4502

武田薬品工業(4502)は何で稼いでいるか — 事業の柱と依存度

医薬品 医薬品

事業の概要

  • 医薬品の研究開発から販売まで
    武田薬品工業は、医薬品の研究、開発、製造、そして世界中での販売を一貫して手掛ける製薬会社です。消化器系疾患、希少疾患、がんなどの特定の病気に焦点を当て、新しい薬を生み出すことで収益を上げています。世界中の患者さんに革新的な治療法を提供することがビジネスの核となっています。
  • 幅広い疾患領域への対応
    同社は、消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤、オンコロジー(がん)、ワクチン、ニューロサイエンス(神経精神疾患)の6つの主要ビジネスエリアで事業を展開しています。これにより、特定の分野に偏らず、多様な医療ニーズに応えることで安定した収益基盤を築いています。
  • グローバルな事業展開
    日本だけでなく、米国、欧州、カナダ、中国、南米など世界各国に子会社や関連会社を持ち、グローバルに事業を展開しています。これにより、特定の地域に依存せず、世界中の市場から収益を得ることで、事業の安定性と成長性を高めています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
セグメント構成
  • 単一の医薬品事業
    武田薬品工業グループは、連結子会社158社と持分法適用関連会社15社を含む174社で構成されていますが、事業セグメントとしては「医薬品事業」の単一セグメントとしています。これは、グループ全体が医薬品の研究、開発、製造、販売という一連の活動に特化しているためです。
  • 主要な疾患領域への注力
    医薬品事業の中では、消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤、オンコロジー(がん)、ワクチン、ニューロサイエンス(神経精神疾患)の6つを主要ビジネスエリアとしています。これらの領域に特化することで、専門性を高め、それぞれの分野で革新的な医薬品を提供することを目指しています。
  • グローバルな事業展開
    医薬品事業は、日本だけでなく、米国、欧州、カナダ、中国、南米など、世界中の子会社や関連会社を通じて展開されています。これにより、特定の地域に依存せず、世界中の医療ニーズに応えることで、事業の安定性と成長性を確保しています。
有価証券報告書「事業の内容」の全文を見る(年度切替)
FY2026|908 文字
3 【事業の内容】 当社グループは連結財務諸表提出会社(「当社」)と連結子会社(パートナーシップを含む)154社、持分法適用関連会社等10社を合わせた165社により構成されています(2026年3月31日現在)。当社グループは、幅広い医薬品のポートフォリオを有し、研究、開発、製造およびグローバルでの販売を行っています。 当社グループは、グローバルな研究開発型のバイオ医薬品企業として、消化器系・炎症性疾患、ニューロサイエンス、およびオンコロジーの重点疾患領域において、革新的な医薬品を創出し続けることを追求するとともに、血漿分画製剤およびワクチンをお届けすることにも注力しています。当社グループはパートナーとともに、強固なパイプラインを通じて、患者さんの治療体験の向上を図り、希少疾患および有病率がより高い疾患のいずれにおいても治療パラダイムの変革に取り組んでいます。また、バリューチェーン全体にわたり先進技術や人工知能(AI)の統合を進めることで、事業運営の有効性と効率性を高め、イノベーションを促進し、ステークホルダーへの提供価値の向上につなげています。 当年度末における、当社グループを構成している主要な会社の当該事業に係る位置付けの概要は次のとおりです。なお、当社グループは、「医薬品事業」の単一セグメントのため、セグメント情報の記載を省略しています。日本においては、当社が研究開発、製造および販売を行っています。日本を除くその他の地域においては、各国に展開している子会社・関連会社等が研究開発、製造および販売機能を担っています。これらのうち米国における主要な子会社は武田ファーマシューティカルズ U.S.A., Inc.、バクスアルタUS Inc.、米州武田開発センター Inc.等であり、欧州およびカナダにおいては、武田ファーマシューティカルズ・インターナショナル AG、武田 GmbH等です。またその他の地域における主要な子会社は武田(中国)国際貿易有限公司等であります。 (注)関連会社等には、ジョイント・ベンチャー(共同支配企業)を含んでおります。 以上で述べた事項の概要図は次のとおりであります。

事業の優位性(モート)

事業の質(有価証券報告書から抽出)
数字に出ない事業の性質を、同じ物差しで全銘柄そろえています。FY2025時点の記載が出典です。
価格決定力値上げを通せるか。強いほどインフレ耐性が高い 弱い
多くの国々で医療予算削減、医療技術評価、国際価格参照政策により医薬品価格が低下しているため。
参入障壁新規参入を阻む要因の種類 規制
医薬品は所轄官庁の定めた有効性と安全性に関する厳格な審査により承認されてはじめて上市可能。
顧客集中度特定顧客への依存度。高いほど失注リスクが大きい 低い(分散)
景気敏感度業績が景気循環にどれだけ振られるか ディフェンシブ
設備投資の性質稼いだ現金がどれだけ設備維持に消えるか 混合
規制依存規制は障壁にも足枷にもなる 高い
会社が挙げる主要リスク:研究開発に関するリスク / 知的財産権に関するリスク / 特許権満了等による売上低下リスク
同じ条件で他の銘柄を探す → 定性スクリーニング(価格決定力・参入障壁・景気敏感度などで絞り込めます)
モート総合 13 / 25 5類型それぞれの強度と、そう判定した根拠
無形資産★★★★★
根拠:強いブランド・特許・許認可

武田薬品工業は、革新的な医薬品の研究開発を通じて、強力な知的財産(特許)とブランド力を構築している。特に、希少疾患治療薬やオンコロジー領域におけるパイプラインは、高い臨床的価値と将来的な収益性を示唆しており、これらは容易に模倣できない無形資産である。買収したシャイアー社の持つ希少疾患領域のポートフォリオも無形資産として寄与している。

スイッチングコスト★★★☆☆
根拠:中程度乗り換えの手間・コスト

医薬品は、医師や患者が一度有効性・安全性を確認し処方・使用を開始すると、他の薬剤への切り替えには慎重になる傾向がある。特に、慢性疾患や重篤な疾患の治療薬では、治療効果の継続性や副作用のリスクから、スイッチング・コストは一定程度存在する。しかし、新薬の登場やジェネリック医薬品の普及により、完全に固定化されているわけではない。

ネットワーク効果☆☆☆☆☆
根拠:弱い利用者増が価値を生む

医薬品業界において、ネットワーク効果は主要な競争優位性とはなりにくい。製品の価値は主にその有効性、安全性、および臨床データに依存する。ユーザー間の相互作用による価値向上は見られない。

コスト優位★☆☆☆☆
根拠:弱い同じ物を安く作れる

医薬品の研究開発には巨額の投資が必要であり、特許期間中は高い利益率を確保できるが、ジェネリック医薬品の登場後は価格競争に直面する。製造プロセスにおける効率化やスケールメリットによるコスト削減は存在するものの、それが他社に対する圧倒的なコスト優位性とはなりにくい。特に、新薬開発の成功確率の低さと開発費の高騰がコスト面での優位性を限定する。

規模の経済★★★★☆
根拠:強い規模が参入障壁になる

武田薬品工業は、グローバルに展開する大手製薬企業であり、研究開発、製造、販売において大規模なスケールメリットを享受している。特に、重点領域であるオンコロジー、希少疾患、神経科学、消化器系疾患などでは、広範な製品ポートフォリオとグローバルな販売網を有しており、これが効率的な事業運営と市場でのプレゼンスを支えている。買収による規模拡大も寄与している。

  • 多様な医薬品ポートフォリオ
    武田薬品工業は、消化器系疾患、希少疾患、がん、ワクチンなど、幅広い疾患領域にわたる医薬品を多数保有しています。これにより、特定の製品に依存するリスクを低減し、多様な患者ニーズに応えることで安定した収益を確保できる可能性があります。
  • 革新的な研究開発力
    同社は、消化器系・炎症性疾患、ニューロサイエンス、オンコロジーの3つの重点疾患領域と血漿分画製剤に注力し、研究開発能力の強化とパートナーシップを推進しています。これにより、新しい創薬手法(モダリティ)を用いた革新的な医薬品を継続的に生み出し、競争優位性を維持しようとしています。
  • アンメットニーズへの集中
    武田薬品工業は、まだ有効な治療法が確立されていない疾患(アンメット・メディカル・ニーズ)に焦点を当てて研究開発を進めています。これにより、競合が少ない分野で独自の製品を開発し、高い医療価値を提供することで、市場での優位性を築くことを目指しています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)

