7013

IHI(7013)は何で稼いでいるか — 事業の柱と依存度

機械 機械

事業の概要

  • 主要4事業領域: IHIは「資源・エネルギー・環境」「社会基盤」「産業システム・汎用機械」「航空・宇宙・防衛」の4つの事業を柱としています。これらは、発電プラントから橋梁、航空エンジンまで、社会を支える多岐にわたる製品やサービスを提供しており、それぞれの分野で専門性の高い技術とノウハウを活かして収益を上げています。
  • グローバルな事業展開: 国内だけでなく、多数の連結子会社や持分法適用関連会社を通じて、海外でも積極的に事業を展開しています。例えば、資源・エネルギー・環境事業ではJURONG ENGINEERING LIMITEDなど、世界各地でプラント建設やサービス提供を行い、国際的な市場から収益を得るビジネスモデルを構築しています。
  • 多様な製品とサービス: 各事業で提供する製品は、陸用・舶用原動機、ボイラ、原子力機器、橋梁・水門、交通システム、車両過給機、航空エンジン、ロケットシステムなど非常に広範囲にわたります。これにより、特定の市場変動リスクを分散し、安定的な収益基盤を築いているのが特徴です。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
セグメント構成
  • 資源・エネルギー・環境事業: この事業は、原動機(陸上・船舶用)、ボイラ、貯蔵設備、原子力機器などの製造・販売・サービスを提供しています。売上高は3,770.71億円、営業利益は33.37億円で、エネルギー供給や環境保全に貢献する大規模なプラントや設備を手掛けており、社会の基盤を支える重要な役割を担っています。
  • 社会基盤事業: 橋梁・水門、交通システム、シールドシステム、コンクリート建材、都市開発(不動産)などを手掛ける事業です。売上高は1,431.57億円、営業利益は142.36億円と、売上規模は他の事業に比べて小さいものの、利益率は比較的高く、社会の安全と発展に不可欠なインフラ整備を担っています。
  • 産業システム・汎用機械事業: 車両過給機、パーキングシステム、圧縮機、分離装置、運搬機械、物流・産業システムなどを製造・販売・サービス提供しています。売上高は4,410.82億円、営業利益は231.13億円と、IHIグループの中で最も売上規模が大きく、幅広い産業分野に製品や技術を提供し、生産性向上や効率化に貢献しています。
FY2019 セグメント別業績
セグメント区分売上(億)営業利益(億)営業利益率
EnergyResouce 事業 3,771 33 0.9%
SocialInfrastrucitureAndOffshoreFacilities 事業 1,432 142 9.9%
IndustrialSystemsAndGeneralPurposeMachinery 事業 4,411 231 5.2%
AeroEngineSpaceAndDefense 事業 4,922 464 9.4%
有価証券報告書「事業の内容」の全文を見る(年度切替)
FY2026|3,850 文字
3【事業の内容】 当社及び当社の関係会社(連結子会社127社、持分法適用関連会社18社(※)(2026年3月31日現在))においては、資源・エネルギー・環境、社会基盤、産業システム・汎用機械及び航空・宇宙・防衛の4つの事業を主として行なっており、その製品は多岐にわたっています。各事業の主な事業内容及びグループ各社の位置付け等は次のとおりです。 なお、次の4事業は第5「経理の状況」1連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記「6.セグメント情報」に記載の報告セグメントの区分と同一です。 (※)前連結会計年度まで持分法適用関連会社の社数に含めていたジャパン マリンユナイテッド㈱を親会社とする㈱JMUアムテック等3社並びに海祥海運㈱を親会社とするKAISHO MARINE S.A.等6社については、当連結会計年度から、親会社のみを社数として含めることとしました。このため、持分法適用関連会社の社数は、前連結会計年度末の27社から9社減少し18社となっています。 (資源・エネルギー・環境) 当事業においては、原動機(陸用原動機プラント、舶用原動機)、カーボンソリューション(ボイラ、貯蔵設備)、原子力(原子力機器)等の製造、販売、サービスの提供等を行なっています。[主な関係会社]㈱IHIプラント、㈱IHI原動機、ニコ精密機器㈱、青森プラント㈱、JURONG ENGINEERING LIMITED及びその子会社19社、PT IHI POWER SERVICE INDONESIA、NIIGATA POWER SYSTEMS(SINGAPORE)PTE. LTD.、IHI POWER SYSTEM MALAYSIA SDN.BHD.、Steinmüller Engineering GmbH及びその子会社1社、IHI Power Generation Corporation及びその子会社3社、IHI Terrasun Solutions Inc.、IHI Energy Solutions Inc.(注①)(注②)(注③)(注④) (社会基盤) 当事業においては、橋梁・水門、交通システム(注⑤)、シールドシステム、コンクリート建材(注⑥)等の製造、販売、サービスの提供等を行なっています。[主な関係会社]㈱IHIインフラシステム(2026年4月1日付で㈱IHIインフラスクエアに商号変更。注⑦)、ジャパントンネルシステムズ㈱、㈱三越、JIMテクノロジー㈱、㈱IHIセグメント(注⑧)、IHI INFRASTRUCTURE ASIA CO.,LTD.、IHI California Inc.、I&H Engineering Co.,Ltd.、Terratec Limited及びその子会社4社(注⑨) (産業システム・汎用機械) 当事業においては、車両過給機、パーキング、回転機械(圧縮機、分離装置、舶用過給機)、熱・表面処理、運搬機械(注⑩)(注⑪)(注⑫)、物流・産業システム(物流システム、産業機械)等の製造、販売、サービスの提供等を行なっています。[主な関係会社]IHI運搬機械㈱(2026年4月1日付で㈱IHIパーキングスクエアに商号変更。)、㈱IHI扶桑エンジニアリング、㈱IHI機械システム、㈱IHIフォイトペーパーテクノロジー、㈱IHI物流産業システム、セントラルコンベヤー㈱、㈱IHI回転機械エンジニアリング、㈱IHIターボ、㈱IHIアグリテック、㈱IHIターボサービス、㈱IHI回転機械製造、IHI Hauzer Techno Coating B.V.及びその子会社4社(注⑬)、IHI Press Technology America,Inc.、Indigo TopCo Limited及びその子会社22社、IHI Charging Systems International GmbH i.L.、IHI Charging Systems International S.p.A、IHI寿力圧縮技術(蘇州)有限公司、長春富奥石川島過給機有限公司及びその子会社1社、IHI Turbo America Co.、IHI TURBO(THAILAND)CO.,LTD.、IHI VTN GmbH及びその子会社3社、江蘇石川島豊東真空技術有限公司、IHI DALGAKIRAN MAKINA SANAYI VE TICARET A.S.、石川島寿力回転科技製造(蘇州)有限公司(注⑭)(注⑮)(注⑯) (航空・宇宙・防衛) 当事業においては、航空エンジン、ロケットシステム・宇宙利用、防衛機器システム等の製造、販売、サービスの提供等を行なっています。[主な関係会社]㈱IHIエアロスペース、㈱IHIエアロスペース・エンジニアリング、㈱IHIエアロマニュファクチャリング、㈱IHIキャスティングス、㈱IHIジェットサービス、㈱IHIマスターメタル、㈱アイ・エヌ・シー・エンジニアリング、IHI‐ICR,LLC.、IHI Aero Engines US Co.,Ltd.(注⑰) (その他) 当事業においては、通信、電子、電気計測、情報処理などの機器・装置等の製造、販売、サービスの提供等並びにサービス業を行なっています。[主な関係会社]㈱IHIエスキューブ、㈱IHIトレーディング、㈱IHIビジネスサポート、㈱IHI検査計測、高嶋技研㈱、豊洲エネルギーサービス㈱、そうまIグリッド(同)、IHI do Brasil Representações Ltda.、IHI ENGINEERING AUSTRALIA PTY.LTD.、IHI Europe Ltd.、石川島(上海)管理有限公司、IHI ASIA PACIFIC PTE.LTD.、IHI Americas Inc.、IHI(CANADA)LTD.、IHI Power System(Thailand)Co.,Ltd.(注③)、IHI ASIA PACIFIC(Thailand)CO.,LTD.(注⑯)(注⑱) (注)①. 寿鉄工㈱(資源・エネルギー・環境)は、株式を譲渡したことに伴い当社の関係会社ではなくなりました。 ②. IHI E&C International Corporation(資源・エネルギー・環境)及びその子会社1社は、清算結了により消滅しました。 ③. IHI Power System(Thailand)Co.,Ltd.(資源・エネルギー・環境)は、グループ内の位置付けを(その他)に変更しました。 ④. IHI SOLID BIOMASS MALAYSIA SDN.BHD.(資源・エネルギー・環境)は既に清算手続きを進めており、重要性が乏しくなったため、連結の範囲から除外しました。 ⑤. 交通システム事業の主要な関係会社であった新潟トランシス㈱(社会基盤)は、株式を譲渡したことに伴い当社の関係会社ではなくなりました。 ⑥. コンクリート建材事業の主要な関係会社であった㈱IHI建材工業(社会基盤)は、株式を譲渡したことに伴い当社の関係会社ではなくなりました。 ⑦. ㈱IHIインフラ建設(社会基盤)は㈱IHIインフラシステム(社会基盤)に吸収合併されて消滅しました。 ⑧. 新規設立に伴い、新たに連結の範囲に含めています。 ⑨. Terratec Limited(社会基盤)の子会社のうち、1社を新規設立に伴い新たに連結の範囲に含め、1社は清算結了により消滅しました。 ⑩. 西日本設計㈱(産業システム・汎用機械)は、株式を譲渡したことに伴い当社の関係会社ではなくなりました。 ⑪. ㈱IUKクレーン(産業システム・汎用機械)は、株式を譲渡したことに伴い当社の関係会社ではなくなりました。 ⑫. 台灣石川島運搬機械股份有限公司(産業システム・汎用機械)は、株式を譲渡したことに伴い当社の関係会社ではなくなりました。 ⑬. IHI Hauzer Techno Coating B.V.(産業システム・汎用機械)の子会社のうち、1社は清算結了により消滅しました。 ⑭. ㈱IAT朝日(産業システム・汎用機械)は、株式を譲渡したことに伴い当社の関係会社ではなくなりました。 ⑮. ㈱IHI汎用ボイラ(産業システム・汎用機械)は、株式を譲渡したことに伴い当社の関係会社ではなくなりました。 ⑯. IHI ASIA PACIFIC(Thailand)CO.,LTD.(産業システム・汎用機械)は、グループ内の位置付けを(その他)に変更しました。 ⑰. 明星電気㈱(航空・宇宙・防衛)は、株式を譲渡したことに伴い当社の関係会社ではなくなりました。 ⑱. IHI INC.(その他)は、清算結了により消滅しました。 [主な関係会社及び事業系統]各事業における当社及び主な関係会社の位置付けは、次のとおりです。 ※セグメントを構成する連結子会社を、上表に記載しています。なお、各連結子会社のセグメントにおいて果たす機能について、製造・販売・エンジニアリング・据付・サービスの5つに分類して表示しています。※複数の機能を果たす子会社の場合、その機能を並べて表示できない会社については、会社名の右横に≪製≫ ≪販≫≪エ≫≪据≫≪サ≫として表示しています。※上表の連結子会社は、2026年3月31日現在のものです。

