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リプロセル(4978)は何で稼いでいるか — 事業の柱と依存度

化学 素材・化学

事業の概要

  • iPS細胞技術を軸とした事業展開
    リプロセルグループは、山中伸弥教授によるiPS細胞樹立以降、研究が活発化しているiPS細胞技術を中核としています。この技術を「研究支援事業」と「メディカル事業」の2つの柱で展開し、収益を上げています。研究支援事業は短期・中期的な収益基盤を、メディカル事業は中長期的な成長の柱と位置づけています。
  • 研究支援事業での収益化
    研究支援事業では、iPS細胞研究に必要な培養液や試薬の製造販売、iPS細胞作製やゲノム編集などの高度な研究受託サービス、細胞測定機器の販売を行っています。大学や製薬企業が主要顧客で、新技術を比較的短期間で事業化し収益化できる点が特徴です。特に、ヒトiPS細胞を用いた病態解明や創薬研究への応用を主軸としています。
  • メディカル事業での将来性追求
    メディカル事業では、脊髄小脳変性症を対象とした「ステムカイマル」やALS向け「iPS神経グリア細胞製品」など、4つの再生医療等製品の研究開発を進めています。また、再生医療等製品の受託製造(CDMO)や臨床検査サービスも提供しており、これらは中長期的な成長ドライバーとして期待されています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
セグメント構成
  • 研究支援事業
    大学、公的研究機関、製薬企業を主要顧客とし、iPS細胞研究用の試薬や細胞の製造販売、iPS細胞作製やゲノム編集などの研究受託サービス、細胞測定機器の販売を行っています。この事業は、新技術を比較的短期間で事業化し収益化できる特徴があり、リプロセルグループの短期・中期的な収益基盤となっています。最新年度の売上は24.14586億円です。
  • メディカル事業
    再生医療等製品の研究開発、再生医療等製品の受託製造(CDMO)、臨床検査受託サービスの3つを柱としています。脊髄小脳変性症を対象とした「ステムカイマル」やALS向け「iPS神経グリア細胞製品」など、4つの再生医療製品パイプラインの研究開発を重点的に進めています。この事業は、リプロセルグループの中長期的な成長の柱と位置づけられており、最新年度の売上は5.64041億円です。
  • グローバルな事業展開
    リプロセルグループは、日本(株式会社リプロセル)のほか、米国子会社のREPROCELL USA Inc.、英国子会社のREPROCELL Europe Ltd.、インド子会社Bioserve Biotechnologies India Pvt. Ltdなど、連結子会社5社と関連会社2社で構成されています。研究支援事業では、REPROCELL USAが約60万のヒト生体試料バンクを保有し、製薬企業へ研究用資材を提供しています。
2025-03 セグメント別業績
セグメント区分売上(億)営業利益(億)営業利益率
ResearchSupportBusiness 地域 24 − −
MedicalBusiness 地域 6 − −
有価証券報告書「事業の内容」の全文を見る(年度切替)
FY2026|10,387 文字
3【事業の内容】 当社グループは当社(株式会社リプロセル)、米国子会社のREPROCELL USA Inc.、英国子会社のREPROCELL Europe Ltd.、インド子会社Bioserve Biotechnologies India Pvt. Ltdなどの連結子会社5社により構成されております。 当社グループが中核技術とするiPS細胞技術は、山中伸弥教授によるヒトiPS細胞の樹立以降、世界中で研究が活発化し、近年では病態解明や再生医療への応用など、実用化に向けた研究開発が加速しています。2026年3月には、重症心不全及びパーキンソン病を対象としたiPS細胞を使った再生医療製品2品目の製造販売が条件・期限付きで初めて承認されるなど、日本発のiPS細胞を用いた治療製品の実用化が現実のものとなっています。さらに、加齢黄斑変性、脊髄損傷、頭頸部がんなどを対象とした臨床試験も進められています。また、希少難病の患者由来iPS細胞を用いた病態解明や新薬候補の治験進展も報告されています。 このような背景のもと、当社グループはiPS細胞技術を活用する事業を「研究支援事業」と「メディカル事業」の2つのセグメントに分け、推進しています。研究支援事業は、iPS細胞を病態解明や創薬研究に応用することを主軸とし、短中期的な収益基盤を構築しています。一方、メディカル事業では、ステムカイマル、iPS神経グリア細胞製品、TIL療法、GPC-1 CAR-T療法の4品目を中心とする再生医療等製品の研究開発、再生医療等製品の受託製造、臨床検査サービスを手掛けており、中長期的な成長の柱と位置付けています。 事業内容内容研究支援事業 研究支援事業では、大学、公的研究機関、製薬企業等を主要顧客とし、(1)研究用製品の製造販売、(2)研究受託サービス、(3)細胞測定機器等の販売を行っております。研究支援事業は、新技術を比較的短期間で事業化し収益化できるという特徴があり、当社グループの短期・中期的な収益基盤となっています 。 (1) 研究用製品 研究試薬: iPS細胞研究に使用される培養液、抗体、リプログラミング試薬、成長因子等を販売しております。当社の研究試薬はiPS細胞に特化している点が特徴です。初期製品である「Primate ES Cell Medium」は、京都大学の山中伸弥教授が世界で初めてヒトiPS細胞の作製に成功した際に使用された培養液で、広く認知されています。 細胞: REPROCELL USAでは、がん細胞、血液、血清等約60万のヒト生体試料バンクを保有し、主に製薬企業へ研究用資材として提供しています。顧客ごとのカスタムコレクションにも対応しています。 (2) 研究受託サービス 近年、新薬開発において動物実験からヒト細胞を用いた試験への移行が進む中、当社グループは、iPS細胞関連技術とヒト生体試料調達ネットワークを統合した「ヒト細胞ビジネスプラットフォーム」を構築し、この流れを先取りしたサービスを展開しています 。 iPS細胞サービス: 顧客ごとにカスタマイズした付加価値の高いサービスを提供しています。RNAリプログラミング技術やゲノム編集技術を駆使し 、患者由来iPS細胞を用いた疾患モデル作製、遺伝子編集、各種細胞への分化誘導など、技術難易度の高いサービスを中心に行っています。 創薬試験受託: 手術等で得られたヒト組織を用いて、新薬候補化合物の薬効薬理試験を受託しています。REPROCELL EuropeはGLP(医薬品の安全性に関する基準)準拠施設を保有し、信頼性の高いサービスを提供しています 。 (3) 細胞測定機器 自社製品に加え、他社製品の導入・販売も積極的に行っています。ドイツのナニオンテクノロジーズ社製電気生理学的細胞測定機器、フランスのインターサイエンス社製微生物検査用機器、ドイツのイノメ社製ライブイメージングシステムなどを取り扱っています 。これら機器と当社グループの細胞・試薬を組み合わせたソリューションも提供しています。 事業内容内容メディカル事業 メディカル事業では、(1)再生医療等製品の研究開発、(2)再生医療等製品の受託製造(CDMO)、(3)臨床検査受託サービスを手掛けており、当社グループの中長期的な成長の柱と位置付けています。 (1) 再生医療等製品の研究開発 現在、以下の4つの再生医療等製品パイプラインを重点的に進めています。 体性幹細胞製品ステムカイマル: 台湾のステミネント社より導入した脂肪由来の間葉系幹細胞製品です。脊髄小脳変性症を対象とし、点滴投与のため患者への侵襲性が低い点が特徴です。国内第Ⅱ相臨床試験を完了しており、2024年11月にステミネント社が厚生労働大臣より外国製造業者として認定されたことを受け、製造販売承認申請の準備を進めています。本製品は希少疾病用再生医療等製品に指定されています。 iPS神経グリア細胞製品: 筋萎縮性側索硬化症(ALS)等を対象としたiPS細胞由来の再生医療製品です。ALSモデルラットを用いた試験において運動機能低下の有意な抑制効果が確認されており、臨床試験の早期開始に向けた準備を進めています 。 腫瘍浸潤性リンパ球輸注療法(TIL療法): 患者自身のがん組織から採取・培養した腫瘍浸潤リンパ球を投与する養子免疫療法の一種です。慶應義塾大学における先進医療Bにおいて、進行子宮頸がんを対象としたTIL療法で、2024年11月に当社が製造したTILを用いた2例目の患者への投与が実施されました。また、新規培養法に関する共同研究契約を締結し、早期の事業化を目指しています。 グリピカン1・キメラ抗原受容体T細胞療法(GPC-1 CAR-T療法): 食道がんなど多様な固形がんで高発現するGPC-1を標的とする免疫細胞療法です 。2024年12月にAMEDの公募事業に採択され、京都大学等と共同で研究開発を推進しており、食道がんを対象とした臨床試験の早期開始に向けて準備を進めています。 (2) iPS細胞再生医療等製品の受託製造事業 遺伝子変異リスク等を最小限に抑えた最先端のRNAリプログラミング技術を利用し、臨床応用に最適な高品質のiPS細胞を安全に作製可能です 。2025年10月にスペインのパートナー企業がGMP認証を取得したことで、日米欧の3拠点によるグローバルな受託製造体制が整いました。さらに、2026年1月にAI設計ゲノム編集システムを基盤とする臨床用遺伝子編集サービス「StemEdit™」の提供を開始し 、同年3月には米国のGMP施設においてマスターセルバンク(MCB)製造サービスを開始したことで、一気通貫の枠組みで提供できる体制を確立しました。また、個人専用のiPS細胞を作製・保管する「パーソナルiPS」や、iPS細胞由来エクソソームのグローバルな販売拡大も進めています。 (3) 臨床検査受託サービス 臓器移植関連のHLAタイピング等の臨床検査実績を有します。郵送検査サービス「ウェルミル」では、2026年1月より個人の生物学的年齢を測定する「遺伝子年齢測定キット」の提供を開始し、サービスを拡充しました。がんの個別化医療に向けた「ネオアンチゲン検出サービス」も実施しています。さらに、グローバル規模の臨床試験受託にも対応しております。 iPS細胞技術プラットフォームと事業セグメント (1) 研究支援事業 研究支援事業では、大学や公的研究機関、製薬企業等の研究所を顧客として、研究試薬や細胞などの研究用製品、iPS細胞作製やゲノム編集などの受託サービスを提供しています。最先端技術を集約した製品・サービスを通じて、画期的な新薬や治療法の開発を支援しています。 近年、製薬業界では、動物愛護やヒトと動物の種差による結果の相違といった課題から、「動物実験からヒト細胞実験へ」のシフトが加速しています。この流れは、新薬開発プロセスの大幅な短縮と、より有効性の高い新薬開発を可能にすると期待されています。特にヒトiPS細胞は、このシフトの中心的存在として注目されており、例えばアルツハイマー病患者由来のiPS細胞を用いることで、病態解明や新薬開発が加速することが期待されます。 当社グループは、RNAリプログラミング技術、ゲノム編集技術、各種細胞への分化誘導技術といったヒトiPS細胞に関する世界最先端の技術プラットフォームを保有しています。また、医療機関からがん細胞やヒト組織を調達できる広範なネットワークも構築しており、これらを統合した「ヒト細胞ビジネスプラットフォーム」により、「動物実験からヒト細胞実験へ」の移行を先取りした事業を展開しています。具体的には、研究試薬製品、iPS細胞を用いた病態モデル細胞作製サービス、ヒト生体試料のバンキング・提供、ヒト組織を用いた新薬の薬効薬理試験サービスなどを提供しています。 これらの技術力を活かし、2025年4月には、再生医療における免疫拒絶のリスクを大幅に低減するHLAノックアウトiPS細胞株「StemEdit™ Human iPSC non-HLA」シリーズを開発し、販売を開始しました。本製品は、他家iPS細胞を用いた細胞移植医療の大きな課題である免疫拒絶反応を解決する「ユニバーサルドナー細胞」の開発研究を加速するものとなります。 さらに、自社開発品に加え、他社製品の導入・代理店販売にも積極的に取り組んでいます。ドイツのナニオンテクノロジーズ社製電気生理学的細胞測定機器、フランスのインターサイエンス社製微生物検査用機器、同じくドイツのイノメ社製ライブイメージングシステムなど、多様な研究機器を取り扱っています。これら機器と当社グループの細胞・試薬を組み合わせ、顧客に総合的なソリューションを提供しています。 今後も、研究支援事業のポートフォリオを積極的に拡大し、新薬開発の効率化や革新的治療法の発展を支援することで、安定的な収益基盤を強化してまいります。 研究支援事業の事業系統図 (2) メディカル事業 再生医療分野では、ヒト体性幹細胞やヒトiPS細胞の臨床応用を目指した研究が世界中で精力的に進められており、将来的に再生医療等製品がグローバルで巨大産業へ成長することが見込まれています。 特に、無限の増殖能と多分化能を持つiPS細胞は、有効な治療法のない難病に対する画期的な治療法となる可能性を秘めており、その臨床応用に大きな期待が寄せられています。iPS細胞の臨床応用における主要課題は安全性の確保ですが、当社グループは高品質で臨床応用に最適なiPS細胞を作製するRNAリプログラミング技術を開発・保有しています。この技術的優位性を活かし、iPS細胞等の早期臨床応用を実現すべく、以下の事業を強力に推進しています。 メディカル事業では以下の事業を推進しております。 (a) 体性幹細胞製品ステムカイマル ステムカイマルは、台湾のSteminent Biotherapeutics Inc.(以下、ステミネント社)が開発した脂肪由来の間葉系幹細胞製品です。当社は、日本国内における脊髄小脳変性症を対象とした独占的商業ライセンス契約を締結しており、関連特許も国内で成立しています。 脊髄小脳変性症は、小脳・脳幹・脊髄の神経細胞変性により、歩行障害や嚥下障害などの運動失調を引き起こす原因不明の希少疾患です。ステムカイマルは、症状進行の抑制効果が期待され、点滴投与のため患者への侵襲性が低い治療法です。 日本国内で実施した第II相臨床試験(2020年2月投与開始、2022年5月完了)では、全被験者で重篤な有害事象は認められず、安全性が確認されました。有効性については、主要評価項目であるSARAスコア*において、実薬群のスコア上昇が自然歴と比較して抑制される傾向が確認されました。さらに、ベースライン(投与前)スコアが11以上の部分集団では、ベースラインから52週目までのスコア変化量において、実薬群がプラセボ群に比べ統計的に有意な改善を示しました(P値=0.042)。 また、ステミネント社が台湾で実施した第II相臨床試験でも、安全性に問題はなく、SARAスコアの改善及び進行抑制効果が確認され、日本での試験結果を裏付けるものとなりました。さらに、米国で実施された患者1名の臨床試験においても、約1年半にわたる長期的なSARAスコアの改善が見られております。2024年11月には、ステミネント社が厚生労働大臣より再生医療等製品の外国製造業者として認定を受け、当社による国内での製造販売承認取得に向けた要件の一つが満たされました。また、開発元のステミネント社は今後、米国において本製品の第II相臨床試験を開始し、グローバル展開を加速させる予定です。 本製品は2018年12月に希少疾病用再生医療等製品に指定されており、開発費助成(最大50%)、優遇税制、優先審査等の支援措置の対象となっています。当社グループは、これらの結果と指定メリットを活かし、脊髄小脳変性症に苦しむ患者様へ一日も早く新たな治療選択肢をお届けできるよう、製造販売承認申請の準備を進めています。 * SARAスコア:脊髄小脳変性症の症状評価に広く用いられる指標。歩行、立位、会話、指先運動などを総合的に数値化(0~40点)。症状悪化に伴いスコアが増加。 (b) iPS神経グリア細胞製品 当社グループは、iPS細胞から神経グリア細胞を作製し、各種神経変性疾患に対するiPS細胞再生医療製品としての研究開発を実施しており、現在、ALSを対象とした臨床試験の早期開始に向けて準備を進めております。 ALSモデルラット(ALS病態を再現したラット)を用いた実験では、iPS神経グリア細胞投与群において、非投与群と比較して運動機能低下が有意に抑制される結果を得ました。また、投与したiPS神経グリア細胞がラット体内に長期間生着し、運動神経を活性化していることも確認されています。 これらの有望な非臨床データを基に、ALSを対象とした臨床試験の早期開始に向けた準備を加速してまいります。 (c) 腫瘍浸潤性リンパ球輸注療法(TIL療法) TIL療法は、患者自身のがん組織から腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を採取・体外大量培養し、患者へ再投与する養子免疫療法の一種です。1980年代より米国を中心に進行悪性黒色腫に対して実施され、高い治療効果が報告されており、奏効率は約7割、完全奏効率は約2割とされ、完全奏効例の多くは再発しないことが知られています。2024年2月には、転移性メラノーマを対象としたTIL療法が、固形がんに対する初の細胞免疫療法として米国FDAに承認されました(薬価:515,000ドル)。 当社は2023年6月、慶應義塾大学医学部産婦人科学教室と「先進医療B(進行子宮頸がんに対する骨髄非破壊的前処置および低用量IL-2を用いた短期培養抗腫瘍リンパ球輸注療法の第II相臨床試験)」におけるTIL製造法の技術移転に関する共同研究契約を締結し、技術移転を完了しました。TIL療法は高度な培養技術を要するため、実施可能な施設は世界でも限られています。 2024年11月には、慶應義塾大学で本先進医療が再開され、当社が製造したTILを用いた2例目の患者への投与が実施されました。今後、2026年までに計10名を対象に実施される予定です。 当社グループは、本臨床試験におけるTILの受託製造と並行し、TIL療法を当社グループの再生医療等製品パイプラインの柱の一つと位置づけております。2024年10月には、TILの新規培養法に関する新たな共同研究契約を慶應義塾大学医学部産婦人科学教室と締結し、早期の事業化を目指しております。 (d) グリピカン1・キメラ抗原受容体T細胞療法(GPC-1 CAR-T療法) キメラ抗原受容体T細胞療法(Chimeric Antigen Receptor T cell, CAR-T療法)は、患者自身のT細胞(免疫細胞)に、特定のがん抗原を認識・攻撃するよう遺伝子改変を施し、患者に戻す免疫細胞療法です。既に血液がんで実用化され、固形がんへの応用も世界中で精力的に研究開発が進められています。 本事業では、グリピカン1(GPC-1)というがん抗原を標的とするGPC-1 CAR-T細胞療法の研究開発を行っています。GPC-1は成人の正常組織ではほとんど発現せず、食道がん、子宮頸がん、肺扁平上皮がん、膵がんなど、多様な固形がんで特異的に高発現しています。そのため、GPC-1を標的とするCAR-T療法は、これらの難治性固形がんに対する有望な治療法として期待されています。 本研究開発事業は、2024年12月に国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の公募事業「再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業」に採択されました。京都大学大学院医学研究科早期医療開発学講座および国際医療福祉大学医学部免疫学との委託契約を締結し、共同研究を実施しております。 現在、食道がんを対象とした臨床試験の早期開始に向けて準備を進めております。 (e) iPS細胞再生医療等製品の受託製造事業 iPS細胞を用いた再生医療の研究開発は、加齢黄斑変性、パーキンソン病、虚血性心筋症、脊髄損傷などを対象に、世界中で活発に進められています。再生医療に用いるiPS細胞には極めて高い安全性と品質が求められ、各国の厳格な規制ガイドラインへの準拠が必須です。 当社グループは、遺伝子変異リスクや外来遺伝子・ウイルス残存リスクを最小限に抑えた最先端のRNAリプログラミング技術を開発・保有しており、臨床応用に最適なiPS細胞を安全かつ高品質に作製可能です。当社グループの事業における製品・サービスは、主に製薬企業等向けの「臨床用iPS細胞」と、個人向けの「パーソナルiPS」に大別されます。 「臨床用iPS細胞」では、GMP(Good Manufacturing Practice)準拠の製造体制のもと、製造したiPS細胞を再生医療製品の出発材料として提供しています。当社のiPS細胞は日米欧の医薬品規制要件に準拠しており、広くグローバルに利用可能な点が強みです。また、当社の臨床用iPS細胞は、米国食品医薬品局(FDA)のドラッグマスターファイル(DMF)への登録を完了しており、顧客企業が米国で承認申請を行う際の手続きを簡略化できます。なお、その高い安全性と品質は、2025年2月に当社細胞の供給先である米国Gameto Inc.が当該iPS細胞を用いた技術でFDAから第III相臨床試験のIND(治験届出)クリアランスを取得したこと等を通じ実証されております。 当期においては、上記の強固な基盤をもとに、グローバル展開と一貫受託サービスの構築をさらに推し進めました。 拠点体制については、これまでの神奈川県ライフイノベーションセンター内の細胞加工施設「殿町・リプロセル再生医療センター」(特定細胞加工物製造許可施設番号:FA3200006)および米国REPROCELL USA Inc.のGMP設備に加え、2025年10月に当社が出資するパートナー企業のヒストセル社(スペイン)が、当社の臨床用iPS細胞を用いたマスターセルバンク(MCB)及びワーキングセルバンク(WCB)の製造に関してスペイン医薬品・医療機器庁(AEMPS)よりGMP認証を取得しました。これにより、日米欧の3拠点体制による受託製造事業をグローバルに拡大する体制が整いました。 技術面では、2026年1月にAI設計ゲノム編集システム「OpenCRISPR-1™」を基盤とする臨床用遺伝子編集サービス「StemEdit™」の提供を開始いたしました。本技術は大規模言語モデル(LLM)による人工設計システムであり、高い編集効率とオフターゲット作用の低減能力を有します。これにより免疫拒絶リスクを抑えたユニバーサルドナーiPS細胞の効率的な作製が可能となるほか、複雑なライセンス問題を伴う従来の遺伝子編集技術に代わる選択肢として、知的財産上および商業上の課題を解決し、細胞治療薬開発における商用化の障壁を低減する画期的な特長を備えています。 続いて2026年3月には、米国のREPROCELL USA Inc.のGMP製造施設において、臨床用iPS細胞のMCB製造サービスを開始いたしました。これにより、当社グループは「ドナー選定」「シードクローン製造」「StemEdit™による臨床用遺伝子編集」から「GMPセルバンキング」に至る一連のワークフローを、一気通貫の枠組みで提供できる体制を確立しました。顧客企業は当社のサービスを利用することで、各国の規制要件や製造プロセスにおける不確実性を低減し、より合理的で実行可能な開発ロードマップを構築することが可能となります。 「パーソナルiPS」は、将来の疾患に備えて個人のiPS細胞を作製・保管するサービスです。個人専用iPS細胞を予め準備することで、いざという時の治療期間の短縮や免疫拒絶リスクの最小化が期待できます。株式会社JTB(以下、JTB)との連携による国内および訪日外国人への販売展開を継続して進めております。 iPS細胞由来エクソソームは細胞間情報伝達を担う直径50~150nmの顆粒状物質で、次世代の医療ツールとして注目されています。当社グループは、ウイルスを使用しないmRNA法で作製したiPS細胞(外来ウイルス混入リスクを排除)を由来とするエクソソームを、GMP準拠施設において製造しております。本製品は、JTBと総代理店契約を締結しており、グローバルネットワークを活用し、販売拡大を図っております。 (f) 臨床検査受託サービス 当社グループは、2005年の衛生検査所登録以来、臓器移植関連のHLAタイピングや抗HLA抗体検査等の臨床検査を実施し、全国300以上の医療機関との取引実績を有します。 2023年4月からは、自宅で手軽に健康状態をチェックできる郵送検査サービス「ウェルミル」を開始しました。唾液を検体として用い、「ストレス」「更年期」「男性ホルモン」「女性ホルモン」に関連するホルモンを測定し、日常的な体調管理に役立てることができます。さらに2026年1月からは最新のエピジェネティクス研究に基づき、唾液中の細胞内の遺伝子の働き方を解析して個人の生物学的年齢(遺伝子年齢)を測定する「遺伝子年齢測定キット」の提供を開始しました。本サービスは、自身の生物学的年齢を客観的に把握し、生活習慣の改善につなげていただくことで、人々の健康管理とQOL向上に貢献するものです。今後も新検査項目やサービスを積極的に追加し、事業拡大を図ります。 また、がんの個別化医療に関する新たなサービスとして、患者一人ひとりのがん組織の遺伝子情報を解析し、固有の目印であるネオアンチゲンを特定する「ネオアンチゲン検出サービス」も実施しています。 製薬企業向けには、臨床試験における検査受託サービスを提供しています。日本、米国、英国、インドの4拠点に研究施設を有し、グローバル規模の臨床試験に対応可能な体制を整備しています。これにより、製薬企業の新薬開発を支える高品質な検査サービスを提供し、国際的な信頼を得ています。 さらに、個別化医療への取り組みも進めています。当社グループのREPROCELL Europe Ltd.は、IBM Research社および英国STFC Hartree Centreと共同で、個別化医療に特化した機械学習プラットフォーム「Pharmacology-AI」の開発に成功しました。このプラットフォームは、医薬品開発におけるビッグデータ解析や個別化医療に必要なデータ解析を可能にします。今後、Pharmacology-AIを活用した新たなビジネスを創出し、個別化医療の推進と製薬企業への支援を強化してまいります。その具体的な取り組みとして、英国を拠点とする医療ボランティア登録制度「ReproRegistry(リプロレジストリ)」を開設しました。これは、Pharmacology-AIと連携して治験に最適な被験者を高精度に特定するものであり、次世代の治験支援事業の中核基盤にしてまいります。 メディカル事業のパイプライン(参考情報)※1:筋萎縮性側索硬化症(ALS)体を動かすための神経系(運動神経)が変性してしまい、筋力の低下による運動障害や嚥下障害等の症状があらわれる病気です。運動神経のみが変性するため、意識や五感は正常であり、知能の低下もありません。病状の進行が極めて速い一方で、有効な治療法は確立されていません。日本では指定難病とされており、国内患者数は約1万人とされています。※2:横断性脊髄炎脊髄の一部分が横方向にわたって炎症を起こすことによって発生する神経障害です。通常、腰部の痛み、筋肉衰弱、つま先や脚の異常な感覚などの症状が突然発症することで始まり、その後急速に、麻痺や閉尿や排便制御の喪失などの深刻な症状がみられます。原因は特定されておらず、有効な治療法は確立されていません。国内患者数は約1.5万人とされています。

