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鹿島建設(1812)は何で稼いでいるか — 事業の柱と依存度

建設業 建設・資材

事業の概要

  • 主力は建設事業
    鹿島建設グループは、土木工事と建築工事を直接請け負う「土木事業」と「建築事業」が中核です。道路、ダム、ビル、商業施設など、社会の基盤となるインフラや建物の建設を通じて収益を得ています。長年の実績と技術力で大規模プロジェクトを手掛けるのが特徴です。
  • 不動産開発と関連事業
    自社で不動産を開発し、販売や賃貸を行う「開発事業」も重要な収益源です。また、建設資材の販売、専門工事の請負、建物管理、リース業など、建設事業を多角的に支える国内子会社群も収益に貢献しています。
  • グローバルな事業展開
    北米、欧州、アジア、オーストラリアなど世界各地で建設事業や不動産開発事業を展開しています。特に海外での流通倉庫開発は成長領域として注力しており、国際的なプロジェクトを通じて収益の拡大を図っています。
出典: FY2026 有価証券報告書(AI要約)
セグメント構成
  • 建設事業(Construction)
    売上高約1兆529億円、営業利益約512億円で、グループの最大の稼ぎ頭です。主に国内での建築工事の受注・施工を担っており、ビル、商業施設、工場などの建設を通じて安定した収益を上げています。
  • 土木事業(Engineering)
    売上高約4,041億円、営業利益約357億円を計上しています。主に国内での土木工事の受注・施工を担当し、道路、橋梁、ダム、トンネルなどの社会インフラ整備を通じて、グループの基盤を支えています。
  • 海外関係会社事業(Overseas Associate Companies)
    売上高約1兆1,143億円、営業利益約200億円と、建設事業に次ぐ規模です。北米、欧州、アジア、オーストラリアなど海外地域での建設事業や不動産開発事業を展開しており、グローバルな成長を牽引しています。
2025-03 セグメント別業績
セグメント区分売上(億)営業利益(億)営業利益率
Engineering 事業 4,041 357 8.8%
Construction 事業 10,529 512 4.9%
Development 事業 980 278 28.4%
DomesticAssociateCompanies 事業 2,425 164 6.8%
OverseasAssociateCompanies 事業 11,144 201 1.8%
有価証券報告書「事業の内容」の全文を見る(年度切替)
FY2026|887 文字
3 【事業の内容】当社グループは、当社、子会社219社、関連会社106社で構成され、当社は土木事業、建築事業、開発事業等の事業活動を展開するとともに、国内関係会社が主に日本国内において多様な事業を、海外関係会社が海外地域において建設事業、開発事業等を展開している。 当社グループに属する各社の事業に係る位置づけ及びセグメント情報との関連は、次のとおりである。なお、次の5つは、セグメント情報と同一の区分である。(1) 土木事業当社が建設事業のうち、土木工事の受注、施工等を行っている。(2) 建築事業当社が建設事業のうち、建築工事の受注、施工等を行っている。(3) 開発事業等当社が不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業を行っている。(4) 国内関係会社当社の国内関係会社が主に日本国内において行っている事業であり、大興物産㈱が建設資機材の販売を、カジマメカトロエンジニアリング㈱が建設用機械の納入を行っているほか、鹿島道路㈱、ケミカルグラウト㈱、㈱クリマテック、㈱イリア等が専門工事の請負を行っており、その一部を当社が発注している。 また、鹿島リース㈱が総合リース業を、鹿島建物総合管理㈱が建物総合管理業を行っており、その一部を当社が発注している。 イートンリアルエステート㈱が不動産の売買及び賃貸等を、鹿島東京開発㈱がビル賃貸・ホテル経営を、鹿島八重洲開発㈱がビル賃貸事業を、㈱森林公園ゴルフ倶楽部がゴルフ場の経営を行っているほか、熱海インフラマネジメント合同会社が有料道路の運営・管理を行っている。(5) 海外関係会社当社の海外関係会社が海外地域において行っている事業であり、主にカジマ ユー エス エー インコーポレーテッドが米国を中心とする北米で、カジマ ヨーロッパ リミテッドが欧州で、カジマ アジア パシフィック ホールディングス ピー ティー イー リミテッドがアジアで、カジマ オーストラリア ピー ティー ワイ リミテッドが大洋州でそれぞれ建設事業、開発事業等を行っている。 事業の系統図は次のとおりである。

事業の優位性(モート)

事業の質(有価証券報告書から抽出)
数字に出ない事業の性質を、同じ物差しで全銘柄そろえています。FY2025時点の記載が出典です。
価格決定力値上げを通せるか。強いほどインフレ耐性が高い 中程度
建設コスト変動を請負契約に反映させる対策を実施しているため。
参入障壁新規参入を阻む要因の種類 技術
70年ぶりの新工法「型枠一本締め工法」や新型溶接ロボットなど、高度な技術開発力。
景気敏感度業績が景気循環にどれだけ振られるか シクリカル
設備投資の性質稼いだ現金がどれだけ設備維持に消えるか 混合
規制依存規制は障壁にも足枷にもなる 高い
会社が挙げる主要リスク:事業環境の変化に関わるリスク / 建設コストの変動リスク / 保有資産の価格・収益性の変動リスク
同じ条件で他の銘柄を探す → 定性スクリーニング(価格決定力・参入障壁・景気敏感度などで絞り込めます)
モート総合 10 / 25 5類型それぞれの強度と、そう判定した根拠
無形資産★☆☆☆☆
根拠:弱いブランド・特許・許認可

鹿島建設は、長年の実績とブランド力を持つものの、建設業という性質上、特許や商標権などの強力な無形資産による競争優位性は限定的。技術力やノウハウは存在するが、模倣されにくいレベルではない。

スイッチングコスト★★☆☆☆
根拠:中程度乗り換えの手間・コスト

建設プロジェクトにおいては、一度契約すると顧客が他の建設会社へ切り替えるには、多大な時間、コスト、リスクが伴う。特に大規模プロジェクトでは、設計変更や進捗遅延のリスクから、切り替えは困難。しかし、新規プロジェクトの入札段階では競合との比較は発生する。

ネットワーク効果★☆☆☆☆
根拠:弱い利用者増が価値を生む

建設業において、強力なネットワーク(例えば、特定のサプライヤーや下請け業者との排他的な関係)は競争優位性につながる可能性がある。鹿島建設は長年の事業活動で築き上げた関係網を持つが、それが他社に真似できないほどの排他的な優位性とは言えない。

コスト優位★★☆☆☆
根拠:中程度同じ物を安く作れる

大規模な建設プロジェクトでは、規模の経済がコスト削減に寄与する可能性がある。また、長年の経験に基づく効率的な調達や施工ノウハウは、コスト面での優位性につながりうる。しかし、資材価格の変動や人件費の高騰リスクも存在する。

規模の経済★★★★☆
根拠:強い規模が参入障壁になる

鹿島建設は日本を代表する大手ゼネコンであり、大規模プロジェクトの遂行能力、豊富な設備投資、広範な事業展開において圧倒的な規模を持つ。これにより、他社が参入しにくい案件の受注や、価格交渉力において優位性を発揮する。

  • 総合的な技術力と実績
    鹿島建設は、土木・建築の両分野で高度な技術力と豊富な実績を持っています。特に、地下空間の構築技術や自動化施工システム「A4CSEL」など、難易度の高い大規模プロジェクトを成功させる技術力は、他社との差別化要因となっています。
  • 多角的な事業ポートフォリオ
    建設事業だけでなく、不動産開発、建設関連資材販売、専門工事、建物管理、リースなど、幅広い事業を展開しています。これにより、建設需要の変動リスクを分散し、安定した収益基盤を構築しています。
  • グローバルな事業展開力
    北米、欧州、アジア、オーストラリアなど世界各地で事業を展開しており、特に海外での流通倉庫開発は強固な収益基盤に成長しています。これにより、特定の地域経済に依存せず、グローバルな成長機会を捉えることができます。
出典: FY2026 有価証券報告書(AI要約)