経営戦略

有価証券報告書「経営方針・対処すべき課題・MD&A」の全文を見る(年度切替)
経営方針・経営戦略
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 タケダの企業理念当社の企業理念は、当社が誰であるか、何を行うか、どのように行うか、なぜそれが重要なのかというタケダのストーリーを伝えています。私たちは、次の時代に踏み出すにあたり、より健康な世界の実現という世代を超えて受け継がれる約束を果たすべく、引き続き取り組んでまいります。私たちの存在意義は、世界中の人々の健康と輝かしい未来に貢献することにあります。このため私たちは、革新的な医薬品を創出し続けるというビジョンを追求しています。当社の従業員はこの存在意義のもとに結束し、245年にわたり当社の礎となってきた誠実、公正、正直、不屈の価値観に基づいて行動しています。そして、患者さん、株主、社会に対する長期的な価値を創造し、従業員、関わる地域コミュニティ、私たちが暮らす地球に対して良い影響を提供し続けることができるよう努めています。 事業環境グローバルなバイオ医薬品企業を取り巻く外部環境は引き続き複雑であり、地政学的分断の進行や国際的な政策の不確実性が続いています。また、継続する緊張関係や同盟関係の変化、貿易政策の変容により、国境を越えた事業運営や長期的な投資計画に対する不透明さが長引いています。こうした動向は、規制の枠組みやサプライチェーンの強靭性、さらにはグローバルな医療市場全体の安定性に対する影響を強めています。主要地域においては、薬価への圧力が引き続き大きな課題となっています。また、各国政府は予算配分を防衛分野にシフトさせており、景気減速やインフレーション、広範な財政圧力を背景に、公的医療費への制約が強まり、薬価への圧力がさらに高まっています。各国政府は患者さんの治療アクセスの拡大を目指しているものの、医療予算の制約は続いています。その結果、薬価や保険適用の条件がより厳格化され、市場導入に要する期間も世界的に長期化しています。米国では、薬価政策の変更が継続的に実施されていることにより、革新的な治療法に係る見通しの不透明性が高まり、今後の投資判断に影響を及ぼす可能性があります。欧州および日本においては、財政的な制約が構造的に存在しており、複数の治療領域における成長が抑えられています。一方で、科学および技術の進展のペースは一段と加速しています。プラットフォームサイエンス、データ分析、オートメーション化、人工知能といった分野の進歩は、新薬の創製・開発・提供の在り方を大きく変えつつあります。このような状況において、当社は、重点疾患領域に経営資源を集中し、製造・供給・品質に係る規律を一層高め、人を軸としながらも積極的にテクノロジーを活用する変革を推進し、科学的妥当性の確保と患者さんからの信頼維持に努めていきます。当社は、研究開発において着実な進展を遂げており、将来に向けて良好な基盤を築いています。重点疾患領域に注力した取り組みとデジタル技術の活用の拡大により、革新的な医薬品をより迅速かつ効率的に患者さんにお届けする体制を強化しています。外部環境の厳しさが増す中にあっても、患者さんを最優先に考え、責任をもって科学を前進させることは、今後も事業運営の根幹であり続けます。 私たちが描く将来ビジョン科学の急速な進展と医療を取り巻く国際的な事業環境の複雑化が進む中、当社の戦略は、革新的な新薬を連続的に上市していく取り組みを通じて、短期的に確かな成果を積み重ね、成長の加速に向けた基盤を整えるものです。2025年には、後期開発段階にあるoveporexton、rusfertideおよびザソシチニブの3つの主力パイプラインにおいて、臨床第3相試験で良好な結果を得ることができました。いずれも数十億米ドル規模の売上収益をもたらす可能性を有しています。これらの成果は、当社パイプラインの層の厚さと研究開発の質の高さを示すとともに、厳格な規制要件や製品の市場展開において求められる重要なマイルストンを達成する当社の実行力を示しています。当社は、事業成長を段階的に実現する考え方として、短期に変革を進めるHorizon1と、中長期の成長と患者さんへのさらなる貢献を加速するHorizon2という二つの時間軸を設定し、事業を展開していきます。Horizon1では、投資と全社的な変革により、競争力と成長の基盤を短期的に強化します。Horizon2では、複数の新薬の市場浸透と規模の拡大を通じて、中長期的な成長を加速し、より多くの患者さんにさらに貢献し、株主の皆様に長期的な価値を創出します。当社は、私たちの存在意義と価値観に基づき、二つのHorizonを通じて、革新的な医薬品を一日でも早く患者さんにお届けしていきます。Horizon1:成長に向けた変革Horizon1では、新薬の上市、後期開発段階にある強固なパイプラインの推進、およびオペレーションの変革に取り組みます。本年1月以降、CEO交代計画の最終段階として、当社は組織体制および業務運営の見直しを進めてきました。次期CEOのジュリー・キムは、新たな経営体制を構築し、患者さんや顧客により近いところでの事業意思決定を可能にする組織の再設計を行いました。この新しい組織体制のもと、業務の標準化・簡素化を進めながら先進技術の導入を加速し、当社の価値観をゆるぎない軸として維持しながらも、スピードと成果に対するこだわりを追求していきます。主要な研究開発活動の内容および進捗の詳細については、「6 研究開発活動」をご参照ください。Horizon 1では、今後12カ月の間に予定している複数の新薬の上市を確実に遂行するため、必要な経営資源の確保を進めます。また、この期間では、5つの後期開発品をはじめとする、重点疾患領域(消化器系・炎症性疾患、ニューロサイエンス、オンコロジー)におけるパイプラインの開発を進めながら、一方で、厳しい市場環境下においても、ENTYVIOやGAMMAGARD LIQUID/KIOVIGなどの製品が競争力を維持できるよう取り組んでいきます。Horizon 1の中核を成すのは、コスト規律の徹底と戦略的な投資の両立です。その一環として、当社は2028年度までに年換算で2,000億円以上の費用を節減し、その成果を新薬の上市、パイプラインの強化およびテクノロジーへの投資に充当していきます。こうした取り組みを通じて、財務の健全性を維持しながら、さらなる成長に向けた基盤を強化していきます。この間、調整後フリー・キャッシュ・フロー(注)を潤沢に創出し続けることが、成長に向けた投資と株主還元を両立させるための礎となります。(注)定義については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ④当社グループが定義および表示するIFRSに準拠しない補足的財務指標」をご参照ください。Horizon2:成長の加速Horizon1で規律ある投資を進めながら新薬上市を成功させることで、Horizon 2でタケダの次なる成長期を切り拓く牽引役が、成熟化が進む既存ポートフォリオから新たな主力製品群へ移行していきます。この新たな製品群には、oveporexton、rusfertide、ザソシチニブに加え、現在の後期開発パイプラインからさらなる新薬が順次加わることを見込んでいます。これら新主力製品群の収益貢献に加え、事業運営のさらなる効率化を継続的に推進することで、既存ポートフォリオの成熟化を乗り越える持続的な成長を実現していきます。当社は、次世代の科学とテクノロジーを駆使しながら、医薬品とそれによって実現される治療の成果において、可能性そのものを再定義することに挑んでいきます。この挑戦こそが、患者さんの生活と社会にもたらす価値を最大化することにつながると信じているからです。変革の原動力となるテクノロジーこの新たな時代において、テクノロジーはそれ自体が目的ではなく、当社の変革を実現するための中核を成すものです。テクノロジーは、私たちが価値を創出・開発し、提供していく取り組みと不可分に結びつき、探求心や創造力、チームが持つ集合知を一層引き出す力となっています。人工知能、デジタルプラットフォームおよび高度なデータ分析は、現在、バリューチェーンのあらゆる段階に組み込まれています。これらのテクノロジーは、意思決定や業務遂行のスピードを高め、その質を向上させるとともに、部門間の壁を取り払い、迅速な学習、部門横断的な機動性の向上および業務運営の最適化を重視する文化を育んでいます。当社において、テクノロジーは単なるツールにとどまらず、協働しながら可能性を広げる存在となっています。高度なプラットフォームとデータに基づく知見を従業員が活用することで、患者さんの差し迫ったニーズへの対応、意義ある価値の創出、成長の推進、そしてあらゆるステークホルダーとの持続的な信頼関係の構築といった、最も重要な課題に注力できる環境を整えています。 コラボレーションと成果が切り拓く未来医療における意義ある前進は、パートナーシップによってもたらされるものと考えています。私たちの目指す未来は、社内にとどまらず、バイオ医薬品業界全体、さらには科学コミュニティ、規制当局、患者さんコミュニティとの幅広い連携に根ざしています。官民のパートナーシップ、グローバルな連携、地域社会との対話を通じて、日々多様な声を積極的に取り入れ、解決策を共に創り上げています。こうしたパートナーシップへのコミットメントは、次のイノベーションの創出の在り方にも表れます。オープンサイエンスや共有プラットフォームの活用、また、様々な関係者との連携は、今後ますます複雑化する医療課題に向き合う上で重要な役割を果たします。分野や地域を越えて協働することで、医療へのアクセスを拡大し、公平な治療成果の実現を後押しし、私たちの取り組みがもたらす価値を将来にわたり一層広げていきます。 財務展望強固な財務基盤と明確な戦略フレームワークのもと、当社は持続的な成長と長期的な価値創造を財務面から支える取り組みを進めています。短中期的(Horizon 1)には、成熟化が進む既存ポートフォリオの安定性と競争力を基盤としつつ、oveporexton、rusfertide、ザソシチニブなどの有望な新製品について、薬事承認および上市にむけた重要なマイルストンの達成に注力するとともに、後期開発段階にあるパイプライン全体の開発を着実に推進していきます。収益性を維持するため、組織体制の最適化を進めるとともに、データおよびテクノロジーを活用し、意思決定と業務運営双方の効率性を改善していきます。こうした取り組みに加え、事業構造再編費用を含むその他の営業費用の削減と、有利子負債の返済を通じた金融費用の削減により、まずは、配当の持続性を確保する、ROE5%を上回る水準の財務上当期利益を達成することを目標とします。当社の事業は強い現金創出力を持ちますが、資本配分の規律を維持し、資本効率を持続的に向上させていきます。成長に向けた継続的な投資を行いながらも潤沢な調整後フリー・キャッシュ・フロー(注)を確保し、さらなる有利子負債の削減を進めるとともに、累進配当を維持していきます。長期的(Horizon 2)には、成熟化が進む既存ポートフォリオに代わり、新製品の収益貢献が当社の成長加速の牽引役になるものと考えています。費用管理の規律を維持しながら売上高を伸ばすことが、30%台前半から半ばのCore営業利益率(注)に向けた、収益性改善のドライバーとなっていきます。また、調整後純有利子負債/調整後EBITDA倍率(注)は2倍を目標水準とし、持続的な成長に向けたさらなる投資を可能にする強固な財務基盤を構築していきます。当社は、これらの取り組みを通じて業績を持続的に改善し、その取り組みの積み重ねにより、企業価値の向上および競争力ある株主総利回りを実現していきます。 (注)定義については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ④当社グループが定義および表示するIFRSに準拠しない補足的財務指標」をご参照ください。 [主要製品一覧]消化器系疾患領域における主要製品は以下のとおりです。・ENTYVIO(ベドリズマブ):ENTYVIO(国内製品名:エンタイビオ)は、中等症から重症の潰瘍性大腸炎・クローン病に対する治療剤です。ENTYVIOは、2014年に米国および欧州において発売以来、売上が伸長しており、2026年3月期の当社グループの売上トップ製品でした。現在、ENTYVIOは世界70カ国以上で承認され、エンタイビオ皮下注射製剤は米国、欧州および日本において承認されています。エンタイビオ皮下注射製剤は、その利便性および患者アクセスの向上により、当該製品の使用拡大を牽引しています。また、当社は、さらなる国・地域での承認取得および適応症の拡大を通じて、本剤の可能性の最大化に取り組んでいます。2026年3月期におけるENTYVIOの売上収益は9,580億円となりました。・GATTEX/レベスティブ(テデュグルチド[DNA組換え型]):非経口(静脈栄養)サポートを必要とする短腸症候群(SBS)の治療薬です。成人用および小児用の効能を有するGATTEX/レベスティブが米国、欧州、日本において発売されました。2026年3月期におけるGATTEX/レベスティブの売上収益は1,457億円となりました。・タケキャブ/VOCINTI(ボノプラザンフマル酸塩):酸関連疾患の治療剤タケキャブは、2015年に日本で発売され、逆流性食道炎や低用量アスピリン投与時における胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発抑制などの効能により飛躍的な成長を遂げました。タケキャブ(中国の製品名:VOCINTI)は、2019年に胃食道逆流症の治療剤として中国で承認されました。2026年3月期におけるタケキャブ/VOCINTIの売上収益は1,437億円となりました。・EOHILIA(ブデソニド経口懸濁液):EOHILIAは好酸球性食道炎(EoE)の治療薬で、コルチコステロイド薬です。FDAによる承認を受けた初めてかつ唯一の11歳以上のEoE患者さんへの12週間の投与を適応とする経口治療薬です。2024年2月に米国FDAによる承認取得後発売されました。2026年3月期におけるEOHILIAの売上収益は88億円となりました。希少疾患領域における主要製品は以下のとおりです。・タクザイロ(ラナデルマブ):タクザイロは、遺伝性血管性浮腫(HAE)の発作予防に用いられます。タクザイロは、HAEの患者さんにおいて慢性的に制御不能な酵素である血漿カリクレインに選択的に結合し、減少させる完全ヒト型モノクローナル抗体です。タクザイロは(12歳以上の患者さんへの適応として)2018年に米国と欧州にて、2020年に中国にて、2022年に日本にて承認され、さらなる地理的拡大を目指しています。2023年に、2歳以上の小児患者さんに対する治療薬として、FDAおよび欧州委員会の承認を取得しました。また、2025年2月に、12歳以上の遺伝性血管性浮腫患者さんへの皮下投与用のタクザイロの追加の選択肢である2mLのプレフィルドペンが欧州医薬品庁(EMA)および厚生労働省から承認されました。2026年3月期におけるタクザイロの売上収益は2,239億円となりました。・アドベイト(抗血友病因子(遺伝子組換え型)):アドベイトは、血友病A(血液凝固第Ⅷ因子欠乏)の治療薬であり、出血の制御と予防、周術期管理および出血の頻度を予防または軽減するために行う定期補充療法に使用されます。2026年3月期におけるアドベイトの売上収益は1,055億円となりました。・エラプレース(イデュルスルファーゼ):エラプレースは、ハンター症候群(ムコ多糖症II型またはMPS II)に対する酵素補充治療薬です。2026年3月期におけるエラプレースの売上収益は1,005億円となりました。・リプレガル(アガルシダーゼ アルファ):リプレガルは、ファブリー病に対して米国以外の市場で販売され、2020年に中国でも承認された酵素補充療法治療薬です。当社は、2022年2月に大日本住友製薬株式会社から「リプレガル」の日本における製造販売承認を承継し、同剤の販売の移管を受けました。ファブリー病は、脂肪の分解に関与するリソソーム酵素α-ガラクトシダーゼAの活性の欠如に起因する遺伝子性の希少疾患です。2026年3月期におけるリプレガルの売上収益は804億円となりました。・ビプリブ(ベラグルセラーゼアルファ点滴静注用):ビプリブはI型ゴーシェ病に対する長期酵素補充療法治療剤です。2026年3月期におけるビプリブの売上収益は572億円となりました。・アディノベイト/ADYNOVI(抗血友病因子(遺伝子組換え型) [PEG化]):アディノベイト/ADYNOVIは、血友病A治療薬であり、遺伝子組換え型半減期延長第Ⅷ因子製剤です。アディノベイト/ADYNOVIは遺伝子組換え型半減期延長第Ⅷ因子製剤アドベイトと同じ製造工程で作られ、当社がネクター社より独占的にライセンス取得しているPEG化(体内での循環時間を延長し、投与頻度を減らすための化学修飾処理)技術を追加したものです。2026年3月期におけるアディノベイト/ADYNOVIの売上収益は567億円となりました。・リブテンシティ (maribavir):リブテンシティは、成人患者さんと小児患者さん(12歳以上で体重35kg以上)に対する、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカルネット、またはシドフォビルに対して遺伝子型抵抗性(無しも含みます)を示す難治性の移植後サイトメガロウイルス(CMV)感染/感染症治療薬であり、2021年12月に米国において発売され、2022年11月に欧州、2023年12月に中国において承認されました。リブテンシティは、高いアンメット・メディカル・ニーズによる順調な市場浸透、急速なエリア拡大、迅速なマーケットアクセスにより、上市後も好調な業績となりました。2026年3月期におけるリブテンシティの売上収益は469億円となりました。・アジンマ(遺伝子組換え ADAMTS13-krhn):アジンマは先天性血栓性血小板減少性紫斑病(cTTP)の成人および小児患者さんの予防的治療薬ならびに酵素補充療法であり、欠乏したADAMTS13酵素を補充することによりcTTP患者さんのアンメット・メディカル・ニーズに対応するFDAに承認された初めてかつ唯一の遺伝子組換えADAMTS13(rADAMTS13)です。 また、アジンマ(一般名: アパダムターゼ アルファ(遺伝子組換え)/シナキサダムターゼ アルファ(遺伝子組換え))が、日本においては12歳以上の患者さん、欧州(EMA市場)においてはすべての年齢層の患者さんを対象としたcTTP治療薬として承認されました。2026年3月期におけるアジンマの売上収益は120億円となりました。血漿分画製剤(PDT)領域における主要製品は以下のとおりです。・GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG(静注用人免疫グロブリン10%製剤):GAMMAGARD LIQUIDは、抗体補充療法用免疫グロブリン(以下、「IG」)の液体製剤です。GAMMAGARD LIQUIDは、原発性免疫不全症(PID)の成人および2歳以上の小児患者さんに対して使用され、静注または皮下注のいずれかの方法で投与します。また、GAMMAGARD LIQUIDは、成人の多巣性運動ニューロパチー(MMN)患者さんに対しても静注投与にて使用されます。2024年1月に、米国において、GAMMAGARD LIQUIDが、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)の成人患者さんの治療薬として承認されました。GAMMAGARD LIQUIDは、米国以外の多くの国で製品名KIOVIGとして販売されています。KIOVIGは、欧州において、CIDPを含む、複数の適応症への使用が承認されています。・ハイキュービア(ヒト免疫グロブリン注射製剤10%):ハイキュービアは、ヒト免疫グロブリン(IG)および遺伝子組換え型ヒトヒアルロニダーゼ(Halozyme社よりライセンス取得)からなる製剤です。ハイキュービアは、PID患者さんに対して最長で1ヶ月に1回の投与で、1回あたりの注射部位一ヶ所でIGの全治療用量の投与が可能な唯一のIG皮下注用治療薬です。ハイキュービアは、米国では成人PID患者さんへの使用、欧州においてはPID症候群および骨髄腫患者さんまたは重度の続発性低ガンマグロブリン血症および回帰感染を伴う慢性リンパ性白血病患者さんへの使用、また日本においてはPID患者さんまたは無又は低ガンマグロブリン血症を伴う続発性免疫不全症の患者さんへの使用が承認されております。2024年1月に、ハイキュービアは、米国において、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)の成人患者さんの再発予防の維持療法として、また、欧州においては、すべての年齢のCIDPの患者さんの維持療法として承認されました。• キュービトル(ヒト免疫グロブリン皮下注用20%製剤):キュービトルは、原発性体液性免疫不全症の成人および2歳以上の小児患者さんに対する補充療法に用いられます。