事業の優位性(モート)

事業の質(有価証券報告書から抽出)
数字に出ない事業の性質を、同じ物差しで全銘柄そろえています。FY2025時点の記載が出典です。
価格決定力値上げを通せるか。強いほどインフレ耐性が高い 中程度
iPS細胞に特化した研究試薬や高難度な受託サービスを提供しているため。
参入障壁新規参入を阻む要因の種類 技術
iPS細胞技術は世界中で研究が活発化しており、技術革新が速く、新規参入も活発。
顧客集中度特定顧客への依存度。高いほど失注リスクが大きい 中程度
設備投資の性質稼いだ現金がどれだけ設備維持に消えるか 成長投資
規制依存規制は障壁にも足枷にもなる 高い
会社が挙げる主要リスク:競合リスク / 研究開発活動に由来するリスク / 再生医療ビジネスに関するリスク
同じ条件で他の銘柄を探す → 定性スクリーニング(価格決定力・参入障壁・景気敏感度などで絞り込めます)
モート総合 1 / 25 5類型それぞれの強度と、そう判定した根拠
無形資産☆☆☆☆☆
根拠:弱いブランド・特許・許認可

リプロセルは再生医療分野の研究開発型企業であり、現時点では特許やブランドによる明確な無形資産の優位性は確認できない。事業の性質上、将来的な特許取得が競争優位の源泉となる可能性はあるが、現段階での評価は困難。

スイッチングコスト★☆☆☆☆
根拠:弱い乗り換えの手間・コスト

再生医療分野では、特定の細胞治療や技術に特化したサービスを提供している場合、顧客(医療機関や製薬会社)が他のサービスへの切り替えに際して、治験データの互換性や技術習得のコストが発生する可能性がある。しかし、現時点ではスイッチング・コストの強固さは限定的。

ネットワーク効果☆☆☆☆☆
根拠:弱い利用者増が価値を生む

現時点では、リプロセスの事業モデルにおいて、ユーザー数の増加がサービスの価値を直接的に高めるネットワーク効果は確認されない。研究開発段階の企業であり、プラットフォーム型ビジネスではない。

コスト優位☆☆☆☆☆
根拠:弱い同じ物を安く作れる

再生医療分野は高度な技術と設備投資を要するため、構造的なコスト優位性を確立することは困難である。研究開発費や製造コストは高く、競合他社とのコスト競争力は現時点では見られない。

規模の経済☆☆☆☆☆
根拠:弱い規模が参入障壁になる

リプロセルは研究開発段階の企業であり、業界全体における規模の経済性を活かした優位性は現時点では確認できない。市場シェアや生産規模の面で、寡占的な地位を確立しているとは言えない。

  • iPS細胞技術の専門性と実績
    リプロセルは、山中伸弥教授がヒトiPS細胞作製に成功した際に使用された培養液「Primate ES Cell Medium」を初期製品として持つなど、iPS細胞研究の黎明期から関与し、高い専門性と実績を誇ります。RNAリプログラミング技術やゲノム編集技術など、世界最先端のiPS細胞関連技術プラットフォームを保有している点が強みです。
  • ヒト細胞ビジネスプラットフォーム
    新薬開発における動物実験からヒト細胞を用いた試験への移行というトレンドを捉え、iPS細胞関連技術とヒト生体試料調達ネットワークを統合した「ヒト細胞ビジネスプラットフォーム」を構築しています。これにより、患者由来iPS細胞を用いた疾患モデル作製や創薬試験受託など、付加価値の高いサービスを提供できる点が競争優位性となっています。
  • グローバルな事業展開と規制対応
    日米欧印の4拠点を持ち、研究支援から再生医療等製品の受託製造、臨床検査までグローバルに事業を展開しています。特に、臨床用iPS細胞の作製においては日米欧3極の規制に準拠しており、国際的な需要に対応できる体制を整えています。これにより、世界中の顧客に対して高品質なサービスを提供できる可能性があります。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)