事業の優位性(モート)

事業の質(有価証券報告書から抽出)
数字に出ない事業の性質を、同じ物差しで全銘柄そろえています。FY2025時点の記載が出典です。
参入障壁新規参入を阻む要因の種類 技術
航空エンジン・ロケット、アンモニアなどのクリーンエネルギー分野での研究開発。
設備投資の性質稼いだ現金がどれだけ設備維持に消えるか 混合
規制依存規制は障壁にも足枷にもなる 高い
会社が挙げる主要リスク:コンプライアンス違反による損失や社会的評価の低下 / 経済安全保障問題による評価・信用毀損、販売機会逸失 / 人財獲得・育成・配置の失敗による成長阻害
同じ条件で他の銘柄を探す → 定性スクリーニング(価格決定力・参入障壁・景気敏感度などで絞り込めます)
モート総合 8 / 25 5類型それぞれの強度と、そう判定した根拠
無形資産★☆☆☆☆
根拠:弱いブランド・特許・許認可

IHIは、航空宇宙、エネルギー、インフラ分野で長年の実績と高度な技術力を有する。特に航空宇宙分野における防衛装備品や民間航空機エンジン部品の製造は、高度な技術と信頼性が求められ、参入障壁は高い。しかし、特定の技術やブランド力が圧倒的な独占的IPに繋がっているとは断定しにくい。

スイッチングコスト★☆☆☆☆
根拠:弱い乗り換えの手間・コスト

IHIの製品は、プラント設備や航空機エンジンなど、一度導入されると入れ替えに莫大なコストと時間を要する。特にインフラや防衛関連では、長期的な保守・運用契約が前提となる場合が多く、顧客のスイッチングは困難である。しかし、顧客が他のサプライヤーに移行しないことを保証するほどの強力なロックイン効果は限定的。

ネットワーク効果☆☆☆☆☆
根拠:弱い利用者増が価値を生む

IHIの事業は、個々の顧客との契約に基づいて進められるBtoB事業が中心であり、ユーザー数の増加が製品やサービスの価値を直接的に高めるネットワーク効果は基本的に見られない。

コスト優位★★☆☆☆
根拠:中程度同じ物を安く作れる

IHIは、長年の経験と技術蓄積により、複雑な製品の製造プロセスにおいて一定の効率化を実現していると考えられる。特に、大規模なプラント建設や部品製造においては、サプライチェーンの最適化や生産技術の向上がコスト競争力に寄与する可能性がある。しかし、グローバルな同業他社と比較して構造的なコスト優位性があるとは断定できない。

規模の経済★★★★☆
根拠:強い規模が参入障壁になる

IHIは、航空宇宙、エネルギー、インフラ、造船・海洋といった多岐にわたる事業領域で、グローバル市場において一定以上のシェアを確保している。特に、航空宇宙分野や大型プラント建設においては、巨額の設備投資と高度な技術力が要求されるため、業界内での寡占化が進んでおり、規模の経済が働きやすい環境にある。これにより、新規参入が困難な状況を生み出している。

  • 多岐にわたる技術力: IHIは、原動機、ボイラ、橋梁、航空エンジンなど、幅広い分野で高度な技術を有しています。長年の研究開発と実績に裏打ちされたこれらの技術は、他社が容易に模倣できない競争優位性となっており、特に社会インフラや防衛といった分野で強みを発揮しています。
  • グローバルな事業ネットワーク: 連結子会社141社、持分法適用関連会社27社(2025年3月31日現在)という広範なグループ会社網を国内外に展開しています。これにより、世界中の顧客に対して製品やサービスを提供できる体制が整っており、地域ごとのニーズに合わせた柔軟な対応が可能です。
  • 社会インフラへの貢献: 橋梁・水門、交通システム、シールドシステムなど、社会の基盤を支える重要なインフラ分野で多くの実績を持っています。これらの事業は、公共性が高く、長期的なプロジェクトが多く、安定した受注につながりやすい特性があります。また、国の安全保障に関わる航空・宇宙・防衛分野でも重要な役割を担っています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)