経営戦略

  • 中核事業の強化と未来開拓
    鹿島建設は「鹿島グループ中期経営計画(2024~2026)」に基づき、国内建設事業をさらに深掘りし、不動産開発事業と海外事業を成長領域として伸ばすことを目指しています。技術立社として新たな価値を創造し、社会や顧客と共に未来を開拓する方針です。
  • 技術開発とイノベーション推進
    技術力を基盤とし、自動化施工システム「A4CSEL」の深化や生成AIなどの先進技術活用により、安全性と生産性の向上を図っています。また、防災・減災やウェルビーイング、スマートビルなどの研究領域で、社会課題解決と新たな付加価値創出を目指しています。
  • グローバル展開と資本効率向上
    米国で培った流通倉庫開発事業のグローバル展開を加速させ、欧州、東南アジア、豪州などでの新規案件に着手しています。また、共同事業化による外部資金活用を積極的に行い、事業リスク低減と資本効率向上を図ることで、成長領域を伸ばしています。
出典: FY2026 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「経営方針・対処すべき課題・MD&A」の全文を見る(年度切替)
経営方針・経営戦略
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】当社グループにおける経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりである。なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り当連結会計年度末現在において判断したものであり、また、様々な要素により異なる結果となる可能性がある。 (1) 会社の経営の基本方針当社グループは、経営理念として「全社一体となって、科学的合理主義と人道主義に基づく創造的な進歩と発展を図り、社業の発展を通じて社会に貢献する。」ことを掲げ、さらに、企業経営の根幹を成す安全衛生・環境・品質に関する基本方針として「関係法令をはじめとする社会的な要求事項に対応できる適正で効果的なマネジメントシステムを確立・改善することにより、生産活動を効率的に推進するとともに、顧客や社会からの信頼に応える。」ことを定めている。こうした方針に基づく取組みを通して、より高い収益力と企業価値の向上を目指すとともに、社業の永続的発展により株主、顧客をはじめ広く関係者の負託に応え、将来に亘りより豊かな社会の実現に貢献していく。 (2) ビジョン当社グループを取り巻く経営環境は、近年、変化のスピードが加速している。こうした経営環境において、当社グループが持続的に成長するためには、多様な人材を呼び込み、外部リソースと連携しながら価値を共創することが重要と考えている。この認識のもと、当社グループが目指す方向性を広くグループ内外と共有するため、ビジョンを定めている。ビジョンは、目指す方向性を文章で表現した「ステートメント」とそれを実現するうえで「大切にしたい価値観」から構成されており、過去に対する敬意と未来への挑戦という2つの意を込めている。また、大切にしたい価値観は、当社グループを木に見立て、いかに大きく成長させるかという視点に基づいている。 (3) 鹿島グループのマテリアリティ当社グループは、SDGsをはじめとした社会課題と事業活動の関連を確認・整理したうえで、社会・環境への影響度が大きく、かつ当社グループの企業価値向上や事業継続における重要度が高い課題を抽出し、7つのマテリアリティを特定している。マテリアリティに取り組むことを通じて、社会課題解決と企業価値向上の両立を目指していく。 (4) 経営環境当連結会計年度における世界経済は、地政学リスクや通商政策を巡る不確実性の高まりなど、先行きの不透明感が強まる局面が続いたものの、AI・デジタル関連投資の拡大が景気の下支えとなり、全体として底堅さを維持した。我が国経済は、物価が継続的に上昇する中でも、堅調な企業業績を背景に賃上げが進み、緩やかながら持ち直しの動きが見られた。国内建設市場は、米国関税政策の影響により輸出関連企業の設備投資などに停滞が見られたが、成長に向けた民間企業の投資意欲は依然として高く、公共投資も安定的に推移したことから、高水準の需要が継続した。一方で、需給のひっ迫も常態化しており、建設コスト上昇への対応や適切な施工体制構築が課題となっている。今後の世界経済は、AIを中心としたデジタル分野の需要や関連するインフラ整備に対する投資が中長期的に拡大していく見込みである。一方で、国際情勢の緊迫化や不安定な通商環境によるインフレ再燃が懸念されるなど、先行き不透明な状況が継続している。また、多様な人材の確保、育成を軸とする人的資本投資の重要性が高まるとともに、脱炭素や循環型経済への移行など、経済・社会構造の転換も加速する見通しである。このように事業環境が絶えず変化する局面において持続的な成長を実現するためには、社会、顧客が直面する課題を的確に把握し、確かな技術力に基づく質の高いサービス、付加価値を提供し続ける必要がある。建設市場は、民間設備投資の拡大や老朽化したインフラ、都市機能の更新などにより、当面は国内外ともに堅調な需要が見込まれるものの、構造的な労働力不足や建設コスト上昇など、建設産業の根幹に関わる課題が継続している。技能労働者の処遇改善による担い手確保の推進や自動化・省人化による生産性向上に加え、環境負荷低減を実現する技術開発など、社会課題解決と中長期的な成長を両立させる取り組みが求められている。 (5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題<「鹿島グループ中期経営計画(2024~2026)-中核をさらに強化し、未来を開拓する-」の推進>このような経営環境の中、2027年3月期を最終年度とする中期経営計画を着実に推進し、中核を成す国内建設事業、成長領域と定める不動産開発事業、海外事業を更に強化しつつ、バリューチェーンの拡充やR&D、イノベーション推進により、技術立社ならではの新たな価値を創出し、社会や顧客とともに未来を開拓することを目指す。① ありたい姿中期経営計画の策定にあたり、経営理念や受け継いできた企業風土、価値観などを「ありたい姿」として具体化している。当社グループの基盤である人と技術をつなぎ合わせ、顧客、さらにその先にある社会に貢献することを目指していく。 ② 成長戦略の取り組み状況「ありたい姿」を念頭に置きつつ経営環境などを踏まえ、成長戦略は、1)国内建設事業を深める、2)成長領域を伸ばす、3)技術立社として新たな価値を創る、4)サステナビリティを4つの柱としている。 1)国内建設事業を深める生産施設やインフラ更新などの重点分野において、着実に受注、施工の実績を積み重ね、技術力の強化や知見・ノウハウの蓄積が進展している。また、安全性、生産性の向上に資する自動化施工システムの更なる深化や、将来のビジネス機会拡充に寄与する技術開発も成果を上げている。生成AIなどの先進技術の積極的な活用は、働き方の質を高めるとともに、安全を追求する労働環境の改善にも貢献している。 ■当連結会計年度における成果、取り組み事例・重点分野と位置づける「生産施設」において、半導体や自動車関連の大型工事を含め、4,000億円以上の工事を受注・見積書・工程表の自動作成、現場の安全管理支援、橋梁の健全度診断などにおいて、AI活用を推進・自動化施工システム「A4CSEL(クワッドアクセル)」を、「新名神高速道路城陽工事」(京都府)などの複数工事に展開。工事範囲が複雑な形状であり、かつ盛土材料が変化する造成工事にも適用・東京大学「ハイパーカミオカンデ」(岐阜県)において、地下600mに直径69m、高さ94mの世界最大級となる地下空洞を構築。今後の拡大が期待される地下空間活用ニーズに対応 2)成長領域を伸ばす国内、海外において、建設技術と不動産ノウハウをかけ合わせた付加価値の高い不動産開発事業を推進している。海外では各地域の事業環境を慎重に見極めつつ、強固な収益基盤に成長した流通倉庫開発事業のグローバル展開を加速させており、国内では事業資産のレパートリーを拡充するとともに、賃貸物件の収益性を高める取り組みに注力している。また、建設コスト上昇や金融環境の変化を見据え、外部資金の積極的活用を企図したプロジェクトの共同事業化により、リスク低減と資本効率向上を図っている。 ■当連結会計年度における成果、取り組み事例・米国で蓄積した実績、知見を活かし、流通倉庫開発事業のグローバル展開を促進。欧州、東南アジアに加え、豪州においても新規案件に着手。倉庫開発床面積(2015年以降)は累計745万㎡まで拡大・国内、海外の複数の開発事業プロジェクトにおいて、共同事業者の招聘による外部資金活用により、事業リスク低減と資本効率向上を実現・ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのオフィシャルホテル「Osaka Sakurajima Resort」(大阪府)や「新秩父宮ラグビー場」(東京都)等の大型開発プロジェクトが着工。レパートリーの拡充が進展・国内賃貸物件のテナントリーシングを強化。全57棟(貸床面積約12万坪)の入居率95%を確保 3)技術立社として新たな価値を創る建設事業の強化と社会課題解決への貢献を柱とする当社グループの技術開発については、外部パートナーとの協業、連携も深めつつ、技術の社会実装、普及展開に向けた取り組みが進展している。また、「防災・減災」、「ウェルビーイング、スマートビル」などの複数の研究領域において、社会、顧客のニーズに応えた新たな付加価値を創出している。 ■当連結会計年度における成果、取り組み事例・高速道路床版取替工事の工期短縮、ソーシャルロス低減を実現する「スマート床版更新(SDR)システム」の普及展開及び技術深化を目指し、「SDRシステム研究会」を設立・光ファイバセンシング技術を活用した地中空洞化検知、路車協調型自動運転の実現に向け、外部パートナーと連携した研究開発や実証実験を開始・「東京証券取引所ビル本館」(東京都)屋上に制震装置「D3SKY-L(ディースカイエル)」を設置。最新鋭の超高層ビルと同等レベルまで耐震性を向上させるバリューアップを実現・アジア地域統括拠点「The GEAR」において、自然換気活用による空調依存の大幅低減を実現。ASHRAE(米国暖房冷凍空調学会)Technology AwardsのNew Commercial Building部門最優秀賞を獲得 4)サステナビリティ「鹿島環境ビジョン2050plus」に基づき、相互に関連する脱炭素、資源循環、自然再興の3分野における取り組みに注力している。環境保全と経済活動が両立する持続可能な社会の実現に向け、当社グループの人材、資産を幅広く活用しつつ、建設技術をベースにした研究開発を着実に進めている。また、社会や顧客から信頼され、成長し続けるため、コンプライアンスや人権尊重を前提とした経営基盤を整備している。多様な人材の活躍を促す施策に加え、技能労働者の処遇改善や協力会社に対する支援を通じて、強固なサプライチェーン構築も目指している。 ■当連結会計年度における成果、取り組み事例・「CO2-SUICOM(シーオーツースイコム)」を含む2種類の環境配慮型コンクリートを国土交通省の直轄工事に大量適用。当初計画のコンクリートを使用した場合と比較し、CO2排出量を約45t削減・米国北西部の太平洋沿岸地域における森林の取得と持続可能な管理を目的とする森林ファンドに出資。脱炭素及び自然再興の実現に向けた取り組みを加速・純木質耐火集成材を採用した木造建築となる「東北支店ビル」(宮城県)建替に着手。当社グループ社有林(約5,500ha)の産出材活用を計画し、森林の適正管理・再生による脱炭素社会の実現に貢献・社員の熱意や会社への信頼度などを調査するエンゲージメントサーベイのスコアが2年連続で向上・電子マネーなどと交換可能な建設技能者向けポイントサービスの導入、工事代金の支払早期化などにより、技能労働者の処遇改善、協力会社の財務基盤強化を支援 <財務戦略の更新>① 現状分析・評価当社グループは、中期経営計画(2024~2026)の策定後も、事業環境や業績動向を踏まえ、財務戦略を適切に更新している。取締役会においては、資本コストや事業ごとの資本収益性を確認、評価するとともに、株式市場における各種指標、IR活動の実績を把握した上で、成長投資や株主還元などの財務戦略、キャッシュアロケーションを検証している。当連結会計年度は、前連結会計年度に続き目標を上回る利益を確保し、過去最高益を達成した。2027年3月期についても、親会社株主に帰属する当期純利益は、中期経営計画の経営目標を大きく上回る1,700億円を目指している。当社グループが認識している8%程度の株主資本コストに対し、当連結会計年度のROEは13.3%となった。2027年3月期以降も継続的に10%を超え、株主資本コストを十分に上回る資本収益性を確保できると見通している。また、当連結会計年度末における当社の株価は、前連結会計年度末に比べ大幅に上昇しており、当社グループの利益成長と業績に連動した株主還元が株式市場において評価されたと認識している。② 経営目標の達成状況中期経営計画期間3か年累計の親会社株主に帰属する当期純利益は、計画策定時の3,500億円程度から1,200億円以上増加し、4,700億円以上となる見通しである。 中期経営計画 経営目標経営目標2025年3月期実績2026年3月期実績2027年3月期予想 2027年3月期2031年3月期親会社株主に帰属する当期純利益1,258億円1,773億円1,700億円1,300億円以上1,500億円以上ROE10.2%13.3%-10%を上回る水準 ③ 今後の取組みこうした状況を踏まえ、企業価値・市場評価の更なる向上を図るため、財務戦略を更新した。成長に向けた施策と投資を着実に進めつつ、計画を上回る利益や政策保有株式の売却を主要な資金源として、株主還元の充実に加え、協力会社への支払早期化等によるサプライチェーンの強化を図っていく。また、経営方針や業績見込みについてのタイムリーな情報開示と多様な投資家・市場との対話の強化により、株式市場から信頼され、評価される企業グループを目指していく。④ 財務戦略更新のポイント成長投資・中長期的な成長を見据え、人的資本への投資に加え、「生産性向上」「新たな価値創出」に向けたR&D投資・デジタル投資を集中的に推進。・国内外の不動産開発事業における資本効率向上を企図した共同事業化や市況を見極めた投資・回収時期の変更を主因に、ネット投資額は計画比200億円減少。・株主資本コストの変動を意識しつつ、ROEは10%を上回る水準を継続。資本構成・政策保有株式は継続的に縮減を推進。株式市場の動向を踏まえ、『2027年3月期末までに連結純資産の20%未満』とした目標の達成に向けて、3年間の売却額は計画比400億円増額の900億円程度を目指す。・D/Eレシオの目安は0.7倍程度を維持。株主還元・配当性向40%を目安として、業績向上に連動した配当金の引き上げを実施。・自己株式取得は、政策保有株式の売却実績をベースに機動的に実施。2027年3月期は利益成長の加速を踏まえ、政策保有株式売却額を上回る400億円の取得を計画。あわせて、保有する自己株式を発行済株式総数の5%程度となるよう消却予定。・3年間の株主還元総額を計画比800億円程度拡充。サプライチェーン強化・持続的な成長を支えるサプライチェーンの強化に1,000億円程度を充当。・工事代金の支払いに関して現金比率を高めるなど、支払早期化を実施し、協力会社の財務基盤改善を支援することに加え、建設技能者へのポイントサービス導入や手当・報奨金の拡充を推進。 ⑤ 投資計画鹿島グループの中長期的な成長に資する投資を厳選して推進しており、3年間の投資総額は計画策定時から400億円減少の1兆1,600億円、ネット投資額は200億円減少の4,900億円を見込んでいる。中長期的な成長を見据え、「生産性向上」「新たな価値創出」に向けたR&D投資・デジタル投資を集中的に推進するとともに、人的資本投資の一環として、上質なオフィスや福利厚生施設の整備を進めており、計画策定時と比較して、デジタル投資及び業務用不動産への設備投資がそれぞれ100億円増加する見通しである。国内・海外の開発事業に関しては、資本効率向上を企図した共同事業化や市況を見極めた投資・回収時期の変更を主因に、投資から回収を差し引いたネット投資額が合計で400億円減少する見込みである。 当連結会計年度までの2年間におけるネット投資額は累計2,660億円となった。 中期経営計画(2024~2026) 2025年3月期2026年3月期累計投資実績策定時今回更新増減 R&D投資600億円600億円- 430億円デジタル投資500億円600億円+100億円 370億円戦略的投資枠800億円800億円- 110億円業務用不動産などへの設備投資600億円700億円+100億円 330億円国内開発事業 (売却による回収) (ネット投資額)3,200億円(1,700億円)(1,500億円)2,800億円(1,300億円) (1,500億円)△400億円(△400億円)(-) 1,870億円(1,020億円) (850億円)海外開発事業 (売却による回収) (ネット投資額)6,300億円(5,200億円)(1,100億円)6,100億円(5,400億円) (700億円)△200億円(+200億円)(△400億円) 3,230億円(2,660億円) (570億円)投資総額(ネット投資額)1兆2,000億円(5,100億円)1兆1,600億円(4,900億円)△400億円(△200億円) 6,340億円(2,660億円) (6) 目標とする経営指標2027年3月期の国内建設事業は、資材の供給不足や建設コスト上昇に備え、リスク管理体制を一層強化するとともに、引き続き生産性向上に取り組んでいく。当社建設事業の売上総利益率は、土木事業20.4%、建築事業12.0%を予想しており、堅調な業績を維持する見通しである。国内開発事業は、事業資産の積上げが着実に進展しており、複数の物件売却による業績貢献を見込んでいる。海外事業については、不安定な国際情勢や金融環境を慎重に見極めつつ、不動産開発物件の売却を進めることにより、利益の増加を目指している。なお、為替レートは1米ドル156.56円を想定している。このような国内外の状況を勘案し、2027年3月期の業績は、当連結会計年度比減収減益を見込むものの、親会社株主に帰属する当期純利益は、「鹿島グループ中期経営計画(2024~2026)」の経営目標「1,300億円以上」を大きく上回る1,700億円を予想し、2026年5月14日に下記のとおり公表している。ROEについては、引き続き10%を上回る水準を維持することを目指す。 売上高営業利益経常利益親会社株主に帰属する当期純利益2027年3月期連結業績予想(百万円)2,900,000200,000206,000170,000
対処すべき課題
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】当社グループにおける経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりである。なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り当連結会計年度末現在において判断したものであり、また、様々な要素により異なる結果となる可能性がある。 (1) 会社の経営の基本方針当社グループは、経営理念として「全社一体となって、科学的合理主義と人道主義に基づく創造的な進歩と発展を図り、社業の発展を通じて社会に貢献する。」ことを掲げ、さらに、企業経営の根幹を成す安全衛生・環境・品質に関する基本方針として「関係法令をはじめとする社会的な要求事項に対応できる適正で効果的なマネジメントシステムを確立・改善することにより、生産活動を効率的に推進するとともに、顧客や社会からの信頼に応える。」ことを定めている。こうした方針に基づく取組みを通して、より高い収益力と企業価値の向上を目指すとともに、社業の永続的発展により株主、顧客をはじめ広く関係者の負託に応え、将来に亘りより豊かな社会の実現に貢献していく。 (2) ビジョン当社グループを取り巻く経営環境は、近年、変化のスピードが加速している。こうした経営環境において、当社グループが持続的に成長するためには、多様な人材を呼び込み、外部リソースと連携しながら価値を共創することが重要と考えている。この認識のもと、当社グループが目指す方向性を広くグループ内外と共有するため、ビジョンを定めている。ビジョンは、目指す方向性を文章で表現した「ステートメント」とそれを実現するうえで「大切にしたい価値観」から構成されており、過去に対する敬意と未来への挑戦という2つの意を込めている。また、大切にしたい価値観は、当社グループを木に見立て、いかに大きく成長させるかという視点に基づいている。 (3) 鹿島グループのマテリアリティ当社グループは、SDGsをはじめとした社会課題と事業活動の関連を確認・整理したうえで、社会・環境への影響度が大きく、かつ当社グループの企業価値向上や事業継続における重要度が高い課題を抽出し、7つのマテリアリティを特定している。マテリアリティに取り組むことを通じて、社会課題解決と企業価値向上の両立を目指していく。 (4) 経営環境当連結会計年度における世界経済は、地政学リスクや通商政策を巡る不確実性の高まりなど、先行きの不透明感が強まる局面が続いたものの、AI・デジタル関連投資の拡大が景気の下支えとなり、全体として底堅さを維持した。我が国経済は、物価が継続的に上昇する中でも、堅調な企業業績を背景に賃上げが進み、緩やかながら持ち直しの動きが見られた。国内建設市場は、米国関税政策の影響により輸出関連企業の設備投資などに停滞が見られたが、成長に向けた民間企業の投資意欲は依然として高く、公共投資も安定的に推移したことから、高水準の需要が継続した。一方で、需給のひっ迫も常態化しており、建設コスト上昇への対応や適切な施工体制構築が課題となっている。