迷の影響を受け、低調に推移しました。引き続き、「地産地消」の推進と海外拠点の拡充及び新規ビジネスの創出を軸に、積極的な業務の展開に注力してまいります。本中期経営計画の2年目を終了した2026年3月末時点における状況は、以下のとおりと認識しております。(a) カラー&ファンクショナル プロダクト高機能着色剤、機能製品の拡販に注力し、ケーブル用途などでアジアを中心に実績化に繋げることができました。情報電子分野のIJ分散液では、前期から継続して顧客開拓を行った結果、北米等で新規採用を獲得しました。コンパウンドでは、電装部品用途でタイで増設したラインが順調に稼働し販売に寄与しました。しかしながら、コンパウンド全体としては、東南アジアや中国におけるOA機器向けや日系車の販売不振に加え中国の景気低迷の影響を受け、低調に推移しました。今後も、高機能着色剤・機能製品ではアジアを中心とした拡販、情報電子分野では欧米の新規顧客開拓、コンパウンドでは高付加価値案件の獲得に引き続き注力していきます。(b) ポリマー&コーティング マテリアル北米では、車両メーカーの販売不振によりシート用表面処理剤が低調に推移しました。今後の車両メーカーの増産に備えるため、サステナビリティ貢献製品である水性表面処理剤の現地生産移管を計画通り進めると同時に、同製品の拡販に向けて注力していきます。また、中国では、好調に推移していたスポーツアパレル向けの透湿性ウレタン樹脂が欧州の業界自主規制のため減少しました。インドでは、接着剤事業の進展を図ることができました。今後も用途に合わせた商品開発とともに更なる拡販を進めていきます。(c) グラフィック&プリンティング マテリアルインドネシア現地法人では、期前半において海外メーカー参入による失注がありましたが、各種合理化施策の実行や従来から続けてきたタイムリーな製品の技術改良・開発により、期後半からは商権を奪還しました。今後も伸長する市場の中で付加価値を拡大させるため、インドネシア現地法人の隣地の土地取得を行っており、能力増強投資や技術力強化などの対応策を検討しております。また、アジア向けでは環境規制対応製品の販売にも注力していきます。c.サステナブル社会の実現に向けたESG重視の経営推進当社グループでは、サステナブルな社会の実現と中長期的な企業価値向上のため、ESG経営を本中期経営計画の戦略のひとつに掲げております。サプライチェーンパートナーとのあらたな価値の共創を目指して原材料調達段階から製品の廃棄に至るライフサイクル全体において、「(a) サステナビリティ貢献製品開発・拡販」、「(b) 気候変動への取り組み」、「(c) 資源循環促進」、「(d) 生物多様性への取り組み」、「(e) 社会貢献の一層の促進」、「(f) コーポレート・ガバナンスへの一層の取り組み」、「(g) 人的資本投資・人財育成」を推進しております。また、これら重要な経営課題におけるさまざまな外部環境、内部環境の変化に対して、リスクと機会に効率よく対処できるように統合型リスクマネジメント(ERM)を運用しております。本中期経営計画では、「d.HR戦略」と「e.DX推進」を戦略に追加し、10年後のありたい姿である「機能性マテリアル分野のエクセレントカンパニーになる」の実現に向け、当社グループ一丸となって価値共創に邁進してまいります。(a) サステナビリティ貢献製品開発・拡販当社グループでは、環境負荷低減に貢献できる環境配慮型製品に加え、人々の暮らしを豊かにする製品を含めたサステナビリティ貢献製品の拡販により、サステナブル社会の実現を推進しております。本中期経営計画では、サステナビリティ貢献製品の売上高を2027年3月期までに2024年3月期比30億円増加させることを目標に掲げて取り組んでおります。本中期経営計画の2年目を終了した2026年3月末時点では、自動車の内装向けウレタン樹脂表面処理剤や建材向けコーティング剤が低調に推移しましたが、情報電子材関連が好調に推移した結果、サステナビリティ貢献製品の売上高は、2024年3月期比で19億円増となりました。(b) 気候変動への取り組み当社グループでは、気候変動は地球規模で取組むべき喫緊の課題と捉えており、リスクと機会の両面から積極的に課題解決に取り組んでおります。日本政府が掲げる2050年カーボンニュートラルに貢献するために、事業活動に伴い発生する当社グループ全体のCO2排出量の削減について、最新の国際的な目標(※)に沿って2020年3月期を基準年度とし、2027年3月期までに31%削減、2031年3月期までに48%削減する中長期目標を立て、継続的な省エネルギー対策と再生可能エネルギーの導入を進めております。※Intergovernmental Panel on Climate Change(IPCC)の第6次報告の1.5℃シナリオ本中期経営計画の2年目を終了した2026年3月末時点では、国内生産拠点を中心に、再生可能エネルギーの導入、熱利用設備の効率改善、生産工程の高効率化などのCO2排出量削減対策を実施しました。その結果、当社グループ全体のCO2排出量(Scope1&2)は、2026年3月期に2020年3月期比で54%削減となり、中長期目標達成に向けて順調に推移しております(Scope2はGHGプロトコル・マーケット基準にて算定)。また、当社製品を通じて世の中のCO2排出量(Scope3)も削減できるようにTCFDの枠組みに沿って当社グループの気候変動に関するリスクと収益機会を管理し、企業価値向上に貢献してまいります。詳細は「2.サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動への取り組み TCFD提言に沿った情報開示」を参照ください。(c) 資源循環促進(サーキュラーエコノミー)当社グループでは、資源循環型社会への移行を成長の機会と捉え、プラスチック資源のライフサイクルの最適化に注力しております。特に世界的に関心の高まっているプラスチック資源の循環に関して、化石由来資源の枯渇防止と廃棄の際の環境負荷低減といった環境リスクの低減と収益機会の創出を目指し、当社グループでは、原材料のバイオマス化及び廃プラスチックの排出量抑制・リサイクル促進を進めております。当社グループでは、使用済みプラスチックは廃棄物ではなく資源であるという考え方に基づき、廃プラスチックのリサイクル率を前中期経営計画期間中3か年平均値から毎年1ポイント向上させることを本中期経営計画の目標に掲げて全社的に取り組んでおります。本中期経営計画の2年目を終了した2026年3月末時点では、8ポイント改善を達成しており、引き続き原材料のバイオマス化及び廃プラスチックの排出量抑制・リサイクル促進を目指し、生産工程から生じるロスを削減するための工程管理の強化と廃プラスチックの分別強化をグローバルに展開してまいります。(d) 生物多様性への取り組み化学物質を扱う当社グループは、事業活動のみならず製品のライフサイクル全般において生態系に与えるさまざまな影響をリスクと機会の両面から把握し、生態系への負荷を最小限に抑える義務があると認識しております。2024年3月期にはこの考え方に加え、当社技術を活かして「生物多様性の保全と持続可能な利用」に貢献する価値の創出に努めることが重要であると認識し、それまでの「環境負荷低減」というマテリアリティを「生物多様性の保全」に改訂いたしました。この課題解決に向けて、有機溶剤などの使用時に生じる大気汚染や水質汚染等の環境負荷軽減に向けた自らの管理活動と当社グループの製品使用段階で生じる環境負荷軽減に貢献する製品開発の両輪でTNFDの枠組みに沿って推進してまいります。また、当社グループが現在加盟しているCLOMAをはじめとするイニシアティブへの参加や事業所の近隣地域コミュニティーとの協働作業にも積極的に参加し、生物多様性の保全に努めてまいります。