経営戦略

有価証券報告書「経営方針・対処すべき課題・MD&A」の全文を見る(年度切替)
経営方針・経営戦略
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。 (1)会社の経営の基本方針当社グループは、社会とともに発展するよき企業市民であることを第一義とし「技術をもって社会の発展に貢献する」、「人材こそが最大かつ唯一の財産である」との経営理念のもと、2040年に向けて策定した「中長期の方向性」で掲げた「世界中の人々の安心・安全、豊かな暮らしを根幹から支える」の実現に向けて、日本の産業力・国力を再び世界トップレベルに高めるための一翼を担い、世界各国の経済・国家・エネルギーの安全保障に貢献することを目指していきます。 (2)会社の経営戦略及び経営指標<中長期の方向性>当社グループは、2023年度を初年度とする3か年の中期経営計画「グループ経営方針2023」に基づく取り組みを進め、構造改革に一定の目途をつけることができました。2026年度からは、2040年に向けて策定した「中長期の方向性」の実現に向けて、飛躍的な成長ステージへと移行してまいります。 事業ドメインは、当社グループが技術・事業の両面で強みを発揮できる分野として、エアロスペース、エネルギー、インフラの3つに注力します。特にエアロスペースとクリーンエネルギー分野は当社グループ全体の成長を実現するため、大胆なリソースシフト・資源配分を継続します。従来エネルギー分野と産業インフラ・社会インフラ分野は、ライフサイクルビジネスを中心とする安定的な収益基盤として拡大させていきます。これらの取り組みにより、安定的にキャッシュを創出し、長期視点での持続的な成長を実現していきます。 ・価値創造プロセスによる持続的な成長の実現当社グループが長期にわたって培ってきた事業モデルである、圧倒的に強い技術をつくり、参入障壁の高い市場を創出するというサイクルを回しながら、グローバル化・軍民両用(デュアルユース)化などにより事業を拡大・拡張していきます。 ・ライフサイクルビジネスの拡大による安定的な収益基盤の確保ライフサイクルを通じた価値提供や新たなバリューチェーンの創造に取り組むことで、「自動化・省人化」「CO₂削減」「その他、新たなお客さま価値」などの観点から提供する価値を創出し、成長を加速していきます。<中長期に向けたロードマップ> ※1:2025年度実績 ※2:2026~2028年度における営業利益率の目安レンジ ※3:投資CFとは一致しない(研究開発費を含み、資産売却は含まないため) 2026年度から2028年度までの3か年を先行投資及び財務基盤強化に注力する期間(フェーズ1)と位置付け、2029年度以降のフェーズ2では、営業利益・営業キャッシュ・フローの拡大を実現します。2032年度以降のフェーズ3では、先行投資を回収するとともにフリーキャッシュ・フローの大幅な拡大を実現し、これまでの延長線上にはない飛躍的な成長を実現していきます。 ① 成長事業:民間エンジン・防衛・原子力民間向け航空エンジン分野においては、世界の航空機需要の拡大が見込まれる中、当社グループは、民間向け航空エンジンにおける小型~大型・超大型クラスに至るベストセラーエンジンの開発・量産事業に参画しています。今後の需要増加が期待されるアフターマーケットでの事業拡大を目指し、整備事業では、自動化やDXの高度化等による生産性向上を図ることで、高品質なサービスを迅速に提供する体制の構築を進めています。民間向け航空エンジンの整備拠点の一つである鶴ヶ島工場においては、高品質なサービスを迅速に提供する取り組みを進めるとともに、修理棟を新たに建設し、付加価値の高い部品修理需要の取り込みを拡大していきます。また、成長が見込まれる防衛関連事業の拡大に向け、生産能力の強化や必要な技術開発を一層加速します。さらに、原子力分野においては、再稼働・再処理に係る国内のライフサイクルビジネス需要を確実に取り込むことで安定的にキャッシュを創出するとともに、グローバルでの新設需要の拡大を追い風に、海外新設案件の獲得によるトップライン成長の実現に向けて、生産能力の増強を進めていきます。 ② 育成事業:アンモニア・宇宙アンモニア分野においては、当社グループの技術力を活かし、燃料の製造から貯蔵・輸送及び利活用に至るまでのバリューチェーン構築を推進することで、カーボンフリー社会の実現に貢献していきます。当社相生工場内に新設したアンモニアガスタービン向け大型燃焼試験設備による燃焼器開発など、今後もアンモニアガスタービンの実用化に向けて取り組みを進めていきます。宇宙分野においては、安全保障や公共及び商業利用を目的とする衛星データ提供に向けた衛星コンステレーション構築の取り組みなど宇宙関連事業の拡大を図っていきます。 ③ 安定収益事業:資源・エネルギー・環境、社会基盤、産業システム・汎用機械の各分野市場成長が見込まれ、かつ当社の強みを発揮できる事業については、既存アセットや既設ストックを最大限活用したライフサイクルビジネスに注力することで、効率的かつ安定的なキャッシュ創出を図っていきます。一方で、収益性・効率性の低い事業については、引き続き事業ポートフォリオ改革を進めることにより、継続的な成長を実現していきます。フェーズ1では、安定配当を基本方針として、1株当たり配当を持続的に成長させます。営業キャッシュ・フローが伸長するフェーズ2以降は、株主還元の更なる拡大を目指します。 (3)会社の対処すべき課題・成長機会の獲得に向けた先行投資当社グループのさらなる成長に向け、成長を牽引する民間エンジン・防衛・原子力といった成長事業を主な対象として、キャパシティ拡充に向けた投資を実行していきます。また、将来の事業の柱として期待されるクリーンエネルギー分野の育成事業や、市場成長が見込まれ資本効率の高い事業への戦略的な経営資源のシフトを実行していきます。 ・財務基盤の強化財務健全性は改善傾向にありますが、成長・育成事業への投資原資を確保するために営業キャッシュ・フローの強化に取り組むと同時に、事業ポートフォリオ改革や資産売却等を通じて自己資本の増加を図り、財務基盤を強化していきます。 ・ステークホルダーからの期待に応え、信頼を得るための不断のリスクマネジメント及びガバナンスの強化本年6月2日公表のとおり、当社の連結子会社である株式会社IHIエアロスペース(以下、「IHIエアロスペース」という。)が、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、「JAXA」という。)から、JAXAとの機材装置の保全業務に関する契約等において、事実と異なる報告に基づく費用請求が確認されたことを理由として、5か月間の競争参加資格停止処分を受けました。これまでに、IHIエアロスペースが、JAXAから受注した前述の業務の一部において、作業未了にも関わらず完了したとする報告を行ない、当該報告に基づいて費用を請求していたことが判明しています。当社は、このような不適切行為があったことを厳粛に受け止めており、お客さまをはじめとするステークホルダーの皆さまに、多大なるご迷惑とご心配をおかけしておりますことを、深くお詫び申しあげます。 当社は、当事業年度においても再発防止策の実行やコンプライアンスの徹底に取り組んできましたが、取り組みを進める中でこうした新たな事象が確認される等、まだまだ不十分な点があることを痛切に認識しており、改善に向けての取り組みは依然として道半ばにあるものと考えています。当社グループが持続的な成長を遂げるためには、ステークホルダーの皆さまからの期待に応え、信頼を得ることが大前提となります。関係するすべてのステークホルダーの皆さまからの信頼を早期に回復するべく、同様の事案を二度と起こさぬよう、コンプライアンス意識の再徹底、組織風土の改革、及び不正を起こさせない仕組みづくりに、グループ一丸となって取り組んでいきます。
対処すべき課題
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。 (1)会社の経営の基本方針当社グループは、社会とともに発展するよき企業市民であることを第一義とし「技術をもって社会の発展に貢献する」、「人材こそが最大かつ唯一の財産である」との経営理念のもと、2040年に向けて策定した「中長期の方向性」で掲げた「世界中の人々の安心・安全、豊かな暮らしを根幹から支える」の実現に向けて、日本の産業力・国力を再び世界トップレベルに高めるための一翼を担い、世界各国の経済・国家・エネルギーの安全保障に貢献することを目指していきます。 (2)会社の経営戦略及び経営指標<中長期の方向性>当社グループは、2023年度を初年度とする3か年の中期経営計画「グループ経営方針2023」に基づく取り組みを進め、構造改革に一定の目途をつけることができました。2026年度からは、2040年に向けて策定した「中長期の方向性」の実現に向けて、飛躍的な成長ステージへと移行してまいります。 事業ドメインは、当社グループが技術・事業の両面で強みを発揮できる分野として、エアロスペース、エネルギー、インフラの3つに注力します。特にエアロスペースとクリーンエネルギー分野は当社グループ全体の成長を実現するため、大胆なリソースシフト・資源配分を継続します。従来エネルギー分野と産業インフラ・社会インフラ分野は、ライフサイクルビジネスを中心とする安定的な収益基盤として拡大させていきます。これらの取り組みにより、安定的にキャッシュを創出し、長期視点での持続的な成長を実現していきます。 ・価値創造プロセスによる持続的な成長の実現当社グループが長期にわたって培ってきた事業モデルである、圧倒的に強い技術をつくり、参入障壁の高い市場を創出するというサイクルを回しながら、グローバル化・軍民両用(デュアルユース)化などにより事業を拡大・拡張していきます。 ・ライフサイクルビジネスの拡大による安定的な収益基盤の確保ライフサイクルを通じた価値提供や新たなバリューチェーンの創造に取り組むことで、「自動化・省人化」「CO₂削減」「その他、新たなお客さま価値」などの観点から提供する価値を創出し、成長を加速していきます。<中長期に向けたロードマップ> ※1:2025年度実績 ※2:2026~2028年度における営業利益率の目安レンジ ※3:投資CFとは一致しない(研究開発費を含み、資産売却は含まないため) 2026年度から2028年度までの3か年を先行投資及び財務基盤強化に注力する期間(フェーズ1)と位置付け、2029年度以降のフェーズ2では、営業利益・営業キャッシュ・フローの拡大を実現します。2032年度以降のフェーズ3では、先行投資を回収するとともにフリーキャッシュ・フローの大幅な拡大を実現し、これまでの延長線上にはない飛躍的な成長を実現していきます。 ① 成長事業:民間エンジン・防衛・原子力民間向け航空エンジン分野においては、世界の航空機需要の拡大が見込まれる中、当社グループは、民間向け航空エンジンにおける小型~大型・超大型クラスに至るベストセラーエンジンの開発・量産事業に参画しています。今後の需要増加が期待されるアフターマーケットでの事業拡大を目指し、整備事業では、自動化やDXの高度化等による生産性向上を図ることで、高品質なサービスを迅速に提供する体制の構築を進めています。民間向け航空エンジンの整備拠点の一つである鶴ヶ島工場においては、高品質なサービスを迅速に提供する取り組みを進めるとともに、修理棟を新たに建設し、付加価値の高い部品修理需要の取り込みを拡大していきます。また、成長が見込まれる防衛関連事業の拡大に向け、生産能力の強化や必要な技術開発を一層加速します。さらに、原子力分野においては、再稼働・再処理に係る国内のライフサイクルビジネス需要を確実に取り込むことで安定的にキャッシュを創出するとともに、グローバルでの新設需要の拡大を追い風に、海外新設案件の獲得によるトップライン成長の実現に向けて、生産能力の増強を進めていきます。 ② 育成事業:アンモニア・宇宙アンモニア分野においては、当社グループの技術力を活かし、燃料の製造から貯蔵・輸送及び利活用に至るまでのバリューチェーン構築を推進することで、カーボンフリー社会の実現に貢献していきます。当社相生工場内に新設したアンモニアガスタービン向け大型燃焼試験設備による燃焼器開発など、今後もアンモニアガスタービンの実用化に向けて取り組みを進めていきます。宇宙分野においては、安全保障や公共及び商業利用を目的とする衛星データ提供に向けた衛星コンステレーション構築の取り組みなど宇宙関連事業の拡大を図っていきます。 ③ 安定収益事業:資源・エネルギー・環境、社会基盤、産業システム・汎用機械の各分野市場成長が見込まれ、かつ当社の強みを発揮できる事業については、既存アセットや既設ストックを最大限活用したライフサイクルビジネスに注力することで、効率的かつ安定的なキャッシュ創出を図っていきます。一方で、収益性・効率性の低い事業については、引き続き事業ポートフォリオ改革を進めることにより、継続的な成長を実現していきます。フェーズ1では、安定配当を基本方針として、1株当たり配当を持続的に成長させます。営業キャッシュ・フローが伸長するフェーズ2以降は、株主還元の更なる拡大を目指します。 (3)会社の対処すべき課題・成長機会の獲得に向けた先行投資当社グループのさらなる成長に向け、成長を牽引する民間エンジン・防衛・原子力といった成長事業を主な対象として、キャパシティ拡充に向けた投資を実行していきます。また、将来の事業の柱として期待されるクリーンエネルギー分野の育成事業や、市場成長が見込まれ資本効率の高い事業への戦略的な経営資源のシフトを実行していきます。 ・財務基盤の強化財務健全性は改善傾向にありますが、成長・育成事業への投資原資を確保するために営業キャッシュ・フローの強化に取り組むと同時に、事業ポートフォリオ改革や資産売却等を通じて自己資本の増加を図り、財務基盤を強化していきます。 ・ステークホルダーからの期待に応え、信頼を得るための不断のリスクマネジメント及びガバナンスの強化本年6月2日公表のとおり、当社の連結子会社である株式会社IHIエアロスペース(以下、「IHIエアロスペース」という。)が、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、「JAXA」という。)から、JAXAとの機材装置の保全業務に関する契約等において、事実と異なる報告に基づく費用請求が確認されたことを理由として、5か月間の競争参加資格停止処分を受けました。これまでに、IHIエアロスペースが、JAXAから受注した前述の業務の一部において、作業未了にも関わらず完了したとする報告を行ない、当該報告に基づいて費用を請求していたことが判明しています。当社は、このような不適切行為があったことを厳粛に受け止めており、お客さまをはじめとするステークホルダーの皆さまに、多大なるご迷惑とご心配をおかけしておりますことを、深くお詫び申しあげます。 当社は、当事業年度においても再発防止策の実行やコンプライアンスの徹底に取り組んできましたが、取り組みを進める中でこうした新たな事象が確認される等、まだまだ不十分な点があることを痛切に認識しており、改善に向けての取り組みは依然として道半ばにあるものと考えています。当社グループが持続的な成長を遂げるためには、ステークホルダーの皆さまからの期待に応え、信頼を得ることが大前提となります。関係するすべてのステークホルダーの皆さまからの信頼を早期に回復するべく、同様の事案を二度と起こさぬよう、コンプライアンス意識の再徹底、組織風土の改革、及び不正を起こさせない仕組みづくりに、グループ一丸となって取り組んでいきます。
MD&A(経営者による分析)
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1)経営成績等の状況の概要①財政状態及び経営成績の状況a.経営成績の状況当連結会計年度の世界経済は、一部地域では景気持ち直しの動きに足踏みがみられたものの、総じて底堅く推移しました。欧州経済はエネルギーをはじめとするコスト高や中国における内需減速の影響から低迷し、中国経済も不動産市場の停滞を背景に低調な推移が継続しました。一方、米国経済は中東関与などの政策運営を巡る不確実性の影響を受けつつも、AI関連投資や堅調な雇用環境が下支えとなりました。わが国経済については、物価上昇の影響を受けながらも、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな回復基調が継続しています。 当社グループの主力事業である航空・宇宙・防衛事業において、航空機需要が中長期的に増加することが見込まれる中、民間向け航空エンジンでは、運航時間の増加などを背景に、アフターマーケット事業が拡大しています。防衛事業では、地政学的リスクの高まりが続く中、防衛力強化政策を背景に、継続して大型案件への受注対応を進めています。今後見込まれる民間向け航空エンジンや防衛事業、宇宙事業の需要拡大に応えていくため、リソース確保を含む生産能力の増強とともに、世界トップレベルの生産効率実現に向けた取り組みを進めています。出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムについては、引き続きプログラムパートナーとともに整備能力増強を図り、地上駐機数の低減に向けた対応を進めています。お客さまであるエアラインへの負担軽減及び信頼回復に取り組んでまいります。中核事業におけるライフサイクルビジネスは、中長期的に安定的な成長が見込まれるため、当社グループの収益への貢献や投資原資の創出を図るべく、引き続き拡大に向けて取り組みます。 事業ポートフォリオ改革の主要な取り組みとして、当連結会計年度においては、産業システム・汎用機械事業の一部であった運搬機械事業や株式会社IHIアグリテックの芝草・芝生管理機器事業及び株式会社IHI汎用ボイラのほか、社会基盤事業の一部であった株式会社IHI建材工業及び新潟トランシス株式会社、航空・宇宙・防衛事業の中で気象・防災・宇宙事業を担っていた明星電気株式会社について、譲渡を完了しました。また、当社持分法適用会社であるジャパン マリンユナイテッド株式会社(以下、「JMU」という。)の持分の一部を今治造船株式会社(以下、「今治造船」という。)へ譲渡しました。JMUにおける議決権比率は、今治造船:30%・JFE(※):35%・IHI:35%から、今治造船:60%、JFE:20%、IHI:20%となりました。(※:JFEホールディングス株式会社)上記に加え、社会基盤事業において、橋梁・水門事業を担う株式会社IHIインフラシステムと株式会社IHIインフラ建設が、2025年11月1日に統合しました。両社の強みと人財を融合し、社会課題の解決に向けた体制構築を進め、橋梁・水門業界における国内トップクラスの地位確立と、グローバルな成長のループ構築によって更なる成長を目指します。当社はこれまで、環境変化に強い事業体質への転換と成長を目指し、事業ポートフォリオ改革に取り組んできました。今後は、持続的な高成長を実現するステージへと移行し、長期的な視点から更なる飛躍を図っていきます。 このような事業環境下において、当社グループの当連結会計年度の受注高は前期比11.6%増の1兆9,547億円となりました。