今後の世界経済は、AIを中心としたデジタル分野の需要や関連するインフラ整備に対する投資が中長期的に拡大していく見込みである。一方で、国際情勢の緊迫化や不安定な通商環境によるインフレ再燃が懸念されるなど、先行き不透明な状況が継続している。また、多様な人材の確保、育成を軸とする人的資本投資の重要性が高まるとともに、脱炭素や循環型経済への移行など、経済・社会構造の転換も加速する見通しである。このように事業環境が絶えず変化する局面において持続的な成長を実現するためには、社会、顧客が直面する課題を的確に把握し、確かな技術力に基づく質の高いサービス、付加価値を提供し続ける必要がある。建設市場は、民間設備投資の拡大や老朽化したインフラ、都市機能の更新などにより、当面は国内外ともに堅調な需要が見込まれるものの、構造的な労働力不足や建設コスト上昇など、建設産業の根幹に関わる課題が継続している。技能労働者の処遇改善による担い手確保の推進や自動化・省人化による生産性向上に加え、環境負荷低減を実現する技術開発など、社会課題解決と中長期的な成長を両立させる取り組みが求められている。 (5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題<「鹿島グループ中期経営計画(2024~2026)-中核をさらに強化し、未来を開拓する-」の推進>このような経営環境の中、2027年3月期を最終年度とする中期経営計画を着実に推進し、中核を成す国内建設事業、成長領域と定める不動産開発事業、海外事業を更に強化しつつ、バリューチェーンの拡充やR&D、イノベーション推進により、技術立社ならではの新たな価値を創出し、社会や顧客とともに未来を開拓することを目指す。① ありたい姿中期経営計画の策定にあたり、経営理念や受け継いできた企業風土、価値観などを「ありたい姿」として具体化している。当社グループの基盤である人と技術をつなぎ合わせ、顧客、さらにその先にある社会に貢献することを目指していく。 ② 成長戦略の取り組み状況「ありたい姿」を念頭に置きつつ経営環境などを踏まえ、成長戦略は、1)国内建設事業を深める、2)成長領域を伸ばす、3)技術立社として新たな価値を創る、4)サステナビリティを4つの柱としている。 1)国内建設事業を深める生産施設やインフラ更新などの重点分野において、着実に受注、施工の実績を積み重ね、技術力の強化や知見・ノウハウの蓄積が進展している。また、安全性、生産性の向上に資する自動化施工システムの更なる深化や、将来のビジネス機会拡充に寄与する技術開発も成果を上げている。生成AIなどの先進技術の積極的な活用は、働き方の質を高めるとともに、安全を追求する労働環境の改善にも貢献している。 ■当連結会計年度における成果、取り組み事例・重点分野と位置づける「生産施設」において、半導体や自動車関連の大型工事を含め、4,000億円以上の工事を受注・見積書・工程表の自動作成、現場の安全管理支援、橋梁の健全度診断などにおいて、AI活用を推進・自動化施工システム「A4CSEL(クワッドアクセル)」を、「新名神高速道路城陽工事」(京都府)などの複数工事に展開。工事範囲が複雑な形状であり、かつ盛土材料が変化する造成工事にも適用・東京大学「ハイパーカミオカンデ」(岐阜県)において、地下600mに直径69m、高さ94mの世界最大級となる地下空洞を構築。今後の拡大が期待される地下空間活用ニーズに対応 2)成長領域を伸ばす国内、海外において、建設技術と不動産ノウハウをかけ合わせた付加価値の高い不動産開発事業を推進している。海外では各地域の事業環境を慎重に見極めつつ、強固な収益基盤に成長した流通倉庫開発事業のグローバル展開を加速させており、国内では事業資産のレパートリーを拡充するとともに、賃貸物件の収益性を高める取り組みに注力している。また、建設コスト上昇や金融環境の変化を見据え、外部資金の積極的活用を企図したプロジェクトの共同事業化により、リスク低減と資本効率向上を図っている。 ■当連結会計年度における成果、取り組み事例・米国で蓄積した実績、知見を活かし、流通倉庫開発事業のグローバル展開を促進。欧州、東南アジアに加え、豪州においても新規案件に着手。倉庫開発床面積(2015年以降)は累計745万㎡まで拡大・国内、海外の複数の開発事業プロジェクトにおいて、共同事業者の招聘による外部資金活用により、事業リスク低減と資本効率向上を実現・ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのオフィシャルホテル「Osaka Sakurajima Resort」(大阪府)や「新秩父宮ラグビー場」(東京都)等の大型開発プロジェクトが着工。レパートリーの拡充が進展・国内賃貸物件のテナントリーシングを強化。全57棟(貸床面積約12万坪)の入居率95%を確保 3)技術立社として新たな価値を創る建設事業の強化と社会課題解決への貢献を柱とする当社グループの技術開発については、外部パートナーとの協業、連携も深めつつ、技術の社会実装、普及展開に向けた取り組みが進展している。また、「防災・減災」、「ウェルビーイング、スマートビル」などの複数の研究領域において、社会、顧客のニーズに応えた新たな付加価値を創出している。 ■当連結会計年度における成果、取り組み事例・高速道路床版取替工事の工期短縮、ソーシャルロス低減を実現する「スマート床版更新(SDR)システム」の普及展開及び技術深化を目指し、「SDRシステム研究会」を設立・光ファイバセンシング技術を活用した地中空洞化検知、路車協調型自動運転の実現に向け、外部パートナーと連携した研究開発や実証実験を開始・「東京証券取引所ビル本館」(東京都)屋上に制震装置「D3SKY-L(ディースカイエル)」を設置。最新鋭の超高層ビルと同等レベルまで耐震性を向上させるバリューアップを実現・アジア地域統括拠点「The GEAR」において、自然換気活用による空調依存の大幅低減を実現。ASHRAE(米国暖房冷凍空調学会)Technology AwardsのNew Commercial Building部門最優秀賞を獲得 4)サステナビリティ「鹿島環境ビジョン2050plus」に基づき、相互に関連する脱炭素、資源循環、自然再興の3分野における取り組みに注力している。環境保全と経済活動が両立する持続可能な社会の実現に向け、当社グループの人材、資産を幅広く活用しつつ、建設技術をベースにした研究開発を着実に進めている。また、社会や顧客から信頼され、成長し続けるため、コンプライアンスや人権尊重を前提とした経営基盤を整備している。多様な人材の活躍を促す施策に加え、技能労働者の処遇改善や協力会社に対する支援を通じて、強固なサプライチェーン構築も目指している。 ■当連結会計年度における成果、取り組み事例・「CO2-SUICOM(シーオーツースイコム)」を含む2種類の環境配慮型コンクリートを国土交通省の直轄工事に大量適用。当初計画のコンクリートを使用した場合と比較し、CO2排出量を約45t削減・米国北西部の太平洋沿岸地域における森林の取得と持続可能な管理を目的とする森林ファンドに出資。脱炭素及び自然再興の実現に向けた取り組みを加速・純木質耐火集成材を採用した木造建築となる「東北支店ビル」(宮城県)建替に着手。当社グループ社有林(約5,500ha)の産出材活用を計画し、森林の適正管理・再生による脱炭素社会の実現に貢献・社員の熱意や会社への信頼度などを調査するエンゲージメントサーベイのスコアが2年連続で向上・電子マネーなどと交換可能な建設技能者向けポイントサービスの導入、工事代金の支払早期化などにより、技能労働者の処遇改善、協力会社の財務基盤強化を支援 <財務戦略の更新>① 現状分析・評価当社グループは、中期経営計画(2024~2026)の策定後も、事業環境や業績動向を踏まえ、財務戦略を適切に更新している。取締役会においては、資本コストや事業ごとの資本収益性を確認、評価するとともに、株式市場における各種指標、IR活動の実績を把握した上で、成長投資や株主還元などの財務戦略、キャッシュアロケーションを検証している。当連結会計年度は、前連結会計年度に続き目標を上回る利益を確保し、過去最高益を達成した。2027年3月期についても、親会社株主に帰属する当期純利益は、中期経営計画の経営目標を大きく上回る1,700億円を目指している。当社グループが認識している8%程度の株主資本コストに対し、当連結会計年度のROEは13.3%となった。2027年3月期以降も継続的に10%を超え、株主資本コストを十分に上回る資本収益性を確保できると見通している。また、当連結会計年度末における当社の株価は、前連結会計年度末に比べ大幅に上昇しており、当社グループの利益成長と業績に連動した株主還元が株式市場において評価されたと認識している。② 経営目標の達成状況中期経営計画期間3か年累計の親会社株主に帰属する当期純利益は、計画策定時の3,500億円程度から1,200億円以上増加し、4,700億円以上となる見通しである。 中期経営計画 経営目標経営目標2025年3月期実績2026年3月期実績2027年3月期予想 2027年3月期2031年3月期親会社株主に帰属する当期純利益1,258億円1,773億円1,700億円1,300億円以上1,500億円以上ROE10.2%13.3%-10%を上回る水準 ③ 今後の取組みこうした状況を踏まえ、企業価値・市場評価の更なる向上を図るため、財務戦略を更新した。成長に向けた施策と投資を着実に進めつつ、計画を上回る利益や政策保有株式の売却を主要な資金源として、株主還元の充実に加え、協力会社への支払早期化等によるサプライチェーンの強化を図っていく。また、経営方針や業績見込みについてのタイムリーな情報開示と多様な投資家・市場との対話の強化により、株式市場から信頼され、評価される企業グループを目指していく。④ 財務戦略更新のポイント成長投資・中長期的な成長を見据え、人的資本への投資に加え、「生産性向上」「新たな価値創出」に向けたR&D投資・デジタル投資を集中的に推進。・国内外の不動産開発事業における資本効率向上を企図した共同事業化や市況を見極めた投資・回収時期の変更を主因に、ネット投資額は計画比200億円減少。・株主資本コストの変動を意識しつつ、ROEは10%を上回る水準を継続。資本構成・政策保有株式は継続的に縮減を推進。株式市場の動向を踏まえ、『2027年3月期末までに連結純資産の20%未満』とした目標の達成に向けて、3年間の売却額は計画比400億円増額の900億円程度を目指す。・D/Eレシオの目安は0.7倍程度を維持。株主還元・配当性向40%を目安として、業績向上に連動した配当金の引き上げを実施。・自己株式取得は、政策保有株式の売却実績をベースに機動的に実施。2027年3月期は利益成長の加速を踏まえ、政策保有株式売却額を上回る400億円の取得を計画。あわせて、保有する自己株式を発行済株式総数の5%程度となるよう消却予定。・3年間の株主還元総額を計画比800億円程度拡充。サプライチェーン強化・持続的な成長を支えるサプライチェーンの強化に1,000億円程度を充当。