キュービトルは、欧州では特定の続発性免疫不全の治療薬としても承認されています。キュービトルは、プロリン不含で、投与部位1ヶ所あたりの耐用量内で最大60 mL(12g)および1時間あたり60 mLまで投与可能な唯一の20%皮下IG治療薬であり、従来の皮下IG治療薬と比較してより少ない投与部位および短い投与時間での使用が可能です。2026年3月期におけるGAMMAGARD LIQUID/KIOVIG、ハイキュービア、キュービトルを含む免疫グロブリン製剤の売上収益は7,906億円となりました。・FLEXBUMIN(ヒトアルブミンバッグ製剤)およびヒトアルブミン(ガラス瓶製剤):FLEXBUMINおよびヒトアルブミンは、濃度5%、20%および25%の液体製剤として販売されています。両製品とも、血液量減少症、一般的な原因および火傷による低アルブミン血症、ならびに心肺バイパス手術時のポンプのプライミングに使用されます。また、FLEXBUMIN 25%製剤は、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)およびネフローゼに関連する低アルブミン血症、ならびに新生児溶血性疾患(HDN)にも適応されます。2026年3月期におけるFLEXBUMINおよびヒトアルブミン(ガラス瓶製剤入り)を含むアルブミン製剤の売上収益は1,403億円となりました。オンコロジー領域における主要製品は以下のとおりです。・アドセトリス(ブレンツキシマブ ベドチン):アドセトリスは、ホジキンリンパ腫(HL)および全身性未分化大細胞リンパ腫(sALCL)の治療に使用される抗癌剤で、2020年5月には中国で承認され世界70カ国以上で販売承認を受けております。当社は、現在Pfizer Inc.の完全子会社であるSeagen, Inc.とアドセトリスを共同開発し、米国およびカナダ以外の国での販売権を保有しています。2026年3月期におけるアドセトリスの売上収益は1,402億円となりました。・リュープリン/ENANTONE(リュープロレリン):リュープリン/ENANTONEは、前立腺がんや乳がん、小児の中枢性思春期早発症、子宮内膜症や不妊治療、子宮筋腫による貧血の症状改善に用いられる治療薬です。リュープロレリンの特許期間は満了していますが、製造の観点から後発品の市場参入は限定的です。2026年3月期におけるリュープリン/ENANTONEの売上収益は1,208億円となりました。・ニンラーロ(イキサゾミブ):ニンラーロは、多発性骨髄腫(MM)治療に対する初めての経口プロテアソーム阻害剤です。ニンラーロは、再発又は難治性の多発性骨髄腫の効能で、2015年に米国で承認されて以来、2016年に欧州、2017年に日本、2018年に中国で承認されております。日本においては、多発性骨髄腫の維持療法の治療薬としても承認を受けております。2026年3月期におけるニンラーロの売上収益は821億円となりました。・アイクルシグ(ポナチニブ塩酸塩):BCR-ABLに作用するチロシンキナーゼ阻害薬であり、慢性骨髄性白血病(CML)とフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ ALL)の治療に適応となります。2016年に米国において全面的な承認を取得した後、2020年と2024年に米国において適用拡大の承認を取得しました。当社は米国とオーストラリアにおいて販売権を取得しております。米国とオーストラリア以外の地域では、認可を受けたパートナー5社により60を超える市場において販売されており、当社はこれらのパートナーから、供給、ロイヤリティおよびマイルストンの支払を受領しており、その水準はパートナーによって異なります。2026年3月期におけるアイクルシグの売上収益は750億円となりました。・FRUZAQLA(フルキンチニブ):フルオロピリミジン、オキサリプラチン、およびイリノテカンを含む化学療法、抗VEGF療法、および抗EGFR療法(RAS野生型で医学的に適切な場合)の治療歴があるmCRC成人患者さんに対する治療薬です。FRUZAQLAは、3種類のVEGF受容体キナーゼすべてに対して選択性を有する内服阻害薬として、米国、欧州、日本のほか、世界中の幾つもの国々で承認されております。当社は中国本土、香港、マカオ外でのフルキンチニブのグローバル開発、商業化および製造をさらに進めるための独占的ライセンスを有しています。フルキンチニブは中国ではHUTCHMED社により開発および販売されています。2026年3月期におけるFRUZAQLAの売上収益は551億円となりました。・アルンブリグ(ブリグチニブ):アルンブリグは、非小細胞肺がん(NSCLC)治療に使用される経口投与の低分子未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤であり、クリゾチニブ投与中に進行した、またはクリゾチニブに不耐性を示す患者さんに対する治療薬として、2017年に米国で迅速承認され、2018年にEUにおいて、クリゾチニブの治療歴を有する患者さん向けの販売承認を取得しました。2020年に米国とEUの両方において、新たにALK陽性転移性NSCLCと診断された患者さんに対する効能が追加されました。2021年1月に、日本において、ファーストラインおよびセカンドラインの治療薬として承認されました。また2022年3月に、アルンブリグは中国において承認されました。2026年3月期におけるアルンブリグの売上収益は369億円となりました。ニューロサイエンス領域における主要製品は以下のとおりです。・VYVANSE/ELVANSE(リスデキサンフェタミンメシル酸塩):VYVANSE/ELVANSE(国内製品名:ビバンセ)は、6歳以上の注意欠陥・多動性障害(ADHD)患者さんおよび成人の中程度から重度の過食性障害患者さんの治療に用いられる中枢神経刺激剤です。2023年以降、米国において後発品が市場に参入したことにより、売上は減少しました。2026年3月期におけるVYVANSE/ELVANSEの売上収益は2,032億円となりました。・トリンテリックス(ボルチオキセチン臭化水素酸塩):トリンテリックスは、成人大うつ病性障害の治療に適応される抗うつ薬です。トリンテリックスはH. Lundbeck A/S社と共同開発し、当社は米国および日本での販売権を保有しており、米国では2014年、また日本では2019年より販売しています。2026年3月期におけるトリンテリックスの売上収益は1,218億円となりました。ワクチン領域における主要製品は以下のとおりです。・QDENGA(4価デング熱ワクチン):QDENGAは4つのデングウイルス血清型すべての遺伝子的“バックボーン”となる、弱毒化した生のデング2型ウイルスを基盤に構築されています。QDENGAはテング熱流行国および渡航市場を含む40カ国以上で承認されています。2026年3月期における QDENGAの売上収益は408億円となりました。売上収益の地域別内訳は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4 事業セグメントおよび売上収益」をご参照下さい。
対処すべき課題
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 タケダの企業理念当社の企業理念は、当社が誰であるか、何を行うか、どのように行うか、なぜそれが重要なのかというタケダのストーリーを伝えています。私たちは、次の時代に踏み出すにあたり、より健康な世界の実現という世代を超えて受け継がれる約束を果たすべく、引き続き取り組んでまいります。私たちの存在意義は、世界中の人々の健康と輝かしい未来に貢献することにあります。このため私たちは、革新的な医薬品を創出し続けるというビジョンを追求しています。当社の従業員はこの存在意義のもとに結束し、245年にわたり当社の礎となってきた誠実、公正、正直、不屈の価値観に基づいて行動しています。そして、患者さん、株主、社会に対する長期的な価値を創造し、従業員、関わる地域コミュニティ、私たちが暮らす地球に対して良い影響を提供し続けることができるよう努めています。 事業環境グローバルなバイオ医薬品企業を取り巻く外部環境は引き続き複雑であり、地政学的分断の進行や国際的な政策の不確実性が続いています。また、継続する緊張関係や同盟関係の変化、貿易政策の変容により、国境を越えた事業運営や長期的な投資計画に対する不透明さが長引いています。こうした動向は、規制の枠組みやサプライチェーンの強靭性、さらにはグローバルな医療市場全体の安定性に対する影響を強めています。主要地域においては、薬価への圧力が引き続き大きな課題となっています。また、各国政府は予算配分を防衛分野にシフトさせており、景気減速やインフレーション、広範な財政圧力を背景に、公的医療費への制約が強まり、薬価への圧力がさらに高まっています。各国政府は患者さんの治療アクセスの拡大を目指しているものの、医療予算の制約は続いています。その結果、薬価や保険適用の条件がより厳格化され、市場導入に要する期間も世界的に長期化しています。米国では、薬価政策の変更が継続的に実施されていることにより、革新的な治療法に係る見通しの不透明性が高まり、今後の投資判断に影響を及ぼす可能性があります。欧州および日本においては、財政的な制約が構造的に存在しており、複数の治療領域における成長が抑えられています。一方で、科学および技術の進展のペースは一段と加速しています。プラットフォームサイエンス、データ分析、オートメーション化、人工知能といった分野の進歩は、新薬の創製・開発・提供の在り方を大きく変えつつあります。このような状況において、当社は、重点疾患領域に経営資源を集中し、製造・供給・品質に係る規律を一層高め、人を軸としながらも積極的にテクノロジーを活用する変革を推進し、科学的妥当性の確保と患者さんからの信頼維持に努めていきます。当社は、研究開発において着実な進展を遂げており、将来に向けて良好な基盤を築いています。重点疾患領域に注力した取り組みとデジタル技術の活用の拡大により、革新的な医薬品をより迅速かつ効率的に患者さんにお届けする体制を強化しています。外部環境の厳しさが増す中にあっても、患者さんを最優先に考え、責任をもって科学を前進させることは、今後も事業運営の根幹であり続けます。 私たちが描く将来ビジョン科学の急速な進展と医療を取り巻く国際的な事業環境の複雑化が進む中、当社の戦略は、革新的な新薬を連続的に上市していく取り組みを通じて、短期的に確かな成果を積み重ね、成長の加速に向けた基盤を整えるものです。2025年には、後期開発段階にあるoveporexton、rusfertideおよびザソシチニブの3つの主力パイプラインにおいて、臨床第3相試験で良好な結果を得ることができました。いずれも数十億米ドル規模の売上収益をもたらす可能性を有しています。これらの成果は、当社パイプラインの層の厚さと研究開発の質の高さを示すとともに、厳格な規制要件や製品の市場展開において求められる重要なマイルストンを達成する当社の実行力を示しています。当社は、事業成長を段階的に実現する考え方として、短期に変革を進めるHorizon1と、中長期の成長と患者さんへのさらなる貢献を加速するHorizon2という二つの時間軸を設定し、事業を展開していきます。Horizon1では、投資と全社的な変革により、競争力と成長の基盤を短期的に強化します。Horizon2では、複数の新薬の市場浸透と規模の拡大を通じて、中長期的な成長を加速し、より多くの患者さんにさらに貢献し、株主の皆様に長期的な価値を創出します。当社は、私たちの存在意義と価値観に基づき、二つのHorizonを通じて、革新的な医薬品を一日でも早く患者さんにお届けしていきます。Horizon1:成長に向けた変革Horizon1では、新薬の上市、後期開発段階にある強固なパイプラインの推進、およびオペレーションの変革に取り組みます。本年1月以降、CEO交代計画の最終段階として、当社は組織体制および業務運営の見直しを進めてきました。次期CEOのジュリー・キムは、新たな経営体制を構築し、患者さんや顧客により近いところでの事業意思決定を可能にする組織の再設計を行いました。この新しい組織体制のもと、業務の標準化・簡素化を進めながら先進技術の導入を加速し、当社の価値観をゆるぎない軸として維持しながらも、スピードと成果に対するこだわりを追求していきます。主要な研究開発活動の内容および進捗の詳細については、「6 研究開発活動」をご参照ください。Horizon 1では、今後12カ月の間に予定している複数の新薬の上市を確実に遂行するため、必要な経営資源の確保を進めます。また、この期間では、5つの後期開発品をはじめとする、重点疾患領域(消化器系・炎症性疾患、ニューロサイエンス、オンコロジー)におけるパイプラインの開発を進めながら、一方で、厳しい市場環境下においても、ENTYVIOやGAMMAGARD LIQUID/KIOVIGなどの製品が競争力を維持できるよう取り組んでいきます。Horizon 1の中核を成すのは、コスト規律の徹底と戦略的な投資の両立です。その一環として、当社は2028年度までに年換算で2,000億円以上の費用を節減し、その成果を新薬の上市、パイプラインの強化およびテクノロジーへの投資に充当していきます。こうした取り組みを通じて、財務の健全性を維持しながら、さらなる成長に向けた基盤を強化していきます。この間、調整後フリー・キャッシュ・フロー(注)を潤沢に創出し続けることが、成長に向けた投資と株主還元を両立させるための礎となります。(注)定義については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ④当社グループが定義および表示するIFRSに準拠しない補足的財務指標」をご参照ください。Horizon2:成長の加速Horizon1で規律ある投資を進めながら新薬上市を成功させることで、Horizon 2でタケダの次なる成長期を切り拓く牽引役が、成熟化が進む既存ポートフォリオから新たな主力製品群へ移行していきます。この新たな製品群には、oveporexton、rusfertide、ザソシチニブに加え、現在の後期開発パイプラインからさらなる新薬が順次加わることを見込んでいます。これら新主力製品群の収益貢献に加え、事業運営のさらなる効率化を継続的に推進することで、既存ポートフォリオの成熟化を乗り越える持続的な成長を実現していきます。当社は、次世代の科学とテクノロジーを駆使しながら、医薬品とそれによって実現される治療の成果において、可能性そのものを再定義することに挑んでいきます。この挑戦こそが、患者さんの生活と社会にもたらす価値を最大化することにつながると信じているからです。変革の原動力となるテクノロジーこの新たな時代において、テクノロジーはそれ自体が目的ではなく、当社の変革を実現するための中核を成すものです。テクノロジーは、私たちが価値を創出・開発し、提供していく取り組みと不可分に結びつき、探求心や創造力、チームが持つ集合知を一層引き出す力となっています。人工知能、デジタルプラットフォームおよび高度なデータ分析は、現在、バリューチェーンのあらゆる段階に組み込まれています。これらのテクノロジーは、意思決定や業務遂行のスピードを高め、その質を向上させるとともに、部門間の壁を取り払い、迅速な学習、部門横断的な機動性の向上および業務運営の最適化を重視する文化を育んでいます。当社において、テクノロジーは単なるツールにとどまらず、協働しながら可能性を広げる存在となっています。高度なプラットフォームとデータに基づく知見を従業員が活用することで、患者さんの差し迫ったニーズへの対応、意義ある価値の創出、成長の推進、そしてあらゆるステークホルダーとの持続的な信頼関係の構築といった、最も重要な課題に注力できる環境を整えています。 コラボレーションと成果が切り拓く未来医療における意義ある前進は、パートナーシップによってもたらされるものと考えています。私たちの目指す未来は、社内にとどまらず、バイオ医薬品業界全体、さらには科学コミュニティ、規制当局、患者さんコミュニティとの幅広い連携に根ざしています。官民のパートナーシップ、グローバルな連携、地域社会との対話を通じて、日々多様な声を積極的に取り入れ、解決策を共に創り上げています。こうしたパートナーシップへのコミットメントは、次のイノベーションの創出の在り方にも表れます。オープンサイエンスや共有プラットフォームの活用、また、様々な関係者との連携は、今後ますます複雑化する医療課題に向き合う上で重要な役割を果たします。分野や地域を越えて協働することで、医療へのアクセスを拡大し、公平な治療成果の実現を後押しし、私たちの取り組みがもたらす価値を将来にわたり一層広げていきます。 財務展望強固な財務基盤と明確な戦略フレームワークのもと、当社は持続的な成長と長期的な価値創造を財務面から支える取り組みを進めています。短中期的(Horizon 1)には、成熟化が進む既存ポートフォリオの安定性と競争力を基盤としつつ、oveporexton、rusfertide、ザソシチニブなどの有望な新製品について、薬事承認および上市にむけた重要なマイルストンの達成に注力するとともに、後期開発段階にあるパイプライン全体の開発を着実に推進していきます。収益性を維持するため、組織体制の最適化を進めるとともに、データおよびテクノロジーを活用し、意思決定と業務運営双方の効率性を改善していきます。こうした取り組みに加え、事業構造再編費用を含むその他の営業費用の削減と、有利子負債の返済を通じた金融費用の削減により、まずは、配当の持続性を確保する、ROE5%を上回る水準の財務上当期利益を達成することを目標とします。当社の事業は強い現金創出力を持ちますが、資本配分の規律を維持し、資本効率を持続的に向上させていきます。成長に向けた継続的な投資を行いながらも潤沢な調整後フリー・キャッシュ・フロー(注)を確保し、さらなる有利子負債の削減を進めるとともに、累進配当を維持していきます。長期的(Horizon 2)には、成熟化が進む既存ポートフォリオに代わり、新製品の収益貢献が当社の成長加速の牽引役になるものと考えています。費用管理の規律を維持しながら売上高を伸ばすことが、30%台前半から半ばのCore営業利益率(注)に向けた、収益性改善のドライバーとなっていきます。また、調整後純有利子負債/調整後EBITDA倍率(注)は2倍を目標水準とし、持続的な成長に向けたさらなる投資を可能にする強固な財務基盤を構築していきます。当社は、これらの取り組みを通じて業績を持続的に改善し、その取り組みの積み重ねにより、企業価値の向上および競争力ある株主総利回りを実現していきます。 (注)定義については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ④当社グループが定義および表示するIFRSに準拠しない補足的財務指標」をご参照ください。 [主要製品一覧]消化器系疾患領域における主要製品は以下のとおりです。・ENTYVIO(ベドリズマブ):ENTYVIO(国内製品名:エンタイビオ)は、中等症から重症の潰瘍性大腸炎・クローン病に対する治療剤です。ENTYVIOは、2014年に米国および欧州において発売以来、売上が伸長しており、2026年3月期の当社グループの売上トップ製品でした。現在、ENTYVIOは世界70カ国以上で承認され、エンタイビオ皮下注射製剤は米国、欧州および日本において承認されています。エンタイビオ皮下注射製剤は、その利便性および患者アクセスの向上により、当該製品の使用拡大を牽引しています。また、当社は、さらなる国・地域での承認取得および適応症の拡大を通じて、本剤の可能性の最大化に取り組んでいます。2026年3月期におけるENTYVIOの売上収益は9,580億円となりました。・GATTEX/レベスティブ(テデュグルチド[DNA組換え型]):非経口(静脈栄養)サポートを必要とする短腸症候群(SBS)の治療薬です。成人用および小児用の効能を有するGATTEX/レベスティブが米国、欧州、日本において発売されました。2026年3月期におけるGATTEX/レベスティブの売上収益は1,457億円となりました。・タケキャブ/VOCINTI(ボノプラザンフマル酸塩):酸関連疾患の治療剤タケキャブは、2015年に日本で発売され、逆流性食道炎や低用量アスピリン投与時における胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発抑制などの効能により飛躍的な成長を遂げました。タケキャブ(中国の製品名:VOCINTI)は、2019年に胃食道逆流症の治療剤として中国で承認されました。2026年3月期におけるタケキャブ/VOCINTIの売上収益は1,437億円となりました。・EOHILIA(ブデソニド経口懸濁液):EOHILIAは好酸球性食道炎(EoE)の治療薬で、コルチコステロイド薬です。FDAによる承認を受けた初めてかつ唯一の11歳以上のEoE患者さんへの12週間の投与を適応とする経口治療薬です。2024年2月に米国FDAによる承認取得後発売されました。2026年3月期におけるEOHILIAの売上収益は88億円となりました。