売上収益については、中核事業における事業譲渡に伴う減収や前期の大型工事進捗の反動はありましたが、防衛事業や民間向け航空エンジンの拡大に加え、車両過給機での需要拡大・販価改善などにより、1.0%増の1兆6,434億円となりました。損益面では、民間向け航空エンジンでの整備費用の増加や研究開発費等販管費の増加、資源・エネルギー・環境事業での一部海外事業の採算悪化等の影響はあったものの、原子力の採算性向上のほか、車両過給機の構造改革費用の前期反動や運搬機械事業及び投資不動産の譲渡益計上もあり、営業利益は220億円増益の1,655億円となりました。税引前利益は、為替円安の影響や持分法投資利益の増加により470億円増益の1,854億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は、482億円増益の1,609億円です。 当連結会計年度の報告セグメント別の業績は以下のとおりとなりました。(単位:億円)報告セグメント受注高前連結会計年度当連結会計年度前年度比前連結会計年度当連結会計年度前年度比増減率(%)(2024.4~2025.3)(2025.4~2026.3)増減率(%)売上収益営業損益売上収益営業損益売上収益営業損益資源・エネルギー・環境3,7036,24768.74,1141613,76759△8.4△63.1社会基盤(※1)1,5041,332△11.41,460△421,31937△9.6-産業システム・汎用機械4,8444,607△4.94,8481084,505307△7.1185.0航空・宇宙・防衛(※2)7,1997,031△2.35,5571,2276,5171,12417.3△8.4報告セグメント 計17,25119,21911.415,9801,45416,1081,5280.85.1その他7558117.47721688433589.2113.2調整額△495△483-△484△187△518△232--合計17,51119,54711.616,2681,43516,4341,6551.015.3(注)金額は単位未満を切捨て表示し、比率は四捨五入表示しています。(※1)前連結会計年度に「社会基盤」に含まれていた都市開発は「その他」に組み替えて表示しています。(※2)売上収益及び営業損益には、出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムの為替変動による影響が、前連結会計年度で+9億円、当連結会計年度で△50億円含まれています。 当連結会計年度の報告セグメント別の事業環境は以下のとおりです。 中東情勢の緊迫化を受けたエネルギー供給上の地政学的リスクやインフレの常態化、米国の政策変更等による天然ガス回帰など不確実な情勢が続く中で、エネルギーの安定供給を確保するためのエネルギー安全保障の重要性が高まっています。一方、中長期的な対応としてのカーボンニュートラル社会の実現へ向けた大きな潮流は変わっていません。今後、経済成長だけでなくデータセンターやAI活用の拡大による電力・エネルギー需要の増大が見込まれる中、安定供給とカーボンニュートラルを両立させる原子力拡大の動きも強まっています。このような事業環境のもと、受注高は、アジア拠点EPCやカーボンソリューションでの大型案件の受注をはじめ、エネルギー分野の需要拡大により、すべてのSBUで増加しました。売上収益は、原子力の拡大や、中型機種の販売増による原動機の増収はあったものの、アジア拠点EPCやカーボンソリューションの前期大型工事に進捗の反動などにより減収となりました。営業利益は、原子力や原動機での増収及び採算性向上による増益はありましたが、事業構造改革費用の計上や海外事業での採算悪化により減益となりました。 インフラの老朽化や気候変動による自然災害の激甚化への対応として国土強靭化計画が引き続き推進されています。道路ネットワーク機能強化や流域治水の推進に加え、橋梁をはじめとする既設インフラにおける予防保全型の維持管理や計画的な更新も進められています。一方、建設分野における人手不足は依然として深刻であり、建設業における時間外労働の上限規制の適用を背景として、省人化・自動化技術の導入やDXの推進を通じた生産性向上への取り組みが引き続き重要となっています。このような事業環境のもと、受注高は、橋梁・水門で増加しましたが、交通システムやコンクリート建材の譲渡の影響により、減少しました。売上収益は、シールドシステムでの大型工事進捗等による増収はありましたが、コンクリート建材や交通システムの譲渡の影響のほか、橋梁・水門での前期大型工事進捗の反動もあり減収となりました。営業利益は、交通システムの譲渡による減益はありましたが、コンクリート建材事業の譲渡に関連する構造改革費用の前期計上による反動や橋梁・水門の採算性向上により増益となりました。 中国によるレアアース輸出規制や中東情勢の緊迫化を背景に地政学リスクは一段と高まっており、エネルギー価格の乱高下と物流コストの高騰は常態化しています。国際サプライチェーンは安全保障リスクを踏まえた再編が進み、事業を取り巻く環境は引き続き不透明な状況が見込まれます。一方で、EVの普及ペースは鈍化しているものの産業界におけるカーボンニュートラルへのニーズは依然として高い状況にあり、先進国で進行する労働生産人口減少に伴う人手不足とともに、産業分野における中長期な構造的トレンドとなっています。このような事業環境のもと、受注高及び売上収益は、車両過給機の販売台数増加や販価改善の効果はあったものの、運搬機械等の譲渡影響や回転機械の海外需要減少などの影響により、いずれも減少及び減収となりました。営業利益は、熱・表面処理での事業構造改革費用の計上などはありましたが、前期の車両過給機での事業構造改革費用計上の反動影響に加え、当期における車両過給機の販価改善や運搬機械の譲渡益の計上などにより、増益となりました。 民間向け航空エンジン事業では世界の旅客需要が堅調に伸びる中、アフターマーケットでの収益が拡大を継続しています。また、防衛予算の増額、宇宙産業の市場拡大の流れを受け、防衛・宇宙事業においても、新たな価値創造を図り競争力向上を目指していきます。各事業とも中長期的な市場成長が見込まれる一方で、足元では、中東情勢の悪化や中国における輸出規制などを背景に、地政学的リスクはかつてない速度で変化し、サプライチェーンの混乱や物価高騰などの影響が生じています。当社グループは、環境の変化に打ち勝つ事業体質構築に向け、デジタル基盤の活用等による生産効率改革や業務構造改革をさらに推進し、成長を加速していきます。このような事業環境のもと、受注高は、前期の防衛の大型工事受注の反動などにより減少となりました。売上収益は、民間向け航空エンジンのスペアパーツの販売増や防衛事業の拡大により増収となりました。営業利益は、防衛の拡大及び採算改善のほか、民間向け航空エンジンでのスペアパーツの販売増加や前期の貸倒引当金計上の反動はありましたが、民間向け航空エンジンでの整備費用の増加や研究開発費等販管費の増加などの影響により、減益となりました。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。 b.資産及び負債、資本の状況当連結会計年度末における総資産は2兆4,285億円となり、前連結会計年度末と比較して1,881億円増加しました。主な増加項目は、営業債権及びその他の債権で692億円、主な減少項目は、売却目的保有資産で234億円です。負債は1兆7,470億円となり、前連結会計年度末と比較して152億円増加しました。主な増加項目は、営業債務及びその他の債務で1,142億円、主な減少項目は、返金負債で423億円です。有利子負債残高はリース負債を含めて4,898億円となり、前連結会計年度末と比較して248億円減少しました。資金流動性については十分な水準を確保しています。資本は6,815億円となり、前連結会計年度末と比較して1,728億円増加しました。これには、親会社の所有者に帰属する当期利益1,609億円が含まれています。以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末の21.5%から26.9%となりました。 ②キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末と比較して182億円増加し、1,550億円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは1,213億円の収入超過(前連結会計年度は1,776億円の収入超過)となりました。これは、法人所得税の支払は増加したものの、利益の増加に加え営業債務の増加があったためです。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは184億円の支出超過(前連結会計年度は588億円の支出超過)となりました。これは、固定資産の売却や有価証券の売却による収入があった一方で、設備投資を進めたことにより支出が増加したためです。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは978億円の支出超過(前連結会計年度は1,162億円の支出超過)となりました。これは、主に借入金の返済による支出があったためです。 (注)この項に記載の金額は単位未満を切捨て表示し、比率は四捨五入表示しています。 ③生産、受注及び販売の状況a.生産実績 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。