経営戦略

有価証券報告書「経営方針・対処すべき課題・MD&A」の全文を見る(年度切替)
経営方針・経営戦略
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。 (1)経営方針 当社はiPS細胞及び体細胞に関する世界最先端の研究成果を広く一般的に利用できる形で事業化することで、研究開発をより促進し、さらに、再生医療など次世代医療を通じて人々の健康福祉に貢献することを目指しています。 短中期的な事業の柱としてiPS細胞に関連した研究試薬や創薬支援サービスを提供する「研究支援事業」を推進し、中長期的な成長戦略として巨大市場が見込める「メディカル事業」へ積極的に投資することにより、当分野のマーケットリーダーを目指します。 また、真のグローバル企業として成長していくことも当社の大きな基本方針としています。病気や医療ニーズに国境はなく、再生医療を含む次世代医療は全世界中の人々から求められています。現時点で、市場の大きい米国、欧州、日本、また将来大きな成長が見込めるインドにそれぞれ拠点を有しており、事業展開を進めております。 さらに、再生医療分野において持続的な成長を可能にするために顧客、社員、事業パートナー、株主といった重要なステークホルダーのバランスの取れた関係を重視し、これらのステークホルダーと長期的にWin-Winの関係となれる体制を構築してまいります。また、我々は社会の一員であるという自覚を持ち、社会全体への貢献についても重視してまいります。 (2)経営戦略等 当社の中核事業領域であるiPS細胞は、山中伸弥教授によるヒトiPS細胞の発明以降、世界中で研究が盛んに行われております。 最近では、iPS細胞を活用した病態解明や再生医療への応用など、実用的な研究開発が多く行われるようになりました。2017年には、希少難病の患者から作製したiPS細胞を活用して病態を解明し、新薬候補の治験へつなげた事例が報告され、さらに、再生医療に関しても、加齢黄斑変性、パーキンソン病に続き、重症心筋症及び角膜疾患でも臨床研究/試験が開始されました。 当社では、前者のようにiPS細胞を病態解明や創薬研究に使用する事業を「研究支援事業」、後者の再生医療を「メディカル事業」と位置づけ、2つのセグメントに分け、推進しております。 現時点では、研究支援事業の売上が約87%となっております。今後とも、短中期的な主力事業としてグローバルに推進してまいります。一方、メディカル事業では、現在、脊髄小脳変性症を対象とした再生医療製品ステムカイマル及び、筋萎縮性側索硬化症(ALS)等の神経系疾患を対象としたiPS神経グリア細胞の研究開発を進めております。これら再生医療製品は中長期的な成長事業として、積極的な投資を行い、早期の製造販売承認の取得を目指します。 当社の基本事業戦略を下記にまとめます。 ① 積極的なグローバル化の推進 当社では、日本に加え、米国、欧州、インドにも拠点を保有しております。いずれの拠点も、販売、製造、研究開発の機能を有しており、各拠点が有機的に連携しながらグループシナジーを追求しています。 営業では、各拠点がそれぞれの地域の顧客をカバーしており、時差や言語の壁なく営業活動を推進しております。日本市場に加え、バイオ業界における最大の市場である米国、それに続く欧州、さらに世界人口第2位を誇るインドの4拠点をカバーすることで、ターゲット顧客である世界中の多くの大学/公的研究機関及び製薬企業等にアクセスが可能になっております。各地域で製造している製品やサービスを別の地域で販売することで、売上を拡大してまいります。 ② 研究支援事業とメディカル事業による連続的成長モデル 研究支援事業では、医薬品のような製造販売承認は必要とされず、新しい技術を比較的短期間で事業化し収益を上げることができます。当社では、iPS細胞を中心とした幅広い「ヒト細胞ビジネスプラットフォーム」を有しており、競争優位性の高い製品やサービスを世界中で展開し短中期の収益の柱として推進しております。 メディカル事業では、再生医療および臨床検査を実施しております。再生医療に関しては、上市までに臨床試験を行い製造販売承認を取得する必要があるため、研究支援事業より事業化に時間が必要とされますが、日本では2014年の法改正により、世界で最も再生医療の産業化に適した環境が整っていると考えられます。「医薬品、医療機器等の品質、有効性および安全性の確保等に関する法律(通称 薬機法)」では、治験において安全性が確認され、有効性が推定された再生医療等製品に対して早期承認(条件・期限付き承認)を与えることが可能になりました。これにより、患者様に対して新たな治療機会を早期に提供すると共に、治験期間の短縮や治験費用の削減が期待できます。 経済産業省の報告書(「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備 「根本治療の実現」に向けた適切な支援のあり方の調査」)によると、再生医療産業のグローバルでの市場規模は2030年で約5~10兆円となっており、今後、巨大市場に成長することが見込まれています。 このように、再生医療を中長期的な成長事業と位置づけ、早期の製造販売承認の取得を目指します。 短中期的な収益の柱である「研究支援事業」と、中長期的な成長事業である「メディカル事業」の両方を組み合わせることで、短期→中期→長期と、持続的な成長を実現します。 ③ 最先端技術による持続的な技術優位性の確保 iPS細胞は世界中で研究開発競争が繰り広げられており、飛躍的に技術が進歩してきました。当社は、引き続き技術開発を積極的に推進することで競争力の強化を図ってまいります。また、リプロセルグループ内の各要素技術を組み合わせ、シナジーを追求することで競争優位性の高い新規ビジネスの開発を行ってまいります。引き続き、世界中のトップ大学および企業等とのコラボレーションを通じて、世界最先端の技術を積極的に開発・導入してまいります。 (3)経営環境 2020年に感染拡大が始まった新型コロナウイルスへの対応状況が、最近大きく変わってきました。今後とも、感染拡大は定期的に起こる可能性はあるものの、ワクチン接種率が高まってきたこともあり、今後、従来のような行動制限措置が行われる可能性は低くなりました。事業環境もパンデミック以前の状態に戻ってきております。 (4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 当社が持続的に成長して企業価値を高めるとともに、我々のビジョンやミッションを達成するために優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題を以下のように考えております。 ① 全社的課題(1) iPS細胞分野における技術革新への対応と市場リーダーシップの確立 iPS細胞技術は世界中で急速な研究開発競争が繰り広げられており、技術革新のスピードは非常に速く、既存技術が短期間で陳腐化するリスクがあります 。 当社グループは、この変化に対応し、当該分野のマーケットリーダーとしての地位を確立・維持するため、研究開発への積極投資を行っております。自社開発に加えて、これまでと同様、国内外の大学、公的研究機関、民間企業との連携、共同開発、技術導入を戦略的に推進し、技術的優位性を確保してまいります。 (2) 事業ポートフォリオの最適化と収益基盤の強化 短期・中期的な収益基盤である研究支援事業と、中長期的な成長ドライバーであるメディカル事業の両輪を、バランスを取りながら、安定的かつ持続的に成長させることが課題です。 研究支援事業では、「ヒト細胞ビジネスプラットフォーム」を核とした高付加価値製品・サービスを提供することで収益基盤を強化しつつ、将来の成長を担う再生医療等製品への戦略的投資を継続してまいります。 ② セグメント別課題(1) 研究支援事業(a) 多様化・高度化する顧客ニーズへの対応 研究支援事業では、大学・公的研究機関から製薬企業まで幅広いニーズに対応した製品・サービスが求められます。 特に創薬分野ではヒトの病態に近いモデル細胞での評価や効率的なスクリーニングに対するニーズが高まっています。当社グループは、研究試薬、受託サービス(iPS細胞作製、遺伝子編集、分化誘導、薬効薬理試験など)といった多岐にわたる製品・サービス群を提供することで、多様化・高度化する顧客ニーズに対応しております。 (2) メディカル事業(a) 再生医療等製品ステムカイマルの早期承認取得 脊髄小脳変性症を対象疾患とするステムカイマルは、国内第II相臨床試験において安全性及び有効性で良好な結果を得ることができました。承認申請には、臨床試験の結果だけでなく、社内体制の整備、及び各種申請資料の準備が必要になります。今後、承認申請に向け、外部専門家の活用も含め、準備を加速してまいります。 (b) iPS神経グリア細胞製品の早期臨床応用の実現 筋萎縮性側索硬化症(ALS)を対象としたiPS神経グリア細胞製品は、非臨床試験で有望な結果が得られており、現在、臨床試験の準備を進めております。iPS細胞を用いた再生医療では安全性の確保が技術的な課題となりますが、当社グループは最先端のRNAリプログラミング技術により作製した高品質な臨床用iPS細胞を用いることでこの技術的課題に対応してまいります。 (c) 腫瘍浸潤性リンパ球輸注療法(TIL療法)の早期事業化と技術基盤強化 慶應義塾大学と共同で進める進行子宮頸がんを対象としたTIL療法は、先進医療Bとしての臨床試験が再開され、当社がTIL製造を担当しています。米国でメラノーマを対象としたTIL療法が承認され、今後の市場拡大が期待される一方、競争激化も見込まれます。本臨床試験での安定的なTIL供給体制を確立するとともに、新規TIL製造方法の研究開発を行うことで、競争優位性を確保してまいります。 (d) グリピカン1・キメラ抗原受容体T細胞療法(GPC-1 CAR-T療法)の早期臨床応用の実現 食道がん、膵がんなど多様な固形がんを対象とするGPC-1 CAR-T療法は、AMED事業にも採択された有望なパイプラインです。一方、固形がんを対象としたCAR-T療法は、世界中で様々な技術開発が進められており、競争優位性の確保が課題となります。京都大学、国際医療福祉大学との連携のもと、薬事規制に準拠した非臨床試験の実施、品質・製造方法の確立を進めており、早期に臨床試験を開始することを目指します。 (e) iPS細胞再生医療等製品の受託製造(CDMO)事業のグローバル展開 臨床用iPS細胞の需要は世界的に高まっていますが、その一方、競争激化も見込まれます。当社グループの技術力と品質はCIRMとの連携やGameto社への供給実績等を通じて高く評価されています。2024年5月に開設した米国GMP準拠施設を含む日米2拠点体制を活用し、高品質な臨床用iPS細胞の安定供給、及び最終製品製造までの一貫した受託サービスを提供することで、グローバル市場でのプレゼンスを高めてまいります。 (5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、売上高と経常利益となります。