詳細は「2.サステナビリティに関する考え方及び取組 (4)生物多様性の保全に関する取り組み及び考え方」を参照ください。(e) 社会貢献の一層の促進お客様とのかかわりにおいては、お客様の信頼と期待に応えられるように適切な化学物質管理(新管理システムの導入、リスクアセスメントの徹底など)、品質保証(ISO9001による全社的なQMS活動実施、内部監査実施)、ビジネスパートナーとの共存・共栄を目指したパートナーシップ構築宣言の社内展開、責任ある原材料調達(CSR調達基準によるサプライヤー調査)、サステナブルな物流業務の展開(輸送ロットアップ、在庫拠点集約など)に取り組んでおります。また、お客様から積極的に選ばれるサプライヤーになるために、お客様からいただくサプライヤー調査には誠実に回答すると同時に自らの取り組みを反省する機会と捉え、お客様との対話の機会には積極的に参加させていただいております。このお客様との対話を通じて、当社グループの取り組みを見直す動きが盛んになり、当社内の制度の認識が深まり、見直しにもつながっております。従業員とのかかわりにおいては、ワークライフバランスの充実、女性、外国人、中途採用者の一層の活躍などの点から、人事制度の充実を図っております。また、サステナブルな成長を実現させるためには従業員の心身の健康維持・増進と多様な人財が働きやすい職場環境・企業風土づくりが重要であるという考えから、 2023年に健康経営宣言を行い、2026年3月も引き続き健康経営優良法人2026(大規模法人部門)に認定されております。健康経営を積極的に推進し、従業員がポテンシャルを最大限発揮することで事業活動を通じて社会に貢献してまいります。地域社会とのかかわりにおいては、生産拠点の近隣に対する安全・安心を最優先に、防災活動に加え、生物多様性の保全の一環として近隣の生態系に一層の配慮を行い、環境負荷の低減と自然環境の保全に努めてまいります。これらの諸施策は着実に、継続的に実施することにより効果を得られるものであるため、今後も注力して対応してまいります。(f) コーポレート・ガバナンスへの一層の取り組み単に法令遵守、ルール遵守に留まるだけでは実質的なガバナンスの向上につながらないとの認識から、コンプライアンスの徹底のために経営層からのメッセージの発信・従業員からのフィードバックを継続的に実施しております。経営層からのトップダウンと実行部門からのボトムアップを活性化させた双方向コミュニケーションを充実させ、経営戦略を社員一人ひとりが「自分ゴト」として捉えて行動できるように社内環境を整備しております。また、2025年6月27日開催の第122期定時株主総会での株主の皆様のご承認により、「監査等委員会設置会社」へ移行したことにより、委員の過半数が社外取締役で構成される監査等委員会が、取締役の業務執行の適法性、妥当性の監査・監督を担っており、より透明性の高い経営を実現することで、国内外のステークホルダーの期待により的確に応えうる体制を運営しております。加えて、2026年1月21日開催の当社取締役会において、取締役会は経営戦略の決定や監督に専念し、執行役員はその戦略を実行する役割を担うことや経営の効率性を向上し、迅速な意思決定を可能にすることを目的とした新執行役員制度の導入を決議しております。さらには、当社が特に重要と考える業務執行分野に関して、責任と権限の範囲を一層明確にし、業務執行を確実に推進することを目的としたチーフ・オフィサー制度の導入を決議しており、これらにより、より一層のコーポレート・ガバナンスの強化を図ってまいります。(g) 人的資本投資・人財育成当社グループでは、新たな価値の創出には、新たな発想が必要であり、それには“人の力”が不可欠と考えております。“人の力”を引き出し、“人を育成する”ことで、人は価値を生み出す企業の財産であるとの認識から、当社グループでは「人材」ではなく「人財」と表現しております。本中期経営計画では、最優先に取り組む施策として、モノづくりメーカーの従業員としての“働き甲斐”、“誇り”、“仲間への貢献意欲”といったエンゲージメント向上を目指した「人事制度改革」を重点戦略のひとつに掲げ、ステークホルダーの皆様と価値共創に努めてまいります。詳細は「d.HR戦略」をご参照ください。 d.HR戦略上記のa.~c.の戦略を推し進めるために、従業員の将来のありたい姿の実現に向けて「イノベーションが湧き上がる活力に満ちた企業風土」を醸成させていくことが不可欠であるとの認識を前提に、モノづくり企業の従業員としてのエンゲージメント向上を目指したHR戦略を推し進めてまいりました。2026年3月期に実施したエンゲージメント調査では、本中期経営計画のエンゲージメントスコア目標値3ポイントアップに対して3.4ポイントアップとなり、本中期経営計画の2年目で目標値を超えることができました。これは、本中期経営計画の諸施策が従業員に浸透したことにより、「会社が変わっていくことに対する期待」として捉えられた結果であると考えます。その中には、2025年4月に導入した新人事制度や、2年間にわたり経営層と従業員との対話の機会を増やしてきたことなどがその要因として挙げられると考えております。今後は新人事制度を更に発展させ、従業員の働きがいとエンゲージメントを更に高めていく段階と捉え、成長を支える研修体系の再構築により従業員のキャリアアップを支援し、「頑張って成果を出した人が報われる」仕組みを充実させることが重要と考え、人事制度を更に深化させてまいります。 e.DX推進上記のa.~c.の戦略を推し進めるために、業務のデジタル化による効率化、データ蓄積・共有の基盤構築を進め、データ駆動型ビジネスへの転換を目指し、効率的で確実性の高い戦略、独創性のある製品開発を重点的に推進します。本中期経営計画の2年目を終了した2026年3月末時点の状況としては、従業員の7割が生成AIを日常的に活用しており、生成AI浸透の元年と言える成果を上げました。今後の施策として、マーケティング分野では、部門横断的に市場ニーズをデータベースとして蓄積し、市場ニーズと当社技術を結び付け新規案件を開拓します。技術開発分野では、使用する原材料や開発情報を横断的にデータベースとして蓄積し、これらを組み合わせ、MI(マテリアルズ・インフォマティクス)により開発期間の短縮を図ります。これらの施策を加速させるために、AIを業務プロセスそのものに組み込み、分析に利用するデータの蓄積を高速化します。生産活動においては、製造工程をリアルタイムに見える化し、生産計画と生産実績を高度に連動させることで、生産活動の効率化を促進していきます。また、必要なデータの蓄積を進め、経営における迅速かつ的確な意思決定を支える強力な基盤として活用していきます。これらの施策を確実にするために、デジタルリテラシー向上やAI活用の研修、データ分析のOJTなども効率的に行うことにより、一層のデジタル人財の基盤強化を図ることといたします。 併せて、本中期経営計画にて掲げている中長期の経営目標を達成するために、2026年5月15日開催の当社取締役会において、成長事業や新規・育成事業などの戦略製品へ更なる設備投資や人的資源の集中的投下が必要であると判断し、全社的な事業構造改革として「事業ポートフォリオの見直し」、「国内における生産・販売及び間接業務の効率化、事業所の再編等に関する施策」を実施することを決議しております。本事業構造改革の具体的な内容につきましては、2026年秋頃の公表を予定しております。
MD&A(経営者による分析)