セグメントの名称金額(百万円)前年度比(%)資源・エネルギー・環境372,407△9.2社会基盤129,911△13.1産業システム・汎用機械424,519△11.8航空・宇宙・防衛799,27643.9報告セグメント 計1,726,1138.1その他67,95832.7合計1,794,0718.9(注)1. 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引を相殺消去しています。2. 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。 b.受注状況当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりです。セグメントの名称受注高(百万円)前年度比(%)期末受注残高(百万円)前年度末比(%)資源・エネルギー・環境624,74768.7698,59059.6社会基盤133,270△11.4224,6603.5産業システム・汎用機械460,787△4.9168,967△18.0航空・宇宙・防衛703,179△2.3656,6128.4報告セグメント 計1,921,98311.41,748,82919.2その他81,1577.419,508△5.4調整額△48,398---合計1,954,74211.61,768,33718.9(注)1. 各セグメントの受注高は、セグメント間の取引を含んでおり、調整額でセグメント間取引の合計額を消去しています。2. 各セグメントの受注残高は、セグメント間の取引を相殺消去しています。3. 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。 c.販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。セグメントの名称金額(百万円)前年度比(%)資源・エネルギー・環境376,720△8.4社会基盤131,926△9.6産業システム・汎用機械450,526△7.1航空・宇宙・防衛651,71817.3報告セグメント 計1,610,8900.8その他84,3489.2調整額△51,836-合計1,643,4021.0(注)1. 販売実績は売上収益をもって示します。2. 金額はセグメント間の取引を含んでおり、調整額でセグメント間取引の合計額を消去しています。3. 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりです。相手先前連結会計年度当連結会計年度金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)一般財団法人日本航空機エンジン協会268,80616.5332,08820.2防衛省137,6278.5185,78411.34. 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。 (2)経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析①重要な会計方針及び見積り当社グループの連結財務諸表は、IFRS会計基準に準拠して作成されています。連結財務諸表の作成に当たり、見積りが必要となる事項については、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行なっています。詳細については、第5「経理の状況」1連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記「3.重要性のある会計方針」、及び注記「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しています。 ②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容当社グループ及びセグメントごとの経営成績の状況は(1)経営成績等の状況の概要の①財政状態及び経営成績の状況に記載のとおりです。 当社グループは、2023年度を初年度とする3か年の中期経営計画「グループ経営方針2023」に基づく取り組みを進めてきました。不確実性が高い経営環境が継続する中でも持続的な高成長を実現する事業へ変革していくことを目指し、成長をけん引する航空エンジン・ロケット分野の成長事業と、将来の事業の柱として期待されるクリーンエネルギー分野の育成事業、市場成長が見込めてかつ資本効率の高い事業への戦略的な経営資源のシフトを進めるため、事業ポートフォリオ改革を実行しました。「グループ経営方針2023」の最終年度となった2025年度は、売上収益・営業利益ともに過去最高を達成しました。営業利益率・ROICについては「グループ経営方針2023」に掲げた経営目標を達成し、1株当たり当期利益(EPS)も大きく成長しました。一方で、CCCは未達となり、キャッシュ・フロー創出力については未だ課題として残りました。2026年度からは、持続的な高成長を実現するステージに移行し、当社グループが取り組むべき社会課題と成長を実現するための事業戦略を改めて明確化し、2040年に向けて、長期視点で大きな飛躍の実現に挑戦していきます。 2023年度(2024年3月期)実績2024年度(2025年3月期)実績2025年度(2026年3月期)実績グループ経営方針20232025年度経営目標ROIC △4.9% 10.5% 11.0% 8%以上営業利益率 △5.3% (7.0%) 8.8% 10.1% 7.5%CCC 107日 (132日) 94日 (115日) 97日 (109日) 100日(注)各指標の算出方法は次のとおりです。 ・ROIC :(1-法定実効税率)×(営業利益+受取利息+受取配当金) ÷(親会社の所有者に帰属する持分+有利子負債の金額) ・CCC :運転資本÷売上収益×365日 ・運転資本:営業債権+契約資産+棚卸資産+前払金-契約負債-営業債務-返金負債 ・2023年度~2025年度の括弧内の数字は、出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査 プログラム及び海外連結子会社における訴訟の和解合意による損失の影響を除いたものです。 ③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報a.財務戦略の基本的な考え方当社グループは、事業基盤の強化やキャッシュ創出力向上の取り組みを通じて得られた自己資金を原資として、財務基盤の拡充と株主還元のバランスを取りながら、事業変革のための投資を進めていくことを財務戦略の基本方針としています。2025年度のキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローが1,213億円の収入となり、投資活動によるキャッシュ・フローは184億円の支出となりました。合計したフリー・キャッシュ・フローは1,029億円となり、前連結会計年度に対して158億円減少しました。引き続き当社グループは、収益性・キャッシュ創出力を重視した経営施策を着実に実行し、成長・育成事業への最適な資金配分により、持続的な高成長を実現する企業体質への変革を実現し、企業価値向上へつなげていきます。出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムに係る支出が発生することや、稼ぐ力がキャッシュ・フローに結び付いていないことから、営業キャッシュ・フローの強化は喫緊の課題です。運転資本の圧縮を進め、キャッシュ・フロー改善につなげていきます。 b.資金調達の方針当社グループの運転資金、投資向け資金等の必要資金の財源については、主として営業活動によるキャッシュ・フローで獲得した資金を財源とすることを原則としています。必要に応じて、短期的な資金については金利の上昇に留意しつつ銀行借入やコマーシャル・ペーパーなど、設備資金・投融資資金等の長期的な資金については、日銀の政策変更による本邦金利上昇を見据えながら既存借入金及び既発行債の償還時期等を総合的に勘案し、長期借入金や社債等によって調達しています。外部からの資本・資金調達については、関連するリスクを適切にコントロールした上で、資本コストを最小化する調達を実現することを資金調達の基本方針としています。また、当社グループ内部では、グループガバナンスの向上、資金効率の向上及び資本コストの低減を図り、企業価値向上に寄与するため、グループ一体となった資金調達・資金収支管理を実施しており、当社と国内子会社間、また海外の一部地域の関係会社間ではキャッシュ・マネジメント・システムによる資金融通を行ない、グループ内の流動性確保、資金効率向上に努めています。 c.資金需要、資金調達及び流動性の分析当社グループの主な資金需要は、事業活動に必要な運転資金、成長事業創出のための研究開発費及び設備投資等です。当連結会計年度末の有利子負債残高はリース負債を含めて4,898億円となり、前連結会計年度末に対して248億円減少しました。当連結会計年度末の現金及び現金同等物は1,550億円であり、前連結会計年度末と比較して182億円増加しています。手元資金の流動性については現金及び現金同等物に加え、主要銀行とのコミットメントライン契約や当座貸越枠、コマーシャル・ペーパーなど多様な調達手段を保有し、上記現金及び現金同等物と合わせて引き続き十分な流動性を確保しています。 (注)この項に記載の金額は単位未満を切捨て表示しています。