対処すべき課題
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。 (1)経営方針 当社はiPS細胞及び体細胞に関する世界最先端の研究成果を広く一般的に利用できる形で事業化することで、研究開発をより促進し、さらに、再生医療など次世代医療を通じて人々の健康福祉に貢献することを目指しています。 短中期的な事業の柱としてiPS細胞に関連した研究試薬や創薬支援サービスを提供する「研究支援事業」を推進し、中長期的な成長戦略として巨大市場が見込める「メディカル事業」へ積極的に投資することにより、当分野のマーケットリーダーを目指します。 また、真のグローバル企業として成長していくことも当社の大きな基本方針としています。病気や医療ニーズに国境はなく、再生医療を含む次世代医療は全世界中の人々から求められています。現時点で、市場の大きい米国、欧州、日本、また将来大きな成長が見込めるインドにそれぞれ拠点を有しており、事業展開を進めております。 さらに、再生医療分野において持続的な成長を可能にするために顧客、社員、事業パートナー、株主といった重要なステークホルダーのバランスの取れた関係を重視し、これらのステークホルダーと長期的にWin-Winの関係となれる体制を構築してまいります。また、我々は社会の一員であるという自覚を持ち、社会全体への貢献についても重視してまいります。 (2)経営戦略等 当社の中核事業領域であるiPS細胞は、山中伸弥教授によるヒトiPS細胞の発明以降、世界中で研究が盛んに行われております。 最近では、iPS細胞を活用した病態解明や再生医療への応用など、実用的な研究開発が多く行われるようになりました。2017年には、希少難病の患者から作製したiPS細胞を活用して病態を解明し、新薬候補の治験へつなげた事例が報告され、さらに、再生医療に関しても、加齢黄斑変性、パーキンソン病に続き、重症心筋症及び角膜疾患でも臨床研究/試験が開始されました。 当社では、前者のようにiPS細胞を病態解明や創薬研究に使用する事業を「研究支援事業」、後者の再生医療を「メディカル事業」と位置づけ、2つのセグメントに分け、推進しております。 現時点では、研究支援事業の売上が約87%となっております。今後とも、短中期的な主力事業としてグローバルに推進してまいります。一方、メディカル事業では、現在、脊髄小脳変性症を対象とした再生医療製品ステムカイマル及び、筋萎縮性側索硬化症(ALS)等の神経系疾患を対象としたiPS神経グリア細胞の研究開発を進めております。これら再生医療製品は中長期的な成長事業として、積極的な投資を行い、早期の製造販売承認の取得を目指します。 当社の基本事業戦略を下記にまとめます。 ① 積極的なグローバル化の推進 当社では、日本に加え、米国、欧州、インドにも拠点を保有しております。いずれの拠点も、販売、製造、研究開発の機能を有しており、各拠点が有機的に連携しながらグループシナジーを追求しています。 営業では、各拠点がそれぞれの地域の顧客をカバーしており、時差や言語の壁なく営業活動を推進しております。日本市場に加え、バイオ業界における最大の市場である米国、それに続く欧州、さらに世界人口第2位を誇るインドの4拠点をカバーすることで、ターゲット顧客である世界中の多くの大学/公的研究機関及び製薬企業等にアクセスが可能になっております。各地域で製造している製品やサービスを別の地域で販売することで、売上を拡大してまいります。 ② 研究支援事業とメディカル事業による連続的成長モデル 研究支援事業では、医薬品のような製造販売承認は必要とされず、新しい技術を比較的短期間で事業化し収益を上げることができます。当社では、iPS細胞を中心とした幅広い「ヒト細胞ビジネスプラットフォーム」を有しており、競争優位性の高い製品やサービスを世界中で展開し短中期の収益の柱として推進しております。 メディカル事業では、再生医療および臨床検査を実施しております。再生医療に関しては、上市までに臨床試験を行い製造販売承認を取得する必要があるため、研究支援事業より事業化に時間が必要とされますが、日本では2014年の法改正により、世界で最も再生医療の産業化に適した環境が整っていると考えられます。「医薬品、医療機器等の品質、有効性および安全性の確保等に関する法律(通称 薬機法)」では、治験において安全性が確認され、有効性が推定された再生医療等製品に対して早期承認(条件・期限付き承認)を与えることが可能になりました。これにより、患者様に対して新たな治療機会を早期に提供すると共に、治験期間の短縮や治験費用の削減が期待できます。 経済産業省の報告書(「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備 「根本治療の実現」に向けた適切な支援のあり方の調査」)によると、再生医療産業のグローバルでの市場規模は2030年で約5~10兆円となっており、今後、巨大市場に成長することが見込まれています。 このように、再生医療を中長期的な成長事業と位置づけ、早期の製造販売承認の取得を目指します。 短中期的な収益の柱である「研究支援事業」と、中長期的な成長事業である「メディカル事業」の両方を組み合わせることで、短期→中期→長期と、持続的な成長を実現します。 ③ 最先端技術による持続的な技術優位性の確保 iPS細胞は世界中で研究開発競争が繰り広げられており、飛躍的に技術が進歩してきました。当社は、引き続き技術開発を積極的に推進することで競争力の強化を図ってまいります。また、リプロセルグループ内の各要素技術を組み合わせ、シナジーを追求することで競争優位性の高い新規ビジネスの開発を行ってまいります。引き続き、世界中のトップ大学および企業等とのコラボレーションを通じて、世界最先端の技術を積極的に開発・導入してまいります。 (3)経営環境 2020年に感染拡大が始まった新型コロナウイルスへの対応状況が、最近大きく変わってきました。今後とも、感染拡大は定期的に起こる可能性はあるものの、ワクチン接種率が高まってきたこともあり、今後、従来のような行動制限措置が行われる可能性は低くなりました。事業環境もパンデミック以前の状態に戻ってきております。 (4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 当社が持続的に成長して企業価値を高めるとともに、我々のビジョンやミッションを達成するために優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題を以下のように考えております。 ① 全社的課題(1) iPS細胞分野における技術革新への対応と市場リーダーシップの確立 iPS細胞技術は世界中で急速な研究開発競争が繰り広げられており、技術革新のスピードは非常に速く、既存技術が短期間で陳腐化するリスクがあります 。 当社グループは、この変化に対応し、当該分野のマーケットリーダーとしての地位を確立・維持するため、研究開発への積極投資を行っております。自社開発に加えて、これまでと同様、国内外の大学、公的研究機関、民間企業との連携、共同開発、技術導入を戦略的に推進し、技術的優位性を確保してまいります。 (2) 事業ポートフォリオの最適化と収益基盤の強化 短期・中期的な収益基盤である研究支援事業と、中長期的な成長ドライバーであるメディカル事業の両輪を、バランスを取りながら、安定的かつ持続的に成長させることが課題です。 研究支援事業では、「ヒト細胞ビジネスプラットフォーム」を核とした高付加価値製品・サービスを提供することで収益基盤を強化しつつ、将来の成長を担う再生医療等製品への戦略的投資を継続してまいります。 ② セグメント別課題(1) 研究支援事業(a) 多様化・高度化する顧客ニーズへの対応 研究支援事業では、大学・公的研究機関から製薬企業まで幅広いニーズに対応した製品・サービスが求められます。 特に創薬分野ではヒトの病態に近いモデル細胞での評価や効率的なスクリーニングに対するニーズが高まっています。当社グループは、研究試薬、受託サービス(iPS細胞作製、遺伝子編集、分化誘導、薬効薬理試験など)といった多岐にわたる製品・サービス群を提供することで、多様化・高度化する顧客ニーズに対応しております。 (2) メディカル事業(a) 再生医療等製品ステムカイマルの早期承認取得 脊髄小脳変性症を対象疾患とするステムカイマルは、国内第II相臨床試験において安全性及び有効性で良好な結果を得ることができました。承認申請には、臨床試験の結果だけでなく、社内体制の整備、及び各種申請資料の準備が必要になります。今後、承認申請に向け、外部専門家の活用も含め、準備を加速してまいります。 (b) iPS神経グリア細胞製品の早期臨床応用の実現 筋萎縮性側索硬化症(ALS)を対象としたiPS神経グリア細胞製品は、非臨床試験で有望な結果が得られており、現在、臨床試験の準備を進めております。iPS細胞を用いた再生医療では安全性の確保が技術的な課題となりますが、当社グループは最先端のRNAリプログラミング技術により作製した高品質な臨床用iPS細胞を用いることでこの技術的課題に対応してまいります。 (c) 腫瘍浸潤性リンパ球輸注療法(TIL療法)の早期事業化と技術基盤強化 慶應義塾大学と共同で進める進行子宮頸がんを対象としたTIL療法は、先進医療Bとしての臨床試験が再開され、当社がTIL製造を担当しています。米国でメラノーマを対象としたTIL療法が承認され、今後の市場拡大が期待される一方、競争激化も見込まれます。本臨床試験での安定的なTIL供給体制を確立するとともに、新規TIL製造方法の研究開発を行うことで、競争優位性を確保してまいります。 (d) グリピカン1・キメラ抗原受容体T細胞療法(GPC-1 CAR-T療法)の早期臨床応用の実現 食道がん、膵がんなど多様な固形がんを対象とするGPC-1 CAR-T療法は、AMED事業にも採択された有望なパイプラインです。一方、固形がんを対象としたCAR-T療法は、世界中で様々な技術開発が進められており、競争優位性の確保が課題となります。京都大学、国際医療福祉大学との連携のもと、薬事規制に準拠した非臨床試験の実施、品質・製造方法の確立を進めており、早期に臨床試験を開始することを目指します。 (e) iPS細胞再生医療等製品の受託製造(CDMO)事業のグローバル展開 臨床用iPS細胞の需要は世界的に高まっていますが、その一方、競争激化も見込まれます。当社グループの技術力と品質はCIRMとの連携やGameto社への供給実績等を通じて高く評価されています。2024年5月に開設した米国GMP準拠施設を含む日米2拠点体制を活用し、高品質な臨床用iPS細胞の安定供給、及び最終製品製造までの一貫した受託サービスを提供することで、グローバル市場でのプレゼンスを高めてまいります。 (5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、売上高と経常利益となります。
MD&A(経営者による分析)