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。 (1)経営成績等の状況の概要①経営成績当連結会計年度の当社グループの主要な販売先動向は以下のとおりとなりました。輸送機器業界国内市場では、自動車メーカー減産影響が解消されコンパウンド・着色剤が堅調に推移した一方、ウレタン樹脂は採用車種の販売不振により低迷海外市場では、中国・北米向けが低調だった一方、タイ、インド、台湾の現地法人が好調に推移情報電子業界液晶ディスプレイ向け製品は、顔料が新製品の販売増加により好調に推移コーティング剤は堅調に推移オフィス事務機器及び商業印刷向けの顔料・着色剤は好調に推移包装・パッケージ業界グラビアインキは、インフレによる買い控えの影響を一部受けたものの、食品軟包装及び飲料ラベル用途ともに前年並みに推移海外では、インドネシア現地法人が第2四半期に競争激化等により低迷も、第3四半期以降は回復に転じ、好調に推移建材業界新築住宅向けの着色剤及びコーティング剤は、住宅着工件数が減少する中、リフォーム需要が下支え以上の結果、売上高は1,242億9千4百万円(前年同期比0.4%減)と減収になりましたが、収益性改善への取り組み等により、営業利益は76億1千万円(同8.6%増)、経常利益は84億9千万円(同9.4%増)といずれも増益を確保いたしました。一方、親会社株主に帰属する当期純利益は、81億1百万円(同21.3%減)と減益になりました。政策保有株式の売却を計画的に進め、投資有価証券売却益28億1千2百万円を特別利益に計上したものの、前連結会計年度に旧川口製造事業所跡地等の固定資産売却益77億6千1百万円を計上していた反動により、前年実績を下回りました。次に報告セグメントの業績についてご報告いたします。 (カラー&ファンクショナル プロダクト)当セグメントでは、顔料・繊維用着色剤、プラスチック用着色剤、樹脂コンパウンド、顔料分散体、機能性材料など、顔料及び顔料の2次加工品を中心に製造・販売を行っています。情報電子業界向けの顔料及び分散体は、液晶ディスプレイ及びオフィス事務機器用途が好調に推移しました。輸送機器業界向けのコンパウンド・着色剤については、国内で自動車生産の回復による復調が見られたほか、海外において、中国・北米向けは低調でしたが、タイ、インド、台湾の現地法人を中心に好調に推移しました。これらの結果、当セグメントの売上高は690億5千万円(前年同期比2.6%増)、営業利益は41億4千万円(同32.1%増)と増収増益になりました。 (ポリマー&コーティング マテリアル)当セグメントでは、ウレタン樹脂、天然物由来高分子、紫外線・電子線硬化型コーティング剤など、合成樹脂及び特殊コーティング剤を中心に製造・販売を行っています。ウレタン樹脂は、情報・電子業界の半導体、電子機器用途及び産業資材業界の感熱記録用コーティング剤が堅調だった一方で、輸送機器業界向けは、主要採用車種の販売不振が響き、国内外とも低調となりました。また、情報電子業界向けの液晶ディスプレイ用コーティング剤については堅調に推移したものの、セグメント全体を補うには至りませんでした。これらの結果、当セグメントの売上高は241億3千2百万円(同4.8%減)、営業利益は25億8千7百万円(同17.7%減)と減収減益になりました。(グラフィック&プリンティング マテリアル)当セグメントでは、各種用途に対応した幅広い種類のグラビア・フレキソインキ、オフセットインキなど、パッケージ用及び広告出版用インキを中心に開発、製造及び販売を行っています。国内のグラビアインキは、インフレによる買い控えの影響を一部受けたものの、軟包装及び飲料ラベル向けを中心に、底堅く推移しました。一方、オフセットインキは低調に推移しました。海外では、インドネシア現地法人が第2四半期に競争激化等により低迷しましたが、第3四半期以降は回復に転じ、好調に推移しました。これらの結果、当セグメントの売上高は310億6千5百万円(同3.0%減)と減収になりましたが、営業利益は8億5千3百万円(同19.1%増)と増益になりました。 ②財政状態(資産)当連結会計年度末における資産合計は2,054億4千4百万円となり、前連結会計年度末と比べ86億6千万円増加しました。これは主に、退職給付債務の減少等により「退職給付に係る資産」が増加したこと並びに政策保有株式の売却を進めた一方で、保有株式の時価上昇により「投資有価証券」が増加したこと等によるものであります。 (負債)当連結会計年度末における負債合計は642億3千3百万円となり、前連結会計年度末と比べ20億5千2百万円減少しました。これは主に、「繰延税金負債」が増加した一方で、「短期借入金」や「長期借入金」等の有利子負債、並びに「退職給付に係る負債」が減少したこと等によるものであります。 (純資産)当連結会計年度末における純資産合計は1,412億1千万円となり、前連結会計年度末と比べ107億1千3百万円増加しました。これは主に、「自己株式」の取得により減少要因があった一方で、「利益剰余金」並びに「退職給付に係る調整累計額」や「その他有価証券評価差額金」等のその他の包括利益累計額が増加したこと等によるものであります。 ③キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ2億9千4百万円増加し、219億9千万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりとなっております。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動の結果得られた資金は、90億4千5百万円(前年同期比117.2%増)となりました。これは主に、運転資本の増加による資金の流出があったものの、「税金等調整前当期純利益」の計上及び非資金費用である「減価償却費」の計上等により、資金が増加したことによるものであります。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動の結果使用した資金は、20億6千2百万円(前年同期は14億1千5百万円の収入)となりました。これは主に、「投資有価証券の売却による収入」があった一方で、「有形固定資産の取得による支出」により資金が減少したこと等によるものであります。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動の結果使用した資金は、67億4千万円(前年同期比3.7%減)となりました。これは主に、借入金の返済や「配当金の支払額」に加え、「自己株式の取得による支出」などにより資金が減少したことによるものであります。④生産、受注及び販売の実績a.生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。(単位:t)セグメントの名称当連結会計年度(自2025年4月1日至2026年3月31日)前年同期比(%)カラー&ファンクショナルプロダクト189,963△2.0ポリマー&コーティングマテリアル22,232△10.5グラフィック&プリンティングマテリアル33,005△3.7報告セグメント計245,200△3.1その他--合計245,200△3.1b.受注実績当社グループは過去の販売実績と将来の予想に基づいて見込生産を行っており、受注生産は行っておりません。c.販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。(単位:百万円)セグメントの名称当連結会計年度(自2025年4月1日至2026年3月31日)前年同期比(%)カラー&ファンクショナルプロダクト69,0502.6ポリマー&コーティングマテリアル24,132△4.8グラフィック&プリンティングマテリアル31,065△3.0報告セグメント計124,248△0.4その他45△34.0合計124,294△0.4(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。 ①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討等a.経営成績の分析当連結会計年度の当社グループの経営成績に対して特に重要な影響を与えた事象は、以下のとおりと考えております。当連結会計年度の当社グループを取り巻く環境は、前半は米国の関税政策への対応、後半は中南米や中東情勢の悪化に伴う地政学リスクの顕在化により、先行き不透明な状況で推移しました。日本経済は、こうした影響に加え日中関係の悪化等に見舞われたものの、堅調な個人消費に支えられ、内需主導による緩やかな回復基調が続きました。このような環境下、海外子会社においては、中国華南地区、アメリカ現地法人を除き前連結会計年度の好調が継続しました。業界別では、国内の車両向けは減産影響が無くなりコンパウンド・着色剤は回復したものの、ウレタン樹脂は国内外ともに中高級車を中心とした採用車種の不振により低調に推移しました。海外は、インド・台湾の各現地法人が好調に推移しました。液晶ディスプレイ向けは、カラーフィルター用顔料が新製品への採用により好調に推移、コーティング剤は年間を通して堅調に推移しました。包装パッケージ用のグラビアインキ・フレキソインキは、国内はインフレによる買い控えが見られたものの食品包装用途、飲料ラベル用途が堅調に推移し前年並みとなった一方で、海外はインドネシア現地法人が競争激化により一時的に商権を喪失したことから減収となりました。こうした社会的、経済的状況のもとで、売上高は、販売価格の見直しを進めたものの、販売数量が伸び悩んだことにより1,242億9千4百万円(前年同期比0.4%減)と減収になりました。利益面では、高付加価値製品が好調であったこと及びコスト上昇分の価格転嫁を進めたことにより営業利益は76億1千万円(前年同期比8.6%増)、経常利益は84億9千万円(前年同期比9.4%増)となりました。一方、親会社株主に帰属する当期純利益は、81億1百万円(同21.3%減)と減益になりました。政策保有株式の売却を計画的に進め、投資有価証券売却益28億1千2百万円を特別利益に計上したものの、前連結会計年度に旧川口製造事業所跡地等の固定資産売却益77億6千1百万円を計上していた反動により、前年実績を下回りました。足元では、中東を始めとした地政学リスク、長短金利上昇、資源価格及び各種コスト増によるインフレ等により、先行き不透明な状況が続く事が予想されます。当社グループでは「3.事業等のリスク」で記載したとおり、引き続き各リスクに対応したリスク回避・削減策を積極的に推進していくことといたします。 各報告セグメントの概況は以下のとおりであります。なお報告セグメント毎の実績は上記「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績」に、生産実績・受注実績・販売実績は、同「④生産、受注及び販売の実績」にて、それぞれ記載しております。 (カラー&ファンクショナル プロダクト)当セグメントでは、顔料・繊維用着色剤、プラスチック用着色剤、樹脂コンパウンド、顔料分散体、機能性材料など、顔料及び顔料の2次加工品を中心に製造・販売を行っています。情報電子業界向けや輸送機器業界向けの戦略製品は好調に推移しました。情報・電子業界向けは、インクジェット用顔料・分散液は、テキスタイル向けの拡大と既存の商業印刷向けが回復して伸長、カラーフィルター用顔料は、パネル業界の堅調な動きに加えて、新規案件の獲得が大きく寄与し好調に推移しました。機能性材料は、半導体向け塗料が回復するとともに、半導体関連部材向けにカーボンナノチューブ分散体の新規採用が進みました。輸送機器業界向けの、自動車用コンパウンド・着色剤は、自動車メーカーの減産影響が解消され、HEVを中心とした需要の高まりを受けて国内外で好調に推移しました。海外は、タイ・インド・台湾の現地法人が好調に推移しました。 (ポリマー&コーティング マテリアル)当セグメントでは、ウレタン樹脂、天然物由来高分子、紫外線・電子線硬化型コーティング剤など、合成樹脂及び特殊コーティング剤を中心に製造・販売を行っています。情報・電子業界向けは好調に推移しましたが、輸送機器向けの低調により、セグメント全体では低調に推移しました。輸送機器業界向けは、高耐久性ウレタン樹脂は、採用車種の販売不振により低調もアパレル向けは堅調に推移しました。環境対応型ウレタン樹脂は、中国向けが伸長も採用車種の販売不振により水性表面処理剤が低調に推移しました。情報・電子業界向けは、耐熱性高機能樹脂が高機能化の進むスマートフォン向けが好調に推移し、コーティング剤は、液晶パネル向け、半導体向けが堅調に推移しました。また、CO2を原料とするHPU(ヒドロキシポリウレタン)のパイロットプラントの稼働を開始しました。坂東製造事業所では、コーティング剤の開発技術を製品化するプロセス開発拠点として「坂東プロセスラボ」の投資に着手しました。(グラフィック&プリンティング マテリアル)当セグメントでは、各種用途に対応した幅広い種類のグラビア・フレキソインキ、オフセットインキなど、パッケージ用及び広告出版用インキを中心に開発、製造及び販売を行っています。包装業界向けは、物価高による買い控えの影響が見られたものの、猛暑やインバウンド拡大もありラベル向けや水性フレキソインキは堅調に推移、海外は、インドネシア現地法人が期中に一時的に商権を失ったものの、技術フォロー等により奪還しました。情報・電子業界向けは、中国向けのスマートフォン特需が一服し低調に推移しました。なお、需要減少の流れを踏まえた合理化施策を進めているオフセットインキは、引き続き低調に推移しました。 b.財政状態の分析当連結会計年度末における総資産は2,054億4千4百万円(前連結会計年度末比86億6千万円増加)、負債計は642億3千3百万円(前連結会計年度末比20億5千2百万円減少)、純資産計は1,412億1千万円(前連結会計年度末比107億1千3百万円増加)となりました。資産合計は、運転資本(受取手形及び売掛金、棚卸資産、有形・無形固定資産から支払手形及び買掛金を差し引いた金額)は、前連結会計年度末から大きな変動はありませんでしたが、株価の上昇により、保有株式や企業年金基金の運用が好調に推移し、投資有価証券や退職給付に係る資産が大きく増加しました。負債及び純資産の部は、資産の部の増加に対応して、その他有価証券評価差額金や退職給付に係る調整累計額の包括利益や利益剰余金が大きく増加することとなりました。 (資産)「現金及び預金」は、234億3千6百万円(前連結会計年度末比8億1千4百万円減少)となりました。当社及び主要な国内子会社の計5社においては、効率的な資金運用を目的として、2024年3月にキャッシュマネジメントシステム(CMS)を導入し、日次で資金残高を把握、過不足がある場合には国内グループ会社間で貸付・借入を行う体制となりました。この結果、国内の資金残高は、月商の0.5ヶ月程度を目途に維持しております。海外会社においては、「地産地消」が主であり、取り扱う通貨の種類が多岐にわたることから、現時点においては、各社で月商2か月程度の残高を目指しております。売掛金・受取手形などの「売上債権」、原材料・製品等の「棚卸資産」及び仕入・電子記録債務などの「仕入債務」の運転資本については、事業運営の主体である各事業部ごとに回転率などで管理しております。「売上債権」については、成長投資等の資金需要に応じて流動化等の手法を検討しております。有形固定資産及び無形固定資産の合計は、510億4千万円(前連結会計年度末比8億4千6百万円増加)となりました。