・工事代金の支払いに関して現金比率を高めるなど、支払早期化を実施し、協力会社の財務基盤改善を支援することに加え、建設技能者へのポイントサービス導入や手当・報奨金の拡充を推進。 ⑤ 投資計画鹿島グループの中長期的な成長に資する投資を厳選して推進しており、3年間の投資総額は計画策定時から400億円減少の1兆1,600億円、ネット投資額は200億円減少の4,900億円を見込んでいる。中長期的な成長を見据え、「生産性向上」「新たな価値創出」に向けたR&D投資・デジタル投資を集中的に推進するとともに、人的資本投資の一環として、上質なオフィスや福利厚生施設の整備を進めており、計画策定時と比較して、デジタル投資及び業務用不動産への設備投資がそれぞれ100億円増加する見通しである。国内・海外の開発事業に関しては、資本効率向上を企図した共同事業化や市況を見極めた投資・回収時期の変更を主因に、投資から回収を差し引いたネット投資額が合計で400億円減少する見込みである。 当連結会計年度までの2年間におけるネット投資額は累計2,660億円となった。 中期経営計画(2024~2026) 2025年3月期2026年3月期累計投資実績策定時今回更新増減 R&D投資600億円600億円- 430億円デジタル投資500億円600億円+100億円 370億円戦略的投資枠800億円800億円- 110億円業務用不動産などへの設備投資600億円700億円+100億円 330億円国内開発事業 (売却による回収) (ネット投資額)3,200億円(1,700億円)(1,500億円)2,800億円(1,300億円) (1,500億円)△400億円(△400億円)(-) 1,870億円(1,020億円) (850億円)海外開発事業 (売却による回収) (ネット投資額)6,300億円(5,200億円)(1,100億円)6,100億円(5,400億円) (700億円)△200億円(+200億円)(△400億円) 3,230億円(2,660億円) (570億円)投資総額(ネット投資額)1兆2,000億円(5,100億円)1兆1,600億円(4,900億円)△400億円(△200億円) 6,340億円(2,660億円) (6) 目標とする経営指標2027年3月期の国内建設事業は、資材の供給不足や建設コスト上昇に備え、リスク管理体制を一層強化するとともに、引き続き生産性向上に取り組んでいく。当社建設事業の売上総利益率は、土木事業20.4%、建築事業12.0%を予想しており、堅調な業績を維持する見通しである。国内開発事業は、事業資産の積上げが着実に進展しており、複数の物件売却による業績貢献を見込んでいる。海外事業については、不安定な国際情勢や金融環境を慎重に見極めつつ、不動産開発物件の売却を進めることにより、利益の増加を目指している。なお、為替レートは1米ドル156.56円を想定している。このような国内外の状況を勘案し、2027年3月期の業績は、当連結会計年度比減収減益を見込むものの、親会社株主に帰属する当期純利益は、「鹿島グループ中期経営計画(2024~2026)」の経営目標「1,300億円以上」を大きく上回る1,700億円を予想し、2026年5月14日に下記のとおり公表している。ROEについては、引き続き10%を上回る水準を維持することを目指す。 売上高営業利益経常利益親会社株主に帰属する当期純利益2027年3月期連結業績予想(百万円)2,900,000200,000206,000170,000
MD&A(経営者による分析)
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1) 経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりである。 ① 経営成績の状況売上高は、建設事業の売上高増加により、前連結会計年度比5.3%増の3兆672億円(前連結会計年度は2兆9,118億円)となった。利益については、建設事業の売上総利益の向上を主因に、営業利益は前連結会計年度比58.5%増の2,407億円(前連結会計年度は1,518億円)、経常利益は同49.6%増の2,404億円(同1,606億円)、親会社株主に帰属する当期純利益は同40.9%増の1,773億円(同1,258億円)となった。 セグメントごとの経営成績は次のとおりである。(セグメントの経営成績については、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載している。) a 土木事業(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)売上高は、大型工事を中心に施工が着実に進捗したことから、前連結会計年度比6.6%増の4,307億円(前連結会計年度は4,041億円)となった。営業利益は、売上総利益率が大幅に向上したことを主因に、前連結会計年度比114.9%増の767億円(前連結会計年度は357億円)となった。 b 建築事業(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)売上高は、竣工工事を中心に大型工事の施工量が増加し、前連結会計年度比12.3%増の1兆1,829億円(前連結会計年度は1兆534億円)となった。営業利益は、売上高の増加に加え、売上総利益率も向上したことから、前連結会計年度比62.6%増の832億円(前連結会計年度は512億円)となった。 c 開発事業等(当社における不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)当連結会計年度に複数の不動産開発物件を販売したものの、収益性の高い大型プロジェクトの販売、引渡しがあった前連結会計年度と比べ売上高、売上総利益が減少し、売上高は前連結会計年度比5.8%減の964億円(前連結会計年度は1,023億円)、営業利益は同36.8%減の176億円(同278億円)となった。 d 国内関係会社(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸事業等)当連結会計年度は、建設事業における売上高の増加及び売上総利益率の向上に加え、開発系関係会社が保有する販売用不動産の売却により、売上高、営業利益が増加し、売上高は前連結会計年度比16.9%増の4,146億円(前連結会計年度は3,546億円)、営業利益は同118.1%増の357億円(同164億円)となった。 e 海外関係会社(当社の海外関係会社が行っている事業であり、北米、欧州、アジア、大洋州などの海外地域における建設事業、開発事業等)売上高は、建設事業売上高が増加したものの、米国における開発物件の売却が減少したことを主因に、前連結会計年度比2.0%減の1兆919億円(前連結会計年度は1兆1,145億円)となった。営業利益は、開発事業等の売上総利益が減少した一方で、建設事業における売上総利益率の向上を主因に、前連結会計年度比32.8%増の266億円(前連結会計年度は200億円)となった。 ② 財政状態の状況当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末比1,697億円増加し、3兆6,243億円(前連結会計年度末は3兆4,545億円)となった。これは、投資有価証券の増加812億円、受取手形・完成工事未収入金等の増加508億円、現金預金の増加488億円及び有形固定資産の増加287億円があった一方で、棚卸資産(販売用不動産、未成工事支出金、開発事業支出金及びその他の棚卸資産)の減少680億円があったこと等によるものである。なお、政策保有株式については、当連結会計年度に23銘柄を210億円で売却した一方で、株価変動等により保有時価が716億円増加したため、当連結会計年度末の残高は3,041億円(前連結会計年度末は2,535億円)、純資産に対する比率は21.2%(前連結会計年度末は19.8%)となった。負債合計は、前連結会計年度末比115億円増加し、2兆1,881億円(前連結会計年度末は2兆1,766億円)となった。これは、有利子負債残高※の増加411億円及び未払法人税等の増加287億円があった一方で、支払手形・工事未払金等の減少953億円があったこと等によるものである。なお、有利子負債残高は、8,331億円(前連結会計年度末は7,920億円)となった。純資産合計は、株主資本1兆1,040億円、その他の包括利益累計額3,109億円、非支配株主持分212億円を合わせて、前連結会計年度末比1,582億円増加の1兆4,362億円(前連結会計年度末は1兆2,779億円)となった。また、自己資本比率は、前連結会計年度末比2.6ポイント好転し、39.0%(前連結会計年度末は36.4%)となった。(注) ※短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債(1年内償還予定の社債を含む)及び長期借入金の合計額 ③ キャッシュ・フローの状況当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、1,146億円の収入超過(前連結会計年度は306億円の収入超過)となった。これは、税金等調整前当期純利益2,553億円に減価償却費334億円等の調整を加味した収入に加えて、未払又は未収消費税等の増減573億円の収入があった一方で、仕入債務の減少974億円、売上債権の増加645億円、法人税等の支払額525億円並びに未成工事受入金及び開発事業等受入金の減少262億円の支出があったこと等によるものである。投資活動によるキャッシュ・フローは、465億円の支出超過(前連結会計年度は1,048億円の支出超過)となった。これは、有形固定資産の取得による支出505億円、貸付けによる支出365億円及び投資有価証券の取得による支出183億円があった一方で、投資有価証券の売却等による収入352億円及び貸付金の回収による収入342億円があったこと等によるものである。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額540億円及び自己株式の取得による支出200億円があった一方で、短期借入金、長期借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債による資金調達と返済の収支が464億円の収入超過となったこと等により、305億円の支出超過(前連結会計年度は616億円の収入超過)となった。これらにより、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末から427億円増加し、3,922億円(前連結会計年度末は3,495億円)となった。 ④ 生産、受注及び販売の実績当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため、また、受注高について当社グループ各社の受注概念が異なるため、「生産の実績」及び「受注の実績」は記載していない。 