事業リスク

  • コンプライアンス違反リスク: 子会社での不適切な試運転記録修正や除雪車の仕様違い、独占禁止法違反認定など、過去にコンプライアンス違反が発生しています。これにより、罰金や行政処分、営業停止による機会損失、さらには社会的信用の低下がIHIグループ全体の業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
  • 環境・人権問題リスク: 製造工程における大気・水質・土壌汚染のリスクや、事業活動における人権侵害のリスクが存在します。これらの問題が発生した場合、損害賠償責任や社会的評価の低下、顧客との取引停止などにより、IHIグループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
  • 関係会社統制リスク: 多数の関係会社が国内外に存在するため、個社が不適切な対応や独自の経営判断を行った場合、IHIグループ全体の業績や社会的信用に悪影響を及ぼす可能性があります。グループ全体での適切なリスク管理体制の維持が重要となります。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「事業等のリスク」の全文を見る(年度切替)
FY2026|9,201 文字
3【事業等のリスク】(1)リスク管理に関する当社グループの基本方針当社グループでは、リスク管理を経営の最重要課題の一つと捉え、グループ全体で強化に取り組んでいます。リスク管理の基本目的は、事業の継続、役員並びに従業員とその家族の安全確保、経営資源の保全、社会的信用の確保です。そして、次のとおり行動指針を定め、これに沿ったリスク管理を行なっています。①IHIグループの事業継続を図ること②IHIグループの社会的評価を高めること③IHIグループの経営資源保全を図ること④ステークホルダーの利益を損なわないこと⑤被害が生じた場合には、速やかに回復を図ること⑥事態が発生した場合には、責任ある行動をとること⑦リスクに関する社会的要請を反映すること (2)当社グループのリスク管理体制当社グループは、リスク管理全般に関わる重要事項を検討する機関として、CEOを議長とするリスク管理会議を設置し、取り組み方針や年次計画の策定とその進捗状況の確認、課題の抽出及び是正措置などの重要事項を検討しています。リスク管理会議の内容は取締役会に報告され、取締役会は、リスク管理の目標を達成するための体制の整備、及びその運用に関して監視・監督・評価を行なっています。また当社グループでは、実効性の高いリスク管理を行なうため、第1線(事業領域・SBU・関係会社)・第2線(本社部門)・第3線(内部監査部)の役割と責任を明確化したリスク管理体制を構築しています。このような体制のもと、当社グループは事業年度ごとに「IHIグループリスク管理活動方針」を定めています。第1線(事業領域・SBU・関係会社)は、この方針に沿って主体的・自立的にリスク管理活動を進め、第2線(本社部門)は、専門性を生かした情報提供や教育を実施し、第1線を支援するとともに、リスク管理活動の実施状況のモニタリングを行なっています。また、第3線(内部監査部)は、当社グループのリスク管理体制の整備状況及び運用状況について監査を行なっています。 (3)2026年度のリスク管理活動2026年度の「IHIグループリスク管理活動方針」では、重点テーマとして次の事項について注力することとしています。また、不安定さが常態化する社会環境のもと、当社グループ全体として対処すべき新たなリスクを適時に捉え、リスク管理会議で対応方針を検討し、能動的かつ組織的なリスク管理を行なってまいります。 ・コンプライアンス・品質保証 ・貿易管理 ・セキュリティ (4)事業等のリスク事業の状況、設備の状況、経理の状況に記載した事項のうち、当社グループの業績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものです。当社グループは、以下のリスクを認識した上で、必要なリスク管理体制を整え、リスク顕在化の回避及びリスク顕在化時の影響の極小化に最大限努めています。 ① 社会的責任 a. コンプライアンス当社グループは、社会とお客さまと共に持続的な成長を遂げるためには、ステークホルダーからの期待に応え、信頼を得ることが重要と考えており、この考え方に基づいて、私たちが実践すべきことを「IHIグループ基本行動指針」にまとめ、役員・従業員の遵守を求めています。また、コンプライアンスの重要性を浸透させるため、毎年5月10日の「コンプライアンスの日」や社長年頭挨拶などで、社長をはじめとする経営幹部から繰り返し、コンプライアンスの徹底を求めるメッセージを発信しています。 体制面では、リスク管理会議の下部機関となる全社委員会組織としてコンプライアンス委員会を設置し、コンプライアンスに関わる重要な方針を審議・立案し、活動を推進しています。さらに、すべての役員・従業員などによる、法令、社内規定や社内外のルールに対する違反やそのおそれのある行為などを未然にあるいは早期に把握し、適切な是正を図るための内部通報制度として、「IHIグループ コンプライアンス・ホットライン」を運用しています。しかしながら、一部の役員・従業員による法令違反等が生じた場合、過料や課徴金、追徴課税等による損失や営業停止等の行政処分による機会逸失を被る、あるいはそれに伴う社会的評価の低下によって当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 当社グループにおいては、2024年度に、当社子会社において相次いで不適切事案等が発覚しました。これを踏まえ、当社グループは、再発防止策の実行やコンプライアンスの徹底に取り組んでいるところでしたが、直近においても、株式会社IHIエアロスペースが、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、「JAXA」という。)から受注した業務の一部において事実と異なる報告を行ない、不当な費用請求を行なったとして、JAXAより競争参加資格停止処分を受けました。 新たに確認された事象を受け、改めて、当社グループとして、当社社長をはじめとする経営幹部からメッセージを発信し、経営層、管理職、新入社員など各層に合わせたコンプライアンス教育プログラムの展開、人財ローテーションの活性化、職場ごとの対話活動などを行ない、不適切行為に対して声が上がらない組織風土から、従業員一人ひとりがコンプライアンスを自分事として意識し、自律的に問題を解決できる組織風土へと変革していくことを目指して取り組んでまいります。 b. 環境保全当社グループには、製造工程で、大気・水質・土壌汚染等の原因となりうる物質を使用している事業所・子会社等があります。これらの物質の管理には万全の注意を払い、万一外部に漏洩した場合においてもその拡大を最小限に抑えるための対策を講じています。しかしながら、想定外の事態が発生した場合には、社会的評価の低下を招くとともに損害賠償責任が生じ、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 c. 人権・ダイバーシティ当社グループの事業基盤を維持し、将来の成長につなげていくために、事業活動全般にわたり人権を尊重した上で、多様な個性や価値観を有する人財が活躍できる組織風土の醸成を図っています。また、人権諸課題の解決に向け、人権リスクを把握し、リスク低減策を講じてモニタリングする人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し、当社グループのみならず、調達先や取引先における対応状況を確認しています。併せて、多様な人財が活躍できる働き方や職場づくりに向けたダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)の推進活動を行なうとともに、社内におけるその取り組み状況をモニタリングしています。しかしながら、当社グループの事業活動において、人権の侵害や人権を軽視した事象が発生した場合、社会的信用の喪失、あるいはお客さまとの取引停止や損害賠償責任が発生する可能性があります。また、経営における意思決定の場に多様性が欠如した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 d. 関係会社の統制当社グループは、グループ経営を通じてお客さまに対し高い価値を提供することに取り組んでいます。そのためには、当社グループの各社が、各国・各地域の各種法令や社会的規範に従って事業を行なうだけでなく、適切なグループ経営を推進する必要があります。しかしながら、当社グループの各社が、他に示す各種のリスクに対する不適切な対応を行なうことにより、お客さまに対する損害又は当社グループへの評価の低下を生じさせ、結果として当社グループの業績や社会的信用に対して悪影響を及ぼす可能性があります。 e. 安全衛生当社グループは事業所及び建設現場における安全衛生管理に万全の対策を講じていますが、万一不測の事故・災害等が発生した場合には、生産活動に支障をきたし、その結果として当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、各種損害保険等に加入する等の対策を講じていますが、大規模な事故や災害が生じた場合、損害のすべてを保険求償できない可能性があります。 ② 外部環境変化への備え a. 競争環境と事業戦略当社グループは、本年5月8日に公表した「中長期の方向性」の中で、2040年に向けたIHIグループとしてのありたい姿を定義しました。当社グループが技術・事業の両面で強みを発揮できる分野としてエアロスペース、エネルギー、インフラの3つの事業ドメインを定め、世界各国の経済・国家・エネルギーの安全保障に貢献することを目指していきます。 b. 他社との連携・M&A当社グループは営業協力、技術協力、生産協力や事業合弁の形で多くの他社との共同事業活動を行なっています。また、成長市場への事業展開の加速、要素技術の補完、シナジーの創出などを目的としたM&Aなども有効に活用しています。しかし、経済環境の変化、法的規制、予期せぬ費用増加等の影響により、当初期待された効果を出せない可能性があります。また、当初期待した効果を享受できないと判断された場合は、他社との連携による共同事業の中断、解消を決断する可能性があり、その結果として当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 c. カントリーリスク当社グループは、調達・生産・輸出・販売・建設等の事業活動をグローバルに展開しています。各国・各地域の政治・経済・社会状況等の変化に起因して、国家間や各国内における紛争の拡大、テロや労働争議の発生、政情不安、デフォルト等により事業の継続が困難になるリスクや、為替取引の凍結や送金停止、及びこれらの影響を受けた取引先等に対する債権の回収不能、投資資産の接収等のリスクが顕在化した場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、これらのリスクに対し、個別のプロジェクト単位では貿易保険の付保を徹底するほか、グループ単位では、リスク情報の収集や情報共有の体制構築・見直し、事業継続計画(BCP)の作成・見直し等の体制強化に努めています。本項目については、足元における中東情勢の悪化、長期化するロシアによるウクライナへの軍事侵攻、米中の政治的対立や経済安全保障問題の拡大等、不確実性が一層高まっていると認識しています。 d. 経済安全保障当社グループを取り巻く事業環境は、中東における軍事衝突や米中の政治的対立、輸出規制等による国家の経済的威圧や、関税措置等に伴う貿易環境の変化、サイバー攻撃の高度化などにより大きく変化しています。当社グループは、社内の取引審査や取引先スクリーニングにより経済安全保障に関するリスクの軽減に努めていますが、日本を含む各国の政策や法規制に反する取引を行なった場合や、経済安全保障に関する課題への対応が不十分であった場合には、当社グループの評価や社会的信用が棄損されるおそれがあります。