希少疾患領域における主要製品は以下のとおりです。・タクザイロ(ラナデルマブ):タクザイロは、遺伝性血管性浮腫(HAE)の発作予防に用いられます。タクザイロは、HAEの患者さんにおいて慢性的に制御不能な酵素である血漿カリクレインに選択的に結合し、減少させる完全ヒト型モノクローナル抗体です。タクザイロは(12歳以上の患者さんへの適応として)2018年に米国と欧州にて、2020年に中国にて、2022年に日本にて承認され、さらなる地理的拡大を目指しています。2023年に、2歳以上の小児患者さんに対する治療薬として、FDAおよび欧州委員会の承認を取得しました。また、2025年2月に、12歳以上の遺伝性血管性浮腫患者さんへの皮下投与用のタクザイロの追加の選択肢である2mLのプレフィルドペンが欧州医薬品庁(EMA)および厚生労働省から承認されました。2026年3月期におけるタクザイロの売上収益は2,239億円となりました。・アドベイト(抗血友病因子(遺伝子組換え型)):アドベイトは、血友病A(血液凝固第Ⅷ因子欠乏)の治療薬であり、出血の制御と予防、周術期管理および出血の頻度を予防または軽減するために行う定期補充療法に使用されます。2026年3月期におけるアドベイトの売上収益は1,055億円となりました。・エラプレース(イデュルスルファーゼ):エラプレースは、ハンター症候群(ムコ多糖症II型またはMPS II)に対する酵素補充治療薬です。2026年3月期におけるエラプレースの売上収益は1,005億円となりました。・リプレガル(アガルシダーゼ アルファ):リプレガルは、ファブリー病に対して米国以外の市場で販売され、2020年に中国でも承認された酵素補充療法治療薬です。当社は、2022年2月に大日本住友製薬株式会社から「リプレガル」の日本における製造販売承認を承継し、同剤の販売の移管を受けました。ファブリー病は、脂肪の分解に関与するリソソーム酵素α-ガラクトシダーゼAの活性の欠如に起因する遺伝子性の希少疾患です。2026年3月期におけるリプレガルの売上収益は804億円となりました。・ビプリブ(ベラグルセラーゼアルファ点滴静注用):ビプリブはI型ゴーシェ病に対する長期酵素補充療法治療剤です。2026年3月期におけるビプリブの売上収益は572億円となりました。・アディノベイト/ADYNOVI(抗血友病因子(遺伝子組換え型) [PEG化]):アディノベイト/ADYNOVIは、血友病A治療薬であり、遺伝子組換え型半減期延長第Ⅷ因子製剤です。アディノベイト/ADYNOVIは遺伝子組換え型半減期延長第Ⅷ因子製剤アドベイトと同じ製造工程で作られ、当社がネクター社より独占的にライセンス取得しているPEG化(体内での循環時間を延長し、投与頻度を減らすための化学修飾処理)技術を追加したものです。2026年3月期におけるアディノベイト/ADYNOVIの売上収益は567億円となりました。・リブテンシティ (maribavir):リブテンシティは、成人患者さんと小児患者さん(12歳以上で体重35kg以上)に対する、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカルネット、またはシドフォビルに対して遺伝子型抵抗性(無しも含みます)を示す難治性の移植後サイトメガロウイルス(CMV)感染/感染症治療薬であり、2021年12月に米国において発売され、2022年11月に欧州、2023年12月に中国において承認されました。リブテンシティは、高いアンメット・メディカル・ニーズによる順調な市場浸透、急速なエリア拡大、迅速なマーケットアクセスにより、上市後も好調な業績となりました。2026年3月期におけるリブテンシティの売上収益は469億円となりました。・アジンマ(遺伝子組換え ADAMTS13-krhn):アジンマは先天性血栓性血小板減少性紫斑病(cTTP)の成人および小児患者さんの予防的治療薬ならびに酵素補充療法であり、欠乏したADAMTS13酵素を補充することによりcTTP患者さんのアンメット・メディカル・ニーズに対応するFDAに承認された初めてかつ唯一の遺伝子組換えADAMTS13(rADAMTS13)です。 また、アジンマ(一般名: アパダムターゼ アルファ(遺伝子組換え)/シナキサダムターゼ アルファ(遺伝子組換え))が、日本においては12歳以上の患者さん、欧州(EMA市場)においてはすべての年齢層の患者さんを対象としたcTTP治療薬として承認されました。2026年3月期におけるアジンマの売上収益は120億円となりました。血漿分画製剤(PDT)領域における主要製品は以下のとおりです。・GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG(静注用人免疫グロブリン10%製剤):GAMMAGARD LIQUIDは、抗体補充療法用免疫グロブリン(以下、「IG」)の液体製剤です。GAMMAGARD LIQUIDは、原発性免疫不全症(PID)の成人および2歳以上の小児患者さんに対して使用され、静注または皮下注のいずれかの方法で投与します。また、GAMMAGARD LIQUIDは、成人の多巣性運動ニューロパチー(MMN)患者さんに対しても静注投与にて使用されます。2024年1月に、米国において、GAMMAGARD LIQUIDが、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)の成人患者さんの治療薬として承認されました。GAMMAGARD LIQUIDは、米国以外の多くの国で製品名KIOVIGとして販売されています。KIOVIGは、欧州において、CIDPを含む、複数の適応症への使用が承認されています。・ハイキュービア(ヒト免疫グロブリン注射製剤10%):ハイキュービアは、ヒト免疫グロブリン(IG)および遺伝子組換え型ヒトヒアルロニダーゼ(Halozyme社よりライセンス取得)からなる製剤です。ハイキュービアは、PID患者さんに対して最長で1ヶ月に1回の投与で、1回あたりの注射部位一ヶ所でIGの全治療用量の投与が可能な唯一のIG皮下注用治療薬です。ハイキュービアは、米国では成人PID患者さんへの使用、欧州においてはPID症候群および骨髄腫患者さんまたは重度の続発性低ガンマグロブリン血症および回帰感染を伴う慢性リンパ性白血病患者さんへの使用、また日本においてはPID患者さんまたは無又は低ガンマグロブリン血症を伴う続発性免疫不全症の患者さんへの使用が承認されております。2024年1月に、ハイキュービアは、米国において、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)の成人患者さんの再発予防の維持療法として、また、欧州においては、すべての年齢のCIDPの患者さんの維持療法として承認されました。• キュービトル(ヒト免疫グロブリン皮下注用20%製剤):キュービトルは、原発性体液性免疫不全症の成人および2歳以上の小児患者さんに対する補充療法に用いられます。キュービトルは、欧州では特定の続発性免疫不全の治療薬としても承認されています。キュービトルは、プロリン不含で、投与部位1ヶ所あたりの耐用量内で最大60 mL(12g)および1時間あたり60 mLまで投与可能な唯一の20%皮下IG治療薬であり、従来の皮下IG治療薬と比較してより少ない投与部位および短い投与時間での使用が可能です。2026年3月期におけるGAMMAGARD LIQUID/KIOVIG、ハイキュービア、キュービトルを含む免疫グロブリン製剤の売上収益は7,906億円となりました。・FLEXBUMIN(ヒトアルブミンバッグ製剤)およびヒトアルブミン(ガラス瓶製剤):FLEXBUMINおよびヒトアルブミンは、濃度5%、20%および25%の液体製剤として販売されています。両製品とも、血液量減少症、一般的な原因および火傷による低アルブミン血症、ならびに心肺バイパス手術時のポンプのプライミングに使用されます。また、FLEXBUMIN 25%製剤は、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)およびネフローゼに関連する低アルブミン血症、ならびに新生児溶血性疾患(HDN)にも適応されます。2026年3月期におけるFLEXBUMINおよびヒトアルブミン(ガラス瓶製剤入り)を含むアルブミン製剤の売上収益は1,403億円となりました。オンコロジー領域における主要製品は以下のとおりです。・アドセトリス(ブレンツキシマブ ベドチン):アドセトリスは、ホジキンリンパ腫(HL)および全身性未分化大細胞リンパ腫(sALCL)の治療に使用される抗癌剤で、2020年5月には中国で承認され世界70カ国以上で販売承認を受けております。当社は、現在Pfizer Inc.の完全子会社であるSeagen, Inc.とアドセトリスを共同開発し、米国およびカナダ以外の国での販売権を保有しています。2026年3月期におけるアドセトリスの売上収益は1,402億円となりました。・リュープリン/ENANTONE(リュープロレリン):リュープリン/ENANTONEは、前立腺がんや乳がん、小児の中枢性思春期早発症、子宮内膜症や不妊治療、子宮筋腫による貧血の症状改善に用いられる治療薬です。リュープロレリンの特許期間は満了していますが、製造の観点から後発品の市場参入は限定的です。2026年3月期におけるリュープリン/ENANTONEの売上収益は1,208億円となりました。・ニンラーロ(イキサゾミブ):ニンラーロは、多発性骨髄腫(MM)治療に対する初めての経口プロテアソーム阻害剤です。ニンラーロは、再発又は難治性の多発性骨髄腫の効能で、2015年に米国で承認されて以来、2016年に欧州、2017年に日本、2018年に中国で承認されております。日本においては、多発性骨髄腫の維持療法の治療薬としても承認を受けております。2026年3月期におけるニンラーロの売上収益は821億円となりました。・アイクルシグ(ポナチニブ塩酸塩):BCR-ABLに作用するチロシンキナーゼ阻害薬であり、慢性骨髄性白血病(CML)とフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ ALL)の治療に適応となります。2016年に米国において全面的な承認を取得した後、2020年と2024年に米国において適用拡大の承認を取得しました。当社は米国とオーストラリアにおいて販売権を取得しております。米国とオーストラリア以外の地域では、認可を受けたパートナー5社により60を超える市場において販売されており、当社はこれらのパートナーから、供給、ロイヤリティおよびマイルストンの支払を受領しており、その水準はパートナーによって異なります。2026年3月期におけるアイクルシグの売上収益は750億円となりました。・FRUZAQLA(フルキンチニブ):フルオロピリミジン、オキサリプラチン、およびイリノテカンを含む化学療法、抗VEGF療法、および抗EGFR療法(RAS野生型で医学的に適切な場合)の治療歴があるmCRC成人患者さんに対する治療薬です。FRUZAQLAは、3種類のVEGF受容体キナーゼすべてに対して選択性を有する内服阻害薬として、米国、欧州、日本のほか、世界中の幾つもの国々で承認されております。当社は中国本土、香港、マカオ外でのフルキンチニブのグローバル開発、商業化および製造をさらに進めるための独占的ライセンスを有しています。フルキンチニブは中国ではHUTCHMED社により開発および販売されています。2026年3月期におけるFRUZAQLAの売上収益は551億円となりました。・アルンブリグ(ブリグチニブ):アルンブリグは、非小細胞肺がん(NSCLC)治療に使用される経口投与の低分子未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤であり、クリゾチニブ投与中に進行した、またはクリゾチニブに不耐性を示す患者さんに対する治療薬として、2017年に米国で迅速承認され、2018年にEUにおいて、クリゾチニブの治療歴を有する患者さん向けの販売承認を取得しました。2020年に米国とEUの両方において、新たにALK陽性転移性NSCLCと診断された患者さんに対する効能が追加されました。2021年1月に、日本において、ファーストラインおよびセカンドラインの治療薬として承認されました。また2022年3月に、アルンブリグは中国において承認されました。2026年3月期におけるアルンブリグの売上収益は369億円となりました。ニューロサイエンス領域における主要製品は以下のとおりです。・VYVANSE/ELVANSE(リスデキサンフェタミンメシル酸塩):VYVANSE/ELVANSE(国内製品名:ビバンセ)は、6歳以上の注意欠陥・多動性障害(ADHD)患者さんおよび成人の中程度から重度の過食性障害患者さんの治療に用いられる中枢神経刺激剤です。2023年以降、米国において後発品が市場に参入したことにより、売上は減少しました。2026年3月期におけるVYVANSE/ELVANSEの売上収益は2,032億円となりました。・トリンテリックス(ボルチオキセチン臭化水素酸塩):トリンテリックスは、成人大うつ病性障害の治療に適応される抗うつ薬です。トリンテリックスはH. Lundbeck A/S社と共同開発し、当社は米国および日本での販売権を保有しており、米国では2014年、また日本では2019年より販売しています。2026年3月期におけるトリンテリックスの売上収益は1,218億円となりました。ワクチン領域における主要製品は以下のとおりです。・QDENGA(4価デング熱ワクチン):QDENGAは4つのデングウイルス血清型すべての遺伝子的“バックボーン”となる、弱毒化した生のデング2型ウイルスを基盤に構築されています。QDENGAはテング熱流行国および渡航市場を含む40カ国以上で承認されています。2026年3月期における QDENGAの売上収益は408億円となりました。売上収益の地域別内訳は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4 事業セグメントおよび売上収益」をご参照下さい。
MD&A(経営者による分析)
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況当年度の業績および財政状態は以下のとおりとなりました。 売上収益4兆5,057億円[前年度比758億円(1.7%) 減] 研究開発費6,759億円[ 〃543億円(7.4%) 減] 営業利益62億円[ 〃3,364億円(98.2%) 減] 税引前当期損失△1,424億円[ 〃3,174億円(-) 減] 当期損失△1,521億円[ 〃2,603億円(-) 減] 基本的1株当たり損失△96円75銭[ 〃165円11銭(-) 減] 資産合計15兆5,115億円[前年度末比1兆2,632億円(8.9%) 増] 負債合計8兆809億円[ 〃7,685億円(10.5%) 増] 資本合計7兆4,306億円[ 〃4,947億円(7.1%) 増] なお、当社グループは「医薬品事業」の単一セグメントのため、セグメントごとの経営成績の記載を省略しております。 ② キャッシュ・フローの状況「(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」をご参照下さい。 ③ 生産、受注及び販売の状況 (a) 生産実績当年度における生産実績は次のとおりであります。 セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)医薬品事業2,686,98219.5合計2,686,98219.5 (注) 1 当社グループは「医薬品事業」の単一セグメントであります。 2 生産実績金額は、販売価格によっております。 (b) 受注状況当社グループは、主に販売計画に基づいて生産計画をたてて生産しており、一部の受注生産における受注高および受注残高の金額に重要性はありません。 (c) 販売実績当年度における販売実績は次のとおりであります。 セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)医薬品事業 4,505,720 △1.7 (国内)(433,110)(3.5) (海外)( 4,072,610)(△2.2)連結損益計算書計上額(うちライセンス供与による収益・役務収益) 4,505,720 △1.7 ( 82,609)( △3.5) (注) 1 当社グループは「医薬品事業」の単一セグメントであります。 2 販売実績は、外部顧客に対する売上収益を表示しております。 3 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。 相手先前年度当年度金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)マッケソン・コーポレーションおよびそのグループ会社592,32312.9539,89012.0センコラ Inc.(旧称:アメリソースバーゲン・コーポレーション)およびそのグループ会社577,01712.6470,29510.4 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容① 当年度の経営成績の分析 (a) 当社グループの経営成績に影響を与える事項事業の概況当社グループは、グローバルな研究開発型のバイオ医薬品企業として、消化器系・炎症性疾患、ニューロサイエンス、およびオンコロジーの重点疾患領域において、革新的な医薬品を創出し続けることを追求するとともに、血漿分画製剤およびワクチンをお届けすることにも注力しています。当社グループはパートナーとともに、強固なパイプラインを通じて、患者さんの治療体験の向上を図り、希少疾患および有病率がより高い疾患のいずれにおいても治療パラダイムの変革に取り組んでいます。また、バリューチェーン全体にわたり先進技術や人工知能(AI)の統合を進めることで、事業運営の有効性と効率性を高め、イノベーションを促進し、ステークホルダーへの提供価値の向上につなげています。当社グループは、約80の国と地域で医薬品を販売しており、世界中に製造拠点を有するとともに、日本および米国に主要な研究拠点を有しています。販売においては、米国、日本および欧州において非常に高いプレゼンスを有しており、中国においても成長している事業を展開しています。当社グループの従業員は、私たちの存在意義のもとに結束し、2世紀以上にわたり形作られてきた価値観に根ざして行動しています。当社グループの事業は単一セグメントであり、資源配分、業績評価、および将来業績の予測においてマネジメントの財務情報に対する視点と整合しております。2026年3月期における売上収益および営業利益はそれぞれ4兆5,057億円および62億円であります。 当社グループの経営成績に影響を与える事項当社グループの経営成績は、グローバルな業界トレンドや事業環境における以下の事項に影響を受けます。 特許保護と後発品との競争医薬品は特に、特許保護や規制上の独占権によって市場競争が規制されることにより、当社グループの業績に貢献する場合があります。代替治療の利用が容易でない新製品は当社グループの売上の増加に貢献します。ただし、保護されている製品についても、効能、副作用や価格面で他社との競争が存在します。一方で、特許保護もしくは規制上の独占権の喪失や満了により、後発品が市場に参入するため、当社グループの業績に大きな悪影響を及ぼすことがあります。当社グループの主要製品の一部は、特許やその他の知的財産権保護の満了により、厳しい競争に晒されており、あるいは晒されると予想しています。以下は、過去2年間において、後発品またはバイオシミラーが発売された当社の一部の主要製品の業績を示しています。(「CER(Constant Exchange Rate:恒常為替レート)ベース」の増減は、IFRSに準拠した指標ではありません。詳細については、「④ 当社グループが定義および表示するIFRSに準拠しない補足的財務指標」をご参照ください。)(単位:億円、%以外) 売上収益 増減額 CERベース増減率前年度当年度VYVANSE/ELVANSE3,5062,032△1,474△43%アジルバ11871△47△39.5% 後発品の浸透の影響により、2023年8月に米国において物質特許が満了したVYVANSE/ELVANSEおよび2023年2月に日本において後発品が医薬品医療機器総合機構(PMDA)により承認されたアジルバ(競合品の薬価収載は2023年6月に承認)について、関連する国・地域において、両製品の売上収益が減少しました。VYVANSE/ELVANSEの売上収益は2025年3月期の3,506億円から2026年3月期には2,032億円に減少し、アジルバの売上収益は2025年3月期の118億円から2026年3月期には71億円に減少しました。2027年3月期においても、両製品ともに減少傾向が続くと見込んでいます。さらに、2026年3月期に1,218億円の売上収益を計上しているトリンテリックスについても、2026年12月に一定の独占期間が満了することに伴い、後発医薬品との競争に直面することが見込まれています。