設備を59億3千4百万円取得した一方、減価償却費を51億2千万円計上したことによるものであります。主な取得資産は、当社東京製造事業所及び東海製造事業所の生産能力増強投資、インドネシア現地法人の隣地(借地権)等になります。2024年4月から開始した3か年中期経営計画において、総額150億円の設備投資を予定しており、2年目である2026年3月期は47億円(発注ベース)実施しました。戦略製品投資は、HPU(ヒドロキシポリウレタン)新製法パイロットプラント、タイ現地法人の能力増強、機能性ペースト新規生産設備等になります。一方、予定していた新技術棟の建設(約50億円)については、研究開発体制の再構築及び最新のDX技術を活用したR&D環境の刷新に伴い計画を一旦延期しました。3か年中期経営計画には含まれておりませんが、5か年計画においてアジア新工場建設(約40億円)を予定しておりましたが、中長期的に成長する市場環境に合わせて最適な投資タイミングを見極めるため投資時期を延期することとしました。「投資有価証券」は、206億3千万円(前連結会計年度末比21億1千6百万円増加)となりました。政策保有株式を計16銘柄33億9千2百万円売却しましたが、保有株式の時価上昇により残高は増加しました。政策保有株式については、毎年取締役会において、保有目的の適切さや保有に伴う便益・リスクが資本コストに見合っているか等を精査し、保有の適否を検証しております。3か年中期経営計画において、2024年3月末の政策保有株式残高154億9千7百万円から15%以上削減することを目標としており、2026年3月期末は、売却を進めたものの保有株式の時価が上昇したことから169億1百万円と約9%増加いたしました。「退職給付に係る資産」は、217億1千1百万円(前連結会計年度末比59億5千8百万円増加)となりました。企業年金基金の運用において、国内債券は軟調であったものの、国内外の株式及び海外債券の運用が好調に推移し、期待運用収益率(2.0%)を大幅に上回りました。加えて、長期金利上昇に伴う割引率の見直しにより退職給付債務が減少した結果、退職給付に係る資産は大幅な増加となりました。(負債)「短期借入金」や「長期借入金」等の有利子負債は、187億5百万円(前連結会計年度末比23億3千9百万円減少)となりました。3か年中期経営計画では、資本コストを意識し、借入金等の有利子負債で調達した資金でM&A等の成長投資を実施する計画としております。しかし、2026年3月期までの2年間は、案件を検討したもののM&A成立まで至らず、上述の政策保有株式の売却収入等を一時的に有利子負債の返済に充てたことにより減少したものであります。「退職給付に係る負債」は、23億8千3百万円(前連結会計年度末比9億7千3百万円減少)となりました。資産の部の「退職給付に係る資産」同様、退職給付債務が減少したことにより減少しました。「繰延税金負債」は、78億2百万円(前連結会計年度末比30億7千7百万円増加)と大きく増加しました。保有有価証券の評価益及び退職給付会計基準における未認識数理計算上の差異(有利差異)の発生により計上したものであります。 (純資産)「利益剰余金」は、959億8千3百万円(前連結会計年度末比50億7千2百万円増加)となりました。「親会社株主に帰属する当期純利益」を81億1百万円計上したことと配当金30億2千9百万円をお支払いしたことによるものであります。2025年5月に3か年中期経営計画期間中の株主還元方針を総還元性向50%以上に変更しました。これにより、2026年3月期の1株当たり年間配当金は、2025年3月期比64円増配の220円となり、配当性向は46.5%、総還元性向は60.1%となりました。この結果、当中期経営計画期間の2年間累計の総還元性向は41.0%となりました。「自己株式」は、26億7千6百万円となり、前連結会計年度末比6億3千万円の減少要因となりました。2025年7月に従業員持株会の入会会員に1人当たり110株(計219,780株)の譲渡制限付株式を自己株式から付与し4億8千4百万円処分したこと及び2025年8月に自己株式315,300株を11億1千3百万円で取得したことによるものであります。「その他の包括利益累計額」は、253億8百万円(前連結会計年度末比59億7千3百万円増加)と大きく増加しました。保有有価証券の評価益増加及び退職給付会計基準における未認識数理計算上の差異(有利差異)の発生により、「その他有価証券評価差額金」及び「退職給付に係る調整累計額」がそれぞれ増加したためです。この結果、自己資本比率は67.5%となり、前連結会計年度に比べ2.5ポイント上昇しました。事業の特性や成長戦略、市場環境などを総合的に勘案し、資本効率性を重視した活用を行ってまいります。 ②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、219億9千万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。なお、連結キャッシュ・フロー計算書も併せてご参照ください。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動から得られた資金は90億4千5百万円となりました。これは「税金等調整前当期純利益」に「減価償却費」及び「売上債権」「仕入債務」「棚卸資産」などの増減を加味したものであります。前連結会計年度に、従業員の退職一時金の支払に備え信託財産に30億円拠出したこと及び環境対策費用を約30億円支出したことの反動により営業キャッシュ・フローは増加しました。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動の結果使用した資金は、20億6千2百万円となりました。資金支出としては、当社東京製造事業所及び東海製造事業所を中心とした設備投資及びインドネシア現地法人の隣地(借地権)購入等により66億7千2百万円計上しました。一方、資金収入としては、政策保有株式の売却により34億8百万円を計上しました。その結果、投資活動によるキャッシュ・フローは前連結会計年度のキャッシュ・インからキャッシュ・アウトとなりました。(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動の結果使用した資金は、67億4千万円となりました。有利子負債によるキャッシュ・フローは次のとおりであります。(単位:百万円)主な項目前連結会計年度(自2024年4月1日至2025年3月31日)当連結会計年度(自2025年4月1日至2026年3月31日)短期借入による収入3,6176,132短期借入金の返済による支出△4,834△7,604長期借入による収入1,1981,600長期借入金の返済による支出△4,134△2,432リース債務の返済による支出△154△128当社グループ内にて保有する資金のうちから営業活動の遂行にあたり必要となる資金相当分を控除した資金を活用することと合わせ、当該資金で不足する場合には、調達までの機動性や増資等による株式の希薄化を回避するためにも、主として銀行借入により調達しております。 ③資本の財源及び資金の流動性当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、主として営業活動によるキャッシュ・フロー、金融機関からの借入金などにより、資金を調達しております。また、当社及び主要な国内子会社の計5社でキャッシュマネジメントシステム(CMS)を導入しており、グループ内資金を一元管理し、現預金の水準を引き下げ、資金の効率化を図っております。