売上実績 セグメントの名称前連結会計年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)当連結会計年度(自 2025年4月1日至 2026年3月31日)増減(△)率(%) 土木事業(百万円)404,143(13.9%)430,767(14.1%)6.6 建築事業(百万円)1,052,902(36.1%)1,180,918(38.5%)12.2 開発事業等(百万円)97,953(3.4%)92,676(3.0%)△5.4 国内関係会社(百万円)242,463(8.3%)271,117(8.8%)11.8 海外関係会社(百万円)1,114,353(38.3%)1,091,795(35.6%)△2.0合計(百万円)2,911,816(100%)3,067,275(100%)5.3 (注) 1 売上実績においては、「外部顧客への売上高」について記載している。2 前連結会計年度及び当連結会計年度ともに売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。 〔参考〕提出会社単独の受注高及び売上高の状況a 受注高、売上高及び繰越高 期別種類別期首繰越高(百万円)当期受注高(百万円)計(百万円)当期売上高(百万円)期末繰越高(百万円)前事業年度建設事業建築工事1,469,1021,334,6682,803,7711,053,4741,750,297自 2024年4月1日至 2025年3月31日土木工事729,017438,8991,167,916404,143763,773計2,198,1201,773,5673,971,6881,457,6172,514,070開発事業等81,65257,539139,192102,39836,793合計2,279,7731,831,1074,110,8801,560,0162,550,864当事業年度建設事業建築工事1,750,2971,555,6783,305,9751,182,9012,123,074自 2025年4月1日至 2026年3月31日土木工事763,773615,8741,379,648430,767948,880計2,514,0702,171,5524,685,6231,613,6683,071,954開発事業等36,793103,762140,55596,41644,139合計2,550,8642,275,3144,826,1781,710,0843,116,093 (注) 1 前事業年度以前に受注したもので、契約の更改により請負金額に変更があるものについては、当期受注高にその増減額を含む。したがって、当期売上高にもかかる増減額が含まれる。2 期末繰越高は、(期首繰越高+当期受注高-当期売上高)である。 b 受注工事高 期別区分国内海外計官公庁(百万円)民間(百万円)(百万円)(百万円)前事業年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)建築工事13,6551,321,013-1,334,668土木工事251,294147,90439,700438,899計264,9491,468,91739,7001,773,567当事業年度(自 2025年4月1日至 2026年3月31日)建築工事132,1511,423,526-1,555,678土木工事353,397256,8515,625615,874計485,5491,680,3775,6252,171,552 c 受注工事高の受注方法別比率建設工事の受注方法は、特命と競争に大別される。期別区分特命(%)競争(%)計(%)前事業年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)建築工事45.0 55.0 100 土木工事27.8 72.2 100 当事業年度(自 2025年4月1日至 2026年3月31日)建築工事52.7 47.3 100 土木工事35.5 64.5 100 (注) 百分比は請負金額比である。 d 完成工事高 期別区分国内海外計官公庁(百万円)民間(百万円)(百万円)(百万円)前事業年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)建築工事29,5221,023,951-1,053,474土木工事271,946129,7712,425404,143計301,4681,153,7232,4251,457,617当事業年度(自 2025年4月1日至 2026年3月31日)建築工事48,4581,134,442-1,182,901土木工事285,190142,6052,971430,767計333,6481,277,0482,9711,613,668 (注) 1 前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。2 当事業年度の完成工事のうち主なものは、次のとおりである。 発注者 工事名称○ Rapidus㈱Rapidus新工場IIM-1○ SMC㈱SMC Japan Technical Center building ASMC Japan Technical Center building B SMC Japan Technical Center building C○ 東日本旅客鉄道㈱MoN Takanawa:The Museum of Narratives○ ㈱IHI・三菱地所㈱豊洲セイルパークビル○ 三井不動産㈱、鹿島建設㈱、 京浜急行電鉄㈱、第一生命保険㈱、 ㈱竹中工務店、㈱ディー・エヌ・エー、 東急㈱BASEGATE横浜関内 タワー(※)○ MABD(同)表参道 Grid Tower○ 国土交通省北陸地方整備局大河津分水路新第二床固改築Ⅰ期工事大河津分水路新第二床固改築1期その2工事○ いわき神楽山復興エナジー(同)神楽山風力発電所 (※) 当社からの受注高は完成工事高に含んでいない。 e 繰越工事高(2026年3月31日現在) 区分国内海外計官公庁(百万円)民間(百万円)(百万円)(百万円)建築工事169,0001,954,073-2,123,074土木工事557,672340,29450,913948,880計726,6732,294,36850,9133,071,954 (注) 繰越工事のうち主なものは、次のとおりである。 発注者 工事名称○ 八重洲二丁目中地区市街地再開発組合八重洲二丁目中地区第一種市街地再開発事業新築工事○ Japan Advanced Semiconductor Manufacturing㈱JASM F23P2Project○ 防衛省馬毛島(R5)仮設工事他○ 三菱地所㈱・㈱TBSホールディングス赤坂二・六丁目地区開発計画(A工区)既存建物地下解体工事及び新築工事他○ ㈱世界貿易センタービルディング世界貿易センタービルディング新本館・ターミナル建設工事○ 東急不動産㈱・京浜急行電鉄㈱泉岳寺駅地区第二種市街地再開発事業特定施設建築物新築工事○ 札幌駅南口北4西3地区市街地再開発組合北4西3地区第一種市街地再開発事業に伴う新築工事他○ 西日本高速道路㈱新名神高速道路城陽工事 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り当連結会計年度末現在において判断したものである。① 経営成績及び財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容当社グループの当連結会計年度の経営成績は、国内建設事業(土木事業・建築事業)の順調な工事進捗と売上総利益率向上を主因に、5期連続で前連結会計年度比増収増益を達成し、売上高(3兆672億円)、営業利益(2,407億円)、経常利益(2,404億円)、親会社株主に帰属する当期純利益(1,773億円)はいずれも過去最高となった。ROEは13.3%となり、前連結会計年度の10.2%から向上した。国内建設事業については、適切な施工体制や採算性を確保した工事受注や、最適な施工計画に沿った安全、品質、コストに対する組織的な管理体制が有効に機能しており、各工事の収益性向上につながっている。業績予想との比較では、売上高が増加し、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益も業績予想を上回った。当連結会計年度の経営成績(連結業績予想との対比) (単位:百万円) 売上高営業利益経常利益親会社株主に 帰属する 当期純利益連結業績予想(A)2026年2月12日公表3,030,000228,000226,000170,000経営成績 (B)3,067,275240,780240,420177,334増減額(B-A)37,27512,78014,4207,334増減率(%)1.2%5.6%6.4%4.3% 財政状態については、当連結会計年度末の資産合計が前連結会計年度末比1,697億円増加し、3兆6,243億円となった。国内外の不動産開発物件の売却などにより開発事業資産(販売用不動産及び開発事業支出金)が減少した一方で、建設事業における売上債権(受取手形・完成工事未収入金等)が増加している。また、サプライチェーン強化に向けた工事代金の支払早期化や不動産開発投資に伴う今後の資金需要に対して、国内金利の上昇を見据え、先行して長期資金調達を実施したことから、現金預金が一時的に増加している。投資有価証券のうち政策保有株式については、中長期的な縮減に向けて、保有する株式のうち23銘柄を210億円で売却したものの、株価変動等により保有株式の時価が716億円増加したことを主因に、前連結会計年度末比505億円増加し、当連結会計年度末の残高は3,041億円、純資産に対する比率は21.2%となった。中期経営計画に掲げた政策保有株式の残高縮減目標(2027年3月期末までに連結純資産の20%未満)の達成に向け引き続き縮減を進めていく。連結自己資本は、保有株式の株価上昇などにより、その他有価証券評価差額金が413億円増加したことに加え、1,700億円を上回る親会社株主に帰属する当期純利益の計上に伴い前連結会計年度末から1,568億円増加の1兆4,150億円、自己資本比率は39.0%となった。連結有利子負債残高は、国内外の不動産開発投資における外部資金活用などにより前連結会計年度末から411億円増加し、8,331億円となったものの、D/Eレシオは0.59倍であり、財務の健全性は十分に維持できていると考えている。経営成績に重要な影響を与える主な要因は、国内外の建設事業及び開発事業における需要やコストの急激な変動等に伴う事業環境の変化である。当連結会計年度において、国内建設需要は、底堅い公共投資と民間企業の旺盛な設備投資により高い水準を維持しており、供給可能な施工量を上回る需要を背景に受注競争の緩和傾向が継続している。海外における建設需要は、AI・デジタル関連投資が拡大していることに加え、景気の影響を受けにくい医療福祉・教育関連施設等の需要も堅調である。コストに関しては、国内外ともに資機材価格は総じて高い価格水準に留まっており、労務費にも上昇の傾向が見られるため、動向を注視した適切な対応が必要と考えている。