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】経営成績等の状況の概要 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。 (1)経営成績の状況 当連結会計年度における世界経済は、インフレの落ち着きなどを背景に底堅い成長が見られましたが、トランプ政権の関税引き上げ政策や中国における不動産問題による不確実性から世界経済の減速要因となっております。また、日本経済も緩やかな回復基調を維持しておりましたが、内需の弱さや海外経済の動向によって今後の動向に不確実性が生じております。 このような状況のなか、当社グループが中核技術とするiPS細胞技術は、山中伸弥教授によるヒトiPS細胞の樹立以降、世界中で研究が活発化し、近年では病態解明や再生医療への応用など、実用化に向けた研究開発が加速しています。希少難病の患者由来iPS細胞を用いた病態解明や新薬候補の治験進展が報告される一方、加齢黄斑変性、パーキンソン病、虚血性心筋症、脊髄損傷などを対象とした臨床研究や治験も進められています。 このような背景のもと、当社グループはiPS細胞技術を活用する事業を「研究支援事業」と「メディカル事業」の2つのセグメントに分け、推進いたしました。 この結果、当連結会計年度の売上高は2,233百万円(前期比25.0%減)、営業損失は860百万円(前期130百万円の損失)、経常損失は581百万円(前期45百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失は591百万円(前期103百万円の利益)となりました。 セグメント別の経営成績を示すと、次のとおりであります。a.研究支援事業 当社グループは、大学や公的研究機関、製薬企業等の研究所を顧客として、研究試薬や細胞などの研究用製品、iPS細胞作製やゲノム編集などの受託サービスを提供しています。最先端技術を集約した製品・サービスを通じて、画期的な新薬や治療法の開発を支援しています。 この結果、売上高は1,952百万円(前期比19.1%減)、セグメント利益は96百万円(前期比84.5%減)となりました。 b.メディカル事業 再生医療分野では、ヒト体性幹細胞やヒトiPS細胞の臨床応用を目指した研究が世界中で精力的に進められており、将来的に再生医療等製品がグローバルで巨大産業へ成長することが見込まれています。特に、無限の増殖能と多分化能を持つiPS細胞は、有効な治療法のない難病に対する画期的な治療法となる可能性を秘めており、その臨床応用に大きな期待が寄せられています。iPS細胞の臨床応用における主要課題は安全性の確保ですが、当社グループは高品質で臨床応用に最適なiPS細胞を作製するRNAリプログラミング技術を開発・保有しています。 この技術的優位性を活かし、iPS細胞等の早期臨床応用を実現すべく、(1)再生医療等製品の研究開発、(2)再生医療等製品の受託製造(CDMO)、(3)臨床検査受託サービスの3つの事業を手掛け、当社グループの中長期的な成長の柱として推進しております。 また、再生医療等製品の研究開発では、①体性幹細胞由来の再生医療製品 ステムカイマル、②再生医療向けiPS神経グリア細胞、③腫瘍浸潤性リンパ球輸注療法、④食道がん等の固形がん向けグリピカン1CAR-T療法の4つのパイプラインの研究開発を重点的に進めております。 この結果、売上高は281百万円(前期比50.2%減)、セグメント損失は43百万円(前期158百万円の利益)となりました。 なお、管理部門にかかる費用など各事業セグメントに配分していない全社費用が633百万円(前期734百万円)あります。 (2)財政状態の状況(資産の部) 当連結会計年度末における流動資産は前連結会計年度末に比べて2,432百万円増加し、7,329百万円となりました。主な内訳は、有価証券の増加2,785百万円、現金及び預金の減少219百万円、売掛金の減少127百万円であります。固定資産は前連結会計年度末に比べて2,451百万円減少し、2,322百万円となりました。主な内訳は、投資有価証券の減少2,489百万円、有形固定資産の増加40百万円であります。 (負債の部) 当連結会計年度末における流動負債は前連結会計年度末に比べて23百万円減少し、617百万円となりました。主な内訳は、買掛金の増加10百万円、未払金の減少13百万円、その他の減少19百万円であります。固定負債は前連結会計年度末に比べて143百万円増加し、188百万円となりました。主な内訳は、繰延税金負債の増加141百万円であります。 (純資産の部) 当連結会計年度末における純資産は前連結会計年度末に比べて138百万円減少し、8,846百万円となりました。主な内訳は、資本金の増加31百万円、資本剰余金の増加31百万円、利益剰余金の減少591百万円、その他有価証券評価差額金の増加339百万円であります。 (3)キャッシュ・フローの状況 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末に比べて219百万円減少し、2,603百万円となりました。 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。 (営業活動によるキャッシュ・フロー) 当連結会計年度において営業活動の結果使用した資金は383百万円(前期は6百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失587百万円、売上債権の減少による獲得146百万円、未払金の増加による獲得39百万円、契約負債の減少による使用14百万円、利息及び配当金の受取額82百万円、補助金の受取額89百万円が発生したことによるものであります。 (投資活動によるキャッシュ・フロー) 当連結会計年度において投資活動の結果獲得した資金は57百万円(前期は795百万円の使用)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出1,000百万円、有形固定資産の取得による支出98百万円が発生した一方で、有価証券の償還による収入1,156百万円が発生したことによるものであります。 (財務活動によるキャッシュ・フロー) 当連結会計年度において財務活動による資金の増減はありませんでした(前期は680百万円の獲得)。 生産、受注及び販売の実績(1) 生産実績 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。セグメントの名称当連結会計年度(自 2025年4月1日至 2026年3月31日)金額(千円)前年同期比(%)研究支援事業(千円)772,82698.9メディカル事業(千円)114,62266.1合計(千円)887,44992.9(注)金額は製造原価によっております。 (2) 受注実績 当社は、主として需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。 (3) 販売実績 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。セグメントの名称当連結会計年度(自 2025年4月1日至 2026年3月31日)金額(千円)前年同期比(%)研究支援事業(千円)1,952,47980.9メディカル事業(千円)281,03949.8合計(千円)2,233,51975.0 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は、以下のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。 (1) 財政状態及び経営成績の状態に関する認識及び分析・検討内容「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 経営成績等の状況の概要」をご参照ください。 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、継続的な研究開発費の支出があげられます。研究支援事業については、研究試薬製品、細胞製品ともに、積極的な研究開発を行っており、2026年3月期における研究開発費の総額は627百万円と、販売費及び一般管理費の約33%を占めており、今後も研究開発活動を積極的に推進する予定であります。 (2) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 経営成績等の状況の概要」をご参照ください。 当社グループの資本の財源及び資金の流動性について、当社グループの資金需要のうち主なものは、研究支援事業における製品・サービスの研究開発やグローバル展開の推進及びメディカル事業における再生医療製品の導入や開発等によるものの他、製造費、販売費及び一般管理費などの営業費用であります。 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。しかしながら、事業収益がこれらの資金需要を賄うには十分ではないことから、公的助成金、第三者割当増資による調達資金を利用しています。なお、当社グループの当連結会計年度末の現金及び預金残高は2,603百万円、短期的な資金運用を行っている有価証券が3,904百万円あり、十分な流動性を確保しています。 (3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。 (4) 経営戦略の現状と見通し 2027年3月期の業績につきましては、売上高2,629百万円(当期比17.7%増)、営業損失630百万円(当期は860百万円の損失)、経常損失458百万円(当期は581百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失458百万円(当期は591百万円の損失)を見込んでおります。 連結経常損失、連結当期純損失の予想額は、為替を一定の水準として推移することとして策定しており、為替損益を業績予想に織り込んでおりません。本業績見通しにおける外国為替レートは、1米ドル=150円、1英ポンド=200円、1印ルピー=1.72円を前提としております。 2020年に始まった新型コロナウイルスについては、各国とも行動制限措置の緩和が進み、パンデミック以前の状況に戻ってきております。 (5) 経営者の問題意識と今後の方針について 「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。 また、経営者の視点による経営成績等の状況についての認識及び分析・検討内容については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 経営成績等の状況の概要」をご参照ください。なお、当社グループにおいては、事業計画に基づく事業の成長と早期の黒字化を重要指標として売上高、各段階損益について分析を行っております。