財務上の方針としては、キャッシュ・フローの創出能力を最大化し、当社の長期的な経営目標としているROE(自己資本利益率)9%、ROA(総資産経常利益率)5%の達成に向けて、財務面から継続的に支援を行うこととし、規律ある積極投資の基準を設けるとともに、短期的な運転資金並びに設備投資や成長投資への資金につきましても有利子負債の活用を行う方針です。有利子負債に関する数値基準としては、D/Eレシオ1倍以下を目安としており、当連結会計年度末におけるD/Eレシオは0.13倍となっております。金融機関には充分な借入枠を有していること、また取引銀行4行と個別に計65億円の貸出コミットメントラインを設定しており、流動性の補完にも対応が可能となっております。 ④経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等当社グループは、中期経営計画「明日への変革 2027」において、「機能性マテリアル分野のエクセレントカンパニーになる」ことを10年後のありたい姿として公表し、環境への負荷を減らす事業活動に努め、素材に機能を付与した「機能性マテリアル」を開発・供給し続けることで、当社グループを取り巻くあらゆるステークホルダーとWIN+WINの関係性を構築し、人々の暮らしを豊かにすることを目指しております。そして、事業の収益性・資本効率を重視する点から、ROE(自己資本利益率)9%、ROA(総資産経常利益率)5%を長期的な経営目標として掲げております。なお、技術開発に鋭意取り組んでいる新規発展分野及び継続発展分野への投資や海外新規ビジネス投資については、事業単位でのEBITDA(償却前・利払前利益)分析を行い事業評価を行うことなどにより積極的な成長機会を追求し、併せて、経営環境の変化に適時に対応するために、財務基盤の安定と成長を両立させることも重要な課題として認識しております。 ⑤重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

事業リスク

  • 需要構造変化のリスク
    車両、情報・電子、パッケージ、印刷市場など、多岐にわたる顧客業界の需要変動に影響を受ける可能性があります。特に、液晶ディスプレイ用顔料の商権移動や、商業印刷市場の縮小は、特定の事業領域の経営成績に影響を与える可能性があります。
  • サステナビリティ対応の遅れ
    脱炭素化、資源循環、人権保護など、サプライチェーン全体でのサステナビリティへの意識が高まっています。これらの社会的要請への対応が遅れた場合、ステークホルダーからの信頼を失い、企業価値に悪影響を及ぼす可能性があります。
  • 海外事業における地政学リスク
    海外生産拠点を有するため、進出国の政治体制、法令・規制の変更、経済的基盤の変動、自然災害、地政学的な緊張(ロシア・ウクライナ紛争、中東情勢、台湾有事など)が生産活動やサプライチェーンに重大な支障をきたし、経営成績に大きな影響を与える可能性があります。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「事業等のリスク」の全文を見る(年度切替)
FY2026|8,445 文字
3【事業等のリスク】(1)リスク管理体制当社グループのリスク管理は、当社を取り巻くさまざまなリスクを包括的・戦略的に把握・評価し、優先度をつけて効率的に対処し、経営目標の達成と企業価値の向上に寄与することを目指して、代表取締役社長の指示のもとCSR・ESG推進本部が内部統制に関する社内体制整備として推進しています。リスク管理の体制は、各機構の取締役及び役付執行役員がリスクの自己点検を行い、これにより確認されたリスクから重大なリスクを抽出、評価・選別の上、その対処すべきリスク対策を各機構の取締役及び役付執行役員から業務執行部門に指示し、その進捗状況を管理しております。このリスク対策の進捗状況は、定期的に各機構の取締役からCSR・ESG推進本部に報告され、代表取締役社長と監査等委員である取締役に情報共有・監督されております。また、化学物質を扱う製造業にとって重大かつ恒久的に生じる安全衛生・保安防災、環境保護、化学物質管理などのリスク管理については、全社横断的に対応する為の委員会を設置し、リスク低減の為の活動方針の策定、業務執行の監督を行っております。緊急に重大リスクとなり得る問題が発生した場合は、適宜、対策本部等を設置し、対応を図ってまいります。 (2)事業リスク有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。 ①戦略リスクグローバル化への対応と事業の長期発展に対応するための戦略に起因するリスクのうち、現状、以下の3つを主要なリスクと認識しております。(注)短期:1~2年以内、中期:3~5年以内、長期:5年超、不明:想定困難a.需要構造変化への対応顕在化する可能性:高顕在化し得る時期(注):短期~中期顕在化した場合の影響度:大リスク:需要変動当社グループは、車両業界、情報・電子業界、建材業界、繊維業界、パッケージ業界など様々なお客様向けに製品を提供し、グローバルに事業展開をしております。好調・不調を相互に補完できる幅広い業界とお取引がありますが、個々の業界や特定の地域で大きな需要変動があった場合にはその事業範囲で影響を受けることとなり、経営成績に影響を与える可能性があります。対応:(a) 車両業界、情報・電子業界車両業界では、前年の自動車メーカーの減産影響が無くなり、国内向けを中心に回復しました。液晶ディスプレイ向けのカラーフィルター用顔料は、新規品の増加で好調に推移しました。お客様の情報を元に当社生産計画を適時修正することにより適切な在庫管理を行うとともに、出荷増・販売増にも対応できる体制を継続しました。対応:(b) パッケージ業界パッケージ業界向けの、食品包装用やペットボトルラベル用のグラビアインキは、比較的景気に左右されにくい事業と認識しておりますが、フードロス問題に起因する販売数量の減少、コロナ禍での人流減と原材料価格高騰、物価高による買い控えの影響がありました。坂東製造事業所における新設備での合理化効果、固定費負担の削減、国内事業やインドネシア現地法人の販売価格改定が進んだことなどにより営業利益面での改善が進みました。引き続き、当社の強みを生かせる市場への注力、また、塗加工技術を生かした成長が見込める情報電子・産業資材への拡大を進めてまいります。対応:(c) 印刷市場オンデマンド印刷やデジタルサイネージの普及に加え、リモートワークなど働き方改革が広まった事により、商業印刷市場に依存したオフセットインキ事業においては市場縮小の影響を受けております。このトレンドは一層強まることとなると予想しており、オフセットインキ事業の経営効率化に取り組んでおります。一方、オンデマンド印刷向けの事業として、インクジェットインキ用色材、液晶ディスプレイパネル向けの事業として、カラーフィルター用顔料、パネル用コーティング剤などの開発と拡販に注力しております。 リスク:サステナビリティへの対応サプライチェーン全体で脱炭素化、資源の循環、人権の保護などサステナビリティ社会の実現に向けた意識が高まっています。当社グループではステークホルダーの期待と信頼に応え、社会から生かされる会社、選ばれる会社となるために、積極的にサステナビリティ経営を推進する必要があると認識しております。今後も社会・環境と当社の発展に向けて、お客様とサステナビリティに貢献できる価値を共創してまいります。詳細は、「2.サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。対応:社会的課題とお客様の要望を当社の製品で実現できるように、技術開発力、お客様対応力、生産現場力のそれぞれの強みを発揮、連携させていきます。