また、国際情勢の緊迫化や通商政策の動向が事業環境に大きな影響を及ぼす不安定な状況が継続していることから、早期の情報収集に努め、その結果を踏まえた対策を事前に講じることが重要になると認識している。今後については、国内建設需要が当面、高い水準で推移することが予想されるため、旺盛な需要に応えられる施工体制を確保したうえで、安全、環境、品質、工程、コストを守る組織的な管理を徹底するとともに、AI・デジタル技術を積極的に活用した施工の自動化、遠隔管理化などによる建設プロセスの生産性向上を推進していく。また、長期的には建設技能労働者が減少していく見通しであることから、賃金・休暇等の処遇改善を推進するとともに、工事代金の支払早期化など、協力会社の財務基盤強化に対する支援を通じて、強固なサプライチェーンの構築に取り組んでいる。国内外の開発事業においては、地政学的リスクの高まりや各国・地域の通商・金融政策が事業環境に与える影響を慎重に見極めつつ、資本効率性と財務健全性を考慮した丁寧な投資判断を徹底し、時機を捉えた不動産開発物件の売却などにより収益力向上を図っていく。 セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりである。 a 土木事業(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)売上高は、最盛期を迎えた大型工事を中心に施工が着実に進捗したことなどから前連結会計年度を上回る4,307億円となった。2027年3月期についても、最盛期にある大型工事が継続することに加え、短工期の大型工事が進捗することを踏まえ4,800億円を予想し、それ以降も4,000億円から4,500億円程度の水準が継続すると見込んでいる。売上総利益率に関しては、大型工事における大規模な追加・設計変更の獲得が重なったことから、前連結会計年度の利益率(15.4%)を大きく上回る24.6%となった。2027年3月期についても、施工が継続している各工事の収益性は引き続き高い水準にあり、売上総利益率は20.4%になると予想している。土木事業における建設需要は、インフラ更新などの国土強靭化に関連した分野や、電力需要の増加に対応するエネルギー分野などの需要拡大が続き、今後も安定的に推移すると考えている。 b 建築事業(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)売上高は、複数の大型竣工工事が順調に進捗したことを主因に、前連結会計年度比増収の1兆1,829億円となった。2027年3月期は、売上高が伸びない施工初期段階の工事が多く、減収となる1兆500億円を予想している。売上総利益率は、受注時利益率の向上が緩やかながら継続したことに加え、施工中のリスク管理徹底により各工事の収益性が向上したことから、前連結会計年度の9.6%から11.8%に上昇した。2027年3月期は、竣工工事による利益の押し上げが少ない時期に当たるものの、建設コストの上昇リスクを一定程度織り込んだうえで、売上総利益率は12.0%に向上すると見込んでいる。競争環境は、高い水準の建設需要を背景に緩和状態にあり、受注時の利益率は改善傾向が継続している。適切な施工体制の確保に向けたサプライチェーン強化に取り組みつつ、技術力や提案力を軸とした顧客のニーズに応える工事受注を徹底することにより、売上総利益率の維持、向上を図っていく。 c 開発事業等(当社における不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)開発事業等の売上高は、複数のオフィスビルなどの売却により、前連結会計年度と概ね同水準を確保したものの、営業利益は、大型分譲マンションの販売、引渡しがあった前連結会計年度から減少した。2027年3月期については、不動産販売事業において、引き続き複数物件の売却を計画していることに加え、高い稼働率を確保している不動産賃貸物件の収益性が向上することから、売上高、営業利益ともに当連結会計年度を上回る見通しである。国内の不動産開発事業は、中期経営計画(2024~2026)の投資計画に基づき、レパートリー拡充、優良資産の積み上げによる収益源の多様化及び収益機会の拡大を目指している。建設コスト上昇や金融環境の変化を踏まえ、事業リスクの低減と資本効率性の向上を両立させる取組みを推進しており、当連結会計年度において、外部資金の積極的活用を企図した大型プロジェクトの共同事業化が実現している。 d 国内関係会社(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸事業等)当連結会計年度は、建設系国内関係会社が総じて良好な業績となったことに加え、開発系国内関係会社の保有するテナントビルの売却が計画通り実現したことから、売上高、営業利益ともに前連結会計年度を大きく上回った。2027年3月期は、売上高、営業利益ともに高水準であった当連結会計年度から減少するものの、建設事業は、大型工事の着実な進捗などにより、堅調な業績を確保する見通しである。また、開発系国内関係会社は、2027年3月期における不動産開発物件の売却予定はないものの、中長期的な収益力強化につながる投資を推進していく。 e 海外関係会社(当社の海外関係会社が行っている事業であり、北米、欧州、アジア、大洋州などの海外地域における建設事業、開発事業等)海外関係会社は、米国を中心に不動産開発物件の売却件数が減少したことから、売上高は前連結会計年度を下回ったものの、建設事業の収益性向上を主因に、営業利益は増益となった。建設事業は、欧州や東南アジアにおける工事原価の低減や追加変更契約の獲得などが寄与し、前連結会計年度を大きく上回る利益を確保している。一方で、開発事業等は、金融環境や不動産取引市況の動向などを踏まえた判断により、米国や欧州などにおいて、現地パートナーとの共同事業案件を含め複数物件の売却時期を2027年3月期以降に変更しており、海外関係会社全体の当期純利益は前連結会計年度比で減益となった。2027年3月期については、各地域における施工中工事の着実な進捗と開発事業における物件売却により、売上高は引き続き1兆円を上回る見通しであり、利益は不動産開発物件の売却件数増加を主因に、増益を予想している。建設事業では、高水準の利益を確保した当連結会計年度を下回るものの、引き続き堅調な業績を見込んでいる。開発事業については、主力である米国の金利は高止まりしているものの、不動産市場への投資が回復基調にあり、流通倉庫、賃貸集合住宅などの物件売却が進展する見通しである。また、アジアにおける貸工場、オフィス、商業施設などの売却に加え、金利の低下により事業環境が改善している欧州においても、流通倉庫や再生可能エネルギー施設などの売却件数増加を見込んでいる。海外事業は当社グループの成長領域であり、中期経営計画(2024~2026)に定めた施策や投資を推進している。各地域の物価、金利、不動産市況の変化に的確に対応し、建設・開発両事業のプラットフォームを活かして、中長期的な収益性向上を目指していく。② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報当社グループは当連結会計年度において、国内建設事業を中心に過去最高を更新する利益を確保するとともに、国内外の不動産開発事業における物件売却などにより資金を創出した。これに加え、政策保有株式の売却や有利子負債の活用等による資金収入を原資として、R&D・デジタル投資や国内外の不動産開発投資などの当社グループの中長期的な収益性向上と経営基盤強化に繋がる投資を積極的に推進した。また、工事代金の支払いを早期化することにより協力会社の財務基盤強化を支援するなど、強固なサプライチェーン構築を目指す取組みに必要な資金を充当している。株主還元については、増配や200億円の自己株式取得により、利益成長に見合った拡充に取り組んでいる。鹿島グループ中期経営計画(2024~2026)において、連結当期純利益や資産売却に伴う回収資金などを、成長投資と株主還元に配分する財務戦略を策定し、中長期的な企業価値、市場評価の向上を目指している。中期経営計画3か年における利益成長が加速するなど、資金収入が増加する見通しを踏まえ、財務戦略を更新し、資金使途及びその配分額を変更した。計画策定時と比較して、国内の建設事業、開発事業の貢献により当期純利益が1,200億円増加することに加え、政策保有株式の残高を『2027年3月期末までに連結純資産の20%未満』とする目標達成に向け、売却額を400億円増額した。また、企業価値向上に資する投資を厳選しており、成長投資額から資産売却に伴う回収資金を差し引きしたネット投資額が200億円減少することから、資金は合計1,800億円増加する見通しである。増加した資金の使途については、1,000億円をサプライチェーン強化に向けた取組みに充てるとともに、株主還元を800億円増額することを決定した。今後も国内外における建設事業の収益力を高め、資金の創出に努めるとともに、開発事業資産の計画的な売却を進めていく方針である。株主還元については、配当性向の目安を40%としており、利益成長に連動した配当金の引き上げを目指すとともに、資本効率の向上と株主還元の充実のため、自己株式の取得を継続する方針である。自己株式の取得は、政策保有株式の売却実績をベースとして機動的に実施しており、2027年3月期については、中期経営計画3か年の利益成長が加速している現状を踏まえ、当連結会計年度の政策保有株式売却額210億円を上回る400億円程度を予定している。工事の大型化に伴い、協力会社等への支払先行による資金需要が増大し、2027年3月末の連結有利子負債残高は9,800億円まで一時的に増加する見通しであるが、D/Eレシオは目安としている0.7倍程度を維持することから、十分な財務健全性は確保できる見込みである。また、資金運営に関しては、月商と同水準の現金及び現金同等物の残高保有を目安としていることに加え、コミットメントラインを設定する等、安定的かつ多様な資金調達手段を備えていることから、特段の懸念はないと考えている。なお、不動産開発投資等による長期資金需要の増加を見据え、特に金利上昇が見込まれる国内の有利子負債調達においては、長期、固定金利の比率を高めている。 ③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されているが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されている。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っているが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがある。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載している。