なお、後発品を販売する他社が特許権の有効性に対する申し立てに成功する場合、もしくは想定される特許侵害訴訟に係る費用以上のベネフィットを前提として参入することを決定する場合があります。また、当社グループの特許権の有効性、あるいは製品保護に対する申し立てが提起された場合には、関連する無形資産の減損損失を認識する可能性があります。 新製品の開発・商業化および既存製品の拡大当社は特に売上収益を伸長し、独占権喪失の影響を相殺することを目指しており、当社の事業において、新規のバイオ医薬品の開発・商業化のほか、既存製品の適応拡大および(または)地理的市場拡大による既存製品の拡大は重要な取組みです。これらの目標達成までのプロセスは長期にわたり多額の費用を伴い、多額の研究開発費が発生します。これらは当社の連結損益計算書上営業費用として計上しています。当社の研究開発の取組みに関する詳細については、本報告書の「6.研究開発活動」、製品に関連する研究開発費(償却および減損を含む)および無形資産の会計方針については、本報告書の「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3 重要性がある会計方針」をご参照ください。2026年3月期において、当社は、当社のポートフォリオのうち一部の製品を「成長製品・新製品(注)」として特定し、当社の経営陣はこれらの製品を将来の主要な成長ドライバーとしてモニタリングしておりました。これらの成長製品・新製品は、2026年3月期において、当社の連結売上収益の51%を占める2兆3,133億円でありました。2026年3月期の内訳としては、ENTYVIOは9,580億円(当社の連結売上収益の21%)、当社の免疫グロブリン製剤(GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG、ハイキュービア、キュービトル)は7,906億円(当社の連結売上収益の18%)、アルブミン製剤は1,403億円(当社の連結売上収益の3%)、タクザイロは2,239億円(当社の連結売上収益の5%)となりました。2027年3月期より、当社は、「成長製品・新製品」の区分を廃止し、発売後5年以内の製品から構成される「新製品(New Launches)」および、発売後6年以上が経過し、年間売上収益が1,000億円以上であり、かつ引き続き積極的に販売活動を行っている製品から構成される「コア製品(Core In-line Brands)」という区分を新たに設定しております。ライフサイクルの初期段階にある新製品は、連結売上収益への貢献は限定的である場合がありますが、当社の経営者はこれらの製品を将来の主要な成長ドライバーとしてモニターしており、これらの製品に関する情報は、当社が今後成長を見込んでいる領域を投資家に理解していただくにあたり有用であると考えています。当グループを構成する製品は随時変更され、臨床試験の結果や規制当局の認可取得等により、製品を追加または除外する場合があります。2027年3月期の期首時点において、新製品(New Launches)はEOHILIA、リブテンシティ、アジンマ、FRUZAQLAおよびQDENGAから構成され、コア製品(Core In-line Brands)はENTYVIO、GATTEX/レベスティブ、タケキャブ/VOCINTI、タクザイロ、免疫グロブリン製剤(GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG、ハイキュービア、キュービトルを含む)、アルブミン製剤(HUMAN ALBUMIN/FLEXBUMINを含む)およびアドセトリスから構成されています。2026年3月期において、当期に達成した良好な臨床第3相試験結果に基づき、oveporextonおよびrusfertideについてFDAへの承認申請を行い、これらの申請はFDAに受理され、両資産について優先審査(Priority Review)が付与されました。さらに、zasocitinibについては良好な臨床第3相試験結果が得られており、近い将来にFDAへの承認申請を行うことを見込んでいます。これらの資産について上記が成功した場合には、2026年から2027年にかけて上市され、当社が開示する製品区分において新製品(New Launches)として位置づけられる可能性があります。(注)本報告書日現在において、2026年3月期の成長製品・新製品は、以下のとおりです。ENTYVIO、EOHILIA、タクザイロ、リブテンシティ、アジンマ、免疫グロブリン製剤(GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG、ハイキュービア、キュービトルを含む)、アルブミン製剤(HUMAN ALBUMIN、FLEXBUMINを含む)、FRUZAQLA、アルンブリグおよびQDENGA 買収当社グループは、研究開発能力を拡大し(新たな手法に展開することを含みます。)、新しい製品(開発パイプラインや上市済み製品)やその他の戦略的領域を獲得するために、新たな事業または資産を買収する可能性があります。同様に、当社グループの主な成長ドライバーに注力するため、また当社グループのポートフォリオを維持するために、事業や製品ラインを売却しております。これらの買収は企業結合または資産の取得として会計処理されております。企業結合の場合、取得した資産および引き受けた負債は公正価値で計上されております。当社グループの業績は、通常、棚卸資産の公正価値の増加や、取得した有形固定資産および無形資産の償却費により影響を受けます。また、資産の取得の場合、取得した資産は取引価格で計上されております。企業結合または資産の取得の対価が追加的な借入金で賄われている場合、支払利息の増加も当社グループの業績に影響を与えます。2025年3月期および2026年3月期、ならびに本報告書提出日までにおいて、重要な事業または資産の買収はありません。なお、共同研究、ライセンス契約およびその他の資産取得については、本報告書の「6 研究開発活動 ライセンスおよび共同研究開発契約」ならびに「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 13 共同研究開発契約、ライセンス契約、その他の資産取得等」をご参照ください。 事業売却買収に加え、当社グループは、主要な成長ドライバーに注力し、また長期借入金を速やかに返済するための追加キャッシュ・フローを創出するため、事業や製品ラインを売却しております。以下は、2025年3月期において実施または発表された重要な事業売却になります。なお、2026年3月期、ならびに2026年4月1日から本報告書提出日までの期間において、重要な事業売却はありません。当社グループは、2025年3月期にTeva Pharmaceutical Industries Ltd.(「テバ社」)と日本国内において展開するジェネリック医薬品および長期収載品を中心とした合弁事業について、これを解消する方向でテバ社と協議することを決定しました。これに伴い、武田テバファーマ株式会社の全株式である関連会社株式を売却目的で保有する資産に分類し、2025年3月期において189億円の減損損失を計上しました。2025年3月に当該譲渡が完了したことによる売却収入は508億円の受取配当金を含む565億円であり、2025年3月期の連結キャッシュ・フロー計算書に計上された関連会社株式の売却による収入577億円の大部分を構成しています。また、過去の取引で発生した未実現利益が譲渡完了時に実現したことにより17億円と38億円をそれぞれ売上収益とその他の営業収益に計上しました。 原材料の調達による影響重要な原材料を社内外から調達することができない場合に、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、ヒト血漿は当社グループの血漿分画製剤において重要な原材料であります。血漿をより多く収集するため、調達および外部との契約を強化し、原料血漿の収集や血漿分画に関連する施設への委託、および規制当局から承認を受けることに成功するための取り組みを行っております。 外国為替変動2025年3月期および2026年3月期において、当社グループでは日本以外の売上がそれぞれ90.9%、90.4%を占めております。当社グループの業績は、特に当社の表示通貨である日本円に対する米ドルおよびユーロの外国為替レートの変動に影響を受けます。円安は日本円以外の通貨による収益の増加要因となり当社グループの業績に好影響を及ぼしますが、日本円以外の通貨による費用の増加により相殺される可能性があります。とりわけ、2025年3月期および2026年3月期において、他の通貨に対する円安により、当社の売上収益はプラスの影響を受けました。反対に、円高は日本円以外の通貨による収益減少要因となり当社グループの業績に悪影響を及ぼしますが、日本円以外の通貨による費用の減少により相殺される可能性があります。前年度からの為替レートの変動が当社グループの業績に与える影響を投資家がより良く理解できるよう、当社グループは、補足的にCER(Constant Exchange Rate:恒常為替レート)ベースの増減を「CER」の表記で示しています。IFRSに準拠した実勢レート(Actual Exchange Rate)ベースの増減は「AER」の表記で示しています。CERベースの増減率に基づく対前年度の業績比較分析については、下記の「(c) 当年度における業績の概要」及び「(d) 当年度におけるCore業績の概要」をご参照ください。また、「CERベースの増減」は、国際会計基準(IFRS)に準拠した指標ではありません。詳細については、「④ 当社グループが定義および表示するIFRSに準拠しない補足的財務指標」をご参照ください。なお、為替変動リスクを低減するため、当社グループは重要な一部の外貨建取引について、特定のヘッジ手段を利用しております。これには、主に個別に重要な外貨建取引に対する先物為替予約、通貨スワップおよび通貨オプションが含まれます。 季節的要因当社グループの売上収益は、2025年3月期および2026年3月期において第4四半期に減少しています。これは、年末年始休暇および価格引き上げを控え、各国・地域において卸売業者が発注を増加させること、および暦年の年初の米国における保険の年間免責額の改定等によるものです。 (b) 重要な会計方針当社グループの連結財務諸表はIFRSに準拠して作成されております。当連結財務諸表の作成にあたり、経営者は資産および負債の金額、決算日現在の偶発資産および偶発負債の開示、ならびに報告期間における収益および費用の金額に影響を及ぼす見積りおよび仮定の設定を行うことが求められております。見積りおよび仮定は、継続的に見直されます。経営者は、過去の経験、ならびに見積りおよび仮定が設定された時点において合理的であると判断されたその他の様々な要因に基づき当該見積りおよび仮定を設定しております。実際の結果はこれらの見積りおよび仮定とは異なる場合があります。経営者の見積りおよび仮定に影響を受ける重要な会計方針は以下のとおりであります。なお、見積りおよび仮定の変更が連結財務諸表に重大な影響を及ぼす可能性があります。 収益認識「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3 重要性がある会計方針 (5) 収益」をご参照ください。 のれんおよび無形資産の減損当社グループは、のれんおよび無形資産について、資産の帳簿価額が回収不能であるかもしれないことを示す事象または状況の変化がある場合には、減損テストを行っております。のれんおよび償却開始前の無形資産については、年次および減損の兆候を捕捉した時点で減損テストを実施しております。2026年3月31日時点において、当社グループはのれんおよび無形資産をそれぞれ5兆8,090億円および3兆4,193億円計上しており、これは総資産の59.5%を占めております。上市後製品に係る無形資産は特許が存続する見込期間または見込まれる経済的便益に応じた他の指標に基づき、3年から20年の耐用年数を用いて定額法で償却しております。仕掛研究開発品に係る無形資産は、特定の市場における商用化が規制当局により承認されるまで償却をしておりません。商用化が承認された時点で、当該資産の見積耐用年数を確定し、償却を開始しております。のれんおよび無形資産は、通常、連結財政状態計算書上の帳簿価額が回収可能価額を超過する場合には減損していると判断されます。無形資産にかかる回収可能価額は個別資産、またはその資産が他の資産と共同で資金を生成する場合はより大きな資金生成単位ごとに見積られます。資金生成単位は独立したキャッシュ・インフローを形成する最小の識別可能な資産グループであります。のれんの減損テストは単一の事業セグメント単位(単一の資金生成単位)で実施しており、これはのれんを内部管理目的で監視している単位を表しています。回収可能価額の見積りには以下を含む複数の仮定の設定が必要となります。·将来キャッシュ・フローの金額および時期·競合他社の動向(競合製品の販売開始、マーケティングイニシアチブ等)·規制当局からの承認の取得可能性·将来の税率·永続成長率·割引率将来キャッシュ・フローの金額および時期を見積るための重要な仮定には、研究開発プロジェクトの成功見込みおよび製品に係る売上予測があります。特にのれんにかかる回収可能価額の見積りにおいては、米国における特定の製品に係る売上予測が重要な仮定となります。これらの仮定に影響を与える事象としては、開発の中止、大幅な上市の遅延、規制当局の承認が得られないことによる研究開発プロジェクトの失敗、もしくは一般的には新たな競合製品の販売開始や供給不足による、一部の上市後製品にかかる売上予測の低下があげられます。これらの事象が発生した場合、プロジェクト獲得以降に実施した当初もしくは事後の研究開発投資額が回収できない、もしくは見積った将来キャッシュ・フローが回収できない可能性があります。これらの仮定に変更が生じた場合は、当該連結会計年度において減損損失および、のれんを除き、減損損失の戻入れを認識しております。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 11 のれん および 12 無形資産」をご参照ください。 訴訟に係る偶発事象当社グループは、通常の営業活動において主に製造物責任訴訟および賠償責任訴訟に関与しております。詳細については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 31 コミットメントおよび偶発負債」をご参照ください。偶発負債は、その特性から不確実なものであり複雑な判断や可能性に基づいております。訴訟およびその他の偶発事象に係る引当金を算定する際には、該当する訴訟の根拠や管轄、その他の類似した現在および過去の訴訟案件の顛末および発生数、製品の性質、訴訟に関する科学的な事項の評価、和解の可能性ならびに現時点における和解にむけた進行状況等を勘案しております。さらに、未だ提訴されていない製造物責任訴訟については、主に過去の訴訟の経験や製品の使用に係るデータに基づき、費用を合理的に見積ることができる範囲で引当金を計上しております。当社グループが関与する重要な訴訟のうち、それらの最終的な結果により財務上の影響が見込まれる場合であっても、その額について信頼性のある見積りが不可能な訴訟等については、引当金の計上は行っておりません。また、保険の補償範囲期間内である場合は保険による補償についても考慮しております。補償範囲の検討の際に、当社グループは、保険契約の制限や除外、保険会社による補償の拒否の可能性、保険業者の財政状態、ならびに回収可能性および回収期間を考慮しております。引当金および関連する保険補償額の見積りは、連結財政状態計算書上において負債および資産として総額で計上しております。2026年3月31日現在において、係争中の訴訟案件およびその他の案件について4,157億円の引当金を計上しております。 法人所得税当社グループは、税法および税規制の解釈に基づき税務申告を行っており、これらの判断および解釈に基づき税金引当額を計上しております。通常の営業活動において、当社グループの税務申告は様々な税務当局による税務調査の対象であり、これらの調査の結果、追加税額、利息、または罰金の支払いが課される場合があります。各法域における法律、規制および司法判断に基づく税法改正等により、多くの不確実な税務ポジションの評価には固有の不確実性を伴います。税務当局が当社グループの税務ポジションを認める可能性が高くないと判断した場合、当社グループは、当該不確実性の予想される解決に基づき負債を認識します。また、不確実な税務ポジションは、事実および状況の変化に伴い調整されます。これらの税務ポジションは、例えば、現行の税法の改正、税務当局による新たな規制または行政上の解釈指針の発行、税務調査の際に入手した新たな情報、または税務調査の解決により調整が行われる可能性があります。当社グループは、不確実な税務ポジションに係る当社グループの見積りは、現時点において判明している事実および状況に基づき合理的であり、適切に反映されていると判断しております。しかしながら、これらの事項の最終的な結果は、計上された金額と重要な差異が生じる場合があります。また、各報告期間の末日において、繰延税金資産について実現可能額を評価しております。繰延税金資産の回収可能性の評価においては、将来加算一時差異の解消予定、予想される将来課税所得およびタックスプランニングを考慮しております。予想される将来課税所得は、当社グループの事業計画に基づき見積られております。事業計画に用いられる売上収益の予測に関する判断が変更された場合、認識される繰延税金資産の金額に重要な影響を与える可能性があります。過去の課税所得の水準および一時差異が損金算入可能となる期間における将来課税所得の見積りに基づき、実現する可能性が高いと判断される税務上の便益の額を算定しております。2026年3月31日現在における繰延税金資産を認識していない未使用の繰越欠損金、将来減算一時差異、および未使用の繰越税額控除は、それぞれ1兆2,073億円、7,138億円、および294億円であります。将来における見積りおよび仮定の変更は、法人所得税費用に重要な影響を与える可能性があります。 事業構造再編費用当社グループでは、費用削減に関連した取り組みに関連して事業構造再編費用が発生します。退職金が事業構造再編費用の主な内訳であり、事業構造再編に係る引当金は、事業構造再編に係る詳細な公式計画を策定し、かつ計画の実施や影響を受ける関係者への主要な特徴の公表を通じて、影響を受ける関係者に当該事業構造再編が実行されるであろうという妥当な期待を惹起した時点で認識しております。事業構造再編に係る引当金の認識には、支払時期や、事業再編により影響を受ける従業員数等の見積りが必要となります。最終的なコストは当初の見積りから異なる可能性があります。2024年5月9日に当社は、事業の成長と利益率の改善を促進するための複数年にわたる全社的な効率化プログラムを実施することについて、公表しました。本プログラムには、人員の最適化策を伴う組織構造の簡素化、組織全体での生産性と効率性の向上を図るためのDD&Tへの投資、サプライチェーンおよびベンダー管理プロセスにおけるコスト削減と効率化が含まれております。主に、2024 年5月に公表した当該取り組みにより、2025年3月期に1,281億円の事業構造再編費用を計上し、2026年3月期には708億円を計上しました。2026年3月25日に当社は、長期的な成長力の向上および新製品上市の実行加速を目指す取り組みの次なるステップについて、取締役会が承認したことを公表しました。当該取り組みには、高度なテクノロジーの活用によるコーポレート機能の合理化およびプロセスの簡素化が含まれております。2027年3月期には1,700億円の事業構造再編費用の発生を見込んでおり、2028年3月期および2029年3月期には、事業構造再編費用は減少する見込みです。2026年3月31日現在、279億円の事業構造再編に係る引当金を計上しております。事業構造再編に係る引当金及び対前期比の変動の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 22 引当金」をご参照ください。 (c) 当年度における業績の概要 前年度および当年度の連結業績は、以下のとおりとなりました。 (単位:億円、%以外) 前年度当年度AERベース CERベース増減額増減率 増減率売上収益45,81645,057△758△1.7% △2.7%売上原価△15,802△15,71686△0.5% △1.9%販売費及び一般管理費△11,048△10,842206△1.9% △2.5%研究開発費△7,302△6,759543△7.4% △7.0%製品に係る無形資産償却費及び減損損失△6,432△6,33597△1.5% △1.7%その他の営業収益262247△15△5.6% △4.4%その他の営業費用△2,067△5,590△3,522170.4% 168.9%営業利益3,42662△3,364△98.2% - 金融収益及び費用(純額)△1,635△1,464171△10.5% △7.5%持分法による投資損益△40△2218△45.4% △52.9%税引前当期利益(△は損失)1,751△1,424△3,174- - 法人所得税費用△669△98572△85.4% △97.6%当期利益(△は損失)1,081△1,521△2,603- - 当期利益(△は損失)(親会社の所有者帰属分)1,079△1,524△2,603- - 本項において、前年度に対する、国際会計基準(IFRS)に準拠した実勢レート(Actual Exchange Rate)ベースの増減額および増減率は「AER」の表記で示し、国際会計基準(IFRS)に準拠しない恒常為替レート(Constant Exchange Rate)ベースの増減率は「CER」の表記で示しています。「CERベースの増減率」の定義については、「④ 当社グループが定義および表示するIFRSに準拠しない補足的財務指標」をご参照ください。 〔売上収益〕売上収益は、4兆5,057億円(△758億円および△1.7% AER、△2.7% CER)となりました。この減収は、主に当社の6つの主要なビジネスエリアの一つであるニューロサイエンス(神経精神疾患)における減収によるものです。ニューロサイエンスにおける減収は、主に米国における注意欠陥/多動性障害(ADHD)治療剤VYVANSEの後発品の市場浸透による減収影響を引き続き受けたことによるものです。当社の他の主要なビジネスエリアである消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤、オンコロジー(がん)、およびワクチンにおける売上収益は増収となりました。一部の製品は米国におけるメディケア・パートDの再設計および340Bプログラムの拡大による影響を受けたものの、米国以外の地域におけるその他の製品の需要は堅調に推移しました。当社の6つの主要なビジネスエリア以外の売上収益は、2,240億円(△334億円および△13.0% AER、△15.9% CER)となりました。 地域別売上収益各地域の売上収益は以下のとおりです。(単位:億円、%以外)売上収益:前年度当年度AERベースCERベース増減額増減率増減率 日本4,1854,3311463.5%3.4% 米国23,79721,648△2,148△9.0%△7.7% 欧州およびカナダ10,55311,4629108.6%3.0% 中南米2,3582,5411837.8%4.9% 中国1,9171,951341.8%1.4% アジア(日本および中国を除く)994987△7△0.7%△0.3% ロシア/CIS7247977410.2%0.7% その他(注)1,2881,339503.9%1.0% 合計45,81645,057△758△1.7%△2.7% (注) その他の地域は中東、オセアニアおよびアフリカを含みます。 当社グループの売上収益の大部分は、主要な医療用医薬品により占められております。当年度の各ビジネスエリアにおける主要製品の売上は以下のとおりです。 (単位:億円、%以外) 前年度当年度AERベースCERベース増減額増減率増減率消化器系疾患: ENTYVIO(注)19,1419,5804394.8%4.2%GATTEX/レベスティブ1,4631,457△6△0.4%△0.1%タケキャブ/VOCINTI(注)21,3081,4371299.9%9.6%DEXILANT385373△13△3.3%△5.2%EOHILIA55883361.0%63.2%RESOLOR/MOTEGRITY19573△122△62.7%△62.8%その他1,0241,068444.3%1.5%消化器系疾患 合計13,57014,0755043.7%3.1%希少疾患: タクザイロ2,2322,23980.3%△0.4%アドベイト1,1181,055△62△5.6%△6.8%エラプレース9721,005323.3%0.8%リプレガル779804263.3%△0.5%アディノベイト/ADYNOVI646567△79△12.3%△13.1%リブテンシティ33046913942.2%41.0%ボンベンディ2092534320.8%18.6%アジンマ711204968.8%65.1%その他1,1721,115△57△4.8%△6.2%希少疾患合計7,5287,627991.3%△0.3%血漿分画製剤: 免疫グロブリン製剤7,5787,9063284.3%4.1%アルブミン製剤1,4141,403△11△0.8%△2.1%ファイバ394329△66△16.6%△17.7%HEMOFIL/IMMUNATE/IMMUNINE256254△2△0.8%△4.8%その他685684△1△0.1%△0.8%血漿分画製剤合計10,32710,5752492.4%1.9%オンコロジー: アドセトリス1,2901,4021128.7%5.3%リュープリン/ENANTONE1,1931,208151.3%△0.4%ニンラーロ912821△91△10.0%△10.5%アイクルシグ707750436.1%5.6%FRUZAQLA(注)34805517214.9%14.6%アルンブリグ36436951.4%0.2%その他658699416.3%5.0%オンコロジー 合計5,6045,8011973.5%2.0%ワクチン: QDENGA3564085214.6%10.7%その他198188△10△5.0%△5.0%ワクチン 合計554596427.6%5.1%ニューロサイエンス: VYVANSE/ELVANSE(注)43,5062,032△1,474△42.0%△43.0%トリンテリックス1,2571,218△39△3.1%△1.9%ADDERALL XR284247△37△13.0%△12.1%その他610645355.7%4.4%ニューロサイエンス 合計5,6584,143△1,515△26.8%△27.2% (単位:億円、%以外) 前年度当年度AERベースCERベース増減額増減率増減率その他: ホスレノール7988911.8%7.4%アジルバ(注)211871△47△39.5%△39.5%その他2,3772,080△297△12.5%△15.5%その他 合計2,5742,240△334△13.0%△15.9%総合計45,81645,057△758△1.7%△2.7% (注)1 国内製品名:エンタイビオ 2 配合剤、パック製剤を含む。 3 国内製品名:フリュザクラ 4 国内製品名:ビバンセ 各ビジネスエリアにおける売上収益の前年度からの増減は、主に以下の製品によるものです。 - 消化器系疾患消化器系疾患の売上収益は、1兆4,075億円(+504億円および+3.7% AER、+3.1% CER)となりました。潰瘍性大腸炎・クローン病治療剤ENTYVIO(国内製品名:エンタイビオ)の売上は、9,580億円(+439億円および+4.8% AER、+4.2% CER)となりました。米国における売上は、6,237億円(+45億円および+0.7% AER)となりました。この増収は、皮下注射製剤の売上が伸長したことによるものですが、対米ドルでの円高による減収影響により相殺されました。欧州およびカナダにおける売上は、2,567億円(+293億円および+12.9% AER)となりました。この増収は、主に皮下注射製剤の継続的な使用拡大に伴い患者が増加したことに加え、対ユーロでの円安による増収影響によるものです。 酸関連疾患治療剤タケキャブ/VOCINTIの売上は、1,437億円(+129億円および+9.9% AER、+9.6% CER)となりました。この増収は、中国および日本における堅調な需要によるものです。好酸球性食道炎治療剤EOHILIAの売上は、88億円(+33億円および+61.0% AER, +63.2% CER)となりました。この増収は、米国における堅調な需要によるものです。慢性特発性便秘症治療剤RESOLOR/MOTEGRITYの売上は、73億円(△122億円および△62.7% AER、△62.8% CER)となりました。この減収は、主に米国において2025年1月から複数の後発品が参入したことによるものです。 - 希少疾患希少疾患の売上収益は、7,627億円(+99億円および+1.3% AER、△0.3% CER)となりました。移植後のサイトメガロウイルス感染/感染症治療剤リブテンシティの売上は、469億円(+139億円および+42.2% AER、+41.0% CER)となりました。この増収は、主に米国において市場浸透が継続して好調に進んだことに加え、欧州および成長新興国において引き続き販売エリアが拡大したことによるものです。先天性血栓性血小板減少性紫斑病治療剤アジンマの売上は、120億円(+49億円および+68.8% AER、+65.1% CER)となりました。この増収は、欧州において上市以降、売上が着実に増加したことによるもので、超希少疾患患者さんのアンメット・ニーズを反映しています。フォン・ヴィレブランド病治療剤ボンベンディの売上は、253億円(+43億円および+20.8% AER、+18.6% CER)となりました。この増収は、ボンベンディの適応拡大(成人患者に対する出血傾向の抑制のための定期補充療法)によるものです。血友病A治療剤アディノベイト/ADYNOVIの売上は567億円(△79億円および△12.3% AER、△13.1% CER)となりました。この減収は、主に米国における競争の激化によるものです。血友病A治療剤アドベイトの売上は1,055億円(△62億円および△5.6% AER、△6.8% CER)となりました。この減収は、主に米国における競争の激化によるものです。 - 血漿分画製剤血漿分画製剤の売上収益は、1兆575億円(+249億円および+2.4% AER、+1.9% CER)となりました。主に原発性免疫不全症、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎および多巣性運動ニューロパチーの治療に用いられる免疫グロブリン製剤の売上合計は、7,906億円(+328億円および+4.3% AER、+4.1% CER)となりました。この増収は、皮下注射製剤のキュービトルとハイキュービアの売上が伸長したことによるものです。静脈注射製剤のGAMMAGARD LIQUID/KIOVIGの売上は、米国におけるメディケア・パートDの再設計および対米ドルでの円高による減収影響を受けたものの、わずかに増収となりました。血友病Aおよび血友病B治療剤ファイバの売上は、329億円(△66億円および△16.6% AER、△17.7% CER)となりました。この減収は、全ての地域において、遺伝子組換え製剤との競争が激化したことによるものです。 - オンコロジーオンコロジーの売上収益は、5,801億円(+197億円および+3.5% AER、+2.0% CER)となりました。悪性リンパ腫治療剤アドセトリスの売上は、1,402億円(+112億円および+8.7% AER、+5.3% CER)となりました。この増収は、欧州および成長新興国における堅調な需要に加え、対ユーロでの円安による増収影響によるものです。大腸がん治療剤FRUZAQLA(国内製品名:フリュザクラ)の売上は、551億円(+72億円および+14.9% AER、+14.6% CER)となりました。この増収は、本剤が転移性大腸がんにおける新たな治療選択肢として、欧州、日本および成長新興国において上市後、着実に市場浸透したことによるものです。この増収は、米国における売上がメディケア・パートDの再設計による影響を受けて減少したことで一部相殺されました。白血病治療剤アイクルシグの売上は、750億円(+43億円および+6.1% AER、+5.6% CER)となりました。この増収は、主にカナダにおける売上が増加したことによるものです。子宮内膜症・子宮筋腫・閉経前乳がん・前立腺がん等の治療に用いられるリュープリン/ENANTONEの売上は、1,208億円(+15億円および+1.3% AER、△0.4% CER)となりました。この増収は、主に対ユーロでの円安による増収影響によるものです。多発性骨髄腫治療剤ニンラーロの売上は、821億円(△91億円および△10.0% AER、△10.5% CER)となりました。この減収は、主に米国における競争の激化と需要の減少によるものです。この減収は、成長新興国における売上が増加したことにより一部相殺されました。 - ワクチンワクチンの売上収益は、596億円(+42億円および+7.6% AER、+5.1% CER)となりました。デング熱ワクチンQDENGAの売上は、408億円(+52億円および+14.6% AER、+10.7% CER)となりました。この増収は、成長新興国における高い需要により上市以降、売上が増加したことによるものです。その他のワクチンの売上合計は、減収となりました。この減収は、主に日本における麻しん風しん混合ワクチンであるMRワクチンの一時的な出荷停止が継続したことによるものです。 - ニューロサイエンスニューロサイエンスの売上収益は、4,143億円(△1,515億円および△26.8% AER、△27.2% CER)となりました。ADHD治療剤VYVANSE/ELVANSE(国内製品名:ビバンセ)の売上は、2,032億円(△1,474億円および△42.0% AER、△43.0% CER)となりました。この減収は、主に米国において後発品の市場浸透が引き続き進んだことによるものです。 〔売上原価〕売上原価は、1兆5,716億円(△86億円および△0.5% AER、△1.9% CER)となりました。この減少は、売上収益の減少に加え、在庫に積み上がった為替影響を認識するプロセスの導入に伴い前年度に売上原価の調整を計上したことによるものです。一方で、これらの減少は、特に米国におけるVYVANSE後発品の市場浸透により製品構成が変化したことによる原価率の上昇や、対ユーロでの円安による為替影響により、大部分が相殺されました。 〔販売費及び一般管理費〕販売費及び一般管理費は、1兆842億円(△206億円および△1.9% AER、△2.5% CER)となりました。この減少は、主に全社的な効率化プログラムのコスト節減効果により費用が削減されたことによるものです。 〔研究開発費〕研究開発費は、6,759億円(△543億円および△7.4% AER、△7.0% CER)となりました。この減少は、ザソシチニブやelriterceptをはじめとする一部の後期開発パイプラインに係る費用が増加したものの、その他の開発プログラムにおいて開発の中止や臨床試験の進捗に伴い費用が減少したこと、メザギタマブに関しては共同開発資金を研究開発費の減額として認識したこと、および全社的な効率化プログラムのコスト節減効果による費用の減少があったことによるものです。 〔製品に係る無形資産償却費及び減損損失〕製品に係る無形資産償却費及び減損損失は、6,335億円(△97億円および△1.5% AER、△1.7% CER)となりました。この減少は、無形資産減損損失が増加(+342億円)したものの、VYVANSE/ELVANSEに係る無形資産の償却終了などに伴い、無形資産償却費が減少(△439億円)したことによるものです。当年度の減損損失には、細胞療法研究の中止の決定に伴い計上したガンマ・デルタT細胞療法プラットフォームおよび関連するオンコロジーのプログラムに係る減損損失582億円、および将来の売上予測の低下により計上した非小細胞肺がん治療剤アルンブリグに係る減損損失319億円が含まれます。前年度の減損損失には、Maverick Therapeutics Inc.の買収により獲得したTAK-186およびTAK-280の開発中止の決定に伴い計上した減損損失278億円、およびソチクレスタット(TAK-935)の臨床第3相試験において主要評価項目を達成できなかったことにより計上した減損損失215億円が含まれます。 〔その他の営業収益〕その他の営業収益は、247億円(△15億円および△5.6% AER、△4.4% CER)となりました。この減少は、主に前年度において条件付対価契約に関する金融負債の公正価値変動に伴う収益を計上したこと、および当年度におけるその他の収益の減少によるものの、当年度に計上した事業売却益の増加により大部分が相殺されたものです。 〔その他の営業費用〕その他の営業費用は、5,590億円(+3,522億円および+170.4% AER、+168.9% CER)となりました。この増加は、主として、当年度において、AMITIZAに係る米国の反トラスト訴訟における陪審評決を受けて、関連する訴訟引当金4,035億円を計上したことによるものです。一方、全社的な効率化プログラムに関連する費用を含む事業構造再編費用が573億円減少したことにより、増加の一部は相殺されました。 〔営業利益〕営業利益は、上記の要因を反映し、62億円(△3,364億円および△98.2% AER)となりました。 〔金融損益〕金融収益と金融費用をあわせた金融損益は1,464億円の損失(△171億円および△10.5% AER、△7.5% CER)となりました。この減少は、主に武田テバファーマ株式会社の株式の売却に係る減損損失189億円を前年度に計上したことによるものです。 〔持分法による投資損益〕持分法による投資損益は、22億円の損失(△18億円および△45.4% AER、△52.9% CER)となりました。 〔法人所得税費用〕法人所得税費用は、98億円(△572億円および△85.4% AER、△97.6% CER)となりました。この減少は主に、当年度において、AMITIZAに係る米国の反トラスト訴訟における陪審評決を受けて訴訟引当金を計上したことに関連し、繰延税金資産が584億円増加したことによるものです。 〔当期利益(△は損失)〕上記要因を反映し、当期損失は、△1,521億円 (△2,603億円、前年度は1,081億円の利益)、当期損失(親会社の所有者帰属分)は、△1,524億円(△2,603億円、前年度は1,079億円の利益)となりました。 (d) 当年度におけるCore業績の概要 補足的分析:Core財務指標に基づく業績(IFRSに準拠しない指標)IFRSに準拠して作成された業績に加え、当社グループは、補足的に、Core財務指標に基づく業績も表示しております。投資家におかれましては、Core財務指標の定義、有用性の限界、最も良く対応するIFRSに準拠した財務指標への調整を含む、より詳細な情報については、「④ 当社グループが定義および表示するIFRSに準拠しない補足的財務指標」をご参照ください。当社グループは、また、Core財務指標のCERベースの増減率についても表示しております。詳細については、「④ 当社グループが定義および表示するIFRSに準拠しない補足的財務指標」をご参照ください。 Core業績 (単位:億円、%以外) 前年度当年度AERベース CERベース増減額増減率 増減率Core売上収益45,79845,057△741△1.6% △2.6%Core営業利益11,62611,725980.8% △0.9%Core当期利益7,7588,1443865.0% 2.9%Core当期利益(親会社の所有者帰属分)7,7568,1413855.0% 2.9%Core EPS(円)491517265.2% 3.1% 〔Core売上収益〕Core売上収益は、4兆5,057億円(△741億円および△1.6% AER、△2.6% CER)となりました。この減収は、主に米国においてVYVANSEの後発品の市場浸透が引き続き進んだ影響を受けたことにより、ニューロサイエンスの売上収益が減少したことによるものです。タケダの成長製品・新製品(注)の売上収益は2兆3,133億円(+1,114億円および+5.1% AER、+4.5% CER)となりました。 (注)当年度のタケダの成長製品・新製品消化器系疾患:ENTYVIO、EOHILIA希少疾患:タクザイロ、リブテンシティ、アジンマ血漿分画製剤(免疫疾患):GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG、ハイキュービア、キュービトルを含む免疫グロブリン製剤、 HUMAN ALBUMIN、FLEXBUMINを含むアルブミン製剤オンコロジー:アルンブリグ、FRUZAQLAワクチン:QDENGA 〔Core営業利益〕Core営業利益は、1兆1,725億円(+98億円および+0.8% AER、△0.9% CER)となりました。Core営業利益の内訳は以下のとおりです。 (単位:億円、%以外) 前年度当年度AERベース CERベース増減額増減率 増減率Core売上収益45,79845,057△741△1.6% △2.6%Core売上原価△15,818△15,72692△0.6% △1.9%Core販売費及び一般管理費△11,050△10,847204△1.8% △2.5%Core研究開発費△7,304△6,760544△7.4% △7.0%Core営業利益11,62611,725980.8% △0.9% 報告期間における上記項目の増減は以下のとおりです。 