そのためには人のチカラが重要と認識しており、人財の潜在能力を発揮させるために、社員のエンゲージメント向上に向けたHR戦略と業務改善に向けたDXを推進してまいります。詳細は、「2.サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。リスク:サーキュラーエコノミーへの対応国内の「プラスチック資源循環法」、欧州の「包装および包装廃棄物規則(PPWR)」に代表される再生材使用の義務化が世界的な潮流となる中、サーキュラーエコノミーへの移行は化学メーカーにとって差し迫った経営課題と認識しています。当社グループの主要製品である自動車向けプラスチックコンパウンド市場においては、再生材使用率の向上や情報開示に向けた動きを捉えています。今後もこのプラスチックの循環利用とバイオマス原材料によるプラスチック製品の需要が高まると想定しております。対応:当社グループでは、長年培った「分散加工技術」「コンパウンド技術」を最大限に活かし、従来の「作って売る」ビジネスから、サプライチェーン全体で資源を循環させる「循環型ビジネス」への事業構造の転換を加速させています。ポリウレタン樹脂の事業においては、これまで培ってきたウレタン樹脂合成技術を活かし、ケミカルリサイクル技術の開発、ポリウレタン樹脂の原材料のバイオマス化といったイノベーションを創出していく事に取り組んでおります。これらのイノベーションを創出させるには、サプライチェーンパートナーとの連携に加え、設備投資や人的資本・知的財産への投資にも取り組んでいます。その一例として、当社は廃棄物を有効活用し、プラスチック使用量の削減を目指すコンソーシアム『Do What We Can』に2025年3月より参画しております。また当社グループの事業活動から排出されるプラスチック廃棄物を再資源化するために、各現場での廃棄物の分別回収を強化しております。リスク:生物多様性への対応世界的な動きである生物多様性の保全に向けた取り組みの強化を受け、サプライチェーンの一員として生態系への負荷の少ない製品を提供する責任があると認識しています。当社グループは、事業活動を行ううえで、さまざまな原材料や水資源・エネルギー資源を自然資本から享受しており、それらは価値創造の源泉のひとつであると同時に、当社の事業活動が自然環境に与える負荷と、自然環境の変動が当社グループの事業活動に及ぼす影響の大きさも深く受け止めています。当社グループの各種インキ、塗料、表面処理剤、ウレタン樹脂などは、顧客側で使用される段階で揮発性有機溶剤(VOCs)から有害なガスを発生させるものがあり、それらが大気汚染、水質悪化の原因を減らしていく事に応えていく必要があると考えています。対応:これらの製品を通じて持続可能な成長と社会価値の創出を両立するためには、これら自然資本への「依存」と「影響」をTNFDの枠組みに基づき分析し、製品のライフサイクル全般においてリスクと機会の両面から取り組みを行っています。当社が長年培ってきた「機能性マテリアル」の技術を最大限に活かし、サプライチェーンパートナーと連携し、従来の溶剤系製品を順次環境負荷の少ない製品に切替えるなど、生態系への汚染予防の徹底と、より高度な資源の循環利用を加速させることで、自然資本の保全と回復に貢献してまいります。 b.海外事業活動に関するリスク顕在化する可能性:中顕在化し得る時期(注):不明顕在化した場合の影響度:大リスク:政治・地政学変動に関するリスク当社グループの海外生産拠点は、当該国の政治体制、各種法令・規制の変更、経済的基盤及び自然災害発生のリスクがあり、これらが、グループ危機管理の想定以上に深刻化した場合には、各生産拠点の生産活動に重大な支障が生じ、当社グループの経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。対応:このリスクを回避するためには、特定国への投資に過大にシフトすることなく、リスク要因も考慮の上で適正な水準・割合に投資配分することで全体的なリスク緩和を図ることとしてまいります。c.金融リスク顕在化する可能性:中顕在化し得る時期(注):短期顕在化した場合の影響度:小リスク:(a) 為替リスク2025年3月期を初年度とする中期経営計画の施策として、「事業基盤の強化のための海外事業の拡大」を掲げております。現状の海外売上高比率は25.7%にとどまっているものの、海外事業は為替変動の影響を受けるため、今後同比率が高まっていくことにより、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。国内から輸出している事業、海外から調達している原材料については、個々の取引において為替影響を受けるため、これらの事業拡大によりリスクが拡大することが想定されます。対応:当社グループでは、国内における外貨建て輸出・輸入と海外連結子会社の外貨建て損益の円換算時に為替影響が生じます。現在、損益の均衡が比較的取れている状況であるため、為替の変動による収益への影響、リスクは小さいと認識しております。また、本リスクを極力回避するため、収入、支出を極力同一通貨で支払うこと、海外拠点における現地通貨の借入れを検討すること、必要に応じて為替先物契約を締結することなどにより、リスクヘッジを図ってまいります。リスク:(b) 金利変動リスク当社グループは、事業資金の一部を主として金融機関から借入金として調達しております。2026年3月末時点において長短期借入金合計で約185億円ありますが、成長投資や設備投資などで借入額が増加した場合や、今後の金利水準が上昇した場合には、支払利息が増加することにより、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。対応:足元の金融環境を勘案すると、長短ともに金利水準は上昇基調にありますが、以下に述べる方策により、本リスクが当社グループに与える影響は比較的小さいと思われます。新たに資金需要が生じた場合においても、キャッシュマネジメントシステム(CMS)により、金融費用の削減、当社グループ内に存する資金を効率的に活用することで対応するほか、取引金融機関との間で調整の上で、長期固定金利借入や金利スワップ契約等を導入することで、長期にわたって低金利を享受できる契約構成を維持できるよう進めてまいります。 ②オペレーショナルリスク事業系オペレーショナルリスク(仕入・生産・販売活動)及び管理系オペレーショナルリスク(事業継続するための管理体制とCSR対応)に起因するリスクのうち、現状、以下の4つを主要なリスクと認識しております。a.購買に関わるリスク顕在化する可能性:高顕在化し得る時期(注):短期顕在化した場合の影響度:大リスク:原材料調達リスク、原材料及びエネルギー価格の変動リスク主要な原材料である石油化学誘導品及びエネルギー(電気、ガス等)は、中東情勢の不安定化に伴う原油価格の高騰や為替変動、天災、事故、政策なども含めた生産国での状況や経営基盤の変化などにより、価格変動のみならず、調達不安に陥る可能性もあります。当社グループ製品が使用されている最終消費財の市況や供給責任なども勘案しますと、原材料及びエネルギー価格の上昇をすぐさま製品価格に反映させるには時間を要すことから、原材料安定調達により供給責任を優先した場合は、結果として原材料及びエネルギー価格の上昇が当社グループの収益を圧迫することにつながります。対応:主要な原材料である石油化学誘導品及びエネルギー(電気、ガス等)は、市況や原油価格の動向に伴う価格変動のほか、地政学的リスク、為替変動、天災、事故、政策なども含めた生産国での状況の変化や、経営者の後継者問題や資金繰りなど経営基盤の変化によっても、価格変動のみならず、調達不安に陥る可能性もあります。