加えて、複雑化する国際情勢の影響により、当社グループが輸出規制等の規制の対象となった場合には、販売機会の逸失や事業の停止、サプライチェーンの断絶が発生し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、経済安全保障に関するリスク軽減の一環としてセキュリティ強化に取り組んでおり、従来のサイバーセキュリティ対策にとどまらず、人的情報漏洩対策や物理的セキュリティ対策の強化も進めています。 e. 自然災害・疾病・紛争・テロ当社グループは、新型コロナウイルスのような大規模な感染症の拡大、地震・洪水等の激甚災害、テロ等の犯罪行為等によって業務遂行が阻害されるような事態が生じた場合であっても、その影響を最小限に抑えるべく、規定や事業継続計画(BCP)を見直すとともに、南海トラフ地震等による広域災害も想定した訓練等を実施するほか、適切な保険を付保しています。しかし、想定規模を超える災害が発生した際には事業を適切に遂行できず、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 ③ 経営リソース a. 人財リスク当社グループの事業基盤を維持し、将来の成長につなげていくためには、事業活動に必要な人財の獲得、定着、育成、適正配置が必要になります。外部人財の獲得や変革人財等のキーパーソンとなりうる人財の確保・育成ができなかった場合、適正な配置を実行できなかった場合には、当社グループの将来の成長、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 b. 財務活動(a)為替動向外貨に対して円が上昇した場合は外貨建輸出工事における円換算後の入金額は目減りし、下落した場合は現地通貨建の海外調達において円換算支出額の増加を招く等、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼします。そのため、外貨建資産と負債のポジションの不均衡に対して、一定の方針に基づき為替予約やマリーの徹底によるリスクヘッジに努めていますが、想定以上の為替変動が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 (b)金利動向金利が上昇した場合、当社グループの支払利息が増加し金融収支が悪化します。また、財務活動において借入、又は社債発行の条件が悪化する可能性があり、資金調達に悪影響を与え、ひいては当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 (c)資金調達・格付当社グループの借入金にはシンジケート・ローンが含まれており、自己資本と利益に関する財務制限条項が付されています。業績の悪化等により同条項に抵触した場合、同ローンの借入れ条件の見直しや期限前弁済義務が生じる可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、格付機関が当社グループの格付を引き下げた場合、当社グループの財務活動において不利な条件で取引をせざるを得ない、あるいは一定の取引ができなくなる可能性があり、資金調達に悪影響を与え、ひいては当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 (d)保証債務等当社グループは、事業活動を営む上で必要かつ合理的と確認したものについて、債務の保証等を行なっていますが、経済環境悪化の長期化や事業の失敗等により債務者の財政状態が悪化した場合、保証の履行を債権者より求められる可能性があります。保証債務等に係る情報は、第5「経理の状況」1連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記「41.偶発債務」に記載しています。 (e)税務繰延税金資産の計算は、将来の課税所得に関する予測・仮定を含めて個別に資産計上・取崩を行なっていますが、将来の課税所得の予測・仮定が変更され、繰延税金資産の一部ないしは全部が回収できないと判断された場合、当社グループの繰延税金資産は減額され、その結果、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、国境をまたぐ当社グループ会社間の取引価格の設定においては、適用される移転価格税制の遵守に努めていますが、税務当局と見解の相違が生じた場合、追徴課税や二重課税が生じることにより、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 (f)与信管理当社グループは、世界中のお客さまに製品・サービスを提供しており、その多くが掛売りとなっています。当社はこれに対し、グループ全体で与信管理体制の強化と債権保全の徹底に努めているものの、重要なお客さまが破綻し、その債権が回収できない場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。2023年5月に航空会社が破産申請したことにより、当社が民間向け航空エンジンの国際共同事業会社を通じて参画しているエンジンプログラムにおいて、当社が間接的に保有する営業債権の一部が回収不能となる可能性が生じました。本件を受けて、当社グループでは、債権回収リスクを低減するため債権管理の高度化に向けた取り組みを進めています。 c. 情報セキュリティ当社グループは、技術情報及び事務管理情報並びにそれらを処理するための情報システムを、事業活動に不可欠な経営リソースの一つと認識し、情報セキュリティに関する各種規程の整備、技術的・組織的対策、従業員への教育・啓発等を通じて、情報セキュリティ対策の強化に継続的に取り組んでいます。しかしながら、サイバー攻撃の高度化・巧妙化、情報機器や文書の紛失・盗難、委託先やサプライチェーンを起点としたセキュリティ事故及びシステム障害等により、情報漏洩や業務停止等の事態が発生する可能性があります。これらの事態が発生した場合、当社グループの社会的信用の低下、損害賠償の発生、復旧対応に伴う費用の増加等を通じて、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 ④ 企業活動・エンジニアリング a. 研究開発当社グループの研究開発活動に係る情報は、第2「事業の状況」6研究開発活動に記載されています。これら研究開発活動は事業の性格上、多額の投資とともに長期の開発期間が必要とされるという特性があります。そのため、実用化機会の逸失や事業戦略・市場動向との不整合等により十分な成果に結びつかず、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 b. 知的財産管理当社グループは保有する知的財産の適切な保全に努めています。しかし、第三者による当社グループ製品・サービスの模倣や解析調査等技術的に当社グループに影響を与えるような動きを完全に防止することが困難な場合があります。また、当社グループが将来に向けて開発している製品・サービスが、意図せず他社等の知的所有権を侵害してしまう場合や、従業員の発明に対して適切な対応を取らなかったとみなされた場合に損害賠償等を求められ、その結果として当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 c. プロジェクト管理当社グループは、大型プロジェクト、大型投資のいずれも、初期計画がその後の成否に大きな影響を与えると考えています。特に新規性の高い事業やしばらく実施していなかった事業の場合、初期計画による影響は顕著です。それらのことを踏まえ、受注・投資前の審査プロセス体制を整備してプロジェクトリスク管理を行なっています。大型プロジェクトでは、個別にお客さまと受注契約を締結した後に製品を生産する場合が多く、受注契約締結前に多面的な社内審査を行なっています。しかし、契約締結後に当初想定できなかった紛争等の地政学リスクの顕在化によるエネルギー価格の高騰、資機材価格や輸送コストの急激な変動、サプライチェーンの途絶、為替相場の変動などの経済環境の変化や検討不足、予期しないトラブル、JV等のパートナー企業の経営悪化等により見積コストを上回る工事の発生、お客さまから要求された性能・納期の未達によるペナルティーの支払い、追加費用の発生等の可能性があり、その結果として当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、お客さま都合による受注契約の取り消しのケースでは、受注契約条件の中で違約金条項を設定する等そのリスク回避に最大限努力しているものの、必ずしも支出したコストの全額を回収できない可能性があり、その結果として当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。大型投資では、投資前に採算性やリスクの観点から投資実行計画の社内審査を行なっています。しかし、投資の意思決定時に想定できなかった経済環境や市場の変化、自社やパートナーに起因するトラブル等による目標投資効率の未達や損失計上の可能性があり、その結果として当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。大型プロジェクト、大型投資とも、受注・投資前の審査においては、社内・外の有識者と本社の審査部門との連携による多面的・複合的なリスクレビューの実施、受注後・投資開始後においては、各事業領域のリスク管理部門とも連携しながら、当初計画どおりに進んでいるか、新たな事象やリスクへの対応がなされているかなどのモニタリングの継続・強化に取り組むなど、引き続き徹底したプロジェクトリスクマネジメントを実施していきます。 d. 調達・物流当社グループはキーとなる主要部品を自社グループ内で製造するよう努めている一方で、複数のグループ外調達先より原材料・部品・サービスの供給を受けています。主要な原材料・部品の市況動向については日頃から情報収集や調達先との対話を通じて安定調達に努めるとともに、調達先の品質・納期等の管理を徹底し、特定の調達先への過度の集中・依存を避けるべく調達先の分散化等を進め、リスクの低減に取り組んでいます。しかしながら、資機材価格の急激な変動、需給バランスの変化や国際情勢の急変に加え、激甚災害や大規模な感染症の拡大に伴う当社グループのサプライチェーン途絶等の問題が生じた場合、コストアップ、納期遅延等の問題が生じる可能性があります。また、人権尊重への取り組みや、サステナブルな社会を実現するためにCSR調達を推進していく過程で、調達コストが上昇する可能性があり、その結果として当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 e. 設計・製造当社グループは、各地に生産拠点を有しています。それらの拠点が所在する地域において、激甚災害、新型コロナウイルスのような大規模な感染症の拡大、国際情勢の急激な変化に伴う生産遅延・停止・サプライチェーンの途絶、あるいは生産活動に影響を与える資機材の入手困難・電力制限などが生じ、かつその影響がBCPの想定範囲を超えた場合、それらの拠点における生産能力が損なわれ、その結果として当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 f. 品質保証当社グループは、お客さまの満足、安全、安心を実現する製品・サービスを提供するために、お客さま要求を含む要求事項の反映や計画段階で想定されるリスクへの対応も含んだ品質マネジメントシステムを構築し品質を保証する仕組み・体制を整備しています。しかし、品質保証に関わる想定外の事態が発生した場合には、お客さまの評価や社会的評価の低下を招くとともに損害賠償責任が生じ、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

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