〔Core売上原価〕Core売上原価は、1兆5,726億円(△92億円および△0.6% AER、△1.9% CER)となりました。この減少は、売上収益の減少に加え、在庫に積み上がった為替影響を認識するプロセスの導入に伴い前年度に売上原価の調整を計上したことによるものです。一方で、これらの減少は、特に米国におけるVYVANSE後発品の市場浸透により製品構成が変化したことによる原価率の上昇や、対ユーロでの円安による為替影響により、大部分が相殺されました。 〔Core販売費及び一般管理費〕Core販売費及び一般管理費は、1兆847億円(△204億円および△1.8% AER、△2.5% CER)となりました。この減少は、主に全社的な効率化プログラムのコスト節減効果により費用が削減されたことによるものです。 〔Core研究開発費〕Core研究開発費は、6,760億円(△544億円および△7.4% AER、△7.0% CER)となりました。この減少は、ザソシチニブやelriterceptをはじめとする一部の後期開発パイプラインに係る費用が増加したものの、その他の開発プログラムにおいて開発の中止や臨床試験の進捗に伴い費用が減少したこと、メザギタマブに関しては共同開発資金を研究開発費の減額として認識したこと、および全社的な効率化プログラムのコスト節減効果による費用の減少があったことによるものです。 〔Core当期利益〕Core当期利益は、8,144億円(+386億円および+5.0% AER、+2.9% CER)、Core当期利益(親会社の所有者帰属分)は、8,141億円(+385億円および+5.0% AER、+2.9% CER)となりました。Core当期利益は、Core営業利益に基づき、以下のとおり算出されます。 (単位:億円、%以外) 前年度当年度AERベース CERベース増減額増減率 増減率Core営業利益11,62611,725980.8% △0.9%Core金融収益及び費用(純額)△1,407△1,33275△5.3% △1.9%Core持分法による投資損益11△1△13- △82.1%Core税引前当期利益10,23110,3921611.6% △0.9%Core法人所得税費用△2,473△2,248225△9.1% △12.8%Core当期利益7,7588,1443865.0% 2.9%Core当期利益(親会社の所有者帰属分)7,7568,1413855.0% 2.9% 報告期間における上記項目の増減は以下のとおりです。 〔Core金融損益〕Core金融収益とCore金融費用をあわせた金融損益は、1,332億円の損失(△75億円および△5.3% AER、△1.9% CER)となりました。 〔Core持分法による投資損益〕Core持分法による投資損益は、1億円の損失(△13億円)となりました。 〔Core税引前当期利益〕Core税引前当期利益は、1兆392億円(+161億円および+1.6% AER、△0.9% CER)となりました。 〔Core法人所得税費用〕Core法人所得税費用は、2,248億円(△225億円および△9.1% AER、△12.8% CER)となりました。この減少は主に、当年度における繰延税金資産の回収可能性の見直しにより、Core法人所得税費用が減少したことによるものです。 〔Core EPS〕Core EPSは、517円(+26円および+5.2% AER、+3.1% CER)となりました。 ② 当年度の財政状態の分析 (単位:億円) 前年度末当年度末増減額資産合計142,483155,11512,632負債合計73,12480,8097,685資本合計69,36074,3064,947 〔資産〕当年度末における資産合計は、15兆5,115億円(+1兆2,632億円)となりました。主に為替換算の影響により、のれん、棚卸資産および有形固定資産が増加(+4,846億円、+1,793億円および+1,524億円)しております。主に、AMITIZAに係る米国の反トラスト訴訟における陪審評決を受けて訴訟引当金を計上したことに関連し、繰延税金資産が584億円増加したことや、無形資産の償却およびその他の繰延税金資産の回収可能性の見直しにより、繰延税金資産が増加(+1,755億円)しております。米国における売上債権の売却プログラムを減額したことなどによる売上債権残高の増加、ならびに為替換算の影響により、売上債権及びその他の債権が増加(+1,348億円)しております。主に日本における金利通貨スワップに係る公正価値変動により、その他の金融資産合計が増加(+1,102億円)しております。加えて、現金及び現金同等物が増加(+2,099億円)しております。これらの増加は、主に償却および減損による無形資産の減少(△2,122億円)により一部相殺されております。 〔負債〕当年度末における負債合計は、8兆809億円(+7,685億円)となりました。主にAMITIZAに係る米国の反トラスト訴訟における陪審評決を受けて訴訟引当金を計上したことにより、引当金合計が増加(+4,677億円)しております。社債及び借入金合計は4兆8,818億円(注)(+3,666億円)となり、償還および返済により一部相殺されたものの、主に為替の影響に加え、円貨建無担保普通社債および米ドル建保証付無担保普通社債の発行、ならびに新たなバイラテラルローンの借入により増加しております。 (注)当年度末における社債及び借入金の帳簿価額はそれぞれ4兆6,568億円および2,250億円です。なお、社債及び借入金の内訳は以下のとおりです。 社債:銘柄(外貨建発行額)発行時期償還期限帳簿価額米ドル建無担保普通社債(500百万米ドル)2015年6月2045年6月813億円米ドル建無担保普通社債(1,500百万米ドル)2016年9月2026年9月2,377億円ユーロ建無担保普通社債(3,000百万ユーロ)2018年11月2026年11月~2030年11月5,476億円米ドル建無担保普通社債(1,750百万米ドル)2018年11月2028年11月2,784億円米ドル建無担保普通社債(7,000百万米ドル)2020年7月2030年3月~2060年7月1兆1,111億円ユーロ建無担保普通社債(3,600百万ユーロ)2020年7月2027年7月~2040年7月6,558億円円貨建無担保普通社債2021年10月2031年10月2,496億円ハイブリッド社債(劣後特約付社債)2024年6月2084年6月4,584億円米ドル建無担保普通社債(3,000百万米ドル)2024年7月2034年7月~2064年7月4,738億円円貨建無担保普通社債2025年6月2030年6月~2035年6月1,836億円米ドル建無担保普通社債(2,400百万米ドル)2025年7月2035年7月~2055年7月3,794億円合計 4兆6,568億円 借入金:名称 (外貨建借入額)借入時期返済期限帳簿価額バイラテラルローン2023年3月~2026年3月2029年3月~2034年3月1,850億円シンジケート ハイブリッド ローン(劣後特約付ローン)2024年10月2084年10月400億円その他 0億円合計 2,250億円 当社グループは、2025年4月25日に、バイラテラルローン100億円を満期返済しました。2025年6月12日には、発行総額1,840億円、償還期日2030年6月12日から2035年6月12日の円貨建無担保社債(「本円建社債」)を発行しました。本円建社債の発行により調達した資金は、コマーシャル・ペーパーの償還に充当されました。その後、2025年6月23日には、米ドル建無担保普通社債800百万米ドルを満期償還しました。また、2025年3月31日に借入れた500百万米ドルのバイラテラルローンについては、2025年7月3日まで月次で借換をしています。2025年7月2日には、発行総額2,400百万米ドル、償還期日2035年7月7日および2055年7月7日の米ドル建保証付無担保普通社債(「本米ドル建社債」)を、当社の間接的な完全子会社である武田U.S.ファイナンシング Inc.により発行しました。本米ドル建社債の発行により調達した資金は、2025年7月3日の500百万米ドルのバイラテラルローンの返済と2025年7月のコマーシャル・ペーパーの償還に主に充当されました。当社グループは、2026年3月31日に、満期を迎えたバイラテラルローン750億円を返済するとともに、同日に、返済期日2034年3月31日の新たなバイラテラルローン600億円の借入を実行しました。また、同日、円建3,500億円および米ドル建2,100百万米ドルのコミットメントファシリティー契約をそれぞれ締結しました。本コミットメントファシリティーはどちらも2026年3月31日から最低5年間有効です。なお、本コミットメントファシリティーの契約締結にあたり、2026年9月に期間満了を迎える予定であった既存の円建7,000億円のコミットメントファシリティー契約は、同日付で解約しました。新たに設定した本コミットメントファシリティーの使途は一般事業資金です。 (注)上記の社債及び借入金に関する説明に記載している金額は、元本金額で表示しております。 〔資本〕当年度末における資本合計は、7兆4,306億円(+4,947億円)となりました。この増加は、主に円安の影響による為替換算調整勘定の変動により、その他の資本の構成要素が増加(+9,455億円)したことによるものです。この増加は、配当金の支払いに伴う3,125億円の減少、ならびに当期損失1,521億円の計上に伴い、利益剰余金が減少(△4,752億円)したことにより一部相殺されております。 ③ 流動性および資金調達源資金の調達および使途当社グループにおいて流動性は、主に営業活動に必要な現金、資本支出、契約上の義務、債務の返済、利息や配当の支払いに関連して必要となります。営業活動においては、研究開発費、マイルストン支払い、販売およびマーケティングに係る費用、人件費およびその他の一般管理費、原材料費等の支払いにあたり現金が必要となります。また、法人所得税の支払いや運転資金にも多額の現金が必要となります。当社グループは、生産設備の能力増強・合理化、減価償却を終えた資産の入れ替え、業務管理の効率化等のために設備投資を行っています。無形資産に係る資本的支出は、主に第三者のパートナーから導入したライセンス製品に対するマイルストン支払い、およびソフトウェア開発費です。連結財政状態計算書に計上されている有形固定資産および無形資産に係る資本支出は、2025年3月期および2026年3月期において、それぞれ3,194億円および4,269億円であります。また、2026年3月31日現在において、有形固定資産の取得に関する契約上のコミットメントは77億円であります。加えて、2026年3月31日現在において、無形資産の取得に関して契約上の取決めを有しております。無形資産に係るマイルストン支払いの詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 31 コミットメントおよび偶発負債」をご参照ください。また、資本管理の一環として、当社グループは、資金需要、市場等の環境、またはその他の関連する要因に照らして、定期的に資本的支出の評価を行っております。当社の配当金の支払額は、2025年3月期および2026年3月期において、それぞれ3,039億円および3,132億円であります。2026年3月期については、1株当たり年間配当金額を200円(中間配当金および期末配当金それぞれ100円)としましたが、2027年3月期については、1株当たり、中間配当金および期末配当金をそれぞれ102円ずつとし、年間204円とすることを目指しています。当社の配当政策については「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご参照ください。当社グループは、有利子負債に対し元本と利息を支払う必要があります。2026年3月31日現在において、1年内に必要となる利息の支払額および負債の返済額は、それぞれ1,401億円、5,140億円であります。詳細は、「有利子負債および金融債務」をご参照ください。当社グループの資金の主な調達源は、主に現金及び現金同等物、短期コマーシャル・ペーパー、金融機関からのコミットメントラインによる借入、グローバル資本市場における社債発行を含む長期債務による資金調達であります。さらに、当社グループは、コンティンジェンシーの調達源として、2025年3月31日において金融機関から極度額1,500億円および750百万米ドルの短期アンコミットメントライン契約を、2026年3月31日現在において、金融機関から極度額1,500億円および650百万米ドルの短期アンコミットメントライン契約を締結しております。当社グループは、キャッシュ・フロー予測に基づき保有外貨を監視し、調整しております。当社グループの事業の大部分は日本国外で行っており、多額の現金及び現金同等物を日本国外に保有しております。日本国内で必要なキャッシュ・フローを創出するために外貨を使用することは国内規制による影響を受ける可能性があり、また比較的影響は小さいものの、日本へ現金を移転することから生じる所得税による影響も受けます。当社グループは、引き続き、資金調達の状況について注視しており、短期的には、一般的な市況による資金調達不足または流動性不足は現在見込んではおりません。なお、必要に応じた市場およびその他の供給源からの追加の資金調達力に加えて、当社グループの資本支出計画を必要かつ適切な範囲で見直すことによって、資金調達および流動性の需要を管理する場合があります。2026年3月31日現在において、当社グループは、売上債権の売却プログラムに関係して当社が第三者に代わり一時的に保有していた預り金792億円を含む、5,951億円の現金及び現金同等物と、3,500億円および2,100百万米ドルの未使用のバンク・コミットメントライン契約を保有しております。加えて、公正価値ヒエラルキーにてレベル1に分類される米国債851億円を保持しております。したがって、利用可能な流動性の合計は1兆2,862億円となり、現在の事業活動に必要となる資金は十分に確保できていると考えております。また、当社グループは、事業活動を支えるため、持続的に高い流動性を保ち、資本市場へのアクセス拡大を追求していきます。 連結キャッシュ・フロー連結キャッシュ・フローの状況は、以下のとおりであります。(単位:億円) 前年度当年度増減額営業活動によるキャッシュ・フロー10,57210,414△158投資活動によるキャッシュ・フロー△3,671△3,691△21財務活動によるキャッシュ・フロー△7,514△4,9682,546現金及び現金同等物の増減額△6131,7552,368現金及び現金同等物の期首残高4,5783,851△727現金及び現金同等物に係る換算差額△114345459現金及び現金同等物の期末残高3,8515,9512,099 〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕営業活動によるキャッシュ・フローは、1兆414億円(△158億円)となりました。この減少は主に、その他の金融負債の減少などにより、引当金を調整した資産および負債の増減額が減少したことによるものです。この減少は、先物為替予約の決済(純額)による正味キャッシュ・フローが増加したこと、および非資金項目およびその他の調整項目を調整した当期利益(損失)の増加などにより相殺されております。〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕投資活動によるキャッシュ・フローは、△3,691億円(△21億円)となりました。無形資産の取得による支出の増加や、投資の取得による支出の減少など、個々の投資活動における変動が相殺されたことにより、前年度と比べ微減となりました。〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕財務活動によるキャッシュ・フローは、△4,968億円(+2,546億円)となりました。この増加は主に、社債および借入金の発行および償還・返済に伴う正味キャッシュ・フローの増加によるものです。 補足的分析:フリー・キャッシュ・フローおよび調整後フリー・キャッシュ・フロー(IFRSに準拠しない財務指標)フリー・キャッシュ・フローおよび調整後フリー・キャッシュ・フローは、IFRSに準拠しない(以下、「Non-IFRS」)指標であります。詳細については、「④ 当社グループが定義および表示するIFRSに準拠しない補足的財務指標」をご参照ください。IFRSに準拠した指標の中で、フリー・キャッシュ・フローおよび調整後フリー・キャッシュ・フローは営業活動によるキャッシュ・フローが最も類似します。(単位:億円) 前年度当年度営業活動によるキャッシュ・フロー(IFRS)10,57210,414フリー・キャッシュ・フロー(Non-IFRS)8,5648,654調整後フリー・キャッシュ・フロー(Non-IFRS)7,6906,845 フリー・キャッシュ・フローは、8,654億円(+90億円)となりました。この増加は、主に有形固定資産の取得による支出の減少によるものです。この増加は、営業活動によるキャッシュ・フローの減少により、一部相殺されております。調整後フリー・キャッシュ・フローは、6,845億円(△844億円)となりました。この減少は、主に無形資産の取得による支出が増加したことによるものです。 有利子負債および金融債務2025年3月31日および2026年3月31日現在において社債および借入金はそれぞれ4兆5,153億円、4兆8,818億円であります。これらの有利子負債は、当社グループが発行した無担保社債、普通社債、バイラテラルローン、およびシンジケートローン、また、Shire社買収に必要な資金の一部を調達するための借入金、およびShire社買収により引き受けた負債、借り換えた負債を含み、連結財政状態計算書に計上されております。当社グループの借入金は主に買収関連で発生したものであり、季節性によるものではありません。当社グループは、2025年4月25日に、バイラテラルローン100億円を満期返済しました。2025年6月12日には、発行総額1,840億円、償還期日が2030年6月12日から2035年6月12日の円貨建無担保普通社債(本円建社債)を発行しました。本円建社債の発行により調達した資金はコマーシャル・ペーパーの償還に充当されました。その後、2025年6月23日には、米ドル建無担保普通社債800百万米ドルを満期償還しました。また、当初借入実行日が2025年3月31日、満期日が2025年7月3日の500百万米ドルのバイラテラルローンの借換を実行しました。2025年7月2日には、発行総額2,400百万米ドル、償還期日2035年7月7日および2055年7月7日の米ドル建保証付普通社債(米ドル建社債)を、間接的な完全子会社である武田U.S.ファイナンシング Inc.により発行しました。米ドル建社債の発行により調達した資金は、2025年7月3日の500百万米ドルのバイラテラルローンの返済と2025年7月のコマーシャル・ペーパーの償還に主に充当されました。また、当社グループは、2026年3月31日に、満期を迎えたバイラテラルローン750億円を返済するとともに、同日に、返済期日2034年3月31日の新たなバイラテラルローン600億円の借入を実行しました。2026年3月31日に、3,500億および2,100百万米ドルのコミットメントファシリティー契約を締結しました。これらのコミットメントファシリティーの有効期間は最低5年間です。また、一定の制限条項が含まれており、制限条項に違反した場合には、当該コミットメントファシリティーの利用が制限される可能性があります。2026年3月31日現在において当社グループは当該制限条項を遵守しております。新たに設定した本コミットメントファシリティーの使途は一般事業資金です。新たにファシリティーを締結したことに伴い、2019年に設定され、2026年9月に失効予定の7,000億円のコミットメントファシリティーを、同日に解約しました。当社グループは、短期の流動性の管理のため、日本の無担保コマーシャル・ペーパープログラムを保有しております。2025年3月31日におけるコマーシャル・ペーパーの発行残高は2,700億円であり、2026年3月31日現在において、コマーシャル・ペーパーは保有しておりません。当社グループは、さらに2025年3月31日および2026年3月31日現在において、極度額1,500億円および750百万米ドル(2026年3月31日現在において、650百万米ドル)の短期アンコミットメントライン契約を締結しておりますが、借入はしておりません。社債及び借入金の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 19 社債及び借入金」をご参照ください。 信用格付け当社グループの信用格付けは、当社グループの財務の健全性、業績、債務の返済能力等に関する各格付機関の意見が反映されております。本報告書時点における当社グループの信用格付けは以下のとおりです。格付会社カテ