そのため、特定の企業・国に偏することなく、原材料の代替購入先を常日頃から調査の上で確保することなどにより、当社グループの業績に与える影響を緩和することに努めております。原材料及びエネルギー価格の上昇による当社グループ製品の価格に与える影響額を算出し、販売活動に生かすことが必要ですが、使用している原材料の数が多いため、影響額の算出に時間を要しており、結果として当社グループの収益を圧迫することにつながっています。コスト増の販売活動への反映には、一定の時間はかかるものの、お客様へ原材料及びエネルギーの市場動向や予測されるリスクなどを説明し、販売価格の見直しにご理解をいただけるように努めております。しかしながら、中東情勢起因の原材料価格上昇については、サプライチェーンが経験したことがないレベルの上げ幅となっており、調達できなくなるリスクを避けるべく調達を優先すると共に、上昇した分については適切に製品価格への反映を進めていくことが必要です。供給リスクや市場動向をタイムリーに発信し、情勢の変化に応じた適正な価格転嫁を早期に実施することで、安定的な供給体制の維持と収益の確保に努めてまいります。b.コンプライアンスに係わるリスク顕在化する可能性:中顕在化し得る時期(注):中期顕在化した場合の影響度:大リスク:(a) 化学物質管理リスク、品質管理リスク当社グループでは、多種の化学物質を取り扱っており、その保管、使用、移動、排出、廃棄において法令遵守を徹底しております。しかしながら、化学物質管理や環境管理関連において、国内・海外を問わず法的要件が強化されることがあり、遵守できていない場合には罰則を受けるだけでなく、輸出入の禁止や生産活動の停止による、収益機会の喪失、あるいは対処するための支出を招く蓋然性があり、当社グループの業績に与える影響は甚大となる可能性があります。対応:特定のセグメント(事業機構)から独立した化学物質管理体制及び環境、安全衛生体制(組織)を充実させることと同時に、特に化学物質管理においては要件変更への対処に遺漏が生じることのないように、システムによる管理(新化学物質管理システム)を進めており、これによりリスクコントロールを行うこととしております。リスク:(b) 製造物責任、補償のリスク環境、安全衛生上の問題や、製品の品質管理上の問題などに起因して、大規模な損害賠償につながるリスクが現実化し、賠償金支払いが生じる可能性があります。対応:現在、当社グループが付保しております賠償責任保険等、保険契約の内容を勘案すると、これらの発生する蓋然性は比較的小さいものと判断しておりますが、引き続き、保険内容を十分に検討した上での付保手続きを進めてまいります。 c.情報セキュリティリスク顕在化する可能性:中顕在化し得る時期(注):中期顕在化した場合の影響度:大リスク:当社グループは事業活動の中で取引先の情報、技術、契約、人事等の機密情報を取り扱いますが、多くは情報システムで管理しております。サイバー攻撃、不正アクセス等によるデータの改ざん、逸失、情報の漏洩、また災害や障害によるシステムの停止が引き起こす事業活動の停止などが発生した場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。特に海外拠点は、2026年3月期にランサムウェアによる被害が発生した事例もあり、こうしたサイバー攻撃の標的となるリスクが相対的に高くなっております。対応:これらのリスクを低減するため、ネットワーク監視、ウイルス対策、アカウント管理などの基本的な情報セキュリティ対策、バックアップなどの適切なデータ保全、従業員に対する情報セキュリティ教育、セキュリティ事故等に対応する体制の整備などに取り組んでおります。海外拠点においても国内同様の人的対策、技術的対策の展開を進めております。また、万が一、情報セキュリティに関する重大なインシデントが発生した場合に対処するために、社内にCSIRT(セキュリティ事故対応チーム)を設置しております。d.人員・人財不足のリスク顕在化する可能性:中顕在化し得る時期(注):中期顕在化した場合の影響度:大リスク:当社グループのサステナブルな成長には、優秀な人財の継続的な獲得が欠かせないと認識しております。出生率低下で新卒者減少に伴う優秀な人財の採用逸失、有能な人財の流出が頻発する場合は、当社の長期的な成長戦略に影響を及ぼす可能性があります。対応:新卒・中途を問わず積極的に採用を行いつつ、イノベーションが湧き上がる活力に満ちた企業風土を醸成するべくHR戦略を推進しております。例えば新卒採用においては、採用イベントへの新規出展や、オープンカンパニー・インターンシップのコース数・開催日程の増設により、学生との接触機会を創出・拡大し、重要な経営資源である人財の確保に努めております。また、経営目標を効率よく達成するために、異なる経験・経歴、技能、属性を持つ者を幅広く採用し、「人財の化学反応」を早期に起こすことを優先するという観点から、性別、国籍、採用時期などの区別なく積極的に中途採用の機会を設けております。2026年3月期から新たな人事制度運用を開始いたしました。人事考課制度では職階定義に沿った行動を明示したジョブディスクリプションを設定し、業績だけではなく行動を評価する仕組みによりメリハリある評価と成果に紐づく処遇の実現を目指しました。また、2027年3月期より評価制度をさらにブラッシュアップします。管理職の評価項目に、人財育成に関わる項目を追加しミドルマネージャー層を中心とした持続的な人財の育成、全従業員の成長を促す仕組みを加速させます。これらの施策により、従業員のエンゲージメント向上を図ることで、人財流出を回避することとしております。 ③ハザードリスクa.自然災害のリスク顕在化する可能性:中顕在化し得る時期(注):不明顕在化した場合の影響度:中リスク:近年、大規模地震や大雨等の自然災害のリスクは高まっており、被害の規模によっては生産設備や情報処理システムの毀損、従業員の出勤不能、物流機能の停滞、原材料の調達難などにより当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループの営業拠点や生産拠点の在る自治体のハザードマップによると操業に大きな影響を及ぼす可能性のある拠点があります。大規模な集中豪雨などにより、一時的に事業の継続が困難になる可能性があります。対応:大規模災害などの経営危機に迅速に対応できるように、本社にて危機管理体制を整備し、各事業所にも災害対応の初動体制を設けております。通常運営時の収益性とビジネス・コンティニュイティ・プラン(BCP)のバランスを考慮し、主要な事業や製品供給の代替体制を逐次推進しております。しかしながら、特定リスクの発生確率を事前評価することは非常に困難であり、大規模災害時には予想通りの状況にならないという教訓から、様々な状況に機動的に対応できる訓練を重視した事業継続対策を進めております。b.疫病等のリスク顕在化する可能性:中顕在化し得る時期(注):不明顕在化した場合の影響度:中リスク:感染症の大流行(パンデミック)が発生すると、従業員の出勤不能、物流機能の停滞、原材料の調達難などにより当社グループの事業活動と業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。対応:突然のパンデミックに迅速に対応できるように、本社にて危機管理体制を整備し、各事業所にもパンデミック対応の初動体制を設けております。通常運営時の収益性とビジネス・コンティニュイティ・プラン(BCP)のバランスを考慮し、主要な事業や製品供給の代替体制を逐次推進しております。

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