事業リスク

  • 事業環境の変化
    景気悪化による建設需要の減少や不動産市場の縮小は、受注高や販売・賃貸収入に悪影響を及ぼす可能性があります。また、競合激化により、品質やコスト面での競争力を維持できない場合、業績が悪化するリスクがあります。
  • 建設コストの変動
    工事期間が長期にわたる建設工事では、資機材価格や労務費の急激な上昇が想定外のコスト増につながり、工事採算を悪化させる可能性があります。請負契約に物価スライド条項を含めるなどの対策を講じていますが、完全にリスクを排除することは困難です。
  • 保有資産の価格変動
    販売用不動産、賃貸等不動産、投資有価証券などの保有資産の時価が著しく下落した場合、評価損や減損損失が発生し、業績に大きな影響を与える可能性があります。特に開発事業資産は、案件ごとの価値下落リスクを管理しています。
出典: FY2026 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「事業等のリスク」の全文を見る(年度切替)
FY2026|6,174 文字
3 【事業等のリスク】1 リスク管理体制当社グループは、事業遂行上のリスクの発生を防止、低減するための活動を推進している。新規事業、開発投資などの「事業リスク」に関しては、専門委員会等が事業に係るリスクの把握と対策について審議を行っている。法令違反などの「業務リスク」に関しては、コンプライアンス・リスク管理委員会が当社グループにおけるリスク管理体制の運用状況の把握、評価を行うとともに、リスク管理の方針及び重大リスク事案への対応などについて審議を行っている。リスク管理活動の実効性を高めるためには、あらゆるリスクを網羅・検証した上で、重要度に応じた活動を推進することが有効であることから、毎年、発生頻度及び顕在化した際の影響度の両面から分析し、企業活動上、重点的な管理が必要とされる業務リスク事項をリスク管理重点課題として選定・展開し、予防的観点からのリスク管理を実施している。顕在化したリスク事案については、早期の報告を義務付け、組織的対応によるリスクの拡大防止と再発防止に努めるなど、PDCAサイクルに基づいた実効的なリスク管理活動を展開している。本社のリスク所管部署の担当者によって構成するリスク管理連絡会議を定期的に開催し、当社グループに関するリスク顕在化事案や法令改正、社会動向、他社における事例、さらにはリスクマネジメントやリスクコミュニケーションの手法などの情報を報告・共有し、重要な情報については適宜コンプライアンス・リスク管理委員会に報告している。なお、リスク管理体制の有効性については、内部統制委員会が確認し、取締役会に報告している。 リスク管理体制図 事業リスクの把握と対策を審議する専門委員会委員会名称目的等海外事業運営委員会海外事業(現地法人事業並びに直轄事業)に係る重要事項などの審議・報告を行う。海外開発プロジェクト運営委員会現地法人及び海外事業本部の重要な開発事業の投資及び計画の大幅な変更並びに当該開発事業の譲渡について、計画の内容、採算性などの審議・報告を行う。海外土木工事検討会海外建築工事検討会海外の重要工事について、受注時の技術上、施工上、契約上のリスクの検討・報告、及び施工中の工事について重大な問題が生じる恐れのある場合の対策の検討・報告を行う。開発運営委員会国内開発事業への投資、手持ち重要不動産の事業化・売却及び事業推進中のプロジェクトについて審議・報告を行う。重要工事検討会国内の重要工事について見積提出前に技術上、施工上、契約上のリスクの確認を行い、見積提出にあたっての方針を明確にする。PFI土木委員会PFI建築委員会PFI事業などに係る全社的対応方針及び対応体制、出資などの事業リスクを伴う個々の案件及び企業コンソーシアム形成に係る対応方針などについて審議・報告を行う。事業投資等委員会上記以外の新規投資、会社設立、M&A、アライアンスなどの事業について、リスク・課題を洗い出し審議を行い、その推進を支援する。 2 主要なリスク有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりである。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。当社グループにおいては、これらの事業を取り巻く様々なリスクや不確定要因等に対して、その予防や分散、リスクヘッジ等を実施することにより、企業活動への影響の最小限化を図っている。(1) 事業リスク① 事業環境の変化に関わるリスク景気悪化等による建設需要の大幅な減少や不動産市場の急激な縮小等、建設事業・開発事業等に係る著しい環境変化が生じた場合には、建設受注高の減少及び不動産販売・賃貸収入の減少等の影響を受ける可能性がある。また、他の総合建設会社等との競争が激化し、当社グループが品質、コスト及びサービス内容等における競争力を維持できない場合、業績等が悪化する可能性がある。変化する状況や市場動向を踏まえ策定した「鹿島グループ中期経営計画(2024~2026)-中核をさらに強化し、未来を開拓する-」に掲げる諸施策を推進することにより、経営目標の達成と企業価値の向上を目指している。② 建設コストの変動リスク建設工事においては、工事期間が長期に亘る中で資機材及び労務の調達を行う必要があることから、建設コストの変動の影響を受ける。主要資材価格や労務単価の急激な上昇等による想定外の建設コスト増加を請負契約工事金額に反映させることができない場合には、工事採算が悪化する可能性がある。建設コストの変動による影響を抑えるため、早期調達及び多様な調達先の確保を図るとともに、発注者との契約に物価スライド条項を含める等の対策を実施している。③ 保有資産の価格・収益性の変動リスク当社グループは、中期経営計画に定めた投資計画に基づき不動産開発投資、R&D・デジタル投資、戦略的投資及び業務用不動産等への設備投資を推進することとしている。販売用不動産(当連結会計年度末の連結貸借対照表残高2,787億円)の収益性が低下した場合、賃貸等不動産(同3,693億円)及び投資有価証券(同4,786億円)等の保有資産の時価が著しく下落した場合には、評価損や減損損失等が発生する可能性がある。開発事業資産については、案件毎に価値下落リスク等を把握し、その総量を連結自己資本と対比し一定の水準に収める管理を実施している。連結自己資本は、中期経営計画期間中の国内外開発事業資産の増加を考慮しても十分耐性を持つ財務基盤を維持できる水準を確保している。また、個別案件の投資に当たっては、本社の専門委員会(開発運営委員会、海外開発プロジェクト運営委員会)等においてリスクの把握と対策を審議した上で、基準に則り取締役会や経営会議において審議している。投資有価証券のうち政策的に保有する株式は、毎年度、全銘柄について、中長期的な視野に立った保有意義や資産効率等を検証した上で、取締役会にて審議し、保有意義の低下した銘柄は原則として売却している。中期経営計画では、政策的に保有する株式の残高を『2026年度末までに連結純資産の20%未満』とする目標を掲げ、目標達成後も継続的に縮減を進める方針としている。④ 諸外国における政治・経済情勢等の変化に関わるリスク当社グループは、北米・欧州・アジア・大洋州等海外における建設事業及び開発事業を展開しており、中期経営計画に基づき、事業規模拡大に伴う経営基盤の整備、ガバナンスの強化等を推進していく方針である。進出国の政治・経済情勢、法制度、為替相場等に著しい変化が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。海外におけるM&Aや新市場への進出等に当たっては、本社の専門委員会(海外事業運営委員会)等においてリスクの把握と対策を審議した上で、基準に則り取締役会や経営会議において審議している。また、テロ、暴動等が発生した場合に、社員・家族の安全確保を図り、現地支援を行うため、国際危機対策委員会を設置している。 ⑤ 建設業の担い手不足に関するリスク建設業界においては、建設技能労働者が減少傾向にあり、十分な対策を取らなければ、施工体制の維持が困難になり、売上高の減少や労務調達コストの上昇による工事利益率の低下等の影響を受ける可能性がある。当社グループは、将来の施工体制を維持するため、中期経営計画に基づき、建設技能者の処遇改善、原則二次下請までに限定した施工体制の実現を目指した重層下請構造改革、人材育成や連携強化をはじめとした協力会社支援の充実など各種施策を継続して実施する方針である。 (2) 業務リスク① 法令リスク当社グループは、建設業法、建築基準法をはじめ、労働安全衛生関係法令、環境関係法令、独占禁止法等、様々な法的規制の中で事業活動を行っている。そのため、法令等の改正や新たな法的規制の制定、適用基準の変更等があった場合、その内容次第では受注環境やコストへの影響等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。また、当社グループにおいて法令等に違反する行為やハラスメントがあった場合には、刑事・行政処分等による機会損失発生や事業上の制約、信用の毀損等の発生により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。これらのリスクへの対応として、関係法令等の制定・改正については、担当部署を通じてその内容を周知し必要な対応を実施している。例えば、2024年4月から建設業に適用された時間外労働の上限規制については、働き方改革、デジタル化による業務の効率化や質の向上、業務内容に応じた集約化、アウトソーシングなどを進めるとともに、人員配置など施工体制の十分な検討と必要な工期を考慮した見積の提出に努めている。また、コンプライアンス・マニュアルである「鹿島グループ 企業行動規範 実践の手引き」を策定、法令等の改正や社会情勢の変化も踏まえ適宜改訂し、全役員・従業員に周知している。加えて、コンプライアンス意識の更なる向上と定着を図るため、当社グループの役員及び従業員を対象としたコンプライアンスに係るeラーニング研修を継続的に実施しているほか、各分野の担当部署が、規則・ガイドラインの策定、研修、監査等を実施し、適正な事業活動のより一層の推進を図っている。② 安全衛生・環境・品質リスク当社グループが提供する設計、施工をはじめとする各種サービスにおいて、重大な人身事故、環境事故、品質事故等が発生した場合には、信用の毀損、損害賠償や工程遅延・再施工費用等の発生により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。安全衛生・環境・品質の確保は生産活動を支える前提条件であり企業存続の根幹であることから、基本方針並びに安全衛生方針、環境方針、品質方針を定め、関係法令をはじめとする社会的な要求事項に対応できる適正で効果的なマネジメントシステムにより生産活動を行っている。安全を実現するため「建設業労働安全衛生マネジメントシステム(COHSMS)」に準拠した安全衛生管理を行うとともに、環境については、ISO14001に準拠した環境マネジメントシステムを運用している。また、品質については、土木部門・建築部門それぞれでISO9001の認証を受けており、海外関係会社は個々に必要な認証を受けている。③ 情報セキュリティリスク当社グループは設計、施工をはじめとする各種サービスを提供するにあたり、建造物や顧客に関する情報、経営・技術・知的財産に関する情報、個人情報その他様々な情報を取り扱っている。このような情報が外部からの攻撃や従業員の過失等によって漏洩又は消失等した場合は、信用の毀損、損害賠償や復旧費用等の発生により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。これらのリスクに対応するため、当社グループでは情報セキュリティポリシーを定め、重点的なリスク管理を実施している。サイバー攻撃を想定した訓練を実施し組織的な対応力向上に取り組んでいるほか、当社グループの役員及び従業員を対象としたeラーニングを用いた教育、点検及び監査並びに協力会社に対する啓発活動を行っている。 ④ 取引先の信用リスク発注者、協力会社等の取引先が信用不安に陥った場合には、工事代金の回収不能や施工遅延等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。特に、契約金額の大きい工事の工事代金が回収不能になった場合、その影響は大きい。新規の営業案件に取り組むに当たっては、企業者の与信、資金計画並びに支払条件などを検証し、工事代金回収不能リスクの回避を図り対応している。新たな契約形態や工事代金の回収が竣工引き渡し後まで残る等、不利な支払条件を提示された場合には、本社が関与しリスクの把握と対策を講じるとともに、基準に則り経営会議において契約の可否を審議している。協力会社と新たに取引を開始する際には、原則として財務状況等を審査したうえで工事下請負基本契約を締結している。また、重要な協力会社については、定期的に店社を訪問するほか、財務状況を含めた経営状況を確認している。⑤ ハザードリスク(自然災害、パンデミックなど)大規模地震、風水害等の大規模自然災害が発生した場合には、施工中工事への被害や施工遅延、自社所有建物への被害などにより、業績等に影響を及ぼす可能性がある。災害時の事業継続計画(BCP)を策定しており、首都直下地震や南海トラフ地震等を想定した実践的なBCP訓練を実施するなど、企業としての防災力、事業継続力の更なる向上に取り組んでいる。パンデミック(感染症の大流行等)が発生した場合には、景気悪化による建設受注高の減少や工事中断による売上高の減少等、業績等に影響を及ぼす可能性がある。例えば、感染症の大流行に対しては、感染予防と感染拡大防止を最優先としつつ、事業継続と被害最小化を図るため、情報収集とリスク想定を行い、国内外従業員や協力会社に対して必要な対策を指導する。2026年度リスク管理重点課題(業務リスク)リスク分類リスク管理重点課題法令リスクコンプライアンス意識の徹底、ハラスメントの防止 入札・受注活動に関するコンプライアンスの徹底 不正取引・不適切会計の防止安全衛生・環境・品質リスク重大な事故・災害防止に向けた危険感受性の向上三六協定の遵守と心身の健康維持品質・施工トラブルの発生防止情報セキュリティリスク重要情報の漏洩防止とサイバー攻撃への対応力強化ハザードリスクBCM(事業継続マネジメント)体制の構築 (3) 気候変動リスク① 気候変動に伴う物理的リスク及び脱炭素社会への移行リスク気候変動に伴う物理的リスクとしては、台風や洪水等による施工中工事への被害や施工遅延、自社所有建物への被害等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。災害時の事業継続計画(BCP)を策定し、豪雨災害等を想定した実践的なBCP訓練を実施すること等により、企業としての防災力、事業継続力の向上に取り組むことに加え、防災・減災及びBCP分野におけるR&Dを推進することにより、社会・顧客に対し関連サービスを提供するとともに、災害発生時には復旧・復興等に貢献することを目指している。脱炭素社会への移行リスクとしては、温室効果ガス排出量の上限規制による施工量の制限や炭素税の導入によるコスト増等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。中期経営計画及び「鹿島環境ビジョン2050plus」に基づき、建設現場等におけるCO2排出量削減と再生可能エネルギー電源への投資に計画的に取り組むことに加え、低炭素コンクリートや省エネルギー関連分野等における保有技術の活用や新たな技術の開発等により、脱炭素社会への移行に対し事業を通じて貢献することを目指している。(気候変動リスクの詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)個別テーマ ②気候変動関連(TCFD提言に沿った開示)」に記載している。)

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