事業リスク

  • 研究開発の不確実性
    医薬品の開発は、厳格な有効性と安全性の審査をクリアする必要があり、途中で開発を断念したり、追加試験が必要になったりする可能性があります。これにより、それまでにかかった多額のコストを回収できず、新製品の上市が遅れることで、会社の業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。
  • 知的財産権の侵害リスク
    医薬品の特許は、一定期間製品を保護しますが、第三者による特許侵害が発生すると、期待される収益が大幅に失われる可能性があります。また、自社製品が他社の特許を侵害した場合は、製造販売の差し止めや損害賠償を請求され、会社の業績に大きな影響を与えるリスクがあります。
  • 薬剤費抑制策による価格下落
    世界各国で医療費削減の動きが強まっており、医薬品の価格引き下げ圧力が継続的に高まっています。特に米国や日本、欧州では、政府による薬価引き下げや後発医薬品の推奨が進んでおり、これにより武田薬品工業の製品価格が下落し、収益が減少するリスクがあります。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「事業等のリスク」の全文を見る(年度切替)
FY2026|13,577 文字
3 【事業等のリスク】 リスク管理の枠組みおよびガバナンス当社の事業運営は、現在および将来において様々なリスクにさらされており、これらのリスクは、当社の業績、財務状況、キャッシュ・フローおよび長期戦略に重大な影響を及ぼす可能性があります。 当社は、リスクと機会は本質的に相互に関連しており、同一の戦略的検討事項の異なる側面を示すものであると認識しています。この認識に基づき、当社は、戦略目標およびサステナビリティに関する目標達成に伴う不確実性の低減を図りながら、患者さん、人材、資産および当社の社会的評価を保護しつつ価値創造を追求する観点から、十分な情報に基づくリスクベースの意思決定を行うよう努めています。 当社のリスク管理の取り組みは、グローバル ビジネス レジリエンスの枠組みの一部を構成する全社的リスク管理(「Enterprise Risk Management:ERM」)プログラムを通じて運用されています。本枠組みでは、積極的なリスクの特定、適切なエスカレーション、ならびに事業中断の際の迅速な対応および復旧を可能とするべく、ERMを事業継続管理および危機管理と統合しています。 (ERMフレームワークの概要)当社のグローバルERMプログラムでは、当社の戦略との整合性を有する相互に関連したポートフォリオとしてリスクを包括的に評価するとともに、主要なリスクの特定、評価、優先順位付け、低減、モニタリングおよび報告を行うための体系的な手法を適用しています。ERMフレームワークの中核的要素は以下の図表のとおりです。本フレームワークは、下記の5つの中核的要素によって支えられています。 当社は、適切なガバナンス、企業文化、ツールおよびテクノロジーを活用しながら、これらの要素により、組織全体の意思決定プロセスにリスク管理の考え方が組み込まれることを確保しています。 (ガバナンス体制)当社は、適切なリスクの責任主体への帰属および監視を確保するため、経営陣、ビジネス&サステナビリティ・コミッティー (「BSC」)、リスク・サブコミッティー(「RSC」)、タケダ・エグゼクティブチーム(「TET」)ミーティングおよび取締役会による定期的なレビューを含む、明確なガバナンス体制、役割分担および責任を組織全体において定めています。 ERMプロセス全体は、グローバルジェネラルカウンセルが統括し、取締役会は主要なリスクの監視およびリスクの優先順位付けのレビューを行っています。BSCおよびRSCは、リスク低減計画および新たに顕在化しつつあるリスクの動向について全社的な観点から監視を行います。また、TETを含む経営陣は、それぞれの責任領域におけるリスクの特定および低減に責任を負っており、リスク・コーディネーターは実施およびエスカレーションのプロセスを支援しています。 ERMプログラムの継続的改善および主要リスク当社は、変化するリスクを適時かつ効果的に特定および評価し、これに対応する能力を強化するため、ERMプログラムの高度化に継続的に取り組んでいます。具体的には、地政学的動向や規制の動向およびサステナビリティ関連の動向を含む外部環境を踏まえた視点の強化、一貫したリスクの特定、エスカレーションおよび意思決定を支援するためのリスク許容度の概念の明確化、リスクおよびその低減策に対する管理の強化、ならびにリスク意識の企業文化および日常業務へのさらなる浸透等を行っています。また、当社は、リスクの透明性、機能横断的な整合性および経営陣による監視を高めるために、全社的リスク評価プロセスについても継続的に強化しています。当社は、堅実なガバナンス、より明確な説明責任、ならびにデータおよびテクノロジーの効果的な活用を通じて、リスク管理実務の質および一貫性のさらなる向上を図っています。さらに、当社は、情報が限定的な段階であっても、経営陣への報告チャネルやその他の報告手段を通じて潜在的なリスクを早期にエスカレーションすることを従業員に奨励しており、これにより、新たなリスクの予見的な特定および低減を促進しています。しかしながら、当社は継続的にリスク管理の高度化に努めているものの、リスクを完全に排除することはできません。グローバルに事業を展開する当社を取り巻く事業環境は非常に流動的かつ複雑であり、不確実性や予期せぬ事象が今後も発生する可能性は否定できず、また、当社の低減策によって常にリスクを完全に低減できるとは限りません。 以下では、当年度末現在において、当社が重要と認識している主なリスクを記載しています。なお、以下に記載したリスクは、当社が直面する可能性のあるすべての潜在的なリスクおよび不確実性の全部を必ずしも網羅するものではありません。現時点で当社が認識していない、または重要ではないと判断している追加的なリスクや不確実性も、当社の事業に悪影響を及ぼす可能性があり、投資家が投資判断を行う際の考慮要素になる可能性があります。 (1)研究開発に関するリスク当社は、持続的成長を実現するために、最先端の科学で革新的な医薬品を創出することを目指しています。当社は、研究開発機能の向上および社外パートナーとの提携等により研究開発パイプラインを強化するとともに、世界各国の市場への一日も早い新製品の上市を目指し、質の高い革新的な研究開発パイプラインを構築することで研究開発の成功確率を高める等により効率的な研究開発活動に努めています。しかしながら、医薬品は、自社創製候補物質、導入候補物質にかかわらず、所轄官庁の定めた有効性と安全性に関する厳格な審査により承認されてはじめて上市可能となります。研究開発の途上において、当該候補物質の有効性・安全性が、承認に必要とされる水準を充たさないことが判明した場合またはその懸念があると審査当局が判断した場合、その時点で当該候補物質の研究開発を途中で断念、または追加の臨床試験・非臨床試験を実施せざるを得ず、それまでにかかったコストを回収できないリスクや製品の上市が遅延するリスク、および研究開発戦略の軌道修正を余儀なくされる可能性があります。 (2)知的財産権に関するリスク当社の製品は、物質・製法・製剤・用途特許等の複数の特許によって、一定期間保護されています。当社では特許権を含む知的財産権を厳しく管理し、当社が事業を行う市場における知的財産権や第三者からの侵害状況を継続的にモニタリング、評価および分析し、知的財産権に関するリスクの回避と、受けうる影響の低減を図っていますが、当社の保有する知的財産権が第三者から侵害を受けた場合には、期待される収益が大幅に失われる可能性があります。また、当社の自社製品等が第三者の知的財産権を侵害した場合には製造販売の差止めおよび損害賠償等を請求される可能性があります。 (3)特許権満了等による売上低下リスク当社は、効能追加や剤型変更等により製品のライフサイクルを延長する努力をしていますが、多くの製品について、特許または規制上の独占権の喪失・満了による後発品の市場参入は避けられず、米国や欧州では後発品が参入すれば通常、短期間で先発品から後発品へ切り替わり、先発品の収益が大きく減少します。国内では、当局が後発品の使用促進を積極的に進め、また、長期収載品のさらなる価格引下げが行われています。これに加え、競合品の特許権満了によるその後発品、および競合品のスイッチOTC薬の出現などによって、国内外の競争環境は格段に厳しいものになってきており、その影響如何で当社製品の大幅な売上低下を招く可能性があります。なお、特許権満了時期等の詳細については「第2 事業の状況 6 研究開発活動 知的財産」をご参照ください。 (4)副作用に関するリスク医薬品は、世界各国の所轄官庁の厳しい審査を経て発売されます。当社は発売後の医薬品について安全性情報を収集し有効性とリスクのバランスを評価することを含め、安全性監視活動とリスク最小化活動を実施し、ファーマコビジランス活動を推進し、副作用に関するリスクの回避と受けうる影響の低減に努めていますが、市販後の使用成績が蓄積された結果、発売時には予期していなかった副作用が確認されることがあります。新たな副作用が確認された場合には、添付文書の「使用上の注意」への記載を行う、使用する対象患者を制限する、使用方法を制限するなどの処置が必要となるほか、重篤なケースが認められた場合には、販売中止・回収等を余儀なくされることもあり得ます。また、このような場合において、当社は製造物責任を負うとともに、金銭的、法的および社会的信頼に関する損害を負う可能性があります。 (5)薬剤費抑制策による価格引き下げに関するリスク医薬品市場では、多くの国々において医療予算の削減が推進され、医療技術評価および国際価格を参照する政策により医薬品価格が低下しています。最大市場である米国では、医薬品価格を下げるための医療計画や仲介機関による取り組みに加え、継続的な法令および規制の制定により先発品への価格引き下げ圧力が一層高まっています。2022年には、米国議会において、インフレ抑制法(Inflation Reduction Act:IRA)が可決され、薬価上昇率がインフレ率を上回った製薬会社に対するペナルティの賦課、メディケア受給者の自己負担額の上限設定、2026年よりメディケアの対象となる特定の医薬品に関する連邦政府への価格設定権限の付与等、メディケア・プログラムに基づく医薬品の補償条件が大幅に変更されました。また、2025年5月には、米国の処方薬価格を、選定された「同等に発展した国々」での最も低い価格に連動させる価格設定メカニズムである「最恵国待遇(Most Favored Nation:MFN)」価格の導入に関する大統領令が発出されました。米国における制度改革や参照価格制度は、いわゆる参照国(price-basket countries)を含む他市場の価格期待や価格交渉にも影響を及ぼし、結果としてグローバルな価格圧力を一段と高める可能性があります。日本においては、政府による一層の後発品の使用促進に加え、医療保険制度における多くの製品の公定薬価が、毎年引き下げられています。欧州においても、薬剤費を抑制し、価格透明性を高め、国際価格を参照する政策により、医薬品価格が低下しています。欧州連合は、知的財産保護や市場独占期間に影響を及ぼす可能性のある医薬品関連法制の改正を検討しており、これにより将来的に医薬品価格に影響が生じる可能性があります。当社は、中国を含む新興国等のその他の国・地域においても同様の価格圧力を受けており、これらの国・地域における事業拡大に伴い、今後もこうした圧力が継続すると見込まれます。当社は、各国の薬剤費抑制策の詳細な分析やモニタリングを行い、医薬品の価格状況を管理する組織体制を構築することでリスクの影響低減の努力を行うとともに、各国政府や医療サービス供給者・保険者等と協力して、革新的な医薬品に対する適切な報酬制度を確立するために、価値に基づく新しい価格設定モデル(バリューベースド・プライシング)等の解決策を追求していますが、これら各国の薬剤費抑制策による価格引き下げにより、当社製品の価格が影響を受け、当社の業績および財務状況に悪影響が生じる可能性があります。 (6)戦略的取引および関連するバランスシート上の価値毀損・財務リスク当社は、持続的な成長を加速させ、研究開発パイプラインおよび製品ポートフォリオを強化するため、必要に応じて企業買収、事業買収または資産取得ならびにライセンス契約を含む戦略的取引を実施しています。しかしながら、これらの取引には、取得した事業や導入した資産の統合の際の問題の発生、商慣習の相違、税制度を含む法令や規制の変更、政情不安、経済の不確実性、複数の法域で事業を行うことに伴う複雑性等、様々なリスクが伴い、結果として当初想定した買収効果やシナジーまたは戦略目標が十分に実現されない可能性があります。また、買収、取得またはライセンス契約その他の戦略的取引に関連して、当社は、貸借対照表上にのれんおよび無形資産を計上したり、多額の一時金の支払、マイルストン支払義務その他の長期的なコミットメントを負う場合があります。取得または導入した資産について、臨床試験結果が期待に沿わない場合、開発または上市が遅延した場合、または業績への寄与が想定を下回った場合には、のれん、無形資産またはその他投資に関連する減損損失が発生し、当社の業績、財務状況および配当可能利益に悪影響を及ぼす可能性があります。また、取得した事業の統合や導入した資産から期待される価値の実現に失敗した場合にも、当社の業績および財務状況に悪影響が生じる可能性があります。さらに、これらの戦略的取引は、当社の有利子負債水準を引き上げ、または資本構成に影響を及ぼす場合があります。当社は、過去の戦略的取引に関連して発生したものを含め、多額の債務を負っています。当社は、利益の創出および選択的な非中核資産の売却等を通じてレバレッジの速やかな低下を進めてきましたが、当社の財務状況は依然として業績や市場環境の変動に影響を受けやすい状態にあります。当社の財務状況が将来悪化した場合には、当社の信用格付けが引き下げられ、その結果、既存の債務の借り換えや新規借入れ、その他資金調達の条件にも悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、当社のコミットメントラインは必要に応じて随時資金の引き出しが可能なものでありますが、これに関連して、一定の制限条項が付されています。かかる条項に抵触した場合には、当該コミットメントラインの利用が制限され、また、同コミットメントラインを使用した全ての債務残高等について即時返済が求められる可能性があり、その結果、当社の財務状況に影響を及ぼすおそれがあります。当社は、これらのリスクに対応するため、規律ある取引評価プロセス、綿密な統合計画、継続的な状況のモニタリング、慎重なバランスシートおよび資本管理、ならびに金融機関その他のステークホルダーとの積極的な対話を実施しています。しかしながら、これらの施策が十分に有効である保証はなく、当社が戦略的取引の実行や統合に失敗した場合、取得または導入した資産の価値が低下した場合、または財務の柔軟性が制約された場合には、当社の業績、財務状況および長期成長戦略に悪影響が生じる可能性があります。 (7)リーダーシップの移行および組織変革に関するリスク当社は、最高経営責任者および経営陣の交代を含むリーダーシップの移行に加え、広範な組織および事業運営モデルの変革を進めています。こうした変化は、とりわけ移行および適応の期間において、短期的な不確実性および執行リスクをもたらす可能性があります。リーダーシップの移行および組織変革により、戦略上の優先順位に影響が生じ、意思決定が遅延または複雑化し、ガバナンス、内部統制、または役割および責任の明確性が一時的に不十分となる可能性があります。また、重要な人材や組織における知識の喪失、企業文化の一体感の低下、従業員エンゲージメントおよび定着率の悪化といった影響が生じる可能性があります。当社は、これらのリスクを低減するため、変革期における継続性および規律ある執行を支えるガバナンスおよび監督の枠組みを整備しています。具体的には、暫定的なリーダーシップ体制、変革を監督する仕組み、役割および責任の明確化、当社の価値観および戦略との整合を図るための継続的なコミュニケーション等を実施しています。また、当社は、潜在的な課題を適時に特定し対応するために、リーダーシップの有効性、従業員のエンゲージメントおよび定着率、業務パフォーマンス等の組織健全性指標をモニタリングしています。しかしながら、これらの施策が意図したとおりに機能せず、リーダーシップの移行または組織変革の施策が適切に実行されなかった場合には、業務の混乱、ガバナンスまたは内部統制の弱体化、重要人材の喪失、または社会的信頼への悪影響が生じ、当社の事業、業績、財務状況および長期的な戦略目標に悪影響を及ぼす可能性があります。 (8)安定供給に関するリスク当社は、販売網のグローバル化に確実に対応するとともに、当社製品への需要に対し適切な供給量を確保していくため、供給ネットワークと品質保証体制を強化しており、具体的には、製造設備への適切な投資、必要に応じて複数のサプライヤーと適切な在庫水準を確保するための製造供給戦略の策定、代替サプライヤーの選定、当社内の製造ネットワークに係る危機管理規則の制定、事業継続管理システムの導入および定期的な内部監査等を行っています。しかしながら、当社または委託先の製造施設・物流施設等において、技術上もしくは法規制上の問題、原材料の不足、想定を超える需要、または自然災害の発生や新興感染症の流行、進出国における紛争あるいは各国・地域間における地政学的緊張の高まり等により、製商品の供給に大幅な遅延または安定供給への支障が発生する可能性があります。その動向によっては、当社の業績、財務状況および社会的信頼に影響を及ぼす可能性があります。 (9)IT セキュリティ、情報管理およびデジタル技術に関するリスク当社は、顧客ニーズに合致したビジネスモデルの進化を支えるため、デジタル技術を活用しています。デジタル技術活用の強化は、当社の長期的な持続的成長に不可欠であり、当社の成長戦略の重要な基盤として位置付けています。こうした状況のもと、事業の特性上、秘匿性の高い個人情報を含む大量の機密情報を取り扱っていることから、データ保護ならびにセキュリティ対策の重要性が一層高まっています。データ活用やデジタルプラットフォームへの依存度が高まる中、大規模かつ複雑なIS/IT システム(アウトソーシング企業のシステムを含む)の利用に伴い、システム停止やセキュリティ上の問題が発生するリスクは増大し、その影響範囲も拡大しています。また、当社は、生産性向上、意思決定支援および全社的な業務プロセスの高度化を目的として、人工知能(AI)およびエージェント型テクノロジーの導入・活用を検討し、順次実装を進めていますが、これに伴い新たに進化するリスクにも直面する可能性があります。かかるリスクには、AIの能力の過大評価、AIを活用した意思決定に関する責任所在の不明確さ、AIエージェントとユーザー認証情報またはアクセス権限との不整合、機密情報の意図しない漏えい・誤用、ならびにAIを利用した攻撃、プロンプトインジェクション、敵対的操作等の新たなサイバー脅威が含まれます。当社は、業務効率と収益性の向上を目的として、ネットワーク基盤の改修とクラウド移行、ガバナンスの枠組みの強化およびグローバルなサイバーセキュリティ戦略の策定等、テクノロジー投資を行っています。これらの取組みの一環として、アプリケーションセキュリティ、資産管理、ネットワークセキュリティ、脆弱性管理およびパッチ管理等の基盤的能力を強化するため、機能横断的な専門チームを配置しています。しかしながら、技術変化のスピードが極めて速いことから、導入したデジタルまたはAIソリューションが比較的短期間で陳腐化する可能性があり、継続的な投資、ガバナンスおよび統合の取り組みの強化が必要となります。デジタルおよびAI施策に対するガバナンスが断片的または不十分である場合には、コンプライアンス、業務運営および社会的信頼に関するリスクが高まります。こうした状況の中、当社がデジタル変革から期待される効果や利益を十分に実現できない場合、またはシステム停止、セキュリティ上の問題、もしくはデジタル技術の不適切な利用が発生した場合には、当社の事業活動、業績、財務状況および社会的信頼に悪影響が生じる可能性があります。 (10)コンプライアンスに関するリスク当社は事業の遂行にあたって、薬事規制や製造物責任、独占禁止法、個人情報保護法等の様々な法的規制やGMP (Good Manufacturing Practice)、GQP(Good Quality Practice)、GCP (Good Clinical Practice)、GLP (Good Laboratory Practice)等のガイドラインの適用を受けています。加えて、当社の事業は、医療従事者、医療機関、政府関係者、患者さんおよび患者団体等との広範な接点を伴うものであり、これらの活動は製薬業界の特性上、本質的にコンプライアンスリスクを伴うものです。これらの関係者との連携や取引は、多くの場合、サプライヤー、学術提携先、卸売業者その他の商業パートナー等の第三者を通じて、またはこれらの第三者と連携して行われるため、適切なガバナンスが講じられない場合には、コンプライアンスリスクがさらに高まります。さらに、規制当局による取り締りの強化、複数の法域にわたって進化し、また断片的に変化する法制度、地政学的な不安定性、ならびにデジタルおよびオムニチャネルのエンゲージメントモデルを含む急速に変化する事業慣行等により、これらのリスクは一層高まっています。当社は、当社の事業活動および第三者との関係全般におけるコンプライアンスを推進するために、グローバルエシックス&コンプライアンス部門を設置し、ポリシー、手続および統制のための制度を整備しています。また、オンボーディング、デューデリジェンス、継続的モニタリングおよび是正措置を含む取組み等の、第三者との関係のライフサイクル全体を対象としたリスクベースの第三者リスク管理の枠組みを導入しており、ガバナンスの強化、説明責任の明確化および組織全体のコンプライアンス意識の向上を継続的に図っています。しかしながら、こうした取組みにもかかわらず、コンプライアンスリスクを完全に排除することはできません。ステークホルダーとのやり取りを適切に管理できない場合、または既存の取決めを含め、第三者との関係をそのライフサイクル全体にわたり有効に統治できない場合には、法令または社内ポリシーへの違反、規制当局による調査または措置、金銭的制裁、訴訟、業務の混乱または社会的信頼への悪影響が生じ、当社の業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。 (11)進出国および地域におけるカントリーリスク当社は、グローバルな事業展開に伴い、進出国や地域における政治不安、経済情勢の悪化、医薬品に対する関税を含む関税その他の貿易制限措置、新興感染症の流行、社会混乱、進出国における紛争、各国・地域間における地政学的緊張の高まり等に伴う投資、データの越境規制など様々なリスクにさらされています。また、政府機関または規制当局における業務の混乱や機能不全が生じた場合、医薬品の承認手続の遅延や審査プロセスの変更につながる可能性があり、その結果、当社の事業活動や成長計画に悪影響を及ぼす可能性があります。加えて、各国においてビジネスと人権に関する法規制の整備が継続的に進んでおり、バリューチェーン全体での人権侵害リスクへの対応の必要性が高まっています。当社は、各部門の連携のもと、これらのリスクが当社の事業に与える影響の分析や各地域における社会情勢のモニタリング、人権デューデリジェンスの実施等を通じてリスクに対応する体制を構築しております。また、地政学的情勢や政策動向の急速な変化に対応するため、部門横断的なモニタリングおよび対応体制を整備するとともに、適時のエスカレーションおよび意思決定を可能とするため、事業継続計画および危機管理計画について定期的なテストを実施しています。さらに、地政学的リスクは、製品供給の継続性、コンプライアンス上の義務、ならびに越境データ規制等の他のリスクを増幅させる可能性があることから、当社はシナリオ分析や経営陣によるレビューをリスク管理の枠組みに組み込んでいます。当社は、医薬品に対する患者さんのアクセスを確保することを最優先としており、これらのリスクの低減方法およびこれらのリスクへの対応方法を確認しながらリスク管理を行うよう努めています。しかしながら、当社または当社と協力関係にある第三者が事業を行っている地域において、不測の事態が生じた場合には、当社の業績、財務状況および社会的信頼に影響を及ぼす可能性があります。 (12)金融市場環境に関するリスク当社の当年度における海外売上収益は4兆726億円であり、連結売上収益全体の90.4%を占めており、そのうち米国での売上収益は2兆1,648億円にのぼり、連結売上収益全体の48.0%を占めています。従って、売上収益については円安は増加要因である一方、研究開発費をはじめとする外貨建ての費用は円安の場合には収益に悪影響を及ぼす可能性があります。また、機能通貨以外で実行される事業上の取引、金融取引および投資に関して為替変動リスクにさらされています。さらに、金利変動による資金調達コストの上昇や、世界的なインフレーションの進行が当社の利益を圧迫する可能性があります。当社は為替および金利リスクを集約的に管理し、これらの財務リスクをヘッジするためにデリバティブ取引を行うとともに、取引先との契約条件の見直し等により潜在的な影響の緩和を図っていますが、経済環境や金融市況が当社の想定を超えて変動した場合には、当社の業績および財務状況に影響が生じる可能性があります。 (13)訴訟等に関するリスク当社の事業活動に関連して、現在関与している訴訟のほか、将来、医薬品の副作用、製造物責任、労務問題、公正取引等に関連し、訴訟を提起される可能性があり、その動向によっては、当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。なお、係属中の重要な訴訟の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 31 コミットメントおよび偶発負債」をご参照ください。 (14)環境に関するリスク環境はウェルビーイング(心身の健康)の基礎であり、私たちは事業活動に欠かせない自然資源を環境から得ています。環境保全に対する責務の遂行は、当社の事業の発展に不可欠であり、当社の価値観(バリュー)に沿うものです。これは、単に正しい行いをするというだけではなく、人生を変えうるような医薬品やワクチンを責任をもって患者さんにお届けできるようにするものです。そのために、当社は、ステークホルダーからの期待に沿いつつ法規制にも遵守した厳格な環境マネジメントシステムおよび社内プログラムを整備するとともに、これらが有効に運用され、期待する結果を実現していることを確認するための内部監査手続を定めています。しかしながら、万が一、予期せぬ汚染や法規制への不適合、不十分な環境保全活動が顕在化した場合には、社会的信頼を損なうとともに、行政措置の対象となり、保険の適用範囲外または補償金額を超える支払義務を伴う改善措置の実施や法的責任を負うことにより、当社の事業活動に悪影響が生じる可能性があります。また、環境法規制の改正や社会の期待の変化により、より厳しい要請への対応が課せられ、当社の研究、開発、製造その他の事業活動に影響が及ぶ可能性もあります。かかる要件の遵守や課題への対応が行われない場合には、法規制上の責任を負い、当社の社会的信頼に影響を及ぼすとともに、当社の業務遂行能力に悪影響が生じ、ステークホルダーに対する魅力が低下する可能性があります。これまでのところ、気候変動に起因するコンプライアンスまたは訴訟等の重大な影響はありませんが、当社は、気候変動を、人々の健康に大きな影響を及ぼす深刻なグローバル課題であるとともに、当社の事業に財務的なリスクをもたらす可能性のある課題であると認識しています。当社は、2024年度に気候関連リスクと機会に関するシナリオ分析を更新し、移行リスクおよび物理的リスクに焦点を当てた評価を実施しました。当該評価には、特定のサプライチェーンリスクも含まれています。移行リスク評価では、規制、技術、市場、および評判に関するリスクを対象とし、気候変動に対するグローバルな対応レベルによる異なる3つの気候変動シナリオ(すなわち、「迅速な気候変動対策(Rapid Climate Action)」、「気候変動対策の遅延(Delayed Transition)」、「中道的な気候変動対策(Middle of the Road)」)に基づき、2050年までの時間軸における当社への影響を評価しました。物理的リスク評価では、当社の事業運営および第三者である主要な医薬品製造受託機関(CMO)およびサプライヤーについて、気温、水、風および土地に関連する危険性を、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によって設定された2つの共通社会経済経路シナリオ(SSP2-4.5(注)1とSSP5-8.5(注)2)に基づいて評価しました。本プロセスを通じて、当社に潜在的に該当する気候関連リスク・カテゴリーを特定することができました。これには、潜在的な各国および地域レベルでの炭素税導入に伴うサプライヤーからのコストの増加の可能性、および高温ストレス、水資源の不足、洪水による当社の事業運営および医薬品製造受託機関(CMO)への物理的リスクが含まれており、これらが顕在化した場合には、当社の事業、業績および財務状況に影響が生じる可能性があります。また、当社では、気候変動関連リスクを全社的リスク管理体制に組み込んでおり、今後新たに顕在化しうるリスクの傾向を適切にモニタリングできる体制を取っています。当社では、潜在的な影響を緩和するため、低炭素型事業への移行を進めています。当社は、2022年度まで、カーボンニュートラルを維持してきましたが、2024年度からは気候変動対策の目標としてのカーボンニュートラルからの転換を行い、ネットゼロのロードマップを進めるための取り組みにリソースを集中させる一方で、バリューチェーンを超えた自然を活用したカーボン除去プロジェクトへの投資を継続しています。当社の重要なステークホルダーは当社に対して優れた環境保全活動を遂行することを期待していると認識しており、当社は自社の製品および事業活動から生じる環境への影響を緩和するための方策を継続的に模索しています。当社は、事業活動およびバリューチェーン全体における温室効果ガス排出量の最小化、自然環境への影響の低減、ならびに持続可能性に配慮した製品設計および生産に重点を置いて、環境サステナビリティ活動に取り組んでいます。また、これらの取り組みを補完する分野にも引き続き注力しており、水資源の保全を支援するための自然資源保護への取り組み、責任ある廃棄物処理をはじめとし、製品ライフサイクル全体を通じて環境への影響を最小限に抑えるため、製品開発のすべての段階においてサステナビリティに配慮しています。これらの取り組みにより成果が得られた場合には、地球の生態系と人々の健康を守りながら、当社に対する社会的評価の向上と当社事業の強化に繋がることとなり、患者さんに貢献するという当社の揺るぎない使命を果たし続けられることになります。一方で、当社が掲げているサステナビリティの高い目標に向けた行動を実施できない場合や、ステークホルダーの期待に沿う結果が得られない場合には、当社に対する社会的信頼が損なわれ、その結果、従業員の採用・維持や顧客、投資家との関係の構築において問題が生じ、当社の業績および財務状況に影響が及ぶ可能性があります。 (注)1 SSP2-4.5シナリオ:温室効果ガス排出量が2050年まで現在のレベルで続き、その後減少するが、2100年までに地球の気温が2.1~3.5℃上昇すると推定される中程度の排出経路を示しています。2 SSP5-8.5シナリオ:現在のCO2排出量が2050年までに約2倍、2075年までに約3倍に増加し、2100年までに地球の気温が3.3~5.7℃上昇すると推定される、非常に高い温室効果ガス排出経路を示しています。 (15)人材の採用および配置に関するリスク当社の長期的に持続可能な成長には、人材の獲得競争の激しい市場や地域において、事業を支える適切な人材の採用と配置が重要であると認識しています。当社は、組織の有効性、文化、価値観を維持しながら、働き方の柔軟性をより高め、職場環境をより良くする施策を実施するとともに、継続的なキャリア開発機会の提供やエンゲージメントの推進を図り、従業員に対して魅力的な価値を提案することで、人材採用における競争力の強化と人材の定着を促進しています。しかしながら、計画通りに採用や定着が進まない場合は、人材の喪失や不足を通じて、当社の競争力が低下し、その結果、当社の業績および財務状況に影響が及ぶ可能性があります。

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