事業リスク

  • 激しい競争と技術陳腐化のリスク
    iPS細胞分野は研究競争が非常に激しく、技術革新のスピードが速いため、既存技術がすぐに陳腐化する可能性があります。大手企業を含む新規参入も増加しており、生産性や販売力、資金力で優る競合他社との競争激化により、計画通りの収益を上げられない可能性があります。
  • 研究開発の不確実性と再生医療製品のリスク
    iPS細胞や再生医療製品の研究開発は、常に計画通りに進む保証がなく、予期せぬ有害事象の発生や有効性の未証明により、治験の中止や承認が得られない可能性があります。また、承認申請や審査の遅延も発生し得るため、業績や財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
  • 資金繰りおよび資金調達のリスク
    研究開発費が先行して多額に計上されるため、継続的に営業損失が発生しています。今後も運転資金、研究開発投資、設備投資の増加が見込まれる中で、収益確保や資金調達が計画通りに進まない場合、財務基盤に影響を与える可能性があります。継続企業の前提に重要な疑義が生じる状況も認識されています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「事業等のリスク」の全文を見る(年度切替)
FY2026|3,528 文字
3【事業等のリスク】 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。あわせて、必ずしもそのようなリスクに該当しない事項についても、投資者の判断にとって重要であると当社が考える事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。また、本項の記載内容は当社株式の投資に関する全てのリスクを網羅しているものではありません。 当社グループは、これらのリスクの発生可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容もあわせて慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。 なお、本項記載の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。 (1) 競合リスク iPS細胞の分野は、熾烈な研究競争が行われており、技術革新が速く、新規参入の動きが活発となっているため、従来の技術が陳腐化するリスクがあります。このため、当社グループは、世界的な大学や公的研究機関と連携し、常に世界最先端の技術開発に先行して取り組んでおります。 新規参入は大手企業を含めて増加しており、研究開発を進めながら参入を検討している潜在的競合相手も少なくないと考えられます。さらに、後発参入製品は先発製品に比べ機能面やコスト面で少なからず優位性を有している可能性もあり、競争が激化することが想定されます。これら競合相手の中には、生産性や販売力、資金力で当社グループを上回る企業が含まれる可能性もあります。当社グループは今後とも、積極的に研究開発及び営業活動を行っていきますが、競合相手との競争状況によっては、計画どおりの収益を上げることができない可能性もあります。 (2) 研究開発活動に由来するリスク 当分野の競争が激化する中、当社では公的資金の有効活用や産学連携により、日本、米国、欧州、インドの4拠点でこれまで研究開発に重点を置いた活動をしてまいりました。しかしながら、研究開発活動が常に計画どおりに進む保証はなく、当初の予定どおりに進まない場合、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 (3) 再生医療ビジネスに関するリスク 現在当社グループでは、①体性幹細胞由来の再生医療製品 ステムカイマル、②再生医療向けiPS神経グリア細胞、③腫瘍浸潤性リンパ球輸注療法、④食道がん等の固形がん向けグリピカン1CAR-T療法の4つのパイプラインがあります。 再生医療製品の開発については、2014年11月25日に施行された「薬事法等の一部を改正する法律」に準拠し進めておりますが、臨床試験において、想定外の有害事象の発生及び有効性が証明できないなどの理由で、治験の中止または承認が得られないリスクがあります。また、承認申請及び審査の過程で遅延が起こるリスクがあります。 (4) 知的財産権に関するリスク① 特許にかかる事項 知的財産権に関して、当社グループの特許権が他社により侵害されるリスクがあります。このため、当社グループでは研究開発で得られた成果に関して、必要に応じて迅速に特許出願等を行っております。逆に、当社グループが他社の特許権を侵害するリスクも否定できないため、必要に応じて各種データベースや特許事務所を活用して情報収集を行い、可能な限り特許侵害リスクを軽減すべく対応しております。しかしながら、当社グループの調査範囲の及ばない抵触特許が存在した場合及び秘密裏に当社グループの特許が侵害された場合、当社グループの技術の優位性が損なわれ、多額の損害賠償を請求されるなど、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。② 職務発明にかかる事項 当社グループにおける職務発明の取扱いに関しては、職務発明規程を作成し、運用しております。しかしながら、将来、発明者の認定及び職務発明の対価の相当性についての係争が発生した場合、当社グループの事業に影響を与える可能性があります。 (5) 経営上の重要な契約等に関するリスク 当社の経営上重要と思われる契約は、当社が実施許諾を受けているiPS細胞事業に関する特許ライセンス契約であります。当該契約が期間満了、解除、その他の理由に基づき終了した場合、もしくは当社にとって不利な改定が行なわれた場合、または契約の相手方の経営状態が悪化したり、経営方針が変更されたりした場合には、当社の事業戦略及び業績に影響を与える可能性があります。 (6) 人材の確保に関するリスク 当社グループの成長戦略を実現するためには、高度な専門的知識、技能及び経験を有する、多様な人材の確保及び育成が不可欠といえます。特に、海外では日本に比べ一般的に人材流動性が高く、優秀な人材ほど外部に流出するリスクが高くなります。海外子会社を含め、各社の取締役及び本部長クラスの優秀な人材を対象にインセンティブ制度を導入するなどして長期確保に努めており、さらに優秀な新規人材の採用も積極的に行っております。しかしながら、優秀な人材の確保及び採用が計画通りに進まない場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 (7) 為替変動リスク 当社グループの海外売上比率は約7割であり、為替変動が業績及び財政状態に与える影響は少なくありません。主要取引通貨である米ドルと英ポンドに対して当初の見込みより円高に推移した場合、売上が減少し、さらに海外通貨預金及び子会社への貸付金に関わる為替差損の発生による損失の拡大が起こるリスクがあります。一方、円安に推移した場合は、売上の増大及び損失の縮小が見込まれます。 (8) 資金繰り及び資金調達等に関するリスク 当社グループでは、研究開発活動の進捗に伴い多額の研究開発費が先行して計上され、継続的な営業損失が生じております。今後も事業の進捗に伴って運転資金、研究開発投資及び設備投資等の資金需要の増加が予想されます。今後、株式市場からの資金調達や、国の公的補助金等の活用など、資金調達手段の多様化により継続的に財務基盤の強化を図ってまいりますが、収益確保または資金調達の状況によっては、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。 (9) 税務上の繰越欠損金 当社には現在のところ税務上の繰越欠損金が存在しております。そのため、事業計画の進展から順調に当社業績が推移するなどして繰越欠損金による課税所得の控除が受けられなくなった場合には、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が計上されることとなり、親会社株主に帰属する当期純利益または親会社株主に帰属する当期純損失及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 (10) レピュテーションに関するリスク 当社グループは、製品の品質・安全性の確保、法令遵守、知的財産権管理、個人情報管理等に努めております。しかしながら、当社グループ及び当社グループを取り巻く環境や競合他社及び競業他社を取り巻く環境において何らかのレピュテーション上の問題が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 (11) 自然災害、事故、テロ、戦争等に関するリスク 当社グループが事業活動を行っている地域では、地震、台風等の自然災害の影響を受ける可能性があります。同様に火災等の事故災害、テロ、戦争等が発生した場合、当社グループの拠点の設備等に大きな被害を受け、その全部又は一部の操業が中断し、生産及び出荷が遅延する可能性があります。また、損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生し、結果として、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 (12) 継続企業の前提に関する重要事象等 iPS細胞及び再生医療製品等の研究開発及び治験費用が収益に先行して発生する等の理由から、継続的に営業損失が発生しており、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象または状況が存在しております。 しかしながら、当社グループの当連結会計年度末の現金及び預金残高は2,603百万円、短期的な資金運用を行っている有価証券が3,904百万円あり、財務基盤については安定しております。今後、主力事業の営業強化、新規事業の立ち上げ、再生医療製品の早期の製造販売承認を通じて、早期の黒字化を目指してまいります。

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